判例検索β > 平成25年(行ウ)第794号
休業補償給付不支給処分取消請求事件
事件番号平成25(行ウ)794
事件名休業補償給付不支給処分取消請求事件
裁判年月日平成28年7月14日
法廷名東京地方裁判所
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平成28年7月14日判決言渡
平成25年(行ウ)第794号

休業補償給付不支給処分取消請求事件
主1文
池袋労働基準監督署長が,原告に対し,平成25年3月11日付けでした労働者災害補償保険法による休業補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。
2
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1請求
主文同旨
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,株式会社P1(以下「本件会社」という。
)において警備員として警
備業務に従事していた原告が,平成24年2月24日(以下「本件発症日」という。,夜間勤務前の自宅で,脳内出血(左被殻出血)

(以下「本件疾病」とい
う。を発症したことにつき,

本件疾病は業務による過重負荷を受けたことによ
り発症したものであるとして,池袋労働基準監督署長(以下「労基署長」という。
)に対し,労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。
)に基づく休業補償給付の請求をしたところ,労基署長はこれを
支給しない旨の処分をしたことから,その取消しを求める事案である。2前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲各証拠及び弁論の全趣旨から認定することができる事実)
(1)

原告の経歴
原告は,昭和36年10月2日生まれ(本件疾病発症当時50歳)の男性である。
(争いがない)


原告は,平成10年4月,P2株式会社に入社して警備業務に従事した後,平成13年7月,本件会社に入社し,財務省α合同庁舎,東京都江戸東京博物館,東京芸術大学,β所在の宝飾店,有明水再生センター,国際子ども図書館及びP3において警備業務に従事してきた。
(乙5・968頁
から971頁まで)

原告は,平成21年4月から本件発症日まで,本件会社が警備業務を行う契約を締結したP3において,その警備業務に従事していた。
(乙5・9
62頁,969頁,証人P4・2頁)


原告は,自宅からP3まで電車で通勤しており,通勤時間は片道約40分であった。
(乙5・173頁,202頁及び241頁,証人P5・2頁)

(2)

本件疾病の発症
原告は,本件発症日である平成24年2月24日午後4時40分ころ,自宅において夜間勤務に出かける前に食事をとり,お茶を飲んでいたところ,本件疾病を発症した。原告の内縁の妻であるP5が原告の異変に気付き,原告は救急車でP6病院に搬送された。原告の血圧は,現場では230/130mmHg,搬送後の初診時では270/173mmHgであった。また,重度の意識障害と徐脳硬直が認められ,頭部のCT検査で脳内出血(左被殻出血)
と診断された
(本件疾病)本件疾病の発症日は同日である。

(乙5・66頁及び67頁,120頁,128頁及び206頁,乙10・4頁及び5頁)


原告は,本件発症日から同年3月6日まではP6病院に,同日から同年7月23日までP7病院に,
それぞれ入院した。
本件口頭弁論終結時現在,
原告は,右半身の完全麻痺,言語障害等の後遺症により,自宅療養及び通所リハビリによる歩行訓練等を行っている。
(甲5,乙10,乙11,証人
P5,弁論の全趣旨)

(3)

本件訴訟に至る経緯
原告は,本件疾病は業務による過重負荷を受けたことにより発症したものであるとして,労基署長に対し,平成24年8月6日,労災保険法に基づく休業補償給付(平成24年2月24日から同年3月6日までの分)を請求した。
(乙5・37頁から40頁まで)

労基署長は,平成25年3月11日,本件疾病は,①発症直前から前日までの間において,発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと,②発症に近接した時期において,特に過重な業務に就労したこと又は③発症前の長期間にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したことにより発症したとは認められないとして,これを支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。
)をした。
(甲
1)


原告は,本件処分を不服として,平成25年4月4日,東京労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をした。
(甲2)


審査請求後,3か月を経過しても決定がなされなかったことから,原告は,平成25年7月11日,労働保険審査会に対し,再審査請求をした。(甲3。平成26年法律第69号(平成28年4月1日施行。以下同じ。)
による改正前の労災保険法38条2項)


再審査請求後,3か月を経過しても裁決がなされなかったことから,原告は,平成25年12月13日,本件処分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
(当裁判所に顕著。
平成26年法律第69号による改正前の労災保
険法40条1号)


労働保険審査会は,平成26年4月28日,原告の再審査請求を棄却する裁決をした。
(甲4)

3関係法令及び行政通達の定め等
(1)

労災保険法
労災保険法による保険給付は,労働者の業務上の負傷,疾病,障害又は死

(以下「業務災害」
という。
)に関する保険給付等とされ(同法7条1項)

そのうち業務災害に関する保険給付として,休業補償給付等がある(同法12条の8第1項)
。そして,休業補償給付は,労働基準法(昭和22年法律第
49号。以下「労基法」という。
)75条及び76条に規定する災害補償の事
由が生じた場合に,補償を受けるべき労働者等に対し,その請求に基づいて行うとされている(労災保険法12条の8第2項)

(2)

労基法
労基法の定める災害補償の事由は,療養補償については,労働者が業務上
負傷し,又は疾病にかかった場合であり(同法75条1項)
,休業補償につい
ては,労働者が同条の規定による療養のため,労働することができないために賃金を受けない場合である
(同法76条1項)同法75条1項に規定する

業務上の疾病及び療養の範囲は厚生労働省令で定めることとされている(同条2項)
。これを受けて労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「労基法施行規則」という。
)35条は,労基法75条2項の規定による
業務上の疾病は,別表第一の二に掲げる疾病とするとし,平成22年厚生労働省令第69号
(同年5月7日施行)
による改正後の別表第一の二第8号は,
「長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血,くも膜下出血,脳梗塞,高血圧性脳症,心筋梗塞,狭心症,心停止
(心臓性突然死を含む。若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付)
随する疾病」を挙げている。
(3)

行政通達等
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。)の業務上
外の判断基準について,厚生労働省は,臨床,病理学,公衆衛生学,法律学の専門家で構成される
「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」
(以下
「専
門検討会」という。)を設置し,専門検討会は,平成13年11月16日,検討の成果を「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」(乙1。以下「専門検討会報告書」という。)に取りまとめた。厚生労働省労働基準局長は,専門検討会報告書を踏まえ,平成13年12月12日付け基発1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(乙2。以下「認定基準」という。)を策定し,各都道府県労働局長宛てに発出した。認定基準は,脳・心臓疾患の発症が業務上と認定されるための具体的要件を定めたものであるところ,その概要は,別紙1のとおりである。
第3争点及び当事者の主張
本件の争点は,本件疾病が原告の従事していた業務に起因するものであるか否か(業務起因性の有無)であり,争点に関する当事者の主張は,次のとおりである。
【原告の主張】
1業務起因性の判断枠組み
(1)

労災補償制度の趣旨からすれば,業務と発症との因果関係については,業
務上の過労・ストレスによる心身の負荷が被災者の発病の原因の一つとなっていれば足りる(共働原因説)と解するべきである。
判例(最高裁平成7年(行ツ)第156号同12年7月17日第一小法廷判決・集民198号461頁(以下「平成12年判決」という。)及び最高裁平成14年(行ヒ)第96号同18年3月3日第二小法廷判決・集民219号657頁(以下「平成18年判決」という。))において,基礎疾患が確たる発生因子がなくてもその自然の経過により(心筋梗塞等を)発生させる寸前にまでは増悪していなかったこと,業務による負荷が基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させる要因となり得たこと,他に確たる発症因子のあったことがうかがわれないことの3要件を検討して業務起因性を肯定しており,被告が主張する相対的有力原因説は排斥されている。
(2)

業務起因性の判断においては,当該労働者を基準として判断すべきである。
平成12年判決は,
平均的労働者を基準とした通常の業務負荷との比較を行っ
ておらず,
実質的に平均人基準説を排斥し,
当該労働者を基準に判断している。
(3)

認定基準は,厚生労働省が作成した一つの考え方に過ぎず,業務起因性の
判断において,裁判所が拘束されるものではない。裁判所は,被災者の労働実態をよく調べ,被災者が置かれた個別具体的状況を前提にして,業務起因性を判断すべきである。
2原告の業務内容
(1)

原告の業務の量的過重性
原告の業務量の増加
P3の警備員数は慢性的に不足していたところ,平成24年1月に,警備員の一人が突然退職することになった。本件会社は,人員補充を行わなかったため,副隊長である原告はシフトを埋めるため,人員不足による負担を強く受けた。


原告の労働時間
原告が主張する労働時間の推計の考え方は,次の(ア)から(エ)までのとおりである。
(ア)

始業時刻・終業時刻
原則として,シフト表(乙5・244頁以下)による。シフト表と警備
報告書(乙5・456頁以下)が不一致の平成23年9月19日は,警備報告書に基づいて算定する。
(イ)

講習・研修等
警備報告書(乙5・456頁以下)に基づいて算定する。

(ウ)

