判例検索β > 平成23年(う)第1947号
住居侵入、強盗強姦未遂、強盗致傷、強盗強姦、監禁、窃盗、窃盗未遂、強盗殺人、建造物侵入、現住建造物等放火、死体損壊被告事件
事件番号平成23(う)1947
事件名住居侵入,強盗強姦未遂,強盗致傷,強盗強姦,監禁,窃盗,窃盗未遂,強盗殺人,建造物侵入,現住建造物等放火,死体損壊被告事件
裁判年月日平成25年10月8日
法廷名東京高等裁判所
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁第66巻3号42頁
原審裁判所名千葉地方裁判所
原審事件番号平成21(わ)2832
判示事項殺害された被害者が1名の強盗殺人等の事案につき,被告人が短期間に強盗致傷や強盗強姦という重大事件を複数回犯したことなどの事情を考慮して被告人を死刑に処した原判決が量刑不当として破棄された事例
裁判要旨被告人は,強盗殺人等の事件のほか強盗致傷や強盗強姦等を犯したものであるが,量刑判断の中心となる強盗殺人等の事件について,殺害態様が執拗で冷酷非情であり放火も危険性の高い悪質な犯行であること,結果も重大であることを十分に考慮しても,殺害された被害者が1名であり殺害行為に計画性を認めることができないことを踏まえると,死刑を選択することが真にやむを得ないとはいえず,被告人が短期間に強盗致傷や強盗強姦という重大事件を複数回犯したことや粗暴な性格傾向が著しいことなどの原判決が指摘する特有の事情に関しても,本件強盗殺人等の事件以外には前科も含めて殺意を伴う犯行はなく,法定刑に死刑が含まれる多くの犯罪にみられるような人の生命を奪って自己の利欲等の目的を達成しようとした犯行ではないことなどを考慮すると,上記特有の事情があることを理由として死刑を選択し得るとした原判決の判断は合理性のある評価とはいえず,無期懲役刑と死刑という質的に異なる刑の選択に誤りがある。
裁判日:西暦2013-10-08
情報公開日2017-10-13 02:04:30
戻る / PDF版
平成23年(う)第1947号

住居侵入強盗強姦未遂,強盗致傷,強盗強姦

監禁窃盗窃盗未遂,強盗殺人建造物侵入,現住建造物等放火死体損壊被告事件
平成25年10月8日

東京高等裁判所第10刑事部判決

主文
原判決を破棄する
被告人を無期懲役に処する
押収してあるツールナイフ1本(平成23年押第189号の
1)を没収する。

理1由
本件控訴の趣意は,第1に,原裁判所には,①被告人の発達障害に関する弁護人の鑑定請求等を却下した点,②裁判員に死刑選択の基準についての十分な情報を提供せずに評議した点,③被告人質問を検察官立証より先行させて証明責任を被告人に転換させるに等しい審理をした点,④裁判長が不当な補充質問を行い裁判員の心証に影響を与えた点,以上について訴訟手続の法令違反がある,第2に,原判決には判示第4の2の事実について法令適用の誤りがある,第3に,原判決には判示第6の事実について被告人には殺意がないのにこれを認定した点で事実の誤認がある,第4に,原判決は被告人を死刑に処したが,①死刑制度は憲法31条,13条,36条に違反する上,先例との比較等の観点から十分な検討をせずに被告人を死刑に処した点で憲法14条に違反する,②原判決の量刑は重すぎて不当である,というのである。

2
訴訟手続の法令違反の論旨について
(1)

鑑定請求等を却下した点
所論は,原裁判所は,情状鑑定(原審弁1),臨床心理士Aの証人尋問
(原審弁人3),被告人の発達障害の有無に関する鑑定(原審弁12)の各証拠請求をいずれも却下し,各却下決定に対する異議をいずれも棄却したが,死刑選択の当否が問われる事案においては,事件の背景,動機,被告人の人物像等を解明し,法廷での言動等を正しく評価し,被告人の更生可能性等を慎重に見極める必要があるにもかかわらず,弁護人に何らの立証の機会が与えられなかったのは審理不尽の違法があり,鑑定請求等を却下したことは,被告人の防御権,証人尋問権(憲法37条2項)を侵害し,裁判所の合理的裁量の範囲を逸脱するものとして刑訴法317条に違反する,この違反がなければ発達障害の疑いを否定する結論にはならず,死刑判断も回避された可能性が高い,などと主張する。
原判決は,被告人には知的障害や発達障害(自閉症スペクトラム)の疑いがある旨の弁護人の主張に対し,被告人が社会生活を送っていた際の状況,刑務所内での状況,本件各犯行の状況につき,証拠上認められる事実関係や,法廷での被告人の言動を見ても,主張にかかる疑いを抱かせるような事情は認められないと判示する。原審記録を精査しても,被告人において,量刑に影響を及ぼすような,発達障害等の精神上の問題,あるいは,人格・性格の偏りを疑わせる事情がないことは原判示のとおりである。そして,本件が死刑選択の当否の問われる事案であることを念頭に置いても,所論のいうような情状鑑定,臨床心理士の証人尋問,発達障害の有無に関する鑑定等を必要とする事案とはいえない。原裁判所の上記措置に違法不当な点は存しない。(2)

