判例検索β > 平成27年(行ウ)第238号
更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件
事件番号平成27(行ウ)238
事件名更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件
裁判年月日平成28年10月26日
法廷名大阪地方裁判所
判示事項1 財産評価基本通達26(注)2にいう「継続的に賃貸されていた各独立部分で,課税時期において,一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」の意義
2 構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が課税時期に賃貸されていない場合において,賃貸されていなかった各独立部分が,財産評価基本通達26(注)2にいう「継続的に賃貸されていた各独立部分で,課税時期において,一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に当たらないとされた事例
裁判要旨1 構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が課税時期に賃貸されていない場合において,賃貸されていなかった各独立部分が財産評価基本通達26(注)2にいう「継続的に賃貸されていた各独立部分で,課税時期において,一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に当たるためには,上記各独立部分の賃貸借契約が課税時期前に終了したものの引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在し,現に賃貸借契約終了から近接した時期に新たな賃貸借契約が締結されたなど,課税時期前後の賃貸状況等に照らし実質的にみて課税時期に賃貸されていたと同視し得ることを要する。
2 構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が課税時期に賃貸されていない場合において,賃貸されていなかった各独立部分が賃貸されていない期間が最も短い場合でも5か月であることなど判示の事情の下では,上記各独立部分は,財産評価基本通達26(注)2にいう「継続的に賃貸されていた各独立部分で,課税時期において,一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に当たらない。
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平成28年10月26日判決言渡
平成27年(行ウ)第238号

更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事

件主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
富田林税務署長が,平成25年7月1日付けで原告に対してした,亡A(平成21年▲月▲日死亡。)の相続開始に係る相続税について,更正をすべき理由がない旨の通知処分(平成25年8月22日付けでした減額更正処分後のもの)を取り消す。

第2

事案の概要
亡Aの相続人である原告が,亡Aの相続(以下「本件相続」という。)開始に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の納税申告書(以下「本件申告書」という。)を提出した後,本件相続税に係る更正をすべき旨の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ,富田林税務署長が,本件更正請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知処分をし,その後,本件相続税を減額する更正処分(以下「本件更正処分」といい,本件更正処分後の上記通知処分を「本件通知処分」という。)をした。
本件は,原告が,本件通知処分は,原告が本件相続によって取得した家屋及び土地の価額を誤って評価したものであり,違法である旨主張して,本件通知処分の取消しを求める事案である。

1
関係法令等の定め
(1)

相続税法の定め
相続税法(平成25年法律第5号による改正前のもの。以下同じ。)22条は,同法第3章で特別の定めのあるものを除き,相続等により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価による旨規定する。(2)

財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56・直審(資)1
7による国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)の定め(乙1)ア
貸家建付地の評価
(ア)

評価通達26本文は,借家権の目的となっている家屋(以下「貸

家」という。)の敷地の用に供されている宅地(宅地及び当該宅地上の家屋の双方を所有する者が当該家屋を賃貸している場合の宅地。以下「貸家建付地」という。)の価額は,次の算式により計算した価額によって評価する旨規定する。
宅地の自用地としての価額-その宅地の自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
(イ)

評価通達26本文(2)は,賃貸割合につき,その貸家に係る各独立
部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう。以下同じ。)がある場合に,その各独立部分の賃貸の状況に基づいて,次の算式により計算した割合による旨規定する。
当該家屋の各独立部分のうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積の合計
(ウ)

評価通達26(注)1は,上記(イ)の算式の「各独立部分」とは,
建物の構成部分である隔壁,扉,階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で,独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいう旨規定し,その(注)2は,上記(イ)の算式の「賃貸されている各独立部分」には,継続的に賃貸されていた各独立部分で,課税時期において,一時的に賃貸されていなかったと認められるもの(以下「一時的空室部分」という。)を含むこととして差し支えない旨規定する。

貸家の評価
評価通達89は,家屋の価額は,その家屋の固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額によって評価する旨規定し,評価通達93は,貸家の価額は,上記の家屋の評価額から,これに借家権割合と賃貸割合を乗じた額を控除した価額によって評価する旨規定する。

2
前提となる事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。
(1)

当事者等
亡Aは平成21年▲月▲日に死亡し,原告が亡Aを単独で相続した(本件
相続)。(甲1)
(2)

別紙1「物件目録」記載の土地建物等
亡Aの相続財産には別紙1「物件目録」記載1の各家屋(以下「本件各係争家屋」という。)及び同目録記載2の各土地(以下「本件各係争土地」という。)がある。


