判例検索β > 平成24年(行ウ)第809号
所得税決定処分等取消請求事件
事件番号平成24(行ウ)809
事件名所得税決定処分等取消請求事件
裁判年月日平成29年1月31日
法廷名東京地方裁判所
判示事項租税特別措置法(平成18年法律第10号による改正前のもの)40条の4第1項所定の居住者に係る外国関係会社が同項所定の特定外国子会社等に該当する場合において,同項所定の課税対象留保金額の算定の基礎となる同条2項2号所定の未処分所得の金額の計算における租税特別措置法施行令(平成18年政令第135号による改正前のもの)25条の20第1項に規定する同施行令39条の15第1項1号に掲げる金額としての減価償却費の算出につき,当該特定外国子会社等がその決算において作成した損益計算書に基づいて行うべきものであり,居住者が事後に修正した損益計算書に基づいて行うことができないとされた事例
裁判要旨租税特別措置法(平成18年法律第10号による改正前のもの)40条の4第1項所定の居住者に係る外国関係会社が同項所定の特定外国子会社等に該当する場合において,当該特定外国子会社等がその決算において本店所在地国の法令に基づいて損益計算書を作成し,これに基づいて減価償却費の経理をしており,当該決算に当該国の法令の重大な違反があることはうかがわれないという判示の事情の下では,同項所定の課税対象留保金額の算定の基礎となる同条2項2号所定の未処分所得の金額の計算における租税特別措置法施行令(平成18年政令第135号による改正前のもの)25条の20第1項に規定する同施行令39条の15第1項1号に掲げる金額としての減価償却費の算出は,上記損益計算書に基づいて行うべきものであり,居住者が事後に修正した損益計算書に基づいてこれを行うことはできない。
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平成29年1月31日判決言渡
平成24年(行ウ)第809号

所得税決定処分等取消請求事件

主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
今治税務署長が平成23年3月10日付けで原告に対してした平成17年分の所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
第2

事案の概要
本件は,原告が,今治税務署長から,いわゆる外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)について定める租税特別措置法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下「措置法」という。)40条の4第1項の適用により,原告が株式を保有するシンガポール共和国(以下「シンガポール」という。)に本店が所在する外国法人が同項所定の特定外国子会社等に該当し,同項所定の課税対象留保金額に相当する金額が原告の雑所得に係る収入金額とみなされるとして,原告の平成17年分の所得税の決定処分(以下「本件決定処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件決定処分と併せて「本件決定処分等」という。)を受けたことから,本件決定処分等は,上記課税対象留保金額の算定の基礎となる同条2項2号所定の未処分所得の金額の計算に誤りがあり,違法であると主張して,本件決定処分等の取消しを求める事案である。

1
関係法令等の定め
(1)

法人税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)の定め


用語の意義
法人税法において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる(2条)。
1号

国内

法人税法の施行地をいう。

2号

(略)

3号

内国法人

国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう。

4号

外国法人

内国法人以外の法人をいう。

5号ないし22号
23号

(略)

減価償却資産

建物,構築物,機械及び装置,船舶,車両及び

運搬具,工具,器具及び備品,鉱業権その他の資産で償却をすべ
きものとして政令で定めるものをいう。
24号

(略)

25号

損金経理

法人がその確定した決算において費用又は損失とし

て経理することをいう。
26号ないし48号

(略)

各事業年度の所得の金額の計算
法人税法において,各事業年度の所得の金額の計算については,次のように定められている(22条)。
(ア)

内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする(1項)。

(イ)

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする(2項)。

(ウ)

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,次に掲げる額とする(3項)。
1号

当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価その他こ
れらに準ずる原価の額

2号

1号に掲げるもののほか,当該事業年度の販売費,一般管理
費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日ま
でに債務の確定しないものを除く。)の額

3号
(エ)

当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

2項に規定する当該事業年度の収益の額及び3項各号に掲げる額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする(4項)。

(オ)

2項又は3項に規定する資本等取引とは,法人の資本等の金額(法人(各連結事業年度の連結所得に対する法人税を課される連結事業年度の連結法人を除く。)の資本の金額又は出資金額と資本積立金額との合計額をいう(2条16号参照)。)の増加又は減少を生ずる取引及び法人が行う利益又は剰余金の分配(中略)をいう(5項)。


減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法
内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として22条3項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は,その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下「損金経理額」という。)のうち,その内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかった場合には,償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(以下「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする(31条1項)。

(2)

法人税法施行令(平成18年政令第125号による改正前のもの。以下同じ。)の定め

減価償却資産の範囲
法人税法2条23号(減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は,棚卸資産,有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする(13条)。
1号ないし3号
4号

船舶

5号ないし9号

(略)

(略)

減価償却資産の償却の方法
減価償却資産の償却限度額の計算上選定をすることができる償却の方法は,次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする(48条1項)。
1号

建物(3号に掲げるものを除く。)

次に掲げる区分に応じそれ

ぞれ次に定める方法
(イ)

平成10年3月31日以前に取得をされた建物

次に掲げる

方法

定額法(当該減価償却資産の取得価額からその残存価額を
控除した金額にその償却費が毎年同一となるように当該資産
の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各事業年
度の償却限度額として償却する方法をいう。以下同じ。)


定率法(当該減価償却資産の取得価額…にその償却費が毎
年一定の割合で逓減するように当該資産の耐用年数に応じた
償却率を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額とし
て償却する方法をいう。以下同じ。)

(ロ)

(イ)に掲げる建物以外の建物
定額法

2号

13条1号(減価償却資産の範囲)に掲げる建物の附属設備及び

同条2号から7号までに掲げる減価償却資産(3号及び6号に掲げるものを除く。)
(イ)

定額法

(ロ)

定率法

3号ないし6号

次に掲げる方法

(略)

減価償却資産の法定償却方法
法人税法31条1項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)に規定する政令で定める方法は,次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする(53条)。
1号

48条1項1号イ及び同項2号(減価償却資産の償却の方法)に掲げる減価償却資産

2号
(3)

定率法

(略)

措置法の定め


居住者に係る特定外国子会社等の留保金額の総収入金額算入

(ア)

次に掲げる居住者に係る外国関係会社のうち,本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの(以下「特定外国子会社等」という。)が,昭和53年4月1日以後に開始する各事業年度(2条2項19号に規定する事業年度をいう。以下同
じ。)において,その未処分所得の金額から留保したものとして,政令で定めるところにより,当該未処分所得の金額につき当該未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分配の額に関する調整を加えた金額(以下「適用対象留保金額」という。)を有する場合には,その適用対象留保金額のうちその者の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等に対応するものとしてその株式等(株式又は出資をいう。以下同じ。)の請求権(利益の配当,剰余金の分配,財産の分配その他の経済的な利益の給付を請求する権利をいう。以下同じ。)の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額(以下「課税対象留保金額」という。)に相当する金額は,その者の雑所得に係る収入金額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分のその者の雑所得の金額の計算上,総収入金額に算入する(40条の4第1項)。
1号

その有する外国関係会社の直接及び間接保有の株式等(請求権
のない株式等又は実質的に請求権がないと認められる株式等(以
下「請求権のない株式等」という。)に係るものを除く。2号に
おいて同じ。)の当該外国関係会社の発行済株式の総数又は出資
金額(請求権のない株式等及び当該外国関係会社が有する自己の
株式等を除く。以下「発行済株式等」という。)のうちに占める
割合が100分の5以上である居住者

2号

その有する外国関係会社の直接及び間接保有の株式等の当該外
国関係会社の発行済株式等のうちに占める割合が100分の5以
上である一の同族株主グループに属する居住者(1号に掲げる居
住者を除く。)

(イ)

40条の4第1項及び2項において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる(40条の4第2項)。
1号

外国関係会社

外国法人で,その発行済株式の総数又は出資金

額(その有する自己の株式等を除く。)のうちに居住者及び内国
法人並びに居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある
非居住者が有し,並びに特定信託(法人税法2条29号の3に規
定する特定信託をいう。以下同じ。)の受託者である法人が当該
特定信託の信託財産として有する直接及び間接保有の株式等の合
計数又は合計額の占める割合(当該外国法人が次のイからハまで
に掲げる法人である場合には,当該割合とそれぞれイからハまで
に定める割合のいずれか多い割合)が100分の50を超えるも
のをいう。
イないしハ
2号

(略)

未処分所得の金額

特定外国子会社等の各事業年度の決算に基

づく所得の金額につき,法人税法及び措置法による各事業年度の
所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計
算した金額を基礎として政令で定めるところにより当該各事業年
度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損
の金額に係る調整を加えた金額をいう。
3号及び4号
(ウ)

(略)

40条の4第1項各号に掲げる居住者は,その者に係る特定外国子会社等の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の財務省令で定める書類を当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分の確定申告書に添付しなければならない(40条の4第5項)。


措置法40条の4と同法66条の6の関連性
措置法66条の6第1項は,同項各号に掲げる内国法人に係る外国関係会社のうち,本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するものが,昭和53年4月1日以後に開始する各事業年度において,その未処分所得の金額から留保したものとして,政令で定めるところにより,適用対象留保金額を有する場合には,その適用対象留保金額のうちその内国法人の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等に対応するものとしてその株式等の請求権の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額である課税対象留保金額に相当する金額は,その内国法人の収益の額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入する旨を規定している。
居住者の所得税について定める措置法40条の4及び内国法人の法人税について定める同法66条の6は,いずれも外国子会社合算税制について定めたものであり,当該特定外国子会社等の留保金課税における基本的な仕組みは同一である。
(4)

租税特別措置法施行令(平成18年政令第135号による改正前のもの。以下「措置法施行令」という。)の定め


特定外国子会社等の範囲
措置法40条の4第1項に規定する政令で定める外国関係会社は,次に掲げるものとする(25条の19第1項)。
1号

法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又
は主たる事務所を有する外国関係会社

2号

その各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金
額の100分の25以下である外国関係会社


特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算

(ア)

措置法40条の4第2項2号に規定する政令で定める基準により計算した金額は,同条1項に規定する特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額に係る39条の15第1項1号に掲げる金額及び同項2号に掲げる金額の合計額から当該所得の金額に係る同項3号に掲げる金額を控除した残額(当該所得の金額に係る同項1号に掲げる金額が欠損の金額である場合には,当該所得の金額に係る同項2号に掲げる金額から当該欠損の金額と当該所得の金額に係る同項3号に掲げる金額との合計額を控除した残額)とする(25条の20第1項)。
(イ)

措置法40条の4第1項各号に掲げる居住者は,25条の20第1項の規定にかかわらず,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,当該特定外国子会社等の本店所在地国(本店又は主たる事務所の所在する国又は地域をいう(25条の19第2項1号参照)。以下同じ。)の法人所得税(本店所在地国若しくは本店所在地国以外の国若しくは地域又はこれらの国若しくは地域の地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税(中略)及びこれに附帯して課される法人税法2条45号に規定する附帯税(利子税を除く。)に相当する税その他当該附帯税に相当する税に類する税をいう。以下同じ。)に関する法令(当該法人所得税に関する法令が2以上ある場合には,そのうち主たる法人所得税に関する法令をいう。以下「本店所在地国の法令」という。)の規定により計算した所得の金額(中略)に当該所得の金額に係る39条の15第2項1号から13号までに掲げる金額の合計額を加算した金額から当該所得の金額に係る同項14号から16号までに掲げる金額の合計額を控除した残額(本店所在地国の法令の規定により計算した金額が欠損の金額となる場合には,当該計算した金額に係る同項1号から13号までに掲げる金額の合計額から当該欠損の金額に当該計算した金額に係る同項14号から16号までに掲げる金額の合計額を加算した金額を控除した残額)をもって措置法40条の4第2項2号に規定する政令で定める基準により計算した金額とすることができる(25条の20第2項)。
(ウ)

措置法40条の4第2項2号に規定する欠損の金額に係る調整を加えた金額は,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,25条の20第1項若しくは2項又は3項の規定により算出される所得の金額(以下「調整所得金額」という。)から当該各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度(昭和53年4月1日前に開始した事業年度及び特定外国子会社等(中略)に該当しなかった事業年度を除く。)において生じた欠損金額(この項の規定により当該各事業年度前の事業年度において控除されたものを除く。)の合計額(当該合計額が当該各事業年度の調整所得金額を超える場合には,当該調整所得金額)に相当する金額を控除した金額とする(25条の20第5項)。

居住者に係る特定外国子会社等の課税対象留保金額の計算等
(ア)

措置法40条の4第1項の未処分所得の金額につき当該未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分配の額に関する調整を加えた金額は,特定外国子会社等の各事業年度の未処分所得の金額から次に掲げる金額の合計額を控除した残額(中略)とする(25条の21第1項)。

1号

当該各事業年度において納付をすることとなる法人所得税の額
(当該各事業年度において還付を受けることとなる法人所得税の
額がある場合には,当該還付を受けることとなる法人所得税の額
を控除した残額)

2号

当該各事業年度に係る利益の配当又は剰余金の分配の額(当該
各事業年度に係る利益の配当又は剰余金の分配の額の全部又は一
部が次に掲げる者に支払われた場合における当該各事業年度に係
る利益の配当又は剰余金の分配の額の全額を除く。)
イないしニ

(イ)

(略)

措置法40条の4第1項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は,同項各号に掲げる居住者に係る特定外国子会社等の各事業年度の同項に規定する適用対象留保金額から当該各事業年度の25条の20第4項1号ロ及びハに掲げる金額の合計額を控除した残額(以下「調整適用対象留保金額」という。)に,当該特定外国子会社等の当該各事業年度終了の時における発行済株式等のうちに当該各事業年度終了の時におけるその者の有する当該特定外国子会社等の請求権勘案保有株式等(25条の21第3項参照)の占める割合を乗じて計算した金額(当該各事業年度に係る利益の配当又は剰余金の分配の額が当該適用対象留保金額の計算上控除されなかったときは,当該計算した金額から次の各号に掲げる金額のうちいずれか少ない金額を控除した金額)とする(25条の21第2項)。
1号及び2号

(略)

