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消費税更正処分等取消請求事件
事件番号平成23(行ウ)718
事件名消費税更正処分等取消請求事件
裁判年月日平成27年3月26日
法廷名東京地方裁判所
判示事項旅行業法に基づく旅行業等を目的とする日本法人が,外国法人の主催する訪日旅行ツアーについて,当該外国法人に対し,訪日旅行客の国内における飲食場所,宿泊先,交通手段等を確保し,これらを組み合わせて提供する取引が消費税法7条1項により消費税が免税される取引に当たらないとされた事例
裁判要旨旅行業法に基づく旅行業等を目的とする日本法人が,外国法人の主催する訪日旅行ツアーについて,当該外国法人に対し,訪日旅行客の国内における飲食場所,宿泊先,交通手段等を確保し,これらを組み合わせて提供する取引は,日本法人が当該外国法人に対し「訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務を提供するものであると解するのが相当であるとした上で,同取引は,消費税法7条1項1号又は同項5号,消費税法施行令17条2項6号により消費税が免除される取引に当たらず,また,消費税法施行令17条2項7号ハの非居住者に対して行われる役務の提供で,国内に所在する資産に係る運送又は保管及び国内における飲食又は宿泊に準ずるもので,国内において直接便益を享受するものに該当するから,消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号により消費税が免除される取引にも当たらないとした事例
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平成27年3月26日判決言渡
平成23年(行ウ)第718号

消費税更正処分等取消請求事件

主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成19年1月1日から同年3月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額5658万4548円を下回る部分及び還付地方消費税額1414万6137円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
2
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成19年4月1日から同年6月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額5187万9076円を下回る部分及び還付地方消費税額1296万9769円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
3
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成19年7月1日から同年9月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額6537万3904円を下回る部分及び還付地方消費税額1634万3476円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
4
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成19年10月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額6130万8026円を下回る部分及び還付地方消費税額1532万7006円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
5
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成20年1月1日から同年3月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額6736万8671円を下回る部分及び還付地方消費税額1684万2167円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。6
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成20年4月1日から同年6月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額5507万4586円を下回る部分及び還付地方消費税額1376万8646円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
7
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成20年7月1日から同年9月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額4832万3129円を下回る部分及び還付地方消費税額1208万0782円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
8
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成20年10月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額2988万9895円を下回る部分及び還付地方消費税額747万2473円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
9
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成21年1月1日から同年3月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額2651万8713円を下回る部分及び還付地方消費税額662万9678円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成21年4月1日から同年6月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額2303万8475円を下回る部分及び還付地方消費税額575万9618円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
処分行政庁が平成22年4月28日付けで原告に対してした平成21年7月1日から同年9月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額3432万5278円を下回る部分及び還付地方消費税額858万1319円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。
第2

事案の概要
本件は,旅行業法に基づく旅行業等を目的とする日本法人である原告が,外国法人であるA,inc.(以下「A社」という。)の主催する訪日旅行ツアー(以下「本件訪日ツアー」という。また,本件訪日ツアーに参加する外国人旅行客を「本件訪日旅行客」という。)についてA社との間で行っている取引(以下「本件取引」という。)が消費税法7条1項により消費税が免税される取引に当たるとして(以下,消費税法7条1項により消費税が免除される取引を広く「輸出免税取引」という。),平成19年1月1日から同年3月31日までの課税期間(以下「平成19年3月期」といい,同様に本件において係争の対象とされている原告の3箇月ごとの課税期間を,順に「平成19年6月期」,「平成19年9月期」,「平成19年12月期」,「平成20年3月期」,「平成20年6月期」,「平成20年9月期」,「平成20年12月期」,「平成21年3月期」,「平成21年6月期」及び「平成21年9月期」という。)から平成21年9月期までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下,併せて「消費税等」という。)につき,本件取引に基づいてA社から受領した対価の額を課税標準額に算入せずに確定申告をしたところ,処分行政庁から,本件取引が輸出免税取引に該当せず,本件取引の対価の一部が消費税の課税標準額に算入されるとして,平成22年4月28日付けで各更正(以下「本件各更正処分」という。また,平成19年3月期の更正を「平成19年3月期更正処分」といい,他の課税期間についても同様とする。)及び各過少申告加算税賦課決定(以下「本件各賦課決定処分」という。また,平成19年3月期の過少申告加算税賦課決定を「平成19年3月期賦課決定処分」といい,他の課税期間についても同様とする。)を受けたため,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分が違法であるとして,本件各更正処分のうち還付金額が確定申告額を下回る部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
1
関係法令の定め
本件の関係法令の定めは,別紙1のとおりである。
2
前提事実(証拠等の掲記がないものは当事者間に争いがない。)
(1)当事者等

原告は,本邦において,平成17年9月1日に旅行業法に基づく旅行業,観光ガイド業などを目的として設立された法人であり,A社の海外子会社の一つである。A社は,原告の株式の70%を保有している。
原告は,平成17年10月20日,消費税法19条1項4号に基づき,処分行政庁に対し,課税期間を3箇月ごとの期間に短縮する消費税課税期間特例選択届出書を提出している。(甲35,乙12,13)


A社は,大韓民国(以下「韓国」という。)において旅行業を営む本邦内に主たる事務所を有しない非居住者たる外国法人である。A社は,韓国及び英国において上場をし,世界各地において企画旅行を主催しており,世界に8の海外子会社と20の連絡事務所,海外子会社の支店又は総販売代理店を有しているが,本邦内には,支店,出張所その他の事務所を有していない。
韓国の法令である観光振興法は,旅行業を経営する者が国外旅行をしようとする旅行者のために旅行の目的地,日程,旅行者が提供を受ける運送又は宿泊等のサービス内容及びその料金等に関する事項をあらかじめ定めてそれに参加する旅行者を募集して実施する旅行を「企画旅行」とし(同法2条3号),同法4条1項に基づき旅行業の登録をした者が,韓国の法令である文化体育観光部令で定める要件を備えて,同令で定めるところにより企画旅行を実施することができるところ(同法12条),A社は,同法4条1項に基づく登録をしている。(甲8,35,38,40)
(2)本件取引
原告は,本件取引において,A社に対し,本件訪日旅行客の国内における飲食場所,宿泊先,交通手段等を確保し,これらを組み合わせて提供している。
(3)本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に至る経緯等

原告は,別表1のとおり,法定申告期限までに,処分行政庁に対し,本件各課税期間の消費税等の確定申告をした。原告は,本件取引は輸出免税取引に該当し,本件取引に基づいてA社から受領した対価は輸出免税取引に係る対価であるとして,当該対価の額を課税標準額に算入せず,一方,原告が本件訪日ツアーにおける国内での飲食,宿泊,運送等についてレストラン,ホテル,バスや電車等の各種サービス提供機関に対して支払う利用料金を課税仕入れ(消費税法2条1項12号)に係る支払対価の額に算入した。


処分行政庁は,平成22年4月28日付けで,原告に対し,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした。なお,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分には理由が付記されていないが,処分行政庁は,同日,消費税等が課されることにより所得金額が減算されたこと等を理由としてした原告の法人税の更正処分において,本件訪日ツアーにおける国内での飲食,宿泊,運送等の役務の提供は国内において直接便益を享受するものであることから,消費税法施行令17条2項7号により輸出免税取引に該当せず,国内において行う課税資産の譲渡等に該当することから課税売上げとすべきものであるとしており,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の理由も同様であった。(甲5,弁論の全趣旨)


原告は,平成22年6月23日,東京国税局長に対し,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分について異議申立てをしたところ,東京国税局長は,同年9月15日付けで,異議申立てを棄却する旨の決定をした。棄却の理由は,本件訪日ツアーにおける国内での飲食,宿泊,運送等の役務の提供は,原告がこれらの役務の提供を受けると同時にA社に対して(A社は非居住者である本件訪日旅行客に対して)これを提供したものと認めることが相当であり,原告からA社に対する本件訪日ツアーにおける国内での飲食,宿泊,運送等の役務の提供は,非居住者に対して行われる役務の提供で国内における飲食又は宿泊及びこれらに準ずるもので国内において直接便益を享受するものに該当すると認められ,本件取引のうち国内における飲食,宿泊,運送等の役務の提供は輸出免税取引に該当せず,国内において行う課税資産の譲渡等,すなわち,課税取引に該当するというものであった。(甲6)

原告は,平成22年10月15日,国税不服審判所長に対し,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分について審査請求をした。
原告は,審査請求において,東京国税局長に対し,①食,宿泊,運送等の役務の提供を行う主体は誰か,②
国内における飲
国内における飲食,

宿泊,運送等の役務の提供を受ける対象は誰か,③
国内における飲食,

宿泊,運送等の役務の提供の具体的内容は何か,④
本件取引が消費税法

施行令17条2項7号イないしハのいずれに該当するか等の釈明を求めたところ,東京国税局長は,①

国内における飲食,宿泊,運送等の役務の

提供を行う主体は,消費税法7条1項,消費税法施行令17条2項7号の適用上,原告である,②

国内における飲食,宿泊,運送等の役務の提供

を受ける対象は,消費税法7条1項,消費税法施行令17条2項7号の適用上,A社である,③

国内における飲食,宿泊,運送等の役務の提供と

は,飲食,宿泊,旅客運送又は催し物への入場等の役務の提供を受けることである,④

宿泊又は飲食については同号ロに該当し,旅客運送又は催

し物への入場等については同号ハに該当する旨回答した。
国税不服審判所長は,平成23年6月14日付けで,審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲7,8,25)
オ3
原告は,平成23年12月12日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)
被告の主張する本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の適法性の根拠被告が本件訴訟において主張する本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の適法性の根拠は,別紙2のとおりである。
被告は,被告が本件訴訟において主張する原告の本件各課税期間の納付すべき消費税等の合計額は,本件各更正処分における納付すべき消費税等の額を上回るから,本件各更正処分はいずれも適法であり,被告が本件訴訟において主張する原告の過少申告加算税の各金額は,本件各賦課決定処分における過少申告加算税の各金額と同額であるから,本件各賦課決定処分はいずれも適法であると主張している。
4
争点及び争点に関する当事者の主張の要旨
本件の争点は,①

