判例検索β > 平成27年(ネ)第697号
損害賠償請求控訴事件
事件番号平成27(ネ)697
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判年月日平成27年12月16日
法廷名大阪高等裁判所
戻る / PDF版
平成27年12月16日判決言渡し
平成27年(ネ)第697号,同年(ネ)第1887号

損害賠償請求控訴事件,同附

帯控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成24年(ワ)第4348号〔以下「甲事件」という。〕,同年(ワ)第12059号〔以下「乙事件」という。〕)主文1
控訴人市の控訴を棄却する。

2
控訴人P1の控訴及び被控訴人らの附帯控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

3
控訴人市は,被控訴人P2らに対し,各1万円及びこれに対する平成24年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
控訴人市は,被控訴人組合らに対し,各10万円及びこれに対する平成24年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5
控訴人市は,被控訴人P3に対し,1万5000円及びこれに対する平成24年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

6
被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

7
訴訟費用(控訴費用,附帯控訴費用を含む。)は,第1,2審を通じて,控訴人P1に生じた費用を甲事件被控訴人らの負担とし,控訴人市及び被控訴人らに生じた費用の各30分の1を控訴人市の負担とし,その余を被控訴人らの負担とする。

8
この判決は,3項ないし5項に限り,仮に執行することができる。事
第1
1実及び理由
当事者の求める裁判
控訴人市
(1)

原判決中,控訴人市の敗訴部分を取り消す。

(2)

上記取消しに係る被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

2
控訴人P1
(1)
(2)

3
原判決中,控訴人P1の敗訴部分を取り消す。
上記取消しに係る甲事件被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

被控訴人ら
(1)

原判決を次のとおり変更する。

(2)

控訴人らは,被控訴人P2らに対し,連帯して,各30万円及びこ
れに対する平成24年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)

控訴人らは,被控訴人組合らに対し,連帯して,各100万円及び
これに対する平成24年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)

控訴人市は,被控訴人P3に対し,125万円及びこれに対する平
成24年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2
1
事案の概要
本件のうち,甲事件は,控訴人市の職員である被控訴人P2ら28名及び控訴人市の職員により組織された労働組合,職員団体又はこれらの連合団体である被控訴人組合ら5団体が,控訴人市の市長,交通局長及び水道局長(以下「市長等」という。)が平成24年2月,それぞれが所管する部局の職員に対し,控訴人市の特別顧問である控訴人P1を構成員とする第三者調査チームが作成した記名式による労使関係に関するアンケート(以下「本件アンケート」という。)に回答するよう職務命令を出し,その実施とともにその結果を集計しようとしたところ,違憲・違法な本件アンケートの実施により被控訴人らの思想・良心の自由,プライバシー権,政治活動の自由及び団結権が侵害され,被控訴人P2らにおいて精神的損害を,被控訴人組合らにおいて無形的損害を被ったとして,控訴人市の市長ら公務員による行為と控訴人P1による行為が
共同不法行為を構成するとし,控訴人市に対して,国家賠償法1条1項及び民法719条1項に基づき,控訴人P1に対して,民法709条及び719条1項に基づき,連帯して,損害賠償金(被控訴人P2らにつき各30万円,被控訴人組合らにつき各100万円)及びこれに対する違法行為後の日である平成24年5月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
また,本件のうち,乙事件は,控訴人市の職員として交通局に所属する被控訴人P3が,上記同様に,違憲・違法な本件アンケートの実施により精神的損害及び弁護士費用相当額の損害を被ったとして,控訴人市に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金125万円及びこれに対する違法行為後の日である平成24年12月27日から支払済みまで前同様の遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,被控訴人らの請求をそれぞれ一部認容し,甲事件につき,控訴人らに対し,連帯して,被控訴人P2らに各5000円及びこれに対する平成24年5月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を,被控訴人組合らに各5万円及びこれに対する前同日から前同様の割合による金員を,乙事件につき,控訴人市に対し,被控訴人P3に1万円及びこれに対する同年12月27日から支払済みまで前同様の割合による金員を支払うよう命じ,被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却した。
そこで,控訴人らが控訴をし,被控訴人らが附帯控訴をして,それぞれ前記第1の判決を求めている。
2
前提事実,争点及び各争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,後記3のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1ないし5(原判決3頁13行目から45頁2行目まで。なお,以下に摘示する原判決の引用部分は,いずれも原判決の「事実及び理由」中の記載に関するものであり,以下,その旨の摘示を省略する。)に記載
のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決13頁14行目の「臨時的任用職員」の次に「,消防局職員」を
加える。
(2)

原判決16頁3行目の「臨時的任用職員」の次に「,消防局職員」を加
える。
(3)

原判決18頁23行目の「(弁論の全趣旨)」を「(甲74,弁論の全
趣旨)」と改める。
(4)

原判決19頁21行目の「なお,」から23行目末尾までの文章を「な
お,本件職務命令につき,被控訴人職員らに対する関係では,被控訴人職員ら各人の所属の長によるもののみが問題となる。)。」と改める。(5)

原判決120頁(別紙4中Q1~4)における「Q4」の「設問内容」
欄中の「18.管理事務職員」を「18.監理事務職員」と,「41.事業担当主事」を「41.事業担当主事補」と,「43.生活支援員補」を「43.生活支援員」と,「49.養護職」を「49.養護職員」とそれぞれ改める。
(6)

原判決121頁(別紙4中Q5)における「アンケートの内容,設問内
容」欄中の「8.部門管理主任」を「8.部門監理主任」と改める。(7)

原判決122頁(別紙4中Q6)における「アンケートの内容,設問内
容」欄中1行目の「これまでの」を「これまで被告市の」と,「原告ら」の「団結権」項中第3段落2行目の「とっても。」を「とっても,」とそれぞれ改める。
(8)

原判決131頁(別紙4中Q10)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」第3段落6行目及び第4段落3行目の各「調査対象」を「調査できる対象」とそれぞれ改める。(9)

原判決132頁(別紙4中Q10)における「被告ら」の「プライバシ
ー権」項中第2段落3行目の「における」を「被告市における」と改める。
(10)

原判決133頁(別紙4中Q11)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」第2段落15行目から16行目にかけて及び第3段落4行目の各「調査対象」を「調査できる対象」とそれぞれ改める。
(11)

原判決134頁(別紙4中Q11)における「被告ら」の「プライバシ
ー権」項中2行目から3行目にかけての「における」を「被告市における」と改める。
(12)

原判決138頁(別紙4中Q13)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」4行目の「調査対象」を「調査できる対象」と改める。
(13)

原判決140頁(別紙4中Q14)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」第1段落10行目,第2段落8行目及び第3段落3行目の各「調査対象」を「調査できる対象」とそれぞれ改める。
(14)

原判決142頁(別紙4中Q15)における「被告ら」の「プライバシ
ー権」,「政治活動の自由」及び「団結権」の各項中各2行目の「における」を「被告市における」とそれぞれ改める。
(15)

原判決145頁(別紙4中Q17)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」第2段落10行目から11行目にかけての「調査対象」を「調査できる対象」と改める。(16)

原判決147頁(別紙4中Q18)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」第1段落13行目の「調査対象」を「調査できる対象」と改める。
(17)

原判決149頁(別紙4中Q19)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」第2段落10行目から11行目にかけての「調査対象」を「調査できる対象」と改める。
(18)

原判決153頁(別紙4中Q21)における「原告ら」の「調査対象及
び調査の必要性」項中「(被告らの主張に対する反論)」第2段落8行目及び「団結権」項中「(被告らの主張に対する反論)」第1段落5行目の各「調査対象」を「調査できる対象」とそれぞれ改める。
3
当審における当事者の補充主張
(1)

控訴人市の補充主張
本件アンケートの作成及び実施主体について
本件アンケートは,第三者調査として控訴人市から委託を受けた本件調査チームが作成したものであって,控訴人市は,その作成に関与していない。なお,控訴人P1は,本件アンケートの作成に先立ち,自ら関係者からの聴き取りをし,資料を確認し,報道等に接するなどした結果,偶々,市長と同様の問題意識を抱くに至ったに過ぎない。


本件アンケートの違法性に係る判断枠組みについて
本件アンケートの設問自体に被控訴人らに対する権利侵害がないとすると,その必要性や相当性について問題となる余地がない。本件アンケートの設問自体に同権利侵害がないことは,原判決添付の別紙4主張対照表記載のとおりであって,仮に,権利侵害に当たる設問があるとしても,以下のウないしカの事情からして,同設問が違法とはいえない。


本件アンケートの目的について
本件アンケートは,大阪市政に関する実態調査をした上,同市政の健全な運営を意図して実施したものであって,労使関係の適正化そのものに限った目的で実施したものではない。このことは,労使関係の問題が,市長の公約や,挨拶等において掲げられた政策全体の中の一部に止まっていることなどからも明らかである。


