判例検索β > 平成14年(行コ)第242号
法人税更正処分取消請求事件
事件番号平成14(行コ)242
事件名法人税更正処分取消請求事件
裁判年月日平成15年9月9日
法廷名東京高等裁判所
判例集等巻・号・頁第56巻3号1頁
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成11(行ウ)20
判示事項1 法人の支出が租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前及び平成9年法律第22号による改正前)61条の4第1項の「交際費等」に該当するための要件 2 医学研究者に対し英語による医学論文につき英文添削のサービスを提供するためにした製薬会社による費用の一部の負担が租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前及び平成9年法律第22号による改正前)61条の4第1項の「交際費等」に当たらないとされた事例
裁判要旨1 法人の支出が租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前及び平成9年法律第22号による改正前)61条の4第1項の「交際費等」に該当するというためには,支出の相手方が事業に関係ある者等であり,支出の目的が当該事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであるとともに,行為の形態が接待,供応,慰安,贈答その他これらの行為に類することの各要件を満たすことが必要である。 2 製薬会社が医学研究者に対し英語による医学論文につき費用の一部を負担して英文添削のサービスを提供する行為は,その主たる目的が,海外の雑誌に研究論文を発表したいと考えている若手医学研究者の便宜を図り,その支援をするということにあり,行為の形態からみても,学術奨励という意味合いが強いと考えられるなどの事情の下においては,租税特別措置法61条の4第3項の「接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為」に当たらず,その負担は同法(平成7年法律第55号による改正前及び平成9年法律第22号による改正前)61条の4第1項の「交際費等」に当たらない。
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主 文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が平成9年6月30日付けで控訴人に対してした,
(1) 平成5年4月1日から平成6年3月31日までの事業年度における法人税の更正処分のうち,納付すべき税額66億8249万1400円を超える部分(2) 平成6年4月1日から平成7年3月31日までの事業年度における法人税の更正処分のうち,納付すべき税額78億5853万4700円を超える部分(3) 平成7年4月1日から平成8年3月31日までの事業年度における法人税の更正処分のうち,納付すべき税額82億6010万0100円を超える部分をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
主文同旨
2 被控訴人
控訴棄却
第2 事案の概要
1 控訴人は,その医薬品を販売している大学病院の医師等から,その発表する医学論文が海外の雑誌に掲載されるようにするための英訳文につき,英文添削の依頼を受け,これをアメリカの添削業者2社に外注していた(本件英文添削)。控訴人は,医師等からは国内業者の平均的な英文添削の料金を徴収していたものの,外注業者にはその3倍以上の料金を支払い,その差額を負担しており,その金額は,平成6年3月期で1億4513万円余,平成7年3月期で1億1169万円余,平成8年3月期で1億7506万円余に及んでいた(本件負担額)。被控訴人は,英文添削の依頼をした医師等が控訴人の「事業に関係ある者」に該当し,本件負担額の支出の目的が医師等に対する接待等のためであって,本件負担額は交際費に該当するとし,租税特別措置法(措置法)の規定によって損金に算入されないとして,上記3事業年度(本件各事業年度)の控訴人の法人税について更正処分(平成6年3月期についてはさらに再更正処分)をした。本件は,控訴人が,本件負担額は,交際費ではなく損金の額に算入が認められる寄附金であると主張するとともに,本件更正通知書には,理由附記の不備があるなどとして,上記更正処分の取消しを求める事案である。
原判決は,控訴人の請求を棄却した。これに対し,控訴人が不服を申し立てたものである。
2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほか,原判決の事実及び理由欄第2記載(2頁以下)のとおりであるから,これを引用する。
(控訴人の当審における主張)
