判例検索β > 平成29年(ネ)第10013号
特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成29(ネ)10013
事件名特許権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日平成29年7月11日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成27(ワ)29001
裁判要旨判決年月日 平成29年7月11日 担
当 知的財産高等裁判所 第4部

事 件 番 号 平成29年(ネ)10013号
○ 特許権に基づく製剤の製造販売等の差止請求について,対象製品が特許発明の技
術的範囲に属するものとは認められないことを理由に同請求を棄却した事例。
(関連条文)特許法100条1項,同条2項
(関連する権利番号等)特許第4430229号
判 決 要 旨
本件は,発明の名称を「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」
とする本件特許権を有する控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人の製造販売に係る各製剤
(被告製品)の生産等は,特許請求の範囲の請求項1に係る本件 発明の技術的範囲に属す
ると主張して,被告製品の生産等の差止め及び廃棄を求めた事案である。
原判決は,被告製品はいずれも本件発明の技術的範囲に属するものとは認められないとして,
控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。
本判決は,概要以下のとおり判示して, 明細書の記載及び本件 発明 の目的・効果との関
係に照らして本件 発明 の技術的範囲を画定した上で,被告製品は本件発明の技術的範囲に
属しないと判断し,控訴人の請求を棄却した原判決を相当であるとして,本件控訴を棄却
した。
本件明細書において,「緩衝剤」は,「本明細書中で用いる場合 ,オキサリプラチン溶
液を安定化し,それにより望ましくない不純物 …の生成を防止するかまたは遅延させ得る
あらゆる酸性または塩基性剤を意味する。」と 定義されるところ,添加シュウ酸は,不純
物の生成を防止する作用を果たすものといえるのに対し,解離シュウ酸は,水溶液中のオ
キサリプラチンの一部が分解され,不純物と共に生成されるものであって,オキサリプラ
チン水溶液において,オキサリプラチンと水とが反応して自然に生じる 平衡状態を構成す
る要素の一つにすぎず ,かかる作用を果たすものとみることはできない。 また,本件明細
書の実施例においても,緩衝剤は,外部から加えられるものとされている。
本件発明は,従来からある凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンにおける欠点を克服し,
すぐに使える形態の製薬上安定であるオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的
とするものであり,乙1発明を含むオキサリプラチンの従来既知の水性組成物と比較する
と,製造工程中に安定であり,生成される不純物が少ないという効果を有するもので あり,
本件発明の「緩衝剤」は,乙1発明において生成される上記不純物の量に比して少ない量
の不純物しか生成されないように作用するものでなければなら ないところ ,乙1発明にお
いて存在する解離シュウ酸のみでは,そのように作用することは考え難い。
したがって,本件 発明 における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,解離シュ ウ酸を含
むものではなく,添加シュウ酸に限られると解すべきであり, シュウ酸が添加されたもの
ではない被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
-1-
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平成29年7月11日判決言渡

同日原本領収

平成29年(ネ)第10013号

裁判所書記官

特許権侵害差止請求控訴事件

原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第29001号
口頭弁論終結日

平成29年6月6日
判控決訴人
デビオファーム・
インターナショナル・エス・アー

同訴訟代理人弁護士

人二野浩之村広行多訴聖木控野大被大田宏文
マイラン製薬株式会社

同訴訟代理人弁護士

村田真一同大門良仁
弁理士
主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。

3
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を
30日と定める。
事実及び理由

第1控訴の趣旨
1
原判決を取り消す。

2
被控訴人は,
原判決別紙被告製品目録1,
2及び3記載の製剤を生産,
譲渡,

輸入又は譲渡の申出をしてはならない。
3
被控訴人は,原判決別紙被告製品目録1,2及び3記載の製剤を廃棄せよ。
4
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

5
第2ないし4項につき仮執行宣言

第2事案の概要(略称は,特に断らない限り,原判決に従う。)
1
本件は,発明の名称を「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法
及び使用」とする発明に係る本件特許権(特許第4430229号)を有する控訴人が,
被控訴人による原判決別紙被告製品目録1ないし3記載の各製剤
(被告製品)
の生産等は,特許請求の範囲の請求項1記載の発明(本件発明)の技術的範囲に属すると主張して,被控訴人に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の生産等の差止め及び廃棄を求めた事案である。
2
原判決は,被告製品はいずれも本件発明の技術的範囲に属するものとは認め
られないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
3
そこで,控訴人が,原判決を不服として控訴を提起した。

4
前提事実は,原判決「事実及び理由」の第2の1記載のとおりであるから,
これを引用する。
ただし,
原判決4頁9行目の末尾に下記を加え,
10行目と11行目を削除する。
「知的財産高等裁判所は,平成29年3月8日,本件審決を取り消すとの判決をしたが(甲22)。上告提起及び上告受理申立てがされ,現在,本件審決は確定していない。」
5
争点は,原判決「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これ
を引用する。
第3争点に関する当事者の主張
1
原判決の引用
争点に関する当事者の主張は,下記2のとおり,当審における主張を追加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の3記載のとおりであるから,これを引用する。
2
当審における当事者の主張

〔控訴人の主張〕
本件発明の構成要件B,F及びGに係る「緩衝剤」は,外部から添加されたシュウ酸に限定されるものではなく,解離シュウ酸も含まれる。
(1)

特許請求の範囲の用語の解釈

特許請求の範囲の用語は,明細書中に明確に定義されている場合には,これによって解釈されなければならない。

本件明細書において,「緩衝剤」は,「緩衝剤という用語は,オキサリプラ
チン溶液を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸性または塩基性剤を意味する」(【0022】),「緩衝剤は,有効安定化量で本発明の組成物中に存在する。緩衝剤は,約5×10-5M~約1×10-2Mの範囲のモル濃度で,
好ましくは約5×10-5M~5×10-3Mの範囲の
モル濃度で,
さらに好ましくは約5×10-5M~約2×10-3Mの範囲のモル濃度で,最も好ましくは約1×10-4M~約2×10-3Mの範囲のモル濃度で,特に約1×10-4M~約5×10-4Mの範囲のモル濃度で,
特に約2×10-4M~約4×
10-4Mの範囲のモル濃度で存在するのが便利である」(【0023】)と具体的に定義されている。これらの定義によれば,「緩衝剤」は,本件発明の対象である「オキサリプラチン溶液組成物」において,一定のモル濃度で「存在」するものであり,不純物の生成を防止,遅延するあらゆる酸性又は塩基性剤を意味するものであるから,外部から付加したシュウ酸と解離したシュウ酸は,「緩衝剤」の該当性において,区別されることはない。

