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行政財産使用不許可処分取消等、組合事務所使用不許可処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第78号、同平成25年(行ウ)第80号、同平成26年(行ウ)第65号)
事件番号平成26(行コ)162
事件名行政財産使用不許可処分取消等,組合事務所使用不許可処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第78号,同平成25年(行ウ)第80号,同平成26年(行ウ)第65号)
裁判年月日平成27年6月2日
法廷名大阪高等裁判所
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平成27年6月2日判決言渡
平成26年(行コ)第162号

行政財産使用不許可処分取消等,組合事務所使用

不許可処分取消等請求控訴事件
主文1
原判決を次のとおり変更する。

2
控訴人は,被控訴人P1,同P2,同P3及び同P4に対し,それぞれ50万円及びこれに対する平成24年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
控訴人は,被控訴人P5及び同P6に対し,それぞれ25万円及びこれに対する平成24年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを15分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人らの連帯負担とする。

6
この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。事
第1

実及び理由
控訴の趣旨

1
原判決のうち,控訴人敗訴部分を取り消す。

2
被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

第2
1
事案の概要
本件は,
控訴人の職員が加入する労働組合,
職員団体又はその連合体
(以下,
これらを併せて「労働組合等」という。)である被控訴人らが,控訴人の市長に対し,平成24年度から平成26年度の3回にわたって,市役所の本庁舎内の一部を組合の事務所として利用するため,その目的外使用許可を申請したところ(以下,これらの申請を「本件各申請」という。),いずれも不許可処分を受けたことから,上記各不許可処分は違法であるとして,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償及びこれに対する各不許可処分の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,平成26年度の上記不許可処分について,その取消しを求めた事案である(なお,平成24年度及び平成25年度の上記各不許可処分についての取消請求に係る訴えについては,原審における審理中に許可を求めた使用期間が経過したことから,いずれも取り下げられている。)。
2
原審は,控訴人の市長が行った本件各申請に対する上記各不許可処分は,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものであり,裁量権を逸脱・濫用したものであるから違法であるとして,被控訴人らの国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求及びこれに対する遅延損害金請求をそれぞれ一部認容するとともに,平成26年度の上記不許可処分を取り消したことから,これを不服とする控訴人が,本件各控訴を提起した。

3
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実)
(1)

後記(2)のとおり付加・訂正するほかは,原判決5頁10行目から15頁
14行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。なお,同引用部分中に記載された人証の証拠調べは,いずれも原審において行われたものである。
(2)ア

原判決5頁19行目の「(以下「P5」という。)」を「(以下「被控
訴人P5」という。)」と改める。

原判決5頁22行目の「(以下「P6」という。)」を「(以下「被控訴人P6」という。)」と改める。


原判決5頁25行目から26行目にかけての「上記原告らに加えて」を「上記各被控訴人ら(ただし,被控訴人P5を除く。)に加えて」と改める。


原判決6頁8行目の「別紙物件目録」を「原判決別紙物件目録」と改める。

原判決6頁10行目の「使用していた。」の次に,「なお,被控訴人P4は,従前,大阪市教育委員会の一部の部署とともに,組合事務所を民間のビル内に置いていたところ,上記大阪市教育委員会の一部の部署が市本庁舎に移転した際に,平成18年8月27日に上記民間のビルから組合事務所を移転したものであった。」を加える。


原判決6頁13行目の
「被告との間で」「控訴人

(控訴人の総務局長)
との間で」と改める。


原判決9頁11行目の「甲A35」の次に「,甲A63の4」を加える。

原判決9頁20行目の「甲A6」の次に「,甲A63の5」を加える。

原判決11頁6行目の「平成24年1月20日」の前に,「控訴人の総務局長は,平成24年1月18日付けの「労働組合支部等への便宜供与の取消しについて」と題する文書を労働組合等に交付した。同文書には,本件市長選挙においてP7の支部が勤務時間中に無許可で庁舎内において組合活動を行っていたことが発覚したことから,市長の指示の下,労使関係の適正化を図るため,労使関係の実態調査や労使間ルールの見直しの検討を進めており,これを労使関係適正化条例(仮称)として議会への上程を検討している旨,及び新たな労使間ルールが成立するまでの間,本件事務室部分を含む控訴人の庁舎スペースについての労働組合等(各組合支部)に
対する便宜供与を取り消すこととする旨が記載されていた。」を加える。

原判決11頁16行目の「被告が新たなスペースを必要とするので,」を「平成24年4月の段階で組織改編によって控訴人の事務スペースが必要になることと,控訴人の庁舎内で政治活動が行われることについての疑いを払拭したいとして,」と改める。


原判決11頁18行目の「(乙28,証人P8)」を「(甲A56,乙28,証人P8)」と改める。

原判決11頁20行目の「本件事務室部分について」の次に「,組織改編に伴う新たな行政事務スペースを必要とするため,」を加える。

原判決12頁16行目の末尾に続けて「また,控訴人は,同日,被控訴人らに対し,平成24年度不許可処分の理由について,口頭での説明を行った。この際の控訴人の説明内容は,①

組織改編に伴う新たな行政事務

スペースが必要になり,本件事務室部分は控訴人の事務室として使用することを予定している,②

具体的には,府市再編部門,危機管理室,情報

公開室監察部,協働まちづくり室の事務室が狭隘のために約860㎡の行政事務スペースが不足しており,同スペースの確保と事務室の狭隘化の解消が必要である,③

また,「組織改編に伴う新たな行政事務スペースが

必要になること等」の「等」には,庁舎内における政治活動が行われるおそれを払拭する必要が含まれているというものであった。」を加える。セ
原判決12頁17行目から18行目にかけての「乙33の1ないし5」を「乙15,乙33の1~5,乙45」と改める。


原判決13頁4行目の「D8,」の次に「乙18の2,」を加える。

原判決13頁5行目の「当庁に」を「大阪地方裁判所に」と改める。

原判決13頁16行目の「A46ないし48」を「A46~48」と改める。


原判決14頁9行目の「(甲A34の1,乙10)」を「甲A34の1,乙10,弁論の全趣旨)」と改める。


原判決14頁26行目の「(甲A76の1ないし5)」を「(甲A76の1~5)」と改める。


原判決15頁1行目及び13行目の各「当庁に」を,それぞれ「大阪地方裁判所に」と改める。


原判決15頁12行目の「(甲B9・C9・D11・E8・F6の各1ないし3)」を「(甲B9の1~3,C9の1~3,D11の1~3,E8の1~3,F6の1~3)」と改める。
4
争点
(1)

本件各不許可処分についての市長の判断に,裁量権の逸脱・濫用があり,
違法であったと認められるか否か

平成24年度不許可処分の違法性


平成25年度不許可処分の違法性


平成26年度不許可処分の違法性

(2)
5
被控訴人らに生じた損害の額

争点についての当事者の主張
(1)

争点(1)について
後記イのとおり訂正し,後記ウのとおり当審における補充主張を加えるほかは,原判決15頁17行目から27頁9行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。

イ(ア)

原判決17頁2行目の
「行政事務スペースとして自己使用させる必要

がない」を「行政事務スペースとして控訴人が使用する必要がない」と改める。
(イ)

原判決17頁21行目の「不許可処分を」を「平成24年度不許可
処分を」と改める。
(ウ)

原判決17頁25行目及び18頁2行目の各「上記(ア)①の事実が」
を,それぞれ「上記(ア)①の事情が」と改める。(エ)

原判決17頁26行目から18頁1行目にかけての「不許可処分は」
を「本件各不許可処分は」と改める。
(オ)

原判決18頁9行目の「前提事実(3)」を「前記第2の3で付加・訂
正の上引用した原判決第2の1の前提事実(3)(以下,付加・訂正後の原判決第2の1の前提事実を引用する場合には,単に「前提事実(3)」などのように表記する。)」と改める。
(カ)

原判決21頁6行目から7行目にかけての「同年1月の局議」を「平
成24年1月の局議」と改める。
(キ)

原判決22頁3行目の「上記局議」を「平成24年1月の局議」と
改める。
(ク)

原判決22頁14行目の「前記①」を「前記(ア)①」と改める。
(ケ)

