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行政機関保有個人情報不開示決定処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成25年(行ウ)第126号)
事件番号平成26(行コ)185
事件名行政機関保有個人情報不開示決定処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成25年(行ウ)第126号)
裁判年月日平成27年5月29日
法廷名大阪高等裁判所
判示事項特定の保険会社に対する苦情申出や当該申出についての当該保険会社の報告に係る財務局の対応内容が,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律14条7号柱書き所定の不開示情報に該当するとされた事例
裁判要旨特定の保険会社に対する苦情申出や当該申出についての当該保険会社の報告に係る財務局の対応内容からは,保険会社に関する苦情申出がされた場合における,保険会社の監督行政庁である財務局の具体的な対応方針を読み取ることができるから,これが開示されれば,当該保険会社以外の保険会社が,明らかとなった監督行政庁の具体的な対応方針を踏まえ監督行政庁の規制を逃れるための対応策を講じることが可能となり,それによって,監督行政庁による適正な監督事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるというべきであるとして,上記対応内容に係る情報は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律14条7号柱書き所定の不開示情報に該当するとした事例
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平成27年5月29日判決言渡

平成26年(行コ)第185号

行政機関保有個人情報不開示決定処分取消等請求控

訴事件
主1文
本件控訴を棄却する

2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2
金融庁長官が控訴人に対して平成25年4月30日付けでした行政機関保有
個人情報一部不開示決定(以下「本件一部不開示決定」という。)のうち,原判決別紙2ないし37の各文書について,原判決別紙1「不開示部分目録」の「不開示部分」欄記載の各部分に記載された情報(以下「本件不開示情報」という。)を不開示とした部分を取り消す。
3金融庁長官は,控訴人に対し,本件不開示情報を開示する旨の決定をせよ。第2事案の概要
本判決の略語は原判決の例による。
1
本件は,控訴人が,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(法)
に基づき,金融庁長官に対し,A株式会社(A)等の保険会社に関する控訴人の苦情申出に係る個人情報の開示請求(本件開示請求)を行ったところ,金融庁長官から本件一部不開示決定を受けたため,本件一部不開示決定のうち本件不開示情報を不開示とした部分が違法であると主張してその取消しを求めるとともに,本件不開示情報を開示する旨の決定の義務付けを求める事案である。原審は,本件一部不開示決定のうち本件不開示情報を不開示とした部分の取消しを求める請求を棄却し,本件不開示情報を開示する旨の決定の義務付けを求める訴えを却下する旨の判決をした。控訴人は,これを不服として控訴した。2
法の定め,前提事実,争点及び当事者の主張は,当審における控訴人の補充
的主張を次項に付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第2の2項ないし4項(原判決2頁23行目から9頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3当審における控訴人の補充的主張
(1)

原判決別紙10ないし16及び26の各文書の不開示部分について原判決別紙10ないし16及び26の各文書の不開示部分は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき
控訴人に開示された情報であるから,控訴人を本人とする保有個人情報である。
(2)

本件不開示部分2-①について
法14条3号イにいう「当該法人等……の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるというためには,一般的抽象的な可能性では足りず,法的保護に値する蓋然性が必要である。そして,①Aが苦情申出の内容は真実であると認めなければ,第三者が苦情申出の内容は真実であってAに問題があると容易に推測するとは考えられず,仮にそのような推測が可能であったとしても,当該苦情申出があくまでクレームにすぎない旨を付記して公開すれば足りること,②インターネット上では企業に対する不平・不満等の苦情が氾濫しているから,苦情申出の具体的内容が開示されただけでは,Aの信用に悪影響を与えることは考えられないことからすれば,本件不開示部分2-①が公開されることによって法14条3号イにいう「当該法人等……の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるとはいえない。

(3)

本件不開示部分2-②について
本件不開示部分2-②が開示されたとしても,上記⑵のとおりAの信用に何らかの影響を与え,競争上の地位を害するおそれはない。また,控訴人の苦情の申出に対する具体的な対応の中にAの認識,分析,対応方針等が記載されていたとしても,これらのみでは,競合他社は,Aの企業経営上のノウハウを知ることはできない。さらに,同情報が開示されたとしても,Aが将来において監督行政庁に対する適正迅速な報告に非協力的・消極的をとる可能性があるとはいえず,監督行政庁がA等の保険会社に対して有する強力な規制・監督権限をもってすれば監督業務に支障を生じることは考えられないから,かかる可能性を理由に法14条7号柱書きにいう「国の機関……が行う事務又は事業に関する情報であって,開示することにより,……当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があるということはできない。(4)

本件不開示部分3-①について
本件不開示部分3-①は,A以外の保険会社をして監督行政庁の規制を免れるための対策を講じることを可能にするほどの具体的な内容を伴うものではなく,また,仮に規制を免れるための対策を講じたとしても,対策が不正なものでなければ何ら問題はなく,他方,対策が不正なものであれば,監督行政庁が当該保険会社に対して有する各種規制・監督権限を発動することで対応可能である。したがって,本件不開示部分3-①の開示によってA以外の保険会社が監督行政庁の規制を逃れるための対応策をとる可能性があることを理由に,法14条7号柱書きにいう「国の機関……が行う事務又は事業に関する情報であって,開示することにより,……当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があるということはできない。