特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算
措置法66条の6第2項2号に規定する政令で定める基準により計算した金額は,同条1項に規定する特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額に係る1号に掲げる金額及び2号に掲げる金額の合計額から当該所得の金額に係る3号に掲げる金額を控除した残額(当該所得の金額に係る1号に掲げる金額が欠損の金額である場合には,当該所得の金額に係る2号に掲げる金額から当該欠損の金額と当該所得の金額に係る3号に掲げる金額との合計額を控除した残額)とする(39条の15第1項)。1号

当該各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,法人税法第2編第1章第1節第2款から第8款まで(同法23条,26条,28条,38条から41条まで,57条から59条まで及び61条の11から61条の13までを除く。)の規定並びに措置法43条,45条の2,52条の2,57条の5,57条の6,57条の8,57条の9,61条の4,65条の7から65条の9まで(同法65条の7第1項の表の24号に係る部分に限る。),66条の4第3項,67条の12及び67条の13の規定(以下「本邦法令の規定」という。)の例に準じて計算した場合に算出される所得の金額又は欠損の金額(以下略)
2号

当該各事業年度において納付する法人所得税及びこれに附帯して課される法人税法2条45号に規定する附帯税(利子税を除く。)に相当する税その他当該附帯税に相当する税に類する税をいう。以下同じ。)の額

3号
(5)

当該各事業年度において還付を受ける法人所得税の額

租税特別措置法施行規則(平成18年財務省令第26号による改正前のもの。以下「措置法施行規則」という。)の定め
措置法40条の4第5項に規定する財務省令で定める書類は,同項に規
定する特定外国子会社等に係る次の各号に掲げるもの(中略)とする(18条の20第2項)。
1号

措置法40条の4第5項に規定する貸借対照表及び損益計算書

2号

各事業年度の損益金の処分表

3号

1号に掲げるものに係る勘定科目内訳明細書

4号

措置法施行令25条の20第2項に規定する本店所在地国の法令により課される税に関する申告書で各事業年度に係るものの写し

5号

各事業年度終了の日における株主等(中略)の氏名及び住所又は名称及び本店若しくは主たる事務所の所在地(中略)並びにその有する株式の数又は出資の金額を記載した書類

6号及び7号
(6)

(略)

租税特別措置法基本通達の定め
租税特別措置法基本通達(平成21年課法2-5による改正前のもの。
以下「措置法通達」という。)66の6-10は,下記のとおり定めている(甲25,乙54)。

措置法施行令39条の15第1項1号の規定により特定外国子会社等の未処分所得の金額につき法人税法及び措置法の規定の例に準じて計算する場合には,次に定めるものは,次によるものとする。

青色申告書を提出する法人であることを要件として適用することとされている規定については,当該特定外国子会社等は当該要件を満たすものとして当該規定の例に準じて計算する(措置法通達66の6-10(1))。


減価償却費,評価損,圧縮記帳,引当金の繰入額,準備金の積立額等の損金算入(損金の額への算入をいう。以下同じ。)又は長期割賦販売等に該当する資産の販売等に係る延払基準による収益及び費用の計上等確定した決算における経理を要件として適用することとされている規定については,特定外国子会社等がその決算において行った経理のほか,内国法人が措置法66条の6の規定の適用に当たり当該特定外国子会社等の決算を修正して作成した当該特定外国子会社等に係る損益計算書等において行った経理をもって当該要件を満たすものとして取り扱う。この場合には,決算の修正の過程を明らかにする書類を当該損益計算書等に添付するものとする(措置法通達66の6-10(2))。


内国法人が措置法66条の6の規定の適用に当たり採用した棚卸資産の評価方法,減価償却資産の償却方法,有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法等は,同条を適用して最初に提出する確定申告書に添付する当該特定外国子会社等に係る損益計算書等に付記するものとし,一旦採用したこれらの方法は,特別の事情がない限り,継続して適用するものとする(措置法通達66の6-10(3))。

2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

原告について
原告は,愛媛県今治市に住所を有する者であり,平成17年当時,同市
を本店所在地として海運業を営む株式会社きほう(以下「きほう」という。)及び喜多浦海運株式会社(以下「喜多浦海運」という。)の代表取締役を務めていた(乙1,2,16,弁論の全趣旨)。
(2)

KEI社について


KEIMARITIMEPTELTD(以下「KEI社」とい
う。)は,1998年(平成10年)7月24日,原告とC1により設立されたシンガポールを本店所在地とする外国法人である(乙3,弁論の全趣旨)。


KEI社は,設立の日である1998年(平成10年)7月24日から1999年(平成11年)9月30日までの事業年度(以下「平成11年9月期」という。)のほかは,10月1日から翌年の9月30日までを事業年度としている(以下,1999年(平成11年)10月1日から2000年(平成12年)9月30日までの事業年度を「平成12年9月期」といい,その後の事業年度も同様に呼称する。)。


原告は,1999年(平成11年)3月24日から2009年(平成21年)8月11日までの間,KEI社の総発行済株式数50万株のうち49万9999株(約99.9%)を保有していた(乙6ないし8)。

KEI社は,1999年(平成11年)4月頃から,同年に取得した油そう船(以下「本件油そう船」という。)を裸用船として第三者に貸し付けていたが,2004年(平成16年)12月20日に本件油そう船を581万2300米国ドルで売却した(乙4,5,弁論の全趣旨)。

KEI社は,シンガポールの法令に基づき,平成11年9月期から平成17年9月期までの各決算に係る財務諸表を作成し,公認会計士の監査及び株主全員(原告及びC1)の承認を受けた。この財務諸表の中には,KEI社が作成した損益計算書(以下「KEI社損益計算書」という。)が含まれており,その内容は別表1-1記載のとおりである。KEI社損益計算書によれば,KEI社は,平成11年9月期から平成16年9月期までは,税引後損益に欠損が生じていたが,平成17年9月期は,本件油そう船の売却による特別利益250万9737シンガポールドル(以下「S$」という。)が計上されたことにより,税引後損益に利益が生じた。なお,本件油そう船の取得原価は1722万9240S$であったところ,KEI社は,KEI社損益計算書において,各事業年度の本件油そう船の減価償却費の金額を172万2924S$(本件油そう船の耐用年数を10年として上記取得原価について定額法により計算したもの)とし,平成17年9月期の期首における本件油そう船の帳簿価額を689万1696S$(上記取得原価1722万9240S$から6期分の減価償却費の累計額1033万7544S$を控除した後の金額)としていた。上記特別利益250万9737S$は,本件油そう船の売却による収入940万1433S$から平成17年9月期の期首における本件油そう船の帳簿価額689万1696S$を控除した後の金額である。
(以上につき,乙9ないし15,弁論の全趣旨)
(3)

シンガポールの法人税に係る税制の概要
シンガポールは,法人税について,納税者が税務当局に課税所得の算定
に必要な資料(監査証明付きの決算書等を添付した法人税申告書等)を提出し,税務当局がその提出された資料に基づいて当該納税者の税額を賦課決定するという賦課課税制度を採用している。賦課決定がされる年度(以下「賦課年度」という。)は1月1日から12月31日までの暦年とされ,その前年の1月1日から12月31日までの暦年に発生した各所得に対して課税がされるが,事業所得については,暦年を基準とせず,賦課年度の前年に終了した事業年度の所得の申告が認められている。(乙33)シンガポールにおける法人税の税率は,2001年(平成13年)の賦課年度までは25%を上回っていたが,2002年(平成14年)の賦課年度に24.5%に引き下げられた後は,25%を下回っている(乙32,34)。
(4)

本件決定処分等及び不服申立手続の経緯
原告は,平成17年分の給与(役員報酬)に係る収入金額が1200万円であり,上記給与の支払者である喜多浦海運から所得税の源泉徴収を受けていたところ,同年分の所得税について確定申告書の提出をしなかった(乙16)。


今治税務署長は,平成23年3月10日,原告に対し,別表2の「決定処分」欄記載のとおり,原告の平成17年分の所得税について,総所得金額を9714万3278円,納付すべき税額を3191万5600円とする旨の決定処分(本件決定処分)及び無申告加算税の額を478万6500円とする旨の賦課決定処分(本件賦課決定処分)をした(甲1)。なお,今治税務署長は,KEI社が,平成13年9月期から平成17年9月期までにおいて,措置法40条の4第1項に規定する特定外国子会社等に該当し,平成17年9月期において課税対象留保金額を有するため,課税対象留保金額に相当する金額を原告の雑所得に係る収入金額とみなして総収入金額に算入する必要があるとして,本件決定処分等をしたものである(弁論の全趣旨)。


原告は,平成23年4月26日,今治税務署長に対し,本件決定処分等を不服として異議申立てをした(甲2)。原告は,同異議申立てにおいて,KEI社の平成11年9月期から平成17年9月期までの損益については本邦法令の規定に基づく計算が認められるべきであり,平成17年9月期の損益は46万1195S$の赤字となるから,本件決定処分等は取り消されるべきである旨を主張し,同年5月12日,今治税務署長に対し,「日本法令によるKEIMARITIME損益計算書」と題する書類(乙24。以下「原告作成損益計算書」という。)を提出した(甲2,11,乙24ないし26)。なお,原告作成損益計算書の内容は別表1-2記載のとおりである(乙24)。

今治税務署長は,平成23年6月24日,原告に対し,上記ウの異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした(甲3)。


原告は,平成23年7月20日,国税不服審判所長に対し,本件決定処分等を不服として審査請求をした(甲4)。


国税不服審判所長は,平成24年6月1日,上記オの審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(甲5)。

(5)

本件訴えの提起
原告は,平成24年11月29日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
3
税額等に関する当事者の主張
被告が本件訴訟において主張する本件決定処分等の根拠及び計算は,別紙2「課税の根拠及び計算」の記載(別紙2の引用に係る別紙3の計算の記載を含み,また,別紙2の1(5)イの引用に係る別紙4の仮定的な計算の記載を含む。)のとおりであるところ,原告は,後記4の争点に関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。

4
争点
本件の争点は,本件決定処分等の適法性であり,具体的には,措置法40条の4第1項所定の適用対象留保金額の算定の基礎となる同条2項2号所定の未処分所得の金額の計算について,措置法施行令25条の20第1項に規定する同施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の算出をKEI社損益計算書に基づいて行うべきか,原告作成損益計算書に基づいて行うべきかが争われている。
なお,KEI社損益計算書の内容は別表1-1記載のとおりであり,原告作成損益計算書の内容は別表1-2記載のとおりであるところ(両者の内容を比較したものとして別表6参照),両者は,本件油そう船に係る減価償却費の金額が異なるため,平成17年9月期における特別利益の金額に差異が生じており,その結果,KEI社に係る課税対象留保金額が生ずるか否かも異なることになる。そのため,措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の算出については,本件油そう船に係る減価償却費の金額の計算をKEI社損益計算書に記載された金額(同社の決算において経理された金額)を基礎として行うべきか,原告作成損益計算書に記載された金額を基礎として行うべきかが問題となる。
5
争点に関する当事者の主張の要旨
(被告の主張の要旨)
(1)

未処分所得の金額の計算はKEI社損益計算書に基づいて行うべきであること


措置法施行令39条の15第1項1号は,本邦法令の規定の例に準じて計算をする場合について規定するところ,その計算の基礎として特定外国子会社等の各事業年度の決算に計上された所得の金額が掲げられているのであり,また,特定外国子会社等の所在する国の中には法人税制が完備された国もあり得ることからすれば,特定外国子会社等において行った決算を考慮することなく本邦の法令において再計算することが本邦法令の規定の例に準ずる計算であるとは解されない。
法人税法31条1項が,減価償却費を損金の額に算入する要件として,確定した決算(我が国の会計制度による企業会計を前提に作成され,株主総会の承認,総社員の同意その他の手続による承認を経たその事業年度の決算をいう。以下同じ。)における損金経理(同法2条25号)を要求した趣旨は,法人内部において発生する取引については,売上取引に代表される第三者の介在する取引のような外部取引と異なり,対外的な要素が介在しないことから,法人の利益の算定においては,株主総会等における承認という一定の手続要件が課された計算書類によって法人の意思を確認し,これに基づく経理処理を要求することにより,牽制を図り,選択的又は恣意的な経理処理を抑制し,もって適正な課税の実現を期待することにあると解される。
このように,法人税法31条1項の「損金経理」の要件が,内部取引に関する法人の意思を確認する点にその本質を有すると解されることからすれば,特定外国子会社等が本店所在地国の法令に基づいて行った決算において減価償却費の経理をしている場合には,これにより減価償却に関する法人の意思を確認することができるといえるから,特定外国子会社等の決算が我が国の確定した決算に要求される形式的要件(日本の商法及び会社法に準拠した成立要件等)を欠くとしても,同項の確定した決算における「損金経理」があったものと同様に解することができる。
したがって,措置法施行令39条の15第1項1号に基づき本邦法令の規定の例に準じて特定外国子会社等の未処分所得の金額を計算する場合,特定外国子会社等が本店所在地国の法令に基づいてした決算上で経理された減価償却費について,本邦法令の規定における償却限度額の範囲で損金の額に算入されると解するのが相当である。

KEI社損益計算書は,シンガポールの法令に従ったKEI社の決算に基づいて作成されたものであり,当該決算における取締役報告・決算書には,正確かつ公平な意見を提供する目的で作成されたものである旨の取締役である原告自らの声明書及び公認会計士によるシンガポールの会計基準に準拠した監査が実施された旨の株主に対する監査報告書が添付されている。
このように,KEI社損益計算書は,利害関係者に対しKEI社の事業状況及び各年9月30日を末日とする会計年度における業務実績について,正確かつ公平な意見を提供する目的で作成され,かつ,公認会計士の監査報告を受けたものであることから,特定外国子会社等の「各事業年度の決算」(措置法施行令39条の15第1項1号)に該当すると認められる。
したがって,KEI社の未処分所得の金額の計算は,KEI社損益計算書に基づいて行うべきである。
(2)

未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことができないこと


確定申告書に添付されていない原告作成損益計算書に基づいて未処分所得の金額の計算をすることができないこと

(ア)

