判例検索β > 平成13年(行ウ)第229号
日本アイ・ビー・エム救済申立棄却命令取消
事件番号平成13(行ウ)229
事件名日本アイ・ビー・エム救済申立棄却命令取消
裁判年月日平成15年10月1日
法廷名東京地方裁判所
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主 文
1 被告が都労委平成8年不第69号事件について平成13年3月27日付けでした命令を取り消す。
2 訴訟費用のうち,参加によって生じた費用は参加人の負担とし,その余は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
原告らは,被告参加人(以下「参加人」という。)が,その従業員であるP1,P2及びP3の3名(以下「P1ら3名」といい,各人は姓のみで表示する。)が原告全日本金属情報機器労働組合日本アイビーエム支部(以下「原告支部」という。)に加入したのに対し,同人らの組合員資格を認めず,①原告支部が申請したP1ら3名の組合費のチェックオフを拒否したこと,②P1の分会執行委員就任の撤回と役員名簿の訂正を求めたこと,③P2に対し「上級管理職としての職務と責任に反するような活動を行った場合は相応の処分を行う。」と通告したこと及びP3に対し「ストライキに参加すると処分の対象となりうる。」と口頭で通告したことが不当労働行為にあたるとして,P1ら3名とともに被告に救済を申し立てた(以下「本件救済申立て」という。)ところ,被告は,別紙1のとおり,上記各行為はいずれも不当労働行為には当たらないとして申立てを棄却する命令を発した(以下「本件命令」という。)。
本件は,原告らが本件命令の取消しを求める事案である。
1 前提となる事実(証拠を摘示しない事実は争いがない。争いのない事実であっても,参照の便宜のため証拠を摘示した部分もある。なお,以下において,枝番のある書証は特に明示しない限り枝番の全てを含むものとする。)
(1) 原告ら及び参加人
ア 参加人は,IBMワールド・トレード・コーポレーションの子会社であり,情報処理システム・機器の開発,製造,輸出入,販売,賃貸及びこれらに関する保守サービスなどの事業を営む株式会社である。平成8年9月10日(本件救済申立ての日)時点における参加人の従業員数は約2万0580人であった。イ 原告全日本金属情報機器労働組合(以下「原告全金」という。)は,金属情報産業に働く労働者により組織された労働組合であり,平成8年9月10日時点の組合員数は約1万5000人である。
ウ 原告全日本金属情報機器労働組合東京地方本部(以下「原告東京地本」という。)は,原告全金の下部組織であり,平成8年9月10日時点の組合員数は約7000人である。
エ 原告支部は,原告東京地本の下部組織で,参加人において働く原告全金の組合員により組織された労働組合であり,平成8年9月10日時点の組合員数は約150人である。
なお,原告支部は,従前は総評全国金属労働組合に所属し,その下部組織である同東京地方本部(以下「全金東京地本」という。)のもとに,同日本アイ・ビー・エム支部を組織していたが,平成元年,労働戦線再編の過程で,原告全金に加入し,その名称を改めた。
(以上,弁論の全趣旨)
(2) 新人事制度の導入とその概要
参加人は,昭和56年1月1日,新人事制度を導入し,従来の管理者,非管理者という社員区分を,専門職,一般職の区分に変更した上,専門職を,部下を持たないスタッフ専門職(職群ⅠないしⅣ)と,部下を持つライン専門職(職群ⅠないしⅢ)に分類し,スタッフ専門職を,職群に準拠して,主席(職群Ⅰ),主管(同Ⅱ),副主管(同Ⅲ),専任(同Ⅲ),主任(同Ⅳ)の5階層に区分した。 なお,参加人は,平成9年3月1日から,各国アイ・ビー・エム共通の新職務体系を導入し,それまで使用してきた職群に代えて,10段階の職務等級(BANDと呼ばれる。)を使用している。BANDと階層・職群の対応関係は,別紙2のとおりである。
(甲62,乙2,25)
(3) 中労委和解と本件確認書
昭和48年ころ以降,全金東京地本,原告支部(当時は全金東京地本の下部組織)や組合員らが参加人に対し,組合員に対する昇進昇格差別の是正を求めた不当
労働行為救済命令申立事件が複数の労働委員会に係属したが,昭和55年3月4日に被告が係属事件について組合員の昇進を命じる救済命令を発したこと等が契機となって,労使間で問題解決のための自主交渉が進められた。そして,最終的に,中央労働委員会(以下「中労委」という。)が労使双方に対し,係属する6件の再審査申立事件について,昭和57年11月26日付けで別紙3の内容による和解を勧告し,同年12月6日,双方がこれを受諾する形で全面解決に至った(以下「中労委和解」という。)。
(甲69ないし77,乙1の1,乙7ないし15)
この和解成立に伴い,いずれも同年12月6日付けで,全金東京地本,原告支部及び関係組合員と参加人との間で別紙4の内容による「覚書」が,原告支部と参加人との間で別紙5の「確認書」(以下「本件確認書」という。)が,それぞれ取り交わされた。(乙1の2,3)
本件確認書1項には,「組合員の範囲は次のとおりとする。」として,「ロ.ライン専門職および専任×××部員以上のスタッフ専門職は非組合員とする。」と記載されている(以下「本件条項」という。)。(乙1の3)
(4) 本件確認書の一部解約通告
原告支部は,平成4年5月27日,参加人に対し,本件確認書のうち本件条項について解約の予告を申し入れ,同年9月14日付けで,同年8月25日をもって解約の効力が生じたものと通告した(以下「本件一部解約通告」という。)。(甲7,58)
(5) P1ら3名の原告支部加入と参加人の対応
ア P1関係
(ア) P1は,昭和39年4月に参加人に入社し,昭和59年3月以降,購買―国際調達に所属し,昭和62年に主任購買担当部員に,平成4年専任購買担当部員(職群Ⅲ)にそれぞれ昇進した。P1にはライン専門職の経験はない。(甲104~106,乙228,229)
(イ) P1は,平成7年4月3日原告支部に加入し,同年7月原告支部藤沢分会の執行委員に就任し,平成8年7月,前年に引き続き同分会の執行委員に就任した。
これに伴い,藤沢分会が参加人に対し,平成8年7月18日付け書面により,P1を含む12名の同分会役員就任を通知したところ,参加人は,藤沢分会に対し,P4藤沢事業所長(以下「P4所長」という。)名で,P1は専任部員であるため本件条項に基づき組合員資格がなく,分会執行委員就任はあり得ないため,「同氏(P1)の執行委員就任を直ちに撤回し,名簿を訂正することをもとめます。」と記載した同日付け文書を発した。なお,前年7月にも藤沢分会と参加人との間で同様の文書のやりとりがされている。
(甲25,26,47,48,104)
イ P2関係
(ア) P2は,昭和39年4月に参加人に入社し,ライン専門職等を歴任した後,平成3年2月以降は平成11年12月に定年退職するまで一貫してスタッフ専門職であった。
P2は,平成7年3月1日付けで,関連事業関連事業推進関連事業プログラム担当(職群Ⅱ,職位は主管)となり,この職務の一環として,同月29日付けで,関連会社であるゼネラル・ビジネス・サービス株式会社(以下「GBS」という。)の非常勤監査役に就任していた。
(乙68,230,231)
(イ) P2は,平成8年1月18日,原告支部に加入した。そして,直後の同月22日,GBSの社長宛に,日付が空白の「辞任届」を同封した書簡を提出した。この書簡は,P2が原告支部に加入したことを伝えるとともに,GBSがP2の監査役辞任が適当と考えるのであれば,参加人関連事業とも相談の上,辞任届に日付を入れて処理するよう依頼するものであった。
P2の上司であったP5関連事業推進担当は,P2に対し,同月24日,口頭で辞任届の撤回を指示した上,改めて同月30日付けの文書により辞任届の撤回を求めた。この文書には,非常勤監査役の職務をP5に事前の相談なく独断で退任する旨の手続を行うことは重大な業務命令違反に該当するので,事の重大性を十分認識して対処すべきであるとした上,職群Ⅱの上級管理者であるP2は組合員にはなり得ず,P2が「使用者の利益を代表する上級管理職としての職務と責任に反するような活動を行った場合は,相応の処分を行わざるを得ない」旨が記載されていた。
(乙66ないし68,230)
ウ P3関係
(ア) P3は,昭和44年に参加人に入社し,昭和55年2月主任に,昭和62年2月専任にそれぞれ昇進し,平成4年10月からはシステム品質センターに所属する専任テクニカルサポート担当部員(職群Ⅲ)の職にあった。P3にはライン専門職の経験はない。(甲156,乙232)
(イ) P3は,平成8年2月1日,原告支部に加入した。
P3の上司であるP6は,労務を通じてP3の原告支部加入を知らされ,同月16日,P3に対し,当日午後予定されていた原告支部によるストライキへの参加の有無を尋ねた上,「管理職であるあなたは組合員の資格がない。」,「ストライキに参加すれば処分の対象になり得る。」などと口頭で通告した。(乙232)(6) P1ら3名のチェックオフ申請と参加人の対応
原告支部は,参加人に対し,平成7年4月19日にP1の,平成8年1月にP2の,同年2月にP3の,各組合費チェックオフ申請書を提出したが,参加人は,P1ら3名はいずれも組合員ではないとして,これを拒否した。(甲23,24,37ないし40,42,44,49,130,乙230,232)
(7) 本件救済申立て
原告ら及びP1ら3名は,平成8年9月10日,上記(6)のチェックオフ拒否及び(5)の藤沢分会及びP1ら3名に対する参加人側の各行為が不当労働行為にあたるとして,被告に対し,本件救済申立てを行った。
被告は,平成13年3月27日,別紙1のとおり,命令をもって原告らの申立を棄却し,同命令書は,同年5月25日原告らに交付された。
原告らは,同年8月22日,本訴を提起した。
2 争点
①参加人がP1ら3名のチェックオフを拒否したこと(1(6)),②P4所長がP1の執行委員就任撤回・名簿訂正を求めたこと(同(5)ア(イ)),③P2,P3に対し上司のP5,P6がそれぞれ処分警告を行ったこと(同(5)イ(イ)及び同ウ(イ))が労働組合法(以下「労組法」という。)7条3号の支配介入にあたるか否か。
(以下,①ないし③の行為を一括して「本件各行為」といい,個別には「本件行為①」のようにいう。)
3 争点に関する当事者の主張の骨子
(原告らの主張)
参加人による本件各行為は労組法7条3号の支配介入に該当する。(1) 本件条項の効力
参加人は,本件条項によりP1ら3名が原告支部の組合員とは認められないと主張するが,失当である。
ア 本件条項は,原告支部と参加人との間の労働協約の適用を受けるべき人的範囲について合意したものであり,組合の団結の範囲を画したものではない。 そして,本件条項を含む本件確認書は,「和解協定書」及び「覚書」とともに,それぞれ別個独立の期間の定めのない労働協約として締結されたものであるところ,原告支部は平成4年5月27日,参加人に対し,本件確認書のうち組合員の範囲に関する本件条項の解約を予告した。したがって,予告期間の90日を経過した同年8月25日をもって同条項は失効した。
イ 本件確認書の合意は,労働協約として尊重に値するが,その後の事情変更(後記ウ)に伴って原告支部が労働協約の変更を申し入れたにもかかわらず,参加人が頑なに反対したため,やむなく上記解約予告をしたものであり,信義則違反ないし権利濫用をいう参加人の主張は労組法15条に照らしても失当である。ウ 本件確認書後の事情変更は次のとおりである。
(ア) 参加人は,昭和56年1月に新人事制度を導入して,一般職と専門職を区分し,さらに,専門職をライン専門職とスタッフ専門職に区分して,スタッフ専門職を部下のいない専門職とし,ライン専門職を部下を持つ専門職として人事管理に重心をもつものと位置づけた。
参加人の職制の階層区分は,ファーストライン(一般企業の課長クラスに相当)とセカンドライン(一般企業の次長クラスに相当)に区分されており,スタッフ専門職である「主任」はファーストラインにつき,スタッフ専門職の「専任」はファーストラインではなくセカンドラインにつくことがほとんどであった。(イ) 昭和57年12月の中労委和解時点では上記新人事制度は導入されていた
が,その後次のような事情の変更があった。
a 昭和60年ないし昭和61年ころから,参加人はライン専門職への昇進を抑制し,ライン専門職に昇進できない者の多くがスタッフ専門職の専任に昇進することとなり,専任の数及び比率が和解当時に比較して増加した。その結果,中労委和解当時,スタッフ専門職のうち専任が占める割合は数パーセントにすぎなかったが,平成4年には30パーセントを超える比率になった。
b スタッフ専門職の専任は従来はセカンドラインについていたが,専任の数および比率が増加するにつれて,その下のファーストラインにつくようになった。言い換えれば,スタッフ専門職の専任の階層上の位置づけがスタッフ専門職の主任に近くなった。
c 組合員も一般職より主任の人数が多くなり,また,平成3年12月に「プロフェッショナル専門職制度」が新たに導入され,組合員はスタッフ専門職の専任以上への昇進がないと昇給ができない者が多数となった。
d また,中労委和解当時には予想されなかったことであるが,平成4年以降スタッフ専門職が人員削減の対象とされるようになった。
(2) P1ら3名の実態
スタッフ専門職であるP1らの実態は,労組法2条ただし書1号にいう「使用者の利益を代表する者」(以下「利益代表者」という。)に該当しない。この点に関する参加人の主張は争う。
また,労働組合が誰を組合員として加入させるかは,組合自治の問題として本質的に組合の自由である。ただ,利益代表者を加入させた場合,労組法の保護を受けられる法内組合であるか法外組合となるかの問題が生じるにすぎない。したがって,「組合に加入できるかどうか」との点は争点となり得ないから,原告らについて本件救済申立て資格を争わないのに,P1ら3名の組合員資格を争うと参加人が主張することは,主張自体失当である。
(3) 参加人の不当労働行為意思の存在
本件各行為について,参加人に不当労働行為意思があったことは明白である。ア 本件行為①について
支配介入に際して要求される不当労働行為意思とは,反組合的な結果の発生に向けられた,ないしはその虞れのある行為の認識があれば足りると解すべきであるところ,本件で参加人は「組合員資格のない社員ですので受理できません」とチェックオフ申請を拒否しているから,本件行為①において参加人に不当労働行為意思があったことは明白である。
イ 本件行為②について
分会執行委員の就任,役員名簿への記載については,そもそも労働組合の自主的な決定に委ねられるものであり,使用者が組合員の資格の有無などを問わず容喙することはできず,そのような干渉行為をすることを認識しているだけで,不当労働行為意思があるというべきである。
ウ 本件行為③について
P5,P6による本件行為③は,P2,P3が憲法に保障された労働基本権を行使しようとしたことに対する干渉・妨害にほかならず,そもそも使用者が組合員の資格の有無などを問わず容喙することはできないことがらである。したがって,このような行為することを認識しているだけで不当労働行為意思があるというべきである。
(被告の主張)
別紙1の本件命令書において判断したとおりである。
(参加人の主張)
(1) P1ら3名は,本件確認書により,原告支部の組合員とは認められないから,本件各行為が不当労働行為にあたることはない。
ア 原告支部と参加人とは,本件確認書を交わし,専任以上のスタッフ専門職は非組合員とすることを合意し,組合員の範囲を画した(文理上も労働協約の適用を受けるべき人的範囲を画したにすぎないものではない。)。
P1ら3名は,専任以上のスタッフ専門職の地位にあり,本件確認書により組合員の範囲外とされた者であるから,本件確認書により原告支部の組合員とは認められない。
イ 原告らは,本件条項が解約されたと主張するが,以下のとおり失当である。(ア) 本件確認書は同時に交わされた和解「勧告」(その受諾)及び「覚書」と不可分一体の労働協約として有効に成立しているから,本件確認書における組合員
の範囲に関する条項のみを一方的に一部解約することはできない。また,「勧告」,「覚書」及び本件確認書が不可分一体のものであるか否かにかかわらず,本件確認書の条項中,組合員の範囲に関する条項のみを一方的に部分解約することはできない。
(イ) 原告らの解約予告は,本件確認書の条項中,一般職の中央執行委員の時間内組合活動の正常化問題を未解決のままにして,組合員の範囲のみを改訂するものであり,そのような一部解約は無効である。
(ウ) 本件確認書は,労使双方が長期間にわたって誠意をもって協議を重ね,譲歩の結果,今後の労使関係の礎になるものとして「勧告」(その受諾),「覚書」とともにそれらと不可分一体のものとして中労委において成立したものである。かかる中労委和解について,参加人がこれを誠実に履行しているのに対して,原告支部がこれを履行せず,本件確認書で定めている時間内組合活動に関する協議すらも行おうとしなかったにもかかわらず,一方的に一部解約を通知してきたことは,労使関係を律する信義誠実の原則に反し,あるいは権利の濫用として許されない。(エ) 原告支部が主張する事情変更については,以下のとおり,その事実はないし,また,本件一部解約を許す根拠ともなりえない。
