判例検索β > 昭和46年(ネ)第1709号
立替金請求事件
事件番号昭和46(ネ)1709
事件名立替金請求事件
裁判年月日昭和49年7月18日
法廷名東京高等裁判所
判例集等巻・号・頁第27巻3号247頁
判示事項請負人の約定期間内工事の完成が注文者の協力義務違反により不能となつた場合と注文者が負担する設計料支払債務の履行期
裁判要旨請負人の約定期間内工事の完成が注文者の資金調達の協力義務違反によつて不能になつた場合には、注文者が負担する設計料支払債務は後払の約旨にかかわらず、工事履行不能と同時にその履行期が到来する。
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主 文
控訴人両名は連帯して被控訴人に対し、金三一〇万円及びこれに対する昭和四三年九月二二日以降支払いずみに至るまで年六分の割合による金員を支払え。
訴訟費用中第一審の費用は被控訴人の負担とし、第二審の費用は控訴人両名の負担とする。
この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。 事 実
被控訴人は、当審で訴を変更して、主文第一項と同旨の判決を求め、控訴人ら代理人は、請求棄却の判決を求め、右訴の変更に異議を述べなかつた。 当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、次に加え、削り、改めるほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決三枚目―記録二七丁ー表三行目及び原判決四枚目―記録二八丁ー裏二行目に「試験抗」とあるのはいずれも「試験杭」と改め、原判決三枚目―記録二七丁ー裏五行目に「而して、右は」とあるのを「よつて」と、同行から次の行にかけて「本件契約の履行が」とあるのを「本件契約に基づく訴外会社の債務の履行は」とそれぞれ改め、原判決五枚目ー記録二九丁ー表五・六行目「契約約款第二三条」とある後に「第三項(不可抗力によるか、または正当な理由があるときは、請負者は、すみやかにその理由を示して、注文者に工期の変更を求めることができる。このとき工期の変更日数は、注文者、請負者、監理技師が協議して定める。)」を加え、原判決六枚目―記録三〇丁―表九行目「現状回復義務」を「原状回復義務」と改める。)。
一 被控訴人は、次のように述べた。
1 請求原因四を左のとおり改める。
「本件契約において設計監理料は、前記のとおり工事代金に含まれる約であって、破産者訴外日本開発建設株式会社(以下、訴外会社というは、「支払方法は、設計者と協議の上決定する」旨の契約条項に基づき昭和四一年一二月一二日設計者であるA、控訴会社代理人Bと協議のうえ、設計料を三一〇万円と定め、同日内金一五〇万円支払のため金額一五〇万円の小切手一通残金一六〇万円支払のため金額各四〇万円の約束手形四通を振り出してAに交付し、右小切手金手形金をいずれも期日に支払つた。」
2 請求原因五を左のとおり改める。
「訴外会社は、昭和四二年五月二〇日不渡の手形を出し、同月二二日支払いを停止し、同年一一月一六日に破産宣告を受け、被控訴人は同日その破産管財人に選任された。」
3 請求原因六に左のとおり附加する。
「なお被控訴人がした右の契約解除の意思表示はいずれも被控訴人が請負った工事のうちいわゆる未完成の分のみに限つて契約を解除する趣旨であつた。」 4 請求原因七を左のとおり改める。
「以上の事実関係に基づき被控訴人は、控訴人らに対し連帯して、当初の請求に代る新請求の第一としては、請負代金のうち前記履行不能前に実施した設計の設計料相当額を、第二としては、契約解除による原状回復として、契約に基づき訴外会社が控訴会社に対する給付として設計者に支払つた設計料相当額を各訴状送達の翌日である昭和四三年九月二二日以降支払ずみに至るまで商法所定年六分の割合の遅延損害金を附して支払うことを請求する。」
5 なお本件請求にかかる請負代金債権の履行期は、本件請負契約上の請負人の債務の履行不能確定の時すなわち控訴会社が遅れて漸く建築確認申請をした昭和四二年三月三日ないし確認がなされた同年四月一七日に到来した。
6 請求原因三の(三)の後に左のとおり加える。