休憩時間
第1の主張
原告は,休憩・仮眠時間中に緊急事態が発生すれば,直接又は内線で連絡が取れるよう管理棟の受付の後ろや管理棟地下一階の待機室で食事や仮眠を取るように決められており,実際に緊急要請に対応したことがあった。シフト上で休憩・仮眠時間とされていた時間について,同僚は「完全な休憩ではない」との見解を述べており,P3の警備員は実態として,休憩・仮眠時間においても,非常時には出動要請を義務づけられていた。このような実態に照らせば,シフト上の休憩時間及び仮眠時間は,いずれも実質的には労働からの解放が保障されたとはいえない。したがって,P3における警備員の拘束時間の全てが労働時間に該当する。

第2の主張
シフト上で5時間とされている仮眠時間は,その実態に照らして4時間の仮眠時間と算定して労働時間から控除する。ただし,原告が実際に出動して対応していた平成23年9月15日は3時間のみを労働時間から控除する。休憩時間は,その実態に照らし,労働時間から控除しない。

(エ)

資格試験の受験勉強に要した時間
原告が本件会社の業務命令に従って受験した資格試験に関する勉強時
間は,受験のために必要な時間であり,使用者の指揮命令によるものであるから,労働時間として評価するべきである。原告は平成23年10月20日以降同年11月1日まで,少なくとも毎日3時間程度は,受験勉強をしていた。
これを含めると時間外労働時間は,
発症前4か月目が18時間,
発症前5か月目が21時間,各増加することになる。また,合格証明書交付手続に要した時間として,平成24年1月13日は,3時間の時間外労働時間があったものと評価するべきである。
【第1の主張に基づく時間外労働時間】
原告の発症前約10か月間
(平成23年4月30日から平成24年2月23日まで)
の平均時間外労働時間数は,少なくとも月平均199時間18分から212時間30分に及んでいる。
時間外労働時間数

発症前2か月間ないし10か月間

における1か月当たりの平均時

発症前1か月目208時間00分間外労働時間数
発症前2か月目217時間00分2か月平均212時間30分
発症前3か月目203時間00分3か月平均209時間20分
発症前4か月目169時間15分4か月平均199時間18分
発症前5か月目209時間58分5か月平均201時間26分
発症前6か月目203時間45分6か月平均201時間49分
発症前7か月目207時間00分7か月平均202時間34分
発症前8か月目198時間00分8か月平均201時間59分
発症前9か月目230時間00分9か月平均205時間06分
発症前10か月目187時間00分10か月平均203時間17分【第2の主張に基づく時間外労働時間】
原告の発症前10か月間の平均時間外労働時間数は,少なくとも152時間35分から164時間30分に及んでいる。
時間外労働時間数

発症前2か月間ないし10か月間
における1か月当たりの平均時

発症前1か月目160時間00分間外労働時間数
発症前2か月目169時間00分2か月平均164時間30分
発症前3か月目151時間00分3か月平均160時間00分
発症前4か月目133時間15分4か月平均153時間18分
発症前5か月目157時間58分5か月平均154時間14分
発症前6か月目152時間45分6か月平均153時間59分
発症前7か月目163時間00分7か月平均155時間16分
発症前8か月目138時間00分8か月平均153時間07分
発症前9か月目170時間00分9か月平均154時間59分
発症前10か月目131時間00分10か月平均152時間35分(2)

原告の業務の質的過重性
拘束時間の長い勤務
P3の警備業務は,月の拘束時間が300時間から400時間を超えており,夜間の時間帯に係る長時間のものが多く,最長で連続39時間勤務があったことからすれば,原告の肉体的・精神的負担は大きかった。また,原告は,夜勤後の日勤の後にさらに夜勤をこなすことがあり,このような拘束時間が30時間を優に超える勤務形態が発症前6か月間で4回から7回あった。
さらに,
原告が,
1日完全に休みであった日は,
発症前6か月で月に2,
3日しか存在しない。このように,原告には,多大な肉体的・精神的負荷がかかっていた。


交替制勤務・深夜勤務・不規則な勤務
原告は,発症前1か月目,勤務に25回入り,そのうち18回が深夜勤務を含むものであった。
深夜勤務が多く,
不規則な交替制勤務であったため,
原告の睡眠や生活リズムは乱れ,原告は,十分な睡眠時間や質の高い睡眠を確保することができなかった。研究報告等に照らせば,交替制勤務により夜勤に従事している期間中は,生体のサーカディアンリズムの乱れが生じ,それが持続することによって,
睡眠障害
(睡眠不足と睡眠の質の低下)
が起き,
慢性的に疲労を蓄積させることになる。
原告のシフトは急に変更されたことが度々あり,たとえ予定されたシフト表通りであったとしても,異なるシフト体系が不規則に繰り返されていたこと自体,業務の過重性の負荷要因として評価するべきである。


精神的緊張を伴う業務
警備業務は,
事故の未然防止,
早期発見と応急措置が中心的なものであり,
原告は日常的に強い精神的緊張を感じながら遂行していた。本件会社は,P3での警備について,
労基法41条3号の監視又は断続的労働の許可を得て
おらず,原告の業務実態をみても,いつ呼び出されるかわからないという精神的緊張を常に抱えていたことからすれば,「労働密度が特に低いと認められるもの」とはいえない。

業務命令による資格取得
原告は,
資格試験に1回で合格しなければならないという精神的プレッシ
ャーを感じており,強い肉体的・精神的負荷を受けていた。


本件会社のサポート不足
本件会社は,
平成24年1月11日に退職した警備員の補充を行わなかっ
たため,原告は,退職した警備員のシフトを埋めるため,急なシフトの変更に対応したほか,シフトを追加して勤務日や勤務時間を増やした。また,本件会社には,仮眠用の布団も支給しないなどのサポート不足があり,原告の肉体的・精神的負荷となっていた。

(3)

原告に存在した脳出血の危険因子の評価
本件発症日の7日前の平成24年2月17日の生命保険会社指定医師によ
る診断結果によると,原告の血圧値は156/108mmHgであった。原告は,喫煙をしておらず,BMI値は17.4であり,肥満にも該当せず,糖尿病や高脂血症にも罹患していない。飲酒は,ウイスキーの水割りを1日に1,2杯飲む程度であり,肝機能検査に異常はない。原告は,過去に脳・心臓疾患の既往歴はなく,若年(50歳以下)発症の脳・心臓疾患の家族歴もない。したがって,原告の脳出血の危険因子は,中等度リスクの高血圧のみである。次に,本件疾病発症直後の原告の血圧値は230/130mmHgであり,発症後の初療時は270/173mmHgという異常高血圧であった。原告の高血圧が自然経過によって230/130mmHgまで上昇することは想定することができないことからすれば,脳出血直後の交感神経機能亢進により血圧が上昇している可能性があることを踏まえても,発症前に原告の高血圧をその自然経過を超えて増悪させた何らかの原因が存在したことを示唆するものと考えられる。
3本件疾病と業務との因果関係
(1)

原告の発症前10か月間の平均時間外労働時間数は,199時間18分か
ら212時間30分に及んでおり(第1の主張),仮に仮眠時間の一部を労働時間から控除したとしても,152時間35分から164時間30分に及んでいる(第2の主張)。これらは,認定基準において業務と発症との関連性が強いと評価することができる月80時間を大きく上回り,原告は,量的に見て過重な業務に従事していた。さらに,原告の拘束時間が少なくとも月300時間から月400時間という極めて長時間であったこと,最長で連続39時間拘束になる連続勤務があったこと,拘束時間中の労働密度は低いとはいえないこと,深夜勤務の回数が発症前10か月で,月16回から20回に上っていたこと,深夜勤務の多い不規則な交替制勤務であり,原告は十分な睡眠を確保できず,睡眠時間の質も不良だったことにより,疲労が蓄積したこと,日常も休憩・仮眠時間中も警備業務という常に精神的緊張に晒されていたこと,業務命令に基づく資格取得に伴う試験勉強等が肉体的・精神的負担となったこと,慢性的な人員不足や仮眠環境に会社のサポート不足があったことなど,
業務の質的な過
重性も認められる。
(2)

このように,原告は過重な業務に就労したものであるところ,原告の高血
圧症は自然経過により脳出血を発症する寸前にまで進行していたとは認められず,原告には業務以外の確たる発症要因は認められないから,本件疾病は原告が従事した過重な業務により発症したものである。したがって,原告の本件疾病は労基法施行規則別表第一の二第8号の
「長期間にわたる長時間の業務そ
の他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血」に該当する。本件処分には法令の解釈適用を誤った違法があるから,取り消されるべきである。【被告の主張】
1
業務起因性の判断枠組み
(1)

脳・心臓疾患発症と業務との相当因果関係が認められるためには,①当

該業務による負荷が,当該労働者と同程度の年齢・経験等を有し,通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある者にとって,血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であると認められること(危険性の要件),②当該業務による負荷が,その他の業務外の要因(当該労働者の私的リスクファクター等)に比して相対的に有力な原因となって,
当該脳・心臓疾患を発症させたと認められること
(現
実化の要件)の2つの要件を満たすことが必要であると解すべきである。(2)