本件取引が消費税法7条1項1号に該当するか否か(消

費税法7条1項1号該当性),②

本件取引が消費税法7条1項5号,消費税

法施行令(平成23年政令第198号による改正前のもの。以下同じ。)17条2項6号に該当するか否か(消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項6号該当性),③

本件取引が消費税法7条1項5号,消費税法施行令1

7条2項7号に該当するか否か(消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号該当性),④

理由の差替えの可否である。争点に関する当事者の

主張の要旨は,以下のとおりである。
(1)消費税法7条1項1号該当性(争点(1))

原告

(ア)a

消費税法7条1項1号の「本邦からの輸出として行われる資産の
譲渡」における「資産の譲渡」とは,「事業として対価を得て行われる資産の譲渡」(同法2条1項8号)である。「資産」とは,棚卸資産,固定資産等の有形資産から商標権,特許権等の無形資産まで,およそ取引の対象となる全ての資産を含む広い概念であり,
「資産の譲渡」とは,資産の同一性を維持しつつ,それを他人に移転することであるとされている。


本件取引は,原告があらかじめ一定数かつ一定条件で各種サービ
ス提供機関から飲食,宿泊,運送等の役務の提供を受ける権利(以下「サービス利用権」という。)を確保し,市場の動向を踏まえた自らの企画によってこれらを組み合わせて組成された旅行パッケージ商品(以下「本件旅行パッケージ商品」という。)をA社に販売するというものであり,旅行者が韓国内の旅行代理店から購入する本件訪日ツアーの詳細が決定してからA社の依頼を受けて各種サービス提供機関との交渉を始めるというものではない。
したがって,本件取引は,売買契約としての性質を有するものである。
原告がA社との間で作成した業務提携契約書(以下「本件業務提
携契約書」という。),業務提携付属約定書(以下「本件業務提携付属約定書」という。),原告が各種サービス提供機関との間で作成した契約書ないし覚書(以下「本件契約書等」という。)の各文言と現実の具体的な取引には多くの異なる部分がある。また,税務調査における原告代表者及び原告の次長の答述を記載したとする平成21年7月23日付け調査報告書(以下「本件調査報告書」という。)は,原告代表者及び原告の次長の答述内容を正確に記載していない。

以上に基づき消費税法7条1項1号の該当性を検討すると,まず,本件旅行パッケージ商品は,無形資産であるサービス利用権を組み合わせて一体として組成された商品であるから「資産」に該当する。そして,本件取引は,かかる「資産」をその同一性を保持しつつA社に販売,移転しているから,本件取引は「資産の譲渡」に該当する。なお,「資産の譲渡」に該当することは,原告が各種サービス提供機関との間で固定料金を定めている場合があり,本件取引において売上総損益の段階で赤字となるリスクを負担していることからも明らかである。
さらに,A社は,国内に支店,出張所その他の事務所を有してい
ないため,A社に対する本件旅行パッケージ商品の販売は「本邦からの輸出として行われる」といえる。

以上のとおり,本件取引はA社に対する本件旅行パッケージ商品
の販売であり,「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡」に当たり,消費税法7条1項1号に該当する。

(イ)消費税法施行規則5条1項1号は「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」のうち輸出の許可を受ける貨物の場合について定めたものであるから,本件取引に係る輸出免税取引の証明については,同号は適用されず,同項4号が適用される。
そして,同号は,当該資産の譲渡等を行った相手方との契約書その他の書類で,①当該資産の譲渡等を行った事業者の氏名又は名称及び当該事業者のその取引に係る住所等(当該資産の譲渡等が消費税法施行令6条2項6号に掲げる役務の提供である場合には,同号に定める場所を含む。)(イ),②当該資産の譲渡等を行った年月日(ロ),③当該資産の譲渡等に係る資産又は役務の提供の内容(ハ),④当該資産の譲渡等の対価の額(ニ)並びに⑤当該資産の譲渡等の相手方の氏名又は名称及び当該相手方のその取引に係る住所等(ホ)が記載されているものが必要であるとしているところ,原告は,取引の相手方であるA社の住所等を始め,譲渡年月日,本件旅行パッケージ商品やサービス利用権の内容,対価の額等が記載された書類を事務所に保存しており,同号の要件を充たしている。

被告

(ア)a

原告が譲渡したと主張する本件旅行パッケージ商品については,
そもそもサービス利用権の内容が曖昧である上,各種サービス提供機関が原告に対してサービス利用権を設定ないし譲渡したとは認められず,また,原告がA社に本件旅行パッケージ商品という無形資産を譲渡したとも認められない。

消費税法7条1項1号の「輸出」とは,貨物を外国に仕向けられ
た船舶又は航空機に積み込むことをいい,船舶又は航空機への積込みという貨物の物理的な移転行為を捉えた概念であるから,同号の「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」とは,資産を譲渡し又は貸し付ける取引のうち,当該資産を外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引渡しが行われるものをいうと解するのが相当である。しかるに,原告が,本件取引において主張する「資産」である本件旅行パッケージ商品とは,無形資産であるサービス利用権を組み合わせて一体として組成された商品であり,無形のものであるというのであるから,上記の「外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引渡しが行われるもの」に当たらず,本件取引は,原告の主張を前提としても,消費税法7条1項1号の輸出免税取引に該当しない。


以上によれば,本件取引は「本邦からの輸出として行われる資産
の譲渡」に当たらず,消費税法7条1項1号に該当しない。

(イ)消費税法7条2項は,当該課税資産の譲渡等が同条1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることについて,財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には,同項の規定を適用しない旨定めているところ,消費税法施行規則5条1項1号は,消費税法7条1項1号の「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡」に該当する輸出免税取引として輸出免税を受けるためには,当該資産の輸出に関する税関長証明書類を整理し,当該課税資産の譲渡等を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間,これを納税地又はその取引に係る事務所等に保存することによって,当該資産の譲渡等が同号に定める輸出免税取引に該当することを証明しなければならず,また,税関長証明書類には消費税法施行規則5条1項1号イないしニに定められた事項(当該資産を輸出した事業者の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は事務所等の所在地(イ),当該資産の輸出の年月日(ロ),当該資産の品名並びに品名ごとの数量及び価額(ハ),当該資産の仕向地(ニ))が記載されていることを要する旨定めている。原告は,本件訴訟において,本件取引が輸出免税取引に該当すると主張しており,同号にのっとり,輸出免税取引に該当することが証明されたものであることを明らかにすべきであるところ,これを明らかにしていないから,消費税法7条1項を適用するための手続的要件も備わっていない。
なお,仮に,原告の主張のとおり本件取引に係る輸出免税取引の証明に消費税法施行規則5条1項4号が適用されると解しても,原告が当該資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容が記載された書面を保存しているとは認められない。
(2)消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項6号該当性(争点(2))ア
原告

(ア)a

環境省及び経済産業省は,京都議定書に基づく二酸化炭素等の温
室効果ガスの排出削減の約束を達成するために,温室効果ガスの排出実績量に相当する量以上のクレジット(温室効果ガスの排出削減量(枠)として,システム上1t単位の識別番号で表示されるもの)を保有する必要があり,クレジットが電子的に管理され,政府間あるいは事業者間で取引が行われていることから,クレジットに資産性があるものと考え,また,クレジットが非居住者に対して譲渡された場合には,当該クレジットが消費税法施行令6条1項5号に掲げる資産に準ずるものとして,同施行令17条2項6号が適用され,輸出免税取引に該当するものと解し,これらに対する回答を国税庁に求めたところ,国税庁の回答は当該解釈に異を唱えず,クレジットの取引が輸出免税取引に該当するものと判断しているものである。b
そうすると,国税庁は,消費税法施行令6条1項4号ないし7号
が当該条文に掲げられた資産にとどまらず,当該資産以外の各種権利を含む無体財産権を指すと解したものと考えられ,この立場からすると,原告がA社に譲渡した各種サービス利用権で構成される本件旅行パッケージ商品についても,同項4号ないし7号に掲げる資産に準ずるものに該当することとなる。


したがって,本件取引は消費税法7条1項5号,消費税法施行令
17条2項6号に該当する。

(イ)本件取引が消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項6号に該当するとすると,本件取引に係る輸出免税取引の証明には消費税法施行規則5条1項4号が適用されることとなるところ,原告は,取引の相手方であるA社の住所等を始め,譲渡年月日,本件旅行パッケージ商品やサービス利用権の内容,対価の額等が記載された書類を事務所に保存しており,同号の要件を充たしている。

被告

(ア)a

原告の指摘する国税庁の回答は,一定の事実関係の下で,クレジ
ットが消費税法施行令6条1項5号に掲げる特許権等の特定の資産に準ずるものとして,クレジットの取引が輸出免税取引に該当し得ることを認めた事例にすぎず,一般論として,同項4号ないし7号に掲げられた資産以外の無形資産が広くこれらに掲げる資産に準ずるものであることを明らかにしたものではない。

原告のいうサービス利用権や各種サービス利用権で構成される本
件旅行パッケージ商品という概念は,そもそもいかなる内容の権利ないし資産であるか,また,そのような権利ないし資産が取引の対象として認識されているのか否かさえ明らかではなく,このようなサービス利用権やサービス利用権で構成される本件旅行パッケージ商品は,クレジットのように法律上の利益又は地位としての実体を有し,取引するための基本的な法的基盤が整備されたものと同列に論じることができないのは明らかである。


以上によれば,本件取引は,消費税法7条1項5号,消費税法施
行令17条2項6号に該当しない。

(イ)前記のとおり,サービス利用権という権利ないし資産がいかなる内容の権利ないし資産であるのか,また,そのような権利ないし資産が取引の対象として認識されているのか否かすら明らかではないから,少なくとも,当該資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(消費税法施行規則5条1項4号ハ)が記載された書類を保存しているとは認められず,同号の証明がされたと認めることはできない。
(3)消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号該当性(争点(3))ア
原告

(ア)a

消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号を併せて
読むと,事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち,非居住者に対して行われる役務の提供で,国内における飲食又は宿泊及びこれらに準ずるもので国内において直接便益を享受するもの以外のものは,輸出免税取引に該当する。これを文理解釈すれば,「役務の提供」は,「事業者」が「非居住者」に対して行ったものでなければならない。
したがって,事業者以外の者が行った役務の提供若しくは非居住
者以外の者が受けた役務の提供は,同号における「役務の提供」には含まれない。

