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不公正取引差止請求事件
事件番号平成24(ワ)1505
事件名不公正取引差止請求事件
裁判年月日平成25年2月28日
法廷名名古屋地方裁判所
判示事項スーパーマーケットを出店,経営する者が,同じくスーパーマーケットの出店,経営をする者の出店を妨害する目的で,当該出店予定地の地権者らに働きかけを行い,前記出店予定者が地権者らと締結した前記土地の賃貸借予約契約に基づく本契約の締結を拒絶させたことは,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項6号ヘ,昭和57年公正取引委員会告示第15号「不公正な取引方法」14項に該当し,同法19条に違反する旨主張して,前記働きかけを行った者に対し,同法24条に基づき,前記妨害の禁止等を求める請求が,いずれも棄却された事例
裁判要旨スーパーマーケットを出店,経営する者が,同じくスーパーマーケットの出店,経営をする者の出店を妨害する目的で,当該出店予定地の地権者らに働きかけを行い,前記出店予定者が地権者らと締結した前記土地の賃貸借予約契約に基づく本契約の締結を拒絶させたことは,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項6号ヘ,昭和57年公正取引委員会告示第15号「不公正な取引方法」14項に該当し,同法19条に違反する旨主張して,前記働きかけを行った者に対し,同法24条に基づき,前記妨害の禁止等を求める請求につき,同条に基づく請求をするには,「不公正な取引方法に該当する行為」が現にされているか,又はされるおそれがあることを要するというべきであるところ,前記不公正な取引方法に該当すると主張された行為はいずれも過去の行為にすぎず,当該行為が現に行われているということはできないし,将来これが引き続き行われるおそれがあるということもできないから,損害賠償の問題となることはあっても差止請求の対象になる余地はないとして,前記請求をいずれも棄却した事例
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平成25年2月28日判決言渡
平成24年(ワ)第1505号

不公正取引差止請求事件
文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
被告は,別紙地権者目録記載の各地権者(以下「本件各地権者」という。)に対し,次の各事項を通知せよ。
(1)本件各地権者が原告との間で別紙物件目録記載の各土地(以下「本件各土地」という。)につき賃貸借予約契約又は賃貸借契約を締結することが被告の権利を侵害することを理由として,損害の賠償その他の請求の如何を問わず,本件各地権者を相手方として訴えを提起する意思がないこと。(2)別紙図面赤線部分につき可児市より受けた水路占用許可は既に失効し,被告に「占有権」は存しないこと。したがって,被告に「占有権」があることを根拠に別紙事業用定期借地権設定予約契約目録記載の各予約契約(以下「本件各予約契約」という。)が無効であるという説明は誤っていること。(3)本件各地権者が原告との間で締結した本件各土地についての賃貸借予約契約の解約に関して負担する予約金返還義務,違約金支払義務,損害金支払義務その他一切の負担につき,被告は,第三者弁済,資金の贈与その他本件各地権者の負担の全部又は一部を実質的に免れしめる一切の行為をしないこと。

2
被告は,本件各地権者に対し,本件各土地に関して本件各地権者との間で締結した借地権設定予約契約,借地権設定契約その他これに類する一切の契約を解約する旨通知せよ。

