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国税の予納額の還付請求事件
事件番号平成26(行ウ)178
事件名国税の予納額の還付請求事件
裁判年月日平成28年10月28日
法廷名東京地方裁判所
判示事項国税の予納申出書を提出してされた納付が,国税通則法59条1項2号の要件に該当しない不適法な納付であるとされた事例
裁判要旨国税のいわゆる予納として所定の予納申出書を提出してされた納付につき,更正処分等を受ける可能性については想定していたことがうかがわれても,修正申告をすることを予定していたとまでは認めることができない一方,おおむね6か月以内の最近において更正により納付すべき税額の確定することが納付時に確実であったことの主張立証が国においてされないなどの事情の下においては,国税通則法59条1項2号の「最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」として納付する旨を税務署長に申し出た場合に当たるとはいえず,不適法な納付であるとされた事例
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平成28年10月28日判決言渡
平成26年(行ウ)第178号

国税の予納額の還付請求事件

主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
主位的請求(還付金としての還付請求)
被告は,原告に対し,5億1000万円並びにこれに対する平成23年12月8日から平成25年12月31日まで年4.3パーセントの割合による金員及び平成26年1月1日から支払済みまで年1.9パーセントの割合による金員を支払え。

2
予備的請求(過誤納金としての還付請求)
被告は,原告に対し,5億1000万円並びにこれに対する平成24年1月8日から平成25年12月31日まで年4.3パーセントの割合による金員及び平成26年1月1日から支払済みまで年1.9パーセントの割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,原告が,亡父からの相続に係る相続税について申告納税額に不足があったとして自身が国税通則法(以下「通則法」ともいう。)59条1項2号に基づき被告国に納付したとされている金員は,同号の要件に該当しないのに納付された無効の予納金であるとして,主位的に,その還付金としての還付及び同法58条1項1号所定の納付の日の翌日から支払済みまでの還付加算金の支払を,予備的に,その過誤納金としての還付及び同項3号,同法施行令24条2項5号所定の納付の日の翌日から起算して1月を経過する日から支払済み
までの還付加算金の支払を求める事案である。
1
関係法令等の定め
(1)相続税に関する定め
相続税法27条1項は,相続により財産を取得した者は,相続税額があるときは,その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨を定め,同法33条は,期限内申告書を提出した者は,その申告書の提出期限までに,その申告書に記載した相続税額に相当する相続税を国に納付しなければならない旨を定めるところ,この期限は通則法2条8号に規定する法定納期限に当たる。(2)延滞税に関する定め

延滞税の納付義務
通則法60条1項1号は,納税者は,期限内申告書を提出した場合において,当該申告書の提出により納付すべき国税をその法定納期限までに完納しないときは,延滞税を納付しなければならない旨を定める。


延滞税の額の計算
通則法60条2項は,延滞税の額は国税の法定納期限の翌日からその国税を完納する日までの日数に応じ,その未納の税額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額とし,ただし,納期限までの期間又は納期限の翌日から起算して2月を経過する日までの期間については,その未納の税額に年7.3パーセントの割合を乗じて計算した額とする旨を定める。なお,同法35条2項2号は,更正通知書に記載された更正により納付すべき税額に相当する国税の納税者は,その国税をその更正通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日までに国に納付しなければならない旨を定める。


延滞税の免除
通則法63条6項4号,同法施行令26条の2第2号は,国税局長,税
務署長又は税関長(以下「税務署長等」という。)は,火薬類の爆発,交通事故その他の人為による異常な災害又は事故により,納付すべき税額の全部若しくは一部につき申告をすることができず,又は国税を納付することができない場合(その災害又は事故が生じたことにつき納税者の責めに帰すべき事由がある場合を除く。)には,当該国税に係る延滞税につき,その災害又は事故が生じた日からこれらが消滅した日以後7日を経過した日までの期間に対応する部分の金額を限度として,免除することができる旨を定める。
「人為による異常な災害又は事故による延滞税の免除について」(平成13年6月22日徴管2-35ほか。以下「延滞税免除通達」という。)は,通則法63条6項の規定による延滞税の免除については,税務職員の誤った申告指導(納税者が信頼したものに限る。)その他の申告又は納付について生じた人為による障害(以下「人為による納税の障害」という。)が同法施行令26条の2第2号に規定する「人為による異常な災害又は事故」に該当するとして,「1
令解釈の明確化等」,「3
「4

誤指導」,「2

申告書提出後における法

申告期限時における課税標準等の計算不能」,

振替納付に係る納付書の送付漏れ等」と並列して「5

その他類似

事由」として,上記1から4までに掲げる場合のほか,これらに類する人為による納税の障害により納付すべき税額の全部又は一部につき申告又は納付することができなかったこと,その人為による納税の障害が生じたことにつき納税者の責めに帰すべき事由がないことのいずれにも該当するときは,その人為による納税の障害により申告又は納付することができなかった国税に係る延滞税につき,その人為による納税の障害の生じた日(その日が法定納期限以前のときは法定納期限の翌日とする。)から納税者がその人為による納税の障害の消滅を知った日以後7日を経過した日までの期間に対応する部分の金額を限度として,免除することができる旨を定め
る。
(3)国税の還付に関する定め

還付
通則法56条1項は,税務署長等は,還付金又は国税に係る過誤納金(以下「還付金等」という。)があるときは,遅滞なく,金銭で還付しなければならない旨を定める。


充当
(ア)

通則法57条1項は,税務署長等は,還付金等がある場合において,
その還付を受けるべき者につき納付すべきこととなっている国税があるときは,アの還付に代えて,還付金等をその国税に充当しなければならず,この場合において,その国税のうちに延滞税又は利子税があるときは,その還付金等は,まず延滞税又は利子税の計算の基礎となる国税に充当しなければならない旨を定める。
国税通則法基本通達(徴収部関係)(昭和45年6月24日付け徴管2-43ほか国税庁長官通達。以下「通則法基本通達」という。)第57条関係2は,同項の「納付すべきこととなっている国税」とは,納付すべき税額が確定した国税で,同法施行令23条に規定する充当適状にある国税をいう旨を定める。
(イ)

通則法57条2項は,(ア)の充当があった場合には,政令で定める
充当をするのに適することとなった時に,その充当をした還付金等に相当する額の国税の納付があったものとみなす旨を定め,同法施行令23条1項本文は,この充当をするのに適することとなった時(充当適状)は,充当に係る国税の法定納期限と還付金等が生じた時とのいずれか遅い時とする旨を定める。
通則法基本通達第57条関係9は,更正決定等その他の処分により生じた還付金等について,同法施行令23条1項の「還付金等が生じた時」
とは,その更正通知書等を発した時をいうものとする旨を定める。(ウ)

通則法57条3項は,税務署長等は,(ア)の充当をしたときは,そ
の旨をその充当に係る国税を納付すべき者に通知しなければならない旨を定める。

還付加算金
通則法58条1項柱書は,税務署長等は,還付金等を還付し,又は充当する場合には,次の各号に掲げる還付金等の区分に従い当該各号に定める日の翌日からその還付のための支払決定の日又はその充当の日(同日前に充当をするのに適することとなった日がある場合には,その適することとなった日)までの期間の日数に応じ,その金額に年7.3パーセントの割合を乗じて計算した金額(以下「還付加算金」という。)をその還付し,又は充当すべき金額に加算しなければならない旨を定め,同項各号は以下の旨を定める。