そして,「役務の提供」とは,課税物件となる国内取引(消費税
法4条1項)である役務の提供をいい,「非居住者」とは,課税物件となる国内取引である役務の提供を国内において受けることとなる相手方をいう。


このように解すると,仮に本件取引について「役務の提供」と解
する余地があるとしても,それは事業者である原告から非居住者であるA社に対して行われる国内において行う各種サービス提供機関の手配及び本件旅行パッケージ商品の企画又は製作という役務の提供と解されるが,かかる役務の提供は消費税法施行令17条2項7号ロ及びハに規定するところの「国内における飲食又は宿泊」及び「国内において直接便益を享受するもの」には当たらない。
したがって,本件取引のうち各種サービス提供機関の手配及び本
件旅行パッケージ商品の企画又は製作という役務の提供は,消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号イないしハに当たらないため,本件取引は,消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号に規定されるところの輸出免税取引に該当する。

(イ)本件取引が消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号に該当するとして,本件取引は,消費税法施行規則5条1項4号の要件を充たしている。

被告

(ア)a

消費税は,付加価値税としての性質を有する租税であり,原則と
して全ての物品とサービスの消費に広く薄く課税することをその目的,性質とするものであり,消費税法施行令17条2項7号は,このような消費税の目的,性質から,非居住者に対して行われる役務の提供であっても,同号イないしハのように役務の提供によってもたらされる便益が国内において直接享受(消費)され,その役務の提供が国境をまたがずに国内において完結するようなものについては,輸出免税取引の対象とならないことを規定したものである。本件取引は,次のbないしdの構成により同号ロ又はハに該当する。b
原告は,本件取引において,国内における飲食,宿泊,運送等を
本件訪日旅行客に提供する役割を担っており,各種サービス提供機関との取引関係を用いることにより,本件訪日旅行客に対して,国内における飲食,宿泊,運送等の役務の提供を行い,これによって本件訪日旅行客は,国内において,レストラン等で飲食し,ホテル等で宿泊し,バスや電車等によって運送され,その他の各種サービス提供機関からこれら以外の役務の提供を受けてその便益を享受するものである。
これらの役務の提供と消費税法施行令17条2項7号イないしハ
に掲げる役務の提供の内容を照らし合わせると,本件取引については,同号イの「国内に所在する資産に係る運送又は保管」に該当するものはなく,本件訪日旅行客に対するこれらの役務の提供のうち,飲食及び宿泊の提供は,同号ロの「国内における飲食又は宿泊」に該当する。
また,バスや電車等による旅客の運送等の役務の提供については,同号ロの「国内における飲食又は宿泊」には当てはまらないものの,「国内における飲食又は宿泊」のように本件訪日旅行客が国内において通常利用し,消費するものであるから,「国内における飲食又は宿泊」に準ずるものといえ,国内においてその便益を直接享受するものでもある。したがって,バスや電車等による旅客の運送等の役務の提供は,同号ハに掲げる役務の提供に該当する。
以上のとおり,原告の本件訪日旅行客に対する役務の提供は,消
費税法施行令17条2項7号ロ及びハに該当する。

また,原告は,A社から,本件取引により,A社が本件訪日旅行
客に対して実現すべき各種サービスのうち国内での飲食,宿泊,運送等の提供を実現する依頼を受け,A社からその対価を得るという取引を行っているものであり,原告は,A社に対し,「本件訪日旅行客に対して国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務の提供を行うものである。そして,A社は,原告が本件訪日旅行客に対して飲食,宿泊,運送等の役務を提供することによって自らが主催する本件訪日ツアーにおける国内の行程を実行,実現することができることとなるから,A社は,原告による「本件訪日旅行客に対して国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務の提供によってもたらされる便益を国内で直接享受するものである。
この場合,「非居住者」はA社であり,原告は,A社に対し,
「本件訪日旅行客に対して国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務の提供を行っているところ,原告がA社に対して提供するこの役務は,本件訪日旅行客に対する国内における飲食,宿泊,運送等の役務の提供と等しく重なる。すなわち,原告は,本件訪日旅行客に対して国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供することによって,A社に対する役務の提供を行っているのであり,原告のA社に対する役務の提供は,その内容を個々に見れば,本件訪日旅行客に対する「国内における飲食又は宿泊」といった役務の提供や,本件訪日旅行客に対する国内における運送や各種サービス提供機関から受ける各種の役務の提供,すなわち国内における飲食又は宿泊に準ずるもので,国内において直接便益を享受する役務の提供と,性質上等しく重なる。
したがって,原告のA社に対する役務の提供の性質,内容を踏ま
えれば,原告は,「非居住者」であるA社に対して,「国内における飲食又は宿泊」及びこれに「準ずるもので,国内において直接便益を享受するもの」という本件訪日旅行客に対する役務の提供と等しく重なる役務の提供を行っているから,原告のA社に対する役務の提供もまた,「国内における飲食又は宿泊」(消費税法施行令17条2項7号ロ)及びこれに「準ずるもので,国内において直接便益を享受するもの」(同号ハ)に該当すると評価することができる。d
さらに,消費税法施行令17条2項7号が「国内に所在する資産
に係る運送又は保管」,「国内における飲食又は宿泊」及びこれらに「準ずるもので,国内において直接便益を享受するもの」を輸出免税取引から除外しているのは,これらが国境をまたがない,正に国内において消費されるサービスであり,輸出と捉え得るものではないという点にあることに加え,消費税が事業者から消費者に提供される物品,サービスの消費全体に広く薄く税負担を求める租税であることにも照らすと,同号ハにいう「(イ及びロに)準ずるもので,国内において直接便益を享受するもの」の範囲を殊更に限定的に解釈することは相当でなく,本件のように,本件取引により,A社に対し,「本件訪日旅行客に対して国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務を提供することも同号ハの
「(イ及びロに)準ずるもの」に含まれると解すべきである。
以上によれば,原告のA社に対する役務の提供は,仮に同号ロに
いう「国内における飲食又は宿泊」自体ではないと評価されるとしても,同号ハにいう「イ及びロに準ずるもので,国内において直接便益を享受するもの」に当たるというべきである。

したがって,原告の役務の提供は,消費税法施行令17条2項7
号ロ及びハあるいは同号ハのみに該当する。

(イ)原告は,消費税法施行規則5条1項4号にのっとって,本件取引が輸出免税取引に該当することが証明されたものであることを明らかにすべきであるところ,原告がこれを明らかにしているとはいえないから,消費税法7条1項を適用するための手続的要件が備わっているとも認め難い。
(4)理由の差替えの可否(争点(4))

原告

(ア)一般に,行政処分に理由の付記が求められるのは,処分行政庁の判断の慎重さ及び合理性を担保してその恣意を抑制する(処分適正化機能)とともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える(争点明確化機能)ことにある。したがって,理由の差替えを自由に認めることは,不服申立て段階において原告が争う機会を失わせるものといわざるを得ず,原告の手続的権利に格別の支障を生じさせることとなるから許されないというべきである。
(イ)本件各更正処分は消費税に係るものであるため,法人税及び所得税の青色申告に対する更正処分(法人税法130条2項,所得税法155条2項)に求められているような理由の付記は法定されていないが,平成22年4月28日付けでされた本件各更正処分に係る法人税更正処分において,原告は,日本に支店等を持たない非居住者であるA社が主催する本件訪日ツアーに係る国内における行程の企画,手配を行い,国内における旅行サービスをパッケージ商品としてA社に提供し,A社から受ける当該サービスの対価を本件各課税期間の消費税の計算において輸出免税売上げとしているところ,当該役務の提供のうち国内における飲食,宿泊,運送等の役務の提供については国内において直接便益を享受するものであることから消費税法施行令17条2項7号により輸出免税取引に該当せず,国内において行う課税資産の譲渡等に該当することから課税売上げとすべきものであるとの更正の理由が付記されていたところである。
また,原告は,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分についての異議申立てをしているところ,東京国税局長は,異議申立てに理由がないとしてこれを棄却する旨の決定をしている。このような決定においては,異議申立てに理由がないとする根拠として付記されている当該決定の理由の内容が当該処分の理由の内容を示すものである。そうすると,処分行政庁が本件各更正処分の理由としているものは,当該決定の理由である,原告が行う役務の提供の相手方である非居住者はA社であり,その非居住者に対する役務の提供の内容は,原告が自ら役務の提供を行うもの以外のものについては,各種サービス提供機関が本件訪日旅行客に対して行うというものである。したがって,被告,処分行政庁ないし異議審理庁である東京国税局長はその後の審査請求及び取消訴訟においてもかかる理由によって処分の適法性を主張すべきである。
この点,東京国税局長は,審査請求において,原告が行う役務の提供の相手方である非居住者はA社であるとする主張は維持したものの,役務の提供の内容については,A社が原告から国内における飲食,宿泊,運送等のサービスを受けていたとする主張に変更している。しかしながら,理由の付記が法定されていない処分について,当該処分に対する異議申立てに理由がないとしてこれを棄却する旨の決定に理由が付記されて当該処分が維持され,これを不服として審査請求が行われる場合に,その審理中に,当該処分行政庁ないし異議審理庁は,弁明書などをもって,決定に付記されている理由に新たな理由を追加し又はこれを別異の理由として差し替えることは許されないものというべきである。
さらに,被告は,本件訴訟において,これまで原告が役務の提供を行っていた非居住者はA社であると主張していたにもかかわらず,一転して,国内の飲食,宿泊,運送等の役務は本件訪日旅行客に対して提供されたものであるなどとその主張内容を変更している。しかしながら,取消訴訟の審理中に,被告ないし処分行政庁が既に明示している処分の理由に新たな理由を追加し又はこれを別異の理由と差し替えることは,それまでその被告ないし処分行政庁が明示している処分の理由を争ってきた原告をないがしろにする被告ないし処分行政庁の行為であるといわなければならない。とりわけ,異議申立て,審査請求に対する決定,裁決が前置されている取消訴訟の審理中に,被告ないし処分行政庁が既に明示している処分の理由に新たな理由を追加し又はこれを別異の理由と差し替えることは,原告が異議申立て,審査請求,取消訴訟と引き続いて被告ないし処分行政庁が明示する処分の理由を争ってきた経緯を突然に無きものとするに等しい行為であって,それは,とりもなおさず,被告ないし処分行政庁が争いの対象となっているこれまでの自らが明示する処分の理由を無にするものであり,処分についてはもとより,決定,裁決についても,実質的にはその決定,裁決の理由が付記されていなかったことと同じである。ましてや,原告は,東京国税局長に対し,審査請求において,課税要件に係る重要な事実に対する釈明をし,東京国税局長はこれを明らかにしたものであって,それにもかかわらず,本件訴訟においてその重要な事実に関する主張のほとんどを変更することは,原告を不利益な状況に置くものであり,原告の手続的権利に格別の支障を生じさせることとなる。
(ウ)以上のとおり,本件訴訟における被告ないし処分行政庁の理由の差替えによる主張は,原告の手続的権利に格別の支障を生じさせることとなるから,許されない。

