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殺人、死体遺棄被告事件
事件番号平成18(わ)385
事件名殺人,死体遺棄被告事件
裁判年月日平成20年1月8日
法廷名仙台地方裁判所
裁判日:西暦2008-01-08
情報公開日2017-10-13 01:37:59
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殺人死体遺棄被告事件につき,被告人を懲役3年に処した事案
平成19年(わ)第385号
主文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
第1

被告人は,平成17年4月中旬ころ,仙台市内において,殺意をもって,自
己が出産した男児を殺害した。
第2

被告人は,前記殺害後の平成17年4月中旬ころ,前記男児の死体を仙台市
内又はその周辺において隠匿放置した。
(争点及び争点に対する判断)
第1

本件の争点

本件の争点は,2点である。


被告人が出産した本件男児(以下被害者という。)は,生きて生まれ
たか否か。

第2
1
被告人が被害者を殺害したか否か。
争点①について
証人A(以下目撃者という。)は次のとおり証言する。

(1)

平成17年4月14日朝(以下年の記載のないものは平成17年を指
す。),前日に被告人から呼ばれていたので,被告人宅に行った。被告人宅近くで被告人に連絡を取ると,被告人から,まだ親が家にいるから時間をつぶしていてほしいと言われた。近くで約二,三十分待っていると,再び被告人から連絡が入り,被告人宅に入った。被告人宅には,被告人の家族は誰もいなかった。(2)

被告人の部屋に入ると,部屋の布団の上に生まれたばかりの被害者がい
た。被告人は,被害者の父親はBで,昨日自宅で被害者を出産した,へその緒は自
分で切って胎盤と一緒に汚物用の黒いビニール袋に入れた,前に中絶したとき父親から次はもうないという感じの目で見られたので,親には言えないと言っていた。(3)

被害者は,顔はちょっと赤みがかっていて,若干しわっぽいものがあっ
た。顔や頭は小さく,髪の毛が少し湿ったような感じがした。被告人は,被害者が泣き出しそうになると,抱っこをしたり,ミルクをあげたり,おしめの代わりに使っていたナプキンを交換したりしていた。ナプキンを交換した際,便が付いていたし,被害者の下半身が見えて男の子であることがわかった。被害者のへその上にはガーゼがあり,医療用で使うテープが貼られていた。被害者の手足は,変な形にはなっておらず,外見上気になる異常な様子は見られなかった。被告人は,前日の夜は一睡もしていないと話しており,結構疲れている感じの表情だった。(4)

被告人から被害者を預かってもらえるところがないかと相談されたため,
ヤングテレホンに電話したほか,妹や当時の交際相手にも相談したが,被害者を預かってもらえるところはなかった。
(5)

被告人は,深刻そうな顔で,被害者をお寺に置くか殺すしかない,鼻を
つまめば簡単に死ぬなどと言っていた。また,被告人は,被害者の鼻をつまもうとするなどしていたので,被告人を止めた。何度も親に相談するように説得したが,被告人はできないと言い,何度も殺す,殺すと言っていた。
(6)

被告人の父親が午後5時ころ帰宅したので,改めて親に言うべきだと言
ったが,被告人はそれはできないと拒んでいた。帰る時間になっていたので,先に出て,被告人の部屋の南側にある縁側で被害者を受け取り被告人と被告人宅の向かいの公園に行った。公園で,被告人に親に言うようにと言ったところ,被告人は,何とかする,お母さんにだけは話すと言ったので,被告人と別れた。(7)

帰宅後,母親と当時の交際相手に,被告人が被害者を出産したことや被
告人が被害者を殺したらどうしようという相談をした。被告人と被害者のことが気になっていたが,約1か月後に,被告人から,被害者を里子に出したと言われ,安心した。

2
目撃者の証言の信用性
(1)