原判決22頁17行目及び22行目の各「前記②」を,それぞれ「前
記(ア)②」と改める。
(コ)
(サ)

原判決24頁3行目の「上記①」を「前記(ア)①」と改める。原判決26頁15行目の「前記②」を「前記(ア)②」と改める。
当審における補充主張

(控訴人の主張)
(ア)

原判決の事実認定の不当性について
原判決は,地方公共団体に任用される職員をもって組織される労働組合等は,その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって,当該地方公共団体の庁舎内をその活動の主要な場とせざるを得ないのが実情であり,その活動の拠点として組合事務所を庁舎内に設置する必要性の大きいことは否定することができないと断じるが,具体的な根拠を欠いている。労働組合等の活動には,当局との交渉のように,庁舎内において行われるものもあるが,庁舎外で行われるものが数多く存在するし,その準備活動(資料の作成や会議等)は,必ずしも庁舎内で行われなければならないわけではない。庁舎外に組合事務所があったとしても,労働組合等の活動に具体的な支障が生じるものではない。


原判決は,労働組合等に対し組合事務所を庁舎内に設置することを継続的に許可してきた場合には,それまでは組合事務所として使用させることが相当なものであったことが推認されると判示するが,本件のように具体的な事情に変更が生じたような場合には,このような考え方を前提とする必要性はない。

原判決は,庁舎の目的外使用を不許可とすることによって,労働組合等の庁舎内での組合活動につき著しい支障が生じることが明らかであると断じているが,具体的にどのような支障が生じるのか,その程度はどれほどのものかといった具体的な内容が一切明らかにされていない。

(イ)

行政財産の目的外使用許可の法的性質等について
行政財産の目的外使用許可の制度が定められた趣旨は,行政財産が,
本来,公益を増進するという行政目的を達成するために用いられるべきものであることから,その利用による行政目的の達成を確保するとともに,他方で,行政財産によっては,本来の用途又は目的外に使用させても,その用途又は目的を妨げないばかりか,場合によっては行政財産自体の効用を高めることもあることから,当該目的以外の使用に供しても本来の使用目的が阻害されない例外的な場合に,当該行政財産の効率的な利用を可能にしようとした点にあると解される。したがって,目的外使用許可に基づく使用関係が,たまたま事実上,長期間継続したとしても,地方自治法上,種々の制約が定められている目的外使用許可の性質が変質するものではない。
また,平成24年度不許可処分は,目的外使用許可の期間の満了を待って行われたものであり,これによって被控訴人らの団結権等が侵害されるという関係にもない。
(ウ)

本件条例の必要性及び合理性について
本件条例は,控訴人において脈々と息づいてきた不適正な労使関係の適正化あるいは正常化を目的とするものである。
控訴人においては,
平成16年から平成17年にかけて,適切に許可を受けていない勤務時間内における組合活動(いわゆる「ヤミ専従」の問題等)など,様々な職員厚遇問題が発生し,控訴人は,職員に対する懲戒処分等を行うほか,労使関係の適正化に向けて,制度改革等の様々な施策を行ってきたが,労使間の不適正な関係は根強く残ったままで,未だ市政の健全化は実現されず,このような不適正な関係が明らかになったことによって,
市民の控訴人に対する信頼も大きく失墜していた。
その後,
さらに,平成23年11月に実施された本件市長選挙に関連して,交通局職員による勤務時間中の組合活動が発覚し,また,平成24年1月27日に開催された市会財政総務委員会においても,交通局所属の職員が組合活動のために繰り返し職場離脱を行っていることが問題として取り上げられたほか,控訴人の調査によって,交通局の庁舎内において目的外使用許可を受けていない便宜供与が行われている事実等が判明した。
そのため,同年1月12日,弁護士,監査法人職員及び公認会計士等からなる第三者調査チームが結成され,調査が行われたが,その結果,ヤミ便宜供与,実質的ヤミ専従,違法・不適切な政治活動,人事介入,
勤務時間内組合活動などの事実があることが判明した(乙22)。また,控訴人は,市政のあり方について職員等からの意見を受け付けるため,同年1月に目安箱を設置したところ,不適正な選挙活動及び組合活動,人事への不当な介入,不適正な便宜供与等があるとの声が寄せられた(乙53)。

市長は,本件市長選挙において,交通局職員が勤務時間内に組合活動を行っていたことを受けて,平成23年12月26日の市会交通水道委員会で労働組合等と控訴人との関係を一度「リセット」すると答弁した。また,市長は,控訴人の職員からの,労働組合等による人事への不当な介入があるとの指摘を受けて,同月30日,控訴人の関係部局に対するメール(甲A6)で,「組合適正化に向けての今後の取組み」の整理を指示した。
そこで,本件条例の所管局であった控訴人総務局(平成24年4月1日からは人事室)は,上記市長からのメールを受けて,平成24年1月中旬頃から,本件条例案の検討を始めた。

本件条例12条は,使用者である控訴人による便宜供与こそ,不適正ないし不健全な労使関係を生じさせる原因の一つであると考えられたことから,労使関係が適正化,健全化するまでの間は,一切の便宜供与を行わないことを定めたものである。このように包括的にあらゆる便宜供与を禁止の対象としたのは,一旦ゼロベースで控訴人における労使関係のあり方を見直すためである。


原判決は,市長が,労働組合等に対する便宜供与を一斉に廃止することにより,その活動に深刻な支障が生じ,ひいては職員の団結権等が侵害されることを認識していたことは明らかであって,むしろ,これを侵害する意図をも有していたとみざるを得ないと断定するが,この判断は,市長の発言等の内容を部分的に取り上げ曲解したものであり,市長が労働組合等に対し配慮の姿勢を示していることや,本件条例制定以後においても控訴人が被控訴人ら労働組合等の適正な権利保障を図っていることを看過している点で不当である。
市長の言動からは,およそ労働組合等に対する弱体化の意思や敵対視の姿勢は見受けられず,むしろ,控訴人の内部の体制を含めて,従前における不適正な労使関係を正常化し,是正を図らなければならないという市長の問題意識や意図を受け取ることができる。市長は,労働組合等を弱体化させるとか,労働組合等を解体するといった趣旨の発言は一切行っておらず,労働組合等の活動に対する配慮の姿勢を示している。市長の問題意識は,その維持管理に公金が投入されている市の庁舎において,特定の団体や人物を応援するために政治活動を行うことは,市民感覚から見ておかしく不適正であることを前提に,控訴人における労使関係の適正化や公金の取扱いの適正性を確保することにある。

本件条例制定後も,控訴人は,勤務労働条件等について,労働組合等との間で労使交渉を継続的に行うことによって,労働組合等の適正な権利保障を図っている(乙55~101(枝番のあるものは枝番を含む。))が,その一方で,市政改革の取組みを進めており,特定の団体の既得権については廃止するなど,施策・事業についてゼロベースでの見直しを行っている。また,控訴人が行う市の施設の各種使用許可についても,
これらが市民の貴重な財産であることを強く意識し,
その有効活用が最大限に図られるよう見直しを行っており,使用許可を継続すべきではない事案については,各団体の性質にかかわらず,不許可処分を行ったり,特定団体に対する補助金についても厳しく見直しを行っている(乙102)。このように,控訴人においては,労働組合等のみならず各種団体との関係においても,見直すべきものについては見直すという毅然とした態度で臨んでおり,
本件条例の制定や,
本件各不許可処分についても,これら一連の取組みと同列に位置付けられるべきものであり,労働組合等の弱体化とはおよそ関係のないものである。

(エ)

行政事務スペースの必要性について
原判決は,平成24年度不許可処分が違法である理由について,本件事務室部分を行政事務スペースとして使用する必要性は大きなものではなかったことが推認できると判示する。しかし,この判断は,事実の裏付けを欠くものであるとともに,行政事務スペースの必要性を不当に過小評価したものである。
控訴人の担当者が,被控訴人らに対して本件事務室部分からの退去を口頭で説明した時点(平成24年1月25日及び26日),被控訴人らに対して本件事務室部分からの退去通知を発した時点(同月30日),平成24年度不許可処分をした時点(同年2月20日)において,控訴人には,組織改編に伴って,平成24年4月1日の時点において新たに約860㎡の行政事務スペースが必要であったことは証拠関係から明らかである。市本庁舎においては,新たな行政需要を原因とする慢性的な行政事務スペース不足が生じており,その都度,会議室を転用したりしながら対応している状況であり,平成24年度不許可処分及びこれと同時期に行われた不許可処分によって控訴人において自己使用が可能となった行政事務スペースは,同年4月1日以降,現に,各部署の事務室として使用されている。