3
被告は,本件各地権者に対し,本件各地権者が原告との間で本件各土地につ
き賃貸借予約契約又は賃貸借契約(以下「本件各契約」という。)を締結することが被告の権利を侵害することを理由に訴訟を提起する意向である旨を告げ,平成20年4月1日及び平成21年3月31日付けで可児市より受けた水路占用許可を根拠に占有権を有する旨主張し,当該占有権を有することを根拠に本件各地権者と原告との間で締結された本件各契約が無効である旨説明し,本件各契約を解約した場合に本件各地権者が原告に対して負担することとなる予約金返還義務,違約金支払義務,損害金支払義務その他一切の負担につき被告が代わって負担することを約する方法等により,原告と本件各地権者との本件各契約に基づく土地賃貸借契約の締結を妨害してはならない。
第2
1
事案の概要
本件は,スーパーマーケットを出店・経営する原告が,本件各土地への店舗出店を企図して本件各地権者と本件各予約契約を締結したにもかかわらず,同じくスーパーマーケットを出店・経営する被告が原告の出店を妨害する目的で本件各地権者に対し,①原告との間で本件各予約契約を締結したことにつき訴訟を提起する意思があることを告げ,②被告が可児市から水路占用許可を受けているため水路等の占有権を有することを根拠として本件各予約契約が無効である旨虚偽の説明をし,③本件各地権者が本件各土地について被告と賃貸借契約を締結した場合には,本件各地権者が原告に支払うべき違約金・損害金の負担や,原告との間に紛争が発生したときの弁護士の紹介や弁護士報酬の負担を被告が行うことを提案・約束するなどの働きかけを行い,本件各予約契約に基づく本契約の締結を拒絶させたのは,債務不履行等を誘引する行為であって,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)2条9項6号ヘ,昭和57年公正取引委員会告示第15号「不公正な取引方法」(以下「一般指定」という。)14項に該当し,独禁法19条に違反する旨主張して,被告に対し,独禁法24条に基づき,前記第1の1の通知,同2の通知及び同3の妨害禁止を請求する事案である(以下,順に「本件請求
1」,「本件請求2」及び「本件請求3」といい,併せて「本件各請求」という。)。
2
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者等

原告及び被告は,いずれも食料品,衣料品等を販売するスーパーマーケットを出店・経営する株式会社である。原告は,和歌山県を中心に主として南近畿一円及び中部地方に店舗を出店し,被告は,東海地方を中心に,「A」や「B」の名称で店舗を出店している。(弁論の全趣旨)


被告補助参加人ら13名は,本件各土地を所有する本件各地権者17名の一部である。(弁論の全趣旨)

(2)本件各予約契約締結に至る経緯

被告は,昭和56年頃から,本件各土地につき,地権者らと賃貸借契約を締結し,同土地上で「BC店」という名称のスーパーマーケットを営んでいた。


被告は,平成20年秋,「BC店」から1キロメートルほど離れた場所に「AD店」という名称のスーパーマーケットを出店した。(甲1,弁論の全趣旨)


被告は,平成21年7月10日頃,地権者らに対し,平成22年5月9日に「BC店」を閉店した上,同年11月30日の期間満了をもって前記アの賃貸借契約を解約する旨通知し,同年9月11日頃,地権者らとの間で,これを合意解約した。そして,被告は,同年10月16日,「BC店」の店舗建物を解体撤去し,同年11月30日までに,地権者らに対して本件各土地を明け渡した。(甲2,3)


地権者らは,前記ウの解約通知後,被告との賃貸借契約解約に備えて,本件各土地の新たな賃借人を探し始め,被告も,その候補者を紹介するな
どしてこれに協力した。(弁論の全趣旨)

原告は,本件各土地につき,地権者らが新たな賃借人を探しているとの情報を得,平成23年1月28日,本件各地権者(ただし,E,F及びGについては,被相続人であるH)との間で,それぞれ本件各土地のうちの同各地権者各自の所有に係るものについて,次の内容を含む事業用定期借地権設定予約契約である本件各予約契約を締結し,同各地権者に対し,敷金の10%相当額の契約予約金を預け入れた。(甲6の1の1ないし6の15の3,弁論の全趣旨)
(ア)原告は,土地上に店舗等の建物を所有し,事業用に使用するための敷地として賃借する。(1条)
(イ)原告は,予約契約締結後,3年以内に近隣住民及び官公庁との調整並びに建物の着工の目途を着けるものとし,開発許可申請許可後,事業用定期借地権設定契約(本契約)を締結するものとする。なお,予約契約は本契約の締結をもって完結し,その時点で予約契約は自動的に効力を失うものとする。(4条)
(ウ)賃貸借期間は,店舗営業開始日より起算して満20年間とする。(5条1項)
(エ)賃料は月額坪当たり700円とする。(7条1項)

