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戒告処分取消等請求控訴事件、同附帯控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第222号)
事件番号平成27(行コ)4等
事件名戒告処分取消等請求控訴事件,同附帯控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第222号)
裁判年月日平成27年10月15日
法廷名大阪高等裁判所
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平成27年10月15日判決言渡
平成27年(行コ)第4号

戒告処分取消等請求控訴事件,同年(行コ)第62号


附帯控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成24年(行ウ)第222号)主文1
本件控訴に基づき,原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2
前項の取消部分に係る被控訴人の請求を棄却する。

3
本件附帯控訴を棄却する

4
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第1

実及び理由
当事者の求めた裁判

1
控訴の趣旨
主文第1項,第2項及び第4項と同旨

2
附帯控訴の趣旨

(1)

原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。

(2)

控訴人は,被控訴人に対し,375万円及びこれに対する平成24年8月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3)

訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。

第2

事案の概要

1
事案の要旨
本件は,控訴人大阪市交通局自動車部の職員である被控訴人が,控訴人に対し,平成24年8月28日付けで大阪市交通局長(以下「交通局長」という。)が,入れ墨の有無等を尋ねる調査に被控訴人が所定の書面で回答しなかったことが職務命令違反(地方公務員法(以下「地公法」という。)32条)に当たるとして同法29条1項1ないし3号並びに大阪市職員基本条例28条1項及び別表11号に基づき,被控訴人に対してした懲戒処分としての戒告処分(以下「本件処分」という。)について,


上記調査は憲法13条等に違反する違憲・違法な調査であるから,同調査に回答するよう命じた職務命令及び本件処分も違法であると主張して,本件処分の取消し(以下,この請求を「本件取消請求」という。)



上記調査及び本件処分等により精神的損害等を被ったと主張して,国家賠償法1条1項に基づいて,慰謝料300万円及び弁護士費用相当額75万円の合計375万円の損害賠償並びにこれらに対する違法行為の最終日である平成24年8月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(以下,この請求を「本件損害賠償請求」という。)
を求める事案である。
原審は,被控訴人の請求のうち,本件取消請求を認容し,本件損害賠償請求を棄却した。
これに対し,控訴人は,同人敗訴部分を不服として本件控訴を申し立て,被控訴人は,同人敗訴部分を不服として本件附帯控訴を申し立てた。なお,以下における略語等の表記は,原判決の例による。
2
前提事実等
前提事実,争点及び当事者の主張は,当審における当事者の主張を後記3に付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1ないし3(原判決2頁25行目から46頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

3
当審における当事者の主張

(1)

本件職務命令の適法性について

(控訴人の主張)

(ア)

憲法13条違反について
そもそも憲法13条は,あらゆる生活領域に関する行為の自由(一般的行為の自由)を保障するものではなく,個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体(人格的利益)を保護するものであるから,同条において保護される情報プライバシー権は,個人の道徳的自律と存在に関わる情報,すなわち,人の精神的過程や内部的な身体状況等に関わる高度にコンフィデンシャルな性質の情報(プライバシー固有情報)とされる。
この点,本件入れ墨情報は,個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利ではなく,本件において違憲の問題を生ずる余地はない。(イ)

仮に本件入れ墨情報に憲法上の保障が及ぶとしても,公共の福祉による制約は受けるところ,当該情報の内容及び性質に照らせば,本件職務命令の適法性は,本件調査の目的の正当性,調査の必要性及び手段の相当性等を総合考慮して判断すべきものである。

(ウ)

被控訴人は,少なくとも本件調査対象部位には入れ墨はないから,本件調査及び本件職務命令によって,控訴人が被控訴人から取得する可能性があるのは,「市民の目に触れる可能性のある部分に入れ墨がない」との被控訴人情報に限られる。当該情報から,被控訴人の経歴,思想等を推認することは不可能であるし,また,入れ墨がないことに対して抵抗感や嫌悪感を示す者は通常いないから,当該情報を強制的に取得されても,同人の名誉や信用に関わるプライバシー侵害が生じる可能性はない。したがって,当該情報の開示を強制されない自由が憲法13条によって保護される余地はない。

(エ)

仮に,本件入れ墨情報のうち「入れ墨をしているとの情報」を基準に検討しても,結論は変わらない。
すなわち,「入れ墨をしているとの情報」が有する次の性質に鑑みれば,一般的行為の自由を超えて,憲法上の権利として保護すべき秘匿性・機微性を有するとも,個人の人格的価値に深く関わる事項であるともいえないし,万一憲法の保障が及ぶとしても,厳格な違憲審査を要すべき情報ではない。


入れ墨は生来的・不可避的なものではなく,身体の装飾として自らの意思で施すものであり,一般に秘匿性が高いものでもなく,また,消去も可能であって,思想,信条,宗教といった情報とは,その人格的価値において本質的かつ決定的に異なるものである。



入れ墨は,趣味,嗜好又は身だしなみに関する事項に係る情報にすぎず,人種,民族,犯罪歴のように,その情報に接した受け手の個人的な主観的評価を超えて,社会的に許容されることのない不合理な差別が普遍的に行われてきたという歴史的背景や社会的状況がない。


本件入れ墨情報は,「市民の目に触れる可能性がある部分に入れ墨があるかないか」及び「ある場合には,その位置及び大きさ」に限られ,客観的に見ても,当該情報の保有者が秘匿を欲しているとは考えられない。



本件調査において,入れ墨を施すに至った事情や,入れ墨の形状,模様,色彩等の情報は収集しておらず,「市民の目に触れる可能性のある部分に入れ墨がある」との情報のみから,保有者の経歴や,趣味嗜好そのものを把握し得るものではない。

(オ)

本件調査の目的は,「勤務中に入れ墨が市民,利用者の方に目に触れることになれば,市民・利用者の方が不安感や威圧感を持ち,ひいては,本市の信用を失墜させることにつながることから,このような事態が生じないよう,職員の入れ墨が業務中に市民,利用者の目に触れる可能性のある部分にあるのかどうか,実態を把握した上で,人事配置上の配慮を行うこと」にあった。
我が国において,入れ墨に対して不安感や威圧感を持つ者が多数おり,市民サービスの提供主体である控訴人としては,これに配慮すべきである。本件新聞報道を受けた市民の声,議会等の社会的影響の高まりや,控訴人の職場規律に係る不祥事が多発していたという事情等を踏まえれば,本件調査当時,控訴人及び交通局において,職員の入れ墨問題に対し,従前の指導にとどまらない方策として本件調査を行うことは必要やむを得ない状況であった。
控訴人において,部局をまたぐ人事異動や,交通局の乗務員として採用された者が運転業務以外の職務に配置されることは一般的にあり得るし,本件調査の契機となった本件新聞報道の事案もまた部局をまたぐ人事異動を契機として発生したものであったから,交通局においても,後手の対応では不十分であった。
本件新聞報道には誤りがあったが,本件施設職員に入れ墨があったこと自体は事実として認められ,市民からの意見や議会においては,公務員である控訴人職員が市民に見える所に入れ墨を施していること自体が問題視され,指導にとどまらない対応が求められていた。したがって,本件新聞報道に誤りがあったことは,本件調査の必要性の判断に影響を与えるものではない。
本件調査の結果異動となった職員はいなかったが,本件調査によって,本件調査対象部位に入れ墨のあることが判明した職員99名のうち,回答を拒否した6名以外については人事配置等を検討し,分担替え等によって市民等に接する頻度の少ない業務への配置や,現に従事している業務から異動させない等の配慮を行っている。
(カ)

