判例検索β > 平成25年(わ)第307号
住居侵入、強盗(訴因変更後 住居侵入、強盗致傷)、銃砲刀剣類所持等取締法違反、強盗、窃盗
事件番号平成25(わ)307
事件名住居侵入,強盗(訴因変更後 住居侵入,強盗致傷),銃砲刀剣類所持等取締法違反,強盗,窃盗
裁判年月日平成26年1月30日
法廷名神戸地方裁判所
裁判日:西暦2014-01-30
情報公開日2017-10-13 01:34:44
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平成26年1月30日宣告裁判所書記官

平成25年第307号,第382号,第493号,第522号住居侵入強盗(訴因変更後

住居侵入強盗致傷),銃砲刀剣類所持等取締法違反,強盗窃盗被告
事件

判決主文
被告人を懲役8年に処する
未決勾留日数中170日を刑に算入する。
神戸地方検察庁で保管中の洋出刃包丁(平成25年領第894号符号1)を没収する。

理由
【犯罪事実】※<>内の記載は,
対応する部分判決の犯罪事実の番号又は公訴事実及び事件番号を示す。第1<部分判決の犯罪事実第1,平成25年5月28日付け(同年第382号)>被告人は,
正当な理由がないのに,
平成25年3月6日午後2時45分頃,
神戸市a区bc丁目d番e号所在のA(当時63歳)方に,玄関引き戸から侵入し,その頃,室内で鉢合わせになった同人に対して,「泥棒です。

お金を出して下さい。

などと言い,さらに,被告人から逃れようとして転倒したAに対し,その背後から右腕を回して首を絞めるなどの暴行を加えるとともに,

お金を出さなかったら殺します。

などと言って脅迫し,同人が抵抗できないようにした上,同人が所有する現金7000円を奪った。第2

<部分判決の犯罪事実第2,平成25年6月24日付け(同年第493号)>
被告人は,正当な理由がないのに,平成25年3月16日午後0時30分頃から同日午後5時15分頃までの間に,神戸市f区gh丁目i番j号kl号室B方に,鍵の掛かっていない北側ベランダ掃き出し窓から侵入し,その
頃,同所において,Cが所有又は管理するカードケース1個(通帳1通,名刺約20枚,ポイントカード2枚が入ったもの)及び時計1個(時価合計2万2000円相当)を盗んだ。
第3

<平成25年4月26日付け(同年第307号)の公訴事実第1>
被告人は,
金品を強奪しようと考え,
平成25年4月6日午後1時5分頃,
神戸市a区mn丁目o番p号所在のD(当時75歳)方において,宅配便の配達業者を装って,同人に玄関扉を開けさせて,同人方に侵入し,その頃から同日午後2時45分頃までの間,同所において,同人に対し,

金100万円出せ。などと言いながら,

持っていた洋出刃包丁
(刃体の長さ約16.
6センチメートル。神戸地方検察庁平成25年領第894号符号1)を示した上,持っていたネクタイ等で同人の両腕及び両足を縛り,タオルで口を塞ぎ,
逃げ出そうとした同人の背後からその胸付近を腕で締め付けるなどの暴行脅迫を加えて,同人が抵抗できないようにした上,同人が所有又は管理する現金2万5000円及び指輪等27点を奪い,その際,上記一連の暴行により,
同人に加療約2か月間を要する左第9肋骨骨折等の傷害を負わせた。

<平成25年7月2日付け(同年第522号)>

被告人は,同日午後2時50分頃,の犯行で奪ったD名義のキャッシュカードを使用して,神戸市a区qr丁目s番t号E銀行u支店において,同支店に設置された現金自動預払機から,同支店業務課長Fが管理する現金6万5000円を引き出して盗んだ。


<平成25年4月26日付け(同年第307号の公訴事実第2)>
被告人は,
業務その他正当な理由による場合でないのに,
同日午後8時頃,
神戸市a区vw丁目x番y号z1階踊り場において,
前記洋出刃包丁1本を
携帯した。
【証拠の標目】

