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固定資産評価審査決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(行ウ)第438号)
事件番号平成24(行コ)38
事件名固定資産評価審査決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(行ウ)第438号)
裁判年月日平成25年4月16日
法廷名東京高等裁判所
判示事項固定資産課税台帳に登録された家屋の価格に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の決定の取消請求が,一部認容された事例
裁判要旨固定資産課税台帳に登録された家屋の価格に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の決定の取消請求につき,基準年度の再建築費評点数がその前年度における再建築費評点数を基礎として算出される場合,その前年度に至るまでの再建築費評点数の算出は各年度における固定資産評価基準に従ったものと推認するのが相当であり,そうである以上,前記家屋の平成18年度価格は,固定資産評価基準に従って決定されたものということができ,固定資産評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は固定資産評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情の存しない限り,その適正な時価であると推認されるというべきであるが,納税者が前者の推認を覆すに足りる事情が存在することを主張立証したときは,前記家屋の平成18年度価格が固定資産評価基準に従って決定されたものということはできないとした上で,前記家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が固定資産評価基準に従っておらず,その算出に誤りがあることの主張立証がされたとして,前記請求を一部認容した事例
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平成25年4月16日判決言渡
平成24年(行コ)第38号

固定資産評価審査決定取消請求控訴事件
主1文
原判決を次のとおり変更する。
(1)

東京都固定資産評価審査委員会が控訴人に対して平成20年1月

23日付けでした固定資産課税台帳に登録された原判決別紙物件目録記載の家屋に係る平成18年度の価格に対する審査申出を棄却した決定のうち価格248億2490万5100円を超える部分を取り消す。
(2)
2
控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを20分し,その1を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
東京都固定資産評価審査委員会が控訴人に対して平成20年1月23日付け
でした固定資産課税台帳に登録された原判決別紙物件目録記載の家屋に係る平成18年度の価格に対する審査申出を棄却した決定のうち価格178億9770万9700円を超える部分を取り消す。
第2
1
事案の概要
本件は,原判決別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)の所有者である控訴人が,本件家屋についての平成18年度固定資産税の課税標準として東京都知事が決定して固定資産課税台帳に登録した価格を不服として,東京都固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会がこれを棄却する旨の決定をしたため,同決定のうち控訴人が相当と考える価格を超える部分の取消しを求める事案である。

-1-

控訴人は,上記取消しを求める理由として,本件家屋の建築当初の評価に誤りがあったこと(具体的には,平成5年度において本件家屋の価格を評価するに当たり,単位当たり再建築費評点数を算出する際の部分別評価において適用された補正係数に誤りがあったこと)を主張したところ,原判決は,建築当初の評価により固定資産課税台帳に登録された価格についての審査申出期間や出訴期間が経過した後にあっては,建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明したような場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎にその後の家屋の評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合に限って,建築当初の評価が不合理であることを理由として,その後の基準年度の価格を争うことも認められるが,本件家屋の建築当初の評価により固定資産課税台帳に登録された価格に関してそのような事情を認めることはできないとして,控訴人の請求を棄却した。そこで,控訴人がこれを不服として控訴をした。
なお,控訴人は,本件家屋についての平成18年度の固定資産税の課税標準価格につき,原審では178億9770万9700円を上回らないと主張していたが,当審の審理の過程で,その計算過程に誤りがあったとして,179億2460万7400円を上回らないと主張を訂正した。
2
法令の定め等及び争いのない事実等は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2

事案の概要」の1及び2(2頁16行目から1

2頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)

3頁7行目の「固定審査」を「固定資産」に改める。

(2)

9頁13行目から14行目にかけての
「当該補正項目について定められて

いる工事の施工量等と相違する場合においては,」を削る。
(3)
3
11頁19行目の「乙30」を「乙31」に改める。

争点及び争点に関する当事者の主張の概要は,次のとおり原判決を補正し,
-2-

後記4のとおり当事者の主張(補充)を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2

事案の概要」の3及び4(12頁2行目から56頁10行目

まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)

19頁4行目の「別紙2」を「本判決別紙1「計算書(控訴人・被控訴
人比較)」の「A補正係数」及び「A単位当たり評点数」欄」に改める。(2)

21頁12行目の「コンクリート造である」の次に「し,鉄筋及びコン
クリートの標準評点数に含まれる労務費分と二重計上することになる」を加える。
(3)


26頁6行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
しかも,
本件家屋の外部仕上げが普通であることは,
本件家屋と立地条件,

規模及び外観のイメージ・グレード感において共通するBにおける外部仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからしても明らかである。」
(4)


28頁14行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
しかも,本件家屋の内部仕上げが普通であることは,1階ロビー及び高層
階ロビーの壁面において統一された模様の花崗岩による仕上げがされて本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける内部仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからしても明らかである。」(5)


30頁18行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
しかも,本件家屋の床仕上げが普通であることは,統一された模様の花崗
岩のほか大理石の模様貼などの使用により本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける床仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからしても明らかである。」
(6)


33頁2行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
しかも,本件家屋の天井仕上げが普通であることは,システム天井が採用
-3-

され,また,ロビーの天井などには吹き抜けがあるほか,曲線を描いた飾り天井が採用され,本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける天井仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからしても明らかである。」
4
当事者の主張(補充)

(控訴人の主張)
(1)

最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決(裁判集民事210号28
3頁)は,固定資産評価基準の一般的な合理性を認めた上で,同基準に従って評価,決定をした登録価格であっても,「評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情」が認められる場合には適正な時価とは認められず,これらの「特別の事情の存しない限り,その適正な時価であると推認するのが相当である。」と判示した(以下,上記最高裁判決のいう
「特別の事情」
のことを
「最判のいう特別の事情」
という。。

そうすると,そもそも固定資産評価基準に従った固定資産の評価がされているとはいえない場合,すなわち,同基準の適用に誤りがある場合には,その評価価格を適正な時価と推認することはできないのであり,そのことは,同基準の適用の誤りが,当該基準年度において生じたか,それ以前の基準年度において存在したかにかかわらないというべきである。
本件においては,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出に誤りがあるのであるから,最判のいう特別の事情の存否を考慮するまでもなく,平成18年度価格が適正な時価であるということはできない。(2)

在来の非木造家屋の評価額は,「前年度における再建築費評点数」に再
建築費評点補正率を乗じて求める評点数に損耗の状況による減点補正率などを乗じて算定されるところ,第二年度及び第三年度の価格は基準年度の価格が据え置かれるため,平成18年度の評価額は,前基準年度である平成1
-4-

5年度及びそれ以前の各基準年度におけるそれぞれの再建築費評点数が正しくなければ適切に算定することができない。そのため,いくら平成18年度固定資産評価基準が定める評価方法によって算定しようとしても,平成3年度固定資産評価基準が適切に適用されて本件家屋の建築当初の再建築費評点数が算出されていなければ「前年度における再建築費評点数」自体が誤っているのであるから,平成18年度の評価額を適切に算定することはできない。
本件においては,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出に誤りがあるのであるから,このような事情は最判のいう特別の事情に当たるというべきである。
(3)

非木造家屋の評点項目,補正係数及びその考え方は,平成3年度から平
成18年度まで変更されていないにもかかわらず,被控訴人は,本件家屋と同種,同等,同規模の建物で平成12年度以降の比較的近時に建設された建物(B,C,D,E,F。以下,これらを総称して「比較的近時に建設された建物」という。)については,本件家屋には一律1.30とした補正係数をほぼ1.00として増点補正をしていない。被控訴人は,本件家屋について補正係数1.30を適用した理由として,
「本件家屋が竣工した平成5年当時は
20階建以上の高層ビルは目新しかったこと」を挙げているが,このような主観的判断の前提となった事情がその後変遷した結果,比較的近時に建設された建物については増点補正がされなかったものである。このような被控訴人の増点補正に関する主観的判断の存在は,最判のいう特別の事情(評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情)に当たるというべきである。
(被控訴人の主張)
(1)

平成18年度価格は,固定資産評価基準に定められた「基準年度の前年
度における再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じて求める方法」に従
-5-

って決定されており,最判のいう特別の事情の存しない限り,その適正な時価であると推認されるというべきである。
(2)

最判のいう特別の事情があるというためには,建築当初の評価において
適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎にその後の家屋の評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合でなければならないというべきである。
(3)
第3
1
控訴人の主張(3)については争う。
当裁判所の判断
争点(1)について

(1)

固定資産評価基準が定める家屋の評価方法は,前記引用に係る原判決の
「事実及び理由」欄の第2の1の(2),(3)のとおりであって,家屋の評価方法として一般的な合理性を有するということができ,これに従って決定された家屋の価格は,固定資産評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は固定資産評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情の存しない限り,その適正な時価(地方税法341条1号)であると推認するのが相当である(この点については控訴人も肯認するところである。なお,最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決・裁判集民事210号283頁参照)。
(2)

しかして,前記引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第2の1及び
2の各事実(以下「前提事実」という。)によれば,本件家屋の平成18年度価格は平成18年度評価基準(固定資産評価基準)に従って決定されたことが明らかである。すなわち,在来分の非木造家屋(当該年度において新たに課税の対象となる非木造家屋以外の非木造家屋)であることから,前年度(平成17年度)の再建築費評点数に平成18年度評価基準が定める再建築費評点補正率を乗じて再建築費評点数を算出し,これに基づいて決定されて
-6-

いる。
そして,上記の前年度(平成17年度)の再建築費評点数についてみると,基準年度の翌年度(第二年度)及び第二年度の翌年度(第三年度)の家屋の固定資産税の課税標準については原則として当該家屋の基準年度の価格とするものとされている(地方税法349条2項,3項)ところ,前提事実によれば,平成5年に新築された本件家屋の各基準年度(平成6年度,平成9年度,平成12年度,平成15年度)の再建築費評点数は,それぞれ,その前年度の再建築費評点数に所定の再建築費評点補正率を乗じることによって算出されてきたのであり,例えば平成6年度の再建築費評点数は,平成5年に新築された当初の再建築費評点数に平成6年度において適用される固定資産評価基準が定める再建築費評点補正率を乗じて算出されたといえる。(3)

ところで,地方税法432条1項本文は,固定資産税の納税者は,その
納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては,固定資産課税台帳に登録した価格等の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日まで若しくは都道府県知事の勧告を受けて固定資産課税台帳に登録された価格を修正した場合の公示の日から同日後60日(固定資産の価格の修正による更正に基づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の交付を受けた後60日)までの間において,又は登録価格等の公示の日以後における価格の決定・修正の通知を受けた日から60日以内において,文書をもって,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定め,同法434条は,同委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができ,登録価格についての不服は,上記審査の申出又は上記取消しの訴えによることによってのみ争うことができることとしている。また,第二年度及び第三年度の固定資産税の課税標準については原則として当該家屋の基準年度の価格とするものとされていることは上記(2)のと
-7-

おりであるところ,同法432条1項ただし書は,第二年度及び第三年度における家屋の価格に不服がある場合には,基準年度の価格によることが不適当となる特段の事情を主張する場合に限り,所定の期間内に,審査の申出ができるものとしている。
このように,地方税法が,固定資産税の課税標準である固定資産税課税台帳の登録価格について不服があるときは,原則として基準年度の価格について所定の審査申出期間内に固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をすべきものとし,第二年度及び第三年度における価格については審査の申出をすることができる場合を限定し,これらの方法及び固定資産評価委員会の決定に対する取消訴訟によらなければ価格を争うことができないこととしているのは,固定資産税の賦課処分の前提問題である課税標準となる固定資産課税台帳の登録価格を早期に確定させることにより,固定資産税に関連する事項についての法的安定性を確保する趣旨であると解される。
(4)

上記(3)の点に鑑みると,上記(2)の後段のように基準年度の再建築費評
点数がその前年度における再建築費評点数を基礎として算出される場合,その前年度に至るまでの再建築費評点数の算出は各年度における固定資産評価基準に従ったもの(適合するもの)と推認するのが相当である(以下,この推認のことを「本件推認」という。)。
そうである以上,本件家屋の平成18年度価格は,固定資産評価基準に従って決定されたものということができ,上記(1)のような特別の事情の存しない限り,その適正な時価であると推認されるというべきである。(5)

もっとも,納税者が本件推認を覆すに足りる事情が存在することを主張
立証したときは,上記(4)の後段のようにいうことはできない。なぜなら,本件家屋の平成18年度価格は,前年度(平成17年度)の再建築費評点数に平成18年度評価基準が定める再建築費評点補正率を乗じて再建築費評点数を算出し,これに基づいて決定されたものであるところ,本件推認をす
-8-

ることができないとすると,前年度(平成17年度)の再建築費評点数が固定資産評価基準に従って算出されたとは直ちにいうことができず,したがってまた,平成18年度価格が全体として固定資産評価基準に従って決定されたものとは直ちにいうことができないからである。
控訴人は,本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が固定資産評価基準に従っておらず,その算出に誤りがある旨主張するところ,この主張は,本件推認を覆すに足りる事情が存在する旨の主張であると解される。本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が固定資産評価基準に従っておらず,その算出に誤りがあることの主張立証がされたときは,同算出を正しくやり直し,これに基づいて前年度(平成17年度)の再建築費評点数を算出した上で,これに平成18年度評価基準が定める再建築費評点補正率を乗じて再建築費評点数を算出し,これに基づいて平成18年度の価格が決定されるべきであり,本件決定のうちその価格を超える部分は違法なものとして取り消すべきことになる。
(6)

上記(5)の点について,被控訴人は,平成18年度価格についての不服と
して,本件家屋の建築当初の評価を争うことは原則としてできず,その評価を争うことができるのは,建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎に評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合に限られるとし,このように解さないと,①建築当初の評価額についての争いをいつでも蒸し返すことができることになり,固定資産税の賦課決定処分の前提問題である固定資産税評価額を早期に確定させることによって法的安定性を招来しようとする地方税法の趣旨に反する結果となる,②当初の評価から時間が経過するほど,評価の対象となった建物には経年変化が生じ,また,補修や増改築等による変更が生じることが当然に予想され,そうなれば,当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断する
-9-

ことは困難になっていくことが当然に予想される,などと主張する。しかし,固定資産税の課税標準である「価格」は固定資産評価基準(地方税法388条1項)によって決定しなければならないが(同法403条1項),その「価格」は,あくまでも「適正な時価」でなければならないのであり(同法341条5号),固定資産評価基準に従って(すなわち,固定資産評価基準を正しく適用して)決定された価格は「適正な時価」であると推認されるというにすぎない。固定資産評価基準の適用に誤りがあると上記推認はされず,このことは,その適用の誤りが,前記のような「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」である場合であっても,当該基準年度における価格の決定に影響を及ぼすものである限り,
同様である。
本件において,
「建
築当初の再建築費評点数の算出の誤り」は,「前年度(平成17年度)の再建築費評点数」に影響を及ぼし,ひいては平成18年度の価格に影響を及ぼすことが明らかである。地方税法432条1項も,基準年度の登録価格に関して審査の申出をすることができる場合について何らの制限を設けていないのであり,被控訴人主張のような制限をすることはできない。
確かに,地方税法が,固定資産税の賦課処分の前提問題である課税標準となる固定資産課税台帳の登録価格を早期に確定させることにより,固定資産税に関連する事項についての法的安定性を確保しようとしていると解されることは,前記(3)のとおりである。しかし,上記のように建築当初の再建築費評点数の算出の誤りを主張することができると解したとしても,従前の登録価格及びこれに基づく課税処分は確定していてこれを争うことができないことに変わりはなく,その意味での法的安定性を害することはない。なお,上記のように解すると,納税者は建築当初の評価の誤りをいつまでも主張し得ることにはなるが,ひとたび審査手続や裁判手続を通じて争いが決着すれば,重ねて同様の紛争が繰り返されることは稀であろうし,同様の紛争の蒸し返しと見られる場合には,信義則上の主張制限という対処も考えられ
-10-

るのであり,いずれにせよ,「適正な時価」の決定を優先すべきである。また,建築当初の評価から時間が経過すればするほど,評価の対象となった家屋には経年変化が生じ,修復や増改築等による変更が生じることが当然に予想され,さらには,建築当初の建築関係書類が廃棄又は紛失されることがあることも想像に難くなく,そうすると,時の経過と共に建築当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になることも当然に予想されるということはできる。しかし,上記のように建築当初の再建築費評点数の算出に誤りがあることについて主張立証責任を負担するのは,その旨を主張して固定資産課税台帳に登録された価格の相当性を争う納税者であるところ,納税者が建築当初の再建築費評点数の算出に誤りがあることを主張立証することができた以上,上記のような事情は建築当初の再建築費評点数の算出の誤りに基づく上記登録価格の誤りを是正することを否定する理由にはならないというべきである。
以上の次第で,被控訴人の主張は採用することができない。
2
争点(2)について
上記1のとおりであるから,控訴人主張のように本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出に誤りがあったか否か(具体的には,その算出に当たり各評点項目の補正項目に対して適用された補正係数に誤りがあったか否か)を検討すべきことになるが,当裁判所は,根切り工事の補正項目「地盤」の補正係数に誤りがあった(増点補正をすべきではなかった。)と認められるが,その余については誤りがあったとは認められないと判断した。その理由は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3

当裁判所の判断」の

2(60頁5行目から107頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する
(原判決は,
上記補正係数に重大な誤りがあったかどうかを検討し,
いずれにも重大な誤りがあったとは認められないと判断したものである。)。(原判決の補正)

-11-

(1)

60頁6行目の「本件家屋」から12行目の「まず」までを「控訴人主張
のように」に改め,同13行目の「重大な」を削り,61頁11行目の「評価の誤りが重大である」を「評価に誤りがある」に改め,同13行目の「重大な」を削る。
(2)

62頁14行目から15行目にかけての「,重大な」を削り,63頁2
行目の「④」の次に「エントランス・ロビー部分には2か所の吹き抜けが設けられ,また,住宅部分には24階に中庭が設けられ,中庭から空を望むことができるように24階から最上階の30階までを中空にすることによりロの字型とするなど複雑な形態となっている上,」を加え,同8行目から9行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同12行目の「理由とならない」の次に「し,鉄筋とコンクリートの標準評点数には労務費分が含まれているから二重に計上されることになる」を,同17行目の「家屋については」の次に「高度で複雑な工事を要することとなり」をそれぞれ加え,同18行目の「考えられる」を「考えられ,しかも,この分は,鉄骨等の標準評点数に含まれる労務費分では評価されていないと解される」に,同23行目の「その資材の輸送運搬コスト等によりその使用量比を超えて」を「高度で複雑な工事を要することとなって」に,64頁1行目の「各階平面」から3行目末尾までを「このことのみをもって各階平面の凹凸によって主体構造部の労務費が増すと判断したことが誤りということはできないし,本件工事の主体構造部における工事形態の複雑さが標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」にそれぞれ改め,同3行目末尾に行を改めて次のとおり加える。


そうすると,主体構造部の評価上,「工事形態」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

-12-

(3)

64頁21行目の「,重大な」を削り,同23行目から65頁16行目
までを次のとおり改める。
「(ウ)

そこで,本件家屋の敷地の地盤が軟弱な地域等であるかどうかについ
てみると,証拠(甲29)によれば,本件家屋の地盤の根切り対象部位のN値(標準貫入試験で調査棒を深さ30㎝まで貫入させるのに必要な打撃回数の値で,数値が大きいほど固い地盤と評価される。)は3ないし10であり,根切り工事を行うに当たって特別な対応をする必要はなかったこと,本件家屋の敷地に対する圧密試験を実施した結果,各層の圧密降伏応力(その土が過去に受けたことのある最大の上載荷重の応力)が,いずれも有効土被り応力(その土が受けている上載荷重による応力)に比べて大きく,加圧密状態と評価されたこと,本件家屋の敷地のS波速度(地盤内部を伝わるS波(横波,せん断波)の伝搬速度で,速度が速いほど固い地盤と評価される。)が0.21㎞/secであったこと,したがって,本件家屋の敷地の地盤は軟弱なものではなく,普通程度のものであったことが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
そうすると,本件家屋の敷地の地盤について増点補正をする理由はないから,根切り工事の評価上,「地盤」により1.50の補正をしたことは誤りであった(補正係数は1.00とすべきであった。)といわざるを得ない。」
(4)

66頁10行目の「,重大な」を,同12行目の「証拠」から22行
目の「また,」までをそれぞれ削り,同26行目の「さらには」から67頁11行目末尾までを「しかも,証拠(甲11の6,甲17,18,28,乙32)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の敷地は,主要幹線道路に面しておらず,周辺道路の幅員も広くはないと認められる上,根切り工事を行った場合に発生する相当量の土(総掘削量15万5400㎥)を都心部から郊外などの離れた場所に運搬しなければならないと考えられるか
-13-

ら,トラックを数多く往復させる必要が生じるなど搬出すべき土の運搬には多額の費用を要するものと考えられる。このような事情を考慮すれば,本件家屋に係る根切り工事は,多くの費用を要する困難なものと考えることは何ら不合理でないというべきであって,根切り工事の「敷地」に係る補正係数を1.30としたことには相応の合理性が認められるというべきである。控訴人は,根切り工事の「敷地」に係る補正係数を1.30としたことが誤りであると主張するが,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の根切り工事の困難性が標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,
根切り工事の評価上,
「敷
地」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」に改める。
(5)

68頁8行目の「,重大な」を削り,同12行目の「甲4,」の次に
「28,」を加え,同12行目から13行目にかけての「プレキャストコンクリート板(100ミリメートル厚)に花崗岩を打ち込んだ」を「重量のある花崗岩を隙間なく敷き詰めた型にコンクリートを流し込んで成型した」に,同19行目の「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に,同24行目から25行目にかけての「原告は」から69頁1行目の「主張するのであり」までを「上記のとおり,外周壁骨組に使用されたプレキャストコンクリート板は,重量のある花崗岩を隙間なく敷き詰めた型にコンクリートを流し込んで成型したものであるが」にそれぞれ改め,同8行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。


そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の外周壁骨組の普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに
-14-

足りる証拠はない。
そうすると,外周壁骨組の評価上,「施工の程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(6)

69頁18行目の「,重大な」を削り,同26行目の「前記(3)」を「前
記(1)」に,70頁6行目から7行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」にそれぞれ改め,同11行目の「足りる」の次に「,<ウ>本件家屋の外部仕上げが普通であることは,本件家屋と立地条件,規模及び外観のイメージ・グレード感において共通するBにおける外部仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからも明らかである」を,同21行目の「不合理とはいえない。」の次に「さらに,<ウ>本件家屋とBとが,立地条件,規模及び外観のイメージ・グレード感において共通するということができるかどうかについては判然としないし,本件家屋の外部仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のものであると認めるに足りる証拠もない。」をそれぞれ加え,同22行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。


そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の外部仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,外部仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(7)

71頁5行目から6行目にかけての「,重大な」を削り,同24行目
から25行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,72頁9行目の「明らかである。」の次に「また,控訴人は,本件
-15-

家屋の内部仕上げが普通であることは,1階ロビー及び高層階ロビーの壁面において統一された模様の花崗岩による仕上げがされ,本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける内部仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからも明らかである旨の主張をするが,本件家屋の内部仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」を加え,同10行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。


そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の内部仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,内部仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(8)

72頁19行目の「,重大な」及び同25行目から26行目にかけて
の「高層階にプールがあり,防水加工がされた床工事がされていること,」を削り,73頁11行目から12行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同15行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。


また,控訴人は,本件家屋の床仕上げが普通であることは,統一された模様の花崗岩のほか,大理石の模様貼などの使用により本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける床仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからも明らかである旨の主張をするが,本件家屋の内部仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のものであると認めるに足りる証拠はないから,これを採用することもできない。
そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の床
-16-

仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,床仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(9)