そもそも,本件発明は,オキサリプラチン溶液の安定化という課題を「緩衝剤」であるシュウ酸のモル濃度を一定範囲にすることにより達成するものであり,このような発明の課題,作用効果という観点からすると,添加シュウ酸であろうと解離シュウ酸であろうと,オキサリプラチン溶液に存在する全てのシュウ酸によって,オキサリプラチン溶液の安定化という作用効果がもたらされる。上記の定義規定はこれに対応した明確なものであるし,技術常識にもかなう。
(2)

請求項の文言
本件発明は,解離シュウ酸のみを包含する態様に加えて,添加シュウ酸を加
えた態様も含み,添加シュウ酸として「そのアルカリ金属塩」を外部から加える態様も技術的範囲に含んでおり,「シュウ酸」と「そのアルカリ金属塩」とを区別して記載することで,このことが明確になる。したがって,本件特許請求の範囲において,「シュウ酸」と「そのアルカリ金属塩」が区別されていることは,本件発明の「緩衝剤」に解離シュウ酸が含まれることと矛盾せず,「緩衝剤」が添加シュウ酸に限定されることの根拠にはならない。

明細書において用語が特定の意味に定義されている場合は,当該明細書にお
いて,その用語は,学術用語としての普通の意味にかかわらず,その定義に従って解釈されなければならないのであって,原判決が,「緩衝剤」や「剤」の語義を認定し,それを理由として「緩衝剤」を添加シュウ酸に限定したことは誤りである。ウ
本件特許の特許請求の範囲請求項10~14には,緩衝剤を「付加」,「混
合」することが規定されているのに対し,請求項1では「包含」と規定され,意識的に書き分けられている。したがって,本件発明の「緩衝剤」は,「付加」等されたものに限定されない。
(3)

乙1発明との関係

原判決は,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物」(【0031】)は,乙1記載のオキサリプラチン水溶液を含むことを前提に,本件発明は,乙1記載のオキサリプラチン水溶液と比較して,不純物を減少させる効果を有するべきであるとするが,誤りである。

本件明細書【0022】の定義には,従来既知の水性組成物と比較して,不
純物を減少させるとの効果を有するものとは記載されていない。

本件明細書において問題とされているのは,オキサリプラチンが時間を追っ
て分解していく製薬上安定とはいえない溶液組成物であること【0013】【0(

017】)であり,【0017】では,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供し,時間を追って分解する溶液組成物の欠点を克服することが本件発明の目的である旨が記載されている。
これに対し,乙1発明の実施品は既に製薬上安定であるから,時間を追って分解していく製薬上安定とはいえない溶液組成物に該当しない。仮に,本件発明が,乙1発明を前提として,更なる不純物の減少を問題としているのであれば,既に製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を前提に,更なる不純物の減少が望まれる旨記載されるはずであるが,そのように読み取れる記載は存在しない。乙1発明においては,凍結乾燥物質の欠点は既に解決済みであるから,乙1発明を前提として,凍結乾燥物質の欠点(【0012】~【0013】)を列挙した上で,これらの欠点を克服する(【0017】)等と記載されるはずはない。

本件明細書の【0012】(2段落)~【0016】と,【0030】~【0
032】とは対応した記載になっているところ,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定であることが判明しており」(【0031】)との記載は,【0013】(3段落)~【0016】(1行目)の記載と対応している。
【0013】(3段落)の前の【0012】(2段落)~【0013】(2段落)には,凍結乾燥物を利用する際の課題が記載されており,【0016】(1行目)の後には,「上記の不純物を全く生成しないか,あるいはこれまでに知られているより有意に少ない量でこのような不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を開発することが望ましい。」(【0016】),「前記の欠点を克服し,そして長期間の,即ち2年以上の保存期間中,製薬上安定である,すぐに使える(RTU)形態のオキサリプラチンの溶液組成物が必要とされている。したがって,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することによりこれらの欠点を克服することが,本発明の目的である。」(【0017】)と記載されている。
【0013】(3段落)~【0016】(1行目)は,【0012】(2段落)~【0013】(2段落)と同様,凍結乾燥物に関する記載であり,【0013】(3段落)で示された「水性溶液」とは,凍結乾燥物であるオキサリプラチンを水に溶かして再構築した水性溶液のことを意味しているから,
【0013】
(3段落)
~【0016】(1行)に対応する【0031】(2段落)で示された「従来既知の水性組成物」も,凍結乾燥物であるオキサリプラチンを水に溶かして再構築した水性組成物を意味している。【0012】(2段落)に対応する【0030】(2段落)及び【0031】(1段落)と,【0013】(1段落「(b)」)に対応する【0032】(1段落)との間に,【0031】(2段落)が記載されていることも,【0031】(2段落)における「従来既知の水性組成物」が,凍結乾燥物であるオキサリプラチンを水に溶かして再構築した水性組成物を意味していることを裏付けている。

本件明細書には,従来技術としての公報が多数列記されており(【0002】
~【0012】),そのうちの一つとして乙1が挙げられているにすぎない。これら多数の従来技術の公報から乙1だけを抜き出して,その他の本件明細書の記載(【0012】(2段落)~【0016】及び【0030】~【0032】)に反して,本件発明は,乙1に開示されたオキサリプラチン水溶液よりも不純物を減少させなければならないと解釈することは,妥当性を欠く。

緩衝剤を添加したものが,乙1発明と比較して「製造工程中に安定」である
と考えると,乙1に記載されたオキサリプラチン水溶液を製造する工程と,オキサリプラチンに緩衝剤を添加した本件発明に係る水溶液を製造する工程という,別々の製造工程を比較する概念が突如として出てくることになる。しかし,本件明細書中には,乙1に関するオキサリプラチン水溶液を製造する間(製造工程中)における安定性と,オキサリプラチンに緩衝剤を添加した水溶液を製造する間(製造工程中)における安定性という,別々の製造工程を比較した結果は示されていないのであるから,このように理解することは不自然である。
本件明細書中には,
凍結乾燥物質の再構築における不具合が記載されており【0

012】(3段落「(a)」),【0013】(2段落「(c)」)),【0013】(2段落「(c)」)の直後で「オキサリプラチンは,時間を追って,分解して,種々の量のジアクオDACHプラチン(式I),ジアクオDACHプラチン二量体(式II)およびプラチナ(IV)種(式III)…を不純物として生成し得る,ということが示されている。」と記載されているから,凍結乾燥物質を溶解させて再構築させる工程が【0031】の製造工程であると考えることが自然である。凍結乾燥物を再構築する際にはオキサリプラチンを水に溶かして水性組成物を製造するという工程が存在し,その工程が不安定であるという問題が当業者においては認識されていたのであり,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定であることが判明しており」(【0031】)という記載は,これを前提にされたものであって,このことからも,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物」は,凍結乾燥物であるオキサリプラチンを水に溶かして再構築した組成物を意味していることは明らかである。
(4)