目撃者は,被告人とは中学校以来の友人であり,被告人が逮捕される直
前まで交際していたもので,被告人にあえて不利になる虚偽の証言をするような事情は全くなく,平成19年5月に本件が報道されると,自ら警察署に出向いて被害者が生きて生まれていたと供述し,その後も一貫して同様の証言をしている。目撃者の証言は,被害者が男の子であり,被害者のへそ辺りにガーゼや医療用で使うテープがあったとする点は,鑑定書抄本(甲42)から明らかになった被害者の性別や被害者の遺体と共に十字状絆創膏が貼られたガーゼ片があったという遺体発見状況と一致し,さらに,ヤングテレホンや母親等に相談したという点は,それぞれ相談を受けたとする相談員及び相談員作成のヤングテレホン相談個票(甲24添付),目撃者の母親,妹並びに当時の交際相手の証言とも概ね一致している(なお,弁護人は,①相談員の証言では,相談者について被告人にも目撃者にも当てはまらない事実が述べられていたり,目撃者の証言と矛盾する点があり,ヤングテレホンの相談が目撃者からのものと断言できず,目撃者の証言を補強するものではない,②目撃者の母らの証言はいずれもあいまいであり信用できないと主張する。しかし,①については,相談日が4月14日であること,相談者が友人であること,病院を紹介し誤った電話番号を教えたこと,相談内容のうち,友人が昨日自宅で出産したということ,親には話していないということなどの目撃者の証言と一致しているのであるから,ヤングテレホン相談は,目撃者からのものと解するのが相当である。また,②については,たしかに,目撃者の母らの証言は記憶が詳細ではない部分があるが,いずれも目撃者から,生まれたばかりの被告人の赤ちゃんを預かってほしいと頼まれたとする核心部分については目撃者の証言と一致している。したがって,いずれの証言も目撃者の証言の信用性を高めるというべきである。弁護人の主張は理由がない。)。
目撃者の証言は,被害者の顔の様子やおむつ代わりとしていたナプキンを交換した際に便が付いているなど詳細である上,当日,被告人から親がいるから少し時間
をつぶしてくれと言われ約二,三十分待ったことや帰宅した父親に被害者の存在を知られないよう縁側で被害者の受け渡しをして外に出るなど事実を体験した者しか語ることのできない具体性も備えており,弁護人の反対尋問にも揺らぐことがない。以上からすれば,目撃者の証言は基本的に信用できるというべきである。(2)

弁護人は,①死後半年ないし1年程度経過したとする鑑定結果と矛盾す
る,②被害者の遺体が入っていた発泡スチロールの箱を包んでいたゴミ袋の発売時期と矛盾する,③4月13日及び14日は,被告人の父が被告人宅に在宅しており,被告人宅の構造上父に知られることなく被害者を出産し,面倒を見ることは不可能である,④目撃者の精神状態は不安定であった,⑤被害者が着ていたとするベビー服,飲んでいたとするミルク等,客観的事実に反する内容があるなどとして,目撃者の証言の信用性を争うので,以下検討する。
①については,鑑定書において被害者の死後経過時間をおおよそ半年から1年くらいと推定されるとする一方で,嬰児死体の場合,安置場所,安置条件などで,更に時間が経過している可能性も否定できないとしており,目撃者の証言が鑑定結果と矛盾しているとはいえない。②のゴミ袋の発売時期が平成17年9月以降であることについては,必ずしも,被害者死亡直後にゴミ袋で発泡スチロールの箱を梱包したとは限らない上,弁護人の主張は,後記のとおり信用性の低い被告人の供述を前提としており,弁護人の指摘する事実は,目撃者の証言の信用性を低くするものではない。③の父ら同居家族に知られずに出産し,面倒を見られたかについては,たしかに,被告人の部屋と両親の部屋がふすま1枚で仕切られているという被告人宅の構造からも,被告人が自宅で出産し,被害者を養育していたとすれば,同居する被告人の父母らがこれに気付くことは十分あり得るといえる。しかし,目撃者の証言によれば,被告人は,一貫して被害者のことを親に知られないように行動していたのであり,4月13日夜も泣かないように被害者にミルクを与えたりあやしていたというのであるから,目撃者の証言するように行動すれば,4月13日から14日までの一夜の間であれば,気付かれずにいることも可能といえる。また,関係
証拠によれば,被告人の父は,4月11日の夜,腰痛を訴え,整骨院にて治療を受け,その際,歩行が困難とされ,4月12日から16日までは毎日,通院していたことが認められ,被告人の父母は,4月13日及び14日には,被告人の父は被告人宅で寝込んでいたと証言する。しかし,その証言では,被告人の父は,4月11日を含めて2,3日歩行が困難だったとするだけで,4月13日や14日当時の歩行状況及び行動については,あいまいなものとなっている上,被告人の父母は,被告人の実の両親であり,被告人と当時の交際相手との交際を反対していたかについて,被告人に有利に証言を変更していることに照らしても,4月13日及び14日に被告人の父が整骨院からそのまま家に帰ったとの証言は信用できないというべきである。そうすると,被告人の父は4月13日及び14日に1日中被告人宅にいたとはいえないから,これを前提とする主張は認められない。④については,当時の目撃者の健康状態については,確かに,睡眠薬,胃腸薬を服用してはいたものの,他の証拠からもその記憶や認識に問題があったことをうかがわせるものはなく,目撃者は,上記のとおり具体的かつ詳細な証言をしているのであるから,観察条件に問題があったとはいえない。⑤のうち服装の食い違いについては,目撃者は,被害者を見た際の被害者の服装を証言しているにすぎず,その直後に被害者が死亡したことが明らかになっていないことからすれば,その証言する被害者の服が遺体発見時のものと異なっていたとしても,客観的証拠に矛盾するとはいえない。また,それ以外のベビー服がなかったとか,被告人はミルクの作り方を知らなかったという点は,いずれも被告人の供述を前提とするが,被告人の供述は後記のとおり信用性がないから,結局,この点に関する弁護人の主張は前提を欠く。なお,便のにおいについて臭かったとする点は,新生児の便には臭いがないとする医師の証言と反するが,便を見たことにより臭いを感じた可能性もあるから,証言の信用性を否定するとまではいえない。
以上からすれば,目撃者の証言は信用することができる。
3
被告人の供述は次のとおりである。

