判例検索β > 平成27年(行ウ)第161号
措置命令取消等請求事件
事件番号平成27(行ウ)161
事件名措置命令取消等請求事件
裁判年月日平成28年11月10日
法廷名東京地方裁判所
判示事項1 事業者の供給する商品に係る表示が不当景品類及び不当表示防止法(平成26年法律第118号による改正前のもの)4条2項により同条1項1号に規定する実際のものよりも著しく優良であると示す表示等とみなされるとして同法6条に基づいてされた措置命令の取消訴訟の審理の対象
2 事業者がその供給する商品に係る表示の根拠として不当景品類及び不当表示防止法(平成26年法律第118号による改正前のもの)4条2項に基づいて提出した資料が,同項に規定する当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料に該当しないとされた事例
裁判要旨1 事業者の供給する商品に係る表示が不当景品類及び不当表示防止法(平成26年法律第118号による改正前のもの)4条2項により同条1項1号に規定する実際のものよりも著しく優良であると示す表示等とみなされるとして同法6条に基づいてされた措置命令の取消訴訟においては,同法4条2項に基づいて当該事業者の提出した資料が同項に規定する当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料に該当するか否かが審理の対象となる。
2 事業者がその供給する商品に係る表示の根拠として不当景品類及び不当表示防止法(平成26年法律第118号による改正前のもの)4条2項に基づいて提出した資料は,当該資料において当該表示の根拠とされる実験が,表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものとはいえず,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものともいえず,当該事業者の主張する事項を実証するものではないなど判示の事情の下では,同項に規定する当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料に該当しない。
戻る / PDF版
平成28年11月10日判決言渡
平成27年(行ウ)第161号

措置命令取消等請求事件

主1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2文
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
消費者庁長官が平成27年2月27日付けで原告株式会社翠光トップラインに対してした不当景品類及び不当表示防止法(平成26年法律第118号による改正前のもの。以下「法」という。)6条に基づく措置命令(消表対第254号)及び同日付けで原告株式会社ジェイトップラインに対してした同条に基づく措置命令(消表対第255号)をいずれも取り消す。
2
被告は,原告株式会社翠光トップラインに対し,1億円及びこれに対する平成27年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告は,原告株式会社ジェイトップラインに対し,2億円及びこれに対する平成27年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,原告らが,窓ガラスに貼って使用する「シーグフィルム」という名称の商品(以下「本件商品」という。)の販売等を行い,そのリーフレットやウェブページにおいて,本件商品を窓ガラスに貼付すると,夏季における遮熱効果及び冬季における断熱効果があり,冷暖房効率を向上させる旨を具体的な数値を挙げるなどして表示していたところ(以下,これらの表示を「本件各表示」という。),消費者庁長官から,本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料(以下「合理的根拠資料」ともいう。)の提出がされておらず,法4条2項により同条1項1号に該当する表示(以下「優良誤認表示」という。)とみなされるとして,法6条に基づき,本件各表示が法に違反するものであることを一般消費者に対して周知徹底すること等を命ずる各措置命令(以下「本件各措置命令」という。)を受けたため,原告らは合理的根拠資料を提出しており,本件各措置命令は違法であるなどと主張して,本件各措置命令の取消しを求めるとともに(以下,この請求に係る本件訴訟を「本件取消訴訟」という。),国家賠償法1条1項に基づき,被告に対し,原告らが本件各措置命令により受けたと主張する損害金の一部及びこれらに対する本件各措置命令の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下,この請求に係る本件訴訟を「本件国賠訴訟」という。)事案である。1
法の定め等
(1)

法の定め
不当な表示の禁止
(ア)

事業者は,自己の供給する商品又は役務の取引について,次の各号
のいずれかに該当する表示をしてはならない(4条1項)。

商品又は役務の品質,規格その他の内容について,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示し,又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(1号)


(イ)

(略)(2号及び3号)
内閣総理大臣は,事業者がした表示が4条1項1号(上記(ア)a)
に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは,当該表示をした事業者に対し,期間を定めて,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料(合理的根拠資料)の提出を求めることができる。この場合において,当該事業者が当該資料を提出しないときは,6条(後記イ)の規定の適用については,当該表示は同号に該当する表示とみなす。(4条2項)
(なお,法4条2項は,平成15年法律第45号による法の一部改正(以下「平成15年改正」という。)により設けられた規定である。)イ
措置命令
内閣総理大臣は,3条の規定による制限若しくは禁止又は4条1項(上記ア(ア))の規定に違反する行為があるときは,当該事業者に対し,その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は,当該違反行為が既になくなっている場合においても,次に掲げる者に対し,することができる。(6条)
(以下,法6条に基づく措置命令を単に「措置命令」ということがある。)
(ア)
(イ)


当該違反行為をした事業者(1号)
(略)(2号ないし4号)

権限の委任等
内閣総理大臣は,法による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する(12条1項)。
(以下,法4条及び6条については,「内閣総理大臣」とあるのを「消費者庁長官」に読み替えて摘示することとする。)

(2)

法4条2項に関する運用指針の定め
公正取引委員会は,平成15年改正により法4条2項(上記(1)ア(イ))
の規定が設けられたことに伴い,同項の運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保するため,同項の運用について一定の指針を示すことを目的として,平成15年10月28日付け「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針―不実証広告規制に関する指針―」(以下「本件運用指針」という。乙1)を定め,これを公表している。
本件運用指針は,法4条2項の規定により事業者から提出された資料(以下「提出資料」という。)が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには,①提出資料が客観的に実証された内容のものであること,②表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることを要するものとしている。このうち,上記①の客観的に実証された内容のものとは,㋐試験ないし調査によって得られた結果又は㋑専門家,専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献のいずれかに該当するものとし,上記㋐を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合,当該試験ないし調査の方法は,表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要があり,これらの方法が存在しない場合には,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があるものとしている。
2
(以上につき,甲42,乙1)

前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

原告ら
原告株式会社翠光トップライン(以下「原告翠光トップライン」という。)は,平成9年11月7日に設立された園芸用樹木,草木類及び園芸用材料の販売並びに輸出入,建築資材の販売等を目的とする株式会社である(甲1)。


原告株式会社ジェイトップライン(以下「原告ジェイトップライン」という。)は,平成10年7月6日に設立された建築資材の販売,建築工事の設計,施工及び請負等を目的とする株式会社である(甲2)。


原告翠光トップラインは原告ジェイトップラインの株式の100%を保有しており,原告翠光トップラインが親会社,原告ジェイトップラインが子会社の関係にある(弁論の全趣旨)。
(2)

本件商品
本件商品は,住宅やオフィス等の窓ガラスに貼って使用する透明なフィルムである。
本件商品は,厚さ3㎛の塗料(以下「本件塗料」という。),厚さ50㎛のポリエチレンテレフタレートの基材(いわゆるPETフィルム。以下「本件基材」という。)及び厚さ20㎛の粘着材(以下「本件粘着材」という。)によって構成されているフィルムである(甲10の2〔12枚目〕,弁論の全趣旨)。


原告翠光トップラインは,平成23年3月31日までは自ら本件商品の製造及び販売を行い,同年4月1日以降は本件商品の製造のみを行い,その販売は原告ジェイトップラインを通じて行っていた(甲10の1及び2,弁論の全趣旨)。


原告翠光トップラインは,本件商品について,別紙2「原告翠光トップラインに係る表示内容」記載のとおりの各表示をし,原告ジェイトップラインは,本件商品について,別紙3「原告ジェイトップラインに係る表示内容」記載のとおりの各表示をしていた(本件各表示。なお,本件各表示を夏季における効果や性能に関する表示,冬季における効果や性能に関する表示,冷暖房効率に関する表示及び冷暖房費に関する表示に分類して整理すると,別紙4「表示内容の整理」記載のとおりとなる。)(甲10の1及び2,弁論の全趣旨)。

(3)

本件各措置命令及び本件訴えに至る経緯
消費者庁長官は,平成26年5月29日,原告らに対し,法4条2項に基づき,同年6月13日までの期限を定めて,本件各表示について合理的根拠資料の提出を求めた(甲6の1及び2)。

原告らは,平成26年6月12日,消費者庁長官に対し,本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料であるとして,「提出資料の概要」と題する書面とともに別表「提出資料一覧表」記載の各資料(以下,同表の「資料番号」欄の記載に従って「資料1」などといい,資料1ないし資料20を併せて「本件各資料」という。)を提出した(乙5の1及び2,同表の「証拠」欄記載の各証拠)。


消費者庁長官は,平成27年1月15日,原告らに対し,原告らの提出した本件各資料は本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないため,法4条2項により本件各表示は優良誤認表示とみなされるとして,行政手続法13条1項2号に基づき,予定される措置命令の内容を,原告翠光トップラインについては別紙5「原告翠光トップラインに係る措置命令の内容」記載のとおり,原告ジェイトップラインについては別紙6「原告ジェイトップラインに係る措置命令の内容」記載のとおりとして,同月29日までの期限を定めて,弁明を記載した書面及び証拠を提出することができる旨の通知(以下「本件通知」という。)をした(甲9の1及び2)。これに対し,原告らは,同日までに,消費者庁長官に対し,「弁明書」及び「弁明書の補足」と題する書面等を提出した(甲5,11の1ないし7)。


消費者庁長官は,一般財団法人建材試験センター(以下「建材試験センター」という。)の中央試験所副所長であるZ1(以下「Z1氏」という。)及び千葉工業大学○学部○学科教授であるZ2(以下「Z2氏」という。)から本件各資料について意見を聴取するなどした上で,平成27年2月27日,原告らに対し,原告らの提出した本件各資料は本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないため,法4条2項により本件各表示は優良誤認表示とみなされるとして,法6条に基づき,原告翠光トップラインについては別紙5「原告翠光トップラインに係る措置命令の内容」記載のとおりの内容により,原告ジェイトップラインについては別紙6「原告ジェイトップラインに係る措置命令の内容」記載のとおりの内容により,本件各措置命令をした(甲10の1及び2,乙9の1及び2,同14の4及び5)。

本件訴えの提起
原告らは,平成27年3月18日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
(4)

熱等に関する一般的及び専門的な知見等
単位の換算
(ア)
(イ)


1㎜は1000㎛に等しく,1㎛は1000㎚に等しい。
1kcalは1.16Wに等しい。

熱に関する知見等
(ア)


熱とは,物体の内部の分子及び原子(以下,併せて「分子等」とい
う。)が振動している現象をいい,分子等の振動が激しければ激しいほど高温になる(甲18の1〔スライド番号14〕)。
(イ)

伝熱
伝熱(熱移動ともいう。以下同じ。)の形態には,熱伝導(伝導),
熱対流(対流),熱放射(放射)の3種類がある。
熱伝導とは,物体の内部において分子等の振動のエネルギーが伝播することによって高温部から低温部へと熱が移動する現象をいう。
熱対流とは,流体(気体及び液体をいう。以下同じ。)の循環によって熱が移動する現象をいう。
熱放射とは,熱を有する物体の表面から放射(「ふく射」ともいう。以下同じ。)された電磁波が,空間を移動し,他の物体の表面に到達して吸収され,分子等を振動させて熱が生ずることによって熱が移動する現象をいう。熱放射は,真空においても熱を伝えることができる。なお,これらとは別に,熱伝達とは,運動している流体とそれに接する固体表面の間の熱移動の現象をいい,対流による熱伝達を対流熱伝達と,放射による熱伝達を放射熱伝達という。
(以上につき,甲11の2ないし4,同18の1〔スライド番号13ないし24〕,乙15〔4頁〕)
(ウ)

熱力学第2法則等
熱は高温の物体から低温の物体へと移動するが,その逆は成立せず,
外から変化を与えることなく熱を低温の物体から高温の物体へと移動させることはできない。この法則は,熱力学第2法則と呼ばれている。熱力学第2法則は,熱伝導及び熱対流には適用されるが,熱放射には適用されない。
絶対零度(マイナス273.15℃)の物体を除く全ての物体は電磁波を放射しているため,低温の物体から高温の物体への熱放射による伝熱も生じており,放射による物体間の伝熱は,相互に吸収した電磁波のエネルギーの収支による。
(以上につき,甲11の2,同18の1〔スライド番号14,19ないし21,32)〕
(エ)

熱貫流に関する知見等
熱伝導率とは,厚さ1mの材料について,その両側の表面温度差が1℃(K)のときに,面積1㎡当たり単位時間に通過する熱量(W/m・K)をいう。熱伝導率は,材料の熱の伝わりやすさを表す値であり,その値が大きいほど熱が材料を通過しやすいといえる。
熱伝導抵抗とは,材料の厚さ(m)に熱伝導率(W/m・K)の逆数を乗じた値(㎡・K/W)をいう。熱伝導抵抗は,材料の熱の伝わりにくさを表す値であり,その値が大きいほど熱が材料を通過しにくいといえる。
(以上につき,乙16〔3頁〕,弁論の全趣旨)

