判例検索β > 平成17年(行コ)第310号
公務外認定処分取消請求控訴事件(通称 地公災基金神奈川県支部長公務外認定処分取消)
事件番号平成17(行コ)310
事件名公務外認定処分取消請求控訴事件(通称 地公災基金神奈川県支部長公務外認定処分取消)
裁判年月日平成18年10月25日
法廷名東京高等裁判所
結果その他
判例集等巻・号・頁第59巻4号10頁
原審裁判所名横浜地方裁判所
原審事件番号平成14(行ウ)80
判示事項頸椎椎間板の変性がある県立養護学校の教諭が重症心身障害の脳性麻痺児に行った介助と同教諭の頸椎椎間板ヘルニアの発症との間に相当因果関係があり,当該頸椎椎間板ヘルニアが公務上の疾病に当たるとされた事例
裁判要旨加齢及び日常的な公務の負荷による微小外傷の蓄積のために頸椎椎間板の変性がある県立養護学校の教諭が,公務として重症心身障害の脳性麻痺児を抱きかかえて頸肩腕に大きな負荷のかかる姿勢で水分補給の介助を行い,頸椎椎間板ヘルニアを発症した場合につき,(1) 介助の対象となった小学生の児童が首の据わっていない肢体不自由児であり,上記教諭は,膝の上に上記児童を乗せてその首に負担がかからないように,その頭部,頸部及び体幹を強い力で抱きかかえ,自分の頸部をねじ曲げて上記児童の表情をのぞき込んで話しかけながら,左腕で頭部を包み込むようにして上記児童の上半身の姿勢を安定させ,左示指及び中指により口唇の開閉動作を介助し,右手に持ったスプーンで少量ずつ口元に水分を運んでいたこと,介助を開始後,上記児童が,急激に,ふだんより強い力で全身を大きく反り返らせたため,上記教諭は,膝の上から落ちないように左腕に強く力を入れて上記児童の上体を支えるとともに,右手に持ったスプーンの水が上記児童にかからないように頸部をねじ曲げたまま上体に力を入れて上記児童を保護する姿勢を保ち,頸部に強い痛みと左手の甲にしびれを感じながら約20分間介助を続け,この間,上記児童が同様の大きな反り返りの動きを3,4回強い力で繰り返し,介助を終えたときには,上記教諭に頸部の痛み及び左頸肩腕のしびれが残ったこと,(2) 上記教諭は,その数か月後にも別の小学生の児童で首の据わっていない肢体不自由児を抱きかかえて上記と同様の姿勢で右手でミニコップにより水分を補給中,上記児童が,急激に,全身を硬直させて強い力で突っ張らせる動きをしたため,上記教諭は,頭部を保護するとともに上記児童の緊張を解いて関節の屈曲を保つため,頸部をねじ曲げたまま左上肢に強く力を入れ,水を誤嚥しないように左腕に強く力を入れて上記児童を支える姿勢をとり,頸部に強い痛みを覚え,左肩腕から左手の甲にかけて痛み及びしびれを感じながら約20分間介助を続け,この間,上記児童が同様の動作を何回も繰り返し,介助を終えたときには,上記教諭に頸部及び左頸肩腕に強い痛み,しびれ及びこりが残ったことなど,判示の事実関係の下では,上記教諭が行った上記各介助は,頸椎椎間板の変性を加齢及び長年の微小外傷の蓄積に基づく自然の経過を超えて増悪させ,その結果として頸椎椎間板ヘルニアを発症させたもので,頸椎椎間板ヘルニアの発症との間に相当因果関係があり,当該頸椎椎間板ヘルニアは公務上の疾病に当たる。
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H18.10.25東京高等裁判所平成17年(行コ)第310号公務外認定処分取消請求控訴事件
主文1
原判決を取り消す。

2
被控訴人が控訴人に対して平成12年8月29日付けでした地方公務員災害補償法に基づく公務外認定処分を取り消す。

3
訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

主文同旨
第2
1
事案の概要(略語等は,原則として,原判決に従う。)
本件は,養護学校の教諭である控訴人が,重症心身障害の脳性麻痺児を抱き
かかえて水分補給の介助を行っていた際に2度にわたり受傷したことにより頸椎椎間板ヘルニアを発症したとして,被控訴人に対して公務災害の認定の請求をしたところ,被控訴人がこれを公務外の災害と認定する処分をしたため,控訴人がその処分の取消しを求めた事案である。
2
原審は,控訴人に発症した頸椎椎間板ヘルニアにつき公務起因性を認めるこ
とはできないとして,控訴人の請求を棄却した。
3
当裁判所は,原審と異なり,控訴人に発症した頸椎椎間板ヘルニアにつき公
務起因性を認めることができ,控訴人の請求を認容すべきものと判断した。4
(1)

前提事実(証拠により認定した事実は,括弧内に当該証拠を掲記した。)控訴人(昭和29年▲月▲日生)は,昭和52年4月から昭和58年3月ま
で神奈川県立C養護学校の教諭として,昭和59年4月から昭和61年3月まで大和市立D中学校で知的障害児の学級担当の教諭として,昭和62年4月から平成10年3月まで神奈川県立E養護学校(E養護学校)の教諭として,それぞれ勤務していた。
(2)

控訴人は,平成8年12月3日,担当していた重症心身障害の脳性麻痺児で
ある小学校2年生の男子生徒(A)を左腕で抱きかかえて水分補給の介助を行っていたところ,Aが急激に何回も全身を強い力で反り返らせたため,約20分間にわたり,上体に力を入れて左腕でAの身体を強く支え,Aの身体を落とさないようにして介助を続けた際,頸部に痛みを覚えるとともに左手の甲にしびれを感じ,介助を終えたときには頸部の痛み及び左頸肩腕のしびれが残った(甲13,14,51,原審控訴人本人)(第1受傷)。
(3)

控訴人は,平成9年4月7日,担当していた重症心身障害の脳性麻痺児であ
る小学校1年生の女子生徒(B)を左腕で抱きかかえて水分補給の介助を行っていたところ,Bが急激に何回も全身を硬直させて強い力で突っ張らせたため,約20分間にわたり,上体に力を入れて左腕でBの身体を強く支え,Bの身体を落とさないようにして介助を続けた際,頸部に強い痛みを覚えるとともに左肩から左手の甲にかけて強い痛み及びしびれを感じ,介助を終えたときには頸部及び左肩腕に強い痛み,しびれ及びこりが残った(甲13,14,51,原審控訴人本人)(第2受傷)。
(4)

控訴人は,第1受傷の後,医療法人甲病院(甲病院)において平成9年3月
10日に頸椎椎間板症の診断を受け,第2受傷の前後に同病院に通院した後,同年6月16日,神奈川県立乙病院(乙病院)において頸椎椎間板ヘルニア(頸部及び左肩腕の痛み,しびれ等の神経症状を伴うもの。本件疾病)の診断を受け,同年10月22日,丙病院において頸椎前方除圧固定術(腸骨骨移植)の手術を受け,同年9月1日から平成10年3月22日まで療養休暇を取得した後,同年4月に神奈川県Fろう学校に転勤した。
(5)