解離シュウ酸に関する開示
本件特許優先日当時,オキサリプラチンは,水溶液中で分解して不純物とし
てシュウ酸を生じることが知られており(乙1),この解離シュウ酸も添加シュウ酸も同じ物質であるから,当業者は,両者が合わさって溶液が安定化することを理解する。本件明細書には,シュウ酸を添加しない場合の実施例として,実施例18(b)の記載が存在するから,当業者が,添加シュウ酸のみならず解離シュウ酸も含めた溶液組成物中のシュウ酸の存在が安定性に寄与しているとの技術的意義を理解する(【0022】,【0023】)。解離シュウ酸が溶液中に存在することで,オキサリプラチンがそれ以上分解しないのであって,解離シュウ酸は,まさにオキサリプラチン溶液を安定化し,不純物の生成を防止するか又は遅延させ得るものである。
本件明細書は,添加シュウ酸のみではなく,解離シュウ酸が存在することの技術的意義をも開示するものであり,本件発明は,乙1発明とは異なり,オキサリプラチンの濃度やpHを限定しなくとも,解離シュウ酸を含めたシュウ酸濃度によって製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物の提供を可能にするという重要な技術的意義を有する発明である。

【0023】において,組成物中に存在する緩衝剤のモル濃度の下限値とし
て示されている5×10-5Mという数値は,本件明細書の実施例1及び8の結果を表す各表に列記された,添加されたシュウ酸又はシュウ酸ナトリウムのモル濃度の数値の下限値である1×10-5Mという数値よりも大きい値となっているが,これは,添加された緩衝剤のみならず,解離シュウ酸のモル濃度が加えられていることを示すものである。

実施例1,8及び18(b)は,「実施例」と明記されている。技術常識に
基づき,解離シュウ酸を含めた溶液組成物中のシュウ酸の総量は下記の表のように推計され,その下限は5×10-5Mを超える値になるから,当業者であれば,本件発明の構成要件Gの下限値は,添加したシュウ酸のモル濃度を規定するものではなく,これに解離シュウ酸のモル濃度を加えた値を採用していると理解するのであって,本件発明の緩衝剤であるシュウ酸は,組成物に包含される全てのシュウ酸であると認識する。

実施例No.

ジアクオDジアクオD(A)及び付加された(C)+
ACHプラACHプラ(B)量かシュウ酸量(D)の合
チン(A)

チン二量体ら予想され(D)
計値

(B)

るシュウ酸

(分解量)
(C)

2.9×10-5

1.2×10-5

5.2×10-5

1×10-5

6.2×10-5

3.0×10-5

1.2×10-5

5.3×10-5

1×10-5

6.3×10-5

3.2×10-5

1.3×10-5

5.8×10-5

1×10-5

6.8×10-5

3.9×10-5

1.5×10-5

6.8×10-5

1×10-5

7.8×10-5

18(b)3.9×10-5

1.2×10-5

6.4×10-5

6.4×10-5

1.2×10-5

5.8×10-5

5.8×10-5

1
(初期)
1
(1ヶ月)
8
(初期)
8
(1ヶ月)

(初期)
18(b)3.3×10-5
(1ヶ月)

このように,包含される全てのシュウ酸の量を算出することによって初めて,実施例のシュウ酸量は,本件発明のシュウ酸モル濃度の下限(5×10-5M)を超えることとなり,【0023】の記載や,実施例1,8,18(b)が「実施例」と記載されていることと整合的に理解される。
しかも,上記の表のように推計を行えば,実施例1,8及び18(b)では,包含されるシュウ酸量が近似することが分かり,効果の面でも差がないことが分かるから,当業者は,このことから,概ね同じ値になっている推計結果が妥当なものであると認識する。
以上のとおり,本件明細書を読んだ当業者は,緩衝剤であるシュウ酸は,本件明細書における定義のとおり,組成物に包含された全てのシュウ酸の量であると認識する。

「緩衝剤」が添加したものに限定されるとすれば,実施例1及び8でも添加
シュウ酸等が存在する以上,「緩衝剤」が含まれることになる。原判決は,実施例1及び8と実施例18(b)との間には有意な差が見られないとしているところ,本件発明の効果を奏しない実施例1及び8でも「緩衝剤」を含むことになり,「緩衝剤」の意味を解釈する際に,乙1発明と比較しなければならないという原判決の前提は,論理的に矛盾している。
〔被控訴人の主張〕
本件発明の構成要件B,F及びGに係る「緩衝剤」に,解離シュウ酸は含まれない。
(1)

特許請求の範囲の用語の解釈

本件明細書においては,緩衝剤が添加シュウ酸と解離シュウ酸の両方を含むものとして定義されていない。
本件明細書において,「緩衝剤」は,「オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸性または塩基性剤を意味する」(【0022】)と定義される。
本件優先日当時の従来技術として,オキサリプラチンと水からなる溶液(乙1発明等)において,オキサリプラチンがジアクオDACHプラチンとシュウ酸イオン(解離シュウ酸)に分解され,可逆反応が進み,かつ化学平衡の状態(順反応と逆反応の速度がつり合い,反応物と生成物の組成比が巨視的に変化しない状態。)に達することは知られていた(乙1,2等)。
ここで,添加シュウ酸は,オキサリプラチンの再生成を促進するものであり,これにより,当該溶液中に存在する不純物(ジアクオDACHプラチン)の量は上記再生成反応前よりも少なくなる。他方,解離シュウ酸(シュウ酸イオン)は,オキサリプラチンの分解によって不純物とともに生成され,平衡状態にある溶液中に当然含まれるものにすぎず,
その存在によって平衡状態を変化させることはないから,
「不純物…の生成を防止するか遅延させ得る」ものではなく,「緩衝剤」に当たらない。
「緩衝剤は,有効安定化量で本発明の組成物中に存在する」(【0023】)との記載は,添加されたシュウ酸(又はそのアルカリ金属塩)が有効安定化量で本件発明の組成物中に存在するという構成を述べていると解釈すべきであるから,「存在する」という文言を根拠に,「緩衝剤」は添加されたシュウ酸に限らないと解釈することはできない。
(2)