a 原告らは,新人事制度の導入によりライン専門職が人事管理に重心をもつものとして位置づけられたと主張するが,事実に反する。従来のライン・マネジャーの役割と新人事制度におけるライン専門職の役割は,基本的に変わりはないのであって,新人事制度においても,ライン専門職は多くの職務を有しており,人事管理を行うことだけをライン専門職の責務としているのではない。
b 参加人がライン専門職の人数を抑制するというような方針をとった事実はなく,またそのために専任の人数が増加した事実はない。そもそも,参加人の全社員数は,中労委和解当時の1万3300人から解約申し入れ当時の2万5000人へと大幅に増加しているから,その中で専任の人数が増えたとしても当然である。しかし,全社員に占める割合という点においては,中労委和解当時,昭和60年,61年当時,及び解約申し入れのあった平成4年年末のいずれの時点においても,全社員に占める管理職者数(職群Ⅰ,Ⅱ及びⅢ)の割合は20数パーセントであって大きな変化はない。また,昭和57年の中労委和解当時も解約通告当時も,専門職のうち,ライン専門職を除く専任以上と主任の比率は約4:6であり変化はない。c 専任がつく対象が,セカンドラインであるかファーストラインであるかは,管理階層の数え方の問題であって,専門職の位置付け・権限・職責とは関係がない。現行の専門職制度を導入した昭和56年1月の時点から,今日に至るまで,スタッフ専門職の専任以上の位置付けも権限・職責も,中労委和解当時と何ら変更されていない。重要なのは位置付け・権限・職責であって,専任以上の人数や,スタッフ専門職内の各階層の人数構成などは,参加人規模の拡大やビジネス・ニーズの変化に応じて当然変動するものであり,しかも人数の変動によって,その位置付け・権限・職責がその都度変更されるわけではないから,人数を論じても意味はない。d 一般職より主任の組合員の人数が多くなったのは,参加人が和解条項を誠実に履行し,現在も履行しているということの証左である。
また,組合員はスタッフ専門職の専任以上の昇進がないと昇給ができないとの原告らの主張は事実に反する。
e 原告らが主張する(1)ウ(イ)dの事実はない。
(2) P1ら3名の実態は労組法2条ただし書1号の利益代表者であるから,労組法上組合員資格を有せず,したがって,本件各行為が不当労働行為に該当することはない。
なお,救済申立て資格と組合員資格とは全く異なる概念であるから,これを関連づけて主張することは失当である。
(3) 本件各行為につき,参加人に不当労働行為意思はない。
本件各行為は,いずれもP1ら3名が組合員資格を有しないという認識に基づいて行われたものであって,組合弱体化の意図ないし具体的な反組合的意図をもってなされたものではないから,参加人に不当労働行為意思はない。
第3 争点に対する判断
1 P1ら3名の利益代表者性について
本件各行為が不当労働行為にあたるか否かを判断するにあたり,まず,P1ら3名が労組法2条ただし書1号の「役員,雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者,使用者の労働関係についての計画と方針に関する機密の事項に接し,そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員
としての誠意と責任とに直接てい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者」(以下「利益代表者」という。)に該当するか否かについて検討する。
(1) 認定した事実(後掲証拠のほか,前提となる事実及び弁論の全趣旨により認める。)
ア 参加人の人事制度
(ア) 概要
参加人が昭和56年1月1日付けで導入した新人事制度は,従来,社員を管理者,非管理者と区分していた管理者制度を廃止し,新たに専門職,一般職に区分するもので(専門職制度),区分の基準は職群によっており,職群Ⅰ~Ⅳの職位にある社員を専門職,職群Ⅴ~Ⅵの職位にある社員を一般職とした。なお,職位は,個々の社員に対して与えられる職務の名称であり,職群は,職位の組織階層上もしくは職位系列上の位置及びその属する職位群(職務の重要度,困難度に基づいて分類したもの)に基づいて6段階に分類したものである。
ライン専門職(部下をもつ専門職)は,「○○担当」や「○○課長」などという名称の職位にあり,組織の長として所属する組織の管理運営事項全般を掌握し責任を持つ専門職とされ,統括する組織の階層により,最下層の組織を統括する者をファーストライン,その一階層上位の組織を統括する者をセカンドラインと称している。
スタッフ専門職(部下をもたない専門職)は,所属する組織の管理運営事項を分担し,長に対して助言,勧告,提案等に責任を持つ専門職とされ,職群区分に準拠して,主席(職群Ⅰ),主管(職群Ⅱ),副主管(職群Ⅲ),専任(同),主任(職群Ⅳ)に職位階層が区分される。それぞれの職位名称は,「△△(上記職位階層のいずれか)○○担当部員」となる。
参加人が導入時社員に配布した説明文書では,ライン専門職について,今後は人事管理能力が従来に増して要請されるとともに,ライン,スタッフ間のローテーションによっていつでも高度の専門的知識,経験をもったスタッフ専門職として戦力になり得るよう,その専門分野における絶えざる精進が要請されるとされていた。 上記の人事制度を基礎として,昭和63年にプログラム専門職,平成2年にプロジェクト専門職が導入された。いずれもスタッフ専門職の一部であるが,階層名称をもたない専門職であり,職群Ⅲ以上で,専任以上の職位とされている。 なお,本件救済申立て後に従来の職務等級がBANDに再編成されたことは前提となる事実のとおりである。
(甲62,186,乙2,23,27,224,丙1,証人P7)(イ) スタッフ専門職の職責
参加人は,スタッフ専門職の基本的職責を,その階層区分に従って別紙6のとおり定義づけている。
また,昭和63年に導入されたプログラム専門職は,会社もしくは複数の部門にまたがる特定の機能あるいはプログラムを自ら管理運営する責任を持つ専門職,平成2年に導入されたプロジェクト専門職は,組織の長として活動期間が特定される課題の管理運営事項全般を掌握し責任を持つ専門職とそれぞれ定義づけられている。
(甲62,乙2,27)
(ウ) 参加人の人事管理・業績評価の制度
a 参加人は,人事管理を各ライン専門職によって行うこととし,人事配置,育成,会社財産の保全と機密保持など10項目の人事管理に関する責任を同職に負わせている。(乙23)
また,参加人の人事部門は,ライン専門職を援助するために「人事方針・制度・施策の策定と発表・指示」等の役割を担当すると同時に,ライン専門職の指導・助言,労使関係の調整,採用,人事情報の提供などを行っている。
b 業績評価の結果などの人事関係の情報は,オンラインシステム上でこれに接するにはライン専門職のユーザーIDが必要であり,書面で送付されるときも,色の異なる封筒が使用され,「パーソナル」と指定されているため,名宛人以外の者は開封が許されないこととされている。(乙221)
c 参加人は,従業員の業績評価にあたって,PBCと呼ばれる目標管理制度をとっており,ライン専門職は,人事部から配布される「PBC業績評価ガイド」に従って業績評価を行う。このガイドは,業績評価のスケジュール,評価分布,評価の方法,評価実施の留意点などを示したものであり,ライン専門職以外への回覧は禁
じられている。また,業績評価の個人別記録であるPBCレコードフォームには,「当該社員及び所属のライン(専門職)以外の者にみだりにみせないこと。」と印刷されており,所属長がこれを保管している。
ライン専門職が所属部門の一般職の業績評価を行うにあたって,スタッフ専門職に文書を提出させたり,会議に参加させるなどの方法で意見を聞くことはない。(甲81,98,乙221,226,229)
d 従業員の賃金は,業績評価に基づき決定されている。その決定に際し,ライン専門職は,人事部からのガイドに基づいて大筋は固定された数字に自己の裁量を加味しているが,その段階でスタッフ専門職に意見を求めることはない。e ライン専門職の不在時などにスタッフ専門職が職務を代行することはあるが,参加人の「職務代行委任届」には,「職務全般」について委任する場合でも,「但し,目標の設定・変更,人事,組織変更に関する事項は除く。」と記載されており,スタッフ専門職はこれらの事項については代行していない。また,オンラインシステム上の代行委任でも,「人事管理業務の代行は,ライン/プロジェクト担当あるいは専任スタッフに限定するものとし,かつ勤務時間管理のみ代行できるものとする。」と委任の範囲が限定されている。(甲96,97)
f 参加人における昇進,異動等の決定は,専らライン専門職が人事部門の指導・助言を得ながら実施しており,スタッフ専門職にはそれらの事項を決定する権限は付与されていない。(甲186,乙226)
イ P1ら3名の職務内容及び権限等
(ア) P1について
P1が所属する製造・購買―国際調達部門は,国内外のアイ・ビー・エムのために,メーカーから部品・機器類を調達し,調達費用を購買額に上乗せして請求するという社内商社の役割を果たす部門である。
P1は,専任購買担当部員に昇進した平成4年から平成5年3月まで,国際調達購買業務の外注化プロジェクト・リーダーの任にあった。このプロジェクトは,購買業務の一部を外注して,人員削減を含む効率化を進めるものであり,同プロジェクトはP1の他に主任部員3名と一般職1名で構成されていた。P1の任務には,外注化により部門の人員・経費をどれだけ削減できるか試算し報告することも含まれており,平成5年1月にはメンバー全員の名前で最終確認案を作成し報告を行い,平成4年に72名であった人員を平成5年には57名に削減する必要があるとの報告を行った。
P1は,平成4年に専任に昇進したが,昇進後,参加人あるいは上司等から業績評価についての手順・方法について口頭や文書で説明を受けたこと,一般職の業績評価に関してライン専門職に意見具申したこと,一般職の昇給についてライン専門職から説明を受けたり,人事異動について一般職に説明するよう指示されたり,正規従業員・臨時雇用者・アルバイトを問わず従業員の雇用選考に関与したことはいずれもない。
(乙46,59,228,229)
(イ) P2について
a 関連事業部門の概要
P2が所属していた関連事業部門は,関連事業企画・管理と関連事業推進から成り,関連事業担当が部門を統括している。同部門は,参加人の子会社・関連会社(以下「関連会社等」という。)を指導・援助する部門であり,関連会社等の運営方針の策定,格付け,再建・改善計画の策定など関連会社等の経営全般にわたる事項の施策の立案,実施に関することを担当している。
関連会社等の直接的な指導・援助は,関連会社等と業務上密接に関係する部門の役員又は幹部が「スポンサー・エグゼクティブ」として,また同人の指名する者が「サポート・スタッフ」(主任部員も任命されている。)として,これを行い,関連事業部門は,これらスポンサー・エグゼクティブ部門を支援する役割を担っている。この業務遂行過程において,関連事業部門の社員が関連会社等の事業計画,業績,財務状況,人事制度等の情報に接することがある。
関連事業企画・管理は,ライン専門職のほか,プログラム担当1名,スタッフ専門職2名により構成され,P2が所属していた関連事業推進は,ライン専門職1名(P5)のほか,プログラム担当4名,スタッフ専門職1名で構成されていた。 P2は,組合加入当時は関連会社等22社を担当していたほか,GBSの非常勤監査役に就任していた。関連事業推進の所属員は,関連会社等の非常勤監査役(無報酬)に就任することになっている。

(以上,甲122ないし126,149,乙230,233)
b 関連事業推進の主要な業務とP2の関与
(a) 出向者の事務協力費の回収
出向者の事務協力費とは,関連会社等への出向者に関して参加人が支出した給与のほか,社会保険の会社負担金や福利厚生費などを含んだ人件費関連費用(人件費総額)のうち,関連会社等から参加人へ返還させている費用のことであり,関連事業部門は事務協力費を100パーセント回収することを目標としている。 関連事業推進のP2らスタッフ専門職は,事務協力費回収率決定にあたり,関連事業企画・管理の主任のスタッフ専門職が管理する人件費関連のデータを入手し,関連会社の事業計画,出向者個々人の給与情報や職位,業績評価,関連会社の経営状況など必要な資料を収集・分析し,回収率の希望をも考慮のうえ,関連事業のライン専門職の承認を得た後,ライン専門職の意見を付して,そのデータをスポンサー・エグゼクティブに引き渡す過程の作業を行うものとされていた。 スポンサー・エグゼクティブは,関連会社等との間で事務協力費(回収率)改訂について,交渉・決定し,スタッフ専門職は,決定された回収率について,書面でスポンサー・エグゼクティブの確認を受け,その後の事務処理を上記主任に引き継ぐ作業を行っている。
(甲127,乙230,231)
(b) 出向者の人事管理
関連会社等への出向者の目標設定や業績評価,新賃金の通知などの人事管理は,「キャリア・マネジャー」(出向者一人一人の出向期間中の人事管理を行う者であり,アイ・ビー・エムに在籍するライン専門職から任命される。)及び出向先におけるアイ・ビー・エム在籍のライン専門職が,それぞれの役割区分により行っている。従って,関連事業推進のP2らスタッフ専門職が,関連会社等への出向者の人事管理に直接関与することはない。
出向者の出向先での職位の決定は,スポンサー・エグゼクティブの役割と責任に含まれ,同人がアワーズ社(人事情報の管理等を委託している関連会社)及び当該出向者のキャリア・マネジャーと協議して行っている。
(甲124,145,乙230,233)
(c) 関連会社等の役員の選出・決定
関連会社等の役員の選出及び決定は,スポンサー・エグゼクティブが申請し,同人が自ら行うか,出向者の出向先での地位によっては,アイ・ビー・エムの代表取締役が承認の権限を有している。関連事業部門では,関連会社等の役員の選出及び決定に関してライン専門職である関連事業担当が同意権を有している。(甲126)
(ウ) P3について
a システム品質センター部門の概要
P3が所属していたシステム品質センター部門(現在は組織改正に伴い「ソフトウェア品質」部門となっている。)は,ユーザーに対するハードウェアとソフトウェアの品質管理を統括し,顧客満足度を維持・向上させるための部門である。 P3は,同部門の専任テクニカル・サポート担当部員として,ソフトウェア製品の重要障害について緊急対応を行い,また,社内外から寄せられる製品に関する苦情・要望を分析して,その改善策,予防策を提案する業務を担当していた。(乙72,232)
b プロジェクト・オフィス・マネージャーとしてのP3の権限等 参加人においては,顧客に生じた自社のソフトウェア製品に関する品質上の問題について,最優先かつ早期に解決すべき重要な障害(以下「CRITSIT」という。)が生じた場合に対処する標準的プログラムが策定されており,お客様担当チーム,サポート部門,プロジェクト・オフィスがこれに対応する。システム品質センターは,このプロジェクト・オフィスにあたり,ここに属するプロジェクト・オフィス・マネージャーがCRITSIT全体の管理責任を負うことになる。P3は,このプロジェクト・オフィス・マネージャーの任務を担当していた。 プロジェクト・オフィス・マネージャーは,CRITSITとして処理を開始するか否かを判断し,CRITSITと判断した場合,問題解決のためのプロジェクトチームを編成し,自らチームのリーダーとして問題解決にあたる。メンバーの役割分担や行動計画を決定し,メンバーとの連絡・調整を行いつつ,チームの円滑な運営を行うこともプロジェクト・オフィス・マネージャーの任務である。なお,プロジェクトチームの編成には所属長の決裁が必要とされている。

チームのメンバーは,国内外のアイ・ビー・エムで問題解決に必要な部署から選出される。プロジェクト・オフィス・マネージャーは,チームを編成するにあたり,関連する部門の所属長に対し,必要な技術を有する者をメンバーとして出すよう要請する(通常は特定の個人を指名しない。)。しかし,メンバーを出すか否かの決定権は,要請された部門の所属長にある。また,チームのメンバーの技術力が不足しているなどの理由で交代を要する場合,プロジェクト・オフィス・マネージャーは,必要な部署の所属長に交代の要請をするが,この場合も決定権はメンバーの所属長にある。