被告

(ア)被告ないし処分行政庁は,本件取引が消費税法施行令17条2項7号の規定に基づき輸出免税取引とならないことを本件各更正処分の理由として一貫して主張しているものであり,本件訴訟における被告の主張は,原告の手続的権利に格別の支障を生じさせることとなる理由の差替えには該当しない。
(イ)課税処分の取消訴訟における訴訟物は,処分の主体,内容,手続及び方式等全ての面における違法,すなわち,処分の違法性一般であるとされている。この場合,課税処分の同一性の捉え方によって,訴訟物の範囲は異なってくるが,判例は,課税処分の同一性を,それによって確定される税額の同一性によって捉えるという総額主義を採ることを明らかにしている。
この総額主義によれば,課税処分によって確定された税額が,総額において租税実体法によって客観的に定まっている税額を超えていなければ,当該課税処分は適法である。そのため,課税処分の取消訴訟における審理の範囲は,課税処分によって確定された税額が総額において処分時に客観的に存した税額を上回るか否かを判断するに必要な事項の全部に及び,処分理由は単なる攻撃防御の方法にすぎないから,民事訴訟法156条及び157条によって主張が制限される場合があることは別として,被告ないし処分行政庁は,処分時の処分理由とは異なる理由を主張することができる。
そして,本件各更正処分は消費税等に係る更正処分であり,消費税法上,理由の付記は法定されていないところ,判例は,処分の正当性を維持する理由として,更正の段階において考慮されなかった事実を新たに主張することも許されると解するのが相当と判示している。
したがって,本件訴訟における被告ないし処分行政庁の主張が仮に理由の差替えに該当するとしても,被告ないし処分行政庁は,上記のとおり,本件各更正処分に係る処分時の処分理由と異なる理由を主張することができ,本件各更正処分の段階において考慮されなかった事実を新たに主張することも許されるのであるから,その主張が制限される理由はない。
第3
1
当裁判所の判断
消費税法7条所定の輸出免税取引該当性についての主張立証責任
消費税法7条1項は,事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち,同項各号に掲げるものに該当するものについては消費税を免除することとして,同項各号に輸出免税取引となる取引類型を列挙しているところ,同法は,課税資産の譲渡等の対価の額を消費税の課税標準と定めており(同法28条1項本文),課税資産の譲渡等があれば,その対価については原則として消費税が課税され,それが免除されることが例外であること,同法7条1項各号所定の輸出免税取引に該当すれば,当該取引に係る課税資産の譲渡等の対価については消費税が免除され,納税者がその利益を享受するものであることからすれば,輸出免税取引該当性が問題となっている更正の取消訴訟において,納税者が行った取引が輸出免税取引に該当することについては,納税者である原告が主張立証責任を負担するものと解するのが相当である。

2
本件取引の性質及び内容
本件の各争点は,本件取引が輸出免税取引に該当するか否かに関連しているところ,これらを判断する前提として,まず本件取引の性質及び内容を検討する。
(1)認定事実
掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

本件取引の流れ
原告とA社との間の本件取引の流れは,概要,以下のとおりであった。(ア)原告は,A社との間で,本件業務提携契約書及び本件業務提携付属約定書を作成するとともに,各種サービス提供機関との間で,本件契約書等を作成した。(甲20,29の1・2,30,乙14ないし16,21ないし23)
(イ)原告は,本件契約書等を前提に,その時点での市場の動向に合わせ,飲食場所,宿泊先,交通手段等を組み合わせたプランを新たに企画し,又は既にあるプランの一部を変更したプランを企画した上で,あらかじめ各種サービス提供機関に主に電話で連絡をして,企画したプランの日程のサービスを確保しておいた。そして,原告は,A社に対し,A社との間で構築されたイントラネット上のメール等を利用して,企画したプランを提案した。A社は,場合によっては,この提案に対して,韓国の市場の動向等の情報提供をすることがあり,原告は,このような提供された情報をプランに反映させた。原告は,プランが完成するまで,各種サービス提供機関に連絡を取りつつ,プランに合った飲食場所,宿泊先,交通手段等を選定して組み合わせていた。
プラン完成の段階で,原告と各種サービス提供機関との間で,日時,受入れ人数等が確定することになるが,この確定は,個別契約書を作成するという方法ではなく,メール,FAX又は電話などによる方法により行われていた。
A社は,プランが完成すると,完成したプランに飛行機による運送サービス及びA社所属の従業員のツアーガイドを組み合わせて本件訪日ツアーを組成して,本件訪日ツアーの内容が掲載されたパンフレット等を作成し,旅行代理店を通して顧客に対して交付したり,インターネット上に掲載したりして,本件訪日旅行客を募集し,申込みのあった人数をイントラネット上で順次更新していた。原告は,イントラネット上に掲載されている申込み人数を確認し,各種サービス提供機関に対して,人数の調整等を行っていた。
原告は,日程,地域,ホテル,食事,交通手段等が具体的に確定した後,韓国出国日の1ないし3週間前頃までに,A社に対し,手配確定書を交付した。
また,原告は,本件訪日ツアーの催行日の遅くとも前営業日までに,A社に対し,指示書を交付した。(甲9ないし12,53,乙16,18,19,弁論の全趣旨)
(ウ)本件訪日ツアーは,A社のツアーガイドが引率した。
なお,A社は,韓国のB株式会社C支社(以下「B」という。)との間で,旅行保険包括契約を締結していた。同旅行保険の保険契約者はA社,被保険者はA社があっせん,主催して通知する旅行者であり,本件訪日旅行客も被保険者であった。A社は,Bに通知した本件訪日旅行客について,本件訪日ツアーの催行中の事故により保険金支給の事由が発生したときは,診断書,医療機関の診療関連書類,保険金請求書及びその他の必要な書類をBに提出し,Bは,支給保険金額が決定されれば直ちに保険金を支払うという約定となっていた。(甲13の1・2,17,18,弁論の全趣旨)

本件業務提携契約書の内容
原告は,2007年(平成19年)10月31日付けで,A社との間で,本件取引に関する本件業務提携契約書(以下,本件業務提携契約書に基づく業務提携契約を「本件業務提携契約」という。)を作成した。本件業務提携契約書の内容は,要旨次のとおりである。(乙14)

(ア)本件業務提携契約は,原告とA社が相互間に業務提携を通して,顧客に事前に約束された日程及び条件について現地サービスを充実させ正確に提供することにより,顧客の満足を創出し,原告とA社の共同発展と相互利益を図ることを目的とする(1条)。
(イ)A社は,韓国内の旅行ホールセラーとして,企画旅行商品について韓国全域の代理店での代行販売を通して旅行客を募集し,日本に送客する(3条1項)。
(ウ)A社は,日本への送客のため,必要な全てのマーケティング及び販売業務を遂行する(3条2項)。
(エ)A社は,現地での円滑なランドサービスのため,旅客情報(旅客数,ルームタイプ等)を誠実に告知する義務がある(3条3項)。
(オ)原告は,「自体的に」企画,製作した旅行商品をA社に販売してサービスを提供する(4条1項)。
(カ)原告は,A社との行事条件と契約内容を誠実に履行する義務がある(4条2項)。
(キ)原告は,国内での商品提供サービスの開始前に手配確定書を発行してA社に告知し,商品提供の進行中に起きた問題についても,A社に告知すると同時に,問題解決のためA社と協力して最善を尽くし,過失がある場合は責任を負い,損害について補償する(4条3項)。
(ク)原告は,相互の円滑な業務協力のため,A社のイントラネットに基盤を置いたインターネットを必ず設置する(5条1項)。
(ケ)具体的な事項及び団体別行事費,その他行事関連内容は本件業務提携付属約定書に従う(5条2項)。
(コ)A社は,原告に対し,両社間で協議した商品代金を両者間で協議した通貨で支払う(6条1項)。
(サ)商品代金の決済は,原則的に,行事終了後,A社が原告に送金する(6条2項)。

本件業務提携付属約定書の内容
原告は,2007年(平成19年)10月31日付けで,A社との間で,本件業務提携付属約定書を作成した。本件業務提携付属約定書の内容は,要旨次のとおりである。(乙15)
(ア)原告は,A社のイントラネット上の当該商品日程を徹底的に確認し,日程の変更がある場合は,即時,A社に告知して確定日程表に反映するようにし,これを履行しない場合に生じる問題について責任を負う(1条2項)。
(イ)A社と原告の各旅行商品代金及びその他の地上費は,A社の担当部署と協議後進行する(2条1項)。
(ウ)原告は,A社からの予約要請を受けてから24時間以内に,A社に予約進行状況を通知する(3条1項)。
(エ)その他の手配業務進行手順は,A社の各部署と協議し進行する(3条2項)。
(オ)原告は,上記(ウ)及び(エ)の手配業務進行による現地地上サービスの確定により,①

出発及び到着の航空便及び時刻,観光地等,詳し

い日程等が明記された確定日程表,②
件,③

ショッピング,④

ホテル,食事,車両等の行事条

オプション,⑤

INVOICEを内容と

する手配確定書を団体出発の20日以前までにA社に提出することを原則とする(4条)。
(カ)原告は,顧客からショッピングに関する苦情が発生した場合には,行事進行中又は行事終了後,苦情処理に万全を尽くす(5条1項)。(キ)A社は,顧客の購買した物品について一切責任がなく,原告が現地ショッピングの全ての責任を持つ(5条2項)。
(ク)原告は,現地で進行される全ての旅行日程において発生する事故により顧客に発生した被害を賠償する保険に加入する(6条1項)。
(ケ)原告は,予想することができなかった不意の事故(天災地変,戦争,暴動,窃盗及び交通事故)により顧客が被害を受けた場合,直ちにそれに適切な救急対処案を設け,施行し,A社にその事実を告知し,A社の要請事項に最善を尽くし,履行し,顧客の安全のためにその被害を極小化するよう全ての措置をとる(6条2項)。

