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事業計画変更認可申請却下処分取消等請求事件
事件番号平成24(行ウ)327
事件名事業計画変更認可申請却下処分取消等請求事件
裁判年月日平成25年6月27日
法廷名東京地方裁判所
判示事項1 一般乗用旅客自動車運送事業であるタクシー事業を営む者がした,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条に基づいて特定地域に指定された区域を営業区域として事業用自動車(一般車両タクシー)を30台増車する旨の事業計画変更認可申請に対し,運輸支局長がした前記申請を却下する旨の処分が,違法とされた事例
2 一般乗用旅客自動車運送事業であるタクシー事業を営む者がした,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条に基づいて特定地域に指定された区域を営業区域として,事業用自動車(一般車両タクシー)を30台増車する旨の事業計画変更認可申請に係る事業計画変更を認可することの義務付けを求める請求が,棄却された事例
3 一般乗用旅客自動車運送事業であるタクシー事業を営む者が,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条に基づいて特定地域に指定された区域を営業区域として,事業用自動車(一般車両タクシー)を増車するため,運輸支局長に対し,同法15条1項,道路運送法15条1項に基づき,事業計画変更認可申請をしたところ,これを却下する旨の処分を受けたため,同条3項に基づき届出のみで前記申請に係る増車をすることができる法的地位を有することの確認を求めた訴えが,適法とされた事例
裁判要旨1 一般乗用旅客自動車運送事業であるタクシー事業を営む者がした,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条に基づいて特定地域に指定された区域を営業区域として事業用自動車(一般車両タクシー)を30台増車する旨の事業計画変更認可申請に対し,運輸支局長がした前記申請を却下する旨の処分につき,特定地域に係る増車認可申請に対する認可の許否の判断,その審査基準の策定については国土交通大臣等の政策的な裁量判断に委ねられていると解するのが相当であるところ,前記特別措置法制定までの議論の経緯等を検討すると,前記基準が安易な供給拡大を抑制することを目的とすること自体は適法であると認められ,また,前記基準において,特定地域に係る増車認可申請を認めるためには,当該営業圏において新規の輸送需要が生ずる見込みがあることを必要とするとの収支計画要件を定めることは,安易な供給拡大を抑制するという観点からみて明らかに不合理な規制であるとまではいえないから,前記特別措置法上許容されているものと解されるが,申請者が実際には立証することが困難な要件を課すことは,政府が供給を直接調整して増車を一律に禁止することと同視することができ,違法であって許されないから,収支計画要件への適合性は,新規の輸送需要の発生が社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれることを申請者である事業者が立証することができれば足りると解されるとした上で,前記処分は,新規の輸送需要が発生することが社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれるということができるにもかかわらず,特段の事情も示すことなく,特定地域に係る増車認可申請を一切不認可とした点で,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,又は,判断過程において考慮すべき事情を考慮しないことにより,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず,運輸支局長が有する裁量権の範囲の逸脱又は濫用をしたものであって違法であるとした事例
2 一般乗用旅客自動車運送事業であるタクシー事業を営む者がした,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条に基づいて特定地域に指定された区域を営業区域として,事業用自動車(一般車両タクシー)を30台増車する旨の事業計画変更認可申請に係る事業計画変更を認可することの義務付けを求める請求につき,前記区域において新規の輸送需要が発生しそれが増車に係る営業収入に結び付くことは社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれ,同申請に対する却下処分は取り消されるべきものであるものの,前記新規需要が,前記30台の増車に見合うものであるか否かについて,客観的な裏付けは十分に示されておらず行政庁の専門的・技術的な知識経験に基づく判断を経るべき点が残っているといわざるを得ず,前記申請につき申請どおりの事業計画変更認可をすべきかどうかについては,なお,行政庁による審査を尽くす必要があるから,前記申請につき,行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ,又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるとまではいえないとして,前記請求を棄却した事例
3 一般乗用旅客自動車運送事業であるタクシー事業を営む者が,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条に基づいて特定地域に指定された区域を営業区域として,事業用自動車(一般車両タクシー)を増車するため,運輸支局長に対し,同法15条1項,道路運送法15条1項に基づき,事業計画変更認可申請をしたところ,これを却下する旨の処分を受けたため,同条3項に基づく届出のみで前記申請に係る増車をすることができる法的地位を有することの確認を求めた訴えにつき,前記区域を特定地域として指定したことが違法無効である場合には,同条3項に基づき,事前に届出をするのみで増車をすることができることになるから,前記処分の取消しを求めるまでもなく,同条1項の認可を得ることなく同条3項の届出のみで前記申請に係る増車をなし得る法的地位を有することの確認を求めることができ,確認の利益を肯定することができるとして,前記訴えを適法とした事例
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平成25年6月27日判決言渡
平成24年(行ウ)第327号

事業計画変更認可申請却下処分取消等請求事件
主文

1
処分行政庁が平成23年11月30日付けでした原告の同年6月30日付け一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更認可申請を却下する旨の処分(東運輸第○号)を取り消す。

2
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

(主位的請求)
1
主文第1項同旨

2
処分行政庁は,原告に対し,平成23年6月30日付け一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更認可申請に係る事業計画変更を認可せよ。
(予備的請求)
原告と被告との間で,原告が,道路運送法15条1項の認可を得ることなく,原告が平成23年6月30日付けで処分行政庁に対してした一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画変更認可申請に係る30台の増車をし得る法的地位を有することを確認する。
第2

事案の概要
特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(以下「特措法」という。)3条に基づいて指定された特定地域(以下,単に「特定地域」という。)において,一般乗用旅客自動車運送事業者が当該特定地域内の営業所に配置する事業用自動車の合計数を増加させる事業
-1-

計画の変更(以下,このような増車を「特定地域に係る増車」といい,このような事業計画の変更を「特定地域に係る増車変更」という。)をしようとするときは,特措法15条1項,道路運送法15条1項により,国土交通大臣の認可を受けなければならず(特措法15条1項により道路交通法15条3項の届出制の適用は排除される。),その認可基準としては,道路運送法15条2項において準用する同法6条各号が,①

当該事業の計画が輸送の安全を確保す

るため適切なものであること(同条1号),②

前号に掲げるもののほか,当

該事業の遂行上適切な計画を有するものであること(同条2号),③
当該事

業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること(同条3号)という基準を定めているところ,平成21年9月30日付け関東運輸局長ほか公示「特定地域の指定及び特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化の推進のために監督上必要となる措置の実施について」(以下「措置実施公示」という。)には,上記基準を具体化した増車の認可に関する基準(行政手続法5条にいう審査基準に当たる。以下「措置認可基準」という。)として,「提出された収支計画上の増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」という収支計画に関する要件(以下「収支計画要件」という。)等が定められている。
本件は,一般乗用旅客自動車運送事業であるタクシー事業を営む原告が,特定地域に指定されている東京都特別区,武蔵野市及び三鷹市の区域(以下「特別区・武三交通圏」という。)を営業区域として,営業所ごとに配置する事業用自動車(一般車両タクシー)を30台増車するため,処分行政庁に対し,道路運送法15条1項に基づき,平成23年6月30日付けで事業計画変更認可申請(以下「本件申請」という。)をしたところ,処分行政庁から,本件申請は収支計画要件に適合しないとして,同年11月30日付けで本件申請を却下する旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,処分行政庁の所属
-2-

する国を被告として,ア

主位的に,①

措置認可基準自体又はその運用は違

法であり,本件申請は道路運送法及び特措法の定める認可基準に適合すること,②

仮に,措置認可基準又はその運用が適法であるとしても,本件申請は措置
認可基準の定める収支計画要件に適合することから,本件処分は違法であるとして,行政事件訴訟法3条2項並びに同条6項2号及び同法37条の3に基づき,本件処分の取消し及び本件申請に対し認可処分をすることの義務付けを求め(以下,本件処分の取消しを求める訴えを「本件取消しの訴え」,本件申請に対し認可処分をすることの義務付けを求める訴えを「本件義務付けの訴え」という。),イ

予備的に,特別区・武三交通圏を特定地域と指定したこと(以

下,この指定を「本件指定」という。)は違法無効であるとして,同法4条に基づき,原告と被告の間で,原告が届出のみで本件申請に係る30台の増車をすることができる法的地位を有することの確認を求める(以下,この確認の訴えを「本件確認の訴え」といい,本件取消しの訴え,本件義務付けの訴え及び本件確認の訴えを併せて「本件各訴え」という。)事案である。
1
関連法令等の定め
別紙のとおり。

2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

当事者
原告は,平成20年2月6日に設立された一般乗用旅客自動車,一般貸切旅客自動車,特定旅客自動車による各運送事業等を目的とする株式会社であり,同年6月5日付けで関東運輸局長から特別区・武三交通圏において一般乗用旅客自動車運送事業の許可を受け,同年7月16日から,特別区・武三交通圏においてタクシー事業を営んでいる。


国土交通大臣は道路運送法88条2項,道路運送法施行令1条1項6号に基づき関東運輸局長に対し,関東運輸局長は道路運送法88条3項,道
-3-

路運送法施行令1条4項1号に基づき処分行政庁に対し,それぞれ一般乗用旅客自動車運送事業に係る事業計画の変更の認可に係る権限を委任している。
(2)

特措法制定までの経緯
道路運送法の改正と緊急調整措置の創設
道路運送法は,従前,一般旅客自動車運送事業について,いわゆる需給調整規制を前提として免許制を採用していたが,平成12年法律第86号による改正(施行日は平成14年2月1日。以下「平成12年改正」という。)により,上記需給調整規制が廃止され,一般旅客自動車運送事業への参入につき免許制から許可制に移行するなどの大幅な規制緩和が行われ,新規事業者の参入や増車による事業の拡大が容易となった。
もっとも,事業者が安易に増車を実施した結果,タクシーの供給輸送力が輸送需要量に対し著しく過剰になれば,歩合制賃金の下では,乗務距離の増加や長時間労働による過労運転等を行うといった事態が生じかねず,これら労働条件の悪化等によって輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となることが懸念されたため,平成12年改正においては,上記需給調整規制を廃止する一方で,新たに緊急調整措置の制度を創設し(道路運送法8条),国土交通大臣において,タクシー等の供給輸送力が輸送需要量に対して著しく過剰となっている場合であって,当該供給輸送力が更に増加することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認められる地域を期間を定めて緊急調整地域として指定し,新規参入や増車を禁止することができるものとした(同条1項)。


特別監視地域の指定制度
道路運送法8条の緊急調整措置は,上記アのとおり,極めて権利制限性の強い規制であることから,緊急調整措置を発動するような事態が生じる
-4-

ことを事前に抑止するため,監査や行政処分の運用上の予防措置として「特別監視地域」の指定制度が設けられた。
特別監視地域の指定制度とは,タクシー等の供給過剰の兆候のある地域を特別監視地域に指定し,同地域においては,特に事故や法令違反,利用者からの苦情の多い事業者,新規事業者及び増車実施事業者について重点的に監査を実施するとともに,行政処分及び点数制の点数の付加について厳格化するなどの措置を講じることとされ,関東運輸局長は,平成13年12月27日,「特別監視地域の発動要件等について」を定めてこれを公示した。(乙3,4)

特定特別監視地域及び準特定特別監視地域の指定制度
平成19年度の特別監視地域の指定に伴い,試行的な措置として,特別監視地域の指定を受けた地域のうち一定の営業区域を「特定特別監視地域」,特別監視地域の指定を解除された地域のうち一定の営業区域を「準特定特別監視地域」としてそれぞれ指定し,これらの地域においては,新規参入や増車に際して事業者に運転者の労働条件等に関する計画を求め,安易な供給拡大に対する事業者の慎重な判断を促すなど,著しい供給過剰を未然に防止するための各種施策を講じることとされ,関東運輸局長ほかは,平成19年11月20日,「平成19年度の特別監視地域の指定に伴い試行的に実施する増車抑制対策等の措置について」を定めてこれを公示した。(乙6,7)


特別監視地域の指定要件の変更等
特別区・武三交通圏の運賃改定事案を付議した政府の「物価問題に関する関係閣僚会議」において,タクシー事業の在り方に関し様々な問題提起がされたことを契機として,国土交通大臣は,平成19年12月,交通政策審議会(国土交通省設置法(平成11年法律第100号)6条の規定に基づく国土交通大臣の諮問機関)に対し,タクシー事業をめぐる諸問題に
-5-

ついて諮問した。(乙11)
同審議会に設置された「タクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ」における検討の中で,特別監視地域の指定基準について,供給過剰状態にあったとしても,需給状況が直近で大きく悪化していない地域や長期にわたって緩やかに悪化している地域は特別監視地域に指定されないなどの問題が生じるうらみがあるという問題点を指摘されたため,特別監視地域について,より実態に即した指定がされるよう,新たに特別監視地域の指定基準として,需給調整規制を行っていた最終年度である平成13年度の日車実車キロ(1日1台当たりの実際に旅客を運送した距離)及び日車営収(1日1台当たりの運送収入)との比較を追加するなどの見直しが行われ,関東運輸局長は,平成20年7月11日,「緊急調整地域の指定等について」を定めてこれを公示した。(乙8ないし10)(3)

特措法の制定
交通政策審議会は,平成20年12月18日,「タクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ」の検討結果に基づき,現時点で必要と考えられる対策を「タクシー事業を巡る諸問題への対策について」として取りまとめ,これを答申として国土交通大臣に提出した。(甲4,乙11)
上記答申では,「Ⅵ

今後講ずべき対策」として,「1.利用者のニー

ズに合致したサービスの提供

2.悪質事業者等への対策

3.運賃制度

のあり方」に関する提言がされたほか,「4.供給過剰進行地域における対策」として,特定地域指定制度を創設することが必要であるとの提言が示された。(乙11)

平成21年2月,「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案(政府案)」(以下「特措法(政府案)」という。)が通常国会に提出された。

-6-


衆議院は,平成21年6月11日,本会議において,特措法(政府案)の追加修正案を全会一致で可決した。この追加修正に当たり,衆議院国土交通委員会は,同月10日,特定地域では地域の需要に適合し,新規参入や増車による需要増が明らかに見込めるもの以外は,原則としてこれを認めないこととする内容を含む附帯決議をした。(乙13)


参議院は,平成21年6月19日,本会議において,特措法(政府案)の追加修正案を全会一致で可決したため,特措法は成立したが,この可決に当たり,参議院国土交通委員会は,同月18日,特定地域では,新規参入や増車による需要増を喚起すると明らかに見込める場合を除き,原則としてこれを認めないこととする内容を含む附帯決議をした。(乙14)

特措法は,平成21年6月26日に公布され,同年10月1日に施行された。


国土交通大臣は,
平成21年9月29日,
特措法4条1項に基づき,
「特
定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する基本方針」を定めこれを告示した。(乙15)
基本方針の内容は,別紙の3のとおりであるが,「四

その他一般乗用

旅客自動車運送事業の適正化及び活性化の推進に関する基本的な事項」の「3

国の役割」の「(2)

事後確認と事前確認の強化」として,新規の事

業許可及び事業用自動車の数を増加させる事業計画の変更認可については,特定地域における安易な供給拡大を抑制するよう,これらの許認可処分について処分基準を厳格化するとともに,審査に当たっては現地確認を徹底するなど審査の厳格化を図るものとする旨定められた。
(4)

措置実施公示の策定
関東運輸局長ほかは,平成21年9月30日,「特定地域の指定及び特定
地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化の推進のために監督上必要となる措置の実施について」
(措置実施公示)
を定めてこれを公示した。

-7-

(甲2,乙17)
措置実施公示の措置認可基準においては,「①

収支計画」として,「提

出された収支計画上の増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」(収支計画要件)が定められている。
(5)

特定地域の指定
国土交通大臣は,平成21年10月1日,特措法3条1項に基づき,特別
区・武三交通圏を特定地域として指定した。(乙22)
(6)

本件申請及びその後の経緯
原告は,平成23年6月30日,処分行政庁に対し,原告の営業所ごとに配置する事業用自動車(一般車両タクシー)の数を50台から80台に増車する旨の事業計画変更につき認可を求める旨の本件申請をした。(甲1の1,乙1の1)
原告は,本件申請に係る事業計画変更認可申請書(以下「本件申請書」という。
)に,
原告作成に係る同日付け
「一般乗用旅客自動車運送事業
(個
人タクシーを除く)の増車後の一定期間における収支計画(以下「本件収支計画」という。
)等基準適合を証する書面」を添付し,同書面において,
概要,国土交通省が「ビジネスジェットの推進に関する委員会中間報告」を発表したこと,羽田空港の国際化及び国土交通省が「観光立国実現のための訪日外国人3000万人の早期達成計画」を発表したことにより,本件収支計画は収支計画要件に適合する旨主張した。(甲1の3,乙1の1・4枚目ないし6枚目)


原告は,平成23年8月15日,処分行政庁に対し,本件申請に係る追加資料を提出した。原告は,同資料において,概要,中国におけるビジネスジェットの需要が拡大していること,中国人観光客に対するビザの発給要件が緩和し,中国人観光客の増加が見込まれること,政府方針である羽
-8-

田空港の24時間国際拠点空港化,羽田空港の新国際線旅客ターミナルの拡充,オープン・スカイ構想により,空港利用者が増加する見込みであることにより,本件収支計画は収支計画要件に適合する旨主張した。(甲1の7,乙1の2・3枚目及び4枚目)

処分行政庁は,平成23年8月24日付けで,原告に対し,行政手続法7条に基づき,本件申請に関し,本件収支計画等について補正を求めた。(甲1の18,乙1の3)


原告は,平成23年9月26日,処分行政庁に対し,上記ウの事項について補正する資料として,本件申請に係る増車実施後に見込まれる原告の増車分の運送収入増加額を記載した「2012年度収支計画」と題する一覧表等を提出した。(乙1の4・1枚目)


処分行政庁は,平成23年10月11日付けで,原告に対し,行政手続法7条に基づき,原告が提出した上記エの補正資料に関し,収支計画の算出根拠等について補正を求めた。(甲1の22,乙1の5)


原告は,平成23年10月25日,処分行政庁に対し,上記オの事項について補正する資料として,「補正資料1:《収支計画における収入数値の算出根拠》」と題する書面等2通を提出した。(甲1の23,甲1の24,乙1の6)
そのうち,
補正資料1は,
収支計画における収入数値の算出根拠として,
成田空港への送迎,羽田空港への送迎及び都内移動につき1日当たり見込まれる需要,単価等の収入数値の算出根拠となる前提条件,当該条件に基づき収入数値を算出した車両ごとの稼働率を明らかにしたものであり,補正資料2は,現在の契約先から航空機支援事業の一環としてビジネスジェットの搭乗者及びクルーの送迎及び都内移動に必要であるとして,車両数30台の増車及び外国語で対応可能な運転者70名程度の増員を要望されていることを記載したものである。