措置法40条の4は,1項において,課税対象留保金額を雑所得に係る収入金額とみなして総収入金額に算入することを定めるとともに,5項において,「第1項各号に掲げる居住者は,その者に係る特定外国子会社等の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の財務省令で定める書類を当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分の確定申告書に添付しなければならない。」と定めており,税額の確定に際しては,確定申告書に特定外国子会社等の損益計算書が添付されていることを前提としている。
措置法40条の4第1項及び5項は,本店所在地国の法令に基づく決算を修正して作成した損益計算書(以下「修正損益計算書」という。)を確定申告書に添付すべきか否かについて直接には規定していないものの,措置法施行令39条の15第1項1号が本店所在地国の法令に基づく決算を修正して未処分所得の金額の計算をするためには「本邦法令の規定の例に準じて計算」する必要がある旨を定めているのであるから,納税者において,確定申告をするに当たり,修正された決算の過程を明らかにして,修正された決算が本邦法令の規定の例に準じていることを明らかにする必要があることは当然のことというべきである。
そうすると,納税者は,本店所在地国の法令に基づく決算を修正
して未処分所得の金額の計算をしようとするためには,措置法40条の4第5項及び措置法施行令39条の15第1項1号の規定に基づき,修正損益計算書を確定申告書に添付して提出する必要があるというべきである。
(イ)

また,措置法施行令39条の15第1項1号は,本邦法令の規定の例に準じて未処分所得の金額を計算するに当たり,我が国の会計制度と相違する会計制度の下で作成された特定外国子会社等の決算を未処分所得の金額の計算の基礎とした場合,個別の規定の適用に際して不都合が生ずる可能性があることを念頭に置いたものであるから,同号にいう特定外国子会社等の「各事業年度の決算」には,我が国と特定外国子会社等の本店所在地国の会計制度の調整を目的として特定外国子会社等の決算を修正して作成された損益計算書であって,一定の要件を満たすものが含まれると解すべきである。そして,同号を合理的に解釈すれば,特定外国子会社等の決算を修正した計算書類について,我が国における「確定した決算」と同程度の実質を有することを担保する何らかの手続的な措置がされた場合に初めて特定外国子会社等の「各事業年度の決算」に含まれると解することになる。
措置法通達66の6-10の(2)は,このような手続的な担保として,企業内部の計算であって対外的に実現されていない会計計算
(減価償却費等)の修正の過程を明らかにさせる書類を添付させることを定め,同(3)においてそのような減価償却資産の償却方法等を最初に提出する確定申告書に添付する損益計算書等に付記させることで,以後に用いる算出方法を明確にさせることを定めているが,これは,これらの手続を踏ませることによって,修正計算の過程を対外的に明らかにさせ,その正確性を担保するとともに,恣意的な計算を防止して単なる会計書類に我が国における「確定した決算」と同程度の実質を担保させるものであるといえる。そして,このような措置は,正に措置法施行令39条の15第1項1号の趣旨に合致するものであり,租税法律主義に反するものではないというべきである。
したがって,自己に有利となるように特定外国子会社等の決算を
修正した損益計算書等を基礎として未処分所得の金額を計算しようとする場合には,決算の修正の過程を明らかにする書類及び修正損益計算書等を添付した確定申告を行う必要があるというべきであ
る。
(ウ)

しかるに,原告は,本件決定処分がされる前に,特定外国子会社等の決算であるKEI社損益計算書を修正した原告作成損益計算書を添付して確定申告を行っていないのであるから,原告作成損益計算書の作成日時にかかわらず,未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことは認められないというべきである。
なお,原告は,確定申告書の提出義務がない以上,確定申告書を
提出することは物理的に不可能である旨主張する。しかしながら,所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同
じ。)121条1項柱書きは,同項各号のいずれかに該当する場合には,同法120条1項の規定による申告書を提出することを要しないと定めているにすぎないのであるから,同法121条1項各号に該当する者であっても,確定申告書が提出できないということはなく,実際にそのような者が提出する確定申告書でも問題なく受理される。
(エ)

さらに,所得税に係る納付すべき税額は第一義的には納税者のする申告により確定するものであるところ,上記(ア)のとおり,確定申告書に添付することなく損益計算書を税務署長に提出されることを措置法は予定していないから,確定申告書を提出しないまま修正損益計算書を税務署長に提出したとしても,当該修正損益計算書は納付すべき税額の確定方式を定めた国税通則法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下「通則法」という。)16条に規定する確定申告書になり得ず,当該提出行為にはいかなる法的効果も生じない。
そのため,税務署長が,修正損益計算書に基づかずに特定外国子
会社等の未処分所得の金額の計算を行い,所得税の決定処分をしたとしても,当該決定処分は適法というべきである。

(オ)

なお,原告は,平成17年分の所得税に係る一連の調査において原告作成損益計算書を示しておらず,異議調査の段階になって初めて原告作成損益計算書を異議調査担当職員に提出しているが,この原告作成損益計算書は,本件決定処分による課税を免れることを意図して後に作成されたものであることが明らかであり,異議調査の前に原告作成損益計算書が存在していたことをうかがわせる事情はない。そして,原告作成損益計算書が本件決定処分以前に存在していなかった以上,これを確定申告書に添付することはおよそ不可能であるから,原告作成損益計算書に基づく未処分所得の金額の計算が許される余地はないというべきである。


未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことは確定決算主義に反し許されないこと
(ア)

内国法人の課税所得の計算は,ある事業年度につき,確定した決算を基礎とし,これに法人税法の観点から調整を加え,課税所得を算出するという確定決算主義を採用しており,我が国の法人税法等の適用においては,確定した決算によらない単なる会計書類に基づいて減価償却費を損金の額に算入することは,およそ想定されていない(法人税法74条1項参照)。
このような確定決算主義が採用されている趣旨は,企業利益の測
定について,外部の第三者と行われる外部取引と異なり,内部取引のように対外的には実現されないものについては,株主総会等の手続を要件とし,内部的なコントロールを加えることによって適切な処理を図ることにある。そして,減価償却費のような内部取引に基づく費用は,対外的には実現されず,法人において金額を決定する費用となるため,その適切な処理を図ることが必要となる。そこ
で,確定決算主義の下では,減価償却費等の内部取引の計上において,①一定の時点において減価償却費等の金額を決定し,これを変更できないものとすることにより,費用に計上されていない減価償却費について,決算が確定し申告書を提出した後においてなお損金の額への算入を求めるような恣意的な経理処理を防止するととも
に,②当該減価償却費の金額の決定に当たっては,株主総会の承認等を要求することにより,内部的なコントロールを期待することによって,その適正な処理を図り,課税の安定を確保しているところである。
以上からすれば,一旦,内国法人において確定した決算により決
定された減価償却費の金額につき,申告の際に任意に変更することは,確定決算主義に反し許されないというべきである。
(イ)

措置法施行令39条の15第1項1号が,特定外国子会社等の本店所在地国における決算につき一定の修正を許容しているのは,我が国と当該本店所在地国との会計制度の違いによる不都合を解消するため,すなわち,外国と我が国の会計制度の差異(会計制度の大枠の差異のみならず,会計制度の細部の差異(会計処理の差異)を包摂する。以下同じ。)を調整するためであり,特定外国子会社等における決算の修正の範囲は,飽くまで当該本店所在地国と我が国との会計制度の差異の調整にとどまるものである。
そして,措置法施行令39条の15第1項1号は,当該本店所在
地国の会計制度に従った決算を本邦法令の規定の例に準じて計算する場合において,会計制度の差異の調整をすることで,当該本店所在地国の会計制度に従った決算を我が国における確定した決算と同程度の実質を備えさせることにより,我が国において確定した決算における経理を要件としている規定を適用することを可能にする趣旨の規定であるから,同号を適用して特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算をする場合,確定決算主義の趣旨を前提にしていることは明らかである。
したがって,特定外国子会社等における決算の修正の範囲は飽く
まで本店所在地国と我が国会計制度の差異の調整にとどまるべきであり,措置法施行令39条の15第1項1号の趣旨を超えて特定外国子会社等の本店所在地国の決算における減価償却費の金額を任意の金額に修正することは,我が国における確定決算主義の趣旨に反し,許容されていないというべきである。そして,同号の趣旨を超えて上記決算を修正することが許されないことは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(法人税法22条4項参照。以下「公正処理基準」という。)と確定決算主義が密接に結び付いており,同項の適用において確定決算主義の趣旨が及ぶことからも導き出されるものである。
そのため,KEI社損益計算書を基に本邦法令の規定の例に準じ
て修正損益計算書等を作成する際においても,KEI社損益計算書において計上した減価償却費をそのまま基礎としなければならず,その上で会計制度の差異を調整する限度で再計算をして調整所得金額を計算することが許容されるのであって,本件油そう船に係る減価償却費の金額自体を申告の際になって再計算することは許されないというべきである。すなわち,本件では,飽くまで,特定外国子会社等の決算を基礎として本邦法令の規定における償却限度額の範囲内において減価償却費を損金の額に算入することが認められるにすぎないというべきである。
しかるに,原告作成損益計算書に基づく減価償却費の金額の再計
算は,KEI社のシンガポールにおける決算において計上されている減価償却費の金額について会計制度の差異の調整の範囲を逸脱して任意に再計算を行おうとするものであるから,措置法施行令39条の15第1項1号が前提とし公正処理基準と密接に結び付いた確定決算主義の趣旨に反し,認められないというべきである。

原告作成損益計算書に基づく未処分所得の金額の計算は公正処理基準に反し許されないこと
(ア)

法人税法22条4項は,収益及び損金の額に算入すべき金額について,公正処理基準に従って計算することを要請しているところ,措置法施行令39条の15第1項1号所定の「本邦法令の規定」に法人税法22条4項が含まれることは明らかである。そして,同条2項及び3項所定の「別段の定め」とは,税法上計算方法等が明らかである規定を想定しているものであり,特別法等が存在しているとしても,少なくとも,当該特別法等において計算方法等が明らかでない事項で,かつ,企業会計上のものについては,なお同条4項が適用され又はその趣旨が及ぶというべきである。
特定外国子会社等の未処分所得の金額は,特定外国子会社等の各
事業年度の決算に基づく所得の金額につき,法人税法及び措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額を基礎として欠損の金額に係る調整を加えることとされているところ,政令である措置法施行令39条の15第1項1号を適用する場合の外国と我が国会計制度の差異の具体的な調整方法については税法に明確な規定がない。
したがって,特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算は,収
益及び費用や損失に関するもので,かつ,法令上においては明確な計算方法等の規定がない企業会計上のものとして,公正処理基準により行われるものというべきである。
(イ)

この点につき,減価償却の目的は,昭和35年の大蔵省企業会計審議会の「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」(乙47)において,「減価償却の最も重要な目的は,適正な費用配分を行なうことによって,毎期の損益計算を正確ならしめることである。このためには,減価償却は所定の減価償却方法に従い,計画的,規則的に実施されねばならない。利益におよぼす影響を顧慮して減価償却費の金額を任意に増減することは,右に述べた正規の減価償却に反するとともに,損益計算をゆがめるものであり,是認し得ないところである。」とされているとおり,そもそも,取得した減価償却資産の適正な費用配分を行うことを目的とするものである。
原告の主張する計算は,平成11年9月期ないし平成16年9月
期の各事業年度の税引後損益が0S$になるように,減価償却費の金額を修正するものであり,平成17年9月期の本件油そう船の譲渡益を,自己の都合の良いように修正する(譲渡益をなかったことにする)ことが目的であることは明らかであり,この計算は正に損益計算をゆがめるものであるというほかない。
したがって,原告の主張する減価償却費の金額の再計算は,平成
17年9月期の損益計算をゆがめるものであって,公正処理基準に反し許されないというべきである。
(ウ)

また,株主総会での承認や報告を経て確定した財務諸表は,配当制限その他の規制や各種の契約条件の遵守の確認及び課税所得の計算にも利用されていることから,そこにおける利益計算を事後的に修正すると,利害調整の基盤が揺らぐこととなる。そこで,企業会計上,過去の利益計算に修正の必要が生じても,過去の財務諸表を修正することなく,要修正額を前期損益修正として当期の特別損益項目に計上する方法が用いられている(企業会計原則第2・6及び同注12)。法人税務上も,上記と同様に,各事業年度に発生した損失は,そ
の発生事由を問わず,その事業年度の損金の額に算入することに
よって益金から控除し,その結果として,損失を計上した事業年度が欠損となったような場合には,その欠損については,欠損金の繰戻しによる還付(法人税法80条)又は青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し(同法57条)の制度を通じて,前後の課税関係が調整される。
そのため,財務諸表の適正性を判断する際の判断基準となる企業
会計原則においては,過去の財務諸表を遡って修正することとなる遡及修正は認められていないから,原告の主張する減価償却費の金額の再計算は,原告の主張するように企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(甲27。以下「過年度遡及会計基準」という。)の適用がないとしても,公正処理基準に反するものである。
他方,仮に,過年度遡及会計基準に従ったとしても,本件は,過
年度遡及会計基準による遡及処理の対象となるものではない上,過年度遡及会計基準は,一定の場合に過年度の財務諸表の額の訂正計算処理を行うことを認め,その遡及処理が行われた場合には,過去の期間における遡及処理の累積的影響額を,貸借対照表上,遡及処理後の当期の期首の残高に反映させることを認めるものであって,過年度の決算処理を遡及的に修正することまで認めるものではないから,原告作成損益計算書のように過去の決算上の減価償却費の金額を遡及して修正することが許されるものではない。
したがって,原告の行った過去に遡って減価償却費の金額の再計
算を行う処理は,企業会計原則における前期損益修正においても,また,過年度遡及会計基準においても,いずれも認められておら
ず,公正処理基準に反するものであって許されないというべきである。

KEI社が特定外国子会社等に該当しない平成11年9月期及び平成12年9月期の損益計算書について再計算を行うことは許されないこと外国子会社合算税制は,特定外国子会社等の各事業年度の留保所得を居住者の所得に合算して課税するものであるから,特定外国子会社等に該当しない事業年度における損益を課税対象として認識するものではなく,未処分所得の計算をするに当たり,特定外国子会社等に該当しない事業年度の決算までをも修正して損益計算を行うことはできない。
原告は,原告作成損益計算書において,KEI社の平成11年9月期及び平成12年9月期を含めてKEI社損益計算書を修正しているが,これらの事業年度については,そもそもKEI社は特定外国子会社等に該当しないのであるから,特定外国子会社等の未処分所得の計算を取り扱う規定である措置法40条の4第2項2号及び措置法通達66の6-10を適用する余地はない。
また,措置法施行令25条の20第5項は,特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算に当たって行う欠損金額の調整について,「特定外国子会社等…に該当しなかった事業年度を除く」と明確に規定している。そのため,本件決定処分に係る特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算に当たって,特定外国子会社等に該当しない平成11年9月期及び平成12年9月期のKEI社損益計算書の欠損金額を繰り越すことはできないものであり,同様に,外国子会社合算税制の適用がない当該事業年度の損益計算書の損益計算を修正する理由もないから,KEI社損益計算書の対象の各事業年度のうち特定外国子会社等に該当しない事業年度の損益計算を修正した原告作成損益計算書に基づいて未処分所得の金額の計算を行うことはできないというべきである。
(原告の主張の要旨)
(1)