本件アンケートを実施する必要性について
控訴人市において,かねてから労使関係について,使用者側と多数組合
が癒着し,少数組合に不利益を与えているのでないかという問題,勤務時間内に組合活動がされる問題,職員による刑事事件が頻発する問題等,深刻な問題があった。なお,控訴人市が設置していた目安箱にも,不適切な労使関係の実態を訴える多数の投書があり,また,本件アンケートの後も,懲戒処分を伴う不祥事が相次いでいた。
平成24年当時,控訴人市においては,労使関係の適正化のため,実態調査をする必要性があった。

本件アンケートの手法の相当性について
控訴人市は,本件アンケートの設問も含めてその作成に関与していない。市長等は,職員宛て市長メッセージ等において,本件アンケートの主体が控訴人P1を中心とする本件調査チームであることを明確にした上,本件調査チームしか内容を見ないことや,記載内容によって人事上の不利益がないことなどを記載していて,威嚇力や強制性,萎縮効果等に配慮している。


本件アンケートにおける個別の設問について
控訴人市は,控訴人P1の主張を援用する。なお,各設問は,労働組合を「適正化」させることを意図し,弱体化させることを意図したものでない。


控訴人市の故意過失について
本件アンケートは,前記アのとおり,控訴人P1が作成し,第三者調査として独立性,中立性を有する本件調査チームが実施したものである。本件アンケートのように独立性,中立性を有する第三者委員会が第三者調査として実施する場合,委託者に同実施によって責任が生じるためには,少なくとも,委託者にとって同調査の実施が違法なものであると予見できるような特段の事情が必要である。しかし,市長等が,本件アンケートの内容を事前に確認していないこと,そのような確認等自体が予定されていな
かったこと,また,総務局長等において,第三者調査に関与してはならない旨,指示されていたことからして,同特段の事情がなかった。そして,控訴人市には,本件調査チームとの間で信頼の原則が妥当し,また,結果回避可能性がなかったといえることからして,過失責任を基礎づける注意義務違反があったとはいえない。仮に,第三者調査を依頼し,同調査に協力するよう職員らに命じた委託者に同調査についての注意義務違反があるとすると,委託者による同調査への介入(事前検閲)を許容することになることからして,不当である。
(2)

控訴人P1の補充主張
本件アンケートの作成及び実施主体について
本件アンケートは,控訴人市から独立し,中立の立場にある控訴人P1が作成し,第三者委員会である本件調査チームが実施したものである。控訴人P1は,関係者からの聴き取りや過去の資料の調査等をした上,自らの問題意識に基づいて本件アンケートを作成したが,その際,市長や控訴人市から指示等を受けていない。


本件アンケートの目的について
控訴人P1は,本件アンケートを控訴人市全体に対する実態調査として実施したものであって,被控訴人らの権利侵害や労働組合の弱体化を意図していなかった。
控訴人P1は,従前,控訴人市と何らの利害関係もなく,市長と面識もなく,本件アンケートの実施に当たって,従前から続く労使癒着の構造が解消され,健全な労使関係が構築されることで市民の利益に資するということを意図していたにすぎない。


本件アンケートを実施する必要性について
控訴人P1が,控訴人市から,職員による違法行為等の原因調査を依頼された平成24年1月当時,控訴人市では,労使癒着というべき状況があ
り,違法行為等が多数表面化していた。控訴人P1は,過去の資料や目安箱への投書を確認し,関係者らから聴き取りをし,それらの内容等から労使共に現状を良しとし,結託していると疑われる状況にあると考え,聴き取りには限界があり,アンケート調査が有用であると判断した。本件アンケートは,これを実施する必要性があった。

本件アンケートの手法の相当性について
本件アンケートが,中立性と独立性を有した本件調査チームによる第三者調査として実施されたものであることは,上記アのとおりである。本件調査チームには,外部アドバイザーとして市長に協力していたP4特別顧問が参加していたが,その参加によって本件アンケートの設問内容等が影響を受けたことはない。また,本件アンケートの設問に問題がなかったことは,後記オのとおりである。


本件アンケートにおける個別の設問について
本件アンケートにおける個別の設問に違法性がないことは,別紙3主張対照表中の控訴人らに係る「控訴審での補充主張」欄記載のとおりである(なお,別紙3は,前記訂正後の原判決添付の別紙4に「控訴審での補充主張」欄を加えたものであり,別紙3に「原告」,「被告」とある点は,いずれも「被控訴人」,「控訴人」を指している。)。


控訴人P1の故意過失について
本件調査チームは,被控訴人職員らの使用者でないから,本件調査チームが実施した本件アンケートの実施により被控訴人らの権利が直接侵害されることがなく,したがって,控訴人P1には,被控訴人らの権利を侵害する認識がなかった。仮に,調査の委託者である控訴人市や市長に同侵害の意図があったとしても,それによって,同意図を知らない第三者調査の受任者であった控訴人P1に責任が生じることは,控訴人P1をして過大な負担を課すことになり,不当である。


控訴人P1の個人責任について
仮に,本件アンケートの実施主体が控訴人市であったとしても,控訴人P1は,個人として公権力行使の一部に関与したにすぎないことからして,個人責任を負わない。

(3)

被控訴人らの補充主張
本件アンケートの作成及び実施主体について
本件アンケートは,市長の意図に基づき企画され,市長の意図に基づき控訴人P1が作成した上,控訴人市が実施したものであることからして,控訴人らが一体となって実施したものというべきである。
ところで,控訴人らは,控訴人らの間で意思の疎通がなかった旨主張する。しかし,本件アンケートの設問が,市長の問題意識そのものを反映していて,控訴人市における研修計画にも言及していること(Q11)からしても,市長と控訴人らが一体となって作成し,実施したものというべきである。


本件アンケートの違法性に係る判断枠組みについて
本件アンケートの実施は,思想・良心の自由,政治活動の自由,プライバシー権,団結権といった優越的な地位にあり,また,保護の必要性が極めて高い権利を侵害するものであるから,その違法性の判断に当たっては,まず,本件アンケートの目的,必要性,手法について高度な合理性があるかを検討し,これらが認められない場合には,個々の質問の是非について検討するまでもなく,本件アンケートの実施そのものが違法になるというべきである。


本件アンケートの目的について
市長は,被控訴人組合らが,市長選挙において対立候補を支援したことを逆恨みし,被控訴人組合らを敵視し,無力化させる意図を有していたところ,本件アンケートは,同意図に基づいて作成され,実施されたもので
ある。また,同意図は,組合の適正化と称しつつその弱体化を目的としたものであって,回答者をして,被控訴人組合らが,違法ないし不当な活動をしていたと強く印象づける目的を持ったものであった。

本件アンケートを実施する必要性について
探索的な強制調査は,そもそも許されないし,また,調査への協力が職務内容となっている従業員以外については,原則として,調査協力義務を負わないとすべきである(最高裁判所昭和52年12月13日第三小法廷判決・民集31巻7号1037頁〔富士重工事件最判〕参照)。
ところで,控訴人市に,平成24年当時,制度として問題があるというべき事柄はなかったし,控訴人らが主張する不祥事の事案は,個別かつ特殊なものであったから,これらを理由に,本件アンケートを実施しなければならない必要性もなかった。


本件アンケートの手法の相当性について
本件アンケートのような手法によらずとも,管理職に対する調査に限定することや,任意調査を先行させることが考えられたし,仮に,強制的で探索的な調査をするとしても,その趣旨や必要性等について調査対象者に十分な説明をする必要がある。
また,本件調査チームに加わったP4特別顧問は,市長の指名により,市長が進める組合適正化施策を取りまとめる立場にあった人物である。そして,本件アンケートの内容は,市長の問題意識が質問化されたというべきものとなっている。以上のことからしても,本件アンケートは,独立した第三者が作成,実施したものとはいえない。


本件アンケートにおける個別の設問について
本件アンケートにおける個別の設問に違法性があることは,別紙3主張対照表中の被控訴人らに係る「控訴審での補充主張」欄記載のとおりである。


控訴人市の故意過失について
控訴人市は,前記アのとおり,本件アンケートの作成に深く関与し,事前にその内容を確認した上,その実施に当たって本件職務命令を出し,控訴人市の職員らにこれへの回答を強制した。市長・総務局長等は,本件アンケートの実施により,被控訴人らの権利を侵害しないかについて事前に確認し,検討すべきであったのに,これを怠った。したがって,控訴人市には,違法な本件アンケートの作成,実施について,故意過失がある。

控訴人P1の故意過失について(甲事件被控訴人らの主張)
控訴人P1は,市長の意図に基づき本件アンケートを作成しており,本件調査チームは,控訴人市から独立したものでも,中立なものでもなかった。また,控訴人P1は,弁護士として,控訴人市の本件アンケートの実施が,違憲で違法であることを認識することができた。したがって,控訴人P1には,違憲で違法な本件アンケートの作成,実施について,故意過失がある。