原判決は,平成25年度不許可処分時における行政事務スペースの必要性について,平成25年度に行われた組織改編も,平成24年度におけるのと同様,労働組合等に市本庁舎を使用させないために行われたものであるかのような認定をするが,
平成25年度の組織改編は,
府・市一体となって,新たな大都市制度の実現に向けた制度設計を行うとともに,将来の府市再編を先取りした取組みを進めるために行われたものであり,事実誤認である。また,原判決は,控訴人が,他の市本庁舎内の目的外使用許可について,利用面積の減少等の方策を何ら行っていないと断ずるが,郵便局や信用組合については,業務における必要性に係るアンケート(乙104の1~3)を実施しており,この点も事実誤認である。


原判決は,平成26年度不許可処分時における行政事務スペースの必要性についても,平成26年度に行われた組織改編も,平成24年度におけるのと同様,労働組合等に市本庁舎を使用させないために行われたものであるかのような認定をするが,控訴人においては,平成25年度不許可処分から平成26年度不許可処分に至るまでの間,各部署から新たな行政事務スペースの配分を求める要望があり,およそ被控訴人らに対して行政財産の目的外使用許可を行える状況にはなかった。具体的には,平成25年4月には市民局から住民情報システムの機種更新に係るシステム室のスペース要望が,同年5月には危機管理室から自然災害等に即座に対応するための宿直室のスペース要望や,財政局から公会計制度の導入に伴い会計室と共同で開発する公会計システムの開発室のスペース要望が,同年11月には福祉局が消費税増税に伴う簡素な給付措置の支給業務に係る作業スペースの要望が,平成26年1月には,平成26年度の組織改編に関連して,健康局から病院局の独立行政法人化に伴う窓口業務の事務スペースの要望がそれぞれあったが,市本庁舎内にそれらに対応できるスペースはおよそ存在せず,要望に応えることができなかった経緯がある。
(オ)

本件各不許可処分の違法性判断の誤りについて
原判決は,平成24年度不許可処分の主たる理由が,市本庁舎内における労働組合等の政治活動を巡る点にあり,行政事務スペースとして使用する必要性は大きなものではなかったと推認できると判示する。しかし,控訴人は,平成18年度の組合事務所使用許可に際して,一部の労働組合に対してスペースの縮小を求めており,実際に,一部不許可処分も行っている(乙105)。その後も,市本庁舎における行政事務スペースの不足は続いていたが,労働組合等の事務所の使用を不許可とするまでには至らなかったにすぎない。
労働組合等においても,
行政事務スペースが不足していたことを認識していた(乙106~109)。
また,控訴人が,被控訴人らとの間で,本件事務室部分についての使用料の減免率の改訂に係る合意をしたのは,平成22年3月31日であり,平成25年度からは使用料の減免を行わない旨の意向が示された戦略会議が開催されたのは平成23年12月24日のことであるところ,平成24年度について新たな行政事務スペースの必要性全体が具体的に把握できたのは,平成24年1月以降のことである。このような状況を踏まえて,
同月初めから総務局内において検討が行われ,
平成24年1月の局議で平成24年度の組合事務所の使用許可を行わないことにしたものである。平成24年1月25日及び26日に控訴人の総務局の担当者らが被控訴人らに対して明渡しを求める理由について詳細な説明をしなかったのは,この時点では,各スペースの配置について流動的な部分があったためである。
市長は,平成23年12月26日,市会交通水道委員会における指摘を受けて,
労働組合等に対する便宜供与を全て廃止する旨を表明し,
控訴人の幹部職員にも電子メール等で指示を行ったが,これは,市長が,控訴人における不適切な労使関係の存在を重く受け止めたことの証左であって,むしろ当然の行動である。原判決は,市長が,市本庁舎における行政事務スペースの不足には全く言及していないと指摘するが,市本庁舎内における行政事務スペースの確保の問題は,市長が判断するというよりも,事務方において判断及び処理すべきものであるから(控訴人においては,
市本庁舎の管理に関する事項は総務局長が
専決することとされている。),仮に,市長が行政事務スペースの確保に関して言及したとすれば,かえって不自然である。行政事務スペースが不足していたことは客観的に明らかであるから,控訴人においてそのように判断したことには合理性があるというべきであるし,このような場合に,別途新たな行政事務スペースを確保する必要性があるか否かは,裁量権者が判断すべきものであって,典型的な裁量行為というべきである。原判決は,裁量権者と同じ立場に立って行政事務スペースの必要性の有無を論じており,この点も失当である。

原判決は,平成25年度及び平成26年度各不許可処分の違法性について,本件条例が制定されたことを踏まえて判断しているが,行政事務スペースの不足があったことは明らかであり,このことのみによっても,上記各不許可処分は適法というべきである。
原判決は,平成25年度の組織改編が,本件事務室部分を労働組合等に使用させないことを前提に行われたものであるとするが,控訴人は,行政事務スペースが必要であるから,労働組合等に対して本件事務室部分の明渡しを求めていたのである。したがって,明渡しが完了すれば,
当該部分を行政事務スペースとして使用するのは当然であり,
組織改編もそれを前提にするのが当然である。各年度の組織改編は,あくまでも各年度の個別事情に基づくものであり,有意な相違がないなどと軽率に評価されるべきものではない。また,原判決は,市本庁舎内の食堂,
売店,
郵便局,
信用金庫及び市政記者室を念頭に置いて,
市本庁舎内の目的外使用許可については,利用面積の減少等の方策を講じていないと判断しているものと考えられるが,食堂及び売店については,職員のみでなく市役所への来庁者も広く利用しており,特定の労働組合等の用に供される組合事務所と同列に論じることはできない。また,市政記者室は,地方公共団体の事務・事業の遂行上,必要不可欠と解されるため使用に供されているものであり,労働組合等の事務所と同列に論じるべきものではない。郵便局や信用組合については,各部署に対する業務の必要性に係るアンケートを実施している。また,新たに行政事務スペースが必要となった場合,どこからこれに充てるべきスペースを確保するかは,裁量権者の裁量に委ねられるものであり,裁判所が判断すべき事項ではない。

条例は,市長が専権で制定できるものではない。条例案の決議は,地方自治法の定めるところに従い,議会の議決により成立し,公布・施行されることによって,住民や地方自治体への拘束力を有することとなる。そうである以上,仮に,市長において本件条例案を上程した動機において,職員らの団結権侵害の認識等があったとしても,本件条例は市会の民主的手続により有効・適法に制定されたものである以上,条例自体が違憲又は違法であるというのであればともかく,そうでない以上,当該条例は住民はもとより,控訴人に対しても法的拘束力を持つのであるから,その明文の規定に従ってされた平成25年度及び平成26年度不許可処分の違法性を判断するに当たって,本件条例12条の存在を考慮すべきでないとすること自体不当である。本件条例12条の存在やその内容は,平成25年度及び平成26年度不許可処分の違法性の判断の重要な判断要素とされるべきである。
また,原判決は,いわゆる「目的効果基準」に照らして,労組法7条の趣旨,目的及び効果,本件条例12条の趣旨,目的及び効果について詳細に検討することなく判断しており,この点も不当である。
(カ)

市長及び職務代理者に故意過失がないことについて
市長には職員の団結権等を侵害する意思はなかった。
また,平成26年度不許可処分を行ったのは,市長ではなく,当時,
市長が辞職したことを受けて,新たな市長が就任するまでの間,市長の職務代理者となった副市長である。職務代理者にしてみれば,本件条例が有効に成立し,これが施行されている状況にある以上,本件条例に従って与えられた職務を全うせざるを得ないのであるから,職務代理者の判断には過失はない。
(被控訴人らの主張)
(ア)