-9-

(7)

本件処分
処分行政庁は,
平成23年11月30日,
原告に対し,
本件申請について,

提出された本件収支計画上の増車車両分の営業収入が,特別区・武三交通圏で発生する輸送需要によるものであるのか,また,新たに発生する輸送需要によるものであるかが明らかでないため,収支計画要件に適合しないとしてこれを却下するとの本件処分をし,本件処分は,同年12月5日,原告に通知された。(甲3,乙2の1及び2)
(8)

本件各訴えの提起
原告は,平成24年5月16日,本件各訴えを提起した。(顕著な事実)
3
争点
(1)

本案前の争点
予備的請求である本件確認の訴えの適法性(確認の利益の有無:争点(1))
(2)

本案の争点
本件申請が関東運輸局長が平成13年11月22日付けで公示した「一般
乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーを除く。)の許可申請の審査基準について」(乙18)の定める各基準及び措置認可基準Ⅲ3(1)の収支計画要件以外の基準をいずれも満たしていることについては,当事者間に争いがない。

主位的請求について
本件処分の適法性,すなわち,本件申請が認可基準に適合するものであるか否か,具体的には,
(ア)

措置認可基準の内容及び措置認可基準による運用の適法性(措置認
可基準及びその運用の適法性:争点(2))
(イ)

仮にこれらが適法であるとして,①

本件申請の措置認可基準Ⅲ1

(1)①の収支計画要件への適合性の有無(収支計画要件への適合性の有無:争点(3)),②

本件申請の措置認可基準Ⅲ3(1)ただし書の「ただ

-10-

し,基本方針の趣旨に照らし,特別な事情があると認めるものについては,この限りでない。」とする要件への該当性の有無(「特別な事情」の有無:争点(4))
なお,本件義務付けの訴えの適法性は,本件取消しの訴えに係る請求に理由があるか否かによることになる(行政事件訴訟法37条の3第1項2号)。

予備的請求について
特別区・武三交通圏を特定地域として指定したことが違法無効であるか否か(本件指定の適法有効性:争点(5))

4
争点に関する当事者の主張の要旨
(1)

争点(1)(確認の利益の有無)について

(原告)
特別区・武三交通圏を特定地域として指定した本件指定が違法無効である場合には,原告は,道路運送法15条1項に基づく認可の手続を経ることなく,同条3項に基づく事前の届出のみで増車することができることになるから,本件申請は不要なものであって,原告が本件申請を却下した本件処分の取消しを求める理由もないことになりかねない。したがって,特定地域の指定の違法性を争うためには,取消訴訟によることができず,行政事件訴訟法4条の実質的当事者訴訟を選択せざるを得ないのであり,本件確認の訴えについては確認の利益が認められる。
(被告)
本件確認の訴えは,行政事件訴訟法4条所定の「公法上の法律関係に関する確認の訴え」
と解されるところ,
実質的当事者訴訟としての確認の訴えも,
原告の権利又は法的地位に危険・不安定が現存し,かつ,その危険・不安定を除去する方法として原告・被告間に当該請求について確認判決をすることが有効適切である場合に限って認められると解すべきであり,原告が確認の
-11-

利益を有することが訴訟要件となるところ,これが認められるためには,他の法的手段ではなく確認の訴えを選択することが適切であることを要するというべきである。
しかるに,原告は,主位的請求として本件取消しの訴えを提起しているところ,本件処分につき取消判決を得れば,処分行政庁は,その後,改めて本件申請に対する処分を行うにつき当該取消判決に拘束されることになり(行政事件訴訟法33条1項及び2項),本件確認の訴えが認容された場合と同様の結果を獲得することができるのであるから,そのような場合にまで確認の利益を肯定することはできない。よって,原告は,予備的請求に係る訴えにつき確認の利益を有しないから,同訴えは不適法である。
(2)

争点(2)(措置認可基準及びその運用の適法性)について

(原告)

措置認可基準の違法
特措法3条1項及び同法1条の文言,交通政策審議会に設置されたワーキンググループにおける議論や同審議会の答申,衆議院本会議における質疑や衆参両議院の附帯決議,基本方針を詳細に検討すると,特措法は,安易な供給拡大を抑制すべきという問題意識はあるものの,あくまでも上記ワーキンググループ等における多様な意見を反映した措置として総合的な施策を採るものであり,緊急調整措置(道路運送法8条)による需給調整をする前段階の一方策として,悪質事業者の排除及び自主的取組による供給抑制があるにすぎず,需給調整規制を改めて導入し,一律に増車又は新規参入を禁止する趣旨で制定されたものではなく,供給が需要を上回ることを理由に認可を拒絶することを明確に禁止する趣旨である。
そもそも,特措法は道路運送法の特別法であるところ,道路運送法は,平成12年改正により規制緩和され,従前の需給調整規定(平成12年改正前の道路運送法6条1項)を撤廃しており,その後の改正においてもこ
-12-

の方針は変更されていない。それ故に,特措法及び道路運送法のいずれにも需給調整規定は存在せず,道路運送法8条所定の緊急調整措置によるほかは,増車を規制することは法律上予定されていない。
基本方針を見ても,許認可処分についての処分基準(法令違反を理由とする許認可処分の取消しといった不利益処分の基準のことをいうもの解される。)の厳格化及び審査の厳格化により安易な供給拡大を抑制すべきとされているのみであって,それを超えて審査基準まで強化・厳格化する趣旨ではなく,新規参入及び増車の実質的な禁止は予定されていない。特措法15条1項により,特定地域に係る増車変更は認可制とされたが,認可基準は道路運送法6条によることとされ,上記のとおり,同法には需給調整規定は設けられていないから,特定地域に係る増車変更の認可申請(以下「特定地域に係る増車認可申請」という。)に対する認可に際しては,同条各号所定の要件に適合していれば当然に認可されるべきであって,法の予定していない需給調整の観点から申請を拒否することは他事考慮として違法となる。
収支計画要件は,新規の輸送需要の発生を立証できなければ特定地域に係る増車認可申請を認可しないとする要件であり,新規の輸送需要が発生せず供給過剰であることを理由として特定地域に係る増車認可申請を拒否するものであるから,正に需給調整にほかならず,被告が主張するとおり,仮に平成12年改正前の需給調整とその性質が異なるとしても,着目点が異なる需給調整規制にほかならないというべきである。
しかるに,措置認可基準は,本来考慮すべきでない需給調整に関する事項である収支計画要件を考慮することとし,道路運送法6条各号所定の要件以外の要件を加重し,実質的にみて特定地域における増車を禁止するに等しいものであるから,特措法1条,3条1項,道路運送法1条,6条に違反して違法である。

-13-

また,措置実施公示は,増車した事業者に対する監査,行政指導を強化し,減車した事業者に対する監査や行政指導を緩和する特例(措置実施公示Ⅳ)を設けており,特措法8条1項に基づく地域協議会
(以下,単に
「地
域協議会」という。)の下,事業者間の自主的な合意による一律の減車が行われているが,これら一連の増車の禁止及び減車の合意は,私的独占の禁止及び公正な取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)が禁止する数量カルテルに該当して独占禁止法に違反するといえ,事業者に対する合理的な区別であるとはいえないから,平等原則,行政手続法32条2項に違反し,違法である。
さらに,収支計画要件は,特定地域に係る増車認可申請をする申請者に対し,申請者及び当該特定地域にとって一義的に明白な新規需要の発生を認可基準として要求するものであり,その字義と異なり,単に事業計画の適切性を判断するための収支相償要件ではなく,需給調整要件に他ならない。収支計画要件に係る需要の発生が「明らかである」ことを一民間事業者にすぎない申請者がこれを厳密な意味で立証することは,その限られた組織,
人員,
資力からして実際上極めて困難であるから,
収支計画要件は,
実際上全ての特定地域に係る増車認可申請を拒否するに等しいものである。したがって,措置認可基準における収支計画要件の設定の仕方は違法である。そもそも,タクシー事業においては政府においてすら需給予測をすることは困難であり,
タクシーの台数を規制することは,
安全性の確保,
運転者の待遇改善,サービスの向上のいずれとも合理的な関連性がないから,経済学的にみると,タクシーの台数を一律に削減するような規制は合理的な根拠を欠くものであり,特措法が予定しているものとはいえない。本件処分は,違法な措置認可基準に基づき,本来考慮すべきでない需給調整に関する基準である収支計画要件を考慮することとし,道路運送法6条各号所定の要件以外の要件を加重した上で,それに適合しないことを理
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由に本件申請を拒否したものであるから違法である。

措置認可基準の運用の違法
仮に,特定地域に係る増車認可申請の認可に当たり,需給調整の観点から一定の考慮をすることが直ちに他事考慮として違法であるとまではいえないとしても,措置認可基準に基づく収支計画要件への適合性の判断が,実質的にほぼ全ての特定地域に係る増車認可申請を認めない趣旨として厳格にされるならば,特措法及び道路運送法の趣旨に反し,措置認可基準の運用は違法である。実際に,特措法施行後の措置認可基準の下では,特定地域に係る増車認可申請は全く認められておらず,タクシーの車両数は減少していることが認められるから,措置認可基準の運用は,実質的には増車を一律に禁止するものであって違法である。
仮に,万が一,特措法が一定の需給調整規制を許容していると解したとしても,特措法は一切の増車を禁止する趣旨ではなく,利用者の利便性の確保・向上をも目的としているから,少なくともサービスの多様化・高度化につながる安易でない特定地域に係る増車認可申請であれば,利便性確保の観点からその申請は認められるべきであり,かかる申請まで禁止することは特措法は予定していない。

(被告)

措置認可基準の適法性
(ア)

特措法は,需給調整による規制を明確には規定しておらず,飽くま
で,タクシー事業について,地域の状況に応じて,地域における輸送需要に対応しつつ,地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにすることが重要であるとの観点から,タクシー事業の適正化・活性化を推進するという目的(特措法1条参照)の下,国の責務として検査,処分その他の監督上必要な措置を的確に実施するものとする旨定め(特措法6条),その一環として特定地域に係る増車認可申請については,道
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路運送法の特例として認可制を導入したものである。
特措法下における特定地域に係る増車変更の規制,取り分け,措置認可基準の収支計画要件は,後記(イ)のとおり,平成12年改正前に道路運送法が採用していた需給調整規制とはその性質を異にしており,特定地域に係る増車変更の認可等の規制は,新規参入や増車を実質的に禁止するものでもない。
(イ)

平成12年改正前の道路運送法は,タクシー事業への新規参入につ
いて,需給調整規制を前提とした免許制を採用し,免許基準の一つとして,需給調整規制である「当該事業の開始によって当該事業区域に係る供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないものであること」(同法6条1項2号)という要件を定めていた。また,増車に係る事業計画の変更に対する国土交通大臣の認可の基準についても同条の規定が準用されていたことから(同法15条2項),増車に係る事業計画の変更の認可についても,同法6条1項2号が定める上記需給調整規制の基準に適合することが要件とされていた。
需給調整の運用基準については変遷があるものの,増車に係る事業計画の変更についてみると,申請に係る増車車両数が直近年度の実績等に基づき算出された申請年度の需要量に対して適切と認められる車両数から恒久車両数(全事業者の認可済み車両数の合計数)を差し引いて算出された増車可能車両数の範囲内か否かにより判断され,当該増車変更の申請に係る増車車両分の営業収入がいかなる輸送需要によるものであるかは審査されなかった。すなわち,平成12年改正前の需給調整規制は,いわば需要と供給の均衡を行政が直接的に調整することによって,道路運送に関する秩序を確立することを目的とするものであって,いわば供給輸送力に着目した規制となっていたのに対し,措置認可基準の収支計画要件は,新規の輸送需要の有無に着目したものであるから,従来
-16-

の需給調整規制とは異なる。増車により得られると見込まれる増収が単に既存の輸送需要に拠っているにすぎない場合にまで増車を認めるとすると,既に供給過剰状態にあるとして特定地域に指定された営業区域内に更に増車をさせてしまうことになるから,特措法の趣旨・目的を実現するためには,措置認可基準の一要件として収支計画要件を設けることは必須というべきである。
(ウ)

措置認可基準は,道路運送法15条2項が準用する同法6条2号の
許可(認可)基準適合性を判断する上で考慮すべき要素を具体的に掲げた審査基準であり,安易な供給拡大を厳に抑制し,認可処分及び審査の厳格化を図るという特措法制定までの議論の経緯や基本方針の定めを反映させ,供給過剰に伴うタクシーの輸送の安全性や利便性の低下を防止する観点から,特定地域に係る増車認可申請に対する審査を厳格に行うことを定めたものであって合理性を有するというべきである。
この点,収支計画要件に適合しないとして特定地域に係る増車認可申請が却下され,結果として,特定地域に係る増車の規制が従来の需給調整規制と同様の効果を招来することとなったとしても,道路運送法の改正及び特措法制定の経緯や道路運送法及び特措法の趣旨,目的に照らせば,道路運送法及び特措法が需給調整の効果のある規制を行うことを一切許容していないとは解されないというべきである。
収支計画要件が「新たに発生する輸送需要によるものであること」という要件を必要としているのは,供給過剰に伴うタクシーの安全性や利便性の低下を防止するためには,特定地域に係る増車認可申請の当否を判断するに際し,当該増車車両が当該地域で過剰な輸送力の増加とならないかといった観点からの検討が必要となるためである。そして,増車車両が地域で過剰な輸送力の増加とならないようにするためには,増車車両が当該地域内の既存の輸送需要に適合したものであるとともに,新
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たに発生する輸送需要に適合した輸送力であるといえなければならない。特定地域に係る増車認可申請が収支計画要件に適合するというためには,申請者である事業者にとって輸送需要が新たに発生するものでなければならないことは当然の前提であるが,それにとどまらず,当該地域で新たに発生する輸送需要によるものであることが必要であると解すべきである。
収支計画要件は,増車車両分の営業収入が申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが「明らかであること」を要件としているところ,収支計画要件は,タクシーの供給過剰により輸送の安全確保や利用者の利益の保護に弊害が生じる危険性が高い特定地域において,増車車両がそれらの弊害を生じさせることなく適切に事業を遂行できるか否かを厳格に審査するための要件であるから,当該営業区域で新たに発生する輸送需要であるかどうかは,申請者によって,一義的に,すなわち,誰の目にも明らかな程度に客観的かつ合理的に明らかにされなければならないというべきである。
以上によれば,収支計画要件は,特定地域における増車申請の審査基準として,特措法の趣旨・目的にかなうものであって合理性を有するというべきである。
なお,収支計画要件は,需給調整規制によって適切な車両数を経済学的に算出するためのものではないから,収支計画要件に経済学的な合理性がない旨の原告の指摘は,単なる政策的意見にとどまるばかりでなく,収支計画要件の意義・目的を正解しないものといわざるを得ない。ウ
措置認可基準の運用の適法性
措置認可基準は,上記アの特措法制定をめぐる一連の諸事情に基づき,道路運送法及び特措法の趣旨,目的に即して適正に運用されているものであり,措置認可基準に適合する申請については当然これを認可するもので
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ある。したがって,措置認可基準の運用が違法であるとの主張には理由がない。
(3)

争点(3)(収支計画要件への適合性の有無)について

(原告)

本件処分は,収支計画要件に適合していないこと,具体的には,本件収支計画上の増車車両分の営業収入が特別区・武三交通圏で発生する輸送需要によるものであるのか,新たに発生する輸送需要によるものであるのか明らかではないという理由により不認可としているが,本件申請は,次のとおり,いずれの要件にも適合している。


原告は,都心を目的として成田空港及び羽田空港を利用する外国人のビジネスゲストやその関係者を対象に,外国語を使用することができる運転者による予約送迎サービスの提供をその旗艦サービスとしている。本件申請は,ニッチ産業であった当該サービスに対する需要が着実に増えつつあることに加え,特に,平成22年10月以降,羽田空港の利用が24時間化されるに伴い外国人ビジネスゲストが増加しており,国土交通省が発表した「ビジネスジェットの推進に関する委員会中間報告」のとおり,平成23年10月以降,成田空港においてスポット増設等のビジネスジェットの促進に関する具体的な措置が採られることにより,成田空港における海外からのビジネスジェットの利用が現実に拡大していることなど,新規の需要増加が確実に認められることから,この需要に応えるためにしたものである。成田空港及び羽田空港に到着した外国人は,その相当数が東京都内のホテル・会社等に向かうのであるから,本件申請に係る増車が特別区・武三交通圏を営業区域とする輸送需要に対応するものであることは明らかであり,
現に,
特別区・武三交通圏を営業区域とする原告においては,
契約先等から予約申込みや問合せがあっても断らなければならない状態が続いている。
以上によれば,
本件収支計画上の増車車両分の営業収入が,

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特別区・武三交通圏で発生する輸送需要によるものであることは明らかである。

輸送需要の発生は,諸般の事情により複雑に影響を受け,輸送実績に関する詳細な統計が存在しない現状において,必ずしも科学的・明示的に証明できる性質のものではなく,一定の予測とならざるを得ないから,申請どおりの増車を実現した場合に,その増車分に見合うだけの需要が社会通念上合理的に見込まれると認められれば,収支計画要件のうちの「新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」という要件に適合するというべきである。
上記イのとおり,成田空港におけるビジネスジェットの促進措置を受けて,原告は,契約先から車両数30両の増加と外国語での対応が可能な人員70人の増員を要望されており,成田空港におけるビジネスジェットの利用増は近い将来確実に見込まれるから,原告のサービス利用者数も必然的に増大する。
また,
羽田空港では国際空港としての役割が近く本格化し,
空港を利用する外国人が増加することは確実であるところ,原告は,契約先が羽田空港にも常駐社員を置くため,羽田空港においてもサービス提供を求められているが,現在の車両台数では対応することができない。さらに,国土交通省が発表した「観光立国実現のための訪日外国人3000万人の早期達成計画」のとおり,政府は観光立国を目指しており,平成23年1月から中国人の観光ビザの発給要件が緩和されたため,外国人観光客,特に中国人観光客の増加による新規需要が確実に見込まれるところ,運転者の外国語による対応サービスを利用する外国人数の増加は合理的に見込まれるといえる。上記のとおり,外国人による需要の増加が見込まれ,現に増加しつつあることから,東京都心部においても需要が増加しており,原告は,契約先である外国企業及び日本企業の双方から輸送の依頼を受けているが,現在の車両数では十分に対応することができず,やむを得ず断
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らざるを得ないため,新規需要の開拓に支障を来している。
以上の状況に加えて,原告は,外国語を使用することが可能な運転者を多数採用し,運転者に対するマナー教育を徹底し,高級車両を利用するなどの特長ある事業を行って良質のサービスを提供しており,それ故に顧客から高評価を受けて業績を伸ばしていることに鑑みれば,今後,外国人利用客及びこれに付随する関係者による原告のサービス利用が増加していくことは確実であり,本件申請に係る増車分に見合うだけの新規の輸送需要が発生することが社会通念上合理的に見込まれるというべきであり,「新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」という要件に適合するといえる。
(被告)

