判例検索β > 平成25年(わ)第307号
住居侵入、強盗(訴因変更後 住居侵入、強盗致傷)、銃砲刀剣類所持等取締法違反、強盗、窃盗
事件番号平成25(わ)307
事件名住居侵入,強盗(訴因変更後 住居侵入,強盗致傷),銃砲刀剣類所持等取締法違反,強盗,窃盗
裁判年月日平成25年12月5日
法廷名神戸地方裁判所
裁判日:西暦2013-12-05
情報公開日2017-10-13 01:34:46
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平成25年12月5日宣告裁判所書記官

平成25年第307号,第382号,第493号,第522号(区分事件の枝番号1)住居侵入強盗(訴因変更後

住居侵入強盗致傷),銃砲刀剣類所持等取締法違

反,強盗窃盗被告事件

部分主判決文
本件区分事件の各公訴事実につき,被告人はいずれも有罪。


【犯罪事実】※<


>内の記載は,対応する公訴事実及び事件番号を示す。

第1<平成25年5月28日付け(同年第382号)>
被告人は,
正当な理由がないのに,
平成25年3月6日午後2時45分頃,
神戸市a区bc丁目d番e号所在のA(当時63歳)方に,玄関引き戸から侵入し,その頃,室内で鉢合わせになった同人に対して,「泥棒です。

お金を出して下さい。

などと言い,さらに,被告人から逃れようとして転倒したAに対し,その背後から右腕を回して首を絞めるなどの暴行を加えるとともに,

お金を出さなかったら殺します。

などと言って脅迫し,同人が抵抗できないようにした上,同人が所有する現金7000円を奪った。第2

<平成25年6月24日付け(同年第493号)>

被告人は,正当な理由がないのに,平成25年3月16日午後0時30分頃から同日午後5時15分頃までの間に,神戸市f区gh丁目i番j号kl号室B方に,鍵の掛かっていない北側ベランダ掃き出し窓から侵入し,その頃,同所において,Cが所有又は管理するカードケース1個(通帳1通,名刺約20枚,ポイントカード2枚が入ったもの)及び時計1個(時価合計2万2000円相当)を盗んだ。

【証拠の標目】
省略
【争点に対する判断】
本件では,何者かが,判示第1の住居侵入強盗事件(以下第1事件という。)及び判示第2の住居侵入窃盗事件(以下第2事件という。)の各犯行を行った事実に争いはなく,証拠上も明らかである。争点は,両事件の犯人が被告人であると認められるか否かである。
この点,両事件とも被告人が犯人であることを直接に証明する証拠はないものの,当裁判所は,検察官が主張するとおり,各犯行現場に遺留された指掌紋が被告人のものと一致したことを中心とする間接事実により,いずれの事件についても被告人が犯人であることは間違いないと判断した。
1
第1事件について
犯人が現場に遺留したガムテープから犯人の指紋が検出されたことア
証拠によれば,
事件直後に警察官がA方に臨場した際,
その6畳洋室の床上に,

テープ部分が約250

にわたり芯から引き延ばされた状態のガムテープ
(以下

本件ガムテープという。)があるのが発見された。その粘着面にはほこりなどがほとんど付着していなかったことから,本件ガムテープは,引き延ばされて間もないものと認められる。そして,本件ガムテープの引き延ばされた部分の粘着面から,A以外の者の指紋が2つ検出された。
一方,被害者であるAは,室内で鉢合わせになった犯人から脅された際,犯人は手にガムテープを持っていたこと,犯人から首を絞められたのは,本件ガムテープが発見された6畳洋室であったこと,本件ガムテープは事件前には6畳洋室にはなく,一方で,事件前にAが玄関脇の棚に置いていたはずのガムテープが事件後には棚からなくなっていたことをそれぞれ証言する。同証言は,現場の客観的状況などに照らして不自然な点はない上,これらの点についてAにあえて嘘をつく理由があるとも考えられないことから,十分信用できる。

