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所得税決定処分取消等請求事件(第1事件)、源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第2事件)、市民税及び県民税賦課決定処分取消等請求(第3事件)
事件番号平成21(行ウ)310等
事件名所得税決定処分取消等請求事件(第1事件),源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第2事件),市民税及び県民税賦課決定処分取消等請求(第3事件)
裁判年月日平成25年5月30日
法廷名東京地方裁判所
判示事項1 所得税法2条1項3号所定の日本の居住者であったか否かが判断された事例
2 原告が所得税法2条1項4号所定の「国内に永住する意思がなく」という非永住者の要件を満たしていたということができるとされた事例
裁判要旨1 所得税法は,日本の居住者を判定する際の要件となる「住所」の意義について明文規定を置いていないところ,「住所」とは,反対の解釈をすべき特段の事由がない以上,生活の本拠により決すべきであると解され,生活の本拠たる実体を具備しているか否かを判断する際には,①その者の所在,②職業,③生計を一にする配偶者その他の親族の居所,④資産の所在等の客観的事実に基づき総合的に判定すべきであり,これに対し,主観的な居住の意思は,客観的な居住の事実に具体化されていることが通常であるため,生活の本拠の判定において無関係であるとはいえないが,居住の意思は必ずしも常に存在するものではなく,しかも,外部から認識し難い場合が多いことによれば,補充的な考慮要素にとどまるというべきであるとした事例
2 ①昭和57年に妻及び長男と共に渡米し,米国内の土地及び建物を29万米国ドルで購入し,米国での生活を長年にわたり続けたこと,②妻との間には長男のほかに3人の子供がいるところ,これら4人の子供は,いずれも保育園入園時から米国内の公立学校での教育を受け,母国語は英語で,日本語の能力は十分なものとはいえないこと,③平成11年に家族と共に米国の永住権を取得したこと,④各課税年当時,米国の医療保険に加入していた一方,日本の国民健康保険は自らの意思で加入を中止していたこと,⑤各課税年当時,米国の自動車運転免許を所持していた一方,日本の自動車運転免許は所持していなかったこと,⑥各課税年以前から米国の確定拠出型の企業年金に加入しており,平成25年中には受給資格を取得する見込みであること,⑦平成15年に米国に土地・建物を購入しているところ,その取得費用はいずれも多額である上,同建物は大規模なものであること,⑧同年ころ,愛知県内にあった父の墓を米国内に移築するために東海市に返還したことがいずれも認められることを総合考慮すると平成14年ないし平成17年の課税年中において所得税法2条1項4号所定の「国内に永住する意思がなく」という非永住者の要件を満たしていたということができるとした事例
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平成25年5月30日判決言渡
平成21(行ウ)第310号

所得税決定処分取消等請求事件(第1事件)

平成21年(行ウ)第316号
平成22年(行ウ)第60号

源泉所得税納税告知処分取消等請求事件
(第2事件)
市民税及び県民税賦課決定処分取消等請求(第3事件)

主1文
原告P1の被告国に対する請求について(第1事件関係)
(1)別紙1「却下部分目録」記載の訴えを却下する。
(2)別紙2「取消対象処分目録」記載1ないし4の各処分をいずれも取り消す。
(3)原告P1の被告国に対するその余の請求を棄却する。

2
原告会社の被告国に対する請求について(第2事件関係)
原告会社の被告国に対する請求をいずれも棄却する。

3
原告P1の被告川口市に対する請求について(第3事件関係)
(1)別紙3「取消対象処分目録」記載1ないし4の各処分をいずれも取り消す。
(2)原告P1の被告川口市に対するその余の請求を棄却する。

4
訴訟費用については,①

原告P1に生じた費用の5分の1,被告国に

生じた費用の10分の1,被告川口市に生じた費用の3分の1を原告P1の負担と,②

原告会社に生じた費用と被告国に生じた費用の10分の3

を原告会社の負担と,③

原告P1に生じた費用の5分の3と被告国に生

じた費用の10分の6を被告国の負担とし,④

原告P1に生じた費用の

5分の1と被告川口市に生じた費用の3分の2を被告川口市の負担とする。
事実及び理由
第1

請求

-1-

1
第1事件
(1)西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成14年分の所得税に係る決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び無申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。(2)西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成15年分の所得税に係る更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。(3)西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成16年分の所得税に係る決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び無申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。(4)西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成17年分の所得税に係る決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び無申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
2
第2事件
西川口税務署長が平成18年12月15日付けで原告会社に対してした平成14年1月から同年12月まで及び平成16年1月から平成18年3月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,平成24年11月15日付け各減額賦課決定処分による変更後のもの)をいずれも取り消す。

3
第3事件
(1)川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成15年度分の市民税及び県民税に係る決定処分(ただし,平成25年
-2-

3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
(2)川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成16年度分の市民税及び県民税に係る決定処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
(3)川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成17年度分の市民税及び県民税の決定処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
(4)川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成18年度分の市民税及び県民税に係る決定処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
(5)川口市長が平成21年2月23日付けで原告P1に対してした原告P1の平成15年度分の市民税及び県民税に係る督促処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
(6)川口市長が平成21年2月23日付けで原告P1に対してした原告P1の平成16年度分の市民税及び県民税に係る督促処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
(7)川口市長が平成21年2月23日付けで原告P1に対してした原告P1の平成17年度分の市民税及び県民税に係る督促処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。

-3-

(8)川口市長が平成21年2月23日付けで原告P1に対してした原告P1の平成18年度分の市民税及び県民税に係る督促処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
第2

事案の概要
第1事件は,原告P1が,平成14年ないし平成17年の各年分の所得税に
ついて,西川口税務署長から,所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)2条1項3号所定の居住者(以下「日本の居住者」という。)に該当することなどを理由として,①

所得税の確定申告をしていな

かった平成14年,平成16年及び平成17年の各年分については所得税の各決定処分(以下「本件各所得税決定処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分を,②

確定申告をしていた平成15年分については所得税の更正

処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことに対し,上記各年(以下「本件各課税年」という。)において原告P1は同項5号所定の非居住者(以下「日本の非居住者」という。)であったし,仮に日本の居住者であったとしても,同項4号所定の非永住者(以下「日本の非永住者」という。)であったから,原告P1が日本の居住者で,かつ,日本の非永住者に当たらないことを前提にされた上記各課税処分(以下「本件各所得税課税処分」という。)はいずれも違法である上,原告P1の所得の算定にも誤りがあるなどと主張し,西川口税務署長が所属する国を被告として,本件各所得税課税処分の取消しを求めている事案である。
第2事件は,原告会社が,平成14年1月から同年12月まで及び平成16年1月から平成18年3月までの間に原告P1に対して支払った役員報酬や配当等につき源泉所得税の徴収及び納付をしたところ,西川口税務署長から,原告会社がした上記の各源泉徴収には原告P1を日本の非居住者としてされた誤りがあるとして源泉所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処
-4-

分(これらの処分を,以下「本件各源泉所得税課税処分」という。)を受けたことに対し,原告P1は本件各課税年において日本の非居住者であったから,原告P1が日本の非居住者に当たらないことを前提としてされた本件各源泉所得税課税処分はいずれも違法であるなどと主張し,西川口税務署長が所属する国を被告として,
本件各源泉所得税課税処分の取消しを求めている事案である。
第3事件は,原告P1が,川口市長から,平成15年度分ないし平成18年度分の市民税及び県民税(以下「住民税」という。)の各賦課決定処分(以下「本件各住民税賦課決定処分」という。)及び各督促処分(以下「本件各住民税督促処分」といい,本件各住民税賦課決定処分と併せて,以下「本件各住民税関係処分」という。)を受けたことに対し,原告P1は米国の居住者であり住民税の納付義務を負っていないから,本件各住民税関係処分は違法であるなどと主張し,川口市長が所属する川口市を被告として,本件各住民税関係処分の取消しを求めている事案である。
1
法令の定め
本件に関係する法令の定めは,別紙4「関係法令の定め」のとおりである。なお,事案の概要に記載したとおり,第1事件及び第2事件においては,原告P1が本件各課税年において日本の居住者であったか否かが問題となっているところ,所得税法は,納税義務者を居住者,非居住者等の類型に分けて,そのそれぞれについて課税所得の範囲等を定めている。すなわち,同法によれば,①

居住者(国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を
有する個人をいう(2条1項3号)。)は,その源泉が国内にあるか国外にあるかを問わず,すべての所得について納税義務を負う(5条1項,7条1項1号)とされているのに対し,②

非永住者(居住者のうち,国内に永住する意

思がなく,かつ,現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人をいう(2条1項4号)。)は,国内源泉所得(所得税法161条)及びこれ以外の所得で国内において支払われ,又は国外から送金されたものに
-5-

ついてのみ納税義務を負うとされ(5条1項,7条1項2号。以下「国内源泉所得等」
という。,
)③

非居住者
(居住者以外の個人をいう
(2条1項5号))


は,国内源泉所得(161条)を有するときに限り,納税義務を負うとされている(5条2項,7条1項3号)。
2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨
により容易に認められる事実)
(1)当事者等

原告P1及びその家族

(ア)原告P1は,昭和▲年▲月▲日生まれの男性である。原告P1は,本件各課税年において,原告会社のほか,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)ニューヨーク州所在のP2,Inc.(以下「P2社」という。),株式会社P3(以下「P3」という。)及びP4株式会社(以下「P4社」という。)の各代表取締役を務めていた。
(イ)原告P1は,
昭和57年に妻P5及び長男P6
(昭和▲年▲月▲日生。

と共に渡米し,米国ニュージャージー州(以下「米国NJ州」という。)オールドタッパンに土地・建物(以下「米国NJ州家屋」という。)を購入し,同地での生活を開始した。(甲27の1ないし甲27の6,甲60,63,164,原告P1本人[16頁])
(ウ)原告P1と妻P5の間には,長男P6のほか,次男P7(昭和▲年▲月▲日生。),長女P8(昭和▲年▲月▲日生。),次女P9(平成▲年▲月▲日生。)がいる(妻P5及び4人の子供を併せて,以下「本件家族」という。)。
(エ)原告P1,妻P5,長男P6,次男P7及び長女P8は,平成11年8月18日,それぞれ米国の永住権を取得した。なお,次女P9は,米国で誕生したため,米国の国籍を有している。(甲7,10ないし13)イ
原告会社

-6-

(ア)原告会社は,
電子機器,
電気機器及びコンピューター周辺機器の設計,
開発,製造及び販売等を目的とする株式会社P10(以下「P10」という。)上場(平成16年12月株式上場)の株式会社であり,原告会社のグループは,原告会社,原告会社が100%出資する海外販売子会社2社及び欧州にある子会社(P11社)の100%出資に係る販売子会社8社の11社により構成されている。(乙23,26)
(イ)原告P1は,昭和53年2月,原告会社の代表取締役社長に就任し,平成9年2月から平成13年12月10日までの間は原告会社の代表取締役会長を務め,同月11日に再度,原告会社の代表取締役社長に就任し,現在に至っている。(乙26[4枚目])

P3
P3は,発行済株式総数1000株のうち,原告P1が710株,妻P
5が290株をそれぞれ保有し,原告P1の資産を保有管理することを主な目的とする株式会社である。(乙20ないし22,26,原告P1本人[50頁])
(2)原告P1の日本での居住状況等

本件各課税年における原告P1の日本での出入国の状況は別紙5「原告
P1の日本での出入国の状況」,国内外での滞在日数の状況は別紙6「原告P1の国内外での滞在日数」各記載のとおりである。(乙24の1及び乙24の2)
イ(ア)原告P1は,昭和53年11月30日から平成15年2月25日までは,
妻P5と共同で川口市α×番地の1
(以下
「本件旧肩書地」
という。

に木造セメント瓦葺2階建ての建物(以下「本件旧家屋」という。)を所有し,別紙7「原告P1の住民登録状況一覧」の1及び3の各期間につき,本件旧肩書地に住民登録をしていた。(乙7,8)
(イ)また,原告P1は,平成15年1月21日頃から現在まで,P3名義
-7-

で川口市β×番11号(以下「本件肩書地」という。)に木造2階建ての建物(以下「本件家屋」という。)を所有し,別紙7「原告P1の住民登録状況一覧」の順号4,6,8,10,12及び14の各期間につき,本件肩書地に住民登録をしていた。(乙7,8,50,弁論の全趣旨)
(3)原告P1による別紙8「物件目録」(以下「本件物件目録」という。)記載の各土地(以下「本件各土地」という。)の取得及び譲渡

本件物件目録記載1(1)ないし(4)の各土地(これらの土地を併せて,以
下「本件A土地」という。)について
(ア)本件A土地の取得
原告P1は,昭和53年10月10日付けの土地付建物売買契約(以下「本件A53土地等売買」といい,その契約書を,「本件A53土地等売買契約書」という。)により,有限会社P12(以下「P12」という。)から,本件物件目録記載1(1)及び(2)の各土地(以下「本件A53土地」という。)及び同土地上の建物(以下「本件A建物」という。)を代金1630万円で購入した(ただし,本件物件目録記載1(1)の土地についてはP13から,同(2)の土地についてはP14から,いずれも同年11月2日付け売買を原因として原告P1への所有権移転登記がされている。)。(甲17,20,41の1)
また,原告P1は,昭和55年2月7日,P13から,本件物件目録1(3)及び(4)の各土地(以下「本件A55土地」という。)を購入した。(甲18,19)
なお,本件A土地の譲渡所得の計算に当たり,本件A55土地の取得価額を66万0660円とすること(1坪当たりの単価を原告P1の記憶に基づき40万円として計算すること)は当事者間に争いがない。(イ)本件A土地の譲渡

-8-

原告P1は,平成17年9月14日,株式会社P15(以下「P15」という。)に対し,代金を1234万9696円(未経過固定資産税として原告P1が受領した1万8696円を含む。)として,本件A土地を譲渡した。(乙3,4)

本件物件目録記載2(1)の土地(以下「本件B土地」という。)及び同(2)
の土地(以下「本件C土地」という。)について
(ア)本件B土地及び本件C土地(以下「本件B土地等」という。)の取得原告P1は,
昭和55年2月7日,
P14から本件B土地を購入した。
(甲21,59の1及び甲59の2)
本件B土地の譲渡所得の計算に当たって,本件B土地の取得価額を2444万2000円とすること(1坪当たりの単価を原告P1の記憶に基づき40万円として計算すること)は当事者間に争いがない。また,原告P1が平成15年2月5日付けで225万9110円を支出して本件C土地を取得したことも当事者間に争いがない。
(イ)本件B土地等の譲渡
原告P1は,平成17年10月19日,P16に対し,売買代金を4054万6558円(未経過固定資産税として原告P1が受領した3万0558円を含む。)として,本件B土地等を譲渡した。(乙5,6の1及び乙6の2)
なお,上記売買代金のうち,本件B土地分の譲渡価額を3243万3009円とし,本件C土地分の譲渡価額を811万3549円とすることは当事者間に争いがない。
(4)原告P1がP3に対してしたオルゴールその他の自動演奏機械(以下「オルゴール等」という。)の譲渡

平成14年譲渡分
原告P1は,平成14年5月5日,P3に対し,売買代金を2億669
-9-

5万3050円(206万7000米国ドル)として,原告P1所有のオルゴール等87台(以下「平成14年譲渡オルゴール等」という。)を譲渡した。(乙76)

平成15年譲渡分
原告P1は,平成15年5月1日,P3に対し,売買代金を4215万
円として,原告P1所有のオルゴール等43台(以下「平成15年譲渡オルゴール等」といい,平成14年譲渡オルゴール等と併せて,以下「本件オルゴール等」という。)を譲渡した。
(5)原告会社等による原告P1に対する役員報酬の支払

原告会社は,原告P1に対し,①

550万8000円,②

平成14年及び平成15年には各3

平成16年には6513万9111円,③


成17年には7402万8000円の各役員報酬(以下「原告会社役員報酬」という。)を支払った。

P2社は,原告P1に対し,①

ル,②

平成14年には19万9999米国ド

平成15年には18万7999米国ドル,③

9万9120米国ドル,③

平成16年には1

平成17年には19万5539米国ドルの各

役員報酬(以下「P2社役員報酬」という。)を支払った。
(6)P3に対する貸付金に係る受取利子(乙1[9枚目],2[13枚目],20[3枚目],21[3枚目])

原告P1は,P3に対して貸付けをしていたところ,平成14年には2
37万8958円,平成15年には388万1587円,平成16年には410万1974円,平成17年には494万8820円の利子をそれぞれ受領した。

原告P1は,上記アの貸付けを行うため,金融機関から金銭の借入れを
していたところ,当該借入金の支払利子の金額は,平成14年は166万1238円,平成15年は232万3017円,平成16年は416万8
-10-

210円,平成17年は340万3679円であった。
(7)原告会社による源泉徴収等
原告会社は,原告P1に対して支払った平成14年1月から同年12月まで及び平成16年1月から平成18年3月までの各月分の各役員報酬並びに平成16年2月分及び平成17年2月分の各配当については,原告P1を日本の非居住者として源泉所得税を徴収し,平成15年1月から同年12月までの各月分の各役員報酬及び同年2月分の配当については,原告P1を日本の居住者として源泉所得税を徴収した。
(8)課税処分の経緯等

原告P1に対する課税処分の経緯等

(ア)原告P1は,
平成16年3月15日,
平成15年分の所得税について,
総所得金額を3289万1030円,給与所得の金額を3203万2600円,一時所得の金額を85万8430円,納付すべき税額を6万2200円とする確定申告書(以下「平成15年分確定申告書」という。)を提出して法定申告期限までに申告(以下「平成15年分確定申告」という。)をした。(乙43)
(イ)原告P1は,平成14年分,平成16年分及び平成17年分の所得税については,確定申告書を提出しなかった。
(ウ)西川口税務署長が原告P1に対してした本件各所得税課税処分の経緯等は,別表1「本件各所得税課税処分の経緯等(平成14年分所得税)」ないし別表4「本件各所得税課税処分の経緯等(平成17年分所得税)」各記載のとおりである。なお,本件各所得税課税処分につき,平成25年2月8日付けでそれぞれ減額更正処分及び無申告加算税又は過少申告加算税の変更決定処分がされているが,これらの処分を以下「本件第4減額更正処分等」という。)

原告会社に対する課税処分の経緯等

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西川口税務署長が平成18年12月15日付けで原告会社に対してした平成14年1月分ないし同年12月分及び平成16年1月分ないし平成18年3月分までの各月分の源泉所得税の納税告知処分(以下「本件納税告知処分」という。)及び不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件原告会社賦課決定処分」という。)の経緯等は,別表5「本件各源泉所得税課税処分の経緯等」記載のとおりである。

被告川口市による課税処分の経緯等

(ア)川口市長は,平成16年6月1日,原告P1に対し,原告P1が提出した平成15年分確定申告書に基づき,平成16年度分の住民税の賦課決定処分をし,同日,賦課決定通知を原告P1に発送した。
(イ)川口市長は,平成16年8月9日,原告P1に対する平成16年度分住民税の賦課決定処分を取り消した(以下,この取消処分を「本件住民税賦課決定取消処分」という。)。
(ウ)川口市長は,平成20年12月3日,以下のとおり,原告P1の平成15年度分ないし平成18年度分に係る住民税の各賦課決定処分(本件各住民税賦課決定処分)をした。(甲35ないし38)


平成15年度分

課税総所得:1億8456万5000円
年税額:2361万4300円



平成16年度分

課税総所得:7488万6000円
年税額:935万6500円



平成17年度分

課税総所得:8217万円
年税額:1030万3400円



平成18年度分

課税総所得(総合):7億6535万7000円
分離短期:585万4000円
分離長期:4254万3000円
年税額:1億0179万1800円

-12-

(エ)川口市長は,平成21年2月23日付けで,原告P1に対し,原告P1の平成15年度分ないし平成18年度分に係る住民税の各督促処分(本件各住民税督促処分)をした。(甲40)
(オ)川口市長は,原告P1の平成15年度分,平成17年度分及び平成18年度分の住民税に関し,平成21年12月24日付けで,以下の内容の変更決定処分をした。(丙1ないし3)


平成15年度分

課税総所得:1億8271万3000円
年税額:2337万3500円



平成17年度分

課税総所得:8090万円
年税額:1013万8300円



平成18年度分

課税総所得:7億6111万8000円
年税額:1億0124万0700円

(カ)川口市長は,平成24年8月6日,平成18年度分の課税標準額のうち分離長期所得を4254万3000円から3223万4000円に,年税額を1億0124万0700円から1億0072万5300円に変更すること等を内容とする決定をした。(丙66)
(キ)川口市長は,平成24年11月20日,平成18年度分の課税標準額のうち分離長期所得を3223万4000円から879万7000円に,年税額を1億0072万5300円から9953万3400円に変更すること等を内容とする決定をした。(丙67)
(ク)川口市長は,平成25年3月14日付けで,以下とおり,平成15年度分ないし平成18年度分に係る住民税の変更決定処分(以下「平成25年3月14日付け住民税変更決定処分」という。)をした。(丙69ないし72)


平成15年度分
市民税の所得割額が1797万7300円から1383万6700
-13-

円に,県民税の所得割額が539万2700円から415万0600円に変更された。(丙69)


平成16年度分
市民税の所得割額が719万4600円から652万0600円に,
県民税の所得割額が215万7900円から195万5700円に変更された。(丙70)


平成17年度分
市民税の所得割額が779万6000円から775万1000円に,
県民税の所得割額が233万8300円から232万4800円に変更された。(丙71)


平成18年度分
市民税の所得割額が7648万3500円から7645万0500
円に,県民税の所得割額が2306万5900円から2305万6000円に変更された。(丙72)
(9)被告国の主張する課税処分の根拠

被告国が本件訴訟において主張する本件各所得税課税処分の根拠及び適法性は,別紙9「本件各所得税課税処分の根拠及び適法性」記載のとおりである。


被告国が本件訴訟において主張する本件各源泉所得税課税処分の根拠及び適法性は,別紙10「本件各源泉所得税課税処分の根拠及び適法性」記載のとおりである。なお,原告会社が新たに納付すべきと被告国が主張する源泉所得税の額及び不納付加算税の額は別表6「本件係争月分の源泉徴収すべき所得税額等」記載のとおりである。

(10)本件各訴えの提起等

原告P1による不服申立て

(ア)原告P1は,平成19年2月13日,西川口税務署長に対し,本件各
-14-

所得税課税処分を不服として異議申立てをしたが,西川口税務署長は,平成19年5月9日付けで,棄却の異議決定をした。(甲6)
(イ)原告P1は,平成19年6月8日,国税不服審判所長に対し,上記(ア)の異議決定を経た後の処分に不服があるとして審査請求をした。これに対し,国税不服審判所長は,平成20年12月25日付けで,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲6)
(ウ)原告P1は,平成21年3月6日付けで,川口市長に対し,本件各住民税賦課決定処分を不服として異議申立てをした。これに対し,川口市長は,
平成21年6月23日付けで,
棄却の異議決定をした。(甲39,
弁論の全趣旨)
(エ)原告P1は,平成21年4月1日付けで,川口市長に対し,本件各住民税督促処分を不服として異議申立てをした。
これに対し,
川口市長は,
同年6月23日付けで,棄却の異議決定をした。(甲40,弁論の全趣旨)

原告会社による不服申立て

(ア)原告会社は,平成19年2月13日,西川口税務署長に対し,本件各源泉所得税課税処分を不服として異議申立てをした。これに対し,西川口税務署長は,
平成19年5月9日付けで,棄却の異議決定をした。
(甲
25)
(イ)原告会社は,平成19年6月8日,国税不服審判所長に対し,上記(ア)の異議決定を経た後の処分に不服があるとして審査請求をした。これに対し,国税不服審判所長は,平成20年12月25日付けで,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲25)

本件各訴えの提起
原告らは,平成21年6月19日,第1事件及び第2事件に係る各訴え
を当庁に提起した。また,原告P1は,平成21年12月15日,第3事
-15-

件に係る訴えをさいたま地方裁判所に提起した(平成22年2月4日付け移送決定により当庁に移送された。)。(顕著な事実)
(11)税額等に関する被告らの主張
被告らが本件訴訟の中で主張する原告P1の総所得金額,納付すべき税額,無申告加算税,過少申告加算税の額等は,それぞれ別表7「原告P1の平成14年分の所得税額等」ないし別表10「原告P1の平成17年分の所得税額等」の「被告らの主張額」欄各記載のとおりであり,本件の争点に関する部分を除き,計算の基礎となる金額及び計算方法に争いはない。3
争点
(1)本案前の争点

原告P1の平成15年分の所得税に係る更正処分(本件更正処分)のう
ち確定申告額を超えない部分の取消請求についての訴えの利益の有無(第1事件関係。争点1)

被告川口市が原告P1に対してした平成15年度分,平成17年度分及
び平成18年度分の各住民税賦課決定処分の取消請求の訴えの利益の有無(第3事件関係。争点2)
(2)本件各所得税課税処分及び本件各住民税関係処分に係る本案の争点(第1事件・第3事件関係)

原告P1の日本の居住者・非永住者該当性等(争点3)

(ア)原告P1は,本件各課税年において日本の居住者であったか否か。また,原告P1は,「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(昭和47年6月23日条約第6号。以下「旧日米租税条約」という。)及び「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」(平成16年3月30日条約第2号。以下「新日米租税条約」という。)にいう居住者であったか否か。
-16-

(争点3(1))
(イ)原告P1は,地方税法294条1項1号により住民税の納税義務を負う住民であったと認められるか否か。(争点3(2))
(ウ)原告P1が日本の居住者であった場合,日本の非永住者であったか否か(争点3(3))。

本件オルゴール等の譲渡所得に対する課税について

(ア)課税の可否(本件オルゴール等の譲渡所得は国内源泉所得等に該当するか否か。)(争点4)
(イ)譲渡所得の発生の有無(争点5)
abウ
本件オルゴール等の具体的な取得費の額は幾らか。
本件オルゴール等は減価償却の対象となる財産に該当するか否か。
P2社役員報酬に対する課税について

(ア)課税の可否(P2社役員報酬は国内源泉所得等に該当するか否か。)(争点6)
(イ)課税の方法(P2社役員報酬の邦貨への換算方法は,TTB(対顧客直物電信買相場)とTTM(対顧客直物電信売相場と対顧客直物電信買相場の仲値)のいずれが相当か。)(争点7)

P3からの利得所得等の課税方法(原告会社役員報酬,貸付金利子及び
国内配当に対する課税は,総合課税と源泉分離課税のいずれの方法によるべきか。)(争点8)

原告会社が平成15年に支払った原告会社役員報酬から源泉徴収すべき
所得税の額(争点9)

本件各土地の譲渡所得に対する課税について

(ア)本件A建物の取得価額(本件A53土地等売買に係る売買代金から控除すべき本件A建物の価額)(争点10)
(イ)本件各土地の譲渡所得に対する課税方法の違法の有無(源泉徴収額相
-17-

当額の控除の要否)(争点11)

二重課税による違法性の有無(本件各所得税課税処分及び本件各住民税
賦課決定処分は許されない二重課税として違法となるか否か。)(争点12)

原告P1に対してされた質問検査権行使の違法性の有無
(第1事件関係。

争点13)

国税通則法65条4項又は66条1項ただし書の「正当な理由」の有無
(第1事件関係。争点14)

平成15年度分ないし平成17年度分の住民税賦課決定処分の法定期間
内通知の有無(第3事件関係。争点15)

本件各住民税関係処分の信義則違反該当性(争点16)

(3)本件各源泉所得税課税処分に関する本案の争点(第2事件関係)アイ
国税通則法67条1項ただし書の「正当な理由」の有無(争点18)
ウ4
原告P1の日本の居住者該当性等(上記(2)ア(ア)と同じ。争点17)
原告会社に対してされた質問検査権行使の違法性の有無(争点19)
争点に関する当事者の主張の要点

(1)本案前の争点

争点1(本件更正処分のうち確定申告額を超えない部分の取消請求についての訴えの利益の有無)について

(被告国の主張の要点)
所得税法は申告納税方式を採用し,納付すべき税額は,納税者がする申告により確定されることを原則としており,納税申告書を提出した納税者が自らのした申告の誤りを是正するには国税通則法23条所定の更正の請求の手続を経ることを要する。
したがって,確定申告により確定された納税額を超えない部分の取消しにつき,更正の請求の手続を経ることなくされた訴えは,特段の事情がな
-18-

い限り,訴えの利益を欠き不適法なものとなる。
これを本件についてみるに,原告P1は,平成16年3月15日,西川口税務署長に対し,平成15年分の所得税につき総所得金額を3289万1030円,納付すべき税額を6万2200円とそれぞれ記載した平成15年分確定申告書を提出し,その後,更正の請求をしていない。
したがって,本件更正処分の取消しを求める本件訴えのうち,原告P1が平成15年分確定申告により自ら確定させた納付すべき税額を超えない部分の取消しを求める訴えは,取消しを求める訴えの利益がないから不適法なものとして却下されるべきである。
(原告P1の主張の要点)
平成15年分確定申告書の中に被告国が主張する記載があること,原告P1が国税通則法23条所定の更正の請求をしていないことは認める。しかし,平成15年分確定申告は,原告P1の錯誤に基づいてされたものである上,更正の請求をしていないことについても同様に錯誤が認められるから,本件では,原告P1が平成15年分確定申告により自ら確定させた納付すべき税額を超えない部分につき,更正の請求手続を経ることなく訴えを提起することを許容すべき特段の事情が存する。すなわち,平成15年分確定申告には,原告P1の意思と確定申告に係る事務を担当したP17公認会計士・税理士(以下「P17税理士」という。)のした表示との間に齟齬が見られるほか,原告P1がP17税理士と川口市役所に出向き,原告P1が日本の居住者ではないことについて被告川口市の担当者が納得したことから,納税に関して素人である原告P1は,国税についても同様の取扱いがされるものと考えたのであって,更正の請求手続を経ることなく訴えを提起することにつきやむを得ない事情がある。
以上によれば,本件更正処分のうち確定申告額を超えない部分の取消しに係る訴えについて,原告P1は訴えの利益を有する。

