判例検索β > 平成28年(わ)第141号
殺人被告事件
事件番号平成28(わ)141
事件名殺人被告事件
裁判年月日平成29年6月26日
法廷名福岡地方裁判所
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平成29年6月26日宣告
殺人被告事件(裁判員裁判)
主文
被告人を無期懲役に処する
未決勾留日数中380日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1

妻及び2人の子らと生活していたが,
平成14年初め頃からAと交際し始め,
間もなく同人と同居生活を送るようになった。平成16年5月8日に同人との間にBが出生すると,被告人は,Aに対し,年内にはAとBとを自己の戸籍に入れる旨伝えたものの,入籍できない状態が続き,同年9月頃以降は,Aから強く入籍を求められるようになった。そうした折の,同年12月下旬頃,被告人は,Aから,3日間続けて,深夜,繰り返し,自分たちを何とも思っていないし愛してもいないのではないかなどと,これまでにない強い口調で,入籍の約束が果たされていないことを責められた。被告人は,3日目の夜,布団に入ったものの寝就けず,このまま年内に入籍できなければAとBを失ってしまうなどと考えて絶望感を覚えるとともに,Aから厳しく責められたことへの腹立ちもあって,Aを殺すしかないと思い至った。そして,その頃,福岡県久留米市ab丁目c番d号の当時のef番館g号のA方において,就寝中の同人(当時28歳)に対し,殺意をもって,その左側胸部等を包丁(刃体の長さ約18.3センチメートル,
(領置番号略)で複数回突き刺し,よって,その頃,同所に
おいて,同人を死亡させて殺害した。

第2

前記第1の犯行に引き続き,
Aの傍らにいたBも殺そうと思い立ち,
その頃,
前記A方において,Bに対し,殺意をもって,その頚部をAVコードで強く絞め,よって,その頃,同所において,同人を死亡させて殺害した。(証拠の標目)


(法令の適用)


判示各行為につき

いずれも平成16年法律第156号による改正前の刑法1
99条(いずれも行為時においては平成16年法律第15
6条による改正前の刑法199条に,裁判時においてはそ
の改正後の刑法199条に該当するが,これは犯罪後の法
令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,
10条により軽い行為時法の刑による。


刑種の選択
判示各罪につき
併合罪の処理

いずれも無期懲役刑を選択
刑法45条前段,46条2項本文,10条(犯情の重い判
示第2の罪の無期懲役刑で処断するので,他の刑を科さな
い。


未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
本件は,妻子がありながら他の女性と交際していた被告人が,入籍できないことを交際相手から厳しく責められ,就寝中の同人とその間にもうけた子を殺害した2件の殺人の事案である。
もとより,本件は,生後約7か月の幼い子を含む2名の尊い生命が奪われた重大な事案であり,この点は本件の量刑を決する上でまずもって重視されるべき事情といえる。
犯行態様は,殊更に各被害者に苦痛や恐怖を与えるようなものではないものの,就寝中で無防備な状態にあった交際相手に対し,布団をめくり上げた上,心臓を狙って包丁で突き刺し,さらに,とどめを刺すために攻撃を加えているし,子についても,
抵抗する術のない生後約7か月の乳児の首を強く絞め付けているのであって,いずれも残忍な仕打ちというべきである。
本件はいずれも突発的な犯行ではあるが,
被告人の殺意は,確実に各被害者を殺そうという極めて強いものであった。犯行の経緯についても,被告人が交際相手から厳しく責められ続けて追い詰められた心境にあったこと自体は間違いないが,その結果,交際相手らの殺害を選択したことは理解し難く,
その動機は自己中心的かつ短絡的で,
同情の余地を見出せない
(なお,
被告人と当時の妻との離婚に関する話合いの経過がどのようなものであったかについては,同人と被告人の説明に食い違いがあり不明な点もあるが,仮に被告人の述べるとおり,当時の妻が頑なに離婚を拒んでいたとしても,本件犯行の動機に大きく酌むべきものがあるとは考えられない。。被告人が被害者らの遺体を土中に埋め)
るなどして結果的にその発見が遅れたことも,本件各殺人の情状として,一定程度考慮せざるを得ない。被害者らの遺族は被告人に対して厳しい処罰を望むが,以上の検討からすれば誠にもっともな心情と理解できる。
以上によれば,本件は,2名を殺害した殺人事件の中では,極刑が相当する部類に属するとまではいえないものの,決して軽い事案ではない。
他方,被告人は事実を認めており,上記のとおり被害者らの遺体を土中に埋めたことが一因とはいえ,
事案解明に協力するなどの反省の態度を示している。
その他,
被告人には前科前歴がないことや,20万円の贖罪寄付をしたことなども被告人に有利な事情である。しかし,これらを最大限考慮しても,被告人の刑事責任は重大であり,有期懲役刑を選択することが相当とはいえない。
よって,被告人に対しては,無期懲役に処するのが相当と判断した。(求刑・無期懲役,弁護人の科刑意見・懲役13年から15年程度)平成29年7月5日
福岡地方裁判所第1刑事部

裁判長裁判官

丸田
裁判官

岩田淳
裁判官

中山
さほ子

顕之
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