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法人税更正処分取消等請求事件
事件番号平成25(行ウ)808
事件名法人税更正処分取消等請求事件
裁判年月日平成28年7月19日
法廷名東京地方裁判所
判示事項1 法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の取得の意義及び時期
2 法人が減価償却資産以外の固定資産であるプラチナの調達に関する基本契約に基づいてその調達に関する個別契約を締結してその引渡しを受け,同基本契約に基づく買取選択権を行使した時に同個別契約の相手方に金員を支払った場合において,法人税法及び同法施行令上,同法人は上記買取選択権の行使時に同個別契約に基づきプラチナを取得したものであり,上記金員から当該プラチナの時価及び為替差益等を控除した金員は当該プラチナの取得価額に当たるとされた事例
裁判要旨1 法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の取得は,当該固定資産の所有権移転の原因となる私法上の法律行為がこれに当たり,上記の取得の時期は,その原因行為による所有権移転の時期がこれに当たる。
2 法人が減価償却資産以外の固定資産であるプラチナの調達に関する基本契約に基づいてその調達に関する個別契約を締結してその引渡しを受け,同基本契約に基づく買取選択権を行使した時に同個別契約の相手方に金員を支払った場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,同法人は,法人税法及び同法施行令上,上記買取選択権の行使時に同個別契約に基づきプラチナを取得したものであり,上記金員から当該プラチナの時価及び為替差益等を控除した金員は,当該プラチナの取得価額に当たる。
(1)ア 上記基本契約において,上記法人は,同契約に基づく個別契約であるプラチナのリース契約の終了時又は解約時に買取選択権を行使するまでの間は,リース資産であるプラチナについて,契約の相手方である貸主に対しリース料を支払い,第三者に対し担保権等の設定や転貸をすることができず,製造過程用の合金化以外は重要な加工・改良を行うこともできず,財産持分を有しないなど,使用収益の方法を大きく制限されて処分を禁止されている。
イ 上記基本契約において,上記法人は,リース資産であるプラチナについて,貸主からの要求書の送付時又はリース契約の終了時に,同法人が行った合金化について直ちに同法人の負担により非合金化して引渡し時の状態以上の品質及び純度で貸主に返還しなければならず,同法人の帳簿上も常に貸主の資産として認識されるべきものとされ,同法人の債務不履行に基づくリース契約の解除による終了の場合に,貸主の通知により貸主に返還する必要があるとされるなど,リース契約の終了等の場合にプラチナそのものを貸主に返還することも予定されている。
(2) 上記法人は,会計帳簿において,上記個別契約に基づき取得したプラチナに係る上記買取選択権の行使時に契約の相手方に支払った金額を当該プラチナの所得価額として同法人の資産に計上している。
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平成28年7月19日判決言渡
平成25年(行ウ)第808号

法人税更正処分取消等請求事件

主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
麻布税務署長が平成23年7月29日付けで原告に対してした原告の平成19年1月1日から同年12月31日までの事業年度に係る法人税の更正処分のうち,納付すべき法人税額70億7404万0200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

第2

事案の概要
本件は,液晶ディスプレイ用ガラス基板の製造及び販売を業とする会社である原告が,その製造に用いるプラチナ(減価償却資産以外の固定資産に該当するもの)を調達するため,P1Inc.(以下「P1社」という。)及びP2PLC(以下「P2社」という。)との間で,平成17年6月から平成18年9月にかけて,各基本契約に基づいてその調達に関する各個別契約を締結してその引渡しを受け,平成19年5月ないし8月に上記各基本契約に基づく買取選択権(後記2(3)ア(ウ)②,イ(ク)①)を行使した時にP1社及びP2社に合計121億0832万0554円を支払い,平成19年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の確定申告において,上記支払額から上記各個別契約開始時の時価及び両時点間の為替差益等を控除した金額19億8005万5928円を特別損失として計上し(以下,この計上額を「本件特別損失計上額」という。),これを損金の額に算入して申告をしたところ,処分行政庁から,本件特別損失計上額は上記プラチナの取得価額の一部であり損金の額に算入されないとして,法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたため,本件各処分の取消しを求める事案である。
1
関係法令等の定め
(1)

各事業年度の所得の金額の計算(法人税法(平成20年法律第23号に
よる改正前のもの。以下同じ。)22条)

内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする(1項)。


上記アの計算上,当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引(法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引及び法人が行う利益又は剰余金の分配をいう(5項)。以下同じ。)以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする(2項)。


上記アの計算上,当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,①当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価その他これらに準ずる原価の額,②上記①のほか,当該事業年度の販売費,一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額及び③当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとする(3項)。


上記イの額及び上記ウ①ないし③の額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする(4項)。

(2)

固定資産の意義及び範囲
固定資産

土地(土地の上に存する権利を含む。),減価償却資産,電

話加入権その他の資産で政令で定めるものをいう(法人税法2条22号)。イ
上記アの政令で定める資産は,棚卸資産,有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるものとする(法人税法施行令(平成19年政令第83号による改正前のもの。以下同じ。)12条)。
(ア)
(イ)

電話加入権(3号)

(エ)


後記(3)イに掲げる資産(2号)

(ウ)

(3)

土地(土地の上に存する権利を含む。)(1号)

上記(ア)ないし(ウ)に掲げる資産に準ずるもの(4号)

減価償却資産の意義及び範囲
減価償却資産

建物,構築物,機械及び装置,船舶,車両及び運搬具,

工具,器具及び備品,鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう(法人税法2条23号)。

上記アの政令で定める資産は,棚卸資産,有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする(法人税法施行令13条)。
(ア)

建物及びその附属設備(暖冷房設備,照明設備,通風設備,昇降機
その他建物に附属する設備をいう。)(1号)
(イ)

構築物(ドック,橋,岸壁,さん橋,軌道,貯水池,坑道,煙突そ
の他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)(2号)
(ウ)
(エ)

機械及び装置(3号)
(略)(4号以下)

ガラス繊維製造用の白金製溶解炉,光学ガラス製造用の白金製るつぼ,か性カリ製造用の銀製なべのように,素材となる貴金属の価額が取得価額の大部分を占め,かつ,一定期間使用後は素材に還元の上鋳直して再使用することを常態としているものは,減価償却資産には該当しない。この場合において,これらの資産の鋳直しに要する費用(地金の補給のために要する費用を含む。)の額は,その鋳直しをした日の属する事業年度の損金の額に算入する(法人税基本通達(昭和44年5月1日付け直審(法)25(例規)(以下「法人税基本通達」という。)7-1-2))。(注)白金ノズルは減価償却資産に該当するのであるが,これに類する工具で貴金属を主体とするものについても,白金ノズルに準じて減価償却をすることができるものとする。
(4)

固定資産の取得価額
減価償却資産の取得価額(法人税法施行令54条1項)
減価償却資産の取得価額は,次の(ア)ないし(エ)に掲げる資産の区分に応じ当該(ア)ないし(エ)に定める金額とする。
(ア)

購入した減価償却資産

①当該資産の購入の代価と②当該資産を事
業の用に供するために直接要した費用の額の合計額(1号)
(イ)

自己の建設,製作又は製造(以下「建設等」という。)に係る減価
償却資産

①当該資産の建設等のために要した原材料費,労務費及び経
費の額と②当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額(2号)
(ウ)

(略)(3号から5号まで)

(エ)

上記(ア)ないし(ウ)以外の方法により取得をした減価償却資産
①そ

の取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額と②当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額(6号)イ
減価償却資産以外の固定資産の取得価額(法人税法基本通達7-3-16の2)
減価償却資産以外の固定資産の取得価額については,別に定めるもののほか,上記アの規定及びこれに関する取扱いの例による。なお,資本的支出に相当する金額は当該固定資産の取得価額に加算する。

(5)

減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法
内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として上記(1)ウの規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は,その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち,その取得をした日及びその種類の区分に応じ政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかった場合には,償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額とする(法人税法31条1項)。

平成19年3月31日以前に取得をされた減価償却資産の償却限度額
(上記アの規定による減価償却資産の償却費として損金の額に算入する金額の限度額をいう。)の計算上選定をすることができる同項に規定する資産の種類に応じた政令で定める償却の方法は,次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする(法人税法施行令48条1項)。(ア)

建物(鉱業用減価償却資産を除く。)

次に掲げる区分に応じそれ

ぞれ次に定める方法(1号)


平成10年3月31日以前に取得をされた建物

次に掲げる方法

旧定額法(当該減価償却資産の取得価額からその残存価額を控除
した金額にその償却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法をいう。以下同じ。)


旧定率法(当該減価償却資産の取得価額(既にした償却の額で各
事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合には,当該金額を控除した金額)にその償却費が毎年一定の割合で逓減するように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法をいう。)



①に掲げる建物以外の建物
旧定額法

(イ)
2
(略)(2号以下)

前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

当事者等
原告は,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)所在の親会社であるP3Incorporated(以下「P3本社」という。)を中心として世界各国で特殊ガラス製品の製造及び販売の事業を行うP4グループ各社の中の日本法人として,昭和46年(1971年)3月3日に設立され,現在東京都港区に本店を置き,主として特殊精密成型ガラスの製造,輸出入及び販売を目的とする内国法人である(乙1,2)。


P3本社は,1851年に創立され,米国ニューヨーク州に本社を置き,特殊ガラス製品の製造の事業を行う外国法人である(乙2)。

(2)

原告とP1社及びP2社との契約締結に至る経緯
原告は,平成17年頃から,P5工場において,大型サイズの液晶ディスプレイ用ガラス基板という超薄型ガラス製品の製造を行うこととなり,その製造設備(以下「超薄型ガラス製品製造設備」という。)を設けて稼働させている。同設備は,プラチナとロジウム等の合金化したプラチナ合金製部品(以下「本件プラチナ合金製部品」という。)を超薄型ガラス製品製造設備に組み込んで稼働されていた。原告は,本件プラチナ合金製部品の製造に用いるプラチナを調達するため,P1社及びP2社との間でプラチナの調達に関する契約を締結することとした。(甲4)


原告,P3本社及びP6Co.Ltd.(以下,これらの3社を併せて「P4・3社」という。)は,平成17年1月26日付けで,P4・3社を借主,P1社を貸主として,本件プラチナ合金製部品に用いるプラチナ,パラジウム及びロジウム(以下「プラチナ等」という。)の調達に関する契約(以下「P1基本契約」といい,同契約に係る契約書を「P1基本契約書」という。)を締結した(甲5の1・2,乙6)。