対流熱伝達率とは,対流により,固体表面と流体の温度差が1℃
(K)のときに,面積1㎡当たり単位時間に移動する熱量(W/㎡・K)をいう。対流熱伝達率は,固体表面と流体間の熱の伝わりやすさを表す値であり,その値が大きいほど両者の間で熱が移動しやすいといえる。
対流熱伝達抵抗とは,対流熱伝達率の逆数の値(㎡・K/W)をいう。対流熱伝達抵抗は,固体表面と流体間の熱の伝わりにくさを表す値であり,その値が大きいほど両者の間で熱が移動しにくいといえる。なお,総合熱伝達率とは,対流熱伝達率と放射熱伝達率を合計した値である。
(以上につき,乙15〔4頁〕,16〔3及び4頁〕,弁論の全趣旨)


熱貫流率とは,壁や窓ガラス等(以下「壁等」という。)の両側
(室内と室外)の空気温度に1℃(K)の差があるときに,1時間当たりに壁等1㎡を通過する熱量(W/㎡・K)のことをいう。熱貫流率は,高温側の壁等の表面における熱伝達,壁等の内部における熱伝導,低温側の壁等の表面における熱伝達を総合した壁等全体の熱の伝わりやすさを表す値であり,その値が小さいほど断熱性に優れているといえる。
熱貫流抵抗とは,熱貫流率の逆数の値(㎡・K/W)をいう。熱
貫流抵抗は,壁等全体の熱の伝わりにくさを表す値であり,その値が大きいほど壁等の両側間において熱が移動しにくいといえる。
なお,熱貫流率については,熱貫流抵抗との関係から,次の関係式が成り立つ。
1/熱貫流率=熱貫流抵抗
=室外側の熱伝達抵抗+材料の熱伝導抵抗+室内側の
熱伝達抵抗
(以上につき,甲18の1〔スライド番号46〕,乙9の2〔15枚目〕,同16〔3頁〕,弁論の全趣旨)。

電磁波に関する知見等
(ア)

電磁波の分類及び性質
電磁波は,波長域により,10㎚以下のものをX線等,10ないし3
80㎚のものを紫外線,380ないし780㎚のものを可視光線,780㎚ないし1㎜のものを赤外線といい,1㎜以上のものを電波等と分類することができる。また,赤外線は,波長域により,780㎚ないし2.5㎛のものを近赤外線,2.5ないし8㎛のものを中赤外線,8㎛ないし1㎜のものを遠赤外線と分類することができる。
電磁波は,X線のように波長が短ければ短いほど物体を透過する力が強くなり,逆に,赤外線のように波長が長ければ長いほど,物体を透過する力が弱くなり,物体に吸収されて熱に変わりやすい性質を有している。
なお,5.5ないし50㎛の波長域における電磁波の放射は,常温熱放射と呼ばれており,物体に吸収されて熱に変わりやすい性質を有している。
(以上につき,甲18の1〔スライド番号25,26〕,弁論の全趣旨)
(イ)

電磁波と物体との関係
電磁波が物体に入射した場合,電磁波のエネルギーの一部は物体に吸
収され,一部は反射し,一部は物体を透過する。そのため,物体に入射した電磁波のエネルギーが当該物体に吸収され,反射し又は透過する割合について,次の関係式が成り立つ。
吸収率+反射率+透過率=1
また,電磁波を吸収した物体は,吸収したエネルギーと同等の電磁波を放射(「再放射」ともいう。以下同じ。)する(この法則はキルヒホッフの法則と呼ばれている。)。そのため,吸収率と放射率について,次の関係式が成り立つ。
吸収率=放射率
なお,物体の吸収率(放射率),反射率及び透過率は,電磁波の波長によって変化する。
(以上につき,甲11の2及び3,同18の1〔スライド番号27ないし35〕)
(5)

日本工業規格における用語の定義
日本工業規格(以下「JIS規格」ということがある。)であるJISA5759は,建築窓ガラス用フィルムの規格について規定しており,次のとおり用語の定義をしている(甲20)。
(ア)

日射とは,電磁波として太陽から放射されたエネルギーのうち地上
に到達したものをいう。
(イ)

可視光線とは,視器官を通して視感覚を起こすことができる放射を
いう。なお,一般に,可視光線の波長範囲の短波長限界は380ないし400㎚,長波長限界は760ないし780㎚である。
(ウ)

透過率とは,透過光の光束と入射光の光束との比をいう。

(エ)

反射率とは,反射光の光束と入射光の光束との比をいう。

(オ)

遮蔽係数とは,フィルムを貼付した厚さ3㎜の板ガラスに入射した
日射のうち,一度吸収された後に入射面の反対側に再放射される分をも含んで通過する分(すなわち,透過分と再放射分の和)の率を,板ガラスだけの場合の率を1として表した係数をいう。
(カ)

熱貫流率とは,フィルムを貼付した厚さ3㎜の板ガラスについてその両側の空気温度差が1℃のとき,面積1㎡当たり単位時間に通過する熱量をいう。
(キ)

板ガラスとは,JISR3202に規定するフロート板ガラスを

いう。

日本工業規格であるJISR3106は,建築用の板ガラス類の日射に対する透過率,反射率及び吸収率並びに常温熱放射の放射率等を分光測光器を用いて求める試験方法とその板ガラス類を建築物の窓に使用したときの日射熱取得率を計算する方法を規定しており,次のとおり用語の定義をしている(甲19)。
(ア)

日射透過率(日射反射率)とは,ガラス面に垂直に入射する日射の
放射束について,透過放射束(反射放射束)の入射放射束に対する比をいう。なお,ここにいう日射とは,大気圏を透過して地上に直接到達する近紫外,可視及び近赤外の波長域(300~2500㎚)の放射をいう。
(イ)

放射率とは,ガラス板が空間に放射する熱放射の放射束の,同じ温
度の黒体が放射する熱放射の放射束に対する比をいう。
(ウ)

日射熱取得率とは,窓ガラス面に垂直に入射する日射について,ガ
ラス部分を透過する日射の放射束とガラスに吸収されて室内側に伝達される熱流束との和の入射する日射の放射束に対する比をいう。
(6)

板ガラスの性質
一般に,厚さ3㎜の板ガラス(以下「3㎜ガラス」,「3㎜フロートガラ
ス」又は「3㎜FLガラス」ということがある。)の日射透過率は約86%,日射反射率は約8%,日射吸収率は約6%であり,日射熱取得率は約88%とされている。また,厚さ6㎜の板ガラス(以下「6㎜ガラス」,「6㎜フロートガラス」又は「6㎜FLガラス」ということがある。)の日射透過率は約80%,日射反射率は約7%,日射吸収率は約13%であり,日射熱取得率は約85%とされている。日射熱取得率と日射透過率の差は,日射が板ガラスに吸収された後に室内側に伝達される熱流束(伝熱量)の割合に相当する。(甲55〔146,149頁〕,乙6の12〔48頁〕,同9の1〔資料12〕及び2〔3頁,15枚目〕)
板ガラスの常温熱放射の波長域における放射率(吸収率)は,90ないし95%である(乙6の1,同8の2及び3,弁論の全趣旨)。
3
争点
〔本件取消訴訟関係〕
(1)

本件取消訴訟の審理の対象(法4条2項の適用の有無)

(2)

本件各表示に係る合理的根拠資料の提出の有無

(3)

本件各表示が優良誤認表示に当たるか否か

(4)

本件各措置命令に係る裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無

(5)

本件各措置命令に係る手続上の瑕疵の有無

〔本件国賠訴訟関係〕
(6)
(7)
4
国家賠償法上の違法の有無
損害の有無

争点に関する当事者の主張の要旨
(1)

争点(1)(本件取消訴訟の審理の対象(法4条2項の適用の有無))につ
いて
(原告らの主張の要旨)

法4条2項の文言上,明示的に「第6条の規定の適用については」と限定して規定されていることから,同項のみなし規定の効果が及ぶ範囲が法6条の定める措置命令に限られ,行政事件訴訟法の定める取消訴訟に及ばないことは文言上明らかである。
この点,法4条2項の規定が設けられた平成15年改正の立案担当者の解説(甲13)でも,同条項のみなし効果が及ぶ範囲は,公正取引委員会が行う排除命令(法6条1項)等の段階に限定され,審決取消訴訟の段階における裁判所の判断にまで及ばないようにしたものと説明されている。また,平成15年改正の法案審査における法の所管官庁である公正取引委員会と内閣法制局とのやり取りの記録(甲92)においても,法4条2項のみなし規定について,「公正取引委員会が事案に関わっている段階においては効力があるという構成をとり,裁判に持ち込まれた段階にまでは効力を及ぼさないこととする。」旨の立案担当者の意思が繰り返し表明されている。そして,公正取引委員会が起案した当初の改正条文案には,法4条2項における「第6条の規定の適用については」との限定がなかったが,みなし規定の適用は公正取引委員会での手続段階(行政手続段階)のみに限る(訴訟段階には及ぼさない)ことを前提に,内閣法制局の指摘を踏まえ,公正取引委員会自らが,上記の限定文言を法4条2項においてあえて付加したものである。

取消訴訟において法4条2項のみなし規定の適用が排除されたとしても,規制の迅速性が不当に阻害される事態は想定し難く,法4条2項の立法趣旨が没却されることはない。
すなわち,第1に,措置命令は事業者に対して極めて重大な不利益を与えるため,事業者には合理的根拠資料を提出すべき強い動機付けが与えられていることから,消費者庁が訴訟を念頭に置いて実際に自ら調査を行う必要性が多く生ずるとまではいえない。第2に,実際に措置命令が発せられる大多数の事案においては,表示に係る合理的根拠資料の存否というよりも,表示された効果や性能自体がもともと備わっていない事案が多くを占めているため,消費者庁が提出資料以外の資料を積極的に収集し検討すべき必要性はほとんどない。第3に,消費者庁においては,各技術分野に対応した専門家の意見を聴取する体制がとられており,提出資料以外の資料を積極的に収集し検討する必要があるとしても,専門家の調査に長期間を要するとは必ずしもいえない。
そして,行政手続の段階において,迅速性が特に要求され,十分な調査が行われなかった場合にこそ,司法手続における判断には慎重さが要求されるというべきである。

法4条2項の立法目的は,消費者庁長官が迅速に審査を行い,不当表示に対して速やかに規制を行うことを可能にし,もって一般消費者の利益を保護するという法の目的(法1条)を達成することにあるところ,取消訴訟において法4条2項のみなし規定の適用が排除されたとしても,規制の迅速性が不当に阻害される事態は想定し難く,法4条2項の立法趣旨が没却されることはない。すなわち,同項のみなし規定の効果を取消訴訟にまで及ぼすべき立法事実は何ら存在せず,反対に,同項のみなし規定を取消訴訟に適用することは,立法目的を達成するために必要最小限度の手段をもって行う合理的な制約とはいえない。
したがって,法4条2項のみなし規定が取消訴訟にも適用されるとの解釈を採ることは,事業者の表現の自由(憲法21条1項)及び営業の自由(憲法22条1項)という憲法上の重要な基本的人権を直接的に制約するものであり,違憲というべきである。


以上のとおり,法4条2項のみなし規定は,取消訴訟に適用されず,措置命令の発令要件は「第4条第1項の規定に違反する行為がある」(法6条柱書き)ことであるから,本件取消訴訟の審理対象である本件各措置命令の適法性は,「第4条第1項の規定に違反する行為があるとき」に該当するか否かである。そして,証拠提出についての制限は一切存在せず,本件各措置命令後に得られた書面等(本件各措置命令前には提出していなかった書面等)も,法4条1項1号該当性を立証するための証拠として提出することができる。

(被告の主張の要旨)

事業者が,消費者庁長官に対して合理的根拠資料の提出をしなかったときは,法4条2項の法的効果として優良誤認表示とみなされるのであり,法6条は,これについても措置命令の対象となることを規定している。そして,措置命令取消訴訟は抗告訴訟であり,その審理の対象は,措置命令の処分要件の有無ということになるから,措置命令の根拠とされた法4条2項の定める要件の有無が審理の対象となることは明らかである(東京高裁平成22年10月29日判決(乙10)参照)。
したがって,本件取消訴訟においては,専ら原告らの提出した本件各資料が合理的根拠資料に該当するか否かが問題となるのであって,本件各表示が法4条1項1号に該当するか否かが直接問題となるものではない。

仮に,取消訴訟において法4条2項のみなし規定の適用が排除されるとすれば,消費者庁長官は,表示が同条1項1号に該当することを直接立証しなくてはならないこととなり,取消訴訟において取り消されることのない処分をするためには,同条2項を適用して措置命令を行う場合であっても,将来提起される可能性がある取消訴訟を見据えて,常に当該表示が同条1項1号の表示に該当するものであるかを検討し,取消訴訟においてその該当性を立証するに足りる証拠を具備することが求められることとなってしまう。
また,仮に,措置命令の取消訴訟において新たに資料を提出し,その資料をもって合理的根拠資料に当たるとすることが許されるとするならば,消費者庁長官は,取消訴訟において取り消されることのない適法な措置命令を行うためには,法4条2項の資料提出要求に応じて事業者が提出した資料にとどまらず,事業者が有している可能性のある資料や,将来に取消訴訟が提起された際に事業者が提出する可能性のある資料についてまで広くその存在を探知し,自ら収集するなどして検討した上で処分を行わなければならなくなってしまう。
このような事態に陥ることを認めれば,不当表示に対する迅速な規制を行うことが不可能ないし著しく困難となることは明らかであり,法4条2項の趣旨が没却されることとなる。