本件調査の方法は,交通局の非常勤嘱託職員及びアルバイト職員を除く全職員を対象に,本件調査対象部位に関する本件入れ墨情報を本件調査票に記載して提出することを義務付けるというものであって,手段として相当である。
現在配置された職場によっては市民の目に現に触れない部分が含まれていたとしても,交通局職員を含め,控訴人の職員は,広く人事異動の可能性があるところ,服装の種類や市民と接する頻度及び密接度も,職場や担当職務によって様々であるから,本件調査のとおり調査対象部位を定め,他方,市民の目に見える可能性のない部分を対象から除外したことは,調査の範囲として相当である。
「市民を畏怖させるおそれのないファッションとしてのタトゥー」を調査対象から除外することは,その判断に当たり,恣意や主観が混入するおそれがあり,また,調査が入れ墨を入れた動機等にわたるおそれもあるから,かえって被調査者のプライバシーを侵害する可能性が高まり,不適当である。
被控訴人自身,入れ墨に関する調査が任意調査であってもこれに協力するつもりがない旨を明言しており,少なくとも交通局においては任意調査では目的を達し得なかった。
書面管理は,情報の収集,管理及び利用の上で,また,将来の人事配置における配慮や虚偽の場合の対応の確実性,人事管理の透明性等の確保を図るために有用である。

憲法21条違反について
本件調査は,職員から本件入れ墨情報(被控訴人においては,本件調査対象部位に入れ墨を入れていないという情報)を収集するものであるところ,入れ墨は,人の内心における精神作用を外部に公表する精神活動として入れることが一般であるとは認められず,かえって,単なるファッションとして気軽に入れられるようなものである。その点をおいても,本件調査は被調査者の何らかの表現活動を制約するものではなく,ましてや,本件調査対象部位に入れ墨を入れていない被控訴人について,被控訴人情報の開示を求めることに対し,憲法21条の保障が及ぶ余地はない。

(ア)

本件調査が個人情報保護条例に反しないことについて
次の点を踏まえれば,個人情報保護条例6条2項の差別情報等(「思想,信条及び宗教に関する個人情報並びに人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」)とは,単なる個人的な受け止め方・評価にとどまる事項や,本人が公表を望まない事項ではなく,列挙事項のほか,①個人の機微や人格的価値に深く関わり,②歴史的・社会的にみて普遍的に行われてきた,社会的に許容されない不合理な差別につながる事項(例えば社会的身分や門地に準ずる事項)に関するものと解すべきである。


個人情報保護条例は,個人情報の保護だけではなく,市政の適切かつ円滑な運営,すなわち,正当な事務の遂行のために必要な情報の利活用にも配慮をしている(同条例1条)。



同条例6条2項は,思想,信条及び宗教に関する個人情報といった,政治,社会等に対するその人の根本的な考え方や信念に関する情報など,趣味嗜好を超える人格そのもの又は精神作用の基礎に関わる情報の収集だけを限定的に制限している。



同条項は,人種,民族及び犯罪歴のように,歴史的・社会的にみて普遍的に不当な差別が行われてきた事項を例示列挙している。



特に保護が与えられるべきプライバシー固有情報又はセンシティブな情報とされるのは,例えば,思想,信条,犯罪歴等,個人の道徳的自律の存在に直接関わる情報であり,個人の道徳的自律の存在に直接関わらない外的事項に関する情報(例えば,税や健康に関する情報)は,プライバシー外延情報として保障の程度に相違がある。



一般に,差別に当たるかは,法上の取扱いに差異が設けられる事項と,事実的・実質的差異の関係が,社会的通念からみて合理的であるか否かによって判断されるべきものである。



同条項が念頭におく危険性は,国や地方公共団体による差別ではなく,社会生活における不当な差別であるが,社会生活の構成員である市民は,各々個人として多様な価値観や感性を有するのであるから,単に当該事項につき個々人の嗜好,主観又は評価として嫌悪感情等を有する者が存在するとしても,直ちに社会生活における不当な差別を意味するものではない。


個人情報分野で一般になされている取扱いにおいて特別の配慮をすべき情報は,単に他人に知られたくない,又は単に自己の欲しない評価・受け止め方をされるおそれがある情報(資産状況,趣味嗜好,身体特性,交友関係,学歴・結婚歴,性格判断,心理テスト等)ではなく,これを超えた,最も保護すべき程度の高い情報を指す(いわゆるハイリーセンシティブ情報)という整理に基づいているが,そのことは,個人情報保護条例の解釈でも参照されるべきである。

(イ)

本件入れ墨情報は,個人の趣味嗜好に関する情報にすぎないのであって,人格的価値や機微性・重要性を有する情報ではなく,社会生活において不当な差別を引き起こしかねないと一般に考えられている情報でもなく,差別情報等には該当しない。
公衆浴場やプール等において,入れ墨を施した者の入場を拒否するような対応は,日本全国でごく一般に行われ,また,多くの地方自治体の青少年保護育成条例等において,青少年に入れ墨を施す行為が禁止行為とされている。しかも,このような対応や条例等においては,その者が実際に反社会的組織に属しているか否かや,入れ墨をしている部位,形状等を問うことなく,一定の配慮や規制をしている。
すなわち,我が国においては,その者が現に反社会的組織に属しているか否かや,入れ墨の部位,形状,入れ墨を入れるに至った経緯,動機等の背景事情に立ち入ることなく,入れ墨をしている人に対して抵抗感等を感じること自体は,社会的に受容された受け止め方であり,また,市民・顧客に対する接遇等のあり方として,それに配慮するため,民間・行政のいずれを問わず,対応に一定の差異等を設けることも受容されている。
本件入れ墨情報が差別情報(「人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」)に当たるというためには,単に本件入れ墨情報に対して抵抗を感じる者がいるというのみでは足りず,社会生活において,受容された入れ墨に対する抵抗感への合理的な配慮を超え,普遍的に不合理な差別的取扱いがなされるおそれがあることが必要というべきであるが,行政・民間問わず社会一般において,合理的配慮を超えた不合理な差別取扱いが行われている実態はない。
(ウ)