市長の組合に対する弱体化の意思について
市長は,一貫して被控訴人らを始めとする労働組合等に対する敵視,弱体化の意思を有しており,本件各不許可処分も,そのような市長の組合に対する弱体化の意思に基づく不当労働行為の一環である。市長の,平成23年12月28日以降の一連の発言や,市長が職員に送信したメールの文面からすると,市長の真意は,労働組合が公金又は税金により維持管理されている公の施設である市本庁舎内において政治活動をすること自体が不適切であり,そのような政治活動を行う可能性のある労働組合は全て市本庁舎内からは退去すべきだという点にある。さらに言えば,本件市長選挙において,市長の対立候補を支持した労働組合の政治活動を放逐したいというものであった。
労働組合が政治活動を行うことは許されており,少なくとも,この当時,全ての労働組合等を市本庁舎内から一斉に退去させる必要があるほど,労働組合等による市本庁舎内での政治活動が問題となっていたという事情はないし,市長の意向によって行われた控訴人側の調査においても,地方公務員法や公職選挙法において規制される政治活動に明確に該当するような行為があったとは評価できないとされている(乙22)。また,市長が,組合事務所が市本庁舎内から退去させられた場合に,労働組合等に生じる不利益について考慮したり,あるいは部下に検討させたりした形跡が一切なかったことは,市長に組合に対する弱体化の意思があったことを物語るものである。被控訴人らは,市本庁舎内から退去したことで,多額の費用の支出を余儀なくされ,組合事務所を維持するためのランニングコストも増加した。また,従前は,組合事務所が市本庁舎内にあったため,控訴人との間で勤務労働条件に関する交渉や意見交換を迅速かつ容易に行うことができ,各労働組合等の間での日程調整や意見調整をスムーズに行うことができたという利点が失われ,市本庁舎内に勤務する多くの組合員からのアクセスにも不便が生じている。(イ)

行政事務スペースの必要性について
平成24年度不許可処分に関して
(a)

市長が,
市本庁舎から労働組合等の事務所の退去を求める方針に

変更するに至った経緯において,「行政事務スペースを必要とするため」などという理由は一切出てきていない。控訴人の総務局が平成20年5月に作成した
「説明責任を果たすための公文書作成指針」
(甲A71)によると,市又は局としての意思決定に関する会議は,会議要旨又は議事録を作成し,意思決定の決裁文書が綴じられている簿冊に編集しなければならないとされている。したがって,上記方針を決定したとされる平成24年1月の局議の会議要旨又は会議録が作成されていなければならないはずであるが,上記会議要旨等が作成されていないのであるから,平成24年1月12日に局議が行われ,そこで乙2に基づいて行政事務スペースの割当の決定がされたとの控訴人の主張は信用することができない。平成25年度においては,こども青年局からの新スペースが必要である旨の申し出がされたのは,平成25年1月に入ってからであり,実際に,同年度にスペースの割当てについての決定をしたのは同年2月21日の局議であったのであるから,総務局内での局議によって,翌年度の配置スペースの意思決定をする時期が1月上旬であるというのは余りにも早すぎる。
(b)

控訴人においては,
市本庁舎建設時から,
行政事務スペースは慢

性的に不足しており,平成18年度以降も不足していた。そうであるにもかかわらず,控訴人は本件事務室部分の明渡しや縮小を求めたことが一度もない。
また,仮に,平成24年度不許可処分に関して,市長が方針転換
した理由が,行政事務スペースの確保であれば,市長は,説明をするに際してそのことに触れるはずであるにもかかわらず,市本庁舎内での政治活動が認められないので,組合事務所に対して立退きを求める旨述べている。さらに,控訴人の総務局の担当者らが,平成24年1月25日及び26日に本件事務室部分の明渡しの理由について詳細な説明を行わなかったことからも,本件事務室部分の明渡しを求めざるを得ない程度の行政事務スペース確保の具体的必要性がなかったことを自認しているに等しい。

平成25年度及び平成26年度不許可処分に関して
(a)

控訴人は,
平成25年度の組織再編として,
大阪府市大都市局を

設置したり,こども青年局及び財政局で新たな組織を立ち上げたりしたなどと主張するが,
平成25年度不許可処分を行うに当たって,
控訴人の総務局において,新たに行政事務スペースの確保などが検討された形跡はない。市本庁舎の地下1階には,信用金庫や郵便局があり,地下2階にはコンビニエンスストアや食堂があり,これらに対する目的外使用許可がされているところ,これらの利用面積の減少等の方策は採られていないし,総務局の担当者は,市本庁舎の中で,他の部署が使用しているスペースがどのように利用されているか,レイアウト等も含めて把握しておらず,それらのスペースが効率的に利用されているのかについての実態調査や指導・連絡等も一切行っていない。さらに,市本庁舎の地下1階の共通会議室や地下1階以外の会議室や書庫等に利用されているスペースについて,これを行政事務スペースにすることについての検討も行われていない。控訴人は,郵便局や信用組合について,業務での必要性に係るアンケート調査を実施した旨主張するが,これは,目的外使用許可がされている部分の利用面積の減少等の方策には当たらない。
(b)

控訴人は,平成26年度不許可処分において,市民局・危機管理
室・財政局・福祉局・健康局から新たな行政事務スペースについての要望があったものの,
要望に応えられなかったなどと主張するが,
平成26年度不許可処分において,控訴人の総務局において従前と異なる新たに発生した事情についての検討が行われるなどした形跡はない。そして,他の目的外使用許可についての利用面積減少等の方策を行ったり,検討したりしていない。
(c)

以上によると,市長には,平成24年度不許可処分と同様,職員

の団結権等を侵害する意思が継続してあったと推認するのが相当である。

市長及び職務代理者の故意過失について
地方公務員である副市長は,条例に従う義務があると同時に,憲法を尊重・擁護する義務があるし,労組法に従う義務もある。また,副市長は,平成23年12月以降の市長による組合弱体化意思に基づく数々の施策を十分に認識してきたものである。
そうすると,副市長も,本件条例12条が適用されなければ違法とされる控訴人の行為を適法化するために適用される限りにおいては,本件条例12条が,明らかに職員の団結権等を違法に侵害するものとして憲法28条や労組法7条に違反して無効であることを知り得たというべきである。しかし,副市長は,平成26年度の行政財産の使用許可申請に際して,本件条例12条が労働組合の団結権等を侵害するおそれがないか否かについて一切検討を行っていない。
したがって,副市長が平成26年度不許可処分を行った点に過失があった。

(2)

争点(2)について
原判決27頁11行目から17行目までに記載のとおりであるから,これ
を引用する。
第3
1
当裁判所の判断
地方公共団体の庁舎は,
地方自治法238条1項にいう
「公有財産」
であり,
同条4項にいう行政財産のうち,
「公用」
に供する財産に該当するものである。
行政財産は,その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる(同法238条の4第7項)。
被控訴人らは,いずれも従前から,市本庁舎内の本件事務室部分について,使用の許可(同法238条の4第7項)を得て,同部分を労働組合等の事務所として使用を継続してきたところ,平成24年度の使用許可申請に対して,これを不許可とする処分(平成24年度不許可処分)がされ,また,平成25年度及び平成26年度の使用許可申請に対しても,これを不許可とする処分(平成25年度不許可処分,平成26年度不許可処分)がされたものである。行政財産である市本庁舎内の本件事務室部分について,その使用を許可するか否かは,原則として,その管理者である控訴人の市長(同法148条,149条6号)の裁量に委ねられているものと解するのが相当である。すなわち,行政財産の用途又は目的を妨げる場合には,その使用を許可することができないことは明らかであるが,そのような事情がないからといって当然にその使用を許可しなければならないものではなく,行政財産である市本庁舎の目的及び用途と目的外使用の目的,
態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により,
使用許可をしないこともできるものである。
したがって,本件においては,管理者である市長の裁量権の行使が逸脱・濫用に当たるかが問題となるところ,管理者の裁量判断は,許可申請に係る使用の日時,場所,目的及び態様,使用者の範囲,使用の必要性の程度,許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度,代替施設確保の困難性など,許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり,その裁量権の行使が逸脱・濫用に当たるか否かの司法審査においては,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である(最高裁平成15年(受)第2001号同18年2月7日第三小法廷判決・民集60巻2号401頁参照)。
また,本件各不許可処分は,労働組合等である被控訴人らが,組合事務所として使用していた本件事務室部分に係るものであるが,労働組合等が当然に控訴人の行政財産を組合事務所として利用する権利を保障されているということはできず,控訴人において,労働組合等による上記利用を受忍しなければならない義務を負うと解すべき理由はないのであって,このことは,従前,組合事務所として利用するための使用許可が1年ごとに繰り返されてきたとしても,変わるものではない(最高裁昭和49年(オ)第1188号同54年10月30日第三小法廷判決・民集33巻6号647頁,最高裁昭和63年(行ツ)第157号平成元年12月11日第二小法廷判決・民集43巻12号1786頁,最高裁平成3年(行ツ)第34号同7年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事176号699頁参照)。したがって,本件各不許可処分が裁量権の逸脱・濫用となるかどうか判断するに当たっては,このような点も考慮しなければならないというべきである。
そこで,
以上のような観点から,
本件各不許可処分についての市長の判断に,
裁量権の逸脱・濫用があり,違法であったと認められるか否かについて検討する。
2
争点(1)ア(平成24年度不許可処分の違法性)について
(1)