控訴人P1の個人責任について(甲事件被控訴人らの主張)
控訴人P1は,控訴人市の特別顧問であるが,公務員としての身分を有していないし,また,本件アンケートの作成等という公権力の行使に当たらない態様で本件アンケートの実施等に関与している。したがって,控訴人P1は,私人としての不法行為責任を免れないというべきである。

損害額について
本件アンケートにより侵害された被控訴人らの権利が,いずれも憲法上の権利であること,その侵害が,踏み絵に類する質問を強制するという態様でされたことからして,被控訴人らが請求する損害額は,同権利の侵害に対する賠償として最低額というべきである。

第3
1
当裁判所の判断
判断の概要等

当裁判所は,被控訴人らの控訴人市に対する請求について,主文3項ないし5項記載の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は,理由がないからいずれも棄却し,甲事件被控訴人らの控訴人P1に対する請求は,理由がないからいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおりである。2
認定事実
前記前提事実(前記第2の2により補正した後のもの。以下同じ。),各項末尾に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実については,次のとおり補正するほかは,原判決の第3の1(1)イ(原判決47頁10行目から55頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。(1)

原判決50頁22行目末尾に,改行の上,「このように,控訴人市から
控訴人P1に対する第三者調査の依頼に関しては,1月10日の市長による短時間の電話(上記a)と,同月12日に上記の特別顧問設置要綱に基づく委嘱があったことと,既に控訴人市の特別顧問に就任していたP4特別顧問が同月10日に控訴人P1と面談をして,同調査の依頼をしたのみであり,本件調査チームが第三者委員会として独立性,中立性の確保を有することや,調査結果の取扱いなどについて,明確な合意がされていることを確認し,対外的に説明できるような文書の作成はされなかった。」を加える。(2)

原判決51頁21行目の「事情聴取」を「意見聴取」と改める。

(3)

原判決55頁2行目末尾に,改行の上,「この経緯の中で,市長・総務
局長等が本件アンケートの内容について修正を求めたり,改変したりすることはなかった。」を加える。
3
本件アンケートの作成及び実施主体について
(1)ア

前記前提事実及び前記2で認定したとおり,本件アンケートは,控訴
人P1が,原案を作成し,本件調査チームを構成するP4特別顧問及びP5特別参与の意見を聴いた上,完成させたものであること,控訴人P1は,市長に対し,本件アンケートの実施を伝え,市長メッセージへの署名を求
め,市長は,これを了承して同署名をし,市長職務命令を発したこと,控訴人P1は,人事課担当者に対し,本件アンケートの実施を指示し,総務局長等は,本件アンケート依頼文書を作成し,本件決裁等をするなどしたこと,これを受けて,交通局等においても,交通局長等メッセージが作成され,交通局長等職務命令が発せられたこと,これらの過程において,本件調査チームが作成した本件アンケートの内容について,市長・総務局長等が修正を求めたり,改変したりしていないことがある。
また,前記前提事実のとおり,本件アンケートに先立つ平成24年1月21日当時,市長は,全局長及び全区長に対し,市長に代わり,特別顧問らが調査をする旨伝えていること(原判決第2の1(4)ア(ウ)),職員宛て市長メッセージ等には,控訴人P1のもとで本件アンケートを実施する旨の記載がされていること(同第2の1(4)ウ(ア)及び(エ))がある。以上の事情を踏まえると,本件アンケートは,控訴人P1を中心とする本件調査チームが,控訴人市における違法行為等を第三者調査するに当たって,実情を調査する趣旨で実施したという一面があった。

しかし,上記アで認定したような事情がある一方で,特別顧問設置要綱上,特別顧問及び特別参与は,市長又はその指示を受けた者に対し,指導や助言をする者であるが,市長は,控訴人市の全局長及び全区長に対し,特別顧問が,市長の身代わりであり,市長に代わって調査をする旨,職員らに徹底するよう指示していたこと(原判決第2の1(4)ア(イ)及び(ウ)),本件調査チームについて,その独立性,中立性の担保を確認した合意文書等が存在しないこと,本件調査チームの一員であるP4特別顧問は,本件調査チームによる第三者調査に先立つ平成23年12月27日,特別顧問の委嘱を受け,同月から,市長の指示を受けて,市長の市政運営方針に沿った「対組合関係適正化条例」に係る条例案等の検討等をしていた者であって,控訴人市及び市長から独立した立場になかったこと(原判
決第3の1(1)イ(イ)c及びf)からすると,本件アンケートは,本件調査チームが実施主体とされたものの,本件調査チーム自体が市長等からの独立性,中立性を確保していたのか,また,本件調査チームの構成員である特別顧問らが市長等からの独立性,中立性を確保していたのか,必ずしも明らかでなく,その他,同独立性,中立性を確保していたと認めるに足りる証拠はない。また,職員宛て市長メッセージ等には,本件アンケートを控訴人P1のもとで実施すると記載するとともに,職務命令として,真実を正確に回答するよう求めた上,正確な回答をしていない場合には処分の対象となり得る旨,また,違法行為の回答があった場合は,懲戒処分における量定を軽減する旨の記載がされていたこと(同第2の1(4)ウ(ア)及び(エ)),市長部局の各職員に送信された本件アンケート実施メールでも,本件アンケートに真実を正確に回答しない場合は,処分の対象となり得る旨が重ねて記載されたこと(同第2の1(4)エ)がある。そして,本件アンケートは,職制を通じて,職員らに対する周知や配布がされた上,庁内ポータル上にある本件アンケートサイトを用いる方法や,職制を通じた回収方法によって,回収がされたこと(同第2の1(4)エ及びオ)がある。
以上の事情を総合すると,本件アンケートは,本件調査チームが控訴人市と別個独立に実施したものと認めることはできず,かえって,控訴人市と本件調査チームとが共同して実施したものであって,その実施を受けた職員らにおいても,そのように受け止めたことが推認される。
(2)

控訴人らは,本件アンケートは,第三者調査として本件調査チームが作
成をし,実施したものである旨主張する。しかし,上記(1)イの認定説示を覆すに足りる証拠はない。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用できない。
4
本件アンケートの違法性に関する判断枠組みについて

(1)

本件アンケートにおける設問と,具体的な質問内容及び回答方法につい
ては,前記前提事実において認定説示したとおりであり(原判決第2の1(3)),22個の設問項目のうち,5個(Q1から5)は,回答者の氏名や属性を形式的に確認するにすぎないものであって,その余の17個(Q6から22)が,実質的な調査に係る設問である。
(2)

ところで,被控訴人らは,本件アンケートの実施について,思想・良心
の自由等,保護の必要性が極めて高い権利の侵害が問題となることから,本件アンケートの目的,必要性,手法について高度の合理性がない場合には,その実施自体が違法になるというべきである旨主張する。しかし,前記前提事実において認定するとおり(原判決第2の1(3)),上記の17個の設問は,その内容とともに侵害が問題となる権利の内容及びその侵害の程度のほか,設問を設けることの合理性等を異にしているというべきである。したがって,被控訴人らの上記主張は,採用できない。
(3)

そこで,以下,設問ごとに設問の内容と,当該設問によって侵害され得
る被控訴人らの権利を確認した上,同侵害のおそれがある場合には,当該設問による調査をする合理性があると認められるかを,本件アンケートの目的や調査の必要性,調査方法の相当性を踏まえて判断することとする。5
各設問の違法性について
(1)

Q1から5までについて
これらの設問の内容と,これらの設問が,被控訴人らに不利益を与え,そ
の権利を侵害するものであったと認められないことは,原判決第3の1(1)カ(ア)(原判決68頁14行目から69頁9行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(2)

Q6について
設問の内容について
Q6は,これまでに控訴人市の組合らが行ってきた労働条件に関する組
合活動への参加について,参加の有無及び勧誘の有無を尋ね,勧誘があった場合は,勧誘者の氏名を任意回答としつつも,勧誘内容や勧誘がされた時間,場所に係る回答を求めるものである。

思想・良心の自由の侵害について
Q6が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものといえないことは,原判決第3の1(1)カ(イ)a(原判決69頁16行目から70頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


プライバシー権の侵害について
Q6が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(イ)b(原判決70頁22行目から71頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

団結権の侵害について
Q6が,被控訴人らの団結権を侵害するものであったと認められることは,次のとおり補正するほか,原判決第3の1(1)カ(イ)c(原判決71頁20行目から73頁25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(ア)

原判決72頁8行目冒頭から24行目末尾までを次の文章に改める。
「しかしながら,Q6の設問は,控訴人市のほぼ全職員を対象として労働条件に関する組合活動への参加について,勤務時間の内外や,職場の内外を問わず,一律に回答させ,また,同活動への参加が自発的か否かまで回答させる内容となっている。このような設問内容は,控訴人らが主張する勤務時間内組合活動及びヤミ便宜供与等の実態確認調査という趣旨からして,合理的な必要性を超えた,過度に広範な設問というほかない。」
(イ)