(1) 措置法61条の4の「交際費等」に該当するか否かは,同条3項の規定により,支出の相手方が事業関係にある者といえるか否か,及び支出の目的が接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為を意図するものであるか否かによって判断される。そして,支出の目的が接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為を意図するものであるか否かは,当該支出の動機,金額,態様,効果等の具体的事情が総合的に判断されなければならない。また,交際費等は,一般的に,支出の相手方及び目的に照らして,取引関係の相手方との親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るために支出するものと理解されている。そうすると,支出の相手方が事業関係者といえるか否かの判断では,かかる相手方と親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図ることができるか否か,また,かかる支出が,その相手方と親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るためといえるか否かが検討されなければならない。
本件でこれをみるに,控訴人が英文添削費用の差額を負担した者の多くは大学の医学部又は医科系大学に所属する研究者であるが,その中には,控訴人が製造・販売する医薬品の処方に携わらない基礎医学の研究者や,処方権限のない留学生,研修医,大学院生,大学又は付属病院の職員でない医員,さらに,付属病院が新たに医薬品を購入する際に全く関与しない者が多く含まれている。このような研究者は,いくら親睦を密にしても取
引の円滑を図ることはできないのであって,事業関係者ということはできず,したがって,控訴人が英文添削料の差額を負担した者の大半は,事業関係者に該当しない。また,その余の処方権限を有する医師についても,特に厳しい倫理が求められる大学の付属病院において,控訴人が英文添削の依頼を受けたことにより処方や新たな医薬品の購入決定が左右されるものではない。したがって,処方権限のある医師も事業関係者に当たるということはできない。
(2) 控訴人は,本件英文添削を学術の発展による社会公共の利益の増進を目的として行ってきたものであって,接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のためではない。そのことは,次の事実から明らかである。
控訴人の英文添削は,昭和59年まで控訴人の研究開発本部に在籍していたA博士が,好意により研究者の英語論文の添削をしていたことに端を発し,英文添削を控訴人が会社として行うようになったものである。その後,医療用医薬品卸売業公正取引協議会(公正取引協議会)の指導の下,国内の添削業者の平均的な料金を徴収するようになったが,当初の目的はそのまま維持されていた。このような料金の徴収により,英文添削の依頼者は,控訴人が差額を負担していたことを知らなかったし,控訴人の英文添削はその質において優れたものであったが,そのことを研究者が認識していたわけではなく,それにより研究者に好印象をあたえるとか,歓心を買うことが期待できる状況ではなかった。また,研究者の大半は,数年に1度しか論文を発表しないのであるから,英語論文の添削により,控訴人の医薬情報担当者(MR)が頻繁に研究者に面会できるという状況でもない。なお,控訴人が添削の依頼を受けていたのは,全国の病院数が,平成7,8年当時,9000以上あり,かつ,そのほとんどが控訴人の取引先であったにもかかわらず,81の大学と15の施設のみであり,いずれも高度な研究が行われている機関である。
大学の付属病院に勤務する医師は,高い倫理観に基づき,患者のために最もよいと考えられる医薬品を処方する。控訴人が英文添削を行ったからといって処方を左右できるものではない。まして,基礎医学を研究する者の英文添削を引き受けたからといって,医薬品を処方する医師が倫理規範に反して控訴人の製造・販売する医薬品を処方することは期待できない。また,控訴人が英文添削の依頼を受けた研究者の中には,患者を診療しない基礎医学を研究する者や,処方権限がない大学院生・医員・留学生等が多数含まれている。控訴人は,処方権限の有無や医薬品の購入申請への関与の有無等を何ら区別をせずに,英文添削の依頼を受けていた。そして,投稿した論文が雑誌に掲載されるか否かは,研究内容によるのであるから,自己の論文が雑誌に掲載された研究者が,国内業者の平均的な料金を支払って添削を依頼した控訴人に対して,ことさらに好感情を抱くことは期待できない。なお,控訴人に添削を依頼した研究者の大半が添削料金は支払ったものの,その論文が雑誌には掲載されることなく終っている。英文添削によって,好印象を抱かせたり,歓心を買ったりということは期待できない。
以上のような状況の下,控訴人が英文添削の依頼を受け,添削料金の差額を負担し続けたのは,良質の添削を提供することにより,真に優れた研究が世界的な場での発表の機会を得ることなく終ることがないようにと考えたからである。
(3) 措置法61条の4第3項は,「交際費,接待費,機密費その他の費用で,法人が,その得意先,仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と規定しているが,「その他」という不確定概念を多用し,規定それ自体が課税要件明確主義に反するおそれが強い。 しかして,控訴人は,その製造・販売する医薬品を全く使用しない研究者や,処方権限のない研修医・大学院生・留学生等から数多くの添削の依頼を受けていたのであるから,これらの者を対象とした英文添削料の支出は,「交際費,接待費,機密費」に該当せず,また,これらの者は控訴人の「得意先,仕入先その他事業に関係ある者」にも該当しない。さらに,支出の相手方である研究者は,控訴人が英文添削料の差額を負担していることを知らず,利益を受けたことの認識がなかったのであるから,控訴人の支出は,「接待,供応,慰安,贈答」あるいは「これらに類する行為」にも該当しない。
