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銃砲刀剣類所持許可更新不許可処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(行ウ)第225号)
事件番号平成28(行コ)99
事件名銃砲刀剣類所持許可更新不許可処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(行ウ)第225号)
裁判年月日平成28年7月20日
法廷名東京高等裁判所
判示事項銃砲刀剣類所持等取締法11条7項の規定による猟銃所持許可の更新の申請をした者につき申請書提出先の警察署がその者に配偶者暴力のおそれがある旨の情報を得ていた場合において,申請書添付書類の同居親族書に別居中の妻子が同居親族として記載されていたことが,同法5条1項に規定する重要な事項についての虚偽の記載に該当しないとされた事例
裁判要旨銃砲刀剣類所持等取締法11条7項の規定による猟銃所持許可の更新の申請をした者につき申請書提出先の警察署がその者に配偶者暴力のおそれがある旨の情報を得ていた場合において,申請書添付書類の同居親族書に別居中の妻子が同居親族として記載されていたとしても,警察署において上記情報を得たのが上記申請の1年以上前であって,申請に係る事務の担当者においてその引継ぎを受けており,上記申請をした者において妻子との同居状況について特に隠し立てをしたような事情が認められないなど判示の事情の下では,上記記載は同法5条1項に規定する重要な事項についての虚偽の記載に該当しない。
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平成28年7月20日判決言渡
平成28年(行コ)第99号銃砲刀剣類所持許可更新不許可処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(行ウ)第225号)
主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。

第1
1実及び理由
控訴の趣旨
原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

(本案前の申立て)
2
前項の部分に係る訴えを却下する。

(本案に対する申立て)
3
第1項の部分につき,被控訴人の請求を棄却する。

4
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2
1
事案の概要等
本件は,処分行政庁から原判決別紙物件目録記載の散弾銃(以下「本件散弾銃」という。)につき銃砲の所持の許可を受けていた被控訴人が,処分行政庁から,更新許可の申請に伴い提出した同居親族書中に「重要な事項について虚偽の記載」(銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)5条1項柱書き)
があったとして平成25年2月21日付けで上記許可について更新を認めない旨の処分(以下「本件更新不許可処分」という。)及び本件散弾銃の仮領置処分(以下「本件仮領置処分1」という。)を受けたところ,上記各処分は,
銃刀法所定の更新不許可事由及び仮領置事由が存在しないにもかかわらずされた違法なものであると主張して,処分行政庁が所属する控訴人に対し,本件更新不許可処分及び本件仮領置処分1の各取消しを求める事案である。原判決は,本件仮領置処分1の取消しを求める訴えについては,訴えの利益を欠くとしてこれを却下したが,本件更新不許可処分の取消しを求める訴えについては,更新不許可事由があるとは認められないから違法であるとして本件更新不許可処分を取り消した。そこで,控訴人が後者の判断を不服として本件控訴をした。
2
関係法令の定めの概要,
前提事実,
争点及び争点についての当事者の主張は,
後記3のとおり当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2

事案の概要」の1,2,3(2)及び4(2)に記載のとおり

であるから,これを引用する。ただし,原判決を次のとおり訂正する。(1)

原判決3頁16行目の「施行規則」の次に「(以下「銃刀法施行規則」と
いう。)」を,20行目の冒頭に「(ア)」をそれぞれ加え,4頁1行目の次に改行して次のとおり加える。


(イ)

都道府県公安委員会は,銃刀法4条の規定による許可を受けようとす
る者に同法5条1項3号から5号まで又は15号から18号までに該当する同居の親族(配偶者については,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)がある場合において,その同居の親族が当該許可の申請に係る銃砲又は刀剣類を使用して他人の生命,身体若しくは財産若しくは公共の安全を害し,又は自殺するおそれがあると認められる者であるときは,許可しないことができる(同条5項)。
(ウ)

都道府県公安委員会は,銃刀法4条1項1号の規定による猟銃の所持
の許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合でなければ,許可してはならない(同法5条の2第3項)。
海外旅行,災害その他政令で定めるやむを得ない事情により,同法7条の3第2項の規定による許可の更新を受けることができなかった者で,当該事情がやんだ日から起算して1月を経過しないもの(当該許可を受けて所持していた猟銃に係る技能講習修了証明書の交付を受け,その交付を受けた日から起算して3年を経過していない者に限る。)(3号)」
(2)

原判決4頁9行目の「銃刀法」を「同法」と改め,13行目の次に改行して
次のとおり加える。


(エ)