特定地域に係る増車認可申請に対する認可の許否の判断に際しては,道路運送法15条2項において準用する同法6条の基準に適合しているか否かが吟味されるところ,同条が定める三つの基準はいずれも抽象的・概括的なものであって,特に具体的な要件が定められているものではない。また,実際の増車の当否を判断する上では,特定地域におけるタクシーの需要・供給の関係,当該地域で営業するタクシー事業者への影響のほか,輸送の安全や利用者の利益の保護及び利便が維持できるか否かといった公益にも配慮した検討を要するところであって,このような判断は,当該地域の道路運送行政に精通し,専門的・技術的な知識経験を有する国土交通大臣及び国土交通大臣からその権限の委任を受けた地方運輸局長等(以下併せて「国土交通大臣等」という。)の裁量的判断に委ねなければ,実効的な判断は見込めず,特措法の目的実現が妨げられかねないため,同条の基準への適合性の判断については,国土交通大臣等の判断権者に裁量権が認められているというべきである。そして,措置認可基準も,特定地域に係る増車認可申請については,①

-21-

収支計画,②

運転者の確保状況,



実働率,④

法令遵守状況に関する基準に適合するものについて認可

するとしたにとどまり,当該国土交通大臣等による裁量的判断が必要となるから,措置認可基準が定められていることを前提としても,道路運送法15条1項に基づく認可処分の裁量性は否定されない。したがって,同条2項において準用する同法6条への基準適合性の判断の適否に関する司法審査の在り方も,国土交通大臣等と同一の立場に立って同法15条1項の認可処分をすべきであったか否かを判断するのではなく,国土交通大臣等による第一次的な裁量判断が存在することを前提として,同判断が裁量権を付与した目的を逸脱し,又はこれを濫用したと認められるかどうかを判断すべきである。

原告は,本件申請に際し,国土交通省の発表した「ビジネスジェットの推進に関する委員会中間報告」,羽田空港の国際化及び国土交通省の発表した「観光立国実現のための訪日外国人3000万人の早期達成計画」,中国人観光客の増加及び観光ビザの発給要件の緩和,羽田空港の24時間利用化をもって,収支計画要件に適合する事情であると説明した。しかしながら,仮に,上記中間報告等に係るビジネスジェットの利用者や訪日外国人,特に中国人観光客が増加したとしても,移動手段として特別区・武三交通圏を営業区域とするタクシーを利用するか否か,原告の増車車両を利用するか否か,それらによって特別区・武三交通圏のタクシーの輸送需要が新たに発生するか否かについても,原告から提出された書面においては明らかではなかった。
また,原告は,本件申請において,増車分の運送収入の増加を算出した資料を提出したが,算出根拠である成田空港及び羽田空港の1日当たりの送迎回数の数値や当該各月の日車営収額単価などに関してそれらの数値の客観性・妥当性を明らかにする具体的な資料は何ら提出されておらず,原告が説明する増車分の運送収入増加見込額については,原告から提出さ
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れた書面からはその客観性・妥当性は明らかではなかった。
さらに,原告は,本件申請に際し,現在の契約先から送迎の要望があることを収支計画要件に該当する事情の一つとして説明していたが,原告が説明する契約先による増車の要望の存否はもとより,仮にかかる契約先から車両数30両の増車等を要望されていたとしても,当該30両の増車分の運送収入が当該増車実施後に特別区・武三交通圏において新たに発生する輸送需要によるものであるか否か,それによって特別区・武三交通圏のタクシーの輸送需要が新たに発生するか否かについて,原告から提出された書面からは明らかではなかった。

以上のとおり,本件申請に際する原告の収支計画要件に関する説明は,いずれも収支計画要件への適合性を認めるに足りるものではなく,道路運送法6条2号の基準に適合していなかった。

(4)

争点(4)(「特別な事情」の有無)について

(原告)

措置認可基準Ⅲ3(1)ただし書は,(1)において定められた四つの要件に適合しない場合であっても,基本方針の趣旨に照らして認可を与えるべき特別な事情がある場合には例外的に申請を認可することとしている。基本方針は,特定地域で生じている諸問題,具体的には,①収益基盤の悪化,②

タクシー運転者の労働条件の悪化,③

切な事業運営の横行,④


タクシー事業の
違法・不適

道路混雑等の交通問題,環境問題,都市問題,

利用者サービスが不十分という諸問題の解決を図り,各地域において
タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにしていくことを目標としているため,個別事案における特定地域に係る増車認可申請がこれらの問題を悪化させるものではなく,むしろ改善させるものであれば,基本方針の趣旨に照らし,上記ただし書にいう「特別な事情」があるといえるところ,以下のとおり,本件においては「特別な事情」があ
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るということができる。

本件申請は,外国人向けの新規需要に特化した特定地域に係る増車認可申請であるために,他のタクシー事業者の収益基盤の悪化にはつながらず,むしろ,原告のような良質なサービスを提供する優良事業者の収益基盤を強化する申請といえるから,①のタクシー事業の収益基盤の悪化にはつながらない。また,タクシー業界では,一般に,1日当たりの売上高が一定額に達しない場合には運転者への支給額を低下させる「足切り」と売上高の低減に従って運転者への支給率を段階的に低減させる「累進歩率」という慣行があるが,原告はいずれも採用せず,運転者が良質なサービスを提供していると認められる場合には歩率を上昇させる制度を採用しているため,原告の運転者の労働条件はタクシー業界内で最高水準である。したがって,本件申請は,良質なサービスを提供することができる運転者の労働条件を改善し,原告のような優良企業において良好な労働条件の下で稼働する運転者を増加させるための申請といえるから,②のタクシー運転者の労働条件の悪化にはつながらない。なお,そもそも,タクシー運転者の労働条件の悪化は,増車とは関係がないから,増車を規制することによって改善し得る問題ではない。
本件申請が認められても,③の違法・不適切な事業運営の横行とは関係がなく,むしろ,タクシー業界ではより良い労働条件を求めて人材の流動性が高いところ,原告のような優良事業者の業務内容が拡大することで適法かつ適正な事業運営の拡大に資するといえる。また,④の道路混雑等の交通問題,環境問題,都市問題は,様々な要因により生じているものであるから,本件申請とは直接の関係がなく,むしろ,良質な運転者が増加することで問題が部分的に改善されるということができる。さらに,⑤の利用者サービスが不十分である現状を改善するためには,良質なサービスの提供を企業理念とする原告による本件申請が認可されることが望ましい
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といえる。
(被告)
原告は,措置認可基準Ⅲ3(1)ただし書に該当する特別な事情について特段の立証をしていないから,もとより理由がないというべきであるが,その点をおくとしても,特措法4条1項に基づき策定されている基本方針は,タクシー事業者の収益基盤や運転者の労働条件の悪化等の諸問題の発生により,地域公共交通としてのタクシーの機能を十分に発揮することが困難な状況が現に存在している特定地域において,タクシー事業者をはじめとする関係者が相互に連携協力を図りつつ,タクシーの地域公共交通としての機能を十分に発揮することができるようにするための取組を推進していくための目標ないし指針を定めたものであり,基本方針が指摘する五つの諸問題も,特に特定地域において生じている問題を列挙したものである。すなわち,基本方針が掲げる五つの問題は,当該地域内の各タクシー事業者ごとにおいてではなく,飽くまで当該特定地域全体との関係で解決を図るべきテーマとして想定されているのであって,原告が主張するような同業他社との異同や独自の経営方針ないし特長等を前提としても,本件申請が特別区・武三交通圏における上記諸問題の解決・改善に資するものと断定することはできない。(5)

争点(5)(本件指定の適法有効性)について

(原告)

特措法3条1項の特定地域を指定する要件として,措置実施公示の特定地域の指定に関する基準(以下「措置指定基準」という。)Ⅰ1(1)は,「人口10万人以上の都市を含む営業区域であって,①から③までのいずれかに該当するもの」とし,①

日車実車キロ又は日車営収が平成13年

度と比較して減少していること,②
ていること,③

前5年間の事故件数が毎年度増加し

前5年間の法令違反の件数が毎年度増加していることと

定めているところ,この要件は余りにも緩やかにすぎ,特措法の趣旨に反
-25-

しているといわざるを得ない。

特措法3条1項は,当該地域の輸送需要に的確に対応することにより,輸送の安全及び利用者の利便を確保し,タクシーの地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにするため,供給過剰の状況(同項1号),事業用自動車1台当たりの収入の状況(同項2号),法令の違反その他の不適正な運営の状況(同項3号),事業用自動車の運行による事故の発生の状況(同項4号)に照らして指定を行うべきこととしているところ,特定地域の指定に関する措置指定基準Ⅰ1(1)の①は上記考慮要素の同項1号及び2号に,
同②は同項4号に,
同③は同項3号に対応しているものの,
特定地域を指定するためには,上記①ないし③の全ての要件に適合する必要はなく,うち一つさえ適合すれば足りるものとしており,総合的な判断が必要なはずの特定地域の指定について十分な要素を適切に考慮する基準とはなっていない。
個別の考慮要素について見ても,①の日車実車キロ又は日車営収の減少及び②の事故件数の増加については,正確なデータによる検証が必要である。また,③の法令違反件数の増加については,近時,監査回数が増加され,
規制が強化されているため,
認知件数が増加するのは当然であるから,
要件としてこれらを重視することは実態にそぐわず,事故件数や法令違反件数の単なる増減を見るだけで,認知件数それ自体を大きく増減させるような事情の有無を看過するものであって不合理である。
特定地域の指定は,地域協議会等を通じた自主的取組を促すという効果を持つだけでなく,実質的な増車を禁止する効果を持ち,事業者の権利に対する強力な侵害効果を持ち得ることを踏まえれば,考慮すべき要素を慎重に考慮して合理的にされなければならないところ,上記①ないし③の考慮要素それ自体が必ずしも合理的なものとはいえないのみならず,当該特定地域の指定が特措法3条1項各号のうちの一つの要素のみに着目して
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されているとすれば,尽くすべき考慮を尽くさず,本来は過大に評価すべきでない事項を過大に評価しているといえ,特定地域の指定において裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるというべきである。
本件指定は,特別区・武三交通圏を特定地域として指定するところ,特別区・武三交通圏の日車営収は他の交通圏と比較してもずば抜けて高水準であり,平成12年改正による規制緩和前の状況と比較しても車両数はそれ以下に減少していることからすると,特別区・武三交通圏においては供給過剰の状態にあるとはいえないから,「特に必要であると認める」地域であるとはいえない上,真実,事故発生件数が増加しているかどうかも疑問であり,法令違反件数については,認知件数が増加しただけであって,実際に発生した件数が増加したとは考えられないから,本件指定は,措置指定基準Ⅰ1(1)の要件に適合せず違法であり無効である。
(被告)

特別区・武三交通圏における平成20年度の日車実車キロ及び日車営収はいずれも平成13年度の値を10%以上下回っていたため,特別区・武三交通圏については,特定地域の指定基準のうち,人口10万人以上の都市を含む営業区域であって,日車実車キロ又は日車営収が平成13年度と比較して減少していることという措置指定基準Ⅰ1(1)①の基準に該当した。


平成14年1月末までは,平成12年改正前の道路運送法6条1項の基準に需給調整条項が規定され,同規定に基づき需給調整規制が行われていたため,平成13年度においては供給過剰でなかったことが確実であるから,供給過剰でない平成13年度を基準として,これと当該営業区域の直近年度の実績を比較して地域の供給過剰の状況をみることには合理性がある。
ある地域(交通圏)が供給過剰の状態にあるか否かはあくまで当該地域
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(交通圏)ごとに判断されるべきであって,他の地域(交通圏)との比較において判断されるものではないが,平成13年度以降の特別区・武三交通圏の日車営収はいずれも4万円を超えているものの,年ごとにみた日車営収の推移は減少傾向にあり,取り分け,平成21年度以降については,従来の需給調整規制が行われていた平成13年度と比べて1万円前後も減少しており,実車率,運送収入及び日車実車キロについてみても,平成13年度以降の数値は減少傾向にあり,又は,平成21年度以降の落ち込みは顕著であるから,平成13年度以降の数値のみをとらえて特別区・武三交通圏が他の地域ほど供給過剰の状況にないとはいえない。また,供給過剰とは,供給輸送力が輸送需要量に対し過剰であることをいうのであり(特措法3条1項2号),車両数の比較によって決まるものでもない。第3
1
当裁判所の判断
前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)

当事者
原告は,
平成20年2月6日に設立され,
同年7月16日から,
特別区・
武三交通圏においてタクシー事業を営んでいる。


原告は,一般営業(いわゆる流しと呼ばれるもの),東京都23区内の大使館関係者,外資系企業,日系大企業との間で利用料金の後払い契約を締結し,これらの契約先等からの予約に応対する営業を行うほか,成田空港及び羽田空港における主要空港等に事業所等を設置し,ビジネスジェットの運行支援業務等を行うA株式会社(以下「A」という。)との間で平成20年8月以降空港への送迎につき専属契約を締結している。(甲8の2,30の2,51・9頁,B証人調書6頁)


原告の雇用する運転者は140名であるが,うち40名は,英語,ドイツ語,中国語,韓国語,ヒンズー語,ベンガル語等の外国語を使用するこ
-28-

とができる。(甲13・5頁,14,24の7,51・7頁)
また,原告の保有する営業車両50台のうち,C,D(ガソリン車・ワンボックスカー・乗客6名用)は4台,E(ハイブリッド車,乗客4名にスーツケース4個収納可能)は5台,F(乗客4名用)は41台であり,空港へ複数名を送迎する際にはワンボックスカー又はEを使用しているが,料金は通常の車両と同様の設定をしている。(甲16,51・3頁,B証人調書7頁)

原告は,一般客からの予約については,①
の利用又は③

空港利用,②

15㎞以上

3時間以上の貸切に限定して受け付けているが,おおむね,

約3割程度しか配車依頼に対応することができておらず,空港の送迎依頼については,約5割以下しか対応することができていない。平成24年1月から3月は,1週間当たり70,80件から多いときで190件程度の配車依頼を断った(うち,外国人客の空港送迎の配車依頼に対応することができなかったのは約4割程度である)。(甲11,51・5頁,B証人調書3,4,6頁)

原告は,設立以後6回の監査を受けたが,旅客自動車運送事業者の法令違反に対する点数制度に係る違反点数を付されたことは一度もなく,平成24年5月8日現在において,原告の東京運輸支局区域における累積点数は0点である。(甲13・4頁,28)

(2)

特措法制定までの経緯
道路運送法の改正と緊急調整措置の創設
道路運送法は,従前,一般旅客自動車運送事業について,いわゆる需給調整規制を前提として免許制を採用していたが,平成12年改正により,上記需給調整規制が廃止され,一般旅客自動車運送事業への参入につき免許制から許可制に移行するなどの大幅な規制緩和が行われ,新規事業者の参入や増車による事業の拡大が容易となった。

-29-

もっとも,一般乗用旅客自動車運送事業のうちタクシー事業については,増車に伴う固定費の増加が小さい一方で,運転者の賃金は基本的には歩合制で,増車に伴う経営上のリスクを相当程度運転者が負うことになるのが通常であるため,事業者において,地域における需要が低迷した場合でも自社の売上げを確保するために安易に増車する可能性があった。そして,事業者が安易に増車を実施した結果,タクシーの供給輸送力が輸送需要量に対し著しく過剰になれば,歩合制賃金の下では,運転者において,その収入を確保するため,乗務距離の増加や長時間労働による過労運転,最高速度違反,運賃の不正収受等を行うといった事態が生じかねず,これら労働条件の悪化等によって輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となることが懸念された。
そのため,平成12年改正においては,上記需給調整規制を廃止する一方で,新たに緊急調整措置の制度を創設し(道路運送法8条),国土交通大臣において,タクシー等の供給輸送力が輸送需要量に対して著しく過剰となっている場合であって,当該供給輸送力が更に増加することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認められる地域を期間を定めて緊急調整地域として指定し,新規参入や増車を禁止することができるものとした(同条1項)。

特別監視地域の指定制度
しかしながら,道路運送法8条の緊急調整措置は,上記アのとおり,極めて権利制限性の強い規制であることから,緊急調整措置を発動するような事態が生じることを事前に抑止することが重要であり,可能な限り緊急調整措置が発動されないようにするための監査や行政処分の運用上の予防措置として,「特別監視地域」の指定制度が設けられた。
特別監視地域の指定制度とは,タクシー等の供給過剰の兆候のある地域を特別監視地域に指定し,同地域においては,特に事故や法令違反,利用
-30-

者からの苦情の多い事業者,新規事業者及び増車実施事業者について重点的に監査を実施するとともに,行政処分及び点数制の点数の付加について厳格化するなどの措置を講じることとされ,関東運輸局長は,平成13年12月27日,「特別監視地域の発動要件等について」を定めてこれを公示した。(乙3,4)

特定特別監視地域及び準特定特別監視地域の指定制度
平成19年度の特別監視地域の指定に伴い,試行的な措置として,特別監視地域の指定を受けた地域のうち一定の営業区域を「特定特別監視地域」,特別監視地域の指定を解除された地域のうち一定の営業区域を「準特定特別監視地域」としてそれぞれ指定し,これらの地域においては,新規参入や増車に際して事業者に運転者の労働条件等に関する計画を求め,安易な供給拡大に対する事業者の慎重な判断を促すなど,著しい供給過剰を未然に防止するための各種施策を講じることとされ,関東運輸局長ほかは,平成19年11月20日,「平成19年度の特別監視地域の指定に伴い試行的に実施する増車抑制対策等の措置について」を定めてこれを公示した。(乙6,7)