控訴人は,平成10年6月11日,被控訴人に対し,第1受傷及び第2受傷
本件各受傷)により本件疾病に罹患したとして公務災害認定請求を行い,平成12年8月29日,本件疾病は公務外の災害であるとの認定(本件認定)を受けた。そこで,控訴人は,同年11月9日,地方公務員災害補償基金神奈川県支部審査会に対し,本件認定の取消しを求めて審査請求をし,平成13年10月29日,これを棄却する旨の裁決を受けた。さらに,控訴人は,同年11月26日,地方公務員災害補償基金審査会に対し,本件認定の取消しを求めて再審査請求をし,平成14年9月18日,これを棄却する旨の裁決を受けた。
5
争点

本件疾病は,公務に起因するものであるか。
6
(1)

控訴人の主張
本件疾病は,本件各受傷によるものである。
Aは,弛緩タイプの重症心身障害の脳性麻痺児であり,水頭症で首が据わっ
ておらず,ふだんは身体の力を抜いているものの,介助を拒否する際などには強く力を入れて全身を反り返らせたり,大きく動かしたりする,特に介助の困難な生徒であった。
第1受傷の際,控訴人は,左腕でAの頭部を包み込むようにし,左手の指をAの首の後ろから回してAの口唇に当ててその開閉を介助し,右手のスプーンでAの口元に水分を運んで水分補給を行っており,控訴人の体勢は,左肩を外転させ,左肘を屈曲させた上,首を傾けてAの口唇をのぞき込みながら,左手指で口唇介助を行うというもので,控訴人の頸椎に大きな負担がかかるものであった。控訴人は,上記介助中,突然Aが何回も全身を強く反り返らせたため,上体と左腕に力を入れてAを強く抱え直し,約20分間水分補給の介助を続け,頸部に痛み,左手の甲にしびれを覚えた。

Bは,アテトーゼタイプ(一定の位置を保持できない状態)の重症心身障害
の脳性麻痺児であり,全身の硬直及び伸展を引き起こしやすかった上,摂取障害による誤嚥,下顎後退による気道閉塞等の危険のある,特に介助の困難な生徒であった。
第2受傷の際,控訴人は,全身を使ってBの身体の各部を押して屈曲させた上,左腕でBの頭部を包み込むようにし,左手をBの首の後ろから回して指でBの口唇及び下顎の開閉を介助し,右手でミニコップによりBの口元に水分を運んで水分補給を行っており,控訴人の体勢は,第1受傷の際と同様,控訴人の頸部に大きな負担がかかるものであった。
控訴人は,突然Bが全身を硬直させて何回も強く突っ張らせたため,上体と左腕に力を入れてBを強く抱え直し,約20分間水分補給の介助を続け,頸部に強い痛み,左肩から左手の甲にかけて強い痛み及びしびれを覚えた。

頸椎椎間板ヘルニアが外傷によって発症又は増悪することは,医学的にも解
明されており,本件各受傷の経緯に照らせば,本件疾病が本件各受傷に起因することは明らかである。

控訴人は第1受傷後直ちに医師の診察を受けてはいないが,その理由は,頸
部を直立させ又は前屈させることで症状が緩和されることもあったことに加え,冬季休業又は健康診断の際に対処すればよいと考えていたためである。オ
控訴人は,本件各受傷に先立つ平成4年2月8日,甲病院において頸椎椎間
板症の診断を受け,同月12日及び同年4月3日に通院したが,それ以後は第1受傷時の平成8年12月3日まで約4年8か月の間,頸部の痛みや左手及び左腕のしびれ等の症状は一切ないまま公務に従事していたのであり,この点からも本件疾病が本件各受傷に起因することは明らかである。
(2)

控訴人の頸部は,以下のとおり,長期間にわたる介助労働により椎間板の変
性が形成されていたのであり,控訴人の過重な公務に起因する本件各受傷により頸部に強い外力を受け,これが大きな引き金となって本件疾病が発症したもので,加齢によるものではない。

E養護学校における授業時間は午前9時15分から午後2時40分までであ
り,控訴人ら教諭の公務の内容は,①スクールバス又は自家用車によって登校した生徒を車両から抱きかかえて降ろし,車椅子に乗せた上で教室に移動し,教室では車椅子から降ろして休憩させ,健康観察やオムツ交換等を行う,②午前及び午後の個別指導において,生徒を車椅子に乗せて指導教室に移動して指導を行い,指導内容によっては生徒を抱きかかえて移動させる,③昼食時には生徒を車椅子に乗せて給食室又は教室に移動して生徒の食事の介助等を行い,食事後には生徒を車椅子から降ろして健康観察等を行う,④障害の重さや体調の悪さ等のため生徒を抱きかかえて水分補給又は食事の介助を行う際は,頸部をねじ曲げた不自然な姿勢で,左腕を後頭部から顔に回して生徒の頭部及び上体を支えながら,指で口唇介助の作業を長時間続ける,⑤随時,生徒のオムツを換え又はトイレに行かせるが,その際,車椅子から生徒の身体を抱きかかえて移動させ,また,車椅子上の生徒の身体に不自然な荷重がかからないよう,頻繁に生徒の身体を引き上げ,姿勢を調整する,⑥午後の個別指導後には,生徒を車椅子から降ろして健康観察等を行い,その後再び車椅子に乗せてスクールバス又は自家用車まで移動し,抱きかかえて車両に乗せるというものであった。
また,生徒が重度の障害を抱えているために,担当教諭は,常に様々な事態を想定して細心の注意を払いながら公務に従事することを要し,精神的にも大きな負担を負う。
そして,このような長期間にわたる介助業務の繰り返しにより,控訴人の頸椎椎間板に変性がもたらされたものである。

控訴人のように肢体不自由児等の障害児の介助経験の長い教諭は,より障害
の重い生徒を担当し,担当する生徒の人数も多く,経験の浅い教諭の指導も行うため,肉体的・精神的な負担はより一層大きくなる実情にあった。
本件各受傷の当時,A及びBは,特に障害の程度が重く,当時の体調の悪さ等も相まって,頻繁な水分補給を抱きかかえて行う必要があり,しかも水分摂取の拒否や不随意運動が起こりやすい状態にあったもので,本件各受傷は,このような控訴人の過重な公務に起因して起こったものである。
上記アのような状況の下でも,控訴人は,頸椎椎間板ヘルニアを発症することなく,頸肩腕の状態は安定していたところ,上記のとおり過重な公務に起因する本件各受傷による2回にわたる強い外力の作用が大きな引き金となって頸部の強い痛み及び頸肩腕のしびれ等を覚えるに至り,その症状が治癒しないまま引き続き大きな肉体的・精神的な負荷のかかる介助労働に従事し続けたことにより,頸椎椎間板ヘルニアの手術を余儀なくされるほど症状が悪化したのである。
(3)

偶発的事故による負傷とは異なり,疾病の原因は一つに尽きるものでなく,
公務外認定処分の取消訴訟の審理の対象は当該処分の違法性の有無であり,本件訴訟において控訴人が公務災害の認定請求時に主張していなかった事実を主張することは,何ら妨げられるものではない。
7
(1)