このプロジェクトチームの編成は,特別に新たな組織や部署を立ち上げるものではなく,メンバーの所属が変わったり,メンバーがプロジェクト・オフィス・マネージャーの部下になるという関係が生じるものでもない。チームの運営は,各メンバーがそれぞれの所属で,技術上の問題を電子メールや電話で協議し,また,必要に応じて会議を開くなどして,適切な対応策を検討するという方法で行われる。 プロジェクト・オフィス・マネージャーは,プロジェクトの途中や最終段階で,各メンバーの所属長に業務報告を行っている。
その際,所属長との間でメンバーの仕事ぶりについて話題になることはあるものの,プロジェクト・オフィス・マネージャーの職務として,メンバーの業績を報告したり,評価する旨の規定はなく,そのような機会も設けられていない。(甲167,乙232,233)
(2) 判断
ア 労組法2条ただし書1号は,本来労働組合が自主的に決すべき構成員の範囲について,労働組合の使用者からの自主性を確保するという見地から,使用者側の利益を代表する立場にあると評価できる一定の労働者をその対象外とする趣旨の規定であるから,その労働者が使用者の利益代表者に該当するか否かも,その者が加入することにより,使用者と対等の立場に立つべき労働組合の自主性が損なわれるかどうかの観点から,個別具体的に判断すべきである。
イ 本件において,P1ら3名がこれに該当するか否かを検討する。(ア) スタッフ専門職の利益代表者性について
(1)アに認定した事実によると,参加人の新人事制度は,基本的には,社員を専門職と一般職に区分した上,専門職を,部下を有するライン専門職と部下を持たないスタッフ専門職に分離するものであり,専門職には,基本的に職務の重要度や困難度が一定水準以上にある職位群が対応している。そして,参加人におけるスタッフ専門職の職責に関する定義付けによると,主管,副主管,専任の各職務は,所属する部門や組織の業務を遂行することのほか,①経営上の重要事項(主管),所属する部門又は組織の管理運営事項の全般あるいはその一部(副主管,専任)について,専門的知識・経験に基づき「企画,調査,立案等を行い」,②部門又は組織の長に対し,「助言,勧告,提案等を行」い,③経営方針,経営計画の一部(主管),部門の方針,業務計画(副主管)の決定にそれぞれ参画し,又は所属する組織の方針,業務計画の決定に関与し(専任),④所属長を全般的に補佐し(主管,副主管),又は所属長を全般的ないしは一部補佐し(専任),⑤所属する部門統括内の経営,人事関係についての方針と計画に関する機密事項に接し(主管),又は部門(副主管),所属する組織(専任)における人事関係についての方針と計画に関する機密事項に接する,とされている。また,主任の場合は,①の「企画,調査,立案等を行」う対象が「所属する組織の組織運営事項」であること,④は「指示により」その長の業務を補佐すること,③,⑤に対応する職責がない点において,専任と異なっている。
しかし他方,参加人の人事管理を見ると,部門,組織の所属員の昇進,異動等の決定,業績評価は,専らライン専門職が行うものとされ,業績評価等の人事関係の情報もライン専門職のみが閲覧できるものとされており,スタッフ専門職は,直接には,人事評価を行ったり,人事情報等に接することができないばかりか,むしろ所属長から人事考課を受ける立場にあったことが認められ,スタッフ専門職の上記職責定義との間に乖離が存する。このことからすると,参加人における主管以下のスタッフ専門職の職責に関する前記の一般的な定義付けから直ちに,これらの職責にある者がすべて,「雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位」又は「使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し,そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接てい触する監督的地位にある労働者」その他使用者の利益を代表する者に該当するということはできない。

(イ) P1ら3名の利益代表者性について
a P1について
(1)イ(ア)に認定したとおり,P1は,専任に昇進した後も,業績評価や昇給に関する説明を受けたり,一般職の業績評価に関してライン専門職に意見を述べたり,従業員の雇用選考に関与したことはない。また,P1は,国際調達購買業務の外注化プロジェクトのリーダーとして,人員・経費削減に関する最終確認案を作成する任にあたり,その過程において,当然対象社員の給与額等一定の人事情報に接することがあったと認められるものの,これは専任という職責にあるP1に限らず主任以下のチーム構成員についても同様と考えられる上,この案の採用・実施についてP1は何らの決定権も有していなかったものと認められる。 以上のような職務内容及び権限に照らすと,P1が労組法2条ただし書1号の利益代表者に該当するということはできない。
b P2について
(1)イ(イ)に認定したとおり,P1は,関連事業推進のスタッフ専門職(階層は主管)として,関連会社等の経営全般にわたる事項の施策の立案,実施に関する職務を遂行していたが,関連会社等に対する直接の指導・援助等はスポンサー・エグゼクティブ部門が担当しており,関連事業推進のスタッフ専門職の基本的な職務は,これを支援するため必要なデータを収集・分析して提供することにあった。この職務を遂行する過程において,P2ら関連事業推進のスタッフ専門職が関連会社等の事業計画,業績,財務状況,人事制度,出向者の給与・職位・業績評価等の情報に接することはあるものの,関連会社等の役員の選出及び決定の権限はスポンサー・エグゼクティブが有しており,また,出向者の目標設定・業績評価・賃金決定などの人事管理は,キャリア・マネジャー及び当該出向者の出向先のライン専門職が行い,出向先での職位の取扱いは,スポンサー・エグゼクティブの権限であって,関連事業推進のスタッフ専門職が,在籍出向者に対し何らかの人事権を有しているとか,監督的地位にあったとは認められない。
以上によれば,関連事業推進のスタッフ専門職であったP2が,雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者に該当するとはいえず,また,在籍出向者の人事情報に接するとはいえ,関連会社等の経営状況等を分析する資料としての限られた範囲におけるものであって,「そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接てい触する監督的地位にある」との評価に該当するようなものとは解されず,「その他使用者の利益を代表する者」にも該当するとは認められない。また,同人がGBSの非常勤監査役に就任していたことはこの判断を左右するものとはいえない。
c P3について
(1)イ(ウ)に認定したとおり,P3の担当していた職務は,ソフトウェア製品の重要障害について緊急対応を行い,社内外から寄せられる製品に関する苦情・要望を分析して改善策,予防策を提案するというものであり,プロジェクト・オフィス・マネージャーとしての職責も,チームのリーダーとして,メンバーの役割分担や行動計画を決定し,メンバー間での協議や会議を通じて行われる障害対応策の検討が円滑に進行するよう管理することにある。チーム編成にあたり,関連する部門の所属長に対しメンバーの選出を依頼し,必要な場合はメンバーの交代を要請することはあっても,最終的な人選の決定権を有するのは要請を受けた部門の所属長であるし,チームの編成により,プロジェクト・オフィス・マネージャーとメンバーとの間に組織上の指揮監督関係が生じるわけではなく,プロジェクト・オフィス・マネージャーが業務報告を通じて各メンバーの所属長にメンバーの仕事ぶりについて意見を述べることはあるものの,職務としてメンバーの業績を報告したり評価するものではない。
以上のような職務内容及び権限に照らすと,P3が労組法2条ただし書1号の利益代表者に該当するということはできない。
(ウ) 以上のとおり,P1ら3名は,いずれも労働組合法2条ただし書1号の利益代表者には該当しない。なお,新人事制度に関し参加人が作成した説明文書では,ライン専門職とスタッフ専門職との間にローテーションが想定されており,現実にも,P2のようにライン専門職からスタッフ専門職へ異動する者も少なからずおり,また,スタッフ専門職からライン専門職への異動する例もあることが認められる(乙224,弁論の全趣旨)が,そうであるからといって,専任以上のスタッフ専門職が当然に上記の利益代表者に該当すると評価することはできないし,また,過去にライン専門職の地位にあったという事実から,現にスタッフ専門職とし
て前記職務を遂行していたP2が利益代表者にあたるということもできない。2 本件条項の効力について
P2ら3名が労組法2条ただし書1号の利益代表者に該当しないことは上記のとおりであるが,これとは別に,前提となる事実のとおり,原告支部と参加人との間においては,本件条項により専任以上のスタッフ専門職を非組合員とするとの合意がされているので,以下,この合意の効力について検討することとする。(1) 認定した事実(後掲証拠のほか,前提となる事実及び弁論の全趣旨により認める。)
ア 中労委和解と本件確認書締結に至る経緯
昭和55年当時,原告支部,同組合員及び全金東京地本と参加人との間には複数の不当労働行為救済命令申立事件が労働委員会に係属していたところ,同年3月4日,被告が係属中の事件について,参加人に対し組合員のスタッフ管理職への昇進を命じる初審命令を発した。原告支部は,これを受けて参加人に対し同命令の履行を申し入れ,同年4月,参加人が,①組合中央執行委員の就業時間中の組合活動の取扱いを労組法の趣旨に沿って速やかに正常化すること,②組合員の範囲および争議行為不参加者の範囲等につき明確な取決めをし,組合においても遵守すること等6項目が確約されれば上記命令の履行を検討する旨回答したことなどから,労使双方は,自主交渉により紛争を解決する方向で一致した。
そして,交渉が進められる中,参加人は,昇進問題解決の受け皿とすることも念頭に置いて昭和56年1月1日付けで新人事制度を導入する一方,原告支部に対しては,組合員の範囲の明確化と中央執行委員の時間内組合活動問題の正常化等が参加人の和解に関する基本的な考え方であることを示した。
同年10月,参加人と原告支部及び組合員との間で中労委に係属中の事件のうち1件について和解が成立し,労使双方は,同時に締結した覚書で,未解決の昇進昇格差別事件6件についても解決に向けて努力することを合意した。 参加人は,その直後の交渉においても,昇進昇格差別の是正は組合が前年4月に申し入れた6項目に応じることが前提であるとし,特に,①中央執行委員の時間内組合活動問題については,1人1か月10時間(三役は15時間)を限度とする持ち時間制とし,不就労時間分の賃金は控除する,②組合員の範囲については,専門職はすべて非組合員と考えているが,今後組合員で主任に昇進する者の組合員資格については組合とその都度協議し,専任以上は非組合員とするとの考えを強調した。また,昭和57年4月の自主交渉においても,参加人は上記2点について同様の見解を示し,原告支部中央執行委員長は,時間内組合活動問題についてはこれを受け入れるような態度を示した。
参加人は,昭和57年6月22日,「和解協定書(案)」と「覚書(案)」を支部に示し,「覚書(案)」の第3項で,組合員の範囲について「イ 組合員が主任×××部員に昇任する場合は原則として組合員資格を失わないものとする。但し,参加人,組合が協議の上,労働組合法第2条第1項に該当するなど非組合員とすることが適当と認めた場合はこの限りではない。」,「ロ 専任×××部員以上は非組合員とする。」と,新たな提案をした。なお,時間内組合活動問題については従前と同じ内容の提案を行った。
これに対し原告支部は,7月2日付けで,時間内組合活動問題については「協議を行い合意に達するよう努力する。」との見解を示した。
参加人は,同年9月10日付け「覚書(案)」で,組合員の範囲については上記6月22日の提案と同一の案を,時間内組合活動問題については先の案に「移行方法等については,参加人,組合で別途協議するものとする。」との項目を追加して,再び提示した。
(甲78の1,2,甲79,乙15の2)
イ 中労委和解と本件確認書
昭和57年11月26日,中労委は,前記6件の再審査事件に関して,労使双方に対し,別紙3の内容による和解を勧告した。
労使双方は,同年12月6日,この勧告を受諾するとともに,中労委和解2項及び3項を具体化するなどした別紙4の内容による「覚書」を交わし,さらに参加人と原告支部は,同日付けで本件確認書を締結した。
(乙1の1ないし3)
ウ 和解条項等の履行状況
(ア) 参加人は,「覚書」のとおり,和解成立から2年7か月後の昭和60年7月までの間に原告支部組合員23名を主任に昇進させ,また,覚書で合意した金額
による「金一封」を組合に支払った。
(イ) 他方,本件確認書で「今後できるだけ速やかに正常化する方向で別途協議する」とされた一般職の中央執行委員の時間内組合活動問題については,和解成立後も協議が開始されない状態が続いていたところ,参加人は,和解成立後1年半を経過した昭和59年6月,原告支部に対し,一部で過度の離席が目立っていることは遺憾であり,新組合年度から時間内組合活動のルールを設定し実施したいので組合の意見を早急に示すよう文書で申し入れたが,原告支部はこれに対し回答しなかった。(乙16,225)
(ウ) 参加人は,昭和60年3月22日,原告支部に対し再び同趣旨の申入れを行ったところ,原告支部は,同年6月5日,「一般職の中央執行委員については,年間300時間(有給)とする。」との対案を示した。これに対し,参加人は,同月20日,原告支部の回答を不満としながらも,見切り発車は本意ではなく段階的実施を考える用意があるとして,1人年間200時間の持ち時間制とするなどの妥協案を示した。これに対しても原告支部は回答せず,その後,この問題の協議は事実上棚上げとなった。(乙17ないし19)
エ 本件確認書の一部解約に至る経緯
(ア) 参加人は,昭和44年から46年にかけての3年間に中途採用を含め約5000名の社員を採用しており(昭和46年末時点における社員数8846名),新人事制度を導入した昭和56年当時には,一般職であったこれらの社員が,近い将来,大量に専門職へ昇進するという状況にあった。
また,参加人は,平成2年ころから,会社の機構をスリム化するとして,ライン専門職の階層を削減し始め,平成4年には末端から社長までの各階層を7ないし6階層から4階層まで減少させたため,ライン専門職のポストが減少し,従前ライン専門職であった社員のうち一定数が専任以上のスタッフ専門職に移行することとなった。
このため,平成3年当時には,専任以上のスタッフ専門職の全社員に占める比率は,昭和56年当時の約1.5倍に増加していた。
このようにライン専門職の数に比較して,専任以上のスタッフ専門職の数が増加したことに伴い,新人事制度が発足した昭和56年当時には,セカンドラインに付くことが多かった専任のスタッフ専門職を,平成3年ころには,ファーストラインに所属させる部門が増加するようになった。
加えて,参加人は,平成3年12月16日,新人事制度「IBMプロフェッショナル専門職制度」(以下「IPC」という。)を導入する旨発表をし,平成4年1月から実施した。このIPCの職位体系は,現行の専門職制度の専任部員以上とされていたため,組合員は,現実には,組合員の地位に留まったままでは,同認定を受けることができなかった。(甲89,176ないし186,証人P8。なお,参加人は,中労委和解当時も,昭和60年,61年当時,及び後述する解約申し入れのあった平成4年年末のいずれの時点においても,全社員に占める管理職者数(職群Ⅰ,Ⅱ及びⅢ)の割合に大きな変化はなく,専門職のうちライン専門職を除く専任以上と主任の比率も約4対6であり変化はないと主張するところ,仮にそうであるとしても,職群Ⅲ以上の専門職においてライン専門職の割合が減少していれば,全社員に対する専任以上のスタッフ専門職の比率は増加することになるから,上記認定と矛盾するものではない。いずれにせよ,参加人がライン専門職やスタッフ専門職の各階層にある者の人数を明らかにして反証しない以上,前記認定の事実を左右するものとしない。)。
(イ) 専任昇進要求
原告支部は,平成3年7月1日までに組合員約150名のうち71名が主任に昇進していたことに加え,上記(ア)のような状況が生じたことから,本件条項が存在したままでは組合員の昇進や労働条件の向上を図ることができないとして,同年7月20日から21日にかけての大会で組合員の専任昇進要求を決議し,10月の年末要求の一つとして参加人との交渉に臨んだ。
これに対し参加人は,同年11月8日付けで,「会社は貴組合との間で1982年12月に締結された和解協定書・・・を遵守しており,今後とも『組合員の範囲』についての考えを変えるつもりはありません。」と文書で回答した。(甲5,6,85,171,172,186,乙234,証人P8)(ウ) 本件条項をめぐる交渉経過
原告支部は,同年12月17日の団体交渉において,労組法上のいわゆる管理監督者でない者を「組合員の範囲」としてしかるべきと思っていると述べ,本件確認