P4・3社は,平成17年2月9日付けで,P2社との間で,P4・3社を借主,P2社を貸主として,本件プラチナ合金製部品に用いるプラチナ,パラジウム及びロジウムの調達に関する契約(以下「P2基本契約」といい,同契約に係る契約書を「P2基本契約書」という。また,P2基本契約とP1基本契約を併せて「本件各基本契約」といい,これらの契約に係る契約書を「本件各基本契約書」という。)を締結した。(甲6の1・2,乙7)

(3)

P1基本契約及びP2基本契約の定めの要旨
P1基本契約の定めの要旨(甲5の1・2,乙6)
(ア)

P1社及び各借主は,随時,プラチナ等のリース契約を締結するこ
とができ,そのリース契約に基づき,貸主(P1社。以下(カ)ないし(サ)及び(ス)において同じ。)は,借主に対し,99.95%以上の純度のプラチナ等をリースする(1条a項)。
(イ)

各リース契約は,P1基本契約及び確認書(Confirmation)に定め
る特定のリース契約条項に準拠する(1条b項)。
(ウ)

借主は,リース期間又は更新後のリース期間の終了時において,①
リース資産(LeasedMaterial)と同量かつ同質のものを借主自身の危険負担及び費用負担において返還するか(以下「P1返還選択権」という。),②リース資産をリース期間の終了時の市場価格でpurchaseするか(以下「P1買取選択権」という。)のいずれかを選択しなければならない(1条c項)。
(エ)

全てのリース資産は,リース契約に定めるリース開始日において,
各借主に引き渡されるものとする(2条)。
(オ)

各借主は,各リース契約について,次の算式によって計算される

リース料(LeeseFee)を支払う(4条)。
(算式)
リースレート×基準価格×数量×(請求対象の期間の日数/360)(注)基準価格とは,リース資産の価額をいう。
(カ)

借主は,①P1基本契約,同契約に定めるリース資産又はこれらの
使用に関して課せられる税金(罰金を含む。)を負担し,その税金に関して貸主に生じた損害を補償するとともに,②リース資産又はその使用に関して発生する責任,債務又は費用を負担し,これらに関して貸主に生じた損害を補償するものとし,上記①及び②について貸主に一切の負担を負わせないものとする(5条a項)。
(キ)

リース資産が借主に引き渡された時から貸主に返還される時までの
間,借主は,当該リース資産の滅失,毀損又は消滅等によって生ずる損害又は当該リース資産に関して発生する損害につき,その発生原因を問わず,全ての責任を負うものとする(5条b項)。
(ク)

貸主は,書面により異なる合意をする場合を除き,リース期間中に
おいて,常にリース資産のtitleを留保する(5条c項)。
(ケ)

各借主は,貸主に対しリース資産を返還する際,貸主が当該リース
資産に対する有効で取引に適したtitleを有しており,このtitleには担保権等が設定されておらず,リース資産の利用又は譲渡を制限する合意も付されていないことを保証する(5条d項)。
(コ)

借主の契約不履行に基づくリース契約の解除による終了の場合,貸
主は,解除の通知において,借主がリース契約に係るリース資産を返還すべきか又は当該時点の市場価格を支払うべきかを指定する(7条a項(6)(b))。
(サ)

P1基本契約7条に定める貸主の権利は,契約,法の適用若しくは
衡平法上の権利又はその他いかなる方法によるかにかかわらず,貸主が有する他の権利に付加されるものであり,これらの権利を制約するものでない。特に,P1基本契約の条項のいずれも,貸主がリース契約の規定に基づきtitleを留保する金属について有する返還権又は返還請求権を制限するものではなく,また,貸主が(P1基本契約又はその他の契約に基づき)借主に対して負う債務額を,当該借主が(P1基本契約又はその他の契約に基づき)貸主に対して負う債務額と相殺する権利を制限するものではない。(7条b項)
(シ)

P1基本契約及び同契約に従って締結される全てのリース契約は,
米国ニューヨーク州法(以下単に「ニューヨーク州法」という。)に準拠し,同法に従って解釈される(12条)。
(ス)

借主は,リース期間終了日より前に貸主にリース資産を返還する場
合には,期限前の返還によってP1社に生ずる違約金(逸失利益を含むがこれに限られない。)の全てを貸主に支払う義務を負うものとする。中途解約が行われる場合に借主が支払うべき総額は,中途解約の時までの未払リース料(accruedfees)と次の算式によって算定される違約金との合計額となる。(17条b項)
(算式)
違約金=数量×(解約日から終了予定日までの日数/360)×事前に決定された取引価格×事前に決定されたリースレート-数量×(解約日から終了予定日までの日数/360)×解約日現在の取引価格×解約日現在のリースレート

P2基本契約の定めの要旨(甲6の1・2,乙7)
(ア)

P2社及び借主は,随時,プラチナ等のリース契約を締結すること
ができ,そのリース契約に基づき,貸主(P2社。以下(ウ)ないし(ク)及び(サ)において同じ。)は,借主に対し,99.95パーセント以上の純度のプラチナ等をリースする(1条a項)。
(イ)

各リース契約は,P2基本契約及び確認書(Leasechedule)に定める特定のリース契約条項に準拠する(1条b項)。
(ウ)

全てのリース資産は,リース契約に定めるリース開始日において,
借主に引き渡されるものとする。借主は,リース資産をあらゆる合法な目的に使用することができるが,製造工程用に借主所有の金属と合金化させることを除き,その重要な側面において加工・改良を行わないものとする。また,貸主からの要求書の送付時又は各リース契約の終了時に,合金化されたリース資産を直ちに借主の費用負担で非合金化し,引渡し時の状態以上の品質及び純度で貸主に返還するものとする。全てのリース資産は,リース期間中,各リース契約条項に定められた場所において保管されるものとし,借主の帳簿上において,常に貸主の資産として認識されなければならないものとする。(2条)
(エ)

各リース契約に関して,各借主は,貸主に対し,リース期間又は更
新後のリース期間の最終日において,そのリース契約条項に定めるリース料(Rent)を日本円の固定金額で支払うことを約束する(3条)。(オ)

全てのリース資産に関するリース期間中において,当該リース資産
のtitleは,常に貸主にある。借主は,いかなる時点においてもリース資産に対する財産持分を有さず,第三者に対しそのような持分を設定できず,その他リース資産の処分又は担保設定を行ってはならない。(4条)
(カ)

借主は,①P2基本契約,各リース契約,リース資産又はその使用
に関して課せられる税金(罰金を含む。)を負担し,その税金に関して貸主に生じた損害を補償するとともに,②リース資産又はその使用に関して発生する責任,債務又は費用を負担し,これらに関して貸主に生じた損害を補償するものとし,上記①及び②に関して貸主に一切の負担を負わせないものとする(5条a項)。
(キ)

リース資産が各借主に引き渡された時から貸主に返還される時までの間,借主は,当該リース資産の滅失,毀損又は消滅等によって生ずる損害又は当該リース資産に関して発生する損害につき,その発生原因を問わず,全ての責任を負うものとする(5条b項)。
(ク)

借主は,リース終了日において,①リース資産(LeasedMaterial)
をpurchaseすること(以下「P2買取選択権」といい,P1買取選択権と併せて「本件各買取選択権」という。),②リース資産の全部又はそれに相当する同量かつ同等以上の品質を有する金属をリース契約条項所定の引渡場所で返還すること(以下「P2返還選択権」といい,P1返還選択権と併せて「本件各返還選択権」という。)のいずれかを選択することができる。各借主は,貸主に対しリース資産を返還する際,貸主がリース資産に対する正当で譲渡可能なtitleを有しており,このtitleには担保権等が設定されておらず,リース資産の利用又は譲渡を制限する合意も付されていないことを保証する。(13条)(なお,上記①の選択権の呼称については,上記ア(ウ)②を含め,選択権の性質に係る各当事者の主張内容にかかわらず,当事者間に争いがない。)(ケ)

P2基本契約及び同契約に従って締結される全てのリース契約は,
ニューヨーク州法に準拠し,同法に従って解釈される(15条)。(コ)

借主は,リース資産を転貸することはできない。また,試験等の目
的を除き,リース資産又はその一部の引渡し又は譲渡を行ってはならない。(17条)
(サ)

借主は,リース期間終了日より前に貸主にリース資産を返還する場
合には,期限前の返還によって貸主に生ずる違約金(逸失利益を含むがこれに限られない。)の全てを貸主に支払う義務を負うものとする。中途解約が行われる場合に借主が支払うべき総額は,中途解約の時までの未払リース料(accruedRent)と次の算式によって算定される違約金との合計額となる。(22条b項)
(算式)
違約金=数量×(解約日から終了予定日までの日数/360)×事前に決定された取引価格×事前に決定されたリースレート-数量×(解約日から終了予定日までの日数/360)×解約日現在の取引価格×解約日現在のリースレート
(4)

P1個別契約及びP2個別契約
P1個別契約
(ア)

原告は,平成17年6月9日付けで,P1社との間で,P1基本契
約に基づき,リース資産となるプラチナの数量を2万トロイオンス,基準価格を9万3510円,リースレートを4.82037%,リース開始日を平成17年5月31日,リース終了日を平成18年5月31日とするローン確認書を取り交わして個別契約(以下「P1個別契約1」という。)を締結し,上記開始日頃に当該プラチナを引き渡した(甲7の1の1,同7の2の1,乙8の1,弁論の全趣旨。別表1)。
(イ)

原告は,平成18年6月12日付けで,リース資産となるプラチナ
の基準価格を14万4807円,リースレートを5.79500%,リース開始日を平成18年5月31日,リース終了日を平成19年5月31日とする確認書を取り交わしてP1個別契約1を更新する契約(以下「P1個別契約2」といい,P1個別契約1と併せて「P1各個別契約」といい,P1基本契約とP1各個別契約を併せて「本件P1契約」という。)を締結し,上記開始日頃に当該プラチナを引き渡した(甲7の1の2,同7の2の2,乙8の2,弁論の全趣旨。別表1)。

P2個別契約
(ア)

原告は,平成18年4月21日付けで,P2社との間で,P2基本
契約に基づき,リース資産となるプラチナの数量を5000トロイオンス,基準価格を13万円,リースレートを3.80%,リース開始日を平成18年5月2日,リース終了日を平成20年5月2日とする確認書を取り交わして個別契約(以下「P2個別契約1」という。)を締結し,上記開始日頃に当該プラチナを引き渡した(甲8の1の1,同8の2の1,乙9の1,弁論の全趣旨。別表2)。
(イ)