(3)本件各予約契約締結後の経緯

地権者らは,平成23年2月4日,被告に対し,前記(2)エの賃借人候補者の紹介を断るとともに,原告の出店を進めることになった旨報告した。(甲7)


これを受けて,被告は,平成23年2月8日,地主会会長(I)に対
し,「弊社に話がなく決められることは,思いもよらぬ事であります。又,弊社の財産権に関わるものと考えます。I会長様のご説明によっては,弊社は望まないことでありますが,法廷にての決着も視野に入れなけ
ればならないと考えております。」との記載がある書面を送付するとともに,地権者各位に対しては,被告が紹介した店舗が選出されなければ被告自身が以前と同様に賃借したいとの記載がある書面を送付した。(甲8,9)

被告は,平成23年3月7日,地権者らに対し,具体的な賃貸借の条件を示して新たな賃貸借契約の申込みをした上,同年5月17日には,更に条件を具体化して,月額賃料は坪当たり950円とするとともに,「他社との予約契約がある場合は,契約解除による交渉は弊社が責任をもって行い,違約金等があれば弊社が全額負担する」旨を約束した。(甲10,13)


被告から地権者らとの交渉を依頼されたJ株式会社は,平成23年5月27日,被告補助参加人Kから別紙物件目録記載13の各土地について,同Lから同目録記載9の各土地について,それぞれ賃借権設定仮登記を経由した。(甲10,11の1ないし11の4)


他方,原告は,平成23年6月10日にH及びMとの間で,同月13日に被告補助参加人N及び同Oとの間で,同月23日にIとの間で,それぞれ本件各土地のうちの上記各地権者各自の所有に係るものについて,前記(2)オの予約契約に基づく本契約として事業用定期借地権設定契約を締結した(ただし,賃料については,月額坪当たり950円とした。)。(甲29の1ないし29の5)


被告は,平成23年6月30日,地権者らに対し,本件各土地内における被告の水路占用許可を根拠として,本件各予約契約が無効である旨の説明をした。(甲12)


被告補助参加人ら(ただし,被告補助参加人O及び同Gを除く。)は,平成23年7月5日,原告に対し,本件各予約契約について,「賃借予定地内に設置された車道及び用水路について賃借予定地の前賃借人を設置者
とする土地工作物等付帯設備の存在があり,前賃借人から使用収益の未了に伴う占有権を主張されたため,予約契約の解除条件が既に成就していることから契約の実行が困難であり,予約契約は無効の可能性が高い」との理由から,前記(2)オの契約予約金を返還する旨通知した。また,P弁護士は,同月7日,原告に対し,上記補助参加人らの代理人として同旨の通知をした。(甲15,16)
3
当事者の主張
(1)原告の主張
被告は,本件各地権者に対し,①原告との間で本件各予約契約を締結したことにつき訴訟を提起する意思があることを告げ(前記2(3)イ),②被告が可児市から水路占用許可を受けているため水路等の占有権を有することを根拠として本件予約契約が無効である旨の説明をし(前記2(3)カ),③本件各地権者が本件各土地について被告と賃貸借契約を締結した場合には,本件各地権者が原告に支払うべき違約金・損害金の負担や,原告との間に紛争が発生したときの弁護士の紹介や弁護士報酬の負担を被告が行うことを提案・約束する(前記2(3)ウ)などの働きかけを行い,本件各予約契約に基づく本契約の締結を拒絶させた(前記2(3)キ)。①の訴え提起の告知は,事実的・法律的根拠を欠くにもかかわらず,一種の脅迫として告知されたものである。②については,被告が可児市から受けた占用許可は,被告と地権者らとの土地賃貸借契約が終了し建物を解体した時点で既に終了したものであるから,被告の主張する「占有権」は根拠がなく,これにより本件各予約契約が無効となる余地はないから,これに関して被告がした説明は,虚偽である。③の違約金等の負担は,価格や品質を中心とする正常な市場競争の範疇から外れて,競争相手の契約者を奪取しようとする趣旨に出たものである。
被告の上記各行為は,国内において競争関係にある他の事業者である原告
とその取引の相手方である本件各地権者との取引について,契約の成立の阻止,契約の不履行の誘引をし,その取引を妨害したものであって,公正競争阻害性(不当性)も認められるから,独禁法2条9項6号ヘ,一般指定14項に該当し,独禁法19条に違反する。
原告は,上記債務不履行等の誘引行為により,本件各土地への出店が困難となり,投下した費用等も水泡に帰しかねないという不利益を受け,これにより著しい損害を被るおそれがある。
したがって,原告は,被告に対し,独禁法24条に基づき,上記侵害の停止又は予防に必要な措置として,本件各請求を求める差止請求権を有する。(2)被告の主張