銃刀法7条の3第1項の規定により猟銃又は空気銃の所持の許可の
更新を受けようとする者は,
銃刀法施行規則9条の規定により猟銃等所持許可更新
申請書を提出する場合においては,当該許可の有効期間が満了する日の2月前から1月前までの間(以下「更新申請期間」という。)に,この申請書を提出するとともに,当該許可に係る猟銃又は空気銃を提示するものとする。ただし,災害,病気その他のやむを得ない理由のため,更新申請期間に提出することができない者は,その理由を明らかにした書類を添えて,
当該許可の有効期間が満了する日の前日ま
でに提出することができる(銃刀法施行規則34条)。

許可の有効期間
銃刀法7条の3第2項の規定により更新された許可の有効期間は,更新前
の許可の有効期間が満了した後のその者の3回目の誕生日が経過するまでの期間とする(同法7条の2第2項)。」
(3)

原判決4頁16行目の「若しくは」を「又は」と,17行目の「という。),」
を「という。)は,」と,18行目の「当該銃砲」を「当該許可に係る銃砲」と,20行目の「11条」を「銃刀法11条」とそれぞれ改める。
(4)

原判決5頁14行目の「添付書類」の前に「更新申請書の」を加え,19
行目の「平成25年2月21日」を「同日」と改める。
(5)

原判決6頁6行目の「平成25年」を「同年」と改め,10行目の次に改
行して次のとおり加える。
「(1)

本件更新不許可処分の取消しを求める訴えの利益が存在するか否か(以
下「当審における争点(1)」という。)」
(6)

原判決6頁19行目の次に改行して次のとおり加える。

「(1)

当審における争点(1)(本件更新不許可処分の取消しを求める訴えの利益の存否)について
(控訴人の主張の要旨)
仮に本件更新不許可処分が取り消され,許可の更新がされていた場合,被控訴人の本件散弾銃の所持許可の有効期間は平成28年2月21日までとなっていたが,既に同日は経過したから,上記所持許可の効力は失われたことになる。
また,被控訴人が銃刀法5条の2第3項3号に該当すれば,新たに更新の許可を受けることが可能となり得るが,被控訴人が本件散弾銃に係る技能講習修了証明書の交付を受けたのは平成24年12月27日であり,既に3年を経過しているから,被控訴人は同号に該当しない。そして,本件更新不許可処分を受けたことを理由として,被控訴人が不利益な取扱いを受けることを定めた法令の規定も存在しない。
以上によれば,現時点において,本件更新不許可処分を取り消すことによって回復される被控訴人の法律上の利益は存在せず,被控訴人は,本件更新不許可処分の取消しを求めるにつき,法律上の利益を有する者には当たらないから,訴えの利益は消滅したというべきである。
(被控訴人の主張の要旨)
自動車等運転免許の取消処分の取消しを求める訴えが提起され,この訴えに係る訴訟が係属する間に当該運転免許の有効期間が経過した場合において,当該係争中の免許については,その取消処分の取消しが確定して免許を行使し得る状態に復帰した際に更新手続等の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり,係争中の免許の有効期間の経過は,何ら訴えの利益の存続に影響するところはないと解するのが相当とされている(最高裁昭和39年(行ツ)第44号同40年8月2日第二小法廷判決・民集19巻6号1393頁参照)。
本件で控訴人が主張するのも,正しく係争中の許可の有効期間の経過による訴えの利益の消滅であるから,上記判断に従えば,控訴人の主張は理由がない。」
(7)

原判決8頁15行目の「平成23年」を「同年」と改める。

(8)

原判決9頁18行目の「銃刀法5条1項」及び22行目の「同条1項」を
いずれも「同項」と改める。
(9)
3
(1)

原判決10頁12行目の「平成23年5月5日」を「同日」と改める。当審における控訴人の主張
本件更新不許可処分の取消しを求める訴えの利益の存否

上記2(6)に記載のとおりである。
(2)

原判決の判断基準の当否について
同居親族書における同居親族に係る人定事項の記載は,その性質上,銃
砲等の所持許可の更新の申請に係る「重要な事項」に該当するものであり,同居親族書における虚偽記載の程度及び内容から,事実と異なることが客観的に認められる場合には,個別に背景事情等を検討するまでもなく,銃刀法5条1項柱書きの不許可事由(重要事項虚偽記載)に該当するというべきである。