認定基準は,
以上の業務起因性の法的判断枠組み及び専門検討会報告書

が最新の医学的知見に基づいて具体化した評価要因を踏まえて,脳・心臓疾患の発症が業務上と認定されるための具体的条件を定めたものであるから,脳・心臓疾患の業務起因性の判断に当たっては,医学的知見に基づく専門検討会報告書に依拠して定められた認定基準により判断することが合理的である。
2業務起因性がないこと
(1)

本件疾病発症までの原告の労働時間
始業時刻及び終業時刻
始業時刻及び終業時刻については,警備報告書(乙5・456頁以下)の「警備開始」及び「警備終了」時刻と日々のシフト表(乙5・244頁以下)に表示されている時刻が一致しているから,警備報告書に基づき認定する。両者が一致しない平成23年9月19日は,警備報告書に記載された時刻とし,警備報告書が存在しない平成24年2月23日は,シフト表に表示された時刻とする。


休憩時間・仮眠時間
休憩時間及び仮眠時間については,原則としてシフト表に表示されたとおりに取得されたものとする。ただし,立哨業務の後に仮眠に入るシフトの場合,立哨終了後に閉門作業があること,業務は日々のシフト表の時刻の10分前交代を原則としていたことなどから,仮眠時間のうち15分間は業務を行ったとして仮眠時間から控除して算定する。

研修等の出席
研修等については,原則として,研修等の受講内容が記載された「教育実施簿」(乙5・939頁以下)に記載されている研修等の開始時刻,終了時刻,休憩時間に基づいて算定する。


まとめ
以上の考え方に従い,本件疾病発症前6か月間における原告の労働時間数等を集計すると,下表のとおりである。
総労働時間数

発症前2か月間ないし6か月間

時間外労働時間数

における1か月当たりの
発症前1か月目233時間17分

65時間47分

発症前2か月目220時間06分

60時間06分

2か月平均

62時間56分

発症前3か月目223時間51分

55時間51分

3か月平均

60時間34分

発症前4か月目195時間42分

35時間42分

4か月平均

54時間21分

発症前5か月目223時間04分

63時間04分

5か月平均

56時間06分

発症前6か月目219時間33分

59時間33分

6か月平均

56時間40分

(2)

平均時間外労働時間数

原告が主張する業務の質的過重性に対する反論


拘束時間について
休憩・仮眠時間中は,敷地内の食堂で食事をしたり,喫煙所へ行くこ
とも可能であり,休憩室で横になり雑誌を読んだりして過ごしていたことからすれば,休憩時間を概ね自由に利用することができたというべきである。また,休憩・仮眠時間中は,待機者とは別に1名以上が警備業務にあたっており,基本的には休憩・仮眠時間中は業務に従事することは求められてなかった。そして,休憩・仮眠時間中に非常時対応のために緊急要請に応じて業務に当たった回数は,発症前6か月間において,全警備員9名で延べ16回,原告に限れば休憩時間中に5回であり,仮眠時間中の呼び出しは0件であった。このような実態に照らせば,休憩・仮眠時間を労働時間として評価することはできないものというべきである。
仮に休憩・仮眠時間を含む拘束時間の全てを労働時間として評価したとしても,休憩・仮眠時間をシフト表どおりに取得することができていたこと,休憩時間はおおむね自由に過ごせていたこと,発症前6か月間に原告の仮眠を中断させる出来事は発生していないことからすれば,労働時間全体における労働密度は相当低いと評価されるべきである。イ
交替制勤務・深夜勤務・不規則な勤務について
原告の警備業務は,毎月単位で作成されるシフト表に基づき業務内容,
休憩,仮眠時刻が示されたスケジュール表が作成され,交替制勤務は個人単位で行われ,緊急時以外はシフト表が変更されることはなかった。また,交替制勤務・深夜勤務は,直接的に脳・心臓疾患の発症の大きな要因になるものではなく,これらの勤務が日常業務として実施されている場合は,日常生活で受ける負荷の範囲内と評価するものとされている(乙4)。したがって,原告の交替制勤務・深夜勤務をもって直ちに睡眠や生活リズムが乱れたと評価することはできない。

警備業務に伴う精神的負荷
P3における警備業務の実態を見ると,防犯センサー作動時の対応が
週に1回程度であり,大きなトラブルなどは発生しておらず,日常的に精神的緊張を伴う業務と評価することはできない。

資格取得の労働時間性
原告は,10年くらい前から資格取得の受験希望を会社に申請してい
たこと,試験に合格しなかったとしても,ペナルティーがあるわけではないことからすれば,資格取得のために勉強したことを会社の業務命令に基づくものと評価することはできず,勉強時間を労働時間と評価するべきではない。

本件会社のサポート不足との主張について
原告は,P3の警備要員は慢性的な人員不足であったと主張するが,
これによりどのような負荷が新たに発生したのか具体的な主張がない。また,布団が本件会社から支給されずに警備員自ら調達していたとしても,布団で仮眠を取っていたことは事実であるから,これを負荷と評価することはできない。
(3)

原告のリスクファクター
原告には,本件疾病発症について以下のリスクファクターが存在していた
ことが認められる。

高血圧
高血圧は,脳出血発症との関係で,特に強いリスクファクターである。平成24年2月17日の健康診断時における原告の血圧値は,「最高血圧156mmHg」,「最低血圧108mmHg」であるところ,「中等症高血圧」ないし「Ⅱ度高血圧」に該当するものであり,1か月以内の指導で正常値に戻らなければ降圧薬治療を要する程度である。


飲酒
原告の飲酒量は,ウイスキーの水割りを1日に1,2杯程度飲むにとど
まらず,少なく見積もって1日3合程度の飲酒量である。リスクファクターと脳出血の発症との関係においては,飲酒は強い関係があるとされている。

まとめ
以上のとおり,原告は,脳出血の強いリスクファクターである「高血圧」を抱えており,原告の高血圧状態は,本件疾病発症時において改善されていなかったことが推認され,さらに,原告には,飲酒のリスクファクターの存在も認められる。
(4)

本件処分の適法性


原告が発症直前から前日までの間に異常な出来事に遭遇していないこと原告は,本件疾病の発症直前から前日までの間に血圧を上昇させるような異常な出来事に遭遇していない。


原告が短期間の過重業務に従事していないこと
本件発症日前1週間の原告の労働状況についてみると,原告はシフト表
に表示されたとおりに仮眠時間や休憩時間を取得していたものであり,その就労実態からみても,原告が短期間の過重業務に就労したと評価することはできない。

原告が長期間の過重業務に従事していないこと
(ア)

本件疾病発症前6か月前までにおける原告の時間外労働
原告の本件疾病発症前6か月間の時間外労働時間等は上記(1)エのと
おりであり,本件疾病発症前1か月間に,認定基準における「発症前1か月間におおむね100時間」
を超える時間外労働があった事実はない。
また,発症前2か月間ないし6か月間の1か月当たりの平均時間外労働時間は,約62時間56分ないし約59時間13分であり,「1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働」には該当しない。
(イ)

拘束時間の長い勤務
原告は,シフト表の大半は15時間勤務,20時間勤務,24時間
勤務のいずれかで,拘束時間が最長で39時間に及ぶこともあったと述べるが,休憩・仮眠時間の適切な取得が認められるのであり,拘束時間全てを労働時間と評価するのは相当ではない。特に原告の仮眠時間については,実作業への従事の必要性が生じることが皆無に等しかったと評価することができるから,本件においては,仮眠時間は労働時間から除外されるべきである。
(ウ)

交代勤務・深夜勤務

原告の深夜勤務の回数は,発症前6か月間の平均で18回/月であり,P4隊長(以下「P4」という。)の平均約21回と比べて原告のみが特に多い勤務ではないこと,勤務シフトの変更はあまりないこと,勤務と次の勤務までの時間は最短で13時間であり極端に短時間とはいえないことからすれば,負荷要因として評価することはできない。
(エ)

精神的な緊張を伴う業務

P3は,税務職員を対象とした研修施設であって,その利用者は限られ,不特定多数の者が利用する施設ではないこと,防災センサー作動時の対応が週に1回,火災感知器作動時の対応が2か月に1回,急病人の対応が3か月に1回という頻度であったこと(乙5・152頁)からすれば,日常的に精神的緊張を伴う業務と評価することはできない。
(オ)

小括

以上のとおり,原告の拘束時間の長い勤務,交代・深夜勤務及び精神的緊張を伴う業務は,原告にある程度の身体的・精神的負荷がかかっていたことは否定することができないとしても,本件疾病発症前の長期間にわたって「著しい疲労の蓄積をもたらす長期間の業務」に就労していたとまではいえない。

結論
原告の本件疾病の発症については,発症直前の異常な出来事の遭遇,短期間の過重業務及び長期間の過重業務の存在のいずれも認めることができないこと,原告には,本件発症から7日前には治療の必要性が検討されるべき高血圧症が認められ,かつ,脳出血と強い関連性のある飲酒という嗜好が存在していたことを考慮すれば,原告の高血圧が自然経過により増悪したことによって本件疾病を発症したものである合理的な疑いが相当程度高いものである。したがって,本件疾病と業務との相当因果関係を肯定するには合理的な疑いが存在するものというべきである。本件疾病を業務上の疾病ということはできないから,本件処分は適法である。
第4