原告は,リース資産となるプラチナの数量,基準価格,リースレー
ト,リース開始日及びリース終了日に係る別表2のとおりの内容で,平成18年5月4日付け確認書による個別契約(以下「P2個別契約2」という。),同月30日付け確認書による個別契約(以下「P2個別契約3」という。),同年7月25日付け確認書による個別契約(以下「P2個別契約4」という。),同月27日付け確認書による個別契約(以下「P2個別契約5」という。),同年9月15日付け確認書による個別契約(以下「P2個別契約6」といい,P2個別契約1ないし6を併せて「P2各個別契約」と,P2基本契約とP2各個別契約を併せて「本件P2契約」と,P1各個別契約とP2各個別契約を併せて「本件各個別契約」と,本件P1契約と本件P2契約を併せて「本件各契約」と,原告がP1各個別契約及びP2各個別契約に基づき取得したプラチナを「本件各プラチナ」という。)をそれぞれ締結し,当該各開始日頃に当該各プラチナを引き渡した(甲8の1の2ないし6,同8の2の2ないし6,乙9の2ないし6,弁論の全趣旨)。
(5)

本件各プラチナの利用状況
原告が本件プラチナ合金製部品の製造に用いる本件各プラチナは,米国ペンシルバニア州所在のP7Inc.(以下「P7社」という。)を介して調達されるが,原告がP7社からプラチナ取引口座の開設を受けていないため,P7社からプラチナ取引口座の開設を受けているP3本社が,原告に代わって,P7社におけるP1社及びP2社のプラチナ取引口座から,P3本社のプラチナ取引口座に,電子的にプラチナの重量残高を振り替えることによって調達されていた(甲4,弁論の全趣旨)。

P7社は,同社が保有するプラチナのうちP3本社の取引口座に振り替えられたプラチナと同種同量のプラチナをロジウム等と合金化した上でP3本社に引き渡し,P3本社は,米国においてP7社から引き渡されたプラチナ合金を用いて本件プラチナ合金製部品を製作し,完成した本件プラチナ合金製部品を日本への輸送のために分解して,原告に引き渡していた(甲4)。


原告は,P3本社から引き渡され,輸送のために分解された本件プラチナ合金製部品を組み立て,これを超薄型ガラス製品製造設備に組み込んで稼働させていた。本件プラチナ合金製部品は,一定期間(約18か月)ごとに補修交換(リビルド)されていた。(甲4)


原告は,本件プラチナ合金製部品を補修交換する場合,超薄型ガラス製品製造設備を分解し,周囲の耐火レンガを粉砕して本件プラチナ合金製部品を取り外し,取り外したプラチナ合金製部品を切断し分離してスクラップにし,プラチナ合金が付着した耐火レンガとともに,補修のためにP3本社に輸送していた(甲4)。


P3本社に輸送されたスクラップ品等は,P3本社が委託した外部の専門業者により溶解されてプラチナやロジウム等に精錬され,精錬されたプラチナやロジウム等は,P4・3社のために新たに調達されたプラチナ等の貴金属と混合されて再度合金化され,P4・3社で使用されるプラチナ合金製部品の製作又は補修に再利用されていた(甲4,弁論の全趣旨)。
(6)

本件各個別契約の終了時又は解約時の支払
P1社に対する支払
原告は,平成19年5月30日,P1社に対し,翌31日にリース期間が終了することとなるP1個別契約2に係るリース料(P1基本契約4条)1億7016万2303円を支払った(甲7の1の2,同7の2の2,乙8の2,同10)。また,原告は,同年7月23日,P3本社を通じ,P1社ないしP8Corporation(以下「P8社」という。)に対し,P1個別契約2に係るプラチナについて,P1買取選択権の行使(P1基本契約1条c項)による金額32億6904万5000円を支払った(乙11の1ないし4。別表3①)。

P2社に対する支払
(ア)

原告は,平成19年7月26日,P2個別契約1及び6を中途解約
し,P2社に対し,上記各契約につき,各リース料(P2基本契約3条及び各確認書)3045万2055円,8991万9762円,各違約金(P2基本契約22条b項)817万2866円,7430万3270円及びP2買取選択権の行使(P2基本契約13条a項)による金額8億0480万円,24億1440万円をそれぞれ支払った(乙12の1ないし4。別表3②及び⑦)。
(イ)

原告は,上記(ア)と同様,平成19年8月9日にP2個別契約2,3
及び5を,同月6日にP2個別契約4をそれぞれ中途解約し,P2社に対し,上記各契約につき,各リース料3682万2866円,1億2108万9421円,8006万3369円及び8070万9041円,各違約金1455万3051円,6417万6833円,5503万4351円及び5443万5375円並びにP2買取選択権の行使による金額7億7104万5000円,18億0517万0554円,15億2751万円及び15億1635万円を支払った(乙13の1ないし5,同14の1ないし3。別表3③,④,⑥及び⑤)。(7)

本件各処分に係る経緯等
本件各処分に係る経緯は,別表4のとおりである。
本件各プラチナは,減価償却資産以外の固定資産に当たるところ,原告は,
本件各個別契約開始時(本件各個別契約の締結ないし本件各プラチナの引渡しがされた時をいう。以下同じ。)に,貸主から借主である原告に本件各プラチナの所有権が移転し,原告が本件各プラチナを取得したとし,本件各プラチナの取得価額は本件各個別契約開始時の価額であるとして,本件各買取選択権の行使により支払った121億0832万0554円と本件各個別契約開始時の本件各プラチナの時価相当額97億9831万5322円との差額から両時点間の為替差益等3億2994万9304円を差し引いた本件特別損失計上額19億8005万5928円を,損金の額に算入した。これに対し,処分行政庁は,本件各個別契約の終了時又は解約時に,本件各買取選択権の行使による費用を支払うことにより,本件各プラチナの所有権が原告に移転し,原告がこれを取得したと認められるから,本件特別損失計上額は,本件各プラチナの取得価額となり,損金の額に算入できないとして,本件各処分をした。
3
税額等に関する当事者の主張
被告が本件訴訟において主張する本件各処分の根拠及び計算は別紙2「課税の根拠及び計算」記載のとおりであるところ,原告は,後記4の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。
4
争点
(1)

本件各プラチナの「取得」の意義及び時期

(2)

本件特別損失計上額は本件各プラチナの取得価額又は特別損失のいずれ
に当たるか。
5
争点に関する当事者の主張の要旨
(1)

争点(1)(本件各プラチナの「取得」の意義及び時期)について
(被告の主張の要旨)
ア(ア)

法人税の課税物件である所得が国際取引上の契約によって生み出さ
れる場合であっても,その課税は,それが私法上の法律関係としてどのような内容で成立し,いかなる効力を生じているかに即して行われるべきである。そして,国際取引を前提とする契約の場合,私法上の法律関係を規律する準拠法の問題が生ずることとなるところ,契約の準拠法は,当事者の指定により決定される(法の適用に関する通則法(以下「法適用通則法」という。)7条,附則2条)。
本件では,当事者間で本件各契約の準拠法がニューヨーク州法と指定されているから(P1基本契約12条,P2基本契約15条),本件各契約の成立及び効力についてはニューヨーク州法に基づくことになる。もっとも,このように外国法を準拠法としている場合であっても,我が国の租税法の下における課税関係は,飽くまで我が国の私法上の法律関係によって把握されるべきであるから,本件において争点となる本件各プラチナの取得価額に係る「取得」の意義については,民法上の取得と同意義と解すべきである。
(イ)

米国においては,商取引に関して,連邦法ではない商取引関連法の
中では権威ある模範法であり,実質的な商事法である統一商法典(以下「UCC」という。)がある。UCCは,米国各州の商事取引法を現代化し統一する目的で制定されたものであり,全ての州で採用されている。したがって,ニューヨーク州法を準拠法とする商取引については,米国ニューヨーク州において採択された統一商法典(以下「ニューヨーク州UCC」という。)が適用されることになる。
(ウ)

ニューヨーク州法上の「title」について正面から規定した規定であ
るニューヨーク州UCC第2編(売買)2-410条1項によれば,①売買契約の目的である物品の特定(同2-501条)より前に,当該売買契約により物品の所有権(title)が移転することはあり得ず,②明白に別段の合意がされない限り,買主は,その特定により,同州UCCにより限定された特別の財産権(property)を取得し,③買主に発送され又は引き渡された物品の所有権(財産権)の売主による保持又は留保は,実質的に担保権留保に限定される。これらの諸規定及び担保付取引に関する章(第9章)の諸規定に従い,物品の所有権は,当事者により明示的に合意された方法及び条件で売主から買主に移転するのであり,ニューヨーク州法の規定上,所有権(title)は,財産権(property)と同義である。
(エ)

ニューヨーク州UCCにおける「title」とは,財産権であり,所有
権を指しているが,ニューヨーク州UCCにおいて,所有権に関する定義規定はない。そこで,米国の最高峰の法律辞典とされるBlack'sLawDictionaryに基づいて,ニューヨーク州UCCを含む米国法上の所有権(ownership)の定義をみると,「財産を使用,管理,享受する権利(他者へ譲渡する権利を含む。)の集合体。物を所有する権利(それが事実上又は解釈上いかなる支配に服そうとも)を示唆する言葉。所有権は一般的で恒久かつ相続可能なものである。」とされている。また,ニューヨーク州UCCでは,所有権の移転時期は,契約内容に基づいて決まることになる。
(オ)

