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住居侵入、強盗致傷被告事件
事件番号平成16(わ)140
事件名住居侵入,強盗致傷被告事件
裁判年月日平成16年12月14日
法廷名富山地方裁判所
裁判日:西暦2004-12-14
情報公開日2017-10-13 01:41:42
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平成16年12月14日宣告
平成16年(わ)第140号

主文
被告人を懲役3年に処する
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
理由
(正犯者の行為)
A,B,C,D及びEは,F,G,H,I,Jと共謀の上,民家に押し入って金品を強取しようと企て,平成15年2月17日午前3時過ぎころ,富山市a町(以下省略)甲方において,東側勝手口ドアの施錠をバールでこじ開けて同方に侵入し,1階居間兼寝室で就寝していた甲(当時66歳)に対し,馬乗りになって身体を押さえつけ,手拳で前頭部を殴打し,ガムテープを顔面に巻き付け,ビニール紐で両手首及び両足首を縛るなどの暴行を加え,その反抗を抑圧した上,同人所有の現金約300万5000円及び象牙1本,腕時計3個,指輪9個,バッグ8個等107点(時価合計約1673万円相当)を強取し,その際,上記暴行により,同人に対し,全治約2週間を要する前頭部挫傷,左中指捻挫,両手関節縛傷の傷害を負わせた。
(罪となるべき事実)
被告人は,Iらの共謀による住居侵入窃盗を容易にさせる意思で,上記犯行の前日である同月16日午前11時過ぎころ,豊島区(以下省略)bビルcレンタカーd駅西口営業所において,普通乗用自動車1台を借り受けた上,同所付近路上において,同車にH及びGを乗せ,e自動車道等を経由して,同日午後4時過ぎころ,富山市f町内のパチンコ店駐車場まで運転した後,Aらが上記甲方に侵入して金品を強取することを知りながら,同日日没後,甲方を下見する際にH及びAらを乗せて同車を運転し,さらに,同月17日未明,Aらが甲方に侵入して金品を強取している間,同市g(以下省略)サウナh駐車場において,犯行後にHらを同車に乗せて同市内から離れるために待機するなどし,もって,Aらの上記住居侵入強盗致傷の犯行を容易にさせて幇助したものである。
(事実認定の補足説明)
1 本件公訴事実の要旨は,被告人が,Fら10名と共謀の上,被害者宅に侵入し,同人に対して暴行を加えてその反抗を抑圧した上,金品を強取し,その際,上記暴行により,同人に傷害を負わせたというものであり,検察官は,被告人について住居侵入強盗致傷の共謀共同正犯が成立する旨主張する。
他方,弁護人は,被告人は実行役の中国人らが行うのは窃盗であると考えていたので,被告人には強盗致傷罪は成立せず,また,被告人の本件への関与の程度からすれば,住居侵入窃盗の幇助犯が成立するにとどまる旨主張し,被告人も公判廷ではこれに沿う供述をする。
そこで,判示のとおり住居侵入強盗致傷の幇助犯を認定した理由について,補足して説明する。
2 関係各証拠によれば,次の事実が認められる。
被告人は,平成11年ころ,Iの下で偽造クレジットカードによる商品詐欺に関与するようになり,一時中断していた時期はあったものの,平成15年1月ころから,再び同人の下で同様の手口による商品詐欺を行うグループに加わり,その実行役を自動車で運搬して報酬を得るようになった。
Iは,同年2月初めころ,豊島区のd駅西口近くのパチンコ店で,Gから資産家の紹介を持ちかけられるや,これが中国人グループによる窃盗ないし強盗に関わる話しであると考え,多額の分け前を期待して,資産家の情報を持つHを紹介し,その後,Gらと謀議を遂げる過程でGら中国人が富山の資産家宅に押し入って金品を奪うつもりであることを知った。そこで,Iは,被告人に実行役の中国人らを富山まで運ばせることとし,同月上旬ころ,被告人に対し,報酬3万円から4万円で自動車の運転手として富山に行くことを依頼し,被告人は,これを承諾した。その後,Iは,F,G及びHとd駅西口付近の喫茶店で行われた謀議に被告人を同行したが,被告人を謀議に参加させるつもりがなかったため,被告人を同店内
の少し離れた別席に座らせた。被告人は,Hが被害者宅の間取図を示しながらIらと謀議する様子がうかがえたため,謀議の終了後,Iに対し,富山では何をするのか尋ねたところ,Iは,他人の家に盗みに入る仕事である旨答えた。被告人は,そのようなことに関わり合いになりたくないと考えて運転手役を断ろうとしたが,Iから,