法4条2項は,表示の合理的な裏付けとなる根拠資料の提出がない場合には,法4条1項1号の表示とみなすことを規定したものであるところ,これは事業者が表示を行う場合にはそれを表示する根拠を有しているはずであるという当然の論理を前提に設けられたものである。
仮に,法4条2項のみなし規定が取消訴訟に適用されないとすると,消費者庁長官は,事業者が同項の手続において提出した資料は表示を裏付ける合理的根拠資料には当たらないと判断した場合であっても,それだけでは足りず,それ以外の資料を含めて表示の根拠が存在しないことを調査検討した上でなければ措置命令を行うことができず,迅速な規制が不可能ないし著しく困難になり,ひいては一般消費者の利益を保護するという法の目的を達成できない事態を招く結果となる。
一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある表示について,合理的根拠を有することなく行うことが許容されるものではないことは公共の福祉に照らして当然であって,法4条2項のみなし規定が取消訴訟に適用されても,何ら憲法の規定に違反するものではない。
(2)

争点(2)(本件各表示に係る合理的根拠資料の提出の有無)について資料1について
(原告らの主張の要旨)
(ア)

資料1の概要
本件商品は,表面に低放射率の本件塗料を使用しており,ガラス(高
放射率)の室内側表面に貼付することにより,ガラスの両側表面の放射率に大きな差を生み出すことを最大の特徴とする製品である。分子の振動たる熱はガラス内部を伝導により伝達し,その表面から赤外線(常温熱放射の波長域の電磁波)が放射される。すなわち,物理原則として自明のとおり,放射は物体の表面から起こるため,本件商品の製品としての放射率は表面を形成する本件塗料の放射率ということになる。
資料1(乙6の1)は,膜厚3㎛の本件塗料の放射率を求めるために,膜厚21㎛の塗料被膜のサンプル(以下「本件試験体」という。)を作成し,埼玉県工業技術センターにおいて分光光度計により透過率を測定した。
埼玉県工業技術センターの測定結果は,横軸を波数(波長の逆数),縦軸を透過率とするスペクトル(以下「本件スペクトル」という。)として得られた。
本件スペクトルから,JISR3106が定める算定方法に準拠
して本件試験体の透過率を計算し,更にランベルト・ベールの法則(入射光の強度と透過光の強度との比の対数が吸収物質の厚さに比例するという法則。以下同じ。)により本件塗料の放射率を保守的に0.049と計算で求めたものである。
したがって,計算過程の詳細が資料1に記載されているか否かにかかわらず,資料1によって本件商品の放射率が0.049以下であるという結論が実証されている。
(イ)

資料1により実証される遮熱効果のメカニズム
放射は物体の表面から起こるため,板ガラス(放射率0.95)の室
内側表面に本件商品を貼付することにより,板ガラスの両側の表面の放射率に大きな差が生ずる。
本件商品は「透明」であるので,日射は本件商品によって遮蔽されずに透過し,その一部が室内物質に吸収されて熱に変わる。この室内物質から再放射(常温熱放射)される赤外線は,本件塗料の透過率が0.951と極めて高い結果,本件商品を透過して板ガラスに到達し,吸収されて熱に変わる。さらに,板ガラスにおいては室外からの常温熱放射による赤外線をも吸収して熱に変わる。
こうして熱くなった板ガラス内部の熱(分子の振動)は,板ガラス及び本件商品の内部を伝導で伝わり,室内側と室外側の両表面に到達するが,本件商品の室内側表面の放射率が0.049以下と極めて低いため,室内側表面からの室内側への再放射が大きく抑制され,室外側に多く再放射されることになる。
このように,本件商品の放射率が0.049以下と極めて低いため,本件商品を板ガラスの室内側に貼付することにより,夏季においては放射熱の大部分は室外へ放出され,板ガラスの表面から室内側への放射熱が減ることにより,室内に蓄積される熱が軽減する結果となる。
(ウ)

資料1における本件商品の透過率の算出過程
JISR3106では,常温熱放射の波長域における放射率の算定
方法を,付表3の選定波長を用いて,分光測定器による分光反射率の測定を通じて説明している。この選定波長は,分光反射率の測定の中で用いられているが,飽くまで放射率を算出する過程のことであり,基準となる放射量(黒体放射密度の波長による積分値)が等しくなるように選んだ選定波長である以上,このような選定波長における透過率を測定して最終的に放射率を算出しても,正しい結果が得られる道理である。そこで,資料1においては,JISR3106に準拠した分光光度計を用いて,横軸を波数,縦軸を透過率とする常温熱放射の波長域を含む波数4000ないし370cm-1のスペクトルを測定し,選定波長における各透過率を単純に平均(算術計算)したものである。その結果,本件商品の塗料を用いた厚さ21㎛の本件試験体の常温熱放射の波長域における透過率として,0.705(70.5%)を得た。
次に,本件試験体の膜厚は21㎛であるのに対し,本件商品の表面を構成する本件塗料は3㎛であるので,上記透過率0.705をランベルト・ベールの法則で換算すると,本件商品の透過率は0.951(95.1%)となる。そして,「吸収率+反射率+透過率=1」,「吸収率=放射率(キルヒホッフの法則)」の2式から,「放射率<1-透過率(0.951)」の式が成立し,本件商品の放射率を0.049以下と算出した。
(エ)

塗料の透過率及び放射率の算出過程に誤りはなく,紛失した数値表
の代わりの資料等を用いて算出した結果もほぼ同様の結果であること資料1における塗料の透過率及び放射率の算出は,資料1の測定結果から計算で求められるものであり,その計算方法は専門家にとって自明である。
具体的な算出過程については,透過率につき当時の「数値表」を紛失したため,再現することができない。そのため,原告らは,資料1の実測データである本件スペクトルからより精度の高い区分求積法により客観的に透過率及び放射率を算出し,かつ資料1の本件スペクトルに記載がない部分についてJISR3106が定める方法で選定波長の数値として算出を行った。その結果,21㎛の本件試験体の透過率は約0.647と算出された(資料1における算出結果である0.705との多少のかい離はあるが,算出方法により精度の高い区分求積法を用いたことがその理由と推測される。)。
こうして客観的に算出された膜厚21㎛の本件試験体の透過率から膜厚3㎛の本件塗料の放射率の算出は,ランベルト・ベールの法則及びキルヒホッフの法則という物理法則により機械的,一義的に算出される。いずれにしても,JIS規格が定める手法のみによらず,区分求積法を併用して算出した結果は,当初の計算結果と大きな相違はないことが実証された。当初の計算では放射率が0.05であったところ,上記の算出方法では0.06となるが,放射率が十分に低い点で誤差の範囲である。
(オ)

塗料の放射率が本件商品の性能となること
放射は飽くまで物体の表面から起こるのであり,これは動かし難い物
理法則である。
本件商品の遮熱のメカニズムについては,特許査定を受けて登録されている。仮に,放射が物体表面から起こるという現象が物理法則に反するのであれば,出願された発明は自然法則を利用した発明ではなく(特許法29条1項柱書き),かつ,物理法則に反する以上実施可能性もない(同法36条4項1号)ということになり,特許要件を欠くものとして拒絶の理由があったことになるが,拒絶の理由がなかったと判断されたことは,放射が物体表面から起こることを前提とする特許発明が物理法則に反するものではないからにほかならない。
このように,放射は物体の表面から起こるため,本件商品の製品としての放射率は,表面を形成する本件塗料の放射率ということになるのであり,これは本件商品をガラスに貼付した状態においても異ならない。(カ)

以上により,資料1によって,本件商品の放射率が0.049以下
であるという結論が実証されていることは明らかである。
(被告の主張の要旨)
(ア)

原告らが作成した資料等が含まれていること
原告らは,資料1の作成者を埼玉県工業技術センター所長としている
が,資料1のうち「放射熱吸収率測定試験報告書」と称する書面及び「150

ランベルト‐ベールの法則」と称する書面は,原告らが作成

した資料であり,「試験体サンプル」と称する書面も,埼玉県工業技術センターが作成したものではない。したがって,本件塗料の放射率が0.049以下であると結論付けているのは,第三者機関ではなく原告らである。
(イ)

塗料の透過率及び放射率の算出過程が不明であり,記載内容の客観
性が担保されていないこと

資料1について,具体的な実測データは本件スペクトルしか存在しないところ,本件スペクトルからどのようにして本件試験体の透過率の数値を算出したのか明らかでない上,算出した当該透過率の数字をどのように補正したのかも示されていないものであり,原告らがどのようにして本件塗料の透過率を95.1%と算出したかが一切不明である。


また,資料1には,「JISR3106(7)に準拠し」たとの記載があるところ,そもそも,JISR3106は,板ガラスに関するものであり,「7.常温の熱放射の放射率の算定」において,透過率を0とみなしているため,常温熱放射の波長域における本件試験体の透過率の算定について,JISR3106に準拠することはできない。
さらに,JISR3106の当該項目は,「反射率」を求めた上
で「放射率」を算定する方法に関する算定式であるが,原告らは,本件塗料の反射率を測定したわけではなく,反射率は不明であることを前提としているものと考えられるから,「JISR3106(7)に準拠」するとする趣旨が不明である。


加えて,資料1の試験で用いた塗料の厚さは21㎛(平均値)であるところ,本件塗料の厚さは3㎛であるため,資料1の透過率測定値から算出されたという放射率をそのまま本件塗料の放射率の試験成績とすることはできない。この点に関して,資料1には,ランベルト・ベールの法則によって補正したとの記載があるが,その詳細は記載されておらず,どのような計算を行ったのかを資料1から読み取ることはできない。
(ウ)

試験成績書の試料が塗料であり,塗料を使用したフィルムではない
こと
本件商品は,塗料単体で作られているものではなく,50㎛のポリエチレンテレフタレートの本件基材(いわゆるPETフィルム)を主たる材料としており,そのフィルムに20㎛の本件粘着材の層があり,本件粘着材を窓ガラス面に貼り付けて使用するものである。そして,3㎛の本件塗料の10倍以上の厚みのあるPETフィルムの放射率の影響がないということはあり得ず,かつ,PETフィルムは一般に5.5㎛から50㎛の波長の赤外線をよく吸収する資材として知られていることから,資料1に記載された透過率のグラフをもって,本件商品の透過率を判断することはできない。
(エ)

本件商品はガラスに貼って使用するものであり,ガラスに貼った状
態で放射率を求める必要があるが,原告らはこれをしていないこと本件商品は,フィルム単体で使用されることはあり得ず,ガラスに貼って使用される物であるから,本件商品の性能を試験したいのであれば,本件商品をガラスに貼った状態で性能に関する試験を行う必要があり,その状態でどのような性能が現れるかを測定しなければ,測定したデータは実使用とは異なる条件下でのデータであり,意味がない。特に,ガラスは常温熱放射をほとんど吸収し,かつ,よく放射するものとされているため,仮に本件塗料のみの放射率が0.049未満という値であったとしても,本件商品をガラスに貼った状態で測定すれば,全体として0.049という数字にはなり得ないと考えられる。
(オ)

以上により,資料1については,表示された商品等の効果や性能に
関する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって作成されたものとはいえず,かつ,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法によって作成されたものともいえない。
したがって,資料1が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料に当たるものとはいえない。

資料2について
(原告らの主張の要旨)
(ア)

資料2の概要
本件商品は,そもそも製品構造上もJIS規格の対象外の製品であ
り,日射を遮蔽する製品ではないため,遮蔽係数によってその性能を正しく表示することはできない。もっとも,他社製品は全て遮蔽係数を表示しており,ユーザーから本件商品の遮蔽係数を問われることが多く,遮蔽係数相当値を表示する営業上の要請が極めて高かったことから,遮蔽係数相当値を確認するために資料2(乙6の2)に係る実験をした。資料2は,発泡スチロール製の実験箱(既製品の魚箱)の上部にガラスを設置し,本件商品や他社製遮熱フィルムの貼付の有無等による箱内温度の変化を測定する実験であり,遮蔽係数の判明している他社製遮熱フィルムの箱内温度変化との比較により,本件商品の遮蔽係数相当値を推測した。そして,資料2によって,本件商品を窓ガラスに貼付することにより,夏季における遮熱効果が得られること,遮蔽係数が0.5相当となることが実証された。
(イ)