不十分な情報により評議したとする点
所論は,本件のような死刑選択の当否が問われる事件では,死刑と無期の
量刑基準を明確にし,過去の死刑求刑事件を参照して,慎重に比較均衡を図る必要性があるのに,原裁判所が,検察官及び弁護人との打合せにおいて,弁論では先例である個別事案と比較する議論を控えるよう指示し,裁判員にはいわゆる永山判決(最高裁昭和58年7月8日第二小法廷判決・刑集37巻6号609頁)が示した考慮要素を説明するにとどめ,裁判員裁判におけるこれまでの死刑求刑事件の判決6例のみを示すこととしたことは,裁判官としての役割を放棄し評議に臨んだもので,訴訟手続の法令違反に当たる旨主張する。
しかし,原審において,弁護人は,平成23年5月17日付け審理についての意見書で,裁判員に対し単に永山基準を説明するだけでは,どの程度の内容ならば死刑に傾くのかという判断ができないから,これまでの死刑求刑事案における判決の傾向等を示すべきである旨の意見を述べたこと,これを踏まえて,原裁判所は,同月20日の打合せにおいて,裁判員裁判における死刑求刑事件の判決書(無罪判決を除く)を評議の場で量刑資料として提供する予定であるので,その前提として,論告・弁論の中で個別事案と比較する議論は控えてほしい旨要請したこと,これに対し,弁護人は,裁判所提案の量刑資料を参考資料として裁判員に示すことに異議はない,弁護人としても,具体的な事件との類似点等を挙げるのではなく,抽象的な意味での相対的な本件事案の見方を提供したい旨述べ,原裁判所の方針に特段の異議を申し立てていないことが認められる。
一般に,死刑を選択するか否かの判断に当たっては,過去の先例の集積をも参考にすべきである。もとより,個々の事例を構成する要素の重みは事例ごとに異なるから,単なる事例比較は意味がなく相当ではないが,過去の先例の集積から窺われる傾向は,事件の重大さの程度を評価する資料となり得るという意味で参考となるのであり,とりわけ死刑選択の判断ではこのような先例の傾向を十分に念頭に置いた上で判断する必要がある。原裁判所の上記措置は,これと同様の観点からなされたものと理解できるのであって,このことは,後記のとおり,原判決が,死刑か無期懲役刑かの量刑判断の際の重要な要素として,殺害された被害者の数と殺害行為の計画性を挙げ,本件ではこの点を十分に考慮すべきであるとして特に言及していることからも窺える。また,弁護人の上記対応をも踏まえれば,原裁判所の上記措置に違法不当な点は認められない。
(3)

被告人質問を検察官立証より先行させた点
所論は,争点である殺意の有無の審理について,原審弁護人が異議を述べ
たにもかかわらず,被告人質問が先行して実施され,検察官立証はその後に行われたが,被告人が述べた犯行態様に関する供述を,検察官証人がその後に否定することが繰り返され,実質的に争点についての証明責任を被告人に転換させたに等しい違法な審理がなされた旨主張する。しかし,原裁判所の措置は,裁判員に分かりやすい審理となるように配慮した上でとられたものであり,被告人の防御に関しては,再度の被告人質問も実施されるなどしてその機会は十分保障されている。また,検察官に証明責任があることを前提に殺意の判断をしていることは,原判決の記載内容からも明らかである。(4)

裁判長が不当な補充質問を行ったとする点
所論は,原審裁判長の被告人に対する質問が,被告人に対する不信感を露
わにした強い口調でなされ,裁判長の心証を示したものであったことが裁判員の心証に影響したと主張するが,被告人に対する補充質問は,それまでの被告人質問の内容等を踏まえ,疑問や不十分と思われるところを聞くものであるから,補充質問の過程で仮に裁判長の心証が表れる結果となっても不当とはいえないし,原審記録を検討しても,裁判長の質問が所論指摘のような裁判員への不当な影響をもたらしたとは認められない。
(5)