省略
【犯罪事実第3の強盗致傷に係る争点に対する判断】
1
犯罪事実第3のうち,強盗致傷の点につき,弁護人は,被告人がDの背後からその胸付近を腕で締め付ける暴行(以下本件暴行という。)はしていないと主張するとともに,被告人の暴行によってDが肋骨骨折等の傷害を負ったとは認められないから,被告人には強盗罪が成立するにとどまると主張した。当裁判所は,以下に述べる理由から,被告人が本件暴行を行ったことは間違いなく,また,Dの肋骨骨折等の傷害は,本件暴行を含む一連の暴行により生じたものであると判断し,強盗致傷罪の成立を認めたものである。
2
前提事実(当事者間に争いがなく,証拠上容易に認められる事実)被告人は,平成25年4月6日午後1時5分頃,宅配便の配達業者を装ってD
方に侵入し,Dに対し,包丁を示しながら現金を出すよう要求した。Dがそれに素直に応じなかったことから,被告人は,Dの両手足や口をネクタイやタオルで縛るなどして,金品を物色した。途中,Dはネクタイ等をほどいて逃げ出そうとしたが,被告人に見付かり,玄関口で捕まって室内に連れ戻され,再び手足等を縛られた。被告人は,現金等を奪った後,Dを寝室に移動させて手足等を縛り,更に物色を続けて貴金属類を奪った。その後,Dは再び手足の拘束を解いて逃げ出そうとしたところ,寝室の出入口付近で被告人に見付かり,寝室内に連れ戻された。被告人は,再度Dの手足を縛り直し,ベッド上に寝かせて,同日午後2時45分頃に立ち去った。
その後,午後3時頃,通報を受けた警察官が臨場し,実況見分を実施したが,その際,Dは警察官に左胸部や首の痛みを訴えた。実況見分終了後,救急医の診察を受けたところ,左第8,9肋骨骨折疑い及び頸椎捻挫と診断され,専門医を受診するよう勧められた。同月8日,Dを診察した整形外科医は左第9肋骨骨折及び頸椎捻挫と診断した。
3
本件暴行について



D及び被告人の供述要旨
Dは証言の要旨は次のとおりである。
寝室から逃げ出そうとして被告人に見付かり,寝室に押し戻された際,背
後から,被告人が右腕をDの首に回し,左腕をDの左胸部に回して締め付けてきた。息苦しさからぐったりした状態になると,ベッドに移され,再び手足を縛られた上,ベッド上に転ばされた。その際,左脇腹付近に激しい痛みを感じた。
これに対して,被告人は,Dの身体を背後から腕で締め付けるような暴力を振るったことはないと供述した。


信用性の検討
寝室で本件暴行を受けたとするDの証言内容は相応に具体的である上,勘違いするような内容でもない。また,前記前提事実に掲げた事実経過については大筋に争いがない中で,あえて本件暴行についてだけ嘘の証言をするような動機がDにあるとは考えにくい。のみならず,事件後の診断経過等に照らすと,事件直後の時点で,Dの左第9肋骨に骨折が生じていたと認められるところ,Dの証言はこのような客観的な負傷状況ともよく整合する。加えて,Dは,事件直後から,警察官に対し,左胸や首の痛みの原因として犯人から本件暴行を受けたと訴えていたこと(D及び臨場した警察官が共にそのように述べている。)をも考慮すると,Dの上記証言は十分に信用できるというべきである。


弁護人は,寝室から逃げ出そうとしたDを連れ戻したときには,被告人は既に金品を取得しており,ここであえて激しい暴行を加えるべき理由はなかったはずであるから,この点のDの証言は不自然であることなどを指摘し,Dの証言の信用性に疑問を呈する。しかし,2度目に逃げ出そうとして見付かった状況であったことや,前後の経過に照らすと,Dの述べる本件暴行の内容は不自然に激しいものとはいえない。事件当日作成されたDの供述調書
との齟齬等その他の弁護人の主張も,D証言の信用性に疑問を生じさせるものではない。

他方で,被告人の供述は,全体を通じて自らの行為を小さく見せようとする態度がうかがわれる上,被告人の供述では,なぜDに肋骨骨折が生じたのかを合理的に説明できない。これらの点に照らすと,被告人の供述は信用に値しない。



