判例検索β > 平成25年(わ)第80号
住居侵入、強盗致傷、窃盗被告事件
事件番号平成25(わ)80
事件名住居侵入,強盗致傷,窃盗被告事件
裁判年月日平成25年9月12日
法廷名岐阜地方裁判所
裁判日:西暦2013-09-12
情報公開日2017-10-13 01:34:52
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主文
被告人を懲役8年に処する
未決勾留日数中310日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は
第1(平成25年2月27日付け起訴状記載の公訴事実。①事件)Xらと共謀の上,平成23年9月25日午後9時30分頃,岐阜県高山市〔以下省略〕所在の株式会社a工務店資材置場において,同社代表取締役Aが管理する敷鉄板10枚(時価合計80万円相当)を窃取し
第2(平成24年11月15日付け起訴状記載の公訴事実。②事件)Yと共謀の上,金品窃取の目的で,平成24年4月5日,群馬県高崎市〔以下省略〕のB方にリビング南側掃き出し窓から侵入し,その頃,同所において,同人ほか1名所有の現金約1000円及びボストンバッグ等3点(時価合計83万円相当)を窃取し
第3(平成24年10月9日付け起訴状記載の公訴事実。③事件)Yと共謀の上,金品窃取の目的で,平成24年4月5日,群馬県藤岡市〔以下省略〕のC方に台所南側掃き出し窓から侵入し,その頃,同所において,同人所有の財布等7点(時価1万円相当)を窃取し
第4(平成24年8月15日付け起訴状記載の公訴事実。④事件)Yと共謀の上,金品窃取の目的で,平成24年5月8日,長野県塩尻市〔以下省略〕D方に寝室南側掃き出し窓から侵入し,その頃,同所において,同人所有のポータブルゲーム機1台(時価1万円相当)を窃取し
第5(平成25年4月26日付け起訴状記載の公訴事実。⑤事件)金品窃取の目的で,平成24年6月29日,岐阜県瑞浪市〔以下省略〕のe方に,その北側腰高窓の施錠を外して侵入し,その頃,同所において,E所有の現金約1200円及び指輪等5点(時価合計3386円相当)を窃取し第6(第6回公判期日における訴因変更後の平成25年3月26日付け起訴状記載の公訴事実(予備的訴因⑴)。⑥事件)金品窃取の目的で,平成24年7月3日午後10時頃,岐阜県瑞浪市〔以下省略〕所在のF方に無施錠の玄関から侵入し,同所において金品を物色中,ベッドで就寝していた同人(当時71歳)に発見され,「あんた誰。」などと声を掛けられるとともに,肩に手を掛けられたことから,とっさに,逮捕を免れる目的で,同人に対し,その手を振り払った上,布団をかぶせて馬乗りになって,同人の顔面を複数回殴り付け,さらに,ベッドから下りた同人に布団をかぶせた上,その身体を多数回足で踏み付けるなどの暴行を加えて,同人を気絶させ,それに乗じて,同人所有の現金4000円及びビール共通券10枚(販売価格合計7660円)を強取し,その際,上記暴行により,同人に全治約23日間を要する外傷性脳出血並びに左上腕,左前腕,右前腕,左下腿,顔面及び左側頭部打撲の傷害を負わせ
たものである。
(判示第6の事実についての補足説明―主位的訴因を認定せず,予備的訴因⑴を認定した理由)
1
暴行の目的について
関係各証拠によれば,判示第6記載のとおりの一連の暴行を被告人が被害者に対して加えたことが認められる。被告人は,これらの暴行について,被害者から突然肩に手を掛けられたことなどから驚き,被害者の手を振り払おうととっさに自らの手を後ろに払ったもので,これ以降においても金品を奪うつもりで暴行を加えたことはない旨供述する。
そこで,上記暴行の意図,目的について検討すると,関係各証拠によれば,被告人は,被害者の手を振り払って以降,被害者に対し強度の暴行を加えているばかりか,被害者が抵抗しなくなることを確認するや,容易に逃げられる状況であったにもかかわらず,逃げることなく,すぐに物色行為を行い,現金等を持ち去っているものと認められる。これらの事情によれば,上記一連の暴行の途中で,逮捕を免れる目的に加えて,金品を強奪する目的が生じたとの疑いも否定し得ない。
しかしながら,被告人が被害者に対する暴行に及んだのは,それまでは侵入盗等しか犯したことがなかった被告人が,その場にいないと思っていた被害者から突然肩に手を掛けられたことなどに驚いてとっさに加えたものであり,その時点において,被告人には金品を奪う目的はなかったと認められる。また,一連の暴行は,執ようかつ危険な態様によるものではあるものの,被害者の必死の抵抗にあったことに応じて行った面がある上,全体としても一,二分という比較的短時間の連続的なものであり,被告人はその間,被害者に金品を求める発言もしていない。加えて,被告人は,この一連の暴行により被害者が抵抗するのをやめたことを認識しながら,多少の物色行為等をしたのみで早々に退散している。これらの事情を総合すると,上記一連の暴行の時点において,金品を奪うつもりではなかったとする被告人の供述はあながち不合理とはいえず,その信用性を排斥することはできない。したがって,被告人が判示第6の一連の暴行を被害者に加えた際,被告人に金品を強奪する目的があったと認めるには合理的疑いが残り,専ら逮捕を免れる目的で上記暴行を加えたと認めるのが相当である。2
現金等の持ち去り行為についていかなる犯罪が成立するかについて上記一連の暴行と,その後現金等を持ち去った行為は,時間的・場所的に連続している上,被告人の当初の金品窃取の目的をも踏まえて,被害者宅における一連の行動を総合的に観察すれば,被告人は,被害者に気づかれたことから物色行為を一時中断したものの,上記暴行を加えた結果,被害者が気絶したことから,これを認識し,かつ,これを利用して,上記物色行為を再開したと評価することができる。再開された物色行為は,上記暴行後に生じた新たな犯意に基づくものではなく,暴行前の物色行為と実質的には一体をなすものとみるべきである。そうすると,現金等を持ち去った行為について,(事後)強盗致傷罪から独立して窃盗罪が成立するとみることは相当ではなく,全体として(事後)強盗致傷罪一罪が成立するというべきである。
3
結論
以上によれば,被告人には,全体として事後強盗致傷罪一罪が成立するとの予備的訴因