書による合意の存在を主張する参加人に対し,確認書が生きていることは否定しないが,その後の約10年間の経緯をみなければならないし,新しい情勢のもとで実態にあった組合員の範囲を考えなくてはならない,話合いをしたいと述べた。 そして,同月26日の小委員会(労使双方の事務折衝的な話合い場)において,原告支部が本件条項で取り決めた組合員の範囲を見直したいと述べたのに対し,参加人は,見直しは別だ,(原告支部は)専任昇進問題と「組合員の範囲」を混同しているのではないかと答えた。
さらに,平成4年1月22日の団体交渉において,原告支部が組合員の範囲について参加人の考えを質したのに対し,参加人は,従来から話しているとおりであり,協議をすることは吝かではないが,本件条項が存在しており,今後も継続すると考えている旨回答した。
原告支部は,同年3月26日付け申入書により,組合員の範囲について,今日の職場実態からも多くの問題を含み見直しが必要であり,速やかに協議するよう申し入れ,同日の小委員会でも,早急に検討するよう要望したが,参加人は,お互いに協定として結んでいると回答するにとどまった。
同年4月21日,参加人は,上記原告支部からの申入書に対し,組合員の範囲の改訂についての申入れについては協議を拒む考えはないが,本件確認書の話合いにおいては一般職である中央執行委員の時間内組合活動問題についても当然協議の対象となると文書回答した。
同年5月15日の団体交渉において,原告支部が組合員の範囲を改訂して不都合があるのか,また,専任以上の者が組合員となることがなぜ不都合なのかと問い質したところ,参加人は,別途協議したいとしつつ,専任以上は本件確認書により組合員資格がないと考えている,確認書の見直しは不都合があり,これの廃止は考えていないと回答した。
(甲56,57,173,乙30,79)
(エ) 本件一部解約の通告とその後の経過
原告支部は,上記団体交渉の経過から,参加人が本件条項の見直しには容易に応じる考えがないと判断し,実質的な協議を進める意図をもって,同年5月27日,参加人に対し,①組合員の範囲を主任に限定するのは多数の労働者の団結権を保障するためには不十分になっていることを事実に即して説明済みである,②そもそも,組合員の範囲は労働組合法の定める範囲で労働組合が自主的に決めるべきものである,③この件について引き続き協議を続けることを申し入れると同時に,本件条項について解約の予告をする,と文書で通知した(本件一部解約予告)。 原告支部は,同日の団体交渉において,上記文書について,実質協議もないのに時間だけが過ぎるのはまずいので,協議が整わなければ本件確認書の一部を解約する趣旨であると説明した。これに対し参加人は,従前の立場を維持しつつ,本件確認書の履行という意味では原告支部が時間内組合活動問題を履行するのが先決だと反論した。原告支部は,時間内組合活動問題と組合員の範囲問題とは内容は違うが,同じ場所で協議してもよい,この場で期日を決めてもよいと述べたが,参加人は,もう少し内容を検討したいと答えるにとどまった。
そして,参加人は,同年6月25日付け文書で,①本件確認書は,中労委の勧告を受け,双方が協議を尽くした上で,和解協定書及び覚書と不可分一体のものとして成立したものである,②原告支部がこの経緯を無視し,確認書中の一部分だけを取り出して解約云々することは,中労委勧告による労使正常化の基本を根底から崩すものであり,強く原告支部の反省を求める,②参加人は,上記経緯により成立した確認書の一方的な部分解約は到底認められるものでなく,解約予告の効力を持たないと考える,との見解を表明し,同日開催された小委員会においても,同様の見解を述べつつ,参加人が中労委和解及び覚書を履行しているのに,原告支部は時間内組合活動問題の履行をしていないと非難し,原告支部は,中労委和解から10年が経過し状況が変っていると反論した。
その後,同年8月21日に小委員会が開かれたが,従前と同様の応酬があり,参加人は「解約予告」の撤回を求めたが,原告支部はその意思がないことを表明した。その際,原告支部は,時間内組合活動問題について協議する意思はあるが,組合員の範囲の問題とリンクさせるか否かは決めていないと述べた。 原告支部は,同年9月14日付け申入書により,「8月25日を以て予告の日数が経過し,解約は効力を発したものと確認する。」と通告し(本件一部解約通告),組合員の範囲の問題について具体的な協議に入ることを申し入れるとともに,時間内組合活動問題について,上記協議の進捗状況を見ながら協議する用意が
あると表明した。これに対し,参加人は,同月24日付け文書により,従前同様,①本件確認書が締結した経緯に照らし,本件条項のみをことさら取り上げ,一方的に解約することは許されない,②協議を行う前提として,原告支部が前記5月27日付け解約予告及び上記9月14日付けの解約効力発効通知を取り消されたい,③これが受諾されない以上,中央執行委員の就業時間中の組合活動について従前の取扱いを再検討せざるをえない,と通知した。
原告支部は,平成5年1月30日の団体交渉で組合が解約予告を撤回しない限り,参加人は組合員の範囲の具体的線引きの話には入らないということかと確認し,参加人は,そういう形になる,この件は別にやりたいと回答した。そして,この日を最後に,平成7年4月に本件申立人P1が原告支部に加入しチェックオフ申請の不受理が問題となるまでの間,何らの話合いもなされなかった。(甲7,58,59,乙31,79,222,225)
オ P1らの原告支部加入と本件各行為
(ア) 参加人は,平成4年から平成7年にかけ4次にわたって,「セカンドキャリア支援プログラム」という高齢従業員の早期退職勧奨制度を実施した。この制度の対象者は,当初は50歳以上であったが,平成6年からは新たに47歳以上に拡大された。この制度により,4年間で約4700人の従業員が,退職又は関連会社等へ転籍した。(甲84,90,92,93,100,101,186,乙222,証人P8)
(イ) P1は,上司のP25が,平成7年3月2日の国際調達部門全体会議の席上,P1を担当業務から外すと発表し,その後も元の業務に復帰させなかったことを契機として,同年4月3日,原告支部に加入した。
同年7月,P1が原告支部藤沢分会の執行委員に就任したことに伴い,同分会が藤沢事業所長宛に役員名簿を提出したところ,同所長は,文書でP1の執行委員就任撤回と名簿訂正を求め,役員名簿の受領を拒否した。また,P1の上司はP1に対し,今後組合活動を行った場合は私的な職務外行為とみなす旨強く注意し,藤沢事業所長は分会に対し同旨の通告をした。そして,参加人側は,P1に組合員資格がないことを理由に一貫して同様の態度を取り続け,前提となる事実(5)アのとおり,平成8年7月,P1が再度藤沢分会の執行委員に就任した際も,藤沢事業所長名で分会に対し,前年同様,文書によりP1の執行委員就任撤回と名簿の訂正を求めた(本件行為②)。
(甲23,24,26,28,29,34,36,37,39,47,48,乙39,40,228)
(ウ) P2は,参加人が第3次セカンドキャリア支援プログラムを実施していた平成6年10月ころ,上司から退職勧奨を受け,これを拒否したところ不本意な配置転換を示唆されたことがあり,第4次セカンドキャリア支援プログラムの実施期間中であった平成7年10月,上司のP5から,部門で人員削減が行われる場合その対象となる可能性がある旨告げられた上,異動先候補会社を紹介され,退職予定日が具体的に設定された「退職金・加算金概算書」の交付も受けた。しかしP2が最終的に転籍を断ったところ,P5から業績を改善しないと職群Ⅱから職群Ⅲへの降格もあり得る旨を告げられたことから,これを契機に平成8年1月18日,原告支部に加入した。(甲120の1ないし3,甲121の1,2,甲143,乙230)
原告支部加入直後,P2がGBSの社長宛に辞任届を同封した書簡を提出したところ,P5から文書による警告を受けたことは,前提となる事実(5)イのとおりである(本件行為③)。
(エ) P3は,直属の上司であるP9から,平成7年10月26日セカンドキャリア支援プログラムの話を持ち出され,さらに同年12月14日退職金・加算金概算書を渡されて退職を勧められたこと,また同年の業績評価が不本意なものであったことなどを契機に,平成8年2月1日,原告支部に加入した。(甲159,乙232)
その直後の同年2月16日,P3が上司のP6からストライキ参加について警告されたことは,前提となる事実(5)ウのとおりである(本件行為③)。(オ) また,原告支部が参加人に対しP1ら3名のチェックオフ申請書を提出したが,参加人がこれを拒否したことは,前提となる事実(6)のとおりであり(本件行為①),参加人は,原告支部からの再三の申請や抗議に対し一貫して,チェックオフ申請は本件確認書に基づいて取扱いを定めるべきでP1ら3名はいずれも組合員ではないとして,態度を変えなかった。(甲23,24,37ないし40,4
2,44,49,130,乙230,232)
(2) 判断
ア 本件条項の性質
本件確認書(別紙5)は,使用者である参加人と労働組合である原告支部との間でなされた労働条件その他に関する合意であって,書面に作成され,両当事者が署名または記名捺印したものであるから,労組法14条の労働協約であると認められる。また,その有効期限については特に定められていない。
そして,本件条項は,「ライン専門職および専任×××部員以上のスタッフ専門職は非組合員とする。」との文理及び1項全体の内容等からすると,単に労働協約の適用を受けるべき人的範囲を画したものではなく,非組合員の範囲そのものについて合意するものと認められる。
ところで,どのような労働者を組合員とするかは,本来労働組合が自主的に決定すべき事項であるから,労組法2条ただし書1号の利益代表者に該当しない労働者について,使用者と労働組合が労働協約により非組合員と定めたとしても,それは組合の自治の問題として当然に許容され,そのような労働協約が締結された以上は,労使双方の合意として効力を有する。ただし,組合員の範囲をどのような労働者とするかは,本来労働組合の自主的判断によるべき事項であって,これを限定することについて使用者に固有の利益があると認められるべきではないから,組合員の範囲を限定する労働協約の効力も,そのような見地から理解すべきである。イ 本件一部解約の効力
(ア) 使用者と組合との間で,いったん労働協約が締結された場合であっても,労働協約の解約の要件(労組法15条3項前段,4項)を満たす場合には,一方当事者において,これを有効に解約をすることができる。
ところで,本件確認書の1項は組合員の範囲に関するもの,2項,及び3項は組合員の就業時間中の組合活動に関するもの,4項は組合員の昇進問題の解決方法に関するものであり,一つの労働協約において複数の事項が協定されている。このような場合,各合意事項は相互に関連を有し,労働協約全体が一体をなすものとして成立するのが通例であるから,一方当事者が自己に不利な一部の条項のみを取り出して解約することは原則として許されないと解すべきであるが,ただ,その条項が労働協約の中で独立性を有する一部であって,契約締結後の予期せぬ事情変更によりその条項を維持することができなくなり,又はこれを維持させることが客観的に著しく妥当性を欠き,その合意解約のための十分な交渉を経たが相手方の同意が得られず,しかも協約全体の解約よりも労使関係上穏当な手段であるというような場合には,例外的に協約の一部の解約が許されるものとするのが相当である。(イ) これを本件について見ると,次のとおりである。
本件確認書は,全体としては,新人事制度下において中労委和解成立以降の労使関係の安定化を図るために,協議の結果合意に至った事項を確認するものであるところ,1項イと2項は,スタッフ専門職である主任に組合員資格があることを確認した上で,その就業時間内組合活動について一定の枠組みを定めるものであるから,相互に関連性を有するものである。そして,ライン専門職および専任以上のスタッフ専門職を非組合員とする1項ロの条項(本件条項)は,組合員の範囲を画するという点では同項イと関連性を有するものの,その部分のみの効力が失われ,協定が存在しない状態となっても,1項イ及び2項の効力に直接影響を及ぼすものではないから,独立性を有する条項と認めることができる。また,3項及び4項は,本件条項と直接関連するものではない。
そして,本件確認書が締結された後約10年を経る間,参加人が導入した組織機構再編成によりライン専門職のポストが減少し,その反面として,一律にそのすべてが労組法2条ただし書1号の利益代表者に該当するとは認められない専任以上のスタッフ専門職の比率が大きく増加しており,これは同時に,ファーストラインに所属する専任の増加,ひいてはその現実の職責において主任と大差のない専任の増加を容易に推認させるものである。そのような状況下においては,組合員資格を一般職及びスタッフ専門職のうちの主任のみにとどめることの妥当性,合理性は一層低下している。また,原告支部においては,この間,組合員の半数近くが主任に昇進しており,本件条項を前提とすると,これらの者が専任に昇進すると組合員資格を失うこととなる。これを原告支部の側から見れば,組合員が原告支部にとどまる限り,専任及びこれと対応関係にある職群Ⅲへの昇進ないし昇格は断念せざるを得ず,当然これに伴う労働条件の向上も果たせないこととなって,労働組合としての組織維持に影響を及ぼしかねない事態といえる。無論,このような事態は,本件確
認書締結の時点で,原告支部としてもある程度予測可能であり,組織維持は一般職からの加入により果たすべきものともいえ,いわゆる事情変更とは異なる側面を有する。しかし,先に述べたとおり,組合員の範囲をどのように定めるかという問題は,本来労働組合が自主的に定めるべきものであって,これを限定することにつき使用者側に固有の利益は認められないこと,加えて,本件条項を含む本件確認書の協定により,労使関係の安定という労使双方の意図は約10年にわたって一応実現されたと考えられること,以上を勘案すれば,本件確認書締結後,約10年を経過してもなお,原告支部が本件条項に拘束されるとするのは,労組法の趣旨に反し,著しく妥当性を欠く。
さらに,本件一部解約に至る経緯をみると,(1)エに認定したとおり,原告支部が平成3年7月以降本件条項の見直しを求めて参加人に協議を申し入れたのに対し,参加人は,表現に多少の違いはあるにせよ,一貫して見直しはあり得ないとの態度を取っており,本件一部解約の前後を通じて,実質的な協議に応じていないこと,原告支部は,そのような状況下のままいたずらに時間が経過するという事態を打開するため,やむなく本件一部解約の予告に至ったことが認められる。なるほど,本件確認書3項の一般職組合員の時間内組合活動の正常化問題に対する原告支部の対応は,必ずしも誠実であったとはいえないが,前記認定の経過をみると,原告支部としても並行してこの問題を協議することを拒否していたわけではなく,本件条項に関する協議が進まなかった理由は,主として参加人側の強硬な態度にあったと認められるから,この点は上記の判断を左右するものとはいえない。 また,労使関係に与える影響を考えれば,本件条項のみを白紙に戻す一部解約が協約全体の解約より穏当な手段といえる(なお,本件確認書は,その成立の経緯からすると中労委和解や「覚書」と密接に関連するものといえるが,その点を考慮しても上記判断は左右されない。)。
(ウ) そして,これまで認定した事実関係に基づいて勘案すれば,参加人が中労委和解及び覚書の合意事項を全て履行したことを考慮しても,なお,本件一部解約が信義に反し,あるいは権利の濫用にあたるということはできず,本件条項は,有効に解約されたというべきである。
3 参加人の不当労働行為意思について
労組法7条3号にいう支配介入の不当労働行為が成立するためには,使用者側に主観的要件すなわち不当労働行為意思が存することを要するというべきであるが,この不当労働行為意思とは,直接に組合弱体化ないし具体的反組合的行為に向けられた積極的意図であることを要せず,その行為が客観的に組合弱体化ないし反組合的な結果を生じ,又は生じるおそれがあることの認識,認容があれば足りると解すべきである。
これを本件について見るに,本件各行為は,専任以上のスタッフ専門職であるP1ら3名が原告支部に加入し組合活動を行うことを認めず,これを妨げる行為そのものであって,それが客観的に反組合的な行為であることは明白であり,各行為者が,P1ら3名が原告支部に加入し,組合活動を行うことを妨げる意図をもって本件各行為に及んだことも明白というべきである(本件においては,これら各行為が,本件条項の一部解約は認めないという参加人の方針を体現するものとして行われたことも明らかである。)。そして,本件一部解約通告以降,参加人と原告支部との間で,本件条項の有効性をめぐって見解が対立し,本件条項は解約により効力を失ったとする原告支部が,これを否定する参加人に対し,再三不当労働行為の成立を警告していた状況も認められるのであり(甲14,27等),にもかかわらず,参加人が本件条項は有効に存続するとの見解を堅持し,あえて本件各行為に及んだ以上は,反組合的な結果発生のおそれに対する認識,認容があったものとして,不当労働行為意思を肯定すべきである。