実験箱への日射量及び地面から反射される日射の影響,風の当たり
方等が測定結果に影響を与えることはないこと
フィルムを貼付したガラス面の検体は箱の上部に設置されており,かつ,屋上での実験であるから,フィルムを貼付したガラス面の日射量は完全に同一である。
また,7月下旬から8月頃までの沖縄の太陽高度を考慮すれば,隣接する箱に陰が形成されるのは午後3時頃と推定されるが,その場合でも箱側面の下方の一部に短時間形成されるだけであり,発泡スチロールの断熱性能からは,検体間の差違は軽微といえる。このように,資料2は,太陽高度が高い上に,屋上で遮蔽物が存在しないので,他の箱の影響による影や風の当たり方について大きな影響が出ることはなく,考慮する必要はない。
この点,査読付き論文(甲47,51)においてすら,実験箱と実験箱の距離が短い場合が散見されるところ,他の箱の影響による影や風の当たり方などは考慮されていない。
(ウ)

発泡スチロール箱の個体差を確認し考慮する必要はないこと
資料2において,工業製品である発泡スチロール箱について個体差の
確認がされたか否かの記載がなく,確認の有無は不明である。
しかしながら,そもそも発泡スチロール箱は,工業製品の既製品の魚箱であり,規格に基づき大量生産され,検品に合格した製品のみが出荷されているのであるから,工業製品について有意な個体差が発生する可能性は基本的にない。
この点,発泡スチロール箱の個体差に関して,建築資材等の熱性能に関する査読付き論文(甲47,48,50,51)においても,新たに作製した検体や実験箱について個体差の確認と考慮をしていない論文が数多く散見されるのであり,これは,査読者によって測定の成立,信頼性及び測定結果自体に影響がないと認められたからにほかならない。(エ)

ガラス面以外の4面から箱内に侵入する熱量を考慮する必要はない
こと
資料2で使用した実験箱は,発泡スチロール製の既製品の魚箱であり,発泡スチロールは代表的な断熱材であるから,4面とも断熱材で断熱されている。当該実験箱のように厚さ30㎜程度の発泡スチロールを断熱材として利用することは学術界や産業界において極めて一般的である。当該実験箱の熱伝導率は,資料2に記録されていないが,最大でも0.04以下,あるいは0.045ないし0.041以下であると推定され,いずれにしても建築分野において「断熱材」と呼ぶことができる範囲の0.06よりも十分に小さいものであることは確実である。この点につき,査読付き論文における数多くの測定においても,実験箱が発泡スチロール製の場合には試験体以外の面からの熱量は考慮されていない。
(オ)

試験体であるガラスと箱の接着面から逃げる熱量を考慮する必要は
ないこと
資料2の測定に際して,ガラスと実験箱の隙間については,パテで固定した上でビニールテープで固定している。そもそも実験箱は発泡スチロール製の工業製品であり,ガラスとの間に隙間ができる可能性は極めて小さい上,仮に,パテでの密閉がなくビニールテープによる固定だけであったとしても,そもそもガラスの重みがあるので気密性は問題にならない。
この点につき,査読付き論文(甲47,50,51)においてすら,密閉方法まで言及していない論文は極めて多く,密閉方法は測定の有効性や結果に影響を及ぼさないことを意味している。
(カ)

箱の内外温度差が箱ごとに異なる実験状況の下でも箱内温度の比較
から日射遮蔽性能を比較することができること
各試験体の熱特性が異なる以上,箱内温度が箱ごとに異なるのは当然である。比較対象の各箱の箱内温度が一致する場合,外気温は当然同じであるから内外温度差も一致しており,箱内に流入する熱量も等しい。資料2は,比較対象の各箱の箱内温度がほぼ一致した場合に流入する熱量の遮蔽が同程度であると考えて遮蔽係数を推定している。
資料2では,比較対象の各箱の条件について,1つのパラメーター(試験体のスペック)以外の条件が一致した状況において,箱内温度がほぼ同じ結果になっている二つの箱を比較している。この場合,箱内温度が一致するにもかかわらず,試験体の熱性能が異なる結果となるパラメーターはないと考えられ,箱内温度が一致する二つの箱について,その性能(遮蔽係数相当値)が同等と推定することは極めて自然であり,測定として十分に成立する。したがって,箱内温度の比較から日射遮蔽性能を比較できる。
なお,ガラス単体とガラスにフィルムを貼付した場合について,単純に箱内の温度上昇を測定して比較することは,国立研究開発法人建築研究所や大手メーカーによっても実施されており,室内温度測定によって窓用フィルム商品の性能に結び付けることも各大手メーカーにより実施されている。
(キ)

ガラスの厚みが異なっていても箱内温度が一致したことをもって試
験体部分の遮蔽係数が同程度と推測できること
本件商品は3㎜フロートガラスに貼付したのに対し,遮蔽係数を推定するために比較の対象とした試験体(ブロンズ20)は,6㎜フロートガラスに貼付しており,ガラスの厚みが異なる。
しかしながら,3㎜フロートガラスと6㎜フロートガラスの熱抵抗の差は僅か2.4%であり,その熱特性が箱内温度に与える影響は僅かであるので,無視してもほぼ問題ない範囲である。
この点につき,査読付き論文(甲49)においても,ガラスの厚みが熱特性にほとんど差をもたらさないことが確認されており,3㎜と6㎜の厚みの異なるガラスのデータ間においても比較検討されている。(ク)

実験の詳細について明らかにされていること
資料2には「5日間平均」,「3日間平均1」及び「3日間平均2」のデータがあるところ,資料2(13頁)に手書きで記入されたコメントによれば,最も日射量が高いデータが「3日間平均1」,最も最高温度の高いデータが「3日間平均2」であり,財団法人沖縄県環境科学センターの専門的判断により,最高温度の高い「3日間平均2」が選定されたことがうかがわれる。
一般に,測定期間中の全てのデータが採用されるわけではなく,その一部のみが検討対象とされる。また,査読付き論文(甲50)においても,約2か月半の期間で実験を行ったにもかかわらず,「天候に恵まれた」特定の1日のデータのみが検討対象とされており,当該1日の気象条件の説明のみで,複数存在するデータ中から選別した理由の詳細までは要求されていない。
(ケ)

箱内温度と遮蔽係数の関係について科学的に矛盾する実験結果はな
いこと
資料2に係る実験の結果において,遮蔽係数の低い5㎜フロートガラスの方が,3㎜フロートガラスよりも箱内温度が高くなっているが,ガラスの厚みが異なっても,その熱特性が箱内温度変化に与える影響が僅かであることは査読付き論文(甲49)においても明確に指摘され実証されている。
そして,3㎜フロートガラスと5㎜フロートガラスの熱取得率の差は2.3%,熱抵抗の差は1.6%であり,箱内への熱量の流入と箱内熱量を外に出さないようにする作用とが僅かの差異の中でせめぎ合う関係にある。実測において,3㎜フロートガラスよりも5㎜フロートガラスの箱内温度が高くなることは,測定で生じ得る誤差であり,測定自体の成立には影響しない。
(コ)

資料2の測定は冬季を再現しているものではないこと
資料2の測定においては,箱内温度が60℃超の高温となり,外気温が40℃という状態になっている。
しかしながら,資料2と同様に,ガラス単体とガラスにフィルムを貼付した場合について,単純に箱内の温度上昇を比較した測定(甲56)において,箱内の最高温度はガラス単体が78.9℃,遮熱フィルム(夏の遮熱効果を有するフィルム)貼付の場合が54.8℃にまで上昇しているところ,明らかに夏季を再現した測定とされている。国立研究開発法人建築研究所研究員らが実施した遮蔽塗料(夏の遮熱効果を有する塗料)の測定(甲53)においても,同研究所(つくば市)の6月の測定結果について,箱内の最高温度が46.5℃に達している。いずれの場合も夏季を再現した測定であるが,外気温に比較して箱内温度が非常に高温になっている。
以上の各測定や論文からも明らかなとおり,資料2は,単に温度帯が上(高温)にずれている状態であるにすぎず,飽くまで夏季を再現した測定である。
(サ)

外気温の測定結果は測定自体の有効性とは無関係であること
資料2において,外気温について45.9℃の測定結果が出されてい
ることは,外気温のセンサーを遮蔽するアルミホイルが風などの影響でずれて日射を直接受けたことが原因と推測されるが,密閉された箱内温度のセンサーについて同様の事象が起きたとは考え難い。箱内は風などの影響がないので,外気温のセンサーの遮蔽がずれたからといって,箱内のセンサーも同様とはいえず,他方で箱内温度について正確に測定できていないことをうかがわせる事情はない。いずれにしても,両者は全く関係がなく,測定結果に何ら影響はない。
(シ)

以上のとおり,被告は様々な問題点を指摘するが,査読付き論文を
含む学術界や産業界において,測定結果に影響を及ぼさないと評価されている事項であり,一般的基準をはるかに超えた完璧かつ理想的な実験条件を要求するに等しく失当である。
資料2に係る実験の方法は,これらの査読付き論文等に照らせば,学術界や産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施していることが明らかである。また,本件商品がJIS規格の適用外の独自の製品であることその他の理由により,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法であることも明らかである。
(被告の主張の要旨)
(ア)

日射量等の条件の同一性が担保されていないこと
資料2をみるに,測定結果に影響を与え得るために同一にすべき条件
として,例えば,箱への日射量が挙げられ,これを同一にする必要があるが,箱の設置状況を見ると,十分な設置間隔が保たれていないため,それぞれの箱の日射量が異なる可能性がある。また,地面から反射される日射の影響が考慮されていない。これらのことから,条件の同一性が担保されたものと認められるものではなかった。
(イ)

箱内温度に影響を与える要因として遮蔽係数以外の要因による影響
を考慮した形跡がうかがわれないこと
原告らは,資料2に係る実験において,11個の発泡スチロール製実験箱内の温度変化を測定し,遮蔽係数が判明している他社製品を使用する実験箱の温度変化と比較することによって,本件商品の遮蔽係数相当値は推定0.5であると結論付けている。
しかし,箱内の温度は,日射の遮蔽だけで決まるものではなく,様々な要因により決まるものであることから,単純に箱内の温度を測って比較したとしても,それが本件商品自体の日射遮蔽性能に結び付くものではない。
また,資料2に係る実験において複数の箱の温度を測定するに当たって,温度に影響を与え得る要因が複数あるが,これらについてその影響を排除する対応を行ったり,影響の度合いを検証した上で,考慮するなどしたりした形跡が資料2からは一切うかがえない。すなわち,少なくとも下記①ないし⑤に記載した事情が箱内の温度に影響を与え得るが,原告らがこれらの影響を考慮した形跡は見られない。


実験では11個の発泡スチロール箱が用いられていて,規格はいずれも同一のものを使用したとされているが,実際に各箱の性能が同一であるかは明らかになっていない。すなわち,箱内の温度は,箱の断熱性能の影響を受けるので,11個の発泡スチロールの個体差を確認し考慮する必要があるが,この点を考慮した形跡は資料2からは見られない。



ガラス面以外の4面にも日射が当たっており,そこから箱内に侵入する熱量が箱内の温度にどの程度影響しているかを考慮する必要があるが,考慮した形跡は資料2からは見当たらない。



「小口(こぐち)」と呼ばれる試験体であるガラスと箱の接着面からも熱量は逃げるはずだが,具体的にどのような方法で設置されたかが不明である。



箱の内外温度差が箱ごとに異なってしまっている実験状況の下においては,箱内の温度以外の条件が同一であっても,各箱ごとに,熱が流出する量,すなわち熱貫流量(熱貫流率×内外温度差により求められる。)は異なってしまう上,各試験体(ガラス面)の熱貫流率もそれぞれ異なるので,更に流出する熱量は変わってしまうところ,それらの点を考慮した形跡は資料2からは見られない。



各箱と箱との間の距離が短いので,箱によっては他の箱の影響による陰ができ,箱全体が受ける日射量は箱によって異なり,さらには,風の当たり方も箱ごとによって異なる可能性があるが,これらの点について考慮した形跡は資料2からは見られない。
(ウ)

実験の詳細が不明であり実験の客観性が担保されていないこと
実験の詳細が明らかでないこと
資料2の記載によれば,測定日は3日間であるとするが,「5日間平均」の数値も存在することから,測定は5日間にわたって行われたものと考えられる。ところが,資料2では3日間だけのデータを基に結論が導き出されているところ,なぜ3日間だけの平均値を用いることとしたのかという理由を資料2から読み取ることはできない。
また,3日間の平均を採用するに当たっても,「3日間平均1」と「3日間平均2」が存在するところ,「3日間平均2」を選定した理由も不明である。
さらに,実験を行った箱は11個あったにもかかわらず,結果としては6個の箱についてしか検討されていない。


箱内温度と遮蔽係数の関係に関する原告らの主張と矛盾する実験結果について何ら検討や評価を加えていないこと
資料2に記載されている実験の結果に関して,「最高温度(℃)」の欄の下に「5㎜の方が高くなっている」との手書きのコメントがあるところ,このコメントは,原告らの実験の趣旨(箱内の温度変化から遮蔽係数を推定すること)からすれば,ガラスの遮蔽係数の値が高い方が箱内温度が高くなるはずであるのに,遮蔽係数が低い5㎜フロートガラスの方が3㎜フロートガラスよりも箱内温度が高くなってしまった旨の指摘と考えられる。
このように,資料2に係る実験の趣旨が前提とする,箱内温度と遮蔽係数の関係(ガラスの遮蔽係数の値が高い箱ほど箱内温度が高くなること)を科学的に説明することができないことが明らかになっていたにもかかわらず,この点については一切の検討や評価をせずに,本件商品を貼付したガラスを置いた箱内の温度が他の製品を置いた箱内の温度と同じであることから,本件商品を貼付したガラスがその製品と同程度の遮蔽係数であると結論付けており,恣意的な結果の記載がされていることすら疑われる。
(エ)