本件において,P1基本契約では,貸主であるP1社が所有権

(title)を留保しており(5条c項),借主は,リース資産の返還に当たって,リース資産に担保権等の設定がされておらず,リース資産の利用又は譲渡を制限する合意もないことを保証しなければならない(5条d項)。また,P2基本契約では,貸主であるP2社が所有権
(title)を留保しており(4条),借主は,合金化以外の加工・改良はできず(2条),リース資産の転貸もできず(17条),貸主の所有権を制限するような担保権等を設定することはできない(4条)。したがって,本件各契約においては,ニューヨーク州法上,その契約期間中は貸主に所有権(title)が留保され,その所有権を制限するような担保権等はないという法律関係にある。また,本件各契約において,原告は,本件各個別契約の終了時又は解約時に,本件各契約に基づき,リース資産(LeasedMaterial)を買い取る本件各買取選択権又はリース資産と同量かつ同質のものを借主自身の危険負担及び費用負担によって返還する本件各返還選択権を行使することとなっている(P1基本契約1条c項,P2基本契約13条)。そして,原告は,平成19年7月23日,P1個別契約2の終了に伴い,P1買取選択権を行使し,P1社ないしP8社に対し32億6904万5000円を支払い,P1社から同契約分の本件各プラチナを買い取った。また,原告は,平成19年7月26日,P2個別契約1及び6をそれぞれ中途解約した上,P2買取選択権を行使し,P2社に対し32億1920万円を支払い,P2社から当該各契約分の本件各プラチナを買い取った。さらに,原告は,平成19年8月9日にP2個別契約2,3及び5を,同月6日にP2個別契約4をそれぞれ中途解約した上,P2買取選択権を行使し,P2社に対し41億0372万5554円及び15億1635万円を支払い,当該各契約分の本件各プラチナを買い取った。したがって,原告は,本件各個別契約の終了時又は解約時において本件各プラチナを「取得」したものと認められる。
(カ)

前記(ア)のとおり,資産の「取得」については,民法上の取得の概念
によって判断することになるところ,米国における所有権の概念と我が国における所有権の概念とでは,その定義付けにおいて完全に一致するものではないが,民法上の所有権の主要な要素は,自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利であり,米国法上の所有権と同内容のものといえるから,本件各プラチナの所有権は,本件各個別契約の終了時又は解約時において原告に移転したものと認められ,原告は,本件各個別契約の終了時又は解約時において本件各プラチナを「取得」したものと認められる。
(キ)

英米法上の契約文言の解釈原則には,「契約書の文言は,その文字
どおりに解釈され,別の約束が口頭でされていたなどの抗弁は許されない」とする明白な意味の原則(Plain-MeaningRule)が存在する。また,ニューヨーク州UCCは,契約の解釈の原則について,明示の契約文言,履行状況,取引状況及び商慣習は,合理的である限り相互に矛盾しないように解釈すべきであるが,合理的に矛盾を解消できない場合には,①明示の契約文言,②履行状況,③取引状況,④商慣習の順で優先適用されることを規定している。このことも,契約の解釈に当たり,契約書の文言が非常に重大な意味を持つことを示している。さらに,ニューヨーク州UCC2-202条は,当事者が合意内容の表示として完全かつ唯一のものと意図して作成した書面がある場合には,その書面の記載に含まれている条件を,その書面作成以前の合意やその書面作成と同時にされた口頭の合意に関する証拠により覆すことはできないと規定している。したがって,本件各契約の具体的な内容は,飽くまでもP1基本契約書及びP2基本契約書の文言の解釈によって決まるものであり,本件各処分後に作成されたP1社面談記録(甲10の1)及び本件各処分の直前に作成されたP2社書簡(甲11の1・2)を本件各契約の解釈に用いることはできない。ガラス製造の実態(履行状況)やプラチナリースの実務上同一物の返還が予定されていないこと(商慣習)を理由に,本件各契約において同一物の返還が予定されていないとして,本件各基本契約書の文言から解釈できる同一物の返還可能性を否定することは,ニューヨーク州UCCの定める上記の解釈手法に反するものである。(ク)

そこで,本件各基本契約における合意事項についてみるに,P1基
本契約書では,7条a項(6)(b)において,借主の債務不履行に基づくリース契約の解除による終了の場合,P1社は,解除の通知において,借主がリース契約に係るリース資産を返還すべきか又は当該時点の市場価格を支払うべきかを指定するものと定められており,P1基本契約において,借主に債務不履行があった場合に同一物を返還し得ることが明記されている。また,P2基本契約書では,13条において,「返還オプション」として,リース資産の全部(一部の返還は認められない。)又はそれに相当する同量かつ同等以上の品質を有する金属を貸主に返還しなければならないとされ,借主がリース資産の返還オプションを行使することを選択した場合に,リース資産に対する借主のマーキング又はその他の変更若しくは付加加工(合金を含むが,これに限られない。)を適切に取り除くことと規定されている。この規定の文理によれば,ここにいう「変更」とは,本件各取引開始時において引渡しを受けた本件各プラチナの「変更」を意味し,「取り除く」とは,「変更」前の本件各プラチナの状態に戻すことを指すことが明らかである。そうすると,P2基本契約においても同一物を返還し得ることが念頭に置かれていることは,文言上明らかである。したがって,本件各基本契約は,原告の主張するような消費貸借とはいえないことは明らかである。
(ケ)

原告は,本件各基本契約が消費貸借であることを前提として,リー
ス終了時のリース資産の引取りに係る本件各基本契約の「purchase」の語は,「償還」と訳するのが相当である旨主張する。しかしながら,上記のとおり,本件各基本契約は消費貸借とはいえないから,ニューヨーク州UCC1-201条(甲22)と同様に「購入」と解すべき
「purchase」について,「償還」を意味する旨の上記主張は,その前提を誤るものである。
(コ)

原告は,本件各契約は,担保権を設定する取引である旨主張する。
しかしながら,本件各基本契約書の各条項において,原告とP1社又はP2社との間のプラチナの取引を示す用語として「Lease」が用いられているところ,ニューヨーク州UCCにおいて,「Lease」(リース)とは,対価(約因)を得て,期間を限り,物品の占有と使用の権利を移転することであり,①買取選択権につき,オプション行使時の市場価格にほぼ相当する金額でオプション行使価格を定めた規定があること,②経年変化,損耗,陳腐化等により生ずるリース期間中の商品価値の下落に対して貸主に補償する意図でリース代が設定されているとうかがえること,③リース代が高額すぎたり,オプション行使価格が低額すぎたりしないこと,④リース期間中,借主が対象物品に関して何らの持分権も有しないことをうかがわせる事実関係が認められることを要件とするものであり,売買や担保権の留保・設定はリースではないとされている。これを本件各契約についてみると,上記①の要件については,P1基本契約1条c項及びP2基本契約13条において,当該リース期間終了時又は本件買取選択権行使時に,その当時の価格で取引をすることとされており,充足する。上記③の要件については,P1基本契約4条及びP2基本契約13条において,リース資産の価格に基づき,合理的な算定方法によりリース料が定められており,充足する。上記④の要件についても,P1基本契約5条c項及びP2基本契約4条において,前記(オ)のとおり,貸主が所有権を留保しており,P2基本契約4条において,借主は持分を有しないとされているから,充足する。他方,上記②の要件については,本件各プラチナは,時の経過によりその価値が減少しない非減価償却資産であるから,経年変化,損耗,陳腐化等に伴う価値の減少が生ずるものではなく,そもそも価値の減少に係る補償についての規定をする必要は認められない。以上によれば,ニューヨーク州法の下においては,本件各契約は,リース契約であると解されるので,これを担保権を設定する取引であるとする原告の主張は失当である。
(サ)

原告は,P1社又はP2社に対し,本件各個別契約の終了時又は解
約時に本件各買取選択権又は本件各返還選択権を行使した上で,法人税法施行令54条1項1号の「購入の代価」に当たる合計121億0832万0554円を,本件各プラチナの取得価額として,機械及び装置(PreciousMetals)勘定に計上している。その後,原告は,平成19年10月31日,機械及び装置(PreciousMetals)勘定に計上した上記121億0832万0554円のうち,19億8005万5982円を,本件各プラチナの取得価額から減額し,特別損失であるリース契約違約金勘定に計上した上,同額を損金の額に計上した。他方,P1各個別契約及びP2各個別契約は,平成17年6月9日ないし平成18年9月15日の間に締結されているところ,仮に原告の主張するとおり,本件各プラチナを本件各個別契約開始時において「取得」していたのであれば,本件各プラチナは,本件事業年度より前の事業年度である決算期の各法人税の申告及びそれらの基礎となる各決算期の確定決算書において,自己の資産として計上されていたはずであるが,そのような事実は見当たらない。以上の原告の会計帳簿における客観的な記録は,本件各個別契約の終了時又は解約時に本件各プラチナを「取得」したという被告の主張に合致するものである。
イ(ア)

付合したというためには,動産の一方を毀損しなければこれを分離
することができず,これを分離した場合には動産の本来の機能を発揮することができなくなり,又は分離のために過分の費用を要するようになることが必要である。原告が超薄型ガラス製品製造設備に付合させて使用したと主張するプラチナ合金製部品は,P3本社において製造され,原告に引き渡された後,加工することなく上記製造設備に組み込んで使用し,一定期間(約18か月)ごとに補修交換(リビルト)することが予定されているものである。すなわち,本件のプラチナ合金製部品は,一定期間ごとに取り外して精錬され,再度合金化されて再利用されるものである。したがって,本件のプラチナ合金製部品は,超薄型ガラス製品製造設備を毀損することなく取り外すことが可能であり,そもそも一定期間ごとに補修することが予定されているものであるから,本件各プラチナに民法243条の動産の付合の規定が適用されることはない。(イ)

また,民法243条の動産の付合を含む添付の規定は,所有権の帰
属についての契約がない場合の例外的な場合にのみ適用されるにすぎない。したがって,本件各プラチナの所有権の帰属を明らかにしている本件各契約において,同法243条の規定が適用されることはない。(原告の主張の要旨)
ア(ア)

法人税法施行令54条1項6号にいう「取得」とは,対象とされる
資産について私法上の所有権を取得したこと,すなわち,対象とされる資産について,自由にその使用,収益及び処分をする権利を取得したことをいうものと解すべきである。
(イ)a