特別監視地域の指定要件の変更等
さらに,特別区・武三交通圏の運賃改定事案を付議した政府の「物価問題に関する関係閣僚会議」において,タクシー事業の在り方に関し様々な問題提起がされたことを契機として,
国土交通大臣が,
平成19年12月,
交通政策審議会(国土交通省設置法(平成11年法律第100号)6条の規定に基づく国土交通大臣の諮問機関)に対し,タクシー事業をめぐる諸問題について諮問したところ,同審議会に設置された「タクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ」における検討の中で,特別監視地域の指定基準の問題点等が指摘された。(乙8,11)
すなわち,上記イの特別監視地域の指定要件は,主として,日車実車キ
-31-

ロ及び日車営収について前5年平均と比較し需給状況を判断するというものであったが,この要件では,供給過剰状態にあったとしても,需給状況が直近で大きく悪化していない地域や長期にわたって緩やかに悪化している地域は特別監視地域に指定されないなどの問題が生じるうらみがあった。そのため,平成20年7月11日,特別監視地域について,より実態に即した指定がされるよう,新たに特別監視地域の指定基準として,需給調整規制を行っていた最終年度である平成13年度の日車実車キロ及び日車営収との比較を追加するなどの見直しが行われ,関東運輸局長は,平成20年7月11日,「緊急調整地域の指定等について」を定めてこれを公示した。(乙9,10)
(3)

特措法の制定
上記(2)エのとおり,交通政策審議会は,国土交通大臣からの諮問を受け,同審議会内に「タクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ」を設置し,計13回の会議を開催し,各地域の事業者,地方公共団体,報道機関など多様な関係者からのヒアリングも行い,各地域の状況を多角的な視点で把握することに努めつつ,タクシー事業が果たすべき役割,タクシー事業が抱える問題の所在とその原因,これらの諸問題への対応策などについて,幅広い視点から検討を行った。(甲4,乙11)

交通政策審議会は,平成20年12月18日,上記アの検討の結果,現時点で必要と考えられる対策を「タクシー事業を巡る諸問題への対策について」
として取りまとめ,
これを答申として国土交通大臣に提出した。
(甲
4,乙11)
上記答申の中で,「Ⅵ

今後講ずべき対策」として,「1.利用者のニ

ーズに合致したサービスの提供

2.悪質事業者等への対策

3.運賃制

度のあり方」に関する提言がされたほか,「4.供給過剰進行地域における対策」として,以下のとおり,特定地域指定制度を創設することが必要
-32-

であるとの提言が示された。(甲4,乙11)
「タクシーの輸送人員の減少と過剰な輸送力の増加が相まって供給過剰が進行している地域においては,特に,以下のとおり,緊急的な対策として,直面する諸問題の深刻化を防止するとともに,当該地域のタクシーの機能の維持・活性化を図るための総合的な取組みが必要である。(1)基本的な考え方
新たな供給がなされることは,
それが利用者のニーズに合致した
サービスを提供し,新たな需要の開拓等につながるものであれば,利用者のみならず,地域のタクシー事業全体にとって望ましいものである。しかしながら,新たな供給がそうした効果を生じることなく,単に供給を増やすだけのものであれば,いわゆる供給過剰を生じさせ,様々な問題の深刻化を招く要因となるものである。
このような供給過剰は,タクシー事業の収益基盤の悪化,タクシ
ー運転者の労働条件の悪化,違法・不適切な事業運営の横行,道路混雑等の交通問題,環境問題,都市問題,さらには過度な運賃競争やそれらを通じた安全性やサービスの低下の懸念など,タクシーを巡る様々な問題の背景に存在する根本的な問題であり,供給過剰が進行することにより,こうした問題の深刻化を招き,地域公共交通を形成する公共交通機関としての機能の維持を困難にするものと
考えられる。
こうした供給過剰が進行している地域においては,
地域における
公共交通機関としてのタクシーの機能の維持・活性化の観点からの総合的な取組みが必要である。
(2)問題への取組みにおいて留意すべき視点等
供給過剰の進行により深刻化している諸問題への対策を講じる
場合,様々な問題の背景にある根本的な問題である供給過剰への対
-33-

応を行うことはやむを得ないものと考えられるが,
一方で,
例えば,
新規参入や増車に伴い個々のタクシー事業者の自由な営業活動や
競争の中から事業者の創意工夫が促され,それが消費者利益の増進につながり得ることにも留意する必要がある。
また,
全国すべての地域で供給過剰による問題の深刻化が生じて
いるわけではないことから,
対策は全国すべての地域を対象とした
ものではなく,
それぞれの地域において発生している問題の状況を
踏まえ,実情に即して検討すべきである。
したがって,問題への対策は,問題解決のために真に必要とされ
る取組みを,そのために必要とされる期間に限って,また,様々な問題が供給過剰により深刻化している地域に限って行うことが適
当である。
(中略)
(3)対策を講じる地域
供給過剰の進行への現実的で効果的な対策として,
(2)を踏まえ,
特定の地域において,一定の期間に必要な総合的な取組みを行う地域指定制度(以下「特定地域指定制度」という。)を創設することが必要である。
特定地域指定制度に係る地域指定に際しては,
地域における公共
交通機関としてのタクシーの機能が一定期間を通じて悪化してい
る場合であって,その機能を維持・活性化するための総合的な取組みを行う必要がある地域を優先して指定することが適当である。このため,供給過剰の進行によりタクシー運転者の賃金が低下傾向にあるといったように,特定の指標が一定期間を通じて悪化している地域を優先的に指定し,そうした地域の問題の深刻化に歯止めをかけ,その改善を図ることとすべきである。

-34-

また,地域指定は,特に供給過剰に陥りやすい特性を有している
都市部の地域等を優先することも検討すべきである。
以上のような地域指定は,
全国統一的な基準で公平に行うべきで
あり,国が,一定の客観的な指標に基づき行うことが適当である。(中略)
一方,道路運送法に基づく現行の緊急調整措置は,著しい供給過
剰が生じている場合に,供給が更に増加することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認
められるときに,事態の更なる悪化を防止するための非常手段として設けられているものであるが,上記のような特定地域指定制度を設けたとしても,それとは目的を異にするものとして,輸送の安全と旅客の利便を確保するための最終的な措置として,引き続き存置しておくことも必要である。
(4)関係者が一体となった総合的な取組み
(中略)

諸問題への総合的な対応
(中略)
⑦供給抑制(供給の増加の抑制,事業者による減車促進等)(中略)

(5)諸問題への総合的な対応
(4)の[例]で掲げた諸問題への総合的な対応の各項目については,具体的には以下のような内容が考えられる。
(中略)
③タクシー運転者の労働条件の悪化の防止
(中略)
また,
事業者への監査や新規参入及び増車における審査において,

-35-

労働条件の悪化を招かないよう他の地域よりもチェックを厳格化
する必要がある。
④違法・不適切な事業運営の排除
(中略)
また,新規参入及び増車における審査も厳格化する必要がある。
(中略)
⑦供給抑制
一層の供給の増加により更なる労働条件の悪化など諸問題が深
刻化することを防止し,地域の公共交通機関としてのタクシーの機能の維持・活性化を図るための総合的な取組みを効果的に実施することができるよう,タクシー維持・活性化総合計画が実施されている期間に限り,他の地域に比べ,供給の増加すなわち新規参入や増車を,必要な限度で,かつ,有効に抑制する必要がある。
このため,新規参入及び増車について,他の地域に比べ,許可等
の基準・要件及びその審査を厳格化すべきである。
一方,こうした地域においては,供給の削減すなわち減車による
需給バランスの改善も有効かつ必要な対策であり,適正な競争が確保され,消費者の利益を不当に害さないことを前提として,複数の事業者が共同で減車を進めることについて,供給過剰対策としての要請と競争政策との調和を図りつつ,その自主的,協調的な取組みが推進されるスキームを導入すべきである。
(以下略)」

上記の答申を踏まえ,平成21年2月,特措法(政府案)が通常国会に提出された。
国土交通大臣は,同年4月21日,衆議院本会議における特措法(政府案)の趣旨について,以下のとおり説明した。(乙12)

-36-

「タクシーは,鉄道,バス等とともに我が国の地域公共交通を形成している重要な公共交通機関であるとともに,高齢化社会の進展等の地域社会の変化に対応する役割や,各地区の観光交流を支える基盤としての役割なども大いに期待される公共交通機関であります。
しかしながら,タクシー事業をめぐっては,長期的に需要が減少する傾向にある中,タクシー車両数が増加していることなどにより,地域によっては,収益基盤の悪化や運転者の労働条件の悪化等の問題が生じ,タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮することが困難な状態となっております。
このような状況を踏まえ,問題の発生している地域において,タクシー事業者を始めとする地域の関係者の自主的な取組を中心としてタクシー事業の適正化及び活性化を推進し,タクシーの地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにするため,このたびこの法律案を提案することとした次第であります。」
また,国土交通大臣は,同日,質疑の際,特定地域での新規参入,増車の歯止めの方策について,新規参入,増車について需給を勘案した許認可制にすべきであるという質問に対し,
以下のとおり答弁した。
(乙12)

「(略)タクシー事業の規制緩和については,サービスの多様化や待ち時間の短縮など一定の効果もあらわれており,そうした規制緩和のプラス面は,今後とも生かしていく必要があると考えています。(中略)特定地域での新規参入,増車の歯止めの方策についてお尋ねがありました。本法案では,特定地域は,供給過剰等の状況に照らし,タクシー事業の適正化,活性化が特に必要と認められた地域を指定することとしており,こうした指定の趣旨から,特定地域においては,安易な供給の拡大は厳に抑制されるべきものと考えております。(中略)
新規参入,増車について需給を勘案した許認可制度とすることについて
-37-

お尋ねがありました。先ほど申し上げましたように,今回の法案は,供給過剰の進行により問題が深刻化している地域において必要な対策を講じることを目的として提案させていただいたものであり,政府としては,この法案により,タクシー事業をめぐる諸問題への対策として必要な法的措置を講ずることができるものと考えております。(以下略)」

衆議院国土交通委員会における質疑
衆議院国土交通委員会においては,次のとおり,質疑が行われた。(ア)


5月22日

G議員の質疑(乙31・13,14頁)

G議員

「(略)去年の7月に,いわゆる特定特別監視地域を大変数多く指定して,例えば東京なんかも,いわゆる車両の最低基準を10台から40台に増やすということを私どもも提言し,役所としても御努力いただき,それはそれで一定の効果が見込めるんだろう,こう思うわけでありますが,それでも今回の法案に至ったということは,昨年の7月からの特定特別監視地域,この地域指定によってどれだけの効果があって,その上でこの法案の,いわば今お話あったような,協議会の設置をして,特定地域を設定して,さまざまな努力をするということにつながるのか,この7月からの取組についてちょっとお尋ねをしたいと思います。」○

政府参考人(H国土交通省自動車交通局長,以下「H政府参考人」
という。)
「(略)

現行法のもとで,できる限り安易な供給拡大を抑制するとい

う見地から,特定特別監視地域制度,この大幅な見直しを行い,109地域を指定させていただいて,供給抑制のための措置を講じております。(中略)あくまでもこれは現行法の範囲内ということでございまして,やはりケースによっては,供給過剰地域であるにもかかわらず,新規参入に係る申請を却下することができない,あるいは増車についても行政
-38-

指導にとどまらざるを得ない,そういった制度上の限界はあるものと考えております。」
(イ)


6月5日

I議員の質疑(乙32・13頁)

I議員

「(略)新規参入を含めて,安易な供給拡大,これはもう厳に抑制すべきだと思いますけれども,
その方策,
その方針,
どのようにされるのか,
続けて局長から御答弁いただきたいと存じます。」


H政府参考人

「法案におきましては,特定地域は,正に供給過剰等により問題が生じているという,そのことに起因した指定をいたします。そうした指定の趣旨から,法案におきましては,国は,特定地域においては,タクシー事業の適正化を推進するため,道路運送法に基づく処分,この中には,当然新規参入の許可,あるいは今回特定地域で導入させていただきたいと考えております増車の認可といった処分がございますが,これを的確に実施するという条文がございます。したがって,特定地域においては安易な供給拡大は国として厳に抑制すべきであると考えておりまして,新規参入あるいは増車の申請に対しては,原則としてこれを認めないという運用をさせていただきたいと考えております。」
(ウ)


6月9日

J議員の質疑(乙33・15頁)

J議員

「(略)今回,供給過剰の状態と運賃の問題に対処しなければならない一つの理由として,タクシーの事故が増えているし,減らない,他の事業用自動車に比べて多いという問題がありました。どれぐらいの事故が発生をしているのか。(以下略)」


H政府参考人

「(略)タクシーの事故の問題でございますが,まず,警察庁の統計に
-39-

基づきます平成20年のタクシーの交通事故件数は,全国で2万4030件でございました。この状況を他のものと比較いたしますと,まず,全自動車事故に比べて,ここ数年の状況については,タクシー事故の減少の歩みが非常に鈍いという特徴がございます。さらに,数値的に申しましても,同じ走行距離当たりの交通事故件数で見ますと,タクシーの場合には,残念ながら,全自動車の約1.8倍という事故発生率になっておる,これがまず現状でございます。(以下略)」
(エ)


6月9日

K議員(乙33・23,25頁)

K議員

「局長,私が聞いているのは,ドライバーの皆さんが,規制緩和をしたら交通事故が増えますよ,労働条件が悪化するんですよということをおっしゃってた。(略)事業者の皆さんやドライバーの皆さんが規制緩和をする前におっしゃっていたことが現実のものになりましたねということを,局長に御答弁いただいた上で,大臣にも,そうなりましたねということを確認してくださいと申し上げているわけですね。それを,いや,
そんなことは問題じゃないんだと言われると,
これは今後の議論が,
流れがなくなるんですよ。だって,事業者とドライバーが言っているとおりの,交通事故が増えますよ,そんなことをしたら交通事故が増えるんです,労働条件は悪化して大変なことになるますということをみんなが言っていたのに,(以下略)」


H政府参考人

「規制緩和を実施させていただく際に,正に先生がご指摘のとおりの懸念があったことは事実でありますし,地域によって状況の差はありますけれども,正にそういった懸念どおりに,需要が低迷する中で車両が増加するといった事態で,その結果,懸念されておりました労働条件の悪化あるいは交通事故の増加といった現象が生じたのは事実であります。
-40-

なおかつ,先ほど先生が18年の答申を市場の失敗ということで御紹介いただきましたとおり,単に市場に多少の手を加えるだけではこの問題の解決は済まない,正に,今回の法的措置,そういった規制を見直すということも含めて今回対策を講じたいというのが,この答申に基づく我々の考え方でございます。」

衆議院は,平成21年6月11日,本会議において,特措法(政府案)の追加修正案を全会一致で可決した。この追加修正に当たり,衆議院国土交通委員会は,同月10日,「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案に対する附帯決議」において,以下のとおり決議した。(乙13)
「政府は,本法の施行に当たっては,次の諸点に留意し,その運用について遺憾なきを期すべきである。
1
利用者のニーズに合致したサービスの提供が何よりも重要である
ことを関係者は認識し,需要拡大に向けたあらゆる施策を講じることを念頭に,利用者の選択性を高めるための方策,最新のIT技術を活用したサービス提供,利用者利便の向上に資する情報提供,乗り場の整備等を,関係者の緊密な連携により推進すること。

2
タクシーが地域における公共交通機関として十分な機能を果たせ
るよう,運転者の労働条件の改善・向上,違法不適切な行為の排除等を効果的に進め,各地において迅速かつ有効な対策を講じること。そのために,特定地域については,その指定を適切に行うこと。

3
特定地域では,地域の需要に適合し,新規参入や増車による需要増が明らかに見込めるもの以外は,原則としてこれを認めないこと。また,特定地域に指定されなかった地域についても,特定特別監視地域への指定を検討する等供給過剰発生の未然防止に努めること。
(以下略)」

-41-


参議院国土交通委員会における質疑
参議院国土交通委員会においては,次のとおり,質疑が行われた。(ア)


6月16日

L議員(乙34・18頁)

L議員

「(略)特に,タクシーが供給過剰な地域を特定地域と指定した場合の運用方針について,(中略)どのようなものとするのか。(以下略)」○

H政府参考人

「本法案におきます特定地域は,タクシーの供給過剰が進行し,それに伴ってそこで働いておられます運転者の方々の労働条件が悪化していく,
したがってこれ以上の供給の増加を抑制する,
こういう見地から,
今後の運用に当たっては,新規参入あるいは増車というものについて,原則,厳しく抑制させていただくということを申し上げたと思います。(以下略」
(イ)


6月16日

M議員(乙34・35頁)

M議員


(略)
従来の特別監視地域あるいは特定特別監視地域,
特特ですね,
こういったものによる対応と今回の特措法との関係といいますか,これについてはどうなるんでしょうか。」


H政府参考人

「(略)今回の問題の発端となっておりますとおり,地域によっては需要が減っているにもかかわらず供給が増えてしまう,そのことによってそこで働くドライバーの方々の労働条件が年々悪化する,そういったことに対応するために,
現在の道路運送法を当然前提にして,
(中略)

行政運用としてやらせていただいておりますのが,特別監視地域,さらには特定特別監視地域といった制度でございます。しかし,これはあくまでも行政運用でございますので,例えば新規参入に関しましては,従
-42-

来は10両の車両で参入ができた,
ところが,
供給過剰が著しいために,
例えば40両の新規参入しか認めないと私どもが申し上げたところで,その40両以上の新規参入に対してそれを拒否する理由は道路運送法には今ございません。また,増車という既存事業者の方が車を増やされることにつきましても,私ども増車に当たって,事前に例えば監査をさせていただく。やはり事業運営上問題があれば,今回の増車は控えてくださいというようないわば勧告を行いますけれども,現在の道路運送法は,法律的には届出さえすれば増車ができるということですので強制力がないといった制度的な問題がございます。したがって,これらの問題についてはやはり現在の道路運送法では対応できないということで,新たな立法措置として今回の法案をお願いし,その中での特定地域につきましては法律に基づいて新規参入や増車について抑制できる,そういった法的根拠を置いていただきたいと,これが二つの制度の関係でございます。」
(ウ)


6月18日

N議員(乙35・32,33頁)

N議員

「最後の部分で,安全に問題が生じるということですけれども,これ,今日,資料としてお示ししてないんですけれども,国土交通省さんの作った資料で需給状況と事故件数のグラフがありまして,これは私が見る限り,台数あるいは空車で走っている量が多ければ多いほど事故発生件数が増えているというようなふうに読み取れるんですけれども,この相関関係はいかがですか。」