-19-


争点2(被告川口市が原告P1に対してした平成15年度分,平成17年度分及び平成18年度分の各住民税賦課決定処分の取消請求の訴えの利益の有無)について
(被告川口市の主張の要点)
(ア)税額の更正決定は,先にされた賦課決定等の処分と一体として既に成立している一個の納税義務の内容を具体化するための行為である。住民税は,所得税の有する所得再分配の機能よりも,地方公共団体の住民が地域社会の費用をその能力に応じて広く負担する負担分任を基調とする点において国税と異なる性質を有するところ,所得税について減額更正処分がされた場合には,これを受けた市町村は減額更正された所得税の総所得金額等に基づいて住民税における所得控除を行った上で課税標準を決定し所得割の税額を決定するのであって,住民税の減額更正処分は,課税標準の内容の変更に基づき再計算した税額による新規の賦課決定としての性格を有し,先にされた賦課決定の単なる一部取消しではない。
(イ)川口市長は,平成25年3月14日付けで,平成15年度,平成16年度分の住民税については,譲渡所得の算定につき従前の賦課決定処分では認めていなかった取得費の控除を認め,所得金額を減額して税額変更決定処分を行っている。また,平成17年度分及び平成18年度分の住民税については,扶養控除の算定につき従前の賦課決定処分では認めていなかった長男の扶養控除を認め,扶養控除額を増額して税額変更決定処分を行うなどしている。これらの平成25年3月14日付け住民税変更決定処分は,住民税の課税標準の変更による新規賦課決定であるから,本件において取消しの対象とすべき決定は,平成20年12月3日付けでされた当初の賦課決定処分ではなく,平成25年3月14日付け住民税変更決定処分である。

-20-

(ウ)よって,川口市長が原告P1に対して平成20年12月3日付けでした本件各住民税賦課決定処分の取消しを求める原告P1の被告川口市に対する本件各訴えは,いずれも訴えの利益を欠き不適法である。(原告P1の主張の要点)
減額更正処分は,減額した税額に係る部分についてのみ法的な効果を及ぼすものであり,
それ自体は,
当初の処分と別個独立の課税処分ではなく,
当初の処分の変更であるから,その場合の取消しの対象は減額された先の賦課決定処分となる。すなわち,減額更正処分がなされても,先の賦課決定処分が減額更正処分に吸収されることもなければ一体化することもないから,取消しの対象は,川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした本件各住民税賦課決定処分である。よって,本件各住民税賦課決定処分の取消しの訴えにつき訴えの利益がないとする被告川口市の主張に理由がないことは明らかである。
(2)本件各所得税課税処分及び本件各住民税関係処分に係る本案の争点ア
争点3(原告P1の日本の居住者・非永住者該当性等)について
(原告P1の主張の要点)

(ア)原告P1は,本件各課税年において日本の居住者に当たらない。本件各所得税課税処分及び本件各住民税関係処分は,いずれも原告P1が所得税法2条1項3号所定の日本の居住者に該当すること(及び川口市内に住所を有すること(地方税法294条1項1号))を前提としてされたものであるが,
ここで,
日本の居住者とは
「国内に住所を有し,
又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」のことをいうから,本件各所得税課税処分が適法であるというためには,原告P1が本件各課税年において同号の上記要件を満たしていたことを要する。
本件では,①

原告P1は,米国内に,生活の本拠となる住居である

米国NJ州家屋及び米国ペンシルバニア州
(以下
「米国PA州」
という。


-21-

所在の土地建物(以下「米国PA州家屋」といい,米国NJ州家屋と併せて,以下「本件各米国家屋」という。)を所有し,平成11年8月18日には米国の永住権まで取得していること,②

西川口税務署長及び

川口市長(以下,両者を併せて「課税庁」という。)は,平成13年度までは,原告P1が日本の非居住者である旨の認定をし,原告P1に対して何らの課税処分をしていなかったこと,③

米国NJ州政府は,平

成16年時点でも原告P1の住所が米国にある旨の認定をし,米国NJ州の租税裁判所(以下「米国NJ州租税裁判所」という。)も,平成16年度につき原告P1が米国の居住者である旨の認定をしていること,④

原告P1は,本件各課税年当時,米国の企業年金及び健康保険にそ
れぞれ加入していた一方,日本の健康保険には加入していなかったこと,⑤

原告P1は,昭和59年3月以降,P2社の代表取締役に就任し,
本件各課税年中も毎年約20万米国ドルの役員報酬を受領していたこと,


原告P1と生計を一にしていた本件家族は,
本件各課税年当時,

いずれも米国内に生活の本拠を有していた上,妻P5,長男P6,次男P7及び長女P8は,原告P1と共に米国の永住権を取得し,次女P9は米国の国籍を有していたこと,⑦

原告P1は,本件各課税年当時,

米国NJ州家屋以外にも生活に密接に関係する多数の財産を米国内に所有していたこと,⑧

原告P1は,原告会社の代表取締役社長に復帰

した平成13年12月11日以降,平成14年に5回,平成15年に4回,平成16年に2回,平成17年に6回にわたり忙しい業務の合間を縫って米国に帰国して本件家族と交流を持っていたこと,⑨
原告P1

は,本件各課税年において米国での納税義務を誠実に履行していたこと,⑩
原告P1は,日本国の自動車運転免許を取得したことがない一方で,
本件各課税年当時,米国NJ州の自動車運転免許を所持していたこと,⑪
妻P5は20年以上にわたり米国の居住者として生活を続け,本件
-22-

各課税年当時から現在に至るまで米国に永住する意思を持っていること,⑫原告P1の4人の子供らも米国に永住する意思を有し,本件各課税年当時,長女P8が一時期日本に住んでいたことを除き,いずれも米国に居住していたことなどの事情が認められる。
以上に述べた各事情によれば,原告P1が本件各課税年当時において米国の居住者,すなわち日本の非居住者であったことは明らかである。したがって,本件では,対象者が双方の居住者である場合の処理を定めた旧日米租税条約及び新日米租税条約(以下,両者を併せて「新旧日米租税条約」という。)の適用はそもそも問題とならないが,日本と米国における原告P1の人的,経済的関係を比較すれば,原告P1にとって重要な利害関係の中心がある国は米国であるから,仮に新旧日米租税条約の適用があるとしても,原告P1が米国の居住者に振り分けられることは明らかである。
(イ)原告P1は,日本の居住者に当たるとしても日本の非永住者である。仮に,原告P1が本件各課税年当時において日本の居住者であったとしても,上記(ア)で述べた各事情によれば,原告P1が本件各課税年当時において日本に永住する意思を有していなかったことは明らかである。
また,原告P1は,米国PA州に墓を造るため,平成15年に愛知県東海市にあった原告P1の父の墓を東海市に返還しているところ,かかる原告P1の行為は,我が国に永住する意思を有している者であれば到底するはずのないものであるし,本件家族はその全員が米国に永住する予定であることや,原告P1の交友関係の中心は米国にあることによれば,原告P1が本件各課税年当時において日本に永住する意思を有していたとは経験則上考えられない。
そして,原告P1が,本件各所得税課税処分や本件各住民税賦課決定
-23-

処分を受けた後にも,課税庁に対し,自らが米国の居住者であることを繰り返し主張していたということは,原告P1が日本に永住する意思を有していなかったことを裏付ける事実である。
さらに,原告P1は,平成13年までは生活の本拠を米国とする日本の非居住者であり,課税庁も同様の認定をしていたのであるから,仮に原告P1が本件各課税年において日本の居住者であったとしても,原告P1が日本の居住者となったのは平成14年以降であるということになる。そうすると,本件各課税年における原告P1の日本国内での居住期間は5年以下となる。
以上によれば,原告P1は,本件各課税年において所得税法2条1項4号の「居住者のうち,国内に永住する意思がなく,かつ,現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人をいう。」という要件をいずれも満たしていたから,同号が規定する日本の非永住者に当たる。
(被告らの主張の要点)
(ア)原告P1は,本件各課税年において日本の居住者に当たる。a
所得税法上の住所,すなわち生活の本拠については,納税義務者の滞在日数,住居,職業,国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有するか否か,資産の所在等の客観的事実に基づき総合的に判定すべきである。
これを本件についてみると,①

原告P1は,本件各課税年におい

ては1年の7割を超える期間,日本国内に居住しており,平成10年以降の各年において1か月間全く国内に居住しなかったのは数か月にとどまること,②

原告P1は,本件各課税年を通じて国内に常用

の住居(本件旧家屋及び本件家屋)を有していたこと,③
原告P1

は,日本国内に本店を置く原告会社,P3,P4社の代表取締役社長
-24-

を務めており,我が国を離れてその任務を全うすることはおよそ考えられない上,現に原告会社からは多額の報酬を得ていること,④

告P1は,平成13年5月頃から平成15年頃まで長女と共に本件旧家屋で生活していたこと,⑤

原告P1は,平成14年に将来使用す

る目的で北海道函館市内の土地を取得したほか,平成17年から平成19年にかけて,上記土地の隣接地を原告の資産管理会社であるP3を通じて取得するなど我が国に多数の不動産を保有し,その他,多額の預金・負債も有するなど,
我が国に相当の資産を保有していること,
⑥原告P1は,本件各課税年を通じて日本国籍を有し,我が国に住民票を置くことを基本としていたことなどの事情が認められる。
これらの原告P1の住居,職業,資産の所在,親族の居住状況,国籍等に関する客観的事情を総合すれば,原告P1が,本件各課税年のいずれの年においても,我が国に住所を有していたことは明らかである。また,上記の各事情をもってすれば,原告P1が,本件各課税年のいずれの年においても,現在まで引き続いて1年以上,我が国に居所を有していたことは優に認められるというべきである。

以上に述べた原告P1の我が国における住所又は居所の状況,生計を一にする親族の状況,職業及び資産の状況等の諸事情を総合勘案すれば,原告P1は,「国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する」者(所得税法2条1項3号),すなわち,我が国所得税法上の居住者に該当することとなり,旧日米租税条約上は「日本国の租税に関し日本国における居住者とされるその他の者」(3条(1)(b))に,また,新日米租税条約上も「日本国の居住者に該当する者」(4条2項(a))に該当する。そして,原告P1の恒久的住居が存在する国,重要な利害関係の中心のある国並びに常用的住居が存在する国及び原告P1が国民である締約国は,いずれも我が国であ
-25-

るから,いずれにしても,原告P1は,新日米租税条約上も我が国の居住者に振り分けられる。
(イ)原告P1は,本件各課税年において日本の非永住者には当たらない。a
上記(ア)で述べた原告P1の我が国における住所又は居所の状況,生計を一にする親族の状況,職業及び資産の状況等の諸事情に加え,①原告P1は,米国NJ州租税裁判所に係属していた自身を原告とし米国の課税当局を被告とする訴訟(以下「本件米国訴訟」という。)の中で宣誓書(以下「本件宣誓書」という。)や略式判決を求める申立書(以下「本件略式判決申立書」という。)を訴訟資料として提出しているところ,これらの書面の中には,原告P1が本件各課税年当時において日本に永住する意思を有していた旨の記載があること,②原告P1は,関東信越国税局課税第一部課税総括課所属の職員(以下「関東信越国税局の職員」という。)に対し,米国の永住権を取得した後に返却しようと試みたことがある旨の供述をしていること,③原告P1の日本国内での滞在日数が平成13年に大幅に増加し,滞在日数の増加が平成17年に至るまで継続していることは,本件各課税年において,原告P1が日本に永住する意思を有していたことを示すものであること,④

原告P1は,少なくとも平成12年2月1日

ないし平成17年1月4日までの間,妻P5も,少なくとも平成12年2月1日ないし平成15年12月1日までの間,日本の国民年金の保険料を納付していたこと,⑤

原告P1が日本の健康保険に加入し

ていないのは,原告会社が原告P1の負担すべき保険料額を徴収し,事業主の負担分と合わせて納付する義務を履行していないことが原因であるにすぎないこと,⑥

自動車運転免許証は,当該免許証の効

力を有する国に永住する意思を表すものではないから,原告P1が米国NJ州の自動車運転免許証を所持し,日本の自動車運転免許証を所
-26-

持していないことをもって,日本に永住の意思がないという結論が導き出されるものとはいえないこと,⑦

原告P1が本件各課税年中に

取得した函館市内の土地は,本件各課税年において原告P1が日本に永住する意思を有していたことを示すものであることなどの事情が存する。
これらの事情を総合勘案すれば,原告P1が,本件各課税年において我が国に永住する意思を有していたことは明らかであり,「永住の意思がなくて入国した外国人」とは到底評価することができない(なお,原告P1は,自らが日本の非居住者であることの根拠として,米国の永住権の保有者であることを挙げているが,原告P1自身,米国の永住権を取得した後,一旦はこれを返却しようとしていた旨を供述しているのであるから,米国の永住権を保有していることが米国での永住の主観的意思の存在を客観的に立証し得る証明力を持つものでないことは,原告P1自身自認しているものといわなければならない。)。

そして,原告P1は,日本国籍を保有する者であり,昭和60年3月16日付けで,本件旧肩書地に住所を定めた以後の大半の期間,本件旧肩書地及び本件肩書地に住所を定めていた。また,原告P1は,我が国において昭和53年2月ないし平成9年2月までの間,原告会社の代表取締役社長を務め,同月ないし平成13年12月までの間は,同社の代表取締役会長,平成13年12月には,再度,原告会社の代表取締役社長に就任して現在に至っている。
このような我が国における職業の状況や実際の滞在日数等の状況
を総合勘案すれば,原告P1は,少なくとも平成9年ないし平成17年に至るまでの間,我が国に定期的かつ長期間にわたって滞在していたことが明らかである。

-27-

そして,原告P1は,本件各課税年において,本件旧家屋及び本件家屋において起居していたものと考えられるところ,原告P1の住居となるべき家屋(本件旧家屋)が日本国内にあったことや,原告P1の日本国内における職業の状況,日本国内における滞在日数等といった状況において,本件各課税年と平成9年ないし平成13年までの期間とを画すべき合理的な事情は何ら存在しないのであるから,原告P1は,少なくとも平成9年ないし平成13年までの間においても本件旧家屋で起居していたものということができる。そうすると,原告P1は,平成9年ないし平成13年までの間,すなわち,本件各課税年のそれぞれの年分との関係において,いずれも,現在まで5年を超える期間,我が国において住所又は居所を有していたものというべきである。

以上によれば,原告P1は,本件各課税年において,それぞれ国内に永住する意思がない者であったとはいえず,また,現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する者にも当たらないのであるから,原告P1は,日本の非永住者には該当しない。

(被告川口市の主張の要点)
(ア)地方税法上,個人住民税の納税義務者の判断は住民性(同法294条1項)
であり,
所得税法上の居住者性,
非永住者性によるものではない。
すなわち,平成24年度分までの地方税法に基づく個人住民税については,日本国民のうち,同法の施行地外に居住していた者で帰国して新たに法施行地に居住することとなった者に対する個人住民税については,<ア>

個人住民税の賦課期日(1月1日)まで引き続いて1年以上日本

国内に居住している外国人等については賦課期日現在の居住地に住所があるものとし,また,<イ>

賦課期日までの法施行地における居住期

間が1年未満の外国人等でも,入国後継続して1年以上日本国内に居住
-28-

することを通常必要とする職業を有する場合には,賦課期日現在の居住地に住所があるものと推定して,均等割及び所得割を課すものとしている(昭和41年5月31日自治府第54号各都道府県総務部長,東京都総務・主税局長あて自治省税務局長通達「外国人等に対する個人の住民税の取扱いについて」。以下「本件通達」という。

)。

(イ)原告P1は,本件通達が規定する「日本国民のうち,地方税の施行地外に居住していた者で帰国して新たに法施行地(川口市)に居住することとなった者」に当たり,仮に原告P1の居住日数だけに着目すれば,賦課期日までの法施行地における居住期間が1年未満に当たるとしても,原告P1が原告会社の代表取締役であることに照らせば,原告P1は,入国後継続して1年以上日本国内に居住することを通常必要とする職業を有する場合に該当する。また,原告P1は,原告会社の平成13年の株式公開を控え,同年初めから平成14年11月期に至るまで,川口市内に居住をしていたのであるから,平成13年の入国後,継続して1年以上日本国内に居住することを通常必要とする職業を有する場合に該当することは明らかである。そして,この事実は,平成13年以降は,米国NJ州の住居を放棄して日本に居住し続け,米国NJ州に戻る意思がないと断言した本件宣誓書の内容とも合致する。
(ウ)以上によれば,原告P1は,本件通達が規定する要件に基づき,個人住民税を賦課される外国人等に当たる。

争点4(本件オルゴール等の譲渡所得に対する課税の可否)について(原告P1の主張の要点)
所得税法7条1項2号は,日本の非永住者が納税義務を負うのは国内源泉所得等に限られる旨を定めている。
上記ア(原告P1の主張の要点)で述べたとおり,原告P1は,本件各課税年において少なくとも日本の非永住者であったことが認められるか
-29-

ら,本件オルゴール等の譲渡所得が課税の対象となるというためには,同所得が国内源泉所得等に該当することを要する。
しかし,本件オルゴール等の譲渡は,いずれも米国PA州内にある倉庫で行われ,しかも,原告P1は,P3から本件オルゴール等の代金の支払を一切受けていないから,本件オルゴール等の譲渡所得は国内源泉所得等に当たらない。よって,原告P1は,本件オルゴール等の譲渡所得につき納税義務を負わない。
(被告らの主張の要点)
原告P1は,本件各課税年において日本の居住者であったから,本件オルゴール等の譲渡所得につき納税義務を負うことは明らかである。また,仮に,原告P1が本件各課税年において日本の非永住者であったとしても,本件オルゴール等は,原告P1がP3宛てに輸出したものではなく,日本国内で譲渡されたものであるから,本件オルゴール等の譲渡所得は国内源泉所得として課税の対象となる。

争点5(本件オルゴール等の譲渡に関する譲渡所得の発生の有無)について
(ア)本件オルゴール等の具体的な取得費の金額
(原告P1の主張の要点)

平成14年譲渡オルゴール等の取得費の額
平成14年譲渡オルゴール等87台のうち51台について,現時点で発見された各請求書(以下「本件各請求書」という。)から判明した取得費の一部のみで既に105万2850米国ドル(1億3160万6250円。1米国ドルを約125円で計算)となっており,これに,メリーゴーランドの改良費1万4734米国ドル(184万1750円)及び輸送費1万6800米国ドル(210万円)を合計すると108万4384米国ドル
(1億3554万8000円)
に達する。

-30-

そうすると,平成14年譲渡オルゴール等の取得費は2億1794万7843円となり,その譲渡価額は2億6695万3050円であるから,被告らが用いる計算方法によっても,平成14年譲渡オルゴール等の長期譲渡所得は4900万5207円となり,少なくとも平成14年譲渡オルゴール等の長期譲渡所得がこの金額を超えることはない。しかも,本件各請求書は,本件オルゴール等の代金の前金や残金など代金の一部にすぎないものも含まれているし,請求書の発見に至っていない残り36台のオルゴール等についても取得費(購入費,改良費及び運送費)が発生していること,請求書の一部が発見された51台についても多額の部品代,改良費及び運送費を要したと解されるところ,これらの費用については,メリーゴーランド1台分のみしか積算していないこと,原告P1が平成6年から平成13年にかけて小切手で支払ったオルゴール等の代金のうち現時点で確認することができたものだけでも2億8292万6161円(1米国ドルを112円で計算)ないし3億1576万5805円(1米国ドルを125円で計算)に達していることによれば,平成14年譲渡オルゴール等の取得費が被告らの主張する1334万7652円にすぎないということはあり得ず,平成14年譲渡オルゴール等の取得費は,譲渡価額と同額ないしこれを下回るものではないことは明らかである。

平成15年譲渡オルゴール等の取得費の額
上記aの平成14年譲渡オルゴール等取得費割合(51台分)の81.64%を前提に,平成15年譲渡オルゴール等の取得費を計算すると3441万1260円となり,同オルゴールの譲渡価額(4215万円)から当該取得費を控除した長期譲渡所得は773万8740円となる。
そうすると,平成15年譲渡オルゴール等の取得費は3441万1
-31-

260円となり,その譲渡価額は4215万円であるから,被告らが用いる計算方法によっても,平成15年譲渡オルゴール等の長期譲渡所得は773万8740円となり,少なくとも平成15年譲渡オルゴール等の長期譲渡所得がこの金額を超えることはない。
そして,平成14年譲渡オルゴール等と同様,平成15年譲渡オルゴール等の取得に当たっては,多額の部品代,改良費及び運送費などを要しているから,平成15年譲渡オルゴール等の取得費は,譲渡価額と同額ないしこれを下回るものではないことは明らかである。
(被告らの主張の要点)

本件オルゴール等の譲渡所得は,所得税法33条が規定する譲渡
所得に該当するところ,譲渡所得の基因となった資産の取得費は,譲渡所得に係る課税標準の計算において重要な計算要素であり,かつ,アンティーク・オルゴールの価格は個別性が極めて高いものであるから,本件オルゴール等に係る譲渡所得の課税標準を適正に計算するためには,本件オルゴール等ごとの個別の取得費が明らかにされなければならない。
この点に関し,原告P1は,本件各税務調査や本件各所得税課税
処分がされた時期からみると約4年半ないし5年,本訴提起時期からみると約3年半を経過した現在においても,本件オルゴール等の個別の取得費について,自らの立証責任を適切に果たすことなく,本訴を提起してから相当期間が経過してからようやく取得費に関
する証拠として,多数の明細書(以下「本件各明細書」という。)や備忘録(以下「本件備忘録等」という。)を提出し,しかも,それらの提出は一度ではなく,五月雨式に随時提出している。かつ,それらの証拠をみても,その成立の真正すら疑わざるを得ないような極めて証拠価値の低い資料といわざるを得ないものであり,結局,
-32-

本件オルゴール等の個別の取得費を全体において明らかにしてい
ない。
このような状況ではあるものの,被告らは,適正公平な課税に努
めるべく,本件オルゴール等の個別の取得費を明らかにするものとして原告P1が提出した資料
(本件各明細書及び本件備忘録等)
が,
本件オルゴール等の個別の取得費を明らかにするものであるか否
かについて,精査・検討した。具体的には,本件各明細書の記載内容に鑑みると,本件オルゴール等の個別の取得費が明らかになるには,



宛先
(明細書の宛先が原告P1と記載されているかどうか)


日付(日付が正確に記載されているかどうか。),③
内訳金


(オルゴール等の取引金額が個別に記載されているかどうか。,



筆跡(筆跡に疑わしい点がないかどうか。),⑤

その他(譲

渡されたオルゴール等の名称と明細書に記載されたオルゴール等
の名称が一致しているか。本件オルゴール等のうち特定の1台に係るものとして複数の明細書が提出されているが,その中には別のオルゴール等に係る明細書が含まれていると認められるものがない
か。取引金額の総額ではなく残高のみ記載されている明細書ではないか。その他原告P1が取得したオルゴール等の取得費であることを明らかにするものと評価することができない明細書ではない
か。)という5つの基準(以下「本件取得費各基準」という。)に照らして,本件各明細書が本件オルゴール等の個別の取得費を明らかにするものと認められるか否かを個別に検討した。その結果,本件各明細書のうち,本件取得費各基準を満たした明細書(以下「本件基準充足明細書」という。)については,必ずしもその中に記載された本件オルゴール等(以下「本件基準充足オルゴール等」という。)の取得費を個別的ないし直接的に明らかにするものであると
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認めることはできないものの,それぞれ本件基準充足明細書に記載された金額相当額の取得費が存在する蓋然性が高いとみることが
できるとして取得費を認定することとした。また,平成14年譲渡オルゴール等のうち,本件基準充足オルゴール等以外のものについては,本件基準充足オルゴール等について,上記のとおり,取得費が存在している以上,本件基準充足オルゴール等と同程度の取得費が存在する蓋然性が高いものと認められるから,本件基準充足オルゴール等の取得費割合(36.98%。本件基準充足オルゴール等の取得費の合計額÷本件基準充足オルゴール等の譲渡価額の合計額×100。「本件基準充足オルゴール等取得費割合」という。)を参考として取得費を算出した。また,平成15年譲渡オルゴール等についても,少なくとも本件基準充足オルゴール等と同程度の取得費が存在する蓋然性が高いものと認められるから,本件基準充足オルゴール等取得費割合を参考として平成15年譲渡オルゴール等
に係る総合長期譲渡所得を算出した。

上記のとおり算出した平成14年譲渡オルゴール等の取得費の
合計額は9872万0674円となり,平成15年譲渡オルゴール等の取得費の合計額は1558万7070円となる。本件第4減額更正処分等は,かかる計算に基づいてされたものであり,本件第4減額更正処分等によりそれぞれ一部取り消された後の本件各所得
税課税処分は適法である。また,これを受けて被告川口市がした平成25年3月14日付け住民税変更決定処分によりそれぞれ一部
取り消された後の本件各住民税関係処分も適法である。
なお,本件オルゴール等の取得費に関する事実は,原告P1に有
利な事柄であるとともに,これに関する証拠との距離は,原告P1の方が,被告らに比べて,極めて近いものであること,本件におい
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ては,課税庁が国外に存在する原告P1の関係者又は関係資料等に対して質問検査権を行使することは実際上不可能であるという事
情があることを併せ考慮すれば,被告らは,本件オルゴール等の譲渡所得に係る主張立証責任を十分に果たしたものとして,原告P1がこれを覆すに足りる反証をしない限り,本件オルゴール等の取得費は被告らが主張立証する額を超えては存在しないと認定される
べきである。
(被告らの主張に対する原告P1の反論の要点)

本件取得費各基準は,被告らが自己に不都合な証拠を排除するた
めに作成した独自の恣意的な基準にすぎない。①

宛先についてい

えば,米国PA州に居住する友人で,アンティークオルゴールの専門業者であったP18と原告P1との間で相手の呼称を法人名で
記載したり個人名で記載するなど統一したルールが定まっていな
かったことは,本件に書証として提出した小切手帳(以下「本件小切手帳」という。)の記載などからも明らかであるし,そもそも,原告P1が,請求書にP4社と記載してあるオルゴールだけをわざわざP4社名義で取得する理由がないし,P4社がP18からオルゴールを取得したこともないし,P4社からP3にオルゴールの譲渡が行われたこともないし,P4社とP3という2つの法人がオルゴールを分けて管理もしていないし,そうする理由もない。宛先の記載のないものについていえば,常識的に考えればそれを原告P1が保有していること自体から原告P1宛のものであることが推認
されるし,少なくとも本件において原告P1がP18からアンティークオルゴールを継続的に購入していたという事実の存在は明ら
かなのであるから,P18が発行した宛先空欄の請求書を原告P1が保有していれば原告P1宛に発行されたものと解して何ら不自

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然ではない。また,②

日付については,月日まで正確に記載され

ていないと信用できないというのはおよそ合理性のない基準であ
る。そもそも,本件各明細書は,友人であり信頼関係のある原告P1とP18が,長年継続して取引していたときの請求書であって,このような事実を看過したまま,日付については年の記載があっても,月日がないと信用できないという選別基準はそれ自体不合理であって,明らかに考慮するべき事情を看過した誤った判断である。さらに,③

内訳金額についても,本件各明細書に記載されている

本件オルゴール等が少なくとも原告P1がP18から購入したも
のであり,原告P1がP18に代金を支払っていること自体は明らかなのであるから,その個別の内訳金額の記載がないことをもって一切取得費として考慮しないというのは不当である。そして,請求書が存在し,支出がされていることも確実であるのに内訳金額の記載がないことを理由に取得費をゼロと評価するのは,明らかに経験則に反する違法な処分である。したがって,この点についても被告らの設定した基準は極めて不合理であるから,このような恣意的な基準に従って原告P1が主張する改良費等の取得費を看過してい
ることは違法である。
次に,④

筆跡については,原告P1が,被告らの主張する本件

各明細書の該当部分だけを取り上げて,そこだけをわざわざ偽造する合理性はないし,被告らが偽造したと主張する記載も後から挿入できるような箇所でもない。また,原告P1以外の他の人物であっても,本件各明細書を偽造する理由など存在しないのである。このように,被告らの主張は,明らかに行きすぎであり,合理的な基準として全く機能し得ないものであって,およそ失当であるから,このような基準に従って原告P1が主張する改良費等の取得費を看

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過していることは違法である。
さらに,


その他についても,
被告らの設定した独自の基準は,

結局,原告P1が記載内容に漏れの無い処分証書に類する証拠を全て取り揃え,かつ完全な立証を行わなければ取得費は認めないというのと同じである。しかしながら,被告らの主張を前提とすると,書類の保管義務もない納税者が,20年以上過去の個別の取引の資料を保管していなければ取得費は認められないことになり,それどころか資料が存在し確実に取得費の支出が確認できても,日付の記載が完璧になされていないとか,その正確な内訳金額が判明しないとか,筆跡が疑わしいという恣意的な理由で,当該取得費はゼロと評価されるのである。このように,いかに資料が存在し,かつ,これと矛盾しない合理的な説明がされていても,被告らの恣意的な判断で取得費は認められないというのは,余りにも裁量権の逸脱が甚だしい処分内容である。そして,被告らも,通常,他の納税者に対してはそこまで極端な対応はしないのであるから,原告P1に対しても他の納税者と公平・平等に取り扱うべきである。そもそも,課税における立証責任は被告らにあり,少なくとも被告らが本件オルゴール等の譲渡価額の5%を取得費とする通達に従った処分を取
りやめたのであれば,原告P1が既に証拠資料を提出して合理的な説明を行っている以上,これに対する反証の責任は被告らに課されているはずである。したがって,原告P1が取得費を支出していることが明らかであるにもかかわらず,被告らの恣意的な判断でこれを処分の前提から排斥し,原告P1が主張する改良費等の取得費を看過していることは違法であるから,本件各所得税課税処分等は必ず取り消されなくてはならない。