P1基本契約1条a項は,P1社及び借主は,随時,プラチナ等

のリース契約を締結することができ,そのリース契約に基づき,P1社(貸主)は,借主に対し,99.95%以上の純度のプラチナをリースする旨を定めている。また,同条c項は,各契約又はその各更新契約の終了時において,借主は,①借主自身の危険及び費用負担において,同量かつ最低限の品質を備えたリース資産を返還するか,又は②リース期間の終了時における同量のリース資産に係るその時の市場価格で,リース資産をpurchaseしなければならない旨を定めている。
また,P2基本契約1条a項は,P2社及び借主は,随時,プラチナ等のリース契約を締結することができ,そのリース契約に基づき,P2社(貸主)は,借主に対し,99.95%以上の純度のプラチナ等をリースする旨を定めている。また,P2基本契約13条は,リース終了日において,借主は,①リース終了日における同量のリース資産の時価によるpurchase又は②同量かつ同等以上の品質のリース資産の返還のいずれかを選択することができる旨を定めている。
このように,本件各基本契約によれば,原告(借主)は,随時,同種同等同量の物を返還することを約して,P1社及びP2社(貸主)からプラチナを受け取ること,すなわち,民法587条の消費貸借契約を締結したものである。なお,本件各基本契約書によれば,原告は,リース資産と同種同等同量の物の返還に代えて,各リース終了時におけるリース資産を時価で償還(purchase)することもできるが,これは,民法592条の定める価額の償還を選択する権利を付与されたものである。すなわち,原告は,この金銭の支払をもって契約を終了させることにより,本件各プラチナと同種同等同量のプラチナの返還義務を免れ,また,本件各プラチナの処分権に関する債権的な制約を免れることになる。上記「purchase」の語は,「財産権を創設する任意の取引」を意味し,本件各基本契約においては,原告は,個別契約開始時のリースの対象となる本件各プラチナの所有権を取得することになるが,その権原において担保権の留保があり(P1基本契約5条c項,P2基本契約4条),また,債権的な制約を負っており(P2基本契約4条,17条),このような留保や制約を取り払って完全な財産権を創設するために任意の取引を行うことができるという定めが,本件各基本契約における「purchase」の法的な意味であり,「償還」と訳すのが相当である。

P1社面談記録(甲10の1)によれば,P1社は,P1基本契約に基づく取引の終了時において,リースされたプラチナそのものが返還されることは想定しておらず,同等物の返還又は金銭による精算を想定していた。また,P2社書簡(甲11の1・2)によれば,P2社は,プラチナ等は業界においてコモディティとして認識されており,多くの状況においてシリアルナンバー又は他の方法により,その所有権を明確に識別することが可能なものではないと理解しており,借主が,リース終了時に同種同等同量のプラチナ等の返還をする選択権又はそのリース資産の時価による償還をする選択権を有することは,業界において一般に受け入れられている商慣習であると認識していた。以上によれば,P1社及びP2社は,貴金属のリースビジネスにおける一般的な商慣行に従い,リース契約の終了時において,リース資産と全く同一のものが返還されることは想定しておらず,リース資産と同種同等同量の物が返還され又はその時におけるその物の時価が償還されることを想定していたものといえる。したがって,P1社及びP2社は,本件各契約において,民法587条の消費貸借により本件各プラチナを引き渡す意思を有していたものである。

本件各契約の目的物である本件各プラチナは,不特定物であり,シリアルナンバー等で特定されているわけではないこと,プラチナ合金製部品を加工する過程で別途調達された他のプラチナと混ぜて用いられていること,プラチナ合金製部品として溶解工程で使用される際,揮発したり周りを覆った耐火レンガに付着したり製品に溶け込んで減耗することにより,受け取った物と同一物を返還することは物理的に不可能である。したがって,本件各契約は,受け取った物と同一物を返還することを要素とする民法601条の賃貸借にはなり得ない。

本件各契約にニューヨーク州法を適用してその法律関係を検討したとしても,原告が同じ種類・品質の同じ数量を返還するか,又は契約終了時におけるプラチナの市場価格で償還することを約して,P1社及びP2社から本件各プラチナの引渡しを受け,契約期間中は原告からP1社及びP2社に対し一定額の支払をするという内容は,それ自体として何らニューヨーク州法に違反するものではなく,当事者の合意の内容がそのまま尊重されることになる。また,ニューヨーク州UCC1-201条(37)a項は,①商品を占有し使用する権利のために借主が貸主に対し対価を支払うべきことがリース期間中の義務とされており,借主に解約権が付与されていないこと,②当初のリース期間がその商品の残存する経済的寿命に等しいか又はそれを上回ること,という2つの要素が存在する場合,当該取引は担保権の設定であり,貸借ではないとしている。本件では,①P1基本契約及びP2基本契約は,いずれも原告に対して解約権を与えておらず,また,②本件各プラチナは,引渡し後に合金化されて大型ディスプレイ用ガラス基板の製造の用に供されていることが予定されているから,時の経過によって価値の減少を伴う資産に該当することが予定されており,原告に引き渡された時点以降,常に識別不能であってリース資産としての独立の残存する経済的寿命を有しないから,各リースの期間は,必然的に引き渡された本件各プラチナの残存する経済的寿命を上回る。以上によれば,本件各契約は,いずれも上記ニューヨーク州UCCの定める2つの要素が存在するといえるから,担保権を設定する取引であり,貸借ではない。そして,本件各基本契約では,titleの移転については,必ずしも明白な合意はなく,その移転時期については,「物品の物理的引渡しに関して,売主がその履行を完成した時と場所において,titleは買主に移転する」とするニューヨーク州UCC2-401条(2)が適用され,原告は,本件各プラチナのtitleを,その引渡しを受けた時点で取得していることになる。
(ウ)

仮に,本件各基本契約の私法上の効力等についてはニューヨーク州
法に基づいてその具体的内容を考慮し,資産の「取得」の有無及び時期といった我が国の租税法における課税関係については民法における取得の概念によって判断したとしても,上記のとおり,ニューヨーク州法の下で,日本法の消費貸借契約に相当する契約を締結し,それが尊重される以上,消費貸借資産の引渡し時に所有権の移転があったものと考えられる。
(エ)

P1基本契約書5条c項及びP2基本契約4条は,P1社,P2社
は,リース期間中,リース資産に係るtitleを留保する旨を定めているが,ここにいう「title」とは,上記(イ)のとおり,原告もP1社及びP2社も,本件各プラチナが引き渡された後は,同一物の返還を想定しておらず,同一物を返還することは物理的にも不可能であること,本件各プラチナは大型の内部タンクを備えた超薄型ガラス製品製造設備に付合されて使用されていることに鑑みれば,担保権を意味し,所有権を意味するものではない。この点につき,被告は,ニューヨーク州UCCにおいて「title」は,「所有権」と訳すべきである旨主張するが,ニューヨーク州UCCには,「title」を「所有権」と訳すと意味が通じない規定が存在するから,被告の主張は採用できない。
(オ)

P1基本契約書1条c項及びP2基本契約13条は,貸主に対し,
本件各プラチナと同種同等同量の物を返還するか,その返還に代えて,リース期間の終了時における同量のリース資産の市場価格での償還を選択できる権利を付与したものであり,本件各プラチナ自体の返還や購入を選択できるものではない。
(カ)

P2基本契約4条及び17条は,リース期間中の本件各プラチナの
所有権を貸主であるP2社が保有する旨を規定したものではなく,借主である原告が所有権を有する本件各プラチナについて,第三者に対し担保権の設定,処分,転消費貸借,引渡し,移転又は譲渡をすることができないという債権的な制約を定めたものにすぎず,処分権が原告にあるからこそ,このような制約を貸主の利益保護のために設けたものである。(キ)

原告は,本件買取選択権を行使した際に支払った121億0832万0554円を,本件各プラチナの取得価額として計上した後,そのうち19億8005万5982円を本件各プラチナの取得価額から減額し,同額を損金の額に計上した。原告がこのような会計処理をしたのは,当時,会計処理基準を当初の米国会計基準から日本会計基準に変更したところ,当時の会計処理基準では,会計方針の変更に当たっては,その変更の影響を当期又は当期以降の財務諸表に反映するものとされていたことから,それに従って本件各取引開始時ではなく会計方針変更時に計上したものである。そして,その際に取得価額が過大に計上されていたことから,それを訂正する必要が生じ,仕訳を訂正するときに用いる「逆仕訳」の手法により,本件各プラチナの取得価額を本件各消費貸借取引開始時の価額としたものである。
イ(ア)

法例(平成18年法律第78号による廃止前のもの。以下「旧法

例」という。)10条は,動産及び不動産に関する物権その他の登記をすべき権利の得喪は,その原因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法による旨を規定しているところ,本件各プラチナの私法上の所有権は,動産に関する物権に該当する。したがって,原告が本件各プラチナについて私法上の所有権を「取得」したか否かは,その原因となる事実が完成した当時における目的物である本件各プラチナの所在地法によるべきである。
(イ)

これを本件についてみると,原告の超薄型ガラス製品製造設備への
本件各プラチナを含むプラチナ合金製部品の付合は,日本のP5工場において完成したから,原告が本件各プラチナについて私法上の所有権を「取得」したか否かは,上記の付合時における本件各プラチナの所在地法である日本の法律によるところとなる。そして,民法243条は,所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときには,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属し,分離するのに過分の費用を要するときも同様とする旨を規定しているところ,本件各プラチナを含む本件プラチナ合金製部品は,主たる動産たるP9の製造に使用される大型の内部タンクを備えた超薄型ガラス製品製造設備に付合されて使用され,損傷しなければ分離不能となったから,原告は,この時に本件各プラチナを「取得」したものである。
(2)

争点(2)(本件特別損失計上額は本件各プラチナの取得価額又は特別損失
のいずれに当たるか)について
(被告の主張の要旨)

法人税法施行令54条1項6号は,取得時の時価が取得価額となる旨を定めているだけであり,その余の支出部分(本件特別損失計上額)が損金となる旨を定めているわけではなく,同項各号に規定する金額に該当しない部分の金額が,原告の主張するように一義的に損金の額になるわけではない。取得行為の後ないし事業の用に供した後に支出した金額であっても,その金額が損金の額に算入されない(取得価額を構成する)ことはあり得るのであって,そうである以上,当該支出が損金となるべきものか,取得価額を構成すべきものであるのかは,本件各プラチナの「取得」の時期の問題とは別に,改めて検討されなければならず,本件特別損失計上額が損金の額に算入されるかどうかの判断に当たっては,当該金額が損金性を有するか否かの検討がされるべきである。


そもそも,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めのあるものを除き,①当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価,その他これらに準ずる原価の額,②上記①に掲げるもののほか,当該事業年度の販売費,一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額,③当該事業年度の損失の額で,資本等取引以外の取引に係るものとされ(法人税法22条3項),これらの額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される(同条4項)。原告は,法人税法等のいずれの規定に基づき,本件特別損失計上額を損金の額に算入できるとするのか,その根拠を何ら示していない。のみならず,そもそも本件特別損失計上額のような金額を損金の額に算入する根拠となる法人税法等の規定は存在しないから,原告が本件特別損失計上額を損金の額に算入する根拠は不明である。