73頁24行目から25行目にかけての「,重大な」を削り,74頁
13行目の「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同18行目から19行目にかけての「二重評価になる」の次に「,<エ>本件家屋の天井仕上げが普通であることは,システム天井が採用され,また,ロビーの天井などには吹き抜けがあるほか,曲線を描いた飾り天井が採用され,本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける天井仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからも明らかである」を,75頁3行目から4行目にかけての「ものではない。」の次に「さらに,<エ>本件家屋の天井仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」をそれぞれ加え,同4行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。


そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の天井仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,天井仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(10)

75頁15行目の「,重大な」を削り,76頁3行目の「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同17行目の末尾に行を改めて次
-17-

のとおり加える。


そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の屋根仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,屋根仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(11)

77頁11行目の「,重大な」を削り,78頁2行目から3行目にかけての
「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」「1.を
30としたことには相応の合理性が認められる」
に改め,
同11行目の
「し
たがって」から12行目末尾までを削り,同行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。



そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,建具の施工の程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,建具の評価上,「施工の程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(12)

78頁23行目の「,重大な」を削り,79頁1行目から2行目にかけての「1.30としたことが,重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同3行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。



控訴人は,ルーバーの「程度」に係る補正係数を1.30としたことが誤りであると主張し,株式会社Aの従業員が作成した陳述書(甲28)中には,本件家屋のルーバーは特に高級なものではないとの陳述記載があるが,このような陳述を裏付ける客観的な証拠はないし,その他の証拠によっても,
ルーバーの程度が1.20の補正に止めるべき程度のものであると
-18-

認めるに足りる証拠はない。
そうすると,ルーバーの評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(13)

79頁11行目から12行目にかけての「これまでに」から20行目
末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の既成間仕切の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同22行目の「重大な」を削る。
(14)

80頁15行目の
「,
重大な」
を削り,
同19行目の
「用いられており,

から23行目末尾までを「用いられている一方で,「普通のもの」に該当するとされている一般動力盤モーター用配線用遮断機(モーターブレーカー)や開閉用マグネットスイッチが用いられていることが認められる(甲30)が,本件全証拠によっても,本件家屋の動力配線設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同25行目の「重大な」を削る。

(15)

81頁14行目の「,重大な」を削り,同20行目の「認められ」から82頁1行目末尾までを「認められるところであり,本件全証拠によっても,本件家屋の電灯コンセント配線設備の工事やその仕上がりの程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同11行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。



そうすると,電灯コンセント配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(16)

82頁26行目の「,重大な」を削り,83頁12行目の「1.30とした」から13行目末尾までを「1.30としたことには相応の合理性が認
-19-

められるというべきである。」に改め,同14行目から15行目までを次のとおり改める。


これに対し,株式会社Aの従業員が作成した陳述書(甲30)中には,本件家屋全体の85.3%を占める事務所部分の電話配線設備は一般的な施工によっているとの陳述記載があるが,これを裏付ける客観的な証拠はないし,その他の証拠によっても,本件家屋の電話配線設備で使用されている資材やその仕上がりの程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,電灯コンセント配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(17)

84頁4行目の「,重大な」を削り,同10行目の「これまでに」から14行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の照明器具設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,
被控訴人がした1.
30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同15行目の「重大な」を削る。

(18)

85頁3行目から4行目にかけての「,重大な」を削り,同11行目の「これまでに」から15行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の呼出信号設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同16行目の「重大な」を削る。

(19)

86頁10行目から11行目にかけての「,重大な」を削り,同17行目の「これまでに」から21行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の盗難非常通報装置の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。なお,前記陳述書(甲30)中には,金属管内配
-20-

線である他のオフィスの仕様に比べて,特に本件家屋の盗難非常装置に手間がかかったということはなかったとの陳述記載があるが,これを裏付ける客観的な証拠はない。」に改め,同23行目の「重大な」を削る。(20)

87頁9行目の「,重大な」を削り,同14行目の「これまでに」から18行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋のインターホン配線設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同20行目の「重大な」を削る。

(21)

88頁7行目の「,重大な」を削り,同12行目の「これまでに」から16行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の拡声器配線設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同18行目の「重大な」を削る。

(22)

89頁12行目の「,重大な」,同19行目の「重大な」及び同21行目の「重大な」を削る。

(23)

90頁20行目の「,重大な」を削り,同24行目の「認められる」から91頁3行目末尾までを「認められるところ,本件全証拠によっても,本件家屋の工業用テレビ配線設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同5行目の「重大な」を削る。
(24)

91頁25行目の「,重大な」を削り,92頁4行目冒頭から5行目の「認められる」までを「23階のシャワーや住宅部分の水栓の計上漏れがあることが認められる(甲30,乙11,弁論の全趣旨)」に改め,同7行目の「重大な」を削る。

(25)

92頁25行目の「,重大な」を削り,93頁6行目の「されていること」の次に「や,平成3年度評価基準解説では,「排水設備は「給水設備」
-21-

及び
「衛生器具設備」
と常に一体をなして機能するものであり,
「集中性」

「設備の多少」,「管材」等の補正はこの三つの評点項目を通して見た場合,一貫性があるものである。」(574頁)とされていること」を加え,同9行目の「重大な」を削る。
(26)

94頁2行目の「,重大な」を削り,同6行目の「鋼板製であり」を「鋼板製のものではあるが」に,同9行目の「不合理ではなく」から10行目末尾までを「不合理ではないところ,中央式給湯設備全体の程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。そうすると,中央式給湯設備の評価上,「程度」
により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」にそれぞれ改める。

(27)

94頁26行目の「重大な」を削り,95頁6行目の「これまでに」から11行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の衛生器具設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。そうすると,衛生器具設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」に改める。

(28)

96頁15行目から16行目にかけての「しなかったことは合理的」を「しなかったことには相応の合理性が認められる」に改め,同16行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。



これに対し,前記陳述書(甲30)中には,本件各空調システムが受け持つ面積は広範囲に及んでおり,規模の経済が生まれて作業は効率的になる旨の陳述記載があるが,このような陳述を裏付ける客観的な証拠はないし,その他の証拠によっても,吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備について減点補正をしなかったことが誤りであったと認めるに足りる証拠はない。

-22-

そうすると,吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備の評価上,「規模」による減点補正をしなかったことが誤りであったということはできない。」
(29)

97頁1行目の「,重大な」を削り,同11行目の「すること」から12行目末尾までを「することには相応の合理性が認められるというべきである。控訴人は,吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備の
「程度」
に係る補正係数を1.30としたことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,
空調設備全体の程度が1.10の補正に止めるべき
程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同14行目の「重大な」を削る。

(30)

98頁6行目から7行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りとはいえない。」を「1.30としたことには相応の合理性が認められるというべきである。控訴人は,換気設備2設備の「程度」に係る補正係数を1.30としたことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,換気設備2設備の程度が1.10の補正に止めるべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。そうすると,換気設備2設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」に改め,同15行目から16行目にかけての「,重大な」を削る。
(31)

99頁16行目の「評価することができる」から18行目の「採用できない。」までを「評価することができるところ,本件全証拠によっても,レンジフードファンの程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同19行目の「重大な」を削る。

(32)

100頁14行目の「,重大な」を削り,同21行目の「1.30」から22行目末尾までを「1.30としたことには相応の合理性が認められるというべきである。」に改め,同22行目の末尾に行を改めて次のとおり加
-23-

える。「

控訴人は,スプリンクラー設備の「程度」に係る補正係数を1.

30としたことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,スプリンクラー設備の程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,スプリンクラー設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(33)

101頁14行目の「,重大な」を削り,同21行目の「したこと」から同行目末尾までを「したことには相応の合理性が認められるというべきである。」に改め,同行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。


控訴人は,エレベーター設備の「程度」に係る補正係数を1.30としたことが誤りであると主張し,前記陳述書(甲30)中には,本件家屋より多くのステンレスが使用されているCやBと比べて補正係数が著しく高くなっているとの陳述記載があるが,これを裏付ける客観的な証拠はないし,仮にそのような事実が認められるとしても,ステンレスの使用の多寡によってのみエレベーター設備の程度が判断されるものではないから,これを理由としてエレベーター設備の「程度」に係る補正係数を1.30としたことが誤りであったということはできない。そして,その他の証拠によっても,本件家屋のエレベーター設備の程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,エレベーター設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(34)

102頁20行目の「,重大な」を削り,同26行目の「したことが」から103頁1行目末尾までを「したことには相応の合理性が認められるというべきである。」に改め,同行目末尾に行を改めて次のとおり加える。


控訴人は,エスカレーター設備の「程度」に係る補正係数を1.30とし
-24-

たことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,本件家屋のエスカレーター設備の程度が普通程度のものであるとか,
被控訴人がした1.
30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,エスカレーター設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(35)

103頁25行目の「,重大な」を削り,104頁13行目の「したことが」から14行目末尾までを「したことには相応の合理性が認められるというべきである。」に改め,同行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。



控訴人は,仮設工事の「工事の難易」に係る補正係数を1.50としたことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,本件家屋の仮設工事の難易の程度が1.20の補正に止めるべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,仮設工事の評価上,「工事の難易」により1.50の補正をしたことが誤りであったということはできない。」

(36)

105頁6頁の「その他の行為」を「その他の工事」に改め,同12行目の「,重大な」を削り,106頁12行目の「付設したこと」から13行目末尾までを「付設したことには相応の合理性が認められるというべきである。」に改め,同20行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。


また,前記陳述書(甲28)中には,原判決別紙4には主体構造部から仮設工事までの部分別工事に該当するものか,もしくは一般的に施工されるものが含まれており,二重に工事費が計上されているとの陳述記載があるが,これを裏付ける客観的な証拠はない。そして,そのほかの証拠によっても,本件家屋のその他の工事の施工状況が5.14の補正に止めるべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。

-25-

そうすると,その他の工事の評価上,「工事の多少」により20.00の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(37)


106頁22行目から107頁6行目までを次のとおり改める。
以上のとおり,根切り工事の評価上,「地盤」により1.50の補正をしたことは誤りであった(補正係数は1.00とすべきであった。)と認めることができるが,その余の点については,評価に誤りがあると認めることはできない。」

3
控訴人は,
比較的近時に建設された建物については補正係数をほぼ1.00として増点補正がされていないにもかかわらず,本件家屋についてはほぼ一律に補正係数を1.30として増点補正がされていること,被控訴人が,本件家屋について補正係数1.30を適用した理由として,
「本件家屋が竣工した平成5年
当時は20階建以上の高層ビルは目新しかったこと」を挙げていることを根拠として,被控訴人において固定資産評価基準における補正係数適用に係る主観的判断を変遷させたとし,このような事情は固定資産評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情に当たると主張する。
しかし,前記引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第2の1(3)のとおり,標準評点数の補正は,標準評点数が標準的な非木造家屋の各部分別の単位当たり施工量(標準量)に対する工事費を基礎として算出されているため,評価の対象となった非木造家屋の各部分の工事の施工量等が「補正項目及び補正係数」欄の「標準」欄に定められている工事の施工量等と相違する場合に,当該家屋の工事の実態に適合させるためにそれに即して行われるものであるところ,本件家屋の工事の実態と比較的近時に建設された建物の工事の実態とが同一であると認めるに足りる証拠はないから,控訴人が主張するような事情が存したからといって,直ちに被控訴人が補正係数適用にかかる主観的判断を変遷させたということはできないし,他にそのような事情を認めるに足りる証拠もない。

-26-

したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
4
結論
以上によれば,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出に当たり,根切り工事の評価上,「地盤」により1.50の補正をしたことは,誤りである(増点補正はすべきでない。)ところ,弁論の全趣旨によれば,この点の補正をせずに根切り工事の単位当たり評点数を算出すると6752点となり,その結果,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数は30万9600点(100点未満切り捨て)となることが認められる。
そして,弁論の全趣旨によれば,上記のとおりの建築当初の単位当たり再建築費評点数を前提として,本件家屋の平成18年度の単位当たり再建築費評点数を算出すると,別紙2計算書のとおり,鉄骨造部分については29万7100点(100点未満切り捨て),鉄骨鉄筋コンクリート造部分は28万8800点(100点未満切り捨て)となり,これらに基づいて平成18年度における本件家屋の固定資産税の課税標準価格を算定すると,同計算書のとおり248億2490万5100円となることが認められる。
そうすると,本件決定のうち価格248億2490万5100円を超える部分は,違法であり,取消しを免れないというべきである。
よって,控訴人の請求を棄却した原判決を上記趣旨に従って変更することとし,主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第19民事部

裁判長裁判官


裁判官


-27-

阿彌島誠弘康
裁判官


-28-

田昭彦
(原裁判等の表示)
主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
東京都固定資産評価審査委員会が原告に対して平成20年1月23日付けでした,固定資産課税台帳に登録された別紙物件目録記載の家屋に係る平成18年度の価格に対する審査申出を棄却した決定のうち,価格178億9770万9700円を超える部分を取り消す。

第2

事案の概要
本件は,別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)の所有者である原告が,本件家屋についての平成18年度固定資産税の課税標準として東京都知事が決定して固定資産課税台帳に登録した価格を不服として,東京都固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会がこれを棄却する旨の決定をしたため,被告に対し,同決定のうち,原告が相当と考える価格を超える部分の取消しを求める事案である。
原告は,上記不服の理由として,本件家屋の建築当初の評価に誤りがあったこと,具体的には,平成5年度において本件家屋の価格を評価するに当たり,単位当たり再建築費評点数を算出する際の部分別評価において適用された補正係数に誤りがあったことを主張しているのに対し,被告は,建築当初の評価の誤りを平成18年度の価格に対する不服として主張することはできない旨主張するとともに,そもそも建築当初の評価に誤りはない旨主張している。
1
法令の定め等
(1)

地方税法
固定資産税の課税標準について

-29-

地方税法349条1項は,
家屋に対して課する固定資産税の課税標準は,
当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳等に登録されたものとする旨定め,同法341条5号は,「価格」とは適正な時価をいう旨,また,同条6号は「基準年度」とは,昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度をいう旨それぞれ定めている。
地方税法388条1項は,総務大臣は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め,これを告示しなければならない旨定め,同法403条1項は,市町村長は,固定資産評価基準によって,固定資産の価格を決定しなければならない旨定めている。なお,平成18年法律第4号による改正前の地方税法734条1項は,東京都の特別区の存する地域においては,固定資産税を東京都が課する旨を定めているから,上記の固定資産の価格の決定は,東京都知事が行うことになる。

固定審査の価格に関する不服審査等について
地方税法432条1項は,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては,固定資産課税台帳に登録した価格等の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日まで若しくは都道府県知事の勧告を受けて固定資産課税台帳に登録された価格を修正した場合の公示の日から同日後60日(固定資産の価格の修正による更正に基づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の交付を受けた後60日)までの間において,又は登録価格等の公示の日以後における価格の決定・修正の通知を受けた日から60日以内に,文書をもって,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定めている。同法434条1項は,固定資産税の納税者は,固定資産評価審査委員会
-30-

の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができると定め,同条2項は,固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある納税者は,審査の申出又は上記取消しの訴えによることによってのみ争うことができる旨定めている。
(2)

平成18年度評価基準
平成18年度において適用される固定資産評価基準(平成17年総務省告
示第1345号による改正後の昭和38年12月25日自治省告示158号。以下「平成18年度評価基準」という。)第2章は,家屋の評価について,次のように定めている。

家屋の評価(第1節一)
家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」という。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとする。


評点数の付設(第1節二)
各個の家屋の評点数は,当該家屋の再建築費評点数を基礎とし,これに家屋の損耗の状況による減点を行って付設するものとする。この場合において,家屋の状況に応じ必要があるものについては,さらに家屋の需給事情による減点を行うものとする。


非木造家屋の評点数の算出方法(第3節一)
(ア)

非木造家屋の評点数は,当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎と
して,これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとし,次の算式によって求めるものとする。この場合において,当該非木造家屋について需給事情による減点を行う必要があると認めるときは,当該非木造家屋の評点数は,次の算式によって求めた評点数に需給事情による減点補正率を乗じて求めるものとする。

-31-

〔算式〕
評点数=再建築費評点数×経過年数に応ずる減点補正率
(括弧書き略)
(イ)

市町村長は,(中略)在来分の非木造家屋(当該年度において新た
に課税の対象となる非木造家屋以外の非木造家屋をいう
(第1節三2(4)
参照)。)に係る再建築費評点数は「四

在来分の非木造家屋に係る再

建築費評点数の算出方法」により求めるものとする。

在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法(第3節四)在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数は,次の算式によって求めるものとする。(ただし書略)
(算式)
再建築費評点数
=基準年度の前年度における再建築費評点数×再建築費評点補正率

損耗の状況による減点補正率の算出方法(第3節五)
非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は,経過年数に応ずる減点補正率によるものとし(ただし書略),経過年数に応ずる減点補正率は,通常の維持管理を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであって,非木造家屋の構造区分に従い,「非木造家屋経年減点補正率基準表」(別表第13)に示されている当該非木造家屋の経年減点補正率によって求めるものとする。
なお,別表第13においては,主たる用途が事務所,経過年数が13年で,構造が鉄骨鉄筋コンクリート造の部分の経年減点補正率は0.84,構造が鉄骨造(骨格材の肉厚が4ミリメートルを超えるもの)の部分の経年減点補正率は0.7689とそれぞれ定められている。


再建築費評点補正率(第4節一)
固定資産税に係る平成18年度における在来分の家屋の評価に係る再建
-32-

築費評点補正率は,非木造家屋については,0.95とする。

評点1点当たりの価額(第4節二)
平成18年度における家屋の評価における評点1点当たりの価額は,物価水準による補正率(非木造家屋については1.00)に設計管理費等による補正率(非木造家屋については1.10)とを相乗して得た額を基礎として市町村長が定めるものとする。

(3)

平成3年度評価基準
平成3年度において適用される固定資産評価基準(昭和62年自治省告示
第191号による改正後の昭和38年12月25日自治省告示158号。以下「平成3年度評価基準」という。)第2章は,家屋の評価について,次のように定めている。

家屋の評価(第1節一),評点数の付設(第1節二)及び非木造家屋の評点数の算出方法(第3節一)については,前記(2)アからウまでと同じ。

非木造家屋の再建築費評点数の算出方法(第3節二)
非木造家屋の再建築費評点数は,当該非木造家屋の構造の区分に応じ,当該非木造家屋について適用すべき非木造家屋評点基準表によって求めるものとする。
非木造家屋評点基準表によって非木造家屋の再建築費評点数を求める場合においては,各個の非木造家屋の構造の区分に応じ,当該非木造家屋について適用すべき非木造家屋評点基準表によって当該非木造家屋の各部分別に標準評点数を求め,これに補正項目について定められている補正係数を乗じて得た数値に計算単位の数値を乗じて算出した部分別再建築費評点数を合計して求めるものとする。
非木造家屋の再建築費評点数は,次の「非木造家屋再建築費評点数の算出要領」によって算出するものとする。

〔非木造家屋再建築費評点数の算出要領〕

-33-

(ア)

非木造家屋評点基準表の適用
各個の非木造家屋の構造の相違に応じ,当該非木造家屋について適用
すべき非木造家屋評点基準表を定める場合においては,その使用状況のいかんにかかわらず,当該非木造家屋の本来の構造によりその適用すべき非木造家屋評点基準表を定めるものとする。
(イ)

床面積の算定(略)

(ウ)

非木造家屋評点基準表の部分別区分
非木造家屋評点基準表の部分別区分の内容は,次のとおりである。

主体構造部
(鉄骨鉄筋コンクリート造)
骨組を鉄骨で組み,
これを鉄筋で補強し,
その外部に仮枠を構成し,
これにコンクリートを打込んで硬化して構築した基礎,柱,梁,壁体,床版,小屋組,屋根版等の主体構造部分をいう。
(鉄筋コンクリート造)
骨組を鉄筋で組み,その外部に仮枠を構成し,これにコンクリートを打ち込んで硬化して構築した基礎,柱,梁,壁体,床版,小屋組,屋根版等の主体構造部分をいう。
(鉄骨造)
形鋼と鋼板とを組合せ,鋲接又は熔接によって構築した基礎,柱,梁,壁体,小屋組,屋根版等の主体構造部分をいう。


基礎工事
建物の荷重を支える地下構造部分を築造するための根切り工事,建物による荷重と地盤の状況に応じて施工する杭打地業,潜函地業及び割栗地業等をいう。


外周壁骨組
建物の外周壁の骨組で主体構造部を構成しないものをいう。

-34-


間仕切骨組
内部の各部屋を区画する間仕切の骨組をいう。


外部仕上げ
建物の外周壁の仕上げ部分とその下地部分をいう。


内部仕上げ
建物の内周壁の仕上げ部分とその下地部分をいう。


床仕上げ
床の仕上げ部分とその下地部分をいう。


天井仕上げ
天井の仕上げ部分とその下地部分をいう。


屋根仕上げ
建物の覆蓋を構成する屋根部分のうち,主体構造部に含まれる小屋組,屋根版等を除いた屋根葺下地,仕上げ部分,防水層等をいう。

建具
窓,出入口等の建具及びその建付枠並びにスチールシャッター等をいう。


特殊設備
劇場及び映画館のステージ,銀行カウンター,金庫室等の特殊な設備及び階段の手摺等に別に装飾を施したもの等をいう。


建築設備
電気設備,ガス設備,衛生設備,給排水設備等家屋に付属して家屋の機能を発揮するための設備をいう。


仮設工事
敷地の仮囲,水盛り,遣方,足場等の建物の建築に必要な準備工事又は工事中の保安のための工事をいう。


その他の工事

-35-

aからmまでのいずれの部分にも含まれない木工事,金属工事等をいう。
(エ)

評点項目及び標準評点数
「評点項目」は,非木造家屋の構造に応じ,非木造家屋評点基準表の各部分ごとに一般に使用されている資材の種別及び品等,施工の態様等の区分によって標準評点数を付設するための項目として設けられているものであり,
「標準評点数」
は,
評点項目の区分に従い,
「標
準量」
(標準的な非木造家屋の各部分別の単位当たり施工量をいう。

に対する工事費を基礎として算出した評点数である。再建築費評点数の付設に当たっては,非木造家屋の各部分を調査し,各部分の使用資材の種別,品等,施工の態様等に応じ,該当する評点項目について定められている標準評点数を求めるものとする。


各部分別に再建築費評点数を求める場合において,各部分の使用資材等の数量が明確なときは,該当標準評点数及び当該数量を基礎として当該部分の当該部分の再建築費評点数を求めるものとする。この場合において,下記(オ)に基づく補正係数による補正は,施工の程度に応ずる必要な補正を行うものとする。

(オ)

補正項目及び補正係数
非木造家屋の各部分の工事の施工量等が「補正項目及び補正係数」欄
の「標準」欄に定められている工事の施工量等と相違する場合においては,当該補正項目について定められている工事の施工量等と相違する場合においては,当該補正項目について定められている該当補正係数によって標準評点数を補正するものとする。
この場合において,補正項目について定められている補正係数の限度内において処理することができないものについては,その実情に応じ補正を必要とする範囲内において,その限度を超えて補正係数を決定する
-36-

ものとする。
(カ)

再建築費評点数
再建築費評点数は,各部分別の標準評点数に当該部分の補正係数を乗
じて得た数値に,その計算単位の数値を乗じて求めた各部分別の再建築費評点数を合計して求めるものとする。
2
争いのない事実等(証拠等により容易に認められる事実は,末尾に証拠等を掲記した。)
(1)

本件家屋及び原告
本件家屋は,平成5年7月2日に新築された非木造家屋であり,原告は,
新築以来本件家屋を所有している。(甲1)
(2)