実験用の箱の試験体部分の遮蔽係数が同一ではないため箱内の温度
の一致をもって試験体部分の遮蔽係数が同程度とはいえないこと
資料2に係る実験においては,最終的には3㎜FLガラスに本件商品を貼付したものと6㎜FLガラスにブロンズフィルムを貼付したものを比較しているが,試験体部分であるガラスの性能は明らかに異なっている。
すなわち,6㎜厚のFLガラスと3㎜厚のFLガラスの熱貫流率のカタログ値(メーカーがJIS規格に準拠してカタログ等において表示している値をいう。以下同じ。)は,前者が5.8W/㎡・K,後者が6.0W/㎡・Kと,明らかに異なるものであるから,どちらの箱も熱平衡状態になっている場合,同じ箱内温度,箱外温度及び箱内外温度差における流出熱量(熱貫流量)は同一ではない。そして,箱内外温度差が一定となったのであれば,「流出熱量(熱貫流量)=流入熱量(日射熱取得量)」となるため,二つの箱の流出熱量が異なる以上,流入熱量も異なることになる。
したがって,仮に試験体以外の箱の性能と外気温が同一であることを前提としても,二つの箱内温度が一致していることをもって,それぞれの日射熱取得量が一致しているということは到底いえないのであって,このように日射熱取得量が各箱によって異なる以上,それから算出される遮蔽係数もおのずと異なるのである。
このように,ガラス自体の熱貫流率が箱によって異なるにもかかわらず,これらを比較の対象として実験を行うという実験方法を採用したこと自体にも問題があるといえる。
(オ)

実験方法は遮蔽係数が結果に反映しないものであり遮蔽係数相当値
を測定する方法として不適切であること
資料2の試験では,「3.結果とまとめ」の欄に記載された数値上,どの箱も箱内が60℃超の高温となり,外気温が約40℃という状態となっている。
これは,むしろ室内側が室外よりも高温になっている状況,例えば室内が20℃で室外が0℃と同じ温度差の状況であるといえ,夏季に冷房をかけていて,室内が室外よりも低温になっている環境よりは,冬季に暖房をかけている環境に近似した状況である。
原告らが行った実験内容では,箱に日射が当たり続けて温度が上昇しきって,箱内へ侵入する熱量と箱外へ流出する熱量が平衡状態になった結果として箱内の温度が決まるものと考えられ,このような箱の温度を測定するということは,入ってくる熱の量がどれだけ遮られたかという遮蔽係数を測定する実験というよりは,箱内の熱がどれだけ外に逃げたかを測定するものであるといえ,これはむしろ,冬に重要となる熱貫流率を測定している状況になってしまっているため,原告らが主張するような遮蔽係数相当値を測定する実験としては不適切であると考えられる。
そもそも,原告らの主張において本件商品が有するとされる性能からすると,本件商品は日射を遮蔽しないものであるところ,そのような本件商品について,遮蔽係数が判明している商品を使用した場合の箱内温度と比較して「遮蔽係数相当値」を算出するという方法自体が,学術界や産業界で一般に認められた方法とはいえない。
(カ)

査読付き論文に関する原告らの主張が失当であること
査読付き論文において,検体や実験箱等について個体差を確認したこ
とが記載されていないからといって,個体差を確認していないとか,考慮していないということにはならない。すなわち,箱の個体差も,査読者から確認を要求された場合には,確認して回答しなければならない事項である。そして,個体差の確認を行ったことが査読付き論文に記載されていなかったとしても,それは単に紙面の都合上その記載が省略されているにすぎないのであって,記載されていないからといって測定の成立,信頼性や測定結果自体に影響がないと認められる項目であるとか,学術界や産業界において結果に大きな影響を与えないとされている事項であるということにはならない。
(キ)

以上により,資料2は,表示された商品等の効果や性能に関する学
術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって作成されたものとはいえず,かつ,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法によって作成されたものともいえない。
したがって,資料2が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料に当たるものとはいえない。

資料3について
(原告らの主張の要旨)
(ア)

資料3の概要
JISA5759は,熱貫流率を実測ではなく机上計算で求める方
法を定め,その際にフィルムの透過率を0とみなしているため,透過率が高い本件商品の熱貫流率を正しく算出できない。そこで,本件商品については,実測で熱貫流率を測定するしかないため,資料3(乙6の3)に係る実験を実施したものである。
資料3は,冬季において,窓ガラスに本件商品を貼付した場合の室内温度を一定に保つための消費電力を測定する趣旨の実験であり,消費電力から計算により熱貫流率を求めることを目的とする。
具体的には,大型の恒温室(冷蔵庫)内に発泡スチロール製のミニモデル(以下「本件ミニモデル」という。)を設置し,本件ミニモデルの1面にアルミサッシ枠(以下「本件アルミサッシ枠」という。)及び板ガラスを設置し,本件ミニモデルの内部温度をヒーターで一定に保つための消費電力を測定した。
資料3においては,測定した12時間の積算消費電力(kW・h)から,熱貫流率(kcal/㎡・h・℃)の実測値を計算で求めることができるが,積算消費電力から計算される熱貫流率の実測値にカタログ値とのかい離が見られた。そこで,本件アルミサッシ枠の影響が3検体でほぼ同程度であると仮定した上で,熱貫流率の実測値とカタログ値とは当然ながら比例関係にあるため,いわゆる検量線と同じような考え方を用いることとし,カタログ値とのかい離及び本件アルミサッシ枠面の割合分を補正する目的で,3mmガラス,3-6-3複層ガラス(厚さ3㎜のガラス,6㎜の空気層,3㎜のガラスにより構成された複層ガラス。以下「本件複層ガラス」という。)のそれぞれのカタログ値を基に比例換算をして,本件商品の熱貫流率を3.6kcal/㎡・h・℃と求めた。そして,資料3によって,本件商品をガラスの室内側に貼付することにより,冬季において室内の熱の外部への伝達を抑制し,断熱効果が得られたこと,本件商品の熱貫流率が3.6kcal/㎡・h・℃であることが実証されている。
(イ)

本件アルミサッシ枠が資料3の結果に影響を及ぼさないこと
資料3に係る実験においては,ガラス面に対して本件アルミサッシ枠からの熱放出の割合が大きいため,その影響を考慮する必要があるが,その測定結果については,3㎜ガラス,本件商品を貼付した3㎜ガラス,本件複層ガラスの三つの検体につき,本件アルミサッシ枠部分の面積が同一であり,実験条件も同一であるから,その影響も三つの検体に同程度に作用したとの前提で換算上省略した。
なお,熱貫流率の実測値はカタログ値に本件アルミサッシ枠からの熱損失を加えたものであるという関係にあるから,本件アルミサッシ枠からの熱損失は熱貫流率の実測値からカタログ値を控除することによって求めることができ,本件アルミサッシ枠からの熱損失を考慮して,本件アルミサッシ枠部分からの熱放出の影響を除いた熱貫流率を計算した結果は3.66kcal/㎡・h・℃となり,資料3において結論付けられた結果である3.6kcal/㎡・h・℃とほぼ同一であることが確認されている。
したがって,本件アルミサッシ枠の影響を排除した計算結果と,資料3の計算結果との間に大きな差異はないことから,実際の測定において,本件アルミサッシ枠は結果に影響を及ぼさなかった事実が認められる。

窓やサッシの熱抵抗は,①屋外空気から窓ガラス,②ガラスやサッシそのもの,③窓ガラスから屋内空気の三つの抵抗の直列計算で求められる。ガラス3㎜の場合とアルミ20㎜で比較すると,熱抵抗
(㎡・K/W)は,次のとおりである。
ガラス3㎜:

①0,11+②0.0039+③0.11=0.2239

アルミ20㎜:

①0,11+0.0000843+0.11
=0.2200843

アルミ20㎜/ガラス3㎜98.3%


1.7%の差

このように,アルミサッシとガラスの熱抵抗は,僅か1.7%の差しかなく,試験体の両側にある温度差は各試験体について全て一定であるから,面積や温度差を掛け合わせてもほぼ同じ結果になることは自明である。
この点,Z2氏の意見書(乙9の2)において,「アルミニウムの熱伝導率がガラスの値の約240倍である」との記載があるが,上記②の部分にそのような差異があるとしても,結果的に余り大きな影響を持たない。

仮に,熱貫流率の算出について,発泡スチロール部分や本件アルミサッシ枠部分の熱貫流率に実際の面積,時間及び試験体の両側にある空気の温度差を掛け合わせて熱流量を計算するなどして熱貫流率を算出した場合,別紙7「本件商品の熱貫流率について」記載のとおり,発泡スチロール部分から熱放出の影響を控除した熱貫流率は3.78kcal/㎡・h・℃,更に本件アルミサッシ枠部分からの熱放出の影響をも控除した熱貫流率は3.48kcal/㎡・h・℃となり,資料3で得られた熱貫流率である3.6kcal/㎡・h・℃と大差がないから,本件アルミサッシ枠は資料3の測定結果に有意な影響を及ぼさなかった事実が認められる。


ミニモデルによる断熱フィルム剤の機能性評価試験報告書(甲6
8)は,資料3と同様の装置を用いて,本件アルミサッシ枠を使用せずに発泡スチロール製箱にガラスを直接装着した測定であり,本件アルミサッシ枠の影響を完全に排除した改善実験である。そして,甲68の測定結果である3.8kcal/㎡・h・℃は,資料3で求められた3.6kcal/㎡・h・℃と十分に同等な数値であることから,資料3の測定では本件アルミサッシ枠の影響は大きな誤差とはならず,シーグフィルムの性能を基本的に正しく測定できていたと評価できる。e
資料3の測定において,3㎜ガラスをサッシ枠(幅12㎜)の室内側に寄せて設置したのか,中心に設置したのか,あるいは外側に寄せて設置したのかは不明である。設置位置によって,本件ミニモデル内部の空気容積が同一(室内側に寄せた場合),「ガラス面積×厚さ4.5㎜」の差異(サッシ枠の中心に設置した場合),「ガラス面積×厚さ9㎜」の差異(外側に寄せた場合)となる。しかしながら,このような本件ミニモデル内部の空気容積の差異が実験結果に影響を及ぼすとはいえない。


資料3の測定値から計算される本件アルミサッシ枠を含めたガラスの熱抵抗率がマイナスの値となることはない。すなわち,本件アルミサッシ枠を含んだガラスの熱伝導抵抗値がマイナスになるか否かの判断をするためには,発泡スチロール,本件アルミサッシ枠及びガラスで構成された装置から,各部材を通過した熱量を基に検討する必要がある。これを正しく計算すると,本件アルミサッシ枠を含んだガラスの熱伝導抵抗値は0.013となり,マイナスの値とはならない(甲84)。

(ウ)

ガラス面以外の5面からの熱の流出を考慮する必要はないこと
本件ミニモデルは厚さ150㎜(15㎝)の発泡スチロール製であ
り,発泡スチロールの断熱材で断熱されているものである。査読付き論文においても,50㎜(甲48)や100㎜(甲47,50,51)の発泡スチロール製の場合に,断熱材で断熱されていることを理由として熱の移動が考慮されていない。特に,Z1氏らの査読付き論文(甲48)においては,「厚さ50㎜の断熱材(押出法ポリスチレンフォーム:熱抵抗Rc=1.7㎡・K/W)に貼り付けているため,資料裏面側への熱損失は無視できるとの記載がある。学術界や産業界においては,発泡スチロールという断熱材で断熱されているにもかかわらず,更に熱の移動について手当てを行い,かつ,その量を検証するなどということは行われていない。
(エ)

熱貫流率の「実測値」が温度差によって異なることは不合理ではな
く,実験が正しく成立している事実を示していること
温度差により熱貫流率の「実測値」に差異が生じたことは,試験体の外表面での自然対流熱伝達量によるものであって当然の結果であり,むしろ実験が正しく成立している事実を示している。
すなわち,資料3では,「外表面温度」は測定されていないので,定量的な考察ができない。しかしながら,内部温度を初期状態から変えずに恒温室の温度を下げれば,ガラス内表面の温度は冬の窓の様に下がり,これに伴って外表面温度も初期状態から低下することは必然であり,その際に初期状態の外表面と恒温室の温度差が変わらず維持されるとは考えられず,その結果,基本的に外表面温度は下がりながらも恒温室室温との温度差が大きくなると考えるのが妥当である。したがって,定量的な考察をすることはできないが,定性的にみて測定結果に矛盾はない。
資料3では,恒温室の温度を下げた場合に外表面温度と恒温室温度の差が大きくなると考えるのが極めて自然であり,その結果として自然対流熱伝達率が大きくなり,熱貫流率の実測値が設定温度差ごとに差異が生じたものと考えるのが妥当である。この傾向は,各測定において極めて明確に表れており,正しい傾向を示している。したがって,設定温度差間の差異は測定誤差ではなく,正しく測定されたものと考えられる。他方,熱貫流率の実測値につき検体間の差異は熱性能の差異を反映したものであり,実験としては正しく成立していると評価できる。
(オ)