以上のとおり,上記の各所論はいずれも理由がない。また,所論は,原審
裁判長が審理中や審理期間中に適切な措置をとらなかったことなどを種々指摘するが,これらについてみても,裁判長の訴訟指揮に当たり合理的な裁量の範囲を逸脱したとは認められないもの,あるいは,判決に影響を及ぼすような手続の違法にわたる事柄とはいえないものであるから,いずれも理由がない。
3
法令適用の誤りの論旨について
所論は,原判示第4の2の事実について,被害者に対する強盗致傷及び強盗強姦の各罪の成立を認め,両者を観念的競合の関係にあると処断した原判断には法令適用の誤りがあり,この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであると主張する。確かに,原判示第4の2の事実のうち,被告人が被害者に暴行脅迫を加えて金品を強取した後,緊縛した被害者を車に乗車させて発進し自動車を強取するとともに,被害者を同車内に監禁し,その間,路上に駐車して被害者を強姦し,当初の暴行により傷害を負わせたという点について,原判決は,監禁のほか,強盗致傷と強盗強姦が成立して両罪は観念的競合にあるとしているが,単に傷害の結果が生じた場合には,強盗致傷は成立せず強盗強姦のみを適用すべきものと解されるから,原判決の法令の適用には誤りがある。しかし,原判決は,判示第4の2と第4の1を併せた第4の事実について,結局のところ,最も重い被害者に対する強盗強姦罪の刑で処断していることなどに照らせば,この誤りは判決に影響を及ぼすものとはいえない。
4
事実誤認の論旨について
原判決は,原判示第6の犯行の態様及び殺意について,被害者の左胸①②③の傷の形状を踏まえ,いずれもそれ一つでも死亡結果をもたらす重大なものであること,鋭利で刃体が長く殺傷能力の高い包丁を使用し,被害者の胸骨や肋骨を切断したり当たったりするなどしてその刃が折れたこと,以上からだけでも被告人が被害者の左胸を包丁を用いて強い力で突き刺すなどしたことが認められ,被告人に殺意があったことが推認できるとした。さらに,原判決は,被害者の遺体の解剖を行ったB医師が,左胸①②の傷により左総頸動脈や胸部大動脈が切断されていることや,被害者の傷の出血状況等から,被害者は左胸①②の傷を負ったことにより間もなく意識不明の状態となり,左胸③や首<A><B>の傷は,いずれも被害者の出血性ショックによる死亡直前ないし直後に負ったと考えられる。胸骨は肋骨より硬く,包丁でこれを切断するには,背中が固定された状態にあるところに,よほどスピードをつけて体重を掛けて刺さないと無理であると証言する点に依拠するとともに,左胸①の傷により胸骨が真っ二つに切断されていること,折れた包丁の刃で被害者の首の傷を付けたとは考えにくいことを併せ考慮し,被告人は,まず,被害者の左胸を包丁でほぼ続けざまに2回突き刺し,左胸①②の傷を負わせ,殊に左胸①の傷を負わせたときには,背中が固定された状態にあるところを,スピードをつけ体重を掛けるようにして一気に突き刺し,その後,やや時間を置き,死亡直前又は直後の被害者の首2か所を傷付け,その左胸を一気に突き刺したと考えられるとし,このような犯行態様に照らし,被告人の刺突行為は,特段の事情のない限り,一連の殺意に基づくものと優に推認することができるとした。そして,被告人において,被害者との揉み合いの中で左胸②③の傷を負わせたが,左胸①と首<A><B>の傷は思い当たらない,左胸③の傷を負わせて気付くと包丁の柄が折れていた,と弁解する点について,被害者の左胸の傷は傷口にも体内にも乱れが見られないことからも揉み合いにより生じたものとは考えにくいこと,左胸①の傷は胸骨を完全に切断しているのにこれを手に感じないことは考えられないこと,被告人の弁解に従うと,首の傷が生じたのは左胸の傷が生じる前の包丁の奪い合いの場面しか考えられないが,首の傷の成傷順序がB証言と矛盾すること,被告人は自ら供述する被害者の死亡時刻の数十分後には被害者のクレジットカード等を使用して繰り返し現金の引き出しをしているが,これは誤って被害者を死亡させた者の行動として容易には理解できないこと等を指摘し,上記弁解は信用できない旨判示している。
以上の原判決の判断は合理的なものといえるのであって,当裁判所も正当として是認できる。以下,所論に鑑み補足して説明する。
まず,所論は,B医師の証言に関して,(ア)左胸①の傷は胸骨が切断されたというよりも,多くは肋軟骨の部分が切断されたのであり,証言の前提に誤りがある,(イ)首<A>の傷が左胸①②の傷より後に形成されたと述べている点は誤りである,(ウ)左胸③の傷がほぼまっすぐに刺入されたという点も誤りである,(エ)事後的な検証の資料も残されず,解剖方法も不正確であり,証言内容に合理性を欠くなどと論難する。