H政府参考人

「(略)日車実車キロということで,1台その日にどれだけお客さんを運んだかというキロ数,それはちなみに運転者の賃金に直結する問題であると思います。その日車実車キロが悪化する,そういたしますと,事
-43-

故件数,ここでは走行100万キロ当たりの事故発生件数という形で,事故が増える。そういう意味で,日車実車キロといった指標による需給関係の悪化と事故件数の悪化と申しますか増大というのは,統計上,明白な相関関係があると私どもは考えております。」

参議院は,平成21年6月19日,本会議において,特措法(政府案)の追加修正案を全会一致で可決したため,特措法は成立したが,この可決に当たり,参議院国土交通委員会は,同月18日,「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案に対する附帯決議」において,以下のとおり決議した。(乙14)
「政府は,本法の施行に当たり,次の諸点について適切な措置を講じ,その運用に遺憾なきを期すべきである。
1
利用者のニーズに合致したサービスの提供が何よりも重要である
ことを関係者は認識し,一層のサービスの改善と需要の拡大が図られるよう,タクシー事業の適正化及び活性化に努め,利用者の選択性を高めるための方策,最新のIT技術を活用したサービス提供,利用者利便の向上に資する情報提供,乗り場の整備等を,関係者の緊密な連携により推進すること。

2
全国各地域におけるタクシーの供給過剰とそれに伴う違法不適切
な事業運営,労働条件の悪化等の実情を踏まえ,その対策を迅速かつ効果的に行う観点から,特定地域の指定を適切に行うこと。
また,特定地域では,新規参入や増車が需要増を喚起すると明らかに見込める場合を除き,原則としてこれを認めないこととするとともに,特定地域に指定されなかった地域についても,特定特別監視地域への指定を検討する等供給過剰発生の未然防止に努めること。
(以下略)」


特措法は,平成21年6月26日に公布され,同年10月1日に施行さ
-44-

れた。

国土交通大臣は,
平成21年9月29日,
特措法4条1項に基づき,
「特
定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する基本方針」を定めこれを告示した。
基本方針の内容は,別紙の3のとおりであるが,「四

その他一般乗用

旅客自動車運送事業の適正化及び活性化の推進に関する基本的な事項」の「3

国の役割」の「(2)

事後確認と事前確認の強化」として,以下の

とおり)定められている。(乙15)
「(中略)さらに,新規の事業許可及び事業用自動車の数を増加させる事業計画の変更認可については,特定地域における安易な供給拡大を抑制するよう,これらの許認可処分について処分基準を厳格化するとともに,審査に当たっては現地確認を徹底するなど審査の厳格化を図るものとする。」
(4)

措置実施公示の策定
関東運輸局長ほかは,平成21年9月30日,措置実施公示を定めこれを
公示した。(甲2,乙17)
措置実施公示の措置認可基準においては,「①

収支計画」として,「提

出された収支計画上の増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること」(収支計画要件)が定められている。
(5)

特定地域の指定
特別区・武三交通圏において,日車実車キロは平成13年度が126.9
キロ,平成20年度が108.9キロであり,日車営収は平成13年度が5万1326円,平成20年度が4万6145円であった。(乙21)そのため,国土交通大臣は,平成21年10月1日,特別区・武三交通圏が措置認可基準Ⅰ1(1)の①の日車実車キロ又は日車営収が平成13年度と
-45-

比較して減少していることという要件に該当するとして,特措法3条1項に基づき,特別区・武三交通圏を特定地域として指定した。(乙22)(6)

ビジネスジェットの推進に関する政府の取組等について
国土交通省の「国土交通省成長戦略」(甲1の15,1の17,乙1の2・12ないし34頁)
(ア)

国土交通省戦略会議は,平成22年5月17日,「国土交通省成長
戦略」を取りまとめた。
(イ)

国土交通省成長戦略においては,羽田空港における改革の方向性と
して,①

現段階での発着枠増の見通しとして,平成22年5月時点で

昼間30.3万回,別途深夜早朝の時間帯にチャーター便等が運航中であるところを,
平成22年10月時点で昼間33.
1万回,
深夜早朝4.
0万回(うち国際線は3.0万回と深夜早朝3.0万回,配分済み),平成23年度中に昼間35.0万回,深夜早朝4.0万回(昼間1.9万回の増枠は全て国内線,配分済み),平成25年度中に昼間40.7万回,深夜早朝4.0万回(ただし,場合によっては,部分的な増枠や増枠の時期の遅れもあり得る。を最短の見通しとして念頭に置きつつ,)
着実に容量拡大を進めることにより,旺盛な首都圏の国際航空需要に対応するとともに,同空港の充実した国内線ネットワークを活用した国内・国際ハブ機能を強化することとされ,②

国内・国際間配分の基本

的な考え方として,羽田の昼間の時間帯については,アジア近距離のビジネス路線に限定する現在のルールを廃止し,アジア長距離路線や欧米路線を含め,高需要のビジネス路線が羽田からも発着することができるルールに変更し,これを可能にするため,平成25年度中に昼間40.7万回,深夜早朝4.0万回が達成される時点において,今後の首都圏における航空需要の伸びを勘案しつつ,昼間の時間帯の残り(平成23年度中に昼間35.0万回となる際に,増枠は全て国内線に配分された
-46-

ため,その後の増枠分をいうものと解される。)5.7万回の半分強に当たる3万回の発着枠を更に国際線に配分することを基本とするが,実際の国際線の増便は,羽田新国際線旅客ターミナルの拡充後となること,③

羽田新国際線旅客ターミナルの拡充は可及的速やかに着手するこ

ととされた。
(ウ)

国土交通省成長戦略においては,成田空港における改革の方向性と
しては,①

現段階での発着枠増の見通しとして,旺盛な首都圏の国際

航空需要に対応する国際線のメイン空港として,羽田空港との一体的運用を図りつつ,アジア有数のハブ空港としての地位を確立するため,平成23年度中に25万回(3万回増),平成24年度中に27万回(2万回増),平成26年度中に30万回(3万回増,累計8万回増)を最短の見通しとして念頭に置きつつ,駐機場等の増設に取り組み,着実に容量拡大を進めていくこと,②

空港処理能力の拡大に向けた取組とし

て,より利便性の高いダイヤの設定を可能にするため,平成23年度中を目処に,同時並行離着陸方式を実現し,ピーク時の空港処理能力の拡大を図ること,③

アジア有数のハブ空港としての抜本的機能強化とし

て,これまでの発着枠が希少であったために十分な対応をすることができなかったビジネスジェットの乗入れ需要に対しても,専用ターミナルの整備等により,首都圏を代表するビジネスジェットの受入空港としての抜本的な機能強化を図ることなどが提案された。

国土交通省の「ビジネスジェットの推進に関する委員会」中間報告(甲1の4,乙1の1・13ないし28頁)
国土交通省は,平成22年5月17日に取りまとめられた「国土交通省成長戦略」において,航空分野における「首都圏の都市間競争力アップにつながる羽田・成田の強化」の中で,首都圏空港が我が国の成長の牽引車としての役割を今後とも十分に発揮していくために,ビジネスジェット等,
-47-

これまで十分に対応することができていないニーズへの対応等抜本的な機能強化が必要とされたことを踏まえ,
同省航空局は,
同年12月22日,
「ビジネスジェットの推進に関する委員会」を発足させ,ビジネスジェットの推進のための受入れ改善策について議論し,平成23年6月,成田空港における受入れ体制の構築を柱とした中間報告を発表した。
中間報告においては,ビジネスジェットの推進に向け,成田空港において直ちに取り組むべきものとして,①
整備を含む。),②
限の緩和,③
示を含む),④

専用ターミナル整備(専用動線の

ビジネスジェット用のスポットの拡充,駐機期間制

予備枠の撤廃と未使用枠の積極的活用(ウェブでの情報開
同時離着陸方式の導入による時間値の拡大,⑤

都心へ

のアクセス改善の五つの施策と国内外に対する積極的な情報発信を早急に実施する旨の提言がされた。
①については,今後,速やかにビジネスジェット専用ターミナルの整備に着手して平成23年度のできるだけ早い時期に完成させ,ビジネスジェット専用施設及び動線の供用を開始すること,②については,平成22年12月にビジネス用スポットを10スポットから15スポットに増設し,駐機日数制限を7日間から最大14日間に延長したが,今後,更にスポットを増設し,平成23年11月からは18スポットとするほか,需要動向を見つつ駐機期間制限の緩和を引き続き実施し,将来的に撤廃を含めて検討すること,現在旅客ターミナル近傍の駐機スポットの空きが生じた場合にはビジネスジェット用の乗降専用・一時駐機スポットとして運用しているが,今後,横堀地区において新設されるスポットについても同様の運用を行い,ビジネスジェット用の乗降専用・一時駐機スポットの拡大を図ること,③については,ビジネスジェット用に発着枠を別途設定する仕組みを廃止し,平成23年秋頃から,ビジネスジェット利用者へのサービスレベルを向上させるため,発着枠及び駐機場の空き状況に係る情報提供をウ
-48-

ェブ化し,その後は,ウェブ上での発着枠及び駐機場の使用申請を可能にすることを目指すこと,④については,平成23年10月から,同時離着陸方式の導入等に伴い,
1時間当たりの出発・到着可能回数が増えるため,
ビジネスジェットにとって希望する時間帯の発着枠を確保することができる機会が増大する見込みであることが具体的に提言されている。(7)

Aとの間の交渉経緯等
原告は,平成20年8月以降,Aとの間で,ビジネスジェットの利用者等のタクシー送迎について専属契約を締結し,成田空港と羽田空港で1か月当たり約50件(1件当たりの送迎には複数台の車両を必要とするのが通常である。)のタクシー送迎の依頼のほとんどを原告に依頼していた。(甲30の2,B証人調書5頁)


原告は,平成22年12月頃から,Aからの即時配車の依頼を受けられない事態が生じたため,Aは,平成23年1月,原告に対し,ビジネスジェットの利用が増加する見込みであるとして,ビジネスジェットのクルー及び搭乗者の送迎のため,口頭により30台の増車を要請した。(甲30の2,B証人調書4頁)


Aは,平成24年1月,原告に対し,最低限でも30台の増車をして,Aからのタクシー送迎依頼に対応できるようにしてほしいと強く要望した。(甲30の2)


Aの執行役員であるOは,平成24年7月4日,原告に対し,書面により,タクシー車両30台の早急な増車及び外国語で対応することが可能な運転者70名の早急な増員を強く要望した。(甲30の1)


原告は,本件申請に係る30台のほとんどをワンボックスカーとし,外国語(主として英語)の堪能な運転者70名ないし75名程度を新規に雇用する予定であった。(甲51・7頁,B証人調書2,7頁)

(8)

地域協議会における自主目標の策定

-49-

東京及び大阪地区の地域協議会においては,自主目標として20%の減車の方針が示されている。(甲24の7)
(9)

交通事故の件数等
全国の交通事故の発生件数は,平成13年が94万7169件であったの
が,平成22年には72万5773件に減少している。タクシーの交通事故の発生件数は,平成13年が2万6052件であったのが,平成17年に2万7794件まで増加したものの,その後は減少傾向になり,平成22年は2万2733件まで減少した。(乙24・1,41頁)
(10)

本件申請及びその後の経緯
原告は,平成23年6月30日,処分行政庁に対し,原告の営業所ごとに配置する事業用自動車(一般車両タクシー)の数を50台から80台に増車する旨の本件申請をした。(甲1の1,乙1の1)
本件申請書には,原告作成に係る同日付け「一般乗用旅客自動車運送事業(個人タクシーを除く)の増車後の一定期間における収支計画(本件収支計画)
等基準適合を証する書面」
が添付されていたところ,
同書面には,
本件収支計画等について,概要,以下の内容が記載されていた。(甲1の3,乙1の1・4枚目ないし6枚目)

「1)

国土交通省の「ビジネスジェットの推進に関する委員会中間報告」
(平成23年6月)の発表
(中略)近年Aから『ビジネスゲストやクルーの送迎のために増便して欲しい』との要請が強くなり,英会話のできる乗務員の確保及びワンボックスカーの増車の必要性が生じていました。ミーティングサービス会社等と業務提携することでその流れに拍車が掛かり,APEC開催時には配車適応に限界が生じました。
かかる事情の下,平成23年6月の国土交通省の『ビジネスジェットの推進に関する委員会中間報告』の発表は,タクシーのコンシェルジュ
-50-

化を目指す弊社にとって“渡りに船”というほどの計画です。この計画はタクシー業界の質的な向上変革を目指す弊社にとっては千載一遇のチャンスであります。(中略)このチャンスを生かして多様化し増加が見込まれる利用客の120%満足を実現することは,正に『申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること』に該当するものです。(以下略)
2)羽田空港の国際化及び国土交通省の「観光立国実現のための訪日外国人3000万人の早期達成計画」
観光立国実現のため,平成20年10月に観光庁が発足し,外国人旅行客が快適に旅行できるよう環境整備が行われています。国土交通省では観光戦略の最大目標を,訪日外国人3000万人の早期達成としています。(中略)弊社は,羽田空港の国際化,及び国土交通省の『観光立国実現のための訪日外国人3000万人の早期達成計画』を『増車実施後に新たに発生する輸送需要』の重要な構成要素と考えます。(中略)羽田空港の国際化及び国土交通省の『観光立国実現のための訪日外国人3000万人の早期達成計画』は,上記国土交通省の『ビジネスジェットの推進に関する委員会中間報告』(平成23年6月)の発表と相まって,『申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること』を十分に補強する事情と思慮致しましたので,説明資料とさせて頂きました。(以下略)」

原告は,平成23年8月15日,処分行政庁に対し,原告作成の同月12日付け「一般乗用旅客自動車運送事業(個人タクシーを除く)の増車後の一定期間における収支計画等基準適合を証する書面《追加》」を本件申請に係る追加資料として提出した。同書面には,概要,以下の内容が記載されていた。(甲1の7,乙1の2・3枚目及び4枚目)

「1)

ビジネスジェットの需要拡大

-51-

隣国中国の10年以内のビジネスジェットの保有数が1000機
を超え,米国に次ぐ世界2位のビジネスジェット市場になる。
2)

中国人観光客の増加及びビザの緩和

・平成23年度6月時の団体ビザの申請は5月時の34倍に増加している。(6月27日時点で5,259件)
・平成23年度9月1日から中国人観光ビザがさらに緩和され,滞在期間が現在の15日間から30日間に延長される。これにより,ほぼ1カ月間滞在する中国人観光客の増加が見込める。
3)

国土交通省及び経済産業省による政府方針
航空分野の成長戦略の一環として羽田空港の24時間国際拠点
航空(「空港」の誤記と思われる。)化,羽田空港の新国際線旅客ターミナルの拡充,オープン・スカイ構想の推進が図られる中,増加する空港利用者に対応するため,空港アクセスはより一層の緊密化が求められる。(以下略)」


処分行政庁は,平成23年8月24日付けで,原告に対し,行政手続法7条に基づき,
本件申請に関し,
収支計画等の事項について補正を求めた。
(甲1の18,乙1の3)


原告は,平成23年9月26日,処分行政庁に対し,上記ウの事項について補正する資料として,「2012年度収支計画」と題する一覧表等を提出した。(乙1の4・1枚目)
上記の一覧表等には,本件申請に係る増車実施後に見込まれる原告の増車分の運送収入増加額として,以下の内容が記載されていた。
(ア)

平成23年(2011年)10月から12月までの増車分の運送収
入増加見込み額(なお,該当する一覧表の標題は「2012年度」の収支計画とされているが,平成23年(2011年)の誤記と認める。)(乙1の4)

-52-

10月
11月

1057万5000円

12月
(イ)

509万9500円

2185万5000円

平成24年(2012年)1月から12月までの増車分の運送収入
増加見込み額(なお,該当する一覧表の標題は「2013年度」の収支計画とされているが,
平成24年
(2012年)
の誤記と認める。(乙

1の4・5枚目)
1月
2月

2763万6000円

3月

3496万8000円

4月

3595万5000円

5月

3933万9000円

6月

4018万5000円

7月

4152万4500円

8月

4152万4500円

9月

4018万5000円

10月

4152万4500円

11月

4018万5000円

12月

2841万1500円

4152万4500円

処分行政庁は,平成23年10月11日付けで,原告に対し,行政手続法7条に基づき,原告が提出した上記エの補正資料に関し,収支計画の算出根拠等について補正を求めた。(甲1の22,乙1の5)


原告は,平成23年10月25日,処分行政庁に対し,上記オの事項について補正する資料として,「補正資料1:《収支計画における収入数値の算出根拠》」と題する書面等2通を提出した。(甲1の23,甲1の24,乙1の6)

-53-

そのうち,上記標題の書面等には,上記エの原告が算出した収支計画の算出根拠等について,概要,以下の内容が記載されていた。


補正資料1:《収支計画における収入数値の算出根拠》

1.


算出根拠の前提条件(乙1の6・1枚目)
成田空港送迎
1日当たり30回=約60万円
(1回当たり約2万円)→弊社の定額料金が基礎
(1日1台当たり1回=約2万円)
【参照】成田空港滑走路のビジネスジェット用スポット=18スポット設置



羽田空港送迎
1日当たり60回=約36万円
(1回当たり約6000円)→弊社の定額料金が基礎
(1日1台当たり2回=約1万2000円)



都内移動
1日当たり150回=45万円
(1回当たり約3000円)→都内での平均的な移動コストが基礎(1日1台当たり5回=約15000円)



新規需要に係る収入見込み額(上記①+②+③の合計額)1日当たり約141万円
1日1台当たり約4万7000円

2.