仮に本件入れ墨情報のうち,特定の個人が入れ墨をしているとの情報が個人情報保護条例6条2項の差別情報等に当たるとしても,被控訴人には,本件調査対象部位に入れ墨がない。「入れ墨がない」との被控訴人情報は,いかなる意味においても社会的差別の原因となるおそれにつながることはなく,差別情報等に該当しない。
また,同条項は,「実施機関は,・・・を収集してはならない。」と定め,差別情報等について,実施機関が収集,すなわち,現実に入手することを禁止しているが,控訴人は,本件調査により,被控訴人についての差別情報等を現実に入手していない。
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」20条は,個人情報保護法にはない収集禁止規定を特定個人情報に限って導入したが,同法において「収集」とは,集める意思を持って自己の占有に置くことを意味し,特定個人情報の提示を受けただけでは「収集」に当たらないとされている。個人情報保護条例においても,これと別異に理解する必要性も妥当性もない。
仮に個人情報保護条例6条2項が,差別情報等の現実の入手のみならず,これを収集しようとする行為をも違法とする趣旨を含むと解したとしても,結論は変わらない。同条項は,差別情報等が収集される危険性をあらかじめ排除することにあるところ,入れ墨のない被控訴人との関係において,差別情報等が収集される危険は抽象的にも存在しないからである。
(エ)

仮に本件入れ墨情報が差別情報等に該当するとしても,本件調査による本件入れ墨情報の収集は,地公法32条に基づくものであり,その趣旨・目的に照らし,個人情報保護条例6条2項1号の「法令又は条例に定めがあるとき」に該当する。
個人情報保護条例は,実施機関である控訴人と情報主との関係性や情報の性質等を問わず,個人情報の収集を一律に規律の対象としている。しかしながら,当該個人情報の収集について,実施機関である控訴人と当該情報主との間に,法令等に基づき個人情報を収集すべき特別な関係がある場合に,一律の規制を及ぼすとすれば,当該法令等の趣旨・目的につき支障を及ぼすことがあることから,このような場合を,法令等に基づく特別な関係がない者からの情報収集とは別に取り扱うべきものとして,当該個人情報の収集については,6条2項1号や,3項1号等のような除外規定が設けられている。
そして,個人情報保護条例6条2項1号の「法令又は条例に定めがあるとき」とは,法令等に収集できることを明文で定めている場合のほか,法令等の規定の趣旨,目的からみて,収集できると解される場合を含む。情報収集に関し,現にこれを根拠付ける定めがあるにもかかわらず,個別具体的な定めがない限り,いかなる場合であっても,「法令又は条例に定めがあるとき」に当たらないとする解釈は,個人情報保護条例の趣旨・目的や規定ぶりに沿わないし,また,文言上もそのような制限解釈は困難である。
地公法1条,5条,15条ないし22条,地方自治法154条等は,職員から個人情報を収集する根拠となるものであり,控訴人と被控訴人の間には,そのような根拠法令のない者とは異なる特別の関係がある。控訴人は,これらの法令等によって付与されている,職員の身分取扱い等に関する事項について種々の調査を行う法的権限の行使として,地公法32条に基づき,職務命令として本件調査を行ったものである。そして,本件入れ墨情報の性質を踏まえると,職員の人事配置を目的とする本件調査の目的は正当であり,また,本件調査の必要性及び手段の相当性も認められる。
(オ)

仮に本件入れ墨情報が差別情報等に当たるとしても,本件調査は,個人情報保護条例6条2項2号の「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」に該当する。
本件調査における「事務の目的」は,本件調査に当たって明確にされた事務目的であるから,「職員の入れ墨が業務中に市民,利用者の目に触れる可能性のある部分にあるのかどうか,実態を把握した上で,人事配置上の配慮を行うこと」にある。
この事務の目的には正当性・合理性が認められるところ,この目的を達成するためには,職員の入れ墨の有無をあらかじめ把握しておかねばならず,それには,本件入れ墨情報を被控訴人から収集しておくことが必要不可欠である。
仮に「事務の目的」を人事配置上の配慮を行うことと解し,その達成のために,職員の入れ墨が業務中に市民等の目に触れる可能性のある部分にあるのかどうか実態を把握することが必要不可欠かという検証を行うとしても,本件において必要不可欠性は優に認められる。
すなわち,控訴人は,従前も,入れ墨をしている場合には長袖を着るなど市民等から見えないようにするよう指導したり,身だしなみ点検等を実施し,問題が発覚するごとに個別に対応するなどしていたし,そもそも,入れ墨に不安感や威圧感を覚える受け止め方や,そのような受け止め方に対して配慮することは,社会的に受容されているのだから,本件新聞報道やそれを受けての市民や議会の声の高まりがなくとも,人事配置上の配慮を行うため,職員の入れ墨が業務中に市民等の目に触れる可能性のある部分にあるのかどうかとの実態を把握すること自体には必要性がある。
そして,本件新聞報道を受けて社会的影響が高まり,また,控訴人の職場規律に係る不祥事が多発していたのに,控訴人が従前どおりの対応を続けていて,万一,再度同様の問題が生じた場合には,控訴人に対する市民等からの非難は更に高まり,回復し難い信頼失墜を招くことが予想された。そのため,職員の入れ墨問題に対し,従前の指導にとどまらない方策として本件調査を行うことについては,既に存在していた必要性が必要不可欠な程度に至ったものである。
交通局職員は,市長部局の職員とは任命権者を異にするものの,市民等は,両者を別異に捉えていない。また,本件新聞報道の事案においても,従前から注意及び指導を行ってきたにもかかわらずなお発生したものであることを踏まえると,交通局においても同様の事案が生じることを避けるためには,バス運転手に対する乗務前の身だしなみ点検では不十分であった。実際,交通局職員の身だしなみについては,身だしなみ点検をしていても,市民等より厳しい意見が多数寄せられており,それだけでは,本件新聞報道の事案によって失墜した市民からの信頼を確保し得るものではなかった。
加えて,この身だしなみ点検は,バス運転手について行われているものであるが,控訴人における人事配置等は部門間及び局間にまたがるものであって,被控訴人がバス運転手のままであり続ける保証はないし,異動する可能性もあるから,バス運転手に対する乗務前の身だしなみ点検を行っていることをもって,本件調査が必要不可欠でなかったとはいえない。

A事件最高裁判決との関係について
公務員関係と民間労働関係とは法令上も明らかな相違がある上,事案や必要性の程度も異なるのであって,A事件最高裁判決の趣旨は本件に妥当するものではない。

(被控訴人の主張)

憲法13条違反について

(ア)

本件入れ墨情報は,次に述べるとおり,個人にとって秘匿性の高いセンシティブな情報である。本件調査は,入れ墨の有無だけではなく,入れ墨のある部位及び大きさについてもその対象としている。これらの情報が組み合わされば,当該個人の経歴等がより強く推認され得る。したがって,本件調査が例外として合憲とされるには,より制限的でない他の手段が存在しない場合でなければならない。また,仮に必要性及び手段の相当性によって審査するとしても,より厳格に審査されなければならない。


入れ墨を入れる動機や理由は千差万別であり,入れ墨の有無やその形状に関する情報は,個人史やプライバシー,その人が持つ思想にまで踏み込むものであり,いわば個人史の集積ともいえる。