本件各係争家屋はいずれも賃貸用の建物であり,本件各係争土地(ただし,同目録記載2⑻の土地のうち,用途が自用地である部分を除く。)は同目録記載2の「用途」に記載された建物の敷地である。


本件各係争家屋の各室は,建物の構成部分である隔壁,扉,階層(天井及び床)等によって他と完全に遮断され,独立して賃貸の用に供することができるものであり,評価通達の各独立部分に該当する(以下「本件各独立部分」という。)。本件各独立部分の本件各係争家屋ごとの内訳及び床面積は,別表1の「家屋の名称(室数)」欄,「各室」欄及び「床面積(㎡)」欄記載のとおりである。


本件各独立部分の本件相続前後における賃貸状況は別表1のとおりであり,同表の「各室」欄のうち「空室」欄記載の部分(以下「本件各空室部分」という。)は,それぞれ「空室期間」欄記載の期間において空室となっており,同表の「各室」欄のうち「入居」欄記載の部分は,本件相続時に現に賃貸されていた。
(3)

本件各処分の経緯等
原告は,平成22年9月24日,別紙2順号①の「申告」欄の内容が記載された本件申告書を富田林税務署長に提出して,法定申告期限内に本件相続に係る相続税の申告をした(以下「本件申告」という。)。(甲1,乙2)


原告は,平成23年8月19日,富田林税務署長に対し,貸家につき貸家評価となっていなかったこと等を理由として,別紙2順号②の「更正の請求」欄の記載内容のとおり,本件相続税に係る更正をすべき旨の請求をした(本件更正請求)。(甲2)


富田林税務署長は,平成25年3月22日,原告に対し,別紙2順号③の「当初更正処分等」欄の記載内容のとおり,本件相続税を増額する更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,併せて「当初更正処分等」という。)をするとともに,本件更正請求について,原告の課税価格及び納付すべき相続税額は,本件申告書記載の課税価格及び納付すべき相続税額を下回らないことを理由に,更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「当初通知処分」という。)をした。(乙3,4)


原告は,同年5月22日,富田林税務署長に対し,当初更正処分等及び当初通知処分の全部取消しを求める異議申立てをした。(乙5,6)

富田林税務署長は,同年7月1日,原告に対し,当初通知処分の記載内容に誤りがあったため,当初通知処分の取消処分をするとともに,本件更正請求について,上記ウと同様の理由により,更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。(甲3,乙7)


原告は,同月9日,当初通知処分の全部取消しを求める異議申立てを取り下げた。(乙8)

富田林税務署長は,同年8月21日,当初更正処分等の全部取消しを求める異議申立てについて,原告の課税価格及び納付すべき相続税額が,本件申告書記載の課税価格及び納付すべき相続税額を下回ることを理由に,当初更正処分等の全部を取り消す旨の決定をした。(乙9)


富田林税務署長は,同月22日,原告に対し,別紙2順号⑪の「本件更正処分(減額)」欄の記載内容のとおり,本件相続税を減額する更正処分(本件更正処分)をした。(甲4)


原告は,同月30日,富田林税務署長に対し,本件通知処分(本件更正処分後の上記オの通知処分)の全部取消しを求める異議申立てをしたが,富田林税務署長は,同年11月27日,原告の異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲5,乙10)


原告は,同年12月24日,国税不服審判所長に対し,本件通知処分について審査請求をした。(乙11)


大阪国税不服審判所主席国税審判官は,平成26年4月9日,上記コの審査請求について本件更正処分も合わせて審理する旨の通知をし,国税不服審判所長は,平成27年2月17日,上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲6,乙12)


3
原告は,同年7月22日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)
課税の根拠及び適法性に関する被告の主張
本件通知処分に係る課税の根拠及び適法性に関する被告の主張は,別紙3
「本件通知処分の根拠及び適法性」に記載のとおりである。
なお,原告は,後記4の争点以外の点については特に争っていない。4
争点及び当事者の主張
本件の争点は,本件各係争家屋及び本件各係争土地の価額,具体的には,本件各係争家屋に係る賃貸割合である。
(被告の主張)
(1)

本件各係争家屋は,本件相続開始時に賃貸されているから,貸家に当た
り,その敷地は,貸家建付地に当たる。そして,評価通達93及び26は,貸家及び貸家建付地の価額について貸家の賃貸割合(課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計を当該家屋の各独立部分の床面積の合計で除した割合)に応じて減額するものとしているところ,本件各独立部分の本件相続開始時における賃貸状況は別表1のとおりであり,本件各係争家屋につき,本件相続開始時に現に賃貸されている独立部分によって賃貸割合を算定すると別表2順号④の「賃貸割合」欄記載のとおりとなる。(2)