前提事実(2)及び(4)によると,
被控訴人らは,
本件事務室部分を事務所と

して使用を継続してきたところ(被控訴人P1,被控訴人P3及び被控訴人P2は昭和57年1月から,その余の被控訴人らは平成18年8月から),市長は,平成24年度の本件事務室部分に係る各使用許可申請に対し,組織改編に伴い新たな行政スペースが必要となることを理由として,平成24年度不許可処分を行った。また,控訴人は,本件訴訟において,平成24年度不許可処分の理由として,庁舎内で労働組合等による政治活動が行われるおそれを完全に払拭する必要があることを追加した。
そこで,平成24年度不許可処分に係る判断が,市長の裁量権の逸脱・濫用に当たるか否かを判断する前提として,控訴人の主張する上記各事由について,判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないか,その判断が,重要な事実上の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといえるか否かについて検討する。
(2)

平成24年度不許可処分に際して,
平成24年度の組織改編に伴い新たな

行政事務スペースが必要となったとの事情があったか否かについてア
控訴人における平成24年度不許可処分がされるまでの行政事務スペースの配分に関して,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
(ア)

控訴人においては,市本庁舎の設計が始まった昭和54年頃から,
市本庁舎が完成して入居が始まった昭和57年頃までの間に,「事務室環境整備計画等」(乙1)が定められ,これに従って事務室のレイアウト等が定められた。「事務室環境整備計画等」の中では,「事務室面積算定基準」(以下「面積算定基準」という。)として,各役職ごとの1人当たりの事務室面積の基準や各局内会議室等(会議室,資料室,書庫・倉庫)の面積の基準が定められており,これが,各部署にどの程度の面積の事務室を割り当てるかを決定する際の目安とされていた。もっとも,面積算定基準では,事務室内に設置することが想定されているコピー室,更衣室,応対コーナー等に割り当てる面積の基準が定められておらず,また,面積算定基準が作成された当時は,コンピュータ関連の設備等の設置が想定されていなかったことなどから,平成23年当時に実際に各部署に配分されていた面積は,面積算定基準に基づいて算出される面積よりも,概ね大きくなっていた。
(甲A42の2,甲A56,乙1,28)
(イ)

控訴人においては,市本庁舎が完成した当時から,行政事務スペー
スが不足しており,毎年,狭隘化が進行していた。控訴人においては,毎年,年末から年始頃の時期に,次年度の組織の改編等を見込んで,総務局行政部総務課に対して,各部署から口頭又は文書で市本庁舎内に新たな行政事務スペースを設けることについての要請が出されることになっており,平成23年度までは,行政事務スペースの不足に対しては,各部署内の事務室や事業所内でスペースが確保できないかを検討した上,それが困難な場合には,各部署間で協議調整を行うなどし,また,このような調整が困難である場合には,会議室を一時的又は恒久的に行政事務スペースに転用することも行われていた。例えば,平成23年1月頃には,生活保護関連の部署から,また,同年3月11日のいわゆる東日本大震災後には危機管理室から,新たな行政事務スペースについての要請が出されたが,生活保護関連の部署からの要請に対して,会議室を転用することなどで対応していた。
他方,被控訴人らは,市本庁舎内の本件事務室部分を組合事務所として使用するようになった後,平成24年1月までの間,行政事務スペースの不足を理由として,本件事務室部分からの退去を求められたことはなかった。
(甲A56,57,乙28,29,41,103)
(ウ)

平成23年12月後半から平成24年1月5日頃までにかけて,控
訴人の総務局行政部総務課に対し,危機管理室,情報公開室の監察部及び平成23年12月19日に発足した政策企画室の府市再編担当から,口頭で行政事務スペースに関する要請が行われた。
なお,
この時点では,
市本庁舎5階の事務室を使用していた協働まちづくり室からは,具体的な要請はされてはいなかったが,控訴人の総務局行政部総務課は,事務室が狭隘であるという話を聞いていた。
(甲A56,57,61,乙28,29)
(エ)

控訴人の総務局行政部総務課の職員であったP9は,平成24年1
月5日頃,上司であった総務課長代理のP10から,平成24年度の組織改編を前提として,同年4月の段階で市本庁舎の行政事務スペースがどの程度不足するかを算出するよう指示を受けたことから,各部署から出されていた上記(ウ)の要請等に基づいて,同年1月10日までに資料(乙2。以下「1月10日作成の資料」という。)を作成した。1月10日作成の資料では,政策企画室の府市再編担当の不足面積が285.8㎡,情報公開室の監察部の不足面積が98.8㎡,危機管理室の不足面積が348.9㎡,協働まちづくり室の不足面積が125.8㎡とされ,不足面積の合計は859.3㎡(この不足面積は,面積算定基準に基づいて算出した面積に,5%を一律に加算した面積である。)とされていた。なお,平成24年度の組織改編で,政策企画室の府市再編担当は,都市制度改革室(新設)となり,情報公開室の監察部は,体制を強化した上で情報公開室から総務局に移管され,協働まちづくり室は,廃止された上でその機能が市政改革室に移管されているが,P9は,1月10日作成の資料を作成した時点では,平成24年度の組織改編の詳細を知らされていたわけではなく(そもそも,同日の時点で組織改編の詳細が決定していたわけでもなかった。),また,上記の各部署に実際に所属することになる人数が確定していたわけでもなかった。
(甲A56,57,61,乙2,28,29)
(オ)

平成24年1月12日に行われた総務局の局議(平成24年1月の局議。出席者は,P11総務局長,P12部長,P13総務課長,P10総務課長代理及びP9)
において,
1月10日作成の資料が配布され,
P10総務課長代理から同資料についての説明が行われた。また,総務局長からは,庁舎内で労働組合等による政治活動が行われることがないように,労働組合等が使用している本件事務室部分(面積は合計750㎡程度)の使用許可についての検討を命じる旨の指示が市長からされていることが伝えられた。その結果,特に議論がされることもないまま,平成24年度については,本件事務室部分について,労働組合等に対する使用許可を行わない方針が決定された。なお,この時点では,労働組合等と同様,使用許可を受けて市本庁舎内を使用しているコンビニエンスストア,金融機関及び食堂等について,退去を求めることが検討されたことはなかった。
(甲A57,乙29)