多数の証拠が米国に存在し,しかもその多くが相当過去の証拠で

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あるところ,これらの事情を看過して被告らが提出時期等について論難しているのはそれ自体不合理である。そもそも,被告らが証拠の成立の真正まで争うなどして原告P1の立証の負担を過度に重
くしておきながら,原告P1が多くの時間と労力を割いて被告らの主張に対する反論の証拠を提出すると,今度は提出時期云々を述べるのは背理である。結局,被告らは,自ら理由のない主張を行っておきながら,これを弾劾する証拠が原告P1から提出されると,提出時期等に言及し成立の真正を争うなどの対応に終始しているの
であるが,このような被告らの対応は,証拠の成立の真正が認められれば,原告P1の主張に理由があることを認めているに等しい対応である。しかも,本件各土地や本件オルゴール等の資料は古いものでは約20年から30年も過去のものである上,本件では,居住者・非居住者にも関連する多数の争点があり,
証拠も多岐にわたる。
そして,原告P1は,本件オルゴール等の資料だけを探していたのではなく,多忙な業務の合間に,これまで提出した多数の争点にわたる証拠を探して提出していた上,その大半は米国に存在するのである。また,原本が発見されていない本件オルゴール等の請求書の写しが存在するのも,原告P1の秘書であったP19などが原告P1にFAXするために写しを作成しており,当時写しを作成していたものについては,その写しが発見されたときは,その写しを提出しているだけである。したがって,原告P1の証拠の提出時期には何も不自然な点はなく,これをもって成立の真正を否定する被告らの主張は論理の飛躍があるし,不合理である。
(イ)本件オルゴール等は減価償却の対象となる財産であるか否か。(原告P1の主張の要点)
本件オルゴール等は,所得税基本通達2-14(書画,骨とう等)に
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掲げられている「古美術品,古文書,出土品,遺物等のように歴史的価値又は稀少価値を有し,代替性のないもの」に該当し,所得税法施行令6条柱書きの括弧書きの「時の経過によりその価値の減少しないもの」として減価償却資産から除外される。
すなわち,アンティークオルゴールの価値や価格は,制作年代,稀少性,美術性により決まるところ,本件オルゴール等は,原告P1の趣味であるアンティークオルゴールの収集のために,
その制作年代,
稀少性,
美術性を吟味した上で,アンティークショップからその価値を見極めて購入したものである。したがって,本件オルゴール等は,それぞれが個性を有するアンティークであり,歴史的価値及び稀少価値を有し,代替性のない古美術品に当たるから,減価償却資産から除外されるものであって,課税庁が本件オルゴール等を減価償却資産であるとしてした本件各所得税課税処分及び本件各住民税賦課決定処分は明らかに誤りである。
(被告らの主張の要点)
本件オルゴール等に関する原告P1の使用・保管状況等に照らすと,本件オルゴール等はいずれも減価償却資産に該当するから,その取得費は,所得税法38条2項により計算される。そうすると,仮に,原告P1が本件オルゴール等の取得価額を証する証拠として提出した本件各明細書が本件オルゴール等の取得価額に係るものであったとしても,本件オルゴール等の取得費の計算においては,取得価額から取得以降譲渡日までの減価の額を控除しなければならず,本件各明細書に記載された金額が直ちに本件オルゴール等の取得費を示すものとはいえない。エ
争点6(P2社役員報酬に対する課税の可否)について
(原告P1の主張の要点)
原告P1がP2社から支払を受けた役員報酬(P2社役員報酬)は,い
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ずれも米国内で支払われたものであるから米国の国内源泉所得に当たる。そして,上記アの(原告P1の主張の要点)で主張したとおり,原告P1は,本件各課税年において日本の居住者ではないし,仮に日本の居住者に該当するとしても日本の非永住者であるから,P2社役員報酬が我が国の所得税の課税対象にならないことは明らかである。
(被告らの主張の要点)
原告P1は日本の居住者であるから,所得税法5条1項,7条1項1号に基づき,国内及び国外から生ずる全ての所得について納税義務を負う。したがって,P2社役員報酬が本件各課税年における原告P1の所得として課税の対象となることは明らかである。

争点7(P2社役員報酬の邦貨への換算方法)について
(原告P1の主張の要点)
仮に,原告P1が日本の居住者であり,また,日本の永住者であると認定され,P2社役員報酬が課税の対象となるとしても,米国ドル建てにより原告P1が受領したP2社役員報酬を邦貨に換算する際には,納税者に有利となるように対顧客直物電信買相場(以下「TTB」という。)を用いなければならない。
そもそも,平成18年4月1日より前の所得税に関する法令においては,外貨建取引の換算に関する規定は存しないのであるから,本件においては,外貨建取引の換算については納税義務者の公平を考えて合理的な解釈をするほかないところ,外貨で収入を得た場合に納税者が邦貨に換算することにより不利益を被るとすれば,邦貨で収入を得た納税者に比し,明文なく過大な課税がされるに等しい。したがって,納税者の公平という観点からも,P2社役員報酬の邦貨への換算はTTBによるべきである(なお,国内株式の配当や外国株式の売買の場合と,外国法人からの報酬の場合の換算方法を別異に解する合理的理由はないから,国内株式の配当や外国株
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式の売買の場合にTTBを用いることとしている租税特別措置法通達9の2-3が本件においても適用されるというべきである。)。
(被告らの主張の要点)
現行の所得税法57条の3第1項が施行される平成18年4月1日より前の所得税に関する法令では,外貨建取引の換算に関する規定が設けられていなかったところ,従前から法人税法の規定による外貨建取引の換算方法に準じ,外貨建取引の邦貨への換算方法は,全て外貨と円貨との翻訳という立場を採用して対顧客直物電信売相場と対顧客直物電信買相場の仲値(以下「TTM」という。)によるものとされていた。したがって,P2社役員報酬を邦貨に換算する際にもTTMを用いることが相当である。
なお,原告P1が主張する租税特別措置法通達9の2-3は,「支払の取扱者が支払代理機関等から外国通貨によって国外株式の配当等の支払を受け,当該国外株式の配当等を居住者又は内国法人に本邦通貨で交付する場合には」としており,国外株式の配当等が外国の法人から外国通貨で支払われたときに,その配当等を邦貨に換算の上,邦貨でその権利者に交付される場合の取扱いを定めたものであり,外国法人であるP2社から原告P1が受領したP2社役員報酬に適用することはできない。

争点8(P3からの利得所得等の課税方法)について
(原告P1の主張の要点)
上記アの(原告P1の主張の要点)で述べたとおり,原告P1は本件各課税年において日本の非居住者であるから,原告P1に対する課税の範囲は国内源泉所得に限られる。
そして,日本の非居住者が内国法人から受け取る役員報酬は,所得税法161条8号イの
「国内において行う勤務その他の人的役務の提供
(中略)
に基因するもの」に該当するから国内源泉所得となるが,日本国内に恒久
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的な施設を有しない日本の非居住者の当該国内報酬の課税方法は源泉分離課税となる。また,日本の非居住者が内国法人から受け取る貸付金利子及び配当所得は,所得税法上,国内源泉所得となるが,日本国内に恒久的施設を有しない日本の非居住者の当該貸付金利及び当該国内配当の課税方法は,国内報酬と同様に源泉分離課税となる。ところが,被告国は,原告会社役員報酬,貸付金利子及び国内配当につきいずれも総合課税の処理をしており,かかる処理は,所得税法164条2項2号に違反する。(被告らの主張の要点)
日本の非居住者に対する課税の範囲,日本の非居住者が内国法人から受け取る役員報酬,貸付金利子及び配当所得につき源泉分離課税が所得税法上適用されることはおおむね認めるが,上記アの(被告らの主張の要点)で述べたとおり,原告P1は,本件各課税年において日本の居住者であるから,原告P1の主張はその前提を欠き失当である。

争点9(原告会社が平成15年に支払った原告会社役員報酬から源泉徴収すべき所得税の額)について

(原告P1の主張の要点)
所得税法120条1項5号の「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは,所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収された又はされるべき所得税の額であるところ,同額は正しくは,1239万5400円であるから,仮に,原告P1が日本の居住者に該当するとしても,被告国の処分は,所得税法120条1項5号の解釈を誤っている。
(被告国の主張の要点)
原告P1は,平成15年分の給与所得者の扶養控除等(異動)報告書を提出している日本の居住者であるから,経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(以下「旧負担軽減法」という。)別表第1の甲欄が適用され,また,原告会社は,給与
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等の支払額に関する計算を電子計算機などの事務機械によって処理していることも考慮して平成15年分役員報酬に係る源泉徴収すべき税額を計算すると,合計826万8480円となる。
原告P1は,上記源泉徴収額につき正しくは1239万5400円であるなどと主張するが,当該金額は,扶養控除等申告書を提出していない日本の居住者に対する税額を算出したものであって,所得税法の規定を正しく当てはめて計算された金額でないことは明らかであるから,その主張は失当である。

争点10(本件A建物の取得価額)について
(原告P1の主張の要点)
本件A建物は,本件A53土地等売買契約書の記載によれば新築の建物であるところ,本件A53土地を管轄するさいたま地方法務局に保管されていた「新築建物価格認定基準表」(上記売買契約が締結された昭和53年当時のもの。以下同じ。)によれば,本件A建物の価格は202万6000円となる。
これに対し,被告らは,「建物の標準的な建築価額表」に基づいて再計算をし,本件A建物の価額が541万7945円である旨主張するが,「建物の標準的な建築価額表」は,納税者が建物価格を合理的に算定することができない場合につき,法務局などの公的機関等に照会する手間を省くという納税者の便宜のために大雑把な目安に近い基準を定めているにすぎず,より詳細な基準を定める「新築建物価格認定基準表」に基づいて合理的かつ具体的な価額が明らになる場合にまで「建物の標準的な建築価額表」を使用して建物の価額を算定することには合理性が認められない。よって,本件A建物の価額の算定には「新築建物価格認定基準表」を用いるべきである。
(被告らの主張の要点)

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原告P1が本件A建物の取得価額の算定に用いるべきと主張する「新築建物価格認定基準表」は,飽くまで登記機関が登録免許税の課税標準額を定めるに当たって,不動産価額の認定事務の公正と迅速化を図る趣旨で定めた基準であり,これと趣旨目的を異にする譲渡所得の計算において,建物の取得費の認定に用いることは適当ではない。
国土交通省は,建築の動態を把握するため,建築基準法15条の規定による建築工事の届出等を基に,統計法による指定統計等として毎月実施している建築動態統計調査の結果を取りまとめ,建築統計年報を作成しており,「建物の標準的な建築価額表」は,この建築統計年報を基礎資料として取りまとめられたものであり,建築価格の算定に十分な合理性の認められるものである。そして,この「建物の標準的な建築価額表」に基づき本件A建物の取得価額を算定すると541万7945円となる。

争点11(課税方法の違法の有無)について
(原告P1の主張の要点)
原告P1は本件各課税年において日本の非居住者であるから,平成17年分の不動産譲渡所得(以下「本件不動産譲渡所得」という。)については,譲渡価額から取得価額を控除した所得金額に所定の税率を乗じて算出した税額から,当該不動産の購入者の支払金額の10%を控除しなければならない。
しかるに,被告国は本件不動産譲渡所得につき上記の源泉徴収額相当額の控除をしていないから,原告P1に対してされた本件各所得税課税処分には所得税法120条1項5号に反する違法がある。
(被告国の主張の要点)
争う。
原告P1は本件各課税年において日本の居住者であるから,原告P1の主張はその前提を欠き失当である。

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争点12(二重課税による違法性の有無)について
(原告P1の主張の要点)
原告P1は,既に米国において,その所得に対して課税処分を受けており,本件各所得税課税処分及び本件各住民税賦課決定処分(以下「本件各課税処分」という。)に基づいて日本でも課税がされることになると,原告P1は,日本と米国において二重に課税されることになる。しかし,かかる事態は,租税正義の理念及び二重課税を排除するために締結された新旧日米租税条約の趣旨に反するものであり,許されない。

(被告らの主張の要点)
所得税法95条1項は,国際的二重課税を排除するために外国税額控除制度を設け,「居住者が各年において外国所得税(中略)を納付することとなる場合(中略)には,(中略)その年分の所得税額のうち,その年において生じた所得でその源泉が国外にあるものに対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(中略)を限度として,その外国所得税の額をその年分の所得税の額から控除する。」と規定する。しかし,上記規定は,確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり,かつ,外国所得税を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用される。
原告P1の場合には,平成15年分確定申告書には,所得税法95条5項に規定する各種書類の添付はなく,また,平成14年分,平成16年分及び平成17年分の各所得税に関しては,確定申告書の提出すらされていないのであるから,原告P1は,本件各課税年分の所得税の計算上,外国税額控除を適用することは認められず,二重課税の違法に関する原告P1の主張は失当である。

争点13(原告P1に対してされた質問検査権行使の違法性の有無)に
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ついて
(原告P1の主張の要点)
原告P1に対しては,平成18年4月ころから,西川口税務署職員による税務調査が行われていたところ,関東信越国税局の職員は,同年10月16日,現P20法人で法人税部マネージャーを務めるP21を関東信越国税局に呼び出し,また,他の日に原告P1が代表者を務める原告会社に臨場するなどして,調査の主体ではないにもかかわらず,事実上,質問検査権を行使した。
所得税法234条は,「国税庁,国税局又は税務署の当該職員は,所得税に関する調査について必要があるときは,(中略)質問し,(以下略)」と定め,質問検査権の行使は「調査について」のみ行使することを認めている。しかるところ,原告P1に対してされた税務調査は,西川口税務署長の指示の下,西川口税務署の職員が「所得税に関する調査について」行ったものであり,本件各所得税課税処分の決定通知書等には関東信越国税局による調査である旨の教示もないことから,関東信越国税局は本件税務調査を行っておらず,「調査について」質問検査権が行使されたものではない。
また,財務省組織規則468条4号は,「課税総括課は,次に掲げる事務(括弧内省略)をつかさどる。」,「所得税,法人税,相続税等,消費税及び印紙税の課税標準の調査並びにこれらの国税に関する検査に関する事務(括弧内省略)で,国税局長が必要があると認めた特定事項に係る事務の指導及び監督並びにこれに必要な調査及び検査に関すること。」と定めるが,同法は組織内での権限分掌について定めた組織法であり,質問検査権の授権規範とはなりえないし,原告P1に対する調査について「国税局長が必要があると認めた」という事実も存在しない。
したがって,関東信越国税局の職員が原告P1に対してした質問検査権
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の行使は,法令に基づかず,何ら権限がないにもかかわらず行われたものであって,適正手続(憲法31条)に反する重大な違法行為であり,かかる重大な違法手続を経てなされた本件各所得税課税処分は取り消されるべきである。
(被告国の主張の要点)
所得税法が規定する国税庁,国税局又は税務署の職員の質問検査権における質問検査の範囲,程度,時期,場所等の細目は,質問検査の必要があり,かつ,これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り,権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられている。関東信越国税局の職員が本件に関してした調査は,社会通念上相当と認められる限度を超えておらず,国税局の職員が,指導監督上の必要に基づいて,納税者に対して直接質問検査権を行使することは当然に許容されているから,関東信越国税局の職員がした原告P1に対する質問検査権の行使につき適正手続違反は存しない。
また,税理士法上,「税理士又は税理士法人の使用人その他の従業員」は,「業務に関して知り得た秘密を他に漏ら」してはならないという内容の守秘義務が課されているから,関東信越国税局の職員がP21との間で原告P1の調査に関するやり取りをしたとしても,そのことから直ちに原告P1のプライバシー権が侵害されたということはできない。

争点14(国税通則法65条4項又は同法66条1項ただし書の「正当な理由」の有無)について
(被告国の主張の要点)

(ア)本件各所得税課税処分はいずれも適法であるところ,原告P1は,平成15年分の所得税については,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,納付すべき税額を過少に申告していたことについて国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められない。したが
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って,原告P1に課されるべき過少申告加算税の額は,同条1項に基づき,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額1332万円に100分の10の割合を乗じて算出した金額133万2000円と,同条2項の規定に基づき,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額のうち期限内申告税額879万5725円と50万円のいずれか多い金額を超える部分の税額452万円に100分の5を乗じて算出した金額22万6000円との合計額である155万8000円となる。
(イ)また,原告P1は,平成14年分,平成16年分及び平成17年分の各所得税については確定申告を期限内にしなかったものであり,当該期限内にできなかったことについて,国税通則法66条1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。したがって,同項本文に基づき,平成14年分の所得税については544万6500円,平成16年分の所得税については51万3000円,平成17年分の所得税については123万7500円の無申告加算税の納付義務を負う。
(原告P1の主張の要点)
仮に,原告P1に対してされた本件各所得税課税処分が適法であるとしても,原告P1には,自己が日本の非居住者に該当すると判断することがやむを得ない事情が多数存在し,原告P1に無申告加算税及び過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になる場合であるということができるから,原告P1が自己を日本の非居住者であると判断し,確定申告を期限内に行わなかったこと及び税額を過少に申告したことについては,国税通則法65条4項,66条1項ただし書所定の正当な理由が存在し,いずれにしても原告P1に対してされた無申告加算税及び過少申告加算税の各賦課決定処分は違法であり取消しを免れない。

争点15(平成15年度分ないし平成17年度分の住民税賦課決定処分
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の法定期間内の通知の有無)について
(原告P1の主張の要点)
住民税の賦課決定は,法定納期限の翌日から起算して3年を経過した日以後はすることができないところ,平成21年1月22日に原告P1が納税通知書(以下「本件納税通知書」という。)を受領した平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分は,いずれも各法定納期限である平成15年6月30日,平成16年6月30日及び平成17年6月30日から3年を経過した後にされたものであるから,賦課決定をする期間を徒過している。
また,住民税の所得割及び均等割の各賦課決定は,その課税標準の基準となる所得税の更正又は決定の通知が発せられた日の翌日から起算して2年間することができる。しかし,本件各住民税賦課決定処分の課税標準の基準となる所得税の更正又は決定の通知が発せられた日は平成18年12月18日であり,同日から2年を経過する平成20年12月18日の満了までに原告P1に対して有効に本件納税通知書が送達されなければならないところ,平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の各納税通知は,平成21年1月22日に原告P1に送達されているから,法定期間内に有効な通知がなされていない。
以上に述べたところによれば,川口市長が原告P1に対してした平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分は有効な送達を欠くものであり無効である。
(被告川口市の主張の要点)
(ア)地方公共団体の徴収金の賦課等に関する書類は,郵便等による送達又は交付送達により,その送達を受けるべき者の住所,居所,事務所又は事業所に送達する。ここで,送達とは,書類の送達を受けるべき者がその書類を受領し,その書類に記載された内容を了知し得る状態に達する
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ことをいうが,上記の各送達場所は,送達書類を名宛人に対して確実に送達するために最も適当な場所として列挙されたものである。また,送達は,その書類が送達の相手方の支配下に入れば足り,名宛人が現実に書類に記載された内容を了知しなくても送達の効力は生ずる。
これを本件についてみるに,被告川口市は,平成20年12月3日付けで,原告P1に対し,平成15年度分ないし平成20年度分の住民税の賦課決定通知書(本件納税通知書)を,原告P1の住所であるP3宛に配達証明付書留郵便の方法により発送したが,原告P1は,その保管期限を経過しても本件納税通知書を受領しなかった。しかし,本件納税通知書は,社会通念上,留置期間中において原告P1が了知可能な状態に置かれていたということができるから,遅くとも留置期間の満了日である平成20年12月11日には原告P1に送達されたということができる。よって,平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分は法定期間内に原告P1に通知されているから,いずれも有効である。
(イ)また,地方税の賦課決定等に関する書類が名宛人の下に確実かつ迅速に送達されることを確保するという地方税法20条1項の趣旨に照らせば,登録上の住所地よりも確実かつ迅速に,当該個人宛ての書類を受領し得る所在地がある場合には,当該所在地も同項に規定する住所地に当たるものとして,当該所在地に送達することも許されると解される。これを本件についてみるに,原告P1は,原告会社の代表取締役社長として同社で執務をしていたのであるから,原告会社の本店所在地は,住民登録上の住所地と共に原告P1の送達に関する住所に当たるというべきである。

争点16(本件各住民税関係処分の信義則違反該当性)について
(原告P1の主張の要点)

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被告川口市は,平成16年,自ら原告P1につき日本の非居住者であるとの信頼の対象となる公的見解を表示し,原告P1がこれを信頼して米国で納税をしていたにもかかわらず,本件において上記表示と異なる課税処分を行ったため,原告P1は,既に米国において納付した税金について二重課税となり著しい経済的不利益を受けている。このような被告川口市の処分は,信義則上違法の評価を受けるべきものであるから,被告川口市が原告P1に対してした本件各住民税関係処分はいずれも取り消されなければならない。
(被告川口市の主張の要点)
租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係において,信義則法理の適用の是非を検討すべき場合とは,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしても,なお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するという特別な事情が存する場合をいう。そして,上記の特別の事情が存するか否かの判断に当たっては,課税庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼し,その信頼に基づいて行動したところ,その後に上記表示に反する課税処分がされ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が上記表示を信頼し,その信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという考慮を要する。
これを本件についてみると,川口市長が平成16年8月9日付けで原告P1に対してした平成16年度の住民税の賦課決定処分の取消処分(本件住民税賦課決定取消処分)は,同年度の住民税の賦課決定処分をすることを封じる効果を持つものではないから,原告P1の信頼の基礎となる公的見解には当たらない。また,この点をおくとしても,本件住民税賦課決定取消処分により,原告P1が信頼する表示があるとすれば,それは,原告
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P1が平成16年1月1日には被告川口市の住民ではなかったとの判断にすぎないし,原告P1の平成16年の米国NJ州租税裁判所等での行動に照らせば,原告P1が平成16年1月1日に被告川口市の住民でないことを前提とした行動をした事実はない。さらに,川口市長が本件住民税賦課決定取消処分をしたのは,原告P1及びP17税理士による説明並びに原告P1が提出した資料に基づくものであるから,原告P1がその経済活動の実態を正しく説明しなかったという納税者の責めに帰すべき事由がある。
(3)本件源泉所得税課税処分に関する本案の争点(第2事件関係)ア
争点17(原告P1の日本の居住者該当性)について

(原告会社の主張の要点)
原告会社に対してされた本件各源泉所得税課税処分は,原告P1が所得税法2条1項3号,181条1項,183条1項に規定する日本の居住者に該当することを前提にされたものであるところ,上記(2)ア(原告P1の主張の要点)欄において原告P1が主張したとおり,原告P1は,米国の居住者であり,日本の居住者ではないから,原告会社は,同法181条1項,183条1項に基づく源泉徴収義務を負っていない。
したがって,本件各源泉所得税課税処分は,原告P1が日本の居住者であるという誤った前提事実に基づいてされた違法なものであるから,当然に取消しを免れない。
(被告国の主張の要点)
原告P1は,上記(2)アの(被告らの主張の要点)で主張したとおり,日本の居住者に当たるから,原告会社の主張はその前提を欠き失当である。イ
争点18(国税通則法67条1項ただし書の「正当な理由」の有無)について
(原告会社の主張の要点)

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(ア)仮に,原告P1が日本の居住者に該当するとしても,次のとおり,原告会社には,役員報酬等に係る源泉所得税額を法定納期限までに納付しなかったことにつき正当な理由(国税通則法67条1項ただし書)がある。
すなわち,原告会社における源泉所得税の取扱いに関しては,国内の総務管理業務を担当していたP22会長が実質上最終の決定権限を有していたところ,P22会長は,原告P1から日本の非居住者であるという申告を受けていた。また,P22会長は,原告P1が生計を一にする家族と住む居宅を米国内に有し,米国の永住権を取得し,健康保険も日本ではなく米国で加入し,原告会社の業務の合間を縫って頻繁に米国に帰国していたことなどの事情を認識していたことに加えて,原告P1が日本の非居住者であることを判断する際,念のため,原告P1が,米国において米国の居住者として税務申告を行っていたことも確認している。
(イ)そもそも,源泉徴収義務は,本来の納税義務と異なり,金員の支払時において即時に確定する性質のものであるから,源泉徴収義務者である原告会社の源泉所得税の判断についても,P22会長は,原告P1に対する金員支払時点における上記(ア)で述べた各事実に基づいて判断せざるを得ず,役員1人の源泉所得税の取扱いの判断のために,企業が膨大な時間を掛けて資料を取りそろえ,課税庁が行うような専門的調査を行うことはおよそ不可能である。
(被告国の主張の要点)
(ア)国税通則法67条1項ただし書に規定する「正当な理由」がある場合とは,その納税義務の不履行が,通常の状態において源泉徴収義務者が知り得ることができなかった場合や,その責めに任じられない外的事情による場合等が考えられ,法の不知は正当な理由とはならない。

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(イ)仮に,P22会長が,原告P1から,日本の非居住者であるとの申告を受けていたとしても,日本の非居住者に該当するか否かは,源泉徴収義務者である原告会社が独自に判断すべき性質のものであるから,原告P1の申告に従っていたことのみをもって,源泉徴収義務に係る国税の不納付につき正当な理由があるとはいえないことは明らかである。また,P22会長において,原告P1の家族が米国に居住していることや,原告P1が米国で税務申告をしていたことなどの事実を確認していたとしても,原告P1の我が国での滞在日数や出入国の状況,原告会社内での原告P1の職務の状況等に照らせば,日本の非居住者である旨の原告P1の申告について合理的な疑念を抱くことは当然に可能であったということができる。さらに,原告P1が我が国の健康保険に未加入であることは,そもそも,原告会社が健康保険法に定める義務を履行していないことに起因するものであるし,原告会社の法人税の確定申告書において,原告P1の代表者の住所として本件旧肩書地が記載されていたことなどの諸事情を総合勘案すれば,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,不納付加算税の趣旨に照らしても,なお納税者に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合ではないことは明らかである。
以上によれば,
原告会社につき国税通則法67条1項の
「正当な理由」
があるとする原告会社の主張は失当である。

争点19(原告会社に対してされた質問検査権行使の違法性の有無)について

(原告会社の主張の要点)
上記(2)サの(原告P1の主張の要点)で原告P1が主張した関東信越国税局の職員による質問検査権の行使は,原告会社に対しても同様に実施されているところ,上記(2)サと同様の理由から,原告会社に対してされ
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た質問検査権の行使は,重大な違法行為であって,かかる重大な違法手続を経てなされた本件各源泉所得税課税処分は,いずれも取り消されなければならない。
(被告国の主張の要点)
上記(2)サの(被告国の主張の要点)で述べたとおり,関東信越国税局の職員がした原告らに対する調査は適法であるから,原告会社の主張は失当である。
第3
1
当裁判所の判断
争点1(本件更正処分のうち確定申告額を超えない部分の取消請求についての訴えの利益の有無)について

(1)被告国は,原告P1の平成15年分の所得税に係る更正処分(本件更正処分)の取消しを求める訴えのうち,原告P1が平成15年分確定申告により自ら確定させた納付すべき税額を超えない部分の取消請求は,訴えの利益を欠き不適法である旨主張する。そこで,この被告国の主張の当否につき検討する。
(2)ア所得税のように納付すべき税額の確定手続につき申告納税方式によることとされている国税においては,納付すべき税額は,原則として納税者のする申告により確定し(国税通則法15条,16条1項1号,2項,所得税法120条1項参照),納税者が自らした申告内容を当該納税者に有利な内容に変更するには更正の請求の方法(国税通則法23条等)によらなければならない。このように申告納税制度が採られている国税において,確定申告書に記載された事項の過誤の是正につき更正の請求という特別の手続が設けられているのは,課税標準等の決定は最もその間の事情に通じている納税者自身の申告に基づくものとし,その過誤の是正は,法律が特に認めた場合に限るものとすることが租税債務を可及的速やかに確定させるべき国家財政上の要請に応ずるものであり,納税者に対しても過当な不
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利益を強いるおそれがないと考えたからであると解される(最高裁昭和38年(オ)第499号同39年10月22日第一小法廷判決・民集18巻8号1762頁参照)。
このような更正の請求の手続が設けられた趣旨に照らすと,申告に係る納付すべき税額等の更正処分を受けた納税者は,申告の錯誤が客観的に明白かつ重大であって法の所定する方法以外にその是正を許さなければ納税義務者の利益を著しく害すると認められるといった特段の事情がある場合を除き,当該更正処分のうち申告に係る納付すべき税額を超えない部分については,上記更正の請求の手続を経ない限り,抗告訴訟により取消しを求めることはできないというべきである(前掲昭和39年10月22日第一小法廷判決参照)。

これを本件についてみるに,前提事実(8)ア記載の事実によれば,原告P
1は,平成16年3月15日,西川口税務署長に対し,平成15年分の所得税につき総所得金額を3289万1030円とし,納付すべき税額を6万2200円とする申告
(平成15年分確定申告)
をしたことが認められ,
原告P1が平成15年分確定申告につき更正の請求をしていないことは当事者間に争いがない。そうすると,本件更正処分の取消しの訴えのうち,平成15年分確定申告により原告P1が自ら確定させた納付すべき税額を超えない部分の取消しを求める部分は,上記アの特段の事情が認められない限り,不適法ということになるものと解される。
(3)アこの点に関して,原告P1は,平成15年分確定申告は錯誤に基づいてされたものであり,更正の請求をしていないことにも錯誤があるから,更正の請求の手続を経ることなく本件更正処分の取消しの訴えを提起することを許容する特段の事情がある旨の主張をし,その根拠として,①