還付金及び次に掲げる過納金

当該還付金又は過納金に係る国税の納

付があった日(その日が当該国税の法定納期限前である場合には,当該法定納期限)

更正若しくは通則法25条の規定による決定又は賦課決定(以下
「更正決定等」という。)により納付すべき税額が確定した国税(当該国税に係る延滞税及び利子税を含む。)に係る過納金(2号に掲げるものを除く。)


納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税で納税の告知があったもの(当該国税に係る延滞税を含む。)に係る過納金


更正の請求に基づく更正(当該請求に対する処分に係る不服申立て又は訴えについての決定若しくは裁決又は判決を含む。)により納付すべき税額が減少した国税(当該国税に係る延滞税及び利子税を含む。)に
係る過納金

その更正の請求があった日の翌日から起算して3月を経過

する日と当該更正があった日の翌日から起算して1月を経過する日とのいずれか早い日(その日が当該国税の法定納期限前である場合には,当該法定納期限)

前二号に掲げる過納金以外の国税に係る過誤納金

その過誤納となっ

た日として政令で定める日の翌日から起算して1月を経過する日
同法施行令24条2項5号は,通則法58条1項3号に掲げる過誤納金のうち,納税申告書の提出により納付すべき税額が確定した国税(当該国税に係る延滞税及び利子税を含む。)に係る過納金,所定の源泉徴収による国税に係る過誤納金,所定の自動車重量税に係る過誤納金及び所定の登録免許税に係る過誤納金以外の過誤納金について,同号に規定する政令で定める日は,当該過誤納金に係る国税の納付があった日(その日が当該過誤納金に係る国税の法定納期限前である場合には,当該法定納期限)とする旨を定める。

国税の予納額の還付の特例
(ア)

通則法59条1項は,納税者は,同項各号に掲げる国税として納付
する旨を税務署長に申し出て納付した金額があるときは,その還付を請求することができない旨を定め,同項各号は,以下のとおり定める。一
納付すべき税額の確定した国税で,その納期が到来していないもの

最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税
通則法基本通達第59条関係1は,同項2号の「最近」とは,おおむ
ね6月以内をいうものとする旨を定める。
(イ)

通則法59条2項は,(ア)に該当する納付があった場合において,
その納付に係る国税の全部又は一部につき国税に関する法律の改正その他の理由によりその納付の必要がないこととなったときは,その時に国
税に係る過誤納があったものとみなして,アないしウの規定を適用する旨を定める。
通則法基本通達第59条関係3は,予納の目的となった通則法59条1項2号に規定する国税が,その申出に係る国税の確定予定日を経過しても確定しないときは,税務署長等において,その確定が確実であると認められるものを除き,その確定予定日を経過した日に過誤納があったものとして取り扱う旨を定める。
(ウ)

通則法基本通達第59条関係4は,国税の予納をした場合において,
その国税に延滞税又は利子税が課されるときは,その延滞税又は利子税の計算の終期は,予納をした日とする旨を定める。
(4)延滞税及び還付加算金の割合の特例

平成23年から平成25年までの特例
(ア)

租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの。アに
おいて同じ。)93条1項括弧書きは,各年の前年の11月30日を経過する時における日本銀行法15条1項1号の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4パーセントの割合を加算した割合を特例基準割合という旨を定めていた。
(イ)

租税特別措置法94条1項は,通則法60条2項に規定する年7.
3パーセントの割合((2)イ参照)は,その規定にかかわらず,各年の特例基準割合が年7.3パーセントの割合に満たない場合には,その年中においては,当該特例基準割合(当該特例基準割合に0.1パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)とする旨を定めていた。
(ウ)

租税特別措置法95条は,各年の特例基準割合が年7.3パーセン
トの割合に満たない場合には,通則法58条1項に規定する還付加算金の計算の基礎となる期間であってその年に含まれる期間に対応する還付
加算金についての同項の規定の適用については,同項中,年7.3パーセントの割合とある((3)ウ参照)のは,(ア)の特例基準割合(当該特例基準割合に0.1パーセント未満の端数があるときは,これを切り捨てる。)とする旨を定めていた。
(エ)

平成25年法律第5号附則90条1項により,(ア)ないし(ウ)の規
定は,平成25年12月31日までの期間に対応する延滞税及び還付加算金(「利子税等」に延滞税及び還付加算金が含まれることにつき租税特別措置法96条括弧書き)について適用される。
(オ)

平成23年から平成25年までの期間における日本銀行法15条1
項1号の規定により定められる商業手形の基準割引率は,年0.3パーセントであった。

平成26年以降の特例
(ア)

平成25年法律第5号による改正後の租税特別措置法93条2項は,
特例基準割合とは,各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における短期貸付けの平均利率の合計を12で除して計算した割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に,年1パーセントの割合を加算した割合をいう旨を定める。
(イ)

租税特別措置法94条1項は,通則法60条2項に規定する年7.
3パーセントの割合((2)イ参照)は,その規定にかかわらず,各年の特例基準割合が年7.3パーセントの割合に満たない場合には,その年中においては,当該特例基準割合に年1パーセントの割合を加算した割合(当該加算した割合が年7.3パーセントの割合を超える場合には,年7.3パーセントの割合)とする旨を定める。
(ウ)

租税特別措置法95条は,各年の特例基準割合が年7.3パーセン
トの割合に満たない場合には,通則法58条1項に規定する還付加算金の計算の基礎となる期間であってその年に含まれる期間に対応する還付
加算金についての同項の規定の適用については,同項中,年7.3パーセントの割合とある((3)ウ参照)のは,(ア)の特例基準割合とする旨を定める。
(エ)

平成25年法律第5号附則90条1項により,(ア)ないし(ウ)の規
定は,平成26年1月1日以後の期間に対応する延滞税及び還付加算金(「利子税等」に延滞税及び還付加算金が含まれることにつき租税特別措置法96条括弧書き)について適用される。
(オ)