このように処方権限もない者や,基礎医学等の臨床に関与しない講座の研究者も対象とし,かつ,差額の負担を支出の相手方が認識していないという事実や,添削を依頼した研究者は,正当な対価を支払って役務の提供を受けたと認識していることからすれば,控訴人の添削料の差額負担によって,親睦の度合いが密になるということもない。したがって,本件英文添削に要した費用は,取引の相手方との親睦の度合いを密にするために支出する「交際費,接待費」ということはできず,かつ「機密費」にも該当しない。そして,相手方が利益を受けたと認識していない行為によって,控訴人の医薬品の売上が増加するとは考えられないことであるから,本件の差額の負担が収入を得るのに必要な支出である「費用」であるとは考えられず,「その他の費用」にも該当しない。

(被控訴人の当審における主張)
(1) 措置法61条の4第1項に規定する「交際費等」は,企業会計上ないし一般通念上の交際費概念よりも相当広い概念であり,租税法上の固有概念である。そして,その「接待,供応,慰安,贈答」は,いずれも相手方の歓心を買うことによって相手方との親睦の度を密にしたり,取引関係の円滑な進行を図る行為の例示であり,その名目にかかわらず,取引関係の円滑な進行を図るためにする利益や便宜供与が広く含まれる。 そして,ある支出が「交際費等」に該当するためには,①支出の相手方が事業に関係のある者であることと,②支出の目的がかかる相手方に対する接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のためであれば足り,接待等が,その相手方において,当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることは必要でない。交際費課税制度は,接待等のサービスを受ける側への非難可能性を問題とするものではなく,法人における自己資本の充実を図り,その内外の多数の関係者の適正な利益を保護するという政策目的の実現を意図するものであるからである。 また,交際費等に該当する接待等の行為は,相手方の欲望を満たすものである必要はない。このことは,飲酒の嗜好の全くない事業関係者に対して,そのことを全く知らずに飲酒の接待を行った場合,相手方の欲望は満たされないが,接待等の行為に該当することからも明らかである。
それゆえ,医師等に対し,英文添削のサービスを提供することが飲食やゴルフの接待をなすのと同様に,相手方の歓心を買うことで親密の度を増しうる行為であると認められさえすれば,相手方における意味の認識あるいはその客観的な認識可能性の存否にかかわらず,支出側の意図,認識のみに基づいて上記①及び②の要件が具備するというべきである。すなわち,その相手方において,当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることは要件ではない。
(2) 本件英文添削及びその経済的負担額は,客観的状況からみて,支出の相手方である医師等にとって,一般的な飲食等に代表される接待交際と実質的に何ら変わりがない精神的及び経済的な欲望を満たすものである。
すなわち,医師等にとって,英語による研究論文を作成することは,その名声及び地位の向上という欲望を満たす重要な要素であり,その欲望の成就を実際的・現実的に左右するものが英文添削となっている。それゆえ,医師等は,研究論文における英文添削に対し,強い関心や期待を有しているが,それは高額の経済的負担をもたらすものであることから,その負担を軽減した上で,信頼性の高い英文添削を得たいとの欲望が存在する。製薬業者である控訴人は,医師等のそうした欲望を満たすことが,取引先である医師等との緊密な人間関係を構築するための有効な手段であることを十分に認識していたし,医師等も,製薬業者である控訴人が医師等の欲望を満たす行為として,本件英文添削を利用していることを十分に認識できる立場にあった。
本件の客観的状況は,医師等と製薬会社との事業関係において,製薬業者である控訴人の行う本件英文添削が医師等に供与されたということである。そして医師等においては,控訴人がその事業に関する何らかの目的をもって近づき,本件英文添削の供与を行い,働きかけているものと認識しうる立場にある。すなわち,控訴人の担当者らは,医師等の欲望を充足するため,本件英文添削が高い信頼性と高い質を有することに加え,経済的負担が軽減されていることを医師等に認識せしめることが可能であり,他方,医師等においては,製薬業者である控訴人の供与する本件英文添削が,それまで同業者らから行われていた飲食等による接待と同様の意図の下に行われているとの認識を持っていたか,そのような認識を持つことが容易であった。そして,本件で,医師等が英文添削料金以上のサービスを受けているとの認識があったことは,その申込件数が,公表前の研究論文の漏洩の危険性があったにもかかわらず,年間数千件に及んでいたことや,医師等が添削者を指名していることなどからも裏付けられる。
なお,本件英文添削の差額負担は,非公表で行われ,かつ対象者が極めて限定されており,その公平性,透明性が確保されていないものであって,学術奨励金などとは理念及び内容が全く異なり,それらと同視できるものではない。