当裁判所の判断

1業務起因性の判断枠組み
(1)

労災保険法における保険給付のうち,
業務災害に関する保険給付は,
労働

者の業務上の疾病等について給付されるものとされ
(同法7条1項1号)業

務起因性があることが要件となるところ,労災保険制度は労基法に基づく使用者の災害補償義務の存在を前提として,使用者の災害補償に代わる保険給付を政府が行う制度であり(最高裁平成25年(受)第2430号同27年6月8日第二小法廷判決・民集69巻4号1047頁),労基法に基づく使用者の災害補償は,業務に内在ないし随伴する各種の危険が現実化して労働者に疾病の発病等の損失をもたらした場合には,
使用者等に過失がなくとも,
その危険を負担して損失の填補の責任を負わせるべきであるとする危険責任の法理に基づくものである。したがって,労災保険法上,業務起因性が認められるためには,業務と疾病等との間に相当因果関係すなわち,当該疾病等が業務に内在する危険の現実化であると認められることが必要であり,①当該業務による負荷が,当該労働者と同程度の年齢・経験等を有し,基礎疾患を有していても通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある者(以下「平均的労働者」という。)にとって,血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であると認められること(危険性の要件),②当該業務による負荷が,その他の業務外の要因(当該労働者の私的リスクファクター等)に比して相対的に有力な原因となって,当該脳・心臓疾患を発症させたと認められること(現実化の要件)の2つの要件を満たすことが必要であると解すべきである。
(2)

この点,原告は,危険性の判断に当たっては,平均的労働者を基準にす
ることは相当でなく,被災労働者本人を基準として負荷を判断すべきであるとし,判例も実質的に平均人基準説を排斥していると主張する。しかしながら,一般に,脳・心臓疾患は,その発症の基礎となる血管病変等が,加齢,食生活,生活環境等の日常生活による諸要因や,遺伝等の個人に内在する要因により長い年月の生活の営みの中で徐々に形成,進行及び増悪するという経過をたどり発症するものである。したがって,脳・心臓疾患が発症した場合,その発症の原因は,その機序が証拠上明白なときは別にして,外形的な事実や基礎疾患の有無及び程度その他の関連事情に照らし,合理的に推認するほかない。しかるところ,具体的事案において,平均的労働者を基準として血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ると評価することができるような業務上の負荷の存在が認められたときは,当該業務と脳・心臓疾患の発症との自然的な因果関係の存在を推認する有力な根拠になるのであり,他の有力な発症原因が疑われない限り,通常は,相当因果関係も肯定することができる場合が多いというべきである。この意味において,平均的労働者を基準に業務上の負荷の程度を判断することは何ら不当ではない。平成12年判決は,被災労働者が長期間にわたる不規則で拘束時間の長い過重な業務に継続して従事していたことや,発症の前日から当日にかけて短時間の睡眠しかとれなかった等の事実関係を前提にくも膜下出血の業務起因性を認めたものであり,平均的労働者を基準としても基礎疾患を自然の経過を超えて増悪させる程度の業務上の負荷の存在が認められるような事案において業務起因性を認めたものであるから,
業務の危険性
(負荷の程度)
について平均的な労働者を基準とすることを否定したものではない。(3)

次に,原告は,判例に照らし,業務が他の原因と比較して相対的に有力な
原因となっている関係が認められる必要はなく,①基礎疾患がその自然経過により発症させる寸前にまでは増悪していなかったこと,②業務による負荷が自然経過を超えて増悪させる要因となり得ること,③他に確たる発症因子のあったことがうかがわれないことの3要件があれば足りる旨主張する。しかしながら,上記のとおり,労災保険制度は,あくまでも業務に内在する危険が現実化したことにより使用者が負担する労基法上の災害補償責任を基礎とする制度であり,一般に,脳・心臓疾患は,業務のほか,日常生活における諸要因や個人に内在する様々な要因が長い年月の中で作用することにより発症するものであるから,他の競合する原因ではなく業務に内在する危険性が現実化したことにより脳・心臓疾患が発症したと評価するためには,業務上の負荷が,業務外の他の要因と比較して,相対的に有力な原因となっていると認められることを要するというべきである。平成18年判決は,被災労働者がバレーボールの試合に出場したことが同人の基礎疾患等をその自然の経過を超えて急激に悪化させる要因となり得るものであることを判示した上で,他に確たる発症因子があったことがうかがわれない以上,バレーボールの試合に出場したことによる身体的負荷と心筋梗塞の発症との相当因果関係が認められる旨判断したものであって,バレーボールの試合に出場したことが発症の有力な原因であることをむしろ前提にした判断をしたものというべきであるから,
相対的有力原因説を排斥したものということはできない。
したがって,原告の上記各主張はいずれも採用することができない。(4)

ところで,脳・心臓疾患については,認定基準(乙2)が存在する。認定
基準は,行政機関の判断の統一を図るための内部指針として策定されたものであり,裁判所の法的判断を拘束するものではないが,上記の判断枠組みと同様の考え方に基づくものと認められ,
厚生労働省が設置した臨床,
病理学,
公衆衛生学,法律学の専門家で構成される専門検討会における検討を経た上で取りまとめられた専門検討会報告書(乙1)を踏まえ,策定当時における最新の医学的知見に基づいて策定されたものであることからすると,その内容には一応の合理性があると考えられる。
(5)

したがって,
以下において脳疾患である本件疾病について業務起因性の有

無を判断するに当たっても,まず,認定基準に基づいて業務起因性の有無を判断することとする。
2認定事実
前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告の業務の状況等について,以下の各事実が認められる。
(1)

P3の概要
P3は,国家公務員として採用された税務職員に対して必要な研修を行う
機関で,
埼玉県和光市に所在する。
P3の利用者は,
関係者に限られており,
不特定多数の者が利用する施設ではない。
(乙8,弁論の全趣旨)
(2)

P3における一般的な警備業務の内容


原告がP3で従事していた警備業務の概要は,次のとおりであり,業務の分担は,P3に派遣された警備員の責任者であるP4が作成していた各日ごとのシフト表に記載されており,勤務に入った警備員らは,そのシフト表に従って警備業務に従事していた。
なお,いずれの業務も,シフト表で定めた時刻の10分前に交代することが原則とされていた。
(乙5・150頁,159頁,209頁,244頁
以下及び962頁以下)


入退講者(車)管理
来校者の受付及び案内,教職員及び研修生の入退講管理,体育施設利用者(教職員及び研修生を除く。
)の受付等



施設内立ち入り確認
施錠時間内に業務委託者が施設内へ立ち入る際の身分確認等



立哨
正面玄関における立哨(1名,平日のみ)


巡回警備
庁舎内外の施設の巡回



門扉及び各棟外部出入口の施錠及び開錠



鍵の貸出・保守管理
委託された鍵の保守管理及び必要に応じた貸出業務



施設内の照明の点灯及び消灯
誘導灯,外部照明,管理棟の照明の点灯及び消灯



火災・盗難及び各種事故の未然防止と早期発見
警備員は,火災警報装置,防災監視盤及び防犯設備を操作,監視し,各種事故の未然防止及び早期発見に努め,異常を認めたときは,直ちに原因を確認し応急措置を講ずるとともに関係機関及び緊急連絡先に報告する。



時間外電話等の対応
時間外電話の授受及び記録・報告,時間外郵便物の授受

⑩イ
研修生用自転車の貸出し
P3の警備は24時間体制であり,警備員は,原則として,日勤は2名
体制,平日(開庁日)の夜勤は4名体制,土日祝日(閉庁日)の夜勤は3名体制という交替制勤務であった。毎月単位で勤務シフト表が作成され,そのシフト表に基づき日々の単位で時刻ごとに業務内容,休憩,仮眠時刻が表示されたスケジュール表が作成されていた。
シフトは,▽10時から19時までの日勤(拘束時間9時間)
,△19時
から翌10時までの夜勤
(拘束時間15時間)○10時から翌10時まで

の当務(拘束時間24時間)
,▼10時から22時・23時までの日勤(拘
束時間12時間又は13時間)▲19時から翌6時までの夜勤

(拘束時間
11時間)
,●10時から翌6時までの当務(拘束時間20時間)の組み合
わせであり,休憩時間及び仮眠時間は,各スケジュール表で時間が指定されていた。
シフト表は,前月20日頃に各警備員が希望するシフトを記入し,P4が調整の上,前月28日頃に確定して張り出していた。一旦確定したシフトは,基本的には変更されることはなかったが,例外的に変更を要する場合,P4が代替要員の調整をしていた。
(甲6の1から4まで,甲15,乙
5・140頁,145頁,146頁,210頁,244頁以下,証人P4・15頁,16頁及び28頁)

P3警備隊の人数構成は,
隊長1名
(P4)副隊長2名

(原告ほか1名)