本件各プラチナが固定資産であることは当事者間に争いがない。また,税法上,「取得」の意義について定めた規定は存在しないため,原則として私法上の概念に従って判断すべきであり,所有者が自由にその固定資産を使用,収益及び処分をする権利を有することとなった時が,当該固定資産の「取得」の時期になるものと解される。本件各契約は,前記争点(1)に係る(被告の主張の要旨)ア(オ)のとおり,貸主に所有権が留保されており,本件各個別契約の終了時に本件各契約に基づき,本件各買取選択権の行使による費用を支払うことによって,本件各プラチナの所有権が移転し,原告がこれを「取得」するものと認められる。本件各買取選択権を行使することは,本件各プラチナの所有権を取得するために代価を支払うことにほかならず,上記各権利を行使して支払った金額は,本件各プラチナの購入代価となる。そうすると,本件各プラチナは,購入によって取得した資産であり,法人税法施行令54条1項1号の取得事由に該当するから,上記各権利を行使して支払った金額(購入代価)は,取得価額を構成することになる。


仮に原告が本件各プラチナの所有権を本件各個別契約開始時に「取得」していたとしても,原告は,本件各プラチナにつきtitleの留保により返還義務を負い(P1基本契約7条b項),その処分権を制限される(P2基本契約2条,4条及び17条)などの制約を受けている。そして,原告は,本件各契約を終了させるためには,本件各買取選択権又は本件返還選択権を行使する必要があり(P1基本契約1条c項,P2基本契約13条),リース期間終了前に当該各契約を終了させるためには,更に違約金を支払う必要があった(P1基本契約17条b項,P2基本契約22条b項)。このような状況に鑑みると,本件各個別契約の終了又は解約に際し,本件各買取選択権又は本件各返還選択権を行使して本件特別損失計上額を含む金銭を支払ったことは,本件各プラチナに係る上記制約を解除することを意味するから,本件特別損失計上額は,これを経済的観点からみると,本件各プラチナの価値を増加させる部分に対応するものと解することができ,法人税法施行令132条の規定する資本的支出に該当し,本件事業年度の損金の額に算入することはできない。
(原告の主張の要旨)

法人税法22条3項によれば,内国法人の各事業年度の所得金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除いて,①当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価その他これらに準ずる原価の額,②上記①に掲げるもののほか,当該事業年度の販売費,一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度の終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額,③当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとされているところ,原告は,本件各個別契約開始時に本件各プラチナを取得したことを前提に,本件各個別契約の終了時又は解約時に原告が一定の損失を被り,その損失を損金算入できないとする別段の定めがないことから,同項3号の規定に基づいて,損金の額としたものである。


損金の費目については,本件特別損失計上額が臨時的に生じた損失であることを考慮し,「一般に公正妥当と認められる会計処理基準」である企業会計原則や損益計算書原則に基づいて,特別損失以外には区別しようがないことから,法人税法22条4項に基づいて本件特別損失計上額を特別損失として計上したものである。

法人税法施行令132条の規定する資本的支出とは,当該支出が固定資産の使用可能期間を延長させたり,その価額を増加させたりするものであり,これに該当するためには,支出と使用可能期間の延長や価額の増加との間に因果関係があることが必要である。本件特別損失計上額は,本件各プラチナの使用可能期間の延長や価額の増加のために支出したものでないし,本件各プラチナに関する制約を解除してもその価値は増加しないから,資本的支出には当たらない。


仮に本件特別損失計上額が資本的支出に該当するとしても,法人税基本通達7-8-3(2)は,一つの計画に基づき同一の固定資産について行う修理,改良等のために要した費用の額については,その修理,改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合は,損金処理をすることができる旨を定めている。本件各契約は,本件プラチナ合金製品に用いる本件各プラチナを調達するという目的の下に,取引の期間を1ないし2年としているから,本件特別損失計上額は,上記法人税基本通達の定めにより,損金算入が認められる。


原告は,いわゆる青色申告事業者であり,更正処分においては理由の付記が要求されるところ(法人税法130条2項),本件更正処分に際して受領した通知書には,本件特別損失計上額が資本的支出に該当する旨の記載はなかったから,資本的支出に該当することを理由に損金の額に算入することができないとすることは,理由付記の不備により違法であり,また,被告の資本的支出に関する主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。

第3

当裁判所の判断
1
争点(1)(本件各プラチナの「取得」の意義及び時期)について(1)

法人による固定資産の「取得」の意義及び時期について
法人税法及び同法施行令が,各事業年度の所得の金額の計算上,当該事業
年度に当該法人が「取得」した固定資産の「取得価額」を当該事業年度の損金の額に算入すべき金額(損失等)と区別しているのは,法人がその事業活動によって獲得する収益を事業年度単位で課税の対象とする(法人税法22条1項)一方で,固定資産の取得価額は,減価償却資産においては減価償却の計算の基礎となってその一部が費用として計上される(法人税法31条1項,同法施行令54条1項,48条1項,48条の2)など,期間損益の計算の基礎となることによるものと考えられる。
そして,上記のような法人税に係る法的規律の枠組み及び関係法令上の「取得価額」の位置付けに照らすと,法人税法及び同法施行令における法人による固定資産の「取得」の意義については,法人がその事業活動を行うに当たって準拠される私法法規及びこれに基づく私法上の法律関係を前提とした上で,租税法規における固定資産の取得の根拠となる経済事象としての実体を備えた行為として,所有権移転の原因となる私法上の法律行為がこれに当たるものと解するのが相当であり,上記「取得」の時期はその原因行為による所有権移転の時期がこれに当たるものと解される。
しかるところ,本件において,原告とP1社及びP2社とは,本件各契約の準拠法としてニューヨーク州法を指定する旨の合意をしており(P1基本契約12条,P2基本契約15条),同州法が本件各契約の準拠法とされている(法適用通則法7条)ので,本件各契約における法人(原告)による固定資産(本件各プラチナ)の「取得」の時期,すなわち私法上の法律行為としての本件各契約による所有権移転の時期については,本件各契約の準拠法である同州法に基づく法律関係の規律を前提とした上で,我が国の租税法規における固定資産の取得の根拠となる経済事象としての実体を備えた行為として,我が国の民法上の所有権移転に相当する実質を備えた私法上の法律行為が行われたと認められる時期がこれに当たるものと解するのが相当である。(2)

本件各契約における本件各プラチナの「取得」の時期について
ニューヨーク州は,米国の商取引に関する統一法典であるUCCを採用しているから,本件各契約に関しては,ニューヨーク州UCCが適用されることになるところ,同州UCCの諸規定の中に本件各プラチナの取引に関連する強行規定の存在は認められないため,契約自由の原則により,本件各契約の効力は,その契約内容により決せられることになる(乙16の1参照。なお,本件各契約の内容がニューヨーク州UCCに違反するものではなく,当事者間の合意内容がそのまま尊重されることは当事者間に争いがないところであり,いずれにしても,本件各契約の効力が同州UCCの規定によって変容を受ける余地はないものということができる。)。

本件各基本契約において,(ア)借主(原告)は,リース資産のプラチナについて,①両基本契約とも,(a)P1社及びP2社に対しリース料を支払い(P1基本契約4条,P2基本契約3条),第三者に対し担保権等の設定をしたり,転貸したり,製造過程用の原告所有の金属との合金化を除いて重要な加工・改良を行うことはできず(P1基本契約5条d項,P2基本契約2条,4条,13条,17条),(b)各リース契約の終了時又は解約時に,借主は本件各買取選択権を行使して貸主から当該各プラチナをpurchaseするか,又は本件各返還選択権を行使して当該各プラチナ若しくはこれらと同種同等同量以上のプラチナを貸主に返還するものとされ(P1基本契約1条c項,P2基本契約13条),②P2基本契約において,財産持分を有さず,貸主からの要求書の送付時又は各リース契約の終了時に,自ら行った合金化については直ちに借主の負担で非合金化し,引渡し時の状態以上の品質及び純度で貸主に返還しなければならず,借主の帳簿上において,常に貸主の資産として認識されるべきものとされ(2条,4条,13条),③P1基本契約において,借主の債務不履行に基づくリース契約の解除による終了時に,貸主の通知により,借主はリース資産のプラチナを返還する必要があるとされており(7条a項(6)(b)),また,(イ)両基本契約とも,①貸主(P1社及びP2社)は,リース資産のプラチナの「title」を留保するものとされ(P1基本契約5条c項,P2基本契約4条),②借主(原告)は,貸主にリース資産のプラチナを返還する際,貸主が当該プラチナに対する正当で譲渡可能な「title」を有し,かつ,この「title」には担保権等が設定されておらず,当該プラチナの利用又は譲渡を制限する合意も付されていないことを保証するものとされている(P1基本契約5条d項,P2基本契約13条)。
以上の本件各基本契約の内容を前提とした上で,本件各プラチナにつき我が国の民法上所有権移転に相当する実質を備えた私法上の法律行為が行われたと認められる時期について検討すると,上記(ア)のとおり,原告は,各リース契約の終了時又は解約時に本件各買取選択権又は本件各返還選択権を行使するまでの間は,リース資産である本件各プラチナについて,①両基本契約とも,貸主に対しリース料を支払い,第三者に対し担保権等の設定をしたり転貸したりすることができず,製造過程用の合金化以外は重要な加工・改良を行うこともできず,②P2基本契約において,財産持分を有さず,貸主からの要求書の送付時又は各リース契約の終了時に,原告が行った合金化について直ちに原告の負担により非合金化して引渡し時の状態以上の品質及び純度で貸主に返還しなければならず,原告の帳簿上も常に貸主の資産として認識されるべきものとされ,③P1基本契約においても,原告の債務不履行に基づくリース契約の解除による終了の場合に,貸主の通知により貸主に返還する必要があるとされており,いずれの基本契約においても,使用収益の方法を大きく制限されて処分を禁止されるとともに,リース契約の終了時若しくは解約時に本件各返還選択権を行使した場合又は原告の債務不履行に基づく解除によりリース契約が終了した場合に,本件各プラチナそのものを貸主に返還することも予定されているのであるから,原告は,本件各買取選択権又は本件各返還選択権を行使して初めて,本件各プラチナを自由に使用,収益及び処分をする権利を取得するものとみるのが相当であり,本件各個別契約の終了時又は解約時に本件各買取選択権を行使した時に初めて本件各プラチナにつき我が国の民法上の所有権移転に相当する実質を備えた私法上の法律行為が行われ,その時に原告が本件各プラチナを「取得」したものと解するのが相当である(したがって,原告の主張に係る本件各個別契約開始時においては,いまだ原告が本件各プラチナを「所得」するには至っていないものというべきである。)。
そして,上記(イ)の「title」は,英米法上の法律用語として,一般に,「権原」の訳語を付され,その意味内容を法令又は契約の全体の内容や当該条項の文脈等に即して解釈される語であるといえるところ,以上のような本件各契約における借主と貸主との間の本件各プラチナに係る権利義務関係の内容(上記(ア)①ないし③)に加え,本件各基本契約において,(a)貸主は「title」を「留保」するとの表現が採られており(上記(イ)①),かつ,(b)借主である原告は,貸主にリース資産のプラチナを返還する際,貸主が当該プラチナに対する正当で譲渡可能な「title」を有し,かつ,この「title」には担保権等が設定されておらず,当該プラチナの利用又は譲渡を制限する合意も付されていないことを保証するものとされていること(上記(イ)②)にも徴すると,上記(ア)において貸主がリース資産のプラチナについて「title」を留保することの意味は,リース契約において貸主が我が国の民法上の所有権を留保することと同義と解されるというべきであり,上記(ア)の「title」の意義(本件各基本契約における「権原」の意味内容)は,我が国の民法上の「所有権」に相当するものと解するのが相当である。