平成23年10月から平成24年12月までの算出根拠
平成23年10月に10台増車,11月に更に10台増車,12月に更に10台増車,平成24年1月から12月までについては,増車後の30台を稼働させることを前提として計算しました。



509万9500円(平成23年10月分)の根拠

-54-

4万7000円(1日1台当たり収入。以下,同じ。)×31日×10台×35%稼働率=509万9500円


1057万5000円(平成23年11月分)の根拠
4万7000円×30日×10台×50%稼働率=705万円
4万7000円
×30日×10台×2
5%稼働率=352万
5000円
合計



1057万5000円

2185万5000円(平成23年12月分)の根拠
4万7000円×31日×10台×75%稼働率=1092万7
500円
4万7000円×31日×10台×50%稼働率=728万50
00円
4万7000円×31日×10台×25%稼働率=364万25
00円
合計



2185万5000円

2841万1500円(平成24年1月分)の根拠
4万7000円×31日×15台×80%稼働率=1748万4
000円
4万7000円×31日×15台×50%稼働率=1092万7
500円
合計



2841万1500円

2763万6000円(平成24年2月分)の根拠
4万7000円×28日×15台×80%稼働率=1579万2
000円

-55-

4万7000円×28日×15台×60%稼働率=1184万4
000円
合計


2763万6000円

3496万8000円(平成24年3月分)の根拠
4万7000円×31日×30台×80%稼働率=3496万8
000円



3595万5000円(平成24年4月分)の根拠
4万7000円×30日×30台×85%稼働率=3595万5
000円



3933万9000円(平成24年5月分)の根拠
4万7000円×31日×30台×90%稼働率=3933万90
00円


4018万5000円(平成24年6月分)の根拠
4万7000円×30日×30台×95%稼働率=4018万5
000円


4152万4500円(平成24年7月分)の根拠
4万7000円×31日×30台×95%稼働率=4152万4
500円


4152万4500円(平成24年8月分)の根拠
4万7000円×31日×30台×95%稼働率=4152万4
500円


4018万5000円(平成24年9月分)の根拠
4万7000円×30日×30台×95%稼働率=4018万5
000円


4152万4500円(平成24年10月分)の根拠
4万7000円×31日×30台×95%稼働率=4152万4

-56-

500円

4018万5000円(平成24年11月分)の根拠
4万7000円×30日×30台×95%稼働率=4018万5
000円


4152万4500円(平成24年12月分)の根拠
4万7000円×31日×30台×95%稼働率=4152万4
500円

補正資料2:《追加書類》「現在契約している契約先からの要望を追加します。」
現在弊社の契約者様でビジネスジェット(プライベートジェット)のいわゆる航空機支援事業の一環としてビジネスジェットの搭乗者はもとより,クルー(中略)の送迎等のご要望があります。
この場合1機の発着に対し送迎の需要は複数回になります。
今後も本施策に沿った形で空港送迎(リムジンサービス)や都内での移動を伴う需要も見込まれるため,それに伴う車両の増車と外国語対応の可能な乗務担当社員の増員を求められています。
具体的には車両数30両と,外国人対応人員70名程度を要望されています。
この増車に伴い,飽和状態にある予約本数を飛躍的に増加するため,GPS無線配車システム及び予約管理システムを導入の予定です。(以下略)」
(11)

本件処分
処分行政庁は,
平成23年11月30日,
原告に対し,
本件申請について,

提出された本件収支計画上の増車車両分の営業収入が,特別区・武三交通圏で発生する輸送需要によるものであるのか,また,新たに発生する輸送需要によるものであるかが明らかでないため,収支計画要件に適合しないとして
-57-

これを却下するとの本件処分をし,本件処分は,同年12月5日,原告に通知された。(甲3,乙2の1及び2)
2
争点(2)(措置認可基準及びその運用の適法性)について
(1)

処分行政庁が有する裁量の範囲等
道路運送法は,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし,道路運
送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便を図るとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とするものであり(同法1条),特措法は,道路運送法の特例について定めることにより,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進し,もって地域における交通の健全な発達に寄与することを目的とするものである(特措法1条)。
特措法3条1項は,特定地域における供給過剰(供給輸送力が輸送需要量に対し過剰であること)の状況(同項1号),事業用自動車1台当たりの収入の状況
(同項2号)法令の違反その他の不適正な運営の状況

(同項3号)

事業用自動車の運行による事故の発生の状況(同項4号)に照らして,当該地域の輸送需要に的確に対応することにより,輸送の安全及び利用者の利便を確保し,その地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにするため,当該地域の関係者の自主的な取組を中心として一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進することが特に必要であると認めるときは,当該特定の地域を特定地域として指定することができることとし,特措法15条1項は,特定地域に係る増車変更について,道路運送法15条3項の規定を適用せず,届出制ではなく,認可制を採用することとする特例を定めている。
同条2項において準用する同法6条の規定は,当該事業の計画が輸送の安
-58-

全を確保するため適切なものであること(同条1号),前号に掲げるもののほか,当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること(同条2号),当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること(同条3号)という抽象的かつ概括的な文言を使用し,具体的な基準を定めているものではない(そのため,運輸省自動車交通局長は地方運輸局長に対し「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーを除く。)の申請に対する処理方針(平成13年8月29日付け国自旅第72号」等の通達を発し,これを受けて関東運輸局では,「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーを除く。)の許可申請の審査基準について」(乙18)等により審査基準を定めて公示している。)。そして,一般的な道路運送法に基づく許可,認可の許否の判断と同様に,特定地域に係る増車認可申請の認可の許否の判断に際しては,当該申請者,当該特定地域において営業するタクシー事業者等の多元的な諸利益を輸送の安全や利用者の利益の保護等の公益をも配慮した検討を要するといえるから,特措法15条1項及び2項並びに道路運送法6条1項は,特定地域に係る増車認可申請に対する認可の許否の判断を,当該地域の道路運送行政に精通し,専門的・技術的な知識経験を有する国土交通大臣等の政策的な裁量判断に委ねたものと解するのが相当である。
(2)

措置認可基準及びその運用に対する司法審査の在り方
措置認可基準は,特定地域に係る増車認可申請等につき認可処分をするか
どうかについての基準を定めた審査基準であるところ,審査基準である措置認可基準の策定についても,処分行政庁である国土交通大臣等の裁量権は認められるというべきであるが,措置認可基準を策定する基礎となる重要な事実関係について事実誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,措置認可基準策定に際していわゆる他事考慮をしている場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において
-59-

考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,措置認可基準の策定が,処分行政庁が有する裁量権の範囲を逸脱し,又はそれを濫用したものとして違法となるというべきである。
(3)

本件への当てはめ
措置認可基準について
(ア)

被告は,措置認可基準は,道路運送法15条2項において準用する
同法6条2号の認可基準の適合性を判断する上で考慮すべき要素を具体的に掲げた審査基準であり,安易な供給拡大を厳に抑制し,認可処分及び審査の厳格化を図るという特措法制定までの議論の経緯や基本方針の定めを反映させ,供給過剰に伴うタクシーの輸送の安全性や利便性の低下を防止する観点から,特定地域に係る増車認可申請に対する審査を厳格に行うことを定めた規定であって合理性を有する旨主張する。(イ)

特措法制定までの議論の経緯や基本方針の定めについて
前記1(3)イのとおり,
国土交通省に設置された交通政策審議会の
「タ

クシー事業を巡る諸問題への対策について」と題する答申においては,供給過剰は,タクシー事業の収益基盤の悪化,タクシー労働者の労働条件の悪化等,タクシーをめぐる様々な問題の背景に存在する根本的な問題であるとして,供給過剰が進行している地域においては,地域における公共交通機関としてのタクシーの機能の維持・活性化の観点からの総合的な取組が必要であるとし,具体的な対応として,タクシー運転者の労働条件の悪化の防止のため,事業者への監査や新規参入及び増車における審査において,労働条件の悪化を招かないよう他の地域よりもチェックを厳格化する必要があること,違法・不適切な事業運営の排除のため,新規参入及び増車における審査も厳格化する必要があること,供給の増加,すなわち新規参入や増加を必要な限度で有効に抑制する必要が
-60-

あるため,
新規参入及び増車について,
他の地域に比べ,
許可等の基準・
要件及びその審査を厳格化すべきであることという提言がされたことが認められる。また,前記1(3)ウ,エ及びカのとおり,衆議院及び参議院の各国土交通委員会及び本会議における審議の際には,国土交通大臣及びH政府参考人から,特定地域の指定は,供給過剰等の状況に照らし,タクシー事業の適正化,活性化が特に必要と認められた地域を指定することとしている趣旨からすると,特定地域においては,安易な供給拡大を厳に抑制されるべきであるという趣旨の説明が繰り返しされていたことが認められる。さらに,別紙関係法令の定め等の3のとおり,国土交通大臣が定めた基本方針においても,特定地域に係る新規の事業認可及び増車変更の認可については,特定地域における安易な供給拡大を抑制するよう処分基準を厳格化するとともに,審査の厳格化を図るものとされていることが認められる(原告は,ここにいう「処分基準」は不利益処分の処分基準(行政手続法12条)に限られる旨主張するが,文脈からして,許認可処分の基準(行政手続法5条にいう「審査基準」)をいうものであることは明らかである。)。
以上のとおりの特措法制定までの議論の経緯や基本方針の定めを検討すると,措置認可基準が安易な供給拡大を抑制することを目的とすること自体は適法であると認められる。

収支計画要件について
(ア)

被告は,
措置認可基準のうちの収支計画要件は,
特措法15条1項,

道路運送法15条2項において準用する同法6条2号の当該事業計画の事業遂行上の適切性の要件を具体化したものである旨主張するため,措置認可基準が上記要件を具体化したものといえるか否かについて,以下検討する。
(イ)

道路交通法6条1号は,輸送の安全を確保するための観点からの事
-61-

業計画の適切性の要件を定め,同条2号は,同条1号以外の事業計画の適切性を求めるものであるが,同号の文言が抽象的かつ概括的であることからすると,同号は,同条1号の輸送の安全を確保するための適切性以外の一般乗用旅客自動車運送事業の遂行上の計画の適切性に関するもののうち,国土交通大臣等が政策的に必要と認めるものを要件とすることを許容しているものと解される。
特措法が,3条1項において,供給輸送力が輸送需要量に対し過剰である供給過剰の状況にある場合には,特定地域の指定をすることができるとし(同項1号),15条1項において,道路運送法15条の特例を定めていることからも明らかなとおり,
特措法は,
特定地域においては,
タクシーの供給過剰による輸送の安全確保や利用者の利益の保護に弊害が生じる事態を避けるため,供給過剰に対する対策を講じることを許容しているものということができる。さらに,上記ア(イ)のとおり,基本方針等においても,特定地域においては,安易な供給拡大は厳に抑制されるべきであるとされていることからすると,道路交通法6条2号を具体化する基準である措置認可基準において,安易な供給拡大を抑制するための基準を設けることは,処分行政庁の裁量権の範囲内であるということができる。
(ウ)

もっとも,道路交通法は,平成12年改正により,需給調整規制,
すなわち政府が直接供給を調整する規制を採用しないこととし,平成12年改正後の道路運送法には,緊急調整措置(道路運送法8条)の規定以外には,増車を直接的に禁止する規定は設けられておらず,特措法が制定された後もこの方針は変更されていないから(このことは当事者間に争いがない。),措置認可基準及びその中において定められた収支計画要件が安易な供給拡大を抑制するための基準であるとしても,上記のような需給調整規制,すなわち,政府が直接供給を調整し,一律に増車
-62-

を禁止することを許容する基準であると解することは許されないというべきである。
収支計画要件の目的ないし性格に関し,被告は,平成12年改正前の需給調整規制は,需要と供給の均衡を行政が直接的に調整することによって,道路運送に関する秩序を確立することを目的とするものであって,いわば供給輸送力に着目した規制となっていたのに対し,収支計画要件は,新規の輸送需要の有無に着目したものであるから,従来の需給調整規制とは異なる旨主張する。他方で,原告は,収支計画要件は,新規の輸送需要が発生せず供給過剰であることを理由として特定地域に係る増車認可申請を拒否するものであるから,需給調整規制そのものであると主張する。
P大学商学部Q教授の意見書(以下「Q意見書」という。甲37・7頁)においては,措置認可基準の収支計画要件に基づき,収支計画上の増車車両分の営業収入が,営業区域における新たに発生する輸送需要であることを申請者が厳格に証明しなければならないという規制は,輸送需要に対して適切な車両数を算出し,それにより増車を認否するという需給調整規制に他ならないという意見が述べられ,R大学法学部S教授の意見書(甲40・3,13頁)においても,収支計画要件は,収支相償要件ではなく,供給過剰状態の悪化の防止と改善を目的とするものであり,収支計画要件に基づき増車規制が行われる特定地域は,供給過剰地域であり,収支計画要件は,収支計画要件に適合しない場合に増車を認めると供給過剰が一層悪化するために増車を認めないとするものであるから需給調整基準であるとし,一般的な需給調整基準と収支計画要件との違いは,収支計画要件は,一般的な需給調整基準を含むと同時に例外的な増車許容条件を定めているにすぎず,結局,需給調整基準であることには変わりがないという意見が述べられていることが認められ
-63-

る。
思うに,収支計画要件は,提出された収支計画上の増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることを必要としているところ,被告の主張によれば,新規の輸送需要とは,申請者及び当該特定地域の双方にとって発生していなくてはならず,申請者にとって新たに発生する輸送需要であったとしても,それが既存の輸送需要の一部であってはならず,当該地域内で新たに発生する輸送需要でなければならないというのであるから,当該特定地域内で輸送需要が新たに発生しない場合には,当該特定地域に係る増車認可申請を拒否することになり,当該特定地域に係る増車認可申請に対する認可の許否の判断は,当該地域内の既存の輸送需要と増車に係る新たな供給とを調整した上で行われることになる。したがって,収支計画要件は,平成12年改正前の需給調整規制とは異なり,新規の輸送需要の有無という点に着目してはいるものの,需給調整規制としての性格を有しているものといわざるを得ない。
しかしながら,特措法及び道路運送法が,上記のような需給調整規制としての性格を有する規制を一切禁止しているかどうかについてみるに,上記(イ)のとおり,特措法は,特定地域における安易な供給拡大を抑制することを目的としているのであるから,供給自体を抑制する手段を講じることを許容しているというべきである。そして,収支計画要件において,既に供給過剰の状態にある特定地域に係る増車認可申請を認めるためには,当該営業圏において従前には存在しない新規の輸送需要が生ずる見込みがあることが必要とすることは,安易な供給拡大を厳に抑制するという観点からみて明らかに不合理な規制であるとまではいえないから,そのような目的にかなう収支計画要件を定めることは特措法上許容されているものと解される。

-64-

また,安易な供給拡大を抑制するという観点からは,申請者である事業者にとって輸送需要が新たに発生することのみならず,それが当該地域で新たに発生する輸送需要であるものを要することとすることにも一定の合理性があるというべきである。
(エ)

もっとも,特定地域に係る増車認可申請を認めた場合に,それが安
易な供給拡大につながるかどうかは,単にサービスの内容等を捨象した抽象的な需要と供給の総量を比較することのみによって判断することは不可能であり,前記1(3)イのとおり,交通政策審議会の答申においても,基本的な考え方として,新たな供給がされることは,それが利用者のニーズに合致したサービスを提供し,新たな需要の開拓等につながるものであれば,利用者のみならず,地域のタクシー事業全体にとって望ましいものである旨指摘されていること,道路運送法1条は,道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図ることを目的の一つとしていることなどにかんがみれば,新規の輸送需要の発生の有無については,申請者が増車により新たに供給しようとするサービスの内容も考慮した上で検討すべきであり,増車車両により提供されるサービスが営業対象とする顧客や使用車両等について独自性があり新規の輸送需要の開拓等につながるものであれば,それらの事情も考慮した上で新規の輸送需要の発生の有無を判断すべきである。
(オ)

さらに,収支計画要件における新規の輸送需要とは,将来発生する
需要であるところ,Q意見書(甲37・9頁)によれば,タクシーの需要と供給は同時に発生し,タクシーサービスは利用者が乗っているときのみ生産が行われていること,車両数が必ずしも供給の実態を示すものではなく,随時変動する実働率(車両が実際に運行している割合),実
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車率(実際に顧客を輸送している割合)をも考慮に入れなければならないことから,需給のバランス状態が分かりにくく,政府によっても正確に需要を予測することが困難であると認められる。政府にとってすら将来の需要を予測することが困難であるとすれば,民間の一事業者にすぎない申請者にとってはそれが著しく困難であることは容易に推認することができることに照らすと,収支計画要件において増車車両分の営業収入に結び付く新規の輸送需要の発生が「明らかである」というためには,それが社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれることを申請者である事業者が立証することができれば足り,それ以上に申請者の側においてそのような新規の輸送需要の発生が確実であることを厳密に立証することまでは不要と解すべきである。
この点,被告は,収支計画要件は,増車認可申請について,増車車両が輸送の安全確保や利用者の利益の弊害の保護に対する弊害を生じさせることなく適切に事業を遂行することができるか否かを厳格に審査するための基準であるため,新規の輸送需要の発生が「明らかである」というためには,当該営業区域で新たに発生する輸送需要であることが,申請者によって,一義的に,すなわち,誰の目にも明らかな程度に客観的かつ合理的に明らかにされなければならない旨主張する。
しかしながら,上記の弊害の発生を防止するために審査基準を厳格化することが許されるとしても,審査基準として事業者である申請者が実際には立証することが困難な要件を課すことは,特措法及び道路運送法が採用していない平成12年改正前の政府が供給を直接調整して増車を一律に禁止することと同視することができるから,上記各法の趣旨に反し,違法であって許されないというべきである。
なお,前記1(3)エ(イ),オ,カ(イ),キのとおり,衆議院及び参議院の各国土交通委員会における審議の際に国土交通省自動車交通局長
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であるH政府参考人が,特定地域においては安易な供給拡大は厳に抑制されるべきであるため,新規参入又は増車の申請に対しては,原則としてこれを認めないという運用をしたいと述べたことや,衆議院及び参議院の附帯決議において,特定地域においては,新規参入や増車による需要増が明らかに見込めるもの以外は,原則としてこれを認めないこととされたことが認められるが,政府参考人の答弁や附帯決議は,法律解釈やその運用を法的に拘束するものではない上,道路運送法15条2項において準用する同法6条1項の規定上は,特定地域に係る増車認可申請を原則として認めないとする旨の規定にはなっておらず,収支計画要件の「明らかである」ことを,上記のとおり,事業者において一義的に立証することを求めることとする根拠とはなり得ないというべきである。以上のとおり,仮に,収支計画要件を被告が主張するとおり申請者にとって立証することが事実上不可能な事項を立証することを求めるものであると解するのであれば,収支計画要件は,結局,増車そのものを一律に禁止することを目的とするものであって,道路運送法及び特措法の趣旨に反して違法であるといわざるを得ない。

その余の原告の主張について
(ア)