出張の仕事で大きな仕事だ。成功すれば,小遣いもはずむ。お前は,富山まで人を運ぶだけだ。

などと説得され,これを引き受けることとした。なお,被告人は,近時,日本各地で,中国人らが金品を窃取ないし強取するため民家に侵入し,家人がいた場合,家人を緊縛し,傷害を負わせたり殺害したりする事件が起こっていることにつき,報道等を通じて知っていた。
同月16日午前,被告人は,上記喫茶店前でIらと合流した後,レンタカー(バネット)を借り,Iを残し,HとGを同車に乗せて富山に向かった。その途中,Jが運転し,F及び実行役の中国人5名が乗った自動車(ラルゴ)と合流し,2台相前後して富山に向かった。なお,被告人は,合流時には実行役の人数を明確に把握していなかったものの,後記の富山に来てからの行動を通じて,実行役の中国人が5,6名であることを認識した。
被告人らは,同日午後4時過ぎころ富山に到着し,同日夕方被告人運転の自動車(バネット)で被害者宅の下見を行った後,F及びGは,自らの役割は終わったとして電車で東京方面に戻った。H,J,被告人及び実行役の中国人らは,日没後更に被害者宅の下見に行き,その後,富山市内のサウナの駐車場に自動車2台を止めて深夜まで待機していた。その間,被告人は,Iと電話で連絡を取り合い,状況を報告するなどしていたが,このままでは,事前に承諾した富山までの運転手にとどまらず,実行にあたり,中国人らを被害者宅まで送った後付近で待機することになったり,場合によっては自ら被害者宅に入ることまでせざるを得なくなるのではないかと考えて不安になった。しかし,被告人は,Hら現地に残った者にはこのことを言い出せなかったため,Iとの電話の中で,当初の依頼と異なり,既に自らが被害者宅の下見をさせられていることなどを抗議し,実行役の中国人らを車に乗せて被害者宅に行くことはしたくないなどと言って,犯行への協力に消極的姿勢を示した。Iは,被告人がこのまま東京に帰ってしまえば強盗計画が立ち行かなくなると思い,被告人に現場に行かずにすむように手配することを約束するとともに,報酬を10万円か20万円くらいにする旨告げたため,被告人は,そのまま犯行計画に加わることにした。Iは,その後,Gに連絡を取り,被告人が実行時に現場付近で待機しなくてもすむような手配を依頼した。同月17日午前2時ころ,H,実行役の中国人らが,強盗を実行するため,Jの運転する自動車(ラルゴ)で被害者宅に向かった。被告人は,犯行を終えたHらを東京まで運ぶため,上記サウナの駐車場で待機した。
犯行終了後,現場付近にいたHからその旨の連絡を受けた被告人は,直ちにその旨をIに連絡した。さらに,被告人は,Hらと合流した後,同人を自動車(バネット)に乗せて富山から東京方面に向かい,埼玉県i市内の駐車場で待っていたIらと合流した。後日,被告人は,Iに報酬の支払を要求したが,Iから本件では現金を得ることができなかったなどと聞かされたため,それであれば仕方ないと考え,報酬の受領を断念した。
3 以上の事実認定,特に,被告人には,本件以前から,中国人グループが民家に侵入して金品を持ち出す際の一般的な手口について認識があったこと,富山に到着した後,下見などを通じて本件実行役が5名に上ることや犯行場所が人が現に住居として使用している民家であることを認識したこと,下見の後,直ちに犯行を行わず,午前2時ころまで待機していた間,Iに対し,実行時に自己が被害者宅まで赴くことは避けたいとの意向を伝えていたことに照らせば,被告人は,下見時には,本件が人がいる家に押し入り,家人の反抗を抑圧して金品を強取する侵入強盗であることを未必的に認識し,さらに,下見後,待機していた段階では,これを確定的に認識していたものと優に推認することができる。そして,被告人は,捜査段階において,概ねこれと同旨の供述をするところ,同供述は,上記認定事実ともよく符合し,十分に信用することができる。これに対し,弁護人は,強盗の故意を認める被告人の捜査段階での自白は,
中国人グループが民家に窃盗に入って家人がいた場合,家人に暴行脅迫を加えて強盗に発展する可能性があるとの一般論と,犯行当時における現実の認識とを,被告人が意識的に区別できていないことを奇貨として取調官が調書に録取したものであり,一種の偽計による自白というべきであるから,任意性に疑いがある旨主張する。しかし,被告人の検察官調書には,Iから運転手役を持ちかけられた後,犯行に関わっていく過程で,段階的に強盗の認識を深めていった状況が録取されていることなどに照らし,上記自白は,被告人の犯行当時の認識が語られたものであることは明らかである。よって,弁護人の上記主張は,その前提を欠いており,採用できない。
また,被告人は,公判廷において,当初,Iからピッキングの仕事と聞かされたため,留守宅を狙うと思った,富山でも被害者宅に人がいるとは思わなかったなどと弁解する。しかし,Iが被告人に対し,ピッキングの仕事と言ったことは,Iの捜査段階,公判廷でのいずれの供述からも認められず,この点についての被告人の弁解は裏付けを欠く。その余の点についても,公判廷での弁解は,信用性の認められる捜査段階での供述等に照らして信用できない。
4 次に,被告人の行為が共同正犯と幇助犯のいずれに該当するかについて検討する。上記認定事実のうち,被告人が,従前からクレジットカード詐欺の運転手役をつとめ,本件においても自己名義でレンタカーを借りてHらを富山まで運び,下見のときにも運転手をしていること,待機中,Iと頻繁に連絡を取り,その中で,報酬の値上げまで約束させていること,実行時にサウナ駐車場で待機し,犯行終了後,Hを乗せて東京方面まで戻っていることなどからすれば,被告人は共同正犯であるとの検察官の主張にもそれなりの根拠がある。
しかしながら,他方,被告人は,事前謀議に直接参加したことはなく,したがって,本件の全体像を把握してはいなかったこと,従前からIが行うクレジットカード詐欺の手伝いを通じて,同人に従属する関係があった反面,H以外の共犯者とは本件まで面識はなく,Hとも気軽に話せるような間柄ではなかったこと,被告人は,当初,自己の役割は富山までHらを運ぶことだけと考えており,実行時に被害者宅に実行犯を運ぶことまでは想定しておらず,待機中も,Iに対し実行犯を車に乗せて被害者宅に行くことを拒み,実際にも,実行時に被害者宅には行っておらず,Jが自動車(ラルゴ)を運転して実行犯の運搬を行っていること,Iとの報酬の約束は,当初3万円から4万円,値上げ後も10万円か20万円くらいと,本件強盗の成果と連動した取り決めがなされているわけではなく,しかも,被告人の報酬はIの分け前の中から支払われる予定であったことが認められる。これらの事実に加え,富山においても,被告人が本件遂行について主体的に決定した形跡は何らうかがえないこと,Iとの連絡は,これを通じて被告人が実行役らに指示を与えるような性格のものではなく,単にIに富山での犯行の経過・状況を報告するにとどまるものであったことも併せ考えると,遠隔地に赴いて犯行直後直ちに現地を離れることが予定されているという本件犯行の特質を考慮しても,なお被告人が本件について不可欠で重要な役割を果たしていると認めるには未だ十分でないといわざるを得ない。そうすると,被告人には幇助犯が成立するにとどまるというべきである。
5 以上のとおり,被告人には,住居侵入強盗致傷の幇助罪が成立する。(法令の適用)
被告人の判示所為のうち,住居侵入幇助の点は刑法62条1項,130条前段に,強盗致傷幇助の点は同法62条1項,240条前段にそれぞれ該当するところ,この住居侵入幇助と強盗致傷幇助との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い強盗致傷幇助罪の刑で処断することとし,所定刑中有期懲役刑を選択し,判示の罪は従犯であるから同法63条,68条3号により法律上の減軽をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)

