判例検索β > 平成25年(ワ)第23687号
地位確認等請求事件
事件番号平成25(ワ)23687
事件名地位確認等請求事件
裁判年月日平成28年4月11日
法廷名東京地方裁判所
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平成28年4月11日判決言渡
平成25年(ワ)第23687号地位確認等請求事件
主1文
原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあ
ることを確認する。

2
被告は,原告に対し,平成23年1月から本判決確定の日
まで,毎月末日限り月額39万4445円及びこれに対する
各支払期日の翌日から支払済みに至るまで年6分の割合によ
る金員を支払え。

3
原告のその余の請求を棄却する。

4
訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,そ
の余を被告の負担とする。

5
この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由

第1

請求

1
主文第1項同旨

2
被告は,原告に対し,平成23年1月から判決確定の日まで,毎月
末日限り月額64万9115円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みに至るまで年6分の割合による金員を支払え。
3
被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成22年12
月1日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。第2

事案の概要等
本件は,告に期限の定めのなく雇用されていた原告が,勤務態度,被
業績不良,社員としての適格性欠如,業務上のやむを得ない事情の存在などを理由として普通解雇されたが,これらに該当する事実はなく解雇は無効であるとして,被告に対し,地位確認及び解雇後の賃金の
支払を求めるとともに,不当な退職強要は職場環境改善義務違反であるなどとして,不法行為に基づき慰謝料を請求する事案である。
1
前提事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)

被告は,銀行業,信託業等を目的に掲げる,アメリカ合衆国法を

設立準拠法とする法人である。
(2)

原告と被告との間の雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)
原告は,平成12年6月26日から,次の条件で被告に雇用さ
れた。
(ア)

業務内容

(イ)

期間の定めなし

(ウ)

給与見込額

被告P1支店

ヴァイス・プレジデント付き秘書

基本給月額26万円,事手当月額2万200

0円,住宅手当月額3万円,社会保険料手当月額3万4924
円,賞与年2回各88万4000円(年額合計593万108
8円)
(エ)

毎月24日締め(休日に該当する場合はその前営業日),同

月末日払い

原告は,被告から次のとおりの給与収入を得た。
(ア)

平成13年

741万0977円

(イ)

平成14年

743万2850円

(ウ)

平成15年

814万1082円

(エ)

平成16年

737万0273円

(オ)

平成17年

810万4418円

(カ)

平成18年

846万4544円

(キ)

平成19年

840万6678円

(ク)

平成20年

871万1921円

(ケ)

平成21年

734万2707円

(コ)

平成22年

650万8343円(同年11月30日解雇。

解雇予告手当を含む額)
(3)

原告の配属部署・上司等
原告は,入社後,被告トレジャリー・サービス(以下「TS」
という。)部門(原告の入社当時はP2・トレジャリー・ソリュ
ーション部門)に配属された。


原告の入社当時,直属の上長はP3であった。


平成15年2月,原告の直属の上長はP4となった。


平成18年3月頃,告の直属の上長はP5となった乙71)





原告は,平成20年10月15日,P5からTS部門における
原告の役割についてマネージャーと面談するよう指示された。原
告は,当時,ローカルコーポレートグループ,MNC&NBFI
グループ及びクライアントサービスアンドデリバリーグループの
サポートを担当しており,上記各グループのリーダーであるP6
及びP7が原告の事実上の上長の立場にあった。


原告は,平成21年9月11日からクライアントサービスアン
ドデリバリーグループに替わりテクノロジーアンドオペレーショ
ンズグループのサポートを担当することとなり,同グループのリ
ーダーであるP8が原告の事実上の上長の立場になった。


平成22年8月1日付けでP5が異動となり,原告の直属の上
長はP9となった。

(4)

解雇に至る経緯
P5は,平成20年7月14日,原告と平成20年の中間評価
面談を行い,原告の中間評価が5段階評価(上からE,M+,M,M-,Nの5段階)中の最下位である「N」であることを伝えた。

P5は,平成20年10月15日,原告と面談し,TS部門に

おける原告の役割についてマネージャーと面談するよう指示した。原告は,同月16日以降,P5,P6及びP7と面談を行った。
(乙1,71)

原告は,平成20年12月4日午後から,休暇(有給休暇及び
短期傷病休暇)を取った。


原告は,平成21年3月3日から同年4月まで,毎朝午前9時
30分までに当日行う予定の具体的な業務内容をP6及びP7に
メールで伝え,夕方頃その日の業務を振り返ることを目的とする
ミーティング(以下「タスクミーティング」という。)を行った。

原告は,平成21年5月1日,P10労働組合(以下「本件組
合」という。)に加入した。


平成21年7月頃,原告が被告社内で秘密録音していることが
発覚し,被告は原告に対し録音を禁止する旨を命じた(乙71)。

P5は,平成21年11月24日,原告に自宅待機を命じた。


被告は,自宅待機中の原告に退職を提案し,その条件を提示し
たが,原告はこれに応じなかった。


被告は,平成22年11月30日,被告の就業規則26条5項
3号,5号及び7号(後記(5))を適用する旨を記載した解雇通知書を送付し,原告を普通解雇した(以下,被告がした原告の解雇
を「本件解雇」という。)。


原告は,平成25年4月16日,被告を相手方として,労働審
判を申し立てた。労働審判手続において,原告が被告に対する雇
用契約上の権利を有しないことを確認し,被告が原告に対して7
10万円の解決金を支払うことなどを内容とする労働審判がされ
たが,原告から異議申立てがされ,本件訴訟に移行した。(当裁
判所に顕著である。)

(5)

被告の就業規則における解雇に関する定め
26条5項
3号

次の各号に該当する場合,社員は,解雇される。

勤務態度,業績が不良である場合。または,不都合の行

為があり,社員として適格性がないと判断された場合。
5号

会社の業務上のやむを得ない事情により社員を解雇しな

ければならない場合。
7号
2
その他,前各号に準じる事由のある場合。

争点及び争点に関する当事者の主張
(1)

本件解雇の有効性(争点(1))

(被告)

本件解雇の理由の概要は次のとおりである。
(ア)

原告が所属していたTS部門は,経済のグローバル化の進

展に伴い,平成16年以降,その業容は年々拡大し,顧客も,
金融機関を中心とする日本法人顧客に加えて,欧米系の外資系
企業,証券・生命保険など銀行以外の内外の金融機関にまで拡
大し,平成20年になると,売上規模,収益規模は平成16年
比で約50パーセント増となっていた。顧客層の多様化と国際
化,商品の複雑化に伴い,幅広い分野の高い専門能力を持つ人
材が年々求められるようになり,バックオフィス(サポート部
門)に属する社員についても年々,グローバルネットワーク,
会社の多様な商品についての知識経験とスキルが求められるよ
うになった。
平成20年9月に発生したリーマン・ショックは会社の経営
に甚大な影響を及ぼし,それ以降,ビジネスとその環境を激変
させたことから,上記の傾向はますます顕著となった。その影
響はアシスタント業務にも及び,従来のようなスケジュール調

整,出張の手配といった定型業務をこなすだけでは不十分な状
況となり,銀行一般に係る業務知識,所属部門の業務内容や部
門使用用語への理解を背景として行う顧客向け説明資料の翻訳,
顧客提案資料のデザイン等の変更(一定のスピードが要求され
る),外部顧客向けのサービス内容変更通知書,セミナー等の
案内の作成も求められるようになった。また,従来からの秘書・
アシスタント業務の中でも,拡大したTS部門の業務円滑化を
実現するような自主的なアイデア,例えば,チームリーダの休
暇予定を取りまとめ,主要メンバーに通知し,休暇が重なるこ
とによる業務の遅滞を防ぐなどの工夫を求められるようになっ
た。
(イ)

原告は,従来のスケジュール調整,出張の手配といった定

型的で単純な部類に属する業務についてはそれなりにこなして
いたが,上述したようなTS部門の質的,量的な環境変化に適
合することができず,独自のこだわりに従って仕事を非効率的
に行い,そのスピードが遅く,また,その質も不十分であるな
ど,の勤務成績の低劣さが顕著となっていた。告の評価は,


平成19年は5段階評価の下から2番目の評価であるM-,平
成20年は最下位の評価であるNであった。そのため,原告が
行うべき業務を他のスタッフが行わざるを得なくなっていた。
しかも,上長,その他の社員からの業務依頼を頻繁に独自の判
断で拒否するなど,上長の指示にも従わなかった。
(ウ)

原告の問題点は枚挙にいとまがないが,例示すると次のよ

うなものがある。
a
スピードが遅い
原告は,必要のないことにこだわりを持ち,意味のないこ

とに時間をかけ,の結果,の業務を行う時間がなくなり,


無駄な残業をすることとなり,期限までに成果物を提出でき
ないことも多かった。
例えば,出張リストの作成では,他に業務があるにもかか
わらず,不要な情報まで盛り込んだり,レイアウトにこだわ
ったりして,通常は1時間もかからないものを3,4時間も
かけて作成したり,イベントに招待した顧客リストの作成で
も,招待客さえ分かればよい」と指示したにもかかわらず,

必要のない情報を盛り込んだり,レイアウトにこだわるなど
して,通常は1時間もかからないものを1日以上もかけて作
成したり,月次で行われていたサービスアンドオペレーショ
ンミーティングの議事録についてその作成に約1か月も要し
たり,また,急ぎで資料をプリントアウトするよう指示を受
けても,インデントがおかしいとか,レイアウトがおかしい
とか,会社のロゴマークの位置が少しおかしいなどと言いな
がら,ささいな点を修正することに30分以上も費やしたり
するなど,案内文などのビジネス文書の作成に必要以上に時
間を費やしていた。
b
成果物の質が低い
原告は,事務処理のスピードが著しく遅かっただけでなく,
その質も著しく低かった。
例えば,月次で行われていたサービスアンドオペレーティ
ングの議事録の作成にしても,各社員の発言内容を正確に記
載していないだけでなく,その用語も銀行業務における一般
的な基本用語,又は所属部門が高い頻度で使用する定型的な
用語であるにもかかわらず,多くを間違って記載し,出席者

から多くの苦情を受けるほか,案内状などのビジネス文書に
しても,時間がないとして,未完成のものを提出することが
多かった。一方で,指示されたこと以外全く行わず,自分で
考え,提案することが一切なかった。
c
業務指示の拒否
上長あるいは他の社員が原告に業務指示をすると,原告は,
「他の仕事で手一杯なのでできない」,「なぜ私がやらない
といけないのか」等と言い訳し,それを拒否することが再三
に及んだ。

d
他部門からの苦情
原告が,不必要に依頼作業のクオリティーにこだわるほか,
一般的業務知識が不足しているため,依頼できる業務が限定
されること等から,コーポレートバンキング部門やオペレー
ション部門からも,原告について,「業務のプライオリティ
ーを理解しない」,「業務知識を身に付けるべき」,「コミ
ュニケーション能力を磨くべき」,「新しい業務にも対応す
べき」との苦情が数多く寄せられていた。

e
上長等の指導に従わない
原告が,再三,上長,他の社員の指示を拒否していたこと
から,優先順位が不明な場合は上長が判断するので相談する
ように指示をしても,原告はそれを意に介さず,相談を行わ
ず,自分だけの判断で,上長の指示や他の社員からの依頼を
拒否することが再三に及んだ。
原告は,P6とP7の要求が不統一であったと主張するが,
そのような事実はない。P6がリーダーであったローカルコ
ーポレート,MNC&NBFIグループでは,電話対応は社

員の不在時に取次ぎをするための付帯業務であり,不要不急
の電話に他の業務の時間を奪われないようにボイスメールに
メッセージを残してもらうことで問題はなかったため,P6
は,原告に対し,同グループの電話について優先的に対応し
なくてもよいと指示していた。他方,P7がマネージャーで
あったクライアントサービスアンドデリバリーグループでは,
顧客からの電話対応が主要業務であったから,同グループに
かかってきた電話については極力出て取次ぎを行うよう指示
していた。
(エ)

原告の業務態度等が上記のとおりであったことから,TS

部門の責任者であるP5,P6及びP7は,原告に対して,随
時注意指導を行った。しかし,原告は,これら上長の指示,指
導を素直に聞いて従おうとはせず,取り分け,平成20年11
月頃になると,反抗的な態度を示し,「職務内容を書面で示す
などして具体的かつ明示してくれなければ業務に従事できない」
という態度を取った。
平成21年3月になると,原告は,上長らの注意,指導がハ
ラスメントであるなどと申し立てた。申立てを受けた人事部の
P11が,ハラスメントとは具体的に何かをただしてもその内
容は何ら明らかにならなかった。申立てのほとんどは上長らに
対する抽象的な批判や不満であり,唯一具体的といえたのは,
平成20年11月のミーティングをTS部門とは異なるフロア
の会議室で行い,原告をその会議室に監禁したという訴えであ
った。しかし,TS部門の所在するフロアで原告についての指
導等を行えば,他の社員の知るところとなるので,原告の心情
等に配慮して別フロアの会議室を使ったものであり,注意指導