仮に原判決の判断基準を採用するのであれば,処分行政庁においては,
銃砲等に対する法規制や取締りに対する社会の要請等の諸事情を考慮した上で,法令の定め以上に,個々の事案ごとに具体的かつ慎重な判断をすることが求められることとなるのであるから,銃刀法5条1項柱書きの不許可事由に該当するか否かの判断も,同項18号に定める不許可事由(以下「18号事由」という。)と同様に,処分行政庁の合理的判断に委ねられるものと解すべきであり,したがって,少なくとも処分行政庁による判断が合理的な根拠を有するものであったか否かという点についても検討・判断した上で,本件更新不許可処分の適否が判断されるべきである。
(3)

同居親族書における女性配偶者の別居の事実の重要性について
配偶者間における暴力(以下「配偶者暴力」という。)の特質として,被害者である女性配偶者が離婚を選択すると経済的自立が困難であることから離婚を思いとどまり,ましてや子がいる場合には子の進学・就職・結婚への悪影響を懸念し,男性配偶者からの暴力に耐え続けることがある。したがって,男性配偶者から暴力を受けた女性配偶者が子と共に自宅を出て別居するということは,男性配偶者からの暴力により追い詰められた上での最終手段といえる。
このような配偶者暴力の特質・実態に鑑みれば,都道府県公安委員会において,配偶者暴力が発生するおそれがあるか否かを判断するに当たり,同居している場合に比して別居した場合の方が,その実態をより迅速かつ正確に把握する端緒となることが優に認められる。
また,同居親族書の記載から女性配偶者の転居事実が判明した場合には,その理由や転居先等を調査し,銃砲等の所持許可を申請した者による暴力等が原因で転居するに至った疑いがある場合は,事実関係を詳細に調査して18号事由に該当するか否かを検討する必要があるのであって,仮に同居していない女性配偶者について離婚していないからとか,住民票上は異動していないからといった理由で同居親族書に記載するという虚偽記載が許容されることになれば,同居親族書を許可申請書に添付させることにした趣旨そのものが形骸化し,誤った事実に基づいて銃砲等の所持許可が更新され,その結果,他人の生命又は身体の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者に対し,銃砲等の所持許可が更新されるという重大な危険が現実のものとなる。
(4)

本件同居親族書における虚偽記載の重要事項虚偽記載該当性について銃刀法施行規則11条1項2号が許可申請書に同居親族書を添付させる
こととしたのは,同居親族書が銃刀法5条5項に定める銃砲等の所持許可を申請する者の同居親族に係る不許可事由の有無を判断するためにとどまらず,配偶者が別居するに至った事実などから判明する申請者自身の18号事由の有無を判断する上で,極めて重要な端緒となる性質を有することにあると解される。上記趣旨からすれば,同居親族書に同居する親族が正しく記載されているか否かは,それだけで「重要な事項」に当たることが明らかである。
仮にそれだけで「重要な事項」に当たるとはいえないとしても,原判決の判断基準によるのであれば,処分行政庁の判断が合理的根拠を有するものであったか否かについても検討・判断した上で,処分の適否が判断されるべきであるし,また,重要事項虚偽記載該当性について,一律に審査を著しく困難としたり,判断を誤らせる結果まで必要としたのでは,個別の事情について綿密な調査が求められることになり,銃刀法上の調査が行政手続の一環として一定の制約の下で行われることを考慮すると,上記結果を伴わなかったことを理由として,更新手続が進められ,
結果的に所持許可を更新すべきでない者に対し更新してしま
うという事態を招くことになってしまうから,上記結果の発生する危険性があるか否かを基準とすれば足りるというべきである。

これを本件についてみると,被控訴人が提出した本件同居親族書に妻ら
が同居親族として記載されていたことから,本件更新申請の審査に当たったA巡査長は,妻らが別居するに至ったトラブルは解消したものと思い,事実調査にさほど時間を要しないと判断して,平成25年2月上旬,妻に確認を取ろうとしたところ,連絡が取れなかったことから,被控訴人に尋ねた結果,虚偽記載が判明したものであり,所持許可の有効期間の満了日である同月21日までに妻らの転居先を調査し,妻らから事情を聴取することが著しく困難となったのであるから,許可の審査を著しく困難とする結果が生じていたことは明らかである。
また,本件同居親族書に虚偽記載があったことから,本件更新申請に関して,練馬署において審査すべき事項の優先順位が異なることとなったのであり,仮に妻が練馬署に相談するなどした事実がなかった場合,これまでの更新申請と同様,その記載が虚偽であることが看過され,所持許可が更新されてしまう可能性が極めて高かったといえ,許可の審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせる危険性があったことも明らかである。
(5)