平成26年の(ア)の財務大臣が告示する割合は年0.9パーセント,
平成27年及び平成28年のそれは年0.8パーセントである(平成25年12月12日財務省告示第396号,平成26年12月12日財務省告示第386号,平成27年12月11日財務省告示第394号)。2
前提事実(後掲各証拠等及び弁論の全趣旨により認められる。)
(1)aは,かねて山形県長井市で,「b」の屋号で不動産貸付業を営んでいた。(2)aは平成21年6月13日に死亡したところ,その相続人は,aの長女である原告と,亡き二男の子であるcの2名であった(甲2の1・2。以下,このaの死亡により開始した相続を「本件相続」という。)。
(3)原告及びc(以下「原告等」という。)は,長井税務署長に対し,本件相続について,平成22年4月12日,原告の納付すべき税額を3億5201万1400円,cの納付すべき税額を1086万8500円とする相続税の申告書を提出し(甲1。以下「本件申告」という。),これらの申告額は,翌同月13日に納付された(乙3,4)。
(4)仙台国税局調査査察部所属のd主査(以下「d」という。)らは,本件相続について,原告に対する相続税法違反の嫌疑により,国税犯則取締法に基づき,平成23年11月15日,長井市内の原告宅において,臨検,捜索及び差押をした(以下「本件捜索等」という。)。
(5)原告は,長井税務署長に対し,平成23年12月6日,原告等両名の名義
で,「予納する理由」欄に「確定手続未了のため」とのみ記して5億1000万円を予納する旨の国税の予納申出書(以下「本件予納申出書」という。)を提出し(甲3),翌同月7日,原告等両名の名義で上記金額を長井税務署に宛てて国庫に送金,納付した(甲4。以下「本件予納」といい,納付した5億1000万円を「本件予納金」という。)。
(6)原告は,長井税務署長に対し,平成24年11月30日,本件予納は原告が錯誤に陥った結果行ったものであり,これを撤回するとして,本件予納金の還付を請求する旨記載した「予納の撤回と予納金の還付請求書」と題する書面(以下「本件還付請求書」という。)を差し入れ(甲6),平成25年1月16日,本件予納金は国税通則法59条1項2号に規定する予納金に該当しないことは明らかであるから,上記書面のとおり本件予納金の還付を改めて請求する旨記載した「予納金還付の再請求書」と題する書面を差し入れた(甲7)。
(7)原告は,被告国に対し,平成26年4月18日,本件予納金5億1000万円の還付金としての還付及びこれに対する本件予納の日の翌日である平成23年12月8日から支払済みまで租税特別措置法所定の当時までの特例基準割合による還付加算金の支払を求める本件主位的請求に係る訴えを提起した(顕著な事実)。
(8)長井税務署長は,原告等に対し,本件相続について,平成26年10月30日付けで,原告の納付すべき税額を4億0759万7000円,cの納付すべき税額を4億1809万0900円とする更正とともに,これらと本件申告に係る納付すべき税額との差額である「更正により納付すべき税額」に対して35パーセント相当の重加算税を賦課する旨の決定を記載した「相続税の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」をそれぞれ発した(乙5,6,27,29。以下「本件各当初更正等」という。)。
(9)原告は,被告国に対し,平成27年6月17日,本件予納金の過誤納金と
しての還付とともに,還付加算金の支払の起算日を本件予納の日の翌日から起算して1月を経過する日である平成24年1月8日に繰り下げて求める内容の本件予備的請求を追加して訴えを変更した(顕著な事実)。
(10)長井税務署長は,原告等に対し,本件相続について,平成27年11月24日付けで,一旦,原告等の納付すべき税額を本件申告額のとおりとする更正とともに,重加算税の額を零円に変更する旨の決定(以下「本件各減額再更正等」という。)を記載した「相続税の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」をそれぞれ発し(乙17,18),さらに,同日付けで,原告等の納付すべき税額を本件各当初更正等と全く同額とする更正とともに,本件各当初更正等におけるのと同様の計算によりそれと全く同額の重加算税を賦課する旨の決定(以下「本件各増額再々更正等」という。)を記載した「相続税の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」をそれぞれ発した(乙19,20,28,30)。
(11)長井税務署長は,平成27年11月24日付けで,原告等に還付すべき額として別紙2のとおり計算した過誤納金及び還付加算金を,本件各増額再々更正等により原告等が新たに納付すべきこととなった税額として別紙3のとおり計算した国税に充当し(以下「本件各充当」という。),原告等に対し,それぞれその旨の通知を発した(乙22,23)。本件各充当に際しては,原告等に還付すべき還付金等については,本件予納の日の翌日である平成23年12月8日から平成27年11月24日(充当適状日)までの期間を計算の基礎とする還付加算金が計上される(別紙2の第1及び第2の各2(2))一方で,原告等が更正により納付すべき税額については,同期間を計算の基礎とする延滞税は,通則法63条6項4号,同法施行令26条の2第2号の解釈に係る延滞税免除通達5を適用して免除されている(乙24,25。別紙3の第1及び第2の各3(5))。
本件各充当後の本件相続に係る相続税の未納額は,本税及び延滞税は原告
等両名共について零円,重加算税は原告について1013万1205円,cについて7422万5495円である(乙21)。
3
主な争点と当事者の主張
本件の主な争点は,(1)通則法59条1項各号以外にも適法な納付とされる予納があり,これを還付金として請求できるか(争点1,主位的請求関係),(2)本件予納の通則法59条1項2号該当性(争点2,予備的請求関係),及び(3)本件各充当が信義則に反する権利の濫用として無効であるか(争点3)であり,これらに関する当事者の主張は,以下のとおりである。
(1)通則法59条1項各号以外にも適法な納付とされる予納があり,これを還付金として請求できるか(争点1,主位的請求関係)
(原告の主張)

被告は,予納には通則法59条1項各号に規定するもの以外に存在しない旨主張する。しかし,国税犯則調査を行ういわゆる査察においては,査察官が犯則嫌疑者に対して延滞税の発生を止める手段として,通則法59条1項2号に該当しない「最近において納付すべき税額の確定することが、、
確実でないと認められる国税」の予納の慫慂が往々にして行われている。すなわち,犯則調査は,強制調査に及んだからといって,必ずしも6か月程度でその調査が終了するものではなく,むしろ実務上の経験則からいえば,その調査には1年あるいは1年半,時には2年以上もの長期間を要する場合が多く,その終了までにどれくらいの期間を要するのかはあらかじめ予想することができないものであり,しかも,必ず告発・起訴に至るものではなく,脱税の立証ができなかったことから課税部に記録を引き継いで終わるということもままある。犯則調査における予納は,そもそも嫌疑者において,「最近(おおむね6か月以内)において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」として納付する旨を申し出て納付することなどできない筋合いのものである。


本件予納は,上記のような犯則調査を契機としてされたものであり,還付を請求することができないとされる通則法59条1項各号の予納には該当しないが,正当収入として取り扱われる適法な予納である。したがって,原告は,同法56条1項の還付金としてその還付を請求することができ,同項により,税務署長等は,遅滞なく還付しなければならない。

(被告の主張)