以上のような事実経過に鑑みると,市本庁舎においては,平成23年以前から,行政事務スペースの狭隘化が進行しており,平成24年度の組織改編によって,新たな行政事務スペースが必要になる可能性が生じていたことは認められるものの,本件事務室部分について,平成24年度については労働組合等に対する使用許可を行わない方針が決定された平成24年1月の局議の際に提出された1月10日作成の資料は,平成24年度の組織改編の詳細や,それに伴う人員の配置数等が未確定の段階で作成されたものであることからすると,上記の方針が決定された時点で,市本庁舎内の,既に特定の部署や組織によって使用されている部分を,行政事務スペースに割り当てなければならない具体的な必要性が生じていたとまで認めることはできない。
他方,前記ア(オ)で認定したとおり,平成24年1月の局議においては,総務局長から,庁舎内で労働組合等による政治活動が行われることがないように,労働組合等が使用している本件事務室部分の使用許可についての検討を命じる旨の指示が市長からされているとの話があり,特段の議論がされることもないまま,平成24年度については,本件事務室部分について,労働組合等に対する使用許可を行わない方針が決定されているところ,前提事実(3)のとおり,市長は,平成23年12月26日以降,労働組合等が控訴人の庁舎内で政治活動を行っていた実態を問題視し,労働組合等に対して,市の庁舎からの退去を求める趣旨の発言を繰り返し,控訴人の幹部職員に対しても,複数回にわたって,メールでその旨の指示を出すなどしていること,控訴人の総務局長による,労働組合等宛ての平成24年1月18日付け「労働組合支部等への便宜供与の取消しについて」と題する文書(甲C6,D6)には,大阪市長選挙においてP7の支部が勤務時間中に庁舎内で組合活動を行っていたことが発覚したことから,労使関係の適正化を図るため,労使関係の実態調査や労使間ルールの見直しの検討を進めており,新たな労使間ルールが策定されるまでの間,現在許可している各組合支部への庁舎スペースの便宜供与について取り消すこととする旨の記載はあるものの,組織改編に伴い新たな行政事務スペースが必要となる旨の記載はないことなどの事情からすると,平成24年1月の局議における上記決定は,行政事務スペースの狭隘化に対する対応策として行われたというよりも,むしろ,市長の上記指示に対応するため行われたものとみるのが相当である。なお,前提事実(3)ケのとおり,平成24年1月25日及び26日,控訴人の総務局の担当者らが,被控訴人らの事務局を訪れ,控訴人が新たなスペースを必要とするので,平成24年度における本件事務室部分の使用許可をしない方針である旨告げているが,この際,どの部署についてどの程度新たなスペースが必要であるというような話はなかった(甲A74,原審証人P8及びP14)。また,前提事実(3)コのとおり,平成24年1月30日に,控訴人が被控訴人らそれぞれに対して交付した文書には,組織改編に伴う新たな行政事務スペースを必要とする旨の記載があるが,どの部署についてどの程度行政事務スペースを必要とするというような点についての記載はなかった
(甲B1,
C1,
D1,
E1,F1)。したがって,上記の各事実は,平成24年1月の局議における上記決定は,行政事務スペースの狭隘化に対する対応策として行われたというよりも,むしろ,市長の上記指示に対応するため行われたものとみるのが相当であるとの前記判断を左右するものではない。
そこで,市長の上記指示が合理性を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであったといえるか否かが問題となる。
(3)

庁舎内で労働組合等による政治活動が行われるおそれを完全に払拭する
必要があるとの理由の合理性・妥当性について

前提事実(3)ア~カのとおり,


市長は,
市長就任後の平成23年12

月24日の控訴人の戦略会議においては,労働組合等に対する本件事務室部分の使用料の減免措置について,平成24年度までは覚書があるが,平成25年度からは減免なしで考えている旨を表明しており,
この時点では,
労働組合等に対する本件事務室部分の使用許可という便宜供与自体は,継続する意向を示していた。②

ところが,市長は,同月26日の市会交通

水道委員会において,P15議員から本件市長選挙に際して,交通局の職員の中に,勤務時間中に労働組合の活動として選挙活動を行った者がいることや,勤務時間内に市長の対立候補であった前市長の推薦者カードが配布されるなどしたとの指摘があったのを受けて,組合の政治活動自体は認められてはいるものの,公の施設の中で政治活動を行うのはあってはならないことであるとして,労働組合等には,市の施設から出て行ってもらうということからスタートしたいと述べて,労働組合等に対する組合事務所の使用許可という便宜供与を廃止する方針を打ち出し,同月28日に行われた市会定例会の施政方針演説においても,労働組合等と控訴人との関係を適正化するとの方針を示した。③

さらに,市長は,同月30日,控訴

人の幹部職員に対し,4回にわたってメールを送信し,その中で,労働組合等に対する便宜供与を止め,労働組合等が組合事務所として使用している部分から退去を求める方針であるとして,労働組合等との関係を適正化することを目的とした条例の制定についての準備をするよう指示し,平成24年1月4日の年頭挨拶において,労働組合等との関係を適正化する条例を制定する意向を表明している。
以上のような事実経過に鑑みると,市長は,就任当初から,労働組合等に対する便宜供与について,従前の方針を改める意思を有してはいたものの,被控訴人らに対し,本件事務室部分からの退去を求めることまでは考えていなかったところ,本件市長選挙に際して,一部の労働組合の組合員が市長の対立候補であった前市長を支持する意図を持った政治活動を行っていたとの指摘を受けて,労働組合等が控訴人の庁舎内で政治活動を行う可能性を封じる目的で,突如,本件事務室部分についての使用許可を行わず,同部分からの退去を求めることに,方針を転換したものとみるのが相当である。

この点について,控訴人は,労働組合等による政治活動が,市本庁舎内で行われると,それが違法でない場合であっても,市民からの行政の中立的運営に対する信頼が損なわれるとして,市長の上記方針の決定は,このような観点から行われたものである旨主張する。
しかし,平成24年4月2日付けで第三者調査チーム(代表者は大阪市特別顧問P16)によって作成された「大阪市政における違法行為等に関する調査報告」(乙22)によると,控訴人においては,本件市長選挙に際して,市役所内での活動が行政活動の範囲を超え,政治活動にまで拡大して行われ,市民の目から見て市役所としての中立性,公平性を欠くように思われる活動となっていた点があること自体は否定できないとされているものの,その一方で,職員について,地方公務員法や公職選挙法において規制される政治活動に明確に該当するような行為があったとは評価できないとされている(乙22の41頁~42頁)。
また,仮に,今後,労働組合等の構成員によって,市本庁舎内で違法な政治活動が行われていることが判明した場合には,当該行為を行った職員に対する懲戒処分を検討すれば足り,労働組合等が,組合事務所として市本庁舎の一部を使用することを全面的に拒む必要性があるということはできない。
(4)

以上によると,
被控訴人らに対し,
本件事務室部分からの退去を求めるこ

とについての意思決定がされた平成24年1月の時点では,市本庁舎内で行政事務スペースが慢性的に不足していたとの事情が存在してはいたとはいうものの,未だ,本件事務室部分を行政事務スペースに割り当てなければならない具体的な必要性が生じていたとまでは認め難い。また,平成24年度不許可処分は,市長の発案によって,市本庁舎内において政治活動が行われる可能性を封じるとの目的で行われたものであって,このような市長による方針の決定は,市会における議員の発言をきっかけに,事実関係の十分な調査や検討を経ずに唐突に行われたものであり,その目的と,これに対して取られた手段である本件事務室部分の使用不許可処分との間に,合理的な関連性があるということもできない。
このことに加えて,平成24年度不許可処分は,長期間,反復・継続されてきた労働組合等に対する便宜供与を破棄するものであるところ,前提事実(3)ケ及び(4)のとおり,控訴人が被控訴人らを始めとする労働組合等に対して,本件事務室部分からの退去を求めたのは,平成24年1月25日又は26日であるところ,同日から控訴人が退去の期限とした平成24年3月31日までの期間は,約2か月と短い上,控訴人が被控訴人らに対して,本件事務室部分の明渡しを求める理由を具体的に説明したのは,明渡しの約1か月前である平成24年2月20日であったことなどの事情も認められる。このような諸事情によると,本件事務室部分の使用許可を与えるか否かの判断が,その管理者である市長の裁量に委ねられており,被控訴人らが権利として本件事務室部分の貸与を求めることができないことなどを考慮したとしても,平成24年度不許可処分は,その判断要素の選択に合理性を欠くところがあり,かつ,その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるので,裁量権を逸脱・濫用したものというべきである。したがって,平成24年度不許可処分は違法である。
(5)

なお,控訴人は,控訴人においては不適正な労使関係が続いてきた,控訴
人は労働組合等との間で労使交渉を継続的に行うことによって労働組合等の適正な権利保障を図っている,本件各不許可処分は,市長による市政改革の取組みの一環であるなどと主張するが,これらは,いずれも平成24年度不許可処分が違法であるとの前記判断を何ら左右するものではない。3
争点(1)イ(平成25年度不許可処分の違法性)について
(1)