原告は,タクシーの台数を規制することは,安全性の確保,運転者
の待遇改善,サービスの向上のいずれとも合理的な関連性がなく,経済学的にみると,タクシーの台数を一律に削減するような規制は合理的な根拠を欠くものであり,特措法が予定しているものではない旨主張する。収支計画要件は,安易な供給拡大を抑制するための規制ではあっても,タクシーの台数を一律に削減する規制でないことは明らかであるところ,この点をおくとしても,Q意見書(甲37・11,12,14頁)によれば,交通事故の防止のためには,台数制限という経済的な規制を行うよりも,より適切な手段として,道路交通法,道路運送車両法など
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の社会的規制により,安全基準を策定し,監査により安全基準を遵守させる事後チェック型の規制が重要であること,運転者の労働条件の悪化は歩合制が原因であり,台数規制をしても運転者の所得水準が上昇するかどうかは不明であり,タクシーの台数規制は,安全性の確保・運転者の待遇改善・サービスの向上という目的のいずれとも合理的な関連性がないという意見が述べられていることが認められる。
しかしながら,前記1(9)のとおり,平成12年改正により規制緩和がされた後も平成17年までは交通事故の発生件数が増加していたことが認められるから,供給過剰の状態と交通事故の発生件数との間に直ちに合理的な関連性がないということまではできず,Q意見書で述べられているとおり,交通事故の発生防止や運転者の労働条件悪化の防止,サービスの向上という観点からみて,他にも経済学的にみて合理的な手段が存在するとしても,そのことから直ちに,安易な供給拡大の抑制のために収支計画要件を定めることが,処分行政庁に認められた裁量権の範囲の逸脱又は濫用になるとはいえないというべきである。
(イ)

原告は,措置実施公示においては,増車した事業者に対する監査,
行政指導を強化し,減車した事業者に対する監査や行政指導を緩和する特例を設けており,地域協議会の下,事業者間の自主的な合意による自主的な減車が行われているのであって,これらの一連の増車の禁止及び減車の合意は,独占禁止法に違反し,平等原則,行政手続法32条2項に違反する旨主張する。
しかしながら,原告が指摘する点は,収支計画要件等の措置認可基準の適法性とは無関係である上,前記1(8)のとおり,東京地区の地域協議会において,20%の減車の方針が決定されたことが認められるものの,特別区・武三交通圏における事業者間で減車の合意がされた事実は認められないから,原告の主張は前提を欠くというべきである。

-68-

3
争点(3)(収支計画要件への適合性の有無)について
(1)

収支計画要件への適合性判断に関する裁量の範囲等
上記2(1)のとおり,処分行政庁は,特定地域に係る増車認可申請に対す
る認可の許否の判断について裁量権を有していることが認められるところ,その判断のための審査基準を定めた場合において,仮に原則としてその基準に拘束されると解するとしても,当該審査基準への当てはめが専門的・技術的な考慮を要するものであるときには,その基準への適合性の有無の判断についてなお裁量権を有しているものと認められる。
措置認可基準のうち特に収支計画要件に適合するか否かの認定判断をするためには,新規の輸送需要という将来生ずる事象の予測を伴い,その予測については処分行政庁である国土交通大臣等の専門的・技術的な知識経験に基づく判断が必要となることからすると,その判断に一定程度の裁量的要素があることを否定することはできない。
しかしながら,収支計画要件にいう新規の輸送需要の発生が「明らかである」とは,前述のとおり,新規の輸送需要の発生が社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれることをいうものと解すべきであるから,その裁量的要素はそれ程大きなものとはいえず,社会通念上合理的にみて新規の輸送需要の発生が相当程度の蓋然性をもって見込まれると判断し得る事情があるにもかかわらず,特段の事情もなくこれが認められないとするような判断は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,又は,判断過程において考慮すべき事情を考慮しないことにより,その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといえ,処分行政庁が有する裁量権の範囲を逸脱し,又はそれを濫用するものといわざるを得ない。
(2)

本件への当てはめ
特別区・武三交通圏における新規の輸送需要の有無について
(ア)

前記1(6)ア(ア)及び(ウ)のとおり,平成22年5月,国土交通省
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成長戦略において,成田空港のアジア有数のハブ空港としての抜本的な機能強化策として,これまでの発着枠が希少であったために十分な対応をすることができなかったビジネスジェットの乗入れ需要に対しても,専用ターミナルの整備等により,首都圏を代表するビジネスジェットの受入空港としての抜本的な機能強化を図ることなどが提案され,前記1(6)イのとおり,国土交通省航空局に設置された「ビジネスジェットの推進に関する委員会」においてビジネスジェットの受入れ改善策について議論がされ,平成23年6月,成田空港における受入体制の構築を柱とした中間報告が発表され,その中において,①

今後速やかにビジネ

スジェット専用ターミナルの整備に着手して平成23年度のできるだけ早い時期に完成させること,②

ビジネスジェット用のスポットを平

成23年11月から15スポットから18スポットに増設するほか,ビジネスジェット用の乗降専用・一時駐機スポットの拡大を図ること,③平成23年10月から,同時離着陸方式が導入されることにより,1時間当たりの出発・到着可能回数が増え,ビジネスジェットの希望する時間帯の発着枠を確保することができる機会が増大する見込みであることなどが具体的に提言されたことが認められる。
以上によれば,本件申請がされた平成23年6月以降の近い将来において,成田空港においては,ビジネスジェット用のスポットの増設等により,ビジネスジェットの発着枠が増加することが社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれるということができる。
(イ)

次に,成田空港におけるビジネスジェットの発着枠の増加が特別

区・武三交通圏における新規の輸送需要の発生につながるか否かについて検討するに,ビジネスジェットとは,その名のとおり,ビジネス等の目的で利用されるプライベートの航空機であるから,その利用者及びクルーは,ビジネス等の中心である東京都心を含む特別区・武三交通圏に
-70-

向かうことが容易に想定することができるといえる。したがって,成田空港におけるビジネスジェットの発着枠が増加する場合には,その乗客やクルーが特別区・武三交通圏内に移動するための新規の輸送需要が発生する可能性が社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれるものということができる。
(ウ)

なお,前記1(6)ア(イ)のとおり,羽田空港については,国土交通
省成長戦略において,着実に容量拡大を進めることにより,旺盛な首都圏の国際航空需要に対応するとともに,同空港の充実した国内線ネットワークを活用した国内・国際ハブ機能を強化することとし,アジア長距離線や欧米路線を含め,高需要のビジネス路線が羽田からも発着することができるようにルールを変更し,国際線について発着枠を増加させる基本方針が示されたが,実際に羽田空港の国際線の増便は,羽田新国際線旅客ターミナルの拡充後となることとされていることからすると,羽田空港のいわゆる再国際化の方針が決定されているとしても,羽田空港における国際線が具体的に増便される時期は不明であるといわざるを得ず,国際線の増便による外国人旅行客等の増加,及び,それに伴う特別区・武三交通圏における新規の輸送需要の発生は,上記(イ)の成田空港におけるビジネスジェットの発着枠の増加による新規の輸送需要の発生ほどの確実性は認められないというべきである。
また,前記1(10)ア及びイのとおり,原告は,本件申請の際,国土交通省の「観光立国実現のための訪日外国人3000万人の早期達成計画」及び中国人旅行客に対する査証の発給要件の緩和を新規の輸送需要発生の根拠としていたことが認められるところ,上記の訪日外国人3000万人の早期達成計画は抽象的な計画にすぎず,特別区・武三交通圏における新規の輸送需要の発生とは関係性が薄いといわざるを得ない。また,中国人旅行客に対する査証の発給要件が緩和されれば,訪日する
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中国人旅行客の数が増加することは予想されるが,中国人旅行客の行き先は様々であると推測されるから,訪日する中国人旅行客の増加と特別区・武三交通圏における新規の輸送需要とが直ちに連動するものとはいえず,特別区・武三交通圏における新規の輸送需要が発生する可能性は否定することができないとしても,その程度は不明であるといわざるを得ない。

申請者である原告にとっての新規の輸送需要であるか否かについて前記1(1)ウのとおり,原告は,現在,英語,ドイツ語,中国語等の外国語を使用することができる運転者を雇用し,乗客4名ないし6名のほか,スーツケースを複数個収納することが可能なワンボックスカーや大型の車両を整備し,通常のタクシー車両の場合と同額の利用料金を設定して,空港への送迎や外国人顧客に対応することが可能であることをその事業の独自性,特殊性としていることが認められるところ,前記1(1)エのとおり,空港への送迎依頼に対しては,現在,依頼の約5割程度,外国人客の送迎依頼の約6割程度しか対応することができていないことが認められる。また,前記1(7)アないしエのとおり,原告は,平成20年8月以降,Aとの間で,空港への送迎に関する専属契約を締結していたところ,平成22年12月頃から,Aからの即時配車の依頼に応ずることができない事態が生じ,ビジネスジェットの利用が増加する見込みであることを根拠として,30台の増車及び70名の運転者の増員を要望されていたことが認められる。前記2(1)イのとおり,Aは,ビジネスジェットの支援業務等を行うことを目的とする株式会社であり,上記アのとおり,成田空港におけるビジネスジェットの発着枠の増加が見込まれることからすると,現に原告がAに対して提供しているビジネスジェットの外国人乗客等に対する外国語で対応することが可能な運転者及び送迎に適した車両による空港への送迎サービスについては,今後も新規の輸送需要が発生するこ
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とは社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれるというべきである。

新規の輸送需要の発生の明白性について
前記1(10)アのとおり,原告は,本件申請の際,国土交通省成長戦略及び国土交通省のビジネスジェットの推進に関する委員会の中間報告の存在を指摘し,前記1(10)カのとおり,契約先から30台の増車と外国語で対応することの可能な運転者70名の増員を要望されていることを説明していたことが認められるから,本件申請の際,上記ア及びイにおいて検討した新規の輸送需要の発生が社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれることは,申請者である原告により明らかにされていたものというべきである。
なお,本件申請の際には,AのOの陳述書(甲36の2)は提出されていなかったことが認められるものの,原告の契約先が30台の増車と外国対応人員70名程度の増員を希望したこと自体は原告が説明しているのであるから,処分行政庁としては,更に必要であれば,上記陳述書等の提出を促すべきであったといえ,原告が契約先からの要望について裏付け資料を提出していなかったことは上記評価を左右しないというべきである。

被告の主張について
被告は,中間報告に基づいた成田空港におけるビジネスジェットの受入体制の構築を柱としたビジネスジェットの推進に向けた取組により,増車実施後に,それらの増加するビジネスジェットの利用者が,移動手段として,特別区・武三交通圏を営業区域とするタクシーを利用するか否か,また,原告の増車車両を利用するか否か,さらには,成田空港が所在する千葉県北総交通圏を営業区域とするタクシー事業者においてもビジネスジェットの利用者の旅客運送が可能であることに照らし,成田空港におけるビジネスジェットの利用者の増加が特別区・武三交通圏のタクシーの輸送
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需要に具体的にどのように関連するのかについて,原告から提出された書面では明らかではなかった旨主張する。
しかしながら,上記2(3)イ(エ)のとおり,収支計画要件は,飽くまでも安易な供給拡大の抑制のための要件であるにすぎず,新規の輸送需要の発生の有無は,申請者が増車により新たに供給しようとするサービスの内容も考慮した上で検討すべきであり,増車車両により提供されるサービスが営業対象とする顧客や使用車両等の点において独自性があり新規の輸送需要の開拓等につながるものであるかどうかという観点から検討されるべきであるところ,原告は,上記イで述べたとおり,ワンボックスカーなどの通常のタクシー車両よりも大型の車両を使用し,外国語での対応が可能な運転者を雇用して,外国人であるビジネスジェットの乗客等に対して空港への送迎や都内移動のサービスを提供しようとしていたものであり,これらのサービスは,日本人客の都内移動等のタクシー営業一般とは異なる特殊性や独自性を有するものであって,実際に,原告は,ビジネスジェットの支援業務等を業とするAとの間で専属的な契約関係にあるのであるから,被告が主張するとおり,仮に千葉県北総交通圏を営業区域とするタクシー事業者においてもビジネスジェットの利用者の旅客運送が可能であるとしても,それらの事業者が原告と同内容のサービスを提供することは考え難く,原告,そしてまた特別区・武三交通圏につき新規の輸送需要が発生するかどうかが明らかではないとして本件申請を却下することは,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといわざるを得ない。本件においては,他に新規の輸送需要の発生が社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれると判断することを妨げる特段の事情についての主張立証はない。

小括

以上のとおり,本件処分は,成田空港におけるビジネスジェットの発着枠
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の増加により,特定地域である特別区・武三交通圏及び申請者である原告につきビジネスジェットの外国人乗客等の空港への送迎という新規の輸送需要が発生することが社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれるということができる(かつ,後記4(3)のとおり,なお確認のための審査を尽くすべき点があるとはいえ,新たに発生すると見込まれる輸送需要が本件申請に係る30台の増車に見合うものである可能性は十分ある。)にもかかわらず,特段の事情も示すことなく,およそ,本件収支計画上の増車車両分の営業収入が,特別区・武三交通圏で発生する輸送需要によるものか,また,新たに発生する輸送需要によるものであるかが明らかではないとして特定地域に係る増車認可申請を一切不認可とした点で,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,又は,判断過程において考慮すべき事情を考慮しないことにより,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず,処分行政庁が有する裁量権の範囲の逸脱又は濫用をしたものであるから,本件処分は違法であり,取り消されるべきである。
4
本件義務付けの訴えについて
(1)

本件義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号の申請型の義務付
けの訴えであるところ,同法37条の3第5項によれば,本件義務付けの訴えに係る請求が認容されるためには,併合提起された処分の取消しの訴えに係る請求に理由があると認められることのほか,その義務付けの訴えに係る処分につき,行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ,又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められることが必要となる。
(2)

前記1(10)エ及びカのとおり,原告は,本件申請の際,本件申請に係る
増車実施後に見込まれる原告の運送収入増加額を収支計画一覧表として提出し,処分行政庁からの補正の求めに応じて,契約先から30台の増車等を
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要望されていることを明らかにするとともに,収支計画における収入数値の算出根拠を明らかにする書面を提出したことが認められ,同書面においては,算出根拠の前提条件として,成田空港の送迎を1日当たり30回で約60万円,羽田空港の送迎を1日当たり60回で約36万円,都内の移動を1日当たり150回で45万円と設定していたことが認められるところ,そこで前提条件とされる成田空港及び羽田空港の1日当たりの送迎回数の数値や日車営収額単価などに関しては,それらの数値の客観性・妥当性を明らかにする具体的な資料は提出されていない(本件申請の際に提出された甲1の21によれば,平成22年6月から平成23年5月までの間の各月の迎車回数は判明するが,行き先やその平均単価は不明である。)から,原告が説明する増車分の運送収入増加見込額については,本件申請の当時原告から提出された書面からはその客観性・妥当性は必ずしも明らかではないといわざるを得ない。
また,本件申請において増車を希望する台数を30台とした理由に関する証人Bの証言(B証人調書27頁以下)は,増車の台数を20台又は40台に変動させた場合の収支等について分析したかどうかという質問に対し,30台の場合の仕事量を分析し,40両では運転者を集めることができないが,20両だとビジネスジェットの新規需要の取り逃がしが出るとして,30両分の仕事があるかどうか,30両の増車をする資本があるかどうか,30両をもって仕事をすることができる運転者を集めることができるかどうかという全てのバランスであると述べるにすぎず,本件収支計画の前提条件とされた送迎回数の数値等がどのように算定されたものかは明らかにされていない。そうすると,新たに発生すると見込まれる輸送需要が本件申請に係る30台の増車に見合うものであるかどうかについては,契約先であるAが30台の増車(及び70名の運転者の増員)を求めていたという事実はあるものの,客観的な裏付けが必ずしも十分に示されていないという面があるとい
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わざるを得ない。
(3)

以上によれば,本件申請については,上記2で検討したとおり,申請す
る営業区域である特別区・武三交通圏において新規の輸送需要が発生しそれが原告の増車に係る営業収入に結び付くことは社会通念上合理的にみて相当程度の蓋然性をもって見込まれるものの,本件収支計画上の増車に係る30台分の営業収入が新たに発生する輸送需要によるものであるか否かについては,処分行政庁による専門的・技術的な知識経験に基づく判断を経るべき点が残っているといわざるを得ず,本件申請につき申請どおりの事業計画変更認可をすべきかどうかについては,なお,処分行政庁による審査を尽くす必要があるというほかない。
したがって,本件申請につき,処分行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ,又は処分行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるとまではいえないから,本件義務付けの訴えには理由がないというほかない。
(4)

なお,本件申請に係る増車台数が新たに発生する輸送需要に見合ったも
のであるか否かの判断に際しては,新規の輸送需要が将来発生するものであってその予測は困難であること,増車車両数が新規の輸送需要に不足する場合には,適正な増車車両数であれば発生し取り込むことができたはずの新規の輸送需要を取り逃すおそれがあり,タクシー事業の健全な発展に支障を来すおそれがあること等の事情に留意すべきであり,本件申請に係る増車実施後に見込まれる原告の運送収入増加額についても,従前のAに対するサービスの提供実績等に基づき,社会通念上合理的な前提条件が設定されているかどうかといった観点を踏まえて判断されるものと解される。
5
争点(1)(確認の利益の有無)について
予備的請求である本件確認の訴えは,行政事件訴訟法4条所定の公法上の法
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律関係に関する確認の訴えであるところ,実質的当事者訴訟としての確認の訴えは,原告の権利又は法的地位に危険・不安定が現存し,かつ,その危険・不安定を除去する方法として原告・被告間において当該請求について確認判決をすることが有効適切である場合に限り認められると解すべきであるから,本件確認の訴えが適法といえるためには,原告が上記のような確認の利益を有することが必要である。
この点,被告は,原告は,本件において,主位的請求として本件取消しの訴えを提起しており,
本件処分につき取消判決を得れば,
処分行政庁は,
その後,
改めて本件申請に対する処分をする際には,当該取消判決に拘束され(行政事件訴訟法33条1項及び2項),本件確認の訴えが認容された場合と同様の結果を得ることができるから,確認の利益を有していない旨主張する。しかしながら,特別区・武三交通圏を特定地域として指定した本件指定が違法無効である場合には,本件申請が収支計画要件に適合しているか否かにかかわらず,原告は,道路運送法15条3項に基づき,事前に届出をするのみで増車をすることができることになる。したがって,原告は,本件申請を却下した本件処分の取消しを求めるまでもなく,同条1項の認可を得ることなく同条3項の届出のみで本件申請に係る30台の増車をなし得る法的地位を有することの確認を求めることができるというべきであり,本件確認の訴えについては,原告は確認の利益を有するということができる。
6
争点(5)(本件指定の適法性)について
(1)