は行ったものの原告の意に反して会議室に閉じ込めたり監禁し
たりした事実はない。これ以外にハラスメントを裏付ける事実
も明らかではなかったので,11は,成21年4月24日,


原告に対し,ハラスメントの事実は確認できなかったことを伝
えた。
それ以降においても,原告は,P6及びP7が原告に注意,
指導をすると,「個人の尊厳を傷付ける中傷であり,嫌がらせ
であるから辞めるように」,「今後のやりとりは全て書面で行
うように」と述べるなどして反抗的な態度をとり続けた。
そして,平成21年5月,上長らがミーティングを実施しよ
うとすると,原告は,「労働組合に加入したからミーティング
の実施も労働組合を通せ」,「労働組合の代表者を立ち会わせ
る」などと述べてこれを拒否し,また,職場で一言でも注意し
ようものなら,携帯電話を持ちながら,「命令をするなら組合
を通せ」などと声を荒げ,会議を無断で欠席するなどして,業
務に支障を来し,他の社員からもクレーム等が多数寄せられる
に至った。
さらに,原告は,ミーティングに際して断りなく秘密裏に録
音を行うようになり,上長等がそれを止めるよう指示しても無
視し,「ミーティングを行うなら組合を通せ」等と反発を継続
したため,被告としては,原告をもはやTS部門で勤務させる
ことはできないと判断し,セキュリティの観点から,平成21
年11月24日,自宅待機を指示した。
(オ)

被告は,原告に対する自宅待機指示後,平成21年11月

26日,平成22年1月19日,同年3月16日,同月30日
にそれぞれ本件組合との間で団体交渉を実施し,非公式にも折

衝を行い,円満解決のための協議を続けた。
被告としては,原告を他の部門に配置することができないか
についても検討を尽くしたが,配置可能なポジションはなかっ
た。
被告は,原告が退職することを前提とした場合,所定の退職
金に加えて,年収1年分の追加退職金を支払うこと,再就職支
援の費用を会社が負担することをもって解決することを提案し,
組合も検討する旨回答した。かし,の後組合及び原告から,


被告提案に対する回答がなかったため,やむなく,平成22年
11月30日,本件解雇をした。

原告の業務遂行の状況
(ア)

原告が1日に処理する業務量は多くなく,一定量の定型的

業務を必要以上に時間をかけてマイペースでこなしていた。平
成18年3月にTS部門の責任者に就任したP5は,同部門に
配置されていたアシスタント(当時,P12,P13及び原告
の3名が配置されていた。)に対して,部門全体の円滑な業務
遂行のために従来よりも広い業務を積極的に分担するように求
めることとした。
アシスタント3名のうち,P12はP5の秘書業務全般の外,
TS部門を構成する各グループ全体に関わる重要文書の翻訳作
業,全体に関わる経費予算の管理,レポートの取りまとめの業
務等,広範な業務を担当していたが,P13及び原告は,従来
から主として定型的業務しか担当していなかったことから,今
後は部門全体のためにより多くの業務を分担し,また,従来の
ようなスケジュール調整,出張の手配といった定型業務だけで
なく,顧客向け説明資料の翻訳,顧客提案資料のデザイン変更

(一定のスピードが要求される),外部顧客向けの通知書やセ
ミナー等の案内の作成等の業務も担当するよう求めることとし
た。
(イ)

しかし,原告が行った業務の状況は,平成19年に至って

もほとんど変わらず,平成20年に入ってからも改善する様子
が見られなかったことから,同年の中間評価の行われた同年7
月14日以降,P5,P6及びP7は,原告と時間を取って再
三面談を行い,また,メール等でも個別の丁寧な指導を繰り返
すことになった。
これら指導において,P6は,原告に対して,①顧客宛金利情報の提供(内部で金利情報取得後,顧客に電子メールで案内
する業務),②営業担当者への情報提供(営業担当は顧客訪問を行う前に,インターネット等で顧客に関する最新ニュースを
収集するのが通例であるので,それを代替し,営業担当者の時
間を節約するサポート)を指示した。なお,P6は,③顧客収益動向分析(毎月の顧客の収益動向レポートをダウンロードし,
収益の変動が大きい顧客を抜き出し,営業担当者にフィードバ
ックする業務),④顧客往訪記録,新規案件のシステムへの入力作業(営業担当が作成したメモを基に業務記録システムに営
業の記録を入力する業務),⑤案件データの期限切れ管理(案件成約の予定日を過ぎてもアップデートがないデータを抽出し,
営業担当に連絡する業務),⑥顧客情報アップデート(全顧客の基礎情報(住所,業務内容など)の更新業務。初回登録から
1年又は3年ごとに更新の必要があり,毎月その分量は数十件
ある)の業務も分担してもらうことを予定し,その趣旨を原告
にも話していたが,実際に指示した①,②を原告が中途で行わ
なくなったため,これらについては原告に指示するに至らなか
った。
また,P7は,⑦カスタマーサポートの電話取次ぎ(担当者の不在時等にかかってきた顧客からの電話を取り,「担当者が
戻り次第連絡させます」等と返答する単純業務)の分担を具体
的に指示することまでしたが,原告はトレーニングを受けなけ
ればそうした簡易なサポートもできないとして,カスタマーサ
ポートの電話取次業務を行うことはなかった。
(ウ)

原告の具体的業務の問題点
原告は,平成21年3月上旬,TS部門で開催する懇親会
の日付の確定業務を担当した。これは各マネージャーに口頭
で確認を行い,ものの10分程度で終わる作業であるが,同
月10日まで終了させられなかった。この懇親会は内輪の集
まりであるから,主だったマネージャーの日程を調整する必
要はあったが,1か月もの長い間(開催は同年4月9日とな
った。),その日程を調整できないような催しではなかった。


原告は,平成21年3月4日,カンファレンス開催時の顧
客との面談メモの社内システムへの入力業務を進行中と報告
しており,これは既に完成している面談メモを貼り付けるだ
けの作業で,最大でも2,3時間程度で容易に処理できるに
もかかわらず,年4月3日まで完了できなかった。告は,


イベントというカテゴリーが作成されていないため入力がで
きなかったと主張するが,イベントの作成がされていなくて
も面談内容だけ入力して内容を最新化し,イベントというカ
テゴリーがアップデートされた後にそれをイベントにひも付
けることにすればよいと指示したものの,原告がその指示に

耳を貸さなかったものである。

平成21年3月頃,カスタマーサービスチームのP14が
原告に対し,翌日にカスタマーサービスチームの全社員との
インタビューを設定してほしいと依頼したところ,原告は,
「それを今日やれっていうんですか。私は忙しいんです。」
と述べて拒否した。


平成21年4月頃,社員の多くが研修に参加し,デスクが
2名しかいなくなるので,P14が原告に,カスタマーサポ
ートの電話取次ぎを依頼したところ,原告は,できません。

忙しいんです」,「まだ昼食にすら行けていないんです」と
拒否し,14が2人分の電話を15分だけ取ってほしい」


と頼み込んで,原告はようやくこれを受け入れた。


平成21年5月末頃,プロダクトマネジメントジャパング
ループのP15が原告に対し,「P6が作成した幾つかの表
を一覧で見ることができるようにしてほしい」と依頼したが,
原告が作成したものに不自然な内容があったので,原告に対
し,「P6が作成した表を確認し,間違いがないか確認して
ほしい」と電話で依頼したところ,原告は,突如,「そんな
のは自分の仕事でない」と電話口で大声で怒鳴り拒否した。


P14が原告に対し,派遣社員が就業するに当たって必要
な手続(社員番号の取得,机の確保,入館カードの発行,パ
ソコンの購入,携帯端末の購入,電話番号の取得,文具の手
配,子メール開通の確認,日の庶務事項の本人への連絡,


名刺作成など)を依頼したところ,原告は,それまでもそう
した作業をした経験したがあったにもかかわらず,「やった
ことがないから」と虚偽を述べて拒否した。

(原告)

成績不良に関する被告の主張は否認する。原告の勤務成績につ
いて,成15年から平成17年まで,属の上長であるP4は,


それぞれEと評価した。平成18年に上長がP5になってからは,平成18年の評価はM,成19年の評価はMM-ではない。,



平成20年の評価はNとなった。原告の上長がP5になった後,
特に平成20年のリーマン・ショックから,原告の成績評価は低
下した。これについて,被告は環境が厳しくなり,被告が求める
従業員のスキルの変化に原告がついていけなかったと主張してい
るが,原告を退職に追い込むための恣意的な評価である。


被告が具体例として指摘する原告の問題点について
(ア)

出張リスト
原告が出張リストを3,4時間もかけて作成したことはない。

出張リストとは,出張する社員のために,出張先の顧客名・住
所・地図・行程(列車の時間・乗り継ぎ方法),宿泊がある場
合は宿泊先を1枚にまとめたものであり,出張する社員はこの
1枚のリストを見て出張するほか,交通費等の社内決裁の稟議
に使用するものである。出張リストの作成は原告のルーティー
ンの作業であり,その作成に1時間もかけたことはない。
(イ)

イベントに招待した顧客リスト
被告主催の「○」というイベントの出席者リストを作成する

際に,原告は,備考欄に欠席者の欠席理由について記載したこ
とがあった。顧客から欠席理由を通知された以上,リストに記
載しておいた方が,営業担当者にとって今後の営業活動に向け
て情報提供に資すると原告が考えたためである。
(ウ)

サービスアンドオペレーションミーティングの議事録

サービスアンドオペレーションミーティングの議事録とは,
銀行内での顧客情報のセキュリティに関するインシデント報告
をまとめるための部内会議を記録した議事録であるが,こうし
た議事録は,行政機関への提出が求められているものであり,
単なる部内議事録ではないため,慎重な手続を経て作成され,
時間がかかる。
(エ)

資料のプリントアウト
P6からプリントアウトを命じられた資料のインデントやレ

イアウトがずれていたため,プリントアウトをする際にそれを
修正したため,若干時間がかかったことがあるが,被告はこの
ときの出来事を誇張して指摘しているにすぎない。
会社のロゴマークについては,位置の問題ではなく,顧客に
提出する資料をプリントアウトする際に,会社の古いロゴマー
クが入っていたことに気付いた原告が,これを修正する時間を
与えるよう求めたことがあるが,被告は,このときのことを事
実を曲げて誇張しているものである。
(オ)

ビジネス文書の作成
案内状などのビジネス文書の作成に,レイアウトにこだわる

などして必要以上に時間を費やすという事実はなく,ましてや
その頻度をほとんど」評価されるようなことは決してない。


(カ)

業務指示の拒否
業務指示を拒否したことはない。サービスアンドオペレーシ

ョンの議事録の作成を初めてTS部門が引き受けることになっ
た際,行政機関への提出が強く求められるようになったため,
P5から議事録作成するよう指示されたとき,原告が「私がや
るのですか」と尋ねたことがあるが,被告はその際の事実を誇

張しているにすぎない。
(キ)

他部門からの苦情
他部門から苦情を寄せられた事実はない。

(ク)

上長等の指導に従わないこと
上長等の指導に従わなかった事実はない。議事録の作成や多

少の知識を必要とする業務を拒否したこともない。むしろ,原
告は金融知識を必要とするフロントオフィス部門及びオペレー
ション部門の電話も取ることがあったが,優先順位を付けTS
部門全体の仕事から取り組むよう指導されることの方が多かっ
た。

原告への指導に対する反抗について
(ア)

平成20年7月に,P5が,「これまでの秘書業務(アド

ミ・アシスタント)は,これからは評価の対象とはしない」と
宣言してから,原告に対する要求が急に厳しくなった。しかし
ながら,今後求められる役割について具体的に提示されことが
なかったため,原告は,これを具体的に示すことを求めるよう
になった。
(イ)

被告は,平成20年10月頃からは,指導と称する嫌がら

せにより原告を退職に追い込もうとするようになり,原告は,
自己防衛の観点から対抗せざるを得なくなった。被告が反抗と
主張するのはその際の経緯である。
(ウ)

原告は,平成20年10月15日以降,同月16日,同月

24日,同月29日,同年11月6日,同月12日,同月13
日,同月17日,同月18日,同月20日,同月26日,同年
12月3日,同月4日と,原告の年末業務評価に関し連日にわ
たる呼出しを受け,これまでと同じ仕事をしてもN評価と低い

評価をされて繰り返し責められるようになった。
(エ)