また,原告は,本件事業年度の会計帳簿において,本件各プラチナに係る本件各買取選択権の行使時にP1社及びP2社に支払った合計121億0832万0554円の金額を,本件各プラチナの取得価額として原告の資産に計上しているところ(乙25),仮に原告が所論のように本件各個別契約開始時に本件各プラチナの所有権を取得したと認識していたのであれば,前提事実(4)のとおり,本件各個別契約の締結及び本件各プラチナの引渡しはいずれも本件事業年度の前年の事業年度(平成18年1月1日から同年12月31日まで)に行われているのであるから,本件各プラチナの取得価額を上記前年の事業年度の会計帳簿に計上するはずであるが,それにもかかわらず,原告が上記のとおり本件各プラチナの取得価額を自ら本事業年度の会計帳簿に計上している事実は,原告自身も,本件各プラチナの所有権取得時期を,本件各個別契約開始時ではなく,本件各買取選択権の行使時であると認識していたことをうかがわせるものといえる。この点につき,原告は,上記121億0832万0554円の金額を,当初は本件事業年度の資産の勘定科目に計上したものの,そのうち19億8005万5982円について損金の額に計上する会計処理を行ったのは,その当時,会計処理基準を米国のものから日本のものに変更したことに起因する旨主張する。しかしながら,仮に原告が所論のように本件各個別契約開始時に本件各プラチナの所有権を取得したと認識していたのであれば,米国又は日本のいずれの会計基準に依拠したとしても,本件各契約開始時の事業年度の会計帳簿に本件各プラチナの取得価額を計上すべきであることに変わりはないものといえる(国際会計基準(IAS16)によれば,有形固定資産の認識の時期は,経済的便益とその関連リスクが企業に確実に移転し,取得原価を信頼性をもって測定できる時点とされていることは当裁判所に顕著であり,取得原価主義を前提とする以上,有形固定資産の認識の時期は,米国又は日本のいずれの会計基準によっても,その取得時とされるべきことに変わりはないものと解される。)から,原告の上記主張は採用することができない。
(3)

原告の主張について
これに対し,原告は,ニューヨーク州UCCには,「title」を「所有権」と訳すと意味が通じない規定が存在するから,本件各契約における「title」を「所有権」ではなく「担保権」と訳すべきである旨主張する。しかしながら,本件各基本契約に関する上記(2)イの解釈は,「title」を中立的な訳語である「権原」と訳した上で,本件各契約の全体の内容や当該条項の文脈等に即した解釈を前提とするものであり,「title」の訳語自体を機械的に「所有権」と訳すことを前提とするものではない。また,ニューヨーク州UCC1-201条(37)a項において,担保権の設定契約が成立するのは,(ア)対象物件の占有使用権の対価としてのリース料の支払が,リース期間中を通じての義務であり,借主によってこれを解約できないようになっており,かつ,(イ)①当初の約定リース期間がリース物件の残存耐用年数(取引開始時におけるもの。以下同じ。)と同一であるか又はそれより長いこと,②借主がリース物件の残存耐用年数に当たる期間だけ契約を延長するか,又は当該物件の所有者となるかの義務を負うこと,③借主が追加の支払をせず,又は名目的な追加の支払のみにより,リース物件の残存耐用年数に当たる期間だけ契約を延長するか,又はリース物件の所有者となるオプションを有することのいずれかに該当する場合とされている(乙21)。本件各契約がこれらの要件を満たすか否かについて検討するに,上記(イ)①については,本件各プラチナは,非減価償却資産であり,時の経過によって価値が減少するものではないから残存耐用年数を観念することができず,当初の約定リース期間がリース物件の残存耐用年数と同一又はそれより長いということはできないので,この要件を満たさず,また,上記(イ)②及び③については,本件各基本契約にこれらの要件を満たす規定は存在しない(甲5の1・2,同6の1・2,乙6,7)から,これらの要件も満たさない。したがって,本件各契約は,ニューヨーク州法において担保権を設定する契約に当たるものとはいえないから,本件各契約において貸主が留保する「title」を「担保権」と訳すのは相当ではない。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。

また,原告は,P1基本契約1条c項及びP2基本契約13条は,貸主に対し,本件各プラチナと同種同等同量の物を返還するか,その返還に代えて,リース期間の終了時における同量のリース資産の市場価格での償還を選択できる権利を付与したものであり,本件各プラチナの返還や購入を選択できるものではないから,本件各契約は,貸借物と同種同等同量の物を返還する契約であり,民法587条の消費貸借契約に該当する旨主張する。
本件各個別契約の終了又は解約に伴うリース資産の返還に係る規律についてみるに,P1基本契約1条c項は,リース資産と同量かつ同質のものを返還すべきものとし,P2基本契約13条は,リース資産の全部又はそれに相当する同等かつ同量以上の品質を有する金属を返還すべきものとしており,必ずしも常にリース資産そのものの返還を義務付けているものではないが,P1基本契約7条a項(6)(b)は,借主の債務不履行に基づくリース契約の解除による終了時の返還についてリース資産自体を返還義務の対象としており,P2基本契約13条は,上記のとおり,リース契約の終了時又は解約時の返還一般についてリース資産自体の全部を原則的な返還義務の対象として定めている。また,ニューヨーク州UCC1-201条は,「購入(purchase)とは,売買,割引,交渉,譲渡担保,質,リーエン(lien),担保権,発行又は再発行,贈与又は財産権を創設する他の任意の取引を含む。」と規定しているところ(甲22),P1基本契約1条c項は「リース資産をリース期間の終了時の市場価格でpurchaseする」と,P2基本契約13条は「リース終了日において,リース資産をpurchaseする」としており,本件各基本契約の上記各条項における「purchase」は,貸主であるP1社又はP2社に留保されている本件各プラチナの「title」(権原)を(P1基本契約5条c項,P2基本契約4条),代価を支払って取得するものであるといえるから,ニューヨーク州UCCの上記規定における「購入」を意味するものと解するのが相当である。以上を総合すれば,原告は,本件各買取選択権又は本件各返還選択権を行使するまでの間,本件各プラチナを購入するか又は返還するかの選択権を有しており,本件各個別契約開始時において,本件各プラチナについて必ずしも常に返還を要するものとはされていない上,本件各個別契約の終了時又は解約時において,購入ではなく返還が選択された場合でも,常に同種同等同量の物を返還すべきものとはされておらず,本件各プラチナそれ自体も一定の範囲で返還義務の対象とされていること等に照らせば,本件各契約が貸借物と同種同等同量の物を返還することを約する民法587条の消費貸借契約に該当するということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。
この点につき,原告は,(a)P1基本契約5条c項やP2基本契約4条,17条を挙げた上で,これらの条項の解釈について,個別契約開始時にリースの対象となるプラチナの所有権を取得することとなるが,その権原において担保権の留保があり,債権的な制約を負っている旨主張し,これに関連して,(b)上記「purchase」の語につき,本件各基本契約においては,原告が個別契約開始時に所有権を取得するリース資産のプラチナの担保権の留保や債権的な制約を取り払うことを意味し,「償還」と訳すべきであり,「購入」を意味するものではない旨主張する。しかしながら,本件各契約においては,本件各基本契約上,貸主(P1社及びP2社)は,リース資産である本件各プラチナの「title」(権原)を留保するものとされているところ(P1基本契約5条c項,P2基本契約4条),上記(2)イのとおり,この「title」(権原)は,本件各契約における貸主と借主との間の本件各プラチナに係る権利関係の内容など本件各契約の内容等に照らせば,我が国の民法上の所有権に相当する権原を意味するものであるといえるから,借主である原告が本件各プラチナの所有権者であるということはできず,原告の上記(a)の指摘に係る本件各基本契約の条項は,リース資産の処分を禁止するP2基本契約17条の定めを含めて,我が国の民法上の所有権の留保に相当する物権的な制約を定めたものであって,所論のように借主が所有権を有する本件各プラチナにつき担保権の設定等を制限する債権的な制約を定めたものとはいえないというべきであり,上記「purchase」の語も,ニューヨーク州UCC1-201条(甲22)と同様に「購入」を意味するものであって,単なる「償還」と訳すのは相当ではないというべきであるから,原告の上記(a)及び(b)の各主張はいずれも採用することができない。

