判例検索β > 平成14年(ネ)第616号
配当異議事件
事件番号平成14(ネ)616
事件名配当異議事件
裁判年月日平成14年4月30日
法廷名東京高等裁判所
結果棄却
判例集等巻・号・頁第55巻2号1頁
判示事項金銭債権に対する差押えの申立てにおいて附帯債権を申立て時までの確定金額として請求債権が表示された場合に配当手続で債権計算書を提出して申立て後の附帯債権を請求債権に加えることの許否
裁判要旨金銭債権に対する差押えの申立てにおいて附帯債権を申立て時までの確定金額として請求債権が表示された場合でも,配当手続で債権者が配当等の時点までの附帯債権を含めた債権計算書を提出したときには,申立て後の附帯債権も請求債権に含め,配当計算の基礎に加えるべきである。
戻る / PDF版
主 文
本件控訴を棄却する
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
原判決の当該欄に記載のとおりである。ただし,3ページ24行目の「1億9484万4964円」を「1億9498万4964円」と改める。
第3 当裁判所の判断
1 元金に対する遅延損害金のように基本債権に附帯する債権は,強制執行申立て時以降基本債権の支払済みまでの間のもののように申立て時においては未発生のものであっても,基本債権とともに強制執行を申し立てる場合には,配当等により請求債権が満足される時点において,それが発生していることを明白に確認し得るから,このような債権を請求債権とする強制執行申立ても許容されるものと解される。ところで,金銭債権に対する差押えの申立てにあっては,請求債権額が第三債務者の支払額に影響を及ぼすことがあり,そのような場合,附帯債権の額を計算しなければならないこととなると第三債務者に対し過大な負担を負わせることとなることから,附帯債権額については申立て時までのものに限定して差押えの申立てをするのが実務慣行となっている。このような慣行の成立の背景には,金銭債権の差押えの場合は,第三債務者に差押命令が送達されてから1週間を経過したときには債権者に取立権が生ずるために早期に取り立てることが可能であることや,差押えが競合しても第三債務者が速やかに供託した場合には比較的早期に配当が可能であるため,申立て後の附帯債権の額も少額にとどまることが多いことがあるものと考えられる。しかし,配当に至るまでが短期間にとどまらない場合もあることは本件を見ても明らかであり,法がそのような場合まで一律に申立ての時点までの附帯債権のみを基礎として,債権執行の申立てや配当手続の実施を予定していると解することは,不動産執行手続の場合や,債権執行であっても執行裁判所による換価が予定されている場合には基本債権の支払済みまでの附帯債権を請求債権とすることを容認している現行実務とも整合しないことに照らしても,到底採り得ないところである。また,一般的に,強制執行の申立てにおいて特定された請求債権につき,それを配当等の時点までに拡張し,申立て時における請求債権以外の債権につき配当等を求めることは,それが申立ての際の行為に反し,他の債権者の利益を害することとなることから,禁反言により許されないと解されるが,これに対し,上記のように【要旨】金銭債権差押えの申立てにおいて附帯債権が請求債権とされ,ただ,その額を申立て時までに限定して確定金額として表示されているという場合には,第三債務者の負担軽減のための実務慣行に従ったものと見られ,債権者は当該附帯債権を確定的に限定する意思とは必ずしも解されないというべきであるから,債務名義に係る請求権の一部に限定した執行の申立てと見ることはできず,しかも,附帯債権については申立て時までに限定した差押命令を得たが,差押えの競合により配当手続が実施されるに至ったような場合には,後に附帯債権を拡張するについて合理的な理由があるというべきであるから,配当手続において債権者が債権計算書を提出し,そこにおいて配当等の時点までの附帯債権をも含めたときには,申立て後の附帯債権についても補充があったものと認め,これを配当計算の基礎に加えるべきものと解される。これに対し,附帯債権を申立て時までに限定した場合であって,配当等の時点までの附帯債権を含めた債権計算書が提出されていないときには,申立て時以降の附帯債権を請求する債権者の意思が確認し得ない以上,必ずしもこれを配当の基礎に加える必要はないというべきである(執行裁判所としては,債権計算書を提出した債権者について配当等の時点までの附帯債権を配当の基礎とする場合には,公平の見地から,債権計算書を提出しない債権者についても同様の取扱いをすることは必ずしも許されないものではないと解される。)。
控訴人は,上記のように解すると,高率の遅延損害金の約定をする債権者に多額の配当を得させることとなり,経済取引においてより高率の遅延損害金を定めることとなって取引界を混乱させることとなると主張するが,そのような問題があるとすれば,金利の規制の一環として解決されるべきものであり,不動産に対する強制執行においては認められているにもかかわらず,ひとり金銭債権に対する執行手続におい
てのみ遅延損害金の配当を制限することにより解決を図るべき問題ではないから,失当というほかはない。
2 そうすると,本件においては,被控訴人は配当に先立って執行裁判所に対し主たる債権1億9498万4964円,附帯債権3億5076万3865円,合計5億4574万8829円とする債権計算書を提出しているからこの合計金額を配当の基礎としなければならないのに対し,控訴人においては,債権計算書を提出していないから,当初の請求債権額を配当の基礎とすれば足りる。したがって,配当の基礎となる債権額は,被控訴人が5億4574万8829円,控訴人が,その申立てに係る債権差押命令に表示された請求債権額である1億8067万6134円から前回配当額である1876万6484円を控除した1億6190万9650円となり,これを基礎として控訴人及び被控訴人に対し今回の配当可能額である6510万9438円を配分すると,被控訴人には5021万2639円,控訴人には1489万6799円となる。 なお,債権計算書を提出して当初の請求債権を補充すれば,差押命令申立て時以降の附帯債権を配当の基礎とすることができるが,控訴人は,実務慣行ことに本件における執行裁判所である東京地方裁判所民事第21部の取扱いを前提に債権計算書を提出しなかったものであることが窺われるものの,被控訴人と控訴人との間には前回配当に当たっても配当異議訴訟が係属し,1審判決が本判決とほぼ同様の解釈を示し,申立て後の附帯債権の補充には債権計算書の提出が必要である趣旨を判示した上,同事件に限っては慣行に従って計算書を提出していない控訴人も同様に扱うこととするとして控訴人についても配当日までの附帯債権が算入され,同判決は確定したのであり(甲6の1,2),したがって,今回の配当においても同様の事態が生ずることは十分に予想されたにもかかわらず,控訴人は債権計算書を提出していないのであるから,上記のように慣行に従ったとの事情があったとしても,これを特別に考慮する必要はないというべきである。
また,本件においては,控訴人は,控訴人への配当の基礎に配当日までの附帯債権が算入されるべきであるとする主張をなんらしていないのであるから,弁論主義の見地からしても,被控訴人及び控訴人への配当額は上記のとおりとなるべきものである。
3 以上によれば,本件配当表につき,被控訴人へ配当すべき額よりも少ない額への変更を求める被控訴人の本訴請求は,全部認容すべきこととなる。 第4 結論
よって,原判決は以上判示したところと異なる限度で不当であるが,被控訴人からの不服申立てがないので,控訴人の本件控訴については,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 矢崎秀一 裁判官 高橋勝男 裁判官 佐村浩之)
トップに戻る

saiban.in