被控訴人の主張
本件疾病は,本件各受傷に起因するものではない。
外傷そのものが原因となって頸椎椎間板ヘルニアとなることは余りなく,医
学的にも認められていない。また,介助業務に従事する職員が頸椎椎間板ヘルニアを発症しやすいということも,医学的には認められていない。頸椎椎間板ヘルニアは,医学的には,加齢及び日常生活上の微小外傷の蓄積による変性の進行によって生じるとされている。
控訴人は,本件疾病の発生時には頸椎椎間板ヘルニア発症のピークである40歳ないし50歳の年齢に該当し,本件疾病も加齢及び日常生活上の微小外傷の蓄積が原因となって発症した可能性が高い。

控訴人は,本件疾病に罹患する前の平成元年7月22日及び平成4年2月6
日に乙病院において,同月8日に甲病院において,頸椎の痛み等を訴えており,頸椎に何らかの基礎疾患が存在した疑いがある。また,控訴人は,平成9年10月22日に丙病院で手術を受けた際,第5頸椎に骨棘が認められ,骨棘の形成には2,3年を要することからすれば,頸椎には本件疾病に罹患する前から加齢及び日常生活上の微小外傷の蓄積による変性が存在していたといえる。したがって,本件疾病も,かかる加齢及び日常生活上の微小外傷の蓄積による変性を原因とするものと考えるのが,現在の医学的知見に最も合致するものであり,高度の蓋然性を有するということができる。
さらに,第2受傷後のMRI検査等によれば,控訴人は,第3・第4頸椎間,第4・第5頸椎間,第5・第6頸椎間に頸椎の変性があるところ,僅か2度の外傷によりこのような多椎間に変性が生ずることは考え難く,このことも,本件各受傷が本件疾病の原因ではないことを裏付ける。

控訴人は,第1受傷の直後ではなく,3箇月余り経過した平成9年3月10
日に初めて本件疾病について医療機関で受診している上,その診療録には外力が原因であることをうかがわせる記載はない。さらに,控訴人は,同日から第2受傷後の同年5月2日まで継続して治療を受けているものの,治療方法に変更がなく,控訴人の症状が第2受傷によって悪化したことはない。
控訴人が本件認定の手続において本件疾病の原因として主張したのは本件各受傷のみであるから,本件訴訟において本件認定の適否を判断するにあたり,それ以前の受傷及び公務の内容は関連性を有しない。
(2)

養護学校の教諭の業務は,頸椎に過度の負荷のかかる業務ではなく,E養護
学校小学部の教諭の担当生徒数も,平成5年度から平成9年度まで教諭1人当たり1.2人ないし1.4人で,全国平均の1.6人ないし1.7人と比べて少なく,授業時間(中学部門は最大でも週約26時間,小学部低学年は最大でも週約21時間),授業日数(平成8年度は222日,平成9年度は224日),休業期間(夏季休業41日,冬季休業14日,学年末休業10日)及び年次休暇取得日数(平成7年は15日余,平成8年は20日余)のいずれの観点からも,控訴人の本件各受傷前の公務の状況は過重なものではなかった。
(3)

公務外認定処分取消訴訟における審理は傷病の原因を基準にすべきものであ
り,本件疾病の原因が長期間にわたる介助作業の繰り返しであるとの控訴人の主張は,審理の範囲を超えており,主張自体失当である。
第3
1
(1)

当裁判所の判断
事実経過について
前記前提事実並びに証拠(甲1ないし3,6ないし8,11ないし18,28,31ないし35,38ないし40,51ないし54,64,乙1ないし7,13ないし18,20ないし22,25ないし27(以上につき枝番号を含む。),原審証人G,同H,原審控訴人本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件の事実経過として,以下の事実を認めることができる。
(控訴人の職歴)

控訴人(昭和29年▲月▲日生)は,大学で障害児教育を専攻した後,昭和
52年4月から昭和59年3月まで肢体不自由児施設が併設された神奈川県立C養護学校の教諭として,同年4月から昭和62年3月まで大和市立D中学校の知的障害児の学級担当の教諭として,同年4月から平成10年3月までE養護学校の教諭として,それぞれ勤務していた。
(E養護学校における職務の内容)

E養護学校は,小学部,中学部,高等部及び訪問教育部に分かれており,前
3部には知的障害教育部門及び肢体不自由教育部門がある。控訴人は,同校において,昭和62年度から平成元年度まで知的障害教育部門を,平成2年度以降は肢体不自由教育部門を担当した。同校の肢体不自由教育部門の小・中学部は,生徒の半分以上を知的障害等を伴う重症心身障害児が占めており,生徒の大半が車椅子を使用している。
同校における控訴人ら教諭の日常の公務の内容は,以下のとおりである。①

生徒をスクールバス又は自家用車から抱きかかえて降ろし,車椅子に乗せて
教室に移動する。


教室で生徒を車椅子から降ろして休憩させ,生徒の健康観察及びオムツの交
換等を行う。


午前及び午後の個別指導においては,プログラムに従い,生徒を車椅子に乗
せて指導教室に移動して指導し,指導中は,指導内容に応じて,車椅子ごと又は身体を抱え上げて生徒を移動させる。


昼食時には生徒を車椅子に乗せて給食室又は教室に移動し,食事の介助を行う。食事の介助は,食事を喉に詰まらせないよう,生徒の姿勢,口唇及び舌の動きについて行い,異常な筋緊張を伴う生徒に対しては,生徒を抱き,関節を曲げさせて緊張を緩和し,体調が悪い生徒に対しては,教諭の膝の上に生徒を乗せて抱きかかえて緊張を解くなど,個々の生徒の状態に応じた方法及び体勢で行う。⑤

食事後,生徒を車椅子から降ろし,健康観察等を行う。



午後の個別指導後,生徒を車椅子から降ろし,健康観察等を行う。


昼食時以外にも,必要に応じ,食事の介助と同様,生徒の状態に応じた方法
及び体勢で,同様の注意を払いながら,水分補給の介助を行う。
オムツの交換や用便の際には,車椅子から生徒の身体を抱きかかえてベッド又は便座に移動させる。
授業中又は食事中,身体に不自然な荷重がかからないよう,頻繁に生徒の身体を引き上げ,車椅子上の生徒の姿勢を調整する。


下校する生徒を車椅子に乗せてスクールバス又は自家用車まで移動し,生徒
を抱きかかえて車両に乗せる。
(本件各受傷前の状況)

控訴人は,昭和63年6月,腰椎椎間板ヘルニアに罹患して乙病院で診療を
受け,同年8月8日に腰椎椎間板ヘルニアの切開手術を受けた。このころから,控訴人は,腰に負担がかからないように,腰を曲げ上体を前傾させて生徒を抱き上げるのではなく,上体を直立させたまま腕の力を使って生徒の身体を自分に引きつけて抱き上げるようにし,このため,頸肩腕には一層負担がかかるようになった。エ
控訴人は,平成元年ころ,頸部痛が1,2週間続いたため,同年7月22日,
乙病院において診察を受け,頸椎の動きは良好であり,ジャクソンテスト(頸部を後屈させて,頸部痛の変化を確かめるテスト。頸椎椎間板ヘルニアの他覚所見を診断するためのテストの一つ)に反応は見られないと診断された。