評価通達93及び26において,貸家及び貸家建付地の評価に当たり,
借家権割合を乗じた計算により減額するものとされているのは,土地上の建物が借家権の目的となっている場合,当該建物賃貸借契約の更新拒絶等が制限されること(借地借家法28条)
,借家人が,建物の引渡しを受けた
ときは,対抗要件を具備すること(同法31条1項)等の借家権に基づく制約により,貸家及び貸家建付地の経済的価値が低下することを考慮したものである。よって,評価通達26本文⑵にいう「課税時期において賃貸されている」とは,相続税の課税時期である相続開始時において現に借家権の目的となっていることを指す。
評価通達26(注)2は,課税時期にたまたま一時的に空室が生じている場合にも,上記のとおり賃貸割合を算出することは,不動産取引の取引実態等に照らし,必ずしも実情に即したものとはいえないことを考慮した規定であるが,課税時期において現に賃貸されていない場合,評価通達26による減額を行わないことが原則であるから,評価通達26(注)2は,例外的な取扱いを定めるものにすぎない。
(3)

課税時期において現に賃貸されていない独立部分が一時的空室部分に該
当するかについては,当該独立部分が,①課税時期前に継続的に賃貸されてきたものか否か,②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたか否か,③空室の期間中,他の用途に供されていないか,④空室の期間が,課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったか否か,⑤課税時期後の賃貸が一時的なものでないかなどの事実関係から判断すべきであり,課税通達26(注)2の「一時的」という文言に照らせば,上記④の賃貸されていない期間の長短が,特に重要な考慮要素となるものといえる。本件各空室部分の本件相続開始時前後の賃貸状況は別表1のとおりであり,本件各空室部分は,いずれも,賃貸されていない期間が課税時期まで,又はその前後の長期に及んでいるから,一時的空室部分に該当しない。(4)

したがって,本件各空室部分は,課税時期において賃貸されている各独
立部分に該当しないものとして,賃貸割合が算出されるべきであるから,本件各係争家屋に係る賃貸割合は,それぞれ別表2順号④の「賃貸割合」欄記載のとおりとされるべきである。
(原告の主張)
(1)

評価通達26(注)2が規定される以前は,評価通達26の規定によれ
ば,貸家に空室が生じた場合,賃貸収入が減少して,貸家及び貸家建付地の資産価値が低下するにもかかわらず,相続税法上は,賃貸割合が減少し,貸家及び貸家建付地の価額が上昇することとなり,同法22条に反する事態が生じていた。
評価通達26(注)2は,評価通達26の内容を同法22条に適合させるために,新たに規定されたものであり,貸家が,課税時期の前後を通じて継続的に賃貸業務の目的に供され,収益資産としての実態を失わず維持されている場合には,当該貸家に係る各独立部分のうち,課税時期において空室となっている部分も,課税時期において賃貸されている各独立部分に含めるべき旨を定めたものと解すべきである。
(2)

そうすると,貸家に係る各独立部分が一時的空室部分に該当するかは,当該貸家に,自用の建物ではなく収益資産としての用途に供され,貸家として評価すべき実態があるかという観点から判断すべきであり,具体的には,①建物が建築された目的,②空室となった事情とそれまでの間の利用状況,③前賃借人の退去後,新たな賃借人の募集に着手した時期やその方法などの,賃貸業務の用に供するための努力の有無及び程度,④空室となった以降における当該空室部分の利用状況等を,総合的に考慮して判断すべきである。当該独立部分が賃貸されていない期間の長短は,一時的空室部分該当性を判断するための,重要な考慮要素であるとはいえない。
本件において,①本件各係争家屋は,賃貸用マンションとして建設され,②本件各空室部分は,いずれも借家人側の事情によって空室となったが,賃貸以外の目的に供されたことはなく,③被相続人及び原告は,本件各係争家屋の建築以降,課税時期の前後を通じて,本件各係争家屋(本件各独立部分)の賃借人を継続的に募集するなどしており,④本件相続後も,本件各係争家屋を賃貸業務の用に供していることなどからすると,課税時期において,本件各係争家屋には,自用の建物ではなく,貸家として評価すべき実態があるため,本件各空室部分は一時的空室部分に該当する。
(3)