請求項の文言
本件特許の請求項では,「緩衝剤」は「シュウ酸又はそのアルカリ金属塩」
とされているところ,仮に,「シュウ酸」に解離シュウ酸(シュウ酸イオン)が含まれるとすると,シュウ酸のアルカリ金属塩を添加したときには,少なくともその一部は溶液中でシュウ酸イオンとして存在することになるから,「シュウ酸」を添加したとも,「そのアルカリ金属塩」を添加したとも解し得ることになり,請求項において「シュウ酸」とは別に「そのアルカリ金属塩」も「緩衝剤」であるとした意味が失われてしまい,不合理である。

上記【0022】における「緩衝剤」の定義をみても,「剤」について,学
術用語としての普通の意味とは異なる特定の意味を有するものとして定義されているわけではないから,「剤」の意味について,学術用語としての普通の意味を参酌することは当然である。

請求項10~14には,緩衝剤を「付加」,「混合」すると記載されている
一方,請求項1では緩衝剤を「包含」すると書き分けられているのは,前者は方法の発明であって,オキサリプラチン溶液を安定化させる方法を特定・説明するために,「付加」「混合」という表現を使ったのに対し,物の発明である本件発明においては,調製の方法を請求項に記載する必要はないため,これらの用語が用いられなかったもので,「包含」という文言は,水溶液中に添加シュウ酸が含まれていることを意味するにすぎない。
(3)

乙1発明との関係
本件明細書【0010】には,乙1発明に対応する豪州国出願に係る発明が
従来技術として記載され,【0031】に,「本発明の組成物は,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定である」と記載されており,本件発明の目的は,ジアクオDACHプラチン等の不純物を全く生成させないか,乙1発明を含む従来既知の水性組成物より有意に少ない量の生成に抑えるために,より製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することにもある。したがって,【0022】に定義される「緩衝剤」とは,乙1発明を含む従来既知の水性組成物を安定化し,不純物の生成を防止又は遅延させる効果を有するものであると解釈できる。

本件明細書には,「これまで知られているより有意に少ない量でこのような
不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を開発することが望ましい。」(【0016】),「本発明の組成物は,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定である」(【0031】)ことが記載され,本件発明は,乙1発明の欠点と,凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンの欠点(【0012】【0013】)の両方を解決するものであるから,乙1発明よりも不純物を減少させることを目的とする発明であるからといって,凍結乾燥物質に関する記載が不要ということにはならない。

凍結乾燥物質は,
患者に投与する直前に再構築されるとされ【0012】,



再構築後に保存することは想定されていないから,溶液においてオキサリプラチンの分解により不純物が発生するという課題は,「凍結乾燥物であるオキサリプラチンを水に溶かして再構築した水性溶液」の問題点として挙げられているとは考えられない。
また,以上の理解を前提とすれば,「従来既知の水性組成物」(【0031】)との記載は,凍結乾燥物質の再構築溶液と解することはできず,乙1発明を意味するものである。

本件明細書において,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物として開示
されているのは,乙1発明のみであり,本件発明において,乙1発明よりも不純物を減少させなければならないことは当然である。

控訴人は,本件明細書では,乙1に関するオキサリプラチン水溶液の製造工
程における安定性と,オキサリプラチンに緩衝剤を添加した水溶液の製造工程における安定性の比較はされていないと主張するが,本件明細書の実施例では,初期及び1か月後において,いずれも,「緩衝剤」を「有効安定化量」含む実施例(2~7,9~17)が,「緩衝剤」を含まない実施例18(b)(乙1発明)より不純物が少ないことが示されている(【0064】)。
(4)

解離シュウ酸に関する開示
控訴人は,請求項の「緩衝剤」のモル濃度が,構成要件Gの下限値(5×1
0-5M)を下回るシュウ酸量(1.0×10-5M)のみを添加した例も「実施例1」「実施例8」と記載されるところ,これらの例では,添加シュウ酸に解離シュウ酸を加えなければ,構成要件Gの下限値を超えることができないから,解離シュウ酸も「緩衝剤」と解されると主張する。
しかし,実施例か否かは,「実施例」と記載があることのみならず明細書の記載全体から判断されるところ,「緩衝剤」を構成要件Gの下限値(5.0×10-5M)以上加えた実施例(2~7及び9~17)に比べて,実施例1,8では多くの不純物が発生するのであるから,当業者としては,シュウ酸を一定量以上添加することによって,不純物の発生量が抑制された従来既知のオキサリプラチン溶液(乙1発明を含む。)より有意に少ない量の不純物のみを生成するオキサリプラチン水溶液を提供するとの目的が達成されたと理解することが明らかであり,実施例1,8は比較例である。
実施例1及び8が「実施例」と記載されているのは,出願当時の請求項1は「緩衝剤」のモル濃度を限定しておらず,当該発明との関係では,これらも「実施例」であったからである(乙60の1)。出願当時の請求項1に係る発明は拒絶され,補正により特許請求の範囲から除外されたから
(乙60の4)実施例1及び8は,

現在の請求項1(本件発明)との関係では,比較例と解すべきものである。イ
控訴人は,シュウ酸が添加されていない「実施例18」との記載があること
をもって,
「緩衝剤」
は添加シュウ酸に限られず,
解離シュウ酸も含むと主張する。
しかしながら,「実施例18」は,「比較のために」従来技術である乙1発明と同様に調製された「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」であって,「比較例18」とも明記されているから(【0050】,【0073】),本件明細書の記載を総合すれば比較例とされていることは明らかである。
また,
実施例18
(b)
では,
ジアクオDACHプラチン及び同二量体の総量0.
43%w/wも存在する一方,1.0×10-4Mとなるようシュウ酸を添加した実施例10ではこれらが0.16%w/w未満となり,1.0×10-3Mとなるようシュウ酸を添加した実施例13ではこれらが0.14%w/w未満となっていることからしても(【0064】以降),シュウ酸を一定量以上添加することによって本件発明の目的が達成されることが示されているから,「実施例18」が比較例であることは明らかである。

控訴人は,本件明細書の実施例1,8,18(b)について,解離シュウ酸
のモル濃度は生成したジアクオDACHプラチン及び同二量体のモル濃度から推計でき,解離シュウ酸と添加シュウ酸のモル濃度を足したシュウ酸の全体量は,5×10-5Mを超えるから,
本件発明の構成要件Gを充足する実施例であると主張する。
しかしながら,本件明細書の実施例及び比較例には,相当量の不特定不純物が含まれていることが示され(【0064】以降),解離シュウ酸,ジアクオDACHプラチン及び同二量体が更なる分解や反応をして不特定不純物が発生した可能性があるから,ジアクオDACHプラチン及び同二量体のモル濃度から解離シュウ酸の量が推算できるとは判断できない。