(ア)について,所論は,左胸①の傷にかかる刺突行為により胸骨(胸骨柄の前面左上部)が切断されたのであれば,左胸鎖乳突筋の胸骨頭の左縁部を損傷していなければならないのに,切断部位は左胸骨頭の外側であり不合理である旨主張するが,主張にいう切断部位と左胸骨頭の位置関係は正確なものといえない上,左胸①の傷の創洞の方向を考慮していない主張であって,B証言が不合理であることをいうものとはいえない。また,上記の切断面の色はいわゆる胸骨の切断面の色とは異なるとする点も正確な指摘とはいえない。次に,所論は,胸骨の切断について,B証言の真っ二つという表現は不適切であり,原裁判所の認定・評価に誤った影響を与えたと主張するが,真っ二つというのは一部に切れ込みが入っている状態に止まらず完全に切断されていたという意味を持つにすぎず,所論がいうような誤った影響を与えたとは認められない。さらに,所論は,胸骨が切断されたことから,背中が固定された状態にあったと認定した原判断は,B証言を曲解した根拠のない認定であると主張する。確かに,B医師は,胸骨を切断する場合として,よほどスピードをつけて体重を掛ける場合と,背中が固定されている状態で体重を掛ける場合の二つを挙げていると理解でき,必ずしも被害者の背中が固定された状態にあったとは断定できない。しかし,B証言の中心は,肋骨より硬い胸骨が完全に切断されるにはよほどの強い力を掛けないと無理であるという点にあるのであり,仮に被害者の背中が固定されている状態になかったとしても,胸骨を切断するほどの強い力を伴う刺突行為であったことに変わりないのであって,その刺突行為の態様や程度を踏まえれば,殺意を認定した原判断が左右されるものではないし,原判決の量刑理由において,被告人の殺意は極めて強固なものであり,殺害態様は執拗にして冷酷非情とした評価についても影響を受けるものではない。
(イ)について,所論は,被害者の首に巻かれたストッキングに付着した出血痕や黒色の付着物の状況,首の傷口から後頭部方向に流れた出血の痕跡からすれば,一定量の出血があったことが認められるから,首<A>の傷は左胸①②の傷より前に形成された可能性があると主張する。しかし,B医師は,遺体の各部分からの出血の程度について,肉眼で直接観察した結果に基づいて判断しており,首の傷の周りの出血についても,その他の部分からの出血と比較した上で,非常に少なかったことを確認しているのであって,その判断に不合理な点は認められない。(ウ)について,所論は,左胸③の傷の方向は体の中央付近からかなり外側に向かっているから,B医師のほぼそのまままっすぐという左胸③の傷に関する証言には信用性がない,この証言が一気に突き刺したという原判決の認定に影響している旨主張するが,B医師は,左胸の③の傷の方向について,やや角度があり左後方に向かって進んでいた旨証言しており,所論の指摘は当を得ていない。(エ)について,所論は,B医師が事後的に検証可能な客観的資料を残していないことからその証言の信用性を論難するが,検証できないことから直ちに信用性が減殺されるものではないから,所論は相当でない。また,所論は,B医師は左胸①の傷の切断部位周辺の筋肉組織等を除去し切断部位を露出して確認しておらず,正確性を欠くなどと主張するが,その主張は被害者の遺体の解剖写真に基づいたC医師の鑑定意見に依拠するものであり,そうした間接的な観察によって直接解剖に当たったB医師の証言を弾劾するには限界がある。B医師の証言は,被害者の傷の内容・程度やその成傷順序,各傷が生じる原因となった刺突行為の強度等について,被害者の遺体を直接観察したところに基づいて,豊富な遺体解剖の経験も踏まえて述べており,上記の証言内容の合理性を疑わせる事情は認められない。
次に,所論は,本件包丁は特に強度の強いものではなく,刃の根元は内部まで腐食して折れ易くなっていた可能性があるから,包丁が折れたことから刺突行為の強度を推認することは誤りである旨主張する。本件包丁は,平成21年9月8日に被害者の友人が使用した際には錆びていなかったことが確認されているのであり,同年10月21日に本件犯行に使用され,同日,逃走途中にタオルに包まれて雑木林に捨てられ,平成22年1月12日,捨てられた場所からタオルに包まれた状態で発見されたものである。被告人が捨ててから発見されるまでに2か月半以上の期間にわたり野ざらしの状態であったため,特に折れた断面を中心に腐食が進んだものと認められるから,所論は理由がない。
さらに,所論は,被告人が被害者を刺突した直前に両者間で包丁を奪い合う状況があった可能性は排斥できないとして,原判決がその旨の被告人の供述は信用できないとした点を論難する。しかし,包丁を奪い合う状況になった経緯として被告人が説明するところは,被害者が急に怒り出し包丁を取り上げて自らの首の方に持っていったという,余りに唐突で不自然なものである上,原判決が指摘するとおり,被害者の左胸の傷は傷口にも体内にも乱れがなく揉み合いの中で生じたとは考えにくいこと,左胸①の傷につき胸骨を切断した抵抗も手に感じないとは考えられないこと,首の傷の成傷順序がB証言と矛盾していること等,包丁の奪い合いを前提とする被告人の説明には,多くの客観的事実関係に整合しない点や不自然不合理な点が含まれているのであり,被害者を刺突するに至った説明全体が到底信用できない。その旨の原判決の評価は正当である。
以上のとおり,事実誤認の論旨は理由がない。
5
量刑不当の論旨について
(1)