本件家屋についての平成18年度の固定資産税の課税標準価格の家屋課
税台帳への登録
東京都知事は,平成18年3月31日,本件家屋についての平成18年度の固定資産税の課税標準価格を251億48万2500円と決定し(以下,この価格を「平成18年度価格」という。),これを固定資産課税台帳に登録した。平成18年度価格は,以下のようにして算出されたものである。ア
本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数は,平成3年度評価基準によって算出され,その後の基準年度である平成6年度,平成9年度,平成12年度及び平成15年度の単位当たり再建築費評点数は,それぞれの各前基準年度の評点数に非木造家屋に係る各再建築費評点補正率を順次乗じて算出された。(甲6,弁論の全趣旨)


在来分の非木造家屋の平成18年度の評価替えに当たっては,平成18年度評価基準により平成17年度の単位当たり再建築費評点数に再建築費評点補正率0.95を乗じて単位当たり再建築費評点数を求めるものとされているから(前記1(2)カ),本件家屋については,地下1階及び地下2階部分を鉄骨鉄筋コンクリート造,地上階部分を鉄骨造(骨格材の肉厚が
-37-

4ミリメートルを超えるもの)に区分し,それぞれの構造別に,平成17年度の単位当たり再建築費評点数に再建築費評点補正率0.95を乗じて再建築費評点数(鉄骨鉄筋コンクリート造については292,000,鉄骨造については300,400)を算出し,さらに,これらにそれぞれ損耗の状況による減点補正率(鉄骨鉄筋コンクリート造については0.84,
鉄骨造については0.
7689)を乗じて単位当たり評点数を算出した上,
これらにそれぞれ現況床面積を乗じて算出した総評点数に,評点1点当たりの価額(いずれも1.10)を乗じて構造ごとの価格を算出し,これらを合算して,平成18年度価格を求めた。(甲5,6)
(3)

審査の申出等
原告は,平成18年度価格を不服として,平成18年7月28日,東京都固定資産評価審査委員会に対し,地方税法432条1項に基づき,審査の申出をした。原告は,この審査の申出の理由として,本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が,補正係数が不当に高いこと等により不適切である旨を主張した。(甲3,5)


原告は,前記アの審査の申出に基づく審査手続が係属中であった平成19年2月8日,東京都港都税事務所長に対し,本件家屋の価格の再調査を申請した。


東京都港都税事務所長は,平成19年4月26日に本件家屋の再調査(以下「本件再調査」という。)をした上で,本件家屋の家屋評価計算書の一部を修正したが,平成18年度の固定資産課税台帳の登録価格については,増減が生じなかったとして修正はしなかった。なお,本件再調査においては,平成3年度評価基準に基づき,部分別明確計算(各部分の使用資材等が明確な場合の計算)により単位当たり再建築費評点数を求めた上で,評価額を算出したものであるが,その際に適用された補正係数については,当初の評価において適用された補正係数といずれも変わりがなかっ
-38-

た。(甲4,乙30)

東京都固定資産評価審査委員会は,平成20年1月23日,原告による前記アの審査の申出を棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)をしたが,原告がした建築当初の再建築費評点数の補正係数が不当に高い旨の主張(前記ア)については,平成18年度の審査申出により審査されるべき事項ではないとして,これを判断しなかった。(甲5)

(4)

本件訴えの提起
原告は,平成20年7月22日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著
な事実)
3
争点
(1)

本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出が誤っているこ
とを理由として平成18年度価格の妥当性を争うことが許されるか否か。(2)

本件家屋の平成18年度価格は適切であるか否か。
具体的には,
本件再調

査において本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数を算出するに当たり,各評点項目の補正項目に対して適用された補正係数は適正であったか否か。
4
争点に関する当事者の主張の概要
(1)

争点(1)(本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出が誤っ
ていることを理由として平成18年度価格の妥当性を争うことが許されるか否か。)について
(原告の主張)

本件において,原告は,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の違法を主張しているが,これは,平成18年度価格が違法であることの理由として主張しているのであり,原告が主張するのは,平成18年度価格の違法である。
なお,本件家屋については,東京都港都税事務所が平成19年4月26
-39-

日に本件再調査を行い,本件家屋の家屋評価計算書を一部修正した建築当初の再建築費評点数の見直しがされ,東京都固定資産評価審査委員会による本件決定も本件再調査後の評価内容についての原告の主張について判断したものであるから,本件訴訟における取消請求の対象も,本件再調査後の評価内容に対する本件決定である。したがって,本件訴訟において原告が主張しているのは,建築当初の時点で算出された建築当初の単位当たり再建築費評点数の違法ではなく,平成19年の再調査評価により算出された建築当初の単位当たり再建築費評点数の違法である。

そして,以下のとおり,平成18年度価格に対する審査においても,建築当初の再建築費評点数を争うことができるというべきである。
(ア)

法文上の制限はないこと
地方税法432条1項は,価格の据え置かれた第2年度及び第3年度
の登録価格については,審査を申し出ることができる場合を家屋の改築その他特別の事情がある場合に限定しているのに対し,基準年度の登録価格については,審査を申し出ることができる場合を何ら制限していないから,審査において争うことができる事項について法律上の制限はない。したがって,固定資産評価審査委員会の決定の取消しの訴えにおいて争うことができる事由についても,法律上何らの制限もないというべきである。
そして,一般に在来家屋について前年度の再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じて当該基準年度の再建築費評点数を求める方式をとることが不合理でないとしても,当該基準年度の再建築費評点数を求める基礎となっている建築当初の再建築費評点数に違法があってもこれを争うことができないのであれば,結果として納税者としては建築当初の価格を対象にその登録の公示・納税通知書の交付から60日以内に審査の申出をしなければそれ以降は一切争えないこととなるから,納税義務者
-40-

の不服申立ての機会を失わせるものであり,明らかに不当である。(イ)

固定資産の価格が適正な時価を上回ることは許されないこと
地方税法は,家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準
を,当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳等に登録されたものとすると規定し(同法349条1項),固定資産の価格は総務大臣が定める評価基準によって決定しなければならないとしている(同法403条1項)が,同法349条1項にいう価格については,適正な時価をいうものとしている(同法341条5号)から,固定資産評価基準に従って固定資産の価格が決定されるとしても,客観的な交換価値を上回る価格を決定することはできず,したがって,固定資産評価基準に従って決定された不動産の価格が適正な時価を上回る限度で,当該価格の決定は違法となる。そうすると,建築当初の再建築費評点数の評価を誤ったことにより適正な時価を上回る価格が建築当初の建物の価格として決定された場合には,当該価格決定は違法となるが,その審査申出期間を経過したことや,次基準年度以降において建築当初の価格を基礎に当該基準年度の価格が決定されたことをもって,その違法が治癒されるというものではない。

これに対し,被告は,建築当初の評価を無制限に争うことができるとすると,建築当初の評価額についての争いをいつでも蒸し返すことができ,
早期確定や法的安定性といった地方税法の趣旨に反する結果となり,当初の評価から時間が経過するほど評価対象建物に経年変化や補修等による変更が生じることが予想され,当初評価の誤りの有無を的確に判断することが困難になると主張する。
しかし,地方税法は3年ごとに登録価格を見直すこととしているのであるから,見直しの際に誤りを補正することができないとすることは,3年ごとに価格の見直しを行うものとした同法の趣旨を没却することと
-41-

なる。また,法的安定性確保を理由に適正な時価を上回る価格が決定されたことの違法性が治癒されるものでもない。
また,行政庁が価格を決定してこれを課税台帳に登録し公示をした後であっても,行政庁は,再調査を行い,登録価格の基礎となった事項のうち評価における認定誤りや適用誤りがあった場合には,登録価格を修正することができるとされているのであるから,法的安定性確保を理由に審査において建築当初の再建築費評点数を争うことができないとするのは不当である。
さらに,本件家屋の建築当初の固定資産課税台帳登録価格は,固定資産税課税台帳に登録された平成6年度の登録価格であり,当該価格については,平成14年改正前の地方税法が適用されるところ,納税者は自己の資産に係る台帳部分のみを縦覧することができ,納税通知書交付後30日以内に限り登録価格について審査申出をすることができたにすぎなかった上,納税通知書や課税台帳の記載からは,納税者が価格決定における違法又は不当事由の存在をうかがい知ることはできなかったのであるから,納税者が建築当初の登録価格について審査申出をすることなく短期間の審査申出期間を経過したことを強く非難できるような実態はない。それにもかかわらず納税者がその後の建物価格についての不服を申し立てるに当たって,建築当初の登録価格の違法を主張できないとすることは,課税庁側の一方的な利益に偏した解釈といわざるを得ない。そして,建築当初の登録価格の違法を理由として特定の基準年度の建物価格が争われ,確定した審査決定又は判決により,建築当初の登録価格の違法を理由としてその後の特定基準年度の建物価格が改められた場合には,審査決定又は判決により当該基準年度の登録価格が将来に向かって変更されることは当然であるが,建築当初の登録価格及び当該基準年度より前の基準年度の登録価格は何ら変更を受けるものではなく,そ
-42-

れらの価格を基礎として既に形成された法律関係に何らの効力を及ぼすものでもないから,法的安定性を害することにはならないし,上記のような決定又は判決の後に,納税者が再度建築当初の登録価格の別の違法事由を主張して更に次回以後の基準年度の価格を争うことは既判力により許されず,
建築当初の登録価格の違法を否定する決定又は判決の後に,
納税者が再度建築当初の登録価格の違法を主張して次回以後の基準年度の価格を争うことも許されないであろうから,建築当初の価格を巡る争いを何度も蒸し返すことにはならない。したがって,後年の建物価格の違法の理由として建築当初の登録価格の違法を主張することが法的安定性を害することはない。
被告は,早期確定の立法趣旨が害される旨の主張をするが,建築当初の登録価格に関わる一切の紛争を封じるという意味での建築当初の登録価格の早期確定が生じないのは,建築当初の登録価格を基礎としてその後の基準年度の建物価格を決定するという価格決定方法を採用している制度の構造上,やむを得ないというべきであり,また,建物の経年変化等により当初の評価の誤りがあったかどうかを的確に判断することが困難になるとの点については,課税庁が自ら行った評価の適正を裏付ける資料を的確に保管することにより容易に解決可能な問題である。
(被告の主張)

原告の主張は,結局のところ本件家屋の新築当初の再建築費評点数に対する不服であって,平成18年度価格に対する不服ではないところ,以下のとおり,新築当初の再建築費評点数を争うことは許されないというべきである。
(ア)

地方税法432条1項本文や同法434条の規定の趣旨は,審査申
出期間及び取消訴訟の出訴期間に制限を設けることにより,固定資産税の賦課決定処分の前提問題である固定資産税評価額を早期に確定される
-43-

ことによって,法的安定性を招来しようとしたものである。
ところが,新築当初の評価自体を平成18年度価格に対する審査の申出及び固定資産評価審査委員会の決定の取消訴訟においても争うことができるとすると,①建築当初の評価額についての争いをいつでも蒸し返すことができることになり,早期確定及び法的安定性といった地方税法の趣旨に反する結果となる上,②当初の評価から時間が経過するほど,評価の対象となった建物には経年変化が生じ,また,補修や増改築等による変更が生じることが当然に予想され,そうなれば,当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になっていくことが当然に予想されることから,この点においても早期確定により法的安定性を図るという地方税法の趣旨が損なわれることになる。
したがって,少なくとも,当初の評価が行われてから一定期間が経過した後になって建築当初の評価を無制限に争うことは許されず,在来分の家屋として評価が行われている家屋については,原則として前の基準年度との乗率の妥当性を争うことができるにすぎないというべきである。
(イ)

そして,建築当初の評価を争うことができるのは,建築当初におい
て適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎に評価することが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合に限られるというべきであるところ,具体的には,隠れた瑕疵等が存在した場合や経過規定の適用の誤りがあった場合等がこれに該当すると考えられる。
ところが,原告は,本件において部分別評価の誤りを主張しているところ,原告は建築当初からの本件建物の所有者であって,新築時に当初評価の妥当性を争うことができたのであるから,原告は上記のような特別の事情がない限り建築当初の評価を争うことはできないというべきで
-44-

ある。

これに対し,原告は,再調査の制度があることから,建築当初の評価を争うことができる旨の主張をする。しかし,再調査は,土地及び家屋の評価の適正を確保するとともに,納税者からの土地及び家屋の評価に対する疑義に速やかに対応することによってその信頼を得ることを目的に,固定資産課税台帳に登録された土地及び家屋の価格の算定基礎である評価の内容について,納税者から疑義の申出があった場合に行う東京都独自の行政制度であって,法的に認められた納税者の権利ではなく,重大な錯誤のあることが発見されない限り改めて価格決定をするものではない。したがって,再調査制度があるからといって,そのことから直ちに原告が建築当初の評価の妥当性を争えることにはならないというべきである。
また,原告は,地方税法432条1項が審査を申し出ることができる場合を何ら制限していないから,固定資産評価審査委員会の決定の取消しの訴えにより争うことができる事由についても,法律上何らの制限もない旨主張するが,このように解すると建築当初の再建築費評点数に不服があれば,基準年度ごとにいつまでも繰り返し争うことができることになり,極めて不当であり,このことからしても,同法は当然に争うことができる違法事由に一定の制約を課しているとみることができる。原告は,固定資産評価審査委員会又は裁判において一定の結論が出た場合にはもはや争うことができないから問題がない旨の反論をするようであるが,基準年度ごとの価格が適法か否かが訴訟物である以上,理由中の判断については何回でも主張できることになるので,原告の反論は失当である。
さらに,原告は,固定資産評価基準において建築当初の再建築費評点数を基礎に在来分の家屋の再建築費評点数を算定する旨定められているとしても,固定資産評価基準により適正な時価を上回る価格を定めることはできないと主張するが,
固定資産評価基準に従って決定された家屋の価格は,

-45-

固定資産評価基準の定める方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情が存しない限り,適正な時価であると推認されるのであり,建築当初において適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎に評価することが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような特別の事情がある場合を除き,建築当初の評価を争うことはできないと解すべきであるから,原告の上記主張は誤りである。
(2)

争点(2)(本件家屋の平成18年度価格は適切であるか否か。)について原告は,本件再調査における補正係数の適用には誤りがある旨主張し,被
告はその適用には誤りがない旨主張するところ,被告による本件再調査による本件家屋の建築当初の評価は,別紙1のとおりであり,原告が適正であると主張する本件家屋の建築当初の評価は,別紙2のとおりである。また,補正係数に争いのある評点項目及び補正項目を抜き出し,これらについて①被告が本件再調査により適用した補正係数及び②原告が適正であると主張する補正係数並びに③平成3年度評価基準別表第12非木造家屋再建築費評点基準表(以下「評点基準表」という。)に記載されている非木造家屋である事務所,店舗,百貨店用建物に係る増点補正率の上限は,別紙3のとおりである。そして,原告及び被告が主張する補正係数の根拠は,次のとおりである。ア
主体構造部(補正項目「工事形態」)

(被告の主張)
家屋の工事形態は,その規模,高さに応じて相違するので,一般的な規模の家屋(平成3年度評価基準において,使用資材の量が明確でない場合の計算(以下「不明確計算」という。)の際に補正の上限が適用される規模として採用されている数値(階層数地上9階,床面積1万平方メートルなど)が目安とされる。)であるか,これを超える家屋であるかで判断手法を分けているところ,一般的規模を超える家屋の場合は,①規模,高さ
-46-

(階層数が20階を超える場合には,特に大きな増点要因となる。),②躯体の形状の複雑性,③地下階の規模(面積)や深さ(階層数)が大きいこと,④用途が複数であること,吹き抜けなど家屋内部の構造に複雑性があること,構造が複数あること,その他工事を複雑にする家屋の性状,が増点要因となり,個々の家屋に対する補正係数の付設は,これらの要因の該当の有無,要因が建築費に与える影響の大きさを判断して行うこととなる。これらの要素が不明確計算の場合の補正項目として別個に設けられているからといって,考慮してはならないことはない。
そして,本件家屋は,当時では数少ない超高層ビルディングの1棟であること,地下階部分が鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造,地上階部分が鉄骨造という複合構造であり,地下階部分の大きさがかなりあること,大きく4つの用途に分けて施工されている複合的な用途の大規模建造物であること,各階平面は,単純な長方形ではなく,短い直線や屈折のある多角形となっていること,重厚な建物であって,建築当時としては,事務所部分は最新のインテリジェントビル,住居部分は超高級賃貸マンションであったといえること等から,本件家屋の主体構造部の工事形態は通常の工事形態に比較して相当に複雑ということができる。さらに,高層の建物も工事に伴う労務費等が高額になるということができる。したがって,本件建物の主体構造部の補正にあたり,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋は,建物の主体構造部の工事形態が通常の工事形態に比較して複雑であることはなく,外壁面も直線で構成され,外観から見て建物の外壁の凹凸は極めて少なく,形態としては非常に単純なものである。また,本件家屋においては主体構造部の使用資材の数量が明確であり,工事形態から生じる労務費を考慮すれば,延べ床面積が大きい建物は単位面積当た
-47-

りの労務費は低くなるのであり,この点からも本件家屋について工事形態による増点補正,しかも評点基準表が定める補正係数を超える補正係数による増点補正を行うべき理由はない。
被告は,本件家屋は,標準的な家屋とは階層数や規模等が著しく異なるとしているが,工事形態による補正は,階層数や規模により行われるべきものではないし,主体構造部の施工は,製作済みの鉄骨をタワークレーンで組み立てるだけであるから,階層数が多いことをもって労務費が著しくかさむものではない。また,平成3年度評価基準には建物の規模によって判断手法を分ける手法を用いることを許容する旨の記載は存在せず,むしろ,規模や高さを考慮して「工事形態」を増点補正することは,「工事形態」だけが補正項目となっている使用資材の使用料が明確な場合における明確計算に,使用資材の数量が不明確な場合の不明確計算に限って補正項目となっている「階層数」や「階高」,「地階」による補正を持ち込むもので,平成3年度評価基準が予定していない評価方法であるし,被告が増点要因とする地下階の規模や深さも,基礎の根切り工事の補正項目である「地階」で考慮されるべき要素である。さらに,本件家屋は,低層階に店舗,中層階に事務所,高層階に住宅を単純に配置しているにすぎず,用途が複数であることが主体構造部の複雑性をもたらすものではないし,本件家屋のように地下部分を有する鉄骨造りでは,ほぼ全ての家屋の地下部分は鉄骨鉄筋コンクリート造であるから,構造が複雑であることをもって増点補正する理由にはならず,外壁や空堀については,別の評点項目において評価することとされているから,これらを理由に主体構造部について増点補正することは許されない。

根切り工事
(ア)

補正項目「地盤」

(被告の主張)

-48-

本件家屋の現実の基礎工事においては,基礎だけでは建物の加重を支持できない場合に支持力を増大するために行う杭打地業工事,すなわち地盤が悪い場合に施工が多く必要になる杭打地業工事において,杭の長さが補正値の上限を超える長さ20メートル以上,杭の口径が120センチメートルから210メートルという長く太い杭を394本も打ち込んでいることから,本件家屋のような自重量の重い建物で,かつ,大規模な超高層ビルであっても,地盤が良くないという推測が成り立つのであって,評点基準表の上限である1.50の補正係数を適用したものであり適正である。
(原告の主張)
本件家屋の敷地は,地表面から地下5メートルないし12メートル程度まではローム層が堆積し,その下は粘土層である上,地盤の堅さを示すN値も概ね5ないし10のレベルにあり,更に,地下水は地下6メートルないし11メートルであって,基礎工事においては良好な地盤であり,地下水の湧水量が多いということもできないから,増点補正係数を適用することはできない。
被告は,杭打地業工事を理由に増点補正をしたのは適正であると主張するが,
杭打地業工事については,
別途評点項目が設けられているから,
これを理由に根切り工事について増点補正することは不適正であるし,被告が主張する事由は,
地盤が軟弱であると評価する事由になり得ない。
(イ)

補正項目「敷地」

(被告の主張)
「敷地」による補正は,建物の密集した地域においては根切り工事が困難で能率が悪くなること,保存すべき土量を敷地外の他の場所に移動しなければならない場合に運搬費が増加することといった事情を反映させることを目的に設けられたものである。

-49-

そして,本件家屋が所在するα×は,α××及びα×××と併せて三方を街路に囲まれており,都市計画上も三街路に沿った「コ」の字形状の商業地域が設定されていること,
本件家屋もこの商業地域内にあって,
周囲の土地利用は事務所店舗ビル,
マンション等が主となっていること,
本件家屋の地下部分は,敷地面積一杯に利用しており,建物の外回りである外構部分に大規模な空掘などが施工されていて運搬土量も多いことに加え,敷地に高低差があり土の搬出に一層の手間を要すること等の事情があること,工事車両は,いずれも数百メートル先の主要道路を利用して出入りし,都心を通って土の搬出先との間を往復せざるを得ないのだから,こうした事情は当然運搬費の増加につながること等から,隣接宅地に根切り工事の影響を及ぼさないという観点からみて,建物密集地域における困難な工事に該当することは明らかであり,そのような観点から1.30の補正係数を適用したものであり適正である。
(原告の主張)
本件建物の敷地は,大規模なものであり,空地が敷地面積の約35パーセントに及び,掘り出された土を敷地内に保存することは十分に可能であり,根切り工事の施工スペースも十分に確保できる。また,本件建物の周辺はビルが密集しているとはいえないし,交通量もとりたてて多くない上,大型車による効率的な運搬ができる。したがって,根切り工事が困難とは到底評価することができず,増点補正係数を適用することは誤りである。
なお,本件家屋のように大型の建物の根切り工事においては掘り出した土を敷地内に保存しておくことは一般的ではないから,これを保存しておくことが困難であることをもってすべからく補正係数の上限まで増点補正するのは不適切である。

外周壁骨組(補正項目「施工の程度」)

-50-

(被告の主張)
本件家屋の外周壁骨組みは,単にプレキャストコンクリート板が使用されているのではなく,重量のある花崗岩を隙間なく敷き詰めた型にコンクリートを流し込んで成形したものを超高層ビルにおいてタワークレーン等を使用して施工しているのであるから,プレキャストコンクリート板の制作費やタワークレーンの使用料等を考慮して施工の程度を
「良」として1.
30の補正係数を適用したものであり適正である。
(原告の主張)
本件家屋の外周壁骨組には,一般的に用いられる資材であるプレキャストコンクリート板(100ミリメートル厚)が使用されており,特に高級であるとはいえないから,「施工の程度」による増点補正をすることは許されない。
被告は,プレキャストコンクリート板に花崗岩を打ち込んでいることをもって施工の程度が良いと主張するが,花崗岩は「外周壁骨組」を構成するものでないから,これをもって増点補正することは許されない。また,プレキャストコンクリート板の製作費は,標準評点数の積算基礎である資材費評点数に含まれているものであり,タワークレーンの使用料は,仮設工事で評価されるものであるから,これらを「施工の程度」の増点要素とすることはできない。

外部仕上げ(補正項目「施工の程度」)

(被告の主張)
外部仕上げにおける「施工の程度」の補正の趣旨は,個々の家屋の工事費の実態に適合させるように標準評点数の補正を行うことにあるから,工事費の上昇をもたらすと一般的に想定される要素について,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになり,具体的な補正係数の決定に際しては,建築図面や
-51-