控訴人は,原判決によれば,実施例1及び8にも「緩衝剤」(添加シュウ酸)が含まれることとなるが,これらの不純物量と実施例18の不純物量との間に有意な差がみられないから,本件発明の効果を奏さない実施例1及び8でも本件発明の「緩衝剤」を含むことになり,「緩衝剤」という意味を解釈する際に,乙1発明と比較しなければならないというのは,論理的に矛盾していると主張する。しかしながら,原判決は,実施例1及び8での添加シュウ酸が「緩衝剤」であることを否定しているわけではない。実施例1及び8に添加された「緩衝剤」量は,構成要件Gの下限値(5×10-5M)未満の1.0×10-5Mであって,「緩衝剤」の量が請求項に規定する有効安定化量未満であったために,安定化効果を奏さなかったということにすぎない。
よって,
実施例1及び8の不純物量と実施例18の不純物量が同等であることは,原判決の認定と矛盾するものではない。
第4当裁判所の判断
当裁判所も,争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について,本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるところ,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸が添加されていない被告製品は,構成要件B,F及びGを充足せず,本件特許発明の技術的範囲に属するものではないから,控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。
1
(1)

本件発明について
本件明細書の記載

本件明細書の【発明の詳細な説明】には,次の各記載がある。

本発明は,製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物,癌腫の治療における
その使用方法,このような組成物の製造方法,およびオキサリプラチンの溶液の安定化方法に関する。(【0001】)

Ibrahim等(豪州国特許出願第29896/95号,1996年3月
7日公開)
(WO96/04904,
1996年2月22日公開の特許族成員)
(判
決注:乙1発明に対応する豪州国出願である[乙1の1・2]。)は,1~5mg/mLの範囲の濃度のオキサリプラチン水溶液から成る非経口投与のためのオキサリプラチンの製薬上安定な製剤であって,4.5~6の範囲のpHを有する製剤を開示する。同様の開示は,米国特許第5,716,988号(1998年2月10日発行)に見出される。(【0010】後段)

オキサリプラチンは,注入用の水または5%グルコース溶液を用いて患者へ
の投与の直前に再構築され,その後5%グルコース溶液で稀釈される凍結乾燥粉末として,前臨床および臨床試験の両方に一般に利用可能である。しかしながら,このような凍結乾燥物質は,いくつかの欠点を有する。中でも第一に,凍結乾燥工程は相対的に複雑になり,実施するのに経費が掛かる。さらに,凍結乾燥物質の使用は,生成物を使用時に再構築する必要があり,このことが,再構築のための適切な溶液を選択する際にそこにエラーが生じる機会を提供する。例えば,凍結乾燥オキサリプラチン生成物の再構築に際しての凍結乾燥物質の再構築用の,または液体製剤の稀釈用の非常に一般的な溶液である0.9%NaCl溶液の誤使用は,迅速反応が起こる点で活性成分に有害であり,オキサリプラチンの損失だけでなく,生成種の沈澱を生じ得る。凍結乾燥物質のその他の欠点を以下に示す:(a)凍結乾燥物質の再構築は,再構築を必要としない滅菌物質より微生物汚染の危険性が増大する。
(b)濾過または加熱(最終)滅菌により滅菌された溶液物質に比して,凍結乾燥物質には,より大きい滅菌性失敗の危険性が伴う。そして,
(c)凍結乾燥物質は,再構築時に不完全に溶解し,注射用物質として望ましくない粒子を生じる可能性がある。
水性溶液中では,オキサリプラチンは,時間を追って,分解して,種々の量のジアクオDACHプラチン(式I),ジアクオDACHプラチン二量体(式Ⅱ)およびプラチナ(IV)種(式Ⅲ):(中略)を不純物として生成し得る,ということが示されている。任意の製剤組成物中に存在する不純物のレベルは,多くの場合に,組成物の毒物学的プロフィールに影響し得るので,上記の不純物を全く生成しないか,あるいはこれまでに知られているより有意に少ない量でこのような不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を開発することが望ましい。【0(
012】~【0016】)

したがって,前記の欠点を克服し,そして長期間の,即ち2年以上の保存期
間中,製薬上安定である,すぐに使える(RTU)形態のオキサリプラチンの溶液組成物が必要とされている。したがって,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することによりこれらの欠点を克服することが,本発明の目的である。(【0017】)

より具体的には,本発明は,オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤およ
び製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物に関する。(以下略)(【0018】)
緩衝剤という用語は,本明細書中で用いる場合,オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸性または塩基性剤を意味する。したがって,この用語は,シュウ酸またはシュウ酸のアルカリ金属塩
(例えばリチウム,
ナトリウム,
カリウム等)
等のような作用物質,
あるいはそれらの混合物が挙げられる。
緩衝剤は,
好ましくは,
シュウ酸またはシュ
ウ酸ナトリウムであり,最も好ましくはシュウ酸である。(【0022】後段)緩衝剤は,有効安定化量で本発明の組成物中に存在する。緩衝剤は,約5×105
M~約1×10-2Mの範囲のモル濃度で,好ましくは約5×10-5M~5×10-3
Mの範囲のモル濃度で,さらに好ましくは約5×10-5M~約2×10-3Mの範囲のモル濃度で,最も好ましくは約1×10-4M~約2×10-3Mの範囲のモル濃度で,特に約1×10-4M~約5×10-4Mの範囲のモル濃度で,特に約2×10-4M~約4×10-4Mの範囲のモル濃度で存在するのが便利である。(【0023】)カ
前記の本発明のオキサリプラチン溶液組成物は,本明細書中でさらに詳細に後述するように,現在既知のオキサリプラチン組成物より優れたある利点を有することが判明している,ということも留意すべきである。
凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンとは異なって,本発明のすぐに使える組成物は,低コストで且つさほど複雑ではない製造方法により製造される。(【0030】)
さらに,本発明の組成物は,付加的調製または取扱い,例えば投与前の再構築を必要としない。したがって,凍結乾燥物質を用いる場合に存在するような,再構築のための適切な溶媒の選択に際してエラーが生じる機会がない。
本発明の組成物は,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定であることが判明しており,このことは,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物の場合よりも本発明の組成物中に生成される不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体が少ないことを意味する。(【0031】)
(2)

本件発明の意義等について

以上を総合すると,本件発明は,従来からある凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチン生成物及びオキサリプラチン水溶液の欠点を克服し,すぐに使える形態の製薬上安定であるオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的とする発明であり(【0010】,【0012】~【0017】),オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤であるシュウ酸又はそのアルカリ金属塩及び製薬上許容可能な担体である水を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物に関するものである【0018】。(

