判例検索β > 平成28年(わ)第554号
住居侵入、強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
事件番号平成28(わ)554
事件名住居侵入,強盗殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
裁判年月日平成29年3月16日
法廷名札幌地方裁判所
裁判日:西暦2017-03-16
情報公開日2017-10-13 01:33:47
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主文1
被告人を無期懲役に処する

2
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。

3
押収してある牛刀の刀身部分1丁(平成29年押第6号符号1)及び柄部2点(同号符号2)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1

知人であるA(当時76歳)から現金を強取する目的で,対応等によっては同人を殺害することを意図しながら,平成28年5月9日夕方頃から同月10日未明頃までの間,札幌市a区・・・・・の同人方に台所窓から侵入し,同人方において,同人に対し,殺意をもって,牛刀(刃体の長さ約18.1センチメートル。主文3項の各物件)でその頸部等を多数回切り付けるなどし,よって,その頃,同所において,同人を出血性ショックにより死亡させて殺害した上,同所にあった同人所有の現金1752円を強取し

第2

業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時場所において,前記牛刀1丁を携帯し

たものである。
(争点に対する判断)
本件の争点は,被告人に強盗の目的が認められるか否かである。
1
本件犯行状況等
関係証拠によれば,本件犯行状況については,次のとおりであったと認められる。
被告人は,平成28年5月9日から翌10日にかけての辺りが暗い時間帯に,牛刀を持参して被害者方に行き,手袋をはめ,スニーカーを履いたまま,脚立等を利用して台所窓から被害者方に侵入した。
被告人は,被害者方寝室内において,抵抗する被害者に対し,牛刀で,頸部,顔面及び左前胸部等50か所を切り付けるなどして被害者を殺害した。その際,被告人は,右手親指第一関節付近に長さ約4センチメートル,深さ約5ミリメートルの切り傷を負うなどした。
その後,被告人は,被害者方の寝室及び居間を中心に,2階や台所を含め多数の場所で,たんすの引き出しを開けて中を探るなどの物色行為を行った。また,被告人は,物置内のバールやドライバーを持ち出して寝室内の金庫をこじ開けようとするなどした。そして,被告人は,被害者が買い物代として別に保管していた封筒内の現金1752円を抜き取り,被害者方からこれを持ち去った。2
強盗目的の有無
被告人は,辺りが暗い時間帯に,脚立等がなければ届かない台所の窓からあえて侵入し,その後も土足で被害者方の屋内を歩き回っていること,また,持参した牛刀で被害者を殺害し,被告人自身も負傷したにもかかわらず,そのまま被害者方にとどまって非常に多くの場所を漁った上で,現金を持ち去っていることからすれば,被告人が当初から強盗の目的で被害者方に侵入し,被害者を殺害したと推認できる。
加えて,被告人は,平成28年4月27日に支給された生活保護費約8万3000円をその日のうちに銀行口座から引き出したにもかかわらず,同年5月7日にはガス料金約1万円の,同月9日には家賃等3万9000円の支払い延期をそれぞれ申し出るなどしており,本件当時,かなり金に困っていたと認められる。このような被告人の経済状態を考え合わせると,被告人が強盗目的をもって被害者方に侵入したことがより強く推認される。