控訴人は,平成2年度から,介助すれば片足で立つことができるが,発作が
多く,座っていても後方に転倒してしまうことがしばしばある脳性麻痺の中学生の男子生徒を担当した。控訴人は,平成3年11月ころ,同生徒(当時中学2年生。身長161.5㎝,体重37.7㎏)を車椅子から教室の畳の床に下ろす際,ひとまず片足で立たせたところ,同生徒が後ろに転倒しそうになり,転倒を防ぐため腕に強く力を入れて同生徒の身体を起こし,このとき,頸部に痛みを覚えた。カ
その後,控訴人は,直立姿勢をとると左肩から左手にかけて痛み及びしびれ
を覚えるようになり,平成4年2月6日に乙病院で診療を受けて頸椎症と診断され,同月8日,12日及び同年4月3日には甲病院で診療を受けて頸椎椎間板症と診断された。その診断後,控訴人は,1人で行うことの多かった生徒の車椅子への乗降を他の教諭と2人で行うようにし,その後は,左肩から左手にかけての痛み及びしびれが消失し,同月以降後記第1受傷までの数年間,通院することはなかった。(第1受傷)

平成8年度,控訴人が担当したAは,身長126㎝,体重20.5㎏の首の
据わっていない弛緩タイプの肢体不自由児で,かつ,知的障害を伴い,てんかん発作の頻繁にある水頭症の脳性麻痺児であった。Aは,ふだんは全身が弛緩した状態のため,更衣,入浴等の際のみならず,水分補給及び食事の際にも,体調が悪いとき又は介助を拒絶するときには,抱きかかえられた状態で介助を受けるが,水頭症で頭が大きく,首に負担がかからないように,Aの頭部,頸部及び体幹を強い力で抱きかかえるなど,控訴人の頸肩腕に大きな負担のかかる姿勢で介助の作業を行う必要がある上,拒絶の意思又は興味を示す際には突然全身に強い力を入れて身体を大きく反り返らせたり,教諭の髪を引っ張ったりするほか,水分補給が足りないとてんかん発作が頻繁に起きるなど,状態の変化が大きく予測が困難であるため,特別の注意が必要な特に介助の難しい生徒であった。
平成8年度の控訴人の属するクラスでは,知的障害を伴う肢体不自由児6人を教諭5人で担当し,控訴人は,障害児の介助経験が最も長かったため,障害の程度が重く,特に介助の難しいAを含む2人の重症心身障害の脳性麻痺児を担当することとなった。また,控訴人は,経験の浅い他の教諭が担当する生徒の介助にも指導及び補助をする負担を負っていた。

控訴人は,平成8年12月3日午前9時40分ころ,約1週間の欠席後に登
校したAの水分補給の介助のため,教室の畳の上の座椅子に座り,膝の上にAを乗せて抱きかかえ,頸部をねじ曲げて表情をのぞき込んで話しかけながら,左腕で頭部を包み込むようにしてAの上半身の姿勢を安定させ,左示指及び中指により口唇の開閉動作を介助し,右手に持ったスプーンで少量ずつ口元に水分を運んでいた。介助を開始して間もなく,口唇にスプーンが触れた際,Aが,急激に,ふだんより強い力で全身を大きく反り返らせたため,控訴人は,膝の上から落ちないように左腕に強く力を入れてAの上体を支えるとともに,右手に持ったスプーンの水がAにかからないように頸部をねじ曲げたまま上体に力を入れてAを保護する姿勢を保ったところ,頸部に強い痛みを覚え,左手の甲にしびれを感じた。控訴人は,その後も約20分間,同様の痛み及びしびれを感じながら介助を続け,この間,Aが同様の大きな反り返りの動きを3,4回強い力で繰り返したため,介助を終えたときには,頸部の痛み及び左頸肩腕のしびれが残った。

頸部の痛み及び左頸肩腕のしびれの症状は,その後も持続したが,控訴人は,
公務を続け,頻繁な水分補給及び食事の介助が続くと症状が悪化する一方で,一時的に介助の負担を軽減したり,頸部を直立させ又は前屈させたりすることで症状が緩和することもあったため,冬休みの休養による症状の消失に期待し,平成9年2月20日の健康診断までは医師の診察を受けることなく勤務を継続した。コ
控訴人は,同日,神奈川県予防医学協会が実施した健康診断の際,医師に対
し,第1受傷及びその後の症状について,平成8年12月初めころ障害児を抱きかかえてお茶を飲ませていた際の受傷のため左頸肩から左手小指にかけてしびれが生じた等と訴え,医師から「頸椎症の疑い要経過観察」との診断及び頸部X線撮影の指示を受け,平成9年3月5日に頸椎X線撮影を受けたが,E養護学校事務局の事務処理が遅れ,平成10年3月に至り,「医師の指示

就業上の注意事項」の欄に

「頸椎症の疑い要経過観察」と記載された健康診断結果報告書を受領した。サ
控訴人は,X線撮影後指示がなかったため不安になり,平成9年3月10日,
甲病院において診察を受け,上記健康診断の際と同様の症状を訴え,頸椎椎間板症の診断を受け,その後,同月12日,15日,19日,22日,25日,同病院に通院して頸部のけん引及び鎮痛剤の処方等を受けた。
控訴人は,甲病院における診察においては,知覚鈍麻又は筋力低下は認められなかったものの,スパーリングテスト(頸椎椎間板ヘルニアの他覚所見を診断するテストの一つであり,頸椎を軽く側屈するとともに後屈位で頭部から圧迫を加え,痛みが生じるかによって診断するテスト)では左側に反応があり,同月10日に撮影したX線の所見では第5頸椎及び第6頸椎に骨棘が認められた。
(第2受傷)

平成9年度,控訴人の担当したBは,首の据わっていないアテトーゼタイプ
の肢体不自由児で,かつ,知的障害及びてんかん発作を伴う重症心身障害の脳性麻痺児であった。Bは,身長100㎝,体重11.3㎏で,不随意の筋緊張のため全身を硬直させて強く突っ張らせることが多く,水分補給及び食事の介助の際には,摂取障害による誤嚥又は呼吸障害の危険があるため,介助者の左手指による口唇の開閉と並行して左薬指による下顎の引き出しによる気道の確保の必要があるほか,筋緊張によって舌を噛むことのないよう,介助者の左中指で下顎を押し下げるとともに,介助者が抱き上げて関節を屈曲させることにより緊張を緩和するなど,介助者の頸肩腕に大きな負担のかかる姿勢を長時間続けながら,状態のよい瞬間を見計らって手指の細かい動作を繰り返して介助することを要した。