差止請求の要件について
(ア)地権者らは,本件各予約契約を事実上解約した上,本件訴訟に補助参加して,原告との契約を締結する意思のないことを表明している。また,既に被告は,地権者らとの間で,本件各土地の事業用定期借地権に関する基本協定書を締結して土地の引渡しを受け,新店舗も完成している。したがって,原告が本件各予約契約に基づいて本契約(賃貸借契約)を締結できる可能性は,法律上も事実上も皆無であるから,原告は,独禁法24条により保護されるべき利益を有しない。
(イ)本件請求1及び本件請求2の内容は,被告に直接的な作為義務を課すものであるが,独禁法24条は,相手方に直接的な作為義務を課すことを予定していないと解すべきである。
そうでないとしても,独禁法24条に基づいて請求することができる作為は,「侵害の停止又は予防という不作為を達成するために必要な作為」に限定される。本件請求1において原告が求めている作為は,現在も継続している行為についてのものではないし,原告の求める通知が行われても,原告と地権者らとの間の本件各予約契約が復活するという関係にある
わけでもない。したがって,原告の作為請求は,「侵害の停止又は予防という不作為を達成するために必要な作為」の限度を逸脱するものである。(ウ)本件請求2は,契約当事者以外の第三者である原告が当該当事者間で締結された契約の解除を求めるという内容のものであり,契約の相手方である本件各地権者の経済活動の自由や契約締結の自由を侵害し,独禁法の趣旨に反するものである。
また,この請求の趣旨のうち,「その他これに類する一切の契約」という部分は,差止めの対象として特定性を欠くというべきである。
(エ)本件請求3については,独禁法24条により「侵害の停止又は予防」を請求することができるのは,現に受けつつある被害が将来も継続していくとみられる場合や,将来確実に被害を被ると予想される場合に限られるというべきところ,原告が禁止を求めている行為は,過去に行われた一過性の行為であり,被告がこれを繰り返す可能性はないから,差止めを求めることができる場合には当たらない。
(オ)以上によれば,本件各請求は,いずれも独禁法24条に基づく差止請求としての訴訟要件を満たしていないから,不適法なものとして却下されるべきであり,そうでないとしても棄却されるべきである。

独禁法19条違反の有無について
原告は,被告が独禁法2条9項6号へ,一般指定14項に該当する前記(1)①ないし③の行為を行った旨主張するが,このうち①については,被告が本件各地権者に対して訴え提起を告知したことはなく,脅迫した事実もない。また,②については,被告が可児市から受けた水路占用許可は存続しているのであって,虚偽の説明をしたわけではない。さらに,③については,被告が地権者らに対してした違約金等の負担の申出は,地権者らの自由な意思決定に支障を来す不当なものではない。
地権者らは,早期に賃料収入による利益を受領できるなどの点で,被告と
の契約締結を選択したものであり,原告が地権者らと本契約締結に至らなかったのは,自由競争に敗れた結果にすぎず,被告の行為に公正競争阻害性はない。
したがって,被告の行為が独禁法2条9項6号ヘ,一般指定14項に該当するということはできない。