さらに,原告は,P1社面談記録(甲10の1)及びP2社書簡(甲11の1・2)を根拠に,P1社及びP2社は,プラチナ等のリースビジネスにおける一般的な商慣行に従い,リース契約終了時において,リース資産と全く同一のものが返還されることは想定しておらず,飽くまでもリース資産と同種同等同量の物が返還され又はその時におけるその物の時価が償還されることを想定していたから,原告は,本件各プラチナの引渡しを受けた時点でその所有権を取得した旨主張する。
しかしながら,ニューヨーク州UCCは,英米法上の契約の解釈原則の一つである明白な意味の原則(Plain-MeaningRule)において「契約書の文言は,その文字どおりに解釈され,別の約束が口頭でされていたなどの抗弁は許されない」とされていることを踏まえ,1-201条(3)及び2-202条(2)において,契約の解釈原則について,明示の契約文言,履行状況,取引状況及び商慣習は,合理的である限り相互に矛盾しないように解釈すべきであるが,合理的に矛盾を解消できない場合には,①明示の契約文言,②履行状況,③取引状況,④商慣習の順で優先適用されるものと規定し,また,2-202条において,当事者が合意内容の表示として完全かつ唯一のものと意図して作成した書面がある場合には,その書面に記載された条件を,その書面作成以前の合意やその書面作成と同時にされた口頭の合意に関する証拠により覆すことはできないと規定している(乙16の1,同18)。これらの契約の解釈原則に関するニューヨーク州法の規律によれば,本件各契約の具体的な内容は,飽くまでも本件各基本契約書の文言に即してその意味内容を解釈されるべきものであり,本件各処分後に作成されたP1社面談記録(甲10の1)及び本件各処分の直前に作成されたP2社書簡(甲11の1・2)を根拠として,本件各契約の具体的な内容を本件各基本契約書の文言と相反する意味内容に解釈することはできないものというべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

また,原告は,本件各プラチナは,不特定物であり,他の材料と混ぜ合わされ,少なくともその一部は製造過程において消費されるため,本件各プラチナを貸主に返還することは不可能であるから,原告は本件各プラチナの引渡しを受けた時点でその所有権を取得した旨主張し,ニューヨーク州弁護士の意見書(甲15の1・2)にはこれに沿う記載が存する。しかしながら,法人税基本通達7-1-2は,ガラス繊維製造用の白金製溶解炉や光学ガラス製造用の白金製るつぼにつき,一定期間使用後は素材に還元の上鋳直して再使用することを常態とするものが存在することを前提としており,現に,本件においても,前記前提事実(5)のとおり,①P7社は,同社が保有するプラチナのうちP3本社の取引口座に振り替えられたプラチナと同様のプラチナをロジウム等と合金化した上でP3本社に引き渡し,②P3本社は,P7社から引き渡されたプラチナ合金を用いて本件プラチナ合金製部品を製作して原告に引き渡し,③原告は,P3本社から引渡しを受けた本件プラチナ合金製部品を超薄型ガラス製品製造設備に組み込んで稼働させた後,約18か月ごとに,この超薄型ガラス製品製造設備を分解し,本件プラチナ合金製部品を取り外して補修交換のためにP3本社に送付していたものであり,これらの過程を経て本件プラチナ合金製部品はプラチナやロジウム等に精錬されていたのであるから,本件各プラチナを貸主に返還することが不可能であるとはいえず,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。

原告は,旧法例10条(これと同内容の法適用通則法13条を指す趣旨と解される。)は,動産及び不動産に関する物権その他登記すべき権利の得喪はその原因たる事実の完成した当時における目的物の所在地法による旨を規定しているところ,原告の超薄型ガラス製品製造設備への本件各プラチナの付合は,日本所在の工場において完成したので,原告が本件各プラチナの所有権を取得したか否かは上記各付合時における本件各プラチナの所在地法である日本の法律によることになり,本件各プラチナは,民法243条により,主たる動産たる超薄型ガラス製品製造設備に付合するから,その所有者である原告が本件各プラチナの所有権を取得した旨主張する。
しかしながら,動産の付合に関する民法243条の規定は,付合に伴う各動産や合成物の所有権の帰属について契約に定めがない場合に補充的に適用される任意規定であるところ,前記(2)のとおり,本件各契約は,本件各プラチナの所有権の帰属について明示的に定めを設けているから,本件各プラチナの所有権の帰属(原告による所有権の取得の原因及び時期等)については,専ら本件各契約の定めによって規律され(前記(2)アのとおり,法適用通則法7条に基づいて当事者の指定により本件各契約の準拠法として指定されたニューヨーク州法(同州UCC)にも,本件各プラチナの取引に関連する強行規定の存在は認められず,本件各プラチナの所有権の帰属を含む本件各契約の効力は,専らその契約内容により決せられることとなる。),民法243条は適用されないものというべきであり,原告の上記主張は採用することができない。

以上のほか,原告は,本件各プラチナの「取得」の時期についてその他種々主張するが,それらの主張のいずれをみても,原告が本件各買取選択権を行使した時に我が国の民法上の所有権移転に相当する実質を備えた私法上の法律行為が行われたものと認められ,その時に原告が本件各プラチナを「取得」したものと解される旨の前記(2)の判断を左右するに足りるものとは認められない。

2
争点(2)(本件特別損失計上額は本件各プラチナの取得価額又は特別損失のいずれに当たるか)について
(1)

前記1(1)のとおり,本件各プラチナの「取得」の時期は,我が国の民法
上の所有権移転に相当する実質を備えた私法上の法律関係が行われたと認められる時期であるところ,前記1(2)のとおり,本件各プラチナについて我が国の民法上の所有権移転に相当する実質を備えた私法上の法律行為が行われたものと認められ,原告が本件各プラチナを「取得」した時期は,原告が本件各買取選択権を行使した時(平成19年5月ないし8月)であり,本件事業年度(平成19年1月ないし12月)に属するものである。
(2)

そして,本件特別損失計上額19億0832万0554円は,原告が本
件各買取選択権を行使した際に支払った121億0832万0554円の一部であるところ,本件各買取選択権の行使の際に支払った金員は,正に本件各プラチナを「取得」するためにした支出であるから,本件各プラチナの「購入の代価」に当たるものである。したがって,本件各プラチナは,原告が「購入」によって取得した減価償却資産以外の固定資産であるので,本件各プラチナの「取得価額」は,法人税法施行令54条1項1号の例により(法人税基本通達7-3-16の2),①その「購入の代価」と②これを事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額となり,原告が本件各買取選択権を行使して支払った金員(購入の代価)の一部である本件特別損失計上額は,本件事業年度における本件各プラチナの「取得価額」の一部(上記①の一部)に当たるものであるから,その余の点について判断するまでもなく,特別損失には当たらないものというべきである。
3
本件各処分の適法性について
(1)

以上を前提として,本件更正処分についてみると,原告の本件事業年度
の法人税に関し,被告が本訴において主張する別紙2記載1の課税の根拠及び計算はいずれも相当であり,かつ,その根拠及び計算に基づいて算定した所得金額及び納付すべき税額は,同別紙記載2のとおりであると認められ,別表4記載の本件更正処分における所得金額及び納付すべき税額と一致するから,本件更正処分は適法というべきである。
(2)

そして,別紙2記載1及び2の課税の根拠及び計算に照らせば,本件更
正処分により原告が新たに納付すべき法人税額については,その計算の基礎となった事実のうちに本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する「正当な理由」があると認められるものはないというべきであるから,原告の過少申告加算税に関し,被告が本訴において主張する別紙2記載3の課税の根拠及び計算はいずれも相当であり,かつ,その根拠及び計算に基づいて算定した過少申告加算税の税額は,同別紙記載4のとおりであると認められ,別表4記載の過少申告加算税の税額と一致するから,本件賦課決定処分も適法というべきである。第4

結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

岩井
裁判官

桃崎剛
裁判官

武見
敬太郎
伸晃
(別紙2)
課税の根拠及び計算
1
本件更正処分の根拠
被告が本訴において主張する原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額は,次のとおりである。
(1)

課税所得金額(別表5③欄)

255億6021万6889円

上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算した金額である。

確定申告における所得金額(別表5①欄)
235億8016万0961円
上記金額は,原告が麻布税務署長に対して平成20年3月31日に提出した本件事業年度の法人税確定申告書(乙3。以下「本件事業年度確定申告書」という。)に記載された所得金額と同額である。


リース解約違約金のうち損金の額に算入されない金額(別表5②欄)19億8005万5928円
上記金額は,原告が本件各個別契約の終了時又は解約時において支払った121億0832万0554円と本件各個別契約開始時の本件各プラチナの時価相当額97億9831万5322円との差額から,両時点間の為替差益等の金額3億2994万9304円を差し引いた金額を,特別損失のリース解約違約金勘定に計上し(本件特別損失計上額),本件事業年度の損金の額に算入した額であるが,本件特別損失計上額については,本件各プラチナの取得価額を構成するものとして,損金の額に算入しないものとする。
(2)

課税所得金額に対する法人税額(別表5④欄)
76億6806万4800円
上記金額は,前記(1)の所得金額(ただし,国税通則法118条1項の規定
に基づき1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)に法人税法66条1項及び2項に規定する税率を乗じて計算した金額である。
(3)

法人税額から控除する所得税の額等(別表5⑤欄)
7714円

上記金額は,法人税法68条に規定する法人税額から控除する所得税の額であり,本件事業年度確定申告書に記載された金額と同額である。
(4)

納付すべき法人税額(別表5⑥欄)

76億6805万7000円

上記金額は,前記(2)の金額から前記(3)の金額を控除した金額(ただし,国税通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
(5)

既に納付の確定した法人税額(別表5⑦欄)70億7404万0200円上記金額は,本件事業年度確定申告書に記載された差引所得に対する法人税
額と同額である。
(6)

差引納付すべき法人税額(別表5⑧欄)

5億9401万6800円

上記金額は,前記(4)の金額から前記(5)の金額を差し引いた金額であり,更正により原告が新たに納付すべき法人税額である。
2
本件更正処分の計算
被告が本訴において主張する原告の本件事業年度の法人税に係る所得金額及び納付すべき法人税額は,前記1(1)及び(4)のとおり,それぞれ255億6021万6889円及び76億6805万7000円であるところ,これらの各金額は,それぞれ,本件更正処分における原告の本件事業年度の法人税に係る所得金額及び納付すべき法人税額(本件更正等通知書(甲1)の「更正又は決定の金額」欄の「1」欄及び「18」欄)とそれぞれ同額である。

3
本件賦課決定処分の根拠
本件更正処分に伴って原告に賦課されるべき過少申告加算税の額は,国税通則法65条1項の規定に基づき,本件更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった法人税額5億9401万円(ただし,同法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の10の割合を乗じて算出した金額5940万1000円である。
4
本件賦課決定処分の計算
被告が本訴において主張する原告に賦課されるべき過少申告加算税の額は,前記3のとおり5940万1000円であるところ,当該金額は,本件賦課決定処分における過少申告加算税の額(本件更正等通知書(甲1))と同額である。以上
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