国税は納付すべき税額が確定手続を経てその納期が到来したときに納付するのが建前であるところ,確定前又は納期限前に納付がされた場合には,その納付は不適法な納付であり,過誤納金として還付又は充当されるべきものであるが,このような納付金を過誤納金として還付することは,かえって納税者及び税務官署にとって煩雑である場合がある。そこで,通則法59条1項は,納税者がその納付を申し出た場合に限り,適法な納付として取り扱うことが合理的であるとして,予納として国税の納付があった場合の還付の特例として定められたものである。
そして,予納制度には,同条1項1号に係るものと同項2号に係るものとが定められているところ,これら以外に国税の予納制度は存在しない。予納の沿革は,従前は通達において行政上の取扱いとして処理されていたものを,国税徴収法(昭和37年法律第67号による改正前のもの)163条により,法律上規定し,同条の規定を継受したものとして通則法59条を規定したというものであり,この沿革からして,同条1項各号に係るもの以外に国税の予納制度は存在しないというべきであり,予納を法律上規定したにもかかわらず,あえて法律上規定しない予納というものを予定していたと解する理由がない。
税務署等においては,滞納の未然防止等に関する取組の一環として,納税者が調査税額の確定前に納付の意思を示した場合に早期納付による滞納の防止を図るため,賦課部門が予納の積極的な利用勧奨を行うこととされ
ており,犯則調査においても,嫌疑者が確定行為前に納付の意思を示した場合には,予納の勧奨を行っているが,ここでいう予納が通則法59条1項に係る予納であることは,勧奨の際に交付する「予納の利用について」に,通則法59条及び通則法基本通達第59条関係1を引用して記載されていることからも明らかである。実務上,通則法59条1項各号に該当しない適法な予納なるものは存在せず,また,このような予納を正当収入として取り扱っている実務上の慣行も,そのような取扱いを定めた通達等も存在しない。
通則法59条1項各号に該当しない納付金については,単に過誤納金として処理されるものであって,同項の反対解釈から還付請求ができるものではない。

通則法56条1項の「還付金」とは,適法に納付・徴収されたが,後に租税法の計算規定に従って計算したところ,国が保有する正当な理由がなくなったため,納税者に還付される税額をいい,「国税に関する法律の規定による国税の還付金」(同法2条6号)のことであり,その還付は,国税に関する法律に特別の規定が存する場合に限り認められる。したがって,通則法56条1項に基づく「還付金」の還付請求権が発生する余地はなく,主位的請求に係る原告の主張は主張自体失当である。

(2)本件予納の通則法59条1項2号該当性(争点2,予備的請求関係)(原告の主張)

本件予納の経緯等
原告は,本件捜索等において,次のとおり予納の慫慂を受けた。すなわち,本件捜索等の日には,仙台国税局調査査察部の20名ないし40名もの多数の係官が,午前8時30分頃から深夜まで長時間にわたって,原告の身体や,原告方の居宅,蔵等についての大規模な捜索を行い,その過程で,蔵から原告所有の一千万円ずつの束にまとめられた現金4億1000
万円並びにe銀行f支店の原告名義の約1億6000万円の預金及び約2億円相当の原告名義の株式等を発見,確認するなどしたことから,原告がそれらは自己のものであると述べているにもかかわらず(原告は,昭和56年頃,aから,bの屋号で営む不動産賃貸業の経営を引き継ぎ,「10代目g」としてその事業主となり,以来,原告自身が,「g」の名前を看板として使用し,不動産賃貸業を営んできていたものである。),係官らは,これらは全てaの財産であり,原告が本件申告の際にこれらを隠して申告し巨額の脱税をしたものと決め付け,原告を責め立てた。原告は,長くC型肝炎のインターフェロン治療後の後遺症を患っており,全身倦怠感が強い状況下で,突然の大規模かつ長時間にわたる捜索差押手続を受けたことにより,疲労困憊するとともに,言いようのない不安と恐怖に襲われるに至ったが,そのような中で,原告に応対していた係官が,原告に対し,多額の財産が申告漏れになっており,税金が発生するのは間違いなく,そうなれば延滞税も相当な額になるから,前もって税金を払っておいた方がよい,現金があるのだからできるだけ多くの予納をした方がいい,と相続税の予納をするようせかした。その後も,dは,原告が相続税を脱税しているとの一方的な決め付けの下で,連日にわたる質問調査を行ったため,原告は,言いようのない焦りと不安の気持ちに陥れられ,その結果,本件申告手続に関わったh税理士に相談し,そのアドバイスもあって,自己は脱税しておらず,なぜ予納をしなければいけないのか納得できず,腑には落ちなかったものの,万が一脱税をしていたということにされてしまったときに備え,いわば条件付きでその慫慂に応じ,本件予納をするに至ってしまったものである。
以上のとおり,原告のほうから予納する意思を示したなどという事実はなく,本件予納金額については,i税理士事務所の方でdと連絡を取り,5億1000万円という金額の提示があったことから,原告は,急きょ巨
額の現金を準備して,これを受け入れることとしたものである。

本件予納が通則法59条1項2号の予納に該当しないこと
通則法59条1項2号の予納といえるためには,納税者において,申出時に,その申出時からおおむね6月以内となる日を,納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税の確定予定日であるとして具体的に申し出ている必要があり(通則法基本通達第59条関係3からも明らかなように,同号の予納であるとして予納をする場合には,必ず国税の確定予定日の申告をすることが必要であるという扱いがされている。),逆にいえば,そのような確定予定日を定めないまま行われた国税の予納は,同号の予納とはいえないと解される。
しかるに,原告は,本件予納申出書の「納期限」欄や「予納期限」欄に日付の記載はしておらず,正に延滞税の発生を止めるための便法として本件予納を行ったものであることは明らかであり,このような記載をもって,通則法59条1項2号の「最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」として納付する旨を長井税務署長に申し出たなどと解することは不可能である。仮に長井税務署長において,同号の予納としての納付を受けるつもりであったのであれば,確定予定日についての記載要領に基づいて「納期限」欄や「予納期限」欄への確定予定日の記載を求めなければならないはずであるが,これを求めないまま本件予納申出書を収受しているということは,長井税務署長においても,同号の予納ではなく,延滞税の発生を止めるための便法としての予納であることを承知の上で,これを収受したものというほかはない。本件予納は,通則法59条1項2号の予納に該当しないものであることは明らかである。被告が指摘する仮の修正申告書なるものは,もともと税務署に提出することを何ら予定していないものであって,単に,査察調査の過程で脱税を疑われ,予納を慫慂されたことから,脱税の疑いが晴れた暁には,予納金
に還付加算金が賦課されて還付されてくることをも念頭に,疑われている脱税額に見合う予納額を計算するための計算方法,すなわち便法として用いただけのものであって,これを作成したことがあったからといって,原告において修正申告をする意思を有していたことを示すものには何らならない。
被告は,民法706条を援用して,納税者が予納金の返還(還付)を求め得ないのは,納税者自身が任意に国税として納付する旨を税務署長に申し出て納付するという行為の性質から当然に生ずる法律効果と解すべきであるなどと主張するが,同条と同様の趣旨は,通則法59条1項1号の「納付すべき税額の確定した国税で,その納期が到来していないもの」には当てはまるとしても,これを納付すべき税額の確定前の国税である同項2号の予納についてすり替えて立論するのは,論理に大きな飛躍がある。同号の予納に該当するというためには,予納額そのものも,同項1号のような確定した税額に準ずるような,納付すべき税額とほぼ同じ金額で確定することが確実であることが要求されているものというべきである。この点,本件予納申出書には,5億1000万円という金額が納付すべき税額として確定することが確実であるなどとして申し出たものである旨の記載などは全くないのであるから,本件予納が同項2号の予納に該当しないことは明白である。
なお,原告は,本件予納につき,通則法59条1項2号に該当する納付であったが同条2項に定める事由があるために過誤納金となった旨の主張をするものではない。