虚偽記載の主観的要件について
配偶者が別居した事実が配偶者暴力のおそれを判断する重要な端緒とな
ること(上記(3)),同居親族書に同居していない親族を記載することが審査を著しく困難とし,審査に当たっての判断を誤らせる危険性があること(上記(4)),その結果として所持許可をすべきでない者に許可を与える危険性があり,これを防止するとの目的を達成するためという銃刀法5条1項柱書きの趣旨に加え,原判決の示す重要事項虚偽記載該当性の判断基準によれば,過失に基づく場合には一律に不許可事由に当たらないと結論付けるのは相当ではなく,少なくとも故意又は悪意に相当するような重大な過失が認められる場合は,不許可事由に当たるとするのが相当である。イ
本件についてこれをみると,そもそも「同居」の意味は誰にとっても明
白であるし,被控訴人は,所持許可の更新の都度受けてきた講習,とりわけ平成16年12月3日に受講した初心者講習において,
同居者の意義について説明を受け
ていたことからすれば,
被控訴人が同居していない妻らを同居親族書に記載したこ
とは,故意によるものであったというべきである。

また,仮に被控訴人に故意又は悪意が認められないとしても,「同居」
の意味が誰にとっても明白であること,本件散弾銃の所持者として高度の法令知識を有すべき被控訴人が,その解釈を漫然と誤り,また,その意義を十分に確認することなく,妻らを同居の親族として記載したことには,重大な過失があるということができる。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,
本件更新不許可処分の取消しを求める訴えの利益が存在するこ
とを前提として,本件更新申請には更新不許可事由が認められないから,本件更新不許可処分は違法というべきであって取消しを免れないものと判断する。その理由は,後記2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3

当裁判所の判断」の1及び3に

記載のとおりであるから,
これを引用する。
ただし,
原判決を次のとおり訂正する。
(1)

原判決13頁1行目の「,昭和50年代頃」から2行目の「その後」ま
でを「,平成4年7月30日」と,3行目の「もうけた。原告は,平成5年頃」を「それぞれもうけた。被控訴人は,同年頃」と,6行目の「長女を」から7行目の「した。」までを「平成7年5月29日,長男の親権者を被控訴人と,長女の親権者を妻とそれぞれ定めて離婚したが,平成19年12月12日,再婚した。」と,同行目の「11,乙2,11,」を「11,14,乙1,2,11,20,21,」とそれぞれ改め,12行目の「散弾銃」の前に「処分行政庁から」を加え,24行目の「ときに」を「時に」と改める。
(2)

原判決14頁3行目の「11,」の次に「乙11,」を加え,7行目の
「ください」を「下さい」と,11行目の「作り上げた」を「作りあげた」と,20行目の「,アパートを」を「それぞれアパートを」と,25行目の「原告の妻」を「妻」と,末行の「荷物の引取りのために」を「荷物の整理及び引取りのために長男と一緒に」とそれぞれ改める。
(3)

原判決15頁3行目の「同人らに対し」を「同人らを」と,10行目か
ら11行目にかけての「怒鳴りつけられた」を「怒鳴り散らされた」と,12行目の「10,」を「10,11,」と,18行目の「稼働している。」を「稼働しており,同年5月又は同年6月からは,被控訴人宅に戻った。また,妻も,平成28年4月中旬から,同社の正社員として稼働している。」と,同行目の「11,」を「11,14,15の1・2,」とそれぞれ改め,24行目の「あり,」の次に「被控訴人が銃刀法に係る所持許可の更新を申請した場合は」を加える。(4)

原判決16頁2行目の「本件同居」から3行目の「警部補」までを「被控訴人としては,妻らとは同居はしていないものの,妻らは自宅に自由に出入りしているし,住民票も異動していなかったことから,同居親族書には同居親族として妻らの氏名等を記載した。A巡査長」と改め,8行目の「8日に」の次に「練馬署に」を,11行目の「ことから,」の次に「家族間のトラブルは収束したものと思い,念のためそのことを妻に確認しようと携帯電話に通話を試みたが,連絡が取れなかった。そこで,A巡査長は,妻らとの」をそれぞれ加える。(5)

原判決16頁末行の次に改行して次のとおり加える。

「キ

B警部補らは,平成25年2月21日,練馬署長に対し,上記ウ~
カの調査の結果,被控訴人が現在でも妻らと別居していることが確認され,本件同居親族書に虚偽記載があることが判明したことから,被控訴人については本件散弾銃の所持許可の更新を認めないとの「申請者の調査」と題する書面を提出した(乙3の1・2)。」
(6)