成15年分確定申告には原告P1の意思と確定申告の担当者であるP17税理士のした表示との間に齟齬があること,②

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原告P1は,P17税

理士と共に川口市役所を訪問し,被告川口市の担当者に対して原告P1が日本の居住者に該当しない旨を説明したところ,上記担当者が納得して課税処分を取り消したことから,所得税についても日本の非居住者として処理されることになると考えたことなどを挙げる。

しかし,上記①の点については,証拠(乙43,44)によれば,平成15年分確定申告書は,原告P1の委任を受けたP17税理士が税理士法2条の税理士業務として作成したものであることが認められるから,平成15年分確定申告につき錯誤があるか否かは,民法101条の規定に基づき,代理人であるP17税理士について決せられるべきであるということになる。したがって,代理人であるP17税理士が平成15年分確定申告書の中でした表示と本人である原告P1の真意との間に齟齬があるとしても,P17税理士自身がした表示行為(代理行為)に錯誤があるとはいえないから,平成15年分確定申告にはそもそも錯誤があるとはいえない。また,この点をおくとしても,平成15年分確定申告は税務申告の専門家であるP17税理士が代理人として関与していたのであるから,原告P1としては,P17税理士と十分な意思の疎通を図ることにより自らの意思を的確に反映させた申告をすることが可能であったということができる。そうすると,仮に原告P1が主張するような錯誤が平成15年分確定申告に存したとしても,そのような錯誤が生じた原因は,原告P1とP17税理士との間で十分な意思の疎通を欠いたことにあるというべきであるから,平成15年分確定申告の是正を許さなければ納税義務者である原告P1の利益を著しく害すると認められるといった特段の事情があるとはいえない。
以上によれば,原告P1の上記①の主張は採用することができない。

次に,上記②の点については,国税である所得税と地方税である住民税が課税主体を異にする別個の税であることは,上場会社である原告会社の
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代表取締役を務めていた原告P1は当然に知っていたものと考えられる上,上記イで説示したとおり,平成15年分確定申告を代理したP17税理士は,原告P1と被告川口市の担当者との交渉に同行するなどして原告P1に対してされた本件各課税処分に関する一連の問題に深く関与していたことが認められるから,原告P1は,P17税理士から,平成15年分確定申告書に記載された事項の過誤を是正するには,別途,国税通則法23条所定の更正の請求の手続を経る必要があることの説明を受け得る立場にあったということができる(なお,原告P1は,更正の請求の手続を経ずに取消しの訴えを提起することを許容すべき特段の事情として,被告川口市の職員から所得税につき更正の請求をする必要がある旨の教示を受けなかったことも挙げているが,先に説示したとおり,所得税と住民税は課税主体を異にする別個の税であるから,住民税を担当している被告川口市の担当者が,原告P1に対し,国税である所得税につき更正の請求をすることを要する旨の教示をしなければならないとはいえない。よって,この点に関する原告P1の主張に理由がないことは明らかである。)。そうすると,原告P1が更正の請求の手続を経ていないことについても上記アの特段の事情があるとはいえない。

そして,原告P1が主張する他の事情を見ても,平成15年分確定申告の錯誤が客観的に明白かつ重大であって更正の請求を経ることなくその是正を許さなければ原告P1の利益を著しく害すると認められる特段の事情があることを認めるに足りるものは見当たらない。

(4)以上によれば,本件更正処分の取消しの訴えのうち,平成15年分確定申告により原告P1が自ら確定させた申告額を超えない部分(総所得金額3289万1030円,納付すべき税額6万2200円を超えない部分)の取消しを求める部分については,取消訴訟を提起することは許されないものとして不適法であり,却下を免れないということができる。

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2
争点2(被告川口市が原告P1に対してした平成15年度分,平成17年度
分及び平成18年度分の各住民税賦課決定処分の取消請求の訴えの利益の有無)について
(1)被告川口市は,住民税の減額更正処分は,課税標準の内容の変更に基づき再計算された税額による新規の賦課決定という性格を有するから,原告P1が本件訴えの中で取消しを求めるべき対象は,原告P1に対してされた平成25年3月14日付け住民税変更決定処分であり,川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした平成15年度分,平成17年度分及び平成18年度分の各住民税の賦課決定処分について取消しを求める原告P1の各訴えは,いずれも訴えの利益を欠き不適法である旨主張する。そこで,以下,この被告川口市の主張の当否につき検討する。
(2)ア所得税その他の国税につき決定ないし更正処分がされた後において,いわゆる減額更正処分(再更正処分を含む。以下同じ。)がされたときは,当該減額更正処分は,それにより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり(国税通則法29条2項参照),減額更正処分の理由のいかんにかかわらず,当初の処分とは別個独立の課税処分ではなく,それによって税額の一部取消しという納税者に有利な効果をもたらす当初の処分の変更としての性格を有するものであると解される。
したがって,納税者は,上記の減額更正処分に対してその取消しを求める訴えの利益はなく,専ら減額された当初の処分の取消しを請求することをもって足りるものと解される(最高裁昭和52年(行ツ)第12号同56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁)。このような国税に関する理解を地方税である本件の住民税にも同様に当てはめると,川口市長が原告P1に対して賦課した平成15年度分,平成17年度分及び平成18年度分の各住民税に関して原告P1がその訴えの中で取消しを求めるべき対象は,川口市長が平成20年12月3日付けでした当初の処
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分であり,その後にされた平成25年3月14日付け住民税変更決定処分ではないということになる。

この点に関し,被告川口市は,自らの主張の根拠として,国税である所
得税と地方税である住民税とでは課税処分の方法等に違いがあることなどを挙げる。
しかし,地方税法20条の9の2第3項は,「すでに確定した納付し,又は納入すべき税額を減少させる更正は,その更正により減少した税額に係る部分以外の部分の地方税についての納付又は納入の義務に影響を及ぼさない」旨を規定しているところ,同項の規定内容は,国税通則法29条2項の規定(「既に確定した納付すべき税額を減少させる更正は,その更正により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。」)と同様の内容であることによれば,特段の事情がない限り,国税と同様の取扱いをすることが相当であると解される。そして,被告川口市の主張を見ても,減額更正処分がされた後の手続につき所得税(国税)と住民税(地方税)とで異なる取扱いがされていることを認めるに足りる事情は見当たらないことによれば,減額更正がされた場合の取消しの対象は,所得税と地方税とで同様の取扱いをすることが相当であると解される。よって,この点に関する被告川口市の主張を採用することはできない。
(3)以上によれば,原告P1の平成15年度分,平成17年度分及び平成18年度分の住民税に係る取消しの訴えにおいて原告P1が取消しを求めるべき対象は,川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした平成15年度分,平成17年度分及び平成18年度分の各住民税の賦課決定処分(ただし,平成25年3月14日付け住民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)であるというべきであるから,その取消しを求める原告P1の本件各訴えはいずれも適法であるということができる。
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3
争点3(1),(2)及び争点17(原告P1の日本の居住者該当性等)について
(1)ア所得税法は,日本の居住者には所得税を納める義務がある旨規定し(同法5条1項),日本の非永住者以外の日本の居住者は,国内及び国外の全ての所得について所得税を納める義務がある旨を規定する(同法7条1項1号)。
本件において,被告国は,原告P1は本件各課税年中において日本の居住者であったから,そのことを前提としてされた本件各所得税課税処分はいずれも適法である旨主張するのに対し,原告らは,原告P1は本件各課税年において日本の非居住者であったから,本件各所得税課税処分のうち原告P1が日本の居住者であることを前提としてされた部分は違法である旨主張する。
そこで,以下,原告P1が本件各課税年において日本の居住者であったと認められるか否かにつき検討する。

所得税法2条1項3号は,同法所定の「居住者」につき「国内に住所を
有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。」と定義し,日本の居住者に該当するか否かについては,課税年度において国内に住所又は居所を有するか否かにより判定することとしている。
所得税法は,日本の居住者を判定する際の要件となる「住所」の意義について明文規定を置いていないところ,「住所」とは,反対の解釈をすべき特段の事由がない以上,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指し,一定の場所がその者の住所に当たるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきであると解される(最高裁昭和29年(オ)第412号同年10月20日大法廷判決・民集8巻10号1907頁,
最高裁昭和32年
(オ)
第552号同年9月13日第二小法廷判決・裁判集民事27号801頁,最高裁昭和35年(オ)第84号同年3月22日第三小法廷判決・民集1
-61-

4巻4号551頁,最高裁平成20年(行ヒ)第139号同23年2月18日第二小法廷判決・裁判所時報1526号2頁参照)。そして,生活の本拠たる実体を具備しているか否かを判断する際には,①②

職業,③

その者の所在,

生計を一にする配偶者その他の親族の居所,④

資産の所

在等の客観的事実に基づき総合的に判定すべきであり,これに対し,主観的な居住の意思は,客観的な居住の事実に具体化されていることが通常であるため,生活の本拠の判定において無関係であるとはいえないが,居住の意思は必ずしも常に存在するものではなく,しかも,外部から認識し難い場合が多いことによれば,補充的な考慮要素にとどまるというべきである。

そこで,以下,上記イの判断枠組みに基づき,本件各所得税課税処分の
適法性を判断する前提として,原告P1が本件各課税年中において日本の居住者であったと認められるか否かにつき検討を進めることとする。(2)ア前記(1)イで説示したとおり,
ある者の生活の本拠に関する判断は,
様々
な客観的事実に基づき総合的に判定されるべき性格のものであるが,生活の本拠があるというためには,その者が特定の場所(国)に一定の期間滞在を継続することが不可欠であると考えられるから,その者の所在(日本国内での滞在日数)や滞在に必要となる住居の有無は,生活の本拠の判定の際の重要な判断要素になるものと解される。また,この点に関連して,我が国では,住民基本台帳法に基づく住民登録の制度が整備されているところ,この住民登録の制度は,市区町村の住民をその住所地の住民票に登録し,その居住関係等を明らかにするために設けられたものであるから(同法1条),住民登録の状況は,その者の所在や住居に係る客観的事実と併せ,生活の本拠を判定する上で重要な判断要素になり得るものであると解される。

そこで,まず,原告P1の所在(本件各課税年における日本国内での滞
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在日数)についてみるに,前提事実(2)アによれば,①
本件各課税年に

おける原告P1の日本国内での滞在日数は,平成14年が298日,平成15年が297日,
平成16年が330日,
平成17年が269日であり,
いずれも日本国内での滞在日数が海外での滞在日数を大きく上回っていること(最も滞在日数の少ない平成17年でも全体の74%であり,最も滞在日数の多い平成16年では全体の90%であること),②
原告P1

が本件各課税年中において1か月間全く日本国内に滞在しなかった月は存しないことが認められ,これらの事情によれば,原告P1は,本件各課税年中の期間の大部分につき日本国内に滞在していたと評価することができる。
次に,原告P1の我が国での住民登録の状況についてみると,前提事実(2)イによれば,原告P1が本件各課税年中に住所地の登録を日本国内から米国に異動したのは,<ア>
月10日までの間,<イ>

平成16年12月23日から平成17年3

同年12月23日から平成18年1月9日まで

の間の2回であることが認められる。このうち,上記<イ>については年末年始を含む18日間にすぎず,
上記<ア>については比較的長期
(約3か月)
であるものの,上記<イ>と同様に年末年始を含んでいる上,平成17年1月10日から同年2月21日までの間は,原告P1は住民登録をせずに日本国内に滞在していたことが認められるから(別紙5の番号11及び12並びに別紙7参照),住民登録の状況が原告P1の実際の滞在状況を反映しているとはいえない。
このように,原告P1が本件各課税年中において日本国内に長期にわたり継続して滞在し,その大部分の期間について日本国内に住民登録をしていたということは,原告P1が日本国内に生活の本拠を有していたことを強く推認させる事情であるということができる。

次に,原告P1が上記イで認定した日本国内での滞在中の居住場所(住
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居)についてみるに,前提事実(2)イによれば,原告P1は,本件各課税年において日本国内にある自己又はP3名義の住居(平成14年から平成15年1月21日までは本件旧家屋,同日以降は本件家屋)に居住していたことが認められる。
そして,証拠(乙9,原告P1本人[49頁])によれば,本件旧家屋は居住用の建物として原告P1が取得し,昭和57年に渡米するまで居住していた建物であることが認められるところ,原告P1は,長女P8が日本国内の中学校に通学する際の住居とするため,平成13年に本件旧家屋を修補し,その後,本件旧家屋が収用により平成15年3月25日に取り壊された後は,自らの資産管理会社であるP3名義で居住用建物である本件家屋を取得し,本件旧家屋に置かれていた家財道具一式を移転させていることが認められる(なお,証拠(甲167,原告P1本人[51頁])によれば,本件家屋の中には冷蔵庫,電子レンジを始めとする調理用具やベッド,
アンティークのたんすなどが置かれていたことが認められる。。

これらの本件に顕れた事実を総合考慮すると,原告P1は,本件旧家屋の取壊しにより日本国内での常用的住居を失うことになったため,その取壊しに先立ち,本件旧家屋に代わる新たな常用的住居として本件家屋を取得したものとみることができる。そうすると,本件旧家屋及び本件家屋は,本件各課税年において原告P1の生活の本拠となり得るものであったということができる。
(3)アまた,所得税法施行令14条1項1号は,継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する者は日本国内に住所を有する者と推定する旨を規定している。したがって,同号によれば,日本国内でどのような職業に従事しているかということは,その者の生活の本拠を判定する際の重要な判断要素になるということができる。

そこで,原告P1の本件各課税年における職業への従事状況についてみ
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るに,前提事実(1)イ及び証拠(乙24の1,乙46の1-1ないし乙46の13-3,
乙48の1ないし乙48の7)
によれば,


原告P1は,

平成13年12月11日,原告会社の代表取締役社長に復帰していること,②

原告P1が代表取締役社長に復帰する以前には,原告会社の取締役の
うち代表権を有する者は,P23(社長。以下「P23前社長」という。)と原告P1(会長)の2名であったのに対し,原告P1が代表取締役社長に復帰した後は原告P1のみとなったこと,③

代表取締役1名の体制は,

本件各課税年中,継続されたことが認められる。
そして,原告会社の職務権限規程(乙27)を見ると,社長は,会社を代表し,定款及び取締役会で定められた方針に基づき又は自ら諸方針を立て会社の業務の執行を統括するとされ,新規契約の締結・変更・解約を始めとする業務執行に関連する事項につき広範な決定権限を有するとされている。また,取締役会規程(乙28)や経営会議規程(乙29)を見ると,原告会社の定例の取締役会や社長の諮問機関に当たる経営会議は,原則として毎月1回開催され,社長が各会議の議長を務めることとされているほか,金銭出納に関する権限規程(乙30)や稟議規程(乙31)を見ると,社長は,原告会社の財務等の執行に関する事項についても詳細な判断を求められる立場にあったことが認められる。
これらの内部規程から明らかとなる原告会社の代表取締役社長の地位に照らすと,原告会社の業務執行において代表取締役社長が果たす役割は他の取締役と比べて極めて大きく,このような代表取締役社長としての役割を原告P1が適正かつ迅速に遂行するためには,通信・交通手段が相当程度発達している現在においても,原告会社の本店や事業所がある日本国内に生活の本拠を置き,日本国内に継続して居住していることが不可欠であると解される。
これに対し,原告P1は,<ア>

原告P1が代表取締役社長に復帰した

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のは,原告会社の株式をP10に上場するための臨時的な措置であり,代表取締役社長に復帰した平成13年12月11日の前後において,原告会社での勤務の実態に変化はなかった旨の主張や,<イ>

原告会社では会長

のP22会長が業務執行の中心を担うとされ,原告P1が米国内に滞在しても問題が起きない体制が本件各課税年までに構築されていた旨の主張をする。しかし,上記<ア>の主張については,原告P1は,原告会社の株式が上場された平成16年12月以降も代表取締役社長を続けている上,上記のとおり,平成17年の日本国内での滞在日数は269日に上ることによれば,代表取締役社長への復帰が,原告会社の株式上場のための臨時的なものであったとは認め難い。また,上記<イ>の点についても,原告P1の主張を前提とすると,原告会社の内部規程が実際の業務執行の状況と異なっていたことになるが,証拠(乙27ないし31,原告P1本人[55頁,56頁])によれば,原告会社は株式を上場するに当たり,上場の基準に適合する形で内部規程を整備したことが認められるから,原告会社が株式を上場した平成16年12月を含む本件各課税年において内部規程と異なる体制を採っていたとは考え難い。また,仮に,原告P1が主張するように,原告会社においてP22会長を業務執行の中心とする体制が採られていたというのであれば,原告P1が代表取締役社長に復帰した際に,併せてP22会長についても代表権を有する取締役に就任していたと考えられるところ,P22会長が本件各課税年中において原告会社の代表権を有する取締役に就任した事実はない。よって,この点からも原告P1の上記各主張は不自然であり採用することができない。
さらに,証拠(原告P1本人[55頁,56頁])及び弁論の全趣旨によれば,原告会社では,P10への株式の上場を控え,証券会社の担当者との折衝などを継続して行う必要が生じていたところ,原告P1は,原告会社の代表取締役社長として,これらの折衝等に関与していたことが認め
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られる。そうすると,これらの折衝を円滑に進めるためにも,原告P1が日本国内に継続して居住している必要があったと考えられる(なお,原告P1は,本件各課税年の大半につき日本国内に住民登録をしていた理由として,住民登録を米国に異動させると印鑑証明書及び住民票の取得ができなくなり,
原告会社の業務に支障が生じたことを挙げるが,
かかる事実は,
本件各課税年において原告P1が原告会社の代表取締役社長として日本国内に生活の本拠を有して継続して居住する必要があったことを端的に示すものであるということができる。)。

上記イで検討したところによれば,原告P1の日本国内での職業への従事状況は,原告会社の代表取締役社長に復帰した平成13年12月11日の前後において大きく変化したことが認められ,かかる事実は,原告P1が本件各課税年において日本に生活の本拠を有していたことを推認させる事情であるということができる。

(4)アこれに対し,原告らは,①

長女P8を除く本件家族は,本件各課税年

においていずれも米国内に居住していたこと,②

原告P1は,本件各課

税年において本件各米国家屋その他の多数の財産を米国内に所有していたこと,③

原告P1は,平成14年には5回,平成15年には4回,平

成16年には2回,平成17年には6回にわたり,忙しい仕事の合間を縫って米国に帰国し,米国内に居住する本件家族と交流を持ったこと,④課税庁は,平成13年分までの原告P1の所得税や住民税に関しては原告P1を日本の非居住者と認定し,原告P1に対し何らの課税処分もしていないことなどを挙げて,本件各課税処分は明らかに誤っている旨の主張をする。

しかし,前記(1)イの生活の本拠の判定に関する判断の在り方の中で既に説示したとおり,生計を同一にする家族が海外に居住していることや海外の特定の国に多数の資産を保有していることは,その者の生活の本拠を
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判定する際に考慮される一つの要素ではあるものの,生活の本拠の認定は,その者の所在や職業などを始めとする様々な客観的事実を踏まえて総合的に判定されるものであるから,原告P1が主張する上記①及び②の各事情が認められたとしても,そのことから直ちに本件各課税年中における原告P1の生活の本拠が米国内にあったと評価することは相当とはいえない。
かえって,証拠(甲29,31,160[4頁],乙7,25の1及び乙25の2,原告P1本人)によれば,<ア>

長女P8は,日本国内の中

学校に編入して教育を受けるため,
平成13年1月16日,
日本に入国し,
その後,平成14年は292日,平成15年は302日,平成16年は262日,平成17年(8月10日まで)は95日間にわたり日本国内に滞在し,平成13年1月27日から平成14年7月17日までの間は川口市γ×番7号に,同年8月29日から平成15年3月20日までの間は本件旧肩書地に,同日から平成15年11月15日までの間及び平成16年2月23日から平成17年2月25日までの間は本件肩書地に住民登録をした上,平成13年5月頃から平成15年7月頃までは,本件旧家屋又は本件家屋で原告P1と同居していたことが認められる。
また,<イ>

原告P1の収入の状況をみてみると,原告P1が本件各課

税年中に原告会社から得た報酬の合計額は2億1000万円(さらに,原告P1は,平成14年9月17日にストックオプションの付与を受け,平成17年3月24日に上記ストックオプションを行使して7億0530万円の経済的利益を取得している(甲154)。)に上るのに対し,P2社から得た役員報酬の合計額は邦貨に換算して9000万円程度にすぎないことが認められる(前提事実(5))。そうすると,本件各課税年における原告P1の主な収入源は,原告会社の代表取締役社長として日本国内で職務に従事することによる対価である原告会社役員報酬であったとい
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うことができる。さらに,<ウ>

原告P1は,本件各課税年中において,

P3名義により日本国内にオルゴール等を始めとする多数の資産を有していたことが認められること(なお,本件各課税年後の事情であるが,平成18年12月31日当時では,原告P1が日本国内に有していた財産の総額は現金預金が約1億7400万円,原告会社の株式が約8億7600万円に上り(乙35),本件各課税年中にもそれに近い財産を有していたことがうかがわれる。)からすれば,原告P1の日本国内と米国内の資産の多寡をもって原告P1が日本と米国のいずれに生活の本拠を有していたか判定することは困難であるといわざるを得ない。
以上の本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,本件家族の居所や原告P1の資産の所在をもって,原告P1が本件各課税年において米国の居住者であったとは認められず,原告らの上記①及び②の各主張は採用することはできない。

次に,上記③の点については,日本国内に生活の本拠を有する者が海外に居住する家族と交流するために,一時的に日本を出国して海外の特定の国を訪問することは一般に見られることであるから,原告P1が本件各課税年中に,本件家族が居住する米国を複数回にわたり訪問し,米国内に短期間滞在していることをもって,原告P1の生活の本拠が米国内にあったことを示す事情であるとはいえない。
さらに,上記④の点については,確かに,<ア>

平成13年分までの所

得税及び住民税に関しては,課税庁は,原告P1に何らの課税処分もしておらず,
<イ>

原告P1の平成13年の日本国内での滞在日数
(301日)

は,平成14年の滞在日数(298日)とほぼ同じであることが認められる。しかし,我が国の所得税法は申告納税方式を採用し,所得税の課税標準等及び税額等の計算,申告書の提出及び納税は,基本的に納税者の自発的な行為に委ねることとしているため,課税庁が申告書を自主的に提出し
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ない者の全てにつき日本の居住者に該当するか否か等を調査して決定処分等をすることは不可能である。また,無申告者が日本の非居住者に該当するか否かを課税庁が認定することを定めた法令の規定も存在しない。さらに,日本の居住者に該当するか否かについては,課税庁が課税年度ごとに個別に判定するものであるから,平成13年分までの所得税及び住民税について原告P1が何らの課税処分も受けていなかったことをもって原告P1が本件各課税年につき課税処分を受けることが不当であるともいえない。
なお,平成13年の原告P1の日本国内での滞在日数が平成14年の滞在日数とほぼ同じであることは,原告会社の代表取締役社長であったP23前社長が平成13年に体調を崩し原告会社の業務が一時混乱したことや,原告会社の株式のP10上場に係る事務のため,原告P1が代表取締役社長に復帰した同年12月11日以前から原告P1に対して求められる役割が徐々に増えていたこと(甲171の1及び甲171の2,甲172の1ないし甲172の17,原告P1本人[20頁,56頁],原告ら準備書面(16)9頁)がその背景にあると考えられる(なお,原告P1の平成12年までの日本国内での滞在日数(平成10年198日,同11年192日,同12年211日)と比較して平成13年における原告P1の日本国内での滞在日数が顕著に増加していることは,上記認定を裏付ける事情であるということができる。)。そうすると,原告P1の平成13年と平成14年における日本国内での各滞在日数に大きな変化がないことは,本件各課税年中における原告P1の日本の居住者該当性を否定するに足りる事情であるとはいえない。
(5)さらに,証拠(甲66の2,甲67の2,乙3ないし5,6の1,乙11,原告P1本人[70頁])によれば,①

原告P1の住所は,<ア>

原告会

社の商業登記上,平成14年2月27日から平成15年3月19日までは本
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件旧肩書地とされ,平成15年3月20日以降は本件肩書地とされていたこと,<イ>P3の商業登記上,平成13年6月28日から平成15年3月31日までは本件旧肩書地とされ,平成15年4月1日以降は本件肩書地とされていたこと,②

原告P1は,金融機関への提出書類や土地の売買契約書等

の中では本件旧肩書地又は本件肩書地を使用していたことが認められるところ,このように,原告P1が本件各課税年において本件旧肩書地又は本件肩書地を自らの住所として外部に表示していたということは,原告P1の本件各課税年当時の生活の本拠が本件旧肩書地又は本件肩書地にあったことを推認させる一つの事情であると評価することもできる。
(6)ア以上によれば,
本件各課税年中における原告P1の住所は,
本件旧家屋,
本件家屋の各所在地である川口市α×番地の1(本件旧肩書地)又は同市β×番11号(本件肩書地)であったと認められ,そうすると,原告P1は,本件各課税年において「国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」という所得税法2条1項3号が規定する要件を満たしていたということができるから,本件各課税年において日本の居住者であったと認められる(なお,原告らは,米国NJ州政府及び米国NJ州租税裁判所が原告P1を米国の居住者と認定していたことを挙げて,原告P1が本件各課税年において米国の居住者であり,日本の非居住者であったことは明らかである旨の主張もしている。しかし,日本の課税庁と米国の課税庁はそれぞれ異なる税法に基づいて課税を行うのであるから,原告P1が米国連邦税法上又は州税法上,米国の居住者として課税を受け,又は受けるべきことは,我が国の所得税法に規定する日本の居住者に該当するという事実と互いに排斥し合う関係にはないということができる。よって,原告P1が米国の法制度ないしは税制度の下で米国居住者に該当すると判定されたことをもって,我が国の課税庁における日本の居住者該当性の判定が左右されるとはいえないから,原告らの上記主張は採用するこ
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とができない。)。

そして,原告P1は,本件各課税年を通じて,本件肩書地及び本件旧肩書地に住所を定め,我が国滞在期間の大半の期間,恒久的住居(恒久的利用のために用意し維持している住居)である本件家屋及び本件旧家屋で起居していたと認められる上,前記(3)で説示したとおり,原告P1は,本件各課税年中において,原告会社の代表取締役社長として本邦内で職務を遂行し,ストックオプションの権利行使に係る利益を含む多額の役員報酬を受領していたことが認められるから,原告P1の重要な利害関係の中心のある国は,原告会社の本店所在地国である日本であるということができる。そうすると,原告P1の恒久的住居の存在する国,重要な利害関係の中心のある国はいずれも日本であるということになるから,原告P1は,新旧日米租税条約上,日本の居住者であるとみなされ,日本の所得税法を適用する上で,日本の居住者として全世界所得課税を受けることになるということができる。

(7)次に,原告P1が平成15年度ないし平成18年度の住民税の納税義務を負うか否かについて検討する。
地方税法は,道府県内に住所を有する個人は道府県民税の納税義務を負い(同法24条1項1号),市町村内に住所を有する個人は市町村民税の納税義務を負う(同法294条1項1号)旨を規定する。
地方税法は,所得税法と同様,住所の意義について明文規定を置いていないところ,「住所」とは,反対の解釈をすべき特段の事由がない以上,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指し,一定の場所がその者の住所に当たるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきであると解される。そして,前記(1)ないし(6)で検討したところによれば,原告P1は,平成15年度ないし平成18年度の住民税の課税期間につき,被告川口市内に住
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所を有する個人であることが認められるから,各年度につき住民税の納税義務を負うものと認められる(原告P1が「日本国民のうち,地方税法の施行地外に居住していた者で帰国して新たに法施行地に居住することとなった者」に当たるとしても,前記認定に係る事情によれば,平成15年度の個人住民税の賦課期日(1月1日)まで引き続いて1年以上日本国内に居住していたといえるし,少なくとも入国後継続して1年以上日本国内に居住することを通常必要とする職業を有する場合に当たるから,本件通達の定めるところによっても,個人住民税の均等割及び所得割を課されることとなる。)。4
争点3(2)(原告P1の日本の非永住者該当性)について
(1)ア所得税法は,日本の非永住者について「居住者のうち,国内に永住する意思がなく,かつ,現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人をいう。」と定義し(同法2条1項4号),日本の非永住者に対しては,国内源泉所得等(同法161条に規定する国内源泉所得及びこれ以外の所得で国内において支払われ,又は国外から送金されたもの)
に対してのみ所得税を課税する旨を定めている
(同法7条1項2号)


前記3で説示したとおり,原告P1は,本件各課税年中において日本の居住者であったと認められるところ,原告P1は,仮に自らが日本の居住者であったとしても,日本の非永住者であるから,本件各課税年中の所得につき納税義務を負うのは国内源泉所得等に限られる旨の主張をする。そこで,次に,原告P1が本件各課税年中において日本の非永住者であったと認められるか否かにつき検討する。

(2)ア証拠(甲7,10ないし14,27の1ないし甲27の6,甲33の1ないし甲33の11,甲46ないし48,60,164,原告P1本人)及び弁論の全趣旨によれば,①

原告P1は,昭和57年に妻P5及び長

男P6と共に渡米し,米国NJ州内の土地及び建物(米国NJ州家屋)を29万米国ドルで購入し,米国での生活を長年にわたり続けたこと(甲2
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7の1ないし甲27の6,甲33の1ないし甲33の11,甲60,164,原告P1本人),②