本件予納金の還付請求権の存在
以上のとおりであるから,仮に,通則法59条1項各号に係るもの以外に国税の予納制度は存在しないとの被告の立論に拠った場合でも,本件予納金は同法56条1項の過誤納金に該当することとなるのであり,被告は,
なおのこと,原告が本件予納をした時点から,これを遅滞なく金銭で還付しなければならない法的義務を負い,原告が還付の請求をしたことにより,その還付すべき債務の存在は,より明確になったということができる。(被告の主張)

本件予納の経緯等
本件予納に至る経緯等は,次のとおりである。すなわち,①本件予納に先立ち,本件申告について仙台国税局課税第一部資料調査課所属の係官らによる課税調査が行われ,さらに,査察係官らによる査察調査が開始されて本件捜索等が行われたことにより,本件申告が過少申告であることが発覚した。②原告は,平成23年11月28日,dから,前記(1)の(被告の主張)アの「予納の利用について」の内容について説明を受けた。③原告は,h税理士及び同税理士事務所の担当者であるjに相談の上,本件予納をしたものであるが,原告が提出した本件予納申出書は,当時,通則法59条1項に規定された予納の利用勧奨をする際に,上記の「予納の利用について」とともに納税者に交付するものの一例とされていた様式を用いたものであった。


本件予納が通則法59条1項2号の予納に該当すること
納税義務は,税法の定める課税要件に該当する事実があれば抽象的に成立(発生)し,申告又は処分による確定手続を経て確定するにすぎず,国税の確定前であっても,納税者が,納税義務を前提として,その弁済として任意に予納をする場合には,債務の期限前弁済(民法706条)と同様の状況にあり,このような予納がされた場合,予納の前提とした納税義務が存しないなどの事情のない限り,納税者から返還(還付)を求め得ないのは,不当利得の一般法理からも導かれる当然の帰結である。したがって,納税者が「最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」として納付する旨を申し出て,税務署長がかかる申出を相
当と認めて納付を受けた場合には,適法な予納として成立しているとみるべきであって,客観的にみて当該国税が「最近において納付すべき税額の確定することが確実である」ものであったか否かによって,予納の成否が決せられるものではない。
そして,通則法59条1項2号に該当するものとして本件予納をしたと認められる以上,原告には本件申告に係る過少申告について修正申告の意思があったというべきであり,本件予納前後の具体的な事情を事後的に検討して,本件予納が同号の要件を満たすか否かを決すべきではない。しかるに,本件では,上記アのとおり,査察係官らが原告に対する本件捜索等を実施し,予納の積極的な利用をするよう勧奨を行った後,原告が「国税の予納申出書」と題する様式に,予納の理由を「確定手続未了のため」と記載するなどして,予納の申出をしたというものであり,これらの客観的状況からすれば,原告が通則法59条1項2号の国税として納付する旨を申し出て納付したものであることは明らかであるというべきである。なお,予納申出書の記載事項が法令により定められているわけではなく,予納申出書に予納の目的となった国税の確定予定日を記載しなければならないとする根拠もないところ,本件予納申出書についても,法令の根拠により記載事項が定められた書面ではなく,実務上の取扱いにより便宜的に作成されたものであって,本件予納申出書の「予納期限」欄に確定予定日の記載がされていないことをもって,同書面による予納の申出が,通則法59条1項2号に係る予納の申出の要件を欠くとはいえない。)。また,仮に原告の主観を検討するとしても,原告は,本件予納当時,少なくとも法令等に従った適法な予納として本件予納の申出をする認識を有していたといえるところ,①原告が主張する昭和55年ないし昭和56年頃における亡aの不動産賃貸業の事業承継の事実は虚偽であることが明らかであり,②原告が税務代理を依頼していたh税理士及びjは,原告の話
を基にして仮の修正申告書を作成して本件予納に係る予納金額を計算するなど,原告が近々修正申告をすることを想定していたところ,原告は,これを受け取り,dに提示しているのであり,原告としても,本件予納が本件申告に係る修正申告をすることを前提としたものであることを認識できる状況にあったことなどからすると,原告は,本件予納当時,「納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」があり,本件申告に係る修正申告を「最近において」行うものとして本件予納をする認識を有していたと認められる。

本件予納金の還付請求権の不存在
本件予納金は,平成27年11月24日,本件各減額再更正等により過誤納金となったが,同日,本件各増額再々更正等及び本件各充当がされたことにより,消滅した。本件各増額再々更正等又は本件各充当が取り消されない限り,本件予納金に係る被告の利得には法律上の原因がないとはいえないから,原告は,過誤納金としてその返還請求をすることはできない。
(3)本件各充当が信義則に反する権利の濫用として無効であるか(争点3)(原告の主張)
原告からの再三の請求にもかかわらず,本件予納金の還付債務を履行しようとはしないまま時日を経過させた上,このような債務不履行の状態下において,原告等に対し,本件各減額再更正等及び本件各増額再々更正等を行い,これによって本件各充当をしている被告の充当行為は,信義則に反する権利の濫用であって,まさに無効な行為であるというほかない。
(被告の主張)
本件予納金は,平成27年11月24日,本件各減額再更正等によって過誤納金となり(通則法56条1項),同日,本件各充当により消滅した。税務署長等は,同一の納税者につき還付金等と納付すべき国税が存在し,充当適状にあるときは,これら対当額において充当をしなければならないと
されているものであって,還付金等の発生時期からの時間経過によって充当の可否に影響があるものではない。信義則の適用は慎重にされるべきところ,本件において,長井税務署長やdら税務官庁関係者が,原告に対し,本件各増額再々更正等及び本件各充当を行わないなどという公的見解を表示したことはなく,当然のことながら,納税者である原告がその表示を信頼してその信頼に基づいて行動したこともないし,原告は,本件申告等により正規の相続税額との差額を免れていたところ,本件各増額再々更正等及び本件各充当により,不正の行為により免れていた差額等を納付することとなっただけであり,これら処分によって原告が経済的不利益を受けたとは到底いえないから,本件各充当に対する信義則の適用の是非を考えるべき特別の事情が存しないことは明らかである。
第3
1
当裁判所の判断
争点1(通則法59条1項各号以外にも適法な納付とされる予納があり,これを還付金として請求できるか(主位的請求関係))について
(1)通則法59条の沿革等は以下のとおりである(弁論の全趣旨)。ア
昭和26年徴管2-9「過誤納金の還付および充当ならびに還付加算金に関する取扱方基本通達」(二)3は,納税者が,将来納付すべき税金(徴収決定済であるといなとを問わない。)の予納を申し出て納付したときは,これを過誤納とせず,正当収入として取り扱い,納税者の希望する税目,納期に収納の処理(徴収決定未済の場合は事後徴収決定。)をなすものとする。」と規定していた。


昭和30年12月16日の閣議決定により設置された租税徴収制度調査会は,租税徴収制度改正の方策について諮問を受け,昭和33年12月8日付けで答申を取りまとめた。同答申の「第九」の「三」には,予納に関し,「現行制度においては,租税の予納に関する明文の規定がないが,納税の便宜を図るため,納税者は,納税義務の確定した租税で納期の開始前
のもの又は近い将来に納税義務の確実視される租税については,あらかじめ納付することができることとし,これに伴う所要の規定の整備を図るべきである。」とされていた。