一旦入れ墨を入れた場合,これを完全に除去することは,皮膚移植が必要となるなど,身体に多大な負担を掛けること,技術的にも困難であること,多額の費用を要すること等から,入れ墨は,個人の身体から切り離すことのできない固着した個人情報である。



現状では,入れ墨を入れた者は,結婚や就職において不利益を受けたり,温泉やプール等の施設の利用を拒否されるなどの不利益や拒絶反応を受けている。


歴史的にみても,沖縄で女性の誇りであった入れ墨は,19世紀には国家から禁止され,削除を求められる等したことから社会的な差別の源とされた。アイヌ民族や台湾の人々も,植民地化等のため入れ墨の習慣を禁じられ,差別された。

(イ)

本件調査の目的は,正当なものとはいえない。
本件新聞報道自体が誤報であった。その上,職員の入れ墨について市民からの批判が高まっていたというものの,そもそも市民の目に触れる可能性のある部分に,問題となるような入れ墨をしている職員がいないことは,それまでに具体的な職員に対する苦情がなかったことや,上司による日常の指導や点呼などから,控訴人としては把握していたことである。本件調査の結果,異動となった職員もいない。これは,控訴人が本件調査の必要性がないことを認識していたことを意味する。
控訴人のB市長は,就任当初から一貫して,自らの意に沿わない職員を排斥するとともに,公務員及び公務員の労働組合を露骨に敵視し,政治活動・組合活動アンケートの実施,職員基本条例の制定等,上命下服の体制を実現する施策を実行してきた。本件調査もその施策の一環に位置付けられるものであり,本件新聞報道を受けて,もともとはB市長が「服務規律の厳格化」の名のもとに,入れ墨そのものを禁止する目的で幹部職員らに指示したものであった。B市長の命令のもと発足した服務PTの第1回会議の時点では,「市民との接触の程度」を基準とする人事配置に反映することは明確な目的となっておらず,まずは実態調査をすることを決定したと解するのが自然である。本件調査の目的として説明されている「人事配置上の配慮を行うため」とは,調査を実施することを決定した後に,実態としてその必要もないにもかかわらず,後付けで作られた目的である。

(ウ)

仮に本件調査が人事配置上の配慮のためであったとしても直ちに正当といえるものではない。
反社会的組織の構成員に入れ墨をしている者が多くいるというのは,まさに偏見に基づくイメージである。本件新聞報道の事案における通報も,入れ墨によって不安感や威圧感を持ったことが理由といえる根拠はない。むしろ,市民からの批判の本質は,公務員たる者が入れ墨をすること自体が許し難いという個人的な心情やモラルにある。しかし,逆に,控訴人が本件調査のような個人のプライバシーに関わる調査を行うことに対して不安感を持つ市民もいる。控訴人が重視した利益は,単に声が大きかった方という可能性すらあり,それのみが維持すべき市民等の信頼であるとした点においても一方的な評価である。
入れ墨を目にする人たちの受け止め方も,人によって大きく異なるだけでなく,時代によっても変化しているのであり,入れ墨が市民等の目に触れることにより市民等が不安感や威圧感を持つことがあり得るとの認識を当然の前提とすることは問題である。使用者が労働者に対して身だしなみ等について何らかの不利益を課すような対応を執るに当たっては,その前提となっている事柄については然るべき合理的根拠があるか否かにつき慎重に判断されなければならない。
控訴人の助役であったC弁護士は,自らの背中に入れ墨を施したことをその著書に記載している。入れ墨を施している人についてはそれぞれ様々な事情があることは想像に難くないのであって,中には反社会的組織の構成員として過去入れ墨を施し,そこから抜け出して立ち直り,市の職員として真面目に勤務についている職員もいるであろうが,このような事情について一切考慮することなく,一般的に入れ墨は悪との印象を根拠とし,本件調査を正当化することはできない。
民間のスポーツクラブ等が入れ墨のある者の入会を拒否するのは,仮にそれが偏見に基づくものであっても,入れ墨を入れている者を忌避する者がいたり,又は反社会的組織の構成員であることのあかしとして入れ墨を入れている者がいる可能性があることに対する経営上のリスクヘッジである。そもそも公務員としてまっとうに生活していることが明白な者が対象とされている本件調査とは全く質を異にするものであり,比較の対象にすること自体が適当ではない。
(エ)

仮に本件新聞報道を受けて何らかの対応をしなければならなかったとしても,そのことが本件調査の必要性に直結するわけではない。
本件新聞報道は,職員が入れ墨を示して児童を恫喝したという本質的な部分において誤報だったのであるから,市民の信頼を確保するためには,まずはこの事象に関して徹底した調査を行い,正しい情報を広く発信すべきである。それでもなお,市民の信頼が揺らいでいるのであれば,必要な対象者の範囲内で,相当な方法による調査が検討される余地はあろう。しかし,このような本質的な対応がなされたとはいい難い。また,交通局の乗務員については,制服の着用が義務付けられている上,日常的に乗務前に毎回身だしなみの点検が行われてきた。そして過去に入れ墨が問題とされたことはなかった。乗務員として採用された者が乗務員以外の職種に配置転換されることは通常は考えられないことであり,そのような極めて稀なケースにおいては個別に確認すれば足りることである。

(オ)

本件調査は,その手段においても相当でない。
本件調査対象部位は「肩から指先まで,首から上,膝から足の指先まで」である。しかし,交通局では,勤務中常に制服の着用が義務付けられていて,男性は,夏でも半袖シャツ,長ズボンの制服を着用する必要がある。ほとんどないことではあるが,仮に交通局内の他の部署に異動になったとしても,ノースリーブや半ズボンで勤務することはない。肩や膝下の調査の必要性は皆無であり,本件調査対象部位は過度に広範囲なものである。また,対象となる入れ墨についても,いわゆるアートメイク以外にも,市民を畏怖させるおそれのないファッションとしてのタトゥーも除外すべきであった。
仮に書面による回答を求める場合にも,これを希望しない職員に対しては,他の聞き取り等の方法を併用することが十分に可能であったのに,控訴人は,これを行わなかった。
交通局長が,各職員の上司として職務に関連する事項につき命令することができるとしても,命令は,公務としての地位又は職務との関係において合理的な範囲内でなされなければならず,その範囲を逸脱することはできない。本件調査は,憲法上保障された職員の人権との関係で,合理的な範囲内の命令といえるか否かが問われているのであり,地公法及び地方公営企業法から直ちに本件調査に回答するよう命じることができるとはいえない。また,市教委においては,入れ墨の有無等に関する調査は任意で行われており,これによる支障は全く報告されていない。交通局においては,職員の入れ墨による問題が発生していなかったのであるから,仮に入れ墨の有無等に関する調査を行うとしても,任意に回答を求めることで十分であった。
(カ)