(1)

平成17年秋のある日,朝10時ころに目が覚めたところ,最初におな
かが冷えた感じの痛みがあったので,畳の上で少し横になり,今度は背中の痛みが出て,その後,わけがわからないうちに,子供の頭みたいなのが出てきて,そのまま,被害者が出てきた。
(2)

この出産の前には,胎動やつわりといった妊娠の兆候は一切感じなかっ
たし,体型の変化もなく,出血もあったので,出産したことに驚いてしまった。被害者は,泣かなかったので,抱いて背中を叩いてみたり,さすったりしたが,全然泣かなかったので死んでいると思った。
(3)

被害者が死んでいるので,どうすればいいのか分からず助けてもらいた
いと思って,被害者をピンクの膝掛けでくるみ,自宅の物置にあった発泡スチロールの箱に入れた。ビニール袋で何重にも包むなどした記憶はない。そのまま,その箱を持って自宅から歩いて三,四十分のところにある,被害者が発見された祖父母の所有する空き家(以下本件発見現場という。)に行った。そこに祖父母が住んでいないことはわかっていたが,パニックになっていた。本件発見現場に戻ってくるつもりで,被害者を置いていったが,結局被害者が発見されるまで両親には言えなかった。
4
被告人の供述の信用性

被告人が出産前の状況について,出産するまで胎動やつわりなどの妊娠を感じさせる兆候は全くなかったと述べる点は,被害者が大凡妊娠9か月半ばくらいでそれまでは生存していたものであり,被告人が本件以前に出産を経験し,胎動を体験していることからいって不自然かつ不合理である。また,出産直後の被害者の様子について,背中を何度もさすったことに記憶があると供述する一方で,被害者の体温や色といった比較的記憶に残ると思われる事実についてはあいまいであるなど,これまた不自然である。さらに,被告人のその後の行動についても,母親等に助けを求めることなく,祖父母が既に住んでいない本件発見現場に向かうなど不合理な内容となっている。そもそも,被告人は,捜査当初は,遺棄の時期を4月ころと供述
していたが,途中で春か秋であると変更し,当公判廷では秋ころであったとしている。弁護人は,公訴提起後に弁護人から見せられたピンクのひざかけの写真で記憶をよみがえらせたというが,出産という体験は,たとえ死産であったとしても特徴的な出来事であり,四季の段階で誤った記憶をするということは常識に照らして極めて不合理である。
そうすると,被告人の供述は,到底信用することができない。
5
結論

以上から,目撃者の証言は信用でき,これに反する被告人の供述は信用できないから,被害者が4月13日,生きて生まれて,4月14日,目撃者が生きている被害者を見たことが認められる。
第3
1
争点②について
関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)