その他の警備員で構成され,発症前6か月間のうち,平成23年8月28日から平成24年1月9日頃までの間の人員は9名であったが,同日頃,警備員1人が退職したため,以後本件発症日までの間の人員は基本的には8名であった。
(乙5・217頁,399頁,934頁,972頁,証人P
4・10頁)


原告の所定労働時間は1週間40時間であったが,1か月単位の変形労働時間制がとられており,所定始業時刻・終業時刻・休憩時刻・所定休日は,いずれも上記のP4が作成したシフト表及びスケジュール表により指定されていた。
(乙5・48頁,146頁,証人P4・15頁及び16頁)

(3)

休憩時間について
スケジュール表で指定された休憩時間中,各警備員は,警備室と同じ建物の地下にある仮眠室(待機室)又は警備室に隣接する休憩室で横になり雑誌を読んだりして過ごしていた。仮眠室には,畳部分が6畳あり,ロッカーが設置されている板の間の部分を含めれば6畳以上の広さがあった。仮眠室は警備室と内線電話で結ばれており,緊急時には警備室から仮眠室へ内線電話により連絡することができた。他方,警備室に隣接する休憩室は,警備室とは襖の引き戸で仕切られていた。休憩室の広さは4畳半で床にはカーペットが敷いてあり,横になれる大きさのソファーが1つ置いてあったほか,パソコンとパソコン机があり,これを利用して報告書の作成など事務的な作業を行うこともあった。
(乙5・141頁,151頁,15
7頁,乙12から乙15まで,証人P4・25頁)

休憩中の警備員は,通常,スケジュール表で指定された休憩時間に休憩を取ることができていたが,休憩時間中も非常時の緊急対応(火災感知器の作動,防犯センサーの発報等)のために出動の呼び出しがあった場合には,これに対応しなければならなかった。すなわち,警備員2名体制の日勤時においては,受付及びモニターの監視に1名の警備員を配置しておく必要があるため,緊急時には,他の1名の警備員が休憩時間中であっても現場確認等の対応をする必要があった。また,警備員4名体制の平日の夜勤時において警備員2名が仮眠に入ったとき又は警備員3名体制の土日祝日の夜勤時において警備員1名が仮眠に入ったときは,受付に配置する警備員1名以外の他の1名の警備員は,休憩時間中であっても,同様に緊急時の対応をする必要があった。
警備員は,休憩時間中,P3の敷地内の食堂や喫煙所に行くことは可能であったが,制服以外の服に着替えることはなく,P3の敷地外に出ることも許されておらず,休憩室や仮眠室を離れる時は,無線機を携帯しなければならなかった。
(乙5・141頁,142頁,151頁,211頁,2
21頁,222頁,証人P4・3頁)



緊急時の対応をした場合,対応した警備員は,必ず引継ノート(乙5・865頁以下)に緊急対応の経緯を記録し,これとは別に報告書(乙5・904頁から932頁まで)を作成することになっていた。平成23年8月以降に作成されたこれらの報告書のうち,その記載内容に照らし,スケジュール表上休憩時間であった警備員が対応したものと明らかに認められる事例は,次のとおりである。
①平成23年8月31日午前0時8分(乙5・906頁)防犯センサーの侵入発報に対応。前日からの夜勤のシフト(乙5・269頁)上,当該時間帯にはP8が受付におり,P4は休憩時間であったが,P4が現場確認をした。
②平成23年9月17日午後0時50分(乙5・909頁)教室内に忘れ物をした旨の申出に対応。当日の日勤のシフト(乙
5・289頁)上,当該時間帯にはP9が受付におり,P10が休憩時間であったが,P10が現場確認をした。
③平成23年11月30日午後1時29分(乙5・917頁)防犯センサーの侵入発報に対応。当日の日勤のシフト(乙5・366頁)上,当該時間帯の受付はP4,原告が休憩時間であったが,P4が現場確認をし,原告は受付で対応した。
また,報告書の記載自体からは必ずしも明らかではないが,時間帯及びシフトから判断して,出来事の発生当時,2名体制であり,休憩時間中の警備員が現地確認又は受付等を行ったのではないかと推測されるものとして,平成24年1月25日(午前4時10分
入発報

防犯センサーの侵

乙5・927頁),同月27日(午前3時08分

ーの侵入発報

防犯センサ

乙5・928頁),同年2月13日(午前1時12分

犯センサーの侵入発報

乙5・929頁),同月5日(午後1時40分

入寮生の居室の鍵が開かないことへの対応
1日(午前1時16分


乙5・930頁),同月2

防犯センサーの侵入発報

乙5・931頁)が

ある。

原告と同様,P3で警備業務に従事していたP11は,平成24年1
1月30日に行われた池袋労働基準監督署担当者の事情聴取に対し,休憩中に火災感知器が鳴ったり,侵入者があったりして,「呼び出された頻度は月に1~3回程度」であるが,「仮眠時間中に仮眠者を起こしてまで緊急対応したこと」はない旨供述している。さらに,P4も同年12月7日に行われた事情聴取に対し,休憩・仮眠時間中の出勤要請の程度について「平均すると,防犯センサー作動時の対応が週1回,火災感知器作動時の対応が2か月に1回,部外者の対応が半年に1回,急病人の対応が3か月に1回,救急車の誘導が3か月に1回,研修生の対応が週1回という程度」であり,「仮眠時間中に呼び出されることは,まずない」旨供述している。(乙5・141頁,152頁及び153頁)緊急対応の多くは,センサーが動物に反応したものであったり,火災感知器の故障が原因であり,実際に火災が発生したり,不審者が侵入したなどの緊急事態はなかったが,現場確認をする必要があるため1回当たり10分から30分の対応時間を要し,その後,引継ノートや出動内容に関する報告書を作成していた。(乙5・141頁,153頁,904頁以下,証人P4・4頁及び5頁)

なお,スケジュール表の土日祝日等閉庁日の夜勤の「B」シフト(原告が当該シフトに入ったのは,
発症前6か月前では,
平成24年2月11日,
1月9日,
同月2日,
平成23年12月30日,
同月23日,
11月5日,
10月29日,同月10日,9月25日,同月18日,8月15日,同月13日,同月8日である。
)には,5時間ないし5時間半連続した休憩時
間が記載されており,仮眠時間のように見えるが(乙5・442頁,408頁,401頁,397頁,390頁,341頁,332頁,313頁,297頁,290頁,256頁,254頁,250頁)
,実態としては,
仮眠室における仮眠時間ではなく,休憩室における休憩時間である。(証
人P4・24頁及び32頁,乙5・212頁)

(4)

仮眠時間について
仮眠室には,
畳部分が6畳あるが,
布団の備え付けはなく,
警備員らは,
自らの負担でレンタルした布団を敷いて仮眠を取っていた。
(乙5・141
頁及び157頁,乙12,乙13)

警備員らは,上記した土日祝日の「B」シフトの場合を除き,基本的には,スケジュール表で指定された時間(23時から4時までの仮眠と4時から9時までの仮眠がある。
)に仮眠を取ることができた。仮眠時間中は,
警備員らは,指定の警備服からリラックスすることができる服に着替えていた。非常時の緊急対応があった場合も,P3の警備においては,仮眠中の者を起こして緊急対応をしたことはほとんどなく,本件疾病の発症前6か月間において,仮眠時間中の呼び出しは0件であった。(乙5・141頁,150頁,153頁,157頁,163頁)

(5)

資格試験
原告は,平成23年10月20日頃,本件会社から,施設警備業務2級の
国家試験を取得するようにとの業務命令を受け,同年9月3日,同年10月24日,同月25日に業務命令に基づく研修を受けたほか,自宅等で勉強をした後,同年11月1日及び2日に上記試験を受験し,これに合格した。(乙
5・128頁及び129頁,167頁,938頁から946頁まで)(6)

労働時間の認定
原告の労働時間の認定についての当裁判所の考え方は,
次のとおりである。


始業時刻及び終業時刻
警備員は,
毎日,
警備報告書を作成し,
始業時刻及び終業時刻を記入し,
警備現場の隊長は,その内容を確認し,本件会社に報告していたことからすれば,原告の始業時刻及び終業時刻については,原則として警備報告書に記載された勤務日時に基づき認定するのが相当である。乙5240頁,(

456頁以下。
ただし,
警備報告書が存在しない平成24年2月23日は,
シフト表(乙5・454頁)に記載された勤務時間に基づいて認定する。)
また,研修等に出席した日は,教育実施簿(乙5・939頁以下)に記載された時間に基づいて認定するのが相当である。
(乙5・167頁及び1
68頁。原告は,研修等に出席し,P3の警備に従事していなかった日についても警備報告書を作成し,そこには教育実施簿に記載された時間と一部異なる勤務時間が記入されているが,教育実施簿に記載された教育内容(時間割)以外の研修が実施されていたことやP3の警備に従事していたことを窺わせる証拠はないから,警備報告書に記載された勤務時間はにわかに採用することができない。

以上の基本的な考え方に基づき,証拠及び弁論の全趣旨により認められる各日の始業時刻及び終業時刻は別紙2労働時間集計表の「労働時間(始業~終業)
」欄記載のとおりである。