仕様書,見積書等の設計図書,実地での確認等から上記の事項の判断,工事費との関係,他の家屋との均衡を併せて考慮していくことになる。そして,外部仕上げにおいて増点補正の対象となる要因としては,①凹凸,曲面等の形状の複雑性や,高層であること等の躯体構造上の特性により,仕上げ工事の特殊性があること,②使用資材が多様であること,使用資材に標準的でない施工が施されていること等,工事形態が複雑なものとなる要因があること,
③その他外観上から判断できる施工の程度の良否等がある。そして,本件家屋の外部仕上げは,単に花崗岩,小口・二丁掛タイル等が使用されているだけでなく,花崗岩の仕上げにおいて外面に凹凸があり装飾も施されるなど,明らかに標準的工事とは異なる意匠性を重視した程度の良い施工であることが見て取れ,また,本件家屋は超高層ビルディングのため,当然その施工においても標準的な家屋とは異なり多額の工事費を必要とする(建築現場での施工の手間と工場での施工の手間のいずれも家屋評価には反映すべきである。)ものであるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。なお,「施工の程度」の補正は,外部仕上げに使用されている評点項目ごとに行うものではなく,外部仕上げ全体の施工状況を標準的な施工状況と比較して判断するものであり,資材としては同一の評点項目に該当するものであっても,外壁としての意匠性や色合いの均一,磨き上げの良さなど,特に高級な仕上げと認められるものについては仕上げの程度がよいものとして補正を行うものであり,良い資材であることを二重に評価しているわけではない。
(原告の主張)
本件家屋の外部仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙げられている一般的な資材であるから,外部仕上げが一般的な施工でなく特に高級な施工であると評価する理由はない。
なお,本件家屋に使用された花崗岩の総額はわずか11.48パーセン
-52-

トを占めるにすぎない。また,磨き仕上げの花崗岩を使用したことによって増点補正することは,花崗岩を仕上げ材とすることのコスト高を二重に評価していることになるし,本件家屋の外部仕上げに使用されている花崗岩は装飾性のない平面であり,あらかじめ工場でコンクリート盤に打ち込まれたものであるから,通常の家屋の外部仕上げに比べて工事費が特にかさむということはない。
また,外部仕上げの「施工の程度」は,普請の程度の良否に応じて,特に高級な建物であるとか,普請の程度の悪い建物の工事費を補正するための補正項目であり,家屋が高層であることと普請の程度の良否は関係ないし,使用資材が多様であることも,それぞれ評点項目ごとに評価すれば足り,一般的な範囲で多数の資材を使用する限り,これによって通常の家屋に比して工事費がかさむことはないから,これらの要素が増点補正の要素となるものではない。

内部仕上げ(補正項目「施工の程度」)

(被告の主張)
この補正の趣旨は,個々の家屋で標準量と異なった施工量によっているものについて,標準的なものとの相違に見合うように標準評点数の補正を行うことにあるから,内部仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的に想定される要素について,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになる,また,評価上の部分別区分は,建築実務上の工事区分と異なり,評点付設の便宜上,家屋の構造を外見的な面から目視することができる部分に区分したものであるから,内部仕上げから床仕上げまでの各部分は,いずれも工事見積書では内装工事の分類に該当していて,一体的に仕上げが施工されているので,それぞれの施工の程度に差がつくことはなく,これらの区分における「施工の程度」の補正係数は,形状等で特段の事情が認められない限
-53-

り,同一の補正係数を用いることになる。そして,内部仕上げにおいて,増点補正の対象となる要因は,①凹凸,曲面などの形状の複雑性や,高層であることや吹き抜けの存在などの躯体構造上の特性により,仕上げ工事の特殊性があること,②使用資材が多岐にわたること,③仕上げ面積の大きな箇所があり,模様や柄合わせなどで施工の困難性が認められること,④その他外観上から判断できる施工の程度の良否がある。本件家屋は,特に高層の家屋であり,低層階部分に規模の大きな吹き抜け部分があり,施工状況の特殊性が認められること,使用資材がいずれも20種類近くあり,仕上げ工事の多様性が認められること,家屋規模に応じて仕上げ面積の大きな箇所があり,高度な技能が必要とされること,事務所部分のエスカレーターホール,2階ロビー及び住宅部分の専用ロビー等,施工の難しい大きな仕上げ部分を,大理石や花崗岩を用いて平面的に美しく仕上げているのに加え,事務所部分では大きな仕上げ面積を占める石膏ボードにエマルジョンペイントを吹き付けて,24階以上の高層部にある住宅部分では同様に大きな仕上げ面積を占める合成樹脂壁紙でそれぞれ仕上げをするなど,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較して程度の良い施工であるということができることから,
補正係数を1.
30と定めたことは適正である。なお,「施工の程度」の補正は,内部に使用されている評点項目ごとに行うのではなく,内部仕上げ全体の施工状況を標準的な施工状況と比較して判断するものである。
(原告の主張)
本件家屋の内部仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙げられている一般的な資材であるから,内部仕上げが一般的な施工でなく特に高級な施工であると評価する理由はない。
なお,高層であることや使用資材が多様であることは内部仕上げの「施工の程度」に関係がなく,吹き抜けであることによって建物内部の壁のク
-54-

ロス貼り等が対象である内部仕上げにかかる工事費がかさむことは考えられないのであるから,これらが考慮すべき要素にはならない。被告が主張する仕上げ面積が大きいことについても,それが仕上げ面積の大小そのものに着目する趣旨であれば,それは使用材料の数量が明らかな明確計算では補正項目になっていない不明確計算の補正項目を考慮していることにほかならず,それが仕上げ面積の大きな箇所があると模様・柄合わせがあって施工が困難になるという趣旨であれば,模様・柄のあるクロスを貼るときに柄合わせをすることは一般的なことであって,仕上げ面積が大きいことと柄合わせの要否には関連性がなく,むしろ,既製品を貼る場合には,仕上げ面積が大きい方が作業は容易になる。また,大理石や花崗岩は平面的にカットされたものを納入して貼り付けるにとどまるから,平面的に美しく仕上がるのは当然であり,エマルジョンペイントの吹き付けは内部仕上げの加算評点項目に挙げられているからこれを理由に増点補正をすることは許されないし,そもそも手間のかかるような工法ではない。住宅部分の合成樹脂壁紙も労務費がかさむものではない。さらに,内部仕上げについては,使用資材に応じて評点項目が設けられているにもかかわらず,一律に施工の程度を補正項目として増点補正することで,大理石,花崗岩や石膏ボードの仕上げを理由として他の使用資材の評点項目について増点補正することは許されない。資材及び人をクレーンや工事用エレベーターを用いて高層階に運ぶことによるコストの増加は微々たるものであり,このような事情は増点補正の根拠にならない。

床仕上げ(補正項目「施工の程度」)

(被告の主張)
この補正の趣旨は,特に手間の多くかけられた施工がされている場合等において,これに適合させるように標準評点数の補正を行うことにあるから,床仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的に想定される要素に
-55-

ついて,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになり,具体的な補正係数の決定に際しては,建築図面や仕様書,見積書等の設計図書,実地での確認等から上記の事項の判断,工事費との関係,他の家屋との均衡を併せて考慮していくこととなる。そして,床仕上げにおいて増点補正の対象となる要因としては,
①内部仕上げと同様の事情により仕上げ工事の特殊性があること,②床仕上げ面積の大きな箇所があり,模様や柄合わせ,その他施工が困難と認められること,③使用資材が多様である等,工事の施工に特殊性がみられること,④その他外観上から判断できる施工の程度の良否等がある。本件家屋は,特に高層の家屋であること,家屋規模に応じて仕上げ面積の大きな箇所があり,高度な技能が必要と推測され,大規模オフィス階を有するビルで床精度が高いこと,使用資材が多く,内部にプールを備えた階があるから,防水のため通常の内部床とは異なる施工を要する箇所があること,事務所部分のエスカレーターホール,2階ロビー及び住宅部分の専用ロビー等において,大理石や花崗岩を用いて模様貼りを施し,プールの床タイル等に手間のかかった施工をしていることなど,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較して多額の費用を要する程度の良い施工であるということができ,また,各部屋の床精度も高く程度の良い床仕上げであるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。なお,「施工の程度」の補正は,その部分別に使用されている評点項目ごとに行うものではないし,施工の程度はあくまでできあがった状態により判断するものであり,個々の施工方法のみにより定まるものではない
そして,本件家屋の事務所階で用いられているフリーアクセス床は,1990年代以降に急速に普及したものとされ,近代的な設備を備えたインテリジェントビルに対応できるようになっているものであり,特に設備が多く設置される床面などに使用されるフリーアクセス床には,その重量を
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支えるだけの強度が求められ,一般規模のビルと比べ地震の際の揺れ幅が大きくなり,パネルの割れや欠け,床のゆがみなどが生じないよう,通常以上の施工が求められることから増点補正の要因となる。また,ホール等の床仕上げでは,吹き抜けになっている部分のみが模様貼りとなっているのではないし,高層階の住宅部分においても,一般住宅の内装よりも品質が高級なものであり,それには資材面だけでなく,仕上げの精度,美しさをいう要素も含まれるから,これを施工の程度の増点補正要因と捉えることは適正である。
(原告の主張)
本件家屋の床仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙げられている一般的な資材であり,また,本件建物の床仕上げにおいて,各仕上げ資材に応じた標準施工と異なって特に手間の多くかけられた施工がされているところはなく,施工の程度による補正をする理由はないし,上限を上回る増点補正をする必要のある場合に該当する事由はない。なお,
エスカレーターやロビー部分における高級石材による模様貼りは,複雑なものではないし,高級石材が使用されているのは,全体の床面積の0.79パーセントにすぎないから,この点をもって上限を超える1.30とすることはできず,さらに,使用資材に応じて評点項目が設けられているにもかかわらず,一律に補正係数を乗ずることで,他の使用資材に係る評点項目について増点補正をすることは許されない。また,床仕上げは,建物内部の床の仕上げ部分と下地部分を対象とする工事であるが,家屋が高層であるとか,吹き抜けがあるといった事情によって,工事の手間が増すことなどおよそ考えられず,これらは増点補正の要因とならないし,仕上げ面積が大きいことや使用資材が多様であることが増点補正の要因とならないことは,前記オの内部仕上げと同様である。

天井仕上げ(補正項目「施工の程度」)

-57-

(被告の主張)
この補正の趣旨は,個々の家屋で標準的な施工と異なった施工が施されている場合に,その施工に見合った評点数となるよう標準評点数の補正を行うことにあるから,天井仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的に想定される要素について,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになり,具体的な補正係数の決定に際しては,建築図面や仕様書,見積書等の設計図書,実地での確認等から上記の事項の判断,工事費との関係,他の家屋との均衡を併せて考慮していくこととなる。そして,天井仕上げにおいて増点補正の対象となる要因としては,①内部仕上げと同様の事情により仕上げ工事の特殊性があること,②天井仕上げ面積の大きな箇所があり,模様や柄合わせ,
その他施工が困難と認められること,
③使用資材が多様である等,
工事の施工に特殊性がみられること,④その他外観上から判断できる施工の程度の良否等がある。
本件家屋は,特に高層の家屋であり,低層部分に規模の大きな吹き抜け部分があり,
施工状況の特殊性が認められること,
各階面積が特に大きく,
高度な技能が必要と推測されること,エスカレーターホール,2階ロビー及び住宅部分の専用ロビー等において,手の込んだ二重,三重の打ち上げ天井が施工され,事務所部分には施工状態の良いシステム天井が施工されていること等,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較して多額の費用を要する程度の良い施工であるということができるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。なお,平成3年度評価基準における「天井」の評点項目「岩綿板(塗装吸音板

12㎜)」の標準評点

数は,
軽鉄天井下地,
石膏ボード等の下地その他の評点数に資材費評点数,
労務費評点数を加えて設定されているので,システム天井を前提に標準評点数が設定されているものではない。

-58-

なお,天井仕上げにおける「施工の程度」の補正は,標準的施工と異なった施工がされて手間の多くかけられた施工がされている場合等においてこれに適合するように評点数を補正するものであるから,仕上げ部分の形状,躯体の特殊性等は,当然吹き抜け上階の天井仕上げ等の施工の手間を増す要因として考慮される。また,設備が多く設置されるシステム天井には,それらの重量を支えるだけの強度が求められ,また,ゆがみ等が生じないよう,通常以上の施工を行う必要があること等の事情から増点補正の要因として考慮しているのであって,吹出口等を評点数として足し込むようなことをしているわけではないから,二重評価には当たらない。(原告の主張)
本件家屋の天井仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙げられている一般的な資材であり,各仕上げ資材に応じた標準的な施工方法と異なった施工が施されているところはなく,施工の程度による補正をする理由はないし,まして,上限を上回る補正をする必要のある場合に該当する事由はない。
二重,三重の打ち上げ天井は,天井仕上げの総面積のうちわずか約0.85パーセントを占めるにすぎず,システム天井は,本件家屋の建築当時においては,大型の事務所ビルの施工としては極めて一般的な施工方法であったから,これらは増点補正の理由とならない。また,システム天井は誰にでもきれいな仕上げを手間をかけずに行うことができるという性質を有する製品であるから,被告のいうできあがりがきれいというのは,製品自体の特性によるものである。さらに,平成3年度評価基準における「天井」の評点項目「岩綿板(塗装吸音板・12㎜)」の標準評点数とシステム天井の施工にかかる費用の内容は,両者の違いが,現場で施工の大半を行うか,工場から半完成品を持ち込んで仕上げを現場で行うかという点のみであることから,実質的に同等であり,これに加えてさらに増点補正す
-59-

る理由はない。そして,各階面積が大きいからといって,面積当たりの天井仕上げの手間が増えるということはなく,むしろ,同じ面積であればワンフロアの面積が大きい方が,作業は容易になる。被告が「設備が多い」と主張する本件家屋のシステム天井に組み込まれたエアコンの吹出口,吸気口及び蛍光灯などは全て「建築設備」の項目で別途評価されているから,被告の主張はこれを二重に評価しようとするものである。
被告が主張する内部仕上げと同様の事情や仕上げ面積の大きな箇所があること及び使用資材が多様であることが増点補正の対象とならないことは,前記カの床仕上げと同様である。

屋根仕上げ(補正項目「施工の程度」)

(被告の主張)
この補正の趣旨は,個々の家屋で標準的な施工と異なった施工が施されている場合に,その施工に見合った評点数となるよう標準評点数の補正を行うことにあるから,屋根仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的に想定される要素について,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになり,具体的な補正係数の決定に際しては,建築図面や仕様書,見積書等の設計図書,実地での確認等から上記の事項の判断,工事費との関係,他の家屋との均衡を併せて考慮していくこととなる。そして,屋根仕上げにおいて増点補正の対象となる要因としては,①構造が大規模で施工の高度性が認められること,②単一の形状でなく複数の形状であること,装飾部分の存在,その他施工の複雑性をもたらす要因があること,③その他外見上判断できる施工の程度の良否等がある。
本件家屋は,屋根部分面積が特に大きいことから,施工に高度な技能が必要と推測されること,
陸屋根と勾配屋根を組み合わせて施工されており,
勾配屋根部分が四方に装飾的に配された手の込んだ施工を施しているもの
-60-

である上,23階の屋根に相当する部分に手の込んだ中庭を設け,最上階の30階から24階まで中空にして中庭から空が臨めるような手間のかかる施工をするなど,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較して多額の費用を要する程度の良い施工であるということができることから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。なお,部分別「屋根仕上げ」は屋根仕上げ及びその下地部分からなっており,当然主体構造部に含まれる部分は含まれておらず,「施工の程度」は屋根仕上げの施工の良し悪しにより判断するものである。
(原告の主張)
本件家屋の屋根仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙げられている一般的な資材であり,各仕上げ資材に応じた標準的な施工方法と異なった施工が施されているところはなく,単純な陸屋根と比較すると形状が複雑なところがあるが,屋根全体の面積が大きく,部分部分も施工が複雑にならない程度の十分な面積があるため,屋根の形状が仕上げの難易度を増加させることにはならないのであって,補正なしには適正な評点数が求められない極めて高級な家屋などの場合にのみ適用される補正係数を適用する理由はなく,まして,上限を上回る増点補正をする事由はない。
被告が主張する陸屋根と勾配屋根の組合せ構造となっていること,中庭を設けていること及び中空になっていることはいずれも主体構造部において評価すべき事項であるし,勾配屋根の施工は鉄骨の組合せ方のみで表現されたデザインであって,手間のかかる施工ではない。23階の中庭も,手の込んだといえるような施工は施されていない。また,アスファルト防水及びアルミニウム板瓦棒の使用は,それぞれ「アスファルト防水(モルタル目地切・12層)」及び「アルミニウム板(普通板・瓦棒・0.8m)」の評点項目で計上されており,単にあまり使用されることのない仕上げで
-61-

あるからという理由だけで増点補正することは許されない。
また,構造が大規模であっても,屋根面積が大きければ作業が行いやすく,
屋根仕上げの難易度が高くなって労務費がかさむということはないし,屋根の形状についても,仕上げの手間に与える影響は軽微であるから,構造が大規模で施工の高度性が認められることや,
複数の形状であることは,
増点補正の要素とはならない。

建具(補正項目「施工の程度」)

(被告の主張)
この補正は,他の仕上げと同様に,個々の家屋で標準的な施工と異なった施工が施されている場合に付設されることに加えて,建具に対する装飾や他の仕上げにおいては加算項目扱いとなっている断熱材,塗装・吹き付けについても,「施工の程度」として判断する要因とされており,各施工状況により,その程度に見合った補正係数を付設することとなるが,非木造家屋の建具は,ほとんどが注文品であり,広さ,枠見込みとも多岐にわたるため,加算項目のガラスを含め,客観的に判断できる広さ,枠見込みとともにその価格を参考にして適正な補正係数を求めることになる。そして,建具において増点補正の対象となる要因としては,①施工箇所や建具の形状,
大きさなどによる施工の困難性が認められること,②装飾の有無,フラッシュ戸等に吸音材や特殊な塗装が施工されていて程度が良い建具と認められること,③外部ガラスにおいて鏡面調整が行われているなど,外観上施工のよいことが認められること等がある。
本件家屋の建具は,内部仕上げ等と同様の事情により仕上げ工事の特殊性があること,事務所部分のエスカレーターホール,2階ロビー等に大型で固定のステンレスサッシュ等を使用し,普通の家屋の建具の施工と比べて明らかに高級感のある仕上げとなっていること,車寄せ部分の屋根には固定サッシュを用いて一般の使用状況と異なる建具の利用方法をしている
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こと,住宅部分についても,カーテンウォールと建具(障子)の二重施工,中庭部分の建具など手の込んだ上等な仕上げが施工されていること,ステンドグラスについてはコンペ方式を用いてデザイン性の高いステンドグラスを設置していること,カーテンウォールのガラスで鏡面調整がされていることなど,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較して多額の費用を要する程度の良い施工であるということができるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
なお,非木造家屋の建具は,ほとんどがその家屋に合わせた注文品で,評点項目に示されていないサイズ等の資材が多種使用されることから,全てのタイプの異なる建具の標準評点数を設定することは困難であるため,評点項目に示されている品と相違するものについて,資材の量,重さなど施工の困難性を増すと認められるものを補正の程度として処理している。本件家屋の扉,窓では,竣工図の建具一覧表に記載されていた鋼製,アルミ製,ステンレス製建具の面積6537.76平方メートル中,評点項目に示されている枠見込の厚さが10ミリメートルを上回っているものが約48パーセントに当たる3169.83平方メートルで使用されており,こうした要素も増点補正の要因となる。鏡面調整についても,一般的な家屋のガラスの標準評点数の積算に含まれている工事の手間とは認められず,増点補正の要因となる。
(原告の主張)
本件家屋に使用されている建具は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙げられている一般的な資材である。そして,本件家屋に使用されている建具において,各資材に見合った標準的な施工と異なる一般的でない程度の施工がされているものはなく,特に手の込んだ上等のものや特殊防錆加工を施しているものも存在しない。ステンドグラスを手の込んだ上等のものと評価できるとしても,その工費は建具全体のわずか0.39パーセ
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ントであり。建具全体について補正係数として1.30を適用する理由はない。
被告は,注文品の実際の価格を参考にしていると主張するが,実際の取得価格を考慮することは固定資産評価基準は予定していない。また,建具の大きさについては,それぞれの建具に評点項目ごとに標準評点数が付されており,その標準評点数に大きさ(面積)を乗じて評点数を算出しているのであるし,大型の建具は,複数からなる同じ面積の建具と比較して割高になることがあるが,大型と思われる建具は全体の1割もなく,建具全体に上限を超える増点補正を行うことの根拠とはならないし,サッシュが「固定」であることをもって「施工の程度」により増点補正をすることは許されない。
なお,車寄せ部分のトップライトサッシュは,わずか0.39パーセントにすぎないし,カーテンウォールや金属系サッシュ等と障子の二重施工を行うことは当然のことであり,これらも増点補正の理由にはならない。コ
特殊設備
(ア)

ルーバー(アルミニウム系)(補正項目「程度」)

(被告の主張)
本件家屋のルーバー(アルミニウム系)は,本件家屋の外周部分に施工されており,外部の仕上げ,建具と一体となって家屋の外観をなし,その程度は外部仕上げの花崗岩,カーテンウォール,外部建具と何ら遜色はなく,同様に程度の良い設備であるため増点補正の対象となる。(原告の主張)
本件家屋の特殊設備・ルーバー(アルミニウム系)の「程度」による増点補正につき,評点基準表における上限である1.20を超える数値によるべき理由は存在しないから,多く見てもその上限値を採用すべきである。

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(イ)

既製間仕切(補正項目「程度」)

(被告の主張)
本件家屋の既製間仕切は,単に支柱が天井に達している程度のものではなく,一般的な既製間仕切より施工の程度を含めて「程度」が良く,増点補正の対象になるものである。
(原告の主張)
本件家屋は,既製品の一般的な間仕切を使用しており,既製間仕切の「程度」を上程度とすべき理由は認められないから,「程度」による増点補正をすべきではない。

建築設備(電気設備)
(ア)

動力配線設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
本件家屋の動力配線設備は,金属管やケーブルラック以外にバスダクトも使用され,施工の状態も良いことから増点補正をしたものである。(原告の主張)
本件家屋に用いられている動力配線設備には,金属管内配線でモーターブレーカー,開閉用マグネットスイッチを使用した動力盤が用いられているから,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を上回る増点補正をする理由は何ら存在しない。
(イ)

電灯コンセント配線設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
本件家屋の電灯コンセント配線設備は,リモコンスイッチや埋込タンブラー等の各部材の埋込工事や塗仕上げの施工が特に丁寧に行われているから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたことは適正である。なお,補正項目「スイッチ」は,そもそもスイッチによる配線設備の工事費の相違を,補正項目「フロアコンセント」は,床下配線の工事費
-65-

の相違を補正するものであり,これらと,各部材の埋込工事や塗工事等が特に丁寧に行われていると認定して行った補正項目「程度」の増点補正とは二重評価にはならない。
(原告の主張)
電灯コンセント設備について
「程度」
による増点補正をするためには,
標準的な施工と比して工事や仕上がりの程度が著しく異なるものに限られるはずであるが,本件家屋の電灯コンセント配線設備については,塗仕上げはそもそも行われておらず,各部材の埋め込みも作業が別途行われているものではないから,他の建物と比較して手間が多くかかっているというものではない。したがって,「程度」による増点補正,ましてや所定の補正係数の上限を上回る増点補正をする理由はない。
なお,スイッチリモコンについては,補正項目「スイッチ」で「特殊なもの(リモコンの使用)」を理由に増点補正係数1.03が,フロアコンセントは,補正項目「フロアコンセント」で「全館にあるもの」として増点補正係数1.15がそれぞれ適用されているから,さらにこれらの使用を根拠に「施工の程度」で増点補正を行うことは,納税者の不利益に二重評価することにほかならない。
(ウ)