3
被告人の供述の信用性
これに対して,被告人は強盗目的がなかったと供述する。
すなわち,被告人は,平成27年11月8日,被害者に返済期限などを決めずに5万円を貸し付けたところ,被害者がなかなか返済しなかったことから,本件当日,その返済を求めるために自宅から牛刀を持参して被害者方を訪れた,玄関前で被害者に追い返されたことから,台所窓から被害者方に侵入したところ,台所にいた被害者が居間に招き入れた,居間で被害者と向き合って座り,テーブル上に牛刀を置き,金を返済しないのであれば牛刀で指を詰めろと迫った,すると被害者が牛刀を右手に持って切り付けてきたため,右手でこれを防ぎ,そのときに右手親指にけがを負った,その後,被害者が牛刀を持ったまま寝室に逃げたので,その後を追いかけ,寝室で被害者から牛刀を奪い取り,牛刀で被害者を殺した,被害者を殺害した後,初めて金を取る意思を生じたなどと供述する。しかし,被告人の供述には不自然な点が多い。
まず,被告人が被害者に5万円を貸し付けていたという点については,そもそも5万円という少なくない金を返済期限も決めずに貸し付けること自体が不自然である上,当時入居していたグループホームに預けていた9万5000円から,被害者に貸す予定で11月6日に5万円の返金を受けたにもかかわらず,翌7日にその金でスロットに行ったというのも不自然である。また,グループホームから同月10日に2万円,同月16日に1万円の返金を受け,同月17日にリサイクルショップに家電を売却するなどしており,当時被告人には被害者に5万円を貸すほど経済的に余裕があったとは考えにくいことなどを考え合わせると,この点に関する被告人の供述は信用できない。
また,本件当日,被害者が玄関のドアも開けずに被告人を追い返したというのに,その後,被告人が台所窓から土足で侵入してきたにもかかわらず,そのまま被告人を居間に招き入れたという点や,被害者がいきなり牛刀を持って被告人の顔面付近に振り下ろしてきたところ,被告人がのけ反るなどせず単に右手を上げてこれを防いだというのも極めて不自然である。さらに,法医学を専門とするB医師の証言によれば,被告人の右手親指第一関節付近の切り傷については,傷の深さや切り口から防御創とは考え難く,むしろ被告人が被害者を牛刀で刺す際に,右手が滑るなどして牛刀のあご付近で負傷したと考えるのが自然であるというのであって,被告人の供述は右手親指の傷の状況と整合しない。したがって,被告人の供述は全体として信用できない。
4
結論
以上検討したとおり,本件犯行当時の被告人の行動や経済状態などから強盗目的が強く推認される一方,強盗目的を否認する被告人の供述は信用できないから,本件で取り調べた証拠を総合すれば,被告人は,被害者方に侵入し,被害者を殺害した時点において,強盗目的を有していたと認められる。なお,殺害の態様などからすると,被告人は,被害者方侵入後にとっさに殺意を抱いたとは考え難く,被害者方に侵入する前から,被害者の対応等によっては同人を殺すことを考えていたと認められるが,検察官が主張するように,口封じのため必然的に被害者を殺すことまで考えていたとは認められない。

(累犯前科)
平成20年8月11日札幌地方裁判所宣告
常習特殊窃盗の罪により懲役4年
平成24年6月11日刑の執行終了
(法令の適用)


判示第1の所為のうち
住居侵入の点

刑法130条前段

強盗殺人の点

刑法240条後段

判示第2の所為

銃砲刀剣類所持等取締法31条の18第3号,
22条

科刑上一罪の処理

刑法54条1項後段,10条(判示第1につき,
住居侵入強盗殺人は手段結果の関係があるので
一罪として重い強盗殺人罪の刑で処断)

刑種の選択
判示第1の罪につき無期懲役刑,判示第2の罪
につき懲役刑を各選択
累犯加重
刑法56条1項,57条(判示第2の罪の刑に
ついて,再犯の加重)

併合罪の処理

刑法45条前段,46条2項

未決勾留日数の算入

刑法21条


刑法19条1項1号,2項本文(判示第2の犯


罪行為を組成した物)
訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
被告人は,牛刀を持参するなどの必要な準備を整えた上で,現金を奪うために被害者方に向かい,被害者の対応等によっては同人を殺害することまで考えて,その居宅に侵入し,被害者を殺害した。その殺害方法は,抵抗する被害者に対し,頸部,顔面及び左前胸部等身体の重要な部分を数多く牛刀で切り付け,被害者が息絶える直前から死後にも頸部を切りつけるなどしたのであって,強い殺意に基づく残忍なものである。本件犯行のいきさつに酌むべき事情も見当たらない。落ち度のない被害者の生命が失われたという結果が重大であるのはいうまでもなく,遺族がその死を悲しみ,被告人に対して,厳しい処罰を望むのも当然である。
被告人は,法廷で,被害者を殺害したことについて反省の言葉を述べてはいるが,不合理な弁解に終始しており,自ら犯した罪と向き合っているということはできない。加えて,被告人には多数の窃盗前科があり,長期間服役して反省と立ち直りの機会を与えられてきたにもかかわらず,本件犯行に及んだことからすると,被告人の刑事責任は誠に重大である。
そうすると,被告人に対しては,一生をかけてしょく罪の日々を送らせるほかなく,無期懲役刑を科すのが相当である。
(求刑

無期懲役,主文掲記の没収)

平成29年3月16日
札幌地方裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

中桐圭
裁判官

結城
真一郎

裁判官

北島睦一大
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