憲法違反の主張について
死刑を言い渡した原判決に対して憲法違反をいう所論のうち,死刑制度は
憲法31条,13条,36条に違反するという点については,その執行方法を含む死刑制度がこれらの規定に違反するものでないことは,最高裁判所の判例(最高裁昭和23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)に照らしても明らかであって,所論は理由がない。また,原判断が先例との比較等の観点から十分な検討をしないで死刑を言渡したのは憲法14条に違反するという点は,実質において量刑不当を主張するものと認められる。
(2)

量刑不当の主張について
本件事案と原判断
本件は,被告人が,約2か月の間に,①住居侵入窃盗3件,②住居侵入強盗致傷,③住居侵入強盗致傷・強盗強姦監禁窃盗,④住居侵入強盗殺人窃盗,同未遂2件,建造物侵入・現住建造物等放火死体損壊(以下松戸事件ともいう),⑤強盗致傷,⑥住居侵入強盗強姦未遂を行ったという事案であり,原判決が認定した各事実の概要は別紙のとおりである。
原判決は,被告人を死刑に処した理由を以下のとおり説明する。すなわち,<ア>松戸事件において,殺意が極めて強固で,殺害態様も執拗で冷酷非情であり,また,放火も類焼の危険性が高い悪質な犯行であること,<イ>松戸事件の結果は重大であり,被害者の肉体的苦痛が極めて大きかったと窺われ,その無念,悲嘆の情は察するに余りあること,<ウ>松戸事件前後の②③⑤⑥の事件はいずれも重大で悪質であって,一連の強盗致傷事件により,被害者4名に傷害を負わせ,うち2名は重傷であり,また,強姦行為に及んで重大な性的被害を与えた被害者も2名おり,これらの暴行態様は高齢な女性被害者に対し手加減をせずに拳骨で殴打するなどの強力な態様のものや,包丁等を突き付け死亡等の重大な結果をもたらしかねない危険なものであったし,性的暴行を執拗に加えたものでもあること,<エ>累犯前科や同種前科の存在にもかかわらず,前刑出所後3か月足らずで本件各犯行に及んだことは強い非難に値し,短期間に反復累行した被告人の反社会的な傾向性は顕著で根深いこと,<オ>松戸事件では殺害された被害者の数が一人であり,被害者の殺害に計画性がないが,本件に特有の事情(短期間に重大事件を複数回犯し,重篤な傷害や深刻な性的被害を受けた者がいること,その生命身体に重篤な危害が及ぶ危険性がどの事件でもあったこと)を考慮すると,これらの事情は死刑を回避すべき決定的事情とまではならないこと,<カ>松戸事件では信用し難い弁解を繰り返すなど責任回避的な言動がみられて反省を深めているとはいえず,更生可能性が乏しいといわざるを得ないことや各被害者らの処罰感情が極めて厳しいことに鑑みると,被告人の刑事責任は誠に重く,死刑をもって臨むのが相当である,と判断している。
しかしながら,当裁判所は,以上のような理由から被告人を死刑に処するのが相当とした原判断には賛同することはできない。以下,その理由を説明する。