第3当裁判所の判断
1
当裁判所は,控訴人の請求のうち,本件一部不開示決定のうち本件不開示情
報を不開示とした部分の取消しを求める請求は理由がなく,本件不開示情報を開示する旨の決定の義務付けを求める訴えは不適法であると判断する。その理由は,当審における控訴人の補充的主張に対する判断を次項に付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3の1項ないし7項(原判決9頁16行目から17頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。2当審における控訴人の補充的主張に対する判断
(1)

上記第2の3(1)の主張について
法に基づく開示請求の対象は,自己を本人とする保有個人情報に限られている(法12条1項)のに対し,情報公開法に基づく開示請求の対象は,「行政機関の保有する行政文書」であり(同法3条),自己以外の者を本人とする情報に係る文書も含まれている。そうすると,仮に,原判決別紙10ないし16及び26の各文書が情報公開法に基づいて控訴人に開示されたとしても,これをもって,上記各文書の不開示部分が法においても開示されるべき「自己を本人とする保有個人情報」に当たると解することはできない。そして,原判決別紙10ないし16及び26の各文書が,控訴人以外の者が行ったA等に関する苦情申出について,近畿財務局等が当該申出の内容等を記録した文書であることは,原判決を引用して認定したとおりであるから,上記各文書の不開示部分の情報は,控訴人を本人とする保有個人情報には当たらない。
したがって,控訴人の上記第2の3⑴の主張は採用することができない。
(2)

同⑵の主張について
本件不開示部分2-①には,控訴人が近畿財務局に対してしたAに関する
苦情の申出の具体的内容が記載されていること,このような苦情の申出の具体的内容が開示されれば,当該申出に係る事実の存否にかかわらず,Aに業務運営上の問題があるとの憶測を招くなど,Aの信用に悪影響を与え,競争上の地位を害するおそれがあることは原判決を引用して認定したとおりである。これによれば,本件不開示部分2-①に係る情報を開示することによりAの権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれが具体的に認められる。
控訴人は,苦情の申出があくまでクレームにすぎない旨を付記して公開すれば足り,インターネット上では企業に対する不平・不満等の苦情が氾濫しているから,苦情の申出の具体的内容が開示されただけでは,Aの信用に悪影響を与えることは考えられない旨主張する。しかし,クレームであることを付記したとしても苦情の申出の情報を開示することによりAの社会的評価の低下を招くおそれがあると認められ,また,事業者に対する苦情の内容がインターネット上で私人により公開される場合に比べて,行政機関の保有する個人情報の開示という形で開示される場合には,当該事業者の社会的評価の低下を招く危険性の程度はより高いというべきである。
したがって,控訴人の同⑵の主張は採用することができない。(3)

同⑶の主張について
本件不開示部分2-②には,控訴人の苦情の申出に対するAの対応が記載されていることは原判決を引用して認定したとおりである。そして,苦情の申出への対応に関する企業経営上のノウハウは,個々の苦情申出に対する対応の集積により形成されていくものであることからすれば,控訴人の苦情申出への対応を開示することにより,苦情の申出への対応に関する企業経営上のノウハウが知られるおそれがあるというべきである。また,このような情報が開示されるとなると,Aが情報開示の可能性を懸念して将来において任意に迅速かつ的確な報告を行わなくなる等,監督行政庁が行う監督業務に支障を及ぼすおそれがあり,かかるおそれは,報告義務違反に対する制裁等の権限を監督行政庁が有することによって左右されるものではない。したがって,控訴人の同⑶の主張は採用することができない。
(4)

同⑷の主張について
本件不開示部分3-①には,控訴人の苦情の申出や当該申出についてのAの報告に係る近畿財務局の対応内容が記載されていると認められることは,原判決を引用して認定したとおりである。これらの情報は,他の保険会社においても本件と同様の報告等をした場合の当局の検討内容や対処方針がどのようなものになるかを推測させるものであるから,保険会社が当局の規制を免れるための対応策を講じることが考えられ,金融庁等の迅速かつ適正な監督事務に支障が生ずるおそれがあると認められる。また,不正な対応策を講じる保険会社に対しては,監督行政庁が有する各種規制権限を発動できるとしても,そのような対応は,事後的な処置にすぎず,監督行政庁の監督業務に生じる支障を未然に防ぐものということはできない。
したがって,控訴人の同⑷の主張は採用することができない。3
以上によれば,控訴人の請求のうち,本件一部不開示決定のうち本件不開示
情報を不開示とした部分の取消しを求める請求は理由がないからこれを棄却すべきであり,本件不開示情報を開示する旨の決定の義務付けを求める訴えは不適法であるからこれを却下すべきである。
よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第9民事部

裁判長裁判官

金子順一
裁判官

田中義則
裁判官

上田卓

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