判例検索β > 平成19年(わ)第886号
覚せい剤取締法違反
事件番号平成19(わ)886
事件名覚せい剤取締法違反
裁判年月日平成20年1月10日
法廷名神戸地方裁判所
裁判日:西暦2008-01-10
情報公開日2017-10-13 01:37:59
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平成20年1月10日宣告
平成19年(わ)第886号覚せい剤取締法違反被告事件

主文
被告人を懲役2年に処する
未決勾留日数中130日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,法定の除外事由がないのに,平成19年7月上旬ころから同月15日までの間,兵庫県内又はその周辺において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン又はその塩類若干量を自己の身体に摂取し,もって,覚せい剤を使用したものである。(証拠の標目)
(省略)
(事実認定の補足説明及び弁護人の主張に対する判断)
1
前掲証拠によれば,被告人は,平成19年7月15日に兵庫県A警察署で警察官に対し尿を提出し,その尿から覚せい剤成分であるフエニルメチルアミノプロパンが検出されたことが認められるところ,一般人が普通の生活をしている際に本人がそれと認識しないで覚せい剤成分を有するものが体内に摂取されるということは通常考えられないから,被告人の尿中から覚せい剤成分が検出されたということは,特段の事情がない限り,被告人がそれと認識しながら覚せい剤を体内に摂取したことを強く推認させるものである。なお,人間の体内に覚せい剤が摂取された場合,その後10日間ほどは尿中から覚せい剤成分が検出されることは,裁判上顕著な事実である。

2
弁護人は,1)鑑定の資料とされた尿や毛髪が被告人から採取されたものであるこ(
との確実な担保がなく,鑑定の証拠価値は乏しい,2)本件各鑑定結果が,覚せい剤(
以外の他の物質でも得られる可能性を全く排除するものかどうかは不明であり,被告人から採取したとされる尿や毛髪の鑑定結果だけを証拠として有罪認定をすることは許されない旨主張する。

しかし,1)の点は,前掲関係証拠及び証人Bの公判供述によれば,平成19年7(
月15日に被告人がA警察署において警察官に対して自ら尿を提出し,その尿が鑑定に付されたものであること,及び,同月27日に医師によって被告人から毛髪が採取され,その毛髪が鑑定に付されたことが明らかに認められ,各鑑定資料とされた尿及び毛髪が被告人以外のものであることを疑わせるような事情は全く認められない。2)の点は,(
被告人が服用している薬剤には覚せい剤成分は含まれていないし(弁6,7号証)被,
告人が食べたと供述している,被告人方にあった芳香剤,消臭剤,石鹸などに覚せい剤成分が含まれていないことは明らかである。弁護人の主張は,いずれも採用の限りでない。
本件証拠上,前記1の推認を左右するような特段の事情は認められない。3
次に,弁護人は,1)被告人は何らかの精神病にかかっており,その思考が混乱し(
ている状況からみて,被告人が仮に覚せい剤に手を出していたとしても,それが覚せい剤であるとの認識を持つことが困難であって,被告人には覚せい剤使用の故意がない,(2)被告人は,精神病により,是非弁別能力及び行動制御能力を喪失しており,責任能力がなく,無罪である旨主張する。
しかし,1)の点は,被告人は,平成8年12月に覚せい剤取締法違反(覚せい剤(
の自己使用)を含む犯罪で執行猶予付きの懲役刑の判決を受けているところ,その裁判では覚せい剤を使用した事実を認めて争っておらず(検乙13号証)その事犯の捜査段,
階において,覚せい剤のことをシャブということ,その使用方法として,アルミホイルの上にシャブを乗せて熱し,丸めた紙を使って口から煙を吸う方法と小さなポリ容器にシャブ水溶液を作って肛門から入れる方法の二つを試したこと,シャブを体に入れると気持ちがよく,頭の中が真っ白になり,すっきりすること,セックスするとき使うと気持ちがよいこと,その反面,シャブを使うと怖いという気持ちもあり,使いたいという気持ちはあったが使わずにいたことなどを具体的に供述しており(検乙15号証)これ,
らからすると,本件において,覚せい剤とはどういうものか分からない旨の被告人の供述は到底信用することができない上,被告人が記載したノート(弁3号証)の2007年7月12日欄の箇所覚醒剤アルミホイルアブリツカマルという記載がある
ことからしても,被告人が覚せい剤を使用するに際しそれと知って使用したことは疑う余地がない。2)の点は,被告人が警察官に保護された際には,全裸で両拳を握りし(
めて体を膠着させ眼は前方を凝視し,口の周りに白い粉状の物を多数付着させて立っていたものである(検甲9号証)が,被告人が平成18年12月から平成19年6月まで通院していたCクリニックのD医師は,通院中は是非善悪の弁別は可能であったと思われるとしていること(弁6号証)当公判廷での被告人質問での応答状況に格別異常な,
点はみられないこと,被告人は相当期間にわたり覚せい剤を常習的に使用してきたと認められること(検甲8号証,証人Bの公判供述)等に鑑みると,前記のような被告人の行動は覚せい剤を使用した後のその影響による異常な行動であると推認することができ,覚せい剤を使用する際に是非善悪を弁別し,それに従って行動する能力に何らかの欠陥があったとは認められない。弁護人の主張は,いずれも失当である。(累犯前科)
被告人は,平成13年7月18日E地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により懲役1年8月に処せられ,平成15年5月20日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は,前科調書(検乙11号証)によって認める。
(法令の適用)


覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条

再犯加重
刑法56条1項,57条
未決勾留日数の算入
刑法21条
訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
被告人は,その毛髪から覚せい剤成分が検出されるほど相当期間にわたって覚せい剤の使用を続け,平成8年12月に覚せい剤取締法違反(覚せい剤の自己使用)の罪等で
執行猶予付きの懲役刑に処せられ,さらに,前記累犯前科の項記載の刑に処せられて服役したのに,またもや本件犯行に及んだものであって,覚せい剤に対する親和性,依存性が顕著に認められる上,理不尽な弁解に終始して反省の態度が見られないことなどに照らすと,その刑事責任は,相当重い。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑

懲役3年)

(国選弁護人

渡邊

守)

平成20年1月10日
神戸地方裁判所第2刑事部

裁判官

佐野哲生
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