未処分所得の金額の計算をKEI社損益計算書に基づいて行うことは許されないこと
未処分所得の金額の計算は,本邦法令の規定の例に準ずる計算が原則と
されており,措置法施行令25条の20第2項が本店所在地国の法令に基づいて計算をすることができる旨定めているとおり,本店所在地国の法令における決算をそのまま利用するか否かは,納税者の選択に委ねられている。
したがって,特定外国子会社等の決算を利用することができるのは,飽くまで納税者の側で本店所在地国の法令による計算を選択した場合に限られ,課税当局が独自に特定外国子会社等の決算に基づいて未処分所得の金額を計算し,所得税の決定処分をすることはできないというべきである。しかるに,本件決定処分は,原告が本店所在地国の法令による計算を選択していないにもかかわらず,KEI社の未処分所得の金額の計算をKEI社損益計算書に基づいて行っているのであるから,措置法40条の4の適用を誤った違法があるというべきである。
(2)

未処分所得の金額の計算は原告作成損益計算書に基づいて行うべきであること


未処分所得の金額の計算(本件油そう船の減価償却費の金額の再計算)を原告作成損益計算書に基づいて行うと適用対象留保金額が零となること
原告作成損益計算書は,KEI社の決算に基づいて本邦法令の規定の例に準じて計算をしたものであり,その内容は別表1-2記載のとおりである。すなわち,本件油そう船の減価償却費の金額を本邦法令の規定の例に準じて再計算すると,本件油そう船は,総トン数が2000トン以上であるから,耐用年数が13年となり(減価償却資産の耐用年数等に関する省令(平成19年財務省令第21号による改正前のもの。以下同じ。)1条1号,別表第1),取得年月が平成11年5月であるから,法定償却方法は定率法となる(法人税法施行令53条1号)。そうすると,本件油そう船の償却限度額は別表1-2(2枚目)の「償却限度額」欄記載のとおりとなるところ,KEI社は当該償却限度額の範囲内で任意の金額を減価償却することができるから,原告は本件油そう船の減価償却費の金額を同表(2枚目)の「当期償却額」欄記載のとおりとして計算した。その結果,本件油そう船の売却価格が平成16年9月期末の帳簿価額を下回り,42万8421S$の売却損が発生することになる。
したがって,KEI社に未処分所得の金額が生ずることはなく,KEI社の平成17年9月期に係る適用対象留保金額は零と算出される。

確定申告や確定申告書への原告作成損益計算書の添付が必要でないこと(ア)

原告は,喜多浦海運のみから給与の支払を受ける給与所得者であ
り,平成17年の給与等の金額が2000万円以下で年末調整を受けていたところ,未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うと,適用対象留保金額が零となり,雑所得が生ずることもなかったため,確定申告書を提出する義務がなかった(所得税法121条1項)。そのため,原告が平成17年分の所得税について確定申告を行わなかったことは当然のことであり,確定申告書に原告作成損益計算書を添付する義務(措置法40条の4第5項)もない。そして,確定申告の義務がない居住者が確定申告を行うのは,原則として還付申告(所得税法122条)を行う場合であり,原告のように確定申告の義務がないにもかかわらず特定外国子会社等の損益計算書を添付した確定申告を行わなければならないとする税法の定めは存しない。そして,措置法40条の4第5項が損益計算書等を確定申告書に添付しなければならない旨を定めているのは,課税当局が特定外国子会社等を把握して居住者に合算される所得を調査するという徴税側の便宜のためにすぎず,納税者に損益計算書等の提出を強制するものではないと考えられる。また,そもそも,措置法上,確定申告書に修正損益計算書を添付して提出することが定められているものではない。
したがって,本邦法令の規定の例に準ずる計算を行う要件とし
て,確定申告書に原告作成損益計算書等の添付をすることが求められているものではないというべきである。
(イ)

また,我が国の法人税法が確定決算主義を採用していることと特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算は,全く次元の異なるものであり,前者が後者に「確定した決算」を求めることの根拠となるものではない。すなわち,特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算は,租税回避を防止するために設けられた外国子会社合算税制における特殊な計算規定であり,特定外国子会社等の所得のうちどのような部分を合算対象とするかは立法政策に委ねられている。そして,措置法施行令39条の15第1項1号は「決算」とのみ規定し,「確定した決算」と規定していないのであるから,合算対象となる特定外国子会社等の所得を算出する際に基とされる決算は,必ずしも「確定した決算」である必要はないものと解される。そのため,同号は,特定外国子会社等の決算を修正した計算書類について,我が国における「確定した決算」と同程度の実質を有することを担保する何らかの手続的な措置がされなければならないことを定めたものではないというべきである。
(ウ)

措置法通達66の6-10(2)は,「決算の修正の過程を明らかに
する書類を当該損益計算書等に添付するものとする」と定めており,納税者に対し「書類」を「添付」することを命令し,又は少なくとも書類の添付を求めているものと解される。
しかしながら,このような事項は実定法の定めるところにより要
求されるべきものである上,そもそも,通達は,上級行政庁の下級行政庁への命令であり,行政組織の内部では拘束力を有するが,国民に対して拘束力を有する法規ではない。そして,税法における通達には,納税者が行った確定申告や税務処理等に対して,当局がどのような取扱いを行うべきかが示されているにとどまり,通達の文言上,少なくとも納税者のみが主語となることはないものと考えられる。
また,措置法通達66の6-10(2)は,管理上の都合から,決算の修正の過程を明らかにする書類が損益計算書等に添付されていることが望ましいと考えていることを示すものにとどまり(同通達の「するものとする」という文言は,義務ではなく,期待されていることを定めるものにすぎない。),納税者は,同通達に拘束されるものではなく,損益計算書等に決算の修正の過程を明らかにする書類を添付することは,本邦法令の規定の例に準ずる計算を行う上で必須の手続ではないというべきであるから,同通達が求める手続に従っていない場合であっても,本邦法令の規定の例に準ずる計算が認められないことはないものと解される。
そして,措置法通達66の6-10が法令に存しない要件を通達
によって付加しているものであるとすれば,通達としての存在を超え,納税者に対して新たな要件を付加するものとしか解釈できないのであるから,租税法律主義に反するというべきである。
(エ)

納税者に確定申告の義務がない場合,当該納税者には特定外国子会社等に係る修正損益計算書を確定申告書に添付して当局に提出する機会がない。そのため,当該納税者は,本邦法令の規定の例に準じて再計算をした修正損益計算書を保管しておくことを要し,後日,課税当局から問い合わせを受け,又は税務調査を受けた場合には,当該修正損益計算書を調査官に示すことにより,課税対象留保金額がないため確定申告義務がないことを説明することが必要となるにとどまる。しかるところ,本邦法令の規定に基づく原告作成損益計算書は,
本件決定処分が行われた平成23年3月10日より前の同月3日に作成されており,原告の顧問税理士が今治税務署職員に対して提出しようとしたにもかかわらず,今治税務署職員が,原告作成損益計算書の提出を威嚇して妨げ,受取を拒否したことから,同日に提出することができず,異議調査が始まった最初の日である同年5月12日に提出されたものである。
したがって,本件決定処分より前に本邦法令の規定に基づく原告
作成損益計算書が作成されていたのであるから,原告が原告作成損益計算書に基づいて行った前記アの計算を否定することはできないというべきである。
そして,本件決定処分は,法律上の根拠がないのに,原告作成損
益計算書を考慮せず,KEI社損益計算書のみを採用し,恣意的な資料の選択に基づいて行われたものであるから,違法であることは明らかである。

未処分所得の金額の計算と確定決算主義は無関係であり,原告は未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて正しく行っていること(ア)

被告は,内国法人の課税所得の計算が「確定した決算」に基づいてされていることや,減価償却費が損金経理を要求される事項であること等をるる主張するが,これらは飽くまで内国法人の課税所得の計算に係る事項であり,失当というべきである。特定外国子会社等は,当然のことながら外国法人であり,外国法人の本店所在地国によって異なる会計基準や会計制度があり,財務諸表の形式も異なる。そして,KEI社はシンガポール法人であるから,その決算書はシンガポール会社法及びシンガポール会計基準により作成されるのであって,内国法人の財務諸表の作成手続や課税所得の計算は,一切関係がない。外国子会社合算税制は,租税回避の防止という趣旨に基づき,本
来は居住者又は内国法人の課税所得ではない外国法人の稼得した所得を,居住者又は内国法人の収益の額とみなして合算する制度である。外国法人の所得を居住者又は内国法人の収益の額とみなして合算する仕組みは,税務上のみの概念で,かつ,非常に技術的な手法によるものであり,会計上の連結決算とも全く異なるものである。したがって,日本の居住者又は内国法人を対象として制定されている本邦の法令に基づく確定決算主義を用いて合算の過程の全てを説明することができるものではない。
このように,特定外国子会社等の所得の金額について居住者又は
内国法人の収益に合算する仕組みを持つ外国子会社合算税制は,少なくとも我が国の公正処理基準の及ばない外国における決算制度を前提としているという点において,手続のあらゆる面において公正処理基準の範疇に収まっていることが前提とされている内国法人についての税制とは,明らかに異質の税制というべきである。
原告が行った減価償却費の金額の再計算は,特定外国子会社等の
決算を基にして,原告に合算すべき所得金額を算出するために行っている計算であり,特定外国子会社等の会計処理を変更しているわけではない。
この再計算を行うに際して,原告作成損益計算書においてもなぜ
KEI社損益計算書上の減価償却費の金額をそのまま用いなければならないかについて,被告は何ら法令上の根拠に基づいた主張を
行っていない。そして,KEI社の損益計算書は確定した決算の実質を備えていないものの確定決算主義の趣旨が及ぶとする被告の主張は,法令上の根拠を欠いており,論理的にも失当というべきである。
(イ)

特定外国子会社等であるKEI社の所在するシンガポールにおいては,シンガポールの会計基準に基づき,本件油そう船の減価償却について,償却方法は定額法,耐用年数は10年が採用され,本件油そう船の取得事業年度から売却事業年度の前事業年度までの各事業年度にわたり,償却限度額と同額の減価償却費が計上されている。これに対し,本邦法令の規定に従った減価償却を行うと,償却方法は定率法,耐用年数は13年となるから,ここに日本とシンガポールとにおける「会計処理の差異」が生じている。さらに,日本とシンガポールにおいては減価償却の方法が異なるから,KEI社が特定外国子会社等に最初に該当した事業年度(平成13年9月期)の期首簿価が正しく計算されていないこととなるため,本件油そう船を取得した当初の事業年度である平成11年9月期から,再計算を行う必要がある。
したがって,原告は,当該差異を調整すべく,減価償却費の金額
の再計算を行い,原告の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入されるKEI社の未処分所得の金額を計算した。以上の原告の会計処理の差異の調整は,措置法施行令39条の15に規定する本邦法令の規定の例に準ずる計算に該当する。
(ウ)

KEI社がシンガポールの法令に基づいてした減価償却は,シンガポールの法令上適法な手続を経て,シンガポール当局に提出された財務諸表に計上されているものであるが,外国子会社合算税制の適用を受け,原告の雑所得として合算される未処分所得の金額を計算するに当たっては,シンガポールにおいて計上された減価償却費の金額ではなく,本邦法令の規定に基づく耐用年数,償却率及び償却方法を用いて日本において計算された減価償却費の金額こそがKEI社の姿を正しく表すものと解されるため,原告は本邦法令の規定の例に準じて日本における減価償却費の金額を正しく計算することで正しい未処分所得の金額を算出したものであり,何ら恣意的な計算など行っていないことは明らかである。
すなわち,減価償却費に係る本邦法令の規定は,特定外国子会社
等の決算にそのまま適用することができないため,措置法施行令39条の15第1項1号に従い,本邦法令の規定の例に準ずる減価償却費の金額の計算が行われるのであり,この計算は,特定外国子会社等の本店所在地国における適法な減価償却費の金額を未処分所得の金額の計算という観点から見直し,その金額を正しく計算するために本邦法令の規定に従って減価償却費の金額の再計算をするものと解される。その過程において,既に当該特定外国子会社等の本店所在地国の法令に基づく決算が確定しているため,内国法人による減価償却費の費用計上方法である損金経理は実質的に不可能であるが,再計算に当たっては,損金経理という手続を踏んでいないにもかかわらず,損金経理をしたものとして取り扱い,当該減価償却費の金額の計算だけは行われたものとすることができるのである。
そして,原告は,上記方法を採用して適法にKEI社の減価償却
費の金額を法人税法31条の規定の例に準じて再計算し,原告の各年分の所得の金額の計算上,合算されることとなるKEI社の未処分所得の金額がいずれも零となることを確認したのである。

未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことは公正処理基準に反するものではないこと
(ア)