電話配線設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
この補正は,配線の内容について考慮することを趣旨とするものであり,使用されている資材の程度と仕上がりの良否等を目安として判定するものであって,「上等なもの」とは,金属管内配線で特に施工のよいものとされている。そして,通常,一般住戸に設置される電話設備は,外線1回線について1個の電話機が接続されるが,本件家屋の住宅部分に施工されているものは,電話回線を通じテレコントロール(宅内機器のON/OFFコントロール)を行うため,「ホームオートメーション
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設備」の一部として接続管理されており,ホームテレホン機能として,外線2回線に対応でき,電話機8台,ドアホン2台まで接続可能なものであり,さらにプルボックスなどの仕上げ,納まり方など施工の良い仕上げになっていることから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋における電話配線設備は,非木造家屋に設置される標準的な普通の設備であり,増点補正するべき理由は存在しない。
被告は,本件家屋の電話配線設備のプルボックスなどの仕上げ,納まり方など施工の良い仕上げになっていることを増点補正の対象としているが,本件家屋で使用しているプルボックスは一般的なものである上,いかなる点を捉えて施工の程度が良いとしたのか,一切主張立証がされていない。
(エ)

照明器具設備(蛍光灯用器具,白熱灯用器具)(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の蛍光灯用器具及び白熱灯用器具には注文品が設置されており,既製品においても他の設備同様に建物の程度に見合った程度の良いものが使用されているから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に使用されている照明器具は,一般的な既製品の蛍光灯器具及び発熱等器具がほとんどであり,注文製品を主体とした器具により構成されている場合には到底該当せず,
既製品でないものがあるとしても,
既製品の蛍光管や電球を装着できるものであり,高級品とはいえないから,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を上回る増点補正をする理由はない。

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(オ)

呼出信号設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
本件家屋の呼出信号設備は,共同住宅と身障者用トイレに設置されていて,住宅部分については他の設備を含めて1か所で集中管理しているなど,標準的な呼出信号設備ではなく,また,配管配線の施工状況も他の設備同様に建物の程度に見合った程度の良いものが使用されているから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に設けられている呼出信号設備は,一般的なメーカー既製品であり,押しボタン盤及び信号盤は特別注文品ではないから,増点補正をする理由はない。
なお,呼出信号設備を1か所で集中管理することは標準的であるし,集中管理をすれば必然的に配線の長さが長くなるから「配置」による増点補正の対象となるのであり,「程度」により増点補正すれば,同じ事由を理由に二重に増点補正をすることとなり許されない。
(カ)

盗難非常通報装置(補正項目「程度」)

(被告の主張)
「程度」の補正は,一般的には機器や配管配線等の施工状態が良いものを増点補正するものであるが,主に配管の使用資材やその施工の程度により「施工の程度」の補正を行うものであるところ,本件家屋の配管には金属管も使用されており,程度の良いものであるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に設けられている盗難非常通報装置は,金属管内配線で普通のものであり,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を上回る補正をする理由はない。

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(キ)

インターホン配線設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
「程度」の補正は,一般的には機器や配管配線等の施工状態が良いものを増点補正するものであるが,主に配管の使用資材やその施工の程度により「施工の程度」の補正を行うものであるところ,本件家屋の配管には金属管も使用されており,インターホン配線設備は,住宅部分においては,他の呼出信号設備等と併せてホームオートメーション設備として1か所で管理できるようになっており操作盤等も程度の良いものであるから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたことは適正である。なお,平成5年当時,他の設備と併せていくつかの設備を1か所で集中管理するのは本件家屋のような非常に程度の良い家屋に限られるものであり,また,1か所で集中管理することをもって「配置」による増点補正など行ってはいない。
(原告の主張)
本件家屋に設けられているインターホン配線設備は,金属管内配線で普通のものであるから,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を上回る補正をする理由はない。インターホン配線設備を1か所で集中管理することは標準的であるし,
それは
「配置」
による増点補正の対象となるから,それをもって「程度」による増点補正をすれば,同じ事由を理由に二重に増点補正をすることになり許されない。
(ク)

拡声器配線設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
本件家屋においては,一般的ではない住居の居室部分にまで拡声器配線設備が設置され,配管配線の施工状況が他の設備と同様に良いことから,増点補正の対象にしたものである。

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(原告の主張)
本件家屋に設けられている拡声器配線設備は,金属管内配線でその仕上げは普通であって,とりたてて「良いもの」であると評価し得るような事情は何ら存在しない。なお,住居の居室部分に拡声器配線設備が配置されていることが配線の仕上がりとは無関係であることは明らかであるし,器具数は「器具数」の補正項目により補正されるべき事項であるから,住居の居室部分に拡声器配線設備が配置されていることを理由に「程度」による増点補正をすることは許されない。したがって,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を上回る補正をする理由はない。
なお,補正項目である「程度」は,「配線の内容の相違を考慮しようとするもので,配線に用いられている資材の程度と仕上がりの良否によって行うもの」であり,拡声器配線設備がどこに設置されたものかといったことは考慮要素にされていない。
(ケ)

工業用テレビ配線設備(補正項目「配置」,「程度」)
補正項目「配置」

(被告の主張)
本件家屋は大規模高層家屋で複数のモニター管理室があり事務所
部分,住宅部分,駐車場部分等に広く分散的に配線されているため,増点補正の対象としたものである。
(原告の主張)
本件家屋の工業用テレビ配線の1組1配線の長さは159メート
ルであるから,自治省固定資産課編の「平成3年度固定資産評価基準解説
(家屋篇)(甲27。以下「平成3年度評価基準解説」という。)」
(増点補正「分散的に配置されているもの」とは250メートル程度のもの,標準「普通のもの」とは180メートル程度のもの,減点補
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正「集中的に配置されているもの」とは100メートル程度のものとする。)によると,増点補正の対象とはならず,むしろ減点補正の対象となるものであり,「配置」について増点補正をする理由はない。b
補正項目「程度」

(被告の主張)
「程度」の補正は,一般的には機器や配管配線等の施工状態が良いものを増点補正するものであるが,主に配管の使用資材やその施工の程度により「施工の程度」の補正を行うものであるところ,本件家屋の工業用テレビ配線設備の配管には金属管も使用されており,屋外にも設置されていて配線の仕上がり程度はよいことから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に設けられている工業用テレビ配線設備は,金属管内配線で,普通のものであり,しかも,「施工の程度」による増点補正をするためには,標準的な施工と比して工事や仕上がりの程度が著しく異なるものに限られるはずであるところ,本件家屋の工事用テレビ配線設備は,
その配線工事や塗仕上げ等はごく普通であり,
とりたてて
「良
いもの」であると評価し得るような事情は何ら存在しないから,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を上回る増点補正をする理由はない。
なお,平成3年度評価基準で対象としている工業用テレビには,屋内に設置されるものだけではなく,屋外に設置される排煙状況調のために設置されるものも含まれているから,屋外に設置されることをもって増点補正することは平成3年度評価基準が予定していない。

建築設備(衛生設備)
(ア)

給水設備(補正項目「設備の多少」)

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(被告の主張)
被告の調査によれば,原告が主張するものの他に食器洗機用水洗,ハンドシャワーがあり,延べ床面積100平方メートル当たり約1.84個程度になるから,増点補正の最高限度を超えている。
(原告の主張)
「設備の多少」による補正は,給水設備数の多少により,給水栓,横引吸水管等の工事費に相違が生ずるため,これを補正しようとするものであり,増点補正「給水箇所の多いもの」とは,水栓数(カランのほか大小便器用も含む。以下同じ。)が延べ床面積100平方メートル当たり1.8個程度のもの,標準「普通のもの」とは,1.4個程度のものとされているところ,本件家屋の給水設備の水栓数は,延べ床面積100平方メートル当たり約1.65個となるから,評点基準表における補正係数の上限まで増点補正する理由はない。
(イ)

排水設備(補正項目「設備の多少」)

(被告の主張)
排水設備と給水設備の「設備の多少」の補正の考え方は同様であり,一般には給水箇所と排水箇所は一対になっているから,補正係数も同様になる。
(原告の主張)
「設備の多少」の補正は,排水を必要とする衛生器具の具体的な個数の多少による工事費の相違を考慮しようとするものであり,
増点補正
「排
水箇所の多いもの」
とは,
延べ床面積100平方メートル当たり手洗器,
水洗便器等が1.8個程度のもの,標準「普通のもの」とは,1.4個程度のもの,減点補正「排水箇所の少ないもの」とは,1個程度のものであるとされているところ,本件家屋の排水設備は,延べ床面積100平方メートル当たり約1.58個となるから,補正係数としては1.1
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3程度に相当する値である。なお,被告は給水箇所と排水設備は一対になっているとするが,それぞれの個数が一致するとは限らない。
(ウ)

中央式給湯設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
「程度」により1.30の補正をしたことは適切である。
(原告の主張)
「程度」の補正は,「湯をつくるストレージタンクの程度によって判定するもの」と定められており,具体的には,ストレージタンクがステンレス製であるものを増点補正,ストレージタンクが鉄製でステンレスを内張りに使用したものを標準,ストレージタンクが鉄製で樹脂被覆程度のものには減点補正を行うとされているところ,本件家屋のストレージタンクは鉄製で,内部はプレクリートライニング加工であるから,増点補正の対象となるステンレスは用いられていないにもかかわらず,増点補正の上限を超える1.
30の補正係数を適用したことに理由はない。
(エ)

衛生器具設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
衛生器具設備の程度は,国産品と輸入品とにより程度差をつけるものではなく,あくまでその器具が程度の良いものか否かにより判断するものであり,住宅部分等の衛生器具は,一般の器具より大きく程度の良いものが施工されていることから,増点補正の対象としたものである。(原告の主張)
本件家屋の衛生器具設備は,いずれも国内メーカーの製品であってごく普通のものであり,本件家屋の住宅部分で用いられる大型の衛生器具が本件家屋全体で多く使用されるその他の既製品・量産品に占める割合は小さいから,その一部の大型の衛生器具の存在をもって,増点補正の上限を超える補正係数を全体に適用することに合理性が認められないこ
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とは明らかである。

建築設備(空調設備)
(ア)

吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備(補正項目
「規模」,「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の空調は部分空調であるところ,部分空調の場合,計算単位が「使用床面積」となることから,補正項目のうち「規模」の補正を除く他の補正項目のみ補正を行うとされているのであり,「規模」による補正を行わなかったことは適正である。また,「程度」による補正であるが,空調のゾーニング,すなわち空調の調整ができるブロック区分の規模については,本件家屋の事務所部分と住宅部分の共用廊下等に施工された吸収式冷凍機のゾーニングの規模は700平方メートル程度で非常に効率的なものであり,さらに,住宅部分の居室に施工されているパッケージエアコンディショナーは吹出口等の程度も良く,他の設備と同様に,施工の良いものであり,空調設備の「程度」の増点対象である排煙設備も設置されているから,「程度」の補正に当たり補正係数をそれぞれ1.30と定めたことも適正である。
(原告の主張)
平成3年度評価基準によれば,「規模」について,1万平方メートル程度のものについて0.
93の減点補正をするものとされているところ,
本件家屋は,延べ床面積が9万7677.32平方メートルの大規模建物であるから,少なくとも減点補正率0.93の適用があることは当然であり,更にこれを下回る補正率が適用されるべき特別の理由がある。また,空調設備の「程度」による補正については,増点補正「上等なもの」とは,銅,ステンレス等の特殊製作品による吹出口が全体の3割程度以上を占め,配管に銅管を用い,ゾーニングが1系統1200平方
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メートル程度のもの,標準「普通のもの」とは,鉄製メラミン焼き付けの既製品による吹出口が大部分を占め,ゾーニングが1系統2500平方メートル程度のものであるとされているところ,本件家屋の吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備はゾーニング1系統当たりの面積は小さいものの,吹出口は鉄製の既製品であるし,配管には亜鉛めっき鋼が使用されており銅管の使用はないから,「程度」により評点基準表における補正係数の上限を上回る増点補正をする理由はない。なお,システム天井とは,蛍光灯や空調の吸排気口を納まり易くするものであって,吹出口の材料の程度やゾーニングの規模とは無関係であるから,増点補正の対象とならない鋼製吹出口がシステム天井に組み込まれていることをもって増点補正をすることは失当である。
(イ)

換気設備2設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
本件家屋の換気設備は,他の配管等と同様に施工の良いものであり,また,増点補正の対象となる排煙設備が備わっているとともに,吹出口の程度も良く,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
なお,本件家屋は,事務所,共同住宅,店舗,駐車場の全ての部分に換気設備が施工されているため,1棟の延べ床面積から空調設備及び換気設備(第1種換気のもの)が施工されている部分の床面積を除いた1万2244.83平方メートルを換気設備(第2種又は第3種換気のもの)として評点を付設したものである。
(原告の主張)
本件家屋における換気設備は,1系統当たりの換気面積は小さいものの,吹出口は鉄製の既製品で,いずれも非木造家屋に設置される標準的な普通の設備であり,「上等なもの」として評点基準表における補正係数の上限を超える補正係数を適用する理由はない。

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なお,再調査評価では,本件家屋の換気設備のうち第2種・第3種換気設備について,設置床面積を12,244.83平方メートルとして計算されているが,本件家屋の換気設備は,第1種と第2種の混合であるところ,後者の設置床面積は4,260平方メートルであり,設置床面積が過大に計算されている結果,再建築費評点数が過大に計上されている。
(ウ)

レンジフードファン(補正項目「施工の程度」)

(被告の主張)
レンジフードファンは換気扇と同様の機能であるものの,排気効率が優れているため本件家屋の新築時点頃から一般的に普及してきた建築設備であり,固定資産評価基準では別の評点項目としているが,本件家屋の評価は,非木造再建築費評点基準表の「事務所・店舗・百貨店用建物」の標準評点数によっているところ,一般にレンジフードファンは住宅用設備であって,事務所・店舗・百貨店用建物の設備ではないことから,評点項目として設定がないため,同様の設備である木造再建築費評点基準表「専用普通建」の建築設備に設定されている評点項目である「レンジフードファン」を転用して評点を付設したものである。この転用した基準表には,補正項目として「施工の程度」が設定されており,本件家屋のレンジフードファンは,システムキッチンの一部として構成されている程度の良いものである。したがって,「施工の程度」の補正を行い,補正係数を1.30と定めたことことは適正である。
なお,レンジフードファンは,急速に普及し始めたことから換気設備の一つとして昭和63基準年度において新規に評点項目に追加されたもので,その後付着物の処理方法等が大きく改善され現在において普及しているものであるところ,平成3基準年度当時の取扱いとしては,評価替え質疑応答集に「今回新規に追加されたものは,60㎝幅程度の手動
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型で浅型のものを標準としている。したがって,自動型のものは1.70程度,深型のものは1.20程度補正し,評点を付設することとして差し支えない。」とされていることから,本件家屋のレンジフードファンについては,深型で施工の程度の良いものとして増点補正をしたものである。
(原告の主張)
レンジフードファンの「施工の程度」による補正に関して平成3年度評価基準解説に記載は見られないものの,平成18年度固定資産評価基準解説(家屋篇)によれば,レンジフードファンの標準点数は,60センチメートル幅程度の手動,浅型のものを標準として積算されており,自動型のもの,深型のものなどについては,適宜増点補正を必要とするものであり,器具又は器具の取付けが特に悪いもの又は特によいものについて,若干の補正をすればよいものであって,ほとんどの場合は補正の必要はないものであるとされているところ,レンジフードファンの器具やその取付方法について平成3年度以降に特段の進歩は見られないから,平成3年度についても同様に評価されると考えられる。ところが,本件家屋のレンジフードファンは,64.8センチメートル幅程度の手動,浅型のものであるから,増点補正の対象とはならない。また,システムキッチンの一部であることは,
増点補正をする理由にはなりえない。
したがって,レンジフードファンについて,「施工の程度」による増点補正,ましてや所定の補正係数の上限を上回る増点補正をする理由はない。

建築設備(防災設備)のうちスプリンクラー設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋のスプリンクラー設備は,配管に防露が施工され,エンジンが自動起動式エンジンであって,不慮の散水により膨大な損失を回避するた
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めの設備が複雑で高額な予作動式になっており,他の設備同様に程度の良いものであるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。(原告の主張)
本件家屋のスプリンクラー設備は,自動起動式エンジンのものではあるが,配管の防露はないから,最大増点補正率である1.10を上回る1.30の増点補正率を適用する理由はない。

建築設備(運搬設備)
(ア)

エレベーター設備(乗用エレベーター・乗用荷物用エレベーター)
(補正項目「程度」)
(被告の主張)
エレベーター設備の「上等なもの」とは,かご室,かご扉及び出入口周りにステンレスや真鍮ブロンズを多用し,床にゴムマットやゴムタイル等が用いられ,
扉等の全体にデラックスなものであるとされるところ,
本件家屋のエレベーターは,かご室,かご扉及び出入口周りにステンレス等が多用されたものである上,本件家屋が超高層ビルディングであることに鑑みると,
一般のエレベーターに比べて牽引溝車,
ガイドレール,
ロープ等に多くの資材や工事が必要であるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
なお,本件家屋のエレベーターに非停止階が多く設けられているところ,補正項目「着床数」で補正されるのは着床する階数分だけであって昇降行程が長いことを考慮して,補正項目「程度」による増点補正をしても,同じ理由で二重に補正することにはならない。
(原告の主張)
本件家屋のエレベーター設備は,かご室,かご扉及び出入口周りにステンレス等が用いられているものではあるが,出入口周りに関しては,三方枠と幕板は,1階及び2階以外のフロアは鋼板製であり,最大増点
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補正率である乗用エレベーターの1.12又は1.10,乗用荷物用エレベーターの1.20をいずれも上回る1.30の増点補正率を適用する理由はない。
また,高層であることによる工事費の増加については,「着床数」による増点補正の対象となるのであって,これをもって「程度」による増点補正を行えば,同じ事由を理由に二重に増点補正をすることとなり許されない。なお,本件家屋は,平成3年度評価基準が想定していないような例外的な高層建物であるとはいえない。
さらに,本件家屋に非停止階があるとしても,それによってエレベーターの価格の大半を占めるかご,扉,三方枠の使用資材の数量が増えるわけではなく,比較的安価なロープ,ガードレール及び牽引溝車などの数量が多少増えるだけであり,エレベーター全体の価格に与える影響は微々たるものである。
(イ)

エスカレーター設備(補正項目「程度」)

(被告の主張)
エスカレーター設備の「上等なもの」とは外側板及びデッキボードにステンレス板又は真鍮板が用いられているものであるとされるところ,本件家屋のエスカレーター設備は,1階の吹抜け部分に施工された特注品のエスカレーターで,外側板やデッキボードはステンレスで仕上げられており,程度のよいエスカレーターであるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋のエスカレーター設備は,外側板及びデッキボードにステンレス板が用いられているものではあるが,最大増点補正率である1.15を上回る1.30の増点補正率を適用する理由はない。

仮設工事(補正項目「工事の難易」)

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(被告の主張)
「工事の難易」による補正は,個々の建物の構造や規模等を基準に,建物の周囲の状況及び交通の便等によって仮設工事費を多く必要とするかどうかによって行おうとするもので,補正係数は,建物の建築に際して困難な地域にあるかどうか,すなわち,建物の敷地に余裕があるかどうか,建床面積に比し高層であるかなどの各種の状況を総合的に判断して決定することになり,一般に高層ビル街の限られた地域に,敷地一杯に高層(10階程度)の建物が建築され,または,交通の頻繁な地域に建築される場合などその建物の工事に最も困難が伴う場合には,1.5の増点補正率を適用するものとされているところ,本件家屋は,地上30階建ての超高層ビルディングである上,地下部分には大規模な駐車場が設置されており,この駐車場を利用するためのスロープ部分や建物の外回りである外構部分にも大規模な空堀などが施工されており,
床面積に算入されない部分も多く,
敷地一杯に利用されている。また,本件家屋は,港区α地区にあり,他の地域に比べて交通量が多いということができる。したがって,補正係数を1.50と定めたことは適正である。
なお,原告は,仮設工事の難易に大きな影響を及ぼすのは敷地に余裕のない状況における前面道路の交通量だけであると主張するが,仮設工事の難易は,個々の建物の構造,規模等を基準に,建物の周囲の状況及び交通の便否等によって仮設工事費を多く必要とする場合の補正項目であり,各種の状況を総合的に判断して決定することとされ,建物の敷地の余裕,建物が高層であるか否か,交通の頻繁な地域に建築される場合かなどが例示されているから,原告の主張は補正の際の判断要素を根拠なく限定するもので不当である。
(原告の主張)
本件家屋は,地上30階建ての高層建物ではあるが,地下工事段階での
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空地率は約35パーセント,地下工事完了後地上工事になった段階での空地率は約60パーセントにまでなる。本件家屋の前面道路の幅員は,約8.
7メートル及び約4メートルであり,いずれの道路も交通頻繁な道路ではない。したがって,本件家屋に係る仮設工事の工事の難易について,増点補正係数の上限である1.50を適用する理由はない。
なお,仮設工事の難易に大きな影響を及ぼすのは,敷地に余裕のない状況における前面道路の交通量だけである。

その他の工事(補正項目「工事の多少」)

(被告の主張)
その他の工事の「その他の工事の多少」による補正は,当該家屋の木工事か金属工事に係る工事費が類似の家屋と比較して特に多いと認められる場合等に,
増点補正率を超えて適用して差し支えないところ,本件家屋は,
その利用用途が事務所,店舗,共同住宅,駐車場,アスレチッククラブと多岐にわたるため,その他の工事としてよく掲げられる木工事(床の間,敷居,鴨居等の造作工事),金属工事(鉄製階段,鉄製手すり,窓格子等)以外にも多くの部分別「主体構造部」から「仮設工事」までに含まれていない工事が施工されており,具体的には,設備基礎工事,鳩小屋関係工事,パラペット工事,間接照明ボックス,防炎垂壁,住宅部分では,カーテンボックス,各木工事及び使用量に現れないライニング,巾木,廻り縁等の多くの雑工事が施工されているており,その他工事に含まれる工事は別紙4のとおりであるから,
補正係数を20.00と定めたことは適正である。
なお,固定資産評価基準が再建築価格を基準とする評価方法を採用していることは,評価の際に実工事費を参考とすることを禁止するものではない。そして,評価において,特にその他の工事は,雑工事など他の部分別区分で評価の対象とされていない工事を対象とするものであるから,対象範囲も家屋により相当程度異なるところ,本件家屋は,複合用途でかつ大
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規模の家屋であり,その他の工事として評価すべき工事範囲も特に大きいから,これを適正に評価するためには,実情に応じて,一般的な限度を超えて補正係数を決定することが必要であり,そうした際に,取得価格を参考とすることは,現在の固定資産評価基準に基づく事務でも必要に応じて行われているものである。
さらに,原告は,評価額は結果的に実工事費の概ね6割程度になることが多いと述べるが,本件建物の評価額と見積額から推計した実工事費とを対比すると,前者は後者の約63パーセントであり,基礎工事,躯体工事などの工事区分においても評価額が工事費を上回っている箇所はないから,この点からも,過大に評価されているとの原告の主張は客観的裏付けを欠く。
(原告の主張)
「工事の多少」による増点補正率の範囲を超える補正率の適用は,木工事か金属工事に係る工事が類似の家屋と比較して特に多いと認められる場合等に限られるところ,本件家屋における「その他の工事」の内容は,非木造家屋である他の高層ビルの場合と特別に異なることはなく,補正係数の上限である1.50を大幅に上回る20.00の増点補正係数を適用する理由はない。
本件再調査に係る評価においてその他の工事に該当するとされた工事(別紙4)は,平成3年度評価基準において「その他の工事」に該当するとされている工事とかけ離れた工事が多く,別紙4に記載された工事のうち,「5-4-2雑鉄骨工事」から「10-1-3-3特殊室内装給湯室」(3枚目)までの各工事については,いずれも,「事務所,店舗,百貨店用建物」の再建築費評点基準表における部分別「主体構造部」から「仮設工事」までの各部分別の内容に含まれているか,あるいは,含まれていないとしても,事務所,店舗,百貨店用建物において一般的に施工されてい
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る工事であるから,これらの工事をもって工事費が類似の家屋と比較して特に多いとは到底いえない。また,その余の工事について,その工事費を合計しても14億1541万508円にすぎないから,補正係数として20.00を付すほどに類似の家屋と比較して特に多いとは到底認められない。
なお,本件再調査の結果では,別紙4記載の工事がすべからく「その他の工事」に該当するとし,その工事費の合計41億6020万548円を計上し,1平方メートル当たり4万2591円であるとして,これを標準評点数1900で除して22.41を算出し,
これをもって補正係数20.
00を付しているが,平成3年度評価基準は所定の補正係数の上限と下限を設けているのであり,このような単純な計算によって補正係数を算出することは,所定の補正係数が設定されていることを無視するものであり,到底認められない。
そして,本件家屋の補正係数が異常な数値であることは,原告が所有する他の主な高層建物の補正係数と比較すれば一目瞭然である。なお,通常,
固定資産評価基準を遵守した上での家屋の評価額は,結果的に実工事費の概ね6割程度となることが多いため,このような観点からも,被告の上記算定方法は,他の納税者との比較において著しく均衡を欠くものである。第3
1
当裁判所の判断
争点(1)
(本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出が誤っていることを理由として平成18年度価格の妥当性を争うことが許されるか否か。)
について
(1)