入れ墨が市民等の目に触れて不安感や威圧感を与えないようにするための手段として人事配置を行うということは,職員が,入れ墨があることで人事配置上不利益に扱われる可能性があることになる。そうすると,入れ墨を入れることを控え,又は多額の費用や身体的苦痛を甘受して既にある入れ墨を消去せざるをえなくなるから,精神的自由権たる表現の自由(憲法21条)ないし自己決定権(憲法13条)に対する萎縮効果(制約)となる。
また,人事配置という手段を選択すると,必然的にその前提として職員の入れ墨の有無というセンシティブ情報を把握することが必要となり,二次的により権利侵害性の強い手段の選択が不可避になる。その点においても重大な問題がある。それにもかかわらず,本件調査によっても職員の入れ墨の有無を完全に把握できるものではない。
他方,入れ墨が市民等の目に触れないようにするための手段としては,例えば,入れ墨を入れている職員は市民の目に触れないように隠せという職務命令を出すことや,職員の入れ墨が市民の目に触れ,不安感や威圧感を持ったという事象が発生した場合に注意指導,配置転換又は懲戒処分によって対応することを事前に周知しておくこと,実際にこのような事象が発生した場合に注意指導や,配置転換,懲戒処分等によって対応すること,各職場の管理職により外観上入れ墨が見えないかを確認することといった,職員の権利に対してより制約的でなく,かつ,目的達成のために十分な手段が存在する。
したがって,人事配置という手段は,市民等の目に触れないようにする手段としては,必要性も相当性も認められない。

憲法21条違反について
入れ墨は,自らの身体に直接刻み込むものである上,原則的には不可逆的なものであり,相当の覚悟や思いがなければ施さないものである。その思いはおしゃれであったり,誰かへの親愛の情であったり,何らかの誓いであったり,芸術表現であったりと人によって様々であるが,いずれにせよ,個々人の人格から発する表現行為であって,それを施す者にとって内心における精神作用の外部への現れである。その内心の内容によっては,自己の内心のやむにやまれぬ表現として施した入れ墨を他人に秘匿するということもある。
入れ墨を入れるか否か,入れ墨を入れていること,入れ墨を入れていることを他人に知らせるか否かは,精神的自由権として憲法21条の保護を受ける基本的人権である。したがって,本件調査は同条に違反する。ウ
本件調査が個人情報保護条例に反しないことについて

(ア)

本件入れ墨情報は,前記ア(ア)のとおり,個人にとって秘匿性の高い
センシティブな情報であり,個人情報保護条例6条2項の差別情報等に当たる。もとより,控訴人のいう「歴史的・社会的にみて普遍的に行われてきた,社会的に許容されない不合理な差別につながる事項に関するもの」にも当たる。
公衆浴場等への入場拒否は,誰とどのような契約を締結するか,又はしないかは原則として自由である民間の契約関係におけるものであるところ,憲法の直接適用を受ける地方公共団体が,民間と同じ発想でよい道理はない。また,入れ墨を施す行為を禁じる青少年保護条例は,入れ墨には自傷行為という側面があるとともに,一度入れると容易には消し得ないという特徴があるため,未熟な未成年者に対して第三者が入れ墨を施すことを禁じたものにすぎない。ここでの規制は,入れ墨を施す側に限られており,未成年者本人が入れ墨を施すことに対しては何らの規制もなく,入れ墨を容認できないという評価を含む類のものではない。入れ墨については様々な見解があるにもかかわらず,また,これを入れる理由は人により様々であるところ,その存在により市民等が不安感や威圧感を持つなどと地方公共団体たる控訴人が断定し,本件調査を断行したこと自体,それは特定の集団や属性に属する個人に対して特別な取扱いをするものであり,合理的な理由に基づいた社会的評価ではなく,社会的な差別である。
(イ)

本件調査は,個人情報保護条例6条2項1号の「法令又は条例に定めがあるとき」に該当しない。
地公法1条,5条,15条ないし22条,地方自治法154条等は,一般的な人事行政や指揮監督に関する権限を規定しているにすぎず,職員の入れ墨情報を収集,保管及び利用することができるとの明示の規定ではない。ましてやセンシティブ情報を例外的に収集することが許容される事由や要件について明確かつ具体的な定めがなされたものでもない。このような包括的な権限に基づいて個人情報保護条例6条2項の差別情報等を収集できるとすれば,職員に関する事項については,控訴人がいかなる個人情報であっても収集することが可能になってしまう。そのような解釈は誤りである。
個人の権利利益に深く関わり,重大な権利利益の侵害と結びつく可能性が高い情報の価値に鑑みると,同条項にいう法令等には,一般的な人事行政や指揮監督に関する権限を定めた規定は含まれないというべきである。
(ウ)

本件調査は,個人情報保護条例6条2項2号の「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」に該当しない。
前記ア(イ)のとおり,本件調査は,被控訴人ら職員を,控訴人が命じた本件調査票の提出に従わせること自体に目的があったと考えられる。そのような目的は,必要性・正当性を欠いている。
入れ墨の存在のみで人を排除したり,隔離するようなことは,あってはならない差別である。そのような排除が現実になされているとしても,それはあるべき規範である法令の解釈に影響を及ぼす事柄ではない。差別情報等の収集から保護するためには,「差別情報等を有している」という事実の入手だけではなく,有しているか否かを収集すること自体を禁じる必要がある。そうでないと,調査実施者は,調査を拒否したという事実から,対象者が差別情報等を有しているという情報を得ることができることとなり,差別情報等の収集を原則として禁じた個人情報保護条例6条2項の趣旨を没却することとなるからである。
仮に「事務の目的」が市民等の目に触れる可能性のある部分に入れ墨をしている職員の有無を把握し,当該部分に入れ墨をしている職員が市民等に接する機会の多い職務に従事している場合には,より市民等に接する機会の少ない職務を担当させるために,所属内の分担替えや配置換え,所属間異動などの人事配置を行うことであるとしても,本件調査が必要不可欠とはいえない。乗務前の身だしなみ点検によっても市民等の目に触れる可能性のある部分に入れ墨をしている職員の有無を把握することは可能であり,実際にもそれで人事配置に支障が生じたことはなかったからである。

A事件最高裁判決との関係
公務員労働者も憲法28条の「勤労者」に当たる。まして,被控訴人は地方公営企業職員であり,労働関係については民間の労働関係と実質において変わるところはない。また,地公法は,地方公務員も労働基準法上の労働者であり,基本的に労働基準法が適用されるとの前提で,地公法58条において,地方公務員に適用しない労働基準法の条項を挙げている。また,A事件において問題にされた労働者の調査協力義務は,労働基準法の特定の条項に関わるものではない。
したがって,公務員であるからといって使用者の一般的な支配に服する関係にあるとはいえず,A事件最高裁判決が示した法理は,原則として本件に妥当する。
本件職務命令において義務付けられたのは人事配置上の配慮のための事実調査に対する協力ではなく,本件調査票への記入及び提出である。被控訴人は,本件調査自体憲法に違反するものであり,憲法遵守義務を負う公務員として本件調査に応じることはできないとの確信を持っていたが,上司に目視により本件調査対象部位に入れ墨がないことを確認させることにより,本件調査の本来の目的である人事配置上の配慮のための事実調査には応じた。
したがって,本件職務命令の目的は,本件入れ墨情報に関する事実の調査にあったのではなく,命令に従わせること自体にあったといえる。本件職務命令は,労働者を使用者の一般的な支配に服することを強いる行為そのものであり,A事件最高裁判決がいう使用者としてなし得ない行為であるといえる。
(2)

