判例検索β > 平成20年(わ)第3896号
傷害、暴行被告事件
事件番号平成20(わ)3896
事件名傷害,暴行被告事件
裁判年月日平成20年11月25日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2008-11-25
情報公開日2017-10-13 01:37:07
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主文
被告人を懲役3年6月に処する
未決勾留日数中80日をその刑に算入する。
大阪地方検察庁で保管中の縫い針1本(同庁平成20年領第7549号符号16)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1

日頃の生活上のうっ憤を晴らすため,通行中の女性の身体に縫い針を突き刺そうと企て,平成20年6月14日午後1時15分ころ,西日本旅客鉄道株式会社大阪駅構内中央南改札前において,同所を通行中の女性A(当時21歳)に対し,所携の縫い針1本(長さ約3.4㎝。大阪地方検察庁平成20年領第7549号符号16)の先をその背部に突き刺す暴行を加えた。

第2

日頃の生活上のうっ憤がたまっていたところ,西日本旅客鉄道株式会社大阪駅に向かう電車内で,扉の戸袋に左上腕部を挟まれたことから,それらの腹いせに,上記大阪駅を通行中の女性を傷つけようと企て,平成20年6月22日午後1時34分ころ,上記大阪駅構内大阪環状線1・2番線ホーム東側エスカレーター上において,女性B(当時52歳)に対し,所携のカミソリでその左上腕部を切り付け,よって,同女に全治約7日間を要する左上腕切創の傷害を負わせた。

第3

前記第2と同様に,前記大阪駅を通行中の女性を傷つけようと企て,平成20年6月22日午後1時36分ころ,上記大阪駅構内大阪環状線1・2番線ホーム上において,女性C(当時20歳)に対し,所携のカミソリでその左上腕部を切り付け,よって,同女に全治約14日間を要する左上腕切創の傷害を負わせた。

(証拠の標目)

省略
(累犯前科)
省略
(法令の適用)
省略
(量刑の事情)
本件は,判示の傷害暴行の事案である。
被告人は,本件のころには,1人息子の監護権がなく,同居もできない,1人息子が自分から離れていく,母の交際相手から生活態度を注意される,風俗店の面接で身体的なことを指摘される,牛乳を飲んで不具合になったものの,自らが治療費を負担することになるなどの事情が重なり,ストレスがたまってイライラする毎日を送っていたと供述する。そうした中で,被告人は,判示第1の数日前に,自宅で起床したところ鼻の下に傷があり,誰かに傷つけられたと思って憤激し,また,判示第2,第3の当日は,電車に乗車中に戸袋に腕を挟まれて憤激し,この上は誰かに仕返しをしてうっ憤を晴らそうと考えたというのである。正に身勝手な犯行動機といわざるを得ず,犯行に至る経緯に酌むべき点は全くない。被告人は,判示第1の際には,自宅を出る段階で既に縫い針で誰かを傷つけようと考え,電車で移動中も犯行場所を思案しており,判示第2,第3の際には,電車の戸袋に腕を挟まれた後は,同様にカミソリで誰かを傷つけようと考えていたのであって,いずれも強固な犯意に基づく犯行で,綿密な計画性があったわけではないものの,衝動的な犯行などとはいえない。被告人は,大人しそうな女性を狙って,背後から縫い針を突き刺したり(判示第1)
,肌が露出した上腕部をカミソリで切り付けたりした上(判
示第2,第3)
,それらの犯行の後は何食わぬ顔で現場を立ち去って平然と生活をしており,卑劣な犯行態様である。被害者らに落ち度は全くないところ,いずれも被告人の厳重処分を求めている上,判示第2の被害者は,事件後に現場の駅を通ろうとしたところ怖くなったし,感染症にかかっていないか不安であると,また,判
示第3の被害者は,人混みと電車に乗ることが怖いなどと述べており,身体的な傷害はもちろんのこと,精神的な負担も軽視できない状況にあると認められる。しかるに,被告人は,被害者らに対し,何らの慰謝の措置も講じていない。被告人は,累犯前科がありながら,独りよがりな考えで立て続けに通り魔的犯行を起こしており,規範意識は涵養されていなかったものといわざるを得ない。本件は多数人が密集する駅で敢行された連続通り魔事件であり,駅の利用者や周辺社会にも少なからず悪影響が及んだのではないかと懸念される。そうすると,本件の犯情は悪く,被告人に刑事責任をゆるがせにすることはできない。
他方,判示第1の被害者には,幸いなことに傷害は生じず,判示第2,第3の被害者についても,重篤な傷害は生じなかったこと,被告人は,本件犯行を自白し,当公判廷においても,被害者らには申し訳なく思っている旨を述べたこと,子供がいることなど,被告人のために酌むべき事情もある。
そこで,これらの事情を考慮し,被告人に対しては主文の刑を量定するのが相当と判断した。
よって,主文のとおり判決する。
〔求刑

懲役4年,縫い針没収〕

平成20年11月25日
大阪地方裁判所第11刑事部

裁判官

千賀卓郎
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