法人税法22条4項は,内国法人の収益の額(同条2項)並びに費用及び損失の額(同条3項)につき,公正処理基準に従って計算されるものと定めている。そして,同条2項及び3項に規定する「別段の定め」については,同条4項は適用されないこととされている。
措置法は,各国税に関する特別措置を定めた法律であり,その規
定は個別租税法の規定に対する特例としての性質を有するものであるから,外国子会社合算税制のような措置法の特例規定について
も,上記「別段の定め」と同様,法人税法22条4項の規定の適用はないものと考えられる。
したがって,適用対象留保金額の算出過程において行われた再計
算そのものが,法人税法22条4項ないし過年度遡及会計基準に照らし違法と解されることはない。そうすると,同項が問題となり得るとすれば,それは当該再計算の内容を判断する場合であるが,再計算の内容の是非については過年度遡及会計基準では問題にされておらず,また,減価償却費については同法31条が「別段の定め」となるため同法22条4項の対象外であるので,KEI社に係る損益計算書が公正処理基準に適合しているか否かは判断の対象とはならない。
仮に公正処理基準の適用を受ける可能性があるとしても,原告
は,再計算の過程において,償却限度額の範囲内で減価償却費の金額を設定したにすぎず,当初,KEI社がシンガポールの決算において計上した減価償却費の金額が,飽くまでも原告に合算される適用対象留保金額の算出過程においては正しくなかったために再計算の処理を行ったものであるから,損益計算をゆがめるために減価償却費の金額を任意に増減させたものではない。そして,内国法人
は,減価償却費の計上に当たり,常に法定の償却限度額と同額を計上するわけではなく,償却限度額の範囲内で当該事業年度の減価償却費の金額を決定することは任意の増減とは捉えられていない。
(イ)

また,KEI社の適用対象留保金額の算出過程は,KEI社の正式な「決算書」の修正には該当せず,「会計上の変更」にも「過去の誤謬の訂正」にも該当しないから,過年度遡及会計基準の適用範囲にそもそも該当しない。すなわち,適用対象留保金額の算出過程において減価償却費の金額を再計算したところで,シンガポール法人であるKEI社の平成11年9月期ないし平成17年9月期の「決算書」(乙9ないし15)における財務諸表は一切変更されず,当該再計算は「会計上の変更」には該当しない。また,当該算出過程において減価償却費の金額を再計算したとしても,KEI社が行った以前の減価償却費の金額の計算が誤っていたわけではないため,当該再計算は「過去の誤謬の訂正」にも該当しない。
したがって,KEI社の適用対象留保金額の算出過程は,過年度
遡及会計基準の適用範囲に該当しないから,当該会計基準における会計上の取扱いはKEI社には適用されない。そして,原告の再計算は,原告の雑所得金額の算出のために行ったものにすぎず,KEI社のシンガポールにおける決算自体に影響を与えるものではないから,減価償却費の金額の事後的変更ではなく,公正処理基準に反する処理でないことは明らかである。
仮に,本件における処理が過年度遡及会計基準の適用範囲内であ
るとしても,原告のした計算は不適法とはならない。すなわち,過年度遡及会計基準は平成23年4月1日以後に開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用される。そして,本件において問題となっているKEI社の対象事業年度は,平成11年9月期ないし平成17年9月期であり,また,原告本人の会計処理が問題となると仮定しても,処分対象が平成17年の所得税であるから,過年度遡及会計基準は適用されないこととなる。

KEI社が特定外国子会社等に該当しない平成11年9月期及び平成12年9月期の損益計算書について再計算を行うことが許されること(ア)

そもそも,減価償却とは,各事業年度における減価償却資産の減価額であるが,どの償却方法で減価償却を行うかは,所得税及び法人税の税額に影響するところが大きく,所得計算の適正を維持するためには同一の償却方法を継続的に用いることが必要であるため,本邦の法令においては,納税者は,その選定した償却方法を所轄税務署長に届け出なければならず(所得税法施行令(平成19年政令第82号による改正前のもの。以下同じ。)123条2項,法人税法施行令51条2項),また,選定した償却方法を変更しようとする場合には,所轄税務署長の承認を受けなければならない(所得税法施行令124条,法人税法施行令52条)。そして,企業会計原則第1・5には,「企業会計は,その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し,みだりにこれを変更してはならない」という継続性の原則が定められている。このように,減価償却の方法については,一度選択した以上,継続性の原則に基づき,同一の償却方法を継続適用することが予定されているのであり,毎年償却方法を変更するというようなことは全く想定されていない。
そして,KEI社は本件油そう船を1999年(平成11年)5
月に取得し,シンガポールの法令上は定額法(10年)を適用して減価償却を行っていた。KEI社が特定外国子会社等に初めて該当したのは2001年(平成13年)9月期であり,本邦の法令上は定率法(13年)が適用されているところ,的確に減価償却を行うためには,同事業年度から償却方法を定額法から定率法へ変更するのではなく,本件油そう船の取得当初から法定償却方法である定率法及び耐用年数を用いて償却費を計算する方が,本件油そう船に係る減価償却費を正しく計上することができるものと考えられる。そうすると,平成11年9月期及び平成12年9月期については,KEI社は特定外国子会社等には該当しないものの,減価償却費の統一的な適用に鑑み,本邦の法令においては,取得当初より定率法を用いることが妥当であると解される。
(イ)

KEI社が本件油そう船を譲渡した平成17年分のKEI社の未処分所得の金額の計算に当たって,被告が合算対象の所得があると主張する当該所得の基となっているのは,本件油そう船の譲渡に起因する譲渡益部分であるところ,その譲渡損益を正確に計算するに当たっては,本件油そう船の取得価額,各年において計上した減価償却費及び譲渡価額の各要素が必要となる。すなわち,本件油そう船の譲渡損益は,譲渡価額から期首における帳簿価額を控除した金額となるところ,期首における帳簿価額は,前年以前における減価償却累計額によって異なることとなり,期首における帳簿価額が異なれば,当然に譲渡損益の金額も異なることとなる。そして,期首における帳簿価額を正しく算定した場合に,当該帳簿価額が譲渡価額を上回っている場合には,譲渡損失が発生する。
そうすると,特定外国子会社等に該当する平成17年9月期のK
EI社の未処分所得の金額の計算を正しく行うために,KEI社が特定外国子会社等に該当しない平成11年9月期及び平成12年9月期においても,当該各事業年度の減価償却費の金額の計算については,法人税法31条の規定の例に準ずる計算として,日本における減価償却費の金額の再計算を行うことができることとなる。
(ウ)

なお,特定外国子会社等に該当していない期間の繰越欠損金についても,日本のルールに従った再計算で算定されなければならない。すなわち,再計算の結果,繰越欠損金が発生する場合に初めて措置法施行令25条の20第5項の適用が問題になる。本件についてみると,別表1-2記載のとおり,KEI社の損益を再計算すると,そもそも平成11年9月期及び平成12年9月期の税引前損益はゼロであり,繰越欠損金の問題は生じ得ない。
したがって,平成11年9月期及び平成12年9月期について措
置法施行令25条の20第5項を適用する余地はないのであるか
ら,同項が適用対象金額の算定上控除できる繰越欠損金を「特定外国子会社等に該当しなかった事業年度を除く」としていることを理由として,KEI社が特定外国子会社等に該当する前の平成11年9月期及び平成12年9月期の減価償却費の金額を修正することはできないとする被告の主張は根拠がないというべきである。
第3
1
当裁判所の判断
本件においては,措置法40条の4第1項所定の適用対象留保金額の算定の基礎となる同条2項2号所定の未処分所得の金額の計算について,措置法施行令25条の20第1項に規定する同施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の算出をKEI社損益計算書に基づいて行うべきか,原告作成損益計算書に基づいて行うべきかが争われており,具体的には,本件油そう船に係る減価償却費の金額の計算をKEI社損益計算書に記載された金額(同社の決算において経理された金額)を基礎として行うべきか,原告作成損益計算書に記載された金額を基礎として行うべきかが問題となる。
そこで,以下,措置法40条の4第1項の定める外国子会社合算税制の趣旨等についてみた上で,措置法施行令39条の15第1項1号所定の本邦法令の規定の例に準ずる計算の方法について検討することとする。

2
外国子会社合算税制の趣旨等について
(1)

措置法40条の4第1項は,居住者に係る外国関係会社(同条2項1号)のうち,本店所在地国におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令(措置法施行令25条の19第1項2号)で定める外国関係会社(各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外国関係会社)に該当するもの(特定外国子会社等)が,昭和53年4月1日以後に開始する各事業年度においてその未処分所得の金額から留保したものとして所定の調整を加えた金額(適用対象留保金額)を有する場合には,その金額のうちその者の有する株式等に対応するものとして所定の方法により計算された金額(課税対象留保金額)に相当する金額をその者の雑所得に係る収入金額とみなして,各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分に係るその者の雑所得の金額の計算上,総収入金額に算入する旨を定めている。
この規定は,居住者が,法人の所得等に対する租税の負担がないか又は極端に低い国若しくは地域(タックス・ヘイブン)に法人を設立して経済活動を行い,当該法人に所得を留保することによって,我が国における租税の負担を回避しようとする事例に対処して税負担の実質的な公平を図ることを目的として,一定の要件を満たす外国会社を特定外国子会社等と規定し,その課税対象留保金額を居住者の雑所得の計算上総収入金額に算入することとしたものと解される(最高裁平成17年(行ヒ)第89号同19年9月28日第二小法廷判決・民集61巻6号2486頁,最高裁平成20年(行ヒ)第91号同21年10月29日第一小法廷判決・民集63巻8号1881頁,最高裁平成21年(行ヒ)第199号同年12月4日第二小法廷判決・裁判集民事232号541頁参照)。
(2)

しかるところ,措置法40条の4第2項2号は,同条1項に規定する未処分所得の金額という用語の意義について,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,法人税法及び措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額を基礎として政令で定めるところにより当該各事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損の金額に係る調整を加えた金額をいう旨を定めている。
そして,措置法施行令25条の20第1項は,措置法40条の4第2項
2号に規定する政令で定める基準により計算した金額は,同条1項に規定する特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額に係る措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額及び同項2号に掲げる金額の合計額から当該所得の金額に係る同項3号に掲げる金額を控除した残額とする旨を定め,同項1号には,当該各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,本邦法令の規定の例に準じて計算した場合に算出される所得の金額又は欠損の金額が掲げられている。
この措置法施行令の規定は,特定外国子会社等の本店所在地国の法人所得税に係る税制が様々であるため,その本店所在地国の法令の規定に基づいて計算される所得の金額にもおのずから差異が生ずるものであるところ,措置法40条の4第1項所定の外国子会社合算税制においては,特定外国子会社等の課税対象留保金額をその株主である居住者の所得に合算して課税する仕組みが採られていることから,その合算の対象となる課税対象留保金額の基礎となる特定外国子会社等の未処分所得の金額は,原則として,各国の税制によって左右されることなく本邦法令の規定の例に準じて統一的に計算することが望ましいと考えられたことによるものと解される。そして,措置法施行令39条の15第1項1号において同号所定の所得の金額を本邦法令の規定の例に準じて計算するものとされているのは,本邦法令の規定の中には,確定した決算における経理を要件として適用することとされている規定(法人税法31条,42条)や青色申告書を提出する法人であることを要件として適用することとされている規定(措置法43条,45条の2等)があるなど,一定の要件を付しているものがあるが,我が国と会計制度の異なる特定外国子会社等の決算についてそのような形式的な要件を要求すると不都合が生ずる可能性があることから,そのような形式的な要件を満たさない場合においても本邦法令の規定の適用を認める趣旨に出たものであると解される。
(3)

他方で,措置法施行令25条の20第2項は,措置法40条の4第1項
各号に掲げる居住者は,措置法施行令25条の20第1項の規定にかかわらず,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,当該特定外国子会社等の本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額に当該所得の金額に係る同施行令39条の15第2項1号から13号までに掲げる金額の合計額を加算した金額から当該所得の金額に係る同項14号から16号までに掲げる金額の合計額を控除した残額をもって措置法40条の4第2項2号に規定する政令で定める基準により計算した金額とすることができる旨を定めている。
この措置法施行令の規定は,特定外国子会社等の所得の金額の計算が本店所在地国の法令に基づいて既にされている場合において,常に本邦法令の規定の例に準ずる統一的な計算を強制すると,納税者が二重に税務計算をすることを余儀なくされ,過重な事務負担となるおそれもあることから,納税者の便宜のため,例外的に,当該特定外国子会社等の本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額を基礎として未処分所得の金額の計算をすることを許容したものであると解される(ただし,本邦法令の規定の例に準じて計算した場合との著しいかい離が生じないように種々の計算の調整が行われることになる。)。
3
措置法施行令39条の15第1項1号所定の本邦法令の規定の例に準ずる計算の方法について
(1)

本邦法令の規定の例に準ずる計算の方法の在り方について
前記2(2)においてみたとおり,措置法40条の4第2項2号所定の未処
分所得の金額は,「特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額」につき,法人税法及び措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額を基礎として所定の調整を加えた金額をいうものとされているところ,上記政令で定める基準により計算した金額について定める措置法施行令25条の20第1項や本邦法令の規定の例に準じて計算した場合に算出される所得の金額について定める同施行令39条の15第1項1号は,いずれも上記「特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額」について所定の計算をすることにより特定外国子会社等の未処分所得の金額を算出するものとしている。
そして,決算とは財務諸表を作成する手続をいうところ,財務諸表の作成は法人の財政状態及び経営成績を利害関係者に対して適正に開示させることを目的として定められた会計制度に従って行われるものであるから,特定外国子会社等がその本店所在地国における会計制度に従って決算を行っている場合には,当該決算が措置法40条の4第2項2号に規定する「特定外国子会社等の各事業年度の決算」に当たると認めることができる。このように,未処分所得の金額が「特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額」について計算すべきものとされているのは,特定外国子会社等の本店所在地国の法人所得税に係る税制が様々であるため,確定した決算における経理を要件とする規定等を厳格に適用することが困難であるとしても(前記2(2)参照),法人である以上は利害関係者に対して財政状態及び経営成績を明らかにするために何らかの形で決算が行われることになるから,当該決算に基づく所得の金額を基礎として未処分所得の金額の計算を行うものとすることにより,納税者による恣意的な未処分所得の金額の計算を抑制しようとする趣旨に出たものと解される。このような趣旨に鑑みると,措置法40条の4第2項2号所定の未処分所得の金額について,措置法施行令25条の20第1項に規定する同施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の算出をするときは,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額を基礎として本邦法令の規定の例に準じて計算をすることにより所得の金額を算出すべきであり,また,当該決算に基づく所得の金額は,当該決算において経理された費用等の金額に基づいて算出されているものであるから,本邦法令の規定の例に準ずる計算をするに当たっては,当該決算において経理された費用等の金額を基礎として計算をすべきであり,当該費用等の金額を事後に任意の金額に修正して計算をすることは許されないものと解するのが相当である。そして,このように解することは,居住者の所得への合算の対象となる課税対象留保金額の基礎となる特定外国子会社等の未処分所得の金額について,各国の税制によって左右されることなく本邦法令の規定の例に準じて統一的に計算することが望ましいとの考えに基づいて設けられた措置法施行令25条の20第1項の趣旨(前記2(2))にも合致するものというべきである。
(2)