本件契約書等の内容
原告は,以下のとおり,株式会社D(以下「D」という。),E株式会社(以下「E」という。),F株式会社(以下「F」という。),G株式会社(以下「G」という。),有限会社H(以下「H」という。)並びにI株式会社が経営するJ及びKとの間で,本件契約書等を作成した。
(ア)原告は,平成18年7月1日付けでDとの間で,覚書を作成した。その要旨は次のとおりである。(甲29の2)

原告は,原告の主催する旅行団体の輸送のためにDの買上げバスを使用する(1条)。


運賃の精算はDが毎月10日毎に締め,運賃を集計して原告に請求し,原告は,翌月25日までに手数料10%を差し引いた残額の合計をDの指定銀行に振り込む(3条)。


1日当たりの運賃は,1年を通じて5万5650円(税込み)と
し,1箇月の最低保障は29日間(ただし2月は28日間)とする(4条い)。

(イ)原告は,平成19年4月1日付けでEとの間で,覚書を作成した。その要旨は次のとおりである。(乙23)

原告とEは,原告が実施するツアーの旅客が,Eが経営する施設を利用することについて覚書を締結する(前文)。


Eは,原告の旅客を,自らの施設である観光船,レストラン,ホテルにおいて受け入れる(2条(1))。


Eの施設において原告が利用する際の運賃及び料金は,事前に取り決めた金額を適用する(2条(2))。


天候,交通機関の途絶等,当日のやむを得ない状況により原告の旅客がEの施設に来店することができなかった場合のキャンセル料の負担は,双方で協議する(5条)。

原告は,Eに対し,覚書締結後,事前に50万円をデポジットとしてEの指定した金融機関の口座に入金する(6条)。


Eは,原告の利用代金を,10日ごとにまとめて原告に確認する
(7条1項)。


Eは,原告の利用代金を,原告との確認後,前記eのデポジットにより相殺する。Eは,原告の利用代金が当該時点におけるデポジット額を超過することが予想される場合,原告に対し,不足金額を請求する(7条2項)。

(ウ)原告は,平成19年5月1日付けでFとの間で,旅客あっせん契約書を作成した。その要旨は次のとおりである。(乙21)

Fは,原告に対し,旅客のあっせんを依頼し,原告は,旅客の求めに応じてFにあっせんする(1(1))。


Fは,原告のあっせんする旅客に対し,品質の維持向上及び接遇サービスの向上に努める(1(2))。


適用団体は,原告が主催する北海道企画団体又は原告が手配する旅客である(3)。


Fが経営する施設14店舗における昼食に係る取扱販売手数料は15%とするが,「L」については13%とする(5)。


原告は,前払金として所定の金額をFに送金し,Fは,不足金が発生しないように管理をし,残金額が少なくなったら,原告に連絡をして送金してもらう(6)。


原告は,送客人員の確認のためバウチャー又は団体食事利用確認書を作成し,Fに発行して,相互に確認を行う(7)。


Fは,各種損害賠償責任保険に加入し,事故に備えなければならない。Fは,旅客が事故に遭遇したときは,賠償しなければならない(9)。

原告は,予約が取り消された場合,所定の違約金を支払う(1
1)。

(エ)原告は,平成19年5月1日付けでGとの間で,契約書を作成した。その要旨は次のとおりである。(甲20)

原告は,商品,企画販売する旅客の輸送をGに委託し,Gは,これを受託し,Gが所有する貸切り専用バスで輸送する(1条)。


借上げ金額は,1台当たり,1年間1050万円とし,ただし,これには,乗務員宿泊料等の附帯料金は含まないものとする(5条1項)。


支払方法は,毎月末締めの翌5日とし,87万5000円を支払う(5条3項)。


チャーター以外のバス料金は,大型1日3万6000円,中型1日3万4000円,小型1日3万2000円とする(8条)。

(オ)原告は,平成19年7月11日付けでHとの間で,契約書を作成した。その要旨は次のとおりである。(甲29の1)

原告は,商品,企画販売する旅客の輸送をHに委託し,Hは,これを受託し,Hが所有する貸切り専用バスをもって輸送する(1条1項)。


チャーター契約による借上げ金額は,ハイデッカー1台当たり1年間1300万円×2台=2600万円とし,スーパーハイデッカー1台当たり1年間1300万円×2台=2600万円とする(5条1項)。


チャーターバスの借上げ金の支払方法は,平成19年8月31日,同年11月30日,平成20年2月29日及び同年5月31日に各1000万円,同年7月31日に1200万円とする(5条4項)。d
チャーター以外のバス料金は,大型バス4万2000円,マイクロバス3万円,新車指定とバスがとれずにやむを得ずに新車になった場合の大型バス4万5000円,マイクロバス3万5000円とする(8条)。

(カ)原告は,平成20年3月11日付けでJとの間で,覚書を作成した。その要旨は次のとおりである。(甲30)

Jは,原告の送客する外国人旅行客について,客室買取分及びルームブロック(ルームブロックとは,ホテル側が一定の部屋数について,ほかの予約を入れずに部屋を確保しておくことをいう。)分に分けて所定の料金で受け入れる。客室買取分は,ツインルーム1室当たり8040円で1日10室であり,ルームブロック分は,客室タイプ別に1泊当たりの利用料金を定めている(2条)。


原告は,客室買取分と客室買取分以外とに分けて,料金を所定の期限までにJの指定する銀行口座に入金する(5条)。

(キ)原告は,平成20年6月4日付けでKとの間で,覚書を作成した。その要旨は次のとおりである。(乙22)

原告とKは,Kへの送客について覚書を締結する(前文)。


Kは,原告が送客する外国人旅行客について,一人当たり,1泊2食付8000円(サービス料込み,税金別)で受け入れる。ただし,土曜日及び特定日の利用は9000円(サービス料込み,税金別)とし,お盆及び年末年始の特別シーズンは1万2000円(サービス料込み,税金別)とする(2条(1))。


Kは,原告に対し,利用料金の14%の送客手数料を支払う(3
条)。


Kは,原告に対し,原則として,5箇月前に1日当たり30ルームブロックを提供する(5条(1))。

原告のKへのルームブロックの解除(キャンセル)は5日前を自動手仕舞いとする。それ以後の解除についてはキャンセル料が発生する(5条(3))。


原告は,Kに対し,ツアー催行の有無を,出発日の14日前までに通知する(5条(4))。


Kは,利用代金をツアーごとにまとめて原告に請求し,原告は,1週間以内に,利用代金をKの指定する口座に入金する(6条)。


原告は,Kに対し,事前に100万円のデポジット(預り金)を送金し,原告が上記gの支払を怠った場合,Kは,原告のデポジットにより相殺する(7条)。


原告がA社に対して交付していた手配確定書等の内容

(ア)原告がA社に対して交付していた手配確定書には,手配確定書を交付する時点における本件訪日ツアーの日程(出発及び到着の航空便,時刻,観光地等),行事条件(食事の内容,宿泊機関名及び用いる交通手段)等の本件訪日ツアーの概要が具体的に記載されていた。(乙18)(イ)原告がA社に対して交付していた指示書には,A社が設定するツアーコード,本件訪日ツアーにおける原告からA社に対する請求金額のほか,参加者数,行程,飲食施設,飲食内容,宿泊機関,交通機関,注意事項等の本件訪日ツアーの詳細な内容が具体的に記載されていた。また,原告の電話番号と原告の担当者の携帯電話番号も記載されていた。(乙19,原告代表者)

A社のイントラネット上のウェブページの内容
A社のイントラネット上のウェブページには,行程,所要時間,観光内容,飲料の提供,宿泊機関等の本件訪日ツアーの詳細な内容が具体的に掲載されていた。また,現地緊急連絡先として原告の代表電話番号が掲載されていた。(乙20,原告代表者)

各種サービス機関が作成した残高表等の内容
各種サービス提供機関が作成した残高表等には,次のような表記がある。

(ア)Fが作成した残高表においては,Fが原告から支払を受けるべき金額について「利用金額」とされている。(甲21)
(イ)Kが作成した請求書においては,Kが原告から支払を受けるべき金額について,「ご利用代金」あるいは「ご宿泊代」とされている。添付の利用明細書においても,請求の項目について,「ご宿泊代」とされている。(甲22)
(ウ)Eが作成した請求確認表においては,Eが原告から支払を受けるべき金額について,「乗船代」あるいは「お食事代」とされている。(甲24)
(エ)Jが作成した請求書においては,Jが原告から支払を受けるべき金額について,「宿泊代」とされている。(甲32の1,33の1,34の1)

本件取引に係る原告の経理処理

(ア)原告は,本件取引に係る会計について,会計ソフトである○に入力して,次のとおり,管理及び処理をしていた。(乙16,17,25)a
原告は,本件訪日ツアー毎にツアーコードを設定し,本件取引に係るA社に対する売上げは,仕訳日記帳において摘要欄にツアーコードを記載して本件訪日ツアー毎に,その出発日を基準として,本件訪日ツアーに係るA社に対する請求額をもって,売上計上をしていた。

原告は,本件取引に係る仕入れも,仕入高の仕訳日記帳において摘要欄にツアーコードを記載して本件訪日ツアー毎に管理し,さらに,本件訪日ツアーの行程において原告が本件契約書等に基づいて各種サービス提供機関に対して支払う金額が,相手先ごとに,補助科目として相手先名及び名目(「入場料」,「ホテル」等)を付した上で計上されていた。

原告の本件取引に係る損益表は,本件訪日ツアー毎に,原告がA社に対して請求する金額(売上金として○に計上している金額と同額)と,原告が本件契約書等に基づいて各種サービス提供機関に対して支払う金額の合計額(仕入高として○に計上している金額と同額)とを対応させて,損益額が計算されていた。


原告は,仕訳日記帳において,仕入高について消費税区分の入力を個別に行っており,当該仕入高が消費税の課税対象であるか課税対象外であるかを区別し,当該仕入高に含まれる消費税等相当額等が入力されていた。

