判例検索β > 平成24年(わ)第6483号
現住建造物等放火、非現住建造物等放火、住居侵入、建造物等以外放火被告事件
事件番号平成24(わ)6483
事件名現住建造物等放火,非現住建造物等放火,住居侵入,建造物等以外放火被告事件
裁判年月日平成26年5月23日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2014-05-23
情報公開日2017-10-13 01:34:38
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主文
被告人を無期懲役に処する
未決勾留日数中400日をその刑に算入する。
理由
【犯罪事実】
被告人は,仕事がなかなか見つからず,自宅にいると母親から早く仕事を探すようにと小言を言われることから,家を出て自転車で付近を徘徊して時間をつぶす生活をしていたが,そのことなどによる鬱積した気持ちを晴らすため,放火をしようと考えるようになった。そして,次の各行為をした。
第1

平成24年8月4日午後3時30分頃,大阪府東大阪市aaab丁目ac番ad号所在の次の建物に放火しようと考え,同建物1階玄関から管理人A1の管理する同建物共用部分に侵入した。そして,同建物1階の階段下収納部分に積まれていた新聞紙にライターで火を付け,その火を同建物に燃え移らせてその一部約260平方メートルを焼損するとともに,その頃,同建物において,居住していたA2(当時64歳)及びA3(当時60歳)を一酸化炭素中毒により死亡させた。
[建物]種類

共同住宅(A4)

構造

木造瓦葺2階建

床面積

合計約509.35平方メートル

現に居住していた者(以下居住者という。)
上記A2,A3ら12名
現にいた者(以下現在者という。)
上記A2,A3ら6名
第2
1
平成24年9月17日
午後2時32分頃,大阪市ba区bbbc丁目bd番be号所在の次の建物内において,同建物に放火する目的で,木製棚に置かれていた布切れにライターで火を付け,その火を同棚を介して同建物に燃え移らせてその一部約14.8平方メートルを焼損した。
[建物]種類

事務所資材置場

構造

木造塩化ビニール波トタン葺平屋建

床面積

約23平方メートル

所有者

B株式会社

居住者・現在者
2
なし

午後3時40分頃,大阪市ca区cb町cc丁目cd番ce号所在のマンションC北側駐輪場において,置かれていた他人所有のソファーにライターで火を付け,その火を周囲にあった木板や同駐輪場の木柵等に燃え移らせてこれらを焼損し,人の住んでいる同マンション等に燃え移るおそれのある状態にした。

第3
1
平成24年9月19日
午後0時28分頃,大阪府東大阪市da町db丁目dc番dd号所在の次の建物甲内において,同建物に放火する目的で,かつ,その南側に隣接する次の建物乙に燃え移るかもしれないことを認識しながら,建物甲の木製棚に置かれていた軍手にライターで火を付け,その火を同棚を介して同建物に燃え移らせてこれを全焼させるとともに,その火を建物乙に燃え移らせてその一部約5.4平方メートルを焼損した。
[建物甲]種類

住居兼倉庫

構造

木造カラーベスト葺一部木造トタン葺平屋建

床面積

合計約109平方メートル

居住者

D1

現在者

D1

[建物乙]所在

同市da町de丁目df番dg号
構造

木造瓦葺2階建

床面積

合計約76.98平方メートル

所有者

D2

居住者・現在者
2
なし

午後1時45分頃,
大阪府東大阪市eaeb丁目ec番ed号所在の共同住
宅E1南側敷地内において,ライターでティッシュペーパーに火をつけ,その火を置かれていたE2所有の洗濯機のビニールカバーに燃え移らせ,その火を
同洗濯機に燃え移らせてこれらを焼損し,
人の住んでいる同共同住宅等に燃え
移るおそれのある状態にした。

3
午後2時15分頃,
大阪市fa区fbfc丁目fd番fe号所在の共同住宅
F南側敷地内において,
置かれていた他人所有の木製物置内の布切れにライタ
ーで火を付け,その火を同物置に燃え移らせてこれらを焼損し,人の住んでいる同共同住宅等に燃え移るおそれのある状態にし,
実際に同共同住宅の外階段
の木製支柱及び側壁下部の木製縁板に燃え移らせて約0.
26平方メートルを
焼損した。

4
午後5時18分頃,
大阪府八尾市gagb丁目gc番gd号所在のG1方住
宅付近において,
G2株式会社が所有する上記住宅南西側の木製板塀にライタ
ーで火を付けてその一部約0.56平方メートルを焼損し,人の住んでいる同住宅等に燃え移るおそれのある状態にした。