(3) 現在の交際費課税制度の趣旨は,冗費的な交際費等の支出を抑制し,法人の資本蓄積を図るという創設時の趣旨よりも,国民経済的見地から,多額な資本力を持つ法人の交際費の支出によって,公正な取引の阻害,価格形成の歪みを防止するという観点が考慮されているものである。
そして,交際費等に該当する第1の要件は,「支出の相手方が事業に関係のある者であること」であるが,「事業に関係ある者」とは,直接及び間接に当該法人の事業に関係ある者や将来事業に関係を持つに至るべき者を含むというべきであり,その範囲は相当に広い。第2の要件は,「支出の目的がかかる相手方に対する接待,供応,慰安,贈答その他
これらに類する行為のためであること」である。「その他これらに類する行為」の文理については,「接待,供応,慰安,贈答」と性格が類似しつつも,それとは行為形態の異なるものを指すと解される。すなわち,「接待,供応,慰安,贈答」は,いずれも相手方との親睦の度を密にしたり相手方の歓心を買うことによって取引関係の円滑な進行を図る行為の例示と解すべきであって,「その他これらに類する行為」とは,その名目のいかんを問わず,取引関係の円滑な進行を図るためにする利益や便宜の供与を広く含む概念であると解される。 本件でこれをみるに,控訴人と医師等は,医療情報の伝達を介しての必然的な関係が存するのであって,医師等が控訴人の「事業関係者」に当たることは明らかである。また,医師等が本件英文添削に関心を持っていること,本件負担額の性質は,医師等との親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るために支出するものであること,本件英文添削の行為態様は,添削業者への支払額を下回るような額を医師等に請求するものであるし,その添削内容は,英語文化圏の,かつ,高度な医療関係の知識を有する外国人による,質の高いものであることなどからすれば,控訴人は,医師等に対して,その取引関係を円滑に進行するため,本件英文添削を提供することで,その歓心を得る目的で,本件負担額という経済的利益を供与していたものである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,控訴人の請求は理由があると判断する。その理由は,次に記載するとおりである。
(1) 本件英文添削がなされるに至った経緯及びその概要
原判決事実及び理由欄第2の2の争いのない事実及び証拠(甲5ないし8,17.18,20,24,乙1ないし8,19ないし29,32,76ないし83,原審証人)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア アメリカ合衆国所在の法人B社から控訴人の研究開発本部に派遣されていたA博士は,同開発本部所属の研究員が作成する社内文書や研究論文等を添削・指導する業務を担当していたが,ときに無償で社外の研究者や医師(研究者ら)が作成した論文等の英文添削を行うこともあり,それが好評を博していた。A博士は,昭和59年に帰国し,その後,控訴人の社内文書の英文添削は,引き続きB社のCセンターが行っていた。他方,社外の研究者らからは,控訴人に対し,引き続き英文添削を行ってほしいという希望があった。そこで,控訴人は,海外の雑誌に研究論文を発表したいという若手研究者を支援すべく,昭和60年から,試験的に名古屋地区(名古屋大学,名古屋市立大学等が対象)で,英文添削の依頼を受けるようになった。
イ 上記英文添削の依頼を受けるに際し,控訴人は,医療用医薬品卸売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約(昭和59年公正取引委員会告示第35号,公正競争規約)に違反することを懸念し,事前に公正取引協議会に確認したところ,同協議会から,国内の英文添削業者と同額の料金を徴収するようにとの指導を受けた。そこで,控訴人は,国内業者の平均的な料金を調査した結果に基づき,研究者らから英文添削の依頼を受ける際,1頁当たり1500円の料金を徴収することとした。なお,控訴人は,英文添削を行っているCセンターに対しては,1時間当たり25ドルを支払っていたが,これは1頁当たりでは,研究者らから徴収する料金を下回るものであり,本件英文添削は,当時,控訴人に一定の収入をもたらしていた。
ウ その後,英文添削の依頼を受ける地区の範囲が広がり,Cセンターだけで英文添削を行うことが困難となったことや,A博士がB社を退社したことなどから,控訴人は,平成4年,アメリカ合衆国所在の法人D社及びE社と英文添削に関する契約を締結した。その料金については,両社がB社の紹介した業者であったため,直接交渉を行うことなく,B社から伝えられた料金をそのまま支払うことになった。D社の添削料金は,平成4年から平成6年12月までは1時間当たり65ドル,平成7年1月以降は1時間当たり70ドルであったが,平成9年10月以降は,1頁当たり54ドルに減額された。E社の添削料金は,平成4年から平成6年9月までは1頁当たり6200円,平成6年9月以降は1頁当たり52ドルであったが,これについても平成9年10月以降は,1頁当たり47ドルに減額された。なお,D社との取引は,平成12年3月をもって終了した。