上記答申を受けて,昭和34年4月20日,国税徴収法が同年法律第147号として成立し,昭和35年1月1日から施行されたところ,同法163条は,以下のとおり規定した。
「(国税の予納額の還付の特例)
第163条

納税者は,その申出により次に掲げる国税として納付した

金額があるときは,その還付を請求することができない。

納付すべき額が確定しているが,その納期が到来していない国税


最近において納付すべき額の確定が確実であると認められる国税

2
前項各号に掲げる国税として納付された国税の全部又は一部につき国税に関する法律の改正その他の理由によりその納付の必要がないこととなったときは,その時において過誤納金が納付されたものとみなして,前二条の規定を適用する。」


昭和37年4月2日,通則法が同年法律第66号として成立するのと同時に,同年法律第67号により国税徴収法が改正され,それぞれ同月1日から施行されたところ,この改正により従前の国税徴収法163条は削除され,代わって通則法59条は,以下のとおり規定した。同条は,現在まで1度も改正されていない。
「(国税の予納額の還付の特例)
第59条

納税者は,次に掲げる国税として納付する旨を税務署長に申

し出て納付した金額があるときは,その還付を請求することができない。

納付すべき税額の確定した国税で,その納期が到来していないも
の二
最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認め
られる国税

2
前項の規定に該当する納付があった場合において,その納付に係る国税の全部又は一部につき国税に関する法律の改正その他の理由によりその納付の必要がないこととなったときは,その時に国税に係る過誤納があったものとみなして,前三条の規定を適用する。」

(2)

検討
上記(1)の沿革によれば,通則法59条は,通則法が制定された際に,申出先の明確化及び予納の必要がないこととなったときにみなし適用をすべき法条の拡充がされているものの,予納の内容そのものについては,租税徴収制度調査会の答申を踏まえた昭和37年法律第67号による改正前の国税徴収法(以下「改正前徴収法」という。)163条における規定内容を継受したものであることが明らかである。
ところで,国税は,納付すべき税額が確定し,その納期が到来したときに納付するのが建前であるから,その確定前又は納期到来前に納付がされた場合には,その納付は不適法な納付であり,過誤納金として還付又は充当されるべきものであると考えられるところ,上記の答申は,従前明文の規定がなく行われていた租税の予納が無限定に汎用されることを懸念する一方,納税の義務の確定した租税で納期の開始前のもの又は近い将来に納税義務の確実視される租税であれば,納税者がその納付を申し出る限り,適法な納付として扱うのが合理的であり,納税の便宜にも適うことを考慮した上,このような租税に限って,あらかじめ適法に納付することができることとするのが相当であると結論したものであったと解される。そして,予納を認めることが合理的であると考えられた租税のうち,「納税義務の確定した租税で納期の開始前のもの」は,改正前徴収法163条1項1号及び通則法59条1項1号に結実し,「近い将来に納税義務の確実視され
る租税」は,改正前徴収法163条1項2号及び通則法59条1項2号に結実して,現在に至っていると考えられる。

以上のような立法の経緯によれば,通則法59条1項2号にいう「最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」として納付する旨を申し出て納付した金額とは,その納付の当時における状況に照らし,税額も含めて近い将来に納税義務の確定することが確実であると認められる国税につき,納税者が納付を申し出た金額を意味するというべきである。
そして,上記のとおり,通則法59条1項1号及び2号の規定された趣旨が,両号に規定された以外の予納を許すべきでないとの趣旨に基づくものであると考えられることに照らせば,納税者が両号のいずれにも該当しない予納であると申し出て納付をしたとしても,適法な納付と認めることはできず,その余の点につき判断するまでもなく,還付金としての還付請求はできないと解される。これに反する原告の主張は採用の限りでない。
2
争点2(本件予納の通則法59条1項2号該当性(予備的請求関係))(1)認定事実
前記第2の2の前提事実及び後掲各証拠によれば,本件予納前後の経緯について,以下の各事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。ア
原告は,a存命中の平成19年9月7日から所得税に関する税務調査を受け,原告が自ら「b」の屋号の不動産貸付業で稼いだり,aから贈与を受けたりした自己所有のものであると主張した預貯金その他の資産について,税務当局の担当官から,真実はaのものではないのかと疑われたことがあった。原告は,同調査の結果,一部の不動産収入の付け落としがあったことや一部の経費算入を認めない税務当局の見解を認めて,同年10月15日,平成16年ないし平成18年の過去3年分の所得税に係る修正申告をした。(甲9の3頁,乙32,原告本人33~34頁)


原告は,aが平成21年6月13日に死亡したことにより発生した本件相続に係る相続税の申告について,従前から税務処理を依頼していた長井市のk税理士の事務所に依頼したところ,k税理士は体調を崩しており,同事務所の事務員であるjは,原告名義の預貯金を相続財産に含めて申告するように勧めた。原告は,納得が行かず食い下がったが,同事務所に勤務するh税理士と話したところ,h税理士から,税理士的な視点で見ると,aからの相続財産であると疑われるものが混在していると諭された上,相続財産として申告したものが後で原告の固有の財産であることが分かれば還付を受けることができる旨を説明された。原告は,平成22年4月12日,長井税務署長に対し,このたび相続財産として申告する預貯金のうち原告名義の9429万7200円については,①原告自身の過去の勤労による対価等より成るもの,②aから実質的に生前贈与を受けたと考えられるもの(相続発生時には原告が事実上自分のものとして管理していたもので,贈与税の手続を踏んだものと踏んでいないもの),③名義は原告となっているが生前に贈与を受けたとは判断できないもの(相続財産となるであろうもの)が混在しており,これらについて,申告時点においては,区分が判然としないため,全額を相続財産に算入して申告している旨を注記した「相続税申告に当たっての説明事項」を添付して,作成税理士をk税理士とする相続税の申告書を提出した(本件申告)。その後,平成22年夏頃にk税理士は死亡した。(前提事実(2)及び(3),甲1,甲9の1~2頁,甲21,22,甲30の速記録部分1~5頁・12~15頁・35~36頁,原告本人32頁)


仙台国税局は,本件相続について,資料調査課において,平成23年10月4日,5日及び19日に長井市内の原告宅を訪問して調査をした後,調査査察部において,同年11月15日午前8時過ぎから,原告に対する相続税法違反の嫌疑により,係官数十名態勢で原告宅に臨場し,国税犯則
取締法に基づく本件捜索等をしたところ,午後3時頃から午後7時頃に掛けて,数か所の蔵から,順次合計4億1000万円余りの現金が発見され,税務係官らは,e銀行f支店の原告名義の口座に係る約1億6000万円の預金や原告名義とされている株式共々,原告がaからの相続財産を隠匿していたものであることを疑った。係官の1人は,原告に対し,申告漏れの税金が発生するのは間違いなく,延滞税も相当額になるから,前もって税金を払っておいた方がよく,納めてさえおけば多すぎたときには利息が付いて返るから,少しでも多く予納しておいた方がよい旨を述べた。同係官は,翌日,d及びl査察官と同道して原告宅を訪れ,同日から両名が調査を担当する旨を原告に告げるとともに,原告からは予納してもらうことになっているとして後の手続をdらに任せて辞去した。(前提事実(4),甲5,6,8,甲16の2~3頁,甲30の速記録部分6頁・17~18頁,甲31の1頁,乙10,11,原告本人3~5頁・16頁・25~26頁,弁論の全趣旨)