被害者は,頭蓋骨,四肢の長管骨に骨折はなく,肋骨等にも確認できる
範囲では骨折は認められない。死後変化が高度な状態であり,組織が大部分軟泥状であることから死因は不明である。被害者の遺体の下肢骨計測値は,妊娠9か月の値を越えているが,成熟児の値には達していない。
被害者の遺体は,発泡スチロールの中に毛布にくるまれ,さらに,子供服の中に両上肢がそれぞれ服の袖に通された状況で発見された。また,十字状に絆創膏が貼られたガーゼ片も入っていた。発泡スチロールの箱は,ガムテープで密閉され,さらに被告人の指紋の付いたビニール袋や,ゴミ袋に包まれた状態で放置されていた。(2)

4月14日,目撃者が被告人と別れてから,被害者を目撃した者はいな
い。被告人と同居する被告人の父母も被害者の遺体が発見されるまで被害者の存在を知らなかった。
2
目撃者の証言によれば,同日の被告人の様子として,被告人は,中絶したと
きに父親から次はもうないという感じの目で訴えられたので,親には言えないと言っていたこと,被害者を預かってもらえる人がいなかったので,被告人は,深刻そ
うな顔で,被害者をお寺に置くか殺すしかない,鼻をつまめば簡単に死ぬなどと言い,実際に,被害者の鼻をつまもうとしたりしていたこと,被告人は何度も殺すと言っていたことが認められる。
3
被害者の死亡推定時期

目撃者が4月14日に被害者を見た後,被告人の父母を含め誰も被害者を見ておらず,目撃者が見た際,被害者には,へその部分にガーゼが付いていたところ,被害者の遺体と共に,目撃者が見たと思われる絆創膏が貼られたガーゼ片があったことからすれば,被害者の死亡時期は,目撃者が見てからさほど日が経過していないころ,すなわち4月中旬ころと認められる。
4
死因について
(1)

可能性のある死因について

被害者が,生きて生まれた後さほど日が経過していない時期に死亡に至っており,目撃者が見た以降,誰も被害者を見ておらず,被害者は被告人が出産した新生児であり,被告人の父母も被害者の存在を知らず,被害者の死について第3者の関与が認められないことからすれば,被害者は,自然死,事故死あるいは被告人の作為,不作為の行為のいずれかにより死亡したと解するのが相当である。次にこれらの原因について個別に検討する。
(2)

自然死の可能性

医師の証言によれば,新生児が生後1週間未満で死亡する主な原因としては,重症の奇形ないし染色体異常を伴うもの,新生児に特有な呼吸器疾患があり,重症の奇形ないし染色体異常については,顔つき,耳の位置,鼻の高さ,手足の関節等に異常な所見や奇形が見られるところ,これらの疾患を有しており,医療行為を経ない場合には,数時間で死亡するのが通常であること,呼吸器障害についても,呼吸が非常に速くなってきて,呼吸をするときにうなり声をあげる,鼻がぴくぴく動く,胸の動きとおなかの動きが一致しない,顔色がチアノーゼになるなどの外見上の変化があること,また,外傷的に何もないが,例えば心臓の奇形などで,致死的異常
を抱えている可能性は考えられるものの,これら異常があれば,やはり医療行為を受けない場合,出生後数時間で死亡することが認められる。ところで,目撃者は前日に出生した被害者を見ており,その様子も手足,顔などに異常な外見は見当たらず,ミルクを飲んでいたというのであるから,被害者が自然死した可能性は認められない。
(3)

事故死の可能性

上記認定のとおり,被害者の頭蓋骨,四肢の長管骨に骨折はなく,肋骨等にも確認できる範囲では骨折の跡がなかったことから,強い衝撃による外因死の可能性はない。また,事故による死亡であれば,被告人が両親に隠して最終的には本件発見現場に被害者の遺体を放置するということは考えにくく,かつ,目撃者に対し,里子に出したなどと虚偽の事実を申し向ける必要はないことを考えると,その可能性もないというべきであり,他に事故死をうかがわせる事情も認められないから,被害者が事故死した可能性は認められない。
(4)