本件処分の違法性について

(控訴人の主張)

公務員の服従義務との関係
まず,職務命令を訓令的職務命令と非訓令的職務命令とに明確に区別できるものではない。
次に,地公法32条の趣旨が,行政組織の統一性・効率的運営の確保にあることからすれば,その要請は,訓令的職務命令と非訓令的職務命令とを問わず,等しく妥当する。また,職務命令の名宛人は各職員であったとしても,地方公共団体における職務遂行の究極の目的は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,住民の信託を受けてこれを遂行することにある(憲法15条,地公法30条)ところ,職員個々が,市民に対して直接の責任を負わないにもかかわらず,後に誤りとされる可能性のある主観的判断により職務命令を拒否することを正当化すると,職場規律は維持できないし,円滑な組織運営にも支障を来す。
また,取消訴訟や国家賠償訴訟等において当該懲戒処分の必要性の有無や量定の軽重について争うことは何ら否定されるものではないし,当該懲戒処分の前提とする職務命令に係る瑕疵が重大かつ明白であって,客観的に無効であることが明らかな場合については,これへの不服従も認められるから,当該職員の権利保護に欠けるところはない。


本件処分の量定
被控訴人が本件職務命令を拒否したのは,差別情報等を収集されることを理由とするものでなく,自己の見解に反する調査に応じるよう命じられたことにより不快の念を抱いたとの身勝手な理由であり,これにより,控訴人は,本件調査の遂行が阻害され,それにより,本件調査の実施や人事配置上の配慮を行うとの調査目的の達成に現実の支障を来たしたし,また,控訴人の職場規律の維持にも重大な悪影響を及ぼした。
仮に本件調査等に個人情報保護条例違反の違法があるとしても,被控訴人のそのような職務違反行為に対して,職員基本条例において定められた量定のうち「職員の責任を指摘し,及びその将来を戒める処分」である戒告を相当と判断した本件処分に違法はない。

自己の法律上の利益との関係
仮に本件入れ墨情報が個人情報保護条例6条2項の差別情報等に当たるとして本件職務命令が同条項に違反するとしても,被控訴人は,本件調査対象部位に入れ墨がなく,本件調査によって差別情報等を収集される可能性はなかったのであるから,その違法は,何ら被控訴人の権利利益に関わるものではなく,本件調査等が同条項違反であるとの理由で本件処分の取消しを求めることはできない(行政事件訴訟法10条1項)。

(被控訴人の主張)

公務員の服従義務との関係
職務命令である以上,重大かつ明白な瑕疵があり,客観的に無効であることが明らかな場合以外はその違法を主張をして争うことはできないとの論は,既に過去のものとなっている特別権力関係論の焼き直しである。そして,本件職務命令は,非訓令的職務命令である。職員に対する命令(服装の指定,居住地域の指定,出張命令,論文執筆の制限)等については,職員の勤務条件,更には基本的人権に関係するものであり,これが違法になされたときにチェックする適切な者は当該職員以外にはいないから,当該職員はその職務命令を違法として争うことができる。


懲戒権行使の逸脱又は濫用
本件職務命令の内容は,人事配置上の配慮のための事実調査であること,本件調査は,必ずしも本件調査票を提出する形でしかなし得ないというものではないこと,被控訴人は,上司に入れ墨の有無について目視により確認をしてもらっていること,被控訴人は,本件調査票の提出については,それが憲法違反になるとの自らの確信に基づいて拒んでいること,これまで被控訴人の勤務においては何ら問題がなかったこと,被控訴人が本件職務命令に従わないことによって,職場において何らの影響もないこと等の事情に鑑みれば,本件処分については,仮にその前提となっている本件職務命令に問題がなかったとしても,懲戒権行使の逸脱又は濫用に当たる。ウ
自己の法律上の利益との関係
個人情報保護条例及び同条例6条2項の趣旨は,個人情報の保護であり,それには,差別情報等を保有しているか否かにかかわらず,差別情報等の有無につき尋ねられないという権利や利益が含まれる。したがって,被控訴人が,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として本件処分の取消しを求めているとはいえない。

(3)

損害賠償請求権の存否について

(被控訴人の主張)

本件調査について
個人の私生活上の自由の一つとして,何人も入れ墨をしているとの情報の開示を公権力により強制されない自由を有するところ,被控訴人は,本件調査により本件入れ墨情報についての回答を強制され,開示を強制されない自由及び権利(プライバシー権)を侵害された。これは,入れ墨の有無にかかわらず,被控訴人の人格的利益を侵害するものである。


執拗な働きかけについて
被控訴人は,一貫して本件調査には回答しない旨明言しており,また,控訴人宛郵送した書面では,回答に応じられない理由を明確に伝えた。しかし,その後も,D所長らは繰り返し被控訴人を呼び出し,分限免職処分の対象となる等と述べ脅迫した。また,E課長らは,被控訴人を呼び出し,1時間以上にわたる執拗な事情聴取を続けた。
D所長らやE課長らの回答要請や事情聴取は,パワーハラスメントともいうべき執拗なものであり,そのため,被控訴人は,本件調査に回答するか否かの心理的な葛藤を生じ,多大な精神的苦痛を受けた。

本件処分について
被控訴人は,本件処分を受けた後,原判決までの間,2年以上にもわたり,戒告処分を受けた職員として取り扱われてきた。控訴人の控訴により,被処分者として扱われる期間は更に延長された。被控訴人の受け続けてきた苦痛は,本件処分の取消しだけでは回復しない。

(控訴人の主張)

仮に本件入れ墨情報が個人情報保護条例6条2項の差別情報等に当たるとしても,同条項は,特に個人の権利利益に関わりが深く,重大な権利利益の侵害と結び付く可能性が高いと考えられる情報の収集を排除し,差別情報等を保有する被調査者の権利擁護を図ることを目的とするものであるところ,本件調査対象部位に入れ墨のない被控訴人との関係において,被控訴人に対する本件調査ないし本件職務命令が違法になる根拠はなく,また,被控訴人に何らの権利侵害も生じない。


仮に本件調査に何らかの違法があるとしても,本件調査には必要性・相当性があり,また,個人情報保護条例の理解については,極めて微妙な問題をはらむところ,控訴人においては,人事室での協議による検討やリーガルチェックも経ているのであって,国家賠償法上の故意・過失や違法性はない。

第3
1
当裁判所の判断
認定事実
原判決「事実及び理由」中の第3の1(原判決46頁26行目から48頁22行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
2
本件職務命令の適法性

(1)