著しい損害の発生又はそのおそれの有無について
原告の主張する損害は,独禁法24条所定の「著しい損害」には当たらない。また,口頭弁論終結時において,著しい損害が現存し,又は発生する蓋然性があるということもできない。

(3)原告の反論(前記(2)アの被告の主張に対して)

地権者らは,被告の虚偽説明に欺罔されて本件各予約契約が無効であると主張しているだけであって,本件各予約契約は,法律上も事実上も解約されているわけではないし,地権者らも,本件各予約契約が無効であるとの前提が誤りであることを悟れば,これまでの態度を翻す可能性がある。また,被告が本件各土地について賃借権の対抗要件を具備したわけではないから,法律上も事実上も,原告が本契約を締結できる可能性はある。原告は,予約完結権を行使して本契約を締結した上,本件各土地の賃借権について対抗要件を具備し,被告が建設している建物の撤去を請求することも可能である。


独禁法24条の立法経緯等に鑑みれば,同条に基づいて作為義務を課すことは当然に予定されている。
そして,被告が行った債務不履行等の誘引行為が撤回されずに放置されるのであれば,取引の妨害行為はなお継続していると評価することができる。また,被告が,原告の対抗要件具備を遅らせようとして,これと同様の債務不履行等の誘引行為を繰り返す蓋然性は十分にある。


不当廉売や不当高価購入が不公正な取引方法として差し止められる場合に
は,これらの相手方は,自ら不公正な取引方法を行ったわけではないが,その限りにおいて経済活動の自由や契約締結の自由を制限されるのであるから,これと同様に,本件請求2を認めても,本件各地権者の経済活動の自由や契約締結の自由を侵害するものとして独禁法上の趣旨に反する結果を招くことになるということはできない。
また,本件請求2の「その他これに類する一切の契約」という部分も,差止めの対象として特定性に欠けるところはない。

前記イのとおり,取引の妨害行為はなお継続していると評価できるし,被告がこれと同様の債務不履行等の誘引行為を繰り返す蓋然性は十分にあるから,原告は,独禁法24条により「侵害の停止又は予防」として本件請求3を求めることができるというべきである。

第3
1
当裁判所の判断
独禁法24条は,不公正な取引方法に該当する行為によってその利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者は,これにより著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあるときは,その利益を侵害する事業者又は侵害するおそれがある事業者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる旨規定している。これは,その文言からも明らかなように,相手方による「不公正な取引方法に該当する行為」が現にされている場合にその停止を請求し,「不公正な取引方法に該当する行為」がされるおそれがある場合にその予防を請求することができる旨を定めたものと解されるから,独禁法24条に基づく請求をするには,「不公正な取引方法に該当する行為」が現にされているか,又はされるおそれがあることを要するというべきである。