原判決17頁3行目の「同法」を「銃刀法」と,9行目の「原告は,」
から「受領した。」までを「被控訴人は,不満を述べながらも,同通知書を受け取った上で,受領書に署名押印した。」とそれぞれ改める。
(7)

原判決17頁23行目の次に改行して次のとおり加える。

「2

当審における争点(1)(本件更新不許可処分の取消しを求める訴えの
利益の存否)について
本件更新申請が許可されていれば,
被控訴人の本件散弾銃の所持許可
の有効期間は平成28年2月21日までとなっていたはずである(前記第2の2(1))ところ,当審の口頭弁論終結の時点で,既に同日を経過していたことは顕著な事実であり,仮に被控訴人に銃刀法施行規則34条ただし書の定める「やむを得ない理由」があったとしても,被控訴人において上記有効期間の満了する日の前日である同月20日までに本件散弾銃の所持許可の更新を申請した事実は証拠上認められないから,上記有効期間の満了によって,本件更新申請が許可されていた場合における本件散弾銃の所持許可はその効力を失うことになる(銃刀法8条1項8号)。
しかしながら,
被控訴人が本件更新不許可処分の取消しを求めて出訴
し,本件散弾銃の所持許可の更新継続を希望していたにもかかわらず,同日までに本件散弾銃の所持許可の新たな更新の手続をとらなかったのは,原審が言い渡した本件更新不許可処分を取り消す旨の判決が確定しない以上,本件更新不許可処分はなお効力を有し,所持許可が存在しない状態にあるため,技能講習を受けたり,更新の申請をしたりすることが事実上困難であったからであり,被控訴人が散弾銃の所持許可の更新を受け続けてきたこと(前記1(1)ウ)からすれば,本件更新申請が許可されていれば,被控訴人は,更新後の所持許可の上記有効期間が満了する日の1か月前までに本件散弾銃の所持許可の更新の申請をしていたものと認められる。したがって,本件更新不許可処分が違法であって取り消されるべきものである限り,更新の手続をとることができなかったのは,控訴人の違法処分に基づくものということができる。
そして,
散弾銃の所持許可を受けている者が所持許可の更新を受けよ
うとする場合は,初めて所持許可を受ける場合に技能検定(同法5条の4第1項)又は射撃教習(同法9条の5第1項)のいずれかを受けて,前者に合格するか,又は後者にあってはその課程を修了したと認定されなければならない(同法4条の2第3項,銃刀法施行規則11条1項3号参照)のとは異なり,あらかじめいずれも比較的短時間で予定される,①操作及び射撃の技能に関する講習(同法5条の5第1項)並びに②所持に関する法令及び使用,保管等の取扱いに関し必要な知識を修得させるための講習会(同法5条の3第1項)を受け,その課程を修了した際に交付される,①に対応する技能講習修了証明書(同法5条の5第2項)及び②に対応する講習修了証明書(同法5条の3第2項)を,医師の診断書(同法4条の2第2項)や同居親族書等と共に更新申請書に添付して,原則として,更新の審査期間を最短で1か月間と設定した更新申請期間に提出すれば足りるものとし(銃刀法7条の3第1項,3項で準用される4条の2,7条の3第4項,銃刀法施行規則11条1項,34条本文),上記所定の書類を更新申請期間に提出することができなかった場合でも,やむを得ない理由があれば,当該許可の有効期間の満了日前日までに提出することが許されている(銃刀法施行規則34条ただし書)上,都道府県公安委員会は,当該申請をした者及び当該申請に係る散弾銃が許可の基準に適合していると認めるときは,許可の更新をしなければならないとされている(銃刀法7条の3第2項)。
このような散弾銃の所持許可の更新は,
従前の許可に代えて同一の内
容を有する新たな許可の処分をするものと解されており,確かに,自動車等の運転免許の更新(道路交通法101条)が,適性検査の結果から判断して運転に支障がない限りは更新されることが原則とされていることなどから,一度受けた免許の効力を維持しつつその有効期間を延長するものとみることができるのとは異なる性格を有するものの,①上記のとおり,初めて所持許可を受ける場合と比較して手続上の負担が軽減されていること,②審査に当たり,添付書類の内容等から更新不許可事由が存在する蓋然性が高い場合等は格別,そうでなければ,従前から正当な所持許可を受けているという事情から更新許可の要件も一応満たされているものと事実上推認することができる場合もあることからすれば,所持許可の更新を初めての所持許可と同等のものにすぎないとみるのは相当でない。したがって,違法処分の存在によって更新の手続をとることができなかった場合において,有効期間の満了によって前の所持許可が失効することを絶対視することも相当でない。また,技能講習等の更新の前提となる手続も,所持許可を受けて猟銃を所持している者を対象としている(銃刀法5条の5第1項)。そうであるとすれば,上記のような所持許可の更新に関する規定は,本件のように更新が認められず,その更新不許可処分の適否が訴訟によって争われている場合における次の更新についてまで適用されることを予定したものであるとは解することができない(なお,銃刀法施行規則34条は,やむを得ない理由のため,更新申請期間に申請書を提出することができない場合について提出時期の特例を定めているが,同条は,その文言からして,1か月間という更新申請期間に申請書を提出することを妨げる事情が,申請期間を更に有効期間の満了する日の前日までの1か月間延長すれば,その間に消滅する場合を想定していると解されるから,上記のような場合には適用されないというべきである。)。むしろ,更新不許可処分の係争中に当該更新許可に係る所持許可の有効期間も経過した場合については,その更新不許可処分の取消しが確定して更新が許可され,かつ,当該更新許可に係る所持許可の有効期間が満了するに当たって更新申請がされたことを前提として不許可事由の審査をすべき時期に至ったものとして取り扱うのが相当である。
この点,
更新に当たっての許可の基準となる銃刀法5条の2第3項3
号が,やむを得ない事情により所持許可の更新を受けることができなかった者について,当該所持許可を受けて所持していた散弾銃に係る技能講習修了証明書の交付日から3年を経過していないことを要求しているところ,被控訴人においては,本件更新申請に当たって交付された技能講習修了証明書が交付日である平成24年12月27日(乙12)から既に3年を経過してしまっていることから,形式的には上記許可の基準を満たしていないことになり,平成28年2月21日に有効期間が満了する所持許可についての更新申請を許可すべき要件を欠くようにも見える。しかしながら,同号の規定が猟銃の基本的な取扱いを忘れたり射撃技能が低下したりすることによる事故の危険を防止することを目的としたものであることは理解できるものの,違法に更新不許可がされ,これを争っている間に3年が経過したといった場合も想定した上で,その場合にも同号が適用されるものとして立法されたと認めることはできない(上記のような場合は,同号の「政令で定めるやむを得ない事情」として銃砲刀剣類所持等取締法施行令14条が掲げる事情のいずれにも当たると解することができない。)。しかも,技能講習は,所持許可を受けて猟銃を所持している者を対象として,現に所持している猟銃を用いて実施されることが予定されている(同法5条の5第1項)のであって,本件のように,所持許可が更新されずに,かつ,本件散弾銃が仮領置されて現に所持していない被控訴人に対し,
同法5条の2第3項3
号を形式的に適用するのは,その前提を欠いているから相当ではなく,銃刀法の前記立法趣旨は尊重する必要があるものの,違法処分からの救済の場面における解釈としては,本件更新申請が許可され,本件散弾銃が被控訴人に返還された時点で,改めて被控訴人に技能講習を受けさせるなどすれば足りるというべきである。
したがって,本件更新申請に係る所持許可の有効期間の満了は,本件更新不許可処分を取り消す訴えの利益の存続に影響するものではないと解するのが相当である。」
(8)

