判例検索β > 平成19年(わ)第282号
詐欺
事件番号平成19(わ)282
事件名詐欺
裁判年月日平成20年5月22日
法廷名松山地方裁判所
裁判日:西暦2008-05-22
情報公開日2017-10-13 01:37:34
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主文
被告人を懲役3年に処する
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1

愛媛県新居浜市が施行する東予広域都市計画事業新居浜駅前土地区画整理事業に関して,甲株式会社(当時の代表取締役被告人)が所有管理する賃貸マンションの乙マンションが,同事業により移転を余儀なくされる建物であり,同マンションの賃借人に対して同市から移転補償金が支払われることを奇貨として,同補償名下に金銭を詐取しようと企て,Aと共謀の上,真実は同人の長女Bが甲株式会社から同マンション135号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月22日ころ,同市坂井町一丁目3番10号の新居浜市役所建設部区画整理課事務所において,AがB名義の同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,同市一宮町一丁目5番1号新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を同市建設部長Cに提出させ,同人をして,Bが甲株式会社と契約した同マンション135号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行e支店に開設したB名義の普通預金口座に移転補償金として85万4880円を振込入金させ

第2

D(分離前相被告人)及びEと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実はEが甲株式会社から前記乙マンション165号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同市a町b丁目c番の同マンション165号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Eが甲株式会社と契約した同マンション165号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市役所出納室会計係員をして,f銀行g支店に開設したE名義の普通預金口座に移転補償金として75万0310円を振込入金させ
第3

D及びFと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実はFが甲株式会社から前記乙マンション145号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同マンション145号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Fが甲株式会社と契約した同マンション145号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,f銀行h支店に開設したF名義の普通預金口座に移転補償金として85万8670円を振込入金させ
第4

D,G,F及びHと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実はHが甲株式会社から前記乙マンション133号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同マンション133号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Hが甲株式会社と契約した同マンション133号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,i銀行j支店に開設したH名義の普通預金口座に移転補償金として85万4415円を振込入金させ第5

D及びFと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実はFの長男Iが甲株式会社から前記乙マンション144号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月27日ころ,同マンション144号室において,FがI名義の同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Iが甲株式会社と契約した同マンション144号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行e支店に開設したI名義の普通預金口座に移転補償金として85万4415円を振込入金させ

第6

Jと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実は同人が甲株式会社から前記乙マンション131号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月28日ころ,同市kl番地(当時,現在は同市kb丁目m番n号)株式会社丙事務所において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Jが甲株式会社と契約した同マンション131号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,o信用金庫p支店に開設したJ名義の普通預金口座に移転補償金として87万6145円を振込入金させ

第7

J及びKと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実はKが甲株式会社から前記乙マンション134号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年2月28日ころ,前記株式会社丙事務所において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Kが甲株式会社と契約した同マンション134号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月10日ころ,同市出納室会計係員をして,o信用金庫p支店に開設したK名義の普通預金口座に移転補償金として74万6055円を振込入金させ第8

D及びLと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実はLが甲株式会社から前記乙マンション152号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月2日ころ,前記新居浜市役所建設部区画整理課事務所において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Lが甲株式会社と契約した同マンション152号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月20日ころ,同市出納室会計係員をして,f銀行e支店に開設したL名義の普通預金口座に移転補償金として81万9030円を振込入金させ

第9

D及びMと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,真実はMが甲株式会社から前記乙マンション162号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月2日ころ,同マンション162号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Mが甲株式会社と契約した同マンション162号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月20日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行q支店に開設したM名義の普通預金口座に移転補償金として74万6055円を振込入金させ第10

D,N及びOと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企
て,真実はNが甲株式会社から前記乙マンション161号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月2日ころ,前記新居浜市役所建設部区画整理課事務所において,Oが同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,上記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Nが甲株式会社と契約した同マンション161号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月30日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行r支店に開設したN名義の普通預金口座に移転補償金として99万6013円を振込入金させ
第11

D及びPと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,
真実はPが甲株式会社から前記乙マンション163号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月9日ころ,同マンション163号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Pが甲株式会社と契約した同マンション163号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月30日ころ,同市出納室会計係員をして,f銀行s支店に開設したP名義の普通預金口座に移転補償金として85万4415円を振込入金させ第12