控訴人は,平成9年4月7日午前11時ころ,教室でBの水分補給の介助を
行い,座椅子に座り,膝の上にBを乗せて抱きかかえ,頸部をねじ曲げ,顔をのぞき込んで口唇の動きを見ながら,左腕で頭部を包み込むように支えてBの上半身を安定させ,左示指及び中指により口唇の開閉動作を補うとともに,左薬指で下顎を補助して呼吸を楽にさせて緊張を解き,右手でミニコップにより少量ずつ水分の補給を行った。
口唇にミニコップを当てて水を含ませた際,Bが,急激に,全身を硬直させて強い力で突っ張らせる動きをしたため,控訴人は,頭部を保護するとともにBの緊張を解いて関節の屈曲を保つため,頸部をねじ曲げたまま左上肢に強く力を入れ,水を誤嚥しないように左腕に強く力を入れてBを支える姿勢をとったところ,頸部に強い痛みを覚え,左肩腕から左手の甲にかけて痛み及びしびれを感じた。控訴人は,その後も約20分間,同様の痛み及びしびれを感じながら介助を続け,この間,Bが同様の動作を何回も繰り返したため,介助を終えたときには,頸部及び左肩腕に強い痛み,しびれ及びこりが残った。

控訴人は,同日,保健室で湿布薬を貼ったが,頸部及び左肩腕の強い痛み,
しびれ及びこりが緩和されず,その症状が急激に増悪していったため,同年4月8日,14日,21日,甲病院に通院し,第2受傷及びその後の症状を訴えて診察を受けるとともに,けん引治療を続けたが,従前とは異なり,けん引により逆に痛みが出るようになったため,同月26日,けん引は中止された。この間,控訴人は,同月22日まではBを腕に抱きかかえて水分補給及び食事の介助を行い,同日までにBに合わせた車椅子を製作し,以後車椅子に座らせた状態でBの水分補給及び食事の介助を行った。
(本件各受傷後の治療の経過)

その後,控訴人は,頸部及び左肩腕の痛み及びしびれが更に増悪して握力が
低下し,鎮痛剤を飲まなければ症状が緩和されなくなったため,同年5月12日,乙病院に転医して診療を受け,通院して鎮痛剤の処方を受けた。控訴人は,同病院の診察において,ジャクソンテスト及びスパーリングテストに反応が認められ,左手に知覚障害及びしびれが認められた。そして,控訴人は,同年6月13日,同病院においてMRI検査(椎間板変性を基盤とする頸椎症を診断する画像検査法)を受け,同月16日,頸椎椎間板ヘルニアの診断を受けた。
また,控訴人は,同年5月15日以降,丁大学病院にも通院して診察を受け,ジャクソンテスト及びスパーリングテストともに左側第6頸椎領域に反応が認められ,MRI検査の結果,同年6月6日,第5・第6頸椎間の頸椎椎間板ヘルニアの診断を受け,同月14日以降,戊整形外科医院にも通院を開始し,投薬,レーザー等の治療を受けた。
控訴人は,同年9月1日から平成10年3月22日まで,療養休暇を取得した。タ
控訴人は,丁大学病院及び戊整形外科医院から手術を勧められ,平成9年1
0月14日から16日にかけて丙病院に検査入院し,CT,MRI等の検査を受け,スパーリングテスト及びジャクソンテストともに左側に反応が認められ,MRI所見では第5・第6頸椎間の頸椎椎間板にヘルニアが認められた。控訴人は,同月22日,同病院で頸椎前方除圧固定術(腸骨骨移植)の手術を受け,頸椎から脱出していた髄核を摘出し,第5・第6頸椎本体の縁を削り,腸骨から移植片を採取して第5・第6頸椎間に挿入し,圧迫の強かった第5頸椎の骨棘の切除を受け,主治医のH医師により,控訴人の頸椎に繊維輪の断裂を認められ,小さな軟骨破片が採取された。

控訴人は,同年12月6日から約1箇月間,戊整形外科医院に通院して術後
の経過観察を行った上で,平成10年3月23日,E養護学校に復職したが,再発の危険があったため,同年4月,公務の内容において頸部に負担の少ない神奈川県立Fろう学校に転勤した。
(控訴人の認定請求と本件認定)

控訴人は,同年6月11日,被控訴人に対し,本件疾病について,傷病名を
頸椎椎間板ヘルニア,災害発生の状況を平成8年12月3日午前9時40分ころ第1受傷及び平成9年4月7日午前11時ころ第2受傷として,公務災害の認定の請求を行った。
被控訴人は,平成12年8月29日,本件疾病は公務外の災害である旨の本件認定を行った。
(2)

上記認定を妨げる事実等の有無
控訴人は,平成8年12月3日の第1受傷後,平成9年2月20日の職場での健康診断及び同年3月10日の甲病院での受診まで医師の診察を受けていないが,前記(1)ケのとおり,控訴人の第1受傷後の症状は継続していたものの,頻繁な水分補給及び食事の介助が続くと症状が悪化する一方で,一時的に介助の負担を軽減したり,頸部を直立させ又は前屈させたりすることにより症状が緩和することもあったため,冬休みの休養による症状の消失に期待し,同年2月20日に予定されていた健康診断の際に相談しようと考え,受診することなく勤務を継続したというのであり,第1受傷後に発現した頸椎椎間板ヘルニアの症状が治癒しないまま第2受傷を経て増悪して本件疾病の発症に至ったとの前記(1)ケからタまでの認定は,上記の経緯によって左右されるものではない。

甲病院の診療録(乙2)には,控訴人の第1受傷及び第2受傷並びに各受傷
後の症状の訴えに関する記載がないが,一般に患者の訴えのすべてが診療録に記載されるとは限らず,控訴人と甲病院との間の医療保険の取扱い等を巡るやり取りに関する甲第51,第38号証及び控訴人本人の原審供述に照らしても,前記(1)サ及びセの認定は,上記診療録の記載の有無によって左右されるものではない。ウ
丁大学病院の診療録(乙3の10頁)の平成9年9月26日欄には「1年間
左上肢痛あり増悪は本年5月以降はない」との記述があるが,同診療録に添付されている控訴人が自ら作成して同病院に持参した経過メモ(乙3の4,5頁)には,頸部に頸椎椎間板ヘルニアの症状が現れた時期について「96.12」(平成8年12月)と記載されていることと対比すると,第1受傷以前に頸椎椎間板ヘルニアの症状が現れることはなかったとの前記(1)カの認定は,上記診療録の記述によって左右されるものではない。
2
(1)

本件疾病について
証拠(甲4ないし10,19ないし26,29,30,63,乙7ないし1
2,19,33,原審証人I,同H,同J)によれば,頸椎椎間板ヘルニアにつき,次の事実を認めることができる。

頸椎は,7個の椎体から成り,各頸椎間に椎間板がある。椎間板は,中に髄核があり,その周囲を線維輪が囲んでいる。頸椎椎間板ヘルニアは,頸椎椎間板の線維輪に亀裂が生じ,髄核が周囲に脱出した状態をいう。頸椎椎間板ヘルニアになり,脱出した髄核が周辺の神経を圧迫すると,頸部,肩,腕,上肢等に継続的な痛み,しびれ,こり等の神経症状が生ずるようになる。なお,頸椎椎間板ヘルニアになっても,ヘルニアの大きさいかんによっては痛み等の神経症状が生じない場合もある。