したがって,本件各空室部分は,課税時期において賃貸されている各独
立部分に該当するものとして,賃貸割合が算出されるべきであるから,本件各係争家屋に係る賃貸割合は,いずれも1とされるべきである。
第3
1
当裁判所の判断
争点(本件各係争家屋に係る賃貸割合)について



相続税法22条は,相続により取得した財産の価額は,原則として,当該財産の取得の時における時価による旨を定めているが,財産の価額を客観的かつ適正に把握することは必ずしも容易なことではなく,また,納税者ごとに財産の評価の方法が異なることは公平の観点から好ましくないことから,課税実務上,国税庁長官が発した通達(国家行政組織法14条2項参照)である評価通達に基づいて,相続により取得した財産の価額の評価がされているところである。このような課税実務は,評価通達に定められた評価方式が当該財産の取得の時における時価を算定するための手法として合理的なものであると認められる場合においては,租税法律関係の確定に際して求められる種々の要請を満たし,国民の納税義務の適正な履行の確保(国税通則法1条,相続税法1条参照)に資するものとして,同法22条の規定の許容するところであると解される。
⑵ア

評価通達93及び26本文が貸家及び貸家建付地について,所要の減額を認めた趣旨は,借家権の目的となっている建物の借家人は当該建物に対する権利を有するとともにその敷地についても借家権に基づいて建物の利用の範囲内である程度の支配権を有しているところ,賃貸人は,自己使用の必要性等の正当の事由がある場合を除き,賃貸借契約の更新を拒絶したり,解約の申入れをしたりすることができない(借地借家法28条)から,借家権を消滅させるためには立退料の支払を要することになること,借家人は,建物の引渡しを受けたときは,その後その建物について物権を取得した者に対し借家権の効力を対抗することができる(同法31条1項)から,建物に借家権を付着させたままで建物及びその敷地を譲渡する場合には,その譲受人は,建物及びその敷地の利用について制約を受けること等から,上記の建物及びその敷地の経済的価値が,借家権の目的となっていない建物やその敷地に比べて低くなることを考慮したことにあると解される。
また,評価通達93及び26本文⑵は,構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が課税時期に現に賃貸されていない場合には当該独立部分及びこれに対応する敷地の部分については法令上の制約がなく減価を考慮する必要がないことから,課税時期において現に賃貸されている独立部分の割合(賃貸割合)に応じた減額を認めることとしたものと解される。

もっとも,継続的に賃貸の用に供されている独立部分が課税時期にたまたま賃貸されていなかったような場合にまで当該独立部分を賃貸されていないものとして賃貸割合を算出することは,不動産の取引実態等に照らして必ずしも実情に即したものとはいえない。
そこで,評価通達26(注)2は,構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が継続的に賃貸されていたにもかかわらず課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められる場合には,例外的に当該独立部分を賃貸されている独立部分と同様に取り扱うこととしたものと解される。
このような評価通達の趣旨に照らせば,構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が課税時期に賃貸されていない場合において,当該独立部分が評価通達26(注)2の一時的空室部分といえるためには,当該独立部分の賃貸借契約が課税時期前に終了したものの引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在し,現に賃貸借契約終了から近接した時期に新たな賃貸借契約が締結されたなど,課税時期前後の賃貸状況等に照らし実質的にみて課税時期に賃貸されていたと同視し得ることを要するというべきである。


以上のとおり,評価通達93並びに26本文及びその(注)2が,構造上区分された複数の独立部分からなる家屋について,当該独立部分が課税時期において現に賃貸されていること又は実質的にみて賃貸されていたと同視し得る独立部分の割合(賃貸割合)に応じた減額を認めていることは,家屋の独立部分ごとに,借家権の目的となっていることに基づく制約があると評価できるか否かに着目するものであり,貸家及び貸家建付地の取得の時における時価を算定するための手法として合理的なものであるということができる。そうすると,前記⑴に説示したところからして,上記ア及びイのとおり評価通達93並びに26本文及びその(注)2を解釈した上,その解釈内容に基づき,相続により取得した貸家及び貸家建付地の取得の時における時価を算定することが相当である。

