判例検索β > 平成19年(わ)第282号
詐欺
事件番号平成19(わ)282
事件名詐欺
裁判年月日平成20年1月25日
法廷名松山地方裁判所
裁判日:西暦2008-01-25
情報公開日2017-10-13 01:37:56
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主文
被告人を懲役3年に処する
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1

分離前相被告人A及びBと共謀の上,愛媛県新居浜市が施行する東予広域都市計画事業新居浜駅前土地区画整理事業に関して,甲株式会社(代表取締役A)が所有管理する賃貸マンションの乙マンションが,同事業により移転を余儀なくされる建物であり,同マンションの賃借人に対して同市から移転補償金が支払われることを奇貨として,同補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は上記Bが上記甲株式会社から同マンション165号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同市a町b丁目c番同マンション165号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,同市一宮町一丁目5番1号の新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を同市建設部長Cに提出させ,同人をして,上記Bが上記甲株式会社と契約した同マンション165号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市役所出納室会計係員をして,d銀行e支店に開設したB名義の普通預金口座に移転補償金として75万0310円を振込入金させ

第2

A及びDと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション145号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同マンション145号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Dが上記甲株式会社と契約した同マンション145号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行f支店に開設したD名義の普通預金口座に移転補償金として85万8670円を振込入金させ
第3

A,E,D及びFと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション133号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同マンション133号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Fが上記甲株式会社と契約した同マンション133号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,g銀行h支店に開設したF名義の普通預金口座に移転補償金として85万4415円を振込入金させ

第4

A及びDと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は同人の長男Gが前記甲株式会社から前記乙マンション144号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同マンション144号室において,上記Dが上記G名義の同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Gが上記甲株式会社と契約した同マンション144号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,i銀行j支店に開設したG名義の普通預金口座に移転補償金として85万4415円を振込入金させ
第5

A及びHと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション152号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月2日ころ,同市坂井町一丁目3番10号新居浜市役所建設部区画整理課事務所において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Hが上記甲株式会社と契約した同マンション152号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月20日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行j支店に開設したH名義の普通預金口座に移転補償金として81万9030円を振込入金させ

第6

A及びIと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション162号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月2日ころ,同マンション162号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Iが上記甲株式会社と契約した同マンション162号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月20日ころ,同市出納室会計係員をして,i銀行k支店に開設したI名義の普通預金口座に移転補償金として74万6055円を振込入金させ
第7

A,J及びKと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は上記Jが前記甲株式会社から前記乙マンション161号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月2日ころ,前記新居浜市役所建設部区画整理課事務所において,上記Kが同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Jが上記甲株式会社と契約した同マンション161号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月30日ころ,同市出納室会計係員をして,i銀行l支店に開設したJ名義の普通預金口座に移転補償金として99万6013円を振込入金させ
第8

A及びLと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション163号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月9日ころ,同マンション163号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Lが上記甲株式会社と契約した同マンション163号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月30日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行m支店に開設したL名義の普通預金口座に移転補償金として85万4415円を振込入金させ
第9

A及びMと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション121号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月10日ころ,同マンション121号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Mが上記甲株式会社と契約した同マンション121号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年4月10日ころ,同市出納室会計係員をして,i銀行n支店に開設したM名義の普通預金口座に移転補償金として98万4505円を振込入金させ
第10

A及びNと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企て,
真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション143号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月11日ころ,同マンション143号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Nが上記甲株式会社と契約した同マンション143号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月20日ころ,同市出納室会計係員をして,o銀行j支店に開設したN名義の普通預金口座に移転補償金の前払金として59万円を,平成18年3月30日ころ,上記会計係員をして,上記口座に移転補償金の精算払金として26万4415円を,それぞれ振込入金させ
第11

A,E及びOと共謀の上,前同様に移転補償名下に金員を詐取しようと企
て,真実は同人が前記甲株式会社から前記乙マンション154号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月12日ころ,同マンション154号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,上記Oが上記甲株式会社と契約した同マンション154号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年4月10日ころ,同市出納室会計係員をして,i銀行p支店に開設したO名義の普通預金口座に移転補償金として85万9235円を振込入金させ
もって,それぞれ人を欺いて財物を交付させたものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも刑法60条,246条1項に該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第7の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入することとする。(量刑の理由)
1
本件は,被告人がAらと共謀の上,新居浜市が施行する新居浜駅前土地区画整理事業に関して,移転が予定されている賃貸マンションの賃借人に対して同市から移転補償金が支払われることになっているのを悪用し,マンションの空室に賃借人が居住しているかのように装い,同市から移転補償名下に11件分合計943万1478円を詐取した事案である。

2
本件の概要は次のようなものである。
Aは,前記マンションの所有会社の代表取締役であるところ,同マンションの移転に対して支払われる補償金額を高額にしたいと考えていたが,新居浜市から提示された金額はAが求めるものと差があった。そこで,Aは自己が所有しているマンションの空室に入居者が住んでいるような形にして,新居浜市から賃借人に支払われる移転補償金を騙し取ることを考えるようになった。そして,被告人に対して,移転補償金から分け前を支払う約束で賃借人役をする人物を集めるよう依頼した。被告人は,これを承諾し,自分が組長をしている暴力団の配下の組員や知人,親族,妻の友人などに次々と依頼して賃借人役になることを承諾させた。そして,あらかじめ架空の賃貸借契約書を準備し,新居浜市が移転補償を行うに当たり行われる同市の職員による現地調査に対応するため,各入居者らに対して,家財道具を搬入しておくよう指示し,各入居者らは,それに応じて,テレビやエアコン,事務机などの家財道具を搬入するなどし,現地調査の際には実際に居住しているかのように振る舞い,移転補償金に関する合意を交わすなどした。その結果,新居浜市において,入居者と前記甲株式会社との間で賃貸借契約が存在しているものと誤信し,移転補償金が支払われることとなった。3
このように,本件各犯行の態様は,計画の立案者,賃借人役,賃借人役への指示者などがそれぞれ役割を分担した上,上記のように,虚偽の賃貸借契約書を作成したり,現地調査に対応するため,家財道具を搬入して偽装工作を行うなど,多数人が関与した計画的,大がかりで大胆なものである。また,本件各犯行によって,現実に合計943万1478円もの公金が詐取されており,生じた結果や社会的影響も大きい。被告人は,Aから本件各犯行に必要な入居者を集めるよう依頼されると利欲目的で安易にこれに応じて,11人もの賃借人役をかき集めるとともに,詳細な指示を伝えるなどしており,計画を立てたのはAであるが,被告人も,積極的に行動したことが認められる。また,取得した移転補償金については,一部の賃借人役に分配した以外は,当初の約束と異なりAのところに持参することなく,600万円以上の多額の利得を長期間その下に止めていたのである。以上からするとその刑事責任は相当に重い。

4
そうすると,Aらによって,新居浜市に対して本件被害金が全額弁償されており,最終的には被告人も自らの利得分についてAに支払っていること,本件各犯行を素直に認めて反省を述べていること,上部団体から破門状が出され,今後,暴力団からは離れる旨述べていること,最近,手術をするなど体調が思わしくないことなど,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,被告人には主文掲記の刑をもってその罪を償わせるのが相当である。

(求刑・懲役5年)
平成20年1月25日
松山地方裁判所刑事部

裁判長裁判官

村越一浩
裁判官

西前征志
裁判官

杉本敏

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