エ 一方,控訴人が英文添削を依頼した研究者らに請求する料金は,当初は,1500円(1頁当たり,以下同じ。)であったが,公正競争規約への抵触を懸念し,その後,ほぼ2年ごとに国内の英文添削業務の市場価格(全国の英文添削業者20社の料金の平均価格)を調査して料金改定を行ってきた。その料金は,平成5年7月以降が2000円,平成7年10月以降が2500円,平成9年7月以降が3500円であった。また,平成9年10月には,控訴人が英文添削料金の差額を負担していたことが報道され,研究者らが差額の発生を知り得ることとなったため,その料金は5000円に改定された。なお,控訴人が,研究者らに料金を請求する際の基準となる原稿枚数は,E社等がカウントしたそれと異なること
があった。これは,図や表を原稿枚数に含めるかどうかなどの違いによるものであるが,控訴人が研究者らに請求する際の枚数の方が少なくなることはあっても,逆にそれが多くなることはなかった。
オ 控訴人の本件各事業年度における本件英文添削の外注費とそれによる収入及びその差額の負担額(本件負担額)の状況は,原判決別表11記載のとおりである。これによると,本件負担額は,平成6年3月期においては1億4513万6839円,平成7年3月期においては1億1169万0336円,平成8年3月期においては1億7506万1634円に及んでいた。これら本件各事業年度における本件英文添削の外注費は,その収入と比べて平成6年3月期は約5.1倍,平成7年3月期は約3.7倍,平成8年3月期は約4.3倍になっていた。
カ 本件英文添削の内容は,英語のネイティブ・スピーカーによる添削であり,その添削内容は,文法,英文表現,スペル等の確認に加え,医学用語の確認や,当該論文が投稿規定に沿って作成されているか否かの確認も含むものであった。他方,国内の業者による英文添削の場合も,ネイティブ・スピーカーが添削を行っていることが通常であり,理工系の大学出身者や医学部教員らが英文添削を行っている例もあった。また,国内の業者が行っている英文添削の内容は,上記のように医学用語の確認や,当該論文が投稿規定に沿って作成されているか否かなど,本件英文添削の内容と同様のものもあったが,文法,スペル等の確認にとどまるような内容のものも多かった。
キ 本件英文添削の対象は,国内の医科系大学,総合大学の医学部,その付属病院及び医療機関等,約95の機関に所属する研究者らに限定されていた。そのうち大学病院等の医療機関はすべて控訴人の製造,販売に係る医薬品の取引先であったが,控訴人の売上実績からすれば,必ずしも上位を占めるものではない。なお,控訴人の売上全体の中で大学病院の占める割合は,10パーセント以下であり,その多額を占めるのは開業医又は病床数100床未満の小規模病院である。平成7,8年当時の全国の病院数は9000以上であったが,そのほとんどが控訴人の取引先であった。
ク 本件英文添削の依頼者は,若手の研究者らが多く,平成7年においては,講師,助手及びその他の研究者からの依頼が全体の87.4パーセントを占めており,教授及び助教授からの依頼は,全体の12.6パーセントであった。また,依頼者の中には,研修医,大学院生,研究医等,大学の職員の資格を有しない者のほか,医療に携わらない基礎医学の講師や,海外からの留学生も含まれていた。
ケ 控訴人は,本件英文添削について,取引先や一般の病院等に対して宣伝をしたことはない。研究者らは,口伝えなどにより本件英文添削を知って,控訴人に直接連絡をするなどし,控訴人はそのような連絡を受けると,当該依頼者に医学英文添削申込書用紙を持参していた。また,控訴人は,大学の付属病院などの医療機関にMRを派遣していたところ,本件英文添削の依頼はMRを通じて依頼されることが多かった。控訴人は,その依頼を受けるMRに対し,取引を誘引する行為を禁じた公正競争規約に違反しないよう,本件英文添削を取引の条件としたり,取引の条件としているような印象を与えないことを指導していた。
(2) 「交際費等」の意義について
【要旨1】措置法61条の4第3項は,同法61条の4第1項に規定する「交際費等」の意義について,「交際費,接待費,機密費その他の費用で,法人が,その得意先,仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のために支出するもの(専ら従業員の慰安のために行われる運動会,演芸会,旅行等のために通常要する費用その他政令で定める費用を除く。)をいう。」と規定している。 上記のような法文の規定や,「交際費等」が一般的に支出の相手方及び目的に照らして,取引関係の相手方との親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るために支出するものと理解されていることからすれば,当該支出が「交際費等」に該当するというためには,①「支出の相手方」が事業に関係ある者等であり,②「支出の目的」が事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであるとともに,③「行為の形態」が接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為であること,の三要件を満たすことが必要であると解される。