そして,この緩衝剤は,構成要件Gの範囲の量(モル濃度)で上記組成物中に存在することでジアクオDACHプラチンやジアクオDACHプラチン二量体といった不純物の生成を防止し,
又は遅延させることができ【0022】【0023】,



これによって,本件発明は,従来既知の前記オキサリプラチンと比較して優れた効果,すなわち,①凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチン生成物と比較すると,低コストで,かつさほど複雑でない製造方法により製造することができ,また,投与前の再構築を必要としないので,再構築のための適切な溶媒の選択に際してエラーが生じる機会がなく,②乙1発明を含むオキサリプラチンの従来既知の水性組成物と比較すると,製造工程中に安定であり,生成されるジアクオDACHプラチンやジアクオDACHプラチン二量体といった不純物が少ないという効果を有するものである(【0030】,【0031】)。
2
本件発明の「緩衝剤」としての「シュウ酸」の解釈

(1)

特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載


本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,「オキサリプラチン,有効安定化
量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物であって,製薬上許容可能な担体が水であり,緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,/緩衝剤の量が,以下の:/(a)5×10-5M~1×10-2

M,/(b)5×10-5M~5×10-3M,/(c)5×10-5M~2×10-
3
M,/(d)1×10-4M~2×10-3M,または/(e)1×10-4M~5×
10-4M/の範囲のモル濃度である,組成物。」(「/」は,原文の改行箇所を示す。)であり,「緩衝剤」である「シュウ酸又はアルカリ金属塩」(構成要件B,F)は,「オキサリプラチン」(構成要件A)及び「担体」である「水」(構成要件C,E)とともに「オキサリプラチン溶液組成物」に包含され,有効安定化量(構成要件Gの範囲のモル濃度)のものである。

そして,本件明細書において,「緩衝剤」は,「本明細書中で用いる場合,
オキサリプラチン溶液を安定化し,それにより望ましくない不純物,例えばジアクオDACHプラチンおよびジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止するかまたは遅延させ得るあらゆる酸性または塩基性剤を意味する。」(【0022】)と定義され,「緩衝剤は,有効安定化量で本発明の組成物中に存在する。緩衝剤は,約5×10-5M~約1×10-2Mの範囲のモル濃度で,好ましくは約5×10-5M~5×10-3Mの範囲のモル濃度で,さらに好ましくは約5×10-5M~約2×10-3Mの範囲のモル濃度で,最も好ましくは約1×10-4M~約2×10-3Mの範囲のモル濃度で,特に約1×10-4M~約5×10-4Mの範囲のモル濃度で,特に約2×10-4M~約4×10-4Mの範囲のモル濃度で存在するのが便利である。」(【0023】)と記載されている。
控訴人は,上記定義によれば,「緩衝剤」は,「オキサリプラチン溶液組成物」において,一定のモル濃度で「存在」するものであり,不純物の生成を防止,遅延するあらゆる酸性又は塩基性剤を意味するものであるから,添加シュウ酸に限定されず,解離シュウ酸も含まれると主張し,被控訴人は,解離シュウ酸は,不純物の生成を防止,遅延するものではなく,「緩衝剤」に当たらないと主張するところ,本件特許の優先日以前において,オキサリプラチン水溶液においては,オキサリプラチンと水が反応し,オキサリプラチンの一部が分解されて,ジアクオDACHプラチンとシュウ酸(解離シュウ酸)が生成され,その際,これとは逆に,ジアクオDACHプラチンとシュウ酸が反応してオキサリプラチンが生成される反応も同時に進行することになって,両反応(正反応と逆反応)の速度が等しい状態(化学平衡の状態)が生じ(下記化学反応式参照),オキサリプラチン,ジアクオDACHプラチン及びシュウ酸の量が一定となること,また,上記反応に伴い,オキサリプラチンの分解によって生じたジアクオDACHプラチンからジアクオDACHプラチン二量体が生成されることになるが,その際にもこれとは逆の反応が同時に進行し,
同様に化学平衡の状態が生じることになることが,
知られていた
(乙2,
13,
37,38)。

化学平衡状態に達したオキサリプラチン水溶液にシュウ酸を添加すると,ジアクオDACHプラチンとシュウ酸が反応して,
オキサリプラチンを再生成する反応
(上
記式の左向きの反応)が進み,新たな化学平衡状態に達する。当該溶液中に存在する不純物であるジアクオDACHプラチンの量は,上記再生成反応前よりも少なくなるから,シュウ酸を添加したことにより,不純物であるジアクオDACHプラチンの生成が防止され,かつ,ジアクオDACHプラチンから生成されるジアクオDACHプラチン二量体の生成が防止され,オキサリプラチン水溶液が安定化されたといえる。したがって,添加シュウ酸は,不純物であるジアクオDACHプラチンの生成を防止し,かつ,ジアクオDACHから生成されるジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止する作用を果たすものといえる。
他方,解離シュウ酸は,水溶液中のオキサリプラチンの一部が分解され,ジアクオDACHプラチンと共に生成されるものであって,オキサリプラチン水溶液において,オキサリプラチンと水とが反応して自然に生じる上記平衡状態を構成する要素の一つにすぎないものであるから,このような解離シュウ酸が存在することをもって,当該平衡状態に至る反応の中でジアクオDACHプラチンの生成を防止し,かつ,ジアクオDACHプラチンから生成されるジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止する作用を果たすものとみることはできない。

また,本件明細書の実施例に関する記載をみると,実施例1~17は,いず
れも水に緩衝剤(実施例1~7においてはシュウ酸ナトリウム,実施例8~17においてはシュウ酸)及びオキサリプラチンを混合することによって製造されており(【0034】~【0049】),緩衝剤は,外部から加えられるものとされている。
これらの実施例に係る成分表
(表1A~表1D)
には,
製造時に加えられたシュ
ウ酸又はシュウ酸ナトリウムの重量とこれに基づくモル濃度が記載され,これらの実施例に係る安定性試験の結果を示す表(表4~表7)においても,上記成分表と同一のモル濃度が記載されており,解離シュウ酸のモル濃度については,何ら記載されていない(【0063】~【0071】)。これらの実施例に関する記載によれば,本件明細書においては,「緩衝剤」の量に関し,専ら添加したシュウ酸の量が問題とされているといえる。
なお,本件明細書には,実施例18(b)として,シュウ酸を添加していないオキサリプラチン溶液組成物が記載されている。しかし,本件明細書には,「実施例18比較のために,例えば豪州国特許出願第29896/95号(1996年3月7日公開)に記載されているような水性オキサリプラチン組成物を,以下のように調製した:」(【0050】)と記載され,また,実施例18の安定性試験の結果を示すに当たっては,「比較例18の安定性」との表題が付された上で,実施例18(b)については,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物を…」(【0073】)と記載されており,「豪州国特許出願第29896/95号」は,本件明細書で従来技術として挙げられているものである(【0010】)。そうすると,実施例18(b)については,「実施例」という文言は用いられているものの,その実質は,本件発明と比較するために,「非緩衝化オキサリプラチン溶液組成物」,すなわち,緩衝剤が用いられていない従来既知の水性オキサリプラチン組成物を調整したものであると認めるのが相当であり,本件発明の実施例ではなく,比較例として記載されているものと認められる。