熱貫流率の実測値はカタログ値と比例関係にあること
資料3では,熱貫流率の実測値とカタログ値とが比例関係にある前提で検量線のような考え方で補正している。この点につき,本来であればガラスの熱抵抗を算出し,カタログ値が前提とする総合熱貫流率を用いて熱貫流率を算出する必要があるが,資料3ではそこまでの計算は行っていないものの,資料3は実験室実験であるから比例関係がそれほど崩れることはないと考えられる。したがって,その値とカタログ値とが比例関係にあると考えることは可能である。
そして,本件アルミサッシ枠の影響を排除した改善実験(甲68)では,回帰分析により正しく補正を行っているが,この手法はJIS規格などでも採用されている一般的な手法であり正しく,それによって得られた熱貫流率(3.8kcal/㎡・h・℃)と資料3の熱貫流率(3.6kcal/㎡・h・℃)は十分に同等の数値といえることから,資料3で前提とした比例関係はほぼ崩れていなかったことが立証されている。(カ)

以上のとおり,資料3に係る実験の方法は,学術界や産業界におい
て一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施していることが明らかである。また,本件商品がJIS規格の適用外の独自の製品であることその他の点で,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法であることも明らかである。
(被告の主張の要旨)
(ア)

本件ミニモデル全体の6面から熱が流出しており,ガラス面(試験
体)部分のみの熱貫流率は測定できないこと
資料3に係る実験の内容は,恒温槽の中を-5℃,0℃,5℃の3パターンに設定した上で,本件ミニモデル内はヒーターによって20℃に保つというものであり,各パターンにおけるヒーターの消費電力を測定するというものである。
しかし,資料3に係る実験によっては,本件ミニモデル内ヒーターの消費電力からガラス面(試験体)部分のみの熱貫流率を求めることはできない。すなわち,原告らは,ヒーターで本件ミニモデル内を20℃に保つのに消費された積算消費電力から熱貫流率を出そうとしているようであるが,恒温槽内がいずれの温度の場合であっても,本件ミニモデル内の温度の方が外気よりも高いため,本件ミニモデル全体,すなわち6面から恒温槽内へ熱が移動しているところ,原告らが,ガラス面(試験体)以外の部分からの熱の移動について何らかの手当てを行ったり,その量を検証したりした形跡は見られない。
このような手当てや検証を行っていない原告らの実験方法では,箱全体(6面)からの熱貫流率は算定できるかもしれないが,ガラス面(試験体)部分からの熱の移動を明らかにすることはできず,試験体の熱貫流率は算定できない。
(イ)

本件アルミサッシ枠が実験結果に大きな影響を及ぼした可能性があ
ること

資料3は,各ガラス面(試験体)を本件アルミサッシ枠にはめ込んで実験を行っているが,アルミサッシはガラスに比べて熱伝導率が高いため,サッシ枠の占める割合が小さいとはいえない資料3に係る実験においては,熱貫流率の測定結果に本件アルミサッシ枠の影響が大きく出た可能性を否定できない。
現に,資料3に係る実験の結果得られた熱貫流率の「実測値」と称する数値についてみると,熱貫流率のカタログ値が判明している試験体について,3㎜FLガラスは実測値が「10.4」であるのに対して,カタログ値は「5.1」とされており,およそ2倍の差があり,本件複層ガラスでは実測値が「9.65」であるのに対してカタログ値は「2.9」とおよそ3倍以上の差があり,カタログ値と実測値の数値が大きく異なっている。
また,本件アルミサッシ枠の影響という点では,仮に同じ本件アルミサッシ枠を用いたまま試験体であるガラスを入れ替えたとすると,本件複層ガラスは12㎜の厚さがあるため,3㎜FLガラスとは厚さが4倍も異なるガラスを同一のアルミサッシ枠に設置したことになり,設置方法の違いが実験結果へ影響を及ぼした可能性も否定できない。

熱損失とは,通常は,ある物質から失われた熱量をいい,ワット
(W),ジュール(J),カロリー(cal)などの単位で説明されるものである。熱貫流率とは単位が異なるものであるから,熱貫流率と熱損失量を加えたり差し引いたりすることができないのは自明であり,実測の熱貫流率からカタログ値の熱貫流率を引いた値が本件アルミサッシ枠からの熱損失であるという前提には明らかな誤りがある。また,仮に,原告らのいう熱損失が熱貫流率のことであるとして
も,熱貫流率とは内外温度差1℃の場合の1㎡当たり1時間にどれだけ熱を通すかを示す値であるから,実測値の熱貫流率からカタログ値の熱貫流率を単純に差し引いたとしても,アルミの熱貫流率となることはなく,単純に熱貫流率を差し引くという計算は明らかに誤りである。
仮に差し引きをするのであれば,内外温度差1℃の場合の1㎡当たりの熱量である熱貫流率ではなく,熱貫流率に実際のガラスやアルミサッシの面積と試験体の両側にある空気の温度差を掛け合わせて「熱量」に換算して行う必要がある。


「対流熱伝達」とは「対流によって,固体表面とそれに接する流体間で起きる熱移動」であり,「対流熱伝達率」とは「対流によって,固体表面と流体間の温度差が1℃のときに表面積1㎡当たり単位時間に流れる熱量」である。「対流熱伝達率」は,固体表面の風速や風向を同じと仮定すれば,固体の表面温度と表面の形状に左右されるため,同じ表面温度で同じ表面の形状であれば,どのような物質であっても,同じ「対流熱伝達率」となる。しかし,同じ場所に設置された物質であっても「熱伝導率」が違えば,物質の表面温度に差が出ることになる。
資料3に係る実験のように,本件アルミサッシ枠にガラスがはめ込まれた状態で同一平面に置かれている場合には,本件アルミサッシ枠部分とガラス部分とで接する空気の温度が大きく異なったり,空気の流れの速さや風向が大きく異なったりすることは考えにくい。しかし,表面温度と空気温度の差が大きくなれば,対流熱伝達率が同じでも対流による熱伝達量は大きくなる。
本件アルミサッシ枠部分とガラス部分とでは「熱伝導率」が異なることから,表面温度に差が出ることは自明であるため,それ以外の条件が同一であったとしても,「対流熱伝達量」には差が出る。したがって,アルミニウムとガラスの対流熱伝達率がほぼ同じという状況があったとしても,実際の熱伝達は熱伝導率の影響を受ける。

なお,原告らは,平成28年4月15日付け「ミニモデルによる断熱フィルム材の機能性評価試験報告書」と題する資料(甲68)を提出しているが,そもそも,この資料は,消費者庁長官の定めた提出期限の経過後に提出された資料であり,合理的根拠資料とはなり得ないものである。また,この資料は,試験実施者が,専門性を有する公平な第三者機関であるか,どのような立場にある者であるか,どのような知識や経験を有している者であるかなどが一切明らかでないなど,証拠価値も認められないものである。


そもそも,適切に測定が行われた場合に,本件アルミサッシ枠を含めたガラスの熱貫流率が,資料3(16頁)に記載されているような9ないし10kcal/㎡・h・℃といった値になることはあり得ないものである。
なぜならば,原告らが使用する外気側(室外側)熱伝達抵抗0.04,室内側熱伝達抵抗0.11を用いて熱貫流率の実測値10kcal/㎡・h・℃を算出したとすると,本件アルミサッシ枠を含むガラスの熱伝導抵抗はマイナスの値になってしまうが,当然ながら,本件アルミサッシ枠を含むガラスの熱伝導抵抗がマイナスの値となることはあり得ない。学術界や産業界では,このような常識ではあり得ない値が測定されれば,そもそも測定が適切に行われていないと考えるのが通常である。
(ウ)

熱貫流率の算出過程が不明であり記載内容の客観性が担保されてい
ないこと

原告らは,熱貫流率の「実測値」と称する値がカタログ値と大きく異なっているものであったことを受けて「メーカーカタログ値を用い比例換算」という作業を行っているが,その趣旨は不明である。
すなわち,原告らは,具体的な補正方法として,「3㎜ガラスの割合を100,本件複層ガラスの割合を0」として算出しているとのことであるが,なぜ3㎜FLガラスの割合を100とし,本件複層ガラスについて0とするのかという説明が資料3にはなく,このような方法は学術界や産業界で一般的なものではないため,なぜこのような処理をしたのか不明である。


また,原告らが「熱貫流率の実測値」と称する数値は,3㎜ガラスでは,①25℃の設定温度差時には10.40,②20℃の設定温度差時には10.14,③15℃の設定温度差時には9.84とそれぞれ数値が異なっており,本件複層ガラスの「熱貫流率の実測値」と称する数値も同様に,①の場合は9.65,②の場合は9.42,③の場合は9.27と,設定温度差による数値の差が出ているが,補正に用いているカタログ値は温度差によらず一定となっているところ(3㎜ガラスの場合は「5.1」,本件複層ガラスの場合は「2.
9」),「実測値」としての熱貫流率が設定温度によって異なっている事実について,補正に当たり何ら考慮された形跡がない。

そして,原告らは,三つの試験体の熱貫流率の実測値(本件アルミサッシ枠を含む。)について3㎜FLガラスの値を100とし,本件複層ガラスの値を0とした上で本件商品の実測値を比較した三つの数値の比が,カタログ値が判明している3㎜ガラスと本件複層ガラスのカタログ値(本件アルミサッシ枠を含まない。)と本件商品貼付ガラス(本件アルミサッシ枠を含まない。)の熱貫流率の比と同一の比率となると断じているが,実測値がカタログ値と大きくかい離していて当該実験によって算出された「実測値」の値が合理性を有するとは到底いえない中で,このように断定できる根拠が不明であり,最終的に算出されている本件商品の熱貫流率という数値は客観的に求められたものとはいえない。

(エ)

熱貫流率が実験の範囲の温度差によって異なるという結果が不合理
であること

熱貫流率とは,ある物体の内外温度差1℃の場合の1㎡当たり1時間にどれだけ熱を通すかという値であり,そもそも,原告らが資料3に係る実験で設定した温度差15ないし25℃の範囲では一定であり変動しない。
しかし,資料3に係る実測の結果によれば,3㎜ガラスは,①25℃の設定温度差時には10.40,②20℃の設定温度差時には10.14,③15℃の設定温度差時には9.84とそれぞれ数値が異なっており,本件複層ガラスも同様に,①の場合は9.65,②の場合は9.42,③の場合は9.27と,設定温度差によって熱貫流率が変化している。

仮に,このように熱貫流率の実測値が設定温度差によって一定ではないことが誤差の範囲にとどまるものであるというのであれば,それぞれの試験体間での熱貫流率の同程度の数値の差も,誤差といえる程度の差であることになり,試験体間での熱貫流率に有意な差はないということになる。
しかし,3㎜FLガラスと本件複層ガラスは,カタログ値では熱貫流率が「5.1」と「2.9」と大きくかい離(その差は2.2)しているものであり,誤差程度の差しか違いが表れないとは考えられないことから,それぞれの試験体間での熱貫流率の実測値の差についても,誤差とみることはできないこととなる。
そうすると,3㎜FLガラスの設定温度差25℃と15℃の熱貫流率の差(0.56)も同様に,誤差とみることはできない。
したがって,資料3の熱貫流率の実測値が温度差によって一定でないことは,誤差ということでは説明がつかないものである。


以上のように,実験によって計測された熱貫流率が設定温度差に
よって異なるということからしても,実験方法が不適切であったことが疑われる。

(オ)

以上のとおり,資料3は,表示された商品等の効果や性能に関する
学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって作成されたものとはいえず,かつ,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法によって作成されたものともいえない。

資料4について
(原告らの主張の要旨)
(ア)

資料4の概要
資料4(乙6の4)に係る実験は,人工太陽を受熱箱の一面に設置し
たガラスに照射し,受熱箱内の取得熱量を測定する実験である(以下,この実験に使用した装置を単に「装置」又は「地下ラボ装置」という。)。具体的には,外部と断熱した発泡スチロール製の受熱箱内の温度を外気温とほぼ同様になるように調節した上で,受熱箱の出口及び入口の温度,湿度及び風速を測定し,熱量を計算で求めた。
本件商品の貼付の有無により,受熱箱内の取得熱量の変化を直接測定する実験であり,本件商品の貼付による取得熱量削減効果を検証する目的である。
そして,資料4によって,夏季において本件商品が窓ガラスから入る熱を46.0%削減すること,したがって冷房効率が46.0%向上することが実証されている。
(イ)