以上のとおり,Dの証言どおり,被告人が本件暴行を行ったことは間違いないと判断した。

4
暴行傷害結果の間の因果関係について
前記のとおり,Dは事件直後に,警察官に胸部や首の痛みを訴えるとともに,
その原因として本件暴行があったと述べ,また,客観的にもその時点で左第9肋骨の骨折や,頸椎捻挫の傷害を負っていたと認められる。加えて,骨折等の確定診断をした整形外科医の証言によれば,Dのレントゲン所見からすると,肋骨の骨折は二,
三週間以内に生じたものであると推定されること,
この部位の骨折は,
すぐに痛みを感じる場合がほとんどである上,
日常生活にも支障が生じるのが通
常であることが認められるところ,Dやその知人等の証言によれば,Dは,少なくとも事件の前日までは,
太極拳教室を受講するなど普段どおりの生活を送って
いたと認められ,また,被害後,警察官が臨場するまでのわずかな時間に2つの大きなけがを負うとは考えられない。そして,本件暴行を含む被告人の一連の暴行は,
その骨折等を生じさせる可能性のあるものであったといえることも併せて考慮すると,Dの骨折等は今回の事件の際に生じたとしか考えられない。以上のことから,
犯行時の被告人の一連の暴行によりDが左第9肋骨骨折及び頸椎捻挫の傷害を負ったことに疑いの余地は残らない。
【法令の適用】
罰条
犯罪事実第1

住居侵入の点

刑法130条前段

強盗の点

刑法236条1項

犯罪事実第2

刑法130条前段

窃盗の点

刑法235条

住居侵入の点

刑法130条前段

強盗致傷の点

犯罪事実第3

住居侵入の点

刑法240条前段

犯罪事実第3

刑法235条

犯罪事実第3

銃砲刀剣類所持等取締法31条の18第
3号,22条

科刑上一罪の処理

犯罪事実1,
第2及び第3について,
いずれも刑法54条1
項後段,10条(第1については重い強盗罪の刑で,第2につ
いては重い窃盗罪の刑で,
第3については重い強盗致傷罪の
刑でそれぞれ処断)

刑種の選択

犯罪事実第2,第3及び第3について,いずれも懲役
刑を選択
犯罪事実第3について,有期懲役刑を選択

併合罪の処理

刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い犯罪事実
第3の罪の刑に法定の加重)

未決勾留日数の算入

刑法21条


刑法19条1項2号,2項本文(洋出刃包丁は犯罪事実第


3の強盗致傷の用に供した物で被告人以外の者に属しな
い。)
訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

【量刑の理由】
犯罪事実第3の犯行は,一人暮らしの高齢の女性を狙った点や,被害者を縛るためにネクタイ等を準備している点で計画的な面もあるが,被害者との会話の中で,その反応に流されて場当たり的に行動している面もあり,際立った凶悪さや緻密さはみられない。手足の縛り方は弱く,その他の暴行も被害者を痛めつける意図に基づくものとはみ
られず,犯行態様はさほど悪質とはいえない。結果の点では,被害者の傷害の程度はかなり重い上,財産的損害も比較的大きい(なお,被害品である貴金属の犯行時点での財産的価値を判断するための的確な証拠はないが,犯行後,被告人が質屋に約22万円で売却していることを手がかりとして,概ね数十万円程度の財産的価値であったと考えられる。)。これに加え,被告人が侵入強盗や侵入窃盗等も犯していることからすると,本件は,同種事案(単独で住居侵入強盗致傷を犯した事案及びそれと共にそれより軽い他の罪を犯した事案)の中において,最も重い部類とまではいえないが,やや重い部類に位置づけられると考えられる。
以上に加え,被告人に前科前歴はない一方,本件に関しては不合理な弁解が多々みられ,反省のことばを述べるも内省の深まりが十分であるとは感じられないこと,各被害者に対する被害回復措置も十分とはいえないこと,犯罪事実第3の被害者は今なお厳しい被害感情を抱いていること等を考慮し,主文の刑が相当であると判断した。(求刑

懲役14年,洋出刃包丁の没収)

平成26年1月31日
神戸地方裁判所第4刑事部
裁判長裁判官

丸田
裁判官

片田
裁判官

高島顕真志剛
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