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違法確認等請求控訴事件(原審 広島地方裁判所平成15年(行ウ)第18号)
事件番号平成17(行コ)12
事件名違法確認等請求控訴事件(原審 広島地方裁判所平成15年(行ウ)第18号)
裁判年月日平成18年6月6日
法廷名広島高等裁判所
結果棄却
判例集等巻・号・頁第59巻2号1頁
原審裁判所名広島地方裁判所
原審事件番号平成15(行ウ)18
判示事項モーターボート競走法施行規則8条1項に基づく国土交通大臣の場外発売場の設置確認申請にあたり国土交通省海上技術安全局長通達等によって添付書類として求められる市町村長の同意書作成に市長が応じないことと抗告訴訟の対象
裁判要旨モーターボート競走法施行規則8条1項に基づく国土交通大臣の場外発売場の設置確認申請にあたり国土交通省海上技術安全局長通達等によって添付書類として求められる市町村長の同意書作成に市長が応じないことは,同意書の添付がない場合,国土交通大臣により確認申請が却下される可能性が高いことを考慮しても,抗告訴訟の対象となる処分に当たらない。
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主文1
本件控訴をいずれも棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。

第1

実及び理由
控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
A競艇施行組合からの要望(平成11年8月19日付け宮艇業第166号)にある広島場外場の設置についての広島市とA競艇施行組合との間の協定書締結について,被控訴人が,平成15年3月24日A競艇施行組合に対して行った,これに同意しない旨の回答が無効であることを確認する。

3
被控訴人は,控訴人に対し,A競艇施行組合がモーターボート競走の施行者として広島市α13番8号に場外発売場を設置するために国土交通大臣に対して確認申請を行う際に求められる同意書(別紙「場外舟券売場の設置に関する同意書」と同一内容の記載のある文書)を交付せよ。