そうすると,被害者の死亡は被害者を出産した被告人の作為あるいは不
作為の行為により生じたというべきである。
そして,上記認定のとおり,目撃者が被害者を見た際には,被告人は,深刻そうな顔で,鼻をつまめば簡単に死ぬなどと言ったり,何度も被害者を殺すと言ったりし,また,実際に,鼻をつまもうとしたりするなどして被害者を排除しようとする言動をしていたこと,加えて,被告人の当時の交際相手との交際状況や両親との関係から,被告人が,被害者を邪魔な存在と考えたとしても不自然でないことからすれば,目撃者が被害者を見た際には,被告人は被害者を排除しようとする意思を有していたと推認することができ,被害者の死亡時期が,目撃者が被告人のこれらの言動を見てからさほど日が経過していない時期であることを併せ考慮すれば,被告人が,作為あるいは不作為の行為により被害者を死に至らしめた際にも,被害者の死の結果を容認する意思,すなわち被害者に対する殺意を推認することができる。そして,被告人がこれらの言動をしたことについて何ら説明しておらず,被害者
が死産であったと不合理な弁解をしていることからすれば,被告人に被害者に対する殺意を認めることができる。
この点,弁護人は,保護責任者遺棄致死や傷害致死により被害者を死亡させてしまった可能性を排斥できていないと主張する。
しかし,本件では,第3者に発見される態様での遺棄行為がされたとは認められず,上記認定のとおり,被告人には被害者の死の結果を容認する意思が推認できる上,それ以外の遺棄行為によって被害者を死亡させた場合,被害者が生後間もないことからすれば,被害者を遺棄すれば,被害者が死亡することを認識できるというべきであり,傷害致死の場合においても,被害者の死の結果を容認する意思で生後間もない被害者に対して暴行行為を加え,死亡させた場合には,これは殺害行為というべきであるから,弁護人の主張は理由がない。
5
結論

以上から,判示のとおり,被告人が被害者を殺害したことを常識に照らして間違いないと認める。
第4

実行行為に関する指摘

以上から,被告人は,殺意をもって自己の出産した被害者を殺害したことが認められるが,その方法については,被害者の死因が特定されず,被告人が犯行を否認しているため,特定することはできないから,作為あるいは不作為を問わず,何らかの方法により殺害したと認定するほかない。
また,被告人は,平成17年4月中旬ころの被害者の死体遺棄を否定しており,発泡スチロール箱を包んでいたビニール袋に被告人の指紋が付いている一方,発泡スチロール箱を包んでいたゴミ袋が平成17年9月以降に製造されたこと等からすれば,自宅等の仙台市内又は周辺に一時的に隠匿放置した後,平成17年9月以降に本件発見現場へ移動させた可能性も否定できない。
よって,遺棄の態様については,作為あるいは不作為を問わず,仙台市内又はその周辺において隠匿放置したと認定する。

第5

公訴棄却について

弁護人は,本件公訴が訴因の特定を欠くもので公訴棄却されるべきと主張する。しかし,本件では,殺害方法等の表示が概括的なものであるが,検察官において,本件公訴提起当時の証拠に基づき,できる限り日時,場所,方法等をもって罪となるべき事実を特定して訴因を明示したものと認められるから,訴因の特定に欠けるところはない(最高裁平成14年7月18日第一小法廷刑集56巻6号307頁参照)。
弁護人の主張は理由がない。
(量刑の理由)
本件は,被告人が,自己が出産した男児を殺害し,その死体を遺棄した殺人死体遺棄の事案である。
被告人は,自己が出産した被害者の処置に困り,被害者を殺害したものと認められ,動機に酌量の余地はない。
結果は,一人の尊い命を奪ったもので重大である。被害者は,生を授かって間もないうちに殺害されたもので痛ましい。
被告人は,捜査段階から公判に至るまで不合理な弁解を繰り返しており,被告人には十分な反省が見られない。
よって,被告人の刑事責任は重い。
一方,被告人は,行為時18歳の少年であり,現在20歳と若年であること,被告人には,これまでに前科,前歴がないこと,死体遺棄については自首が成立すること等被告人に酌むべき事情も認められる。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑

懲役5年)

平成20年1月8日

仙台地方裁判所第1刑事部

裁判長裁判官

卯木
裁判官

宮田祥次
裁判官

新宅孝昭誠
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