措置法施行令39条の15第1項1号に基づく減価償却費の金額の計算方法について


法人税法31条1項は,内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として同法22条3項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は,その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(損金経理額)のうち,その内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかった場合には,償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(償却限度額)に達するまでの金額とする旨を定めている。
このように,法人税法31条1項が減価償却費を損金の額に算入するための要件として損金経理がされていること(確定した決算において費用として経理されていること(法人税法2条25号))を定めているのは,減価償却費の経理のような法人の内部取引(内部計算事項)については,第三者の介在する外部取引とは異なり,法人の利益の算定において選択的又は恣意的な経理がされるおそれがあることから,法人の財政状態及び経営成績を利害関係者に対して適正に開示させることを目的として定められた会計制度に従って作成された財務諸表において費用として経理され,法人の最高の意思決定機関である総会における承認又は構成員全員の同意がされていることを要するものとし,もって選択的又は恣意的な経理を抑制し適正な課税の実現を図ろうとする趣旨に出たものであると解される。

しかるところ,前記2(2)において説示したとおり,措置法施行令39条の15第1項1号が同号所定の所得の金額を本邦法令の規定の例に準じて計算するものとしているのは,本邦法令の規定の中には,確定した決算における経理を要件として適用することとされている規定(法人税法31条,42条)や青色申告書を提出する法人であることを要件として適用することとされている規定(措置法43条,45条の2等)があるなど,一定の要件を付しているものがあるが,我が国と会計制度の異なる特定外国子会社等の決算についてそのような形式的な要件を要求すると不都合が生ずる可能性があることから,そのような形式的な要件を満たさない場合においても本邦法令の規定の適用を認める趣旨に出たものであると解される。そのため,特定外国子会社等の各事業年度の決算が本邦法令の規定における確定した決算に該当しない場合であっても,当該特定外国子会社等の決算において経理された減価償却費は法人税法31条1項の規定の例に準じて損金の額に算入され得ることになる。もっとも,前記(1)において説示したとおり,措置法40条の4第2項2号並びに措置法施行令25条の20第1項及び39条の15第1項1号は,納税者による恣意的な未処分所得の金額の計算を抑制するため,未処分所得の金額は措置法40条の4第2項2号に規定する「特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額」について計算すべきものとしているのであるから,措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額は,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額を基礎として,本邦法令の規定の例に準じて計算をすることにより所得の金額を算出すべきであり,本邦法令の規定の例に準ずる計算をするに当たっては,当該決算において経理された費用等の金額を基礎として計算をすべきであって,当該費用等の金額を事後に任意の金額に修正して計算をすることは許されないものと解される。
また,措置法施行令39条の15第1項1号が同号所定の所得の金額を本邦法令の規定の例に準じて計算するものとしているのは,飽くまで,我が国と会計制度の異なる特定外国子会社等の決算について損金経理等のような形式的な要件を要求すると不都合が生ずる可能性があることから,そのような形式的な要件を満たさない場合においても本邦法令の規定の適用を認める趣旨に出たものにとどまり,上記アのとおり,法人税法31条1項が減価償却費を損金の額に算入するために損金経理を要するものとした趣旨,すなわち,選択的又は恣意的な経理を抑制し適正な課税の実現を図るという趣旨までをも不要とするものではないというべきである。そして,特定外国子会社等が既にその決算において減価償却費について経理をしているにもかかわらず,当該減価償却費の金額を事後に任意の金額に修正することを認めた場合には,上記のような同項が減価償却費を損金の額に算入するために損金経理を要するものとした趣旨を損なうこととなり,内国法人に本邦法令の規定をそのまま適用した場合と著しいかい離を生ずることとなるものであるから,措置法施行令39条の15第1項1号も,そのような修正をした損益計算書に基づいて同号所定の所得の金額の計算を行うことを許容しているものとは解されない。
以上に説示したところに鑑みると,措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額を算出するために法人税法31条の規定の例に準じて減価償却費の金額の計算をする場合,特定外国子会社等が既にその決算において減価償却費について経理をしているときは,当該決算に当該特定外国子会社等の本店所在地国の法令の重大な違反があるためその経理に係る減価償却費の金額を基礎として未処分所得の金額の計算をすることが著しく不当であると認められる特段の事情のない限り,当該決算において経理された減価償却費の金額を基礎として同条1項所定の償却限度額の限度で損金の額に算入されるものと解するのが相当であり,当該決算において減価償却費として経理された金額を事後に任意の金額に修正して措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額を算出することは許されないというべきである。そのため,上記のときにおいて減価償却費として損金の額に算入される金額は,特定外国子会社等がその決算において減価償却費として経理した金額と償却限度額のいずれか低い方の金額であり,減価償却費として経理した金額が償却限度額を超える場合には,その超える金額(以下「償却超過額」という。)は,これが生じた事業年度の翌年の事業年度において償却限度額に達するまでの金額が損金の額に算入されることになる(法人税法31条4項)。
(3)

なお,措置法通達66の6-10(2)は,減価償却費等の損金算入など確定した決算における経理を要件として適用することとされている規定については,特定外国子会社等がその決算において行った経理のほか,内国法人が措置法66条の6の規定の適用に当たり当該特定外国子会社等の決算を修正して作成した当該特定外国子会社等に係る損益計算書等において行った経理をもって当該要件を満たすものとして取り扱う旨を定めている。この通達の定めも,上記(1)及び(2)において説示した措置法施行令39
条の15第1項1号に関する解釈に基づいて課税実務上の取扱いを定めたものであるとみる限りにおいて,法令の趣旨に沿った正当なものとして是認することができるものといえる。
4
KEI社の未処分所得の金額の計算について
(1)

以上に説示したところを踏まえて本件についてみるに,前記前提事実(2)オのとおり,KEI社損益計算書(その内容は,別表1-1記載のとおりである。)は,KEI社が,シンガポールの法令に基づき,平成11年9月期から平成17年9月期までの各事業年度の決算に係る財務諸表の一つとして作成され,公認会計士の監査及び株主全員の承認を受けたものであるから,KEI社が利害関係者に対して財政状態及び経営成績を明らかにするために作成したものであり,特定外国子会社等の各事業年度の決算(措置法40条の4第2項2号,措置法施行令25条の20第1項,39条の15第1項1号)により作成されたものであると認められる。そして,KEI社損益計算書の記載に係るKEI社の上記各事業年度の決算につき,その経理に係る減価償却費の金額を基礎として未処分所得の金額の計算をすることが著しく不当であると認められるようなシンガポールの法令の重大な違反があることをうかがわせる事実を認めるに足りる証拠はないから,本件において前記3(2)イの特段の事情があるとは認められない。
したがって,本件において,措置法40条の4第2項2号所定の未処分所得の金額について措置法施行令25条の20第1項に規定する同施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の算出をするときは,KEI社の決算において経理された減価償却費の金額を記載したKEI社損益計算書に基づいて計算を行うべきであり,その際,本件油そう船に係る減価償却費の金額の計算は,KEI社損益計算書に記載された減価償却費の金額(同社の決算において経理された金額)を基礎として法人税法31条1項所定の償却限度額の限度で損金の額に算入されるものというべきである。すなわち,減価償却費として損金の額に算入される金額は,KEI社損益計算書に記載された減価償却費の金額(同社の決算において経理された金額)と償却限度額のいずれか低い方の金額であり,減価償却費として経理した金額が償却限度額を超える場合には,その償却超過額は,これが生じた事業年度の翌年の事業年度において償却限度額に達するまでの金額が損金の額に算入されることになる。
したがって,KEI社の未処分所得の金額の計算は,別紙3の1記載のとおりとなるというべきである(なお,本件では,別表4記載のとおり,平成15年9月期において償却超過額が生じているが,平成16年9月期においても償却超過額が生じており,本件油そう船を売却した平成17年9月期には減価償却費について損金として経理がされていないことから,償却超過額の取扱いについて定める法人税法31条4項の適用はない。)。
(2)

これに対し,前記前提事実(4)ウのとおり,原告作成損益計算書は,原告が,本件決定処分等を不服として異議申立てをした後の平成23年5月12日に今治税務署長に提出したものであり(原告の主張を前提としても,その作成は同年3月3日にされたものである。),その内容は別表1-2記載のとおりである。そして,証拠(甲7ないし12,19,乙17ないし28,38ないし40)及び弁論の全趣旨によれば,原告作成損益計算書は,原告が,平成17年分の所得税について税務調査を受けた後,今治税務署の税務調査担当職員から,KEI社の平成17年9月期の所得の金額について措置法40条の4第1項の適用がある旨の指摘を受けたことから,同事業年度においてKEI社に未処分所得の金額が生じないものとするため,本件油そう船の売却によって特別利益が生じないよう(本件油そう船の期首における帳簿価額が譲渡価額を上回る金額となるよう),また,KEI社が特定外国子会社等に該当する平成13年9月期から平成16年9月期においてもKEI社に未処分所得の金額が生じないよう,平成11年9月期から平成16年9月期までの各事業年度の税引後損益が0円となるように逆算して減価償却費の金額を修正したものであると認められる(KEI社損益計算書と原告作成損益計算書の内容を比較すると(別表6参照),KEI社損益計算書においては,平成11年9月期から平成16年9月期までの税引後損益(同表順号⑰)に各事業年度ごとに異なる金額の欠損が生じているのに対し,原告作成損益計算書においては,上記期間の各事業年度の税引後損益の金額が全て一律に0円となっており,原告の顧問税理士が平成23年5月27日の異議調査において原告作成損益計算書について「各年利益が出ないように計算し」た旨述べていること(乙25)に照らしても,原告作成損益計算書の記載は,税引前損益(同表順号⑮)と法人所得税(同表順号⑯)の金額が同一となるように逆算して減価償却費の金額を減額修正したものというべきである。)。
このような原告作成損益計算書の内容は,前記3(1)及び(2)において説示した措置法施行令39条の15第1項1号所定の本邦法令の規定の例に準ずる計算の方法として採るべき計算方法に反するものである上,その作成の経緯や内容に照らすと,KEI社が利害関係者に対して財政状態及び経営成績を明らかにするために作成したKEI社損益計算書とは異質なものであって,特定の事業年度においてKEI社に未処分所得の金額が生じないようにする意図の下に,KEI社がその決算において減価償却費として経理した金額を事後に任意の金額に修正したものというべきであり,KEI社の未処分所得の金額の計算において選択的又は恣意的な計算をするものとの評価を免れないものといわざるを得ない。
そのため,原告作成損益計算書に基づくKEI社の未処分所得の金額の計算は,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額(措置法40条の4第2項2号,措置法施行令25条の20第1項,39条の15第1項1号)について計算をしたものとみることはできず,「本邦法令の規定の例…に準じて計算した場合」(同号)にも該当しないものというべきである。
したがって,措置法40条の4第1項所定の適用対象留保金額の算定の基礎となる同条2項2号所定の未処分所得の金額の計算について,措置法施行令25条の20第1項に規定する同施行令39条の15第1項1号に掲げる金額の算出を原告作成損益計算書に基づいて行うことはできないというべきである。
5
原告の主張について
(1)

原告は,未処分所得の金額の計算は,本邦法令の規定に基づく計算が原則とされており,措置法施行令25条の20第2項が本店所在地国の法令に基づいて計算をすることができる旨定めているとおり,本店所在地国の法令における決算をそのまま利用するか否かは,納税者の選択に委ねられているのであるから,特定外国子会社等の決算を利用することができるのは,飽くまで納税者の側で本店所在地国の法令による計算を選択した場合に限られ,課税当局が独自に特定外国子会社等の決算に基づいて未処分所得の金額を計算し,所得税の決定処分をすることはできない旨主張する。しかしながら,原告の上記主張は本件決定処分が措置法施行令25条の
20第2項を適用してされたものであることを前提とするものと解されるところ,証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,そもそも,本件決定処分は,同項を適用したものではなく,同条1項に基づき,特定外国子会社等であるKEI社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,本邦法令の規定の例に準ずる計算をするなどしてKEI社の未処分所得の金額を計算し,原告の平成17年度の所得税につき,総所得金額及び納付すべき税額の決定処分をしたものであると認められ,現に被告も同項を適用した未処分所得の金額の計算を主張するものである。そのため,原告の上記主張はその前提を欠くものであるから,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
なお,仮に,原告の上記主張が,措置法施行令25条の20第1項の規定に基づく未処分所得の金額の計算について,特定外国子会社等の決算を利用することの違法性をいうものであると解するとしても,前記2(2)において説示したとおり,措置法40条の4第1項に規定する政令で定める基準により計算した金額について定める措置法施行令25条の20第1項や,本邦法令の規定の例に準じて計算した場合に算出される所得の金額について定める措置法施行令39条の15第1項1号は,いずれも措置法40条の4第2項2号に規定する「特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額」について所定の計算をすることにより特定外国子会社等の未処分所得の金額を算出するものとしているのであって,本邦法令の規定の例に準ずる計算をするにしても,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づいて所定の計算をすべきものであることに変わりはない。したがって,いずれにしても,この点に関する原告の主張を採用することはできない。
(2)