当裁判所の判断
死刑は,窮極の峻厳な刑であり,慎重に適用すべきであることはいうまでもない。死刑が相当かどうかの判断は,無期懲役刑か死刑かという,連続性のない質的に異なる刑の選択であり,有期懲役刑の刑期のような許容される幅といった考え方には親しまない。いかなる事情が無期懲役刑と死刑の質的相違をもたらすかは,前記永山判決に示された要素,すなわち,犯行の罪質,動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等諸般の情状を検討した上で,前記2(2)のとおり,過去の先例の集積をも参考にして判断することになる。
本件では松戸事件が量刑判断の中心となる。原判示(上記ア<ア><イ>)のとおり,松戸事件は,強固な殺意に基づいた犯行であり,殺害の態様も被害者の負った創傷の状況に照らして誠に執拗かつ冷酷非情なものである。被害者の死体を焼損し犯跡を隠蔽することを企て,マンションの被害者宅に放火した犯行も甚だ危険かつ悪質である。結果が極めて重大であることはいうまでもなく,突然理不尽にも生命を奪われた被害者の無念な思いは察するに余りある。遺族の処罰感情は極めて厳しく,被告人に対し死刑を求める心情も十分に理解できる。
他方で,被告人が,被害者を包丁で脅迫して金品を強取したほか,何故上記のような冷酷非情な態様で殺害までしたのか,その動機や殺害直前の経緯については,被告人の弁解が信用できない以上,判然としないというほかない。もっとも,被告人は,深夜被害者宅に侵入して物色行為に及び,若い女性が一人暮らしをしていることを知り,同所にあった包丁を手にして室内で横になるなどしていたところ,朝10時過ぎに被害者が帰宅したことから,被害者に包丁を示して金品を要求し,現金5000円とカード類4枚等を強取したという経緯は原判決が認定したとおりであって,被告人が被害者を殺害する状況となったのは,金品強取後に生じた被告人と被害者間の何らかの事情が原因であることが窺われる。そうすると,被告人において,被害者宅への侵入時や包丁を手にして室内にとどまっていた間に殺意がなかったことは明らかであるし,さらには,金品を要求した時点においても,未必的な殺意を含め,被害者を殺害する意思があったとは認めることができない。また,殺害直前の経緯や殺害の動機も不明であることから,本件は,いかなる意味においても計画的な殺害行為ということはできない。この点,原判決も殺害行為自体の計画性については明確に否定している。
そして,これまでの先例の傾向をみると,殺害された被害者が1名の強盗殺人でその殺害行為に計画性がない場合には,死刑は選択されないという傾向がみられるといってよい。原裁判所も,上記ア<オ>のとおり,殺害された被害者が1名で殺害に計画性がない点を特に考察しており,この先例の傾向を念頭に置きつつ慎重な検討を加えたことが窺われる。その上で,原判決は,本件に特有の事情を考慮すると,殺害された被害者が1名で殺害に計画性がないことは,死刑を回避すべき決定的事情とまではならないとし,その特有の事情として,<A>短期間に強盗致傷や強盗強姦という重大事案を複数回犯し,その中には死亡してもおかしくないほどの重篤な傷害や,深刻な性的被害を受けた者がいること,<B>刃物を使用して一連の強盗事件を敢行しており,被告人の粗暴な性格傾向の著しさにも鑑みると,被害者の対応いかんによってはその生命身体に重篤な危害が及ぶ危険性がどの事件でも十分あったことを指摘している。
確かに,被告人は,上記ア<ウ>のとおり,重大かつ悪質な犯行を重ねており,これらは被害者の対応いかんによっては生命身体に重篤な危害を及ぼしかねない犯行であって,被害者らが受けた被害も深刻で処罰感情も厳しいものがある。また,上記ア<エ>のとおり,被告人は,昭和59年に③事件と類似する強盗致傷,強盗強姦で懲役7年に処せられ,さらに,平成14年に松戸事件と類似する住居侵入強盗致傷で懲役7年に処せられるなど,重大事犯に及んだ複数の前科を有する上,前刑出所後3か月足らずの短期間のうちに本件各犯行を反復していることに照らせば,被告人の極めて粗暴で反社会的な性格傾向も否定できない。しかし,本件において被告人が犯した各犯行は,生命身体に重篤な危害を及ぼしかねない危険なものであるとはいっても,松戸事件を除けば,殺意を伴うものはなく,法定刑に死刑が含まれる多くの犯罪にみられるような,人の生命を奪って自己の利欲等の目的を達成しようとした犯行ではない。別の観点からいえば,松戸事件を除いた各事件については,その重大悪質な犯情や行為の危険性をいかに重視したとしても,各事件の法定刑からして死刑の選択はあり得ない。同様に,被告人の前科をみても,殺意を伴うものはなく,松戸事件と類似する前科は,若い女性の家に侵入し,家人の帰宅を待ち構えて同所にあった包丁で脅した上,ストッキングで両手を緊縛してキャッシュカード等を強取したという事件であるが,松戸事件のように人の生命を奪おうとまでした事件ではない。上記<A><B>の事情をみても死刑を選択すべき特段の要素は見当たらないのである。
死刑が選択されないという一定の先例の傾向がある場合に,その傾向に沿った判断をしない事情があるときには,死刑は慎重に適用すべきであるという観点からも,その合理的かつ説得力のある理由が示される必要がある。原判決が指摘する上記<A><B>の事情は,確かに,被告人の刑事責任の重大さを根拠付ける悪情状であるといえる。しかし,殺害された被害者が1名で殺害行為に計画性がない場合には死刑は選択されないという先例の傾向があるにもかかわらず,その傾向に沿った判断をしなくてもよいのかが問われている場面において,少なくとも,上記<A><B>の事情があることを理由として,その傾向に沿った判断を排した上で,無期懲役刑とは質的に異なる刑である死刑を選択し得るとすることは,合理的かつ説得力のある理由を示したものとは言い難い。原判決は,殺害された被害者が1名の強盗殺人で殺害行為に計画性がないことは死刑を回避する一つの事情と捉えた上で,上記<A><B>の事情という本件に特有の事情があることを考慮すれば,それは死刑を回避する決定的事情とまではならないという考え方をしているが,その判断は合理性のある評価とはいえないというべきである。
当裁判所は,松戸事件の殺害態様が執拗で冷酷非情であり,放火も危険性の高い悪質な犯行であること,その結果も重大であることを十分に考慮しても,同事件が殺害された被害者が1名の強盗殺人であり,殺害行為にいかなる意味においても計画性を認めることができないことを踏まえると,死刑を選択することが真にやむを得ないものとはいえないと考える。そして,松戸事件に加えて,松戸事件前後の強盗致傷,強盗強姦等の事件の犯情が重大,悪質,かつ危険であることなどを併せて考慮し,さらに,被告人の前科関係や粗暴で反社会的な性格傾向,被告人の反省の情が乏しいこと,松戸事件の被害者遺族や他事件の被害者らの厳しい処罰感情などの一般情状を十分に斟酌しても,同様に,死刑を選択することが真にやむを得ないものとはならないというべきである。
(3)

結論
以上のとおり,本件においては,死刑を選択することが真にやむを得ないものとはいえないというべきである。原判断は,裁判員と裁判官が評議において議論を尽くした結果であるが,無期懲役刑と死刑という質的に異なる刑の選択に誤りがあると判断できる以上,破棄は免れない。