原告は,過去に被告において,業績評価のレビューを連日

繰り返し,疲弊した従業員が自主退職を申し入れるという事態
が頻繁に起こっていたことを知っていたため,原告も自主退職
に追い込まれると危機感を抱き,平成20年11月12日から
自己防衛のために録音をするようになった。
(オ)

平成20年11月26日の面談で,P5は原告に対し人事

部とのレビューの実施を繰り返し命じた。業績評価について人
事部とレビューをすることは,人事部から自主退職をしてもら
いたいと要求を受けることを意味するものと被告従業員の中で
認識されていたから,この日の面談はP5による退職強要とい
うべきものである。同年12月4日にも,P5は人事部との面
談を極めて強い口調で命じた。この日,原告はもともと体調不
良であったが,P5との面談により恐怖心から体調が更に悪化
し,その日の午後から,同月26日まで,傷病休暇(有給)を
取ることになった。
(カ)

平成20年12月15日,P5の秘書のP12から,原告

に対し,職場復帰予定日の同月29日に面談を実施すること,
傷病休暇期間中も定期的にP5,P6及びP7に連絡をするこ
と,人事部のP11と連絡を取ることを求めるメールが送信さ
れた。原告がP11に連絡したところ,P11からは,「最初
の年は期待値以上のことをしたとしても,2年目同じことをし
ても評価は下がる」などと言われた。
(キ)

傷病休暇明け以降も平成21年1月6日,同月13日,同

月15日,同月23日,同年2月2日,同年3月2日と,連日
にわたり原告の呼出しが行われた。同年1月6日のP11との

面談では,原告に自主退職を仕向ける発言がされた。
(ク)

平成21年3月3日から,毎朝9時30分までに,原告が

その日に実行しなければならない業務内容について,メールで
P6とP7に報告し,同日の午後4時30分に部署内の職員か
ら見聞きできる丸テーブルでP6又はP7による原告の業務評
価(被告のいう「タスクミーティング」)が行われることにな
った。その回数は,同年3月に16回,4月に13回であった。
(ケ)

これとは別に,平成21年3月4日,同月13日,同年4

月1日,同月8日,同月9日,同月22日,同月30日,同年
7月31日,同年8月24日,同年9月10日と原告の業務評
価は並行して行われた。同年3月13日の面談では,P11か
ら別の職場を探すことを求める発言があった。
(コ)

原告は,平成21年5月1日,本件組合に加入し,同月2

2日,P5とP11に呼び出され,組合の言うことを聞くな」

と言われた際,「このような面談は,労働組合を通していただ
けませんでしょうか」と申し入れた。
(サ)

平成21年9月11日,原告の職務はアドミ・アシスタン

トのままであったのに,原告がサポートするメンバー全員から
1人だけ隔離された席に移動させられた。席替えの理由につい
て,原告に対し何ら合理的な説明はされなかった。
(シ)

平成21年10月1日及び同月9日,P5は,原告に対し,

「面談を録音すると解雇する」と通告した。また,P6は,同
月1日,原告が残業しているのを見付けると,「残業を見た」
とメールで送信してきており,P6やP7に残業承認を求めて
も,「事前承認でないと承認できない」として承認を拒否する
嫌がらせを受けた。


原告を配置する部署の不存在
(ア)

被告は,TS部門のサポートの適正人員は2名であり,原

告を配置する部署は不存在であると主張するが,原告の自宅待
機期間中に派遣社員を採用したため秘書業務を行う社員が2名
になっているにすぎない。
(イ)

原告は,他の部署への配属を断ったことはなく,原告を配

属する部署が存在しないということはあり得ない。

原告の業務の執行状況について
(ア)

被告は,乙6の1から乙6の28までに記載された業務の

数が少なく,告の業務量が少ないと主張しているが,告は,


そこに記載されていない秘書業務,例えば,電話対応,データ
ベースの更新,ファイリング,郵便物管理,その他,いわば毎
日のルーティーンの作業も行っている。
(イ)

スピーディな事務処理とチームによる共同作業は,原告の

入社当初から求められており,経済のグローバル化の進展に伴
い初めて求められたようなものではない。
(ウ)

被告は,平成20年7月14日以降,原告に6種の業務を

分担してもらう予定でいたが,原告が2種の業務を中途で行わ
なくなったため残りの業務を指示するに至らなかったと主張す
るが,事実に反する。①顧客宛金利情報の提供については,P6に指示される前からP16の指示を受け行っていた。一度P
6からそうした業務をする必要はないという指示があったもの
と理解して行わなくなったが,同年11月20日のP6との面
談で指示されたため,再び実施するようになった。②営業担当者への情報提供についても,原告はP6から指示される前から
行っていたが,同月17日,P6から「このような業務を他の

営業部員(P16)が何と言おうと役に立たない,意味がない
からやる必要はない」と言われたためこれを取りやめており,
その後の面談でP6から指示されてこれを再開している。④顧客往訪記録,新規案件のシステムへの入力作業については,具
体的な指示を受けて行っていたが,実際に面談した者しか入力
する内容が分からないため,具体的な指示を待つのは当然であ
る。⑥顧客情報のアップデートについて,原告は,顧客の担当者の名前や事務所所在地について営業担当者が取得した名刺等
の情報により変更があった場合には指示を受けることなくアッ
プデート作業を行っていた。③顧客収益動向分析及び⑤案件データの期限切れ管理については,直接の営業担当者ではない原
告は,顧客収益動向分析や毎月の顧客の収益動向レポートにア
クセスする権限を与えられておらず,それらの業務をする権限
がなかった。これらが原告の役割と指示されたこともない。
(エ)

被告は,平成20年7月14日以降,原告に対し,P7が

カスタマーサポートの電話取次ぎの分担を具体的に指示したと
主張する。しかし,P7が原告に対し求めたのは,「担当者が
戻り次第連絡させます」と答えるような単純なものではなく,
不在の担当者に代わって顧客からの問い合わせに答えることを
求めていたものであり,決して単純業務ではない。

原告の具体的業務の問題点について
(ア)

平成21年3月にTS部門で開催する懇親会の日付の確定

ができなかったのは,原告が各マネージャーへの確認を怠った
ためではなく,各マネージャーの都合が合わず日程調整できな
かったためである。日程調整に1か月を要したのは,日程決定
を保留せよとのP5の指示をP6を通じて受け,これに従った

ことによるものである。
(イ)

カンファレンス開催時の顧客との面談メモの社内システム

への入力ができなかったのは,原告が入力作業を怠ったためで
はなく,顧客管理のシステムへの入力が平成21年4月1日に
なって初めて完了できる仕組みになっていたためである。通常
は随時入力できるが,顧客を集めて開催されるカンファレンス
時における面談内容を入力する場合は,同システムの別の管理
者がイベント(本件ではカンファレンス)の「フラグ」を立て
るというシステムの修正を行ってからでないとイベントの際に
行われた顧客との面談内容の入力が完了されない仕組みになっ
ていた。
(ウ)

平成21年3月頃,P14からカスタマーサービスチーム

の全社員とのインタビューの設定を依頼されて原告がこれを拒
否したことはない。同年9月30日,P14から原告に対し,
カスタマーサービスチーム全員とP7との面談を調整するよう
メールで指示された際に,原告はP5から同月11日にP7を
サポートする秘書をP13に変更するとのメールを受信してお
り,その旨を返信したにすぎない。
(エ)

平成21年4月頃,P14がしたカスタマーサポートの電

話の取次ぎの依頼を,原告が拒否したことはない。むしろ,P
6は,原告がカスタマーサポートの電話を取りすぎることを問
題視し,仕事に優先順位を付けカスタマーサポートの電話対応
の優先順位を下げるよう指示していた。
(オ)

平成21年5月末頃,P15から表の確認を依頼されたの

に対し,原告が「そんなのは自分の仕事ではない」などと大声
で怒鳴って拒否した事実はない。原告はP15の依頼を受けて

表の作成をしている間に,P17が表に掲載するべき数字に修
正を加えたため,これを見たP15が自分の指示どおりに表を
作成したのか問いただしたことから,P17の指示があり修正
した旨を答えたにすぎない。
(カ)

P14がした派遣社員が就業する際の手続の依頼を,原告

が拒否したという事実はない。
(2)

不法行為(争点(2))

(原告)

被告は63回も面談を実施して原告に退職を強要していたので
あり,こうした行為は不法行為となる。


被告は職場環境を整える義務を怠った。連日に及ぶ合計63回
の面談が行われ,アシスタント業務は全く評価しないなどの抽象
的な指示を繰り返し受けた。原告がP11に改善を求めても改善
されず,ハラスメントを訴えても,調査を怠り,原告の申告を放
置した。かかる不作為は不法行為となる。


平成21年9月11日に原告の席替えが行われているが,原告
一人が隔離された状態となり,周囲の目から見てもハラスメント
を受けていることが明らかな状態となるなど,不当な配置換えを
行った。


原告はうつ状態となり,精神科への通院を余儀なくされた。慰
謝料としては,200万円が相当である。

(被告)

原告の主張は否認する。ワハラ,職強要と主張する事実は,

退
原告に対する業務上の指導の範囲内で行われたものである。


平成21年9月11日頃に原告の座席を変更したことは認める
が,これは被告が同月頃,TS部門全体の業務推進の円滑化等の

ために,その責任者の業務負荷が高かったテクノロジーアンドオ
ペレーションズグループのアシスタント業務も原告に担当させる
こととし,そのためにこのグループの社員の近くに原告の席を変
更しただけである。

P5が原告に対し面談を録音したら解雇すると発言したことは
ない。P5は,録音することは会社のルールに反するものであり
解雇も含めた懲戒の対象となるという趣旨を述べただけである。


P6が,平成21年10月1日,原告に対し「残業を見た」と
メールを送ったのは,P5が平成20年11月26日に原告を含
むアシスタント全員に対して残業をする際には事前に上長の承認
を得るように指示していたものの,原告がそれを遵守しないこと
から,見かねて送ったものである。

(3)

解雇の承認(争点(3))

(被告)
被告が平成22年11月30日に本件解雇をしたところ,原告
はそれから約1週間後の同年12月7日に来社して異議を述べる
ことなく私物を引き取って退社した。その後年末まで,原告及び
本件組合から何らの要求もなかった。その後,平成23年1月4
日,本件組合から平成22年12月28日付けの「抗議ならびに
要求書」と題する書面が被告に送付されたことはあったものの団
体交渉の申入れはなく,本件解雇から半年以上も経過した平成2
3年8月1日にようやく団体交渉の申入れがされたので,被告は,解決に向けた現実的な提案なり,新たな申入れがあれば,団体交
渉には応じる旨を回答した。しかし,その後組合及び原告から被
告に対し団体交渉の申入れや要求等は一切なく,本件解雇から2
年半も経過した平成25年4月末頃になって労働審判申立てがさ

れたものである。原告の雇用保険,社会保険,健康保険等に関す
る手続も全て完了し,現在に至っている。以上の事実関係からす
れば,原告は既に解雇を承認していたというべきである。
(原告)
原告は退職はもとより解雇の承認などしていない。原告は本件
解雇直前の平成22年11月26日,P9に対し,職場復帰を望
んでいるとの明確な意思表示をしており,本件解雇後,被告に対
し,解雇の撤回及び現職復帰を求める平成23年1月31日付け
の通知書を送付している。私物の引き取りについては,紛失のト
ラブルを避けるためにやむなく一旦引き取ったにすぎない。原告
は,被告からIDカードの返還を求められたが拒否しており,現
在もこれを所持している。原告は,確定拠出型年金の資産管理会
社であるP18保険相互会社から,成23年1月7日付けで確


定拠出年金の加入資格喪失のお知らせ」という文書が送付されて
きたため,同月31日付けで,被告に対し,雇用継続しているた
め,直ちに年金の資格喪失の取消しを求める旨の文書を送付して
いる。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提事実(第2の1)に加え,各項掲記の証拠及び弁論の全趣
旨によれば,次の事実を認めることができる。
(1)

被告について(乙47,48,71)
被告は,P35に本拠地を置くP19の企業グループに属し,
P1支店を設け,日本で事業を行う内外の企業等を顧客として金
融事業を行っている。


被告の旧商号はP20・バンクであったが,2001年(平成

13年)にP21銀行と合併し,2004年(平成16年)にP
22と合併するなど規模を拡大していった。

被告の事業の主たるものは,インベストメント・バンク(政府
系機関,機関投資家,事業法人などに戦略的アドバイス,資金調
達,マーケット・メイキング,リスク管理,外国為替などの商品・サービスを提供する業務)及びトレジャリー・サービス(キャッ
シュマネージメント,資金調達,投資,外国為替に関するサービ
スを提供する業務)である。