原判決72頁25行目の「また,」から73頁4行目末尾までを次
の文章に改める。

「また,Q6では,当該組合活動を誘った人物の氏名について質問がされているところ,控訴人らは,当該質問部分は,任意回答であることが明示されているから問題がない旨主張する。しかしながら,同設問によって勧誘者の具体的氏名と勧誘内容が使用者側に回答される可能性があるところ,以上の事情に「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動,組合活動などについて,次々に問題が露呈しています。この際,・・・膿を出し切りたいと考えています。」との記載のある職員宛て市長メッセージが本件アンケート用紙に添付されていたこと(原判決第2の1(4)ウ(ウ),エ(イ))を総合すると,かかる設問による調査により,組合活動への勧誘をする者に対して強い萎縮効果を生じさせることが推認され,同認定を覆すに足りる証拠はない。」
(ウ)

原判決73頁11行目の「オ(オ)で述べた」を「の」と改め,13
行目の「得ないといえる」から23行目末尾までを次の文章に改める。「得ないといえるし,上記(c)のとおり,任意回答とはいえ,組合活動への勧誘者の氏名まで回答を求められることにより,新たな組合員を勧誘する活動を萎縮させる効果があるといえる。
このように,Q6は,被控訴人職員らを含む回答者らに多大な懸念や動揺を与え,組合活動への参加や勧誘を萎縮させるものであったといえる。」
(エ)
「(f)

原判決73頁25行目末尾に,改行の上,次の文章を加える。
控訴人らは,Q6につき,被控訴人らの団結権を侵害する意図は

なかったし,自らの違法行為に関する回答を強いず,勧誘者の氏名について任意回答とする配慮をしているから,不必要に過度に広範な回答を求めるものではなかった旨主張する。しかしながら,控訴人らが主張する意図や配慮に関わらず,Q6の設問内容が,被控訴人らの団結権を侵害する内容となっていることは,上記認定説示したとおりである。した
がって,控訴人らの上記主張は,採用できない。」

小括
以上のとおり,Q6は,被控訴人職員らの思想・良心の自由及びプライバシー権を侵害するものとはいえないが,被控訴人らの団結権を侵害する,違法な内容の設問であったというべきである。

(3)

Q7について
設問の内容について
Q7は,この2年間に,特定の政治家を応援する活動(知り合いの住所等を知らせること及び街頭演説を聴く程度の活動を含め)への参加について,参加の有無及び勧誘の有無を尋ね,勧誘があった場合は,勧誘者の氏名を任意回答としつつも,勧誘によって参加した活動の内容や勧誘の時間,場所に係る回答を求めるものである。


思想・良心の自由の侵害について
Q7が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(ウ)a(原判決74頁9行目から17行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


プライバシー権の侵害について
Q7が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったと認められることは,次のとおり補正するほか,原判決第3の1(1)カ(ウ)b(原判決74頁18行目から76頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(ア)

原判決74頁20行目の「被告らは,」の次に「控訴人市において
は,労使癒着の構造が存在していて,」を,26行目の「限定することなく」の次に「,街頭演説を聴く程度のものも含めて」をそれぞれ加える。
(イ)

原判決75頁3行目の「そして,」から12行目末尾までを次の文
章に改める。
「そして,勤務と無関係に,特定の政治家を応援したか否か,それが自発的な意思に基づくものか否かといった事項は,私生活上の個人の内心にわたるものであって,使用者への開示が予定されたものでなく,被控訴人職員らを含めた控訴人市の職員自身も一般的にその開示を望まないことが容易に想定できることからして,個人のプライバシーに属する事項というべきである。」
(ウ)

原判決75頁13行目の「以上で」から22行目末尾までを次の文
章に改める。
「以上によれば,Q7は,調査の必要性に照らして過度に広範に,個人のプライバシーに属する事項を尋ねるものであるところ,かかる質問を,たとえ当該政治家の氏名を問わず,勧誘者の氏名について任意回答にしたとはいえ,正確に回答しなければ懲戒処分があり得るとして,本件職務命令によって回答させることは,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害する違法があるというべきである。」
(エ)

原判決75頁24行目の「いるのであり,」の次に「また,当時,
労使の癒着した構造が指摘されていたことからしても,」を加える。エ
政治活動の自由の侵害について
(ア)

まず,前提として,被控訴人職員らのうち,控訴人P6,同P7,
同P8及び同P9の4名は,一般職員であって,地公法36条による政治的行為の制限を受けるが,その余の25名は,単純労務職員ないしは公営企業職員であって,同条の政治的行為の制限を受けないこと(地方公営企業法39条2項,地公労法附則5条)は,原判決を引用して摘示したとおりである(原判決第2の1(1)ア(イ))。
また,地公法36条に加え,被控訴人職員らに職務専念義務(同法35条)があることを考慮しても,少なくとも,被控訴人職員らが,勤務
時間外に政治家の街頭演説を聴く程度の行為といった,地公法36条に定めのない行為をすることまで制限されているものではない。
そして,労働組合についても,労働者の地位の向上という目的をより達成させるための手段として,同目的達成に必要な政治活動及び社会活動をすることが妨げられるものではない(最高裁判所昭和43年12月4日大法廷判決・刑集22巻13号1425頁参照)。
(イ)

ところで,本件アンケートに先立ち,市長は,平成23年11月2
7日に実施された市長選挙でP10前市長を破り,同年12月19日に就任すると,被控訴人組合らが,同選挙でP10前市長を支援し,勤務時間中にP10前市長の推薦人紹介カードの配布がされていたとの指摘があったことなどを踏まえて,「大阪市役所の組合を徹底的に市民感覚にあうように是正,改善していく」(原判決第3の1(1)イ(イ)d。市会定例会における施政方針演説),控訴人市の職員らの政治関与について,法体系上の許容性についてリーガルチェックはするが,罰則を「つけれるんだったらつけます」(甲36。平成24年1月12日の記者会見),控訴人市の組合は,「全国の中でもとてつもなくひどい組合,そういう前提で物事を考える。とんでもない,どうしようもない組合,そこからスタートして考えなければいけない」(甲38。同月27日の市会財政総務委員会)などと,被控訴人組合らが市役所内部で政治的行為をしたとされることなどについて繰り返し公の場で発言し,強く非難していた。
(ウ)

Q7は,上記アのように,特定の政治家を応援する活動(知り合い
の住所等を知らせること及び街頭演説を聴く程度の活動を含め)への参加について,参加の有無及び勧誘の有無を尋ね,勧誘があった場合はその内容の回答を求めるものであるところ,上記(ア)のとおり,かかる政治的行為が,被控訴人らにおいて直ちに制限されるものでないにもかか
わらず,上記(イ)のとおり,市長が,被控訴人組合らの政治関与を非難する発言を繰り返す中で,勧誘者の氏名は,任意回答とするも,それ以外について,正確に回答しなければ懲戒処分があり得るとして,本件職務命令により,強制的に回答させるものである。以上の事情を踏まえると,Q7は,回答を求められた職員らにおいて,政治的行為,とりわけ市長の方針と相反する政治的行為をすることにつき,強い萎縮効果を与えるものであること,また,任意回答とはいえ,Q7が勧誘者の氏名についても尋ねていることからすれば,街頭演説を聴きに行くのを誘う程度の勧誘であっても,これを萎縮させてしまう効果があることが推認される。
(エ)

これに対し,控訴人らは,Q7に関して,本件アンケートに先立ち,
組合や組合員らが,勤務時間内にいわゆる紹介カードを配布し,街頭演説への動員,ヤミ便宜供与をした事実等があったとされていたから,違法ないし不適切な政治活動の端緒となる事象を確認する必要があったし,法律上問題のない政治活動であるならば,控訴人らがこれを弾圧する手段もメリットもないから,政治活動の自由に対する萎縮効果はないなどと主張する。
確かに,地公法の適用がある者について,同法36条所定の政治的行為が禁止されることは,上記(ア)のとおりであるし,公務員は,その地位を利用した選挙運動をすることが禁じられているから(公選法136条の2),控訴人らが,被控訴人組合らにおいて,違法な政治活動や選挙への関与があったと疑うべき事情が具体的に認められる場合には法令を遵守させ,職場規律を保持するため,一定の調査をすること自体が許されないとはいえない。
しかしながら,Q7は,質問に対する回答を義務付ける対象を,かかる違法な行動に限定することなく,本来,被控訴人らが自由になし得る
程度の活動をも対象とした上,任意回答とはいえ,勧誘者の氏名をも尋ねている。したがって,控訴人らの上記主張を考慮したとしても,Q7は,合理的な必要性を超え,過度に広範な内容について,被控訴人職員らに回答を義務付けたものといわざるを得ない。
また,控訴人らが,法律上問題のない政治活動であれば,控訴人らがこれを法的に弾圧し得ないから,萎縮効果はないとする主張は,被控訴人らにおいて事実上の萎縮効果が生じ得ることを踏まえない主張といわざるを得ない。
そうすると,控訴人らの上記主張は,いずれも採用できない。
(オ)