憲法13条違反との主張について

当裁判所も,本件調査は憲法13条に反するものではなく,したがって,本件調査に回答することを求める本件職務命令も憲法13条に反するものではないと判断する。
その理由は,当審における被控訴人の主張に対する判断を後記イないしエに付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の2(1)(原判決48頁25行目から60頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


被控訴人は,審査基準について,他のより制限的でない他の手段が存在しない場合でなければならない旨主張するが,本件調査の目的の正当性,調査の必要性及び手段の相当性等を総合考慮して判断するのが相当であることは,原判決が49頁19行目から50頁7行目までにおいて説示するとおりである。


被控訴人は,本件調査は,上命下服の体制を実現するための施策の一環として行われたもので,人事配置上の配慮を行うためのものではなく,仮にそうであったとしても,正当性及び必要性はなかった旨主張する。しかし,まず,前記「認定事実」(6)及び(7)のとおり,本件新聞報道後,控訴人職員の入れ墨について,市民から,また,議会において,大きく問題視されていたことは明らかであり,そもそも職員の入れ墨について調査する必要がなかったとは考えられない。この点,証拠(甲64~73)から認められるB市長の発言内容等は,上記判断を左右するものではない。また,甲第76号証の意見書においても指摘されているとおり,入れ墨に対する人の見方は様々であって,かつ,それは時代によって変化しているとしても,現時点の我が国において,反社会的組織の構成員に入れ墨をしている者が多くいることは公知の事実であり,他人に入れ墨を見せられることで不安感や威圧感を持つことは偏見によるものであって,他人から入れ墨を見せられないように配慮することが許されないことであるといえる状況にはないというべきである。むしろ,そのような配慮は,現状において社会的相当性を有するものといえるのであって,控訴人職員の入れ墨が市民等の目に触れないよう,人事配置上の配慮のためにする本件調査の目的は正当というべきである。
そして,証拠(乙71,75)をも踏まえると,交通局において,職員の入れ墨についての調査として本件調査を行う必要性があったことは,原判決が54頁15行目から58頁6行目までにおいて説示するとおりであって,被控訴人の上記主張は上記判断を左右するものではない。

被控訴人は,本件調査は,調査対象が過度に広範囲であること,書面回答以外の方法を採用しなかったこと,任意調査にとどめなかったこと等の点において,その実施方法に相当性がない旨主張する。
しかし,まず,職員の執務時の体勢は,その執務の内容によって様々である(執務に当たって身体を動かす必要があるため一時的に着衣が乱れる可能性もある)ことを考慮すると,乗務前の毎日の身だしなみ点検が行われていることを前提としても,肩から手の指先,首から上,膝から脚の指先までの部位という本件調査対象部位が過度に広範囲であるとはいえない。また,どのような入れ墨に市民等を畏怖させるおそれがあるかは客観的に明らかとはいえないから,調査対象とする入れ墨についても,どのような形態のものであるかを問わないのが相当であるといえる上,職員のプライバシーの観点からは,むしろ入れ墨のデザインがどのようなものであるかに関わることなく,本件入れ墨情報を確認する方が相当ということができる。
そのほか,書面回答以外の方法を採用しなかったこと,任意調査にとどめなかったこと等の被控訴人が指摘する点についても採用できないことは,原判決が58頁8行目から60頁18行目までにおいて説示するとおりである。
したがって,被控訴人の上記主張は採用できない。
(2)

憲法21条違反との主張について
当裁判所も,本件調査等は憲法21条に反するものではないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」中の第3の2(2)(原判決60頁25行目から61頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。被控訴人の当審における主張は,上記判断を左右するものではない。
(3)

個人情報保護条例違反との主張について

6条2項に該当するか否か
同条例6条2項本文は,「実施機関は,思想,信条及び宗教に関する個
人情報並びに人種,民族,犯罪歴その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報を収集してはならない。」と規定して,個人情報のうち一定の範疇に属するものについては,実施機関がこれを収集することを原則として禁止するという規定である。本件調査は,上記のとおり,入れ墨の形状,模様等を直接情報として収集するものではなく,本件入れ墨情報(入れ墨の有無,部位及び大きさについての情報)を収集するものに過ぎず,思想,信条及び宗教に関する個人情報とは認め難いし,人種,民族,犯罪歴に関する個人情報でもないから,本件入れ墨情報が,同条項により対象とされている「その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」(差別情報)に該当するか否かを検討する。
同条例についての解説(甲47,乙41)をも参照すると,「その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」とは,そこで具体的に列挙されている人種,民族及び犯罪歴に関する個人情報と同様に,社会生活において一般的に知られることにより,特定の個人又はその関係者が社会的に不当な差別を受けるおそれのある情報をいうものと解すべきである。
そこで,この観点から,本件入れ墨情報が,人種,民族又は犯罪歴に関する個人情報と同じ範疇に属すると考えることができるかどうかにつき検討を加えることとする。
証拠(甲38,39,57,76)からもうかがわれるとおり,入れ墨を施す理由は,人によって様々であり,中には文化的・民俗的背景を有する場合もあるものの,他方,装飾(ファッション)の一種との意識で入れられることもあって,必ずしも人格に深く関わるものではない。また,自己の入れ墨を秘匿したいと考えるか否かも個々人によって異なる。このように,そもそも入れ墨をしているという属性とその者の人格との関係について一概に捉えることは困難なのであるから,社会生活において,入れ墨をしているという事実を一般的に知られることにより,特定の個人又はその関係者が社会的に不当な差別を受けるおそれがあるといえるかについても一概に論じることもまた困難であるというべきである。
加えて,反社会的組織の構成員に入れ墨をしている者が多くいることは公知の事実であるところ,他人に入れ墨を見せられることで不安感や威圧感を持つことは直ちに不当な偏見によるものであるということはできず,入れ墨をしている者に対して,その入れ墨を他人に見せることを状況に応じて制約することは社会的にはおおむね容認されているものといえる。そのほか,本件全証拠によっても,入れ墨をしていることを理由とする社会的に不当な差別が広く行われていることを示すものはない。
これらのことからすれば,入れ墨をしているという属性は,人種,民族又は犯罪歴といった属性と同列に考えることは相当でないものと考えられる。
以上のことについては,人種,民族又は犯罪歴を理由とする不当な差別の解消は,現に行政が積極的に取り組まなければならない課題といえるのに対し,現時点の我が国においては,入れ墨があることを理由とする不当な差別は,人種,民族又は犯罪歴を理由とする不当な差別と同列のものとして,行政がその解消に積極的に取り組まなければならないといえる状況にはないということもできる。
そうすると,本件入れ墨情報は,人種,民族又は犯罪歴に関する個人情報と同じ範疇に属するものと考えることはできないというべきであり,個人情報保護条例6条2項の「その他社会的差別の原因となるおそれがあると認められる事項に関する個人情報」には該当しないというべきである。イ
6条1項に反しないか
本件調査の目的は,前記2(1)において引用した原判決が51頁6行目から13行目までに認定するとおり,市民等の目に触れる可能性のある部分に入れ墨をしている職員の有無を把握し,当該部分に入れ墨をしている職員が市民等に接する機会の多い職務に従事している場合には,より市民等に接する機会の少ない職務を担当させるために,所属内の分担替えや配置替え,所属間異動などの人事配置を行うことであって,これは,明確であり,かつ,正当なものである。
また,本件調査の必要性及び手段の相当性については,前記2(1)及びこれにおいて引用した原判決「事実及び理由」中の第3の2(1)ウ及びエ(原判決54頁14行目から60頁18行目まで)の説示のとおりであり,これによれば,本件調査は,上記目的の達成に必要な範囲内で,適正かつ公正な手段により行われたものと認められる。
したがって,本件調査により本件入れ墨情報を収集することは,個人情報保護条例6条1項に反しない(なお,以上によれば,乗務前の身だしなみの点検ではまかなえない場面があり得ることや,従来執務に支障が生じたことがなかったとしても,控訴人としては,市政に対する市民等からの信頼を確保するために対応しなければならない状況であり,対応せずに執務に支障が生じた場合には,信頼失墜が甚だしいことが予想されることから,仮に本件入れ墨情報の収集が同条例6条2項に該当するとしても,本件調査による本件入れ墨情報の収集は,同項2号の「事務の目的を達成するために必要不可欠であると認められるとき」に該当し,同条2項に反しないといえる。)