原告P1と妻P5との間には長男P6のほかに

3人の子供がいるところ,
これら4人の子供
(以下
「本件子供ら」
という。

は,いずれも保育園入園時から米国内の公立学校での教育を受け,母国語は英語で,日本語の能力は十分なものとはいえないこと(甲14,原告P1本人[18頁]),③

原告P1は,平成11年8月18日,本件家族

(米国の国籍を有する次女P9を除く。)と共に米国の永住権を取得したこと(甲7,10ないし13),④

原告P1は,本件各課税年当時,米

国の医療保険に加入していた一方,日本の国民健康保険は自らの意思で加入を中止していたこと(甲46[6頁]),⑤

原告P1は,本件各課税

年当時,米国NJ州の自動車運転免許を所持していた一方,日本の自動車運転免許は所持していなかったこと(甲47,48,原告P1本人[19頁]),⑥

原告P1は,本件各課税年以前から米国の確定拠出型の企業

年金に加入しており,平成25年中には受給資格(20年の納付実績)を取得する見込みであること(原告P1本人[18頁,19頁])が認められる。
これらの本件に顕れた各事実は,いずれも原告P1が本件各課税年中において米国に永住する意思を持っていたことを推認させる事情であるということができる。
特に,原告P1が本件家族(次女P9を除く。)と共に取得した米国の永住権は,米国以外の国籍を有する者が米国内で永続的に居住し,就学や就労をすることを可能とする権利であるから,その取得には米国に永住する意思が不可欠であると解されるところ,上記③で認定したとおり,原告P1が米国の永住権を取得したのは,昭和57年に渡米してから約27年経過後の平成11年8月18日であるから,取得から数年が経過したにすぎない本件各課税年中に米国に永住する意思を喪失するとは考え難い。
-74-

仮に,被告らが主張するように,本件各課税年まで,あるいは本件各課税年中に原告P1が日本国内に永住する意思を有するに至っていたとすれば,原告P1において,米国NJ州家屋その他の米国内の資産の全部又は一部を処分したり,日本国内に米国NJ州家屋と同程度の居住用の不動産を購入したりすることが通常の行動であると考えられるところ,本件全証拠を見ても,原告P1がそのような行為に出たことは認められず,証拠(甲164[6頁],167)によれば,原告P1は,本件各課税年中も,米国NJ州家屋や米国PA州家屋と比較すると狭隘でかつ設備も不十分である本件旧家屋や本件家屋を生活の本拠として使用していたことが認められる。また,日本に永住する意思を有していたとすれば,日本で病気になった場合などに備えるため健康保険に加入すると考えられるところ,原告P1は,本件各課税年において自らの意思で日本の健康保険に加入せず,高額な保険料を支払い米国の医療保険への加入を継続している。これらの原告P1の行動に照らしてみても,原告P1は,本件各課税年当時,米国に永住する意思を有していたものと推認することができる。
また,証拠(甲89の1及び2,甲90,91,160[7頁],原告P1本人[22頁])及び弁論の全趣旨によれば,原告P1は,平成15年10月24日付けで,米国PA州にP3名義で土地・建物(米国PA州家屋)を購入しているところ,その取得費用は45万米国ドル,改装費用は15万米国ドルといずれも多額である上,米国PA州家屋は,約2万坪の敷地の上に住居,ミュージアム,修理工場及び納屋等を有する大規模なものであることによれば,米国に永住する意思を失っていた者が購入する物件であるとは考え難く,原告P1が本件各課税年中の平成15年にこのような米国PA州家屋を取得したことは,その時点で,原告P1が米国に永住する意思を失っていなかったことを推認させる事情であるということができる(さらに,本件各課税年後の事情であるが,原告P1は,平成
-75-

18年に25万米国ドルで購入した米国PA州内の不動産でレストランの経営を始めたり(甲99,160[9頁],169,原告P1本人[22頁]),平成23年に上記レストランの隣の建物を7万米国ドルで購入し,10万米国ドルを支出して改装の上,賃貸したりしているところ(甲160[9頁],原告P1本人[23頁]),これらの原告P1の行為は,原告P1が本件各課税年中にも米国に永住する意思を有していたことを推認させる事情であるということができる。)。
さらに,証拠(甲160[9頁],原告P1本人[25頁])によれば,原告P1は,平成15年頃,愛知県東海市内にあった父の墓を米国PA州内に移築するために東海市に返還したことが認められるところ,墓の移築は繰り返し行うような性質のものではないから,原告P1の当該行為は,平成15年当時において,原告P1が墓の移築予定先の米国PA州に永住する意思を有していたことを示す重要な事情であるということができる。イ
これに対し,
被告らは,


原告P1が,
関東信越国税局の職員に対し,

米国の永住権を返却しようとしたことがある旨の供述をしたことや,②原告P1が米国NJ州租税裁判所に提出した各書面(本件略式判決申立書及び本件宣誓書)の中に,原告P1が日本に永住する意思を有することをうかがわせる記載が見られること,③

原告P1については,少なくとも

平成12年2月1日から平成17年1月4日までの間,妻P5については,少なくとも平成12年2月1日から平成15年12月1日までの間,それぞれ国民年金保険料を納付していたこと,④

原告P1は,本件各課税年

において,北海道芦別市や北海道函館市の不動産を取得したことなどを指摘し,これらの事情は,原告P1が本件各課税年中において日本に永住する意思を有していたことを示すものである旨の主張をする。
確かに,被告らが主張するとおり,証拠(乙36,68,69)によれば,<ア>

原告P1と関東信越国税局の職員との面談結果が記載された文

-76-

書の中には,米国の永住権を返却しようとしたことがある旨の原告P1の供述が記載されていること(乙36[4頁]),<イ>

本件略式判決申立

書の中には,原告P1が日本に永住する意思を持って平成13年に米国NJ州を去り,日本に定住した旨の記載があること(乙68[6枚目,7枚目]),<ウ>

本件宣誓書の中には,原告P1が米国NJ州家屋を去った

後,平成13年から日本に居住しており,米国NJ州に戻る意思はない旨の記載があること(乙69[3枚目])が認められる。
しかし,上記<ア>の点については,原告P1と関東信越国税局の職員との間でされた面談の際の会話の全体像が明らかになっているとはいえない上,原告P1と上記職員との間では,当時,原告P1が日本の居住者に該当するか否かについての協議がされており,原告P1は,上記職員に対し,自らが米国の居住者に該当することを説明した上で,理解を求めていたことが認められるから,そのような中でされた原告P1の供述の一部分のみを取り出し,当該供述の存在をもって原告P1につき日本に永住する意思があったと認定することは相当であるとはいえない。また,上記<イ>の点については,日本と米国のいずれか一方の居住者であると主張して対応しなくてはならない状況に置かれ,日本と米国の双方から二重に課税される事態を回避するために進退極まって米国の弁護士の方針に従ったという原告P1の供述(甲160[10頁],原告P1本人[59頁])は不合理なものとまではいえないし,上記<ウ>の本件宣誓書の記載は,原告P1が日本に永住する意思を有していたと認定するに足りるものとはいえない。しかも,本件略式判決申立書及び本件宣誓書は,いずれも本件各課税年から数年を経た平成22年に作成されたものであるから,これらの文書中に被告らが主張する記載があることをもって,原告P1が本件各課税年中に米国に永住する意思を有していたという上記アの認定を覆すに足りる事情であるとまではいえない。以上によれば,被告らが指摘する上
-77-

記①及び②の各事情は,原告P1が日本の永住者であることを示すものとは認められない。
また,上記③の点については,我が国の国民年金保険料を納付していた事実から直ちに本件各課税年中において,原告P1が日本に永住する意思を有していたとはいえないし,証拠(甲46[6頁])及び弁論の全趣旨によれば,海外に居住する国民年金の被保険者も,所定の期間,保険料を納付することにより国民年金の受給資格を取得することができることが認められるから,納付済みの保険料が無駄になることを避けるために,受給資格を取得するまで保険料の納付を続けたとの原告P1の供述は相応の合理性を有するものであるということができる。よって,上記③の点に関する被告らの主張は採用することができない。
さらに,上記④の点については,証拠(甲104,乙33の1及び2,乙34)によれば,原告P1は,平成14年8月19日には北海道芦別市δ町所在の土地・建物を,また,同年12月22日には北海道函館市内の各土地をP3名義又は原告P1名義でそれぞれ取得していることが認められるが,前者については工場及びその敷地として利用されていたものを購入したことが認められるから,原告P1が同土地上に居住用建物を建築するなどして我が国に永住する目的で取得したものとは考え難いし,後者については墓地に近く,その周辺は空地が多いなど,居住用の建物を建築する敷地としては若干不向きな土地であることがうかがわれる上(甲104,原告P1本人[32頁]),原告P1が上記の各土地上に居住用の建物を建築するなどの行為に出たことはうかがわれない。これらの事情に照らすと,これらの各不動産は投資用やオルゴール等のミュージアムの建設など,居住用以外の目的で取得したものと推認することができ,本件全証拠を見ても,原告P1が我が国に永住する目的でこれらの不動産を購入したことを認めるに足りるものは存しない(前記の原告P1の米国PA州で
-78-

の不動産の取得状況との対比においても,上記各不動産の取得をもって我が国に永住する意思を有していたことを示すものとみることはできない。)。

以上の本件に顕れた事実を総合考慮すると,原告P1は,本件各課税年中において,日本国内に永住する意思を有していたとは認められない。そうすると,原告P1は,本件各課税年中,所得税法2条1項4号の「国内に永住する意思がなく」という非永住者の要件を満たしていたということができる(なお,被告らは,原告P1と妻P5との婚姻関係が平成13年頃には破綻したことを理由として,原告P1は,本件各課税年中において日本に永住する意思を有していた旨の主張もしている。確かに,原告P1は,本件宣誓書(乙69)の中で,妻P5との婚姻関係が破綻し,平成13年から妻P5と別居をした旨の供述をしていることが認められ,原告本人尋問の中でこのような記載をしたことにつき合理的な説明をすることができていないこと(原告P1本人[59頁以下])に照らすと,原告P1と妻P5の婚姻関係が同年頃までに破綻していた可能性があることは否定することができない。しかし,本件全証拠を見ても,原告P1と妻P5との婚姻関係が平成13年頃までに破綻していたことを明確に認めるに足りる証拠は存在しないといわざるを得ないし,仮に原告P1と妻P5との婚姻関係が破綻した状態にあったとしても,上記ア及びイで認定した各事情に照らすと,妻P5との婚姻関係の破綻を理由として原告P1が日本に永住する意思を有するに至っていたとまでは認め難い。よって,この点に関する被告らの主張は採用することができない。)。

(3)ア次に,原告P1が,本件各課税年中,所得税法2条1項4号の「現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人」という要件を満たしていたと認められるか否かについて検討する。
前提事実(2)ア及びイ並びに証拠(甲45,46,乙24の2,原告P
-79-

1本人)
によれば,


原告P1の平成9年の国内外における滞在日数は,

日本国内が137日,国外が228日であり,国外での滞在日数が日本国内での滞在日数を大きく上回っていたこと(乙24の2[1枚目]),②原告P1の平成10年から平成12年までの国内外の滞在日数は拮抗しているものの,
原告P1は,
平成13年に本件旧家屋を修繕するまでは,
日本国内滞在中,原告会社の旧本社の宿直室や川口市内のビジネスホテルに宿泊していたこと
(甲28の1及び甲28の2,
甲45
[9頁,
10頁]

46[13頁],原告P1本人[52頁]),③

原告P1は,平成9年

2月に,原告会社の代表取締役社長を退任し,原告会社の代表取締役社長は,同月から平成13年12月まではP23前社長が務めていたため,原告P1が日本国内に生活の本拠を有していないと原告会社の業務遂行に重大な支障が生じる状況にはなかったと考えられること,④
平成9年か

ら平成12年にかけて,原告P1が1か月間全く日本国内に滞在しなかった月数は,平成9年が3月,平成10年が2月,平成11年が4月,平成12年が3月あり,平成13年以降とは状況が異なっていたと考えられること(乙24の2[1枚目,2枚目])等の事実が認められる。そして,これらの事実に照らすと,原告P1は,平成9年ないし平成12年までの間,日本国内に住所又は居所を有していなかったものと認められ,本件全証拠を見ても,この認定を覆すに足りるものは存しない。
また,証拠(乙24の2)によれば,原告P1の平成13年の日本国内での滞在日数は301日であり,国外での滞在日数を大きく上回っていることが認められるが,平成13年12月に原告会社の代表取締役社長に復帰するまでは原告P1が日本に居住していないと原告会社の業務に支障が生じるという状態にあったとまでは認められない上,上記②で認定したとおり,原告P1は,平成13年に本件旧家屋を修繕するまでは,日本滞在中,原告会社本社の宿直室やビジネスホテルに宿泊していたことによれ
-80-

ば,平成13年については,原告P1の生活の本拠が日本にあったとも継続的に日本に居所を有していたとも認めるに足りない。

以上によれば,原告P1は,平成9年から平成13年までの間において引き続いて日本国内に住所又は居所を有していたとは認められないから,本件各課税年において「現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人」という要件を満たしていたということができる。
(4)以上によれば,原告P1は,本件各課税年において「居住者のうち,国内に永住する意思がなく,かつ,現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人」という所得税法2条1項4号の各要件を満たしていたということができるから,本件各課税年において日本の非永住者であったと認められる。そうすると,本件各課税年において原告P1が納税義務を負うのは国内源泉所得等に限られるから,本件各課税処分のうち,原告P1が日本の居住者であり,かつ,永住者であることを前提としてされた部分は違法であるということができる。
5
争点4(本件オルゴール等の譲渡所得に対する課税の可否)について
(1)前記4で認定したとおり,原告P1は,本件各課税年において日本の非永住者であったということができるから,原告P1の本件各課税年中の所得のうち我が国の所得税法に基づき納税義務を負うのは,国内源泉所得等に限られる(同法5条1項,7条1項2号)。
そこで,以下,本件オルゴール等の譲渡所得がこの国内源泉所得等に該当すると認められるか否かにつき検討する。
(2)ア所得税法161条1号は,「国内において行う事業から生じ,又は国内にある資産の運用,保有若しくは譲渡により生ずる所得(中略)その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるもの」は国内源泉所得に該当する旨を規定している。そうすると,本件オルゴール等の譲渡所得が所得税法161条1号が規定する国内源泉所得に該当するというには,本件オ
-81-

ルゴール等が,P3への譲渡当時,日本国内にあったことを要するということになる。なお,本件オルゴール等の譲渡所得が国内源泉所得に該当すること,すなわち,本件オルゴール等が日本国内にあったことについての主張立証責任は被告らにあるものと解される。
この点に関して,被告らは,本件オルゴール等がその譲渡当時,日本国内にあったことの根拠として,①

本件オルゴール等がその譲渡当時,北

海道芦別市内や原告会社の本社の内部にあった旨の原告P1の西川口税務署職員に対する供述や,②

原告P1が館長を務める北海道芦別市所在の

アンティーク・オルゴール館(以下「P24」という。)に,平成7年8月当時,64台のアンティークオルゴール等が展示されていた旨の新聞記事の存在を挙げる。

確かに,<ア>

西川口税務署法人課税第一部門の職員のP25作成に係

る平成15年1月27日付け質問調書(以下「本件質問調書」という。)を見ると,原告P1は,P25に対し,P3に譲渡する前のオルゴールが「芦別,原告会社の本社,米国にあった」旨の供述をしていること(乙74[1枚目]),<イ>

平成7年8月に掲載された新聞記事(以下「本件

新聞記事」という。)には,当時,P24に64台のオルゴール等が展示されていた旨の記載があること(乙73)が認められ,これらの事実は,被告らの上記主張を裏付けるものであるようにもみえる。
しかし,本件質問調書の前後の文脈は極めて曖昧である。また,質問の対象とされたオルゴールは,原告P1が約10年前から調達していたものであり,しかも,原告P1が回答したオルゴールの所在は3箇所にわたることによれば,原告P1の回答を見ても,本件オルゴール等のうち,どのオルゴールが,どこにあったのかという点を特定することはできないといわざるを得ない。そうすると,本件質問調書の記載をもって,本件オルゴール等の譲渡当時,本件オルゴール等の全部又は一部が日本国内にあった
-82-

ことを認めることは困難である。
また,
本件新聞記事の記載内容を見ても,
証拠(原告P1本人[2頁])及び弁論の全趣旨によれば,原告P1は,P24が開館された平成7年以前から,P3にオルゴール等を譲渡していたことが認められるから,同年8月当時,P24に展示されていた64台のオルゴール等の中に本件オルゴール等が含まれていたことが本件新聞記事により明らかにされたともいえない。かえって,証拠(甲16,122,123,178,乙74,原告P1本人)によれば,①
原告P1は,米

国PA州に居住する友人で,アンティークオルゴールの専門業者であったP18から,米国内で本件オルゴール等の大部分を購入していたこと(甲16,122,原告P1本人[1頁,2頁,34頁]),②
本件オルゴ

ール等の多くは100年以上前に作られた古いものであり,演奏可能な状態にするには長期にわたる修理を要するものが多かったこと(甲178,原告P1本人[1頁],弁論の全趣旨),③

原告P1は,本件オルゴー

ル等を一旦米国PA州内の倉庫に保管し,P18に依頼するなどして必要な修理を施した上で,演奏可能な状態になったものをP3に譲渡し,P24などに展示していたこと
(原告P1本人
[3頁,
5頁]弁論の全趣旨)




平成14年譲渡オルゴール等の譲渡の際に作成された同年5月5日付
けのインボイス(乙76)上では,原告P1の住所表示は米国NJ州家屋の所在場所が記載され,平成14年譲渡オルゴール等の各価格及び合計金額はいずれも米国ドルで表示されていたこと,⑤

本件オルゴール等を日

本に輸送する際に要した費用はP3が負担したことがうかがわれること(原告P1本人[5頁],弁論の全趣旨)などの事実が認められる。これらの本件に顕れた各事実に照らすと,本件オルゴール等は,米国内でP3に譲渡されたと強く推認することができ,本件全証拠を見ても,本件オルゴール等が原告P1からP3に譲渡された当時において日本国内にあり,日本国内で譲渡されたと認めるに足りるものは存しない。

-83-

以上検討したところによれば,本件オルゴール等は,日本国内で原告P1からP3に譲渡されたとは認められないから,本件オルゴール等の譲渡所得は,所得税法161条1号所定の国内源泉所得には当たらないということができる
また,原告P1は,原告本人尋問の中で,P3から本件オルゴール等の売買代金の支払は受けていない旨を供述しているところ
(原告P1本人
[2
頁]),証拠(乙1,2,32の1ないし乙32の5,原告P1本人)及び弁論の全趣旨によれば,<ア>

P3は,原告P1と妻P5が全株式を所

有している同族会社であり,常勤の社員はおらず,原告P1の資産の管理以外に実質的な経済活動を行っていなかったこと(32の1ないし乙32の5,原告P1本人[2頁],弁論の全趣旨),<イ>

原告P1がP3に

本件オルゴール等を譲渡した主な目的は,原告P1の死亡等により本件オルゴール等が散逸することの防止にあったこと(原告P1本人[1頁,4頁,35頁,66頁])などが認められ,これらの本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,本件オルゴール等の譲渡がされた平成14年又は平成15年当時において,原告P1とP3の利害は完全に一致していたということができる。そうすると,P3から本件オルゴール等の売買代金を受領していないという原告P1の上記供述は信用することができ,本件全証拠を見ても,P3が,原告P1に対し,本件オルゴール等の売買代金を支払ったことを認めるに足りるものは存しない。
そうすると,本件オルゴール等の譲渡所得は,「国内源泉所得以外の所得で国内において支払われ,又は国外から送金されたもの」にも当たらないということができる。
(3)以上によれば,仮に原告P1がP3に対して本件オルゴール等を譲渡したことにより原告P1に譲渡所得が発生していたとしても,当該所得は我が国の課税の対象となる国内源泉所得等に当たらないということになるから,原
-84-

告P1に対してされた本件各課税処分のうち本件オルゴール等の譲渡所得が課税の対象となることを前提としてされた部分は違法であり,取消しを免れないということができる。
6
争点5(本件オルゴール等の譲渡所得の発生の有無)について

(1)ア

前記5で説示したとおり,
本件オルゴール等の譲渡所得は国内源泉所得

等に当たらないから,本件各課税年において日本の非永住者であった原告P1はその納税義務を負わない。したがって,本件オルゴール等をP3に譲渡したことにより,原告P1において譲渡所得が実際に生じていたか否かについては判断の必要がないということになるが,
以下では,
念のため,
本件オルゴール等の譲渡により原告P1に譲渡所得が生じていたと認められるか否かについても検討しておくこととする。

譲渡所得の前提となる所得の発生については課税庁において主張立証責
任を負う。したがって,本件においても,被告らが主張する取得費を超えるものがないという点については,被告らの側に主張立証責任があるということになる。もっとも,本件オルゴール等を購入したり改良したりするなどして証拠に近い立場にあるのは原告P1であるということができるから,原告P1においてもある程度の主張立証をしなければならない。もっとも,そうであるからといって,実額をそれを証するに足りる全ての証拠をもって主張立証しなければならないとすることは,本件オルゴール等の購入が現時点でみると10年以上前にされていることによれば,不可能を強いることにもなりかねない。したがって,実額の全てを直接証する証拠を提出することができない場合には,間接証拠や合理的推認をもって直接証拠の不足を補う方法を用いるなどして一定額以上の取得費があったことを立証すれば足りるものと思われる。
そこで,
以下,
このような観点から,
本件オルゴール等の譲渡により原告P1に譲渡所得が生じたと認められるか否か(本件オルゴール等の取得費は幾らか。)について検討を進めるこ
-85-

ととする。
(2)前提事実(4)記載のとおり,①

原告P1は,平成14年5月5日,P3に

対し,売買代金を2億6695万3050円(206万7000米国ドル)として平成14年譲渡オルゴール等を譲渡したこと,②
原告P1は,平成

15年5月1日,P3に対し,売買代金を4215万円として平成15年譲渡オルゴール等を譲渡したことが認められる。そうすると,本件オルゴール等の譲渡によって原告P1に譲渡所得が発生したというためには,平成14年譲渡オルゴール等の取得費(本件オルゴール等の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額。所得税法38条1項)が上記2億6695万3050円(206万7000米国ドル)を,平成15年譲渡オルゴール等の取得費が上記4215万円をいずれも下回るものであるということを要することになる(なお,被告らは,本件オルゴール等の取得費に関し,本件オルゴール等は時の経過により減価する資産
(以下
「減価償却資産」
という。

に当たる旨の主張もしている。しかし,証拠(甲15,16)及び弁論の全趣旨によれば,アンティークオルゴールの価値や価格は,制作年代,稀少性及び美術性により決定されるところ,原告P1は,アンティークオルゴールの収集を趣味にし,制作年代,稀少性及び美術性を吟味して,アンティークオルゴールの専門業者であるP18から本件オルゴール等を購入していることが認められる。そうすると,本件オルゴール等は,歴史的価値及び稀少価値を有し,代替性のない古美術品に該当するということができるから減価償却資産には当たらないものと認められる。そして,本件全証拠を見ても,本件オルゴール等が減価償却資産であることを認めるに足りるものは存しない。よって,この点に関する被告らの主張は採用することができない。)。(3)ア被告らは,本件オルゴール等の取得価額に関する証拠として原告P1が提出した本件各明細書について,①
載されているか否か。,
)②

宛先(明細書の宛先が原告P1と記

日付
(日付が正確に記載されているか否か。,


-86-



内訳金額
(オルゴール等の取引金額が個別に記載されているか否か。,




筆跡(筆跡に疑わしい点がないか否か。),⑤

その他(譲渡された

オルゴール等の名称と明細書に記載されたオルゴール等の名称が一致しているか否か等)の5つの基準(本件取得費各基準)を設定し,本件各明細書のうち本件取得費各基準を満たすもの(甲73,78,112及び138の4件の明細書。本件基準充足明細書)に記載された金額に基づき,平成14年譲渡オルゴール等の取得費を9872万0674円,平成15年譲渡オルゴール等の取得費を1558万7070円と算出している。イ
確かに,本件各明細書の記載内容を見ると,①

原告P1ではなくP4

社が宛先欄に記載されているもの(甲80,107ないし109,115ないし117,127ないし137,139ないし146,151,152)や宛先の記載自体がないもの(甲72,77,84,110,111,113),②

日付欄の全部又は一部が記載されていないもの(甲69,

70,72,74ないし77,84,106,110,113,144),③

取引金額が個別に記載されていないもの(甲68,71)などの不備
が見られる。しかし,その一方で,上記①の宛先に関して見ると,本件各明細書の中には,<ア>

P4社と原告P1が宛先として併記(「P4

o(P1)」(甲148)や「P1(P4
されているもの,<イ>
Coc/o


Co)」(甲149,150))

「P1方P4株式会社」を意味する記載(「P4

P1」(甲147))となっているもの,<ウ>

原告P1

本人が宛先として記載された上で,住所欄にP4社の社名が記載されているもの
(甲120の2ないし甲120の4)
などがあることが認められる。
このような本件各明細書の宛先欄の記載内容に徴すると,P18は,本件各明細書の宛先欄の記入の際,P4社と原告P1個人とを厳密に区別して記載していなかったことがうかがわれる。そして,前提事実(1)ア(ア)及び弁論の全趣旨によれば,P4社は,原告P1が館長を務めるP24の運
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営を目的として設立された原告P1を代表取締役とする株式会社であることが認められるほか,前記5(2)で認定したとおり,P18は原告P1の友人であり,近所に住む住人として家族ぐるみの付き合いをしていたことが認められること(甲160[3頁],原告P1本人)によれば,P18が,本件各明細書の中で,原告P1個人とP4社とを厳密に区別せずに記載していたとしても,それが不自然であるとまではいえない(なお,このことは,日付や代金の内訳等に関する記載についても同様のことを指摘することができる。)。
さらに,被告らは,本件各明細書の筆跡などについても疑問を呈しているが,本件各明細書の筆跡を仔細に見ても,原告P1その他の者により本件各明細書が偽造されたことなど,本件各明細書の信用性を疑わせるに足りるものは存しない。
以上によれば,本件各明細書の記載は,いずれも信用するに足りるものであるということができる。また,被告らは,本件備忘録等についてもその信用性に疑義を呈しているが,被告らが主張する事情を詳細に見ても,本件備忘録の信用性を否定するに足りる事情は見当たらない。
以上によれば,原告P1は,本件オルゴール等の取得に要した金額として少なくとも約2億8000万円を支払ったものと認められる。

また,所得税法38条1項は,譲渡所得の金額の計算上控除する資産の
取得費は,別段の定めがあるものを除き,その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする旨を定めている。
そして,前記5で認定した事実及び証拠(甲53,原告P1本人)並びに弁論の全趣旨によれば,①

原告P1は,P18から,修理を要する状

態で本件オルゴール等の大半を購入し,一旦米国PA州内の倉庫に保管して必要な修理をした上で,修理により演奏が可能になったものをP3に譲渡していたこと,②

本件オルゴール等は,原告P1がP18から購入し

-88-

た後に行われた修理により,品質や状態は良好であったこと(甲53,弁論の全趣旨),③

原告P1は,本件オルゴール等を演奏可能な状態に改

良するため,部品取りの目的で同型のオルゴール等を取得することもあったこと(原告P1本人[4頁]),④

本件オルゴール等の中には極めて

大型で運送に多額の費用を要するものもあったことが認められるから,本件オルゴール等の取得費の算定の際には,これらの運送費や改良費を考慮することを要するということができる(例えば,平成14年譲渡オルゴール等の中に含まれるメリーゴーランドについてみると,証拠(甲82,83,110,115ないし117)によれば,原告P1は,その取得に27万2000米国ドル,改良費及び運送費として少なくとも合計1万9450米国ドルをそれぞれ支出していることが認められ,そうすると,メリーゴーランドの取得費は合計で少なくとも29万1450米国ドル(1米国ドル112円で換算すると3264万2400円)に上ることが認められる。)。

そして,前記5(2)イで認定した事実及び証拠(乙32の1ないし乙32
の5,原告P1本人)並びに弁論の全趣旨によれば,①
P3は,原告P

1の資産保有会社として設立された法人であり,原告P1がP3に本件オルゴール等を譲渡した主な目的は相続などを原因とする本件オルゴール等の散逸防止にあったと考えられること(前記5(2)イ),②
原告P1とP

3との間では,本件オルゴール等の売買代金の授受は実際にはされていないこと(原告P1本人[2頁],弁論の全趣旨),③
原告P1は,本件

オルゴール等を当初からP3名義で購入する予定であったものの,P3名義で購入した場合には購入手続,必要書類等の処理が煩雑になるとの理由から原告P1の個人名義で購入し,その後にP3に譲渡することにしたものであること(原告P1本人),④

本件各課税年中においてP3の損益

計算書(販売費及び一般管理費)には給与手当の計上(従業員給与の支払)
-89-

がされていないなど,P3の経済活動の大半は原告P1により行われていた上,P3の株主は原告P1と妻P5のみであったこと(乙32の1ないし乙32の5,原告P1本人[2頁]),⑤

P3が購入した後の本件オ

ルゴール等の維持管理費用は,原告P1とP4社が負担していたなど,本件オルゴール等の維持管理に関連する原告P1,P4社及びP3の会計は厳密に分別されていなかったことがうかがわれること(乙74[2枚目])などの事実が認められるところ,これらの事実に照らすと,本件オルゴール等の譲渡当時,原告P1とP3の利害関係は一致していたということができる。したがって,本件オルゴール等の譲渡により原告P1に譲渡所得が発生し所得税の納税義務を負うことや,逆に,低額譲渡として課税当局から実質的に贈与ないし寄付と認定されることによりP3に納税義務が生じることは,原告P1及びP3の双方にとって利益とならないものとしてこれを避ける行動を採ることは十分考えられるところである。
そして,原告P1は,原告本人尋問の中で,P3に本件オルゴール等を譲渡するに当たって譲渡所得が生じないように,本件オルゴール等の取得や修理などに関与したP18に鑑定を依頼して適切な譲渡価額を決定した旨の供述をしているところ(原告P1本人[3頁,4頁]),かかる原告P1の供述は,上記認定とも符合し,その信用性は高いものであるということができる。