以上のとおり,Q7は,被控訴人らの政治活動の自由を侵害する設
問であったというべきである。

団結権の侵害について
Q7が,被控訴人組合らに政治活動の自由があるにもかかわらず,その組合員でもある被控訴人職員らが政治活動をすることについて強い萎縮効果を与えるもので,合理的な必要性を超えた,過度に広範な設問内容となっていたことは,上記エで認定説示したとおりである。したがって,Q7は,被控訴人らの政治活動の自由を侵害するものであるとともにその団結権も侵害するものであったというべきである。また,この点に対する控訴人らの主張が採用できないことは,上記エ(エ)と同旨である。


小括
以上のとおり,Q7は,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものとはいえないが,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであるとともに被控訴人らの政治活動の自由及び団結権を侵害する違法な内容の設問であったというべきである。

(4)

Q8について
設問の内容について

Q8は,この2年間に,特定の政治家への投票について,要請の有無を尋ね,要請があった場合は,要請者の氏名を任意回答としつつも,要請の時間,場所に係る回答を求めるものである。

思想・良心の自由の侵害について
Q8が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(エ)a(原判決78頁12行目から20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


プライバシー権の侵害について
Q8が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,原判決79頁2行目末尾に,改行の上,次の文章を加えるほかは,原判決第3の1(1)カ(エ)b(原判決78頁21行目から79頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


これに対し,被控訴人らは,一般に投票要請は,その立候補者を支持してくれそうな人に対してするものであるから,本問で,組合から投票要請を受けた旨回答すれば,それをもって,回答者がP10前市長の支持派であると回答することになる旨主張するが,一般に投票要請が,当該候補者の支持者間のみでされるということはできないから,同主張は,前提を欠き,採用できない。」


政治活動の自由の侵害について
(ア)

被控訴人らのうち,一般職員の者4名は,地公法36条による政治
的行為の制限を受けるが,その余の者らは,同制限を受けないことは前記(3)エ(ア)で認定説示したとおりである。
また,Q8が,特定の政治家,とりわけ市長と相対立する政治家を応援し,同人への投票を要請しようと考える者に対し,強い萎縮効果を与えるものであることは,Q7について認定説示したのと同旨である。(イ)

しかしながら,地公法36条の適用がある一般職員らは,公の選挙
等において,特定の人を支持するなどの目的をもって投票を勧誘すること(同条2項1号)が禁止されている。また,地方公共団体の公務員が,その地位を利用して選挙運動をしたり,公職の候補者を推薦等して,投票の周旋勧誘をすることなども,公選法136条の2第1項及び第2項により禁止されている。
ところで,上記の各規定を前提としても,Q8は,選挙の公示前後及び地位利用の有無を問うことなく,過去2年間の選挙の際の投票要請について包括的に問う設問となっていることからすると,設問の対象が広範であるといえなくはない。しかしながら,Q8は,街頭演説を聴く程度の違法性を帯びない応援活動をも広く対象としたQ7とは異なり,特定の政治家への投票要請について問うものであって,上記各法令に抵触し,違法性を帯びる可能性がある行為に一応の限定がされていること,また,当該特定の政治家について,そもそも質問していないこと,要請した者については,任意回答としていることがある。そして,控訴人P1は,本件アンケートの実施に先立ち,控訴人市の内部告発者から話を聞き,目安箱への投書内容を確認し,それらから控訴人市の職員の中で勤務時間中に特定の選挙候補者への投票要請に当たると思われる行為をした者がいるとの情報を確認していた(乙7,丙31)。
以上の事情を踏まえると,Q8は,法令を遵守させ,職場規律を保持する目的で,調査する必要があり,その手段として不当なものとまでいえず,したがって,被控訴人らの政治活動の自由を違法に侵害するものであったということはできない。
(ウ)

これに対し,被控訴人らは,Q8によれば,職員らが,今後,他の
職員らに投票要請をしようとしても,その活動を躊躇することになり,強い萎縮効果がもたらされる旨主張する。
しかしながら,前記の地公法や公選法の規定からすると,地方公務員
は,具体的な選挙における投票要請について制約があることを意識し,違法の誹りを招くことがないようにしなければならないところ,法によるかかる規制と比べ,Q8が,さらに特段の制約を課す設問とまでは認められない。
したがって,被控訴人らの上記主張は,採用できない。

団結権の侵害について
この点,Q8が,被控訴人職員らの思想・良心の自由,プライバシー権及び被控訴人らの政治活動の自由を侵害するものと認めることができないことは,上記イないしエで認定判示したとおりである。ところで,被控訴人組合ら自体は,政治活動の自由が認められるが(前記(3)エ(ア)),その組合員である控訴人市の職員による政治的行為について,上記エで認定説示したような一定の制約があることからすると,同職員において甘受すべきものと同程度の制約が被控訴人組合らに生じる場合があるとしても,やむを得ないものというほかない。
したがって,Q8により,被控訴人らの団結権が侵害されたということはできない。


小括
以上のとおり,Q8が,被控訴人らの権利を侵害する違法な設問であったとはいえない。

(5)

Q9について
設問の内容について
Q9は,特定の選挙候補者陣営に知人等を紹介する,いわゆる紹介カードについて,受領側の場合,配布と受領の有無,配布を受けた場合には,配布者の氏名を任意回答としつつ,配布の場所及び時間帯,また,同カードの配布を受けて記載した場合には,自発的に応援したかったためか,記載しないことによる不利益を考えたためかを尋ね,さらに,当該配布者と
のやり取りの具体的状況や,回答者が考えた不利益の内容について回答を求め,配布側の場合,配布を依頼した人の氏名を任意回答としつつ,配布の方法を回答させるものである。

思想・良心の自由の侵害について
Q9が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(オ)a(原判決80頁26行目から81頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

プライバシー権の侵害について
(ア)

上記アのとおり,Q9は,勤務時間外に,職場外で,職場関係者以
外の第三者との間でされた行為を含め,いわゆる紹介カードの配布や受領に関与したことがあるか,その記載に応じた場合に,それが自発的に応援したかったからかといった,勤務とは無関係の私生活上の個人の内心にわたる内容まで回答させるものであり,かかる内容は,使用者への開示が予定されたものではなく,被控訴人職員らを含めた控訴人市の職員自身も一般的にその開示を望まないことが容易に想定できることからして,個人のプライバシーに属する事項であるというべきである。したがって,Q9は,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害する設問というべきである。
(イ)

これに対し,控訴人らは,Q9に関して,本件アンケートに先立ち,
控訴人市において,労使癒着の構造があり,選挙における被控訴人組合らによる支援があったこととともにいわゆる紹介カードの配布者の氏名等について任意回答にしていることからして,違法なプライバシー権の侵害に当たらない旨主張する。
しかしながら,同カードの配布等自体が,地公法や公選法の前記規定に反するものであるとは直ちにいえないし,また,控訴人らの上記主張によっても,同カードへの記入に係る真意がどうであったかといった,
個人の内心にわたる内容を強制的に回答させる正当事由があったとまでいうことができない。
(ウ)

したがって,Q9は,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害する
設問であったというべきである。

政治活動の自由の侵害について
(ア)

被控訴人らのうち,一般職員の者4名は,地公法36条による政治
的行為の制限を受けるが,その余の者らは,同制限を受けないことは,前記(3)エ(ア)で説示したとおりである。また,地公法36条の適用に加えて被控訴人職員らが職務専念義務(同法35条)を負っていることを考慮しても,被控訴人職員らが,少なくとも,勤務時間外に同カードの授受をしたり,それに記入したりする行為は制限されるものではない。(イ)

Q9は,上記アのとおり,紹介カードについて,勤務と無関係な私
生活上のやり取りを含めて授受に関与したことの有無及びそれに関与した場合,その内容について回答を求めるものであるところ,上記(ア)のとおり,かかる行為が,被控訴人らにおいて制限されるものでないにもかかわらず,前記(3)エ(イ)で認定説示したとおり,市長が,被控訴人組合らの政治関与を非難する発言を繰り返す中で,本件職務命令によって依頼者の氏名以外について強制的に回答を求めるものである。以上の事情とともに任意回答とはいえ,Q9が依頼者の氏名についても尋ねていることを総合すると,Q9は,回答を求められた職員らに同カードの授受,とりわけ市長の方針と相反する候補者に係る同カードの授受をすることにつき,強い萎縮効果を与えるものであったこと,また,同カードの授受自体のみならずその依頼をすることについても萎縮させてしまう効果があることが推認される。
なお,このように判断することに対する控訴人らの主張が採用できないことは,Q7に関して,前記(3)エ(エ)で認定説示したことと同旨で
ある。
(ウ)

したがって,Q9は,被控訴人らの政治活動の自由を侵害する設問
であったというべきである。

団結権の侵害について
Q9が,被控訴人組合らに政治活動の自由があるにもかかわらず,その組合員でもある被控訴人職員らが紹介カードの授受程度の政治活動をすることについて強い萎縮効果を与えるもので,合理的な必要性を超えた,過度に広範なものであったことは,上記エで認定説示したとおりである。したがって,Q9は,被控訴人らの政治活動の自由を侵害するものであるとともにその団結権も侵害するものであるというべきである。
このように判断することに対する控訴人らの主張と,同主張が採用できないことは,上記エ(イ)と同旨である。