頸椎椎間板ヘルニアは,40歳台の男性に発症することが相対的に多く,ま
た,第5頸椎と第6頸椎との間の椎間板に最も多く発症する。

頸椎椎間板ヘルニアの発症の原因については,必ずしも医学的に一義的にそ
の機序が解明されているわけではないが,一般には,椎間板は若年時から老化が始まる部位であり,加齢による椎間板の退行変性が基盤にあって,これに不良な姿勢,重い物を持ち上げる動作,物理的な負荷等の外力による外傷等,様々な要因が複合的に作用して発症に至ると考えられている。そして,加齢による椎間板の退行変性は相当期間にわたって緩やかに進行し,種々の外力も相当期間の反復継続による微小外傷の蓄積が椎間板の変性の進行に影響を与えると考えられている。一時的な外力による外傷が頸椎椎間板ヘルニアの発症に与える影響については,「頸椎捻挫などの外傷を繰り返しおこしたり,椎間板を損傷するような強い外傷は,変性を促進する引き金となる」(甲4),「椎間板変性や脊椎症がすでにあるときには,軽い外傷によって,脊椎症による症状がひきおこされたり,増悪することはしばしばみられる。……過伸展損傷としての一面を持つために,椎間板変性がすでに存在する年代では,過伸展によって下位頸椎に椎間板ヘルニアが生じたり,……神経損傷を伴うものがある。……とくに,顔面や頭部を打撲しての過伸展損傷によって,椎間板ヘルニアを生じたり,……神経損傷をおこしやすい」(甲5),「椎間板線維輪の断裂は修復されなく,たび重なる外傷はこの断裂を広げ,やがて髄核の逸脱,すなわち椎間板ヘルニアとなる」(甲7),「腰部椎間板ヘルニアと同じく転落,交通事故など外傷に基づくものもある」(甲8),「事故などで首を打撲したときや,急な動作をしたときなど,首に無理な力がかかると頸椎の椎間板が飛び出し,神経を圧迫して痛みが生じます(頸椎椎間板ヘルニア)」(甲9)等の見解を明らかにする医学文献があり,他方で,「外傷が誘因となっている症例は存在するが,その頻度は高くない」(甲6,乙7)とする見解を示す医学文献もある。エ
なお,頸椎の椎間板に変性が生ずると,頸椎の椎体の辺縁部に骨棘(局所的
な骨の増殖で,その多くがX線像で棘状を呈するもの)が形成されることが多い。その形成についての病理学的な見解は一致していないが,骨棘は,数箇月程度では形成されず,形成には数年間を要する。
(2)

上記(1)の頸椎椎間板ヘルニアの発症の機序に関する医学的な見解及び前記
1の諸事実を基礎にすると,以下の事実を推認することができる。ア
控訴人は,平成8年12月3日及び平成9年4月7日の公務遂行中,体勢及
び状況等からみて頸椎に大きな負荷がかかる状態で本件各受傷に遭い,その直後に,従前現れていなかった頸部及び左肩腕の継続的な痛み,しびれ等を生じ,それが治癒しないまま増悪し,平成9年6月,第5頸椎と第6頸椎との間の頸椎椎間板ヘルニアの診断を受け,同年10月22日に手術が行われるに至ったというのであり,本件各受傷直後に現れた上記頸部及び左肩腕の継続的な痛み,しびれ等は頸椎椎間板ヘルニアを生じた場合に認められる症状であることをも考慮すると,本件各受傷は本件疾病の発症の要因の一つとなったものと推認することができる。イ
他方,平成9年3月の時点で控訴人の第5頸椎及び第6頸椎には骨棘が形成
され,骨棘の形成には数年間を要するとされており,この骨棘は第1受傷前から形成が始まっていたものと推認され,骨棘は椎間板に変性が生じた場合に形成されることが多いこと,控訴人は平成4年2月に左肩腕の一時的な痛み及びしびれを訴えて頸椎椎間板症と診断されていることに照らすと,控訴人の第5頸椎と第6頸椎との間の頸椎椎間板には第1受傷の数年前から徐々に変性が進行していた蓋然性が高く,そのような頸椎椎間板の変性の要因としては,加齢のほか,日常的な公務の負荷による微小外傷の蓄積が作用した蓋然性が高いと推認することができる。(3)

控訴人の本件疾病の発症の機序に関する医師の所見は,以下のとおりである。甲病院の医師(甲3)

平成9年6月のMRI検査により認められた第5頸椎と第6頸椎との間の頸椎椎間板ヘルニアが新しいヘルニアか古いヘルニアかは,その画像だけからは判定不可能である。本件各受傷により症状が現れたことにつき,医学的に考えられる説明は,一つは本件各受傷によりヘルニアが飛び出した場合であり,もう一つはもともとヘルニアがあったところ本件各受傷をきっかけに神経症状が出た場合であるが,どちらも医学的にはあり得ることで,平成4年2月から平成9年3月まで控訴人を診察していない以上,どちらかに当たるかは判断しかねる。

乙病院の医師(甲3)

平成4年2月と平成9年5月の2回しか控訴人を診察しておらず,その間の5年間が全く空白であるため,本件各受傷によりヘルニアが飛び出す可能性については,飛び出す場合があるかもしれないとしか言えない。

H医師(甲3,乙6,原審証人H)

本件疾病は,本件各受傷を原因としてヘルニアが飛び出したのか,従前からのヘルニアが本件各受傷をきっかけとして神経症状を発症したのか,どちらとも一概には言えない。控訴人は,平成4年の時点で頸椎及び椎間板に変性が生じており,頸椎椎間板ヘルニアは多くの要因が積み重なって発症するが,控訴人の長年にわたる介助労働による頸部の負担もその要因の一つとなったものと考えられる。エ
I医師(甲19,63,乙19,原審証人I)

控訴人は,平成3年11月に介助業務により頸椎椎間板症を発症し,以後,頸椎椎間板の変性が徐々に進行したものであり,本件疾病は,この頸椎椎間板の変性が基盤となっている。しかし,その後の日々の介助業務による負荷(精神的な緊張を含む。)が頸椎椎間板の変性の進行に寄与した可能性が大きく,そのような中で,控訴人は,本件各受傷により頸部に大きな外力を受けたため,髄核の脱出が生じて本件疾病を発症したと考えるのが妥当である。本件疾病は,頸椎椎間板の変性の進行と本件各受傷による外力が相まって不幸な経過を辿ったものであり,長年にわたる障害児の介助の公務により生じた頸椎への微小外力及びストレスが頸椎椎間板の変性を加齢を上回る速度で進行させ,不良な姿勢のままで障害児が反り返ったときに瞬間的にかかった頸椎への大きな外力が相まって,頸椎椎間板ヘルニアを発症させたものと考えられる。控訴人の本件疾病に関しては,長年にわたる公務及び本件受傷時の公務の影響を複合的かつ総合的にとらえる必要があり,基礎疾患が公務を単なる機会として本件疾病を発症させたとの見方は適切ではない。オ
J医師(乙12の1,33,原審証人J)