以上検討したところによれば,本件オルゴール等の譲渡価額は,本件オ
ルゴール等の取得費と同額ないしはこれを下回るものであると認めることができるから(なお,平成14年譲渡オルゴール等の譲渡当時の評価額が3億1510万円であることが記載された株式会社P26作成に係る鑑定書(甲54)も,この認定を裏付けるものであるということができる。),本件オルゴール等の譲渡により原告P1に所得が生じたとは認められない。よって,本件各所得税課税処分及び本件各住民税賦課決定処分のうち本
-90-

件オルゴール等の譲渡につき原告P1に譲渡所得が発生したことを前提としてされた部分は違法であり取消しを免れない。
7
争点6(P2社役員報酬に対する課税の可否),争点7(P2社役員報酬の
邦貨への換算方法)について
(1)前記4で認定したとおり,原告P1は,本件各課税年において日本の非永住者であったことが認められるから,原告P1が本件各課税年中の所得の中で我が国の納税義務を負うものは国内源泉所得等に限られる(前記5(1)参照)。そこで,以下,P2社役員報酬が国内源泉所得等に該当すると認められるか否かにつき検討する。
(2)前提事実(5)イ記載のとおり,P2社は,原告P1に対し,平成14年には19万9999米国ドル,平成15年には18万7999米国ドル,平成16年には19万9120米国ドル,平成17年には19万5539米国ドルの各役員報酬
(P2社役員報酬)
をそれぞれ支払っていることが認められる。
証拠(原告P1本人[21頁])及び弁論の全趣旨によれば,これらのP2社役員報酬は,原告P1と妻P5が共同で管理していた米国の銀行口座に振り込まれ,妻P5が必要に応じて同口座から出金して本件家族の生活費に充てていたことが認められる。そして,本件全証拠を見ても,P2社役員報酬の全部又は一部が日本国内で支払われていたり,国外から日本国内に送金されたりしたことを認めるに足りるものは存しない。
(3)以上によれば,P2社役員報酬に係る所得は,我が国での課税の対象とはならないということができるから,本件各所得税課税処分及び本件各住民税賦課決定処分のうちP2社役員報酬が課税対象となることを前提としてされた部分は,その余の点(争点7(P2社役員報酬の邦貨への換算方法))について判断するまでもなく違法であり,
取消しを免れないということになる。
8
争点8(P3からの利得所得等の課税方法)について

(1)原告P1は,原告P1の原告会社役員報酬,原告会社から受領した利子及
-91-

び国内配当(これらを,以下「原告会社役員報酬等」という。)に係る課税の方法は,非居住者に対する課税方法を定めた所得税法164条2項2号により源泉分離課税となるから,原告会社役員報酬等につき総合課税としてされた本件各所得税課税処分は違法である旨主張する。
(2)しかし,前記3で説示したとおり,原告P1は本件各課税年中において日本の居住者であったことが認められるから,原告P1の主張は,その前提を欠くものであるというほかない。以上によれば,原告会社役員報酬等に対する課税の方法につき違法な点は認められない。
9
争点9(原告会社が平成15年分に支払った原告会社役員報酬から源泉徴収
すべき所得税の額)について
(1)原告P1は,原告P1の平成15年分の課税総所得金額から控除される原告会社からの給与所得に係る源泉徴収税額は,原告会社が実際に源泉徴収した金額である826万8480円ではなく,1239万5400円とすることが正しいから,原告P1の平成15年分の課税総所得金額の計算に当たっては,同金額を用いるべき旨の主張をする。そこで,以下,この原告P1の主張の当否につき検討する。
(2)ア所得税法120条1項5号によれば,課税総所得金額につき税額の計算の規定を適用して計算した所得税の額から控除される源泉徴収税額は,課税総所得金額の計算の基礎となった各種所得につき源泉徴収された又はされるべき所得税の額であるとされているところ,「源泉徴収された又はされるべき所得税の額」とは,源泉徴収に関する規定に基づき正当に徴収された又はされるべき所得税の額を意味するものと解されるから,支払者が誤った金額を源泉徴収した場合には,実際に源泉徴収された金額ではなく,正しい源泉徴収税額を控除すべきことになる。そして,給与所得に係る源泉徴収については,同法185条1項1号イにおいて,同法183条1項の規定により徴収すべき所得税の額は,扶養控除等申告書を提出した居住
-92-

者に対し,給与等の支給期が毎月と定められている場合は,同法別表2の甲欄に掲げる税額とする旨規定され,旧負担軽減法11条において,所得税法185条1項中にある「別表2」を,「旧負担軽減法別表1」と読み替える旨規定されている。さらに,給与等の支払額に関する計算を電子計算機などの事務機械によって処理しているときは,旧負担軽減法別表1の甲欄を適用する給与等については,財務省告示で定める別表によって源泉徴収すべき税額を求めることができる特例が設けられている(乙65[22頁])。

これを本件についてみると,原告P1は,平成15年分の給与所得者の
扶養控除等(異動)申告書(乙66)を提出した居住者であるから(原告P1本人[70頁]),旧負担軽減法別表1の甲欄が適用され,また,原告会社は,給与等の支払額に関する計算を電子計算機などの事務機械によって処理していることが認められるから(弁論の全趣旨),上記アの規定に基づき,上記財務省告示で定める別表によって,平成15年分の原告会社から原告P1に支給された役員報酬に係る源泉徴収すべき税額を計算すると,合計826万8480円となる。

これに対し,原告P1が主張する原告会社からの給与所得に係る源泉徴
収税額(1239万5400円)は,扶養控除等申告書を提出していない居住者に対する税額を算出したものであるところ,前記3で説示したとおり,
原告P1は,
本件各課税年当時において日本の居住者であり,
しかも,
扶養控除等申告書を提出していることが認められるから,原告P1の上記主張は,その前提を欠くというほかない。
争点10(本件A建物の取得価額)について

(1)ア前提事実(3)によれば,
本件A土地
(本件A53土地及び本件A55土地)
については,①

原告P1が,昭和53年10月10日,P12から,本

件A53土地及び本件A建物を合計1630万円で購入し,次いで,昭和
-93-

55年2月7日,P13から本件A55土地を購入したこと,②
原告P

1は,平成17年9月14日,P15に対し,本件A土地を1234万9696円(未経過固定資産税として原告P1が受領した1万8696円を含む。)で売却したことが認められ,③

本件A土地のうち本件A55土

地の取得価額を66万0660円とすることは当事者間に争いがない。また,本件B土地については,<ア>

その取得費を2444万2000

円とし,その譲渡価額を3243万3009円とすること,<イ>
本件B

土地に係る分離長期譲渡所得を799万1009円とすることは当事者間に争いがない。さらに,本件C土地については,<ア>

その取得費を22

5万9110円とし,その譲渡価額を811万3549円とすること,<イ>

本件C土地に係る分離短期譲渡所得を585万4439円とすること
は当事者間に争いがない。

以上によれば,本件各土地の譲渡所得の金額は,本件A土地の取得費,
具体的には,
本件A建物の取得価額により結論が異なるということになる。
そこで,以下,本件A建物の取得価額につき検討することとする。(2)アこの点に関し,被告らは,本件A建物の取得価額は「建物の標準的な建築価額表」を用いて算定すべきであり,そうすると,本件A建物の取得価額は541万7945円となる旨の主張をするのに対し,原告P1は,本件A建物の取得価額は「建物の標準的な建築価額表」より精度の高い「新築建物価格認定基準表」を用いて算定すべきであり,そうすると,本件A建物の取得価額は202万6200円となる旨の主張をする。
そこで,以下,西川口税務署長が「建物の標準的な建築価額表」を用いて本件A建物の取得価額を541万7945円と算定したことが合理性を有するものであると認められるか否かにつき検討する。

証拠(乙80,99)及び弁論の全趣旨によれば,「建物の標準的な建
築価額表」に記載された建築単価は,国土交通省作成に係る建築統計年報
-94-

の「構造別,用途別-建築物の数,床面積の合計,工事費予定額」の全国計の「木造」欄の「工事費予定額」(8兆1781億0184万円)を「床面積の合計」(1億0493万8309㎡)で除して算出した金額であることが認められる。また,建築統計年報は,国土交通省が建築の動態を把握するという目的から,建築基準法15条の規定による建築工事の届け等に基づき,統計法による指定統計等として毎月実施している建築動態統計調査の結果を取りまとめたものであるところ(弁論の全趣旨),建築基準法の上記規定を見ると,建築主が建築物を建築しようとする場合又は建築物の除却の工事を施工する者が建築物を除却しようとする場合には,これらの者は,原則として建築主事を経由してその旨を都道府県知事に届け出なければならず,市町村の長は,当該市町村の区域内における建築物が火災,震災,水災,風災その他の災害により滅失し,又は損壊した場合には,原則として都道府県知事に報告しなければならないとされている。そして,建築動態統計調査はこれらの届出や報告に基づいて実施されていることによれば,同調査の結果が取りまとめられた建築統計年報は客観的合理性を有する資料であるということができる。そうすると,本件A53土地等売買のように建物と土地の価額が区分されていない不動産売買の事例について「建物の標準的な建築価額表」に基づき建物部分の取得価額を算定することには合理性があるということができる。

そして,証拠(乙80[32頁,38頁])によれば,国税庁は,不動
産購入時の売買代金につき建物と土地の価額が区分されていない場合において,建物の取得価額を計算する必要があるときは,当該建物の建築年に対応する「建物の標準的な建築価額表」によって計算することとしても差し支えない旨を記載したパンフレット(「譲渡所得の申告のしかた(記載例)」)を公開していることが認められるから,「建物の標準的な建築価額表」は,本件A53土地等売買のような事例において譲渡所得を計算す
-95-

るためにも用いられていることが認められる。そうすると,税負担の公平という観点からも,西川口税務署長が「建物の標準的な建築価額表」を使用して本件A建物の取得価額を算定したことには合理性があるということができる(これに対し,原告P1が本件A建物の取得価額の算定に用いるべきであると主張する「新築建物価格認定基準表」は,固定資産課税台帳に登録されていない新築建物の価額につき,登記官がその建物に類似する建物の固定資産課税台帳上の価格と均衡を失しない形で価格の認定をすることを可能とする目的で各法務局又は地方法務局が独自に作成しているものであるから(甲156ないし158,乙70,71),それ自体は客観的な合理性を有する基準であるとは認められるものの,本件A53土地等売買のような事例において譲渡所得を計算する目的で作成された基準ではないから,上記で説示した税負担の公平という観点からも,本件A建物の価額について「新築建物価格認定基準表」ではなく,「建物の標準的な建築価額表」を用いて算定したことは正当であるということができる。)。(3)以上によれば,本件A53土地の取得価額の算定に当たって,本件A53土地等売買に係る売買代金(1630万円)から控除すべき本件A建物の取得価額は被告らが主張するとおり541万7945円であるということができるから,この点に関する原告P1の主張は採用することができない。そうすると,本件A53土地の取得価額は1088万2055円(1630万円-541万7945円)となり,これに当事者間に争いのない本件A55土地の取得価額(66万0660円)を足すと本件A土地の取得費は1154万2715円となる。そして,本件A土地の譲渡価額は1234万9696円であるから,本件A土地に係る分離長期譲渡所得は80万6981円(1234万9696円-1154万2715円)となり,本件B土地の分離長期譲渡所得は799万1009円であるから(前記(1)ア),平成17年分の原告P1の分離長期譲渡所得は,879万7990円(80万698
-96-

1円+799万1009円)となる。
争点11(本件各土地の譲渡所得に対する課税方法の違法の有無)について
(1)原告P1は,自らは本件各課税年において日本の非居住者であったから,本件不動産譲渡所得につき譲渡価額から取得価額を控除した所得金額に所定の税率を乗じて算出した税額から,当該不動産の購入者の支払金額の10%を控除していないことは違法である旨の主張をする。
(2)しかし,前記3で説示したとおり,原告P1は本件各課税年中において日本の居住者であったことが認められるから,原告P1の上記の主張は,その前提を欠くものというほかない。以上によれば,本件不動産譲渡所得の課税方法につき違法な点は認められない。
争点12(二重課税による違法性の有無)について

(1)原告P1は,本件各課税処分が違法であることの根拠として,本件各課税年において原告P1が得た各種所得は既に米国において課税済みであるから,所得税及び住民税に係る本件各課税処分により日本の課税当局から更に課税されることは二重課税に当たり違法である旨の主張をする。
(2)アしかし,日本と米国の両国は,それぞれの課税の根拠となる税法に基づき独立して課税をするのであるから,各国の税法の規定次第で双方の国の居住者と判定される場合があり得ることは不可避であり,異なる国から居住者であるとの判定を受け,二重に課税されたことから直ちに当該一方の国がした課税処分が違法になるとはいえない(このことは,本件の中で原告P1が指摘している新旧日米租税条約においても,二重課税となる場合があることを当然の前提とし,それを回避するための方策につき規定されていること(旧日米租税条約3条(3)及び25条(1),新日米租税条約4条3項及び25条1項)からも明らかである。)。

そして,所得税法95条1項は,二重課税を排除するために外国税額の
控除制度を設け,「居住者が各年において外国所得税(中略)を納付する
-97-

こととなる場合(中略)には,(中略)その年分の所得税の額のうち,その年において生じた所得でその源泉が国外にあるものに対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(中略)を限度として,その外国所得税の額をその年分の所得税の額から控除する。旨を規定している。」
もっとも,上記規定は,確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり,かつ,外国所得税を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用されることとなっているところ,原告P1は,平成15年分確定申告書につき所得税法95条5項に規定する各種書類の添付をしておらず,また,平成14年分,平成16年分及び平成17年分の所得税に関しては,確定申告書の提出をしていないため,本件各課税年における所得税の計算上,外国税額控除の適用がされなかったものと認められる。そうすると,このような手続を執らなかった原告P1が二重課税の状態に置かれたことはやむを得ないものであるということができるから,原告P1に対してされた本件各課税処分が二重課税に当たり違法である旨の原告P1の主張は採用することができない。
(3)以上によれば,原告P1の所得税及び住民税に係る本件各課税処分が二重課税に当たることにより違法であるとは認められない。
争点13(原告P1に対してされた質問検査権行使の違法性の有無),争点
19(原告会社に対してされた質問検査権行使の違法性の有無)について(1)ア所得税法234条1項は,国税庁,国税局又は税務署の調査権限を有する職員は,所得税に関する調査について必要があるときは,納税義務がある者,納税義務があると認められる者又は所得税法の規定による申告書を提出した者に質問し,又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる旨を規定し,
また,
財務省組織規則468条4号は,
課税総括課は,所得税等の課税標準の調査及びこれらの国税に関する検査
-98-

に係る事務で国税局長が必要があると認めた特定事項に係る事務の指導及び監督並びにこれに必要な調査及び検査に関する事務をつかさどる旨を規定している。
ここで,
所得税法234条1項の「調査について必要があるとき」とは,
調査権限を有する税務職員において,当該調査の目的,調査すべき事項,申請及び申告の体裁内容,帳簿等の記入保存状況,相手方の事業の形態等諸般の具体的事情に鑑み,客観的な必要性があると判断される場合のことをいい,質問検査権を行使する場合の質問検査の範囲,程度,時期,場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については,質問検査の必要があり,かつ,これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り,権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解される(最高裁昭和45年(あ)第2339号同48年7月10日第三小法廷決定・刑集27巻7号1205頁)。そして,一般に,課税処分の適否は客観的な課税要件の存否によって決せられるものであるから,課税処分の基礎となった調査手続の違法は,当然に課税処分の取消事由となるものではなく,それが刑罰法規に触れ又は社会正義に反するなど公序良俗に反するような重大な違法がある場合に限り当該課税処分の取消事由になり得るものと解される。

そこで,以下,上記アの観点から,関東信越国税局の職員及び西川口税
務署職員が原告らに対してした一連の税務調査(以下「本件各税務調査」という。)に重大な違法があり,それにより,原告P1に対してされた本件各所得税課税処分及び原告会社に対してされた本件各源泉所得税課税処分が取り消されるべきものであると認められるか否かにつき検討する。(2)ア原告らは,本件各税務調査が違法であることの理由として,①
本件各

税務調査は,西川口税務署長の指示の下に西川口税務署職員が「所得税に関する調査について」実施されたものであるところ,本件各所得税課税処
-99-

分の決定通知書等には関東信越国税局の調査である旨の教示は存在しないから,関東信越国税局は本件各税務調査の主体ではなく,所得税法234条1項が規定する調査について質問検査権が行使されたものではないこと,②

財務省組織規則468条4号は組織内での権限の分掌について定めた
組織法であり,質問検査権の授権規範とはなり得ない上,本件各税務調査において国税局長が必要があると認めたとの要件も満たさないこと,③関東信越国税局の職員や西川口税務署職員がP21と本件各税務調査に関するやりとりをしたことは原告P1のプライバシー権の侵害に当たることなどを挙げる。

確かに,証拠(乙8,36,42)によれば,本件各税務調査は,平成
18年4月頃に開始され,関東信越国税局の職員は,同年11月30日,西川口税務署職員と共に関東信越国税局の会議室でP21と面接し,P21に対して質問検査権に基づく質問をするなどして本件各税務調査に関与したことが認められる。
しかし,前記(1)アで説示したとおり,所得税法234条1項は,質問検査権を行使することのできる職員として「国税庁,国税局又は税務署の調査権限を有する職員」を挙げているから,本件各税務調査に関東信越国税局の職員が関与したことが直ちに違法であるとはいえない。また,本件各税務調査を実施した関東信越国税局の職員が所属していた課税総括課は,国税局長が必要があると認めた場合には,所得税等の課税標準の調査及びこれらの国税に関する検査に係る特定の事務の指導監督及びこれに必要な調査及び検査に関する事務を所管する部局であるから(上記財務省組織規則468条4号),関東信越国税局の職員が,本件各税務調査を実施している西川口税務署職員に対する指導監督上の必要性に基づいて,本件各税務調査の調査対象とされた原告らに対し,直接質問検査権を行使することは当然に許容されるものと解される。したがって,関東信越国税局の職員
-100-

がP21に対して直接質問検査権を行使したことが違法であるとはいえない(なお,原告らは,財務省組織規則468条4号は組織内での権限の分掌について定めた組織法であり,質問検査権の授権規範とはなり得ない旨の主張をするが,そもそも,所得税法234条1項が国税局の職員に対して質問検査権の行使を許容していることによれば,原告らの主張を採用することができないことは明らかである。)
また,原告らは,<ア>

課税総括課の職員の関与が認められるのは国税

局長がその必要性を認めた場合に限られるところ,本件ではこの要件を満たしていない旨の主張や,<イ>

関東信越国税局の職員が直接質問検査権

を行使したことは指導監督の範囲を超える旨の主張もする。
しかし,証拠(乙8,36)によれば,関東信越国税局の職員が本件各税務調査に従事したのは,原告P1が原告会社以外にも数社の代表取締役を兼務し多額の収入を得ていたことや,国際的な取引にも関係するなどしていたため,西川口税務署の上級官庁に当たる関東信越国税局が西川口税務署が主体として実施される本件各税務調査を指導監督することとしたことが認められるから,国税局長が必要性を認めた場合の要件を満たすことは明らかであるし,本件全証拠から明らかとなる本件各税務調査の一連の調査の実施状況を見ても,関東信越国税局の職員による西川口税務署の職員に対する指導監督が社会通念上相当な限度を越えたものであるとは認められない。
以上によれば,本件各税務調査につき関東信越国税局の職員が関与したことをもって,本件各税務調査に刑罰法規に触れ又は社会正義に反するなど公序良俗に反するような重大な違法があるとは認められない。よって,上記ア①及び②の原告らの主張は採用することができない。ウ
また,本件各税務調査によって原告P1のプライバシーが侵害されたと
いう上記ア③の原告らの主張については,その主張を詳細に見ても侵害さ
-101-

れた原告P1のプライバシー権の具体的内容が明らかになっているとは言い難い。また,この点をおくとしても,証拠(甲42,88,乙8)によれば,<ア>

P21は,平成13年頃から,現P20法人においてP3の

税務処理に係る業務に関与し,平成15年頃からは原告会社の税務処理に係る業務についても担当していたこと(甲88[1頁]),<イ>
原告P

1は,平成18年5月22日に実施された税務調査にP21を同席させ,その後の本件各税務調査に関する対応をP21に任せる旨を述べたこと(甲42[2枚目],88,乙8),③

P21は,原告P1の意向を受

けて,
関東信越国税局の職員や西川口税務署の職員と話し合いをするなど,業務として本件各税務調査の対応に当たっていたことが認められるから,原告P1は,P21が本件各税務調査に関して課税当局と折衝することを承諾していたものと評価することができる。
また,税理士法54条は,税理士又は税理士法人の使用人その他の従業員は,業務に関して知り得た秘密を他に漏らしてはならないとして守秘義務を課し,同法59条1項2号は,上記守秘義務に違反した者に対する罰則を定めているところ,上記③で認定したとおり,P21は,現P20法人の従業員としての業務に基づき本件各税務調査に関与していたものということができるから,本件各税務調査により知り得た秘密につき守秘義務が課されていたものと認められる。そうすると,仮に本件各税務調査に関する交渉の中で原告P1のプライバシーの一部が税理士の資格のないP21に明らかになったとしても,そのことをもって原告P1のプライバシー権が侵害されたということはできない。よって,上記ア③の原告らの主張は採用することができない。
(3)上記(2)で検討したところによれば,
本件各税務調査に違法な点があるとは
認められない。そして,原告らが本件各税務調査が違法であることの根拠とする他の事情を見ても,本件各税務調査の手続が刑罰法規に触れ,又は社会
-102-

正義に反するなど公序良俗に反するような重大な違法があると認めるに足りるものは存しない。
以上によれば,本件各税務調査の違法を理由として本件各所得税課税処分及び本件各源泉所得税課税処分が取り消されるべきであるという原告らの主張は,いずれも採用することができない。
争点14(国税通則法65条4項又は66条1項ただし書の「正当な理由」の有無)について
(1)原告P1は,仮に本件各所得税課税処分が適法であるとしても,原告P1が自己を日本の非居住者であると判断し,確定申告を期限内に行わなかったこと及び税額を過少に申告したことについては,国税通則法65条4項及び66条1項ただし書所定の正当な理由があるから,本件各所得税課税処分のうち原告P1に対してされた無申告加算税及び過少申告加算税の各賦課決定処分は違法である旨主張する。そこで,以下,この原告P1の主張の当否につき検討する。
(2)ア無申告加算税は期限内に申告書を提出しなかった者に対して課されるもの,過少申告加算税は過少申告による納税義務違反をした者に対して課されるものであるところ,これら無申告加算税及び過少申告加算税は,当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,無申告又は過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である一方,主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないということができる。
このような無申告加算税等の趣旨に照らすと,国税通則法65条4項又は66条1項ただし書の「正当な理由」がある場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような無申告加算税等の趣旨に照らしても,なお納税者に無申告加算税等を賦課することが
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不当又は酷になる場合をいうものと解することが相当であり(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁参照),法の不知や納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りは正当な理由とならないものというべきである。

これを本件についてみるに,前記3で認定したとおり,原告P1は,本件各課税年において日本の居住者であったことが認められるところ,平成14年,平成16年及び平成17年の各年分については確定申告をしておらず,確定申告をした平成15年分については,納付すべき税額を過少に申告していることが認められる。そうすると,原告P1は,上記アの「正当な理由」があると認められない限り,無申告加算税等の納付義務を負うということになる(もっとも,納付すべき税額がない場合にはこの限りでないということはいうまでもない。)。
そして,原告P1の日本国内での滞在状況や原告会社での代表取締役社長としての職務の執行状況,本件旧家屋及び本件家屋での居住の実態その他の前記3で認定した客観的事情に照らすと,原告P1は,自らが本件各課税年において日本の居住者に該当する旨の認識を持つことは十分可能であったということができる。そうすると,原告P1については,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような無申告加算税等の趣旨に照らしても,なお納税者に無申告加算税等を賦課することが不当又は酷になる場合には当たらないということができる(なお,確かに,原告P1が主張するとおり,川口市長は,平成16年8月9日に原告に対してした本件住民税賦課決定取消処分により原告P1に対する平成16年度分の住民税の賦課決定処分を取り消していることが認められるが,前記1で説示したとおり,所得税と住民税は課税主体を異にする税金であるから,川口市長が平成16年度分の原告P1の住民税の賦課決定処分を取り消したことをもって,所得税についても日本の非居住者に当
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たることを前提とした行動を採ることが正当化される事情とはいえない。そして,証拠(甲153)によれば,P21は,平成17年4月26日付けのメールの中で,原告P1に対し,ストックオプションに係る源泉所得税に係る納税に関連して原告P1が日本の居住者に該当するか否かを判断するために必要となる情報(原告P1の日本国内での滞在状況等)の教示を求めていることが認められるから,このような機会の中で,原告P1は,自らが日本の居住者であることを認識することは可能であったと考えられる。よって,川口市長が平成16年度分の住民税の賦課決定処分を取り消したことをもって,原告P1に上記の正当な理由があるとはいえない。)。
争点15(平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分の
法定期間内の通知の有無)について
(1)ア地方税法17条の6第3項は,住民税の所得割及び均等割の各賦課決定は,その課税標準の基準となる所得税の更正又は決定があった場合には,法定納期限の翌日から起算して3年を経過した日以後においても,当該所得税の更正又は決定の通知が発せられた日の翌日から起算して2年間することができる旨を規定している。

証拠(甲39)によれば,被告川口市は,平成19年1月19日,西川
口税務署長から平成18年12月18日付けで発せられた原告P1の平成14年分所得税に係る決定決議書,平成15年分所得税に係る更正決議書並びに同16年分所得税及び平成17年分所得税に係る各決定決議書の写しを受領したことが認められるから,これらの所得税の更正又は決定により,平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分をすることのできる期間は平成20年12月18日までになったことが認められる。したがって,川口市長が原告P1に対してした平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分が適法にされたというためには,
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同日の満了までに,上記各処分の決定がされ,その通知が原告P1に送達されたことを要するということになる。

この点に関し,原告P1は,平成15年度分ないし平成17年度分の住
民税の賦課決定処分に係る納税通知書(本件納税通知書)が原告P1宛てに送達されたのは上記イの期限(平成20年12月18日)を経過した後の日(平成21年1月22日)であるから,原告P1に対してされた平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分はいずれも効力がない旨の主張をする。そこで,以下,本件納税通知書が原告P1に適法に送達されたと認められる時期につき検討する。
(2)ア地方税に係る書類の送達について規定する地方税法20条1項は,その本文で,地方団体の徴収金の賦課徴収又は還付に関する書類の送達については,郵便若しくは信書便による送達又は交付送達により,その送達を受けるべき者の住所,
居所,
事務所又は事業所に送達する旨を規定している。
書類の送達の効力は,その書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入ったと認められる時(送達を受けるべき者が了知し得る状態に置かれた時)に生じ(最高裁昭和26年(れ)第754号第三小法廷判決同29年8月24日・刑集8巻8号1372頁),その者が現実にその書類を受領し,了知することまでは要しないものと解される。そうすると,本件において,原告P1に対する本件納税通知書の送達の効力が生じたというには,本件納税通知書が平成20年12月18日までに原告P1が了知し得る状態に置かれていれば足りるということになる。

証拠(甲35ないし39,丙4ないし6,証人P27)によれば,①

口市長は,平成20年12月2日,平成15年度分ないし平成18年度分の原告P1の住民税の賦課決定処分をし,同月3日付けで,上記各処分に係る本件納税通知書を本件家屋宛てに配達証明郵便の方法により送付したこと(甲35ないし38,丙4,証人P27[11頁]),②
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P28会

社P29支店の職員は,同月4日,本件納税通知書を原告P1に配達するため,本件家屋を訪問したところ,原告P1が不在であったため持ち帰ることとし,その際,不在連絡通知書(期限1週間)を差し置きしたこと(丙5),③上記の保管期間(同月11日まで)が経過しても原告P1から連絡がなかったため,本件納税通知書は,同月15日,川口市役所の市民税課に返戻されたこと(甲39,丙5,6)が認められる。
一方,証拠(甲56,原告P1本人[28頁])及び弁論の全趣旨によれば,原告P1は,平成20年12月4日から同月17日にかけて北海道芦別市に出張していたため,本件納税通知書を実際に受領していないことが認められる。
そうすると,本件納税通知書の送達の効力の有無を判断するに当たっては,上記②のとおり本件納税通知書が本件家屋に差し置きされたことによって原告P1が了知し得る状態に置かれたものということができるか否かが問題になる。
証拠(丙11,証人P27,原告P1本人)によれば,<ア>

川口市役

所理財部市民税課の職員であるP27は,平成20年11月26日,P21に対し,地方税の規定に基づき同年12月17日までに原告P1に対する住民税各賦課決定処分を行う予定である旨の説明をしたこと
(丙11
[4
頁,5頁],証人P27[8頁,9頁]),<イ>

原告P1は,同年11

月又は12月頃,P21から,川口市長が,原告P1に対して住民税の賦課決定処分をし,当該賦課決定処分に係る納税通知書を原告P1宛てに送付する予定であるとの報告を受けたこと
(原告P1本人
[28頁,
65頁],