(イ)本件訪日ツアーの行程中,ツアーガイドが支払をする際には,原告名で領収書を受領することとされていた。(乙19)

税務調査における原告代表者及び原告の次長の答述
本件調査報告書によれば,原告代表者及び原告の次長は,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に係る税務調査において,次のとおり答述していた。(乙16)

(ア)原告は,A社が企画主催する本件訪日ツアーについて,国内のレストラン,ホテル,バス等の手配をして,ユニット商品としてA社に販売するビジネスを行っている。
(イ)原告は,A社が本件訪日旅行客と旅行契約を締結するA社の主催する本件訪日ツアーについて,国内分を企画して本件旅行パッケージ商品としてA社に提案し,販売している。航空券は,A社が航空会社等から仕入れている。
(ウ)原告は,A社との間で,本件業務提携契約書及び本件業務提携付属約定書を作成している。本件業務提携契約書における自体的に企画し提案するとは,原告が,本件訪日ツアーの国内分の企画,製作を行い,A社に提案する,すなわち,原告が各種サービス提供機関との間で,送客契約の締結に係る本件契約書等を作成するなどして,本件旅行パッケージ商品を企画,開発して提案し,A社に本件訪日ツアーの募集を行ってもらっているということである。
(エ)A社への販売価格は,原告が,食事代,ホテル代等のコストを積み上げた金額に原告の利益分を乗せてA社に対して提案し,最終的にはA社との話合いで決定する。原告は,A社に積算書類等を提出しておらず,原告の利益分をA社に示すことはない。決定した販売価格は,原告が指示書に記載してA社へ送付する。
(オ)上記(エ)の指示書とは,原告において,本件訪日ツアーのうち催行が決定したものについて,出発日までに,一人当たりの単価,人数,合計金額を記載してA社へ送付するものであり,A社は,指示書を受領することにより原告からの請求金額を確認する。また,指示書には,本件訪日ツアーの日程等が記載されているので,A社のツアーガイドに交付され,本件訪日ツアーの実施マニュアルとしても使用されている。(カ)本件取引に係る売上げは,原告の主力業務に係る売上げであり,本件訪日ツアーごとに損益を出して集計している。原告は,本件取引に係る売上計上及び仕入計上の基準日を本件訪日ツアーの出発日としているが,A社に対する請求書は,数箇月分まとめて一括で提出している。コ
韓国の法令及びA社の「顧客不満処理指針及び手順」

(ア)韓国の民法によれば,旅行契約は,旅行給付を内容とする旅行業者と旅行者との間の契約であり,旅行業者が飲食,宿泊,運送の提供,名勝地,遺跡,博物館等の探訪,観光案内,出入国手続等を含む包括的な行為である包括的な旅行給付を提供し,その給付に対して旅行者が包括代金を支払うことを内容とする契約である。旅行業者は,旅行契約に基づき,旅行者が宿泊,運送,観光等のサービスの提供を受けられるように一切の旅行計画を企画,主催して,これを実施し,旅行者は,その対価である旅行代金を支払うこととなる。
また,旅行業者は,瑕疵のない完全な旅行を履行する義務を負い,旅行給付に瑕疵があるときは,その帰責事由を問わず,その瑕疵に対する担保責任を負うこととなり,さらに,旅行契約上の付随義務として旅行者の生命,身体,財産等の安全を確保するために,旅行の目的地,旅行日程等に関してあらかじめ十分に調査,検討して,専門業者としての合理的な判断を行い,旅行中に発生するおそれのある危険に対して合理的な対策をとる信義則上の義務を負うものと解釈されている。(甲39,41)
(イ)観光振興法は,観光事業者は,当該事業に関連し事故が発生した場合又は観光客に損害が発生した場合には,文化体育観光部令で定めるところにより,被害者に保険金を支給することを内容とする保険又は共済に加入する等しなければならないと規定している(9条)。(甲38)(ウ)A社は,2002年(平成14年)4月1日,「顧客不満処理指針及び手順」(以下「本件指針等」という。)を作成し,A社の企画する商品及びサービスを提供するに当たっての顧客に対するA社の法律及び約定上の責任を規定し,顧客に対する信頼の維持と回復のための最低限の指針を定めているところ,これによれば,顧客の不満は,出発前は営業部,行事中は営業部及び担当手配チーム,帰国後は顧客満足部が対処することとされており,現地行事中の日程変更には顧客の同意が必要であり,観光地の抜け落ちは禁止されるとし,確定日程表に明示された宿泊先等が変更された場合等は,顧客に対して補償することなどが明示されている。(甲42)
(2)検討

原告とA社との関係について

(ア)前記認定事実によれば,本件業務提携契約書において,①
本件業務

提携契約は,顧客に事前に約束された日程及び条件について現地サービスを充実させ正確に提供することにより,顧客の満足を創出し,原告とA社の共同発展と相互利益を図ることを目的とするとされ,②
A社

は,韓国内の旅行ホールセラーとして旅行客を募集して日本に送客し,日本への送客のため,必要なマーケティング及び販売業務を遂行し,現地での円滑なランドサービスのため,旅客情報を正確に告知する義務があるとされ,③

原告は,「自体的に」企画,製作した旅行商品をA社

に販売してサービスを提供し,A社との行事条件と契約内容を誠実に履行する義務があり,商品提供の進行中に起きた問題についても,A社に告知すると同時に,問題解決のためA社と協力して最善を尽くし,過失がある場合は責任を負い,損害について補償するとされ,④
商品代金

の決済は,原則的に,行事終了後,A社が原告に送金するとされていた(前記(1)イ)。
(イ)また,前記認定事実によれば,本件業務提携付属約定書において,①原告は,A社のイントラネット上の当該商品日程を徹底的に確認し,日程の変更がある場合は,即時A社に告知して確定日程表に反映するようにし,これを履行しない場合に生じる問題について責任を負うとされ,②

原告は,手配確定書を事前にA社に提出することを原則とするとさ
れ,③

A社は,顧客の購買した物品について一切責任がなく,原告が

現地ショッピングの全ての責任を持つとされ,④

原告は,現地で進行

される全ての旅行日程において発生する事故により顧客に発生した被害を賠償する保険に加入し,また,予想することができなかった不意の事故により顧客が被害を受けた場合,直ちにそれに適切な救急対処案を設け,施行し,A社にその事実を告知し,A社の要請事項に最善を尽くし,履行し,顧客の安全のためにその被害を極小化するよう全ての措置をとるとされていた(前記(1)ウ)。
(ウ)さらに,前記認定事実によれば,①

原告がA社に対して交付してい

る手配確定書には,手配確定書を送付する時点における本件訪日ツアーの日程,行事条件等の本件訪日ツアーの概要が具体的に記載されており,②

原告がA社に対して交付している指示書には,A社が設定するツア
ーコード,本件訪日ツアーにおける原告からA社に対する請求金額のほか,参加者数,行程,飲食施設,飲食内容,宿泊機関,交通機関及び注意事項など,本件訪日ツアーの詳細な内容が具体的に記載されている上,原告の電話番号と原告の担当者の携帯電話番号も記載されており,③A社のイントラネット上のウェブページには,本件訪日ツアーの現地緊急連絡先として原告の代表電話番号が掲載されていた(前記(1)オ,カ)。
(エ)以上の点に鑑みれば,原告とA社との関係は,A社が,本件訪日ツアーを主催し,本件訪日旅行客を募集して,本件訪日旅行客を日本に送客し,各種サービス提供機関による本件訪日旅行客に対する役務の提供に必要な情報を提供する役割を担い,一方,原告は,本件訪日ツアーのうち,国内の旅程部分の日程,本件訪日旅行客が受けることができる飲食,宿泊,運送等の役務の内容,A社が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を作成し,国内における飲食,宿泊,運送等の役務を確保し,本件訪日旅行客に対して確実に提供する役割を担い,さらに,原告が本件訪日旅行客に対して国内における飲食,宿泊,運送等の役務を確保し,提供した対価として,役務の提供の完了後である行事終了後に代金の支払を受けるものであると認められる。
そして,上記認定は,おおむね本件取引に係る原告の経理処理(前記(1)ク)や税務調査における原告代表者及び原告の次長の答述(前記(1)ケ)とも矛盾しないものである。

原告と各種サービス提供機関との関係について

(ア)前記認定事実によれば,原告とFとの間の旅客あっせん契約書においては,①

原告は,Fに対し,旅客をあっせんし,Fは,原告のあっせ

んする旅客に対し,サービスの向上等に努めるとされ,②
Fは,原告

に対し,原告のあっせんした旅客がFが経営する施設で昼食を取った場合には,一定の率の販売手数料を負担するとされ,③
原告は,前払金

として所定の金額をFに送金し,Fは,残金額が少なくなったら,原告に送金を依頼するとされ,④

原告は,予約が取り消された場合には,

一定の違約金を支払うとされていた(前記(1)エ(ウ))。
また,原告とKとの間の覚書においては,①
についての覚書であるとされ,②

同覚書は,Kへの送客

Kは,原告が送客する外国人旅行客

について,一定の料金で受け入れるとされ,③
定の旅客手数料を支払うとされ,④

Kは,原告に対し,一

一定の日以降の解除について,原

告のKに対する一定のキャンセル料が発生し,原告は,Kに対し,ツアー催行の有無を前もって通知するとされ,⑤

Kは,原告に対し,利用

代金を請求し,原告は,利用代金をKの指定する口座に入金するとされ,⑥

原告は,Kに対し,事前にデポジットを送金するとされていた

(前記(1)エ(キ))。
そして,原告とEとの間の覚書においても,①

同覚書は,原告が実

施するツアーの旅客が,Eが経営する施設を利用することについての覚書であるとされ,②

Eは,原告の旅客をEの施設において受け入れ,

Eの施設において原告が利用する際の運賃及び料金は,事前に取り決めた金額を適用するとされ,③

当日のやむを得ない状況により原告の旅

客がEの施設に来店することができなかった場合のキャンセル料の負担は,双方で協議を行うとされ,④
とされ,⑤

原告は,Eにデポジットを入金する

Eは,原告の利用代金を,原告との確認後,デポジットに

より相殺するとされていた(前記(1)エ(イ))。
(イ)前記認定事実によれば,原告が他の各種サービス提供機関との間で作成した本件契約書等もおおむね同様の内容となっていた(前記(1)エ(ア),(エ),(オ),(カ))。
(ウ)さらに,前記認定事実によれば,①