本件各行為が,本件条項の存在によりP1ら3名が組合員資格を有しないという認識に基づいてなされたとの理由により,不当労働行為の成立を否定する被告及び参加人の主張は採用できない。
4 結論
以上のとおり,本件各行為は労組法7条3号の不当労働行為に該当すると認められるのであり,これを否定して原告らの申立てを棄却した本件命令は違法であるから,これを取り消すこととし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部
裁判長裁判官 三代川三千代
裁判官 龍見昇

裁判官 鈴木昭洋
(別紙1)
命令書
東京都北区<以下略>
申立人 全日本金属情報機器労働組合
執行委員長 P10
東京都北区<以下略>
申立人 全日本金属情報機器労働組合東京地方本部
執行委員長 P11
東京都港区<以下略>
申立人 全日本金属情報機器労働組合・日本アイビーエム支部
執行委員長 P12
東京都町田市<以下略>
申立人 P1
東京都大田区<以下略>
申立人 P3
東京都北区<以下略>
申立人 P2
東京都港区<以下略>
被申立人 日本アイ・ビー・エム株式会社
代表取締役 P13
上記当事者間の都労委平成8年不第69号事件について、当委員会は、平成13年3月27日第1294回公益委員会議において、会長公益委員P14、公益委員P15、同P16、同P17、同P18、同P19、同P20、同P21、同P22、同P23、同P24の合議により、次のとおり命令する。
主 文
本件申立てを棄却する。
理 由
第1 請求する救済の内容
1 被申立人会社は、申立人全日本金属情報機器労働組合・日本アイビーエム支部のなした申立人P1、同P3及び同P2らのチェックオフ申請を拒否してはならない。
2 被申立人会社は、申立人P1が申立人支部藤沢分会の分会執行委員に就任したことにつき、P4藤沢事業所長が執行委員への就任の撤回と役員名簿の訂正を求めた平成8年7月18日付の文書を撤回しなければならない。
3 被申立人会社は、申立人P2に対して、平成8年1月30日付のP5関連事業推進担当作成の「上級管理者としての職務と責任に反するような活動を行った場合は相応の処分を行う」と記載した文書による通告、同年2月16日にP6システム品質管理担当が申立人P3に口頭でなした「デモを行うと処分の対象になりうる」との通告を撤回しなければならない。
4 誓約文の掲示
第2 認定した事実
1 当事者等
(1) 被申立人日本アイ・ビー・エム株式会社(以下「会社」又は「アイ・ビー・エム」という。)は、IBMワールド・トレード・コーポレーションの子会社であり、情報処理システム・機器の開発、製造、輸出入、販売、賃貸及びこれらに関する保守サービスなどの事業を営んでおり、本件申立て当時の従業員数は約20,580人である。
(2) 申立人全日本金属情報機器労働組合は、金属情報産業に働く労働者により組織された労働組合であり、本件申立て当時の組合員数は約15,000名である。
(3) 申立人全日本金属情報機器労働組合東京地方本部は、全日本金属情報機器労働組合の下部組織であり、本件申立て当時の組合員数は約7,000名である。(4) 申立人全日本金属情報機器労働組合・日本アイビーエム支部(以下「支部」といい、上記(2)(3)の申立人と合わせて「組合」ともいう。)は、上記(3)申立人東京地方本部の下部組織であり、会社で働く全日本金属情報機器労働組合の組合員により組織された労働組合であり、本件申立て当時の組合員数は約150名である。

なお、後記2のとおり、従前、支部は総評全国金属労働組合に所属し、その下部組織である同東京地方本部(以下「全金東京地本」という。)のもとに、同日本アイ・ビー・エム支部(以下「全金支部」という。)を組織していた。そして、平成元年、労働戦線再編の過程で、支部は申立人組合(上記(2))に加入し、その名称を上記に改めた。
(5) 申立人P1、同P2、同P3は、会社の従業員で、部下を持たない「スタッフ専門職」である。3名は平成7年から8年にかけて、それぞれ後記の経緯で組合に加入した。(なお、会社の人事制度については後記5、3名の具体的職務内容については6参照。)
① P1は、昭和39年に入社し、本件申立て当時は、「製造 購買―国際調達 第二購買」に所属する「専任購買担当部員」(職群Ⅲ)であった。② P2は、昭和39年に入社し、ライン専門職等を歴任した後、平成3年2月以降は11年12月に定年退職するまで一貫してスタッフ専門職であり、本件申立て当時は「関連事業 関連事業推進 関連事業プログラム担当」(職群Ⅱ、職位は主管)であった。
③ P3は、昭和44年に入社し、本件申立て当時は「システム品質センター」に所属する「専任テクニカルサポート担当部員」(職群Ⅲ)であった。 なお、P1及びP3は、ライン専門職の経験はない。
2 中労委和解と「確認書」の締結
(1) 本件に先立つ昭和55年当時、中央労働委員会(以下「中労委」という。)には、会社と全金支部及び支部組合員並びに全金東京地本とを当事者とする再審査申立事件が6件係属していた(54年不再第4号・第5号、55年不再第27号・第28号、56年不再第18号・第19号)。これら6件はいずれも、組合員に対する昇進昇格差別の是正を求めた申立てについて、初審の神奈川県地方労働委員会、当委員会及び愛知県地方労働委員会(以下「愛知地労委」という。)が発した一部救済命令に対し、労使双方が再審査を申し立てたものである。 また、これら昇進昇格差別事件の他にも、中労委に2件(51年不再第33号、51年不再第46号)、愛知地労委に1件(愛労委50年不第18号)の事件が係属していた。
(2) 55年3月3日、組合員のスタッフ管理職への昇進を命じた当委員会初審命令が交付されたことを受け、全金支部は同月4日、同命令の履行を会社に申し入れた。これに対し会社は、4月7日、①「同命令でも問題となった『貴組合中央執行委員の就業時間中の組合活動の取扱』を労組法の趣旨に沿って速やかに正常化すること。」、②また、「会社と組合との間において、組合員の範囲および争議行為不参加者の範囲等につき明確な取決めをし、組合においても遵守すること。」(以下省略)など6項目を挙げ、これらについて全金支部からの書面による確約があれば意向に沿うべく検討する用意があると文書回答した。
なお、会社は、②を挙げた理由として、組合員が昇進した場合の組合員資格についての会社と全金支部の見解の不一致が、管理者への昇進を巡る事件が拡大したと認識しているためであるとしている。
(3) 同年6月20日の小委員会(団体交渉にはなじまない議題等を労使双方が少人数で話し合うための事務折衝的な話合いの場であり、支部は「小団交」と呼んでいる。)において、会社は、組合員の範囲の問題を指摘し、全金支部中央執行委員長も、組合員の範囲の線引きをすることが必要であるとの認識を示した。 この日、労使双方は、自主交渉で解決する方向で一致し、7月3日、中労委にその旨を報告した。
(4) 56年1月1日、会社は「新人事制度」を導入し、スタッフ専門職を「主任」、「専任」など5階層の職位に細分化した。2月の小委員会において、会社は全金支部に対し、「新人事制度」で昇進問題解決の受け皿を作ったと説明した。(5) 3月11日、会社は、全金支部に対し、組合員の範囲の明確化と中央執行委員の時間内組合活動問題の正常化の2点が解決の前提条件であるとの考えを改めて文書で示した。また、同文書では「専門職(主任○○部員)は、文書、会議等を通じて、人事管理上の機密に接する機会があり、また、所属長の指示によりその代行業務を行う必要があります。」とされている。
(6) 55年1月・2月には51年不再第46号及び愛労委50年不第18号事件が、56年10月6日には51年不再第33号事件が和解で解決し、この時点で未解決の事件は昇進昇格差別に関する6件のみとなった。51年不再第33号事件の和解に際し、労使双方は、6件の昇進昇格差別事件の解決に向けて努力する、な
どの覚書を交わした。
(7) 会社は、56年11月12日付文書でも、昇進昇格差別の是正は組合が前年4月7日付文書の第1項ないし第6項を満たすことが前提であるとし、特に、①中央執行委員の時間内組合活動問題については、一人1か月10時間(三役は15時間)を限度とする持ち時間制とし、不就労時間分の賃金は控除する、②組合員の範囲については、専門職はすべて非組合員と考えているが、今後組合員で主任に昇進する者の組合員資格については組合とその都度協議し、専任以上は非組合員とするとの考えを強調した。
また、翌57年4月14日の自主交渉においても、会社は上記2点について同様の見解を示し、これに対し全金支部中央執行委員長は、時間内組合活動問題については「まあ良い」と表明した。
(8) 会社は、57年6月22日、改めて「和解協定書(案)」と「覚書(案)」を支部に示し、「覚書(案)」の第3項で、組合員の範囲について「イ 組合員が主任×××部員に昇任する場合は原則として組合員資格を失わないものとする。但し、会社、組合が協議の上、労働組合法第2条第1項に該当するなど非組合員とすることが適当と認めた場合はこの限りではない。」、「ロ 専任×××部員以上は非組合員とする。」と、新たな提案をした。
なお、時間内組合活動問題については前回までと同じ内容の提案を行った。 これに対し全金支部は、7月2日付で、時間内組合活動問題については「協議を行い合意に達するよう努力する。」との見解を示したものの、組合員の範囲については何らの案も示さなかった。
会社はさらに、9月10日付「覚書(案)」で、組合員の範囲については上記6月22日付書面と同一の案を、時間内組合活動問題については同書面の案に「移行方法等については、会社、組合で別途協議するものとする。」との項目を追加して、再び提示した。
(9) 11月26日、中労委は、前記6件の再審査事件に関して、労使双方に対し、「1 (会社と組合とは)今後とも正常な労使関係の維持に努力するものとする。」、「2 会社は、本件和解成立後一定期間内に、組合員38名のうち一定の人員について、専門職への昇進等の措置をとるものとする。」等の和解勧告を行った。
労使双方は、この勧告を12月6日に受諾するとともに、ア 申立人組合員38名中23名を60年7月1日までに主任に昇進させる、イ 組合員の範囲及び中央執行委員の就業時間中の組合活動に関する取扱い等については、会社、全金支部で別途協議するものとする、等4項目から成る「覚書」を交わし、さらに会社と全金支部は下記の「確認書」を締結した。
確認書
1 組合員の範囲は次のとおりとする。
イ 組合員が主任×××部員に昇任する場合は、原則として、組合員資格を失わないものとする。但し、会社、組合が協議の上、労働組合法第2条第1項に該当するなど非組合員とすることが適当と認めた場合はこの限りでない。
ロ ライン専門職および専任×××部員以上のスタッフ専門職は非組合員とする。2 組合員である主任×××部員が中央執行委員として就業時間中組合活動をする場合の取扱い等は次のとおりとする。
イ 団体交渉、事務折衝等は、従来同様、届出制により会社はその活動について賃金の控除を行わない。
ロ その他の中執離席は1人年間140時間(三役については200時間)を限度とする“持ち時間制”とし、この範囲内で届出による離席を認めることとする。但しその不就労時間に相当する時間割賃金は月給および賞与から控除するものとする。
(ハ~ヘ・・・ 省略)
3 一般職の組合員が中央執行委員として就業時間中組合活動する場合の取扱いについては、今後できるだけ速やかに正常化する方向で別途協議するものとする。4 (省略)
3 和解条項等の履行状況
(1) 会社は、「覚書」のとおり、和解成立から2年7か月後の昭和60年7月までの間に全金支部組合員23名を主任に昇進させた。
(2) 一方、「確認書」で「今後できるだけ速やかに正常化する方向で別途協議する」とされた一般職の中央執行委員の時間内組合活動問題については、和解成立
後も協議が開始されない状態が続いていた。
(3) 和解成立後1年半を経過した59年6月、会社は全金支部に対し、一部で過度の離席が目立っていることは遺憾であり、新組合年度から時間内組合活動のルールを設定し実施したいので組合の意見を早急に聞かせるよう文書で申し入れた。しかし、全金支部からの回答はなかった。
(4) 60年3月、会社が全金支部に対し再び同趣旨の申入れを行ったところ、同支部は6月、「一般職の中央執行委員については、年間300時間(有給)とする。」との対案を示した。会社は、全金支部の回答を不満としながらも、見切り発車は本意ではなく段階的実施を考える用意があるとして、1人年間200時間の持ち時間制とするなどの妥協案を示した。これに対しても全金支部は回答せず、その後、この問題の協議は事実上棚上げとなった。
4 「確認書」の一部解約に至る経緯
(1) 平成3年7月1日までに、支部組合員約150名中71名が主任に昇進しており、支部は、組合員が主任止まりでは賃金が頭打ちになり不都合であると認識するようになった。支部は、同月20日から21日にかけての大会で組合員の専任昇進要求を決議し、10月の年末要求の一つとして会社との交渉に臨んだ。 これに対し会社は、11月8日付で、「会社は貴組合との間で1982年12月に締結された和解協定書・・・を遵守しており、今後とも『組合員の範囲』についての考えを変えるつもりはありません。」と文書回答した。
(2) 12月17日の団体交渉で支部は、いわゆる労働組合法でいう管理監督者でない者を「組合員の範囲」としてしかるべきと思っていると述べた。これに対し会社は、確認書があることを否定するのか、法律以前に確認書が大事ではないかと応答し、支部は、確認書が生きていることは否定しないが、その後の約10年間の経緯をみなければならないし、新しい情勢のもとで実態にあった組合員の範囲を考えなくてはならない、話合いをしたいと述べた。
(3) 同月26日の小委員会では、支部は、「確認書第1項ロ」で取り決めた組合員の範囲を見直したいと述べ、会社は、見直しは別だ、(支部は)専任昇進問題と「組合員の範囲」を混同しているのではないかと答えた。
(4) 4年1月22日の団体交渉で支部は、会社が組合員の範囲をどう考えているのかと質問し、会社は、従来から話しているとおりであり、協議をすることは吝かではないが、「確認書第1項ロ」が存在しており、今後も継続すると考えていると回答した。
(5) 3月26日、支部は「申入書」で組合員の範囲について、今日の職場実態からも多くの問題を含み見直しが必要であり、速やかに協議するよう申し入れ、同日の小委員会でも、早急に検討するよう要望したが、会社は、お互いに協定として結んでいると回答するにとどまった。4月21日、会社は、同「申入書」に対し、組合員の範囲の改訂についての申入れについては協議を拒む考えはないが、「確認書」の話合いにおいては一般職である中央執行委員の時間内組合活動問題についても当然協議の対象となると文書回答した。
(6) 5月15日の団体交渉で支部が、組合員の範囲を改訂して不都合があるのか、また、専任以上の者が組合員となることがなぜ不都合なのかと問い質したところ、会社は、「別途協議したい。」と回答するにとどまり、その具体的理由を示すことはなかった。
(7) 5月27日、支部は、会社に対し、ア 組合員の範囲を主任に限定するのは多数の労働者の団結権を保障するためには不十分になっていることを事実に即して説明済みである、イ そもそも、組合員の範囲は労働組合法の定める範囲で労働組合が自主的に決めるべきものである、ウ この件について引き続き協議を続けることを申し入れると同時に、確認書第1項のロについて解約の予告をすると文書で通知した。
また、同日の団体交渉でも支部は、実質協議もないのに時間だけが過ぎるのはまずいから協議が整わなければ「確認書」の一部を解約すると述べた。これに対し会社は、時間内組合活動問題を支部が履行するのが先だと反論した。 支部は、時間内組合活動問題と組合員の範囲問題とは内容は違うが、同じ場所で協議してもよい、この場で期日を決めてもよいと述べたが、会社は、もう少し内容を検討したいと応えるにとどまった。
(8) 会社は、6月25日付文書で、「本確認書は、中労委の勧告を受け、双方が誠心誠意協議を尽くした上で、・・・『和解協定書』および『覚書』と不可分一体のものとして成立したものです。」、「貴組合が、この経緯を無視して、同確認
書中の一部分だけをことさらに取り出して解約を云々されることは、中労委の勧告による労使正常化の基本を根底から崩すもので、・・・強く貴組合の反省を求めるものであります。」、「会社は、上記のような経緯により成立した確認書の一方的な部分解約は到底認められるはずもなく、もとより解約予告の効力を持たないものと考えています。」との見解を表明した。