被告は,トレジャリー・サービスとして,日本における総合的
なキャッシュマネージメント・サービス,具体的には,日々の送
金,取立て,支払,回収などの口座の管理,預金運用,資産の流
動化や投資に関するマネジメント,トレードファイナンス(貿易
の事業)などのサービスやそれらに関わる様々な情報を世界各国
の大企業,金融機関,政府等の公共機関に提供する業務等を行っ
ている。


平成21年当時の被告P1支店のトレジャリー・サービスを扱
うTS部門には,本部長のP5の下,金融法人グループ,ローカ
ルコーポレート,MNC&NBFIグループ,クライアントサー
ビスアンドデリバリーグループ,プロダクトマネージメントグル
ープ,テクノロジーアンドオペレーションズグループの5つのグ
ループが存在した。


ローカルコーポレート,MNC&NBFIグループは,P6が
リーダーであり,主として日系企業,外資系企業(MNC:MultiNationalCorporate),証券会社・生命保険会社(NBFI:NonBankFinancialInstitution)を対象に新規顧客を獲得する(被告に口座を開設し,取引を開始する)ための業務を行うグループ

であり,顧客獲得のために世界的なネットワークを駆使した情報
提供,提案,その他の様々な営業活動を行っていた。

クライアントサービスアンドデリバリーグループは,P7がリ
ーダーであり,既に被告に口座を開設している既存顧客を対象に,取引の維持・増加を目的として日常的に顧客の相談に応じ,様々
なサポートを行っていた。グループ内には,インターネットバン
キングのサポートを担当するクライアントアクセスチーム,日々
の取引に関する顧客からの照会業務を担当するカスタマーサービ
スチーム(顧客からの電話での問い合わせ等に対応する),口座
の開設を担当するインプリメンテーションチーム,顧客の相談等
に乗り,それを解決するために様々な提案等を行うアカウントマ
ネージャーチームの4チームが組織されていた。


テクノロジーアンドオペレーションズグループは,P8がリー
ダーであり,送金のデータ処理のための事務処理業務などシステ
ム・オペレーション業務を担当していた。


平成21年5月1日当時,TS部門内にはP5の下,55名の
スタッフが配置されていたが,これらのスタッフのサポートをす
るアシスタントとして,主としてP5のサポートを行う「エグゼ
クティブサポート」としてP12が,それ以外のスタッフをサポ
ートする「TSサポート」(アシスタント)として原告及びP1
3が配置されていた。TSサポートの正式な上長はP5であった
が,P5はTS全体を統括する立場にあったため,日常的に業務
を監督する機会の多いP6とP7が事実上原告の上長の立場にあ
った。


従来,トレジャリー・サービスにおける顧客に訴求する要素と
しては,送金手数料の割引率,米ドル預金の運用金利の設定とい

った取引条件が重視されていたが,日本企業が積極的に世界各地
に進出するようになり,トレジャリー・サービスにおけるビジネ
スの内容及び営業方法が多様化・複雑化するにつれ,全世界にネ
ットワークを有する被告が扱うその業務量は拡大しており,売上
規模,収益規模も年々増加し,平成16年から平成20年にかけ
ていずれも約50%増となり,引き続きその規模の拡大が見込ま
れていた。顧客も,安い手数料,高い金利を求めるだけではなく,進出しようとする各国の外国法,会社法についての知識,海外に
進出した企業の先行事例の紹介,顧客の社員に対する専門的分野
についての教育等,付加価値のあるサービスの提供を求めるよう
になっていた。こうした状況を受けてTS部門の営業手法も変わ
り,営業用の資料は顧客向けにカスタマイズされたものとなり,
その内容も各国の法規制を踏まえた専門的で大部なものとなって
いた。(乙50,51)

被告は,TS部門を強化充実させるため,シンガポールとロン
ドンで長年オペレーションや営業の分野を担当していたP5を平
成18年3月にTS部門の最高責任者として配置した。P5は,
着任後,顧客に対するサービスを増強するため,スタッフを人数
的に増強し(平成17年当時41名であったスタッフは,平成2
2年に56名となった。),コンサルティング等に役立つ専門知
識を有する人材を金融機関から幅広く採用した。


被告の人事評価制度は,毎年1月から3月頃,社員が上長と面
談してその年の目標について合意し,合意内容をPerformancemanagementcentral(以下「PMC」という。)と称するシステム上に入力し,毎年6月又は7月頃,上長と中間面談を行い,
社員が自己評価を行い,上長が「マネージャーコメント」欄にコ

メントを入力して,中間評価(E,M+,M,M-,Nの5段階
評価。Eは目標を大きく上回ったもの,M+は目標を上回ったも
の,Mは目標を達成したもの,M-は目標を下回ったもの,Nは
改善が必要というもの)を行い,毎年10月から12月にかけて
上長が評価(中間評価時と変更がないか評価し直し,評価を確定
する。)を行うというものである。社員は,上長の最終的な評価
の決定に先立って,自らの評価の参考資料として同僚に意見(フ
ィードバック)を求めることができ,同僚がそれに応じてその意
見をPMCに入力した場合(同僚は対象となる社員のその年の目
標等の内容は知らされていない。),上長はその結果も参考にし
て社員の評価を決定する(対象となる社員は同僚のフィードバッ
クの内容を見ることはできない。)。上長は,必要に応じ,対象
となる社員が人選した同僚以外の社員からも意見を得ることがで
き,意見の内容に不明な点等があれば改めて照会することもでき
る。上長は,これらを踏まえて上長のコメントをPMCの「マネ
ージャーコメント」欄に記録してその全部を評価対象の社員に開
示し,当該社員はその内容を見てPMCに電磁的な方法によるサ
インを行い,上長も同様にサインを行い,当該社員に自己評価さ
せた上で上長としての評価を決定する。
(2)

P5が赴任するまでの原告の業務の状況について
原告は,平成12年6月26日,被告(当時P20・バンク)
に雇用され,TS部門に配属された。


本件雇用契約に係る契約書上,原告の担当は,①TSオフィサーの秘書業務(会議資料準備,社内外会議のアレンジ,英文及び
和文の文書作成,外オフィスからのビジターの世話,話応対,


データベースの更新,ファイリング,郵便物管理,その他),②
TSチームの秘書業務(経費レポート作成,出張手配,チームの
出勤・勤怠管理,その他),③ワード,エクセル,パワーポイントによる資料作成,④スタッフの指示によるインターネットを使用したトピックの検索とされていた(甲1)。

原告が実際に行っていた業務は,サポート業務(社員のスケジ
ュール管理,出張の手配,電話応対,ミーティング資料の準備,
名刺等の手配,ーティングの参加者の日程調整,議室の予約,


経費精算,一部の翻訳,採用事務の一部(面接予定者に対する連
絡),各種行事の補助等を行っていた(甲49,乙71)。


平成15年2月,原告の直属の上長はP4となったが,P4に
よる平成15年から平成17年までの原告の評価は,ずれもW


ellperformed」(「優秀な業績」)というものであった(甲14の1及び2,甲49,原告本人)。

(3)

P5が赴任してから平成20年の中間面談までの状況
平成18年3月,P5がP1支店に赴任し,原告の直属の上長
となった。P5は,原告に対し,事務の迅速化を図り,TS部門
内でより広いサポート(部門全体への貢献)をできるようにする
こと,積極的・自発的に全てのスタッフをサポートすること等を
求めた。(乙71)


平成18年の原告の評価書における記載(乙2)
(ア)

年度末成績サマリー

好評価

①強力なオフィス管理スキ

ル,②銀行手続及び社内ネットワークに対する良好な知識,③所定の期限内の目標達成に対し熱心
(イ)

年度末成績サマリー

悪評価

①積極的なアイデアの提供

及び改善が必要な領域,②変化に対応できる柔軟性及びサポート担当の各ファンクショングループ間のコーディネーション,

③優先順位管理。ただし,これには継続的な改善が見られる。(ウ)

全体成績

(エ)

上司コメント

満たしている。(M)
原告は,年は多くの鍵となるプロジェクト

を立派にこなしてきた。1年を通じて事業構造は変化を迫られ
てきたが,原告の貢献はおおむね一貫してみられた。しかし,
TS部門内でより広い範囲を対象とする仕事に移ったが,その
結果は良いことと悪いことが入り交じったものであった。原告
は営業プロセスへの貢献への関与をより深めることに興味を示
していた。かつ,原告が年の初めにサポートしていた数多くの
事業管理業務で移行したものを考えればその機会はある。私は
これをサポートするものであり,かつ,原告には潜在能力があ
るばかりではなく,大きな価値をもたらすこともできると信じ
ており,原告の積極的な関与に期待している。原告は引き続き
TSチームにとって重要な貢献者であり,々の2007年平


成19年)目標達成に向けて原告と一緒に仕事をしたいと思い
ます。

原告及びP5は,平成19年1月11日,面談し,同年の目標
を次のとおり確定させた(乙3)。
(ア)

①TS部門向けに事務補助業務を提供し,かつ,同部門の事
業要求をサポートすること。事業のうちコーポレート側に焦点
を当てること。ただし,必要に応じて変化する要求項目や要件
をこなせる柔軟性を示すこと。自分の守備範囲に閉じこもるの
ではなく,事業部内の他の事務アシスタントに対して,円滑な
バックアップを提供すること。
(イ)

②事務作業を処理すること。経費の管理及び処理,日本を訪
問する訪問客の補佐。事業に対する商品知識を築く一方,積極

的なサポートを提供すること。
(ウ)

③優先課題として対クライアントサポートに焦点を当てる
こと。
(エ)

④英語の話し言葉・書き言葉の両方でのコミュニケーション
スキルの強化。
(オ)

⑤サービス水準の改善を図るべく,S部門内のコミュニケT
ーション及び他部署とのコミュニケーションを行うこと。
(カ)

⑥効果的に優先順位を付け,締め切りを確実に守ること。ト
レーニングをスケジュールどおり終えること。
(キ)

⑦現地の統括及び遵守・規制案件を考慮した上で,堅固なリ
スク管理インフラストラクチャーの遵守と維持を確実に行うこ
と。現地で会社としての価値を表現したリーダーシップのある
行動を示し,チームワークと指導の便宜を図ること。

平成19年の原告の評価書における記載(乙3)
(ア)

期中の全体的な評点

(イ)

期中マネージャーコメント

満たしている。(M)
原告は引き続き,題の迅速な

解決を図るべく,TS部門内外の連絡ネットワークを活用して,
自分がサポートするチームに対し一貫して強力な事務を提供し
ている。チームメンバーは引き続き,原告には成長の余地があ
り,ビジネスにより深く関与できると感じている。これは,毎
月の営業訪問計画の仕事などで実現し始めているが,その機会
はもっと存在している。積極的に焦点を当てることで,これは
平成19年(2007年)下半期における自己啓発分野となり
得る。
(ウ)

年度末成績サマリー

好評価

①強力なオフィス管理スキ

ル,②銀行手続及び社内ネットワークに対する良好な知識,③
社外の人と接する時のプロとしてのふさわしい振る舞い
(エ)

年度末成績サマリー

悪評価

①一貫したチームワークに

ついては改善が必要。現在のところ一部の領域で仕事にむらが
ある。②部署内のパートナー及びサポート対象チームとのよりよい対人スキルが必要
(オ)

全体成績

(カ)

上司コメント

満たしている。(M)
原告は,引き続き,TSサポート組織が成長

し,新しいメンバーも迎え入れるに当たり,これに貢献してい
る。原告はしっかりとした準備スキルを備えており,チームの
業務効率化に貢献してきた(M)。しかしながら,事業の発展
とともに,変化する環境の中で柔軟性が求められている。異な
る分野及びグループについての成果は依然として良いものと悪
いものが入り交じっている(M-)。これは前年のレビューで
も指摘されたことであるが,原告のすばらしい仕事振り(上記
で指摘された部分は除くとして)に対して平成19年(200
7年)も影響を及ぼしている。2008年(平成20年)はこ
の点について改善を追求したい。

原告は,平成20年5月16日,顧客向けの説明資料を翻訳し
たことについて,素早く高品質な仕事であったとしてP6から感
謝を述べるメールの送信を受けた(甲26)。


原告及びP5は,平成20年,面談し,同年の目標を確定した。
目標は,上記ウの平成19年の目標①,②,③,⑤,⑥,⑦と同じである(ただし,⑦は,「現地で会社としての価値を表現したリーダーシップのある行動を示し,チームワークと指導の便宜を
図ること」という部分が削除されている。)。(乙4)

(4)

平成20年の中間面談から休暇取得までの状況


P5は,平成20年7月14日,原告に対し,同年の中間評価
が「N」であることを伝え,主体的にチーム全体に貢献すること
を求めた(甲71,証人加藤)。


P5は,平成20年8月7日,原告が外部顧客向けの説明資料
を翻訳したことについて,「準備期間が短い中,間に合ったのは
原告のおかげである」という内容のメールを送信した(甲27)。

