判例検索β > 平成16年(ネ)第5667号
求償金請求事件
事件番号平成16(ネ)5667
事件名求償金請求事件
裁判年月日平成17年3月30日
法廷名東京高等裁判所
結果その他
判例集等巻・号・頁第58巻1号49頁
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成16(ワ)11739
判示事項管理費の滞納のある区分所有建物を競売により買い受けた者が支払った滞納管理費を元の所有者に求償することの可否
裁判要旨管理費の滞納のある区分所有建物を競売により買い受けた者は,管理組合に支払った滞納管理費を元の所有者に対して求償することができる。
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主文1
原判決を次のとおり変更する。

2
控訴人は,被控訴人に対し,219万5500円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3
被控訴人のその余の請求を棄却する。

4
訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。

5
この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

第1

実及び理由
控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
被控訴人の請求を棄却する。

3
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2
1
事案の概要
被控訴人は,平成16年1月21日,控訴人所有の原判決別紙物件目録記載の建物(本件建物)及びその敷地権(所有権,10万分の438)を競売(東京地方裁判所平成15年(ケ)第1231号。本件競売)により買い受け,その所有権を取得したところ,控訴人は,管理組合に対し,管理費,修繕積立金及び組合費(本件管理費等)を滞納していた。
本件は,被控訴人が,控訴人が滞納していた本件管理費等219万5500円を平成16年5月21日,管理組合に対し代位弁済したと主張して,控訴人に対し,求償金219万5500円及びこれに対する平成16年5月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
控訴人は,本件管理費等の滞納分については,本件競売事件の物件明細書等にそれが明示されており,
競売の最低売却価額からも既に控除されているから,
滞納分は被控訴人が負担すべきであると主張して争った。原審は,被控訴人の請求を全部認容したので,控訴人が控訴した。2
前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)(1)

控訴人は,平成4年12月に本件建物及びその敷地権(本件建物等)を
購入してその所有者となり,管理組合規約に基づき,A管理組合に対し,管理費月額1万2500円,修繕積立金月額1万円,組合費月額500円の支払義務を負っていた。
(2)

控訴人は,平成6年3月分以降の本件管理費等につき滞納分があり,本
件競売事件記録の現況調査報告書及び評価書には,平成15年6月現在の滞納分が207万9000円である旨,物件明細書には,管理費等の滞納分がある旨がそれぞれ記載されており(甲2の1,4の1,5の1,乙2ないし4)
,評価書においては,上記時点の滞納分に見合うものとして21%の減額(211万6000円)をし(乙3)
,最低売却価額を795万円とした
旨が記載されている。
(3)

被控訴人は,本件建物等の競売に参加し,1054万円で落札し,平成
16年1月21日,本件建物等を買い受け,所有権を取得した。
(4)

被控訴人は,A管理組合からの請求により,平成16年5月21日,控
訴人の同年1月までの本件管理費等の滞納分として219万5500円を代位弁済した(甲2の1∼3)

3
争点
(1)
(2)

4
本件管理費等の滞納分の負担者
平成16年度の固定資産税等の負担者

控訴人の主張
(1)

本件競売事件においては,物件明細書等に本件管理費等の滞納分がある
ことが明示され,最低売却価額から滞納分が控除されており,買受人は,滞納分があることを承知した上で,
安い価格で物件を取得することになるから,
本件管理費等の滞納分は,当然買受人である被控訴人において負担すべきである。(2)

控訴人は,東京都新宿都税事務所の平成16年6月1日付け納税通書に
より,本件建物等に係る平成16年度の固定資産税・都市計画税6万6100円を納税すべき旨の通知を受けた。本件建物等は,被控訴人が競落し,平成16年2月21日付けで所有権移転登記が経由されたから,同日以降の納税分5万6865円は被控訴人が負担すべきである。
66,100-(66,100×51÷365)=56,865
5
被控訴人の主張
本件管理費等の滞納分は,本来控訴人が負担すべき債務であり,被控訴人の負担部分はゼロであるから,被控訴人は,控訴人に対し,民法442条の規定に基づき,
被控訴人が支払った本件管理費等の滞納分を求償することができる。
第3

当裁判所の判断
当裁判所は,被控訴人の請求は,求償金219万5500円及びこれに対する
訴状送達の日の翌日である平成16年6月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。
1
争点(1)について
控訴人は,本件建物等の所有権が被控訴人に移転するまでの間の本件管理費等について支払義務を負っている。ところで,建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)8条は,同法7条1項に規定する債権は,債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる旨規定しており,これによれば,被控訴人は,本件管理費等の滞納分について,控訴人の特定承継人として支払義務を負っていることは明らかである。これは,集合建物を円滑に維持管理するため,他の区分所有者又は管理者が当該区分所有者に対して有する債権の効力を強化する趣旨から,本来の債務者たる当該区分所有者に加えて,特定承継人に対して重畳的な債務引受人としての義務を法定したものであり,債務者たる当該区分所有者の債務とその特定承継人の債務とは不真正連帯債務の関係にあるものと解されるから,真正連帯債務についての民法442条は適用されないが,区分所有法8条の趣旨に照らせば,当該区分所有者と競売による特定承継人相互間の負担関係については,特定承継人の責任は当該区分所有者に比して二次的,補完的なものに過ぎないから,当該区分所有者がこれを全部負担すべきものであり,
特定承継人には負担部分はないものと解するのが相当である。
したがって,被控訴人は,本件管理費等の滞納分につき,弁済に係る全額を控訴人に対して求償することができることとなる。
控訴人は,物件明細書等に本件管理費等の滞納分が明示されていることや最低売却価額における控除の措置がされていること等から滞納分は被控訴人が負担すべきであると主張する。しかしながら,物件明細書等の競売事件記録の記載は,競売物件の概要等を入札希望者に知らせて,買受人に不測の損害を被らせないように配慮したものに過ぎないから,上記記載を根拠として本件管理費等の滞納分については当然買受人たる被控訴人に支払義務があるものとすることはできない。その他被控訴人に滞納分の支払義務があることを認めるに足りる証拠はない。
2
争点(2)について
控訴人は,第2の4の(2)のとおり主張するが,仮に被控訴人に本件建物等に係る平成16年度固定資産税・都市計画税の一部を負担すべき義務があるとしても,控訴人がその支払をしたことを認めるに足りる証拠はないから,控訴人の主張は採用することができない。

3
以上のとおり,被控訴人は,本件管理費等の滞納分219万5500円を平成16年5月21日に代位弁済したところ,被控訴人が同日控訴人に対して請求したことを認めるに足りる証拠はないから,附帯請求については,訴状送達の日の翌日である平成16年6月18日がその起算日となる。
したがって,本件請求は,219万5500円及びこれに対する平成16年6月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。
よって,原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官

大藤敏

裁判官

桐ヶ谷敬三
裁判官

佐藤道明)

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