休憩時間及び仮眠時間の評価
(ア)

認定基準における業務の過重負荷の要因である「労働時間」と労基
法32条の「労働時間」
(以下「労基法上の労働時間」という。
)は,同
義と解されるところ,労基法上の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,実作業に従事していない時間が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者が当該時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである(最高裁平成7年(オ)第2029号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁及び最高裁平成9年(オ)第608号・第609号同14年2月28日第一小法廷判決・民集56巻2号361頁参照)
。そして,労働者が実作業に従
事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって,休憩時間や仮眠時間であっても,労働契約上の役務の提供が義務付けられているなど労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。(イ)

そこで,上記(3)の休憩時間(以下「本件休憩時間」という。
)につ
いてみるに,上記認定事実のとおり,本件休憩時間中において緊急事態が発生した場合には,休憩時間中の警備員も,これに対応することが求められる状況にあったこと,少なくとも月に2~3回の頻度では,休憩中の警備員が実際に緊急対応を求められていたこと,
休憩中の警備員は,
平常時においても,休憩室を離れるときには無線機を携帯しなければならず,制服以外の服に着替えることもなく,P3の敷地外に出ることも許されていなかったことからすれば,本件休憩時間は,実質的にみれば待機時間であって,休憩時間中も警備員らは労務の提供が義務付けられていたものと評価することができる。したがって,本件休憩時間においては,労働からの解放が保障されていなかったものというべきである。これに対し,上記(4)の仮眠時間(以下「本件仮眠時間」という。)に
ついては,上記認定事実のとおり,本件仮眠時間中,警備員は制服を脱いで,自由な服装を着用して仮眠室内のベッドで仮眠することが可能であったこと,仮眠中の警備員とは別に当務中の警備員が1名及び待機中(休憩中の場合を含む。の警備員が1名存在しており,

1名を受付に配
置し,他の1名により緊急対応をすることが可能であったこと,実質的にも,P3の警備において,仮眠中の警備員が現実に実作業に従事したことは,発症前6か月間で一度もなく,仮眠中の警備員が実作業に従事する必要が生じることが皆無に等しかったことなどに照らし,全体として労働からの解放が保障されていた時間であったと評価することができる。
(ウ)

この点について,被告は,本件仮眠時間のみならず,本件休憩時間
についても労働から解放されているというべきであって,仙台高裁平成24年(ネ)第92号同25年2月13日判決の判断を踏まえれば,本件休憩時間についても労働時間該当性が否定されるべきであると主張する。
しかしながら,本件休憩時間において,警備員に対し労働からの解放が保障されていたと認めることができないことは,上記したとおりである。
被告が指摘する裁判例は,
「最低4名以上の警備員が配置され,
仮眠・
休憩時間帯においても,
そのうち1名が守衛室で監視警備業務に当たり,
1名が巡回警備業務に当たる傍らまたは守衛室に待機して,突発的な業務が生じた場合にこれに対応する態勢がとられていた」事案であり,休憩中の警備員も含む2名体制で警備業務を行う時間帯があった本件とは事案を異にするから,同裁判例の存在は,本件休憩時間の労働時間該当性についての当裁判所の上記判断を左右するに足りない。
(エ)

以上によれば,本件休憩時間は,労基法上の労働時間に当たるとい
うべきであるが,本件仮眠時間については,労基法上の労働時間には当たらないというべきである。

資格試験の受験勉強に要した時間の評価
原告は,平成23年10月20日から同年11月1日まで,少なくとも毎日3時間程度は受験勉強しており,これは労働時間であると主張する。確かに,原告は,本件会社から,同年10月頃,施設警備業務2級の検定試験を受けるよう指示され,同月24日及び25日に検定試験のための講習を受講した後,同年11月1日及び2日に試験を受け,合格していることが認められる
(乙5・148頁,
203頁,
1061頁)しかしながら,

原告は本件会社から勉強時間の具体的な指示を受けていたわけではなく,原告が試験勉強を行っていた時刻の記録も存在しないから,原告が試験勉強に費やした時間を正確に把握することは困難である。それのみならず,試験勉強の内容,方法及び時間は原告自身の選択により決められており,原告が労働から解放された自由な時間を利用して試験勉強を行うことも可能であったから,使用者が具体的に指示した講習の受講や検定試験の受験については,これを使用者の指揮命令下にある労務提供と評価することができたとしても,試験勉強それ自体を使用者の指揮命令下にある労務の提供と評価することは困難である。よって,原告の上記主張は採用することができない。

小括
上記認定事実によれば,本件疾病発症前6か月間の原告の労働時間は,少なくとも(シフトによっては,仮眠時間が数十分短くなることがあった(乙5・55頁,210頁,221頁及び230頁))別紙2労働時間集。
計表のとおりであると認められ,この間における原告の時間外労働の状況等は下表のとおりである。
総労働時間数

時間外労働時間数

発症前2か月間ないし6か月間
における1か月当たりの

発症前1か月目316時間00分

148時間00分

発症前2か月目317時間00分

157時間00分

2か月平均

152時間30分

発症前3か月目306時間00分

138時間00分

3か月平均

147時間40分

発症前4か月目277時間20分

117時間20分

4か月平均

140時間05分

発症前5か月目301時間00分

141時間00分

5か月平均

140時間16分

発症前6か月目298時間30分

138時間30分

6か月平均

139時間58分

(7)

平均時間外労働時間数


慢性的な人手不足に伴う連続勤務
P4は,本件会社に対し,P3の警備員が人手不足であるとして,人員の補充を訴えていた。
(乙5・933頁及び934頁,証人P4・9頁)


平成24年1月頃,P3の警備員の1人が退職することになったが,後任の警備員が補充されなかったため,同人のシフトを他の社員で補うことになり,原告及び同僚の勤務数が若干増加した。
(乙5・129頁,130
頁,148頁及び217頁)


(8)

脳血管疾患発症に関する医学的知見

P12病院神経内科医師P13作成の意見書(甲16)
本件疾病の発症直後の原告の血圧値が,230/130mmHgという異常高血圧であったことからすれば,原告の高血圧(中等リスク)が自然経過によって,230/130mmHgにまで上昇することは,通常の高血圧の経過として想定することはできず,発症前に原告の高血圧をその自然的経過を超えて増悪させた何らかの原因が存在したことを示唆するものと考えられる。ただし,脳出血発症後の交感神経機能亢進により,結果的に血圧がよりいっそう上昇している可能性はある。原告の高血圧の原因及び高血圧が自然経過を超えて脳出血の発症に至った原因は,原告が従事していた警備員としての業務の身体的精神的負荷によって,原告の血圧が上昇し,また夜間の血圧の十分な低下が持続的に阻害され,それにより脳内細小動脈の血管壁を脆弱化させた結果発症したものである。


公益財団法人P14研究部部長兼P15センター長P16作成の鑑定書(甲22)
原告に課せられた長時間拘束夜勤シフト等の過重負荷によって睡眠の質が劣化したことや精神的負荷によって疲労回復を担っている徐波睡眠を抑制し,疲労の蓄積を助長したことにより,原告の睡眠構築バランスを著しく崩し,過大な循環器負担が生体にかかり,本件疾病を発症させたものである。


P17病院院長P18作成の意見書(乙20。以下「P18意見書」という。)
本件疾病は高血圧を原因とするものであるが,原告の高血圧が警備業務に起因するものと判断する医学的証拠はなく,警備業務を開始する前からの既往症として有していた可能性も否定することができず,原告は飲酒歴があり,高血圧と飲酒歴が併存する場合の脳出血のリスク比は,これらの因子を持たない人の5~6倍であるところ,原告の発症時の年齢は50歳という脳出血の好発年齢であり,出血部位も左被殻という好発部位であることからすれば,
本件疾病は,
原告が長年にわたって有していた高血圧に,
飲酒という業務外のリスクファクターが加わって発症した可能性が十分にあり得る。したがって,本件疾病は,業務に起因して自然経過を超えて発症したものとはいえない。

P19医療センター精神神経科医学博士P20作成の意見書(乙21)上記イの鑑定書の結論には,原告に想定される睡眠以外のリスクファクターを除外診断しないまま睡眠の量や質の劣化が脳出血の原因であると判断している点,原告の個別データに依拠することなく睡眠の量や質を判断している点,原告に40時間の断眠があったという誤った前提事実に基づいて判断している点で疑問がある。

(9)

業務外の私的リスクファクターについて
高血圧
(ア)

平成24年2月17日の健康診断時における原告の血圧値は,「最
高血圧156mmHg」,「最低血圧108mmHg」であった。(甲20)
(イ)

高血圧は,脳出血発症との関係で,特に強いリスクファクターであ
り,脳出血の発症原因の60パーセント以上を占めるとされている(乙1・44頁,112頁・表6-1,120頁・表6-3)。そして,日本高血圧学会(JSH)が日本人向けに発表しているガイドラインによれば,「収縮期血圧160~179mmHg」又は「拡張期血圧100~109mmHg」
は中等症高血圧に分類されている
(乙1・114頁・
表6-2)ところ,上記(ア)の血圧は,中等症高血圧に該当する。また,日本高血圧ガイドライン(乙22)によれば,原告の血圧は,「Ⅱ度高血圧」とされ,1か月以内の指導で正常値に戻らなければ降圧薬治療を要する程度である。
(ウ)