平成18年度評価基準は,
在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数につ

いて,原則として,基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じることによって求めることとしているところ(前記第2の1(2)エ),争いのない事実等(前記第2の2(2))のとおり,本件家屋の各基
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準年度(平成6年度,平成9年度,平成15年度,平成18年度)の再建築費評点数は,例えば平成5年に新築された本件家屋については,建築当初の再建築費評点数に当該基準年度において適用される固定資産評価基準に定める再建築費評点補正率を乗じて基準年度である平成6年度の再建築費評点補正率を求めるなど,各基準年度の前年度の再建築費評点数に所定の再建築費評点補正率を乗じることによって求められたものであり,本件家屋の平成18年度の再建築費評点数も,平成17年度の再建築費評点数に平成18年度評価基準に定める再建築費評点補正率を乗じて求められたものである。そして,原告は,このようにして求められた再建築費評点数を基にして算出された平成18年度価格が違法である理由として,本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出に誤りがあること,具体的には,別紙3に掲げられている各補正項目に係る補正係数の適用に誤りがあることを主張している。(2)

ところで,地方税法432条1項本文は,固定資産税の納税者は,その納
付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては,固定資産課税台帳に登録した価格等の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日まで若しくは都道府県知事の勧告を受けて固定資産課税台帳に登録された価格を修正した場合の公示の日から同日後60日(固定資産の価格の修正による更正に基づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の交付を受けた後60日)までの間において,又は登録価格等の公示の日以後における価格の決定・修正の通知を受けた日から60日以内において,文書をもって,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定め,同法434条は,同委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができ,登録価格についての不服は,上記審査の申出又は上記取消しの訴えによることによってのみ争うことができることとしている。また,基準年度の翌年度(第二年度)及び第二年度の翌年度(第三年度)の固定資産税
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の課税標準は,原則として当該家屋の基準年度の価格とするものとされている(同法349条2項,3項)ところ,同法432条1項ただし書は,第二年度及び第三年度における家屋の価格に不服がある場合には,基準年度の価格によることが不適当となる特段の事情を主張する場合に限り,所定の期間内に,審査の申出ができるものとしている。
このように,地方税法が,固定資産税の課税標準である固定資産税課税台帳の登録価格について不服があるときは,原則として基準年度の価格について所定の審査申出期間内に固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をすべきものとし,第二年度及び第三年度における価格については審査の申出をすることができる場合を限定し,これらの方法及び固定資産評価委員会の決定に対する取消訴訟によらなければ価格を争うことができないこととしているのは,固定資産税の賦課処分の前提問題である課税標準となる固定資産課税台帳の登録価格を早期に確定させることにより,固定資産税に関連する事項についての法的安定性を確保する趣旨であると解される。
そして,従前より存在する非木造家屋の評価を争う場合においても,建築以降当該係争年度の前年度までの間の当該家屋に係る固定資産税の各賦課処分は,当該家屋の建築当初の評価を前提としてされているのであって,非木造家屋の評価を争う際に,建築当初の評価の誤りを無制限に主張できることとすると,既に確定した固定資産税の各賦課処分の前提問題となった建築当初の評価額についての争いがいつまでも蒸し返されることになり,上記のとおり地方税法が固定資産課税台帳の登録価格を早期に確定させることとした趣旨に反する結果となりかねない。また,建築当初の評価から時間が経過すればするほど,評価の対象となった家屋には経年変化が生じ,修復や増改築等による変更が生じることが当然に予想され,さらには,建築当初の建築関係書類が廃棄又は紛失されることがあることも想像に難くないのであって,そうすると,時の経過と共に建築当初の評価に誤りがあったかどうかを的確
-85-

に判断することは困難になることも当然に予想されるものといわざるを得ない。
以上のような点を考慮すると,地方税法は,原則として,建築当初の評価後の基準年度が到来した後においては,
建築当初の評価の誤りを理由として,
当該基準年度において固定資産課税台帳等に登録された家屋の価格の不服を主張することや,当該誤りを理由に当該不服に理由がある旨の決定や判決をすることを予定していないものというのが相当である。
(3)

もっとも,
基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評点補正

率を乗じる方法によって基準年度の再建築費評点数を算出している在来分の家屋について,建築当初の再建築費評点数に誤りがあるにもかかわらず,その誤りを主張してその後の基準年度の評価を争うことが一切できないこととすると,その後の評価についての是正の手段がないことになり,このような事態は,三年ごとに家屋の評価をし直すことを予定している地方税法(409条)の建前や,基準年度の家屋の課税標準は,当該家屋の基準年度に係る賦課期日における適正な時価であって(同法349条1項,341条5号),この適正な時価とは,正常な条件の下に成立する当該家屋の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解されること(最高裁判所平成10年(行ヒ)第41号同15年6月26日第一小法廷判決・民集57巻6号723頁参照),あるいは,市町村長が登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合には,
決定した価格を修正して登録しなければならないこと
(同
法417条1項),そのため,前記争いのない事実等(第2の2(3)ウ)のとおり本件家屋においても行われたように,登録価格の再調査がされることもあること等と整合しないことになる。
(4)

これらの事情を考慮すると,
建築当初の評価により固定資産課税台帳に登

録された価格についての審査申出期間や出訴期間が経過した後にあっては,建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明したよ
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うな場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎にその後の家屋の評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合に限っては,建築当初の評価が不合理であることを理由として,その後の基準年度の価格を争うことも認められ,固定資産評価審査委員会や裁判所において,建築当初の評価に重大な誤りがある等と認めた場合には,基準年度の価格に対する不服に理由がある旨の判断をすることができると解するのが相当である。
このように解したとしても,不服の対象はあくまで当該基準年度の価格であって,固定資産評価審査委員会や裁判所の上記判断の効力が当該基準年度の前年度以前の固定資産税の賦課処分の効力に直接影響を及ぼすわけではないことを考えるならば,前記のとおりの法的安定性を確保するという地方税法の趣旨に反するものとはいえない。
2
争点(2)(本件家屋の平成18年度価格は適切であるか否か。)について上記1において述べたところに従い,本件において,本件家屋の建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明し,又は,当該評価の誤りが重大で,それを基礎に本件家屋の平成18年度価格の評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるか否かについて検討する。この点について,原告は,本件家屋の建築当初の評価が誤りである理由として,本件家屋の各部分別評価において適用された補正係数が誤りであることを主張するので,まず,建築当初の本件家屋の再建築費評点数を算出するに当たり,各部分別評価において適用された補正係数に重大な誤りがあるといえるか否かについて検討する。
ところで,前記第2の1(3)イ(オ)のとおり,平成3年度評価基準は,非木造家屋の各部分の工事の施工量等が,評点基準表の「補正項目及び補正係数」欄の「標準」欄に定められている工事の施工量等と相違する場合には,標準評点数を補正係数によって補正するものとしている。これは,評点項目及び標準評
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点数が,同種類の非木造家屋に一般的に使用されている資材の種別,施工の態様等を考慮して決定されているものであり,個々の家屋の施工の態様等は,必ずしもこの評点項目及び標準評点数に適合するものとはいえず,個々の家屋の各部分の施工の状況には当然に差異が生じ得るものであることから,各個の家屋の実態に見合った適正な再建築費評点数を算出する必要があるためであると解される(乙38参照)。そして,使用資材の数量が明確な家屋に係る補正項目については,使用資材の数量による補正は考えられないから,当該家屋の施工の状況から生じる労務費の多寡等当該家屋の時価に影響を及ぼす要因を再建築費評点数に反映させることを目的とするものと解される。このような観点から,平成3年度評価基準の評点基準表には,各部分の評価項目における補正項目について,補正係数の限度が増点補正をする場合と減点補正をする場合の双方について定められているが,これはあくまで一般的に妥当と考えられる補正係数の限度を定めたもので,平成3年度評価基準に定められている(前記第2の1(3)イ(オ))とおり,補正項目について定められている補正係数の限度内において処理することができないものについては,その実情に応じて,定められている補正係数の限度を超えて補正係数を決定するものとされ,証拠(乙37の4,5)及び弁論の全趣旨によれば,そのような実例が少なからず存在すると認められる。
したがって,本件家屋の建築当初の評価の誤りが重大であるといえるか否かを判断するに当たっては,本件家屋の各部分別評価において適用された補正係数に上記の観点に照らして重大な誤りがあるといえるか否かを判断することになる。
なお,前記争いのない事実等(第2の2(3)ウ)のとおり,本件家屋については,東京都港都税事務所長が本件再調査を行っており,これは建築当初の再建築費評点数を再度算出したものであって,本件決定もこれを前提としているものであるから,以下においては,本件再調査により算出された部分別の再建築
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費評点数についてそれぞれ判断する。
(1)

主体構造部
本件家屋については,建築当初の主体構造部の評価上,「工事形態」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の主体構造部の工事形態が通常の工事形態に比較して複雑であることはなく,評点基準表の上限1.05を超える補正係数による増点補正をする必要はないなどと主張する。


ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の非木造家屋における主体構造部とは,基礎,柱,梁,床版,壁体,小屋組,屋根版等の主体構造部分をいい,平成3年度評価基準の定める主体構造部の「工事形態」による補正について,平成3年度評価基準解説(甲27)は,「「工事形態」による補正は,建物の主体構造部の工事形態が通常の工事形態に比較して複雑であるか単純であるかを基準として行うものである。この補正係数の判定は,(中略)主体構造部の使用資材の数量が明確な建物については,工事形態から生ずる労態費の相違を考慮して行うこととなるものである。工事形態における補正係数の判定は,建物の外観から見てこれを行うものであり,(中略)通常同一用途の建物のうち外観から見て重量感のあるもの又は凹凸の多いもの等が増点補正率の対象となり,その形態が単純であるもの又は壁厚の薄いもの等が減点補正率の対象となるものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の主体構造部の補正項目「工事形態」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。


そこで,本件家屋の主体構造部の工事形態が通常の工事形態に比較して複雑であるか否かについてみるに,証拠(甲27,乙9の1,乙11から
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14まで)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋は,①地階部分が鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造,地上階部分が鉄骨造という複合構造であること,②地下2階地上30階塔屋1階建,高さ141メートル,延べ床面積97,677.72平方メートルという巨大なビルであり,新築された平成5年当時には港区内であっても1桁の数しか存在していなかった140メートルを超える大型高層ビルであって,平成3年度評価基準において,使用資材の数量が明確でない建物についての階層数による補正係数について「標準」とされている階層数(地上6階)のみならず,評価基準表の上限の補正係数を適用するものとされている階層数
(地上9階)
をはるかに上回る大型高層ビルであること,③各階平面の形状は,単純な長方形ではなく,屈曲部分が多くある凹凸の多いものであること,④外観からみて質感・重量感がありデザイン性に富んだものであることが認められ,これらの事情を考慮すれば,本件家屋の主体構造部については,当時想定されていた標準的な家屋に比べてはもとより,当時複雑な家屋として想定されていたものよりもはるかに労務費がかさむ形態の家屋であると認められるから,本件家屋の主体構造部の「工事形態」に係る補正係数を評点基準表の上限1.05を超える1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,<ア>地上階が鉄骨造で地階がある建物は,ほぼ全てが複合構造の形式を採用しているから,複合構造であることは増点補正の理由とならない,<イ>家屋の規模や高さを考慮することは不明確計算の補正項目を明確計算に持ち込むもので固定資産評価基準が予定していないし,階層数が多いことによって労務費がかさむことはない,<ウ>外壁の凹凸は極めて少なく,形態としては非常に単純であるなどと主張する。しかし,<ア>地上階が鉄骨造で地階がある建物が一般的に複合構造の形式を採用していたとしても,そのような家屋については,標準的な家屋より主体
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構造部の労務費がかかると考えられるのであるし,<イ>確かに,資材の使用量が明確でない建物についてのいわゆる不明確計算において,延べ床面積1平方メートル当たりの鉄筋等の標準量に階層数による補正係数を乗じることとされているのは,階層数の増加により鉄筋等の使用量も標準量より増加することを考慮したものであろうが,階層数が大きく増えて高層化するならば,その資材の輸送運搬コスト等によりその使用量比を超えて労務費等が増加すると考えられるのであり,さらに,<ウ>本件家屋の各階平面が凹凸の多いものであることは前記のとおりであり,基準階である15階の凹み部分の面積がフロア全面積に占める割合が4.7パーセント程度であるとしても(甲10の1),各階平面の凹凸によって主体構造部の労務費が増すと判断したことが重大な誤りということはできない。したがって,原告の上記主張は採用できない。
(2)

根切り工事
補正項目「地盤」
(ア)

本件家屋については,建築当初の基礎工事のうち根切り工事の評価
上,「地盤」により1.50の補正がされているところ,原告は,本件家屋の敷地は,良好な地盤であり,地下水の湧水量が多いことはないから増点補正をすることはできないなどと主張する。
(イ)

ところで,根切り工事とは,建物の基礎その他地下部分の構築のた
めに所定の深さまで掘り下げる工事をいう(甲27)ところ,平成3年度評価基準の定める根切り工事の「地盤」による補正について,平成3年度評価基準解説は,「「地盤」による補正は,基礎工事における山留工事及び排水工事の工事費の状況を標準評点数に反映させる目的のために設けられたものである。したがって,この補正は,地盤の軟弱な地域及び地下水の湧水量の多い地域については増点補正率を適用することとし,堅牢な地盤の地域及び湧水量の極めて少ない地域については減点補
-91-

正率を適用することとなるものである。」としている。これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の根切り工事の補正項目「地盤」についての補正係数を1.50としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の敷地の地盤が軟弱な地域等であるかについてみ
ると,証拠(甲4,27,乙15)によれば,本件家屋については,長さが20メートル以上,杭の口径が1.2メートルから2.1メートルあるペデスタル杭を合計394本打ち込んでいることが認められるところ,これらのペデスタル杭は,評点基準表において基礎工事のうちの評点項目「杭打地業」における補正係数の上限が適用される長さ20メートル,口径50センチメートルのものより2.2倍から4倍以上とはるかに太いものであるから,本件家屋が高層で自重量が重いことを考慮しても,このような杭打地業を行ったのは,地盤が軟弱であることの証左であると合理的に推測されるところである。したがって,そのような判断の下に,地盤が軟弱であるとして,本件家屋の根切り工事の「地盤」に係る補正係数を1.50としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,杭打地業工事については,別途評点項目が設けられているから,杭打地業工事を理由に増点補正することは不適切である旨主張するが,杭打地業工事の評点項目においては,杭打地業工事そのものによる工事費を評価するものであるのに対し,上記の判断は,根切り工事における工事費を評価するものであって,杭打地業工事の結果は,地盤の軟弱さを認定するために用いたにすぎないから,原告の上記主張は採用できない。

補正項目「敷地」

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(ア)

本件家屋については,建築当初の基礎工事のうち根切り工事の評価
上,「敷地」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の敷地は大規模なもので,土の保存や工事施工のスペースは十分確保でき,根切り工事が困難とは到底評価することができないから,増点補正をすることはできないなどと主張する。
(イ)

ところで,平成3年度評価基準の定める根切り工事の「敷地」によ
る補正について,平成3年度評価基準解説は,「「敷地」による補正は,建物が密集している地域に建築する場合の根切り工事の困難性に基づく工事費の増加を標準評点数に反映させる目的で設けられたものである。すなわち,建物の建築においては,根切りによって掘り出された土(中略)の一部を埋戻しに使用しなければならず,一定の土量はこれを保存する必要があり,(中略)敷地が狭く敷地外の他の場所にこの保存すべき土量を移動しなければならない場合には,運搬費が増加することとなり,根切り工事費は結果的に割高となるものである。また,建物の密集した地域においての根切り工事は極めて困難であって,それだけ能率が悪くなり工事費も割高となるものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の根切り工事の補正項目「敷地」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の根切り工事が困難であるかについてみると,証
拠(甲10の1,乙11,13,17)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の地下工事前における,
敷地面積
(約1万4412平方メートル)
に占める空き地の割合は約35パーセントあることが認められるものの,本件家屋の敷地はそもそも不整形であって,空き地部分は不整形であり空き地一つ一つの面積は大きくないことが認められるところ,他方
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で,地下2階だけで床面積合計約1万7990平方メートルを擁する本件家屋(甲4)についての根切り工事によって掘り出される土の量は膨大であり,およそ全部合わせても敷地面積の約35パーセントの5000平方メートル程度の広さしかない不整形の空き地上において保管できる量であるとは考え難い。また,証拠(乙32)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋は,東京都港区α地区の商業地区に所在しており,建物密集地にあることに加え,当該地区は高低差のある地域であることが認められるから,これらの地域性に照らすと,本件家屋の根切り工事の実施自体に相当の困難を伴うと考えられる。さらには,証拠(甲11の6,甲17,18,乙32)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の敷地は,主要幹線道路に面しているものではなく,周辺道路は片側一方通行のものもあるなどその幅員は広くはないものと認められる上,前記のとおり根切り工事を行った場合に発生する相当量の土を都心部から郊外などの離れた場所に運搬しなければならないと考えられるから,それほど大型ではないトラックを数多く往復させる必要が生じるなど搬出すべき土の運搬には多額の費用を要するものと考えられる。このような事情を考慮するとすれば,本件家屋に係る根切り工事は,多くの費用を要する困難なものと考えることは何ら不合理でないというべきであって,本件家屋の根切り工事の「敷地」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
(3)

外周壁骨組
本件家屋については,建築当初の外周壁骨組の評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の外周壁骨組には,一般的に用いられる資材が使用されているから,増点補正をすることはできないなどと主張する。


ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における外周壁
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骨組とは,建物の外周壁の骨組で主体構造部を構成しないものをいい,平成3年度評価基準解説は,外周壁骨組の「「施工の程度」による補正は,標準評点数の積算に当たり,通常考えられる標準的な工事費が基準とされているため,極めて高級な家屋の場合又は普請の程度の極めて悪い家屋の場合であっても,実際に生ずる工事費の格差が再建築費評点数に反映されないこととなる。そこで普請の程度の良否により,増点又は減点することによって個々の家屋の工事費の実態に適合させるよう「施工の程度」による補正項目を設け,当該補正係数を定めているものである。したがって,この補正は一般的な施工の建物については適用する必要はなく,特に高級な建物とか,普請の程度の悪い建物についてのみ適用するものである。」としている(なお,この記載は,評点項目「外部仕上げ」の説明として記載されているが,続けて「このことは,その他の部分別についても全く同様である」とされていることから,評点項目「外周壁骨組」に係る補正項目「施工の程度」についての説明としても理解することができる。)ところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の外周壁骨組の補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

そこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物と比べて外周壁骨組の工事費が高いものといえるか否かについてみるに,証拠(甲4,乙11,12)によれば,本件家屋の外周壁骨組にはプレキャストコンクリート板(100ミリメートル厚)に花崗岩を打ち込んだものが使用されているところ,これは,通常のプレキャストコンクリート板を使用した場合に比べてはるかに普請の程度の良いものであることが認められ,本件家屋が地上30階という高層ビルであることも考慮すると,外周壁骨組の施工に通常予定されているものよりはるかに多くの工事費を要
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するものとして,本件家屋の外周壁骨組の「施工の程度」に係る補正係数について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,<ア>花崗岩は「外周壁骨組」を構成するものでない,<イ>プレキャストコンクリート板の製作費は「資材費評点数」に含まれており,施工に用いるタワークレーン使用料は仮設工事で評価されるもので,
いずれも増点補正の要素とすることはできないと主張する。しかし,<ア>原告は,本件家屋の外周壁骨組に使用されたプレキャストコンクリート板は,工場で花崗岩を敷き詰め型にコンクリートを流し込み成型したものである旨主張するのであり,そのようなものを製作すること自体に通常のプレキャストコンクリート板より多額の費用を要するのであるから,これを外周壁骨組の評価において考慮することは何ら不合理でなく,<イ>そのような花崗岩を打ち込んだ特殊なプレキャストコンクリート板の製作費は資材の通常の評点数では評価されていないし,部分別評価によって再建築費評点数を算出する場合において,仮設工事で用いるタワークレーンの費用とは別に,外周壁骨組の工事で用いるタワークレーンの費用を考慮することは何ら不合理ではない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用できない。
(4)

外部仕上げ
本件家屋については,建築当初の外部仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の外部仕上げ資材は一般的な資材であるから,増点補正をすることはできないなどと主張する。


ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における外部仕上げとは,建物の外周壁の仕上げ部分とその下地部分をいうところ,「施工の程度」による補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋
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の外部仕上げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

そこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物と比べて外部仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,証拠(甲4,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の外部仕上げには,花崗岩や小口・二丁掛タイル等の複数の資材が用いられていること,外壁はよく磨き上げられたものである上,デザイン性に優れたもので,壁面全体に統一感があることが認められ,その普請の程度はよいといえることに加え,
前記(3)のとおり,本件家屋の各階平面図の形状は単純
な長方形ではなく,その外部の形状は直方体ではなく凹凸のあるものであること,高層ビルの外部仕上げには,強靱な足場の組立てや取壊し,高所での作業に伴う各種安全確保措置など通常の施工より多くの工事費を要するものと考えられることも考慮すると,外部仕上げの施工に通常より多くの工事費を要するものとして,本件家屋の外部仕上げの「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,<ア>本件家屋に用いられた花崗岩の割合は低く,また花崗岩の使用は資材による評点数で評価されている,<イ>建物が高層であることと普請の程度は関係なく,使用資材が多様であることはそれぞれ評点項目ごとに評価すれば足りるなどと主張する。しかし,<ア>外部仕上げの補正項目「施工の程度」による補正は,外部仕上げに用いられた資材ごとに行うべきものではなく,外部仕上げ全体の仕上がり状況から見てそれに要する工事費が通常より増減するかという観点から行うものであるから,花崗岩の使用割合が相対的に少ないことから増点補正が許されないことになるものではないし,「施工の程度」による補正をすることで資材
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による評点数で評価したものを再度評価するものではない。また,<イ>建物が高層であれば,全体的な外部仕上げのコストがかさむことになることは前記のとおりであり,使用資材が多様であれば,全体を統一的に仕上げることにコストがかかるとも十分に考えられるのであるから,これらの要素を「施工の程度」において考慮することは,不合理とはいえない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用できない。
(5)