第2

事案の概要
原判決「事実及び理由」の「第2

事案の概要」のとおりであるから,これ

を引用する。
なお,当審において当事者は特に以下の主張をする。
(控訴人の主張)
最高裁判所第2小法廷平成17年7月15日判決(以下「平成17年最高裁判決」という。)は,医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの。以下同じ。)7条1項に基づく病院開設許可の申請に対して,県知事が同法30条の7に基づいて行った病院の開設を中止するようにという勧告について,医療法上は,この勧告に従わなくてもそのことを理由に病院開設の不許可等の不利益処分がなされることはないが,厚生省通知(昭和62年9月21日付け保発第69号厚生省保険局長通知)において,「医療法30条の7の規定に基づき,都道府県知事が医療計画達成の推進のため特に必要があるものとして勧告を行ったにもかかわらず,病院開設が行われ,当該病院から保険医療機関の指定申請があった場合については,健康保険法43条の3第2項に規定する『著シク不適当ト認ムルモノナルトキ』に該当するものとして,地方社会保険医療協議会に対し,指定拒否の諮問を行うこと」とされていたのであり,上記医療法及び健康保険法の規定の内容やその運用の実情に照らすと,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には,相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができ,保険医療機関の指定を受けることができない場合には,実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになるので,病院の開設を中止するようにとの勧告は行政事件訴訟法3条2項に定める「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当すると解するのが相当である,と判断した。
平成17年最高裁判決は,上記勧告について,その運用の実情から,相当程度確実に保険医療機関に指定されないという不利益が生じ,その結果として,病院の開設を断念せざるを得なくなるという事実上の不利益が生じる場合には,勧告自体には何らの法的効果がなくとも,公権力の行使に当たると判断したものである。
本件の場合も,場外発売場の設置確認についての所轄庁である国土交通省が,市長の同意がなければ場外発売場の設置確認は不適法な申請として受理されないこととなると解して差し支えないと回答しているのであるから,運用の実情として,市長の同意がなければ相当程度確実に場外発売場の設置確認は受理されないこととなり,場外発売場の設置を断念せざるを得なくなる。本件における市長の同意には,このような実際上,事実上の効果があるのであるから,平成17年最高裁判決に照らし,公権力の行使に当たると解すべきである。被控訴人は,病院開設の場合,保険医療機関の指定を受ける以前に多額の費用がかかるのに対し,場外発売場の場合には制度上事前に多大な費用はかからないと主張するが,控訴人は,広島市及びA競艇施行組合から,施設会社になることを懇願され,広島市からの指導・指示に基づいて手続を進め,既に総額30億2400万円の資金を現実に拠出しているのであって,回復しがたい重大な損害・不利益を被っていることは明白である。被控訴人・広島市が,今になってこれらの指導・指示と背馳する態度を取ることは,禁反言ないし信頼保護の法理に著しく反するものである。
(被控訴人の反論)
平成17年最高裁判決は,本来当然には関連しない別個の法律(医療法,健康保険法)に基づく制度が関連づけられて運用されていること(勧告に従わないと,保険医療機関の指定を拒否するという趣旨が内在している。),病院開設には保険医療機関の指定を受ける以前に多額の費用がかかること(保険医療機関の指定を受けるためには,医療法7条に基づく病院開設許可を得た後,同法27条に定めるところにより,都道府県知事から使用許可証の交付を受けていなければならず,さらに,その使用許可を得るためには,同法21条の規定及び所定の省令の定めるところにより,病院の建物等を建築し,医療設備を整え,医師や看護師を雇うなどして,必要な人員及び施設を確保しておかなければならない。)等の事情を考慮し,後続処分(保険医療機関の指定拒否)を阻止するためには勧告段階で争わせる訴訟形態が適当であると判断したのであり,単に行政庁の行為が及ぼす効果等から,当該行為の処分性を認めたものではない。
すなわち,平成17年最高裁判決は,医療法,健康保険法という2つの法律を組み合わせた制度の運用上における当該勧告の位置づけ,性格を検討した上で,事後的に争ったのでは回復しがたい重大な損害を被るおそれがあること,かつ,争点は勧告の段階で全て明らかで紛争の成熟性にも欠けないことを理由に,医療法30条の7に基づく都道府県知事の勧告に処分性を認めたものである。
ところが,平成17年最高裁判決で示された病院開設にかかる都道府県知事の勧告と保険医療機関の指定との関係を,本件における場外発売場設置にかかる市長の同意と国土交通大臣による設置確認との関係と比較すると,保険医療機関の指定に当たっては,病院開設の許可を得て,病院の建設等を完了していなければならず,必然的に事前に多大な費用がかかるため,制度上,保険医療機関の指定拒否処分を受けてからその処分を争ったのでは回復しがたい重大な損害を被るおそれがあるのに対し,国土交通大臣の確認の際には場外発売場の建設を完了しておく必要はなく,事前に多額の費用はかからないため,国土交通大臣に確認申請を却下されてからこれを争っても,回復しがたい重大な損害を被るおそれがないこと,病院開設にかかる勧告には法律の根拠があるのに対し,場外発売場設置にかかる市長の同意には法律の根拠がないことなどの相違があるから,本件における市長の同意に平成17年最高裁判決の法理は適用されないと解すべきである。
第3

当裁判所の判断
当裁判所も,本件訴えはいずれも不適法であって,却下すべきであると判断する。その理由は,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決の「第3
当裁

判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。
1
13頁4行目の「したがって」から8行目末尾までを以下のとおり訂正する。「本件不同意がなされたからといって,そのことを理由として法律上当然に国土交通大臣に対する本件設置確認申請が受理されなかったり,却下処分が行われるわけではない。施設予定地の市長の同意が得られなければ前記通達等があることにより申請が却下される可能性が高いというに過ぎない。このように,本件不同意は,法律規則上,明文をもってその要件効果が定められているわけではなく,また,法律規則の解釈上にその根拠を有するものではない。そして,市長の同意が得られなかったからといって当然に控訴人の権利義務の内容に影響するものではないから,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである。
また,控訴人が本訴において求めている同意書の交付請求は抗告訴訟の一類型としての義務付けの訴えと認められるところ,本件不同意が抗告訴訟の対象となる処分に該当しないことは前述したとおりであるから,このような義務付けの訴えもまた不適法といわざるを得ない。」
2
13頁15行目の「あり」を「あるが」に訂正し,同じ行の「「市長の」から16行目の「正当な解釈といえるが,」までを削除する。