前提事実(5)イ及び(7)アのとおり,
被控訴人らは,
平成24年度不許可処

分を受けて,本件事務室部分から退去したが,平成25年2月27日,本件事務室部分の各自の使用部分について,改めて使用許可申請をしたところ,市長は,同年3月18日,①

本件条例12条において,労働組合等の組合

活動に関する便宜供与は行わないことにしているため,②
市本庁舎内に,

余剰スペースが存在しないため,との理由で,いずれの申請も不許可とする処分(平成25年度不許可処分)を行った。
そこで,上記の判断が,裁量権の逸脱・濫用に当たるか否かを判断する前提として,控訴人の主張する上記各事由について,判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないか,
その判断が重要な事実上の基礎を欠くか,
又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといえるか否かについて検討する。
(2)

本件条例12条について
本件条例12条が違憲又は違法で無効であるといえるか否か
前提事実(6)オのとおり,本件条例12条は,
「労働組合等の組合活動に
関する便宜の供与は,行わないものとする。」と定めているところ,被控訴人らは,①

労使慣行や労使協定により確立した便宜供与を廃止するも

のであるから,労組法7条3号に反する,②

労働組合等の活動に関する

便宜供与について,首長の裁量権を完全に奪うものであるから,地方自治法238条の4第7項に違反する,③

便宜供与についての団体交渉を行

うことができなくなるから,労組法7条2号,地方公務員法55条1項,憲法28条に違反する,④

労働組合等は,他の団体が行政財産の目的外

使用許可を受け得る場合であっても,労働組合であるというだけの理由で,同許可を受ける可能性を奪われるから,憲法14条に違反するとして,本件条例12条は違憲又は違法であるから無効であると主張するので,判断する。
(ア)

上記①について
労組法は,労働組合の欠格事由として,「団体の運営のための経費の
支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの」を挙げ(同法2条2号本文),また,「労働者が労働組合を結成し,若しくは運営することを支配し,若しくはこれに介入すること,又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を使用者に禁じている(同法7条3号本文)から,本件条例12条は,上記労組法の規定と同趣旨の内容を定めるものであるということができる。
なお,労組法上,使用者による「最小限の広さの事務所の供与」については,労働組合の欠格事由である経理上の援助に当たらず(同法2条2号ただし書),かつ,不当労働行為における経理上の援助にも当たらない(同法7条3号ただし書)とされているが,労働組合が,使用者に対し組合事務所の供与を請求する権利があるとはいえない
(前記1参照)

また,「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し又は交渉することを使用者が許すこと」及び「厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し,若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附」についても,労働組合の欠格事由である経理上の援助に当たらず
(同法2条2号ただし書)

かつ,不当労働行為における経理上の援助にも当たらない(同法7条3号ただし書)とされているが,これらについても,労働者にこれらを請求する権利があるとはいえない。
したがって,本件条例12条による便宜供与の廃止が直ちに労組法7条3号に反するということはできない。
(イ)

上記②について
労働組合等の活動に対する便宜供与について,首長の裁量権が制限さ
れるとしても,そのことから直ちに本件条例12条が地方自治法238条の4第7項に違反するということはできない。
(ウ)

上記③について
本件条例12条が存するからといって,直ちに便宜供与について団体
交渉ができないということにはならないから,本件条例12条が労組法7条2号,地方公務員法55条1項,憲法28条に違反するということはできない。
(エ)

上記④について
他の団体に対する行政財産の目的外使用の許可は,それぞれの用途,
目的等を考慮してされるものであるから,他の団体が行政財産の目的外使用の許可を受け,労働組合等が本件条例12条により許可を受けることができないとしても,そのことが直ちに憲法14条に違反するということはできない。
(オ)

もっとも,本件条例12条が適用された結果が憲法並びに労組法及
び地方公務員法の規定やその趣旨に反する結果を招くことも考えられるが,そのような場合には,それを個別に違憲又は違法であると評価することによって救済を図ることが可能である。
(カ)

したがって,本件条例12条が無効であるということはできず,被
控訴人らの上記主張は採用することができない。

そして,市民の選挙により選ばれた議員によって構成される市議会において本件条例が制定されたことは,平成25年度不許可処分が裁量権の逸脱・濫用に当たるかどうかを判断するに当たって,重視すべき事情であるということができる。

(3)

市本庁舎内に余剰スペースが存在しないといえるか否かについて
平成24年度以降の控訴人の組織改編の状況や,市本庁舎の使用状況に関して,
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると,
以下の事実が認められる。
(ア)

控訴人は,平成24年3月28日,平成24年度の組織改編(改正)
の実施を発表した。平成24年度の組織改編は,大阪に相応しい自治の仕組みを作ること,市役所の仕組みを変え,市役所内部の行政の効率化を図ること,区役所の機能強化を図ることを目的に行われ,部署や役職の新設,廃止,業務の移管等が,比較的大規模に行われた。
(甲A60,61)
(イ)

被控訴人らから明渡しを受けた本件事務室部分は,上記組織改編を
受けて,情報公開室から総務局に移管された監察部,東日本大震災後の平成23年3月に組織が新設され所属人員が20数名増加していた危機管理室,新設された行政委員会事務局の選挙部が,それぞれ使用するようになった。また,上記組織改編による部署の新設,廃止及び移管等の結果,市本庁舎内で,上記のほかにも,従前,他の部署が使用していた場所に,別の部署が移転するなどした。
(甲A56,61,乙18の1・2,乙19の1・2,乙28,103)(ウ)

平成25年度には,平成24年の組織改編で新設された都市制度改
革室が再編・拡充されて大阪府市大都市局が新設され,また,財政局やこども青少年局等の部署においても,組織の改正等が行われることが予定されていた。
このうち,大阪府市大都市局は,平成25年4月1日付けで新設される予定であったが,市長の直轄組織であるため市本庁舎内に新たな行政事務スペースを設ける必要があり,また,所属する職員数が60名以上増加することが見込まれていた。また,財政局からは,平成24年12月13日頃,従前,各市税事務所で行っていた固定資産税の路線価付設事務について,組織の効率化の観点から集約化,一元化し,「路線価付設チーム」を設置することや,従前,税務部土地グループが担っていた土地評価に関する企画事務等についても,
路線価付設チームに集約化し,
税務部固定資産税担当との連携や体制強化を図る必要から,市本庁舎内に行政事務スペースを確保したいとの要請が出されていた。さらに,こども青少年局においては,いわゆる待機児童の解消のための施策を進めるため,組織の拡大が図られることになっており,同施策は控訴人の重要施策の一つであり,関連部署との間の密接な連携が必要な部署であったことから,市本庁舎内に行政事務スペースを確保する必要があった。(乙41~45,原審証人P9)
(エ)

控訴人の総務局においては,平成24年12月13日の局議及び平
成25年2月21日の局議において,上記平成25年の組織改編に伴う行政事務スペースの配分等が検討された。その結果,大阪府市大都市局については,一時的に市本庁舎5階にある大応接室及び従前都市制度改革室が使用していた会議室を行政事務スペースに転用するなどして対応した上,市本庁舎5階の政策企画室の行政事務スペースについて改修工事を実施して,その一部を大阪府市大都市局に割り当てたものの,面積算定基準に基づく基準面積に比較して,実際に同部署に割り当てられた面積が大幅に少ない状況は解消されなかった。また,財政局からの要請については,市本庁舎地下1階の共通会議室の一部を行政事務スペースに転用して,財政局税務部に割り当てることになった。こども青少年局については,職員数が50名程度増加するにもかかわらず,市本庁舎内に行政事務スペースとして使用することが可能な余剰スペースがなかったことから,組織の一部が市本庁舎外に移転する計画調整局(平成25年度の組織改編に伴って都市計画局に名称変更)の事務スペースの一部や会議室を,新たにこども青少年局の事務スペースに割り当てることになった。
そして,上記同年2月21日の局議において,平成25年度不許可処分を行うことが決定された。
(乙35,36,37,41~47,原審証人P9)
(オ)

控訴人は,平成24年度以降も,市政記者室,食堂,売店及び金融
機関について,市本庁舎の一部の目的外使用許可を行っていた。
(乙45,46)