資料4が株式会社山武の監修及び指示の下で実施されたものである
こと

資料4は,平成20年12月頃に株式会社山武(現在のアズビル株式会社。以下「山武」という。)に提出した実験データの一部(中間報告書)である。計測に関する我が国最大の専門企業である山武は,装置の製作を自ら行ったほか,実験にも立ち会っていたため,測定時間などの記載がない簡略版となっている。その後,平成21年8月頃,山武に対して株式会社ナビエス(以下「ナビエス」という。)を通じて正式の報告書である「日射熱量測定報告書」(甲26。以下「本件報告書」という。)を提出している。
原告らの販売代理店であり資料4の地下ラボ装置の製作に関与したナビエスと山武との間で,本件商品の取引に関する覚書が締結されており,協力関係が裏付けられる。
また,山武が作成した販促資料の断熱フィルムは,透明フィルムとの説明がなされ,かつ低放射率(0.05)の説明があることや夏冬のメカニズムの説明から明白なとおり,本件商品にほかならない。したがって,資料4についても山武の監修及び指示の下で実施されたことが裏付けられる。

地下ラボ装置に関する本件報告書(甲26)は,6㎜ガラスを対象とする点で3㎜ガラスに関する資料4とは異なるが,3㎜であろうと6㎜であろうとガラスの厚みの影響はほとんどなく,ガラスの厚みが異なるからといって実験目的が異なるとはいえない。
また,本件報告書においては,試験対象は本件商品だけではなく,本件商品以外の他社製フィルム商品も同時に試験対象となっているが,単に試験対象が広げられたにすぎず,資料4も本件報告書も本件商品が試験対象となっている点で何ら変わりがないのであるから,本件商品の性能測定という点で資料4の延長線上にあることは明らかである。

(ウ)

装置の入口と出口の風速の差異は風速計の設置方法の問題であり,
装置に不備(空気漏れ)はないこと

風速の差異は空気漏れではなく風速計の取付け方が原因であること資料4に関して,装置の入口風速と出口風速に2倍の差が生じているが,風速の差異が2倍と大きいことは,空気漏れではなく,風速計の取付け方法の問題であったことを意味している。そもそも,空気漏れによって風速が2倍も異なったのであれば,相当大量の空気の出入りがあったことになるが,装置は全体がアルミテープで覆われ気密性が保たれており,大量の空気の漏れがあるとは到底想定されない。資料4で設置されている熱線風速計はセンサー部分がかご状であり,取付けの向きが変わると風の抜け方が変わるため,風速が2倍程度異なる結果となる可能性がある。
実際に,資料4の測定に際して,山武の技術者が風速計の取付け方が原因であったことを突き止め,資料4の測定後に装置の風速計の取付け方を修正した。その結果,本件報告書では,入口側と出口側の風速測定結果はおおむね一致している。

資料4の測定時に漏れ試験を実施していること
資料4の測定時に漏れ試験が実施されているが,漏れ試験についてはその都度記録が残されるとは限らないし,製作した実験箱の個体差の確認と同様に,必ず記録が提出されたり論文に記載されるべき事項とはいえない。
そして,地下ラボ装置については全体がアルミテープで覆われ気密性が保たれている上に,資料4は山武が監修した測定であり,装置の設定やデータの取扱いなどについて極めて厳格に管理されていた。計測に関する我が国最大の専門企業である山武がそのような厳格な管理を行うことは自然かつ当然である。漏れ試験について山武が見逃すとは到底推測されない。山武自身が本件装置の製作に関与していること,全てのデータを都度山武が回収していたことなどからは,山武が漏れ試験の記録を保有している可能性もあり得る。
反対に,資料4について漏れ試験が実施されていなかった可能性をうかがわせる事情は一切認められない。
したがって,資料4の測定時に漏れ試験が実施されたことは明白である。

(エ)

入口風速と出口風速の差異は資料4の測定結果に影響を与えないこ
とa
風速計が正しい向きに設置されていなかったとしても装置の状態に変更がなければ比較が成り立つこと
検体を交換する際,検体部分以外について試験装置の調整等は一切行っておらず,同一の状態のままで交換したのであれば,風速計の取り付け方は同一の状態である。また,風速の測定位置は,管内の代表1点で済ませているが,その位置は常に同じである。
前記のとおり空気漏れがない以上,装置内で空気が循環しているので風量は変わらず,管内の空気の乱れ方も変わらない状態で,ガラスだけを交換したということになる。
したがって,管の中での風速分布は,基本的に変わらない二者の比較である。

風速計の取付け方の問題は相対的な割合計算には影響しないこと
仮に入口側と出口側それぞれの風速計の取付け方が異なり,入口と出口の風速測定値が異なっていたとしても,各測定ケースの取得熱量計算には,一貫して出口側の風速測定値を利用している。したがって,風速計の取付け方の差異は,各測定ケースの取得熱量の相対的な比較結果には影響を及ぼさない。


風速計の校正の有無は相対的な割合計算には影響しないこと
取得熱量の削減「割合」の計算は,相対比較であるから,風速計の取付位置自体の問題や校正の有無の影響はない。したがって,風速計の校正が行われていないことは,資料4の結果に何ら影響を及ぼさない。

(オ)

実験方法は何ら問題がなく適切であること
単位時間の記載が省略されていることは実験方法の正しさとは無関係であること
資料4に単位時間の記載がないのは単なる形式的な記載不備にすぎず,実験方法の正しさとは全く関係がない。単位時間は1時間当たり(/h)である。
この点,消費者庁長官が資料4を検討した際に,既に単位時間の記載がないことに気付いていたのであれば,原告に対して確認をすれば済む事項である。しかしながら,そのような確認がなされなかったことは,消費者庁長官の検討時点で専門家が「/h」であると容易に推測できて問題視されていなかったことを裏付けている。

ブランク測定の2回の測定結果に関する被告の指摘は試験結果に影響を与える問題ではないこと
被告は,ブランク測定の2回の測定結果について,外気と試験体温度の差が異なっているにもかかわらず,取得熱量の数値がほとんど異なっていない点について疑問を示しているが,算出根拠の異なる数値を持ち出して比較する点で不適切な指摘である上,そもそも試験結果に影響を与える問題ではない。
取得熱量は入口と出口の空気温度の差と風量の測定値から算出したものであり,外気と試験体内の空気温度の差と試験体の熱貫流率から算出した熱貫流量とは算出根拠が異なる。そもそも両者の熱量については,温度と風量に測定誤差があり,使用材料の熱伝導率も文献値と厳密には一致しないからこそ,ブランク測定を行っているのであって,これらの算出根拠の異なる数値を持ち出して比較して論ずることは不適切である。
いずれにしても試験結果に影響を与える問題とはいえない。


外気と試験体温度の差の逆転について手当てがされていないことは試験結果に大きな影響を与える問題ではないこと
資料4に係る実験において,ブランク試験と本試験時とで外気と試験体温度の差が逆転している点につき,資料4の装置では補正がされていないが,試験体以外の5面は100㎜厚の発泡スチロールで十分に断熱されているので,貫流熱は微々たるものである。この点は,Z1氏らの査読付き論文(甲48)において「厚さ50㎜の断熱材(押出法ポリスチレンフォーム:熱抵抗Rc=1.7㎡・K/W)に貼り付けているため,試料裏面側への熱損失は無視でき」と説明され,厚さ50㎜の発泡スチロール(ポリスチレンフォーム)を通過する熱損失は無視できるとされていることからも明らかである。
したがって,結果として取得熱量の削減割合に大きな影響を与えるものではない。

遮蔽係数に関する被告の指摘事項は単なる誤記にすぎないこと
資料4の3頁の中段の表は以下に示すとおりであり,その表の中
で,3㎜FLガラスの「実測値

補正後の取得熱量(kcal/㎡)」の

値に誤記がある。
3㎜FLガラスの測定は2回にわたり行われており(資料4の2
頁,測定1-1及び測定1-2),外気風速が異なり,1回目(測定1-1)が1.5~2.0m/s,2回目(測定1-2)が2.5~3.0m/sである。これに対して,6㎜FLガラスの測定は1回だけであり(資料4の3頁,測定2-1),外気風速は1.5~2.0m/sである。
したがって,3㎜FLガラスと6㎜FLガラスの「実測値

補正後

の取得熱量(kcal/㎡)」を比較する場合,外気風速が同じである「測定1-1」と「測定2-1」を比較する必要がある。
ところが,資料4の記載では,3㎜FLガラスの2回の測定結果につき,「測定1-1」の補正後の取得熱量128.0と「測定1-2」の補正後の取得熱量141.6の平均値である134.8を上掲の表に記載した誤記があり,正しくは「測定1-1」の補正後の取得熱量128.0とする必要がある。その場合,3㎜FLガラスを1.0としたときの比率(実測値)は,0.88ではなく0.93となる。
すなわち,カタログ値を意味する「遮蔽係数(SC値)」が「0.96」であるのに対し,実測値は「0.93」ということになり,ほとんどかい離はない。

ブランク測定について
資料4のブランク測定の趣旨は,暗騒音の測定と同様の趣旨で0点を決めるために行っているものであるから,資料4において行われたブランク測定において得られた熱が貫流熱(熱貫流量)であるとして,ブランク測定で得られた結果を用いた補正は熱貫流量を前提にした補正でなければならないものではない。
仮に,ブランク測定で得られた熱が貫流熱であるとした上で,被告が主張するとおりに計算したブランク測定値による補正を行った場合,3㎜ガラスに本件商品を貼付した場合の取得熱量の削減割合は17.9%となる(甲84)。
このように,いずれにしても資料4から本件商品の性能が実証されるのであるから,ブランク測定の補正方法が被告側の専門家の主張どおりではないからといって,資料4が測定として成立せず合理的根拠たり得ないということにはなり得ない(ただし,上述のとおり,資料4のブランク補正の結果から結論付けられる削減割合は,46.0%である)。


資料4の装置ではキセノンランプ自体の放射熱の影響が排除されていること
資料4の装置において,キセノンランプ自体の放射熱の影響を排除するため,冷却用のファンが設置されているから,同ランプ自体が熱を持つことによる同ランプ自体の放射熱の影響を考慮する必要はない。
(カ)

以上のとおり,資料4の装置に空気漏れはなく,測定は正しく成立
しており,資料4に係る実験の方法は,学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施していることが明らかであり,かつ,例えば本件商品がJIS規格の適用外の独自の製品であることその他の理由によって,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法であることも明らかである。
(被告らの主張の要旨)
(ア)

装置に不備があった可能性があること
資料4の記載をみると,日射受熱箱の入口と出口で風速が大きく異
なっている。例えば,「測定1-1:3㎜FLガラス」では,3㎜FLガラス単体では入口風速が0.4に対して出口風速が1.0となっており,本件商品を貼付した場合は入口風速が0.5で出口風速が1.0となっている。このように,記載されている全ての場合において入口風速は出口風速の半分程度である。
このように風速が異なっている理由としては,試験装置に何らかの不備があったこと,例えば,試験装置から空気が漏れているか又は侵入している可能性を指摘できる。
そして,資料4に係る実験の方法に照らすと,仮に装置のどこかで空気が漏れたり入ってきたりしているということがあれば,ガラス越しにランプから得た空気の取得熱量を正確に測ることはできないと考えられる。
なお,パイプ内の風速計のセンサーの位置がずれている場合に測定される風速が異なるという事態は,実際に起こり得ることではあるものの,センサーの位置がずれていることに起因して風速が異なる場合には,正確に風量を測定できるように何らかの校正を行うことが学術界や産業界では一般的であるが,資料4にはそのような校正を行った旨の記載はない。
(イ)

実験の詳細が不明であり実験方法が不適切であった可能性があることa
資料4をみる限りは,その実験の具体的な方法がどのようなものであったかについての詳細を把握することが困難である。そもそも,資料4には単位時間の記載がなく,測定の詳細が不明である。


原告らは,ブランク測定と称して2回の測定を行っているが,ブランク測定の2回の実験における外気温度と試験体温度の差は,1回目がその差6.4℃,2回目がその差7.5℃と,2回の測定で1.1℃異なっている。これに対し,取得熱量をみると,数値はほとんど異なっていない。
この点につき,外気温度と試験体温度の差が6.4℃(27.3℃-20.9℃)であった1回目のブランク測定で,取得熱量が18.9であったと記載があるため,1℃当たりの取得熱量は2.95kcalとなる。
1回目のときよりも外気温度と試験体温度の差が1.1℃大きく,7.5℃(28.2℃-20.7℃)の温度差がある2回目の測定では,本来であれば,2.95×7.5=22.14kcalとなるはずであるが,試験結果によれば19.1kcalにとどまっているのであって,なぜこのような結果が得られているのかが不明である。
ところで,資料4において行われたブランク測定は,ランプからの熱取得を遮断した状態での測定であるから,ここで得られているのは貫流熱(熱貫流量)であると考えられる一方,実測時の取得熱量には,貫流熱(熱貫流量)とランプから試験体が取得した熱量の両方が含まれるものと考えられる。原告らも上記の前提に立った上で,実測時の取得熱量と称する値からブランク時に取得された熱量と称する値を引いているものと解される。このようなブランク測定の趣旨からすれば,ブランク測定で取得された熱量の値が不正確であれば,実験方法そのものが不適切であった可能性があり,これが試験結果に影響を与えることは当然であって,結果の妥当性を検証できず,合理的根拠資料とはいえない。