内部仕上げ
本件家屋については,建築当初の内部仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の内部仕上げ資材は一般的な資材であるから,増点補正をすることはできないなどと主張する。


ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における内部仕上げとは,建物の内周壁の仕上げ部分とその下地部分をいい,「施工の程度」による補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋の内部仕上げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。


そこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物と比べて内部仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,証拠(甲4,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の内部仕上げについては,事務所部分の吹き抜けとなったエスカレーターホールや2階ロビーについて大きな壁面面積に大理石や花崗岩を用いてきれいな仕上げをしていること,住宅部分の専用ロビーについては,壁面が曲面である上,同様にきれいな仕上げをしていること,事務所部分の廊下や事務室内は,大きな面積に石膏ボードにエマルジョンペイントを吹き付けてきれいに仕上げていること,24階以上にある住宅部分の壁面も,大きな面
-98-

積について合成樹脂壁紙できれいに仕上げていること,本件家屋の内部仕上げに使用された資材は多様であることが認められるから,本件家屋の内部仕上げは,標準的な家屋のそれに比べて普請の程度が良く高級な仕上げになっているものということができ,これらの事情に,仕上げ面積が相当に広くなるとそれに伴って柄合わせなどのために精巧な作業が必要になり,また施工場所の階層が相当に高くなれば必然的にそれに伴う運搬等のコストも増すと考えられることも総合すると,内部仕上げの施工に通常より多くの工事費を要するものとして,本件家屋の内部仕上げの「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,内部仕上げについては,使用資材に応じて評点項目が設けられているにもかかわらず,一律に一部の使用資材の仕上げを利用して他の使用資材の評点項目について増点補正することは許されない旨の主張をするが,前記(3)イのとおり,「施工の程度」による補正は,普請の程度の良否による工事費の差異を評点数に反映させるためのものであり,評点項目ごとにされるものではないから,建物全体の内部仕上げの施工の程度が良いことをもって,その全体について補正をすることは,何ら平成3年度評価基準に反するものではないし,本件家屋の内部仕上げについての「施工の程度」による補正が,ごく一部の施工の程度の良さだけを理由とするものでないことは,上記認定からも明らかである。したがって,原告の上記主張は採用できない。
(6)

床仕上げ
本件家屋については,建築当初の床仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の床仕上げ資材は一般的な資材であり,特に手間の多くかけられた施工がされているところはないから,増点補正をすることはできないなどと主張する。
-99-


ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における床仕上げとは,建物の床の仕上げ部分とその下地部分をいい,「施工の程度」による補正の基準は,
前記(3)イのとおりであるから,本件家屋の床仕上げの
補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

そこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物と比べて床仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,証拠(甲4,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の床仕上げについては,事務所部分のエスカレーターホールや2階ロビー,住宅部分の専用ロビー等に大理石や花崗岩を用いた模様貼りをしていること,高層階にプールがあり,防水加工がされた床工事がされていること,住宅部分の床も一般の住宅に比べて資材も仕上げも高級であることが認められるから,本件家屋の内部仕上げは,標準的な家屋のそれに比べて普請の程度が良く,高級な仕上げになっているものということができ,これらの事情に,事務所部分の床にはフリーアクセス床が施工されているところ,確かにフリーアクセス床であること自体は評点項目で考慮されているものの,これを高層ビルに施工するためには,通常より強度の高いものを用いる必要があり,施工に手間がかかるとも考えられることや,高層ビルの床の工事には資材の輸送運搬等のために通常より費用がかかること,平面の形状に凹凸があるために床の施工に手間がかかること等の事情も併せ考慮すれば,床仕上げの施工に通常より多くの工事費を要するものとして,本件家屋の床仕上げの「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,使用資材に応じて評点項目が設けられているにもかかわらず一律に補正係数を乗ずることは許されない旨の主張をするが,これが採用できないことは,前記(5)ウのとおりである。

-100-

(7)

天井仕上げ
本件家屋については,建築当初の天井仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の天井仕上げ資材は一般的な資材であり,特に手間の多くかけられた施工がされているところはないから,増点補正をすることはできないなどと主張する。

ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における天井仕上げとは,
建物の天井の仕上げ部分とその下地部分をいい,「施工の程度」
による補正の基準は,
前記(3)イのとおりであるから,本件家屋の天井仕上
げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,
上記基準に照らして判断するのが相当である。


そこで,本件家屋が特に普請の良い高級な建物で,標準的な建物と比べて天井仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,(甲証拠
4,10の1,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の天井仕上げについては,エスカレーターホール,2階ロビー及び住宅部分の専用ロビーに二重,三重の打ち上げ天井が施工されていること,事務所部分にはシステム天井が施工されており,そこには多くの設備が設置されていること,大きな吹き抜け部分があることが認められるから,本件家屋の天井仕上げについては,標準的な建物に比べて普請の程度が良く,高級な仕上がりとなっているということができる。そして,これらの事情に,本件家屋が高層で,天井仕上げにもコストがかかると考えられること,床仕上げと同様に仕上げ面積が大きいために,これに伴うコストも増加すると考えられることも考慮すると,天井仕上げの施工に通常より多くの工事費を要するものとして,本件家屋の天井仕上げの「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,<ア>二重,三重の打ち上げ天井が占める割合はご
-101-

くわずかである,<イ>システム天井は,一般的な施工方法であり,平成3年度評価基準の評点項目に挙げられているものと費用は実質的に同等である,
<ウ>システム天井に組み込まれた設備を考慮することは,「建築設備」との二重評価になるなどと主張する。しかし,<ア>二重,三重の打ち上げ天井が占める割合がわずかでも,このことだけから「施工の程度」による補正をしているわけではないことは上記のとおりであるし,<イ>システム天井が一般的な施工方法であるとしても,平成3年度評価基準の評点項目にはシステム天井は挙げられていないから,工場での組み上げ費用やその運搬費用なども含めて考えれば,平成3年度評価基準の評点項目に挙げられている標準的な天井仕上げ資材を用いた場合の施工費用よりシステム天井の工事費の方が多額になると考えることは合理的である。また,<ウ>システム天井に設備が多いことは,システム天井の強度を強化する必要が出たり,施工に手間がかかったりすることから天井仕上げそのものの施工に影響があるという理由で挙げたものであって,設備そのものを評価に含めているものではない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用できない。
(8)

屋根仕上げ
本件家屋については,建築当初の屋根仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の屋根仕上げ資材は一般的な資材であり,標準的な施工方法と異なった施工がされているところはないから,増点補正をすることはできないなどと主張する。

ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における屋根仕上げとは,建物の覆蓋を構成する屋根部分のうち,主体構造部に含まれる小屋組,
屋根版等を除いた屋根葺下地,
仕上げ部分,
防水層等をいい,
「施
工の程度」による補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋の屋根仕上げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30と
-102-

したことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

そこで,本件家屋が特に普請の良い高級な建物で,標準的な建物と比べて屋根仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,(乙証拠
11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の屋根仕上げについては,陸屋根と勾配屋根が組み合わされていること,勾配屋根部分が四方に配置されており,デザイン性が高いこと,23階の屋根に相当する部分に中庭が設けられ,中庭部分にも凝った施工がされていること,中庭の上空は24階部分から30階部分まで中空となっていることが認められるから,本件家屋の屋根仕上げについては,標準的な建物に比べて普請の程度が良く,高級な仕上がりとなっているということができる。そして,これらの事情に,本件家屋が高層であって屋根仕上げにもコストがかかると考えられることも考慮すると,屋根仕上げの施工に通常より多くの工事費を要するものとして,本件家屋の屋根仕上げの「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,陸屋根と勾配屋根の組合せとなっていることや中庭・中空があることは,いずれも主体構造部で評価すべき事項であると主張するが,このような屋根仕上げになっていることにより,屋根の下地及び仕上げに通常の建物に比べて施工が複雑になったり,施工費用が増加したりすることを屋根仕上げの「施工の程度」の評価において考慮することが,主体構造部との二重評価とならないことは明らかである。また,原告は,本件家屋の勾配屋根は,鉄骨の組合せ方のみで表現されたにすぎず,工事費を増加させるものである旨の主張をし,それを裏付けるものとして甲11の4を提出するが,そのような施工方法が採られていても,工事費が増大することが十分に考えられる上,上記補正係数は勾配屋根の存在の
-103-

みをもって付設されたものであるとはいえないから,原告が指摘する事情は,上記判断を左右するものではない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用できない。
(9)

建具
本件家屋については,建築当初の建具の評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に使用されている建具は一般的な資材であり,標準的な施工方法と異なった施工がされているところはなく,ステンドグラスを手の込んだ上等のものと評価できるとしても,建具全体についての補正係数として1.30を適用する理由はないなどと主張する。


ところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における建具とは,窓,出入口等の建具及びその建付枠並びにスチールシャッター等をいい,「施工の程度」による補正の基準について,平成3年度評価基準解説は,「「施工の程度」による補正は,他の部分別の場合と同様に,示された標準評点数が,各評点項目別に当該使用資材にかかる標準的な施工を基準として積算されているものであるから,これと異なった施工のものについて,それに相当する補正を行う必要があることから設けられたものである。したがって,施工の程度による補正係数の判定は,特に当該建具の施工の程度が一般的でないものについてのみ行うこととし,使用資材に見合った施工がなされている場合においては特に必要はないものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の建具の補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。


そこで,本件家屋について,標準的な建物と比べて建具の施工の程度が一般的ではないものといえるか否かについてみるに,証拠(乙11,12)
-104-

及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の建具については,事務所部分において,エスカレーターホールや2階ロビー等に大型の固定されたステンレスサッシュを使用していること,車寄せ部分の屋根には固定されたトップライトサッシュを使用していること,2階エントランス部分には,デザイン性の高いステンドグラスが設置されていること,住宅部分の入口の建具は凝ったデザインのものであること,カーテンウォールのガラスには鏡面調整がされていることが認められから,本件家屋の建具については,標準的な建物に比べて手間のかかる施工がされているものということができる。そして,これらの事情に,平成3年度評点基準表に評点項目として掲げられている建具は,いずれも標準的な大きさや重量等を前提としているもので,上記証拠等によれば,本件家屋に使用されている建具の多くは,この標準的な建具と比べて大きく,重量も重いと認められることも考慮すると,建具の施工の程度が一般的なものとはいえないとして,本件家屋の建具の「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,大型サッシュ(1辺が5メートルを超えるもの)の占める割合が少ないとか,鏡面調整はある程度の規模の家屋では一般的であるから,上記の事情は増点補正の理由にならないなどと主張するが,大型サッシュが使用されていることは考慮要素の一つであるにすぎないし,仮に鏡面調整をすることが当時としてもある程度一般的であったとしても,平成3年度評価基準においてそれが一般的な施工であるとして標準評点数に盛り込まれているものとは認められないのであるから,
それを
「施
行の程度」
を判断する際の一材料とすることは誤りではない。したがって,
原告の上記主張は,前記判断を左右するものではない。
(10)

特殊設備
ルーバー(アルミニウム系)

-105-

(ア)

本件家屋については,建築当初の特殊設備のうち,ルーバー(アル
ミニウム系)の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,平成3年度評点基準表上の上限値である1.20を超える補正をする理由はないと主張する。
(イ)

ところで,ルーバーとは,光線,音波の室内流入を調節するスクリ
ーンで,外周壁開口部に施工されるものであるところ(甲27),ルーバーに係る「程度」による補正の基準も,前記(3)イのとおりであると解されるから,本件家屋の特殊設備のうちルーバー(アルミニウム系)の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。(ウ)

そして,証拠(乙11,12)及び弁論の趣旨によれば,本件家屋
のルーバーは,外部仕上げや外部建具と一体となっているものと認められるから,
これらと同様に施工の程度がよいものとして,
補正係数を1.
30としたことが,重大な誤りであるということはできないというべきである。

既製間仕切
(ア)

本件家屋については,建築当初の特殊設備のうち,既製間仕切の評
価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,既製品の一般的な間仕切を使用しているから,増点補正をすべきでないと主張する。
(イ)

ところで,既製間仕切とは,床面から天井に達する規模のアルミニ
ウム骨組及びパネルからなるものを内容としており
(甲27)その

「程
度」
による補正の基準も前記(3)イのとおりであると解されるところ,こ
れまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであることからすれば,既製間仕切については,およそ高級なものを用いずに標準程度のものを用いることは,既製間仕切り
-106-

が床面から天井に達する規模のアルミニウム骨組及びパネルからなるものであるという性状に鑑みれば建物全体のバランス上考えにくいところ,既製間仕切のみこのようなものを利用していたことを窺わせる事情は見出し難い。そうすると既製間仕切りも,他の設備と同様に施工に手間がかかるものを使用しているものと推認することができ,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。
(11)

建築設備(電気設備)
動力配線設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のうち動力
配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋には金属管内配線でモーターブレーカー,開閉用マグネットを使用した動力盤が用いられているから,増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,動力配線設備は,家屋の建築設備を構成している各種動
力機器の動力源としての電気の配線設備をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,配線の内容と用いられている機器の内容の二つの面から,動力配線設備の程度を判定して補正しようとするもの」であり,「「上等なもの」とは,金属ダクト,バスダクト,ケーブル等を用いた配線で,各電動機ごとにユニット化したキュービクル型動力盤を使用している程度のもの」,「「普通のもの」とは,金属管内配線で,一般動力盤モーター用配線用遮断機(モーターブレーカー),開閉用マグネットスイッチ等が用いられている程度のもの」としているところ,これは,非木造家屋
-107-

の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の動力配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の動力配線設備についてみると,本件家屋の動力
配線設備には,増点補正の対象となる「上等なもの」に該当するとされているバスダクトも用いられており,これまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもかかわらず,動力配線設備については程度が高くないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

電灯コンセント配線設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のうち電灯
コンセント配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の電灯コンセント配線設備については,他の建物と比較して手間が多くかかっているものでないから,増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,電灯コンセント配線設備は,建物の照明器具及び小型電
気機器類を接続するための配線設備をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,電灯コンセント配線設備の工事及び仕上がりの程度によって行うものである。」「「上等なもの」とは,各部材の埋込工事や塗仕上げ等がとくにていねいに行われているものと解してよいもの」であるとしているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということ
-108-

ができるから,本件家屋の電灯コンセント配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の電灯コンセント配線設備についてみると,証拠
(甲10の2)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の電灯コンセント設備については,取付器具に塗装がされているものでないことは認められるものの,リモコンスイッチや埋込タンブラの埋込作業が丁寧にされていることやフロアコンセントの納まりもよいことが認められ,また,これまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもかかわらず,電灯コンセント配線設備については程度が高くないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。
これに対し,原告は,リモコンスイッチについては補正項目「スイッチ」で,フロアコンセントについては補正項目「フロアコンセント」でそれぞれ増点補正の対象となっているから,
二重評価になる旨主張する。
しかし,平成3年度評価基準解説によれば,「スイッチ」による補正はスイッチそのものによる相違を補正しようとするもの,「フロアコンセント」による補正は床下配線の有無による工事費の相違を補正しようとするもので,工事や仕上がりの程度による相違を補正するものではないから,リモコンスイッチやフロアコンセントの仕上がりの程度が良いことを理由に「程度」による補正をすることは二重評価とはならないということができ,原告の上記主張は採用できない。

電話配線設備

-109-

(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のうち電話
配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の電話配線設備については,非木造家屋に設置される標準的な普通の設備であるから,増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,電話配線設備は,G株式会社(当時)の所有に属さない
部分の電話配線設備で,内線電話に係る配線設備をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,配線の内容について考慮することを狙っているもので,使用されている資材の程度と仕上がりの良否等を目安として判定するものである。」,「「上等なもの」とは,金属管内配線で特に施工がよいものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の電話配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。(ウ)

そこで,本件家屋の電話配線設備についてみると,証拠(甲10の
2,乙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の電話配線設備については,金属管が用いられていること,住宅部分に設けられている電話は,外線2回線に対応でき,電話機8台,ドアホン2台接続が可能なものであり,インターホン配線設備,テレビジョン共同視聴設備,拡声器配線設備,呼出信号設備及び盗難非常装置と一体となり,住宅管理室にオートメーション設備メインコントローラを設置して集中管理を行うホームオートメーション設備の一部を構成していて,標準的な建物に比べてはるかに複雑な配線となっていることが認められることからすれば,本件家屋の電話配線設備の施工の程度は非常に良いものであると評価でき,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに
-110-

足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

照明器具設備(蛍光灯用器具,白熱灯用器具)
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の照明器具
設備の蛍光灯用器具及び白熱灯用器具の評価上,いずれも「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に使用されている照明器具は,一般的な既製品がほとんどであり,既製品でないものも高級とはいえないから,増点補正をする理由はないなどと主張する。(イ)

ところで,照明器具設備は,蛍光灯用器具と白熱灯用器具の別に評
点を付すものとされ,蛍光灯及び白熱灯そのものは評価の対象とならないものであるところ(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,設備されている器具が良い品であるか否かによって行うものである。」「「上等なもの」とは,器具が注文製品を主体として構成されているものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の電話配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の照明器具設備についてみると,証拠(甲10の
2,乙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋における照明器具に設置される蛍光管及び電球は既製品であるものの,器具そのものには注文品もあり,既製品であっても程度のよいものが使用されていることが認められ,器具の程度は上等であると評価されるものであり,これまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもかかわらず,照明器具設備については程度が高く
-111-

ないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

呼出信号設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の呼出信号
設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に使用されている呼出信号設備は,一般的な既製品であるから,増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,呼出信号設備は,特定の人を呼び出すための設備をいい
(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,呼出信号設備のうち外部に現れている押ボタン盤,信号盤等をみて,配線内容等まで類推判定しようとするものである。」「「上等なもの」とは,押ボタン盤,信号盤が特別注文品によっているようなものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の呼出信号設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の呼出信号設備についてみると,証拠(乙12)
及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋における呼出信号設備は,共同住宅と身障者用トイレに設置されていること,住宅部分のものは,他の設備を含めたホームオートメーション設備の一部を構成していること,押しボタン盤及び信号盤は,多機能のものであることが認められ,これらの事情によれば,配線内容の程度も良いことが推測されることから,呼出信号設備の程度が上等であると評価されるものであり,これまでに認
-112-

定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもかかわらず,呼出信号設備については程度が高くないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。
この点につき,原告は,呼出信号設備を1か所で集中管理していることを前提に,補正項目「配置」による二重評価となる旨の主張をするが,本件家屋において呼出信号設備が1か所で集中管理されていることを認めるに足りる証拠はなく,かえって上記のとおり共同住宅の各戸ごとに設けられているのであって,原告の上記主張は,その前提において失当である。

盗難非常通報装置
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の盗難非常
通報装置の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に使用されている盗難非常通報装置は,金属内配線で普通のものであるから,増点補正をする理由はないと主張する。
(イ)

ところで,盗難非常通報装置は,盗難防止を目的とした保障装置を
いい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,使用されている資材の程度及び仕上がりの良否等を目途に行うもので,この考え方は「電話配線設備」における「程度補正」の場合と同じである。」,「「上等なもの」とは,金属管内配線で,良いものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の盗難非常通報装置の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断
-113-

するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の盗難非常通報装置についてみると,弁論の全趣
旨によれば,本件家屋における盗難非常通報装置には,金属管内配線であること,複数の機能を1つの設備で管理するホームオートメーション設備の一部として施工されていることが認められ,これらの事情によると,その施工の程度は良いものであると評価されるものであり,これまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもかかわらず,盗難非常通報装置については程度が高くないものを使用したという事情は見出し難く,
他に補正係数を1.
30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

インターホン配線設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のインター
ホン配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に設けられているインターホン配線設備は,金属内配線で普通のものであるから,増点補正をする理由はないと主張する。
(イ)

ところで,
インターホン配線設備は,
構内専用の通話設備をいい
(甲

27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,配線内容によって判定するものである。」,「「上等なもの」とは,金属管内配線で良いものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋のインターホン配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

-114-

(ウ)

そこで,本件家屋のインターホン配線設備についてみると,弁論の
全趣旨によれば,上記ウ,オ及びカの各設備と同様にホームオートメーション設備の一部として施工されていることが認められ,その施工の程度は良いものであると評価されるところ,これまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもかかわらず,インターホン配線設備については程度が高くないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

拡声器配線設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の拡声器配
線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に設けられている拡声器配線設備は,金属内配線で普通のものであるから,増点補正をする理由はないと主張する。
(イ)

ところで,拡声器配線設備は,事務所等で呼出し,伝達,放送等に
利用されるものであり(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」補正は,配線の内容の相違を考慮しようとするもので,配線に用いられている資材の程度と仕上がりの良否によって行うものある。」,「「上等なもの」とは,金属管内配線で,良いものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の拡声器配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の拡声器配線設備についてみると,弁論の全趣旨
-115-

によれば,上記ウ,オ,カ及びキの各設備と同様にホームオートメーション設備の一部として施工されていることが認められるから,その施工の程度は良いものであると評価されるものであり,これまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもかかわらず,拡声器配線設備については程度が高くないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

工業用テレビ配線設備
(ア)

補正項目

配置

本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の工業用テレビ配線設備の評価上,「配置」により1.20の補正がされているところ,原告は,本件家屋の工業用テレビ配線の1組1配線の長さは159メートルであるから,平成3年度評価基準解説によれば,減点補正の対象となるべきであると主張する。


ところで,工業用テレビ配線設備は,ボイラー室の監視用,排煙状況調あるいは銀行等における盗難防止用等のために設備されるようなものであり,テレビ及びカメラ以外の配線設備の部分をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「配置」による補正の基準について,「「配置」の補正は,1組1配線の配線延長の長短による工事費の相違を補正しようとするものである。」,「「分散的に配置されているもの」とは,1組1配線の長さが250m程度のものである。」,「普通のもの」とは,1組1配線の長さが180m程度のものである。」,「集中的に配置されているもの」とは,1組1配線の長さが100m程度のものである。」としているところ,これは,非木造家
-116-

屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の工業用テレビ配線設備の補正項目「配置」についての補正係数を1.20としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

そこで,
本件家屋の工業用テレビ配線設備についてみると,(甲
証拠
4)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋には,合計66組の工業用テレビ配線設備が設けられていることが認められ,本件家屋の規模が極めて大きいことに照らすと,これらは分散的に配置され相当程度の長さの配線が施されているものと推認され,他に補正係数を1.20としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「配置」の補正係数について,1.20としたことが重大な誤りであるということはできない。
なお,
原告は,
1組1配線の長さは159メートルであると主張し,
それを裏付けるものとして甲10の2を提出するところ,甲10の2は,本件家屋における工業用テレビ配線設備の配線延長数の合計を組数66で除した計算上のものにすぎず,平均的な配線延長が上記のとおりであったとしても,本件家屋の規模が極めて大きいことに照らせば,これよりもはるかに長い配線があることは容易に推測され,それにより配線工事費が増すと考えることは合理的であり,このことに,上記bの基準が「平均的な」配線の長さにより補正すべきとするものでないことも併せ考慮すると,平均的な長さが159メートルであるからといって増点補正することが誤りになることはないというべきであって,原告の上記主張は採用できない。

(イ)

補正項目

程度

一方,工業用テレビ配線設備の評価においては,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に設けられている
-117-

工業用テレビ配線設備は,金属管内配線で普通のものであり,とりたてて良いものであると評価し得るような事情はないから,増点補正をする理由はないなどと主張する。

ところで,
平成3年度評価基準解説は,
工業用テレビ配線設備の
「程
度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,配線及び仕上がりの程度の相違を補正しようとするものである。」,「「上等なもの」とは,各部材の配線工事や塗仕上げ等が特にていねいに行われているものと解してよいもの」であるとしているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の工業用テレビ配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。