これに対し,原告は,貸家に空室が生じた場合に,賃貸割合が減少し,貸家及び貸家建付地の価額が上昇することは,相続税法22条に反しており,当該貸家に収益資産としての用途に供され,貸家として評価すべき実態があるか否かという観点から,評価通達26(注)2の一時的空室部分該当性を判断すべき旨主張する。しかしながら,評価通達26本文は,上記アのとおり,家屋の独立部分ごとに,借家権の目的となっていることに基づく制約が現にあるかを基準としているものといえるところ,評価通達26(注)2はその注記の形式で規定されており,評価通達26本文で定められた取扱いとの関係で,あくまでも例外的な措置として位置付けられていると解されること及びその規定内容をみても,家屋の各独立部分につき,当該部分が継続的に賃貸されていたことを前提としつつ,課税時期において賃貸されていなかったことが「一時的」なものであることを要件としていることに照らせば,原告が主張するように,評価通達26(注)2が,評価通達26本文と異なり,家屋全体の用途から,当該家屋の各独立部分の減価の要否を問題とする趣旨であると解することは,評価通達26の解釈として一貫性に欠けるものであり,文言に照らしても無理があるといわざるを得ない。したがって,評価通達26(注)2は,家屋の独立部分ごとに,賃貸されていなかった期間が一時的であり,実質的にみて借家権の目的となっていると同視し得るかを基準として,一時的空室部分該当性を判断する旨予定しているものと解すべきである(なお,上記アないしウのとおり解することが相当であるから,原告の主張するように評価通達26(注)2を解釈しないと,評価通達93並びに26本文及びその(注)2に定められた評価方式が不合理なものとなり,相続税法22条に反するということもできない。。以上によれば,原告の主張は採用するこ)
とができない。


本件各空室部分についてみると,本件各空室部分の本件相続開始時前後の賃貸状況は,別表1の「各室」欄のうち「空室」欄記載のとおりであるところ(上記前提となる事実(2)エ),本件各空室部分が賃貸されていない期間は最も短い場合(B○号室及びC○号室)でも5か月であり,本件各空室部分について,本件相続開始前に賃貸借契約が終了した後も引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在したにもかかわらず上記の期間新たな賃貸借契約が締結されなかったことについて合理的な理由が存在したなどの事情は認められず,むしろ,本件各係争家屋の賃借人を継続的に募集していたという原告の主張を前提とすれば,そのような募集状況にあったにもかかわらず5か月以上も賃貸されていないことから,上記のような事情はなかったものと推認される。したがって,本件各空室部分は,本件相続税の課税時期に賃貸されていたと同視することはできず,一時的空室部分に該当しない。


以上によれば,本件各係争家屋に係る賃貸割合は,それぞれ別表2順号④の「賃貸割合」欄記載の割合である。

2
本件通知処分の適法性
これまでに判示したところ及び弁論の全趣旨によれば,本件通知処分の根拠及び適法性については別紙3「本件通知処分の根拠及び適法性」に記載のとおりであると認められ(本件争点に関する部分を除き,計算の基礎となる金額及び計算方法については当事者間に争いがなく,その算定過程に違法,不合理な点はない。
),本件通知処分は適法であるというべきである。

3
結論
以上によると,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第2民事部

西田隆裕
裁判官

山崎雄大
裁判官

吉川
裁判長裁判官


別紙3
本件通知処分の根拠及び適法性

原告の本件相続に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額は,別表5「相続税額の計算明細書」記載のとおりであり,その内容は,次のとおりである。
1
取得財産の価額(別表5順号④の「小計」欄の金額)11億5613万1052円
上記金額は,原告が本件相続により取得した財産の総額であり,その内訳は次のとおりである。
(1)

本件各係争家屋

合計3億2544万0035円

本件各係争家屋の価額及びその計算過程は別表2のとおりである。(2)

本件各係争土地

合計3億9119万3742円

各土地の価額及びその計算過程は別表3のとおりである。
(3)

本件各係争家屋及び本件各係争土地以外の財産
合計4億3949万7275円
上記価額は別表4番号1~36のとおりである。

2
原告が納付すべき本件相続税の額
相続税の総額は,同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額(後記(4))から遺産に係る基礎控除額(後記(5))を控除した金額(後記(6))を,法定相続分に応じて取得したものとして,その金額を算出し(後記(7)),これに相続税法で定められた税率を乗じて計算した金額を合計した金額(後記⑻)である(同法16条)。そして,相続により財産を取得した者に係る相続税額は,その被相続人から相続により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額(後記⑻)に,それぞれ相続により財産を取得した者に係る相続税の課税価格が当該財産を取得
した全ての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額(後記⑼)である(同法17条)。
(1)

原告の取得財産の価額(別表5順号④)
11億5613万1052円
上記1のとおりである。

(2)

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例による控除(別
表5順号⑤)