D及びQと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,
真実はQが甲株式会社から前記乙マンション143号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月11日ころ,同マンション143号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Qが甲株式会社と契約した同マンション143号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年3月20日ころ,同市出納室会計係員をして,t銀行e支店に開設したQ名義の普通預金口座に移転補償金の前払金として59万円を,平成18年3月30日ころ,上記会計係員をして,上記口座に移転補償金の精算払金として26万4415円を,それぞれ振込入金させ
第13

D及びRと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,
真実はRが甲株式会社から前記乙マンション121号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月10日ころ,同マンション121号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Rが甲株式会社と契約した同マンション121号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年4月10日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行u支店に開設したR名義の普通預金口座に移転補償金として98万4505円を振込入金させ第14

D,G及びSと共謀の上,前同様に移転補償名下に金銭を詐取しようと企
て,真実はSが甲株式会社から前記乙マンション154号室を賃借した事実がないのにこれあるように装い,平成18年3月12日ころ,同マンション154号室において,同人が同市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所建設部において,同課員らを介して同契約書等を前記Cに提出させ,同人をして,Sが甲株式会社と契約した同マンション154号室の正規賃借人であり補償対象者である旨誤信させて同人に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年4月10日ころ,同市出納室会計係員をして,d銀行v支店に開設したS名義の普通預金口座に移転補償金として85万9235円を振込入金させ第15

前記土地区画整理事業に関して,同事業により移転を余儀なくされる前記
乙マンションにつき,新居浜市から甲株式会社に対して家賃減収補償及び家賃欠収補償の各名目で支払われる移転補償金が同マンションの賃借人の数に基づいて算定されることを奇貨として,移転補償名下に金銭を詐取しようと企て,同マンション居室に関し,真実はRほか13名と甲株式会社との間で賃貸借契約を締結した事実がないのにこれあるように装い,平成18年8月1日ころ,愛媛県新居浜市w町x番y号甲株式会社事務所において,被告人が新居浜市との物件移転に関する契約書及び請求書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所市長室において,同課員らを介して同契約書等を同市市長Tに提出させ,同人をして,甲株式会社とRらがいずれも正規の賃貸借契約を締結しており,Rほか13名分の居室を含む同マンション全25室につき,すべて賃貸借契約が締結され,甲株式会社が,賃借人を25名として算定されるマンション所有者に対する家賃減収補償及び家賃欠収補償の対象者である旨誤信させて同社に対する移転補償金の支出を決定させ,平成18年8月18日ころ及び平成18年10月30日ころの2度にわたり,同市出納室会計係員をして,d銀行z支店に開設した甲株式会社代表取締役被告人名義の普通預金口座に,Rほか13名の賃借人に対応するマンション所有者に対する家賃減収補償及び家賃欠収補償名目の移転補償金合計1370万4750円を含む移転補償金合計3億9466万1075円を,それぞれ振込入金させ
第16