小括
以上のとおり,Q9は,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものとはいえないが,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであるとともに被控訴人らの政治活動の自由及び団結権を侵害する違法な内容の設問であったというべきである。

(6)

Q10について
設問の内容について
Q10は,組合の幹部が,職場において優遇されていると思うかを尋ね,さらに,指摘しづらい雰囲気があるとすれば,どのようなものかを自由回答で記載するよう求めるものである。


思想・良心の自由の侵害について
Q10が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(カ)a(原判決84頁12行目から19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

プライバシー権の侵害について
Q10が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,次のとおり補正するほかは,原判決第3の1(1)カ(カ)b(原判決84頁20行目から85頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(ア)

原判決85頁1行目の「上記エ」から3行目の「ものの」までの文
章を「控訴人P1が,本件アンケートの実施に先立って内部告発をした職員から事情を聴き,目安箱への投書を確認したところ,組合の幹部が,人事上,優遇されていると感じる旨の複数の意見があったこと(乙7,丙31)からすると」と改める。
(イ)

原判決85頁4行目の「調査する」を「調査し,その結果に基づい
て対応を検討する」と改める。

団結権の侵害について
(ア)

Q10は,その内容を一読すれば,組合の幹部が職場において優遇
されている実態ないしはそのように周囲に感じさせている雰囲気があるのでないかという問題意識からの設問であると容易に理解できる。また,そのような質問がされると,回答者において,同幹部に対する処遇が適正なものであるかにつき疑う心情が芽生えることがあろうから,Q10は,被控訴人らの結束に影響を与えかねない設問ということができる。(イ)

しかしながら,職員に対する人事評価は,組合員であるか否か,組
合の幹部であるか否かにかかわらず,本来,公正に行わなければならないところ(地公法23条),仮に,組合の幹部について不公正な人事評価がされていたとすると,それは,問題であり,そのような実態がないとしても,多くの職員がそのような疑念を抱いていたとすると,健全な組織運営のため,同疑念を解消するよう改善に努める必要がある。また,Q10が,具体的な氏名や時期等について回答を求めず,設問自体,回
答者の認識を抽象的に問うに止めていることからすると,Q10が,被控訴人らの団結権を侵害する違法なものであるとまでいうことはできない。
(ウ)

被控訴人らは,Q10が,探索的な設問であって,被控訴人組合ら
において説明や釈明ができない設問であるから許されない旨主張する。しかしながら,上記(イ)で認定説示した事情からして,同主張は,採用できない。

小括
以上のとおり,Q10が,被控訴人らの権利を侵害する違法な設問であったとはいえない。

(7)

Q11について
設問の内容について
Q11は,控訴人市における職員採用について,政治家,組合幹部,市職員その他の推薦により,有利な取扱いがされた事例の有無について問うものである。


プライバシー権の侵害について
Q11が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,次のとおり補正するほかは,原判決第3の1(1)カ(キ)a(原判決86頁15行目から87頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(ア)

原判決86頁22行目の「いえない。」を「いえないし,仮に,か
かる不公正な採用がされていたとすると,それ自体が,任用の根本基準を定めた地公法15条に反する事象であって,速やかに対処しなければならないものである。」と改める。
(イ)

原判決86頁23行目の「上記エ」から87頁4行目末尾までの文
章を「控訴人P1が,本件アンケートの実施に先立って市議会議員等の
関係者から事情を聴き,目安箱への投書を確認したところ,控訴人市において,不適切な採用がされていると指摘する複数の意見があったこと(乙7,丙31)からすると,Q11のような質問をする合理的な必要性があったというべきである。」と改める。
(ウ)

原判決87頁5行目の「したがって」から6行目の「いえない」ま
でを「このように,Q11について,調査の必要性があったことや,Q11が,推薦者の氏名や,有利に取り扱われた者の氏名について回答を求めない方法で回答者の認識を尋ねていることによれば,Q11が,回答者の権利を違法に侵害するものであったとはいえない」と改める。ウ
団結権の侵害について
(ア)

被控訴人らは,Q11が,探索的な質問であって,市長による控訴
人市の組合やその組合員らに対する一連の敵視並びにQ11があえて組合幹部の推薦によって,採用で有利に扱われた者がいるかを尋ねていることからして,Q11が,回答者に対し,被控訴人組合らの幹部への否定的な評価を植え付けるものであり,被控訴人らの団結権を侵害するものである旨主張する。
(イ)

しかしながら,Q11は,組合幹部の推薦だけでなく,政治家や市
職員その他の者の推薦についても尋ねているのであって,回答者をして,特に被控訴人組合らが違法ないし不当な関与をしていたと感じさせる質問になっていない。また,本設問のような調査をすべき合理的な必要性があったことは,上記イのプライバシー権の侵害に関する検討で認定説示したとおりである。
(ウ)

したがって,被控訴人らの上記主張は,採用できない。

小括
以上のとおり,Q11が,被控訴人らの権利を侵害する違法な設問であったとはいえない。

(8)

Q12について
設問の内容について
Q12は,職場において,選挙が話題になったことがあるかを尋ね,仮に,それがある場合は,勤務時間中の出来事であったか,また,投票依頼の意図を感じさせるものであったかを尋ねるものである。


思想・良心の自由の侵害について
Q12が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(ク)a(原判決88頁20行目から89頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

プライバシー権の侵害について
Q12が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,次のとおり補正するほかは,原判決第3の1(1)カ(ク)b(原判決89頁9行目から26行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(ア)

原判決89頁17行目の「また,」から19行目の「ものの」まで
を「また,控訴人市の職員らは,地公法36条及び公選法136条の2により一定の選挙活動が制限され,そもそも勤務時間内は,職務専念義務(地公法35条)を負っている上,本件アンケートの実施前,市会交通水道委員会において勤務時間内にいわゆる紹介カードが配布されていたという指摘がされていたこと及び目安箱への投書において勤務時間内の政治活動を指摘する意見が複数あったこと(乙7,丙26)からすると」と改める。
(イ)

原判決89頁20行目から21行目にかけての「調査する」の次に
「合理的」を,23行目から24行目にかけての「プライバシーが」の次に「違法に」をそれぞれ加える。
(ウ)

原判決89頁25行目の「したがって」から26行目の「いえな

い」までを「このように,Q12について,調査の必要性があったことや,Q12が,話題をした者の氏名を問わず,具体的な会話の内容まで回答を求めない方法で,回答者の認識や受け止めた印象を中心とした質問にしていることによれば,Q12が,回答者の権利を違法に侵害するものであったとはいえない」と改める。

政治活動の自由の侵害について
Q12が,被控訴人らの政治活動の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(ク)c(原判決90頁1行目から10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


団結権の侵害について
(ア)

被控訴人らは,Q12は,探索的な質問であって,市長による被控
訴人組合らに対する一連の敵視並びにQ12があえて組合幹部による言動を尋ねていることからして,Q12が,回答者に対し,被控訴人組合らやその幹部への否定的な評価を植え付けるものであり,被控訴人らの団結権を侵害するものである旨主張する。
(イ)

しかしながら,Q12は,組合幹部の言動についてだけでなく,職
場での上司や同僚等の言動をも尋ねるものであって,回答者をして,特に組合幹部が違法ないし不当な言動をしていたと感じさせる質問になっていない。また,本設問のような調査をすべき合理的な必要性があったことは,上記ウのプライバシー権の侵害に関する検討で認定説示したとおりである。
(ウ)

したがって,被控訴人らの上記主張は,採用できない。

小括
以上のとおり,Q12が,被控訴人らの権利を侵害する違法な設問であったとはいえない。

(9)

Q13について


設問の内容について
Q13は,職場における組合活動及び選挙運動について,勤務時間の内外及び職場内外の場面分けをして,具体的な活動内容を例示したりした選択肢を設けた上,問題がないと思われる選択肢に印を付けるよう求めるものである。


思想・良心の自由の侵害について
Q13が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(ケ)a(原判決92頁4行目から11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


プライバシー権の侵害について
Q13が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(ケ)b(原判決92頁12行目から19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


政治活動の自由の侵害について
Q13が,被控訴人らの政治活動の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(ケ)c(原判決92頁20行目から93頁2行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


団結権の侵害について
(ア)

被控訴人らは,Q13が,市長による控訴人市の組合やその組合員
らに対する一連の敵視並びにQ13が組合活動や選挙運動を対象にし,感想や意識を問うていることや,正答しづらい問いであることからして,Q13が,適正な組合活動に対する萎縮効果をもたらすものである旨主張する。
(イ)