原告は,未処分所得の金額の計算は確定申告書に添付されていない原告作成損益計算書に基づいて行うことができない旨の被告の主張に対し,①KEI社の未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うと,適用対象留保金額が零となり,雑所得が生ずることはないため,原告には,平成17年分の所得税について確定申告書を提出する義務はなく(所得税法121条1項),確定申告書に原告作成損益計算書を添付する義務(措置法40条の4第5項)もない,②我が国の法人税法が確定決算主義を採用していることと特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算は,全く次元の異なるものであり,前者が後者に「確定した決算」を求めることの根拠となるものではないから,措置法施行令39条の15第1項1号は,特定外国子会社等の決算を修正した計算書類について,我が国における「確定した決算」と同程度の実質を有することを担保する何らかの手続的な措置がされなければならないことを定めたものではない,③措置法通達66の6-10(2)は,管理上の都合から,決算の修正の過程を明らかにする書類が損益計算書等に添付されていることが望ましいと考えていることを示すものにとどまり,納税者が同通達に拘束されるものではなく,同通達が法令に存しない要件を通達によって付加しているものであるとすれば,通達としての存在を超え,納税者に対して新たな要件を付加するものとしか解釈できないのであるから,租税法律主義に反する旨主張する(上記②及び③の点については,原告が提出した意見書(甲22の1)にも,同旨の意見が述べられている。)。
しかしながら,前記4(2)において説示したとおり,そもそも,原告作成損益計算書の内容は,前記3(1)及び(2)において説示した措置法施行令39条の15第1項1号所定の本邦法令の規定の例に準ずる計算の方法として採るべき計算方法に反するものであるから,KEI社の未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことはできないというべきであり,この点に関する法令の解釈及び判断は,原告作成損益計算書が確定申告書に添付されているか否かによって左右されるものではないから,原告作成損益計算書を確定申告書に添付することを要するか否かという手続上の事項について検討するまでもなく,原告主張の計算は適法な計算とは認められないものというべきである。
したがって,確定申告書に原告作成損益計算書ないし修正損益計算書を添付する義務の有無に関する原告の上記①ないし③の各主張は,その義務の有無にかかわらず,KEI社の未処分所得の金額を原告作成損益計算書に基づいて行うことはできないとの前記4(2)の判断を左右するものではない。
なお,上記のとおり,原告作成損益計算書が確定申告書に添付されているか否かにかかわらず,KEI社の未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことはできないというべきであるから,KEI社の適用対象留保金額が零となり,雑所得が生ずることはないとする原告の上記①の主張はその前提を欠くものであり,また,後記6(別紙2の1(1)イ)のとおり,原告の平成17年分の雑所得の金額は9231万1866円となり,原告には確定申告書を提出する義務がある以上(所得税法121条1項1号参照),原告は当初から確定申告書にKEI社損益計算書を添付する義務を負っていたものである(措置法40条の4第5項,措置法施行規則18条の20第2項)。
(3)

原告は,納税者に確定申告の義務がない場合,課税当局から問い合わせを受け,又は税務調査を受けたときに,修正損益計算書を調査官に示すことにより,課税対象留保金額がないため確定申告義務がないことを説明することが必要となるにとどまるところ,本邦法令の規定に基づく原告作成損益計算書は,本件決定処分が行われた平成23年3月10日より前の同月3日に作成されており,原告の顧問税理士が今治税務署職員に対して提出しようとしたにもかかわらず,今治税務署職員が,原告作成損益計算書の提出を威嚇して妨げ,受取を拒否したことから,同日に提出することができず,異議調査が始まった最初の日である同年5月12日に提出されたものであり,本件決定処分より前に本邦法令の規定に基づく原告作成損益計算書が作成されていたのであるから,原告が原告作成損益計算書に基づいて行った計算を否定することはできない旨主張する。
しかしながら,そもそも,KEI社の未処分所得の金額の計算を原告作
成損益計算書に基づいて行うことはできないことは,前記4(2)及び上記(2)において説示したとおりであり,原告に平成17年分の所得税について確定申告書を提出する義務があることは,上記(2)において説示したとおりである。また,仮にKEI社の未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことが選択的に許されると解する余地があり得るとしても,そもそも,所得税法は,納付すべき税額の確定の手続について,通則法16条1項1号に規定する申告納税方式を採用しており(120条),所得税について確定申告があればそれによって納付すべき税額が確定するが,確定申告がなければ税務署長の決定処分によって納付すべき税額が確定することになるところ,原告は平成17年分の所得税について確定申告をしていない以上,原告が原告作成損益計算書を作成し,又は原告作成損益計算書を今治税務署長に提出したとしても,確定申告を伴わないそのような作成行為又は提出行為は何ら法的効果を有しないものであるから,原告の平成17年分の所得税を確定させる効力が生ずるものではないことはもとより,今治税務署長が,原告作成損益計算書の内容に拘束され,それに従って未処分所得の金額の計算をすべき義務が生ずるものでもない(KEI社の未処分所得の金額の計算をKEI社損益計算書に基づいて行うことが違法となるものでもない)というべきである。なお,所得税法121条1項は,確定申告書の提出を要しない場合について定めるものにとどまり,確定申告書の提出を禁ずるものではないから,確定申告書の提出を要しない場合であってもこれを提出することはできるものと解される。
したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。(4)

原告は,一旦,内国法人において確定した決算により決定された減価償却費の金額につき,申告の際に任意に変更することは,確定決算主義に反し許されない旨の被告の主張に対し,内国法人の課税所得の計算が「確定した決算」に基づきされていることや,減価償却費が損金経理を要求される事項であること等は飽くまで内国法人の課税所得の計算に係る事項であり,KEI社はシンガポール法人であるから,その決算書はシンガポール会社法及びシンガポール会計基準により作成されるのであって,内国法人の財務諸表の作成手続や課税所得の計算は一切関係がなく,減価償却費の金額の再計算を行うに際して,なぜKEI社損益計算書上の減価償却費の金額をそのまま用いなければならないかについて,被告は何ら法令上の根拠に基づいた主張を行っていない旨主張する。
しかしながら,前記3(1)において説示したとおり,措置法40条の4第
2項2号並びに措置法施行令25条の20第1項及び39条の15第1項1号は,納税者による恣意的な未処分所得の金額の計算を抑制するため,未処分所得の金額は措置法40条の4第2項2号に規定する「特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額」について計算すべきものとしているのであるから,措置法施行令39条の15第1項1号に掲げる金額は,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額を基礎として本邦法令の規定の例に準じて計算をすることにより所得の金額を算出すべきであり,本邦法令の規定の例に準ずる計算をするに当たっては,当該決算において経理された費用等の金額を基礎として計算をすべきであって,当該費用等の金額を事後に任意の金額に修正して計算をすることは許されないものと解される。
また,前記3(2)イにおいて説示したとおり,措置法施行令39条の15第1項1号が同号所定の所得の金額を本邦法令の規定の例に準じて計算するものとしているのも,飽くまで,我が国と会計制度の異なる特定外国子会社等の決算について損金経理等のような形式的な要件を要求すると不都合が生ずる可能性があることから,そのような形式的な要件を満たさない場合においても本邦法令の規定の適用を認める趣旨に出たものにとどまり,法人税法31条1項が減価償却費を損金の額に算入するために損金経理を要するものとした趣旨,すなわち,選択的又は恣意的な経理を抑制し適正な課税の実現を図るという趣旨までをも不要とするものではないというべきである。そして,特定外国子会社等が既にその決算において減価償却費について経理をしているにもかかわらず,当該減価償却費の金額を事後に任意の金額に修正することを認めた場合には,上記のような同項が減価償却費を損金の額に算入するために損金経理を要するものとした趣旨を損なうこととなり,内国法人に本邦法令の規定をそのまま適用した場合と著しいかい離が生ずることとなるものであるから,措置法施行令39条の15第1項1号も,そのような修正をした損益計算書に基づいて同号所定の所得の金額の計算を行うことを許容しているものとは解されない。
したがって,措置法施行令39条の15第1項1号に基づき本邦法令の規定の例に準じて特定外国子会社等の未処分所得の金額を計算する場合の計算方法の在り方に関して,内国法人の課税所得の計算(減価償却費の損金の額への算入)が確定した決算に基づきされていることや減価償却費について損金経理が要求されていること等が所論のように関係がないとはいえず,かえって,上記のとおりこれらの事項はKEI社損益計算書上の減価償却費の金額に基づいて計算をすべき法令上の根拠を示しているものといえるから,この点に関する原告の主張を採用することはできない。(5)

原告は,①日本とシンガポールとの間に生じている「会計処理の差異」を調整すべく,減価償却費の金額の再計算を行い,原告の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入されるKEI社の未処分所得の金額を計算したものであり,その調整は,措置法施行令39条の15に規定する本邦法令の規定の例に準ずる計算に該当する,②KEI社がシンガポールの法令に基づいてした減価償却は,シンガポールの法令上適法な手続を経て,シンガポール当局に提出された財務諸表に計上されているものであるが,外国子会社合算税制の適用を受け,原告の雑所得として合算される未処分所得の金額を計算するに当たっては,シンガポールにおいて計上された減価償却費の金額ではなく,本邦法令の規定に基づく耐用年数,償却率及び償却方法を用いて日本において計算された減価償却費の金額こそがKEI社の姿を正しく表すものと解されるため,原告は本邦法令の規定の例に準じて,日本における減価償却費の金額を正しく計算することで正しい未処分所得の金額を算出したものであり,何ら恣意的な計算など行っていないことは明らかである旨主張する。そして,この点については,原告が提出した意見書(甲22の1)においても,「内国法人が措置法66条の6の規定の適用に当たり,当該特定外国子会社等の決算を修正して作成した当該特定外国子会社等に係る損益計算書等において行った経理をもって計算した場合こそが,「本邦法令の規定の例に準じて計算する場合」に該当する」旨の意見が記載されている。
しかしながら,前記3(2)イにおいて説示したとおり,措置法施行令39条の15第1項1号が同号所定の所得の金額を本邦法令の規定の例に準じて計算するものとしているのは,飽くまで,我が国と会計制度の異なる特定外国子会社等の決算について損金経理等のような形式的な要件を要求すると不都合が生ずる可能性があることから,そのような形式的な要件を満たさない場合においても本邦法令の規定の適用を認める趣旨に出たものにとどまり,特定外国子会社等が既にその決算において減価償却費について経理をしているにもかかわらず,当該減価償却費の金額を事後に任意の金額に修正することを認め,そのような修正をした損益計算書に基づいて同号所定の所得の金額の計算を行うことを許容しているものとは解されない。
そして,前記4(2)において説示したとおり,原告作成損益計算書は,平成17年9月期においてKEI社に未処分所得の金額が生じないものとするため,本件油そう船の売却によって特別利益が生じないよう(本件油そう船の期首における帳簿価額が譲渡価額を上回る金額となるよう),また,KEI社が特定外国子会社等に該当する平成13年9月期から平成16年9月期においてもKEI社に未処分所得の金額が生じないよう,平成11年9月期から平成16年9月期までの各事業年度の税引後損益が0円となるように逆算して減価償却費の金額を修正したものであると認められる。そして,原告作成損益計算書の内容は,前記3(1)及び(2)において説示した措置法施行令39条の15第1項1号所定の本邦法令の規定の例に準ずる計算の方法として採るべき計算方法に反するものである上,その作成の経緯や内容に照らすと,KEI社が利害関係者に対して財政状態及び経営成績を明らかにするために作成したKEI社損益計算書とは異質なものであって,特定の事業年度においてKEI社に未処分所得の金額が生じないようにする意図の下に,KEI社がその決算において減価償却費として経理した金額を事後に任意の金額に修正したものというべきであり,KEI社の未処分所得の金額の計算において選択的又は恣意的な計算をするものとの評価を免れないものといわざるを得ない。そのため,原告作成損益計算書に基づく未処分所得の金額の計算は,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額(措置法40条の4第2項2号,措置法施行令25条の20第1項,39条の15第1項1号)について計算をしたものとみることはできず,「本邦法令の規定…の例に準じて計算した場合」(同号)にも該当しないというべきである。
したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。(6)

原告は,措置法は,各国税に関する特別措置を定めた法律であり,その規定は個別租税法の規定に対する特例としての性質を有するものであるから,外国子会社合算税制のような措置法の特例規定についても,法人税法22条2項及び3項に規定する「別段の定め」と同様,公正処理基準について定めた同条4項の規定の適用はなく,適用対象留保金額の算出過程において行われた再計算そのものが,同項及び過年度遡及会計基準に照らし違法と解されることはなく,また,減価償却費については同法31条が「別段の定め」となるため同法22条4項の対象外であるので,KEI社に係る損益計算書が公正処理基準に適合しているか否かは判断の対象とはならない旨主張する。
しかしながら,前記4(2)及び上記(5)において説示したとおり,原告作
成損益計算書に基づく未処分所得の金額の計算は,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額(措置法40条の4第2項2号,措置法施行令25条の20第1項,39条の15第1項1号)について計算をしたものとみることはできず,「本邦法令の規定…の例に準じて計算した場合」(同号)にも該当しないというべきである。
したがって,法人税法31条1項の規定の例に準ずる計算において同法22条4項の適用があるか否か及び原告作成損益計算書の内容が公正処理基準に反するものであるか否かについて検討するまでもなく,KEI社の未処分所得の金額の計算を原告作成損益計算書に基づいて行うことはできないというべきである。
なお,過年度遡及会計基準は,会計上の変更(会計方針の変更,表示方法の変更及び会計上の見積りの変更をいう。)及び過去の誤謬(原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず,財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったこと又はこれを誤用したことによる①財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り,②事実の見落としや誤解から生ずる会計上の見積りの誤り,③会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り)の訂正に関する会計処理及び開示について適用されるものであるところ(甲27),措置法施行令39条の15第1項1号に基づき本邦法令の規定の例に準じて特定外国子会社等の未処分所得の金額を計算する場合とは,適用の場面を全く異にするものであり,直接の関係を有しないものであって,本件の争点に関する判断を左右するものではない。
(7)