そこで,本件家屋の工業用テレビ配線設備についてみると,弁論の全趣旨によれば,その配線が金属管内配線であることや屋外にも設置されていることが認められることに加え,これまでに認定したとおり,他の電気設備の施工の程度がよいことや本件家屋全体の施工の程度がよいことからすれば,完成後には目視により確認することができない工業用テレビ配線の仕上がりの程度がよいものと判断することは合理的であるというべきであって,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

(12)

建築設備(衛生設備)
給水設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち給水
設備の評価上,「設備の多少」により1.30の補正がされているとこ
-118-

ろ,原告は,本件家屋の給水設備の水栓数は,延べ床面積100平方メートル当たり約1.65個であるから,評点基準表の上限までの増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,給水設備は,飲料水,水洗用水,入浴用水あるいは洗濯,
家事用水等を家屋内の必要な箇所に分配する設備をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「設備の多少」による補正の基準について,「「設備の多少」の補正は,給水設備数の多少により,給水栓,横引給水管等の工事費に相違が生ずるため,これを補正しようとするものである。」,「「給水箇所の多いもの」とは,水栓数(カランのほか大小便器用も含む。以下同じ。)が延べ床面積100㎡当たり1.8個程度のものである。」,「「普通のもの」とは,水栓数が延べ床面積100㎡当たり1.4個程度のものである。」,「「給水箇所の少ないもの」とは,水栓数が延べ床面積100㎡当たり1個程度のものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の給水設備の補正項目「設備の多少」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の給水設備についてみると,弁論の全趣旨によれ
ば,被告の調査の結果では,本件家屋における水栓数は100平方メートル当たり1.84個程度になるのであり,原告が主張する1.65個は,食器洗機用水栓やハンドシャワー等の水栓数に含まれるべきものの数を除いたものとなっていることが認められるから,本件家屋の給水設備の給水箇所が多いものということができ,補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めることはできない。

排水設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち排水
-119-

設備の評価上,「設備の多少」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の排水設備の水栓数は,延べ床面積100平方メートル当たり約1.58個であるから,評点基準表の上限までの増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,排水設備は,建物から排泄される使用済みの水,汚水及
び雨水等をそのまま建物の外に排出する設備をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「設備の多少」による補正の基準について,「「設
備の多少」の補正は,排水を必要とする衛生器具の具体的な個数の多少による工事費の相違を考慮しようとするものである。したがって,その判定は「給水設備」における「設備の多少」の補正と同じである。」,「「排水箇所の多いもの」とは,床面積100㎡当たり手洗器,水栓便器等が1.8個程度のものである。」,「普通のもの」とは,延べ床面積100㎡当たり手洗器,水栓便器等が1.4個程度のものである。」などとしているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の排水設備の補正項目「設備の多少」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の排水設備についてみると,弁論の全趣旨によれ
ば,被告は,給水箇所と排水箇所の数がほぼ一致するとして補正を行ったこと,原告の調査によっても本件家屋における排水設備は100平方メートル当たり少なくとも1.
58個程度あることが認められるところ,
上記(イ)記載の基準によれば,100平方メートル当たりの排水設備の数が1.4個程度のものを「普通のもの」とするものとされていることに照らすと,被告が,上記のように考えて本件家屋における排水箇所が多いものとし,補正係数を評点基準表の上限である1.30としたことが不合理とはいい難いのであって,これが重大な誤りであると認めるこ
-120-

とはできない。

中央式給湯設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち中央
式給湯設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋のストレージタンクは鉄製で,内部はプレクリートライニング加工であるから,増点補正の対象とならないなどと主張する。
(イ)

ところで,
中央式給湯設備は,建物規模がある程度以上の大きさで,

給湯すべき箇所が多くかつ広範囲に及ぶような場合に設けられるもので,加熱機にボイラを用い,配管により大量に給湯する方式をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,給湯設備全体の程度をみるものであるが,具体的には,湯をつくるストレージタンクの程度によって判定するものである。」,「「上等なもの」とは,ストレージタンクがステンレス製程度のものである。」,「「普通のもの」とは,ストレージタンクがステンレス内貼り程度のものである。」,「「普通以下のもの」とは,ストレージタンクが鉄製で内面樹脂被覆程度のものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の中央式給湯設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の中央式給湯設備についてみると,証拠(甲10
の2)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の中央式給湯設備に用いられているストレージタンクの材種が鋼板製であり,内部は耐食性耐熱性に優れているとされる特殊耐食セメントで加工するプレクリート加工がされたものであることが認められ,給湯設備全体の程度がよいと判断す
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ることは不合理ではなく,補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めることはできない。

衛生器具設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち衛生
器具設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の衛生器具設備は国内メーカーの製品でごく普通のものであり,一部大型のものがあるからといって,平成3年度評点基準表の上限を超える増点補正を全体に適用する合理性はないなどと主張する。
(イ)

ところで,衛生器具設備は,水を速やかに排水設備へ流し込むため
にトイレ,洗面所,浴室,給湯室等に設備される手洗器,洗面器,水飲器,大便器,小便器,浴槽等をいい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,衛生器具の程度によって,判別するものである。」,「「上等なもの」とは,器具が輸入品程度のものである。」,「「普通のもの」とは,器具がJIS合格品程度のものである。」,「「普通以下のもの」とは,器具がJIS準用品程度のものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の衛生器具設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋の衛生器具設備についてみると,証拠(甲10の
2,乙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の衛生器具設備は,いずれも国内メーカーの製品でJIS合格品であることが認められるものの,バスタブについては,大きくて手すりのある程度の良いものが用いられていることが認められ,これまでに認定したとおり,本件家屋の
-122-

住宅部分の施工の程度が全体として良いものであることからすれば,全体として程度の良い衛生器具が用いられていたことが推測され,そのような事情を考慮して,本件家屋の衛生器具設備が上等なものであるとして,補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めることはできない。
なお,上記(イ)のとおり,平成3年度評価基準解説では,「上等なもの」とは,輸入品程度のものとしているが,輸入品でなければ増点補正ができないというものではなく,国内産であっても,標準的な衛生器具に比べて程度の良いものであれば,「上等なもの」であるとして増点補正することが許されないものではないことは明らかである。
(13)

建築設備(空調設備)
吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(空調設備)のうち吸収
式冷凍機及びパッケージエアコンディショナー2設備の評価上,いずれも「規模」による補正はされていない一方,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の延べ床面積からすれば,「規模」により0.93の減点補正がされるべきであり,また,本件家屋の空調設備は,吹き出し口が鉄製の既製品であり,配管にはめっき鋼が使われているから,「程度」による増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,空調設備のうち冷暖房設備(吸収式冷凍機は,冷房に用
いる冷熱源を作る機械で,熱的方法により圧縮を行うものである(甲27)。)に関し,評点基準表は,「規模」による補正について,延べ床面積1万平方メートル以上のものについては,0.93の減点補正をする旨定めているが,他方,補正項目全体を受けて,「部分空調の場合は,上記補正率のほかに1.25を限度とする増点補正率を用い,空調され
-123-

ている部分の「使用床面積」を計算単位とする」と定めている。この定めについて,平成3年度評価基準解説は,「部分空調の場合は,補正項目のうち「規模」補正を除く他の補正項目の補正を行って,更に1.25を限度とする割増補正を行う必要のあることを意味するもので,部分空調は全館空調の場合に比べて割高の工事費となることに着目したものであり,評価対象の実態を検討のうえ,この点を十分考慮して増点補正率を決めることが必要である。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができる。
これを本件家屋についてみると,本件家屋が部分空調であることには争いがないから,上記基準に従って「規模」による補正をしなかったことは合理的というべきである。
(ウ)

次に,冷暖房設備の「程度」による補正についてみると,平成3年
度評価基準解説は,「「程度」の補正は,空調設備全体の程度について行うものであるが,具体的な判別は吹出口の程度及びゾーニングの規模により行うものである。」,「「上等なもの」とは,銅,ステンレス等の特殊製作品による吹出口が全体の3割程度以上を占め,配管に銅管を用い,ゾーニングが1系統1200㎡程度のものである。」,「「普通のもの」とは,鉄製メラミン焼付の既製品による吹出口が6割程度を占め,ゾーニングが1系統1800㎡程度のものである。」などとしているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の冷暖房設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
そこで,本件家屋の冷暖房設備についてみると,証拠(甲10の2,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の事務所部分と住宅部分の共用廊下等に施工された吸収式冷凍機のゾーニング,すなわち
-124-

空調の調整ができるブロック区分の規模は700平方メートル程度で非常に効率的なものであること,吹出口の材質は鉄製であるものの,程度の良いものであることが認められ,さらに住宅部分の冷暖房設備は各戸に設けられており,そのゾーニングの規模は小さいものと考えられることも考慮すれば,本件家屋の冷暖房設備の程度が上等なものであると評価することは合理的であると考えられ,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,「程度」による補正係数をいずれも1.30としたことが重大な誤りであるということはできない。

換気設備2設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(空調設備)のうち換気
設備2設備(第1種換気及び第2種・3種換気)の評価上,いずれも「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の換気設備は,1系統当たりの換気面積は小さいものの,標準的な普通の設備であるから,増点補正の上限を超える補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,換気設備は,換気が空調設備や冷暖房設備とは別にダク
ト方式により行われている場合に用いられる評点項目であり
(甲27)

平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,温風暖房設備の「程度」の補正の考え方に準じて取り扱うものであり,空調設備を行わずに換気設備とあわせて排煙設備が施設される場合には,補正項目「程度」において1.3程度の増点補正を行うことが必要であるとし,温風暖房設備の「程度」の補正については,空調設備の「程度」の補正の場合と同様の考え方であるとされている。
(ウ)

そこで,本件家屋の換気設備についてみると,弁論の全趣旨によれ
ば,本件家屋の換気設備には,排煙設備が設置されていることが認めら
-125-

れるから,「程度」についての補正係数を1.30としたことが重大な誤りとはいえない。
なお,原告は,本件再調査の結果には,本件換気設備のうち,第2種換気の換気設備の設置床面積に誤りがある旨主張し,それに沿う甲10の2を提出する。しかし,証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば,本件再調査においては,1棟の延べ床面積から第1種換気の換気設備が施工されている部分の床面積を除いたものを第2種又は第3種換気の換気設備が施工されているとして設置床面積を求めたものであることが認められるところ,本件家屋の事務所,共同住宅,店舗,駐車場等の全ての部分に換気が施工されているとしてこのような算出をしたことは,重大な誤りとはいえない。

レンジフードファン
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(空調設備)のうちレン
ジフードファンの評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋のレンジフードファンは,64.8センチメートル幅程度の手動,浅型のものであるから,増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,レンジフードファンは,台所のコンロ上部に設置され,
箱形の覆いと換気扇を一体化した換気設備であるところ,平成3年度評価基準及び平成3年度評価基準解説の非木造家屋の「事務所・店舗・百貨店用建物」に係る部分には記載がないが,証拠(乙19,34)及び弁論の全趣旨によれば,これは,レンジフードファンは,一般には住宅用設備であって,事務所・店舗・百貨店用建物の設備ではないために評点項目としての設定がないためであること,したがって,本件再調査では,木造家屋の専用普通建に係る評価基準において評点項目として設定されている「レンジフードファン」の標準評点数を転用していること,
-126-

当該評点項目には,補正項目として「施工の程度」が設けられていること,レンジフードファンが木造家屋の評点項目として追加されたのは昭和63基準年度であり,その際には,自治省税務局固定資産税課が,60センチメートル幅程度で手動型で浅型のものを標準としており,深型のものについては1.20程度補正して差し支えない旨の解説をしていたことが認められる。
(ウ)

そして,本件家屋のレンジフードファンについてみると,証拠(甲
10の1)及び弁論の全趣旨によれば,設置幅が90センチメートル,深さが64.8センチメートルの手動型のものであることが認められるから,上記(イ)に照らせば,設置幅が大きく,深型のものとして,施工の程度が良いと評価することができる。この点,原告は,設置幅が64.8センチメートルである旨の主張をするが,上記認定したところと異なるもので採用できない。したがって,レンジフードファンの「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが重大な誤りとはいえない。
(14)

建築設備(防災設備)のうちスプリンクラー設備
本件家屋については,建築当初の建築設備(防災設備)のうちスプリンクラー設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋のスプリンクラー設備は,自動起動式エンジンのものではあるが,配管の防露はないから,平成3年度評点基準表の上限を超える増点補正をする理由はないなどと主張する。


ところで,スプリンクラー設備は,火災が発生した場合に天井面等に取り付けてあるスプリンクラーヘッドの感熱部分が分解又は破壊して飛散し開口すると,常に加圧されている配管内の水が噴出し,その時の圧力の変動,流水等により圧力スイッチ,アラーム・スイッチ又は流水作動弁等が作動し,ポンプ等の加圧送水装置が自動的に運転し水源の水が送られ,ス
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プリンクラーヘッドから連続放水して消火するものであるところ(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,スプリンクラー設備における配管の防露の有無及びエンジンの作動方法の違いによる工事費の相違を補正するものである。」,
「「上等なもの」とは,配管に防露があって,エンジンが自動起動式エンジン程度のものである。」,「「普通のもの」とは,配管に防露がなく,エンジンが自動起動式エンジン程度のものである。」などととしているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋のスプリンクラー設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

そこで,本件家屋のスプリンクラー設備についてみると,弁論の全趣旨によれば,本件家屋のスプリンクラー設備について,防露加工はされていないものの,自動起動式エンジンであること,設備が複雑で高額な予作動式になっていることが認められ,上記イの基準が,配管に防露があって自動起動式エンジンのもののみを「上等なもの」とするというものではないことも考慮すると,補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めることはできない。

(15)

建築設備(運搬設備)
エレベーター設備(乗用エレベーター・乗用荷物用エレベーター)(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(防災設備)のうちエレ
ベーター設備(合計11設備)の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋のエレベーターは,1階及び2階以外のフロアの出入口周りは鋼板製であるから,平成3年度評点基準表の上限を超える増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)

ところで,エレベーターとは,固定の専用昇降路線内に設けられた
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レールに沿って動力により昇降するかごを有し,それによって人又は物を上下に運搬する設備であり(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「上等なもの」とは,かご室,かご扉,出入口まわりにステンレス,真鍮ブロンズを多用し,床にゴムマット,ゴムタイル等が用いられ,扉等の全体にデラックスなものである。」,「「普通のもの」とは,かご室,かご扉,出入口回りが鋼製エナメル焼付で,鋼板製の床で全体として中程度のものである。」などとされているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,
本件家屋のエレベーター設備の補正項目
「程
度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋のエレベーター設備についてみると,証拠(甲1
1の5,乙11)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の各エレベーターのかご室,かご扉及び出入口周りにステンレス等が多用されたものであることが認められ,1階及び2階以外のフロアについては鋼板のものも用いられているものの,
全体として高級なものといえ,
補正係数を1.
30としたことが重大な誤りであると認めることはできない。
なお,被告は,本件家屋のエレベーターに非停止階が多く設けられているから,補正項目「程度」による補正の適否を考慮するに当たっては,補正項目「着床数」で補正されない昇降行程の長さも理由となる旨の主張をするが,証拠(甲11の5)によれば,本件家屋に設置されているエレベーターには,非停止階があるエレベーターとそれがないエレベーターがあることが認められるところ,証拠(甲4)によれば,本件再調査の結果においては,これらによって補正係数に違いを設けることなく一律1.30を適用していることが認められるから,被告の上記主張を直ちに採用することはできない。

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エスカレーター設備
(ア)

本件家屋については,建築当初の建築設備(防災設備)のうちエス
カレーター設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋のエスカレーターについては,平成3年度評点基準表の上限を超える増点補正をする理由はないなどと主張する。(イ)

ところで,エスカレーターとは,一定の方向に移動する傾斜階段に
よって循環的に人又は荷物を連続的に運搬する設備で百貨店等において多数の人又は荷物を一方向に運搬する場合に設置されるものであり(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「上等なもの」とは,外側板及びデッキボードにステンレス板又は真鍮板が用いられている程度のものである。」,「「普通のもの」とは,外側板に鉄板が用いられ,デッキボードにアルミニウム板が用いられている程度のものである。」などとされているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋のエスカレーター設備の補正項目
「程度」
についての補正係数を1.
30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)

そこで,本件家屋のエスカレーター設備についてみると,証拠(乙
11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋のエスカレーター設備は,1階の吹き抜け部分に施工された特注品であること,外側板やデッキボードはステンレスで仕上げられていることが認められるから,程度のよいものということができ,補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めることはできない。
(16)

仮設工事
本件家屋については,建築当初の仮設工事の評価上,「工事の難易」により1.50の補正がされているところ,原告は,本件家屋の仮設工事に
-130-

ついては,平成3年度評点基準表の上限を超える増点補正をする理由はないと主張する。

ところで,部分別「仮設工事」の内容は,建物を建築する場合に必要とされる敷地の仮囲,水盛り,遣方,足場等の準備工事又は工事中の保安のために必要とされる仮設工事部分の工事費に相当する部分をいい
(甲27,
乙15),平成3年度評価基準解説は,「工事の難易」による補正の基準について,「個々の建物の構造,規模等を基準に,建物の周囲の状況及び交通の便否等によって,仮設工事を多く必要とするかどうかによって行おうとするもので,補正係数は,建物の建築に際して困難を伴う地域にあるかどうか,すなわち,建物の敷地に余裕があるかどうか,建床面積に比し高層である建物であるかどうか等の各種の状況を総合的に判断して決定することとなる。一般に高層ビル街の限られた地域に敷地一杯に高層(10階程度)の建物が建築され,または,交通の頻繁な地域に建築される場合等その建物の工事に最も困難が伴う場合には1.
5の増点補正率を適用し,
反対に最も安易に工事が施工される条件にある場合に0.7の減点補正率を適用するものとして補正係数を示されているので,個々の建物の評価に当たっては,これを基準とし,その状況を総合的に判断して,この範囲内において相当とする補正係数を決定しなければならないものである。」とされているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の仮設工事の補正項目「工事の難易」についての補正係数を1.50としたことが,
重大な誤りであるか否かも,
上記基準に照らして判断するのが相当である。


そこで,本件家屋に係る仮設工事の難易についてみると,本件家屋は地上30階建ての高層ビルであるところ,証拠(甲10の2,19の1,乙12,17)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の敷地の空地率は,建築面積との関係では,地下工事段階で約35パーセント,地上工事段階で
-131-

約60パーセントあるものの,地下部分の大規模な駐車場を利用するためのスロープ部分や空堀が設けられていることが認められ,これらの事情に照らせば,空地部分の全てが工事のために利用できるものではなく,敷地一杯に建築されるものと類似した状況にあるものと考えられる。そして,前記(2)イ(ウ)のとおり,本件家屋がα地区の建物密集地域にあって,周辺の交通量も多いと考えられることも考慮すると,
本件家屋の仮設工事には,
相当な困難を伴うもので,これに要する工事費も標準的な家屋よりかなり多額となると考えることも何ら不合理ではないというべきである。したがって,補正係数を評点基準表の上限である1.50としたことが重大な誤りであると認めることはできない。
これに対し,原告は,仮設工事の難易に大きな影響を及ぼすのは敷地に余裕のない状況における前面道路の交通量だけであり,本件家屋の前面道路は交通量が多くないから増点補正の要因とならない旨主張するが,前面道路の交通量だけではなく,周辺道路全般の交通量も建築工事の難易に影響を及ぼすものであると考えることは何ら不合理ではないから,原告の上記主張は採用できない。
(17)

その他の工事
本件家屋については,建築当初のその他の工事の評価上,「工事の多少」により20.00の補正がされているところ,原告は,本件家屋のその他の工事については,平成3年度評点基準表の上限を大幅に超える増点補正をする理由はないと主張する。


ところで,部分別「その他の工事」の内容は,評点基準表における部分別「主体構造部」から「仮設工事」までの各部分別の内容に含まれていない部分の木工事,金属工事その他の雑工事部分の工事費に相当する部分をいい,その主なものには,床間,敷居,鴨居,長押等の造作工事等といった木工事や樋,棚,鉄製階段,鉄製手すり,窓格子等といった金属工事が
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ある。そして,平成3年度評価基準解説は,その他の工事の補正について,「「その他の行為」の標準評点数は,各用途別に定められた標準的な非木造家屋の当該部分の工事の施工状況を基礎として定められているものであるから,この状況と異なる状況によって「その他の工事」が施工されている場合は,その相違を基準として補正を行うこととなるものである。」とされているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋のその他の工事の補正項目「工事の多少」についての補正係数を20.00としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。

証拠(甲4)によれば,本件再調査においては,本件家屋の「その他の工事」の「工事の多少」については,実際に生じた他の部分別の内容に含まれない部分の工事費を勘案し,具体的には,雑鉄骨工事,外部鉄骨階段工事,仕上げ雑工事及び設備基礎工事など部分別「主体構造部」から「仮設工事」までの各部分別の内容に含まれない工事に係る工事費(本件家屋にあっては延べ床面積1平方メートル当たり4万2591円)を基礎として,補正係数の上限を上回る20.00の増点補正率を付設したことが認められる。
そして,前記1(3)のとおり,再建築費評点数は,家屋の基準年度における適正な時価を算出するために求められるものであるところ,実際に要した工事費用は,工事業者や注文者の個別事情等によって左右されることがあるため,これをそのまま用いることは適当とはいえない。他方で,多種多様な資材を用いるなどしてされる建築工事の全ての適正な時価を,標準的な工事費を基準に定められた標準評点数のみによって算出することは困難であるといわざるを得ず,このような場合に適正な時価を算出するための評点数を付設するために,補正項目が設けられているのであるから,補正係数を決定するに当たり,
実際の工事に要した費用を参考にすることも,

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それが個別事情により適正な時価の算定を困難にする場合でない限り,妨げられるものではないというのが相当である。そして,これまでに述べたとおり,本件家屋が複雑な構造,複雑な用途の高層ビルで,工事の範囲も大きく,また,全体としての普請の程度もよいことからすると,その他の工事に要した費用を評価額に適切に反映させるために,実際の費用を参考にすることも合理的であるというのが相当である。そうすると,本件家屋の「その他の工事」の「工事の多少」について,実際の工事費を参考にして,20.00の補正係数を付設したことが,重大な誤りであるということはできない。
この点について,原告は,本件再調査において「その他の工事」に該当するとされたもの(別紙4)には,「主体構造部」から「仮設工事」までの部分別工事に該当するものか,そうでなくても一般的に施工されるものであるから,これらを「工事の多少」において考慮することはできない旨の主張をするが,原告が主張する各工事が「主体構造部」から「仮設工事」までの部分別工事で評価されているものであることを認めるに足りる証拠はなく,これを採用することはできない。
(18)

まとめ
以上のとおり,建築当初の部分別評価を個別に検討しても,本件再調査に
おいて付設された補正係数はいずれも重大な誤りであるということはできず,他に,本件家屋の建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明し,又は,当該評価の誤りが重大で,それを基礎に本件家屋の平成18年度価格の評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認めるに足りる証拠はない。
なお,原告は,原告が所有する他の建物と比較すると,本件家屋の部分別評価に当たって適用された補正係数は高すぎる旨の主張をするが,その比較対象とした建物は,いずれも建築時期や建築場所等が異なるものであって,
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これらとの比較をもって本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が誤りであるということはできないというべきである。
3
小括
そうすると,建築当初の評価の誤りにより本件家屋の平成18年度価格の評価に誤りがあるとは認められず,他に,本件家屋の平成18年度価格が適正な時価であることの推認を妨げるべき事情を認めるに足りる証拠は存在しないから,本件家屋の平成18年度価格は適正な時価であると認められる。
第4

結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第38部

裁判長裁判官

定塚
裁判官

小林邦夫
裁判官

澤村智子
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