Fが作成した残高表において

は,Fが原告から支払を受けるべき金額について,「利用金額」とされ,②

Kが作成した請求書においては,Kが原告から支払を受けるべ

き金額について,「ご利用代金」あるいは「ご宿泊代」とされ,添付の利用明細書も,請求の項目について,「ご宿泊代」とされ,③
Eが作

成した請求確認表においては,Eが原告から支払を受けるべき金額について,「乗船代」あるいは「お食事代」とされ,④
Jが作成した請求

書においては,Jが原告から支払を受けるべき金額について,「宿泊代」とされていた(前記(1)キ)。
(エ)以上の点に鑑みれば,原告と各種サービス提供機関との関係は,各種サービス提供機関が,原告があっせんないし送客する本件訪日旅行客に対して飲食,宿泊,運送等の国内における役務を提供し,原告は,当該サービスの提供に係る対価を,自ら負担すべきものとして各種サービス提供機関に支払うものであると認められる。
そして,上記認定は,おおむね本件取引に係る原告の経理処理(前記(1)ク)や税務調査における原告代表者及び原告の次長の答述(前記(1)ケ)とも矛盾しないものである。

小括
以上の原告とA社との関係及び原告と各サービス提供機関との関係を総合すれば,原告は,本件訪日ツアーのうち,国内の旅程部分の日程,本件訪日旅行客が受けることができる飲食,宿泊,運送等の役務の内容,A社が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を作成し,自己の計算において,各種サービス提供機関との間で,本件訪日旅行客に提供するために必要と見込まれる役務の提供に係る契約を締結していたものであり,原告は,A社から,行事終了後に,各種サービス提供機関により本件訪日旅行客に対して飲食,宿泊,運送等の役務を提供したことの対価を受けているものである(旅行業法2条1項1号及び2号参照)。
そうであるとすれば,本件取引は,原告が,A社に対し,「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務を提供するものであると解するのが相当である。

本件業務提携契約書等の信用性
原告は,本件業務提携契約書,本件業務提携付属約定書,本件契約書等の各文言と現実の具体的な取引には多くの異なる部分があるとか,本件調査報告書は,原告代表者等の答述内容を正確に記載していないなどと主張する。
しかしながら,本件業務提携契約書,本件業務提携付属約定書及び本件契約書等は,特段の事情のない限り,原告とA社あるいは原告と各種サービス提供機関との間で合意した内容を反映したものと推認するのが相当である。仮に,現実の取引内容について実情と異なる部分があれば,通常であれば改定が行われるはずであるところ,本件全証拠によっても,このような改定が行われた事実は認められない。なお,原告以外の他の会社とA社の契約書の体裁が,本件業務提携契約書や本件業務提携付属約定書と異なっているとしても(甲62参照),そのこと自体は,本件取引の内容が本件業務提携契約書や本件業務提携付属約定書と異なることを裏付けるものではない。
本件調査報告書についてみても,その記載に誤りがあるとか,本件答述自体に誤解があったといったことをうかがわせるような具体的な事情は何ら存しない。
したがって,原告の主張は採用することができない。
(3)本件取引が本件旅行パッケージ商品の販売であるとの原告の主張についてア
原告は,本件取引は,原告があらかじめ一定数かつ一定条件で各種サービス提供機関から飲食,宿泊,運送等のサービス利用権を確保し,A社に対し,無形資産であるサービス利用権を組み合わせて組成された本件旅行パッケージ商品を販売するものである旨主張する。


しかしながら,原告の主張するサービス利用権の具体的内容は,本件業務提携契約書や本件業務提携付属約定書,更には手配確定書や指示書によっても不明であるし,本件契約書等においても,サービス利用権について何ら記載がないものである(前記(1)イないしオ)。なにより,サービス利用権やこれを組み合わせて組成された本件旅行パッケージ商品といった概念自体,極めて曖昧なものであるというほかない。
また,前記認定事実によれば,原告は,本件訪日ツアーの催行中にも様々な義務を負っており,これらの義務は,各種サービス提供機関による役務の提供の手配ミス等の,単に本件旅行パッケージ商品そのものから発生する瑕疵に基づく義務にとどまるものではない(前記(1)イ(カ),(キ),ウ(カ)ないし(ケ))。
前記認定事実によれば,原告が各種サービス提供機関との間で固定料金を定めていることが認められるが(前記(1)エ(ア),(エ)ないし(カ)),そのこと自体は,各種サービス提供機関との間の役務の提供の対価の定め方にすぎず,本件取引を役務の提供と考えることと両立するものである。また,原告が本件取引において売上総損益の段階で赤字となるリスクを負担していることも,本件取引の性質及び内容が前記(2)ウのとおりのものであるとすれば,当然,原告はサービス提供機関との交渉の結果,赤字となるリスクを負担しているものといえるのであるから,本件取引が資産の譲渡であることを裏付けるものではない。

さらに,前記認定事実によれば,A社は,韓国の法令や本件指針等により本件訪日旅行客に対し,飲食,宿泊,運送等の役務の提供に関し第一次的な義務ないし責任を負っていると認められるが(前記(1)コ),このことは,原告が何らの責任を負わないことを意味するものとはいえず,原告が第二次的に,あるいはA社と併存的に本件訪日旅行客に対し義務を負うことはあり得るものということができる。


むしろ,本件取引は,前記(2)ウのとおり,原告が,A社に対し,「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務を提供するものと解するべきであり,原告の主張は採用することができない。

3
争点(1)(消費税法7条1項1号該当性)について
(1)消費税法4条1項は,国内において事業者が行った資産の譲渡等には,消費税を課する旨規定し,同法5条1項は,事業者は,国内において行った課税資産の譲渡等につき,消費税を納める義務がある旨規定しているところ,同法2条1項8号は,資産の譲渡等とは,事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定している。
この点,同法7条1項1号は,「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」としていることから,同号に該当するためには,本件取引が「資産の譲渡又は貸付け」である必要がある。
前記2で検討したとおり,本件取引は,原告が,A社に対し,「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務を提供するものであるから,同号の「資産の譲渡又は貸付け」に当たらず,同号の輸出免税取引に該当しない。
(2)ア

原告は,本件取引が消費税法7条1項1号に該当すると主張するところ,本件取引は,無形資産であるサービス利用権を組み合わせて組成された本件旅行パッケージ商品の販売である旨主張する。
そこで,仮に,本件取引が無形資産である本件旅行パッケージ商品の販売であるとして,同号の「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」に当たるか否かを念のため検討することとする。


「輸出」という語は,外国為替及び外国貿易法,輸出貿易管理令,輸出入取引法などの各種法令で用いられており,一般には,貨物を本邦以外の外国に向けて送り出すこと,すなわち,外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことを指すとされている(甲15参照)。関税法では,特に,内国貨物を外国に向けて送り出すことを「輸出」としているが(同法2条1項2号),これは,保税地域からの外国貨物の積戻し(同法75条)と区別するための定義規定であり,内国貨物の「輸出」に限っていえば,上記のような一般的な意義と異なるものではない。消費税法7条1項1号にいう「輸出」も,同法中に特に定義規定が置かれていないことから,上記のような一般的な意義を有する語として用いられているものと解される。
このように「輸出」とは,貨物を外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことをいうのであり,船舶又は航空機への積込みという貨物の物理的な移転行為を捉えた概念であるから,同号にいう「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け」とは,資産を譲渡し又は貸し付ける取引のうち,当該資産を外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引渡しが行われるものをいうと解するのが相当である。

上記のとおり,「輸出」とは,船舶又は航空機への積込みという貨物の物理的な移転行為を捉えた概念であるから,無形資産については「輸出」を観念し得ないというべきである。このことは,無体財産権(鉱業権,特許権,著作権,営業権等)の譲渡又は貸付けで,非居住者に対して行われるものを輸出免税とする旨規定している消費税法施行令17条2項6号が,その規定中に「輸出」という文言を使用していないことからも裏付けられる。
実質的に考えても,無形資産については,本邦から輸出されたかどうかとのメルクマールが極めて曖昧なものである。原告は,A社が国内に支店,出張所その他の事務所を有していないことを捉えて輸出がされたと主張するが,このメルクマール自体極めて間接的なものであって,このメルクマールからは輸出が行われた時期すら特定できないものである。