そして,支出の目的が接待等のためであるか否かについては,当該支出の動機,金額,態様,効果等の具体的事情を総合的に判断して決すべきである。また,接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為であれば,それ以上に支出金額が高額なものであることや,その支出が不必要(冗費)あるいは過大(濫費)なものであることまでが必要とされるものではない。
(3) 本件英文添削の差額負担の支出の相手方について
控訴人は,主として医家向医薬品の製造,販売を事業内容とする株式会社である。
医師は医業を独占し(医師法17条),患者に対する薬剤の処方や投与は医業に含まれるから(医師法22条),医師は,控訴人のような製薬会社にとって,措置法61条の4第3項にいう「事業に関係のある者」に該当するというべきである。
そして,本件英文添削の依頼者の中には,研修医や大学院生などのほか,医療に携わらない基礎医学の講師や海外からの留学生も含まれていたことは,上記(1)ク認定のとおりであるけれども,他方,大学の医学部やその付属病院の教授,助教授等,控訴人の直接の取引先である医療機関の中枢的地位にあり,医薬品の購入や処方権限を有する者も含まれていたことからすれば,全体としてみて,その依頼者である研究者らが,上記「事業に関係のある者」に該当する可能性は否定できない。
もっとも,本件の主たる問題点は,本件英文添削の差額負担の支出の目的及びその行為形態が「接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為」に当たるか否かであると考えられるので,上記の点の最終的判断はひとまずおいて,さらに判断を進めることとする。 (4) 本件英文添削の差額負担の支出目的について
ア 本件英文添削がなされるに至った経緯及び動機は,上記(1)認定のようなものであり,従前,控訴人に在籍していたB社のA博士が控訴人あるいは社外の研究者らの論文を添削,指導していたことに端を発し,それが好評であったことから,その帰国後も引き続きB社のCセンターに英文添削を依頼し,同様の英文添削を受けられるようにしたというものである。
そして,控訴人は,本件英文添削の依頼を受けるに際し,公正競争規約に違反することを懸念し,事前に公正取引協議会に確認のうえ,その指導に従い,国内業者の平均的な料金を徴収することにしていること,当時,控訴人のCセンターへの支払額は,研究者らから徴収した料金を下回っていたことなどからすれば,本件英文添削がなされるようになった経緯及び動機は,主として,海外の雑誌に研究論文を発表したいと考えている若手研究者らへの研究発表の便宜を図り,その支援をするということにあったと認められる。それに付随してその研究者らあるいはその属する医療機関との取引関係を円滑にするという意図,目的があったとしても,それが主たる動機であったとは認め難い。 イ その後,本件英文添削について,その委託先に支払う外注費が研究者らから徴収する料金よりも高額になるという事態が生じた。これは,控訴人がD社及びE社に対して支払う料金については,両社がB社の紹介した業者であったことから,直接交渉を行うことなく,B社から伝えられた料金をそのまま支払うことになったが,それがかなり割高なものであったこと,これに対し,控訴人が研究者らから徴収する料金については,定期的に国内の英文添削業者の料金を調査の上,見直しをしていたものの,上記外注料金に達する額までに至らなかったという事情によるものと認められる。
このような差額が生じるに至った経緯や,研究者らがそのような差額が生じていた事実を認識していたとは認め難いこと,また,控訴人がその差額負担の事実を研究者らに明らかにしたこともないことなどからすれば,控訴人が,上記差額負担の事実を,研究者らあるいはその属する医療機関との取引関係の上で,積極的に利用しようとしていたとはいえない。そうすると,このような差額が生じるようになってからも,上記アのような本件英文添削の基本的な動機,目的に変容があったと認めることは困難である。 ウ なお,上記の差額は,本件各事業年度の各期において1億円以上の額に達し,もっとも多い年では1億7500万円余になっており,それ自体をみれば,相当に高額なものである。しかし,それは年間数千件に及ぶ英文添削の差額負担の合計であり,1件当たりの負担額は決して大きなものではない。いずれにせよ,控訴人の各期の事業年度の申告所得額の1パーセント未満の金額であり(弁論の全趣旨),控訴人の事業収支全体の中では,必ずしも大きな額とはいえない。したがって,このような費用を負担していたからといって,それが特定の意図に基づくものと推認できるものではない。
また,本件英文添削の差額負担の事実が報道されてからは,その料金が差額の生じない額に改定されたことは,上記(1)エ認定のとおりであるけれども,これは,このような形で差額負担が公表され,研究者らに利益供与の認識が生じた以上,取引の誘引等と誤解されるおそれがあるため,それを回避するための措置であると認められる。これをもって,直ちに,従来控訴人が何らかの不正な意図に基づいて,差額の負担を続けていたと推測できるものではない。
さらに,控訴人が,研究者らに料金を請求する際の基準となる原稿枚数は,図や表を枚数に含めるかどうかなどの違いによって,E社等がカウントしたそれと異なることがあり,控訴人が研究者らに請求する際の枚数の方が少なくなることはあっても,逆にそれが多くなることはなかったことは,上記(1)認定のとおりである。しかし,それが料金の大幅な相違をもたらすようなものとは認め難いし,その差異を研究者らが認識していたことを認めるに足る証拠もないのであるから,この点も,上記の認定,判断を左右するものではない。
