判例検索β > 平成19年(わ)第1731号
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件
事件番号平成19(わ)1731
事件名出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件
裁判年月日平成20年6月27日
法廷名大阪地方裁判所
原審裁判所名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2008-06-27
情報公開日2017-10-13 01:37:28
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主文
被告人を懲役1年10月及び罰金250万円に処する
未決勾留日数中280日をその懲役刑に算入する。
その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,東京都練馬区ab丁目c番d号e号室等において,AB等の名称で貸金業を営んでいたものであるが,C及びDらと共謀の上
第1

業として金銭の貸付けを行うに当たり,別表1記載のとおり,平成15年4月8日から同年5月20日までの間,14回にわたり,東京都台東区所在の当時の株式会社E銀行F支店に開設されたDらが管理するG名義の普通預金口座ほか2口座に振込送金を受けるなどの方法により,Hほか1名から1日当たり約10.8479パーセントないし約21.6002パーセントの割合により,法定利息合計950円を超える利息分合計20万6730円を受領し,もって,法定の1日当たり0.08パーセントを超える割合による利息を受領し,
第2

業として金銭の貸付けを行うに当たり,別表2記載のとおり,平成15年6月13日から同月24日までの間,3回にわたり,東京都北区所在の当時の株式会社E銀行I支店に開設されたDらが管理するJ名義の普通預金口座に振込送金を受ける方法により,Kから1日当たり約14.5921パーセントの割合により,法定利息328円を超える利息分5万9672円を受領し,もって,法定の1日当たり0.08パーセントを超える割合による利息を受領し
たものである。
(事実認定の補足説明)
弁護人は,①別表1番号1の利息の受領につき,平成15年4月15日の3万円の受領により完済となり,その後の利息の受領は出資の受入れ,預り金及び金利等
の取締りに関する法律(以下出資法という。)違反罪を構成しない,②別表2の平成15年6月4日付けの1万9580円の貸付けに関し,実行犯らが行ったとされる,いわゆる押し貸しは貸付行為に該当しないので出資法違反罪を構成せず,仮に貸付行為に該当するとしても,被告人が実行犯らと共謀した範囲を超えているので,被告人に帰責できない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をしているので検討する。
関係証拠によれば,本件犯行は,平成12年ころから被告人が作り上げた,顧客に対する貸付けと回収業務を担当する営業部門,顧客の審査をする審査部門,貸付金と回収金の口座からの入出金を担当する部門を分け,被告人が全体を統括する者として経営していたヤミ金融組織によって敢行された高金利受領の事案であると認められる。本件各被害者は,少なくとも3つ存在した営業部門のうち,Cを責任者とするグループ(以下Cグループという。)に所属する実行犯から貸付けを受け,法定利率を超える利息の支払を余儀なくされていた者である。Cグループは,前記Cを責任者として,L,M,N,Oを構成員とするグループであり,LとNがAという屋号を用い,MとOがBという屋号を用いて貸付け及び回収業務を行っていたが,LとN,MとOはそれぞれ協力し,また,AとBもそれぞれ協力して貸付取立業務を行っていたものである。
まず,①の点について,関係証拠によれば,実行犯であるLとNは,平成15年4月22日以降の利息についても,Hからの完済を認めずに,同月8日の貸付金に対する利息として金員を受領していたことが認められる。被告人は,自分自身は,完済を認めず,難癖を付けて利息を払わせ続けるようなやり方を容認していない旨供述するが,Cグループのこのようなやり方は,高金利の貸付けあるいは法定利率を超過する利息の受領方法の一態様に過ぎず,出資法違反罪の共謀共同正犯が成立するためには,このような具体的な実行行為の内容についての明示的な意思連絡までは不要と解するのが相当である。また,本件では,事件当時,被告人が完済を認めないというCグループのやり方を知り,それをやめさせようとしたというような
事情も認められないので,被告人の共犯関係からの離脱も問題にならない。上記のとおり,実行犯らは平成15年4月8日の貸付金に対する利息として,同月22日,同月30日,同年5月6日,同月13日,同月20日に別表1番号1各記載のとおり,1万5000円あるいは3万円を受領しており,被告人は本件ヤミ金融組織の統括者として出資法に違反する利息の受領を容認していたのであるから,別表1番号1の各行為について出資法違反罪が成立することに問題はなく,被告人が完済を認めないというようなやり方を容認していないという点は,被告人の量刑を決定する上で考慮すべき事項であるといえる。
次に,②の点につき,弁護人は,いわゆる押し貸しは,顧客が望まないのに金員を勝手に振り込む形態であるから,貸付けには該当しない旨主張する。関係証拠によれば,Kはいったんは貸付けを拒絶したものの,結局,振り込まれた1万9580円を貸付金として容認し,入金された金員を使用してしまったために,それに対応する利息として平成15年6月13日,同月23日,同月24日に各2万円を支払い,実行犯がこれを受領したと認めることができるので,この点の弁護人の主張は採用できない。貸付年月日については,弁護人も指摘するとおり,Kが1万9580円の振込があったことに気付いた日が同年6月6日であることから,本来は6月6日を貸付日として認定すべきであるが,貸付期間が短縮されることに伴い,超過利息及び1日当たりの利率が増加することになるので,被告人にとって利益に考慮し,起訴状添付の別表2のとおり認定することとした次第である。また,弁護人は,出資法違反罪が成立するためには,法で定めた上限の金利を超える割合による利息の契約とすることが構成要件であるところ,別表2の契約においては,この要件を充足していると認めるに足りる証拠はない旨主張する。しかしながら,法定利率を超える点の認識については,借受人において具体的な利率の認識は不要であって,法定の上限利率を超えることの概括的な認識があれば足りると解すべきところ,本件では,実行犯にはもとより,借受人のKにもその旨の認識があったことは優に認定できるというべきである。