P5は,中間評価面談から約3か月が経った平成20年10月
15日,原告と面談し,P5が期待するアシスタントの働きがで
きていないが,そのことが分からないのであればマネージャーと
面談するよう指示した(甲71,証人P6)。


原告は,平成20年10月16日から,P6及びP7と面談す
るようになった。原告とP5,P6及びP7らとの面談その他の
やり取りの日時,場所,出席者等は,別紙面談等一覧表のとおり
である。(別紙面談等一覧表の「証拠等」欄に記載の証拠,弁論
の全趣旨)。


P6は,平成20年11月6日,原告に対し,以下のことを伝
えた。
(ア)

業績評価面談に望む前のコメントとして,話応対業務や出

張手配業務などが大事でないとは言わないが,TSチーム全体
をサポートする時間を増やしてほしいこと。
(イ)

一例としてチーム全体の年間イベントカレンダーを作成し

イベントの調整に主導権を握りスケジュールをコントロールす
ること。
(ウ)

他のアシスタントらとより緊密に仕事をするのが重要であ

ること。
(エ)

原告が担当しなければならないマネージャーらの人数がま

すます多くなった事情を考えると,作業内容に優先順位を付け
ることが非常に重要であること。
(オ)

原告はおのおののマネージャーから依頼された作業内容を

ほぼ同様の優先順位で平等に取り扱い,かつ,自分自身で納得
できるような高品質を求めているが,時には仕事を素早く行い,
TS部門の全体的な仕事を遂行するのにもっと時間を使うこと
が重要であること。
(カ)

金融市場の基本を身につけるのが重要であり銀行業界に関

する市販の本を読み始めるのが良いスタートになること。

原告は,平成20年11月7日,P6に対し,ミーティングを
行った結果,TS部門全体を見据えた幅広い役割を求められてい
ることは分かったが,チーム全体を見据えた作業を原告が率先し
てやることがTS部門のマネージャー全員の本意なのかは分かり
かねるところもあり,優先順位の付け方について今度のミーティ
ングでアドバイスをもらいたいこと,金融知識をつけるよう言わ
れたのはもっともなので本を購入して勉強中であることなどを,
上記オのメールの返信で伝えた(甲4⑤)。


原告は,平成20年11月12日時の面談から,そのときのや
りとりを隠れて録音するようになった。


原告とP6の平成20年11月12日の面談において,P6は,
原告が従来からのアシスタントとしての役割は果たしているが,
P5の期待は非常に高く,そこまでは満たしていないこと,Nと
いう評価は来年被告にいられないかもしれないという意味である
ことを伝えた(乙7)。


原告とP7との平成20年11月13日の面談において,P7
は,原告がクライアントサービスアンドデリバリーグループの電

話をとり,究極の目標としては担当者の代わりに回答ができるく
らいのところまでできると助かると話した(乙8)。

原告は,平成20年11月14日,P16に対し,原告が行っ
ているニュース配信が役に立っているかを尋ねたところ,P16
はとても役に立っていると答えた(甲35)。


原告とP5との平成20年11月17日の面談において,原告
は,自分に求められている内容にはP6とP7とでギャップがあ
る旨を伝えたところ,P5は,原告に求められている役割は変化
しており,人事のP11と話をすべきことを伝えた(乙9)。


原告とP6との平成20年11月17日の面談において,P6
は,原告がチーム全体の利益を考えてマネージャーからの指示を
受けずに先を見越して業務をしてほしいこと,単にニュースを伝
えるだけでは価値がないこと,指示を待たずに積極的に仕事する
ことを期待しており,その結果についてP5を含む誰かがおかし
いというのであれば,P6が原告に代わって謝ってもよいと考え
ていることを伝えた(乙10)。


原告とP6及びP7との平成20年11月20日の面談におい
て,P6が,原告がそれまで行っていた顧客宛ての金利情報の提
供をやめた理由を聞くと,原告は,「休み中にP13に引き継い
でいたところ,P13がP6からやらなくてよいと言われたこと
を聞いたためである」旨答えた。P6は,「それはP13にさせ
るほどの仕事ではないと思ってそう言ったのであって,原告もし
なくてよいと思って言ったわけではないから,今後は金利情報の
提供をしてほしい」と伝えた。(乙12)


原告は,平成20年11月25日,P6及びP7に対し,原告
に期待されているという「TS部門の全体的な役割」について,

原告が現在行っている業務でこれに当たるものをリスト化し,こ
れを参照にして役割が変化したという職務内容(ジョブ・ディス
クリプション)を明確に示すよう求めた(甲4⑥)。ソ
P6は,平成20年11月26日,原告の中間業績評価がN評
価であり,原告はその評価に同意していたにもかかわらず,「M
評価ではないのか」「評価の理由が分からない」などと疑問を示
しており,「マネージャーらは原告の仕事に満足しており,原告
はその期待に応えている」と述べるなど,原告がP6及びP7か
ら直接受けた説明と食い違った言動を繰り返していることからす
ると,業績評価について理解してもらうために人事部との緊急の
面談を提案することになった旨を原告に伝えた(甲4⑦)。

P5は,平成20年11月26日,原告,P13及びP12に
対し,同日以降残業をする場合には必ず事前にP5又は上長のい
ずれかから承認を取得するよう指示した(甲7)。


原告は,平成20年12月1日,P6及びP7に対し,ジョブ・
ディスクリプションの明示を再三求めているが,提示のないまま
話がそらされ続けているとして,具体的で実行可能なバランスの
取れたジョブ・ディスクリプションを提示するよう求めた(甲4
⑦)。


原告は,平成20年12月2日,米国の出入国管理に係る変更
事項の情報をTS部門全体にメールで送信した。このメール送信
について,P5は,同月3日,「事前に自分に確認するよう求め
たのになぜ従わないのか」などと原告にメールで注意した。これ
を受けて,原告は,同月4日,P6に対し,同年11月17日の
面談における指示に従って情報を送信したらP5から注意を受け
たので,今後の誤解を防ぐためにも明確なジョブ・ディスクリプ

ションを定める必要がある旨を伝えた。(甲4⑧)テ
P5は,平成20年12月3日,原告に対し,人事部のP11
とのフォローアップのための業績評価面談の予定がまだ決まって
いないようであるが,1週間前にした面談時に即時に予定を入れ
る旨の業務命令を発した趣旨であることを伝えた。原告は,同月
4日,上記チのメールの内容がP5に伝わっていないのかをP6
にただしたところ,P6は,メールの内容は伝わっているので,
至急P5の指示に応じるよう求めた。(甲4⑦)


原告とP5の平成20年12月4日の面談において,P5は,
TS部門全体へのメール送信はP5の確認を得て行うべきこと,
早急に人事とのミーティングを設定すべきことを指示した。原告
は,P5との面談後,体調が悪くなったとして,同日午後から,
休暇(有給休暇及び短期傷病休暇)を取った。(乙14)

(5)

休暇から出勤停止まで
原告は,休暇中である平成20年12月17日,人事部のP1
1と,休暇のこと及びPMCに関しミーティングをすることにつ
いて話をした。その際,P11は,「毎年同じことをしていたら
年が経つと評価が下がっていくと思う」と話した。(乙15)


原告は,平成21年1月6日,職場に復帰して,P11と面談
し,「これまでP5,P6及びP7と面談し,いろいろと言われ
たが,何を期待されているか分からず,ジョブ・ディスクリプシ
ョンを示してもらいたい」と述べたところ,P11は,「原告に
期待されているのは部門のハイレベルなサポートであり,ジョ
ブ・ディスクリプションとして具体的に指示されるような役割を
求められているわけではないのではないか」と答えた。原告は,
「N評価を受けたことが非常に心配であり,M評価に変えるのは

どうしたらよいか」と尋ねると,P11は,「求められたことに
合致する成果を上げるよう努力すべきだが,好き嫌いもあり,ア
シスタントの中には自分から考えて行動するのが嫌いであるとし
て違うところに仕事を探す事例もあるので,自分でやりたいこと
を考えた方がよい気がする」と答えた。(乙16)

平成20年の原告の成績評価に当たって行われた他の従業員か
らのフィードバックでは,原告について次のようなコメントがさ
れている(乙45,73。括弧内の名前はコメント者)。
(ア)

全体的な長所
レター,エクセル及びパワーポイントのプレゼンテーション

の締め切りは守る(P16),チームメンバーの手伝いは進ん
でする(P16),アシスタントとの仕事の相性は良い(P1
6),割り当てられた職務に対し責任を負う(P14),仕事
は大変正確で早い(P23),大変忙しい時でも頼まれるとい
らいらした様子も見せず,進んで仕事を引き受けてくれる(P
24),仕事を完璧に仕上げようとする(P25)
(イ)

全体的な機会(英語の原文は「OverallOpportunities」。
以下同じ)
望まれれば営業事務の職を求めること(P16),マネジメ
ントとの自己啓発計画の策定(P16),製品とサービスの勉
強をしっかりすれば,もっと銀行業務の仕事をこなせる潜在力
を備えている(P17),変化や新たな職務には消極的(P1
4),チームの利益に対して注意を払わない(P14),自己
啓発と変化する需要の方向性を把握するために,自分がサポー
トする対象者ともっと頻繁にコミュニケーションをとる必要が
ある(P26),営業関連のサポートやクライアント志向の補

佐業務で期待した動きは実現しなかった(P6),難しい仕事
や急ぎの仕事があるとすぐイライラする(P6),チームや上
司からもっと多くのことを求められていることに対する理解を
欠いており,相変わらず自分が簡単にこなせる事務的な仕事に
しがみついている(P6),時として精度や詳細にこだわりす
ぎて,結果的に仕事を終える時間が延びる(P23),もう少
し柔軟性を持てばもっと良い(P24),チームの優先順位の
間で正確なバランスを取り,併せて簡潔で明確なコミュニケー
ションスキルを向上させる(P27),効率を高めるために省
略できる業務を選別する(P25)

平成21年2月23日にP5が署名した平成20年の原告の評
価書において,P5は,全体的な評価はNであり,個別の6つの
目標はいずれも評点なしとした。長所としては,①コアとなる強力な事務スキル,②被告のネットワーク及びシステムや技術についての良好な理解を指摘し,改善点として,①各ビジネスマネージャーの要求と所属部署の必要性の範囲内で,素早くかつ効果的
に新しい活動のバランスを取る能力,事業部はビジネスの要求に
より応えることを求めている,②事務プール内並びにいくつかの特定のグループ内でのチームワークについて改善を要する,後者
についてはムラがあり,グループごとに様子が異なるが,フィー
ドバックに関する限り一貫していると記載した。原告はこの評価
書に署名しなかった。(乙4,19,72)


原告,P6及びP7は,平成21年3月2日,P5からの指示
により,毎朝その日に原告が行っている業務をメールでP6及び
P7に報告し,その日の夕方午後4時半頃にP6又はP7に成果
を報告するという内容のタスクミーティングを定期的に行うこと

を決めた(乙18)。

上記タスクミーティングは平成21年3月に16回,同年4月
に13回,夕方午後4時半頃からTS部門内の他の従業員からも
見えるテーブルにおいて行われた。同月22日に原告から送信さ
れたメールでは,そのとき担当している3つの業務を示しており,当日は比較的余裕がありそうなので何か他にサポートできること
や急ぎの要件などあれば知らせてほしいという内容を含んでいた。(乙6の1から乙6の28まで)


原告は,平成21年3月13日のP11との面談において,P
5,P6及びP7からハラスメントを受けていると申告した。こ
れを受けて,P11は,同月25日,ハラスメントに関する具体
的な事例を報告するよう求めたところ,原告は,同月27日,P
11に対し,抽象的な理由でN評価とされたことに不満を述べる
メールを送信した。P11は,同日,経験年数が増えるごとに評
価が厳しくなり,同じレベルのことだけを続けるだけでは評価が
下がっていくのは必然であること,原告がメールに添付した資料
にハラスメントを確認できる材料がないことなどを伝えた。原告
は,同年4月2日,平成20年11月26日のミーティングにお
いてP5,P6及びP7により密室に閉じ込められて心理的圧迫
を受け,人事に行くよう要求されたという事例を伝えた。甲4,

乙20)


原告は,平成21年4月22日,タスクミーティング後,P6
及びP7に対し,今後の指示ややりとりは書面でするよう求めた
(甲19)。


原告は,平成21年4月22日,P28クリニックにおいて,
うつ状態により今後外来治療を行う旨の診断を受けた甲20)