しかしながら,控訴人市の職員らは,地公法36条及び公選法13
6条の2により一定の選挙活動が制限され,そもそも勤務時間内は,職務専念義務(地公法35条)を負っているところ,同職員らが,これら
のことをどの程度理解し,意識しているかを確認すること自体,不当なこととはいえないし,また,その確認によって被控訴人らの団結権が侵害されると認めることもできない。
(ウ)

したがって,被控訴人らの上記主張は,採用できない。

小括
以上のとおり,Q13が,被控訴人らの権利を侵害する違法な設問であったとはいえない。

(10)

Q14について
Q14の設問の内容と,これが被控訴人らに不利益を与え,その権利を侵
害するものであると認められないことは,原判決第3の1(1)カ(コ)(原判決94頁4行目から26行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(11)

Q15について
Q15の設問の内容と,これが被控訴人らに不利益を与え,その権利を侵
害するものであると認められないことは,原判決95頁2行目の「回答するか」から3行目の「明確にした上で,」までを削除するほかは,原判決第3の1(1)カ(サ)(原判決95頁2行目から12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(12)

Q16について
設問の内容について
Q16は,組合への加入の有無を尋ね,非加入者に対しては,さらにその理由について任意の回答を求めるものである。


思想・良心の自由の侵害について
Q16が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(シ)a(原判決95頁18行目から25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

プライバシー権の侵害について
Q16が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(シ)b(原判決95頁26行目から96頁8行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

団結権の侵害について
(ア)

まず,前提として,使用者が,その雇用する労働者のうち誰が組合
員かを知ろうとすることは,それ自体,禁止されているわけではない。しかしながら,使用者が,組合加入が判明することによって労働者に具体的な不利益が生ずることがうかがわれる状況の下で,組合員に動揺を与えることを目的として組合加入について調査をしたような場合は,労働者の団結権を侵害するものとして許されないと解するのが相当である(最高裁判所平成7年9月8日第二小法廷判決・集民176号699頁〔P11事件最判〕参照)。
(イ)

そこで,本件であるが,市長が,本件アンケートに先立ち,繰り返
し公の場で,被控訴人組合らが市役所内部で政治的行為をしたとされることなどについて強く非難する発言を繰り返していたことは,前記(3)エ(イ)で認定説示したとおりである。また,本件アンケートの実施に当たって配布がされた職員宛て市長メッセージには,「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動,組合活動」について,「徹底した調査・実態解明」をして,「膿を出し切りたい」旨の記載がされていたこと,その上で,本件アンケートの個別の設問において,組合活動(Q6),特定の政治家の応援活動(Q7),紹介カードの配布(Q9)等に関与したか否か,関与した場合に,それが自発的なものであったか否かなどが問われていることは,原判決を引用して摘示した前提事実(原判決第2の1(3)及び(4)ウ)のとおりである。
以上の事情を踏まえると,Q16の設問への回答を強いられた組合員
らは,組合加入が判明することによって具体的な不利益が及ぶという危惧感を抱いたであろうことが強くうかがわれる。また,控訴人らも,Q16を問う結果,組合員らが上記の危惧感を抱き,動揺するであろうことは,容易に想定できたといえるところ,それにもかかわらず,あえてQ16を設けていることからすると,控訴人らは,同結果を認識し,認容していたものと推認される。
(ウ)

上記(ア)及び(イ)によれば,Q16は,被控訴人らの団結権を侵害
するものであったというべきである。
(エ)

これに対し,控訴人らは,本件アンケートの実施当時,控訴人市に
おいて労使癒着の構造があって,調査の必要性があったこと及び控訴人市においては,職員の大多数が組合に加入していたことからして,組合員であることが明らかになったとしても,それによって萎縮効果が生じることがない旨主張する。
しかしながら,控訴人らが主張するとおり,労使癒着の構造に関する実態調査の必要性があったとしても,そのことから個々の職員に対し,組合に加入しているのかまで回答させる合理的な必要性までは生じないし,大多数の職員が組合員であったとしても,Q6,7,9などと合わせて回答させることによって,その中の誰が,どのような活動に,どの程度自発性を持って参加しているのかまで明らかにさせるとすると,それによって,活動に対する萎縮効果が生じることが十分推認される。したがって,控訴人らの上記主張は,採用できない。

小括
以上のとおり,Q16は,被控訴人職員らの思想・良心の自由及びプライバシー権を侵害するものであったとはいえないが,被控訴人らの団結権を侵害する違法な内容の設問であったというべきである。

(13)

Q17~20について


設問の内容について
これらの設問は,組合に加入することによるメリット(Q17),組合が持っている力(Q18),あるいは,組合に加入しないことによる不利益(Q19)について,どのようなものであると考えているかについて,選択肢を選び回答するよう求めるとともに,組合に対して待遇等の改善について相談したことがあるか(Q20)を尋ねるものであり,いずれの設問にも,回答するか否かは自由であることが明記されている。


思想・良心の自由の侵害について
被控訴人らは,これらの設問のうちQ17~19が,被控訴人職員らの思想・良心の自由を侵害するものであると主張するが,同主張が採用できないことについては,原判決第3の1(1)カ(ス)及び(セ)の各a(原判決98頁1行目から6行目まで,100頁4行目から11行目まで)に記載のとおりであるから,これらを引用する。


プライバシー権の侵害について
これらの設問が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,上記イに係る引用部分及び原判決第3の1(1)カ(ソ)a(原判決101頁20行目から102頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。


団結権の侵害について
(ア)

被控訴人らは,これらの設問が探索的な設問であること,組合への
加入動機は,調査してはならないものであること,組合に力があるかどうかはその内部問題であること,選択肢の内容に組合への否定的な評価を植え付けるものがあることから,許されない旨主張する。
(イ)

しかしながら,仮に,控訴人市の職員らの多くの者が,組合が人事
に影響力を持っていて(Q18・4),組合に加入した方が,昇進や異動において有利であるし(Q17・5),組合幹部の推薦を得れば有利
な採用がされる(Q18・2)と考えたり,組合に加入しないことにより,昇進が狭まれたり(Q19・2),不本意な異動になってしまう(同・3)と考えているのであれば,控訴人市として,改めて綱紀を粛正し,控訴人市の内外に誤解を与えない対応を検討しなければならないことからして,これらの設問について,調査の必要性がないとか,調査してはならない事項であるとまでいうことはできない。
確かに,これらの設問には,上記のとおり,組合に対する否定的な評価を感じさせる選択肢があることからして,被控訴人らの団結権に影響がない設問であるとまでは言い切れない。しかし,前記アのとおり,これらの設問について,回答するか否か,自由であることが明記されていることも考慮すると,被控訴人らの団結権を直ちに侵害するものとまで認めることができない。
(ウ)

したがって,被控訴人らの上記主張は,採用できない。

小括
以上のとおり,Q17~20が,被控訴人らの権利を侵害する違法な設問であったとはいえない。

(14)

Q21について
設問の内容について
Q21は,組合費がどのように使われているかを知っているか,仮に知らないときは,適切に使われていると思っているか否かについて回答するよう求めるものである。


プライバシー権の侵害について
Q21が,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったといえないことは,原判決第3の1(1)カ(タ)a(原判決102頁18行目から25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

団結権の侵害について

(ア)

Q21が,被控訴人らの団結権を侵害するものであったと認められ
ることは,原判決103頁12行目の「また,」から17行目末尾までを次の文章に改めるほかは,原判決第3の1(1)カ(タ)b(原判決102頁26行目から104頁2行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
「また,仮に,控訴人らが主張するように,目安箱への投書や内部告発者の告発等によって,控訴人らが,組合費について横領等の不正行為があると考えたとしても,Q21は,かかる不正行為自体に関する質問をしているのではなく,組合員が,組合から組合費の使途に関する説明を受けているか,疑問を感じているかを尋ねていることからして,関連性自体に疑問がある。加えて,控訴人らは,組合費の使途といった,組合の内部自治に委ねるべき問題について調査をしながら,Q21によって寄せられた具体的な回答を組合に還元しないのであるから(市長メッセージが,本件アンケートの結果を,控訴人市の職員の目に触れさせないとしていることについて,原判決第2の1(4)ウのとおり。),Q21による調査は,被控訴人らに対し,適切な組合運営がされているのか,誰がどのような不満や懸念を抱いているのかといった点について疑心暗鬼にさせるだけで,合理的な問題解決にならない設問ともいえる。」(イ)

控訴人らは,組合費に係る不正があれば,控訴人市の内部で違法行
為があることになるから,職場規律保持のため調査する必要がある,控訴人市は,一部の組合との間で組合費のチェックオフをしていたから,無関係ではない,本件アンケート後に,組合費の横領事件が発覚しているといった事情があり,Q21による調査をする必要があった旨主張する。
しかしながら,これらの主張は,いずれも上記(ア)における認定説示を左右するに足りるものといえない。

したがって,控訴人らの上記主張は,採用できない。

小括
以上のとおり,Q21は,被控訴人職員らのプライバシー権を侵害するものであったとはいえないが,被控訴人らの団結権を侵害する違法な内容の設問であったというべきである。