弁護人は,①警察官が本件ガムテープを発見して事件との関係を尋ねるまで,Aがガムテープについて言及していなかったこと,②A自身,犯人がガムテープを引き延ばした場面を見ていないと証言していること,③本件ガムテープが発見された室内は生活用品等が雑然と置かれて散らかっており,その状況からすると,本件ガムテープが事件とは関係なく床上に放り出されていた可能性も考えられることなどを理由に,A証言の正確性に疑問を呈する。しかし,①については,実際にガムテープを用いて危害を加えられたのであればともかく,本件ではそのような事実はなかったことを踏まえると,被害の概況を警察官に説明する際,Aがガムテープに言及しなかったとしても格別不自然とはいえない。②についても,背後から首を絞められるなどしていたという状況を前提にすれば,Aがその際の犯人の行動について全て正確に知覚していないことはむしろ当然といえる。また,
③についても先に示した本件ガムテープの発見状況や指紋の検出状況からすれば,弁護人指摘の可能性は現実味を欠く。このように,弁護人の主張を踏まえても,A証言が信用できるとの結論は左右されない。

以上からすると,犯人は,A方玄関のガムテープを手に取って犯行に及び,何らかの理由によりそれを引き延ばした後に,それを放置して逃走したものと推認することができ,本件ガムテープは犯人が犯行時に所持していたものであると認められる。そして,本件ガムテープの状況や指紋の付着箇所からして,本件ガムテープの粘着面から検出された2つの指紋は,犯人のものである可能性が極めて高い。

本件ガムテープから検出された指紋が被告人のものと一致したこと兵庫県警察本部鑑定官のDは,本件ガムテープから検出された2つの指紋と被告人の指紋(右母指,右環指)とを照合したところ,いずれも一致したとの鑑定結果を報告している。
前記鑑定は,指掌紋について十分な専門的知識と鑑定経験を持つ同人が,一般的に信頼性が承認されている判断手法(12点法)を用いて慎重に同一性を吟味して
行ったものである上(なお,D証言によれば,別の2人の鑑定官が同一の鑑定資料を別の機会に鑑定して同一の結論が得られたというのであり,この事情も鑑定の信頼性を補強する。),遺留指紋と被告人の指紋との特徴点の一致を検証可能な形で具体的に指摘しており,
各特徴点の一致状況は,
鑑定資料として添付された写真上,
素人目にもほぼ確認できるものである。さらに,本件ガムテープから検出された2つの指紋のいずれもが被告人のものと一致したという結果自体も,鑑定の正確性を裏付けるものといえる。以上によれば,前記鑑定結果は十分信用できるというべきである。弁護人は,鑑定の前提となる本件ガムテープの遺留指紋が不鮮明であるなどと主張するが,Dは,その豊富な鑑定経験を前提に,この程度であれば格別鑑定が困難とはいえないと証言している上,前記のとおり,特徴点の一致を具体的かつ検証可能な形で指摘していることを踏まえると,鑑定結果の信頼性に疑問は生じない。
以上のとおり,前記鑑定結果は十分信用でき,本件ガムテープから検出された2つの指紋はいずれも被告人の指紋と一致すると認められる。
そして,前記のとおり,2つの指紋が犯人のものである可能性が極めて高いことに加え,被告人とAとの間に面識が一切なく,被告人も本件当日以前に本件現場を訪れたことはない旨述べていることからすると,2つの指紋が被告人のものと一致した事実は被告人が犯人でなければ合理的に説明ができず,第1事件の犯人が被告人であることを端的に示すものであるといえる。
なお,信用できる足跡鑑定の結果及び被告人の供述によれば,A方から事件直後に採取された犯人の足跡は,被告人が事件当時所有していた靴によって印象されたものとして矛盾がないことが認められる。この事実は,被告人が第1事件の犯人であるとの前記判断を更に裏付けるものといえる。
被告人は犯人ではないとする被告人の供述及び弁護人の主張についてア
これに対し,弁護人は,第1事件の発生時刻頃,被告人は,JRa駅付近のEa店内にいたのであるから,被告人は犯人ではあり得ないと主張し,被告人もこ
れに沿う供述をするが,それを裏付ける客観的証拠はなく,前記認定を左右させるものではない。