前記2(2)ア(イ)及び前記ア(ア)~(エ)で認定したとおり,市本庁舎は,完成当時から行政事務スペースが不足していて,
毎年狭隘化が進行しており,
その状況は,平成24年度以降も変わらなかった上,平成25年度においては,組織改編によって,平成24年度以上に市本庁舎内を行政事務スペースとして使用することが必要とされる部署が増加したものの,そのような部署に対しても,
必ずしも必要な面積を割り当てることができておらず,
会議室を事務室に転用するなどして対応せざるを得ない状況であり,市本庁舎内には,控訴人の行政事務スペース以外の用途に使用することが可能な余剰スペースがほとんどなかったと認めることができる。
そして,控訴人における平成25年度の組織改編が,労働組合等に市本庁舎内を使用させないようにする目的で,殊更に行われたことを認めるに足りる証拠はない。
なお,前記ア(オ)で認定したとおり,控訴人は,平成24年度以降においても,労働組合等以外の者(市政記者室,食堂,売店及び金融機関)に対し,市本庁舎の一部について目的外使用許可を行っている。証拠(乙104の1~3)及び弁論の全趣旨によると,市政記者室は,地方公共団体の業務の遂行上の必要性から供与されているものであり,食堂及び売店については,職員のみでなく市役所への来庁者も広く利用するものであり,また,金融機関については,各部署に対する業務の必要性に係るアンケートを実施した結果,業務上の必要性があると判断されたものであると認められる。このような事情によると,これらについて,労働組合等の事務所と同列に取り扱う必要性・合理性があるとはいえない。
また,被控訴人らは,総務局の担当者は,市本庁舎の中で,他の部署が使用しているスペースがどのように利用されているか,レイアウト等も含めて把握しておらず,それらのスペースが効率的に利用されているのかについての実態調査や指導・連絡等も行っていない,市本庁舎の地下1階の共通会議室や地下1階以外の会議室や書庫等に利用されているスペースについて,これを行政事務スペースにすることについての検討も行われていないなどとも主張する。しかし,前記2(2)ア(イ)で認定したとおり,控訴人においては,市本庁舎が完成した当時から行政事務スペースが不足しており,平成23年度までは,各部署内の事務室や事業所内でスペースが確保できないかを検討した上,それが困難な場合には,各部署間で協議調整を行い,他の部署が既に使用している行政事務スペースの提供を求めるなどし,このような調整が困難な場合には,会議室を行政事務スペースに転用するなどして,狭隘化に対応してきたというのであるから,被控訴人らの主張するような事実を認めることはできない。また,仮に,平成25年度不許可処分が行われた当時,市本庁舎内の本件事務室部分以外の場所を行政事務スペースとして使用する余地があったとしても,前記認定のとおり,控訴人では,毎年,市本庁舎内の狭隘化が進行しており,各部署からの新たな行政事務スペースを設けることについての要請に応えることが困難な状況が継続していたのであるから,被控訴人らに対する市本庁舎の目的外使用の許可を行わなければならない必要性や合理性を基礎づけるということはできない。
(4)

本件事務室部分についての使用許可申請が認められなかったことによる
被控訴人らの不利益について
被控訴人らは,本件事務室部分についての使用許可申請が認められなかったことから,組合事務所移転の費用が生じたこと,組合事務所の維持のための経費(事務所の賃料や光熱費等)も実質的に増額となり,また,控訴人との交渉や協議回数が激減し,組合活動に際して,従前は無料で市本庁舎内の会議室を使用していたところ,
有料の貸し会議室を利用せざるを得なくなり,
さらに,労働組合等の組合員間の意思疎通や労働組合等の間における連絡調整や情報交換が困難になるなどして,組合活動にも重大な影響が生じたなどと主張し,被控訴人P1の書記長(P17)の陳述書(甲B7),被控訴人P3の副執行委員長(P18)の陳述書(甲D8),被控訴人P2の書記長(P8)の陳述書(甲A74)及び被控訴人P3の副執行委員長(P14)の陳述書(甲A75)にはこれに沿う記載があり,原審証人P8及び同P14は,同趣旨の証言をする。
しかし,組合事務所の維持のための経費は,労働組合等において負担すべきものであるから,このような負担が増加することはやむを得ないということができる。また,被控訴人らの主張する組合活動についての影響についても,必ずしも重大な支障といえるようなものではなく,前記1のとおり,被控訴人らは控訴人の行政財産を組合事務所として利用する権利を保障されているものではないことからすると,このような支障が生じてもやむを得ないと評価することができる。
(5)

以上によると,
平成25年度不許可処分は,
本件条例12条に基づいて行

われたもので,市本庁舎内に必要な行政事務スペースを確保するために行われたものということができ,被控訴人らが被る不利益も上記の程度のものでやむを得ないということができるから,憲法並びに労組法及び地方公務員法の規定やその趣旨に反する(被控訴人らの団結権等を侵害する)ということはできず,合理的な根拠に基づいて行われたものであって,これについての市長の判断が,社会通念に照らし妥当性を欠き,その裁量権の範囲を逸脱したり,濫用したものであるということはできない。
したがって,平成25年度不許可処分は違法であるということはできない。4
争点(1)ウ(平成26年度不許可処分の違法性)について
前提事実(8)のとおり,被控訴人らは,平成26年2月25日又は26日に,控訴人に対し,本件事務室部分について使用許可申請をしたところ,市長の職務代理者副市長P11は,同年3月11日付けで,平成25年度不許可処分と同一の理由で,平成26年度不許可処分を行っている。
弁論の全趣旨によると,平成26年度に関しても,平成25年4月から平成26年1月にかけて,各部署から行政事務スペースの要望が出されたものの,市本庁舎内にそれらに対応できるスペースが存在せず,各部署内においてスペースを生み出したり,市本庁舎外で対応するなどしたことが認められる。そうすると,市本庁舎の行政事務スペースの必要性について,平成25年度と同様の状況が継続していると認めることができ,狭隘化が解消されたことを認めるに足りる証拠はない。
以上によると,
平成26年度不許可処分も,
平成25年度不許可処分と同様,
本件条例12条に基づき,市本庁舎内に必要な行政事務スペースを確保するために行われたものということができ,
被控訴人らが被る不利益も前記3(4)のと
おりやむを得ないということができるから,憲法並びに労組法及び地方公務員法の規定やその趣旨に反する(被控訴人らの団結権等を侵害する)ということはできず,合理的な根拠に基づいて行われたものであって,その判断が社会通念に照らし妥当性を欠き,その裁量権の範囲を逸脱したり,濫用したものであるということはできない。
したがって,平成26年度不許可処分は違法であるということはできない。5
争点(2)(被控訴人らに生じた損害の額)について
前記2で説示したとおり,本件各不許可処分のうち,平成24年度不許可処分は,
裁量権を逸脱・濫用して行われたものであるから違法であり,
市長には,
故意又は過失がある。そして,これによって,被控訴人らは,本件事務室部分の使用許可をしない方針である旨を告げられてから約2か月間という短い期間で本件事務室部分を明け渡すことを余儀なくされたのであるから,被控訴人らは,控訴人の上記違法行為によって,相応の損害を被ったと認めることができる。
以上のような事情のほか,本件に現れた一切の事情を考慮すると,被控訴人P1,同P2,同P3及び同P4については各50万円の,被控訴人P5及び同P6については各25万円の損害が生じたと認めるのが相当である。
第4

結論
以上のとおりであるから,第1事件に係る被控訴人らの請求のうち,被控訴人P1,同P2,同P3及び同P4の請求については,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償としてそれぞれ50万円及びこれに対する平成24年度不許可処分がされた日である平成24年2月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,被控訴人P5及び同P6の請求については,それぞれ25万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので,その限度で認容すべきであるが,その余は理由がないのでいずれも棄却すべきである。
また,
第2事件及び第3事件に係る被控訴人らの請求は,
いずれも理由がないから,これらをいずれも棄却すべきである。そうすると,これと結論を異にする原判決は,一部相当ではないから,控訴人の本件各控訴は,一部理由がある。よって,原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第14民事部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

金義之上一成地香枝
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