P11は,平成21年4月24日,原告に対し,N評価とした
ことについては同僚に対して改めて調査する必要はなかったこと,ハラスメントについてはP5,P6及びP7に事情聴取をしたが,ハラスメントは認められなかったこと,現時点ではこれ以上の調
査はできないので調査を終了することなどを伝えた。(甲5)


原告は,平成21年4月24日,P6から,携帯端末のカバー
を購入する費用を経費として承認可能か検討するよう指示を受け,関係部署に問い合わせた上で,カバーにパスワードが書いてある
などの事実がなければマネージャーの承認を得ることで支出が認
められる旨答えた。P6は,原告に対し,セキュリティの観点で
はなく経費支出の基準からみて特別の理由の説明が必要かを再度
検討するよう求めた。原告は,P6に対し,紛失したので新しく
発注したいという理由だけで足りると思われるが,経理に問い合
わせ中であると答えた。(甲44)


P6は,成21年4月30日,スクミーティングにおいて,


原告が作成したリストからは,改善点として考慮できる具体的作
業は何一つ見いだせなかったこと,同年5月からは客観的な方法
で改善を監視するため,数値目標を導入したいことを伝えた(甲
19)。


原告は,平成21年5月1日,P6に対し,自分ができていな
いのは何であるのか,一つも改善したところが見当たらないとい
う理由が分からず,やみくもなだめ出しは個人の尊厳を傷付ける
中傷であり,嫌がらせと受け取れるので今後一切やめるよう求め
た(甲19)。


原告は,平成21年5月1日,本件組合に加入した。


P6は,平成21年5月26日,原告に対し,3月分の業績評

価の結論を出すため,ミーティングの再開を求めた。原告は,同
月27日,P6に対し,本件組合に加入したこと,執拗なミーテ
ィングの開催は本件組合においてハラスメント案件と認識されて
いること,開催が必要であれば本件組合を通すよう求めることを
伝えた。P6が,業績評価を拒否する理由の説明を求めたことか
ら,原告は,本件組合に相談し,本件組合は,被告人事部に対し,ミーティングを凍結するよう要請した。(甲6)

P15は,平成21年6月1日,P5に対し,原告に単純な表
の確認作業を頼んだところ,原告はP15が確認すべきで自分の
仕事ではないと口答えをしたため,部屋の全員がそのやり取りを
聞いて困惑した状態になったと報告した(乙40)。


平成21年6月11日,原告に対するハラスメントに関して,
本件組合と被告との間で交渉が行われた(乙27)。


P6は,平成21年6月12日,原告が6時以降にオフィスを
出たことについて,事前に残業承認を得ていたのかを問いただし
た。原告が,時間外労働の申請をしていないと答えたところ,P
6は,申請の有無は関係なく,上記(4)タのP5から指示等により,原告が残業する場合には事前承認が絶対必要なものとされている
ことを伝えた。(甲7)


平成21年の原告の中間評価に当たって行われた他の従業員か
らのフィードバックによると,原告について次のようなコメント
がされている(乙46,74。括弧内の名前はコメント者)。
(ア)

全体的な長所
営業チームからの依頼に良く応え,手紙やパワーポイントの

締め切りは守る(P16),議事録などの文章がよく整理され
ている(P29),他の人に親切で積極的にサポートする(P

29),簡単で基本的かつ日常的な作業はスムーズに行える(P
15),一旦自分が納得すれば協力的で,責任を持って仕事を
する(P14),一つのことに絞り,完璧を目指そうとする(P
26),アシスタントとしてのパフォーマンスはとても良い(P
30),近付きやすい人柄(P27),いつも心が安定してい
る(P31),時間どおりスケジュール管理する(P32)
(イ)

全体的な機会
仕事の改善を模索し,変化する状況やマネージャーとの仕事

関係に対応して調整する,もっともこれは原告とマネージャー
の間の双方向の問題というのが公平である(P16),TSビ
ジネスの知識を増やす必要がある(時々議事録の表現や言葉が
適切でないことがある)(P29),時々感情が高ぶり,コン
トロールできない(P15),新しい仕事や馴染みがない仕事
のパフォーマンスを向上させる必要がある(P15),協調性
を身に付ける(P17),消極的で時々新しい仕事を頼まれて
も断る(P14),電話の扱い方はプロのレベルとして許容で
きる最低レベルにも達していない(単にメッセージを残すだけ
ではなくそのフォローアップも期待されるが,積極的なフォロ
ーアップを見たことがない)(P8),サポートするユーザー
の本当の必要性を理解できるよう視野を広げる(P26),定
められた時間内に最少の指示で仕事をこなす(P26),自分
のやり方や考え方にこだわりすぎて,更なる啓発・育成のチャ
ンスを逃している(P33),組織内における原告の立場は完
璧にはっきりしているとはいえず,仕事の内容と要件がもっと
はっきりしていれば組織に大きく貢献できる(P34),仕事
の優先順位を設定する(P27),反対の時などにもっと自分

の意見を表現する(P31),もっと商品知識を積む(P32)

P14は,平成21年7月17日,P7に対し,原告に関する
以下のコメントをメールで送信した(乙41)。
(ア)

同年3月に原告にカスタマーサービスのスタッフ全員との

打ち合わせを翌日に手配するよう依頼すると,「今日やってほ
しいんですか,営業に頼まれたことが他にも一杯あるんですけ
ど」と言い,「できるならば」と頼むとようやく対応してくれ
た。
(イ)

同年4月に原告に電話対応を頼むと,原告は「やることが一

杯ある,昼食にも行っていないから,できない」と言われたの
で,業務の負荷を考慮して原告の席の近くの二人の電話を15
分間だけ依頼したところようやく了承した。
(ウ)

昨年新しい派遣スタッフが入った際,クセス権限を付与す

る作業を依頼したところ,原告は同じ作業を何度も担当したこ
とがあるにもかかわらず,「やったことがないのでできない」
と言い,P13に頼んだ。
(エ)

1年半前にオペレーションチームとサービスチームの月例

打ち合わせが始まった際,P6の承認の下,原告にスケジュー
ルの設定と議事録の作成を依頼したが,原告は「自信がないの
でできない」と言い,議事録の書き方を説明しても拒否したが,
最終的にP6が話をしてようやく受け入れた。

P27は,平成21年7月29日,P7に対し,原告について
のフィードバックの意見として,外国から出張してきた上司の東
京でのスケジュールを原告がアレンジした際,ただ単に打ち合わ
せを詰め込むだけで,他のアシスタントのようにメールを確認す
る時間,休憩時間等を考慮しなかったため,ぎりぎりのスケジュ

ールになったことを指摘し,この点は原告の評価書のマネージャ
ーコメントにもそのまま使われた(乙42)。

原告及びP5は,11が立ち合う中,成21年7月31日,


中間評価のミーティングを行った。P5は,原告が隠れて録音し
ていることが疑われたため,そうした行動は社員の行動規範に反
するので行わないよう注意した。(原告本人)。


平成21年8月10日に完成した同年の原告の評価書において,
P5は,全体的な評価はNであり,個別の6つの目標のうち5つ
をNとし,1つをMとした。P5は,原告の長所として,①基本的な事務スキルや一般的な常識,②経費報告書等,いくつかの報告書の届出事務と記載し,改善点として①複数の仕事に優先順位を設定すること,②チームプレーヤーとなること,③態度を改善すること,④チームワーク並びにTS部門内のより多くの同僚とのコミュニケーション改善に焦点を絞ること,対人スキルの改善
及びより良い職場環境への貢献,⑤マネージャーからもっとガイダンスをもらうこと,⑥担当した仕事に優先順位を設定し仕事の成果の品質を管理することと記載した。(乙5)


P6は,中間評価終了後の平成21年8月21日,週1回のミ
ーティングの再開を求めたが,原告はこれを無視し,P6が,同
月24日にも,原告に対しミーティングの再開を求めたものの,
原告はこれも無視した。しかし,本件組合から原告に対しミーテ
ィングに応じるよう指導があり,原告とP6は,同日,ミーティ
ングを行ったが,原告がミーティングの内容は本件組合に全て報
告し,ミーティングの内容も録音すると話したところ,P6が録
音に同意しないと述べたため,ーティングは打ち切りとなった。

被告は,本件組合に対し原告が秘密録音を行わないよう指導する

ことを求めたが,その後も原告の秘密録音は続いた。(乙28か
ら30まで,71)

原告がサポートする対象が,P7のクライアントサービスアン
ドデリバリーグループから,P8のテクノロジーアンドオペレー
ションズグループに変更されることとなり,平成21年9月11
日,原告の席はP8のグループに移動された(甲9,24)。


P5は,平成21年9月25日,原告に対し,許可なく会話を
録音していることをやめるよう再度警告した。原告は,同月29
日,P5に対し,面談中に原告を散々いたぶり,強迫,脅迫を繰
り返した事実を立証できるとして,二度と同じようなことが起こ
ることがないよう求めた。P5は,同年10月1日,原告に対し,ハラスメントについては人事部が調査したが却下されており,そ
れに不満があるならば人事部に連絡するべきであり,会話を録音
しないよう指示し,録音が見つかれば解雇もあり得ると伝えた。
原告は,同月20日,P5に対し,日常業務の案件について録音
はしておらず,原告が録音を行うのは,P5を含む数名のマネー
ジャーからハラスメントを受けるケースに限られていると伝えた。P5は,同月22日,原告に対し,本件組合から原告に対しミー
ティングを録音しないよう指示されているはずであり,定期的な
ものか,績評価に関連するものかは関係ないこと,告を助け,


指導しようとしているのであるから,マネージャーを閉め出すの
ではなくコミュニケーションの場を持つよう伝えた。(甲8)


P14は,平成21年9月30日,原告に対し,カスタマーサ
ービスユニットのメンバー全員とP7とが1対1で行う面談の調
整を依頼した。原告は,P7の主担当アシスタントはP13にな
っているとP14に伝え,13にその業務を依頼した。7は,
PP
原告の発言はP7及びP5の理解と違っており原告が担当するよ
う求めたところ,原告は,P7に対し,手伝いはするが,原告の
業務量も多いのでP13にも協力してもらいたいと述べ,P5か
らのメールを引用して,P7の担当はP13になっているとの原
告の認識を伝えた。P5は,原告に対し,再配置に当たって混乱
が生じている場合は自分に相談するよう求めた。(甲24)

原告が「業務の優先順位を付け,仕事の分配をする目的に限る
のであればミーティングに応じる」旨を伝えてきたことを受け,
原告,P6及びP7は,平成21年10月24日,面談を行った。原告は,ウィークリーミーティングには応じないとして,ミーテ
ィングではなく文書やメールなど誤解の生じない方法で仕事の依
頼をするよう求めた。面談の最後に,P6が録音はしていないか
確認したところ,原告は実際には録音をしていたが,していない
と答えた。(乙30)

(6)

出勤停止から解雇まで
原告は,平成21年11月に入っても,P6やP7からの面談
の求めに応じず,らみつけたり,件組合を通すよう求めたり,


大声を上げたりすることがあった(乙71,証人P6,証人P1
1)。


被告は,原告が業務命令に違反して秘密録音を行っており,そ
のまま放置することはできないとして,成21年11月24日,

原告に自宅待機を命じた(甲10,証人P11)。


本件組合と被告は,平成21年11月26日,平成22年1月
19日,同年3月16日,同月30日,原告についての交渉を行
った(乙31から34まで)。


P5に代わってP9が原告の直属の上長となり,原告とP9及

びP11らは,平成22年10月21日,同年11月8日,同月
15日,同月24日及び同月26日に面談を行い,被告からは年
収1年分の支払と再就職支援の費用負担という条件で原告の退職
を提案したが,原告はこれに応じなかった。P9は,同年10月
21日の面談において,録音をしていないかを確認したところ,
原告は実際には録音していたが,していないと答えた。(乙35
から39まで)

被告は,平成22年11月30日,本件解雇をし,解雇予告手
当30万7048円を原告の預金口座に振込送金した。同年12
月10日は賞与83万9451円を同様に原告の預金口座に振込
送金した。(甲11,13)

(7)

解雇後の経緯


本件組合は,平成22年12月28日付けの「抗議ならびに要
求書」と題する書面により,本件解雇の撤回,ハラスメントへの
謝罪と賠償を求め,改めて団体交渉の申入れを行う予定である旨
を被告に申し入れた(甲12)。


原告は,被告に対し,平成23年1月31日付けで,本件解雇
の撤回及び原職復帰を求める旨の通知書,「確定拠出年金の加入
者資格喪失のお知らせが送付されたが,雇用は継続しており,一
方的に適格退職年金の資格喪失の手続を執られたのは不本意であ
り,直ちに資格喪失の取消しを求める」旨が記載された要求書を
送付した(甲13,47)。