同日開催された小委員会において、支部が範囲見直しの必要性を再度述べたのに対し、会社は、時間内組合活動問題についても協議すべきであると強く指摘した。(9) 8月21日の小委員会でも会社は、時間内組合活動問題の取扱いこそ未解決の問題であると指摘し、「解約予告」の撤回が話合いの前提であると主張したが、支部は、解約予告は撤回しないと表明した。
(10) 支部は、9月14日の小委員会において、「8月25日を以て予告の日数が経過し、解約は効力を発したものと確認する。」と通告し、併せて「当件について具体的な協議に入ること」を申し入れた。
一方、時間内組合活動問題について支部は、「当件協議の進捗状況を見ながら、協議する用意がある。」と表明したが、会社側に具体的な提案をすることはなかった。
(11) 5年1月30日の団体交渉で支部は、組合が解約予告を撤回しない限り、会社は組合員の範囲の具体的線引きの話には入らないということかと確認し、会社は、そういう形になる、この件は別にやりたいと回答した。この日を最後に、この件についての協議も実質的に棚上げとなり、7年4月に本件申立人P1が支部に加入しチェックオフ申請の不受理が問題となるまでの間、何らの話合いもなされなかった。
5 会社の人事制度の概要
(1) 専門職と一般職
会社の従業員は、「職位」(「主任」、「専任」など職務の名称)と「職群」(職務の重要度、困難度に基づいてⅠからⅦまで7段階に分類したもの)による分類がされている。なお、会社は、9年3月1日から、各国アイ・ビー・エム共通の新職務体系を導入し、それまで使用してきた「職群」に代えて、「BAND(10から2)」を使用することとした。そして、従業員はその職位により専門職と一般職に区分され、専門職にはさらに部下を有するライン専門職(職群ⅠないしⅢ、職位専任以上、BAND10ないし8)と部下を有しないスタッフ専門職(職群ⅠないしⅣ、職位主任以上、BAND10ないし7)の区別がある。
BANDと職位・職群の対応関係は次表のとおりであり、本件申立人のP1ら3名は表記載の職位にある。
――――――――――――――――――――――
|BAND|職群|/| 職位階層 |
――――――――――――――――――――――――|
|専|10 |Ⅰ |ラ|主席 |ス|
|門|―――――――|イ|―――――――――|タ|
|職| 9 |Ⅱ |ン|主管(P2) |ッ|
| |―――――――|専|―――――――――|フ|
| | 8 |Ⅲ |門|副主管 |専|
| | | |職|―――――――――|門|
| | | | |専任(P1・P3)|職|
| |―――――――|―――――――――――| |
| | 7 |Ⅳ | 主任 | |
|―|―――――――――――――――――――――|
|一|5、6 |Ⅴ | 副主任 |
|般|―――――――――――――――――――――|
|職|4 | | 先任(上級) |
| |――――|Ⅵ |―――――――――――――|
| |3 | | 一級 |
| |―――――――――――――――――――――|
| |2 |Ⅶ | 二級 |
――――――――――――――――――――――――
(2) ライン専門職とスタッフ専門職

会社の「人事管理マニュアル」によれば、ライン専門職とスタッフ専門職は、以下のとおりその職務が分類されている。
① ライン専門職は、「○○担当部員」や「○○課長」など組織の長として、所属する組織の管理運営事項全般を掌握し責任を持つ専門職であり、統括する組織の階層により、最下層の組織を統括する者をファーストライン、その一階層上位の組織を統括する者をセカンドラインと称している。
② スタッフ専門職には、ライン専門職に対する助言、提案等を行い、所属長を補佐する「○○部員」、会社又は複数の部門にまたがる特定のプログラム等を管理運営する責任を持つ専門職としての「プログラム担当」及び活動期間が特定され、課題解決のための組織の長として管理運営事項全般を掌握し、責任を持つ専門職としての「プロジェクト担当」がある。
(3) スタッフ専門職である専任と主任の職責の相違点
会社が昭和56年に全従業員に配布した「新人事制度の内容」によれば、スタッフ専門職である専任及び主任の基本的職責については、以下のとおり記載されている。
① 専任の職責と権限は、セカンドライン及びファーストライン・レベルの管理運営事項のうち高度な専門領域の業務を遂行し、所属長を全般的ないしは一部補佐するとし、助言や提言の対象はセカンドライン及びファーストラインの長とされている。
② 主任の職責と権限は、ファーストライン・レベルの組織運営事項のうち高度な専門領域の業務を遂行し、所属長をその指示により補佐するとし、助言や提言の対象はファーストラインの長とされている。
なお、同時期に管理者を対象として作成された「Q&A(管理者用)」では、専任以上は「人事関係についての方針と計画に関する機密事項に接する。」と記されている。
(4) 会社の人事管理・業績評価の制度
① 会社は、人事管理を各ライン専門職によって行うこととし、「人事配置」、「育成」、「会社財産の保全と機密保持」など10項目の人事管理に関する責任を同職に負わせている。
人事部門は、ライン専門職を援助するために「人事方針・制度・施策の策定と発表・指示」等の役割を担当すると同時に、ライン専門職の指導・助言、労使関係の調整、採用、人事情報の提供などを行っている。
② 業績評価の結果など人事関係の情報は、オンラインシステム上ではライン専門職のユーザーIDが必要となり、書面で送付するときも色の異なる封筒を使用し、「パーソナル」と指定されているため、名宛人以外の者は開封が許されないことになっている。
③ 会社は、従業員の業績評価にあたって、PBCと呼ばれる目標管理制度をとっており、ライン専門職は、人事部から配布される「PBC業績評価ガイド」に従って業績評価を行う。このガイドは、業績評価のスケジュール、評価分布、評価の方法、評価実施の留意点などを示したものであり、ライン専門職以外への回覧は禁じられている。また、業績評価の個人別記録であるPBCレコードフォームには、「当該社員及び所属のライン(専門職)以外の者にみだりにみせないこと。」と印刷されており、所属長が保管している。
ライン専門職が所属部門の一般職の業績評価を行うにあたって、スタッフ専門職に文書を提出させたり、会議に参加させるなどして意見を聞くことはない。④ 従業員の賃金は、業績評価に基づき決定されている。その決定に際してライン専門職は、人事部からのガイドに基づいて大筋は固定された数字に自己の裁量を加味しているが、その段階でスタッフ専門職に意見を求めることはない。⑤ ライン専門職の不在時などにスタッフ専門職が職務を代行することはあるが、会社の「職務代行委任届」には、「職務全般」について委任する場合でも、「但し、目標の設定・変更、人事、組織変更に関する事項は除く。」と記載されており、スタッフ専門職はこれらの事項については代行していない。また、オンラインシステム上の代行委任でも、「人事管理業務の代行は、ライン/プロジェクト担当あるいは専任スタッフに限定するものとし、かつ勤務時間管理のみ代行できるものとする。」と委任の範囲が限定されている。
⑥ 会社における昇進、異動等の決定は、専らライン専門職が人事部門の指導・助言を得ながら実施しており、スタッフ専門職にはそれらの事項を決定する権限は付与されていない。

6 申立人3名の具体的職務内容など
(1) P1について
① P1が所属する「製造 購買―国際調達」部門は、国内外のアイ・ビー・エムのために、メーカーから部品・機器類を調達し、調達費用を購買額に上乗せして請求するという社内商社の役割を果たす部門である。
P1は、専任購買担当部員に昇進した平成4年から5年3月まで、国際調達購買業務の外注化プロジェクト・リーダーの任にあった。このプロジェクトは、購買業務の一部を外注して、人員削減を含む効率化を進めるものであり、同プロジェクトはP1の他に主任部員3名と一般職1名で構成されていた。P1の任務には、外注化により部門の人員・経費をどれだけ削減できるか試算し報告することも含まれており、5年1月にはメンバー全員の名前で「最終確認案」を作成し報告を行い、4年に72名であった人員を5年には58名に削減する必要があるとの報告を行っている。
② また、P1は、業績評価についての手順・方法について口頭や文書で説明を受けたこと、一般職の業績評価に関してライン専門職に意見具申したこと、一般職の昇給についてライン専門職から説明を受けたり、人事異動について一般職に説明せよといわれたこと、正規従業員・臨時雇用者・アルバイトを問わず従業員の雇用選考に関与したことは、いずれもない。
(2) P2について
① P2が所属していた関連事業部門は、下図のとおり、関連事業企画・管理と関連事業推進から成り、関連事業担当が部門を統括している。同部門は、会社の子会社・関連会社(以下「関連会社等」という。)を指導・援助する部門である。同部門は関連会社等を直接的、具体的に指導・援助することはないが、関連会社等の運営方針の策定、格付け、再建・改善計画の策定など関連会社等の経営全般にわたる事項の施策の立案、実施に関することを担当している。なお、関連会社等の直接的な指導・援助は、関連会社等と業務上密接に関係する部門の役員又は幹部が「スポンサー・エグゼクティブ」として、また同人の指名する「サポート・スタッフ」(主任部員も任命されている。)がこれを行う。
関連事業組織図
――――――――――
| 関連事業担当 |
| (セカンドライン)|
――――――――――

――――――――――――――
| |
―――――――――― ―――――――――――――
| 関連事業企画・管理| |関連事業推進(P5) |
|(ファーストライン)| |(ファーストライン) |
―――――――――― ―――――――――――――
| |
―――――――――― ―――――――――――――
| 部員 4名 | | 部員 4名 |
―――――――――― ―――――――――――――
② P2は関連事業推進に所属し、組合加入当時は関連会社等22社を担当していたほか、関連会社であるゼネラル・ビジネス・サービス株式会社(以下「GBS」という。)の非常勤監査役に就任していた。関連事業推進の所属員は、関連会社等の非常勤監査役(無報酬)に就任することになっている。
③ 関連事業推進における業務とP2の関与についてア 出向者の事務協力費の回収
出向者の事務協力費とは、関連会社等への出向者に関して会社が支出した給与のほか、社会保険の会社負担金や福利厚生費などを含んだ人件費関連費用(人件費総額)のうち、関連会社等から会社へ返還させている費用のことであり、関連事業部門は事務協力費を100%回収することを目標としている。
関連事業推進のP2らスタッフ専門職は、事務協力費回収率決定にあたり、関連事業企画・管理の主任のスタッフ専門職が管理する人件費関連のデータを入手し、
関連会社の事業計画、出向者個々人の給与情報や職位、業績評価、関連会社の経営状況など必要な資料を収集・分析し、回収率の希望をも考慮のうえ、関連事業のライン専門職の承認を得た後、ライン専門職の意見を付して、そのデータをスポンサー・エグゼクティブに引き渡す過程の作業を行うものとされていた。 スポンサー・エグゼクティブは、関連会社等との間で事務協力費(回収率)改訂について、交渉・決定し、スタッフ専門職は、決定された回収率について、書面でスポンサー・エグゼクティブの確認を受け、その後の事務処理を上記主任に引き継ぐ作業を行っている。
イ 出向者の人事管理
関連会社等への出向者の目標設定や業績評価、新賃金の通知などの人事管理は、「キャリア・マネジャー」(出向者一人一人の出向期間中の人事管理を行う者であり、アイ・ビー・エムに在籍するライン専門職から任命される。)及び出向先におけるアイ・ビー・エム在籍のライン専門職が、それぞれの役割区分により行っている。従って、関連事業推進のP2らスタッフ専門職が、関連会社等への出向者の人事管理に関与することはない。
出向者の出向先での職位の決定は、スポンサー・エグゼクティブの役割と責任に含まれ、同人がH社(人事情報の管理等を委託している関連会社)と当該出向者のキャリア・マネジャーとで協議して行っている。
ウ 関連会社等の役員の選出・決定
関連会社等の役員の選出及び決定は、スポンサー・エグゼクティブが申請し、同人が自ら行うか、出向者の出向先での地位によっては、アイ・ビー・エムの代表取締役が承認の権限を有している。関連会社等の役員の選出及び決定に関して関連事業部門は、ライン専門職である関連事業担当が同意権を有している。(3) P3について
① P3が所属していたシステム品質センター部門(現在は組織改正に伴い「ソフトウェア品質」部門となっている。)は、ユーザーに対するハードウェアとソフトウェアの品質管理を統括し、顧客満足度を維持・向上させるための部門である。 P3は、同部門の専任テクニカル・サポート部員として、ソフトウェア製品の重要障害について緊急対応を行い、また、社内外から寄せられる製品に関する苦情・要望を分析して、その改善策、予防策を提案する業務を担当している。② 重要障害についての緊急対応におけるP3の役割ア P3は、プロジェクト・オフィス・マネージャー(以下「P.O.MANAGER」という。)として、顧客に生じた自社のソフトウェア製品に関する品質上の問題について、最優先かつ早期に解決すべき重要な障害(以下、会社での用語に基づきこれを「CRITSIT」という。)か否かを判断する。GRITSITと判断した場合、P3は、問題解決のためのプロジェクトチームを編成し、自らチームのリーダーとして、問題解決にあたる。
P3は、メンバーの役割分担や行動計画を決定し、メンバーとの連絡・調整を行いつつ、チームの円滑な運営もその任務としている。なお、プロジェクトチームの編成には所属長の決裁が必要とされている。
イ チームのメンバーは、国内外のアイ・ビー・エムで問題解決に必要な部署から選出される。P.O.MANAGERは、通常、特定個人を指名することなく、関連する部門の所属長に対し、チームにメンバーを出すよう要請する。しかし、メンバーを出すか否かの決定権は、要請された部門の所属長にある。
また、チームのメンバーの技術力が不足しているなどの理由で交代を要する場合、P.O.MANAGERは、必要な部署の所属長に交代の要請をするが、この場合も決定権はメンバーの所属長にある。
ウ このプロジェクトチームの編成は、特別に新たな組織や部署を立ち上げたり、メンバーを配置転換させるものではなく、メンバーがP.O.MANAGERの部下になるという関係が生じるものでもない。チームの運営は、各メンバーがそれぞれの所属で、技術上の問題を電子メールや電話で協議し、また、必要に応じて会議を開くなどして、適切な対応策を検討するという方法で行われる。エ P.O.MANAGERは、プロジェクトの途中や最終段階で、各メンバーの所属長に業務報告を行っている。
その際、所属長との間でメンバーの仕事ぶりについて話題になることはあるものの、P.O.MANAGERの職務として、メンバーの業績を報告したり、評価する旨の規定はなく、そのような機会も設けられていない。
7 申立人3名の支部加入と会社の対応

(1) P1の支部加入と会社の執行委員撤回要求
① P1は、購買業務の外注委託プロジェクトが終了した後は、委託先会社とのコーディネーション業務を担当していた。
7年3月2日、国際調達の部門長であるP25は、事前にP1に対して、担当業務変更の理由説明あるいは話合いなどをすることなく、国際調達部門の全体会議(従業員約30人)の席上、突然、同人を担当業務から外すと発表した。 この担当業務の変更に納得できないP1は、社内苦情処理制度を利用して、P26専務と面談した結果、同専務がP25に対し、社員との話合いや説明なしに会議の席上で担当業務の変更を発表したことは、ラインマネジメントの間違いである旨の注意をした。
しかし、P25がP1を元の業務に復帰させなかったため、P1は、会社に在籍できるかどうかについて不安を感じて、4月3日、支部に加入した。 なお、P25は、5月29日の全体会議において、担当替えについて事前に説明を行わなかったことは申し訳ないとP1に謝罪したが、その後も同人を元の業務に復帰させることはなかった。
② 7月25日、P1は、支部藤沢分会の執行委員に就任し、同分会から会社へ役員名簿を提出したところ、P27藤沢事業所長は、翌26日、分会宛に「P1の執行委員就任撤回と名簿の訂正を求める。」と文書で通知し、名簿の受取りを拒否した。また、この通知があったのとほぼ同時に、P1の直属の上司であるP28は、P1を呼び出し、「今後組合活動を続けるなら私的な職務外行為とみなす。」と強い口調で注意した。
8月3日、同分会は、P1が今後も分会執行委員として活動する旨を、改めて通知した。しかし会社は、8月23日付の藤沢事業所長名の文書で「分会組合員と称し組合活動を行った場合には・・・私的な職務外行為とみなす。」、さらに9月19日付のP29人事管理担当名の文書で「P1は・・・組合員資格がないことをあらためて確認します。」と回答した。なお、P29は、会社の給与・厚生・勤労の責任者であり、昭和60年から会社側の当事者として、支部との団体交渉に出席している者である。