エ また,本件英文添削を依頼する者は,主として講師,助手などの若手研究者らであり,教授や助教授からの依頼は,全体の1割強に過ぎなかったこと,また,その依頼者の中には,研修医や大学院生などのほか,医療に携わらない基礎医学の講師や海外からの留学生も含まれていたことは,上記(1)ク認定のとおりである。なお,控訴人は,平成7,8年当時,全国の9000余の病院のほとんどと取引があったが,本件英文添削の依頼を受けていたのは,そのうち約95の機関である。これらは大学の医学部やその付属病院あるいはそれに近い性格を有する機関であり,いずれも高度,かつ,先端的な研究をする医療機関であるが,必ずしも控訴人の大口の取引先というわけではない。 むろん,大学病院は医局ごとの縦割り組織であり,かつ,その傘下に多くの関連病院を抱え,それらの人事等にも多大な影響力を有しているものである(乙41の3,84ないし86,弁論の全趣旨)。上記のような医薬品の購入や処方の権限のない若手の研修医らの中から,将来,大学の付属病院あるいはその系列の基幹病院の中枢を担い,上記の権限を有するものも出てくる可能性がある。そうすると,これら若手研究者の要望に沿うことが上記のような接待の目的と全く結びつかないとはいえない。しかし,それにしても,その結びつきはかなり間接的なものであるといわざるを得ない。
さらに,論文が世界的な名声を持つ医学雑誌に掲載されるか否かは,基本的にその研究内容で決まるものである。そして,実際には投稿した論文のうち,上記の医学雑誌等に掲載されるものはごくわずかであり,控訴人が英文添削を引き受けてきた論文数は,年間数千件にのぼるのに対し,そのうち世界の医学雑誌に掲載されたものはこの12年間で約400編にすぎず(甲20,弁論の全趣旨),本件英文添削が効を奏し,それによって研究者らが直接の利益を得られるという場合は必ずしも多くはない。
オ 【要旨2】このように本件英文添削は,若手の研究者らの研究発表を支援する目的で始まったものであり,その差額負担が発生してからも,そのような目的に基本的な変容はなかったこと,その金額は,それ自体をみれば相当に多額なものではあるが,その一件当たりの金額や,控訴人の事業収入全体の中で占める割合は決して高いものとはいえないこと,本件英文添削の依頼者は,主として若手の講師や助手であり,控訴人の取引との結びつきは決して強いものではないこと,その態様も学術論文の英文添削の費用の一部の補助であるし,それが効を奏して雑誌掲載という成果を得られるものはその中のごく一部であることなどからすれば,本件英文添削の差額負担は,その支出の動機,金額,態様,効果等からして,事業関係者との親睦の度を密にし,取引関係の円滑な進行を図るという接待等の目的でなされたと認めることは困難である。
(5) 本件英文添削の差額負担が,接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為といえるか否かについて
ア 交際費は,企業会計上は費用であって,本来は課税の対象とならない支出に属するものである。それについて損金不算入の措置がとられているのは,交際費は,人間の種々の欲望を満たす支出であるため,それが非課税であれば,無駄に多額に支出され,企業の資本蓄積が阻害されるおそれがあること,また,営利の追求のあまり不当な支出によって,公正な取引が阻害され,ひいては価格形成に歪み等が生じること,さらに,交際費で受益する者のみが免税で利益を得ることに対する国民一般の不公平感を防止する必要があることなどによるものである。
このような交際費課税制度の趣旨に加え,交際費等に該当するためには,行為の形態として「接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為」であることが必要であるとされていることからすれば,接待等に該当する行為すなわち交際行為とは,一般的に見て,相手方の快楽追求欲,金銭や物品の所有欲などを満足させる行為をいうと解される。 イ ところが,本件英文添削の差額負担によるサービスは,研究者らが海外の医学雑誌等に発表する原稿の英文表現等を添削し,指導するというものであって,学問上の成果,貢献に対する寄与である。
このような行為は,通常の接待,供応,慰安,贈答などとは異なり,それ自体が直接相手方の歓心を買えるというような性質の行為ではなく,上記のような欲望の充足と明らかに異質の面を持つことが否定できず,むしろ学術奨励という意味合いが強いと考えられる。 この点に関し,被控訴人は,接待,供応,慰安,贈答に続く「その他これらに類する行為」とは,接待,供応,慰安,贈答とは性格が類似しつつも,行為形態の異なるもの,すなわち,その名目のいかんを問わず,取引関係の円滑な進行を図るためにする利益や便宜の供与を広く含むものであると主張する。
しかし,課税の要件は法律で定めるとする租税法律主義(憲法84条)の観点からすると「その他これらに類する行為」を被控訴人主張のように幅を広げて解釈できるか否か疑問である。そして,ある程度幅を広げて解釈することが許されるとしても,本件英文添削のように,それ自体が直接相手方の歓心を買うような行為ではなく,むしろ,学術研究に対する