被告は,平成23年8月5日,本件組合に対し,団体交渉を尽
くしており,これ以上の団体交渉には応じかねるが,解決に向け
た具体的な提案があれば検討する旨回答した(甲15)。

2
争点(1)(本件解雇の有効性)について

(1)

前記前提事実及び認定事実を踏まえ,被告主張の解雇理由である

就業規則26条5項3号(勤務態度,業績不良,不都合の行為があり,社員としての適格性欠如),5号(会社の業務上のやむを得ない事情),7号(その他前各号に準じる事由)に該当する事実の有無について順次検討し,解雇の有効性について判断する。
(2)

本件解雇の具体的理由として被告が主張する具体的事実につい

てア
スピードが遅いことについて

(ア)

被告は,原告が出張リスト,招待した顧客リストなどに不必

要な情報を入れたり,レイアウトにこだわったりして,スピー
ドが遅いと主張する。
(イ)

平成20年の成績評価に当たって行われたフィードバック

において,同僚から,時として精度や詳細にこだわりすぎて結
果的に仕事を終える時間が延びたり,簡単にこなせる事務的な
仕事にしがみつき,新たな職務には消極的であったり,効率を
高めるために省略できる業務を選別したりする点を改善点とし
て指摘されていること(前記認定事実(5)ウ(イ)),原告が実際に作成した出張者のスケジュール表は多数の色分けがされ,P
5やP6の電話番号が記載されていること(乙53)などから
すると,原告には作成する文書の体裁等に自分なりの強いこだ
わりがあって必要以上に時間をかけ,その反面チームにおいて
求められる他の業務を行うことには消極的な態度を示していた
ものと認められる。
(ウ)

もっとも,原告が資料の作成・印刷,議事録の作成,スケジ

ュール調整等を行った際,その業務・作業が遅かった事例は複
数指摘されているものの,原告がその理由として述べるところ

(資料を修正する必要があったこと,他の人の回答を待ってい
たら時間がかかったことなど)も一概に否定はできず,自己の
責任で遅延したものではないという原告の言い分を全て排斥す
ることはできない。原告に対しては具体的な指示を待つことな
く積極的にチームに役立つと思われる行動を取るよう重ねて指
導が行われているが,そうした指導方針の下で原告のした行為
を評価する場合,それが不必要に時間をかけたものといえるか,
チームに役立つものといえるかという判断は容易でなく,実際
にも,P6が不要としたニュース配信について,P16は肯定
的に捉えているなど(前記認定事実(4)コ,シ),人によって評価が分かれており,被告が指摘する出張リスト・顧客リストに
不要な情報を盛り込んだという点にしても,結果として,不要
な情報であったからといって,無駄な作業をした原告をとがめ
るのも相当とは思われない。
平成12年6月に被告に入社後上長がP5に替わる平成18
年3月までの間は原告の業務に特段の問題は指摘されておらず,
むしろP4からは優秀な業績と評価されており,P5も,年間
を通じて評価を担当するようになった平成20年の評価のマネ
ージャーコメントにおいて,優先順位付け,柔軟性及び業務効
率が問題点として指摘されているものの,しっかりとした事務
スキルを備えているなどと評価されており,期限を徒過したこ
となどは問題として指摘されているわけではない(前記認定事
実(2)エ,(3)エ(カ))。平成21年3月から4月にかけて行われたタスクミーティングにおいて原告に毎日の担当業務を報告さ
せ,残業しないよう指示した際も,業務の遅延があったなどの
事情は認められず(甲19,乙6。枝番号含む。),平成20

年の原告の残業時間が特段多かったとも認められない上(甲3
2。枝番号含む。),原告の業務のスピードが遅いために被告
の業務に支障が生じていたかどうかは不明であり,TS部門の
業務が変化して規模が拡大し,売上げ及び収益が増大してスタ
ッフも増員する一方,アシスタントはP5の着任時に3人に増
員したものの1名はP5の担当であり,その後増員はされてい
ないことなどの事情からすると,原告の業務が遅いという点が
解雇の積極的な理由になるほどのものとは認められない。

成果物の質が低いことについて

(ア)

被告は,ービスアンドオペレーションズグループのミーテ

ィングの議事録における専門用語の間違い,未完成なビジネス
文書作成などの問題があると主張する。
(イ)

平成21年の中間評価に当たって行われたフィードバック

で,時々議事録の表現や言葉が適切でないことがあると指摘さ
れており(前記認定事実(5)ト(イ)),原告は議事録作成の業務を頼まれて当初断ったこと(同ナ),平成20年11月6日の
面談においてP6からは原告が金融市場の基本を身に付けるこ
とが重要であるという話がされたこと(同(4)オ)などからすると,原告は専門知識が十分ではなく,作成した議事録の用語に
も誤りがあったものと認められる。
(ウ)

もっとも,告はP5の着任後に議事録を作成するよう求め

られた際,当初断ったものの,最終的にはこれに応じており,
上記フィードバックのコメントでも議事録作成が不適切であっ
た頻度を「時々」としていることも踏まえると,原告作成の成
果物が間違いの内容や頻度などにおいて役に立たないほど質が
低いものであったとまでは認めるに足りない。他方,従来から

担当していたアシスタント業務については,上記の点以外に質
が低いなどの事情も見当たらないことからすると,成果物に一
部問題があったとしても,解雇の積極的な理由となるほどのも
のであるとはいえない。

業務指示の拒否
(ア)

被告は,告は業務指示を受けても再三にわたり拒否したと

主張する。
(イ)

原告に業務を依頼しても,自分の仕事ではない,他にやるこ

とがあるなどと理由を付けて断られる場合があったこと(前記
認定事実(5)タ,ナ),平成20年の成績評価及び平成21年の中間評価に当たって行われたフィードバックにおいても,原告
について新たな職務に消極的,チームの利益に対して注意を払
わない,難しい仕事や急ぎの仕事があるとすぐイライラする,
もっと多くのことを求められているという理解を欠き,簡単に
こなせる事務的な仕事にしがみついている,消極的で時々新し
い仕事を頼まれても断るなどとコメントされていること(同(5)ウ(イ),ト(イ))からすると,原告は頼まれた仕事を断ることが相当回数あったものと認められる。
(ウ)

ところで,被告のTS部門では,原告の採用当時とは,その

業務や組織の規模・態勢が大きく変化しており,扱う業務の内
容も高度化・専門化していき,これに応じて原告が担当してい
たアシスタント業務・秘書業務に対して被告が期待する役割も
様変わりし,形式的・定型的な業務にとどまらず,部内で必要
とされる業務を自ら把握して積極的に提供するなど,従前より
も要求水準が高まっていることを前提に,原告に対する指示・
指導が重ねられ,業績評価が行われるようになったことが認め

られる(前記認定事実(1)コ,サ,(3)から(5)まで)。
もっとも,こうした指示や指導が抽象的な内容にとどまるこ
とは避けられず,入社時に契約書で定められた担当業務や実際
に行っていた定型的な業務(前記認定事実(2)イ,ウ)と比較すると,その内容には差異があるといえ,原告にその能力や適性
が備わっているかも定かではないというべきであるから,そう
した業務を原告に新たに担当させるのであれば,必要な指導・
支援を行ってしかるべきであり,そうした能力や適性が欠けて
いるのであれば,指導・支援を続けたり,場合によっては担当
業務を見直し,一部又は全部を従前の担当業務に戻したりとい
った措置をとることを検討すべきである。
被告が主張するようにTS部門の業務や組織に変化が生じて
いたとしても,原告が従前行っていた定型的なアシスタント業
務や秘書業務について,被告や部門内の需要が消滅したという
のであればともかく,そうした事態が容易に生じるものとは考
えにくいし,これを認めるに足りる証拠もない。被告から原告
の業務に向けられた要求は,従前の業務に付加価値をつけるべ
きであるという趣旨のものと要約できるが,こうした要求に十
分応えられなかったとしても,直ちに解雇の理由になるとはい
えない。
被告の業務指示には具体性が十分備わっていたとは認められ
ないところもあり,上長が原告に求める業務を例に採っても,
P6は電話対応業務よりも他の業務を増やしてほしいとの希望
を述べ,他方でP7はクライアントサービスアンドデリバリー
グループの電話対応業務を増やすとよいと述べるなど一見矛盾
するかのような指示をしたり,指示される前に積極的に仕事を

するようにとの指示を受けて原告が米国出入国管理の変更につ
いての情報をTS部門全体に送信すると,今度はP5から事前
に確認なく送信したことを注意されたりするなど,原告が自ら
の役割について混乱している様子もうかがわれ,求められる業
務内容を書面で明確にするように求めるのも不合理な要求とは
いえないことからすると,業務指示に素直に従わず,場合によ
りこれを拒否するような対応があったとしても,それは将来に
わたり業務指示に従わない意思を表明したものとは解されず,
解雇理由となるほどのものとはいえない。

他部門からの苦情

(ア)

被告は,ーポレートバンキング部門やオペレーション部門

からも原告に対する苦情が数多く寄せられていたと主張する。
(イ)

他部門からの原告に対する数多くの苦情の存在を認めるに

足りる証拠はないが,仮にあったとしても,被告の主張する苦
情の内容は上記アからウまで判断したものと同様のものという
べきであるから,既に述べたとおり解雇理由となるほどのもの
とはいえない。

上長等の指導に従わない
(ア)

被告は,原告が上長等の指導に従わなかったと主張する。

(イ)

平成20年7月14日以降の面談でP6及びP7から指示

したとする個別業務(前記第2の2(1)ウ(ウ))について

①顧客宛ての金利情報の提供については,原告が休みを取る際,P13に引き継いだが,P6がP13にしなくてよい
と言ったのを聞いた原告は自分もしなくてよいと思ってしな
くなったこと,その経過を聞いてP6が原告に情報提供を再
開するよう求めたことが認められるところ(前記認定事実(4)

ス),原告はその後情報提供を再開したと供述しており,こ
れを否定するに足りる証拠はない。したがって,①顧客宛ての金利情報の提供について,原告に指示違反があるとはいえ
ない。

②営業担当者への情報提供について,原告はニュース配信の情報提供を行っていたところ,これに対してP16は役に
立つと述べているのに対し,P6は面談において単にニュー
スを伝えるだけでは価値がないと伝えたことなどからすれば
(前記認定事実(4)コ,シ),どのような情報を提供すべきで
あったか原告に対する指示は明確とはいえず,指示違反があ
るとはいえない。


③顧客収益動向分析及び⑤案件データの期限切れ管理については,原告はそれを行う権限がなかったと主張し,原告に
権限があったことを認めるに足りる証拠はない上,原告に対
してこれらを行うよう具体的な指示があったと認めるに足り
る証拠はない。


④顧客往訪記録,新規案件のシステムへの入力作業及び⑥顧客情報アップデートについては,原告がタスクミーティン
グのために報告していた自身の担当業務には「CKCエント
リー」が含まれており(乙6。枝番号含む。),原告はこれ
が被告主張の上記業務に対応すると主張しているところ,こ
れを否定する証拠はなく,上記業務の指示を受けながら原告
がこれを行わなかったと認めるに足りる証拠はない。


⑦カスタマーサポートの電話取次ぎについては,カスタマーサポートにおいて行われる業務は顧客からの電話での問い
合わせ等に対応するものであり,P7は原告に対し「究極的

な目標としては担当者の代わりに回答できるくらいのところ
までできると助かる」説明しているところ前記認定事実(4)


ケ),そうした高度な対応を身に付けさせるような指導や訓
練が行われていたのであればともかく,それがない中でそう
した取次ぎをできないと断ったとしても,解雇理由となるほ
どのものとはいえない。なお,単なる不在時の伝言程度の業
務について原告が指示を受けながら断ったと認めるに足りる
証拠はない。
(ウ)

口頭での指導に従わなかったことについては,告が平成2

1年5月以降面談の要請に応じなくなったことが認められるが,
原告は必要があれば本件組合を通すか,書面で指示するよう求
めているところ,上記ウで述べたとおり,それまでの面談等を
通じて行われた指示が明確さを欠いており,原告において新た
に面談をしても具体的な指示が期待できないと考えたとしても
やむを得ないところもある。一方で,原告は被告側から要求さ
れる面談をハラスメントと捉えており,そうした認識を被告側
にも伝えていたところ,以下に述べるとおり,当時の状況から
すれば,原告がそのように受け取ったことを非難することはで
きず,面談に応じなかったことをもって解雇理由に当たると認
めるのは相当でない。
すなわち,成20年11月12日の面談においてP6はN