さらに,弁護人は,②の点につき,本件では起訴されていない他の被害者との関係では押し貸しを恐喝罪と構成しながら,Kの関係では押し貸しを出資法違反と構成するのは均衡を欠く旨を主張するようであるが,ことがらは検察官の訴因構成の仕方の問題であって,原則として訴因外の事情を考慮して起訴された犯罪の成否を判断すべきではないのであるから(最高裁判決平成15年4月23日刑集57巻4号467頁参照),この点の弁護人の主張は採用しない。
弁護人は,仮に押し貸しが貸付行為に該当するとしても,被告人と実行犯との間の共謀の範囲を超えている旨主張するが,Cグループのこのようなやり方は,高金利の貸付けあるいは法定利率を超過する利息の受領方法の一態様に過ぎず,出資法違反罪の共謀共同正犯が成立するためには,このような具体的な実行行為の内容についての明示的な意思連絡までは不要と解するのが相当である。また,本件では,後に検討するとおり,事件当時,被告人が押し貸しというCグループのやり方を知り,それをやめさせようとしたというような事情も認められないので,被告人の共犯関係からの離脱も問題にならない。被告人が押し貸しというようなやり方を容認していないという点は,被告人の量刑を決定する上で考慮すべき事項であるといえる。
なお,検察官はDの検察官調書(甲17)及びD自身を被告人とする審理における裁判官面前調書(甲66)をもって,被告人に押し貸しの認識があった旨を主張する。甲17においては,Dが,Cグループが押し貸しと呼ばれる勝手に貸付金と称して顧客の口座に振り込むやり方を始めたのでトラブルのもとになると考え,被告人に対してやらせてよいのかということを上申したところ,被告人が