原告は,本件発症当時,治療中の病気等はなく,生命保険に加入す
るにあたって受診した健康診断で,
上記(ア)の血圧であることを知った。
原告は,P5に対し,過去に上記(ア)のような高血圧になったことはなかったと述べ,検査結果に衝撃を受けるとともに,病院に行った方が良いかななどと述べていた。(証人P5・6頁,14頁から16頁まで)イ
飲酒
(ア)

原告は,夜勤明けの午前中に寝酒としてウイスキーの水割りを1,
2杯飲み,日勤と休日のときは,夕食時にウイスキーの水割りを数杯飲んでいた。(乙5・134頁,証人P5・6頁,12頁,13頁及び16頁)
なお,被告は,原告の飲酒量は少なく見積もって1日3合程度であったと主張する。
確かに,原告が搬送されたP6病院のカルテに「嗜好」として,「アルコール:ウイスキー

飲量300~500ml」(乙10・60頁)と

記載されており,これをウイスキーのダブルの量(60ml)で換算すると5杯強であり,日本酒に換算すると1日5合強の飲酒量になる。しかしながら,原告がウイスキーを原酒で毎日「300~500ml」もの量を飲んでいたことを窺わせる証拠はなく,P5は,一貫して,原告はウイスキーを水割りで飲んでいたと陳述(乙5・134頁)ないし証言(証人P5・6頁,12頁,13頁及び16頁)していることからすれば,上記カルテに記載された飲量は,ウイスキーの水割りの量を記載したものと理解するのが相当である。よって,飲酒量に関する被告の主張は採用しない。
(イ)

リスクファクターと脳出血の発症との関係においては,飲酒は強い
相関があるとされている。飲酒は,脳血管疾患や動脈硬化のリスクファクターとなり,脳出血発症率とアルコール摂取量との関係では,飲酒レベルの上昇とともに発症率は増加し,1.5合未満の少量飲酒のレベルでも発症率は有意に高いとされている。(乙1・112頁・表6-1,115頁)

喫煙
本件疾病を発症した当時,原告は禁煙して30年近く経過しており,喫煙の習慣はなかった。(乙5・134頁,乙10・60頁)

3
判断

(1)

長時間の過重業務について
以上の認定事実を踏まえ,認定基準に照らして業務起因性が認められるか否か検討する。
認定基準によれば,発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合に業務と発症の間の関連性が強いと評価される。これを本件についてみると,原告の本件疾病発症前6か月間の時間外労働時間等は以下のとおりである。
(ア)

発症前1か月目(平成24年1月25日~同年2月23日)


出勤日は25日,そのうち夜勤は18回あった。


丸一日(1暦日をいう。以下同じ。)以上の休日が確保されていたのは2回であった。


時間外労働時間数は148時間であった。


総拘束時間数は376時間であった。

(イ)

発症前2か月目
(平成23年12月26日~平成24年1月24日)


出勤日は24日,そのうち夜勤は19回あった。


丸一日以上の休日が確保されていたのは3回であった。


時間外労働時間数は157時間00分であった。

総拘束時間数は377時間であった。


発症前2か月間平均時間外労働時間数は152時間30分であっ
た。

(ウ)

発症前3か月目(平成23年11月26日~同年12月25日)


出勤日は25日,そのうち夜勤は18回あった。


丸一日以上の休日が確保されていたのは3回であった。


時間外労働時間数は138時間であった。


総拘束時間数は371時間であった。


発症前3か月間平均時間外労働時間数は147時間40分であっ
た。

(エ)

発症前4か月目(平成23年10月27日~同年11月25日)


出勤日は23日,そのうち夜勤は16回あった。


丸一日以上の休日が確保されていたのは3回であった。


時間外労働時間数は117時間20分であった。


総拘束時間数は323時間20分であった。


発症前4か月間平均時間外労働時間数は140時間05分であっ
た。

(オ)

発症前5か月目(平成23年9月27日~同年10月26日)


出勤日は22日,そのうち夜勤は18回あった。


丸一日以上の休日が確保されていたのは2回であった。


時間外労働時間数は141時間であった。


総拘束時間数は368時間であった。


発症前5か月間平均時間外労働時間数は140時間16分であっ
た。

(カ)

発症前6か月目(平成23年8月28日~同年9月26日)
出勤日は24日,そのうち夜勤は18回あった。

丸一日以上の休日が確保されていたのは3回であった。


時間外労働時間数は138時間30分であった。


総拘束時間数は363時間15分であった。


発症前6か月間平均時間外労働時間数は139時間58分であっ
た。


以上のとおり,本件疾病発症前1か月間ないし6か月間における原告の時間外労働は,発症前1か月間が148時間であり,発症前2か月間ないし6か月間のいずれの期間においても,時間外労働時間数の1か月当たり平均は139時間以上となるから,認定基準における「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合」に該当し,業務と発症との関連性が強いと評価することができる。
また,認定基準では,「休日のない連続勤務が長く続くほど業務と発症との関連性をより強めるものであり,逆に,休日が十分確保されている場合は,疲労は回復ないし回復傾向を示すものである。」とされているところ,
原告の発症前6か月間における平均出勤日は23.
8日/月であるが,
上記アで認定した労働時間等のとおり,原告は,日勤に続けた夜勤,夜勤に続けた日勤,夜勤明け当日の夜勤に入ることが多く,勤務開始直前に丸一日以上の休日が確保されていたのは,月2~3回程度しかない。1歴日のいずれかの時間で勤務している日を出勤日とし,丸一日(暦日)以上の休日を挟んでいないときは連続勤務であると考えると,平成24年2月5日から同月18日まで14日間連続勤務,同年1月9日から同年2月3日まで26日間連続勤務,平成23年12月28日から平成24年1月7日まで11日間連続勤務,平成23年11月1日から同年12月10日まで40日間連続勤務,
同年10月3日から同月25日まで23日間連続勤務,
同年9月18日から同年10月1日まで14日間連続勤務,同年9月5日から同月16日まで12日間連続勤務に各従事していたことになり,原告の疲労が回復ないし回復傾向を示すに足りる十分な休日が確保されていたかどうかは疑問がある。
さらに,認定基準では,業務の過重性は労働時間のみによって評価されるものではなく,労働時間のほか,勤務の不規則性,拘束性,深夜業務を含む交替制勤務の状況,作業環境等の諸要因や業務に由来する精神的緊張の要因を考慮して,総合的に評価することが妥当とされている。
このような観点に立って,原告の業務をみるに,原告の発症前6か月間における1か月当たりの平均拘束時間は363時間/月に達している。しかも,△19時から翌10時までの夜勤シフト(拘束時間15時間),○10時から翌10時までの当務シフト(拘束時間24時間)との組み合わせでシフトが指定されることもあり,この場合には,1勤務当たりの拘束時間が連続39時間となる。これに加え,1暦日のいずれかの時間に勤務した日を出勤日としてみた場合の原告の連続出勤状況は,上記認定したとおりである。
加えて,原告の発症前6か月間の深夜時間帯の勤務は1か月当たり平均17.8回であり,特に,平成24年1月及び同年2月は,同僚が1人退職したことに伴い,シフト数が若干増加しているところ,発症前1か月目は,勤務に25回入り,そのうち18回が深夜勤務である。そして,このうち11回は,夜勤明けに帰宅することなく,そのまま日勤に入る連続勤務になっており,平成24年1月12日の夜勤は前日に急遽追加になったものである(甲15,証人P5・17頁及び18頁)。これらの拘束時間の態様,連続勤務の状況,深夜勤務の頻度等を踏まえると,本件疾病を発症する直前の6か月間において,原告の勤務と勤務の間には,原告の疲労が回復するだけの十分な間隔が確保されていたと評価することは困難である。
この点について,被告は,原告の勤務形態は日常業務として実施されており,シフト表の変更も頻繁ではなかったから,原告のシフトが不規則で過重な業務負荷であると評価することはできないと主張する。しかしながら,原告のシフトは,日勤,夜勤及び当務が組み合わさったものであり,丸一日(暦日)以上の休日を取ることができず,ときには26日間連続勤務になっていることからすれば,「生体リズムと生活リズムの位相のずれが生じ,その修正の困難さから疲労がとれにくい」(乙1・99頁)という専門検討会報告書において指摘されている趣旨は本件にも当てはまるというべきである。
さらに,P3の警備業務は,施設利用者が関係者に限られており,不特定多数の者が利用する施設ではなく,
現実に対応した緊急出動についても,
結果的には緊急性の高いものはほとんどなかったことが認められる。しかしながら,旧労働省労働基準局長通達(平成5年2月24日付け基発第110号「警備業者が行う警備業務に係る監視又は断続的労働の許可について」
。甲10)においても,一般に,警備業者の行う警備業務は,委託契約上,厳しい警備業務と賠償責任が課せられているものであることから,警備業者に雇用され警備業務を行う警備員の労働は,身体の疲労又は精神的緊張も少なくないとの見解が示されているとおり,警備業務の性質上,いついかなる事故が発生するかは未然にはわからず,現に事故が発生した場合には,直ちに対応することが義務づけられている以上,結果的に緊急性の高い出来事が発生しなかったというだけで,原告がP3において従事していた警備業務が精神的緊張が少ない業務であったと評価することはできない。むしろ,本件のP3における警備においても,それが専門の警備会社の行う24時間体制の警備業務の一環として行われるものである以上,これに従事する警備員に対し精神的緊張を生じさせるものであったと推認するのが自然である。さらに,本件においては,上記のとおり,原告は,本件会社により検定試験を受験するよう命じられ,平成23年10月から11月にかけては,警備業務のかたわら,検定試験のための準備も行う必要があったから,この点も原告の精神的疲労を高める要因となったと考えられる。