原判決19頁18行目の「1項は,」の次に「都道府県公安委員会は」
を加え,19行目の「事由」を「いずれかの事由」と,23行目の「同条1項」を「同項」と改める。
(9)

原判決20頁5行目及び19行目の各
「こととなる」
の次にいずれも
「具

体的危険がある」を加える。
(10)
「ア

原判決21頁3行目の次に改行して次のとおり加える。
まず,同居親族書の記載事項の性格及び本件同居親族書において虚偽
であるとされた記載の具体的内容についてみると,銃刀法7条の3及び4条の2が猟銃の所持許可の更新を受けようとする者に対し,更新申請書の添付書類の一つとして同居親族書の提出を義務付けている立法趣旨は,同法5条5項の欠格要件の有無を判断するために必要であるというものであり,その目的は,同条1項3号から5号まで及び15号から18号までの不許可事由に該当するため所持許可を受けられない同居の親族(以下「不適格親族」という。)が,銃刀法の厳格な規制を潜脱して,所持許可を受けた同居者の所持する銃砲を無許可で使用して他人の生命,身体若しくは財産若しくは公共の安全を害し,又は自殺すること(同条5項参照)を未然に防止するため,不適格親族の有無を把握することにあるから,同居している親族がいるにもかかわらず同居親族書にこれを記載しなかったり,
同一性を偽って別人を記載した
りした場合には,不適格親族の有無に関して審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなる具体的危険があるため,同居親族書に重要事項虚偽記載又は重要事実の不記載があるものとして上記更新が許可されない(同条1項柱書き)こととなるものと解される。
これに対して,本件のように,実際には被控訴人と同居していない妻らを同居しているとして同居親族書に記載することは,そのことだけに着目すれば,虚偽記載であるということができるものの,上記立法趣旨に照らせば,同居している親族がいるにもかかわらず,いないかのような虚偽記載又は不記載がされた場合とは異なり,当然に許可の審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなる具体的危険があるとはいえないというべきである。」
(11)
「イ