トラブルがなければ,いいんじゃないか。営業に任せとけ。

と言って,センター(審査部門)を担当するDは余計な口を出さなくていいという趣旨の話があった旨が記載されており,甲66においては,検察官が

個人的に変なことをしている旨をCに言ったり,被告人に相談したことはありましたか。

と質問したのに対し,Dが

ありました。

と供述し,

被告人は何と言っていましたか。

と質問したのに対し,

被告人はトラブルにならなければOKとの返事しか返ってきませんでした。

と供述し,押し貸ししたり,難癖つけて完済を認めないやり方をしていたことについて,

それについて被告人に報告したりして,トラブルにならなければOKという話でしたよね。そうすると組織としてもそういうやり方をトラブルにならなければ許容すると。

と質問したのに対し,

認めざるをえませんね。社長である被告人がそう言うのであれば。

と供述している旨が記載されている。しかしながら,Dは当公判廷においては,Cグループがややこしいことをやっていることは被告人に一応報告したが,はっきりとした言葉は記憶にはない,被告人からはトラブルにならないようにしてくれと言われ,勝手に振り込んだりとかするなという意味に受け取った旨供述する一方,被告人は,Cグループが押し貸しをしていたり,完済を認めないというやり方をしている点について,Dからそのような上申を受けたこと自体ない旨供述している。甲17及び甲66に記載されているDの各供述は,どの時点でのどのような場面において,Dが被告人に対してCグループのやり方について上申したものであるのかを明確にしたものとはいえず,被告人が押し貸しをしたり,完済を認めないやり方を容認していたと認定するに足りる証拠とみることはできないというべきである。また,Cグループのやり方について被告人に上申したところ,被告人からは,トラブルがないようにというような答えが返ってきたとの当公判廷におけるDの供述も,はっきり覚えていないという前提での供述であり,また,甲17及び甲66の記載内容と公判廷における供述が反対の趣旨になっている点についてもその合理的な理由は説明できていないというべきであって,この点の公判廷におけるD供述も信用できないというべきである。被告人は,Dから,Cグループのやり方について上申を受けたことは絶対にない旨供述しているところ,被告人が押し貸しや完済を認めないやり方を容認していたことを認めるに足りる証拠は存在しないといわざるを得ない。よって,この点の検察官の主張は採用できない。上記のとおり,この点についての被告人の容認は認められないが,出資法違反罪の共謀共同正犯の成立を左右するものではない。