控訴人には,平成4年の時点で頸椎椎間板ヘルニアに至らない程度の椎間板変性又は頸椎のごく軽度の退行変性が生じていた可能性が高い。控訴人が第1受傷から3箇月経過後まで医療機関で受診しておらず,症状が徐々に現れてきたと推測されることや,骨棘の形成には数年を要することからすると,控訴人には,第1受傷前から頸椎椎間板ヘルニアが存在していたが,症状が現れていなかったものと考えられる。本件各受傷より前から存在していたヘルニアが増大したか大きさに変化がなかったかは,判断が困難である。前者であったとしても,本件各受傷より前から骨棘が形成されていたから,本件各受傷により増大したヘルニアは,骨棘を超える部分にすぎず,その割合はヘルニア全体の大きさからすれば小さいものであり,本件各受傷が本件疾病に寄与した割合は,仮にあったとしても極めて低く,本件疾病が本件各受傷により一気に生じたとは考えられない。
(なお,同証人も,原審において,頸椎の退行変性があるところに首をひねった軽い外傷を契機として頸部にしびれが生じてヘルニアが発症した事例を自ら経験したことがあり,前記(1)ウの「頸椎捻挫などの外傷を繰り返しおこしたり,椎間板を損傷するような強い外傷は,変性を促進する引き金となる」(甲4)との見解についてうなずける意見である旨述べている。)
3
(1)

争点(公務起因性)について
地方公務員災害補償法26条,28条,29条1項等は,職員が公務上疾病にかかり,一定の障害がある場合に,一定の補償(金銭の給付等)をする旨規定しており,疾病の発症を理由とする同法による補償は,疾病が公務に起因すること(公務起因性)が必要であるところ,公務起因性が認められるためには,疾病の発症と公務との間の事実的因果関係だけでなく,相当因果関係があることが必要であると解される。そして,同法による補償は,公務に内在し又は随伴する危険が現実化して公務員に疾病を発症させた場合に,その危険を負担させて補償をさせる趣旨に基づくものと解され,相当因果関係は,その疾病が当該公務に内在し又は随伴する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべきである。本件において,様々な要因が複合的に作用して発症に至るといわれている本件疾病(神経症状を伴う頸椎椎間板ヘルニア)について,その発症と公務との間の相当因果関係があるかどうか,換言すれば,その発症が公務に内在し又は随伴する危険が現実化したものと評価し得るか否かは,本件各受傷が過重な公務による負荷に基づく因子として作用した結果,頸椎椎間板の変性をその自然の経過を超えて増悪させたことによって本件疾病の発症に至ったと認められるかどうかの観点から,他の発症原因となるべき因子との関係等を踏まえて判断すべきである(最高裁平成12年7月17日第1小法廷判決・判例時報1723号132頁,最高裁平成16年9月7日第3小法廷判決・判例時報1873号162頁,最高裁平成9年4月25日第3小法廷判決・判例時報1608号148頁,最高裁平成18年3月3日第2小法廷判決・判例タイムズ1207号137頁等参照)。
(2)

地方公務員の公務災害補償給付は,職員の請求に基づき,地方公務員災害補
償基金による認定を経て行うものとされており,災害(傷病等)の原因に関する職員の具体的な主張の範囲を超えて当該傷病等の原因につきあらゆる可能性を検討して判断することまでは期待されておらず,認定の請求に際して具体的に主張された原因につき公務起因性の有無を判断すれば足り,当該原因につき公務外と認定されても,他の原因を主張して認定の請求をすることができると解するのが相当である。したがって,公務外認定処分の取消訴訟においては,認定の請求に際して具体的に主張された原因につき公務起因性を否定した当該処分の適否,すなわち具体的に主張された原因に係る公務起因性の有無が判断の対象となり,認定の請求時に主張されていない別個の原因に係る公務起因性の有無は,当該訴訟における判断の対象とはならないと解するのが相当である。
前記1(1)ツのとおり,控訴人は,認定の請求時には,専ら本件各受傷による頸椎椎間板ヘルニアの発症を主張し,長年にわたる公務の負荷による微小外傷の蓄積をその原因として主張しておらず,本件訴訟においては,本件各受傷と本件疾病の発症との間の相当因果関係の有無,すなわち本件各受傷が過重な公務による負荷に基づく因子として作用した結果,頸椎椎間板の変性をその自然の経過を超えて増悪させたことによって本件疾病の発症に至ったと認められるか否かが判断の対象となるものというべきである。
(3)

そこで,以上の観点から本件各受傷と本件疾病の発症との間の相当因果関係
の有無について判断するに,まず,本件各受傷時における控訴人の公務が,頸椎椎間板の変性をその自然の経過を超えて増悪させる危険のある特に負荷の重いものであったか否かについて検討する。
前記のとおり,控訴人は,本件各受傷当時,障害児の介助経験が長く,障害の程度が重く特に介助の難しい重症心身障害の脳性麻痺児(第1受傷時には2人)を担当し,障害の程度及び特質のために,体重約20又は10㎏の生徒を抱きかかえて左腕で支えながら頸部をねじ曲げて左手指の細かい動作で水分補給等を行うなど,頸肩腕に大きな負荷のかかる姿勢での介助を日々続けるとともに,水分補給の過程で生徒が急激に強い力で何回も全身を反り返らせたり突っ張らせるなどの激しい動きをした際,生徒を保護するために頸部をねじ曲げたまま頸肩腕に強い力を入れて無理な姿勢をとり,頸肩腕に大きな負荷のかかる姿勢のままで約20分間介助を続け,第1受傷(平成8年12月3日)の後には頸部の痛み及び左肩腕のしびれを生じ,平成9年3月10日に甲病院において頸椎椎間板症の診断を受け,更にその約1箇月後の第2受傷(同年4月7日)の後には頸部及び左肩腕の強い痛み,しびれ及びこりを生じて次第に増悪し,鎮痛剤を飲まなければ症状が消えないようになり,その約2箇月後の同年6月16日に乙病院において頸椎椎間板ヘルニアの診断を受けるに至った。
以上の事実経過に照らすと,本件各受傷当時における控訴人の公務は,頸椎椎間板の変性をその自然の経過を超えて増悪させる危険のある特に負荷の重いものであったと認めるのが相当であり,本件各受傷は,そのような控訴人の公務に内在し又は随伴する危険の発現として生じたものと認めることができる。
被控訴人は,E養護学校小学部の教諭の担当生徒数,授業時間,授業日数,休業期間及び年次休暇取得日数のいずれの観点からも,控訴人の本件各受傷の当時の公務は過重なものではなかった旨主張する。本件においては,頸椎椎間板の変性を増悪させる危険性の観点から,上記のとおり担当する生徒の障害の程度及び特質のために控訴人の公務が質的・内容的な面で特に負荷の重いものであったと認めるのが相当であり,控訴人は,障害児の介助経験が長く,特に負担の重い生徒を担当し,経験の浅い他の教諭が担当する生徒の介助にも指導及び補助をしていたことも併せ考えると,被控訴人の主張に係る執務態勢等の数量的・形式的な観点のみをもって直ちに公務の過重性を否定することはできない。
(4)