また,弁護人は,Aは犯人が白い帽子を被っていたと証言するところ,被告人は第1事件当時黒い帽子を被っていたのであり,このような着衣の特徴の相違は被告人が犯人でないことを示すと主張する。
確かに,事件発生時刻の約1時間後に被告人がATMを操作している場面が防犯カメラに写っており,その画像によれば被告人が黒い帽子を被っていたことが認められるが,その帽子のつばの部分には白いラインが入っていることも確認できる上,Aは,犯人の帽子について白っぽいようなものが見えたと証言するにとどまっていることからすれば,Aは白いラインの部分が特に印象に残ったために前記のような証言をしたと解する余地が十分ある。したがって,この部分のA証言だけでは犯人が白い帽子を被っていたと認めることはできず,結局,これを根拠に,被告人が犯人ではないとの疑いが生じることはない。


さらに,弁護人は,被告人は,当時の妻から買い物を頼まれたが,依頼された数百円の買い物代金を所持していなかったため,午後4時過ぎ頃,郵便局で預金を引き出そうとしたこと(これについては元妻の供述及び上記防犯カメラによる裏付けがある。)を指摘した上で,仮に被告人が犯人であったとすれば,被告人はこのときAから奪った現金7000円を所持していたことになり,わざわざ預金を引き出す必要はなかったはずであると主張し,この点は被告人が犯人であることと整合しないとする。
確かに,
その経過は,
被告人が犯人であることと若干整合しにくいといえるが,
他方で,被告人が,事件後1時間余りの間に7000円程度の金を費消することは十分考えられるし,あるいは,奪った現金を手元に残そうとしたとも考えられる。いずれにせよ,弁護人指摘の上記事情は,被告人が犯人であることと決定的に矛盾する事情とまではいえず,前記のとおり,被告人が犯人であることは客観的証拠から確実といえる本件では,その認定を妨げるほどの意味を持たないとい
うべきである。
結論
以上のとおり,弁護人の主張を踏まえても,第1事件の犯人は被告人であることは間違いないと判断できる。
2
第2事件について
被告人が犯人であることを示す3つの間接事実

犯行現場のベランダ手すり等に残された掌紋と被告人の掌紋の一致証拠によれば,第2事件の犯人はB方の北側ベランダ掃き出し窓から侵入し,室内で時計等を盗んだ後,同じ掃き出し窓から逃走したと認められる(その主な理由は,事件当時,B方の北側ベランダ掃き出し窓の鍵が掛かっていなかったことに加えて,
前記窓付近に遺留された靴跡の位置や向きから犯人はベラン
ダから室内に立ち入ったと推認できることなどである。)。また,警察官であるFらの証言によれば,事件翌日,前記ベランダに設置された手すり及び掃き出し窓の窓枠から複数の掌紋が採取されたことが認められる。
そして,兵庫県警察本部鑑定官のGは,前記の掌紋のうち6つについてはいずれも被告人の掌紋と一致するとの鑑定結果を報告しているところ,この鑑定
結果も,前記D鑑定と同様に,指掌紋について十分な専門的知識と鑑定経験を持つGが,一般的に信頼性が承認されている判断手法(12点法)を用いて慎重に同一性を吟味して行ったものである上(なお,G証言によれば,別の2人の鑑定官が同一の鑑定資料を別の機会に鑑定して同一の結論が得られたというのであり,この事情も鑑定の信頼性を補強する。),遺留掌紋と被告人の掌紋との特徴点の一致を検証可能な形で具体的に指摘しており,各特徴点の一致状況は,鑑定資料として添付された写真上,素人目にもほぼ確認できるものである。さらに,6つの掌紋のいずれもが被告人のものと一致したという結果自体も,鑑定の正確性を裏付けるものといえる。以上によれば,前記鑑定結果は十分信用できるというべきであり,
犯行現場に遺留された6つの掌紋は全て被告人の掌紋と一致す

ると認められる。
前記のとおり,侵入口であり逃走口と考えられる北側ベランダの手すりや窓枠から採取された掌紋は犯人のものである可能性が高いと考えられる上,被告人は,住人であるBやC(Bの交際相手)とは一切面識がなく,被告人も本件事件前にB方のベランダに立ち入った経験はないと述べていることから,第2事件の犯行時以外に被告人の掌紋がベランダの手すり等に付着する機会があるとは考えがたい。したがって,この事実は被告人が犯人でなければ合理的な説明が著しく困難というべきである。