特措法3条1項は,特定地域における供給過剰の状況(同項1号),事
業用自動車1台当たりの収入の状況(同項2号),法令の違反その他の不適正な運営の状況(同項3号),事業用自動車の運行による事故の発生の状況(同項4号)
に照らして,
当該地域の輸送需要に的確に対応することにより,
輸送の安全及び利用者の利便を確保し,その地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにするため,当該地域の関係者の自主的な取組を中心と
-78-

して一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進することが特に必要であると認めるときは,当該特定の地域を特定地域と指定することができる旨定め,措置指定基準Ⅰ1(1)は,国土交通大臣は,人口10万人以上の都市を含む営業区域であって,①

日車実車キロ又は日車営収が,平成

13年度と比較して減少していること,②
加していること又は③

前5年間の事故件数が毎年度増

前5年間の法令違反の件数が毎年度増加している

ことのいずれかに該当するものを特定地域として指定することとしているところ,措置指定基準Ⅰ1(1)の①は特措法3条1項1号及び2号に,同②は同項4号に,同③は同項3号にそれぞれ対応して,同項の定めを具体化した基準であることが認められる。
特措法3条1項は,特定地域の指定に係る要件を定めているものの,上記のとおり,その文言は抽象的かつ概括的なものであり,上記2(1)で説示したのと同様に,特定地域の指定に係る措置指定基準の策定についても,処分行政庁である国土交通大臣等の裁量権が認められるというべきであるから,措置指定基準を策定する基礎となる重要な事実関係について事実誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,措置指定基準策定に際していわゆる他事考慮をしている場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には,措置指定基準の策定が,処分行政庁が有する裁量権の範囲を逸脱し,又はそれを濫用したものとして違法となるというべきである。(2)

この点,原告は,措置指定基準Ⅰ1(1)は,特措法3条1項各号の要件に
対応する上記①ないし③の全ての要件に適合する必要がなく,うち一つの要件にさえ適合すれば足りるものとしている点をもって,総合的な判断が必要な特定地域の指定について十分な要素を適切に考慮する基準とはなっておらず,尽くすべき考慮を尽くさず,本来は過大に評価すべきでない事項を過
-79-

大に評価していることになる旨主張する。
しかしながら,特措法3条1項は,同項各号に掲げる状況に照らして特定地域を指定することができる旨定めるものであって,同項各号に掲げる状況の全てを考慮した具体的基準を定めることを義務付ける規定であるとは解されないから,同項の規定を具体化する措置指定基準において,同項各号に掲げる状況に該当する具体的事情の一つに該当する場合に特定地域を指定することができる旨定めることは,処分行政庁に与えられた裁量権の範囲内に属するものと解することができ,措置指定基準の策定に当たり,尽くすべき考慮を尽くしていないとも,過大に評価すべきでない事項を過大に評価しているともいうことはできないというべきである。
そして,①の基準は,日車キロ又は日車営収を平成13年度と比較して減少しているかどうかを内容とするものであるところ,平成13年度は,平成12年改正前の道路運送法6条1項により需給調整が行われており,同時点においては供給過剰の状態にはなかったものと認められるから,供給過剰でない平成13年度の状況を基準として,これと当該営業区域の直近年度の実績を比較して供給過剰の状況にあるか否かを判断することには合理性があるというべきである。
なお,原告は,措置指定基準Ⅰ1(1)の①ないし③の個別の考慮要素についても,その内容に合理性がない旨主張するが,上記のとおり,①ないし③の個別の考慮要素は,特措法3条1項各号に該当する具体的事情を要件として掲げたものであるから,原告の主張は,単なる政策的な意見を述べるにすぎず,処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を基礎付けるものとはいえないから理由がない。
(3)

前記1(5)のとおり,本件指定は,特別区・武三交通圏における平成20
年度の日車実車キロ及び日車営収はいずれも平成13年度の値と比較すると10%以上下回っていたことを理由としてされたものであるから,本件指
-80-

定には違法な点は見当たらないというべきである。
この点,原告は,特別区・武三交通圏の日車営収は,他の交通圏と比較して高水準である旨指摘するが,ある区域において供給過剰か否かは,他の交通圏と比較して判断されるべきものとはいえないから,原告の主張は前提において誤っているというほかない。
また,原告は,特別区・武三交通圏の車両数は,平成12年改正前の状況と比較して減少しているから供給過剰の状態にあるとはいえない旨主張するが,供給過剰の状態にあるか否かは,供給輸送力が輸送需要量に対して過剰であるか否かにより決せられるものであり,車両数の比較により決せられるものではないから,原告の主張には理由がない。
(4)

以上によれば,本件指定につき,処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は
濫用の事実は認められないから,本件指定は適法ということができる。7
結論
以上によれば,本件訴えの主位的請求のうち本件取消しの訴えには理由があるから認容し,その余の請求にはいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

川神

裁判官


内野俊夫

-81-

裁判官

日暮直子

-82-

(別紙)
関連法令等の定め
1
道路運送法
(1)

目的(1条)
この法律は,貨物自動車運送事業法(中略)と相まって,道路運送事業の
運営を適正かつ合理的なものとし,並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする。
(2)

種類(3条)
旅客自動車運送事業の種類は,次に掲げるものとする。
(ア)

1号
一般旅客自動車運送事業(特定旅客自動車運送事業以外の旅客自動車
運送事業)


一般乗合旅客自動車運送事業(乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)



一般貸切旅客自動車運送事業(1個の契約により国土交通省令で定める乗車定員以上の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)



一般乗用旅客自動車運送事業(1個の契約によりロの国土交通省令で定める乗車定員未満の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)

-83-

(イ)

2号
特定旅客自動車運送事業(特定の者の需要に応じ,一定の範囲の旅客
を運送する旅客自動車運送事業)
(3)

許可申請(5条)
1項
一般旅客自動車運送事業の許可を受けようとする者は,次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
(ア)

1号
氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては,その代表者の氏名

(イ)

2号
経営しようとする一般旅客自動車運送事業の種別

(ウ)

3号
路線又は営業区域,営業所の名称及び位置,営業所ごとに配置する事
業用自動車の数その他の一般旅客自動車運送事業の種別(一般乗合旅客自動車運送事業にあっては,路線定期運行(路線を定めて定期に運行する自動車による乗合旅客の運送をいう。以下同じ。)その他の国土交通省令で定める運行の態様の別を含む。)ごとに国土交通省令で定める事項に関する事業計画

2項
前項の申請書には,事業用自動車の運行管理の体制その他の国土交通省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。


3項
国土交通大臣は,申請者に対し,前2項に規定するもののほか,当該申請者の登記事項証明書その他必要な書類の提出を求めることができる。
(4)

許可基準(6条)
国土交通大臣は,一般旅客自動車運送事業の許可をしようとするときは,
-84-

次の基準に適合するかどうかを審査して,これをしなければならない。(ア)

1号
当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること。
(イ)

2号
前号に掲げるもののほか,当該事業の遂行上適切な計画を有するもの
であること。
(ウ)

3号
当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。
(5)

緊急調整措置(8条)
1項
国土交通大臣は,特定の地域において一般乗用旅客自動車運送事業の供給輸送力(以下この条において単に「供給輸送力」という。)が輸送需要量に対し著しく過剰となっている場合であって,当該供給輸送力が更に増加することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認めるときは,当該特定の地域を,期間を定めて緊急調整地域として指定することができる。


2項
前項の規定による指定は,告示によって行う。


3項
国土交通大臣は,第1項の規定による緊急調整地域の指定をした場合には,第4条第1項の許可の申請が一般乗用旅客自動車運送事業に係るもので,かつ,当該申請に係る営業区域が当該緊急調整地域の全部又は一部を含むものであるときは,当該許可をしてはならない。


4項
一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者(以下「一般乗用旅客自動車運送事業者」という。)は,第1項の規定による緊急調整地域の指定がさ
-85-

れた場合には,当該緊急調整地域における供給輸送力を増加させるものとして国土交通省令で定める事業計画の変更をすることができない。(6)

事業計画の変更(15条)


1項
一般旅客自動車運送事業者は,事業計画の変更(第3項,第4項及び次条第1項に規定するものを除く。)をしようとするときは,国土交通大臣の認可を受けなければならない。


2項
第6条の規定は,前項の認可について準用する。


3項
一般旅客自動車運送事業者は,営業所ごとに配置する事業用自動車の数その他の国土交通省令で定める事項に関する事業計画の変更をしようとするときは,あらかじめ,その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。


4項
一般旅客自動車運送事業者は,営業所の名称その他の国土交通省令で定める軽微な事項に関する事業計画の変更をしたときは,遅滞なく,その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

2
特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(特措法)
(1)

目的(1条)
この法律は,一般乗用旅客自動車運送が地域公共交通として重要な役割を
担っており,地域の状況に応じて,地域における輸送需要に対応しつつ,地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにすることが重要であることにかんがみ,国土交通大臣による特定地域の指定及び基本方針の策定,特定地域において組織される協議会による地域計画の作成及びこれに基づ
-86-

く一般乗用旅客自動車運送事業者による特定事業等の実施並びに特定地域における道路運送法(中略)の特例について定めることにより,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進し,もって地域における交通の健全な発達に寄与することを目的とする。
(2)

定義(2条)
1項
この法律において「一般乗用旅客自動車運送事業」とは,道路運送法第3条第1号ハの一般乗用旅客自動車運送事業をいう。


2項
この法律において「一般乗用旅客自動車運送事業者」とは,一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者をいう。


3項
この法律において「一般乗用旅客自動車運送」とは,一般乗用旅客自動車運送事業者が行う旅客の運送をいう。


4項
この法律において「地域公共交通」とは,地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(中略)第2条第1号に規定する地域公共交通をいう。

5項
この法律において「特定地域」とは,次条第1項の規定により指定された地域をいう。


6項
この法律において「特定事業」とは,一般乗用旅客自動車運送事業について,利用者の選択の機会の拡大に資する情報の提供,情報通信技術の活用による運行の管理の高度化,利用者の特別の需要に応ずるための運送の実施その他の国土交通省令で定める措置を講ずることにより,輸送需要に対応した合理的な運営及び法令の遵守の確保並びに運送サービスの質の
-87-

向上及び輸送需要の開拓を図り,もって一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に資する事業をいう。

7項
この法律において「事業用自動車」とは,道路運送法第2条第8項に規定する事業用自動車をいう。

(3)

特定地域の指定(3条)
1項
国土交通大臣は,特定の地域における一般乗用旅客自動車運送事業の次に掲げる状況に照らして,当該地域の輸送需要に的確に対応することにより,輸送の安全及び利用者の利便を確保し,その地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにするため,当該地域の関係者の自主的な取組を中心として一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進することが特に必要であると認めるときは,当該特定の地域を,期間を定めて特定地域として指定することができる。
(ア)

1号
供給過剰(供給輸送力が輸送需要量に対し過剰であることをいう。)
の状況
(イ)

2号
事業用自動車1台当たりの収入の状況

(ウ)

3号
法令の違反その他の不適正な運営の状況

(エ)

4号
事業用自動車の運行による事故の発生の状況


2項
国土交通大臣は,特定地域について前項に規定する指定の事由がなくなったと認めるときは,当該特定地域について同項の規定による指定を解除
-88-

するものとする。

3項
第1項の規定による指定及び前項の規定による指定の解除は,告示によって行う。


4項
都道府県知事は,国土交通大臣に対し,当該都道府県について第1項の規定による指定を行うよう要請することができる。


5項
市町村長は,当該市町村の属する都道府県の知事を経由して,国土交通大臣に対し,当該市町村について第1項の規定による指定を行うよう要請することができる。

(4)

基本方針(4条)
1項
国土交通大臣は,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。


2項
基本方針は,次に掲げる事項について定めるものとする。
(ア)

1号
一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化の意義及び目標に
関する事項
(イ)

2号
第9条第1項に規定する地域計画の作成に関する基本的な事項

(ウ)

3号
特定事業その他の第9条第1項に規定する地域計画に定める事業に
関する基本的な事項

-89-

(エ)

4号
その他一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化の推進に関
する基本的な事項

3項
国土交通大臣は,情勢の推移により必要が生じたときは,基本方針を変更するものとする。


4項
国土交通大臣は,基本方針を定め,又はこれを変更したときは,遅滞なく,これを公表するものとする。

(5)

協議会(8条)
1項
特定地域において,地方運輸局長,関係地方公共団体の長,一般乗用旅客自動車運送事業者等,一般乗用旅客自動車運送事業の事業用自動車の運転者の組織する団体及び地域住民は,次条第1項に規定する地域計画の作成,当該地域計画の実施に係る連絡調整その他当該特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化の推進に関し必要な協議を行うための協議会(以下単に「協議会」という。)を組織することができる。


(6)

2項及び3項


特定地域における道路運送法の特例(15条)
1項
特定地域において,一般乗用旅客自動車運送事業者が当該特定地域内の営業所に配置するその事業用自動車の合計数を増加させる事業計画の変更については,道路運送法第15条第1項中「第3項,第4項」とあるのは,「第4項」とし,同条第3項の規定は,適用しない。


2項

-90-

特定地域の指定が解除された際又は特定地域の指定期間が満了した際現にされている前項の規定により読み替えて適用する道路運送法第15条第1項の認可の申請であって,前項に規定する事業計画の変更に係るものは,同条第3項の規定によりした届出とみなす。ただし,特定地域の指定期間の満了後引き続き当該地域が特定地域として指定された場合は,この限りでない。
3
特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する基本方針(以下「基本方針」という。)(甲17の2,乙15)
(一及び二

略)

特定事業その他の地域計画に定める事業に関する基本的な事項
タクシー事業の適正化及び活性化を推進するに当たっては,地域の実情に応じて,地域のニーズや地域に存在する問題に的確に対応することが重要であることから,地域計画においては,法令に違反せず,法及び本方針に定める事項に逸脱しないものであれば,タクシー事業の適正化及び活性化に資するあらゆる事業について定めることができることとする。この際には,次の1から4までの観点を参考にしつつ,地域計画に定められた目標の達成に必要な事業を適切に設定することが望ましい。
1
輸送需要に対応した合理的な運営
タクシー事業の適正化を図る上では,タクシー事業者が地域の輸送需要を的確に把握するとともに,輸送需要に対応した適切な運送サービスを提供するなど輸送需要に対応した合理的な運営を行うことが必要である。
2
法令の遵守の確保

(略)

3
運送サービスの質の向上
タクシー事業の活性化を図る上では,タクシー事業者が自らの創意工夫や的確な輸送需要の把握に基づき一層の運送サービスの質の向上を図ることが重要である。また,実際に直接利用者と接するタクシー運転者によ
-91-

る質の高いサービスの提供を実現するためには,タクシー事業者が常にタクシー運転者の良好な労働環境の整備に心がけることが重要である。4
輸送需要の開拓
タクシー事業の活性化を図る上では,介護が必要な者の運送の実施や観光地を巡る運送の実施等タクシーに求められる多様なニーズに対応した運送を行い,新たな輸送需要を開拓することが重要である。


その他一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化の推進に関する基本的な事項
(1及び2
3
略)

国の役割
((1)
(2)

略)
事後確認と事前確認の強化

国は,特定地域の関係者が行うタクシー事業の適正化及び活性化に関する取組を側面から支援するため,関係する機関が連携して監査の充実・強化を図り,タクシー事業者に対して効率的かつ効果的に監査・指導を実施するとともに,行政処分に係る基準の強化,労働関係法令違反に対する処分の強化,行政処分の実効性の確保,法令違反行為の確実な捕捉等行政処分の強化を行うものとする。
さらに,新規の事業許可及び事業用自動車の数を増加させる事業計画の変更認可については,特定地域における安易な供給拡大を抑制するよう,これらの許認可処分について処分基準を厳格化するとともに,審査に当たっては現地確認を徹底するなど審査の厳格化を図るものとする。((3)
4
略)

特定地域の指定及び特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化の推進のために監督上必要となる措置の実施について
(措置実施公示)
(甲2,
乙17)

-92-

Ⅰ.特定地域の指定等
1.特定地域の指定
国土交通大臣は,次の(1)又は(2)のいずれかに該当する営業区域を特定地域として指定するものとし,当該指定は告示により行うものとする。(1)

人口10万人以上の都市を含む営業区域であって,①から③までの
いずれかに該当するもの。


日車実車キロ又は日車営収が,平成13年度と比較して減少していること。



前5年間の事故件数が毎年度増加していること。



前5年間の法令違反の件数が毎年度増加していること。

(2)


Ⅱ.略
Ⅲ.特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の申請等に対する取扱い以下に定めるところにより行うものとする。
(1,2

略)

3.増車の認可
(1)

処理方針
特定地域における営業区域内の増車(一般の需要に応じることができ
るタクシー・ハイヤー車両の合計数を増加させる事業計画の変更をいう。)の認可の申請に対しては,増車後の一定期間における収支計画等基準適合を証する書面の提出を求め,かつ,申請後に法令遵守状況の確認を行うための監査を実施した上で,審査基準に適合することに加え,次に掲げる基準(中略)に適合するものに限り認可するものとする。ただし,基本方針の趣旨に照らし,特別な事情があると認めるものについては,この限りでない。


収支計画

-93-

提出された収支計画上の増車車両分の営業収入が,申請する営業区域で当該増車実施後に新たに発生する輸送需要によるものであることが明らかであること(収支計画要件)。


運転者の確保状況
一般タクシー車両に係る運転者の確保状況について,1両当たり1.5人以上であること。ただし,地域の標準的な運転者数など実情を踏まえて,関東運輸局長が当該地域における1両当たりの運転者数を公示した場合には,その人数以上であること。



実働率
一般タクシー車両に係る実働率について,80%以上であること。ただし,地域の標準的な実働率など実情を踏まえて,関東運輸局長が当該地域における実働率を公示した場合には,その率以上であること。


法令遵守状況
申請後に監査を実施した結果,自動車その他の輸送施設の使用停止以上の処分を受けなかったこと。

Ⅳ.特定地域における減車実施事業者に対する監査の特例
減車により,営業区域ごとの一般タクシー車両の合計数が,Ⅱ.2.の基準車両数を関東運輸局長が公示する基準以上下回っている一般乗用旅客自動車運送事業者(Ⅲ.1(1)②による引き上げ前の最低車両数基準を下回っているものを除く。)については,「旅客自動車運送事業の監査方針の細部取扱いについて(平成21年9月30日付け公示)」の記1(2)⑱,(3)⑪及び(4)の規定にかかわらず,原則として,巡回監査,呼び出し監査及び呼び出し指導の対象としないものとする。
なお,事業再構築特例公示に基づく休車による供給輸送力減少については,基準車両数からの減少として取り扱わないものとする。

-94-

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