以上のとおり,公訴事実の一部が出資法違反罪を構成しない,あるいは被告人と実行犯との間の共謀の成立が認められない旨の弁護人の主張はいずれも採用の限りではない。被告人には,別表1及び別表2に記載された利息受領行為の全部につき,出資法違反罪の共謀共同正犯が成立するというべきである。
(法令の適用)
被告人の判示各所為は,行為時においては別表1及び別表2の各番号ごとに包括して刑法60条,平成15年法律第136号による改正前の出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律5条2項に,裁判時においては別表1及び別表2の各番号ごとに包括して刑法60条,平成18年法律第115号による改正後の出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律5条2項後段(なお,判示各所為は裁判時においては平成18年法律第115号による改正後の同法5条3項後段を充足するが,同項は平成18年法律第115号によって新設された罰条であるため,刑の変更には該当しないと判断したものである。)に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によることとし,判示各罪について所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1別表1の番号1の罪の刑に法定の加重をし,罰金刑については同法48条2項により判示第1別表1の番号1ないし3,判示第2の各罪所定の罰金の多額を合計し,その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役1年10月及び罰金250万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中280日をその懲役刑に算入することとし,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。
(量刑の理由)
本件は,被告人が共犯者らと共謀の上,高金利による貸付けにつき,法定の上限利率を超えた利息を受領したという出資法違反の事案である。これらの貸付け及び
利息受領行為は組織的に行われていたものであるところ,被告人は,この組織を作り上げ,統括者として行動していた者であって,被告人は本件の首謀者であるといってよい。このように,本件犯行は,ヤミ金融組織によって敢行された組織的,計画的,営業的な犯行である。実行犯らは合計26万6402円もの超過利息を受領したものであって,貸付金額と対比した場合,その被害額を軽視することはできない。また,各被害者は違法な利息の支払を余儀なくさせられていたのであって,その被害感情も軽視することはできない。被告人は,本件と比較的近接した時期である平成14年12月ころには,ヤミ金融組織の犯行によって月500万円ないし600万円の取り分を得ていたというのであるから,本件犯行の悪質性は顕著である。また,この種の犯行については,一般予防の見地も考慮する必要がある。以上によれば,被告人の刑事責任は重い。
そうすると,被告人は本件の首謀者ではあるものの,平成15年1月ころから,被告人がいうところの独立採算制に移行しつつあり,本件犯行時には,各営業部門の独立性が高まり,相対的に被告人の関与の程度は低下していたと認められること,上記事実認定の補足説明で認定したとおり,Cグループが完済を認めないやり方や押し貸しをしている点につき,被告人がこれらのやり方を容認していたことを認めるに足りる証拠はなく,また,仮に被告人がこれらの事実を知っていたとしたら,そのようなやり方を容認していたとは認められないこと,被告人が上記のとおり,犯罪の成否の一部を争っているものの,高金利のヤミ金融組織を作り上げ,共犯者を犯罪に巻き込んだり,被害者に対して各種の損害を与えたこと自体は反省しており,2度と犯罪行為には及ばない旨誓っていること,Hの遺族との間で示談は成立していないが,解決金として300万円を支払う旨提示していること,Kに対して30万円を支払って示談を成立させ,同人から宥恕の意思表示を受けていること,被告人にはこれまで前科前歴が全くないこと,被告人の帰りを待つ家族がいることなど被告人にとって酌むべき事情も認められ,また,本件の審理の過程において,恐喝罪を被疑事実として被告人を逮捕・勾留するためにはルーマニア国の承諾等の
所要の手続を経る必要があり,同罪で起訴された場合には本件と併合審理することも視野に入れてその手続履践を待ったが,被告人は恐喝罪で逮捕・勾留されたものの,現時点では同罪による追起訴がないという状況であるという事情があるものの,本件は執行猶予を付すべき事案とは到底いえず,主文の刑はやむを得ないというべきである。
(求刑

懲役3年及び罰金300万円)

平成20年6月27日
大阪地方裁判所第2刑事部

裁判官長瀬敬昭
別表1(概略)
1
貸付年月日

平成15年4月8日

貸付契約額

15,000円

貸付期間

平成15年4月8日から同年5月20日まで

利息受領年月日・受領額


平成15年4月8日

420円(天引利息)



平成15年4月15日

30,000円



平成15年4月22日

30,000円



平成15年4月30日

15,000円



平成15年5月6日

15,000円



平成15年5月13日

15,000円



平成15年5月20日

30,000円

利息受領総額
法定利息額

501円

超過利息額

134,919円

1日当たりの利率
2
135,420円

21.6002パーセント

貸付年月日

平成15年4月15日

貸付契約額

18,000円

貸付期間

平成15年4月15日から同年5月1日まで

利息受領年月日・受領額


平成15年4月15日



平成15年4月22日

15,000円



平成15年4月28日

5,000円



平成15年5月1日

利息受領総額

32,420円

法定利息額

239円

420円(天引利息)

12,000円

超過利息額
1日当たりの利率

10.8479パーセント

貸付年月日

平成15年4月16日

貸付契約額

18,000円

貸付期間

3
32,181円

平成15年4月16日から同月28日まで

利息受領年月日・受領額


平成15年4月16日



平成15年4月23日

17,000円



平成15年4月28日

22,420円

利息受領総額

39,840円

法定利息額

210円

超過利息額

39,630円

1日当たりの利率

420円(天引利息)

15.1081パーセント

別表2
1
貸付年月日

平成15年6月4日

貸付契約額

19,580円

貸付期間

平成15年6月4日から同月24日まで

利息受領年月日・受領額


平成15年6月13日

20.000円



平成15年6月23日

20,000円



平成15年6月24日

20,000円

利息受領総額

60,000円

法定利息額

328円

超過利息額

59,672円

1日当たりの利率

14.5921パーセント

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