前記第15と同様に,使用収益停止補償金が前記乙マンションの賃借人の
数に基づいて算定されることを奇貨として,使用収益停止補償名下に金銭を詐取しようと企て,同マンション居室に関し,真実はRほか13名と甲株式会社との間で賃貸借契約を締結した事実がないのにこれあるように装い,平成18年10月10日ころ,前記甲株式会社事務所において,被告人が新居浜市との使用収益停止に関する契約書等必要書類を同市建設部区画整理課員に提出するなどし,そのころ,前記新居浜市役所助役室において,同課員らを介して同契約書等を同市助役Uに提出させ,同人をして,甲株式会社とRらがいずれも正規の賃貸借契約を締結しており,Rほか13名分の居室を含む同マンションの全25室につき,すべて賃貸借契約が締結され,甲株式会社が,賃借人を25名として算定されるマンション所有者に対する使用収益停止補償の対象者である旨誤信させて同社に対する使用収益停止補償金の支出を決定させ,平成18年11月20日ころ及び平成18年12月20日ころの2度にわたり,同市出納室会計係員をして,前記甲株式会社代表取締役被告人名義の普通預金口座に,Rほか13名の賃借人に対応するマンション所有者に対する使用収益停止補償金合計165万0193円を含む使用収益停止補償金合計286万2232円を,それぞれ振込入金させ
もって,それぞれ人を欺いて財物を交付させたものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人の判示第1ないし第14の各所為はいずれも刑法60条,246条1項に,判示第15及び第16の各所為はいずれも同法246条1項に該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第15の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中100日をその刑に算入することとする。(量刑の理由)
1
本件は,被告人がDら(判示第2ないし第5,第8ないし第14),B(判示第1),Jら(判示第6,第7)と共謀の上,あるいは単独で(判示第15,第16),新居浜市が施行する新居浜駅前土地区画整理事業に関して,同市から移転が予定されている賃貸マンションの賃借人に対して移転補償金が支払われ,所有者に対して賃借人の数に基づいて移転補償金及び使用収益停止補償金が支払われることを悪用し,マンションの空室に賃借人が居住しているかのように装い,同市から移転補償や使用収益停止補償名下に合計2726万3501円(正規に支払われた分を除く。)を詐取した事案である。
2
本件の概要は次のようなものである。
被告人は,乙マンションの所有会社の代表取締役であったところ,同マンションの移転に対して支払われる補償金額を高額にしたいと考えていたが,新居浜市から提示された金額は被告人が求めるものと差があった。そこで,被告人は,自己が所有しているマンションの空室に入居者が住んでいるような形にして,新居浜市から賃借人に支払われる移転補償金等を騙し取ることを考えるようになった。そして,暴力団組長であるDに対して,移転補償金から分け前を支払う約束で,賃借人役をする人物を集めるよう依頼した。Dは,これを承諾し,自らの暴力団の配下の組員や,知人,親族,妻の友人などに次々と依頼して賃借人役になることを承諾させた。また,被告人自らも,知人に依頼して賃借人役となることを引き受けさせた。そして,被告人において,あらかじめ架空の賃貸借契約書を準備し,新居浜市の職員による現地調査に対応するため,架空入居者らに対して,家財道具を搬入しておくよう自ら指示あるいはDに指示を依頼し,架空入居者らは,それに応じて,テレビやエアコン,事務机などの家財道具を搬入するなどし,現地調査の際には実際に居住しているかのように振る舞い,移転補償金に関する合意を交わすなどした。その結果,新居浜市において,架空入居者と前記会社との間で賃貸借契約が成立しているものと誤信し,被告人や架空入居者らに,移転補償金や使用収益停止補償金が支払われることとなった。

3
このように,本件各犯行の態様は,計画の立案者,賃借人役,賃借人役への指示者などがぞれぞれ役割を分担した上,上記のように,虚偽の賃貸借契約書を作成したり,現地調査に対応するため家財道具を搬入して偽装工作を行うなどして,移転補償金や使用収益停止補償金を騙し取るという,多数人が関与した計画的で,大がかりかつ大胆なものである。その中で被告人は,首謀者として,自ら賃借人役となる者を集めるだけでなく,多数人を集められると期待し,Dに賃借人役となる者の収集を依頼しており,また,過去に本件のような公的事業のための立ち退きを経験したことから知っていた現地立入調査をかいくぐるための具体的方策を自ら,又はDを通じて賃借人役に伝えるなど,終始,積極的に行動し,現実に約1660万円もの多額の利益を自らの懐に収めている。なお,弁護人は,本件各犯行においては,新居浜市が移転補償交渉の際に慎重に審査していれば,容易に不正を発見できたはずであるとして,同市の不手際を指摘する。しかしながら,上記のとおり,市側の調査も相応の手順を踏んでおり,これに対して,被告人は確定的犯意の下に,計画的かつ大がかりに偽装工作を行っており,その巧妙な犯行の手口からすると,弁護人主張の点は,被告人の刑事責任を考える上では重視すべきものではない。
本件各犯行によって,上記のように現実に多額の公金が詐取されており,生じた結果や社会的影響は大きい。さらに,被告人は,犯行後に,実際に賃料を受け取ったかのような領収証を作成して関係者に交付したり,帳簿を書き換えるなどの罪証隠滅工作を行っており,こうした点も強く非難されるところである。4
そうすると,本件各犯行の被害額のほぼ全額(共犯者が弁償した分を除く。)について被害弁償を行い,新居浜市からの求めに応じて,戊マンションについて得た補償金も返還していること,本件各犯行を全て認めて反省の言葉を述べていること,これまで会社の代表者として真面目に稼働してきたこと,業務上過失傷害の罰金前科1犯があるのみであることなど,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,被告人には主文掲記の刑をもってその罪を償わせるのが相当である。
(求刑・懲役5年)
平成20年6月6日
松山地方裁判所刑事部
裁判長裁判官

村越一浩
裁判官

西前征志
裁判官

杉本敏

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