支援,学術奨励といった性格のものまでがその中に含まれると解することは,その字義からして無理があることは否定できない。
なお,交際費等が損金不算入とされている理由の1つに,交際費で受益する者のみが免税で利益を得ることに対する国民一般の不公平感を防止する必要があることは前記のとおりである。しかし,医学,医療の発展のため,勉学や研究という負担を負いながら,論文を作成する若手の研究者に対し,世界で通用する論文に仕上げるために英文添削のサービスを提供し,それによる若干の費用負担の軽減をしたからといって,それが医師に対する過度の優遇として,国民一般に不公平感を抱かせるとはいえないと考えられる。 ウ 上記の点に関し,被控訴人は,本件英文添削の差額負担は,非公表で行われ,対象者も限定されていて,公平性,透明性が確保されていないのであるから,学術奨励金などとは同視できないと主張する。
しかし,このような差額負担が,すべての者に門戸が開かれているわけではなく,また,公表されてもいないからといって,それが故に,上記のような学術の発展という社会公共の目的がなかったといえるものではない。
もっとも,その負担の相手方が取引における意思決定において大きな影響力を有する関係者に限られているというような場合であり,かつ,その差額負担による利益の提供を相手方が認識しているような場合には,その差額負担は,客観的にみて,学問の発展に寄与するというよりは,相手方の歓心を買って,見返りを期待することにあると認められる場合もあるであろう。しかし,前述のところからすれば,本件がそのような場合に当たらないことは明らかである。
また,英文添削のサービスをするに際し,その料金が本来,そのサービスを提供するのに必要な額を下回り,かつ,その差額が相当額にのぼることを相手方が認識していて,その差額に相当する金員を相手方が利得することが明らかであるような場合には,そのようなサービスの提供は金銭の贈答に準ずるものとして交際行為に該当するものとみることができる場合もあると考えられる。しかし,前述のように,本件は,研究者らにおいて,そのような差額相当の利得があることについて明確な認識がない場合なのであるから,その行為態様をこのような金銭の贈答の場合に準ずるものと考えることはできない。 エ さらに,被控訴人は,研究者らにとって,英語による研究論文を作成することはその名声及び地位の向上という欲望を満たす重要な要素であること,それゆえ,研究者らは,その英文添削に強い関心や期待を有しているが,それが高額の経済的負担を伴うことから,控訴人は,その欲望を満たすため,本件英文添削の差額負担をしていたものであるなどと主張する。
研究者らの論文が,適切な英文添削指導を受けることによって,権威ある雑誌に掲載され,その研究者らの名声が高まることになれば,ひいて当該研究者の地位の向上や収入の増大をもたらすことがあることは確かである。また,研究者らの中には,そのような目的で論文の発表を目指す者もないとは言い切れない。しかし,そのような研究者が一般的であるとは認め難いし,本件英文添削を受けた論文の中で,世界の主要な医学雑誌に掲載されることになるものは,その中のごく一部であることは前述のとおりである。そうすると,本件英文添削が研究者らの名誉欲等の充足に結びつく面があるとしても,その程度は希薄なものであり,これをもって,本件英文添削の差額負担が,直接研究者らの歓心を買い,その欲望を満たすような行為であるということもできない。
オ 【要旨2】以上のように,本件英文添削の差額負担は,通常の接待,供応,慰安,贈答などとは異なり,それ自体が直接相手方の歓心を買えるというような性質の行為ではなく,むしろ学術奨励という意味合いが強いこと,その具体的態様等からしても,金銭の贈答と同視できるような性質のものではなく,また,研究者らの名誉欲等の充足に結びつく面も希薄なものであることなどからすれば,交際費等に該当する要件である「接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為」をある程度幅を広げて解釈したとしても,本件英文添削の差額負担がそれに当たるとすることは困難である。
(6) まとめ
【要旨2】以上のとおり,本件英文添削の差額負担は,その支出の目的及びその行為の形態からみて,措置法61条の4第1項に規定する「交際費等」には該当しないものといわざるを得ない。
そうすると,本件各事業年度において,控訴人の本件英文添削事業により生じた支出すなわち本件負担額を交際費等に該当するとして,これを損金に算入しなかった本件各更正処分は,その限度で違法である。そして,この損金不算入を取り消した場合,平成6年3月期の納付すべき税額が66億8249万1400円に,平成7年3月期のそれが,78億5853万4700円に,平成8年3月期のそれが,82億6010万0100円となることは,本件の計数関係(当事者間に争いがない。)に照らして明らかである。そこで,本件各更正処分のう
ち,上記の各税額を超える部分を取り消すこととする。
2 結論
したがって,控訴人の請求を認容することとし,これと異なる原判決を取り消すこととする。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 淺生重機 裁判官 及川憲夫 裁判官 竹田光広)
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