6条2項1号に該当するか否か
本件調査による本件入れ墨情報の収集は,前記アのとおり,個人情報保護条例6条2項には該当しないものと判断されるが,念のため,同項1号に該当するか否かについても検討を加えることとする。
同条例6条2項1号は,法令等に定めがあるときは,例外的に差別情報等を収集することができることを定めている。ここに法令等に定めがあるときとは,法令等に収集することができることを明文で定めている場合のほか,法令等の規定の趣旨,目的からみて,収集することができるものと解される場合を含むものと解される(甲47,乙41)。
本件調査は,地方公営企業である交通局の管理者である交通局長の命令に基づいて実施されたものであり,地方公営企業法は,管理者が地方公営企業の職員の任免,給与,勤務時間その他の勤務条件,懲戒,研修及びその他の身分取扱いに関する事項を掌理する(同法9条2号)とともに,企業職員は管理者が指揮監督することを定めている(同法15条2項)ところ,上記指揮監督権は,補助機関を構成している公務員が一つの組織体をなして秩序整然と最良の補佐をなすことを担保するために認められている権限であるから,管理者は,必要があるときに,必要な方法によって補助機関である職員の職務の執行につき積極的に命令し,また,消極的にその義務に違反しないようにあらゆる措置を採ることができ,その措置には職員の身分取扱いに関する事項について種々の調査を行うことも含まれると解するのが相当である。
交通局長には,上記法令等に基づき,職員の身分取扱い等に関する事項について種々の調査を行う法的権限が付与されており,交通局長は,当該権限の行使として,地公法32条に基づき,職務命令として本件調査を行ったものであるから,上記法令等に基づく本件入れ墨情報の収集は,その趣旨・目的に照らした場合,同条例6条2項1号の「法令又は条例に定めがあるとき」に該当するものであるというべきである。
被控訴人は,上記のように解すると,職員に関する事項については,いかなる個人情報であっても収集することが可能になってしまう旨主張する。しかし,上記のとおり解しても,個人情報保護条例6条1項により,実施機関による個人情報の収集は,個人情報を取り扱う事務の目的を明確にし,当該明確にされた事務の目的の達成に必要な範囲内で,適正かつ公正な手段により収集しなければならないのであって,職員の個人情報を無限定に収集できることになるわけではないから,被控訴人の上記主張は採用できない。
(4)

A事件最高裁判決との関係について
被控訴人は,本件調査が労働者の調査協力義務を一定の場合に限られるとしたA事件最高裁判決の趣旨に反し違法であると主張するが,同判決は,地方公務員の調査協力義務について直ちに妥当するものではなく,本件の結論に影響を与えるものではない。

(5)

小括
以上によれば,本件職務命令は適法である。

3
本件処分の違法性
被控訴人は,本件処分は,交通局長の裁量権を逸脱又は濫用するものであるから違法である旨主張する。
本件調査は,前記2のとおり,適法であるから,交通局の職員に対してこれへの回答を命じる本件職務命令は,地公法32条に基づく適法な職務命令である。そして,被控訴人は同命令に違反して本件調査票を提出しなかったのであるから,被控訴人の当該行為は,地公法29条1項1号に該当し,また,職務上の義務に違反する行為であり,かつ,全体の奉仕者としてふさわしくない非行でもあるから,同項2号及び3号にも該当するといえる。
加えて,被控訴人は,前記「前提事実」(4)オないしサのとおり,上司が再三にわたって指導等をしたにもかかわらず,これに従わなかったのであり,職場の組織秩序を乱したことは明らかであるから,被控訴人が,本件職務命令違反によって,控訴人の公務の運営に支障を生じさせたともいえる。したがって,被控訴人の当該行為は,職員基本条例28条により,同条別表11号の「職務命令違反行為により,公務の運営に支障を生じさせること」に該当し,被控訴人に対しては,減給及び戒告のうちから,職員が行った非違行為の動機及び態様,公務内外に与える影響,当該職員の職責,当該非違行為の前後における当該職員の態度等を総合的に考慮して,懲戒処分が行われることになる。
交通局長は,このうち軽い方の処分である戒告処分を相当と判断して,被控訴人の行為について地公法29条1項1ないし3号並びに職員基本条例28条1項及び別表11号に基づき,本件処分をしたものである。被控訴人の挙げる諸事情を考慮しても,交通局長がした本件処分に裁量権の逸脱又は濫用があったとは認められない。
以上によれば,交通局長が被控訴人に対してした本件処分は違法ではないから,被控訴人の本件取消請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
4
損害賠償請求権の存否
当裁判所も,本件損害賠償請求は理由がないものと判断する。
その理由は,次のとおり改めるほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の4(原判決67頁4行目から68頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。被控訴人の当審における主張は,上記判断を左右するものではない。
(1)
「(2)

原判決67頁7行目から15行目までを次のとおりに改める。
①については,本件調査等は,前記2のとおり,適法である上,被控訴人は入れ墨をしておらず,当該職員が入れ墨をしていないとの情報は,開示されることによって同人に対する差別の原因となるおそれが生じるものではなく,秘匿すべき情報でもないから,本件調査等によって,被控訴人の人格的利益が侵害されたということはできない。」

(2)

原判決68頁6行目から14行目までを次のとおりに改める。

「(4)

③については,前記3のとおり,本件処分は違法ではない。」
5
結論
以上の次第で,被控訴人の請求は,いずれも理由がないから,原判決は,同請求を一部棄却した部分は相当であるが,一部認容した部分は不当である。よって,本件控訴に基づき,原判決中控訴人敗訴部分を取り消して,同取消部分に係る被控訴人の請求を棄却し,本件附帯控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第8民事部

裁判長裁判官

山田知司
裁判官

寺本佳

裁判官

中尾彰
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