原判決21頁4行目の「ア

そこでまず,本件更新申請に係る事情」を

そこで,次に,本件更新申請の審査に係る諸事情」と改め,6行目の「同年」
の前に「被控訴人が」を加え,9行目の「同年10月」を「同月」と,23行目の「平成25年2月」を「同月」とそれぞれ改める。
(12)

原判決22頁5行目の「イ(ア)」を「ウ(ア)」と改める。

(13)

原判決23頁13行目の「更新許可申請」を「更新申請」と,同行目の
「上記ア」を「上記イ」と,19行目の「ことになった」を「こととなる具体的危険があった」とそれぞれ改め,20行目の「重要な事項」の次に「についての虚偽の記載」を加える。
(14)

原判決24頁8行目の「更新申請」を「本件更新申請」と,12行目の
「平成23年」を「同年」と,同行目から13行目にかけての「怒鳴りつけ」を「怒鳴り散らし」と,14行目の「怒鳴ったのは,同人ら」を「怒鳴り散らしたのは,妻や長男」とそれぞれ改める。
(15)
2
原判決25頁6行目冒頭から21行目末尾までを削る。

当審における控訴人の主張に対する判断
(1)

原判決の判断基準の当否について
控訴人は,上記第2の3(2)アのとおり,同居親族書に同居していない
者を同居親族として記載すること自体が重要事項虚偽記載に当たる旨主張する。
しかしながら,上記のような記載が同居親族としていかなる者がいるかについての虚偽記載に当たることは言うまでもないが,銃刀法5条1項柱書きは,虚偽記載の対象について「重要な事項」と一定の事項に絞り込んだ上で,このような重要な事項については虚偽記載があっただけで直ちに所持許可の更新をしてはならないとしていることからして,虚偽記載された事項が許可の審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなる具体的危険があるかどうかを基準にして判断されるべきものと解されること,同居親族書の提出を義務付けた立法趣旨からして,同居していない者を同居親族として記載すること自体が当然に重要事項虚偽記載に当たるということはできないことは,上記1(9),(10)のとおり訂正して引用した原判決の説示するとおりであって,控訴人の上記主張は採用することができない。

控訴人は,上記第2の3(2)イのとおり,重要事項虚偽記載については,
18号事由と同様に,処分行政庁の判断が合理的根拠を有するか否かを検討・判断すべきである旨主張する。
確かに,18号事由の該当性の判断については,都道府県公安委員会の判断が合理的であったか否かを検討する判断基準を採用するのが相当であるが,その理由は,銃刀法5条1項18号自体が自傷他害のおそれがあると「認めるに足りる相当な理由がある」ことをもって欠格事由と定めているという文理と,自傷他害のおそれがあるか否かについての判断が,許可の更新を申請した者に関する様々な事情を総合的に勘案した上での予測的・専門的判断を要するものであることから,調査権限を行使し得る処分行政庁の第一次的な判断を尊重するのが合理的であるという点とにあると解される。
これに対し,重要事項虚偽記載については,その有無の判定を処分行政庁の合理的な判断に委ねるような文言とはなっておらず,また,同居親族書の虚偽記載が「重要な事項」についてのものであるか否かの判断は,上記のように,許可の更新を申請した者に関する様々な事情を総合的に勘案した上での予測的・専門的判断を要するものでは必ずしもなく,客観的に判断することが可能であって,
処分行政庁の第一次的な判断を尊重するのが合理的であるとはいえないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2)