第4

平成24年10月10日午後2時20分頃,
大阪府東大阪市hahb番hc
号所在の次の建物内において,同建物に放火する目的で,雨合羽を同建物南側木製階段上に置いてライターで火を付け,
その火を同建物に燃え移らせてその
一部約76.35平方メートルを焼損した。
[建物]種類

共同住宅(H1)

構造

木造瓦葺2階建

床面積

合計約433.15平方メートル
居住者
現在者
第5

H2ら3名
H2

平成24年10月14日

1
午前11時53分頃,大阪府東大阪市iaib丁目ic番id号所在の次の建物東側路上において,同建物に放火する目的で,同建物資材置場の東側の柵に接して置かれていた紙箱にライターで火を付け,その火を同資材置場に置かれていた新聞紙等を介して同建物に燃え移らせてこれを全焼させた。[建物]種類

住宅

構造
床面積

合計約69.4平方メートル

居住者
2
木造瓦葺2階建

Iら2名

午後0時20分頃,
大阪府東大阪市jajb丁目jc番jd号所在の次の建
物西側路上において,
同建物の木製外壁にライターで火を付け,
その一部約0.
47平方メートルを焼損した。
[建物]構造

木造瓦葺平屋建

床面積

合計約114.2平方メートル

所有者


居住者・現在者
3
なし

午後0時30分頃,
大阪府八尾市kakb丁目kc番地所在の次の建物甲の
トイレ内において,同建物に放火する目的で,かつ,その南側に隣接する次の建物乙から丁までに燃え移るかもしれないことを認識しながら,
同トイレの側
壁にライターで火を付け,
その火によって建物甲の一部約173平方メートル
を焼損し,さらに,その火を建物乙から丁までに燃え移らせ,建物丙を全焼させるとともに,建物乙の一部約0.3平方メートルと建物丁の一部約9.9平方メートルを焼損した。
[建物甲]種類

貸倉庫
構造

木造瓦棒葺トタン張平屋建

床面積

約204平方メートル

所有者

K1

居住者・現在者
[建物B]所在

なし

同市kakd丁目ke番地kf

種類

住宅

構造

木造スレート葺2階建

床面積

合計約75.89平方メートル

居住者

K2ら3名

[建物C]所在

同市kakg丁目kh番地ki

種類

住宅

構造

木造瓦葺2階建

床面積

合計約79.28平方メートル

居住者・現在者
[建物D]所在

K3ら3名

同市kakj丁目kk番地kl

種類
構造

木造スレート葺2階建

床面積

合計約121.72平方メートル

居住者

K4ら4名

現在者
4
住宅

K5ら2名

午後0時52分頃,大阪府八尾市lalb丁目lc番地のld所在の株式会社L所有の工場西側資材置場において,置かれていた他人所有の合成樹脂製コンテナ袋にライターで火を付け,その火を周囲にあった木製パレット等に燃え移らせてこれらを焼損し,同工場等に燃え移るおそれのある状態にし,実際に同工場の木製内壁に燃え移らせてその一部約6.5平方メートルを焼損した。
5
午後1時35分頃,大阪府八尾市ma町mb丁目mc番地所在の次の建物内において,同建物に放火する目的で,置かれていた農具にライターで火を付け,その火を同建物に燃え移らせてこれを全焼させた。
[建物]種類

農具小屋

構造

木造トタン葺トタン張平屋建

床面積

約17.1平方メートル

所有者


居住者・現在者
第6
1
なし

平成24年10月24日
午後1時17分頃,大阪府八尾市na町nb丁目nc番nd号所在のN1が管理する共同住宅N2敷地内に,放火の目的で南側出入口から侵入した。
2
午後2時20分頃,大阪府八尾市oa町ob丁目oc番地od所在の次の建物甲西側路上において,同建物に放火する目的で,かつ,その北側に隣接する次の建物乙及び南側に隣接する次の建物丙に燃え移るかもしれないことを認識しながら,建物甲の西側外壁裏側の木材にライターで火を付け,その火によって同建物を全焼させ,さらに,その火を建物乙及び丙に燃え移らせ,建物乙を全焼させるとともに,建物丙の一部約55平方メートルを焼損した。[建物甲]構造