以上のとおり,原告の時間外労働時間数は,業務と発症との関連性が高いと評価することができる上,
労働時間以外の負荷要因を総合考慮すれば,
原告は,発症前6か月間の長期にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められる。

(2)

私的リスクファクター等との関係について
被告は,本件発症日の7日前の原告の血圧値は,治療の必要性が検討されるべき高血圧症であり,かつ,脳出血と「強い関連性」がある飲酒という嗜好が存在していたから,これらが相俟って,自然経過により発症したものである合理的な疑いが存在すると主張し,P18意見書(乙20)を提出する。


そこで,P18意見書について検討するに,同意見書は,「労働が伴っていない仮眠時間・休憩時間は,その限りにおいて労働の負荷が掛かっていないのであるから,労働時間からは除いて考えるべきである。」(乙20・5頁)として,本件休憩時間を労働時間から除外した時間外労働時間数を前提に意見を述べているが,本件休憩時間についても労働時間と評価するべきことは上記2(6)イのとおりである。また,P18意見書は,「と
りわけ飲酒量が,
これを少なく見積もって1日3合程度であったとしても,
脳出血を発症するリスクは,これらのリスクファクターを有しない者と比較して4から6倍あることになる」(乙20・9頁)として,飲酒のリスクファクターを評価しているが,原告の飲酒量は,1日あたりウイスキーの水割りを1,2杯飲む程度であると認められ,これを大幅に上回る飲酒をしていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,本件休憩時間を労働時間から除外した時間外労働時間数及び1日3合程度の飲酒量を前提とするP18意見書は,前提事実を異にするものであってにわかに採用することができない。

確かに,脳出血の発症については高血圧が最大のリスクファクターとなる上,多重のリスクファクターを有する者は,脳出血を発症するリスクが極めて高いとされている(乙1・111頁及び112頁)。
しかしながら,
本件疾病の発症直前における原告の血圧値は不明であり,
証拠上,原告の高血圧症が自然経過により脳出血を発症する寸前の状態にまで進行していたことを認めるに足りる証拠はない。また,原告は,本件発症日の7日前に中等症高血圧ではあったものの,いまだ治療の必要性が検討されるべき段階の高血圧にとどまる上,原告がP3の警備業務を開始する前からの既往症として中等症高血圧を有していたことを認めるに足りる証拠もない。そうすると,本件疾病を発症した時点で,原告の高血圧及び飲酒歴により,血管病変が自然経過の中で本件疾病を発症させる寸前の状態にまで増悪していたことを合理的に疑うに足りるだけの主張立証はないというべきである。その他,本件疾病の発症について,原告に他に確たる発症因子があったことを合理的に疑うに足りるだけの主張立証もない。
(3)

小括
以上によれば,本件においては,本件疾病の発症6か月前からの恒常的な
長時間労働等の負荷が作用した結果,原告に疲労の蓄積が生じ,これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ,その結果,本件疾病を発症させたものとみるのが相当であり,その間に相当因果関係があるということができる。
したがって,原告の発症した本件疾病は,労基法施行規則35条,別表第一の二第8号にいう,長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著し「
く増悪させる業務による脳出血,くも膜下出血,脳梗塞,高血圧性脳症,心筋梗塞,狭心症,心停止(心臓性突然死を含む。
)若しくは解離性大動脈瘤又
はこれらの疾病に付随する疾病」に該当するというべきである。
4結語
以上のとおり,本件疾病の発症は業務に起因するものと認められるから,本件処分は違法である。よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部

裁判長裁判官

清水
裁判官

石川真
裁判官

堀田秀響紀子一
(別紙1)
第1基本的な考え方
脳・心臓疾患は,その発症の基礎となる血管病変等が長い年月の生活の営みの中で形成され,それが徐々に進行し,増悪するといった自然経過をたどり発症する。しかしながら,業務による明らかな過重負荷が加わることによって,血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し,脳・心臓疾患が発症する場合があり,そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患は,その発症に当たって,業務が相対的に有力な原因であると判断し,業務に起因することの明らかな疾病として取り扱う。このような脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として,発症に近接した時期における負荷のほか,長期間にわたる疲労の蓄積も考慮することとした。また,業務の過重性の評価に当たっては,労働時間,勤務形態,作業環境,精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握,検討し,総合的に判断する必要がある。
第2認定要件
次の1,2又は3の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は,労基法施行規則35条別表第1の2第8号に該当する疾病として取り扱う。
1発症直前から前日までの間において,発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと(異常な出来事)
2発症に近接した時期において,特に過重な業務に就労したこと(短期間の過重業務)
3発症前の長期間にわたって,著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(長期間の過重業務)
第3認定要件の運用
1脳・心臓疾患の疾患名及び発症時期の特定について
疾患名を特定し,対象疾病に該当することを確認する。症状が出現した日を特定し,その日をもって発症日とする。
2過重負荷について
過重負荷とは,医学経験則に照らして,脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷をいい,業務による明らかな過重負荷と認められるものとして,「異常な出来事」,「短期間の過重業務」及び「長期間の過重業務」に区分し,認定要件とした。また,自然経過とは,加齢,一般生活等において生体が受ける通常の要因による血管病変等の形成,進行及び増悪の経過をいう。
(1)

異常な出来事について


異常な出来事
異常な出来事とは,具体的には次に掲げる出来事である。

(ア)

極度の緊張,興奮,恐怖,驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こ
す突発的又は予測困難な異常な事態
(イ)

緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な
事態
(ウ)

急激で著しい作業環境の変化

評価期間
発症直前から前日までの間


過重負荷の有無の判断
遭遇した出来事が上記(ア)に掲げる異常な出来事に該当するか否かによって判断する。

(2)短期間の過重業務について

特に過重な業務
特に過重な業務とは,日常業務(通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。)に比較して特に過重な身体的,精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいう。

評価期間
発症前おおむね1週間


過重負荷の有無の判断
(ア)

特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては,業務量,
業務内容,作業環境等を考慮し,同僚等にとっても,特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという観点から,客観的かつ総合的に判断すること。ここでいう同僚等とは,当該労働者と同程度の年齢,経験等を有する健康な状態にある者のほか,基礎疾患を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる者をいう。
(イ)

短期間の過重業務と発症との関連性を時間的にみた場合,
医学的には,

発症に近いほど影響が強いことから,①まず,発症直前から前日までの間の業務について特に過重であるか判断し,②発症直前から前日までの間の業務が特に過重であると認められない場合には,発症前おおむね1週間以内について判断する。
(ウ)

業務の過重性の具体的な評価に当たっては,負荷要因として,労働時
間,不規則な勤務,拘束時間の長い勤務,出張の多い業務,交替制勤務・深夜勤務,作業環境(温度環境,騒音,時差)及び精神的緊張を伴う業務などについて,十分検討すること。
(3)長期間の過重業務について

疲労の蓄積の考え方
恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には,「疲労の蓄積」が生じ,これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ,その結果,脳・心臓疾患を発症させることがある。このことから,発症との関連性において,業務の過重性を評価するに当たっては,発症前の一定期間の就労実態等を考察し,発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断することとする。

特に過重な業務
上記(2)アと同様である。


評価期間
発症前おおむね6か月間
なお,発症前おおむね6か月より前の業務については,疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価するに当たり,付加的要因として考慮すること。

過重負荷の有無の判断
著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては,業務量,業務内容,作業環境等を考慮し,同僚等にとっても,特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという観点から,客観的かつ総合的に判断する。
業務の過重性の具体的な評価に当たっては,疲労の蓄積の観点から,労働時間のほか上記(2)ウ(ウ)に示した負荷要因について十分検討する。その際,疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると,その時間が長いほど,業務の過重性が増すところであり,具体的には,発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて,①発症前1か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は,業務と発症との関連性が弱いが,おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること,②発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断する。
ここでいう時間外労働時間数は,1週間当たり40時間を超えて労働した時間数である。また,休日のない連続勤務が長く続くほど業務と発症との関連性をより強めるものであり,逆に,休日が十分確保されている場合は,疲労は回復ないし回復傾向を示すものである。
以上

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