原告は,本件捜索等を受けた後,h税理士の事務所に架電し,査察時に予納という制度があり,延滞利息の発生を止められるという話を聞いたが,予納とは何かを尋ねると,後日,原告が同事務所に赴いた場で,同税理士は,最終的に課税されなければお金は戻ってくるし,延滞税を止めるには良い方法だ,国の言うことは聞いておいた方がよい旨言い,jは,予納とは予定納税のことで皆がしていることなので納めておいた方がよく,税務当局から相続財産であると疑われている財産が分かれば税額は計算してあげられる旨を述べた。jは,税務当局から相続財産であると疑われている財産を原告から聞き取り,間もなく,本件申告内容にこれらを付け加えて相続税の修正申告書の様式に入力したところ,原告において修正して納付すべき本税額は5億0336万8300円,cにおいて修正して納付すべき本税額は195万7700円(原告等両名の修正して納付すべき本税額
の合計5億0532万6000円)であると計算された。(甲5,31)一方,原告は,h税理士らから,予納できる金額は幾らまでかを尋ねられており,5億6000万円までなら準備できるとして,平成23年11月中にこれを準備した上,その旨h税理士に伝えると,同税理士は,計算された金額より多いがどうしようかと原告と相談した上で,準備できた全額を納付することについて税務当局と折衝した。税務当局は,h税理士に対し,納税見込額より大きいと還付加算金を付して還付しなければならないとして,多すぎる金額の納付には難色を示したため,h税理士は,その結論を原告に伝えて,予納額を5億1000万円とすることについて,原告の同意を取り付けた。この頃,上記のh税理士の事務所において試算された相続税額等を相続税の修正申告書の様式に印刷したもの(以下「本件仮の修正申告書」という。)が,税務署職員に提示された。原告は,同年12月6日,独りで長井税務署に赴き,窓口脇のテーブルで,「予納する理由」欄に「確定手続未了のため」とのみ記して5億1000万円を予納する旨の本件予納申出書を原告等両名の名義で作成して提出した。次いで翌同月7日,原告は,同額の本件予納金を国庫に納付した(本件予納)。(前提事実(5)。エ全体につき,甲8の2頁,甲16の6頁,甲30の速記録部分26~31頁,甲33,乙14,15,34,原告本人4~6頁・12~19頁)
なお,被告は,dは原告と同月8日に面接し,その際,原告が本件仮の修正申告書を提示した旨主張し,これに沿うd作成の陳述書(乙11,26)がある。しかし,他方において,同日の面談を否認する原告作成の陳述書(甲16)が存在し,同日における面談の存在を認めるに足りる客観的な証拠がないことからすると,上記のd作成の陳述書の記載を直ちに信用することはできない。

dらが同月9日付けで作成した原告に関する質問てん末書には,原告が
「まだ査察調査中で申告しなかった相続財産やその金額もはっきりしていない状態で,修正申告ができないことは十分理解しておりますが,何とか延滞税を少なくできる方法はないかとh税理士に相談したところ,延滞税が増えない予納という制度があることを知り,予納することにしたのです。」「本来なら,査察調査の終了後に修正申告をして不足税額を納付するべきなのでしょうが,延滞税が多額になるのが心配で予納制度を利用させていただきました。」と述べた旨の記載がされている(甲33,弁論の全趣旨)。

原告はその後,引き続き仙台国税局の調査を受けながら相続財産を隠匿したとの事実は争いつつ,h税理士に今後どうなっていくのかを時折尋ねていたが,h税理士からはっきりした回答はなかった。h税理士は,平成24年5月頃,仙台市で開業するm税理士との電話で原告の件を相談して,同年6月頃,m税理士が長井市に赴いた際に,原告とm税理士を引き合わせ,間もなく,m税理士が,仙台国税局調査査察部に勤務していた当時の後任の管理課長で,退職後は仙台市内で税理士を開業していたn税理士に,一緒に原告の相談に乗ってほしいと促すと,以後はm税理士とn税理士が原告に代わって税務調査に対応するようになり,間もなくm税理士が原告に原告訴訟代理人を紹介した。遅くともこの頃には,h税理士は原告との関係を絶った。(甲9の2~3頁,甲15,18,原告本人29~31頁,弁論の全趣旨)

(2)検討

上記(1)に認定した事実によれば,原告が本件予納をした5億1000万円という金額は,税務当局に相続財産であると疑われた財産を基礎としたjないしh税理士の試算には基づきつつも,h税理士と税務当局の意向を踏まえて決められたものにすぎず,本件予納申出書の「予納期限」欄に何らの記載がないことに鑑みても,原告が,おおむね6か月以内の最近に
おいて自らこれに近似した金額の修正申告をすることを予定していたとの事情はうかがわれない。本件予納当時においては原告の税務代理人の立場にあったといってよいと考えられるh税理士についてみても,原告が税務当局から更正処分等を受ける可能性については想定して原告に予納を勧めたことはうかがわれる(乙15)ものの,それを超えて,原告を代理して修正申告することまでを想定し,あるいは原告自らこれを行うよう促した方がよいと考えて,原告の説得に当たったような形跡は見出せない。これらの事実によれば,原告は,本件予納当時,税務当局から更正等される可能性を慮って,延滞金の発生を避けるために予納をする意思であったことは認められるものの,査察の進行を待たずに自ら税額を決めて修正申告をすることを予定していたとまでは認めることができない。
この点,h税理士の事務所において,本件予納の申出と同日にこれに近似する額の本件仮の修正申告書を税務当局に提示した事実があるとしても,やがて原告が更正等を受けるであろうことを前提として,税務当局の意向を先回りして汲んだと考える金額の概算を当局に示したという以上の意味は見出し難く,その提示があった事実をもって,修正申告をする予定であったとまで認めることはできない。また,主に修正申告が利用されることを想定して作製されているものと見える「予納の利用について」というチラシ(乙1)をh税理士において見たことがあり(乙16),予納について原告側にこのチラシを示して何らかの説明が行われた可能性があるとしても,口頭で積極的な補足説明までされるのでなければ,そこでいう予納が,納税者において,自ら税額を決めて修正申告をすることを予定して納付を申し出るというものであるといった理解にまで至ることは困難というべきであり,本件においてそのような積極的な補足説明がされたとまではうかがわれない以上,上記の評価を左右しない。
以上のように,本件予納の申出は,せいぜい更正等が見込まれることを
想定してされたものにすぎないと考えられるところ,被告において,おおむね6か月以内の最近において更正により納付すべき税額の確定することが本件予納時に確実であったことの主張立証がされない以上,本件予納は,通則法59条1項2号の要件に該当しない不適法な納付であったというべきである。