「控訴人らは、本件請負契約が履行不能となつたのは、訴外会社の倒産によると主張するが、その主張事実を争う。控訴会社の建築着工協力義務が履行されていたならば訴外会社は倒産しなかつたかも知れないのであつて、訴外会社の倒産と本件請負契約の履行不能との間にはなんらの因果関係はなく、右履行不能は控訴人の責に帰すべき協力義務の不履行に因るものである。
二 控訴人ら代理人は、次のように述べた。
1 一1の被控訴人新主張事実中本件設計監理料四〇〇万円が本件工事代金八、一〇〇万円中に含まれること、は認めるが、その余は争う。請求原因一(4)の特約条項後段のうち「設計者と協議の上決定する」とは注文者請負人、及び設計者の
三者で協議の上決定する趣旨である。
2 一2の被控訴人主張事実を認める。
3 仮に、訴外会社が控訴会社に対し本件工事に基づく代金債権を有するとしても、その債権の弁済期は、本件請負工事契約に基づき代金八、一〇〇万円中、本件建物上棟後二週間内に二、〇〇〇万円、工事完成時に二、〇〇〇万円、工事完成後六か月以内に中間金三、〇〇〇万円及び残金全部を支払う約定であつたところ、訴外会社は、本件契約につき本格的な建築工事はもとより基礎工事にすら着工していない。従つて弁済期は未だ到来していない。
三 証拠(省略)
理 由
一 昭和四一年一二月七日控訴会社を注文者とし、訴外会社を請負者として、両会社の間に、(1)工事場所東京都台東区ab丁目c番d号、(2)請負代金八、一〇〇万円、但し、代金支払前控訴人Bが本件敷地六七坪八合に抵当権を設定することにより請負人が他より借り入れる金員をもつて工事の費用にあてることができる、(3)右代金には、同地上に存する建物四棟(延三六三平方メートル六三)の取り毀し費用も含むこと、(4)設計監理料四〇〇万円は、本件請負工事代金に含まれることとし、その支払方法は設計者と協議のうえ決定すること、(5)工期 昭和四一年一二月一二日着工、同四二年八月二五日完成、同月三〇日引渡等の約定の下にBビル新築請負契約が締結されたこと、控訴人Bは、同日、控訴会社が訴外会社に対して負担すべき本件契約上の債務につき、訴外会社に対し連帯保証を約したこと、以上は、いずれも当事者間に争いがない。右事実に成立に争いのない甲第二七号証の一、二乙第一号証、甲第三七号証の二ないし四、当審証人Cの供述によつて成立を認める甲第三九号証、当審証人C、同A、原審(第二回)及び当審(一部)における控訴人本人Bの供述及び弁論の全趣旨によれば、控訴人Bは、控訴会社専務取締役であり、同会社代表取締役Dの夫でもあつて、控訴会社の代理人として、本件契約につきその締結等一切を担当したものであるが、控訴会社が計画したBビルの新築につき昭和四〇年一〇月下旬頃一級建築士のAに設計監理を依頼し、これに応じて設計、仕様を完成した、Aとの間で設計監理料を四〇〇万円と定め、これを請負工事代金に含めるという条件で見積り合わせと称する入札を行い、曲折を経て、入札に応募した訴外会社との間に冒頭認定の本件契約を締結するに至つたこと、本件契約締結にあたり訴外会社から控訴会社に提出された見積書(乙第一号証の一部)27号には設計料三〇〇万円、監理料費一〇〇万円と記載され、これを一括した合計四〇〇万円を請負代金の一部とすることに双方合意したが、控訴会社は、それまでにAに対し設計料を全く支払つていなかつたので右四〇〇万円のAに対する支払方法を訴外会社とAとの間の協議に委ねるとともに、訴外会社に対し設計料をすみやかにAに支払うよう要望したこと、そこで訴外会社は、昭和四一年一二月一二日Aと協議のうえ、設計料のうち三一〇万円を取り敢えず支払うことと定め、即日同人に対し右支払のため平和相互銀行横浜支店を支払人とする金額一五〇万円の小切手一通、満期を昭和四二年一月三一日、同年二月一五日、同月二八日、同年三月一五日とするいずれも金額四〇万円、支払場所東京相互銀行横浜支店の約束手形四通を振り出し交付し、これらの手形小切手金をいずれもとどこおりなく支払つたことがそれぞれ認められる。成立に争いのない甲第三七号証の一、当審における控訴人本人Bの供述中右認定に反する部分は採用せず、ほかにこれを動かすだけの証拠はない。
そうとすれば控訴会社は訴外会社に対し請負代金中すくなくとも右設計料相当額についてはこれを支払うべき義務があるというべきである。