を認定するのが相当である。

(法令の適用)
1罰条
〔判示1ないし5の各事実について省略〕


判示第6の事実について
住居侵入の点

刑法130条前段

強盗致傷の点

刑法240条前段

〔以下省略〕
(量刑の理由)
1
本件事案全体の概要とそれに関する事情
本件は,金属盗ないし侵入盗の事案5件(①ないし⑤事件)と,住居侵入・事後強盗致傷の事案(⑥事件)である。被告人は,少なくとも1年以上にわたり,複数回の金属盗や80回以上の空き巣などの犯行を繰り返していたと供述するが,本件各犯行は,いずれもその一環として行われたもので,常習的な犯行というべきである。しかも,①ないし④事件は共犯者と行ったものであるが,その後,被告人単独で⑤事件に及び,その数日後には,被害者にけがを負わせる⑥事件にまで及んでおり,被告人の行動はエスカレートしている。

2
⑥事件に関する事情
被告人は,被害者方に侵入した時点では,人に暴力を加えてまで金品を奪う意図はなく,被害者に気づかれるという予期せぬ事態が生じたため暴行に及んだものであって,本件は事後強盗致傷の事案である。もっとも,その暴行態様をみると,被告人は,明らかに体力差がある被害者に対し,その頭部付近を狙って複数回殴ったり,その身体を多数回踏みつけたりしている。被害者が数時間もの間意識を失っていたことからも明らかなように,被告人による暴行態様は非常に危険なものであった。
被害者は,重篤なものとまではいえないものの,入院を要するけがを負っている。最も安心できるはずの自宅において本件被害に遭い,負傷した上,財産を奪われた被害者が,被告人に対し厳罰を求めるのも当然である。これらの事情によれば,本件は,強盗致傷罪の中で軽い部類に属するものであるとはいえず,むしろ,やや重い部類に属するといえ,それ以外の事件を措いても,酌量減軽すべき事案とはいえない。
3
①ないし⑤事件に関する事情
①ないし⑤事件の各犯行は,上記のとおり常習的なものである上,ユニック,ドライバーを用いて窓ガラスを割って鍵を外した上で
家屋に侵入するなどという手慣れた手口による職業的なものである。被害品の一部は還付され,一部被害の弁償もされているものの,各犯行による被害総額は約165万円にものぼっている。


①ないし④事件において,被告人は見張り役等の重要な役割を果たしたものの,共犯者らの指示に従っていたもので,分け前を受け取っていない事件もあることからも明らかなように,共犯者間での立場は,従属的なものにとどまっていた。



これらの事情によれば

①な

いし⑤事件の各犯行における被告人の責任は,窃盗事案の中でも相当に重い部類に属するというべきである。
4
更生可能性等犯行そのもの以外の事情
被告人は,捜査段階の当初から一貫して自らの罪を認め,公判においても本件各犯行について正直に供述している。また,各事件の被害者らに対し,謝罪文を送付したほか,公判においても謝罪の気持ちを述べるなどしており,反省の態度が認められる。


建設業を営む被告人の友人が出廷し,被告人を雇用し,住居についても手配して,被告人を公私にわたって監督する旨述べている。



被告人も,本件の共犯者との関係を断ち,上記友人の監督を受けながら真面目に働き,
犯罪とは無縁の生活を送る旨述べている。
これを実行するためには,
被告人自身の確固たる自覚と努力が必要ではあるが,更生に向けた意欲の現れと評価することができる。



もっとも,被告人には10年以上前のものとはいえ,2件の服役前科がありながら,その前科に係る共犯者らとともに,再び犯罪に手を染めるに至り,途中でやめる機会があったにもかかわらず,本件各犯行に及んだものであって,法を守る意識は希薄であるというべきである。

5
結論
そこで,上記1ないし3で述べた①ないし⑥事件の犯行そのものに関する事情に加え,上記4の犯行そのもの以外の事情をも併せ考慮し,被告人を懲役8年の刑に処するのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。

(求刑

懲役10年)
平成25年9月19日
岐阜地方裁判所刑事部

裁判長裁判官

大西直樹
裁判官

小嶋順

裁判官

松田康孝
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