木造スレート葺2階建

床面積

合計約57.16平方メートル

所有者

株式会社O1

居住者・現在者
[建物乙]所在

なし

同市oa町oe丁目of番地og

種類

作業場

構造

木造瓦・亜鉛メッキ鋼板葺2階建

床面積

合計約181.38平方メートル

現在者

O2ら2名

[建物丙]所在

同市oa町oh丁目oi番地oj
構造

軽量鉄骨造波型スレート葺2階建

床面積

合計約121.48平方メートル

所有者

株式会社O3

居住者・現在者
3
なし

午後3時15分頃,大阪府東大阪市pa町pb丁目pc番pd号所在の次の建物甲南側路上において,同建物に放火する目的で,かつ,その東側に隣接する次の建物乙に燃え移るかもしれないことを認識しながら,建物甲南側板壁の隙間に差し込んだ紙片にライターで火を付け,その火を建物甲に燃え移らせてこれを全焼させるとともに,その火を建物乙に燃え移らせてその一部約80平方メートルを焼損した。
[建物甲]種類

物置小屋

構造

木造トタン鋼板葺平屋建

床面積

約13.9平方メートル

所有者

有限会社P1

居住者・現在者
[建物乙]所在

なし

同市pa町pe丁目pf番pg号

構造

木造瓦葺一部2階建

床面積

合計約129.68平方メートル

所有者

P2

居住者・現在者

なし

【証拠の標目】(各証拠書類に付記した番号は,検察官請求の証拠番号である。)すべての事実について
・被告人の公判供述
第1の事実について
・捜査報告書(甲362~365,374)
・A1の警察官調書抄本(甲415)
第2の1の事実について
・捜査報告書(甲352)
第2の2の事実について
・捜査報告書(甲353)
第3の1の事実について
・捜査報告書(甲380)
第3の2の事実について
・捜査報告書(甲354)
第3の3の事実について
・捜査報告書(甲355)
第3の4の事実について
・捜査報告書(甲356)
第4の事実について
・捜査報告書(甲387)
第5の1の事実について
・捜査報告書(甲392)
第5の2の事実について
・捜査報告書(甲357)
第5の3の事実について
・捜査報告書(甲395)
第5の4の事実について
・捜査報告書(甲358)
第5の5の事実について
・捜査報告書(甲359)
第6の1の事実について
・捜査報告書(甲360)
・電話聴取書(甲416)
第6の2の事実について
・捜査報告書(甲402)
第6の3の事実について
・捜査報告書(甲361)
【法令の適用】
1
被告人の行為は,それぞれ次の刑罰法令に当たる。
第1の行為のうち
邸宅侵入の点

刑法130条前段

現住建造物等放火の点

刑法108条

第2の1,第5の2,第5の5,第6の3の各行為
それぞれ刑法109条1項
第2の2,第3の2,第3の3,第3の4,第5の4の各行為
それぞれ刑法110条1項
第3の1,第4,第5の1,第5の3,第6の2の各行為
それぞれ刑法108条
第6の1の行為
2
刑法130条前段

第1の邸宅侵入と現住建造物等放火との間には手段と結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により1罪として重い現住建造物等放火罪の刑で処断する。

3
定められた刑のうち,第1の罪について無期懲役刑を,第3の1,第4,第5の1,第5の3,第6の2の各罪について有期懲役刑を,第6の1の罪について懲役刑をそれぞれ選択する。

4
以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法46条2項により第1の罪の無期懲役刑で処断し,他の刑を科さない。

5
被告人は審理中に身柄を拘束されていたから,刑法21条を適用して主文のとおり未決勾留日数の一部をその刑に算入する。
6
訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。

【量刑の理由】
本件は,放火目的の邸宅侵入1件を含む16件の無差別な連続放火事案である。その件数の多さはもちろん,ほとんどの犯行が住宅密集地で行われていることや,古い木造家屋を狙ったり,木製階段下に置かれた新聞紙の束からその一部を引き出し,垂らした下の端に点火するなど,燃えやすいように細工をしたりしていることからすれば,いずれも燃料までは用いていないものの,重大な結果が生じかねない非常に危険な犯行である。実際に,第1のA4では2名の尊い命が失われたほか,大きな財産的被害が生じ,周辺住民に大きな不安,恐怖感を与えている。動機にも酌むべき点はない。そして,2名の死者が出たことを知りながら,なおも放火を続けたことは極めて悪質であって,強い非難に値する。
そうすると,本件は,現住建造物等への連続放火事案の中でも極めて重いものである。平成20年4月以後の量刑資料には殺人を伴わない放火で無期懲役とされたものはなく,最も重いものでも懲役30年に止まっているが,本件はそれら過去の事例よりも相当重いと評価すべき事案である。そこで,被告人が捜査段階から素直に罪を認め,反省の態度を示していることなどを考慮しても,無期懲役を選択することはやむを得ないと判断した。
(求刑-無期懲役)
平成26年5月23日
大阪地方裁判所第9刑事部

裁判長裁判官

長井秀典
裁判官

武田
裁判官

安藤正巨騎
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