以上によれば,本件取引の性質及び内容について原告の主張を前提としたとしても,本件取引が消費税法7条1項1号の輸出免税取引に該当すると認めることはできない。

4
争点(2)(消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項6号該当性)(1)本件取引が消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項6号に該当するか否かについて検討するに,同号は,同法7条1項5号の政令で定める資産の譲渡等として,同施行令6条1項4号から7号までに掲げる資産の譲渡又は貸付けで非居住者に対して行われるものを規定しているところ,前記2のとおり,原告は,A社に対し,「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務を提供するものであるから,消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項6号の「資産の譲渡又は貸付け」に当たらない。
したがって,本件取引は,消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項6号の輸出免税取引に該当しない。
(2)また,仮に原告の主張するように,本件取引が無形資産である本件旅行パッケージ商品の販売であるとしても,本件旅行パッケージ商品は,消費税法施行令6条1項4号から7号までに掲げる資産の譲渡には当たらない。すなわち,確かに,原告の主張するように,クレジットが同項5号に掲げる特許権等の特定の資産に準じるものとして,その取引が輸出免税取引に該当し得ることを認めた国税庁の回答はあるものの,この回答は,同項4号から7号までに掲げられた資産以外の無形資産を広く含むことを認めたものと解することはできないし,前記2(3)イでも説示したとおり,原告の主張するサービス利用権及び本件旅行パッケージ商品という概念は極めて曖昧なものといわざるを得ず,クレジットの場合と同様に考えることはできないというべきである。
したがって,仮に本件取引が本件旅行パッケージ商品という無形資産の譲渡であったとしても,消費税法7条1項5号,消費税法17条2項6号の輸出免税取引に該当すると認めることはできない。
5
争点(3)(消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号該当性)(1)本件取引が,消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号に該当するか否かについて検討するに,同号ハは,非居住者に対して行われる役務の提供で,国内に所在する資産に係る運送又は保管及び国内における飲食又は宿泊に準ずるもので,国内において直接便益を享受するものについては,輸出免税取引に該当しない旨規定している。
そして,同号ハが上記のものを輸出免税取引から除外しているのは,これが国境をまたがない,正に国内において消費されるサービスであり,輸出と捉え得るものではないという点にあることに加え,消費税が事業者から消費者に提供される物品,サービスの消費全体に広く薄く税負担を求める租税であることに鑑みると,同号ハの範囲を殊更限定的に解釈するのは相当ではなく,国内に所在する資産に係る運送又は保管及び国内における飲食又は宿泊に類するものであり,かつ,国内において消費されるサービスについて,広く同号ハに該当するというべきである。
この点,消費税法基本通達7-2-16(乙30)は,消費税法施行令17条2項7号において輸出免税の対象となるものから除かれる非居住者に対する役務の提供として,①国内に所在する資産に係る運送や保管,②国内に所在する不動産の管理や修理,③建物の建築請負,④電車,バス,タクシー等による旅客の運送,⑤国内における飲食又は宿泊,⑥理容又は美容,⑦医療又は療養,⑧劇場,映画館等の興行場における観劇等の役務の提供,⑨国内間の電話,郵便又は信書便及び⑩日本語学校等における語学教育等に係る役務の提供を挙げているところ,これらは飽くまでも例示であって,輸出免税の対象となるものから除かれる非居住者に対する役務の提供がこれら又はこれらに類するものに限られるものとはいえない。
(2)前記2(2)ウのとおり,本件取引は,原告が,A社に対し,「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務を提供するものである。
したがって,本件取引は,非居住者であるA社に対して行われる役務の提供である。また,「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食,宿泊,運送等の役務を提供する」という役務は,国内に所在する資産に係る運送又は保管及び国内における飲食又は宿泊に類するものであり,かつ,国内において消費されるサービスであるということができるから,同号ハに該当するというべきである。(3)以上によれば,本件取引は,消費税法7条1項5号,消費税法施行令17条2項7号の輸出免税取引に該当しない。
6
争点(4)(理由の差替えの可否)について
(1)課税処分の取消しの訴えにおける審判の対象は,当該課税処分により課された税額の適否であり,その税額が総額において適正な税額を超えるものでなければ,当該課税処分は適法なものということができること及び本件各更正処分が消費税等に係る更正処分であり,理由の付記が求められない処分であることからすれば,被告ないし処分行政庁は,本件訴訟において,納税者に格別不利益を与える等の特段の事情のない限り,本件各更正処分に係る処分時の処分理由と異なる理由を主張することができ,本件各更正処分の段階において考慮されなかった事実を新たに主張することも許されるものである。
(2)これを本件についてみるに,確かに,被告ないし処分行政庁は,本件取引における役務の提供の相手方や非居住者に対する役務の提供の内容について,その主張を変遷させてはいるが,一貫して,これが「資産の譲渡」ではなく「役務の提供」であるとした上で,消費税法施行令17条2項7号の規定に基づき輸出免税取引とはならない旨主張しているのであって,納税者に格別不利益を与える等の特段の事情も認められない。
(3)したがって,本件において理由の差替えは許されないとする原告の主張は採用することはできない。

7
本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の適法性
(1)以上のとおり,本件取引は,消費税法施行令17条2項7号ハにより輸出免税取引に該当しないから,本件取引の対価の額である本件訪日ツアーに係る原告のA社に対する売上金額(ただし,消費税等の額を除く。)は消費税等の課税標準額に算入すべきこととなり,これにより算出した原告の本件各課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税額は,別紙2の(1)のとおりであると認められ(乙24,弁論の全趣旨),これらの各金額及び各税額は本件各更正処分における原告の本件各課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税額を上回るから,本件各更正処分はいずれも適法である。
(2)また,上記のとおり本件各更正処分は適法であるところ,本件各賦課決定処分において過少申告加算税の対象とした各税額の計算の基礎となった各事実が本件各更正処分前における各税額の計算の基礎とされなかったことについて国税通則法65条4項に規定する正当な理由があると認められるものがあるとは認められないから,原告の本件各課税期間に係る各過少申告加算税の額は,別紙2の(2)のとおりであると認められ,いずれも本件各賦課決定処分における各過少申告加算税の額と同額であるから,本件各賦課決定処分もいずれも適法である。
(3)したがって,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
第4

結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文
のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

増田
裁判官

齊藤充洋
裁判官

佐野義孝稔
別紙1
関係法令の定め

(1)消費税法

消費税法2条1項8号は,同法において,資産の譲渡等とは,事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨規定し,同項9号は,同法において,課税資産の譲渡等とは,資産の譲渡等のうち,同法6条1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定し,同項12号は,同法において,課税仕入れとは,事業者が,事業として他の者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けることをいう旨規定している。


消費税法4条1項は,国内において事業者が行った資産の譲渡等には,消費税を課する旨,同条3項1号は,資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は,資産の譲渡又は貸付けである場合は,当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶,航空機,鉱業権,特許権,著作権,国債証券,株券その他の政令で定めるものである場合には,政令で定める場所)が国内にあるかどうかにより行うものとする旨規定している。


消費税法5条1項は,事業者は,国内において行った課税資産の譲渡等につき,消費税を納める義務がある旨規定している。


消費税法7条1項は,事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち,次に掲げるものに該当するものについては,消費税を免除する旨規定し,同条2項は,同条1項の規定は,その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき,財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には,適用しない旨規定している。

(ア)本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(1号)(イ)外国貨物の譲渡又は貸付け(2号)
(ウ)国内及び国内以外の地域にわたって行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信(3号)
(エ)専ら前号に規定する輸送の用に供される船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け又は修理で政令で定めるもの(4号)
(オ)前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの(5号)

消費税法28条本文は,課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は,課税資産の譲渡等の対価の額とする旨規定している。

(2)消費税法施行令(平成23年政令第198号による改正前のもの。以下同じ。)

消費税法施行令1条2項1号は,同施行令において,居住者とは外国為替及び外国貿易法6条1項5号に規定する居住者をいう旨規定しており,同施行令1条2項2号は,同施行令において,非居住者とは,外国為替及び外国貿易法6条1項6号に規定する非居住者をいう旨規定している。


消費税法施行令6条1項4号ないし7号は,消費税法4条3項1号に規定する政令で定める資産は,鉱業権若しくは租鉱権又は採石権その他土石を採掘し,若しくは採取する権利(4号),特許権,実用新案権,意匠権,商標権,回路配置利用権又は育成者権(これらの権利を利用する権利を含む。)(5号),著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずる権利を含む。)又は特別の技術による生産方式及びこれに準ずるもの(6号)及び営業権又は漁業権若しくは入漁権(7号)とする旨規定している。


消費税法施行令17条2項は,消費税法7条1項5号に規定する政令で定めるものは,同施行令17条2項各号に掲げる資産の譲渡等とする旨規定し,その6号において,同施行令6条1項4号から7号までに掲げる資産の譲渡又は貸付けで非居住者に対して行われるものを,その7号において,同法7条1項3号,同施行令17条1項3号及び同条2項1号から5号に掲げるもののほか,非居住者に対して行われる役務の提供で次のもの以外のものとする旨規定している。
(ア)国内に所在する資産に係る運送又は保管(イ)
(イ)国内における飲食又は宿泊(ロ)
(ウ)イ及びロに掲げるものに準ずるもので,国内において直接便益を享受するもの(ハ)
(3)消費税法施行規則
消費税法施行規則5条1項は,消費税法7条2項に規定する財務省令で定めるところにより証明がされたものは,同条1項に規定する課税資産の譲渡等のうち同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものを行った事業者が,当該課税資産の譲渡等につき,同規則5条1項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める書類又は帳簿を整理し,当該課税資産の譲渡等を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月(清算中の法人について残余財産が確定した場合には1月とする。)を経過した日から7年間,これを納税地又はその取引に係る事務所,事業所その他これらに準ずるもの(以下この項において「事務所等」という。)の所在地に保存することにより証明がされたものとする旨規定し,その1号及び4号において次のとおり規定している。

消費税法7条1項1号に掲げる輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(船舶及び航空機の貸付けを除く。)である場合(次号に掲げる場合を除く。)

当該資産の輸出に係る税関長から交付を受ける輸出の許可(関税法6
7条に規定する輸出の許可をいう。)若しくは積込みの承認(同法23条2項の規定により同項に規定する船舶又は航空機(本邦の船舶又は航空機を除く。)に当該資産を積み込むことについての同項の承認をいう。)があったことを証する書類又は当該資産の輸出の事実を当該税関長が証明した書類で,次に掲げる事項が記載されたもの(1号)
(ア)当該資産を輸出した事業者の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は事務所等の所在地(以下この条において「住所等」という。)(イ)
(イ)当該資産の輸出の年月日(ロ)
(ウ)当該資産の品名並びに品名ごとの数量及び価額(ハ)
(エ)当該資産の仕向地(ニ)

消費税法7条1項各号に掲げる資産の譲渡等のうち,前3号に規定する資産の譲渡等以外の資産の譲渡等である場合

当該資産の譲渡等を行った相手方と

の契約書その他の書類で次に掲げる事項が記載されているもの(4号)(ア)当該資産の譲渡等を行った事業者の氏名又は名称及び当該事業者のその取引に係る住所等(当該資産の譲渡等が消費税法施行令6条2項6号に掲げる役務の提供である場合には,同号に定める場所を含む。)(イ)
(イ)当該資産の譲渡等を行った年月日(ロ)
(ウ)当該資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(ハ)
(エ)当該資産の譲渡等の対価の額(ニ)
(オ)当該資産の譲渡等の相手方の氏名又は名称及び当該相手方のその取引に係る住所等(ホ)
(4)外国為替及び外国貿易法
外国為替及び外国貿易法6条1項5号は,居住者とは,本邦内に住所又は居所を有する自然人及び本邦内に主たる事務所を有する法人をいい,非居住者の本邦内の支店,出張所その他の事務所は,法律上代理権があると否とにかかわらず,その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなす旨規定しており,同項6号は,非居住者とは,居住者以外の自然人及び法人をいう旨規定している。
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