2
そこで,本件についてこれをみるに,本件各請求は,被告が行った債務不履行等の誘引行為,具体的には,(a)本件各地権者が原告との間で本件各予約契約を締結したことにつき訴訟を提起する意思があることを告げたこと,(b)被告が可児市から水路占用許可を受けているため水路等の占有権を有することを
根拠として本件各予約契約が無効である旨虚偽の説明をしたこと,(c)本件各地権者が本件各土地について被告と賃貸借契約を締結した場合には,本件各地権者が原告に支払うべき違約金・損害金の負担や,原告との間に紛争が発生したときの弁護士の紹介や弁護士報酬の負担を被告が行うことを提案・約束するなどの働きかけを行ったことが,独禁法2条9項6号ヘ,一般指定14項所定の「不公正な取引方法」に該当すると主張して,同法24条に基づく差止請求として侵害の停止,予防を求めるというものである。
ところが,前記前提事実のとおり,原告が「不公正な取引方法」に該当すると主張する行為が行われたのは,平成23年中のことであって,本件全証拠によっても,後記②の事業用借地権設定契約が締結された平成24年1月17日以降,これに類する行為が行われた形跡は見当たらない。かえって,前記前提事実並びに証拠(甲1,乙1ないし4,5の1ないし5の15,8,12,13)及び弁論の全趣旨によれば,①本件各土地は,本件各地権者が所有する合計17420.52平方メートルの一団の土地であり,昭和56年頃から,スーパーマーケットの敷地として一体的に利用されてきたものであり,原告も,平成23年1月28日,本件各土地をスーパーマーケットの敷地として一体利用することを前提として,本件各予約契約を締結したこと,②ところが,被告補助参加人G及びF以外の本件各地権者は,平成24年1月17日,被告との間で,それぞれ本件各土地のうち各自の所有に係るものについて,これを被告の建設するスーパーマーケットの敷地とすることを目的とする事業用借地権設定契約を締結したこと,③これを受けて,被告は,同年6月12日,本件各土地上における店舗建物の建築工事に着工し,同年11月28日には,建物が完成して間もなくスーパーマーケット開店の運びとなるに至ったこと,④その結果,本件各土地は,被告が建設した上記スーパーマーケットの敷地として一体的に利用されていること,⑤本件各地権者の大半を占める被告補助参加人らは,同年9月10日の第3回口頭弁論期日において,被告との間で締結した上
記②の事業用借地権設定契約を解約する意思がないことを表明したことが認められる。
これら諸点に照らすと,原告の主張に係る「不公正な取引方法に該当する行為」が現に行われているということはできないし,将来,これが引き続き行われるおそれがあるということもできない。
3
これに対し,原告は,①地権者らも,本件各予約契約が無効であるとの前提が誤りであることを悟れば,これまでの態度を翻す可能性がある,②被告が本件各土地について賃借権の対抗要件を具備したわけではないから,原告が予約完結権を行使して本契約を締結した上,本件各土地の賃借権について対抗要件を具備し,被告建設に係る建物の撤去を請求することも可能である,③被告が行った債務不履行等の誘引行為が撤回されずに放置されるのであれば,取引の妨害行為はなお継続していると評価することができる,④被告が,原告の対抗要件具備を遅らせようとして,同様の債務不履行等の誘引行為を繰り返す蓋然性は十分にある旨主張する。
しかしながら,上記①の点については,前記2で認定した本件各土地の状況や従前の経緯等に照らすと,地権者らが,現段階において,これまでの態度を翻し,原告と改めて賃貸借契約を締結する可能性があるということはできない。
上記②の点については,前記2で認定したとおり,平成24年11月28日に本件各土地上の被告建物が完成したというのであるから,時をおかず被告が同建物の所有権保存登記を具備することが想定される。そうすると,被告が本件各土地について賃借権の対抗要件(借地借家法10条1項)を具備するより前に,原告において,上記賃借権につき対抗要件を備えることができるとは考え難い。
上記③の点については,原告主張に係る「不公正な取引方法」に該当する行為は,いずれも過去の行為にすぎないから,損害賠償の問題となることはあっ
ても,差止(停止)請求の対象になる余地はないといわざるを得ない。上記④の点については,前記2で認定した事実関係に照らせば,被告が原告の対抗要件具備を遅らせ,原告の主張する債務不履行等の誘引行為を繰り返すような行動に出るおそれがあるとはいい難い。
したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。4
以上のとおり,本件においては,原告の主張する「不公正な取引方法に該当する行為」が現にされ,又はされるおそれがあるということはできないから,原告の本件各請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。

第4

結論

以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

名古屋地方裁判所民事第9部

裁判長裁判官

福井章代

裁判官

笹本哲朗

裁判官

山根良実

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