これに対し,被告は,通則法59条1項の趣旨は民法706条に準じるものであり,申告又は処分による国税の確定前であっても,納税者が,抽象的には成立している納税義務を前提として,その弁済として任意に予納をした以上,納税者から返還を求め得ないのは不当利得の一般法理からも導かれる当然の帰結である旨主張し,納税者が「最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」として納付する旨を申し出て,税務署長がかかる申出を相当と認めて納付を受けた場合には,客観的にみて「最近において納付すべき税額の確定することが確実である」か否かを問わず,また,申し出た者の主観を問わず,同項2号に該当すると解すべきであるとした上,本件については,査察の開始後,予納の勧奨がされ,国税局が定めた様式に則った予納申出書の提出がされるなどの本件予納当時の客観的状況からすれば,同項2号の国税として納付する旨の申出があったと認められる旨主張する。
上記の被告の主張は,税務当局においては予納の利用を広く勧奨する方針であること(乙8,9,13)と相俟って,犯則調査を契機として申出がされた予納につき,広く同項2号に該当するものとして運用していることをうかがわせるものである。
しかしながら,通則法59条1項が不当利得法に通じる趣旨を規定したものであるとしても,不当利得の一般法理上,債務の金額が確定しない段階において金銭の支払がされたことをもって,特定された一定の債務の任意の弁済としては擬し難いというべきであり,税額が未確定であることを
前提とする同項2号の規定する場合については,税額が確定していることを前提とする同項1号の規定する場合とは異なり,納付の当時における状況に照らし,納税者が税額等を争い近々修正申告に応じる姿勢を示していないなど,客観的に見て納税義務が税額も含めて具体的に確定することが確実視されていない段階にとどまるのであれば,不当利得法に準じて取り扱う素地を欠くといわざるを得ない。したがって,同項2号の規定する国税としての納付の申出があったと認められるためには,単に,査察に伴う予納の慫慂に応じて国税局が定めた様式に則った予納申出書の提出がされたというだけでは足りず,その納付の当時における状況に照らし,税額も含めて近い将来に納税義務の確定することが確実であると認められる国税として納付の申出がされたものといえることが必要であるというべきである。上記の被告の主張は,前記1(2)に判示した立法趣旨に反するというべきであり,採用することができない。
特に,本件においては,原告は,本件予納当時,修正申告を行う税額を決めていなかったと認められることは上記アのとおりであるところ,原告は,本件予納の直後に作成された質問てん末書(上記(1)オ)に係るdらの面接においても,金額がはっきりせず直ちに修正申告をすることができない旨を述べており,このような原告の姿勢は内心にとどまらず外形的にも国税当局に伝達されていたことに照らすと,仮に被告の立場に立つとしても,本件予納が行われた当時のこのような客観的な状況に照らし,本件予納は,「最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる」国税として納付の申出があったとは認められず,本件予納をもって同項2号に該当するとはいえないと解することが相当である。3
争点3(本件各充当が信義則に反する権利の濫用として無効であるか)について
(1)判断の枠組みの整理

以上に検討したところによれば,原告は,本件予納金について,過誤納金としてその還付請求権を有していたことになるが,これに対しては,長井税務署長がその還付請求権を本件各増額再々更正等に係る国税に充当したという内容の本件各充当の通知が発せられている。そして,本件各充当は,原告に最も有利に,本件予納金相当額に本件予納の日の翌日からの還付加算金を付しての還付に代えて,その還付金等を本件各増額再々更正等により原告等が納付すべきこととなった国税に充当したものである(前提事実(11))から,結局,この本件各充当が有効なものといえるかが,本件口頭弁論終結時における原告の本件還付請求の成否を決するところとなる。
なお,本件各増額再々更正等及び本件各充当の各処分は,いずれも本訴の訴外で現に行われ(前提事実(10)及び(11)),それぞれ公定力を有するから,これらについて仮に取消しの対象となる瑕疵が存在するとしても,直ちに本件各充当が無効であるとはいえず,原告の本件還付請求は,これらの各処分に重大かつ明白な瑕疵が存在するため本件各充当が無効であるといえて初めて成り立つものといえる。原告は,そのような観点から,本件各充当が信義則に反する権利の濫用として無効であることを主張しているものと解される。(2)検討
そこで,上記を踏まえつつ,本件各充当が無効といえるかを検討すると,原告において,本件各充当が信義則に反する権利の濫用であるとする理由は,被告が,原告の還付請求に応じないままに時日を経過させる間に,本件予納後数年を経過してされた本件各増額再々更正等により原告等が納付すべきこととなった国税に,本件予納金を充当したという点に尽きる。
しかしながら,本件各充当は,上記(1)に整理したとおり,同金額に対して原告に最も有利に本件予納の日の翌日から本件各充当の日までの法所定の還付加算金を付した還付に代わるものとしてされている一方,本件各増額再々更正等に係る同期間を計算の基礎とする本件相続に係る相続税の延滞税額
は免除する処理がされていること(前提事実(11))によって,原告等が現実の還付を受けた場合と変わらない還付加算金の支払を受けた上で更に納税をしたのと同様の状態を生じさせているにとどまるものである。
そして,原告が,長期間本件予納金相当額の還付を受けられなかったことによる損失は,上記還付加算金の支払を受けたのと同様の状態となっていることにより填補されているものといわざるを得ないし,これに加えて本件各増額再々更正等に係る納税をしたのと同様の状態が被告側の一方的な意思により生じさせられている点についても,本件各増額再々更正等につき無効といえるまでの瑕疵がない以上は,これに対応する納税を一旦行い延滞税の発生する可能性を消した上で,取り消し得べき瑕疵の有無を争訟をもって争うといったことは,納税者側からもしばしば選択される方法であり,これをもって納税者である原告に一義的に不利な措置であるとまではいえない。なお,原告は,上記の還付加算金について,被告側の税務当局から所得として所得税の申告をするように求められていることも論難するが,還付加算金の支払を受けられる場合においてこれが所得として擬律されることは,もとより想定されることであって,後に還付加算金を付して還付を受けられる可能性を視野に入れた上で本件予納をするという選択がされた時点で当然に予定すべき範囲の事柄というべきであるから,還付加算金に対する所得税の申告を促すことが信義則にもとるともいえない。
以上のとおり,本件予納の日の翌日から本件各充当の日までの法所定の還付加算金を付した計算がされる一方,本件各増額再々更正等に係る同期間を計算の基礎とする延滞税額は免除されている内容で本件各充当がされているという本件の事実関係の下では,本件各充当が信義則に反する権利の濫用として無効なものであるとはいえない。
この点に関する原告の主張は,採用することができない。
4
結論

よって,本件各充当は無効であるとはいえず,原告の請求は,本件予納金が還付金に該当するとする主位的請求についても,過誤納金に該当するとする予備的請求についても,理由がないから,これらをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部

裁判長裁判官

谷口豊
裁判官

平山馨
裁判官

馬場潤
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