また、11月30日、分会と事業所の折衝が予定されていたが、分会側の出席者にP1がいるのを見て、会社側が全員退席したため、この折衝は中止となった。③ 支部は、同年の年末要求、さらに翌年の春闘要求で、会社に対し、藤沢分会役員名簿の受領拒否をやめるよう要求したが、会社の回答は、一貫して「執行委員就任撤回と名簿の訂正を求める。」というものであった。
また、8年7月、P1は、再度藤沢分会の執行委員に就任し、分会は、会社に役員名簿を提出したが、この時も会社は、分会に対し、P4藤沢事業所長(P27の後任)名で、「同氏の執行委員就任を直ちに撤回し、名簿を訂正することを求めます。」と前年同様の文書を発した。
(2) P2の支部加入と会社の警告等
① 会社は、4年から7年にかけ4次にわたって、「セカンドキャリア支援プログラム」という高齢従業員の早期退職勧奨制度を実施した。この制度の対象者は、当初は50歳以上であったが、6年からは新たに47歳以上に拡大された。この制度により、4年間で約4,700人の従業員が、退職又は関連会社等へ転籍した。② 会社が、第3次セカンドキャリア支援プログラムを実施していた6年10月頃、P2は、上司から退職を勧奨され、断ったところ、不本意な配置転換を示唆された。
第4次セカンドキャリア支援プログラムの実施期間中であった翌7年10月、P2の上司のP5関連事業推進担当は、P2に対し、部門の人員削減が必要となった場合、P2がその対象となる可能性があることを話した上で、複数の異動先候補を紹介し、11月30日あるいは翌年2月29日を退職予定日とした「退職金・加算金概算書」を交付した(「退職金・加算金概算書」は、当時上記プログラムの対象となっていた47歳以上の者全員に配布された。)。P2は、P5から紹介されたA社の面接を受けたものの、結局転籍を断った。8年1月8日、このことを聞いたP5は、P2に対し、当面は関連事業推進に残ることになるが、業績を改善しないと職群Ⅱから職群Ⅲに降格もあり得る旨を告げた。このことをきっかけに、同月18日、P2は、支部に加入した。
③ P2は、7年3月29日に関連会社であるGBSの監査役に選任されていたが、支部加入直後の8年1月22日、同人は、GBSの社長宛に、日付が空白の「辞任届」と、自分が組合に加入したことが、監査役として不適当と考えるなら辞
任する旨の書簡を送付した。
これに対し、P5は、P2に、口頭で辞任届の撤回を指示した後、改めて1月30日、「非常勤監査役の職務を・・・独断で退任する旨の手続きを行うことは、重大な業務命令違反に該当し、撤回しない場合は解雇を含む厳しい処分を行わざるを得ない」旨を文書で通知した。
なお、会社は、2月20日付でP2に対し、出勤停止1日の処分を行った。④ また、P5の上記1月30日の文書には、「貴職は、職群Ⅱの上級管理者であり、組合員資格は主任(職群Ⅳ)以下という会社と組合間で決められた組合員資格からみて、貴職は組合員にはなり得ないので、今後も貴職に対しては組合員として対応する考えはない・・・貴職が使用者の利益を代表する上級管理職としての職務と責任に反するような活動を行った場合は、相応の処分を行わざるを得ない。」と警告する記載もあった。
(3) P3の加入と会社の警告等
① P3は、直属の上司であるP9が、7年10月26日の打合わせ中に「今度のセカンドキャリア支援プログラムについてどう考えているんだ。」と発言したり、またこれとは別にP3に「退職金・加算金概算書」を渡し、「辞めればこんなにたくさんもらえるんだ。」、「退職しなければ困る。」と述べたこと、また同年の業績評価が不本意なものであったことなどを契機に、8年2月1日、支部に加入した。
② P3の上司であるP6は、2月14日頃、労務からP3の組合加入の連絡を受け、同月16日、P3を別室に呼び出し、当日予定されていた支部によるストライキへの参加の有無を尋ねて、「管理職であるあなたは組合員の資格がない。」「ストライキに参加すれば処分の対象になりうる。」などと通告した。これに対し、P3は、新人なので招集の予定はなく、通常の勤務をするつもりであると回答し、それ以上特に反論はしなかった。
③ また、本件申立て後の10年8月、P3は、所属する支部β分会の執行委員に就任し、同分会が、P30β事業所長に役員名簿を提出したところ、同事業所長は、9月16日付文書で、P3の分会執行委員就任の撤回と同分会役員名簿の訂正を求めた。
(4) 3名のチェックオフ申請と会社の対応
① 7年4月19日、支部は、P1の組合費のチェックオフ申請書を会社に提出したが、会社は、専任は組合員の範囲ではないとして、申請書を返却した。支部が、これに抗議したところ、会社は、5月31日付P29名の文書により、チェックオフ申請は、「確認書」に基づいて取扱いを定めるべきであると再度これを拒否した。
支部は、同年の年末要求でも再度、P1のチェックオフ申請を受理するよう要求したが、会社の態度は、変わらなかった。
② また、支部は、P2・P3が加入した直後の8年1月及び2月に、同人らのチェックオフ申請書を提出したが、会社の対応は、P1の場合と同様であった。その後も支部は、3名のチェックオフ申請書を受領するよう数度にわたって申入れと抗議をしたが、会社は、これを拒否したまま現在に至っている。
③ ちなみに、支部組合員約150名中、会社がチェックオフをしているのは、129名であり、残りの約20名については、組合が直接徴収している。(5) 8年9月10日、申立人らは、当委員会に本件救済申立てを行った。第3 判 断
1 申立人らの当事者適格について
(1) 経費援助について
① 被申立人の主張
支部は、一般職組合員の就業時間中の組合活動について賃金の支給を受けている。平成7年7月24日からの1年間で、中央執行委員15名の中一般職組合員5名の組合活動による不就労時間は、合計1,330時間を超え、会社がこれに対して支給した賃金は、約410万円である。上記の5名中1名は、就業時間中の組合活動が428時間であり、年間所定労働時間の20%を超えている。 また、会社は、αの一等地にある事務所を借り上げ、これを組合事務所として支部に貸与しており、保証金1,300万円の他、賃料月額70万円、光熱費月額4万3,000円余りを会社が負担しており、その経費援助の額は、家賃だけでも年間840万円を超えるものである。
このように支部は、労働組合法第2条但書第2号の「使用者の経理上の援助を受
けるもの」に該当するから、労働委員会における手続きに参与する資格を有しない。
② 申立人らの主張
就業時間内の組合活動について賃金控除しないのは、「確認書」で合意した結果である。「確認書」では、一般職の中央執行委員にのみ賃金控除のない時間内組合活動を認め、主任以上の中央執行委員は、不就労時間全部について賃金控除がされている。中央執行委員の内の一部の一般職に賃金控除のない時間内組合活動が認められるからといって、支部の自主性が阻害されているとはいえない。 組合事務所については、以前は会社事業所内にあった組合事務所を会社組織変更の際に、会社が提示した複数の案の中から支部が選択したものであり、会社との合意によって現在の組合事務所を取得し、それ故に会社が家賃を負担しているものである。このことで、組合の自主性が阻害されるものではない。
しかも、この2点については、都労委平成3年(不)第59号事件の救済命令によって決着済みである。
③ 当委員会の判断
会社が、自らの判断で支部と合意し、支部組合員の就業時間内の組合活動について賃金を控除しないこと及び組合事務所を貸与することを認めておきながら、後日にいたってそれが不適当、違法な行為であり、労働組合としての自主性が失われるから、申立て資格がないと主張するのは、許されないばかりでなく、本件支部の申立て資格については、申立人も主張するとおり、既に当委員会平成3年(不)第59号事件において、これを認めているところであって、その判断を変更すべき特段の事情があるとは認められない本件においては、会社の主張は採用することはできない。
(2) P1らの支部加入資格と同人ら及び組合の本件申立てについて① 被申立人の主張
ア 中労委における和解は、長年にわたる労使の交渉の末にようやく成立したものであり、かつ、その後10余年にわたり今日に至るまで労使関係の基礎を形成しているものであるから、労使関係を律する信義誠実の原則に照らして、会社と支部との間で締結した「確認書」のうちの組合員の範囲を定めた条項のみを一方的に部分解約することが、不当であることは明らかである。すなわち中労委における和解により、会社はすでに、和解金の支払い、組合員の主任への昇進など和解条項を履行しているのに比して、組合は、いまだ上記「確認書」で定めている時間内組合活動に関する協議すら行おうとしていないのであって、和解条項に不履行のある組合側が、一方的に「確認書」の部分解約を通告したものであるから、そのような解約は、労使関係の信義則に反する。
加えて、本件解約は、「確認書」のうち、組合員の範囲に関する部分のみを解約するというものであるが、当事者の一方が、自己に不利益と考える一部の条項を取り出して解約することは法的にも認められない。もともと本件「確認書」は、中労委和解「勧告」及びこれを具体化した「覚書」と不可分一体のものとして成立したものであり、その一部のみを分離して解約することは、予定されていなかったのである。
以上のとおり、本件「確認書」の一方的部分解約は、到底許されるものではなく、仮に本件において部分解約が許されるとしても、支部は上記のとおり和解条項を履行していないのであるから、権利の濫用として無効であり、結局「確認書」による組合員の範囲についての労使間の合意は、現時点においても有効である。したがって、P1らは支部の組合員たり得ず、申立人資格を有しない。イ ライン専門職が、スタッフ専門職になったり、再度ライン専門職になったりという異動は、頻繁に行われていることから、スタッフ専門職であるP1・P2・P3の3名は、ライン専門職と同様の管理職層として位置づけられていることは明らかである。そして専任以上のスタッフ専門職は、所属長の不在時に所属長の権限を代行して行使するなど、ライン専門職の人事権行使を助言等する立場にあり、人事上の計画と方針に関する機密の事項に接する監督的地位にある労働者であり、労働組合法第2条但書第1号に定める使用者の利益を代表する者に該当し、組合員であり得るはずもなく、申立人たり得ない。
したがって、万が一「確認書」の一部解約が有効であるとしても、同人らの加入を許す組合は、法内組合ではないから、同法第5条第1項本文により、労働委員会における手続きに参与する資格を有しない。
(ア) P1について

P1は、ライン専門職が行う業務管理及び人事管理を補佐する責任、すなわち、一般職業績評価のラインへの具申の権限、臨時雇用者の採用選考と労働条件の決定権限、臨時雇用者の人事管理権限を有する。
また、同人は平成4年1月から5年3月までの間、購買業務の外注化プロジェクト・リーダーとして、要員計画、組織計画及び人件費を含む経費計画を知りうる立場にあったものであり、労働関係についての計画と方針に関する機密の事項に接していた。
(イ) P2について
P2が所属する関連事業推進では、在籍出向者の給与情報をもとに、関連会社等からの事務協力費回収目標を設定しており、この過程で適正な出向社員数を算定する作業を行っている。すなわち、P2は、出向者数に関する会社の人事の計画、方針にも深く関与しており、出向者の報酬、給与等の人事の機密情報に触れる立場にあることは、明らかである。
関連事業推進の各プログラム担当・専任部員は、広範な権限の委譲を受けており、関連会社等の経営に関する事項について各人の判断で決定することができ、申立人の「P2らは、何らの決定権限も承認権限も同意権限も有しない」との主張は、最終責任と委譲されている権限の所在を混同するものである。(ウ) P3について
P3は、P.O.MANAGERとして、発生した問題がCRITSITに該当するか否かという、経営に重要な影響を及ぼす事項の判断に関与している。 P.O.MANAGERは、CRITSITに該当すると判断した場合には必要なメンバーを人選し、プロジェクト・チームを編成するという人員の配置に関わる権限を有している。そしてP.O.MANAGERは、各メンバーの業務遂行状況を把握・評価し、その結果をメンバーの所属長に報告するが、所属長は、この報告を業績評価の資料としているので、メンバーの評価にも関与している。② 申立人の主張
ア 労働委員会における和解は、民事訴訟手続における和解とは異なり、契約としての法的効力以上のものは持ち得ない。つまり本件「確認書」は、通常の労働協約と法的に異なることはなく、組合の団結の範囲を画する効力を有するものではない。
「勧告」、「覚書」、「確認書」は、あくまでそれぞれ別個独立の、期間の定めのない労働協約として、締結されたことは一目瞭然であり、これら3通は「不可分一体」であるから、一部解約は許されないという会社の主張は、期間の定めのない労働協約の解約について、労働組合法第15条の規定にない要件を課して制限することになり、認められない。
イ 会社の人事管理は、会社が自ら「各ライン専門職によって行われている。」と述べているとおりである。他方、スタッフ専門職は、部下をもたず、当然、部下に対する人事評価権限は一切有していない。また、スタッフ専門職が、所属員の人事評価に関して、ライン専門職を補佐・代行したり、助言を求められたり、実質的に決定に参画したりすることはないから、P1ら3名は、「使用者の利益を代表する者」にはあたらない。
(ア) P1について
P1は、要員計画にも、業績評価にも、正規従業員はもとよりアルバイトなどの臨時雇用者の採用・選考にも関与したことはない。
また、P1は、外注化業務の管理を担当していたが、外注先の会社は被申立人会社とは別会社であるし、P1は業務委託料に関与していただけである。そもそもP1が組合に加入したのは、この仕事を剥奪された後のことだから、組合加入前の業務が何であったのかは、本件とは何の関係もない。
(イ) P2について
関連会社等に対する直接の指導・支援、役員の選出・決定、事務協力費改定の交渉は、スポンサー・エグゼクティブらが行うのであり、P2らスタッフ専門職は、同人らに資料を提供したり事務作業を行うにすぎない。関連会社等の役員の選出・決定の情報も決定後直ちに公表されるものであり、「労務管理・人事管理上の計画・方針に関する秘密の事項」には該らない。そして事務協力費は、出向者本人の給与金額そのものではなく、取引ベースの「回収対象」としての額であるから、出向者個人の給与・年収・退職金あるいは昇給額に接することはない。 また出向者の目標設定、業績評価、賃金決定あるいは出向先での職位の取扱いなどについては、関連事業推進は関与していない。

(ウ) P3について
プロジェクト・チームの編成は、技術上の問題を検討するチームであり、そのメンバーの指名も、指名を受けた者の所属長の承諾が必要であり、拒絶されることもある。いわばP3の業務は、トラブルに対応する技術陣の連絡をとるコーディネーターにすぎない。
③ 当委員会の判断
ア 会社の主張するとおり、確かに支部は、「確認書」で「すみやかに協議する。」とした時間内組合活動問題について、会社からの再三の協議申し入れに対し、回答しないなど(第2・3(3)(4))、中労委和解成立後現在まで、一貫して消極的な態度をとり続けているのであるから、会社が支部は信義に反していると指摘したことは、当然であって、支部としても、時間内組合活動問題に対し、真摯に取り組む姿勢を示すべきであった。
また、「確認書」の中の組合員の範囲に関する条項に関しては、中労委における和解成立までの経緯に照らして、会社が、組合の組織範囲、したがってまた組合加入資格そのものを約定したのであると解していたとしても無理からぬものがある。しかしながら、会社と支部との間で、前記「確認書」を締結後、支部が、当該条項に反して、非組合員と線引きした者の組合加入を認めたとしても、組合に加入できない者の範囲を定めた条項が存在するとの一事をもって、非組合員と線引きした者の加入を認めた支部など本件申立組合及びP1ら当該組合員が、申立人資格を当然に失うわけではなく、申立人資格の有無は、その要件に係わる労働組合法第2条、第3条、第5条等の趣旨に基づいて決せられるべきものである。
よって、「確認書」のうちの非組合員の範囲に関する条項が、当該当事者間にどのような法的作用を及ぼすかはともかくとして、支部に加入することができないにも関わらず支部に加入したP1らは本件申立適格を有しないとの会社の前記主張は、採用することができない。