本件は,日本人4名と中国人7名の犯罪者集団が,役割を分担した上,下見をし,犯行用具を準備し,携帯電話で連絡を取り合いながら敢行したものであり,犯行の組織性,計画性が顕著である。しかも,その手口は,深夜家に押し入り,高齢女性である被害者の前頭部を殴り,手足を縛り上げるなどの強力な暴行を加え,執拗に物色して現金や高価な物品を強奪した悪質なものであって,事件の社会的影響も大きい。さらに,金品の被害も多額であるのに,被害弁償等の慰謝の措置が講じられていない。
被告人は,Iから運転手の話を持ちかけられるや,侵入,窃盗の実行犯を運んで犯罪に加担することを認識しながら,報酬を期待して受諾した後,犯行前日,レンタカーを借り,Hらを乗せて富山まで運転しただけでなく,被害者宅の下見の際の運転手もつとめ,実行犯が被害者宅に押し入っている間には,犯行を終えた共犯者らを乗せて東京方面に戻るために待機するなどしており,幇助犯としての役割を軽視することはできない。
さらに,被告人は,偽造クレジットカードによる商品詐欺を行って,米国で服役した犯罪歴があるにもかかわらず,帰国後もわが国において同様の行為に関与し続けるなど,素行が甚だ芳しくない。
以上の点に鑑みると,被告人の刑事責任は重いというべきである。しかしながら,他方,被害者の怪我が重いとはいえないこと,被告人は,幇助犯として従属的な立場で関与したにとどまること,本件の報酬を得られなかったこと,本件への関与や自己の行動については事実を認め,反省の態度と更生の意欲を示していること,被告人には前科がないこと,妊娠中の婚約者がおり,間もなく養育すべき子が誕生することなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。そこで,これらの諸事情を総合考慮し,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。(求刑 懲役5年)
平成16年12月14日
富山地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 手 崎 政 人
裁判官 大 多 和 泰 治 裁判官 五 十 嵐 浩 介【正犯者の判決内容(括弧内は本件以外に認定した罪名)】
1B
懲役8年(出入国管理及び難民認定法違反,建造物侵入窃盗窃盗未遂)
2H 懲役8年
3I
懲役6年6月
4J懲役4年(覚せい剤取締法違反)

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