次に,本件の事実経過を踏まえ,上記のように特に負荷の重い公務の過程で
生じた本件各受傷が,頸椎椎間板の変性をその自然の経過を超えて増悪させ,本件疾病を発症させるに至ったと認めることができるか否かについて検討する。ア
前記2(1)によれば,一般に,頸椎椎間板ヘルニア及びその神経症状は,①相
応の年数の加齢(40歳代の発症が多数),②長年にわたる不良な姿勢,重量物の持ち上げ等の継続的な外力の負荷による微小外傷の蓄積,③一時的な強い外力の負荷による外傷など,様々な要因が複合的に作用して,頸椎椎間板の変性の進行,線維輪の亀裂,髄核の周囲への脱出及び周囲の神経の圧迫という機序を経て発症に至るものであり,頸肩腕の痛み,しびれ,こり等の神経症状の有無及び程度は脱出した髄核が周囲の神経を圧迫する度合いによるものと考えられている。イ
前記1(1)のとおり,控訴人は,(a)本件疾病の診断を受けた当時は43歳で
あり,(b)昭和62年度以降その発症まで約10年間にわたりE養護学校の教諭(平成2年度以降の約7年間は肢体不自由児教育部門の担当教諭)として,相当の重量のある障害児の生徒を日々何度も頸肩腕に大きな負荷のかかる姿勢で抱きかかえて介助する公務に継続的に従事し,昭和63年8月に腰椎椎間板ヘルニアの切開手術を受けた後は,障害児の生徒を抱きかかえる際に腰への負担を減らすため頸肩腕に一層負荷のかかる姿勢をとるようにし,(c)平成8年12月3日及び平成9年4月7日の本件各受傷当時,上記のとおり頸肩腕に大きな負担のかかる姿勢で介助を行う過程で,生徒が急激に強い力で全身を反り返らせたり突っ張らせたりするなどの激しい動きを何回もした際,生徒を保護するために頸部をねじ曲げたまま上体及び腕に強い力を入れて無理な姿勢をとり,頸肩腕に大きな負荷のかかる姿勢で引き続き生徒を支えながら手指の細かい動作で介助を続け,頸部及び肩腕の痛み,しびれ等を生じ,それが治癒しないまま増悪して頸椎椎間板ヘルニアの診断及び手術に至ったのであり,①控訴人の加齢,②長年の公務の負荷による微小外傷の蓄積及び③公務遂行中の本件各受傷による外傷の各要因が複合的に作用して本件疾病の発症に至ったものと推認するのが相当である。
以上を踏まえ,前記1(1)の事実経過並びに前記2(1)及び(3)の医学的な所見等を総合すると,本件疾病の発症の機序については,(A)控訴人の加齢及び長年の公務の負荷による微小外傷の蓄積により徐々に頸椎椎間板の変性が進行していたところ,第1受傷による外傷及びその後の公務の負荷による微小外傷の蓄積によりその変性が一層進行し,更に第2受傷を経て線維輪の亀裂及び髄核の周囲への脱出が生じて周囲の神経を圧迫し,神経症状を伴う頸椎椎間板ヘルニアの発症に至った可能性(第2受傷により髄核が脱出した可能性),(B)控訴人の加齢及び長年の公務の負荷による微小外傷の蓄積により徐々に頸椎椎間板の変性が進行していたところ,第1受傷による外傷が加わり,その後の公務の負荷による微小外傷の蓄積と相まって頸椎椎間板の変性が一層進行した結果,線維輪の亀裂及び髄核の周囲への脱出が生じて頸椎椎間板ヘルニアの発症に至り,更に第2受傷により髄核が周囲の神経を圧迫する度合いが強まって神経症状の発症に至った可能性(第1受傷と第2受傷の間に髄核が脱出した可能性),(C)控訴人の加齢及び長年の公務の負荷による微小外傷の蓄積により徐々に頸椎椎間板の変性が進行していたところ,第1受傷により線維輪の亀裂及び髄核の周囲への脱出が生じて周囲の神経を圧迫し,更に第2受傷を経て周囲の神経を圧迫する度合いが強まった結果,神経症状を伴う頸椎椎間板ヘルニアの発症に至った可能性(第1受傷により髄核が脱出した可能性),(D)控訴人の加齢及び長年の公務の負荷による微小外傷の蓄積により徐々に頸椎椎間板の変性が進行し,線維輪の亀裂及び髄核の周囲への脱出が生じて頸椎椎間板ヘルニアの発症に至っていたところ,本件各受傷により髄核が周囲の神経を圧迫する度合いが強まって神経症状の発症に至った可能性(第1受傷前に髄核が脱出した可能性)がそれぞれ考えられる。
訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果の発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであるところ(最高裁昭和50年10月24日第2小法廷判決・民集29巻9号1417頁参照),前示のとおり,(i)本件各受傷は,いずれも約20分間にわたり控訴人の頸肩腕に対して強い外力及び著しく大きな負荷が加わったことによって発生したものであり,その直後から,それ以前には現れていなかった頸椎椎間板ヘルニアの症状である継続的な頸部及び肩腕の痛み,しびれ等が生じ,その症状が治癒しないまま第2受傷後に増悪して頸椎椎間板ヘルニアの診断及び手術に至ったこと,(ii)第1受傷後には知覚鈍麻又は筋力の低下まではなく,頸部のけん引治療を続けてもそれによる痛みは生じず,頸椎椎間板症と診断されるにとどまったのに対し,第2受傷後には頸部及び肩腕の痛み,しびれ等の増悪に加えて手の知覚障害及び握力の低下も生じ,頸部のけん引治療による痛みも生ずるようになり,頸椎椎間板ヘルニアの診断を受けるに至ったこと等の諸事情に照らすと,本件においては,経験則に照らし,上記(A),(B)又は(C)のいずれかの機序により,本件各受傷が,控訴人の頸椎椎間板の変性を,加齢及び長年の微小外傷の蓄積に基づく自然の経過を超えて増悪させ,その結果として頸椎椎間板ヘルニア及びその神経症状の発症に至った蓋然性が高いものというべきであり,一方,上記(i)及び(ii)の事実経過等に照らすと,本件各受傷の当時,控訴人の頸椎椎間板の変性が,本件各受傷がなくても,加齢及び長年の微小外傷の蓄積に基づく自然の経過により本件疾病を発症させる程度にまで増悪していたとは認め難いといわざるを得ない。
そうすると,本件においては,控訴人の過重な公務の遂行の過程でこれに内在し又は随伴する危険の発現として発生した本件各受傷が,控訴人の頸椎椎間板の変性を,加齢及び長年の微小外傷の蓄積に基づく自然の経過を超えて増悪させ,その結果として本件疾病の発症に至ったのであり,したがって,本件疾病の発症は控訴人の公務に内在し又は随伴する危険が現実化したものと認めることができる。(5)

以上によれば,本件各受傷と本件疾病の発症との間には相当因果関係を認め
ることができ,本件疾病の公務起因性を否定した本件認定は,取消しを免れない。第4

結論

よって,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消し,控訴人の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部

裁判長裁判官

江見弘武
裁判官

岩井伸晃
裁判官

市川
多美子
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