2000万2800円

租税特別措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの)69条の4は,個人が相続又は遺贈により取得した財産のうち,その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等のうちで一定の選択をしたもので限度面積までの部分(小規模宅地等)について,相続税の課税価格に算入すべき価格を,一定の割合(特定事業用宅地等である小規模宅地等,特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等については100分の20,その他の小規模宅地等については100分の50)を乗じて計算した金額とする旨規定する。
原告は,本件申告において,堺市α×番●(別表4番号3)の全部及び同××番(別表3番号7)のうち131平方メートルを選択して,小規模宅地等の特例を適用していたが(甲1の9枚目),本件更正請求後の平成24年10月5日,上記選択をすべて改めて,後者のうち200平方メートルを選択して小規模宅地等の特例を適用する旨の文書を堺税務署長に提出した(乙13)。
堺市α××番の土地全体の面積は722.61平方メートル,同土地の亡Aの持分は2分の1,同土地の賃貸割合は2225.47平方メートル分の1366.47平方メートル(別表3番号7順号⑯)であるから,被相続人が賃貸の用に供していた部分に該当する面積は221.84平方メー
トルとなり,限度面積200平方メートルに相当する部分に係る小規模宅地等の特例の適用額は,2000万2800円である(200平方メートルに,25万3200円〔別表3番号7順号⑧〕,0.79〔1-借地権割合0.7×借家権割合0.3〕,減額割合100分の50をそれぞれ乗じた金額。別表5の欄外参照。)。


原告の取得財産から控除すべき額(別表5順号⑦)10億3356万2455円
相続税法13条及び14条の規定により算出される本件相続に係る取得財産(上記(1))から控除すべき債務及び葬式費用の総額は,本件申告書に記載された金額(甲1の1枚目の順号③)と同額の10億3356万2455円である。



原告の課税価格及び本件相続に係る課税価格の合計額(別表5順号⑧)1億0256万5000円
原告の本件相続税に係る課税価格は,上記(1)の本件相続に係る取得財産の価額を上記(2)の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例により減額し,上記⑶の債務及び葬式費用を控除した額である(なお,国税通則法118条1項により1000円未満の端数は切捨て。)。
(5)

遺産に係る基礎控除(別表5順号⑨)
6000万0000円
本件相続税の総額を計算する場合において,相続税法15条の規定によ
り,課税価格の合計額から控除する金額は,5000万円と,1000万円に亡Aの相続人の数である1を乗じて得た金額との合計額6000万円である。
(6)

課税される遺産総額(別表5順号⑩)
4256万5000円
課税される遺産総額は,上記(4)の本件相続に係る課税価格の合計から上
記(5)の基礎控除額6000万円を控除した額である。
(7)

法定相続分に応ずる金額(別表5順号⑩)
4256万5000円
亡Aの法定相続人は原告のみであるため,上記(6)の金額と同額である。
(8)

相続税の総額(別表5順号⑪)
651万3000円
相続税の総額は,上記⑺の法定相続分に応ずる金額に各人ごとに同法1
6条が定める税率を乗じた額の合計額であり,651万3000円である。⑼

原告の相続税額(別表5順号⑪)
651万3000円
本件においては,原告が単独で相続しているため,上記⑻の金額と同額である。


原告の納付すべき相続税額(別表5順号⑬)
651万3000円
本件においては,上記⑼の相続税額に加算し又は控除すべき金額はないから(甲1順号⑪~⑱参照),原告の納付すべき相続税額は,上記⑼の金額と同額である。

3
本件通知処分の適法性
535万3000円(本件更正処分における原告の納付すべき相続税額と同額である。別紙2順号⑪の「本件更正処分(減額)」欄の「納付すべき税額」参照。)は,上記1⑽の本件相続に係る原告の納付すべき相続税額651万300円を下回っているから,本件通知処分は適法である。

更正決定原告D被告国
上記当事者間の平成27年(行ウ)第238号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件につき,平成28年10月26日に当裁判所がした判決に明白な誤りがあるから,職権により,次のとおり決定する。
主文
上記判決の「事実及び理由」中,6頁8行目に「大阪国税不服審判所主席国税審判官は」とあるのを「大阪国税不服審判所首席国税審判官は」と,22頁21行目に「上記1(10)」とあるのを「上記2(10)」と,同頁同行から22行目に「相続税額651万300円」とあるのを「相続税額651万3000円」と,それぞれ更正する。

平成28年10月31日
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官

西田隆裕
裁判官

山崎雄大
裁判官

吉川慶
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