6
破棄自判
そこで,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条ただし書に従い,被告事件について更に次のとおり判決する。
原判決が認定した事実に原判決挙示の法令(科刑上一罪の処理を含み,刑種の選択,累犯加重,併合罪の処理を除く。ただし,罰条の判示第4の所為のうち,D及びEに対する各強盗致傷の点対する強盗致傷の点いずれも刑法240条前段をDに刑法240条前段と,科刑上一罪の処理の判示第4及び第10につき,のうち,判示第4につき,住居侵入とDに対する強盗致傷,同住居侵入とEに対する強盗致傷,及び,同住居侵入と同人に対する強盗強姦がいずれも牽連犯の,Eに対する同強盗致傷と同強盗強姦,及び,同人に対する同強盗強姦監禁がいずれも観念的競合の各関係にあるのでを判示第4につき,住居侵入とDに対する強盗致傷,及び,同住居侵入とEに対する強盗強姦がいずれも牽連犯の,Eに対する同強盗強姦監禁が観念的競合の各関係にあるのでとそれぞれ改める。)を適用し,刑種の選択については,前記の情状を考慮した上,原判示第1,第3,第5,第7ないし第9及び第13の各罪につき所定刑中いずれも懲役刑を,原判示第2,第4及び第10ないし第12の各罪につき所定刑中いずれも有期懲役刑を,原判示第6の罪につき所定刑中無期懲役刑を選択し,被告人には原判示の累犯前科があるので,原判示第1ないし第5及び第7ないし第13の各罪について刑法56条1項,57条により再犯の加重をし(ただし,原判示第2,第4及び第10ないし第12の各罪の刑については同法14条2項の制限に従う。),同法45条前段,46条2項本文により原判示第6の罪の刑以外の刑は科さないこととして被告人を無期懲役に処し,主文掲記のツールナイフ1本は,原判示第2及び第4の1の各犯行供用物件で被告人以外の者に属しないので,同法46条2項ただし書,19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,原審及び当審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととして,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官

村瀬


裁判官

秋山


裁判官

河本雅也)

(別

紙)

原判決が認定した各事実の概要



住居侵入窃盗3件
平成21年9月16日,千葉県佐倉市内の民家に侵入し,現金約4万3000円を窃取した(原判示第1)。
同年10月6日,同市内の民家に侵入し,LEDライト1個(時価約2980円相当)を窃取した(原判示第3)。
同年11月13日,千葉県印旛郡内のマンションの一室に侵入し,現金約6万円及び宝くじ62枚を窃取した(原判示第13)。



住居侵入強盗致傷
同年10月2日,金品を強取する目的で,千葉県松戸市内の民家に侵入し,被害者(当時76歳)に対し,その背中を押して同人をひざまずかせ,顔面及び右胸部を数回殴り,左腕等を数回蹴り,

声を出すな。出すと殺すぞ。

なとど語気鋭く言い,腹部にツールナイフ(刃体の長さ約7.0センチメートル)を突き付け,両手薬指を結束バンドで後ろ手に緊縛し,さらに,顔面を数回殴り,足を蹴り,タオルで猿ぐつわをして,

そこにいろ。動くと殺す。

などと言うなどの暴行脅迫を加えて反抗を抑圧し,現金約1万5000円,キャッシュカード2枚及びクレジットカード1枚を強取し,被害者に全治約3週間を要し,眼窩下神経障害の後遺症が残る左眼窩底骨折,左頬骨骨折,右前胸部打撲等の傷害を負わせた(原判示第2)。


住居侵入強盗致傷・強盗強姦監禁窃盗
同月7日午後6時40分ころ,金品を強取する目的で,佐倉市内の民家に侵入した上,
被害者(当時61歳)に対し,その側頭部を蹴り,上記ツールナイフを突き付け,

お金はどこだ。

などと語気鋭く言い,顔面を数回殴り,頭部を踏みつけ,胸部及び腹部等を数回蹴り,スカーフやバスタオルで両手首及び両足首を緊縛するなどの暴行脅迫を加えて反抗を抑圧し,現金約1万円を強取し,被害者に全治約8週間を要し,右下口唇の神経損傷による知覚障害の後遺症を伴う下顎骨体部骨折,下顎骨関節突起骨折,顔面打撲挫創,外傷性くも膜下出血,左右上肢打撲,胸部・腹部打撲の傷害を負わせた(原判示第4の1)。
同日午後7時10分ころ,帰宅した被害者(当時31歳)に対し,玄関先で顔面及び頭部等を複数回殴り,頭髪をわしづかみにし,「金出せ。