(15)

Q22について
Q22の設問の内容と,これが被控訴人らに不利益を与え,その権利を侵
害するものであると認められないことは,原判決第3の1(1)カ(チ)(原判決104頁6行目から105頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(16)

まとめ
以上のとおり,本件アンケートは,そのうちのQ7及び9が,被控訴人職
員らのプライバシー権及び被控訴人らの政治活動の自由を侵害し,Q6,7,9,16及び21が,被控訴人らの団結権を侵害する違法な内容のものであったといえる。
6
控訴人市の損害賠償責任について
(1)

上記5で認定説示したとおり,本件アンケートは,被控訴人らの権利を
侵害する違法な設問を含むものであったところ,控訴人市の公務員である市長・総務局長等が,本件アンケートへの回答を命じる本件職務命令を出し,本件アンケートの実施に関する本件決裁等をしたことは,当事者間に争いがない。
これを前提に,市長・総務局長等の行為につき,職務上通常尽くすべき注意義務に反した違法があると認められること及び市長等につき,少なくとも,同注意義務に違反した過失があったと認められるべきことは,原判決第3の1(2)イないしエ並びに(3)ア(原判決106頁5行目から107頁1行目まで及び同頁3行目から23行目まで)記載のとおりであるから,これを引用
する。
他方,総務局長等は,確かに法令遵守義務を負っているものの,市長が,本件アンケートに先立ち,控訴人市の全局長及び全区長に対し,控訴人P1を含む特別顧問が市長の「身代わり」であり,特別顧問に対する協力拒否は,市長への拒否であるから,特別顧問がする調査について全て従うよう明示的に命じていたこと(原判決第2の1(4)ア(ウ)),市長が弁護士であること(公知の事実),本件アンケートが,弁護士である控訴人P1が中心となった本件調査チームが作成し,実施するとされたものであって,その内容も,前記5で認定説示したとおり,22個の設問のうち,被控訴人らの権利を侵害する設問が5個に止まっていたことからすると,総務局長等において,本件アンケートが違法なものであると認識,予見し,かつ,違法な設問を改めさせ,また,違法な設問を含む本件アンケートの実施を止めて,権利侵害の結果を回避することができたとは認めることができず,その他,それを認めるに足りる証拠はない。したがって,総務局長等には,被控訴人らに対する上記権利侵害について,故意又は過失があったということはできない。(2)ア

ところで,控訴人市は,本件アンケートが第三者調査として本件調査
チームが実施したものであること,不祥事調査の専門家で,弁護士でもある控訴人P1によって違法な調査がされると考えていなかったこと,したがって,信頼の原則が妥当し,予見可能性も,結果回避可能性もなかったともいえるから,市長・総務局長等を含む控訴人市には注意義務違反がなかったし,また,第三者調査の委託者に同調査に係る注意義務違反を認めるとすると,その趣旨に反して委託者として,同調査への事前検閲をしなければならなくなり,不当である旨主張する。
しかしながら,本件調査チームが控訴人市から独立した存在であったとはいえないこと,また,本件調査チームが,委託者である控訴人市の関与なく独自に本件アンケートを実施したのではなく,控訴人市と本件調査チ
ームが共同してこれを実施したというべきであることは,前記3(1)ア及びイで認定説示したとおりである。したがって,独立した第三者に調査を依頼した場合を念頭においた控訴人市の上記主張は,その前提を欠くというべきである。
また,本件調査チームを構成する控訴人P1及びP4特別顧問らは,控訴人市の委託に基づいて調査を実施しているし,市長等においては,自らの職責において,本件アンケートの実施に関する本件職務命令を出して被控訴人職員らを含む控訴人市の職員らに対し,本件アンケートに応じる義務を課しているのであるから,市長等が事実上本件アンケートの内容に意見を述べず,十分な確認をしなかったとしても,それによって上記権利侵害への予見可能性及び結果回避可能性がなかったということはできない。したがって,控訴人市の上記主張は,いずれも採用できない。

被控訴人らは,総務局長等は,市長の指示があったとしても,本件アンケートの内容を確認しているから,その内容の違法性について,調査をし,検討すべき義務を免れず,総務局長等に故意過失があった旨主張する。しかしながら,本件アンケートが実施された経過等を踏まえると,総務局長等に過失責任を基礎付ける予見可能性や結果回避可能性があったと認めることができないことは,上記(1)のとおりである。
したがって,被控訴人らの上記主張は,採用できない。

(3)

以上のとおり,控訴人市は,市長等による本件職務命令に基づき,控訴
人P1を中心とする本件調査チームと共同して前記5で認定説示した範囲で違法な本件アンケートを実施し,被控訴人らの権利を侵害したことについて,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償責任を負うというべきである。なお,控訴人P1が国家賠償法1条1項で定める「公権力の行使に当る公務員」に該当することは後記7で認定説示するとおりである。
7
控訴人P1の損害賠償責任について

(1)

控訴人P1は,前記5で認定説示した範囲で違法な本件アンケートを作
成したこと,本件アンケートに当たって市長等に本件職務命令の発出を求めたこと,前記3(1)イで認定説示したとおり控訴人市と本件調査チームとが共同して本件アンケートを実施していること,控訴人P1が,法令に精通しなければならないことを職責とする弁護士であることを踏まえると,控訴人P1には,本件アンケートの実施によって被控訴人らの権利を違法に侵害することがないよう注意しなければならない義務があったのに,十分な確認と検討をすることなく,前記5で認定説示した範囲で違法な本件アンケートの作成をし,その実施に関与したことについて,過失があったことが推認され,同認定を覆すに足りる証拠はない。
(2)

本件調査チームが,控訴人市から独立した存在であったといえず,また,
委託者である控訴人市の関与なく独自に本件アンケートを実施したともいえないことは,前記3(1)ア及びイで認定説示したとおりである。また,控訴人P1は,本来,控訴人市が定めた特別顧問設置要綱に基づき委嘱された特別顧問であり(乙3,丙12),その立場は,市長やその指示を受けた者に対する指導又は助言をするに止まるはずであったにもかかわらず,前記認定のとおり,控訴人市の職員らに本件アンケートへの回答義務を課した上,本件アンケートを実施している。
ところで,国家賠償法1条1項にいう公権力の行使に当る公務員であるが,組織法上の公務員たる身分を与えられた者に限られることはなく,国又は公共団体のために公務に従事する私人であってもこれに当たる場合もあると解するのが相当である。本件の控訴人P1であるが,控訴人市からの委嘱と市長からの依頼を受けて,本件職務命令による公権力の行使を伴う本件アンケートの作成をし,その実施にも主体的に関与していることを踏まえると,控訴人P1について,国家賠償法1条1項の公権力の行使に当る公務員であったと認めるのが相当である。

そこで,同条項が適用ある場合における公務員の個人責任であるが,同条項は,同条項所定の公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には,国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責めに任ずることとし,公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わないこととしたものと解するのが相当である(最高裁判所昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁等参照)。
したがって,控訴人P1に対する損害賠償請求は,その余の点(損害等)について判断するまでもなく,理由がない。
(3)

甲事件被控訴人らは,控訴人P1が,公務員としての身分を有していな
いこと,本件アンケートの作成等が公権力の行使に当たらないことからして,控訴人P1は,損害賠償責任を負う旨主張する。
しかしながら,控訴人P1に公務員の身分があるか否かが,国家賠償法1条1項の適用に当たって問題とならないことは,上記(2)で説示したとおりであるし,甲事件被控訴人らの権利を侵害する直接の行為が,本件アンケートが本件職務命令によって被控訴人職員らに対して実施されたことにあり,控訴人P1が,まさに同実施を主体的に担っていたことからすると,上記(2)のとおり,控訴人P1が,同条項所定の公権力の行使に当る公務員に該当すると判断するのが相当である。
したがって,甲事件被控訴人らの上記主張は,採用できない。
8
損害額について
本件職務命令に基づき,本件アンケートが実施されたことにより,被控訴人らに生じた損害の内容及び同損害に対する慰謝料ないし損害賠償の金額については,次のとおり補正するほかは,原判決第3の3(1)ないし(3)(原判決109頁20行目から111頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決109頁20行目及び110頁9行目の各「上記1で述べたとお
り」を「前記認定説示のとおり」とそれぞれ改める。
(2)
(3)
9
原判決110頁26行目の「5000円」を「1万円」と改める。原判決111頁1行目の「5万円」を「10万円」と改める。

結語
以上の次第であって,被控訴人らの控訴人市に対する請求は,主文3項ないし5項記載の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は,理由がないからいずれも棄却し,甲事件被控訴人らの控訴人P1に対する請求は,理由がないからいずれも棄却すべきである。
よって,控訴人市の控訴を棄却し,控訴人P1の控訴及び被控訴人らの附帯控訴に基づき,原判決を主文3項ないし6項のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第5民事部

裁判長裁判官

中村
裁判官

山田健男
裁判官

堀部亮一哲
トップに戻る

saiban.in