<ウ>

本件家屋は,原告P1の居宅としての利用のほか,P3の事務所と
しても利用されており,原告会社の本社にも近く,原告会社の従業員が訪問したり,原告P1の不在中にお手伝いと称する第三者が室内に立ち入ることもあったこと(証人P27[13頁],原告P1本人[54頁,66
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頁])が認められる。
上記<ア>ないし<ウ>の各事実によれば,原告P1は,出張中に本件納税通知書が本件家屋宛てに送達されることを認識することができた上,原告会社の社員その他の第三者に指示することにより,本件納税通知書が本件家屋に配達されているか否かを確認することができたものと認められる。以上によれば,本件納税通知書は,社会通念上,遅くともその留置期間が満了した平成20年12月11日の時点で,原告P1が了知し得る状態に置かれたものと認められ,他に,この認定を覆すに足りる証拠は見当たらない。
(3)上記のとおり,原告P1の平成15年度分ないし平成17年度分の住民税の賦課決定処分は,いずれも法定期間内に原告P1に通知されたということができるから,この点に関する原告P1の主張は採用することができない。争点16(本件各住民税関係処分の信義則違反該当性)について
(1)前記14(2)で認定したとおり,川口市長は,平成16年8月9日,本件住民税賦課決定取消処分をし,原告P1に対する平成16年度分の住民税の賦課決定処分を取り消したことが認められるところ,原告P1は,本件住民税賦課決定取消処分は原告P1が日本の非居住者であるとの公的な見解を表示したものであり,原告P1はこの公的見解を信頼して米国で納税をしていたのであるから,それにもかかわらず,川口市長が本件各住民税関係処分をしたことは信義則上違法の評価を受けるべきものである旨主張する。(2)ところで,信義則の法理は法の一般原理であるが,租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,同法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等や公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れさせて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存在する場合に,初めて上記法理の適用を考えるべきものであると解される。そして,上記の特別
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の事情の存在が認められるというためには,少なくとも,①者に対して信頼の対象となる公的見解を表示したこと,②
課税庁が納税
納税者がその表

示を信頼して行動したところ,後に上記表示に反する課税処分がされたことにより経済的不利益を受けたこと,③

上記信頼及びこれに基づく行動につ

き納税者の責めに帰すべき事由がないことが必要であると解される(最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事第152号93頁)。
(3)アこれを本件についてみるに,確かに,原告P1が主張するとおり,川口市長は,平成16年8月9日付けで本件住民税賦課決定取消処分をし,原告P1に対する平成16年度分の住民税の賦課決定処分を取り消していることが認められる。
しかし,住民税の賦課決定処分の取消しは,当該取消しがされた時点で課税庁が有する資料に基づいて判断をすると課税要件を満たすとはいえない場合にされるものであり,その後に明らかになった資料により課税要件が満たされていることが判明した場合にも課税処分をしないことまでも保障する性質のものとはいえない。そして,証拠(証人P27[2頁,3頁])及び弁論の全趣旨によれば,本件住民税賦課決定取消処分は,原告P1及びP17税理士がP27に対してした説明や,原告P1が提出した米国の永住権の所持者であることを示すグリーンカード,パスポート,運転免許証及び民間保険会社のカードを根拠として行われたことが認められることによれば,本件住民税賦課決定取消処分がされたのは,原告P1が前記3で説示した事情を十分に説明しなかったことが原因であるということができる。したがって,本件住民税賦課決定取消処分をしたことにより,平成16年度分の原告P1の住民税につき,原告P1が日本の非居住者である旨の公的な見解を表示したということはできない。

また,前記4(2)イで認定したところによれば,原告P1が本件米国訴
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訟の中で提出した本件略式判決申立書の中には,原告P1が日本に永住する意思を持って平成13年に米国NJ州を去り,日本に定住した旨の記載があるほか,
本件宣誓書の中には,
原告P1が米国NJ州家屋を去った後,
平成13年から日本に居住しており,米国NJ州に戻る意思はない旨の記載があることが認められ,かかる原告P1の行動によれば,原告P1が本件住民税賦課決定取消処分を信頼して行動したともいえない。

そして,前記3で認定した客観的事情に照らすと,原告P1は,本件各課税年において自らが被告川口市の住民であることを認識することが可能であったということができるから,川口市長が取消処分をしたことを信頼し,それに基づく行動をしたことにつき原告P1の責めに帰すべき事由がないともいえないし,納税者はもともと自己の責任と判断の下に行動すべきものであることからすれば,本件のような場合につき,原告P1に附帯税を含め課税処分が課されることはやむを得ないということができる。
(4)以上に検討したところによれば,川口市長が原告P1に対して本件各住民税関係処分をしたことが信義則に反するとは認められない(なお,原告P1は,川口市長が平成16年度分の住民税の賦課決定処分の取消しをしたことをもって,平成16年度分だけでなく,平成14年度分ないし平成18年度分の本件各住民税賦課決定処分が信義則違反として違法となる旨の主張をするが,納税者が課税要件を満たすか否かは課税年度ごとに判定されるものであるから,平成16年度分の住民税の賦課決定処分が取り消されたことをもって,その他の年度分の住民税につき川口市長が賦課決定処分をすることが信義則違反とはならないことは明らかであり,この点からも,原告P1の主張を採用することができないことは明らかである。)。
争点18(国税通則法67条1項ただし書の「正当な理由」の有無)について(1)原告会社は,仮に,原告P1が本件各課税年において日本の居住者に該当するとしても,原告会社には原告P1の役員報酬等に係る源泉所得税額を法
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定納期限までに納付しなかったことにつき正当な理由(国税通則法67条1項ただし書)があるから,西川口税務署長が原告会社に対してした不納付加算税の賦課決定処分は違法である旨の主張をする。そこで,以下,この原告会社の主張の当否につき検討する。
(2)不納付加算税に関して規定する国税通則法67条1項は,その本文において,源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には,不納付加算税を徴収する旨を規定し,そのただし書において,法定納期限までに納付されなかったことについて正当な理由があると認められる場合にはこの限りでない旨を規定している。
不納付加算税は,当初から適法に納付した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,不納付という納税義務違反の発生を防止し,源泉徴収に係る国税の適正な自主納付の実現を図り,もって徴税の実を挙げようとする行政上の措置であり,主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないから,同法67条1項ただし書の「正当な理由」があると認められる場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような不納付加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者(源泉徴収義務者)に対して不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解することが相当である(過少申告加算税に関する前掲最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決参照)。
そこで,以下,上記の観点から,原告会社において正当な理由があると認められるか否かにつき検討する。
(3)証拠(甲45)及び弁論の全趣旨によれば,原告P1は,P22会長やその他の原告会社の従業員に対し,本件各課税年当時,自らが日本の非居住者である旨の説明をしていたことが認められる。しかし,原告P1が日本の居住者に該当するか否かの判定は,源泉徴収義務を負う原告会社が自ら判断す
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べき性格のものであるから,原告P1本人が原告会社に上記の申告をしていたことから直ちに,源泉徴収に係る国税の不納付につき原告会社の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえない。
そして,前記3で認定したとおり,原告P1は,本件各課税年において,原告会社の代表取締役社長としてその73%(平成17年)から90%(平成16年)の期間にわたり国内に滞在し,その間,原告会社から近距離にある本件旧家屋や本件家屋に居住していたことが認められるところ,このように原告P1が本件各課税年において日本国内に長期にわたり滞在し,個人又はその資産管理会社名義で居住用の建物を所有して当該建物に居住していたことは原告会社において当然に認識することができたということができる。
そして,仮に,P22会長において,本件家族が米国に居住していることや,原告P1が米国で納税義務を果たしていることなどを認識していたとしても,原告P1の日本国内での滞在状況や出入国の状況,原告会社の代表取締役社長としての職務の遂行状況等に照らせば,原告P1が日本の非居住者であることにつき合理的な疑念を抱くことができたものと考えられる。さらに,証拠(甲45[1頁],乙8,16ないし19,24の1,乙46の1-1ないし乙46の13-3,乙61)によれば,<ア>

原告P1が

P2社を訪問する際に要した費用の多くは,平成15年7月7日以降,旅費交通費等の形で原告会社が負担していたことや,<イ>

原告会社の法人税の

確定申告書では,原告P1の代表者住所は本件旧肩書地が記載されていたことが認められるところ,かかる事実は,原告会社の内部でも,原告P1が日本の居住者であるとの認識を有していたことをうかがわせる事情であるということができる。

以上検討したところによれば,原告会社において,原告P1が非居住者に該当することとして本件納税告知処分に係る所得税を原告P1から源泉徴
-112-

収して法定納期限までに納付しなかったことについて,真に原告会社の責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできないし,納税者である原告会社に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合ということもできないから,国税通則法67条1項ただし書の「正当な理由」があると認められる場合には該当しない。よって,この点に関する原告会社の主張は採用することができない。
小括
(1)本件各所得税課税処分の取消しに係る訴えについて
以上検討したところによれば,原告P1は,本件各課税年において所得税法2条1項4号の非永住者であったことが認められ,原告P1が本件各課税年に得た所得の中で納税義務を負うものは国内源泉所得等に限られるということになるから,P2社役員報酬に係る給与所得及び本件オルゴール等に係る譲渡所得は総所得金額に算入されないことになる。また,本件オルゴール等に係る譲渡所得は国内源泉所得等に該当しない上,そもそも譲渡所得が発生したと認めるに足りる証拠は存しないから,原告P1に対してされた本件各所得税課税処分における原告P1の総所得金額を算定する際には,本件オルゴール等の譲渡所得は0円とすべきものと解される。その余の点については,被告らの主張する各課税処分の根拠に違法な点は見当たらない。以上に基づき,原告P1の平成14年分ないし平成17年分の所得税に係る所得金額及び納付すべき所得税額並びに無申告加算税等を算定すると,別表7ないし別表10の「当裁判所の認定額」欄各記載のとおりとなり,平成14年分の総所得金額は3507万5545円,還付金の額に相当する税額は396万8467円,無申告加算税額は0円に,平成15年分の総所得金額は3677万4825円,納付すべき所得税額は91万8000円,過少申告加算税額は8万5000円に,平成16年分の総所得金額は6250万7405円,還付金の額に相当する税額は414万0311円,無申告加算税額は
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0円に,平成17年分の総所得金額は,総合課税の総所得金額が7億4253万1991円,分離課税の長期譲渡所得の金額が879万7990円,短期譲渡所得の金額が585万4439円(分離課税に係る各所得の金額は被告らの主張額と同額),納付すべき所得税額は63万2500円,無申告加算税額は9万4500円になる。したがって,本件各所得税決定処分及び本件更正処分のうち上記各所得金額及び各納付すべき所得税額を超える部分並びに無申告加算税等の賦課決定処分のうち上記無申告加算税等の額を超える部分は違法であり,取消しを免れない(なお,平成14年分及び平成16年分については,上記のとおり還付金の額に相当する税額が生じているが,原告P1は,当該年分の所得税につき申告をしておらず,還付金の還付請求もしておらず,本件訴訟においても各決定処分の取消しを求めるにとどまっているから,納付すべき税額0円を超える部分の取消しを求めているものとして,還付金の額に相当する税額について考慮することなく,当該年分の各決定処分を取り消すこととする。)。
(2)本件各源泉所得税課税処分の取消しに係る訴えについて
原告会社の本件請求はいずれも理由がないから,棄却することとする。(3)本件各住民税関係処分の取消しに係る訴えについて
前記(1)で説示したとおり,原告P1の総所得金額は平成14年分が3507万5545円,平成15年分が3677万4825円,平成16年分が6250万7405円,平成17年分が7億4253万1991円,平成17年分の分離課税の長期譲渡所得の金額が879万7990円,短期譲渡所得の金額が585万4439円となるから,原告P1の平成15年度分ないし平成18年度分の各住民税の所得割も上記各所得金額を超えて算出された部分(平成15年度分は383万8300円を超える部分,平成16年度分は409万9200円を超える部分,平成17年度分は742万2300円を超える部分,平成18年度分は9683万1200円を超える部分。別
-114-

表11参照)は違法であり,原告P1に対する本件住民税関係処分のうち上記各部分はいずれも取消しを免れないということになる。
第4

結論
以上によれば,
原告P1の被告国に対する訴えのうち別紙1
「却下部分目録」
記載の部分は不適法であるから,これを却下し,この部分を除く原告P1の被告らに対する請求は,主文1項(2)及び主文3項(1)各記載の限度において理由があるから,これらの限度で認容し,その余の請求は理由がないからいずれも棄却し,原告会社の被告国に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項ただし書後段を適用して,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

川神


裁判官富澤賢一郎及び裁判官菅野昌彦は,填補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官

川神

-115-


(別紙1)
別紙1
却下部分目録

西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成15年分の所得税に係る更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,
平成25年2月8日付け更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)の取消しを求める訴えのうち,総所得金額3289万1030円,納付すべき税額6万2200円を超えない部分の取消しを求める部分
-116-

(別紙2)
別紙2
取消対象処分目録
1
西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成14年分の所得税に係る決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び無申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)

2西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成15年分の所得税に係る更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び過少申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)のうち,更正については総所得金額3677万4825円,納付すべき税額91万8000円を超える部分,賦課決定については8万5000円を超える部分
3
西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成16年分の所得税に係る決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び無申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)

4
西川口税務署長が平成18年12月18日付けで原告P1に対してした原告P1の平成17年分の所得税に係る決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(ただし,平成25年2月8日付け更正処分及び無申告加算税の変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)のうち,決定については総所得金額(総合課税分)7億4253万1991円,納付すべき税額63万2500円を超える部分,賦課決定については9万4500円を超える部分
-117-

(別紙3)
別紙3
取消対象処分目録

1
川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成15年度分の市民税及び県民税に係る決定処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)及びその督促処分のうち,納付すべき税額383万8300円を超える部分
2
川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成16年度分の市民税及び県民税に係る決定処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)及びその督促処分のうち,納付すべき税額409万9200円を超える部分
3
川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成17年度分の市民税及び県民税に係る決定処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)及びその督促処分のうち,納付すべき税額742万2300円を超える部分
4
川口市長が平成20年12月3日付けで原告P1に対してした原告P1の平成17年度分の市民税及び県民税に係る決定処分(ただし,平成25年3月14日付け市県民税変更決定処分によりそれぞれ一部取り消された後のもの)及びその督促処分のうち,納付すべき税額9683万1200円を超える部分
-118-

(別紙4)
別紙4
関係法令の定め
第1
1
所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)
改正前のもの
所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)
18年法律第10
居住者等の定義(
居住者等の定義(2条1項)
この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるとこ
ろによる。
1・2号
3号

(略)

居住者

国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を

有する個人をいう。
4号

非永住者

居住者のうち,国内に永住する意思がなく,かつ,現在ま

で引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人をいう。5
非居住者

居住者以外の個人をいう。

6号から48号まで
2
(略)

納税義務者(
納税義務者(5条)

1項

居住者は,この法律により,所得税を納める義務がある。

2項

非居住者は,第161条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得(中略)を有するときは,この法律により,所得税を納める義務がある。
3項・4項
3
(略)

課税所得の範囲(
課税所得の範囲(7条1項)
所得税は,次の各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める所得について
課する。
1号

非永住者以外の居住者

2号

非永住者

すべての所得

第161条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得(以下

この条において「国内源泉所得」という。)及びこれ以外の所得で国内において支払われ,又は国外から送金されたもの
3号

非居住者

第百六十四条第一項各号(非居住者に対する課税の方法)に

-119-

掲げる非居住者の区分に応じそれぞれ同項各号及び同条第二項各号に掲げる国内源泉所得
4号・5号
4
(略)

譲渡所得の金額の計算上控除する取得費(38条
する取得費
譲渡所得の金額の計算上控除する取得費(38条)

1項

譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は,別段の定めがあるものを除き,その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

2項

譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には,前項に規定する資産の取得費は,同項に規定する合計額に相当する金額から,その取得の日から譲渡の日までの期間のうち次の各号に掲げる期間の区分に応じ当該各号に掲げる金額の合計額を控除した金額とする。

1号

その資産が不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間

第四十九条第一項(減価償却資産の償却費

の計算及びその償却の方法)の規定により当該期間内の日の属する各年分の不動産所得の金額,事業所得の金額,山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるその資産の償却費の額の累積額2号

前号に掲げる期間以外の期間

第四十九条第一項の規定に準じて政令

で定めるところにより計算したその資産の当該期間に係る減価の額5
確定所得申告(120条
確定所得申告(120条1項)
居住者は,その年分の総所得金額,退職所得金額及び山林所得金額の合計額
が第2章第4節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において,当該総所得金額,退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第87条第2項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額,課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第89条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の
-120-

合計額が配当控除の額を超えるときは,第123条第1項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き,第3期(その年の翌年2月16日から3月15日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において,税務署長に対し,次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。1号

その年分の総所得金額,退職所得金額及び山林所得金額並びに第2章第4節の規定による雑損控除その他の控除の額並びに課税総所得金額,課税退職所得金額及び課税山林所得金額又は純損失の金額

2号

第90条第1項(変動所得及び臨時所得の平均課税)の規定の適用を受ける場合には,その年分の変動所得の金額及び臨時所得の金額並びに同条第3項に規定する平均課税対象金額

3号

第1号に掲げる課税総所得金額,課税退職所得金額及び課税山林所得金額につき第3章(税額の計算)の規定を適用して計算した所得税の額
4号

前号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合には,その控除しきれなかつた金額

5号

第1号に掲げる総所得金額若しくは退職所得金額又は純損失の金額の計算の基礎となつた各種所得につき源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額(当該所得税の額のうちに,第127条第1項から第3項まで(年の中途で出国をする場合の確定申告)の規定による申告書を提出したことにより,又は当該申告書に係る所得税につき更正若しくは決定を受けたことにより還付される金額その他政令で定める金額がある場合には,当該金額を控除した金額。以下この項において「源泉徴収税額」という。)がある場合には,第3号に掲げる所得税の額からその源泉徴収税額を控除した金額

6号から11号まで
6
(略)

国内源泉所得(161条
国内源泉所得(161条)
この編において「国内源泉所得」とは,次に掲げるものをいう。

-121-

1号

国内において行う事業から生じ,又は国内にある資産の運用,保有若しくは譲渡により生ずる所得(次号から第12号までに該当するものを除く。)その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるもの

2号から7号まで
8号

(略)

次に掲げる給与,報酬又は年金
俸給,給料,賃金,歳費,賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち,国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの

ロ・ハ

(略)

9号から12号まで
7
(略)

利子所得及び配当所得に
利子所得及び配当所得に係る源泉徴収義務(181条1項)
源泉徴収義務(181条
居住者に対し国内において第23条第1項
(利子所得)
に規定する利子等
(以

下この章において「利子等」という。)又は第24条第1項(配当所得)に規定する配当等(以下この章において「配当等」という。)の支払をする者は,その支払の際,その利子等又は配当等について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならない。8
給与所得に
給与所得に係る源泉徴収義務(183条1項)
源泉徴収義務(183条
居住者に対し国内において第28条第1項
(給与所得)
に規定する給与等
(以

下この章において「給与等」という。)の支払をする者は,その支払の際,その給与等について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならない。
9
質問検査権(234条
質問検査権(234条1項)
国税庁,国税局又は税務署の当該職員は,所得税に関する調査について必要
があるときは,
次に掲げる者に質問し,
又はその者の事業に関する帳簿書類
(そ
の作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他の人の知
-122-

覚によっては認識することができない方式で作られる記録であつて,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。第242条第9号において同じ。)その他の物件を検査することができる。
1号

納税義務がある者,納税義務があると認められる者又は第123条第1項(確定損失申告),第125条第3項(年の中途で死亡した場合の確定申告)
若しくは第127条第3項
(年の中途で出国をする場合の確定申告)
(これらの規定を第166条(非居住者に対する準用)において準用する場合を含む。)の規定による申告書を提出した者

2号

第225条第1項(支払調書)に規定する調書又は第226条から第228条の2まで(源泉徴収票等)に規定する源泉徴収票,計算書若しくは調書を提出する義務がある者

3号

第1号に掲げる者に金銭若しくは物品の給付をする義務があったと認められる者若しくは当該義務があると認められる者又は同号に掲げる者から金銭若しくは物品の給付を受ける権利があったと認められる者若しくは当該権利があると認められる者

第2
1
国税通則法(平成24年法律第16による改正前のもの)
24年法律第16号
改正前のもの
国税通則法(平成24年法律第16号による改正前のもの)
更正の請求(23条
更正の請求(23条1項)

1項

納税申告書を提出した者は,次の各号の一に該当する場合には,当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り,税務署長に対し,その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第26条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があった場合には,当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。

1号

当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関す
る法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと
-123-

により,当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には,当該更正後の税額)が過大であるとき。
2号・3号
2
(略)

過少申告加算税(65条
過少申告加算税(65条4項)
第1項又は第2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,これらの項の規定を適用する。

3
無申告加算税(66条
無申告加算税(66条1項)
算税
次の各号のいずれかに該当する場合には,当該納税者に対し,当該各号に規定する申告,
更正又は決定に基づき第35条第2項
(期限後申告等による納付)
の規定により納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし,期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は,この限りでない。
1号

期限後申告書の提出又は第25条(決定)の規定による決定があった場合
2号

期限後申告書の提出又は第25条の規定による決定があった後に修正申告書の提出又は更正があった場合

4
不納付加算税(67条
不納付加算税(67条1項)
源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には,税務署長は,当該納税者から,第36条第1項第2号(括弧内省略)の規定による納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし,当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められ
-124-

る場合は,この限りでない。
第3
1
地方税法
書類の送達(20条
書類の送達(20条)

1項

地方団体の徴収金の賦課徴収又は還付に関する書類は,郵便若しくは信書便による送達又は交付送達により,その送達を受けるべき者の住所,居所,事務所又は事業所に送達する。ただし,納税管理人があるときは,地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)又は還付に関する書類については,その住所,居所,事務所又は事業所に送達する。

2項

交付送達は,地方団体の職員が,前項の規定により送達すべき場所において,その送達を受けるべき者に書類を交付して行う。ただし,その者に異議がないときは,その他の場所において交付することができる。
3項

次の各号に掲げる場合には,
交付送達は,
前項の規定による交付に代え,
当該各号に掲げる行為により行うことができる。

1号

送達すべき場所において書類の送達を受けるべき者に出会わない場合その使用人その他の従業者又は同居の者で書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付すること。

2号

書類の送達を受けるべき者その他前号に規定する者が送達すべき場所にいない場合又はこれらの者が正当な理由がなく書類の受取を拒んだ場合

4項

送達すべき場所に書類を差し置くこと。

通常の取扱いによる郵便又は信書便によって第1項に規定する書類を発送した場合には,この法律に特別の定めがある場合を除き,その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する信書便物(中略)は,通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する。

5項

地方団体の長は,前項に規定する場合には,その書類の名称,その送達を受けるべき者の氏名,あて先及び発送の年月日を確認するに足りる記録
-125-

を作成しておかなければならない。
2
道府県民税の納税義務者等(24条
道府県民税の納税義務者等(24条1項)
道府県民税は,第1号に掲げる者に対しては均等割額及び所得割額の合算額によって,第3号に掲げる者に対しては均等割額及び法人税割額の合算額によって,第2号及び第4号に掲げる者に対しては均等割額によって,第4号の2に掲げる者に対しては法人税割額によって,第5号に掲げる者に対しては利子割額によって,第6号に掲げる者に対しては配当割額によって,第7号に掲げる者に対しては株式等譲渡所得割額によって課する。

1号

道府県内に住所を有する個人

2号ないし7号
3
(略)

個人の道府県民税の賦課徴収(41条
個人の道府県民税の賦課徴収(41条1項)
個人の道府県民税の賦課徴収は,本款に特別の定めがある場合を除くほか,
当該道府県の区域内の市町村が,当該市町村の個人の市町村民税の賦課徴収(均等割の税率の軽減を除く。)の例により,当該市町村の個人の市町村民税の賦課徴収と併せて行うものとする。この場合において,第17条の4の規定に基づく還付加算金,第321条第2項の規定に基づく納期前の納付に対する報奨金,第321条の2,第326条,第328条の10若しくは第328条の13の規定に基づく延滞金,第328条の11の規定に基づく過少申告加算金若しくは不申告加算金又は第328条の12の規定に基づく重加算金の計算については,道府県民税及び市町村民税の額の合算額によって当該各条の規定を適用するものとする。
4
市町村民税の納税義務者等(294条
市町村民税の納税義務者等(294条)

1項

市町村民税は,第1号の者に対しては均等割額及び所得割額の合算額によって,第3号の者に対しては均等割額及び法人税割額の合算額によって,第2号及び第4号の者に対しては均等割額によって,第5号の者に対しては法人税割額によって課する。

-126-

1号

市町村内に住所を有する個人

2号ないし5号
2項

(略)

前項第1号の市町村内に住所を有する個人とは,住民基本台帳法の適用を受ける者については,当該市町村の住民基本台帳に記録されている者をいう。

3項

市町村は,当該市町村の住民基本台帳に記録されていない個人が当該市町村内に住所を有する者である場合には,その者を当該住民基本台帳に記録されている者とみなして,その者に市町村民税を課することができる。この場合において,市町村長は,その者が他の市町村の住民基本台帳に記録されていることを知つたときは,その旨を当該他の市町村の長に通知しなければならない。

4項ないし9項

(略)

-127-

(別紙5)
別紙5
原告P1の日本での出入国の状況

日本からの出国年月日

日本への入国年月日

平成14年1月13日

平成14年2月6日

平成14年7月17日

平成14年8月7日

平成14年9月22日

平成14年10月5日

平成14年11月19日

平成14年12月3日

平成14年12月26日

平成15年1月9日

平成15年7月7日

平成15年7月24日

平成15年9月24日

平成15年10月8日

平成15年11月20日

平成15年12月5日

平成15年12月18日

平成16年1月16日

平成16年9月22日

平成16年10月4日

平成16年12月23日

平成17年1月9日

平成17年2月21日

平成17年3月11日

平成17年5月24日

平成17年6月9日

平成17年8月23日

平成17年9月8日

平成17年9月23日

平成17年10月6日

平成17年10月26日

平成17年11月11日

平成17年12月23日

平成18年1月10日

平成18年2月21日

平成18年3月10日

-128-

(別紙6)
別紙6
原告P1の国内外での滞在日数

日本での滞在日数

国外での滞在日数

平成14年

298日

67日

平成15年

297日

68日

平成16年

330日

36日

平成17年

269日

96日

-129-

(別紙7)
別紙7
原告P1の住民登録状況一覧

期間

住所

昭和53年11月26日から昭和59年8月23日まで

川口市α×番地の1

昭和59年8月24日から昭和60年3月15日まで

アメリカ合衆国

昭和60年3月16日から平成15年3月19日まで

川口市α×番地の1

平成15年3月20日から平成16年12月22日まで

川口市β×番11号

平成16年12月23日から平成17年3月10日まで

アメリカ合衆国

平成17年3月11日から同年12月22日まで

川口市β×番11号

平成17年12月23日から平成18年1月9日まで

アメリカ合衆国

平成18年1月10日から同年12月22日まで

川口市β×番11号

平成18年12月23日から平成19年6月13日まで

アメリカ合衆国

平成19年6月14日から同年12月24日まで

川口市β×番11号

平成19年12月25日から平成20年3月13日まで

アメリカ合衆国

平成20年3月14日から同年12月20日まで

川口市β×番11号

平成20年12月21日から平成21年1月8日まで

アメリカ合衆国

平成21年1月9日から

川口市β×番11号

-130-

(別紙9)
別紙9
本件各所得税課税処分の根拠及び適法性

第1
1
本件各所得税決定処分及び本件更正処分の根拠及び適法性
被告国が本件訴訟の中で主張する原告P1の本件各課税年分における所得税の所得金額及び納付すべき税額は,以下のとおりである。
(1)平成14年分

配当所得の金額(別表1「減額更正4」欄の順号①)232万5225円
上記金額は,原告P1が平成13年11月30日現在所有していた原告会
社の株式9万3009株に,1株当たり25円の利益配当を乗じて算出した金額である。

給与所得の金額(別表1「減額更正4」欄の順号②)5575万0181円
上記金額は,下記(ア)及び(イ)の各役員報酬の合計額6047万3875円から,所得税法28条の規定に基づいて算出した金額である。
(ア)原告会社からの役員報酬

3550万8000円

上記金額は,原告会社から原告P1に対する役員報酬の額である。(イ)P2社からの役員報酬

2496万5875円

上記金額は,P2社から原告P1に対する役員報酬19万9999米国ドルに,平成14年中の各月末におけるTTMの平均額124.83円/1米国ドルを乗じて算出した金額である。

雑所得の金額(別表1「減額更正4」欄の順号③)71万7720円上記金額は,下記(ア)から(イ)を控除した金額である。
(ア)雑所得の総収入金額

237万8958円

上記金額は,P3に対する貸付金に係る受取利子の金額であり,P3
-131-

の平成14年4月期の法人税の確定申告書に添付の「借入金及び支払利子の内訳書」に記載されている金額と同額でる。
(イ)雑所得の必要経費

166万1238円

上記金額は,原告P1が上記(ア)の貸付を行うために,金融機関から借り入れた金銭に対する支払利子の金額である。

総合短期譲渡所得の金額(別表1「減額更正4」欄の順号④)256万1800円
上記金額は,下記(ア)から(イ)を控除した残額から,所得税法33条3項及
び4項の規定に基づき,譲渡所得の特別控除額50万円を控除した金額である。
(ア)総合短期譲渡所得の総収入金額

671万5800円

上記金額は,原告P1から,P3に対する平成14年譲渡オルゴール等の譲渡のうち,本件基準充足明細書により,取得の日以後5年以内に譲渡されたものであることが明らかである2台のオルゴール等の譲渡に係る収入金額である。なお,この金額は,P3の平成16年4月期の法人税の確定申告書に添付された「資産別固定資産減価償却内訳表」に記載された「P30」の取得価額413万2800円及び「P31」の取得価額258万3000円の合計額と同額である。
(イ)総合短期譲渡所得の取得費