さらに,
前記1(2)で述べたとおり,
本件明細書の記載によれば,
本件発明は,

従来からある凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンにおける欠点を克服し,すぐに使える形態の製薬上安定であるオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的とするものであり,乙1発明を含むオキサリプラチンの従来既知の水性組成物と比較すると,製造工程中に安定であり,生成されるジアクオDACHプラチンやジアクオDACHプラチン二量体といった不純物が少ないという効果を有するものである。
このような本件発明の目的・効果に鑑みると,本件発明の「緩衝剤」は,乙1発明において生成される上記不純物の量に比して少ない量の不純物しか生成されないように作用するものでなければならない。しかしながら,オキサリプラチン水溶液中のオキサリプラチンの分解により平衡状態に達するまで自然に生成される解離シュウ酸は,乙1発明において当然に存在するものであり,このような解離シュウ酸のみでは,乙1発明に比して少ない量の不純物しか生成し得ないように作用することは,通常考え難いことといえる。
仮に,本件発明の「緩衝剤」に解離シュウ酸を含むと解すると,乙1発明と同様の組成物が本件発明に含まれることになり,上記の本件発明の目的・効果と整合的に解釈することができないことになる。

以上のとおり,本件明細書における「緩衝剤」の定義及び実施例についての
記載並びに本件発明の目的・効果との関係に照らし,本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,解離シュウ酸を含むものではなく,添加シュウ酸に限られると解すべきである。

このような解釈は,以下のとおり,特許請求の範囲の文言にも沿うものであ
る。
(ア)

前記(1)アによれば,「オキサリプラチン」,「緩衝剤」である「シュウ酸
又はアルカリ金属塩」,「担体」である「水」の各要素は,当該組成物を組成するそれぞれ別個の要素として把握すべきものと理解するのが自然である。前記(1)イの
とおり,オキサリプラチン水溶液においては,オキサリプラチンと水が反応し,オキサリプラチンの一部が分解されて,ジアクオDACHプラチンとシュウ酸(解離シュウ酸)が生成されることは,本件特許の優先日以前の技術常識であるところ,解離シュウ酸は,オキサリプラチンの分解によって自然に生成されるものであり,「オキサリプラチン」と「水」が混合されなければそもそも存在しないものである(争いがない。)。このような「解離シュウ酸」をもって,「オキサリプラチン溶液組成物」を組成する「オキサリプラチン」及び「水」とは別個の要素として把握することは不合理であり,本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,解離シュウ酸を含むものではなく,添加シュウ酸に限られると解するのが自然である。
(イ)

また,「緩衝剤」とは,「緩衝液をつくるために用いられる試薬の総称」
とされ(乙12「化学大辞典」),医薬品に関する文献には,「緩衝剤…そのほかの適当な添加剤を加える」(乙39),「主薬の安定性を保つために緩衝剤が添加される」(乙40),「医薬品の安定性を保つため緩衝剤…が添加される」(乙41),「本剤(判決注:緩衝剤を指す。)を添加する」(乙42)などの記載があり,「緩衝剤」は外部から添加されるものであることが前提とされているといえ,当業者も同旨の理解をしている(乙13,37,38)。このことに照らしても,「緩衝剤」である「シュウ酸」は,添加シュウ酸を指すものと解するのが自然である。
(2)

控訴人の主張について
控訴人は,本件発明に係る特許請求の範囲には,緩衝剤を「包含」する,す
なわち,
「つつみこみ,
中に含んでいること」
の意味の用語で規定されており,
「緩
衝剤」は添加されたものに限定されていないこと,また,請求項10~14には,緩衝剤を「付加」,「混合」すると規定され,請求項1の「包含」とは意識的に書き分けられていることを根拠に,本件発明の「緩衝剤」は,組成物中に存在すれば足り,「付加」等されたものに限定されない旨主張する。
しかし,「包含」の意味が控訴人の主張のとおりであるとしても,「緩衝剤…を包含する…組成物」とは,「緩衝剤をつつみ込み,中に含む組成物」を意味するにすぎず,これによって,当該組成物中の「緩衝剤」の由来について,添加されるものに限らないと当然に解釈すべきことにはならない。
また,請求項10は,「オキサリプラチンの溶液の安定化方法」,請求項11~14は,請求項1~9のいずれかの組成物の製造方法であって,「付加」との記載は,緩衝剤を水性溶液に付加すること,「混合」との記載は,緩衝剤を,担体及びオキサリプラチン,又は,担体のみと混合すること,という構成要件に含まれているのに対し,請求項1の「包含」という文言は,「有効安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物」という記載の一部で,組成物を構成する物を記載したものであるから,「包含」が,必ずしも外部からの添加を意味しないものとして,意識的に「付加」及び「混合」と書き分けられたと解することはできない。

控訴人は,本件発明は,オキサリプラチン溶液の安定化という課題を「緩衝
剤」であるシュウ酸のモル濃度を一定範囲にすることにより達成するものであり,添加シュウ酸であろうと解離シュウ酸であろうと,オキサリプラチン溶液に存在する全てのシュウ酸によって,オキサリプラチン溶液の安定化という作用効果がもたらされると主張する。
しかし,オキサリプラチン水溶液において,オキサリプラチンの一部は,水と反応して分解し,ジアクオDACHプラチンとシュウ酸イオン(解離シュウ酸)となるが,オキサリプラチンの分解に係る平衡状態が生じるよりも前の段階では,水溶液中のオキサリプラチンの量は減少し,ジアクオDACHプラチン及びこれの一部から生成されたジアクオDACHプラチン二量体並びにシュウ酸の量は増加していく(乙2,38)のであって,オキサリプラチンの分解により生成された解離シュウ酸の存在が,不純物であるジアクオDACHプラチン等の生成を防止し又は遅延させているとは評価できない。
また,オキサリプラチン水溶液が,オキサリプラチンの分解に係る平衡状態に至った段階では,オキサリプラチンと水の反応によるオキサリプラチンの分解の速度と,ジアクオDACHプラチン及びシュウ酸の反応によるオキサリプラチンの生成の速度が,等しくなる。なお,オキサリプラチン溶液中のオキサリプラチンの分解によって生じたジアクオDACHプラチンの一部から,ジアクオDACHプラチン二量体が生成される。
その結果,
水溶液中のオキサリプラチン及びシュウ酸の量は,
いずれも一定の値となり,不変となる(乙2,38)。この段階において,オキサリプラチンの量が減少しないのは,平衡状態に達したからであり,オキサリプラチンの分解により生成された解離シュウ酸の存在が,不純物であるジアクオDACHプラチンや,これから生成されたジアクオDACHプラチン二量体の生成を防止し又は遅延させているとは評価できない。