イ 労働組合法第2条但書第1号は、ⅰ「役員」、ⅱ「雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者」、ⅲ「使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者」、ⅳ「その他使用者の利益を代表する者」(以下ⅰないしⅳを一括して、「使用者の利益代表者」という。)の参加を許す労働組合(以下「法外組合」という。)は、同法上の労働組合とはいえない旨規定しており、同法第5条により、法外組合は不当労働行為からの救済を得ることができないとされている。 そこで、スタッフ専門職であるP1ら3名が「使用者の利益代表者」に該当するか否かを検討する。なお、会社は、スタッフ専門職がライン専門職となったり、再度スタッフ専門職となることは、頻繁に行われており、スタッフ専門職は、ライン専門職と同様の管理者層として位置づけられているから、会社の利益代表者であると主張するが、利益代表者であるか否かは、本件申立時を基準にすれば足りるものと判断する。
(ア) 上記ⅰないしⅳの4つの範疇の内、申立人3名が「役員」に該当しないことは明白である。
(イ) スタッフ専門職には部下がいないので、3名が自己の部下である組合員の業績評価をしたり、賃金を決定することはない。会社は、スタッフ専門職には直接の部下がいなくても、所属員の人事管理を補佐し助言する権限があると主張する。しかし、前記第2・5(4)のとおり、会社の人事管理は、ライン専門職のみが行っており、スタッフ専門職には、「雇入解雇昇進又は異動」に関して、何らの権限も与えられていないし、具体的に如何なる「補佐・助言」の権限があるのかについて疎明がない。むしろ、人事関係の情報にはライン専門職のユーザーIDが必要であったり、他の者が封筒を開封するのを禁じ、あるいは業績評価に関する書類をライン専門職以外には回覧しないなど、これらの情報は、ライン専門職の秘匿事項として取り扱われているとみられる。スタッフ専門職がライン専門職の職務を代行する場合であっても、人事管理については勤務時間管理のみ代行できるにすぎない。したがって、スタッフ専門職は、基本的には監督者とはいえず、上記ⅱ及びⅲの何れにも該当しないから、P1ら3名がスタッフ専門職であることをもって、直ちに使用者の利益代表者であるということはできない。
(ウ) P1について
ⅰ P1はライン専門職が行う業務管理及び人事管理を補佐する責任を有すると、会社は主張するが、P1にこのような権限があると認めるに足る具体的疎明はな
く、逆に、P1は、他の従業員の業績評価をラインに具申したこと、業績評価の手順・方法について口頭や文書で説明を受けたこと、一般職の昇給についてラインから説明を受けたり、人事異動について一般職に説明せよといわれたことはなく、正規従業員・臨時雇用者・アルバイトを問わず従業員の雇用の選考に関与していないことが認められる(第2・6(1))。
ⅱ また、P1がかつて担当した購買業務の外注化プロジェクトは、購買業務の内、特定の業務を外注化して、人員削減を含む効率化を進めようとするものであって、確かに、P1が、外注化により部門の人員・経費をどれだけ削減できるか試算し、人員・経費削減に関する「最終確認案」を作成したことが認められる(第2・6(1)①)。
ⅲ しかし、この案に関してP1が何らかの決定権を有していたとは認められない。また、この人員・経費削減に関する案の作成のためのプロジェクトチームは、P1の他、会社自身も組合加入資格を否定していない主任部員3名と一般職1名で構成されていて(同上)、会社がこれらの情報を労働組合法第2条但書第1号にいう「使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項」として取り扱っていたとは認められない。
ⅳ 以上のとおり、P1はスタッフ専門職として、ライン専門職が行う人事管理に補佐として関与したことはなく、また、購買業務の外注化プロジェクトを担当し、国際調達部門の人員・経費削減案を作成したことをもってしても、その職務上の義務と責任とが組合員としての誠意と責任とに直接に抵触するということはできない。
(エ) P2について
ⅰ まず、関連会社等の役員の選出及び決定の権限は、スポンサー・エグゼクティブが有すること(第2・6(2)③ウ)、出向者の目標設定・業績評価・賃金決定などの人事管理は、キャリア・マネジャー及び当該出向者の出向先のライン専門職が行うこと、出向先での職位の取扱いは、スポンサー・エグゼクティブの権限であること(同イ)、また、関連事業推進のスタッフ専門職が、在籍出向者に対し何らかの人事権を有しているとか、監督的地位にあるという事情は認められないことなどから、関連事業推進のスタッフ専門職は、「人事権を持つ監督的労働者」にも「労働関係上の機密の事項に接する監督的地位の労働者」にも該当しないと解するのが相当である。
ⅱ 関連事業推進のスタッフ専門職は、関連会社等からの事務協力費回収率を決定するにあたり、出向者個々人の給与情報や職位、業績評価などの資料を収集・分析した上で、回収率の希望を算出するという作業を行っており、確かに、P2も、この作業の過程で、自分の担当する関連会社等について、アイ・ビー・エムからの出向者の人数、所属、氏名、その出向先も含め、他部門の所属員であれば知り得ない情報に接していたと認められる(同ア)。
しかし、これらの情報は、会社の人事・労務に関わる機密事項とはいえず、しかも、関連事業推進のスタッフ専門職は、これらの情報を収集・分析するにとどまり、何ら決定権を持つような監督的立場に立つものではないから、これらの情報に接していたことをもって、直ちにP2を使用者の利益を代表する者ということはできない。
(オ) P3について
ⅰ P.O.MANAGERは、関連部門の所属長に対し、チームにメンバーを出すよう、また必要な場合はチームのメンバーの交代を要請するが、これらを決定するのは要請された部門の所属長である(第2・6(3)②ア、イ)。また、チームの編成とは、特別に新たな組織や部署を立ち上げたり、メンバーを配置転換させるような行為ではない(同ウ)。
P.O.MANAGERは、チームのリーダーとして、メンバーの役割分担や行動計画を決定する立場にあることは認められるが、チームの業務は、メンバー間での協議や会議を通じて障害の対応策を検討するものであり、このことの円滑な進行を図るための管理を行っているに過ぎないと認められる。
これらのことからみても、P.O.MANAGERは、人員の配置に関わる直接の権限を有しているとはいえないことは明らかである。
ⅱ メンバーの業績評価については、P.O.MANAGERが、プロジェクトの途中や最終段階で、各メンバーの所属長に業務報告を行う際、メンバーの仕事ぶりについての話が出ることはあるものの、P.O.MANAGERの職務としてメンバーの業績を報告したり評価するものではない(同エ)。したがって、仮に所属長
が業務報告を業績評価の資料としたとしても、P.O.MANAGERが、メンバーの業績評価に関与しているとはいえない。
結局、P1、P2及びP3は、労働組合法第2条但書第1号でいうところの「使用者の利益代表者」には該当せず、組合員資格を有するものと判断できる。 なお、前記(第2・7(1)①、(2)②、(3)①)認定のとおり、P1は、事前の話合いもなく担当業務を外され、また、P2は、第3次及び第4次セカンドキャリア支援プログラムの下で退職や関連会社への転籍を勧奨され、P3は、上司から退職勧奨とも受け取られかねない発言を受けた等の事実からも、会社がこの3名を利益代表者として取り扱っていたとは到底考えられない。
(3) 以上、上記(1)ないし(2)のとおり、会社の前記主張は、いずれも理由が無く、申立人らは、不当労働行為救済申立て資格を有するものと判断する。2 会社による支配介入との主張について
(1) チェックオフの拒否
① 申立人の主張
7年4月19日、支部がP1の組合費チェックオフ申請書を提出したところ、会社は、「専任部員は組合員の範囲ではない。」として受領を拒否した。会社は、その後支部に加入したP2・P3のチェックオフ申請についても同様の対応をとり続け、現在まで3名のチェックオフ申請を拒否したままであり、これは組合に対する支配介入である。
② 被申立人の主張
P1、P2、P3は、組合員たり得ないので、組合費のチェックオフはあり得ず、会社の対応は、何ら不当労働行為に該当しない。
③ 当委員会の判断
支部組合員約150名中、会社が組合費のチェックオフをしているのは、129名であり、残りの約20名については、支部が直接組合費を徴収している(第2・7(4)③)という状況の下で、支部は、「確認書」では非組合員の範囲に含まれる職位階層にあるP1、P2、P3の組合加入を認め、これら3名に対する組合費のチェックオフの実施方を会社に申し出た。これに対して、会社は、そもそもP1らの組合加入は「確認書」の組合員の範囲に関する条項に抵触するものであるとして、支部の上記申し出を拒んだものである。
そこでこの点を判断するに、
ア 従前から会社が組合費のチェックオフを行っている組合員については、会社としても組合員であることに何ら疑義をはさむ余地のない職位階層に在る者であることが十分に窺える。
イ これに対してP1ら3名の場合、少なくとも「確認書」第1項ロの定めとの関係においては、明らかに非組合員に該当する者である。しかして、中労委における和解成立までの経緯に照らせば、「確認書」第1項イ・ロの文言については、会社がまさに組合の組織範囲ないし組合加入資格そのものを定めたものであると解したうえ、チェックオフという労使の合意に基づく便宜供与を拒んだとしても、本件労使関係上、公正さを欠いているとまではいえない。
ウ また、支部は前記認定(第2・4(7)(10))のとおり、P1らの支部加入以前に上記確認書の第1項ロのみを「解約」する挙に出たけれども、中労委の「和解勧告」と本件会社と組合とが締結した「覚書」及び「確認書」は、密接な関係にあることは明らかであるから、会社が支部の「部分解約」通告の効力を疑問視して、「確認書」は第1項ロを含めて存続しており、P1ら3名のチェックオフ申請は、「確認書」に基づいてその取扱いを定めるべきであると主張し、にわかにチェックオフ申請に応じなかったとしても、これまた無理からぬものがあると解される。
エ 上記イ及びウの事情を考慮すれば、他の組合員についてはチェックオフを行っているとしても、P1ら3名に関してことさら支配介入の意思をもってチェックオフを拒んだものとまでは認めがたく、他にこの判断を覆すに足る疎明もない。したがって、チェックオフ申請の拒否は支配介入に該るとの組合の主張は、採用することができない。
(2) P1に対する平成8年7月18日付文書
① 申立人の主張
P1は、8年7月に支部藤沢分会の執行委員に就任し、分会は、7月18日に役員名簿を会社に提出したが、会社のP4藤沢事業所長は、同日付文書で、P1は専任部員であり組合員資格はない、P1の執行委員就任撤回と名簿の訂正を求める、
などと通告して、組合自治に対して支配介入を行った。
② 被申立人の主張
上記文書は、中労委和解に伴う「確認書」の第1項ロの規定に基づき、P1は組合員たり得ず、分会執行委員に就任することもあり得ないことを確認したものであり、不当な介入などには該当しない。
③ 当委員会の判断
会社は、「確認書」の第1項ロの解釈について、支部が「一部解約」を通告した後も、支部との見解の相違を具体的に協議することなく、現実にP1が支部に加入するまでこの問題を放置していた(第2・4(11))。しかるに会社は、P1が7年7月に藤沢分会の執行委員に就任し、同分会が会社へ役員名簿を提出したところ、P1の加入を認めた支部とは対応することなく、直接、同人の所属する分会にP1の執行委員就任撤回と名簿の訂正を要求し、また、これとほぼ同時に、P1の直属の上司は、「今後組合活動を続けるなら私的な職務外行為とみなす。」などとP1を叱責した。その後も、組合の再三の抗議にもかかわらず、会社は、やはり何ら支部との協議も行わないまま、一貫して分会にP1の執行委員就任撤回と名簿の訂正を要求し続け、また、分会と事業所の折衝にP1が出席しているのを見て席を立つなど、P1の組合加入を否認する態度をとったものであり(第2・7(1)②③)、このような会社の一連の対応は、労使関係上適切であったとはいいがたい。 しかしながら、チェックオフの拒否の部分(第3・2(1)③)で判断しているように、「確認書」の一部解約については、双方の解釈に争いがあり、それぞれが文書あるいは口頭によって、互いにそれまでの自己の主張を維持し、その主張が正当であるとして、相手方を非難する態度を繰り返していた状況を考慮すれば、会社がP1や同人の所属する分会に対し自己の見解を表明したことをもって、直ちに支部に対する支配介入に該るとまで認めることは困難であるから、組合の主張は採用することができない。
(3) P2・P3に対する文書・口頭での通告
① 申立人らの主張
8年1月30日、上司であるP5が、P2に対し、専任以上は組合員にはなり得ないので、組合員として対応する考えはなく、上級管理者としての職務と責任に反するような活動を行った場合は、相応の処分を行わざるを得ないなどと恫喝して組合活動を制限する内容の文書を交付した。
また、P3が支部に加入した直後に、同人の所属長であるP6は、「管理職であるあなたは組合員の資格がない。」「ストライキに参加すれば処分の対象になる。」と述べて、組合活動に対する威嚇をした。
② 被申立人の主張
ア 申立人らが摘示するP2に対する上記文書は、関連会社であるGBSの監査役の辞任届を撤回すること等を求めた通告である。P2の組合員資格に言及した部分についても、主管相当であるP2に組合員資格がないのであるから、組合活動と称して上級管理者としての職務と責任に反する活動を行えば、会社が相応の処分を行うのは当然であって、その趣旨を伝える当該通知が不当労働行為とされるべき理由は、全く存しない。
イ P6は、8年2月16日に組合が時限ストライキを予定していることを聞き、P3に対して同ストライキに参加するとか、就業時間中に何らかの行動をとる予定はあるのかなどを確認したうえ、P3は専任であって、組合員の資格がないのであるから、ストライキに参加すれば処分の対象になることも危惧される旨を伝えた。会社は、P3が就業時間中に「組合活動」、「ストライキ」などの行動をとれば、職場秩序を乱すものとして処分の対象とするのは当然であり、その旨を伝えたからといって、不当労働行為とされるべき理由は全く存しない。
③ 当委員会の判断
ア P2が、上司に無断で、GBSに対して、非常勤監査役を辞任する旨の書簡と辞任届を送付したこと(第2・7(2)③)は、会社の対外的信用を傷つけるものであり、非難されてもやむを得ない。8年1月30日付の文書でP5がP2に「解雇を含む厳しい処分を行わざるを得ない。」等と通知し、上記辞任届の撤回を求めたこと(同③)の趣旨は、このようなP2の行為を注意することにあったものである。
そして、会社が同文書で「組合員資格は主任(職群Ⅳ)以下という会社と組合間で決められた組合員資格からみて、貴職は組合員にはなり得ないので、今後も貴職に対しては組合員として対応する考えはない・・・貴職が使用者の利益を代表する
上級管理職としての職務と責任に反するような活動を行った場合は、相応の処分を行わざるを得ない。」(同④)と、P2の組合活動に言及したのは、P2が辞任届を送付した理由が組合に加入したためとされていたことから、組合員資格についての会社側の認識を表明したものであり、前記、文書によるP1の執行委員就任撤回と名簿の訂正の要求の場合と特に区別して判断すべき理由はなく、これを会社として積極的に支部の運営に介入する意図の下に、同文書を発したものであるとまで認めることは困難である。
イ また、8年2月1日に組合に加入したP3に対し、同月16日、P3の上司であるP6が、ストライキへの参加の有無を尋ねて、「管理職であるあなたは組合員の資格がない。」、「ストライキに参加すれば処分の対象になりうる。」などと通告したこと(第2・7(3)②)も、同人が、「確認書」の一部解約についての会社の解釈に基づいて、その見解を表明したものと解され、また、P3が、ストライキに招集されておらず通常勤務の予定であると答えたところ、P6は、それ以上の対応を重ねていない事情も考慮すれば、この発言をもって、会社が積極的にP3の組合活動を妨げる意図を有していたとまで認めることは困難である。ウ したがって、P5がP2に対する1月30日付文書でP2の組合員資格と組合活動に言及したこと及びP3に対するP6の2月16日の発言は、いずれも組合に対する支配介入であるとは認められない。
第4 法律上の根拠
以上の次第であるから、会社がP1ら3名の組合費のチェックオフをしないこと、P1が支部藤沢分会の分会執行委員に就任したことにつき、P4藤沢事業所長が平成8年7月18日付文書で、執行委員への就任の撤回と役員名簿の訂正を求めたこと、P5がP2に対して、同年1月30日付文書で「上級管理者としての職務と責任に反するような活動を行った場合は相応の処分を行う。」と通告したこと及び同年2月16日にP6がP3に対して、「ストライキに参加すると処分の対象になりうる。」と口頭で通告をしたことは、いずれも労働組合法第7条第3号に該当しない。
よって、労働組合法第27条及び労働委員会規則第43条を適用して主文のとおり命令する。
平成13年3月27日
東京都地方労働委員会
会長 P14

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