これだけか。財布よこせ。

クレジットカードはどれだ。

暗証番号は何だ。ちゃんと正しい番号を教えないと殺すぞ。

などと語気鋭く言い,同人が着用していたスパッツで両手首を後ろ手に緊縛し,

これからお前,車に乗れ。暗証番号間違っていたら殺すぞ。

などと言い,ポロシャツを頭部にかぶせるなどの暴行脅迫を加えて反抗を抑圧し,現金約1万6000円,キャッシュカード1枚,クレジットカード3枚及び現金561円在中の財布1個(時価約2万円相当),定期券1枚等10点在中のハンドバッグ1個(時価合計約1万7500円相当)を強取し,同日午後7時20分ころ,同人を車に監禁して連行先で姦淫しようと企て,反抗抑圧状態の同人を普通乗用自動車に乗せて発進させて同車1台(時価約30万円相当)を強取し,同日午後9時50分ころまでの間,車内で,

お前がここから動くと殺すぞ。

などと言いながら同車を走行させて脱出することを困難にして監禁し,その間,同日午後9時30分ころ,路上に駐車中の車外で同人が抵抗できない状態にあるのに乗じて強いて同人を姦淫し,上記玄関先の暴行により同人に全治約2週間を要する頭部顔面打撲の傷害を負わせた(原判示第4の2)。同日午後8時5分ころから午後8時8分ころまでの間,コンビニエンスストアのATM機に強取した上記キャッシュカード及びクレジットカード各1枚を順次挿入し,現金合計55万円を引き出して窃取した(原判示第5)。④

住居侵入強盗殺人窃盗,同未遂2件,建造物侵入・現住建造物等放火死体損壊(松戸事件)
同月20日の夜ころから翌21日の未明にかけて,松戸市内のマンションの一室に侵入し,帰宅した被害者(当時21歳)に対し,金品を強取する目的で,同所にあった包丁(刃体の長さ約17.6センチメートル)を突き付け,両手首をストッキングで緊縛するなどの暴行脅迫を加えて反抗を抑圧し,同日午後1時ころまでの間に,現金約5000円,キャッシュカード2枚,クレジットカード2枚等を強取するとともに,殺意をもって上記包丁で同人の左胸部を3回突き刺すなどし,同人を左胸部損傷による出血性ショックにより死亡させて殺害した(原判示第6)。
同日午後1時26分ころから午後1時32分ころまでの間,松戸駅のATM機に上記キャッシュカード1枚を挿入し現金2万円を引き出して窃取し,引き続き,上記クレジットカード1枚及びキャッシュカード1枚を順次挿入し,現金を引き出して窃取しようとしたが,暗証番号が一致しなかったなどのため,その目的を遂げなかった(原判示第7)。
同日午後1時38分ころ,コンビニエンスストアのATM機に上記クレジットカード1枚を挿入し,現金を引き出して窃取しようとしたが,暗証番号が一致しなかったため,その目的を遂げなかった(原判示第8)。
同日午後2時11分ころから午後2時15分ころまでの間,コンビニエンスストアのATM機に上記キャッシュトカード2枚を順次挿入し,現金を引き出して窃取しようとしたが,いずれも残高不足のため,その目的を遂げなかった(原判示第9)。
同月22日,15名が現に住居に使用する上記マンションに放火し被害者の死体を焼損するなどして上記強盗殺人の犯跡を隠蔽しようと企て,同人の死体が存在する室内に侵入し,死体付近に置かれた衣類等にライターで火を放ち,その火を同室の床,壁及び天井等に燃え移らせて焼損(焼損面積約24平方メートル)するとともに,死体を焼損した(原判示第10)。


強盗致傷
同月31日,印旛郡内の駐車場において,自動車に乗ろうとしていた被害者(当時22歳)の背中を突き飛ばして転倒させ,顔面を数回殴り,

騒いだら殺すぞ。

と語気鋭く言い,後頸部にドライバーの先端を押し当てて

首を刺されたら死ぬんだよな。

などと言い,両手親指を結束バンドで後ろ手に緊縛し,

お前,なめてんのか。殺すぞ。

車に乗れ。」などと言うなどの暴行脅迫を加え,反抗を抑圧して金品を強取しようとしたが,目撃した第三者に騒ぎ立てられて逃走したためその目的を遂げず,上記暴行により同人に全治約2週間を要する顔面打撲,頸椎捻挫,後頸部挫創の傷害を負わせた(原判示第11)。


住居侵入強盗強姦未遂
同年11月2日,印旛郡内の民家に侵入し,現金約3万円を窃取し,在室していた被害者(当時30歳)から金品を強取するとともに強いて同人を姦淫する目的で,同所にあった包丁(刃体の長さ約15.1センチメートル)を突き付け,

騒ぐと殺すぞ。

などと語気鋭く言い,両手首をストッキングで後ろ手に緊縛した上,

金はどこにあるんだ。

本当にないのか。殺すぞ。

などと言うなどの暴行脅迫を加えて反抗を抑圧し,現金約15万5000円を強取し,引き続き,同人が抵抗できない状態にあるのに乗じて,同人のパンツ等をその足首付近にまで引き下ろすなどの暴行を加えて強いて同人を姦淫しようとしたが,同人が生理中であったため,姦淫の目的を遂げなかった(原判示第12)。
トップに戻る

saiban.in