同居親族書における女性配偶者の別居の事実の重要性について
控訴人は,上記第2の3(3)のとおり,配偶者暴力の特質等に鑑みると,
同居親族書における女性配偶者が別居した事実は重要であり,これを端緒として,銃砲の所持許可の更新の申請をした者について自傷他害のおそれがある者に当たるか否かの18号事由の有無を審査することができるところ,実際には女性配偶者と別居しているにもかかわらず,同人を同居親族として記載することは,更新を許すべきでない者に更新を許してしまうおそれがあり,原判決はこの点を過小評価している旨主張する。
しかしながら,銃刀法7条の3及び4条の2が,更新申請書の添付書類の一つとして同居親族書の提出を義務付けている立法趣旨は,上記1(10)において原判決を訂正して説示したとおりであって,同居親族書の記載から申請者本人について18号事由の有無を調査・検討することができたとしても,それは事実上のものにすぎないのであって,上記各規定がそのことを本来的に予定したものと解することはできない。
また,一方配偶者による暴力に耐えかねた結果,他方配偶者が別居に至るという特質・実態についても,確かにこれ自体を否定することはできないとしても,暴力を振るった一方配偶者が別居した他方配偶者に付きまとったり,その行方を執拗に追い求めるなど更なる暴力に及び,他方配偶者の生命又は身体が重大な危害を受けるおそれが看取できるような行動に出ていればともかく(その場合は,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に基づく保護命令の対象となり得る。),そうではなく単に別居が継続しているにとどまるのであれば,むしろ別居という物理的離隔によって,別居した配偶者の生命,身体又は財産が害される危険は,当面は回避されたとみるべきであって(同法による保護命令も,
接近禁止命令や退去命令など配偶者間の物理的離隔を企図し
ている。),控訴人の主張は,一方配偶者の別居の事実を過大視して他方配偶者による暴力と殊更結び付けて理解しようとするものであって相当でない(むしろ,そのようなトラブルのあった配偶者が同居しているということが他害のおそれに結び付くということもできる。なお,本件においては,被控訴人が,妻に暴力を振るったために妻がやむなく別居するに至ったとの事実も,また,別居後,居所が分からない妻にそれを明らかにするよう迫ったとか,
妻のあとを追いかけ回したといっ
た事実も認められないから,直ちに18号事由があるということもできない。)。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(3)

本件同居親族書における虚偽記載の重要事項虚偽記載該当性について控訴人は,上記第2の3(4)アのとおり,銃刀法7条の3及び4条の2
が更新申請書の添付書類の一つとして同居親族書の提出を義務付けた立法趣旨が,不適格親族の有無を判断することのみならず,申請者自身の18号事由該当性を判断する重要な端緒となることにもあるから,同居親族の正確な記載はそれ自体「重要な事項」に当たる旨主張する。
しかしながら,上記各規定の立法趣旨が前者にあり,本来的に後者まで含んでいるとは解されないことは,上記(2)において説示したとおりであるから,
同居親族の正確な記載が一律に
「重要な事項」
であるということはできない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。

また,控訴人は,上記第2の3(4)アのとおり,仮に同居親族の正確な
記載がそれだけでは「重要な事項」に当たらず,原判決の判断基準に依拠するとしても,同居親族の虚偽記載が「重要な事項」についてのものであるとした処分行政庁の判断が合理的根拠に基づくか否かについても,検討されるべきであり,その際,審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなる結果までは要求すべきではなく,
その危険があれば足りるものと考えるべきである旨
主張する。
しかしながら,同居親族の虚偽記載が「重要な事項」についてのものであるか否かの判断について,処分行政庁の合理的な判断に委ねるような規定はなく,処分行政庁の第一次的な判断を尊重することに合理性があるともいえないことは,上記(1)イにおいて説示したとおりである。また,確かに,審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなる結果まで必要であるとすると,許可の有効期間満了まで最短1か月間の期間で審査を終了させることが事実上できなくなる蓋然性が高いから相当ではないが,逆に審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなる抽象的危険があれば足りるとすると,重要事項虚偽記載があるとして更新が許可されない範囲を不当に拡大することにつながりかねないから,これもまた相当ではないというべきである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(4)

虚偽記載の主観的要件について
控訴人は,上記第2の3(5)アのとおり,虚偽記載をした者において,故
意又は悪意に限らず,少なくともこれらに相当するような重大な過失が認められる場合は,不許可事由に当たるとするのが相当である旨主張する。しかしながら,
重要事項虚偽記載が不許可事由とされている趣旨及び重要
事項虚偽記載に当たると認められれば,更新申請は許されないという効果の重大性に照らすと,故意がある場合に限るのが相当であることは,原判決が説示したとおりである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができないが,上記のとおり,本件親族同意書に重要事項虚偽記載があったということはできないから,被控訴人における虚偽記載の故意の有無については,判断する必要はない。3
結論
以上によれば,
本件更新不許可処分の取消しを求める被控訴人の請求を認容

した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第17民事部

裁判長裁判官

川神
裁判官

飯畑
裁判官

森裕勝之剛
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