365万4000円

上記金額は,上記(ア)の本件基準充足オルゴール等2台の取得費であり,甲第138号証に記載された金額3万米国ドル(乙第2号証7枚目の「P30」に対応する金額1万8000米国ドルと7枚目の「P31」に対応する金額1万2000米国ドルの合計額)に,平成11年(1999年)6月1日のTTM121.8円/1米国ドルを乗じて算出した金額である。

総合長期譲渡所得の金額(別表1「減額更正4」欄の順号⑤)
-132-

1億6517万0576円
上記金額は,下記(ア)から(イ)を控除した金額である。
(ア)総合長期譲渡所得の総収入金額

2億6023万7250円

上記金額は,原告P1から,P3に対する平成14年譲渡オルゴール等(ただし,上記エ(ア)のオルゴール等を除く。)の譲渡に係る収入金額である。
(イ)総合長期譲渡所得の取得費

9506万6674円

上記金額は,平成14年譲渡オルゴール等(ただし,上記エ(ア)のオルゴール等を除く。)の取得費とした金額であり,次のa及びbの合計額である。

平成14年譲渡オルゴール等(ただし,上記エ(ア)のオルゴール等を除く。)のうち本件基準充足オルゴール等4台に係る取得費の合計額
814万4075円


平成14年譲渡オルゴール等のうち本件基準充足オルゴール等以
外81台に係る取得費の合計額
8692万2599円
上記金額は,平成14年譲渡オルゴール等のうち本件基準充足オルゴール等以外のものに係る譲渡価額の合計額2億3505万3000円に本件基準充足オルゴール等取得費割合36.98パーセントを乗じて算出した金額である。


総所得金額(別表1「減額更正4」欄の順号⑥)
1億4394万0214円
上記金額は,所得税法22条の規定に基づき,上記アないし上記エの金額
及び上記オの2分の1に相当する金額(8258万5288円)を合計したものである。

-133-


所得控除の合計額(別表1「減額更正4」欄の順号⑪)
332万2600円
上記金額は,下記(ア)ないし(エ)の金額の合計額である。
(ア)社会保険料控除の金額(別表1「減額更正4」欄の順号⑦)29万2600円
上記金額は,原告P1が平成14年中に納付した同人及び妻P5に係る国民年金保険料の合計額である。
(イ)配偶者控除の金額(別表1「減額更正4」欄の順号⑧)(ウ)扶養控除の金額(別表1「減額更正4」欄の順号⑨)
38万円
227万円

上記金額は,原告P1の長男,次男,長女及び次女に係る扶養控除の合計額である。なお,長男,次男及び長女は特定扶養親族に該当することから各63万円を,次女については一般扶養親族に該当することから38万円を控除している。
(エ)基礎控除の金額(別表1「減額更正4」欄の順号⑩)

38万円

課税総所得金額(別表1「減額更正4」欄の順号⑫)
1億4061万7000円
上記金額は,所得税法89条2項の規定に基づき,上記カの金額から上記キの金額を控除した後の金額である(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。


算出所得税額(別表1「減額更正4」欄の順号⑬)
4953万8290円
上記金額は,上記クの金額に,所得税法89条1項(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)及び旧負担軽減法4条に規定する税率を乗じて算出した金額である。


配当控除(別表1「減額更正4」欄の順号⑭)

11万6262円

上記金額は,上記アの配当所得の金額に所得税法92条1項の規定を適
-134-

用して算出した金額である。

差引所得税額(別表1「減額更正4」欄の順号⑮)
4942万2028円
上記金額は,上記ケの金額から上記コの金額を差し引いた金額である。

定率減税額(別表1「減額更正4」欄の順号⑯)

25万円

上記金額は,旧負担軽減法6条の規定により算出した金額である。ス
源泉徴収税額(別表1「減額更正4」欄の順号⑰)
1286万0445円
上記金額は,下記(ア)及び(イ)の金額の合計額である。
(ア)原告会社からの配当所得に係る源泉徴収税額

46万5045円

上記金額は,上記アの配当所得に係る源泉徴収税額である。
(イ)原告会社からの給与所得に係る源泉徴収税額
1239万5400円
上記金額は,上記イ(ア)の役員報酬に係る源泉徴収税額である。セ
納付すべき税額(別表1「減額更正4」欄の順号⑱)
3631万1500円
上記金額は,上記サの金額から上記シ及びスの金額の合計額を控除した金額である(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。

(2)平成15年分

配当所得の金額(別表2「減額更正4」欄の順号①)232万5225円
上記金額は,原告P1が平成14年11月30日現在所有していた原告会社の株式9万3009株に,1株当たり25円の利益配当を乗じて算出した金額である。

-135-


給与所得の金額(別表2「減額更正4」欄の順号②)5270万1867円
上記金額は,下記(ア)及び(イ)の各役員報酬の合計額5726万5124円から,所得税法28条の規定に基づいて算出した金額である。
(ア)原告会社からの役員報酬

3550万8000円

上記金額は,原告会社から原告P1に対する役員報酬の額であり,原告P1が,平成15年分確定申告書に添付した平成15年分給与所得の源泉徴収票の「支払金額」欄に記載された金額と同額である。
(イ)P2社からの役員報酬

2175万7124円

上記金額は,P2社から原告P1に対する役員報酬18万7999米国ドルに,平成15年中の各月末におけるTTMの平均額115.73円/1米国ドルを乗じて算出した金額である。

雑所得の金額(別表2「減額更正4」欄の順号③)155万8570円
上記金額は,下記(ア)から(イ)を控除した金額である。
(ア)雑所得の総収入金額

388万1587円

上記金額は,P3に対する貸付金に係る受取利子の金額であり,P3の平成15年4月期の法人税の確定申告書に添付の「借入金及び支払利子の内訳書」に記載されている金額と同額である。
(イ)雑所得の必要経費

232万3017円

上記金額は,原告P1が上記(ア)の貸付を行うために,金融機関から借り入れた金銭に対する支払利子の金額である。

総合長期譲渡所得の金額(別表2「減額更正4」欄の順号④)2606万2930円
上記金額は,下記(ア)から(イ)を控除した残額から,所得税法33条3項及び4項の規定に基づき,譲渡所得の特別控除額50万円を控除した金額
-136-

である。
(ア)総合長期譲渡所得の総収入金額

4215万円

上記金額は,原告P1から,P3に対する平成15年譲渡オルゴール等43台の譲渡に係る収入金額であり,P3の平成16年4月期の法人税の確定申告書に添付された「資産別固定資産減価償却内訳表」に記載された平成15年譲渡オルゴール等の取得価額の合計と同額である。(イ)総合長期譲渡所得の取得費

1558万7070円

上記金額は,平成15年譲渡オルゴール等43台の取得費とした金額であり,上記(ア)の金額4215万円に本件基準充足オルゴール等取得費割合36.98パーセントを乗じて算出した金額である。

一時所得の金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑤)171万6861円
上記金額は,原告P1の平成15年分の一時所得の金額であり,原告P1
が平成15年分確定申告書に記載した金額と同額である。

総所得金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑥)
7047万5557円
上記金額は,所得税法22条の規定に基づいて,上記アないしウの金額並びに上記エ及びオの合計額の2分の1に相当する金額(1388万9895円)を合計したものである。


分離長期譲渡所得の金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑦)
0円

上記金額は,原告P1の平成15年分の分離長期譲渡所得の金額であり,原告P1が平成15年分確定申告書に記載した金額と同額である。ク
所得控除の合計額(別表2「減額更正4」欄の順号⑪)
296万9200円
上記金額は,下記(ア)ないし(ウ)の金額の合計額であり,原告P1が平成15年分確定申告書に記載した金額と同額である。

-137-

(ア)社会保険料の金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑧)31万9200円
上記金額は,原告P1が平成15年分確定申告書に記載した金額と同額である。
(イ)扶養控除の金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑨)
227万円

上記金額は,原告P1の長男,次男,長女及び次女に係る扶養控除の合計額であり,原告P1が平成15年分確定申告書に記載した金額と同額である。
なお,長男,次男及び長女は特定扶養親族に該当することから各63万円を,次女については一般扶養親族に該当することから38万円を控除している。
(ウ)基礎控除の金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑩)

38万円

課税総所得金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑫)
6750万6000円
上記金額は,所得税法89条2項の規定に基づき,上記カの金額から上記クの金額を控除した後の金額である(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。


課税分離長期譲渡所得金額(別表2「減額更正4」欄の順号⑬)0円上記金額は,上記キの金額と同額である。


算出所得税額(別表2「減額更正4」欄の順号⑭)
2248万7220円
上記金額は,上記ケの金額に,所得税法89条1項及び負担軽減法4条に規定する税率を乗じて算出した金額である。


配当控除(別表2「減額更正4」欄の順号⑮)

11万6262円

上記金額は,上記アの配当所得の金額に,所得税法92条1項の規定を適用して算出した金額である。

-138-


差引所得税額(別表2「減額更正」4欄の順号⑯)
2237万0958円
上記金額は,上記サの金額から上記シの金額を差し引いた金額である。

定率減税額(別表2「減額更正4」欄の順号⑰)

25万円

上記金額は,旧負担軽減法6条の規定により算出した金額である。ソ
源泉徴収税額(別表2「減額更正4」欄の順号⑱)
873万3525円
上記金額は,下記(ア)及び(イ)の金額の合計額である。
(ア)原告会社からの配当所得に係る源泉徴収税額

46万5045円

上記金額は,上記アの配当所得に対する源泉徴収税額である。
(イ)原告会社からの給与所得に係る源泉徴収税額
826万8480円
上記金額は,上記イ(ア)の役員報酬に係る源泉徴収税額である。タ
納付すべき税額(別表2「減額更正4」欄の順号⑲)
1338万7400円
上記金額は,上記スの金額から上記セ及びソの金額の合計額を控除した金額である(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。

(3)平成16年分

配当所得の金額(別表3「減額更正4」欄の順号①)232万5250円
上記金額は,原告P1が平成15年11月30日現在所有していた原告会社の株式93万0100株(なお,原告会社は,平成15年1月28日付けで,同社の普通株式1株を普通株式10株にする株式分割を実施している。に,

1株当たり2.
5円の利益配当を乗じて算出した金額である。

-139-


給与所得の金額(別表3「減額更正4」欄の順号②)8062万5108円
上記金額は,下記(ア)及び(イ)の各役員報酬の合計額8665万8009円から,所得税法28条の規定に基づいて算出した金額である。
(ア)原告会社からの役員報酬

6513万9111円

上記金額は,原告会社から原告P1に対する役員報酬の額である。(イ)P2社からの役員報酬

2151万8898円

上記金額は,P2社から原告P1に対する役員報酬19万9120米国ドルに,平成16年中の各月末におけるTTMの平均額108.07円/1米国ドルを乗じて算出した金額である。

雑所得の金額(別表3「減額更正4」欄の順号③)
0円

上記金額を算出するためには,下記(ア)から(イ)を控除することとなるが,雑所得の計算上生じた損失については,他の各種所得の金額と損益通算することができないことから(所得税法69条1項),上記雑所得の金額は0円となる。
(ア)雑所得の総収入金額

401万0014円

上記金額は,P3に対する貸付金に係る受取利子の金額であり,P3の平成16年4月期の法人税の確定申告書に添付の「借入金及び支払利子の内訳書」(乙第2号証13枚目)に記載されている金額と同額である。
(イ)雑所得の必要経費

416万8210円

上記金額は,原告P1が上記(ア)の貸付を行うために,金融機関から借り入れた金銭に対する支払利子の金額である。

総所得金額(別表3「減額更正4」欄の順号④)
8295万0358円
上記金額は,所得税法22条の規定に基づき,上記アないし上記ウの金
-140-

額を合計したものである。

所得控除の合計額(別表3「減額更正4」欄の順号⑨)318万9600円
上記金額は,下記(ア)ないし(エ)の金額の合計額である。
(ア)社会保険料控除の金額(別表3「減額更正4」欄の順号⑤)15万9600円
上記金額は,原告P1が平成16年中に納付した原告P1に係る国民年金保険料の金額である。
(イ)配偶者控除の金額(別表3「減額更正4」欄の順号⑥)
(ウ)扶養控除の金額(別表3「減額更正4」欄の順号⑦)
38万円

227万円

上記金額は,原告P1の長男,次男,長女及び次女に係る扶養控除の金額の合計額である。
なお,長男,次男及び長女は特定扶養親族に該当することから各63万円を,次女については一般扶養親族に該当することから38万円を控除している。
(エ)基礎控除の金額(別表3「減額更正4」欄の順号⑧)カ
38万円

課税総所得金額(別表3「減額更正4」欄の順号⑩)
7976万円
上記金額は,所得税法89条2項の規定に基づき,上記エの金額から上記オの金額を控除した金額である(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。


算出所得税額(別表3「減額更正4」欄の順号⑪)
2702万1200円
上記金額は,上記カの金額に,所得税法89条1項及び旧負担軽減法4条に規定する税率を乗じて算出した金額である。


配当控除(別表3「減額更正4」欄の順号⑫)

-141-

11万6263円

上記金額は,上記アの配当所得の金額に,所得税法92条1項の規定を適用して算出した金額である。

差引所得税額(別表3「減額更正4」欄の順号⑬)
2690万4937円
上記金額は,上記キの金額から上記クの金額を差し引いた金額である。

定率減税額(別表3「減額更正4」欄の順号⑭)

25万円

上記金額は,旧負担軽減法6条の規定により算出した金額である。サ
源泉徴収税額(別表3「減額更正4」欄の順号⑮)
2323万1338円
上記金額は,下記(ア)及び(イ)の金額の合計額である。
(ア)原告会社からの配当所得に係る源泉徴収税額

46万5050円

上記金額は,上記アの配当所得に対する源泉徴収税額である。
(イ)原告会社からの給与所得に係る源泉徴収税額
2276万6288円
上記金額は,上記イ(ア)の役員報酬に係る源泉徴収税額である。シ
納付すべき税額(別表3「減額更正4」欄の順号⑯)
342万3500円
上記金額は,上記ケの金額から上記コ及びサの金額の合計額を控除した金額である(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満を切り捨てた後のもの。)。

(4)平成17年分

配当所得の金額(別表4「減額更正4」欄の順号[1])
232万5250円
上記金額は,原告P1が平成16年11月30日現在所有していた原告会社の株式93万0100株に,1株当たり2.5円の利益配当を乗じて
-142-

算出した金額である。

給与所得の金額(別表4「減額更正4」欄の順号[2])
7億5927万1899円
上記金額は,下記(ア)及び(イ)の各役員報酬の合計額9572万3052円と(ウ)の金額7億0530万円との合計額8億0102万3052円から,所得税法28条の規定に基づいて算出した金額である。
(ア)原告会社からの役員報酬

7402万8000円

上記金額は,原告会社から原告P1に対する役員報酬の額である。(イ)P2社からの役員報酬

2169万5052円

上記金額は,P2社から原告P1に対する役員報酬19万5539米国ドルに,平成17年中の各月末におけるTTMの平均額110.95円/1米国ドルを乗じて算出した金額である。
(ウ)新株予約権の行使に係る給与収入金額

7億0530万円

上記金額は,原告P1が原告会社から付与されたストックオプションの権利を行使したことにより得た経済的利益の価額であり(所得税法36条,所得税法施行令84条3号),当該権利の行使により取得した株式のその行使の日における価額(証券取引法122条の規定により公表された最終の価格2790円)から,当該新株予約権の行使に係る新株の発行価額439円を控除した金額2351円に権利行使した株式数30万株を乗じた金額(平成18年課個2-18ほか2課共同による改正前の所得税基本通達23~35共-6,6の2及び9参照)である。ウ
雑所得の金額(別表4「減額更正4」欄の順号[3])154万5141円
上記金額は,下記(ア)から(イ)を控除した金額である。
(ア)雑所得の総収入金額

494万8820円

上記金額は,P3に対する貸付金に係る受取利子の金額であり,P3の
-143-

平成17年4月期の法人税の確定申告書に添付の「借入金及び支払利子の内訳書」に記載されている金額と同額である。
(イ)雑所得の必要経費

340万3679円

上記金額は,原告P1が上記(ア)の貸付を行うために,金融機関から借り入れた金銭に対する支払利子の金額である。

総所得金額(別表4「減額更正4」欄の順号[4])
7億6314万2290円
上記金額は,所得税法22条2項の規定に基づき,上記アないしウの金額を合計したものである。


分離長期譲渡所得(別表4「減額更正4」欄の順号[5])
879万7990円
上記金額は,下記(ア)の金額及び(イ)の金額の合計額であり,①地の譲渡に係る譲渡所得の金額,②

本件A土

本件B土地の譲渡に係る譲渡所得の金

額の合計額である。
(ア)本件A土地に係る分離長期譲渡所得

80万6981円

上記金額は,下記aの金額からbの金額を控除した金額である。
a本件A土地の譲渡価額

1234万9696円

上記金額は,原告P1が平成17年9月14日付けで,訴外株式会社P15に譲渡した本件A土地の売買契約書に記載された土地売買代金総額1233万1000円と,同土地に係る未経過固定資産税として原告P1が受領した1万8696円の合計額である。
b本件A土地の取得費

1154万2715円

上記金額は,下記の金額(a)及び(b)の金額の合計額である。(a)本件A53土地の取得価額

1088万2055円

上記金額は,下記ⅰの金額からⅱの金額を控除した金額である。
ⅰ本件A土地付建物契約書に記載された金額

-144-

1630万円

上記金額は,本件A53土地並びに本件A建物及び本件A建物に
係る設備等を売買の目的物とする本件A53土地等売買契約書に
記載されている金額である。

本件A建物の標準的な建築価額

541万7945円

上記金額は,
「建物の標準的な建築価額表」「建築統計年報

(国
土交通省)」の「構造別:建築物の数,床面積の合計,工事費予定額」表を基に,1平方メートル当たりの工事費予定価額(工事費予定額を床面積の合計で除したもの。))の「建築年『昭和53年』・構造『木造・木骨モルタル』」欄の7万7900円に,本件A建物の延べ床面積69.55平方メートルを乗じて算出した金額である。(b)本件A55土地の取得価額

66万0660円

上記金額は,本件A55土地の面積1.65165坪に,本件A55土地の取得時の1坪当たりの単価である40万円を乗じて算出した金額である。
(イ)本件B土地に係る分離長期譲渡所得

799万1009円

上記金額は,下記aの金額からbの金額を控除した金額である。
a本件B土地の譲渡価額

3243万3009円

上記金額は,本件B土地の譲渡価額であり,本件B土地及び本件C土地の不動産売買契約書に記載された売買代金総額4051万6000円と,上記各土地に係る未経過固定資産税等として原告P1が受領した3万0558円の合計額4054万6558円に,本件B土地及び本件C土地の面積の合計191.35平方メートルに占める,本件B土地の面積153.06平方メートルの割合を乗じて算出した金額である。b本件B土地の取得費

2444万2000円

上記金額は,本件B土地の面積61.105坪に,本件B土地の取得時の1坪当たりの単価である40万円を乗じて算出した金額である。
-145-


分離短期譲渡所得(別表4「減額更正4」欄の順号[6])
585万4439円
上記金額は,下記(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額であり,本件C土地の譲渡に係る譲渡所得の金額である。
(ア)譲渡価額

811万3549円

上記金額は,本件C土地の譲渡価額であり,上記オ(イ)aで述べた本件B土地及び本件C土地の譲渡価額の合計額4054万6558円に,本件B土地及び本件C土地の面積の合計191.35平方メートルに占める,本件C土地の面積38.29平方メートルの割合を乗じて算出した金額である。
(イ)取得費

225万9110円

上記金額は,原告P1が平成15年2月5日付けで本件C土地を取得した際に支払った金額である。

所得控除の合計額(別表4「減額更正4」欄の順号[11])
304万3300円
上記金額は,下記(ア)ないし(エ)の金額の合計額である。
(ア)社会保険料控除の金額(別表4「減額更正4」欄の順号[7])1万3300円
上記金額は,原告P1が平成17年中に納付した原告P1に係る国民年金保険料の金額である。
(イ)配偶者控除の金額(別表4「減額更正4」欄の順号[8])(ウ)扶養控除の金額(別表4「減額更正4」欄の順号[9])

38万円
227万円

上記金額は,原告P1の長男,次男,長女及び次女に係る扶養控除の金額の合計額である。
なお,次男,長女及び次女は特定扶養親族に該当することから各63万円を,長男については一般扶養親族に該当することから38万円を控除し
-146-

ている。
(エ)基礎控除の金額(別表4「減額更正4」欄の順号[10])ク
38万円

課税総所得金額(別表4「減額更正4」欄の順号[12])
7億6009万8000円
上記金額は,所得税法89条2項の規定に基づき,前記エの金額から前記キの金額を控除した金額である(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。


課税分離長期譲渡所得金額(別表4「減額更正4」欄の順号[13])879万7000円
上記金額は,前記オの分離長期譲渡所得の金額である(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。


課税分離短期譲渡所得金額(別表4「減額更正4」欄の順号[14])585万4000円
上記金額は,前記カの分離短期譲渡所得の金額である(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)。


算出所得税額(別表4「減額更正4」欄の順号[18])
2億8182万2010円
上記金額は,下記(ア)ないし(ウ)の金額の合計額である。
(ア)課税総所得金額に対する税額(別表1「減額更正4」欄の順号⑮)2億7874万6260円
上記金額は,前記クの金額に,所得税法89条1項及び旧負担軽減法4条に規定する税率を乗じて算出した金額である。
(イ)課税分離長期譲渡所得金額に対する税額(別表4「減額更正4」欄の順号[16])

131万9550円

-147-

上記金額は,前記ケの金額に,措置法31条1項に規定する税率を適用して算出した金額である。
(ウ)課税分離短期譲渡所得金額に対する税額(別表4「減額更正4」欄の順号[17])

175万6200円

上記金額は,前記コの金額に,措置法32条1項に規定する税率を適用して算出した金額である。

配当控除(別表4「減額更正4」欄の順号[19])

11万6263円

上記金額は,前記アの配当所得の金額に所得税法92条1項の規定を適用して算出した金額である。

差引所得税額(別表4「減額更正4」の順号[20])
2億8170万5747円
上記金額は,前記サの金額から上記シの金額を差し引いた金額である。

定率減税額(別表1「減額更正4」の順号[21])

25万円

上記金額は,旧負担軽減法6条の規定により算出した金額である。ソ
源泉徴収税額(別表4「減額更正4」の順号[22])
2億7319万7450円
上記金額は,下記(ア)ないし(ウ)の金額の合計額である。
(ア)原告会社からの配当所得に係る源泉徴収税額

46万5050円

上記金額は,前記アの配当所得に対する源泉徴収税額である。
(イ)原告会社からの給与所得に係る源泉徴収税額
2587万7400円
上記金額は,前記イ(ア)の役員報酬に係る源泉徴収税額である。(ウ)原告会社から付与された新株予約権の行使による経済的利益に係る給与所得の源泉徴収税額

2億4685万5000円

上記金額は,前記イ(ウ)の給与収入に対する源泉徴収税額である。タ
納付すべき税額(別表4「減額更正4」の順号[23])

-148-

825万8200円
上記金額は,前記スの金額から上記セ及びソの金額の合計額を控除した金額である(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)

2
本件各所得税決定処分及び本件更正処分の適法性
原告P1の本件各課税年分における納付すべき税額は,それぞれ,上記1のとおりであるところ,平成14年分,平成16年分及び平成17年分所得税に係る本件各所得税決定処分(本件第4減額更正処分等によりそれぞれ一部取り消された後のもの。別表1,3及び4の各「減額更正4」欄参照)及び平成15年分の所得税の本件更正処分(本件第4減額更正処分等により一部取り消された後のもの。別表2「減額更正4」欄参照)の額と同額であるから,本件各決定処分及び本件更正処分はいずれも適法である。

第2
1
本件各加算税賦課決定処分の根拠及び適法性
本件各所得税決定処分に係る無申告加算税の賦課決定処分の根拠
前記第1のとおり,本件各所得税決定処分はいずれも適法であるところ,原告P1は,平成14年分,平成16年分及び平成17年分の所得税の確定申告を期限内にしていなかったものであり,当該期限内の提出ができなかったことについて,国税通則法66条1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって,本件各所得税決定処分に伴って課されるべき無申告加算税の額はそれぞれ次のとおりとなる。
(1)平成14年分(別表1「減額更正4」欄の順号⑲)544万6500円上記金額は,国税通則法66条1項に基づき,平成14年分の所得税の決定処分によって原告P1が納付すべき税額3631万円(別表1「減額更正
-149-

4」欄の順号⑱参照。ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に100分の15の割合を乗じて算出した金額である。
(2)平成16年分(別表3「減額更正4」欄の順号⑰)

51万3000円

上記金額は,国税通則法66条1項に基づき,平成16年分の所得税の決定処分によって原告P1が納付すべき税額342万円
(別表3
「減額更正4」
欄の順号⑯参照。ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に100分の15の割合を乗じて算出した金額である。
(3)平成17年分(別表4「減額更正4」欄の順号[24])123万7500円
上記金額は,国税通則法66条1項に基づき,平成17年分の所得税の決定処分によって原告P1が納付すべき税額825万円
(別表4
「減額更正4」
欄の順号[23]参照。ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に100分の15の割合を乗じて算出した金額である。
2
本件更正処分に係る過少申告加算税の賦課決定処分の根拠
前記第1のとおり,本件更正処分は適法であるところ,原告P1は平成15年分の所得税について,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,納付すべき税額を過少に申告していたことについて,国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって,原告P1に課されるべき過少申告加算税の額は,国税通則法65条1項に基づき,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額1332万円(別表2「減額更正4」欄の順号⑲の金額1338万7400円から,同表「確定申告」欄の順号⑲の金額6万2200円を差し引いたもの。ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のも
-150-

の。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額133万2000円と,同法65条2項の規定に基づき,本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額のうち期限内申告税額879万5725円(別表2「減額更正4」欄の順号⑱の金額873万3525円と,同表「確定申告」欄の順号⑲の金額6万2200円を加えたもの。)と50万円のいずれか多い金額を超える部分の税額452万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に100分の5を乗じて算出した金額22万6000円との合計額である155万8000円(別表2「減額更正4」欄の順号⑳)となる。
3
本件各加算税賦課決定処分の適法性
前記1及び2で述べたとおり,原告P1に課されるべき所得税の無申告加算税の額は,それぞれ,平成14年分が544万6500円,平成16年分が51万3000円,平成17年分が123万7500円であり,また,同人に課されるべき平成15年分の所得税の過少申告加算税の額は155万8000円であるところ,本件各加算税賦課決定処分の額(いずれも本件第4減額更正処分等により一部取り消された後のもの)と同額であるから,本件各加算税賦課決定処分は適法である。

-151-

10)
(別紙10)
別紙10
本件各源泉所得税課税処分の根拠及び適法性

第1
1
本件納税告知処分について
根拠について
原告会社は,
代表取締役である原告P1に対して,
平成14年ないし同18年
において,役員報酬,配当金,原告会社がP10に上場した際の上場祝い金及びストックオプションの行使による経済的利益の支払等をしているところ,本件係
争月分の支払等については,原告P1が日本の非居住者であるとして,所得税法212条に基づき,源泉所得税の徴収及び納付をしていた(別表6「既納付の源泉所得税額(B)」欄)。
しかしながら,原告P1は,日本の居住者に該当することから,すべての所得について所得税が課され(所得税法5条1項,7条1項1号),原告会社は,本件係争月分における役員報酬等の支払について,その支払の際,所得税法の各規定に基づき計算した金額を源泉徴収し,
各徴収の日の属する月の翌月10日ま
でにこれを国に納付すべき義務を負っていた(所得税法6条,181条1項,182条2号,183条1項,185条,186条及び旧負担軽減法11条)。したがって,原告会社が,上記役員報酬等について,正当に徴収及び納付すべき本件係争月分の源泉所得税の額は,別表6「源泉徴収すべき所得税額(A)」欄のとおりとなる。
ところが,原告会社は,その法定納期限までに別表6「新たに納付すべき源泉所得税額(A)-(B)」欄に記載の各金額を納付しなかったことから,西川口税務署長は本件納税告知処分(平成21年10月30日付け一部取消し及び平成24年11月15日付け一部取消し後のもの。以下同じ。)を行ったものである。

2
適法性について

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被告国が本件訴えで主張する,原告会社が新たに納付すべきこととなる本件係争月分の源泉所得税の額は,別表6「新たに納付すべき源泉所得税額(A)-(B)」欄のとおりであり,これらは本件納税告知処分に係る納付すべき税(別表6「本件納税告知処分」欄記載の金額)と同額であるから,本件納税告知処分は適法である。

第2
1
原告会社に対する賦課決定処分について
根拠について
第1の2のとおり,本件納税告知処分はいずれも適法であるところ,原告会社は本件係争月分の源泉所得税をその法定納期限(所得税法183条1項)までに完納しなかったものであり,これについて,国税通則法67条1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって,原告会社が納付すべき不納付加算税の額は,国税通則法67条2項の規定に基づき,原告会社が平成18年3月10日付けで自主的に納付した本件ストックオプションの権利行使に係る源泉所得税1億2173万円(ただし,国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に,100分の5の割合を乗じて算出した金額と国税通則法67条1項の規定に基づき,新たに納付すべき源泉所得税額(別表6「新たに納付すべき源泉所得税額(A)-(B)」欄参照。ただし,国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に,100分の10の割合を乗じて算出した金額の合計額(別表6「不納付加算税の額」欄)である。

2
適法性について
被告国が本件訴えで主張する,原告会社が納付すべき不納付加算税の額は,別表6「不納付加算税の額」欄のとおりであり,これらは,原告会社に対してされた賦課決定処分(平成21年10月30日付け一部取消し及び平成24年
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11月15日付け一部取消し後のもの。
以下同じ。における不納付加算税

(別
表6「原告会社賦課決定処分」欄記載の金額)と同額であるから,本件原告会社賦課決定処分は適法である。

-154-

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