犯行現場に遺留された足跡と被告人が使用していた靴との一致
証拠によれば,B方の寝室,リビング及び書斎から合計4つの靴跡が採取されたことが認められるところ,その状況から,これらの足跡はいずれも犯人が残したものであることが明らかである。
そして,信用できる足跡鑑定の結果によれば,B方に遺留された犯人の足跡は,被告人が当時所有していた靴によって印象されたとして矛盾せず,少なくとも,その製品種類及びサイズは一致すると認められる。この事実は,決定的な証明力までは有しないものの,被告人が犯人であることと整合するものといえる。


被害品の時計と同種の時計を被告人が事件翌日に質屋に持ち込んだこと犯人がB方から盗み去った時計は,10年以上前に製造・販売されていた時計(グッチ製,型番7800S)であったところ,証拠によれば,被告人は,第2事件の翌日,被害品の時計と同型の時計を神戸市内の質屋に持ち込み,売却した事実が認められる。
被害品は10年以上前に販売されていたブランド品であり,さほど多く流通していたものではないと考えられることに加え,事件と売却とが時間的にも場所的にも近接していること,さらに,被告人と長く同居していた被告人の元妻(事件後に離婚した。)は,この時計について,自宅で見たこともな
ければ心当たりもないと証言していることを併せて考慮すれば,被告人が質屋に持ち込んだ時計は被害品そのものであると強く推認できる。したがって,この事実も被告人が犯人であることを強く推認させるものといえる。なお,被告人は,質屋に持ち込んだ時計について,自宅のチェストに保管されていたものであり,元妻が以前に誰かから貰ったものであろうと思っていたなどと供述する。しかし,当該時計について身に覚えがないとする元妻の証言と相容れない上,仮にそのような認識であったならば元妻に無断で質屋に売却するというのは不自然に過ぎる。加えて,被告人の供述内容自体が一貫していないことも考慮すると,時計の入手経緯に関する被告人の供述は信用に値しない。

以上の3つの間接事実のうち,特に掌紋の一致及び被害品と同種の時計を被告人が売却したことは,いずれも被告人が犯人であることを強く推認させる事実である。また,これら3つの事実が全て犯行と無関係に偶然生ずる事態はおよそ想定できず,被告人が犯人であることに疑いを容れる余地はない。


被告人は犯人ではないとする被告人の供述及び弁護人の主張についてア
これに対し,弁護人は,第2事件の発生時刻頃,被告人はパチンコ店で遊戯中
であったのであるから,被告人は犯人ではあり得ないと主張し,被告人もこれに沿う供述をするが,やはり裏付けとなるような客観的証拠はなく,前記認定を左右させるものではない。

また,弁護人は,B方のベランダの手すりは地面からの高さが222
り,被告人の身長(177

であ

)では,ベランダから侵入するのは不可能であるこ

となどを理由に,ベランダから採取された掌紋は何らかの作為が介在している可能性が否定できないとも主張する。
しかし,被告人が,侵入の際,何らかの物を踏み台として使用して犯行後にそれを持ち去った可能性も考えられるし,ベランダのコンクリート塀自体の高さは203

であるから,被告人の身長であれば,手をかけてよじ登ることも十分可
能と考えられる。少なくとも,被告人がそこから侵入することが不可能であるとはいえない。掌紋の採取に立ち会った被害者Bの証言等からも,掌紋の採取過程に不当な作為が介入していないことは明らかである。
その余の弁護人の主張も判断に影響を与えるものではない。
結論
以上のとおり,第1事件と同様に,弁護人の主張を踏まえても,被告人が第2事件の犯人であることは間違いないと判断できる。
【罰条の適用及び科刑上一罪の処理】
罰条
犯罪事実第1

刑法236条1項

住居侵入の点

刑法130条前段

窃盗の点
科刑上一罪の処理

刑法130条前段

強盗の点
犯罪事実第2

住居侵入の点

刑法235条

いずれも刑法54条1項後段,10条(犯罪事実第1について
は重い強盗罪の刑で,
犯罪事実第2については重い窃盗罪の刑
でそれぞれ処断)

平成25年12月9日
神戸地方裁判所第4刑事部
裁判長裁判官

丸田
裁判官

片田顕真志
裁判官

高島剛
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