3
13頁21ないし23行目を以下のとおり訂正する。
「2

控訴人は,県知事が,医療法30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告が行政処分に当たると判断した平成17年最高裁判決を引用し,本件の場合も,場外発売場の設置確認の所轄庁である国土交通省が,市長の同意がなければ場外発売場の設置確認は不適法な申請として受理されないこととなると解して差し支えないと回答している以上,市長の同意がなければ,場外発売場の設置確認を得ることができず,場外発売場の設置を断念せざるを得なくなるのであるから,市長の同意は公権力の行使に当たると解すべきであると主張する。
(1)

しかしながら,平成17年最高裁判決の事例については次の点を指
摘することができる。
知事による病院開設中止の勧告は行政指導ではあるけれども法律上の根拠を持っており,保険医療機関の指定に関する健康保険法の定め(平成17年最高裁判決の事例では健康保険法の定め及び行政庁内部の取扱準則)は,事実上ではあるが知事による勧告の実効性を担保するような構造となっている。
そして,知事による勧告は「医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合」にされるのに対し,保険医療機関の指定拒否は「保険医療機関等として著しく不適当である」場合などに行われるもので,両制度の趣旨目的は一部重なるものの同一というわけではなく,知事による勧告には独自の行政目的があることからすると,保険医療機関の指定拒否処分を争う理由として知事による勧告の不当性を持ち出すことは相当ではなく,知事による勧告に瑕疵があるかどうかはそれ自体を争訟の対象とするのが相当である。
また,健康保険法及び関係政省令の定めによれば,保険医療機関の指定申請は,病院の開設許可を知事から得た後,病院の建物や医療設備を整え,医師看護師等のスタッフを確保した後でなければ行うことができない。したがって,知事による中止の勧告を直ちに争うことができないとすると,勧告を受けた者は病床の全部又は一部が保険医療機関の指定から除外される(平成17年最高裁判決の事例では保険医療機関の指定を受けることができない)蓋然性が高度であるにもかかわらず,多額の投資をしなければならないことになり,著しく不安定な立場に置かれる結果になる。
(2)

これに対して,本件における市長の同意は,法律規則に根拠がある
ものではなく,モーターボート競争法施行規則8条1項の要件具備の有無を国土交通大臣が判定するための資料として使用することが行政庁内部における通達によって定められているに過ぎない。したがって,医療法における知事の病院開設中止勧告のようにそれ自体としての行政目的を有する行政行為ではない。
また,場外発売場を設置しようとする者が国土交通大臣に確認申請をするに当たっては,施設建物について建築主事の確認を得る必要はあるけれどもその限度で足り,国土交通大臣の確認を得た後に建築に着手すればよい(乙2,4)。したがって,控訴人が本件同意の効力を争うことができず,国土交通大臣の確認拒否処分を待ってこれに対する取消訴訟を提起しなければならないとしても,そのことのために,市長の不同意が明らかになった時点において場外発売場の設置を事実上断念しなければならなくなるような経済的負担を控訴人に対して負わせるものとまではいい得ない。
(3)

控訴人は,平成17年最高裁判決は行政機関の行う行為につき,そ
の性質や法的拘束力ではなく事実上の効果に着目して行政処分性を肯定したものであると主張するが,以上検討したところによれば,そのように一般化することはできない。
また,控訴人は,場外発売場建設のために広島市等からの指導・指示に基づいて既に多額の資金を拠出している旨主張するが,平成17年最高裁判決の事例とは次元を異にする問題である。
(4)

したがって,控訴人が平成17年最高裁判決を引用して行う主張を
採用することはできない。」
第4

結論
以上の次第で,その余の控訴人の主張について判断するまでもなく,控訴人の訴えはいずれも不適法であるから却下を免れない。よって,本件控訴は理由がないので棄却する。
広島高等裁判所第2部

裁判長裁判官

加藤
裁判官

金村誠敏彦
裁判官

太田敬司
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