控訴人は,本件発明は,解離シュウ酸を含めたシュウ酸のモル濃度によって
製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物の提供を可能とするものであり,実施例の記載からも,当業者は,添加シュウ酸のみならず解離シュウ酸も含めた溶液組成物中のシュウ酸の存在が安定に寄与しており,
本件発明においては,
添加されたシュ
ウ酸又はシュウ酸ナトリウムのモル濃度に,解離シュウ酸のモル濃度を加えた値を採用していると理解する旨主張する。
しかし,本件明細書の実施例18(b)が本件発明の実施例といえないことは,前記(1)ウのとおりである。
実施例1~17のうち,実施例1及び8を除く実施例の添加シュウ酸又は添加されたシュウ酸ナトリウムのモル濃度は,いずれも構成要件Gに係るモル濃度の数値の範囲内であるのに対し,
実施例1及び8において添加された緩衝剤のモル濃度は,
いずれも「0.00001M」(1.0×10-5M)であり(表1A,表1B,表4,表5),構成要件Gに係るモル濃度の下限値(5×10-5M)を下回っている。本件発明に係る特許出願の当時における特許請求の請求項1は,「オキサリプラチン,有効安定化量の緩衝剤および製薬上許容可能な担体を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物」という数値限定のないものであったが(乙60の1),その後の補正により「5×10-5M」以上との数値限定がされた(乙60の4)ものと認められるところ,実施例1及び8は,補正前の発明の実施例であったものの,補正により,本件発明の技術的範囲から除外されたものと解される。よって,実施例1及び8は,いずれも本件発明の実施例とはいえない。
そして,本件明細書に解離シュウ酸のモル濃度を推計することやその推計方法についての記載もないのであるから,本件発明が,添加されたシュウ酸又はシュウ酸ナトリウムのモル濃度に,解離シュウ酸のモル濃度を加えた値を採用しているとは解されない。
控訴人は,「緩衝剤」が添加したものに限定されるとすれば,実施例1及び8でも添加シュウ酸等が存在する以上,「緩衝剤」が含まれていることになる旨主張するが,実施例1及び8は,「緩衝剤」が含まれないから比較例になるのではなく,添加された「緩衝剤」量が,構成要件Gの下限値未満であって,本件発明の技術的範囲から除外されたと認められるからであり,控訴人の主張は採用できない。エ
控訴人は,本件発明は,凍結乾燥粉末形態で利用可能であったオキサリプラ
チンにつき,凍結乾燥物質の欠点を克服し,すぐに使える形態の製薬上安定なオキサリプラチン溶液組成物を提供することを目的としており,乙1発明と比較して安定なオキサリプラチン溶液を提供することを目的とするものではなく,「オキサリプラチンの従来既知の水性組成物」(【0031】)は,乙1記載のオキサリプラチン水溶液を含むものではない旨主張する。
しかしながら,本件明細書においては,凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンのみならず,従来技術として乙1発明に対応する豪州国特許出願第29896/95号(WO96/04904)に係るオキサリプラチン水溶液が挙げられ(【0010】),凍結乾燥物質の再構築における不具合だけではなく,オキサリプラチンの水溶液中において不純物が生成されるという問題についての説明がされ(【0012】~【0016】),「上記の不純物を全く生成しないか,あるいはこれまでに知られているより有意に少ない量でこのような不純物を生成するオキサリプラチンのより安定な溶液組成物を開発することが望ましい。」(【0016】)と記載されている。また,【0030】前段には,「現在既知のオキサリプラチン組成物」より優れた利点を有するとの記載があるところ,【0030】後段では,凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンに対する本件発明の優れた利点が,【0031】前段では,凍結乾燥物質を用いる場合に存在する再構築のための適切な溶媒の選択に際してエラーが生じる機会がないことが,それぞれ記載されているが,【0031】後段で,本件発明の組成物は,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物よりも製造工程中に安定で,ジアクオDACHプラチン等の不純物が少ないことが記載されており,凍結乾燥粉末形態及び従来既知の水性組成物の双方に対して利点があることが記載されている。
凍結乾燥粉末形態のオキサリプラチンは,注入用の水又は5%グルコース溶液を用いて患者への投与の直前に再構築されて利用されるものであり【0012】,(

凍結乾燥物質を適切な溶液に溶かして溶液組成物にした状態で,長期間保存した上で,患者への投与を行うことは予定されていなかったところ,乙1発明は,使用時の再構成操作における間違った操作のリスクを排除し,すぐに使用でき,医薬として容認できる期間貯蔵した後でも,オキサリプラチン含有量が最初の含有量の少なくとも95%を占めるオキサリプラチン注射液を製造することを目的とするものである(乙1)。そして,本件明細書で,従来技術として挙げられたもののうち,オキサリプラチン水溶液であることが明示されているものは,乙1発明のみである(【0007】~【0012】)。
そうすると,本件発明は,乙1発明を含む従来既知のオキサリプラチン水性組成物における不純物生成の問題を克服することをも目的とする発明であり,乙1発明のオキサリプラチン水溶液より少ない量でしか不純物を生成しないオキサリプラチン水溶液に関するものといえる。
また,【0031】において,「製造工程中に安定であること」とは,本件発明の組成物中に生成される不純物が,オキサリプラチンの従来既知の水性組成物の場合よりも少ないことを意味するものとして記載されているから,これについて凍結乾燥物を溶解させて再構築させる工程と限定して解釈することはできない。(3)

技術的範囲への属否

よって,本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないと解されるところ,被告製品は,シュウ酸が添加されたものではないから,「緩衝剤」を包含するものとはいえず,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」に係る構成を有しない。
そうすると,被告製品は,その余の構成要件について検討するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
3結論
以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

髙部眞
裁判官

古河謙一
裁判官

関根澄子規子
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