原告は,①減価償却の方法については,一度選択した以上,継続性の原則に基づき,同一の償却方法を継続適用することが予定されているのであり,毎年償却方法を変更するというようなことは全く想定されていないから,平成11年9月期及び平成12年9月期については,KEI社は特定外国子会社等には該当しないものの,減価償却費の統一的な適用に鑑み,本邦の法令においては,取得当初より定率法を用いることが妥当である,②本件油そう船の譲渡損益を正確に計算するに当たっては,本件油そう船の取得価額,各年において計上した減価償却費及び譲渡価額の各要素が必要となるところ,期首における帳簿価額は,前年以前における減価償却累計額によって異なることとなり,期首における帳簿価額が異なれば,当然に譲渡損益の額も異なることとなるから,平成17年9月期のKEI社の未処分所得の金額の計算を正しく行うためには,KEI社が特定外国子会社等に該当しない平成11年9月期及び平成12年9月期においても,当該各年分の減価償却費の金額の計算については,法人税法31条の規定の例に準ずる計算として,日本における減価償却費の金額の再計算を行うことができるなどと主張する。
しかしながら,前記2(1)において説示したとおり,措置法40条の4第1項の規定は,居住者が,法人の所得等に対する租税の負担がないか又は極端に低い国若しくは地域(タックス・ヘイブン)に法人を設立して経済活動を行い,当該法人に所得を留保することによって,我が国における租税の負担を回避しようとする事例に対処して税負担の実質的な公平を図ることを目的として,一定の要件を満たす外国会社を特定外国子会社等と規定し,その課税対象留保金額を居住者の雑所得の計算上総収入金額に算入することとしたものと解されるのであって,その合算の対象となる課税対象留保金額の基礎となる特定外国子会社等の未処分所得の金額は,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額(措置法40条の4第2項2号,措置法施行令25条の20第1項,39条の15第1項1号)について本邦法令の規定の例に準じて計算するものとされているのであるから,特定外国子会社等に該当しない事業年度の決算に基づく所得の金額については,上記の例に準じた計算の対象としないことが所与の前提とされているものと解するのが相当である。
また,措置法施行令25条の20第5項は,措置法40条の4第2項2号に規定する欠損の金額に係る調整を加えた金額について,特定外国子会社等に該当しなかった事業年度において生じた欠損金額を除く旨を定めているところ,これは,特定外国子会社等に該当しない事業年度について調整所得金額の計算が行われないことを所与の前提として,当該事業年度において生じた欠損金額を除外する旨を定めたものと解される。
したがって,この点に関する原告の主張を採用することはできない。(8)

原告のその余の主張も,措置法施行令39条の15第1項1号所定の本邦法令の規定の例に準ずる計算の方法及びKEI社の未処分所得の金額の計算に関する前記3及び4の判断を左右するに足りるものとはいえない。
6
本件決定処分等の適法性について
以上に説示したところによれば,本件決定処分等における課税の根拠及び計算は,別紙2「課税の根拠及び計算」(別紙2の引用に係る別紙3の計算の記載を含み,別紙2の1(5)イ及びその引用に係る別紙4の仮定的な計算の記載を除く。)に記載するとおりであると認められるから(前記第2の3参照),本件決定処分等は適法というべきである。

第4

結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

岩井伸晃
裁判官

堀内元城
裁判官

吉賀朝哉
(別紙2)
課税の根拠及び計算

1
本件決定処分の根拠
被告が本件訴訟において主張する原告の平成17年分の所得税額等は,次のとおりである(別表2参照)。
(1)

総所得金額

1億0201万1866円

上記金額は,次のア及びイの各金額の合計額である。

給与所得の金額

970万0000円

上記金額は,給与支払者である喜多浦海運が今治市長に提出した給与支払報告書(個人別明細書)(以下「本件給与支払報告書」という。乙16)に記載された給与所得の金額と同額である。
なお,本件給与支払報告書は,地方税法(平成18年法律第7号による改正前のもの)317条の6第1項及び地方税法施行規則(平成18年1月26日総務省令第12号による改正前のもの)10条の規定により,喜多浦海運が今治市長に提出したものであり,原告の平成17年分の給与所得の金額及び所得控除の額の内容が記載されたものである。イ
雑所得の金額

9231万1866円

上記金額は,措置法40条の4第1項に規定する特定外国子会社等に該当するKEI社の平成17年9月期の未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分配の額に関する調整を加えた金額(適用対象留保金額)にKEI社の発行済株式のうちに占める原告の株式保有割合を乗じて算出した金額(課税対象留保金額)を基に円換算した金額であり,原告の雑所得に係る収入金額とみなして平成17年分の雑所得の金額の計算上,総収入金額に算入すべき同条1項に規定する課税対象留保金額に相当する金額である(別表3の順号⑫「雑所得の総収入金額に算入すべき金額」欄参照)。
なお,当該収入を得るために要した必要経費と認められるものはないから,雑所得の金額は,総収入金額と同額となる。
また,KEI社の上記課税対象留保金額の算定については,別紙3のとおりである。
(2)

所得控除の金額の合計額

190万2020円

上記金額は,本件給与支払報告書に記載された所得控除の額(社会保険料控除の金額107万7020円,生命保険料控除の金額5万円,損害保険料控除の金額1万5000円,扶養控除の金額38万円及び基礎控除の金額38万円)の合計額と同額である。
(3)

課税総所得金額

1億0010万9000円

上記金額は,上記(1)の総所得金額1億0201万1866円から上記(2)の所得控除の金額の合計額190万2020円を控除した後の金額(通則法118条1項の規定により1000円未満の端数金額を切り捨てた後のもの)である。
(4)

納付すべき税額

3371万6800円

上記金額は,次のアの金額からイ及びウの各金額を差し引いた後の金額(ただし,通則法119条1項により100円未満の端数金額を切り捨てた後のもの)である。

課税総所得金額に対する税額

3455万0330円

上記金額は,上記(3)の課税総所得金額1億0010万9000円に所得税法89条1項所定の税率(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成17年法律第21号による改正前のもの。以下「負担軽減措置法」という。)4条の特例を適用したもの)を乗じて算出した金額である。

定率減税額

25万0000円
上記アの金額を基礎として,負担軽減措置法6条2項の規定により算出した金額である。

源泉徴収税額

58万3500円

上記金額は,本件給与支払報告書に記載された源泉徴収税額と同額である。
(5)

小括
被告が本件訴訟において主張する原告の平成17年分の総所得金額及び納付すべき税額は,上記(1)及び(4)のとおり,それぞれ1億0201万1866円及び3371万6800円であるところ,これらの金額は,本件決定処分における総所得金額及び納付すべき税額をいずれも上回る。

なお,仮に,KEI社が特定外国子会社等に該当する平成13年9月期以降について,原告作成損益計算書に基づいて,本邦法令の規定の例に準じて適用対象留保金額を計算した場合においても,KEI社が特定外国子会社等に該当することとなった平成13年9月期以降についてのみ当該計算が許されるにすぎないから,別紙4のとおり,原告作成損益計算書に基づいて計算した適用対象留保金額は123万7349S$,雑所得の金額は8744万3278円となり,今治税務署長が本件決定処分において計算した総所得金額及び納付すべき税額(別表2の「決定処分」欄参照)と同額となる。

2
本件賦課決定処分の計算
原告に課されるべき無申告加算税の額は,本件決定処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額3191万円(通則法118条3項の規定により1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの)を基礎として,これに通則法66条1項に基づき100分の15の割合を乗じた金額478万6500円となり,この金額は,本件賦課決定処分の額と同額である。
以上
(別紙3)
原告の雑所得の総収入金額に算入すべき金額の計算

KEI社損益計算書(別表1-1参照)によると,平成17年9月期において,本件油そう船を売却したことにより,特別利益250万9737S$が計上され,税引後損益が247万6963S$となったため,原告の「課税対象留保金額」に相当する金額を算出し,当該金額を原告の雑所得に係る収入金額とみなして当該事業年度終了の日の翌日から2か月を経過する日の属する年分である平成17年分の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入することとなる。課税対象留保金額に相当する具体的な金額は,以下に述べるとおりである(別表3参照)。1
未処分所得の金額

130万8573S$

上記金額は,措置法施行令25条の20第1項の規定に基づき,本邦法令の規定の例に準じて計算した所得の金額であり,次の(1)及び(2)の合計額から(3)を差し引いた後の金額から(4)の金額を差し引いた後の金額である(別表3順号⑥欄)。
(1)

KEI社の決算に基づく所得金額

247万6963S$

上記金額は,措置法施行令25条の20第1項の規定に基づき,シンガポールの法令に基づき作成されたKEI社の平成17年9月期の決算書(乙15)の「利益/(損失)額(所得税課税前)」の金額である247万9295S$から,所得税の金額2332S$を差し引いた金額である(別表1-1「平成17年9月期」順号⑰欄及び別表3順号①欄)。(2)

損金の額に算入した法人所得税の額

2332S$

上記金額は,措置法施行令25条の20第1項及び措置法施行令39条の15第1項2号に基づき,KEI社の平成17年9月期の決算書(乙15)に記載された「8

所得税」の金額である(別表1-1「平成17年

9月期」順号⑯欄及び別表3順号②欄)。
(3)

減価償却超過額の認容額

36万7783S$

本件油そう船は,法人税法施行令13条の規定により減価償却資産に該当し,減価償却費の金額の計算は,法人税法31条1項並びに法人税法施行令48条1項2号及び53条1号の規定に基づき,定率法(現在の旧定率法)により計算を行うこととなり,減価償却の基礎となる額に対して,法人税法施行令56条及び減価償却資産の耐用年数等に関する省令に基づき法定耐用年数13年に対する償却率0.162を乗じて償却限度額を求めることとなる。
そして,KEI社損益計算書において損金経理をした額と当該償却限度額との差額が法人税法施行令62条の規定による償却超過額又は償却不足額となる。
本件においては,平成11年9月期及び平成12年9月期は,KEI社が特定外国子会社等に該当しないことから,KEI社が取得した本件油そう船の減価償却の調整は,特定外国子会社等に該当した平成13年9月期の期首の帳簿価格1378万3392S$(乙11)を基礎として求めることとなり,別表4「減価償却額超過額の計算」のとおり,償却超過額は,平成15年9月期の4万8242S$及び平成16年9月期の31万9541S$の合計額36万7783S$となる(別表3「減価償却超過額の認容額」順号③欄)。この当該償却超過額は,売却した本件油そう船の売却原価となることから,平成17年分の未処分所得の計算上認容した金額となる。
(4)

繰越欠損金の控除額

80万2939S$

上記金額は,措置法施行令25条の20第5項の規定に基づくもので,特定外国子会社等に該当しなかった事業年度を除いた平成13年9月期ないし平成16年9月期において生じた欠損金の額の合計額である(別表3「繰越欠損金の控除額」順号⑤欄)。
具体的には,特定外国子会社等に該当した各事業年度ごとの本邦法令の規定の例に準ずる所得の計算,すなわち欠損金の額を計算し累計額を求めることとなり,別表5「繰越欠損金控除額の計算」のとおり,KEI社損益計算書の税引後損益の額に,損金の額に算入した法人所得税の額及び減価償却超過額を加算した金額が各事業年度の欠損金の額となる。
2
適用対象留保金額

130万6241S$

上記金額は,措置法施行令25条の21第1項の規定に基づき,上記1のKEI社の未処分所得の金額130万8573S$から,同項1号に掲げる当期中に納付することになる法人所得税の額2332S$を差し引いた後の金額である(別表3順号⑧欄)。
なお,上記の当期中に納付することになる法人所得税の額は,KEI社の平成17年9月期の決算書に記載された「8

所得税」の金額と同額である(別

表3順号⑦欄,乙15)。
3
KEI社の課税対象留保金額

130万6238.38S$

上記金額は,措置法施行令25条の21第2項の規定に基づき,上記2のKEI社の適用対象留保金額130万6241S$に,KEI社の発行済株式総数50万株のうちに原告の保有するKEI社の株式数49万9999株の占める割合を乗じた金額である(別表3順号⑪欄)。なお,0.01S$未満は切り捨てている。
4
原告の平成17年分の雑所得の総収入金額に算入すべき金額
(1)

措置法通達66の6-13(課税対象留保金額の円換算)の取扱い内国法人が措置法66条の6第1項の規定により特定外国子会社等に係
る課税対象留保金額に相当する金額を益金の額に算入する場合における当該課税対象留保金額の円換算は,当該特定外国子会社等の当該事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日における電信売買相場の仲値(法人税基本通達(昭和44年5月1日付け直審(法)25(例規))13の2-1-2に定める電信売買相場の仲値をいう。以下「電信売買相場仲値」という。)による。
(2)

当てはめ
上記措置法通達66の6-13の取扱いに則して,上記3のKEI社の
課税対象留保金額130万6238.38S$をKEI社の当該事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日である平成17年11月末の電信売買相場仲値(乙35)である1S$当たり70.67円によって円換算すると,課税対象留保金額は,9231万1866円となり,同金額が原告の平成17年分の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額となる(別表3順号⑫欄)。
以上

(別紙4)
原告作成損益計算書に基づく適用対象留保金額等の計算

1
本件油そう船に係る減価償却累計額
原告が主張する計算による本件油そう船に係る減価償却累計額は,次の(1)ないし(6)の合計額909万7930S$である。
(1)

平成11年9月期の減価償却費の金額(KEI社損益計算書)
172万2924S$

(2)

平成12年9月期の減価償却費の金額(KEI社損益計算書)
172万2924S$

(3)

平成13年9月期の減価償却費の金額(原告主張額)
141万2098S$

(4)

平成14年9月期の減価償却費の金額(原告主張額)
143万9883S$

(5)

平成15年9月期の減価償却費の金額(原告主張額)
145万4941S$

(6)

平成16年9月期の減価償却費の金額(原告主張額)
134万5160S$

2
本件油そう船の譲渡益
本件油そう船の譲渡益は,譲渡価額940万1433S$(原告作成損益計算書(乙24)2枚目の「H17年9月30日P/L」の貸方勘定科目「固定資産売却収入」の金額)から,本件油そう船の未償却残高813万1310S$(原告作成損益計算書(乙24)3枚目の「定率法13年」と題する表の「平成11年9月期」の「期首簿価」1722万9240S$から上記1の減価償却累計額909万7930S$を控除した残額)を差し引いた127万0123S$となる。
3
適用対象留保金額等
前記2の金額を原告作成損益計算書(乙24)2枚目の「H17年9月30日P/L」に当てはめて損益計算を行うと,借方「固定資産売却減価」982万9854S$は813万1310S$(前記2の未償却残高)となり,当期損失は生じずに当期利益として123万7349S$が算出され,当該金額が適用対象留保金額となる。
そして,当該金額にKEI社の発行済株式総数50万株のうちに原告の保有するKEI社の株式数49万9999株の占める割合を乗じて計算した金額を電信売買相場仲値(1S$当たり70.67円)により円換算した金額8744万3278円は,本件決定処分において雑所得の金額の計算上総収入金額に算入した金額と同額である。そうすると,平成13年9月期から平成16年9月期までの減価償却費の額について,被告が主張する額によれば毎期の損失額として調整所得金額から控除され,原告が主張する額によれば本件油そう船に係る簿価として損金経理されることになるから,結果において異同はないこととなる。
以上

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