控訴人らは、右設計料相当額の代金債務は、訴外会社が未だ本件契約に基づく本格的な建築工事に着工せず、上棟もしていないのであるから、約旨に従えば控訴人側でまだ支払わなくともよいと主張し、前顕乙第一号証、甲第二七号証の一、二によれば本件契約において請負代金の支払期は第一回が上棟後二週間以内に二、〇〇〇万円、第二回が完成時に二、〇〇〇万円、第三回が完成後六か月以内に三、〇〇〇万円、第四回が同じく完成後六か月以内に残金全部と定められていたことが認められ、訴外会社が未だ本件契約に基づく上棟も完了していないことは弁論の全趣旨から被控訴人の争わないところである。しかし成立に争いのない甲第三六号証の一ないし三、前顕甲第三七号証の二ないし四、原審における控訴人本人Bの第二回供述によれば、訴外会社は本件契約と同時に建築工事に着手すべくその準備工事を進めていたが、Aがした設計がその後のボーリングによる土質調査の結果大巾な変更を必要とすることとなつた結果、着工することができず設計の変更及びこれに基づ
く建築確認を待つていたこと、控訴会社は、昭和四二年三月三日に至り漸く建築工事の建築確認申請をなし、同年四月一七日確認書の交付を受けることができたが、これを訴外会社側に呈示することなく、しかも同日控訴人Bは冒頭に説示した約旨(2)のもとに控訴会社側が訴外会社に差し入れていたビル敷地の権利証を一寸見せて呉れと申し向けて手にすると訴外会社担当者の制止を排して持ち帰つてしまい、これによつて訴外会社の工事費調達を妨げたこと、そもそも本件の建築工事については控訴会社側に十分の資金の用意がなく、そのため前示認定のような請負代金後払方式の支払方法が定められ、また控訴会社がその敷地を担保に提供して訴外会社に建築資金の調達をなさしめる特約が付せられるに至つたことが認められ、前顕甲第三七号証の一、原審(第一、二回)及び当審における控訴人B本人の供述中<要旨>右認定に反する部分は採用し難く、ほかにこれを動かすだけの証拠はない。以上の事実関係に弁論の全趣旨をあわせれば、訴外会社としては約定の工期内はもちろんのこと、工事費調達の関係上約定に従い本件建築工事を完成させることは不可能となつたところ、その原因は専ら控訴人側にあるものと認められる。そうとすれば前示のような弁済期の定めあることにつき、利益を有する控訴人側にとつて建物の上棟、竣工がまだなされていないとのことはあたかも条件成就により不利益を受ける者が故意に条件の成就を妨げた場合にも比すべき場合にあたるのであるから、代金債務についての履行期の約定はその効力を失いむしろ訴外会社の本件契約に基づく建築義務の期間内履行不能の確定したおそくとも昭和四二年四月一七日において代金債務の履行期は到来したものと認めるべきである。控訴人らの主張する契約約款に基づき訴外会社側に工期変更請求権を生ずることは前叙のような事実関係のもとにおいて訴外会社側から履行期の到来を主張する妨げとなるものではない。そして、請負代金全体のうちBビル新築工事及び基礎工事に対する代金部分、旧建物取り毀し工事に対する代金部分及び設計料・監理費用に相当する代金部分は相互に明かに区別し得るから、被控訴人の自認するいわゆる未完成部分の本件契約の解除は、設計料相当の代金の支払を求めるについてはなんらの支障を生じない。
二 訴外会社が昭和四二年一一月一六日横浜地方裁判所において破産宣告を受け、被控訴人が破産管財人に選任されたことは当事者間に争いがない。 三 してみれば、控訴人らに対し、控訴会社については請負代金中設計料相当の三一〇万円、控訴人Bについては保証債務三一〇万円ならびにそれぞれに対する昭和四二年四月一八日より後である昭和四三年九月二二日以後支払いずみに至るまで商法所定年六分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める被控訴人の主請求は正当であるから、これを認容すべく、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九〇条、九三条一項、九五条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 園部秀信 裁判官 森綱郎)
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