という評価は来年いられないかもしれないという意味である」
という趣旨の話をしていること,P5は同年の成績評価におい
て従来から原告がしてきたアシスタント業務を評価せずN評価
を与えたこと,原告は同年12月4日から体調を崩して休暇を
取り,帰後の平成21年1月6日,11と面談したところ,
復P
P11は「違うところに仕事を探す事例もある」などと話した
こと,同年3月から4月に合計29回のタスクミーティングが
行われたが,P6からは「タスクミーティングの結果改善は何
一つ見いだせない」と伝えられたこと,原告は同年3月13日
にP11に対しハラスメントの申告をしており,同年4月22
日にはうつ状態により今後外来治療を行うと診断されたことか
らすれば,原告がP5,P6及びP7からハラスメントを受け
ていると感じたこと自体には相応の理由があるというべきであ
る。
(エ)

原告は上長の事前の承認を得ずに残業することが禁止され

ていたところ,平成21年6月12日に終業時間後にオフィス
に残っていたことをとがめられた事実が認められる(前記認定
事実(5)ツ)。もっとも,無断残業を禁止する旨の指示があったとしても,終業時間後にオフィスに在室することを一律に禁止
する趣旨を含んでいるとはいえず,原告においてこのときの居
残りについて残業代を請求する意思があったとは認めるに足り
ない。他方,原告はそれ以降も事前に承認を得て残業をしたこ
ともあったというのであり(甲22,23),いずれにしても
残業に関する指示・命令に原告が違反したことにより被告に何
らかの損害を与えたとは認め難く,解雇理由となるほどのもの
があったとはいえない。
(オ)

秘密録音については,告は平成20年11月12日から自

己の判断により秘密録音を開始し,以後本件解雇までP5,P
6,P7,P11及びP9らとの面談を録音していたこと,遅
くとも平成21年7月31日にはP5は行動規範に反するので
秘密録音を行わないよう注意をし,その後も同年8月24日,

同年9月25日,同年10月1日,同月22日などにも秘密録
音しないよう注意が行われ,秘密録音を止めないと解雇もあり
得ると警告されても秘密録音を止めなかったこと,P6との面
談において録音を止めるよう言われても録音を止めようとしな
かったため面談が中止となったこと,平成21年10月24日
及び平成22年10月21日の面談では録音していないか聞か
れた原告はこれを否定したにもかかわらず実際には録音をして
いたことなどからすると,この点について原告に業務命令違反
があったことは否定できない。
被告には業務や顧客に関する情報を適正に管理するために職
場内での会話の録音を禁止する必要性が認められ,被告従業員
が遵守すべきものとして周知されている被告の行動規範でも社
内での録音が禁止されているところ(証人P11,原告本人),
原告は自身の成績評価や指導に関する面談にとどまらず,日常
業務に関するものまで録音しており(乙29),原告は録音し
ていないと説明しながら実際には録音を行っていたという上記
の経過からすると,その命令違反の程度が軽微であるとはいえ
ず,命令違反を続ける原告に対し,自宅待機を命じるなど,相
応の措置をとることは不当とはいえない。
しかし,原告の平成20年の評価はNであり,このままでは
辞めさせられるとの認識を原告が持ったこと,当時原告はP5,
P6及びP7からハラスメントを受けていると捉えていたこと,
原告がN評価から脱するためにはP5,P6及びP7が面談で
指導する内容が不明確である点を指摘する必要があると考えて
おり,その点を証拠に残すために録音の必要を感じて自己防衛
の手段として秘密録音を行ったものと認められること,原告は

書面での指示を求めたにもかかわらず,P5,P6及びP7ら
がこれに応じずに面談を求めたという経過があること,原告が
秘密録音した内容に,原告に対する人事評価・指導という内容
を除けば,機密情報に当たるものがあったとは認めるに足りず,
原告が秘密録音した内容を自らの雇用契約上の地位を守る目的
以外に使用したとは認められないことに照らせば,原告には同
情すべき事情もあり,秘密録音のみをもって解雇理由に当たる
とするのは酷というべきである。

業績不良
(ア)

原告の平成20年の中間評価,同年末の最終評価,平成21

年の中間評価はいずれもNであったことが認められる(乙4,
5)。しかし,原告は平成12年6月に入社後,P3及びP4
という複数の上長の下では,P5の下で行っていたのと同様の
アシスタント業務について問題は指摘されておらず,平成15
年から平成17年までの評価は優秀な業績であり,給与もおお
むね年々上昇しており,P5の下においても,平成18年及び
平成19年は「M」という評価を受けている(被告は,平成1
9年の評価は「M-」であったと主張するが,コメント欄に「M
-」という記載された箇所もあるが,全体成績欄は単に「M」
と記載されていることからすると,平成19年の評価は「M」
と認められる。)。P5やP6も,原告の従来からのアシスタ
ント業務については期待を満たしていることを認めており,同
僚からのフィードバックのコメントもおおむねアシスタント業
務については良い評価がされている。したがって,原告のアシ
スタント業務については少なくとも「M」の評価に値していた
というべきである。

(イ)

被告は,TS部門の役割が変化したことにより,原告に求め

られる役割が変わったと主張する。入社時に契約書で定められ
た担当業務と実際に行っていた業務とが厳密に一致していたわ
けではなく,契約書上の担当業務にしても,秘書業務について
「その他関連業務」との記載があり,TS部門の組織,業務の
変更に伴い,それまで担当していなかった議事録の作成,電話
応対などの新たな業務を原告に担当させることも許容されてい
るものとみるべきであって,被告のこうした措置・対応をもっ
て不当とはいえない。しかし,新たな業務を担当させるに当た
り,被告としては,原告の能力や適性を踏まえて必要な指導・
支援を行うべきであり,また,新たな担当業務について満足す
べき成績を示せなかったとしても,従前の担当業務が存在し,
それについて特段問題なく遂行できるのであれば,業績評価に
おいて新たな担当業務を重視しすぎることは適正,公平を欠く
というべきであるし,ましてや,解雇につなげるような業績不
良とまで評価するには極めて慎重であるべきである。被告の要
求に原告が十分対応できていなかったとしても,それが直ちに
解雇の理由になり得ないことは,上記ウで述べたとおりである。

その他の解雇理由について
その他,告の解雇理由に関して被告が主張する具体的事実懇


親会の日付確定業務の遅れ,顧客との面談メモの社内システムへ
の入力業務の遅れ,P14やP15からの業務依頼の拒否,人事
評価に関する社内文書(甲45)の持ち出し)も,いずれも解雇
理由となるほどのものとはいえない。

(3)

以上検討したところによれば,本件解雇の理由として被告が主張

する具体的事実のうち,原告の行う業務のスピードや成果物の質と
いう面で,解雇の理由とするほど劣っていたということはできず,業務指示・上長の指導等に従わなかったという事実が一部認められ,特に,秘密録音の点は被告の行為規範に違反しており,その違反態様も軽微なものとはいえないが,考慮すべき事情を踏まえると,解雇の理由になるとまではいえず,業績不良についても,原告が従前問題なく遂行できていた秘書業務等に対し,被告が新たな付加価値を求め,これに十分対応できなかったという点が主に問題にされていることからすると,の点が解雇の理由になるとまではいえない。こ
したがって,本件解雇は,客観的に合理的理由を欠き,社会通念
上相当であるとは認められないから,その権利を濫用した無効なものというべきである。
3
争点(2)(不法行為)について
(1)

原告は,被告のした退職強要が違法であると主張する。前記認定

事実(3)から(5)までのとおり,原告は多数回の面談を開催されて,業務が要求水準を満たしていないという趣旨の指導を受け,これに精神的負担を感じてハラスメントを受けていると申告していた事実が認められる。その際の被告側担当者の発言の中には退職(転職)や解雇に言及しており,退職の勧奨や強要と受け取ったとしても無理からぬものも含まれているが(前記認定事実(5)イ,ハ),多数回の面談も含めて原告に対する業務指導の過程で行われたものと認められ,被告側担当者の指示が具体性を欠いていた面もあり,業務内容を具体的に文書で示してほしいという原告の希望に沿わないところはあったにせよ,業務指導の手段・方法として相当性を欠くものとはいえず,退職・解雇に執拗に言及したという事実も認められないことからすると,こうした業務指導を捉えて違法な退職強要行為があったということはできない。また,P9は,原告に対し退職を勧
めているが,平成22年10月21日及び同年11月26日の2回のみで,1年間の自宅待機を経た後の話合いでのことであり,退職金の割り増しなど原告に有利な退職条件を提示する一方,原告はかたくなな態度を示し,被告側の申入れを一切受け付けなかったというのであるから(乙35,39,証人P11),退職の強要に当たる行為があったとは認められない。したがって,被告において違法な退職強要があったとはいえない。
(2)

原告は,多数回の面談の実施,そこでの指導の内容,ハラスメン

ト申告への対応において,被告に職場環境を整えなかった違法があると主張する。別紙面談等一覧表のとおり多数回の面談が行われた事実は認められるが,前記第3の2(2)カ(イ)のとおり,原告に新たな業務の実施を求め,その指導を行った被告の対応を不当とまではいえないこと,原告には自分なりのこだわりから必要以上に業務に時間をかけることがあった点や新たな業務に消極的な点などの問題があって,改善の必要自体は存在し,面談においては原告に対する要望を伝えて改善を求めていることなどからすれば,多数回の面談をした点を捉えて違法な措置であったということもできない。
また,ハラスメントの申告に対する被告の対応については,原告
の訴えは抽象的なものが多く,具体的な指摘としては平成20年11月26日に実施された面談があったが,これについてはP5,P6及びP7に対する調査を行ってハラスメントは認められないという結論を出していること,同日の面談についてはハラスメントに当たるような内容であったとは認められないこと(乙13)からすれば,被告の対応に問題があったとはいえない。
(3)

原告は,平成21年9月11日不当な席替えが行われたと主張す

る。しかし,このときの席替えは,原告がサポートを行う対象をク
ライアントサービスアンドデリバリーグループからテクノロジーアンドオペレーションズグループに変更し,後者の場所に席を移動したものと認められ(甲9の2),原告も自分の担当が変更となったことは認識していること(甲24),被告としては,オフィスのレイアウト変更の機会に原告の環境を変え,長年被告に勤務して人望のある女性グループリーダーのP8のサポートをさせることで,それまでうまくいっていなかった原告に対する改善指導について事態を打開しようという意図があったこと(乙72,証人P11)からすると,不当な席替えであったとは認めるに足りない。
(4)
4
以上より,不法行為に基づく原告の請求は理由がない。
争点(3)(解雇の承認)について

被告は,本件解雇から相当期間が経過した後,労働審判の申立てをするまで,原告は雇用契約上の地位を主張しておらず,解雇を承認していたものとみるべき旨主張する。
確かに,本件解雇から労働審判申立てまでに約2年半が経過しており,本件組合を通じた団体交渉のやり取りがされたのも平成23年8月5日が最後であって,その時点からも労働審判申立てまでに約1年8か月が経過している。しかし,原告は1年間の自宅待機後,平成22年10月21日及び同年11月26日のP9との面談において1年間の給与支払等を条件とする退職の提案を受けてもこれに応じず復職の意思があることを明確に伝えており,その後の交渉経過においても原告の復職の意思が喪失したことをうかがわせるような事情は見当たらない。かえって,原告は,本件解雇後も解雇の意思表示の撤回を求め,復職の意思があることを被告に明示的に伝えており(前記認定事実(7)ア,イ),労働審判申立てまでの間に原告が別の仕事に従事していたとはいえ,有期契約であって期間満了後は仕事をしていないこと
からすると(原告本人),黙示的に解雇を承認したことを基礎付けるような事情に乏しいというべきである。本件解雇から労働審判の申立てまでに上記程度の時間が経過したからといって,原告がもはや雇用契約上の権利を主張しないと信頼する根拠としては不十分であり,そうした信頼は理由のない解雇をした被告の地位に鑑みて,衡平上も保護に値しないというべきである。
5
よって,本件解雇は無効であり,原告は被告に対し本件雇用契約に基づき,雇用契約上の権利を有する地位にあると認められる。本件解雇後の賃金について,原告は10年間の平均収入により752万6105円,月額64万9115円が支払われるべきであると主張するが,これには時間外労働や賞与を含んでおり,原告の就労状況いかんにかかわらずこれらについての支払請求権を有するものと認めるのは相当でない。被告は,本件解雇当時の原告の給与は基本給29万5834円,住宅手当9万8611円,通勤手当2万1130円と主張するところ,本件解雇当時の基本給及び住宅手当の合計額である月額39万4445円の賃金請求権を有すると認めるのが相当である。したがって,原告は,被告に対し,平成23年1月から本判決確定の日まで毎月末日限り39万4445円の賃金及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払請求権を有する。原告の請求はこの限度で理由があり,その余は理由がない。

第4

結論
以上によれば,原告の請求は主文1項及び2項掲記の限度で理由が
あるから認容し,その余を棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第36部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

佐藤久間徹東路隆
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