原告らは,このブランク測定で得られた結果を用いて実測の結果を補正しているようであるが,その前提として2回のブランク測定の結果を単純平均した数値をブランクの値として用いている。
しかし,ブランク測定で得られたのが試験体(日射受熱箱を指すものと考えられる。)の熱貫流量であるとするならば,熱貫流量は内外温度差に比例するものであるため,単位温度差(1℃差)当たりの熱貫流量を算出した上で,実測時の試験体温度と外気温度の差に乗じるという形で補正に用いるべきであり,単純に2回の平均値(すなわち,実測時の試験体温度と外気温度の差の影響とは無関係の固定された値)をもってブランク測定の値とすることは誤りである。
また,ブランク測定と実測では試験体の温度と外気温度の差が大きく異なるなど,実験条件が異なるにもかかわらず,ブランク測定の値(平均値)を用いて異なる条件の下での実測の値を補正することの妥当性についても疑問があるところ,資料には何ら説明がない。


さらに,ブランク測定時と本試験時では,外気温度と試験体温度の差が逆転している場合があり(例えば,資料4の3頁「測定3

ブラ

ンク測定」の外気温度27.3℃のときに試験体温度は20.9℃であるが,資料4の2頁「測定1-1:3㎜FLガラス」の3㎜FLガラスに本件商品を貼付している場合は,外気温度26.5℃のときに試験体温度が28.8℃となっている。),熱が高い方から低い方に移動することに照らせば,本試験時では,ブランク測定時とは熱の流れが逆になると考えられるところ,外気温度と試験体温度の差が逆転していることについて何ら手当てや考察が行われた形跡がみられない。
この点につき,原告らは,試験体以外の5面は100㎜厚の発泡スチロールで十分に断熱されているので,貫流熱は微々たるものである旨主張するが,仮に貫流熱が微々たるものであれば,「日射受熱箱の開口部に,アルミ箔で覆った厚さ100mmの発泡スチロールを装着させ,日射及び外気からの熱を遮断して測定」したブランク測定で得られたとされる熱量については,本来はどこからも熱を取得しないはずであるから,測定装置自体の誤差であることになるが,実測で取得された熱量(測定2-1の6mmFLガラスの①で49kcal)の3分の1程度の熱量(ブランク測定の1回目で18.9kcal)が取得されていることをもって「微々たるものである」とする根拠が不明であり,割合の大きさからすれば無視できない誤差であると考えられる。
加えて,原告らは,開口部(ガラス設置部)以外の5面について言及するのみで,開口部(ガラス設置部)の面から流入する貫流熱の影響については何ら説明しておらず,開口部(ガラス設置部)の面から流入する貫流熱が試験結果に及ぼす影響について考慮された形跡がみられない。

原告らは,「3㎜FLガラスと6㎜FLガラスの日射遮蔽係数(カタログ値)と実測値との差を確認するため6㎜FLガラスの測定を行った。」として,その結果も資料4に併せて記載しているところ,「遮蔽係数(SC値)」は,3㎜FLガラスが「1.0」,6㎜FLガラスが「0.96」であるのに対し,「3㎜FLガラスを1.0としたときの比率(実測値)」は,6㎜FLガラスが「0.88」とされており,カタログ値と明らかに異なっているが,この点も何ら考慮された形跡はない。
(ウ)

原告らと山武との協力関係の存否は不明であること
原告らと山武の共同関係を直接裏付ける業務提携や下請契約等に係る契約書等の証拠は提出されていないため,原告らと山武との協力関係の存否は不明である。


原告らは,資料の記載が不十分であると考えられる点について,資料4に係る実験に山武の従業員が関与していたことから,中間報告書である資料4では記載を省略した部分があるとしているが,資料4自体の記載内容に照らして,資料4が合理的根拠資料に当たるといえるか否かが問題なのであって,資料4が中間報告書であったか否かなどという事実は,資料4が合理的根拠資料に当たるか否かという点を判断するに当たって,何ら結論を左右しない。そして,測定時間の単位の記載などは,当該実験に山武の従業員が参加しているか否かにかかわらず,当然記載されるべき基礎的な事項である。


資料4それ自体に,中間報告書である旨の記載は一切ない上,正式報告書として原告らが訴訟提起後に新たに提出した本件報告書(甲26)については,「6㎜ガラスに各種フィルムを貼付させたときの取得熱量を測定し」たとするもので,「3㎜FLガラス単体と3㎜FLガラスにシーグFを貼付させたときの日射取得熱量の測定」を目的とした資料4とは,そもそもの実験目的が異なる上,試験対象商品等も資料4とは全く異なる商品が使用されていることからすれば,甲第26号証は資料4とは別個独立の資料であって,資料4の延長線上にある最終報告書という性質のものとは到底認められない。
(エ)

以上に述べたとおり,資料4は,表示された商品等の効果や性能に
関する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって作成されたものとはいえず,かつ,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法によって作成されたものともいえない。

資料5について
(原告らの主張の要旨)
資料2により本件商品の遮蔽係数相当値が0.5であることが実証されているから,資料5(乙6の5)において,本件商品の日射取得削減率が0.44と計算された。そのため,資料5により,夏季において本件商品を窓ガラスに貼付することによる取得熱量の削減割合が44%であることが実証されている。
また,資料3によって,本件商品を貼付したガラスの熱貫流率が3.6kcal/㎡・h・℃(4.2W/㎡・K)であることが実証されているから,資料5において,本件商品の熱損失抑制率が0.3と計算された。そのため,資料5により,冬季において本件商品を窓ガラスに貼付することによる熱損失の抑制割合が約30%であることが実証されている。(被告の主張の要旨)
資料5には本件商品の遮蔽係数(相当値)等が記載されているが,これらの記載は,原告らが資料2及び同3で算出されたと称する遮蔽係数と熱貫流率に基づいて算出された値である。そして,資料2及び同3がいずれも原告らが主張する遮蔽係数と熱貫流率の合理的な根拠とはなり得ないことは,前記イ及びウにおける被告の主張のとおりである。
そのため,これらの数値を用いた資料5についても,合理的な根拠のない資料であることは明らかである。
また,本件商品の遮蔽係数相当値が0.5であるというのであれば,日射取得削減率は0.5のはずであり,この点においても,本件商品の「日射取得削減率が0.44」という数字は根拠不明の数字であるといえる。したがって,資料5は,客観的に実証された内容のものとはいえない。カ
資料6について
(原告らの主張の要旨)
(ア)

資料6の窓フィルムは本件商品であること
資料6(乙6の6)は,西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日
本」という。)が実施した実験であり,平成9年度の全国「車両と機械」研究発表論文運輸省鉄道局長賞を受賞した論文である。
資料6では,日射量抑制策と伝熱抑制策として窓フィルムが貼付され,フィルム施工前の日射熱負荷が2660kcal/hであったのが,フィルム施工後は1500kcal/hの削減が達成されたことが述べられている。この結果から,約56.4%の日射熱負荷削減効果が得られたことになる。
JR西日本が採用した窓フィルムが本件商品であることは,開発者である株式会社セクト化学(以下「セクト化学」という。)のZ3(以下「Z3氏」という。)が平成16年に財団法人かごしま産業支援センターにおいて行ったセミナーの案内文において,新幹線のぞみ号の窓ガラスに採用された断熱フィルムである旨が記載されていることや,資料6の最終頁「表-8」において,「日射量抑制策」と「伝熱抑制策」の両方の具体策として「窓フィルム貼付」と記載されているところ,通常の遮蔽フィルムは日射を遮蔽する「日射量抑制策」でしかなく,「伝熱抑制策」には該当しないことからも裏付けられる。そして,原告らは,これまで長期にわたり,JR西日本のN300系のぞみ号での採用実績をうたって販売活動を行ってきたが,その間にJR西日本から採用の事実を否定するような抗議が寄せられたことは一度もない。
(イ)

資料6に記載された情報から必要な実験内容を確認できること
資料6に係る実験では,現車走行試験が実施されており,窓フィルム
を貼付することで1500kcal/hの熱負荷低減が実証されたことが報告されている。
同様の現車走行試験によるフィルム性能の検証は,産業界においても必要に応じて実施されており,現に住友理工株式会社が行った西武鉄道の営業運転中車両の実測結果がある(甲54)。車両は居室が移動するだけで,基本的には室内環境と大差はないが,西武鉄道は在来線であり停車のたびに人の乗降があるのに対し,新幹線のぞみ号の場合はほとんど停車がなく,密閉空間という点では室内環境により近似している。現車走行試験の場合は,各車両は一軒家とみなすことができるので,隣室との熱の移動等はなく,外気との接触のみである。そして,各車両とも停車時間は同一であるし,新幹線のぞみ号は全席指定であるから,基本的に車両間の人数にさほどの差異はなく,外界条件や内部発熱の差異はさほど大きくないと推測できるので,測定機器を比較対象の車両間で同様の位置に設定して測定することが基本となる。
そのため,資料6の試験方法の妥当性を検証するためには,現車による比較検証実験である事実で十分であり,それ以外に検証しなければ試験方法の妥当性を確認できないような特段の条件はない。
(ウ)

以上により,資料6によって,本件商品が夏季において遮熱性能を
有すること,本件商品を窓ガラスに貼付することにより約56.4%の日射熱負荷削減効果が得られたことが実証されている。
(被告の主張の要旨)
(ア)

資料6に記載された「窓フィルム」が本件商品であると認めるに足
りる根拠がないこと
資料6に係る論文には,車体側の「日射量抑制策
という記載,「伝熱抑制策

窓フィルム貼付」

窓フィルム貼付」という記載及び「車体側

については日射量抑制策と伝熱抑制策としてフィルム貼付を検討した。」という記載があるが,当該フィルムが本件商品である旨の記載は一切ない。
この点につき,原告らは,Z3氏が行ったセミナーの案内文に新幹線のぞみ号の窓ガラスに採用された断熱フィルムの記載があることを裏付けとしているが,セミナー案内文に記載があるという事実のみから,資料6の論文に引用されている窓フィルムが本件商品であるとはいえず,また,そもそも資料6の論文に引用されている窓フィルムをJR西日本が採用したとも限らないことから,上記案内文の記載は資料6に記載されている窓フィルムが本件商品であることの裏付けにはならない。したがって,そもそも資料6に記載された「窓フィルム」あるいは「フィルム」と本件商品の同一性が不明である。
(イ)

資料6には数値の根拠となる具体的な実験内容の記載がないこと
資料6に係る論文には,窓フィルムによる効果について特段実験を
行った旨の記載はなく,日射量抑制策及び伝熱抑制策として窓にフィルムを貼付することで1500kcal/hの熱負荷抑制ができた旨の結果の記載があるのみである。
このため,具体的にどのような方法で窓フィルムに対する実験が行われたのかが一切不明であり,試験方法の妥当性を検証することはできない。
このような資料をもって,日射熱負荷削減効果を裏付ける合理的根拠とは到底なし得ない。
したがって,上記の論文で引用されているフィルムが,仮に本件商品であったとしても,資料6をもって本件商品の日射熱負荷削減効果の合理的根拠資料とみることはできない。
(ウ)

以上により,資料6は,表示された商品等の効果や性能に関する学
術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって作成されたものとはいえず,かつ,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法によって作成されたものともいえない。

資料7及び同10について
(原告らの主張の要旨)
(ア)

資料7及び同10の概要
資料7及び同10(乙6の7の1ないし6,同6の10の1ないし2
0)は,いずれも,実際の建物において,本件商品を貼付した部屋と貼付しない部屋(あるいは同一の室内における貼付したガラスと貼付しないガラス)について,①室内の数か所の温度測定,②室内の数か所の温度を測定した結果からの熱量の削減割合の算出,③空気調節機器(以下「空調機」といい,空気調節を「空調」という。)の処理熱量の測定(資料4と同様の測定),④空調機の消費電力の測定(資料3と同様の測定),⑤空調機の稼働回数・稼働時間の測定を行った結果である。なお,資料7-4,同7-5,同10-4ないし同10-6,同10-11,同10-14,同10-16及び同10-19は,日本を代表する制御機器及び計測機器の製造業者である山武が行った実測実験であるから,産業界において一般的に認められた方法であるといえる上,同社のESCO事業における実測実験であるから,仮に一部の条件の精度につき条件の同一性の点で問題があったとしても,それは「結果に影響を及ぼさない」範囲の条件精度であったと認められる。
また,資料10-2は,三菱地所株式会社(以下「三菱地所」という。)が自ら実施した実測実験であり,三菱地所の監修及び指示に基づいて三菱商事株式会社とセクト化学の名義で作成された報告書であるところ,三菱地所の精鋭の技術者を含む設備設計のチームが,三菱地所が自ら実施した実測実験において効果が確認されたため,三菱地所が本件商品の採用を社内決定し,その後丸の内,大手町,有楽町一帯におけるオフィスビル等での採用が広がった。
そして,資料7及び同10によって,(a)夏季において本件商品を窓ガラスに貼付することにより,遮熱効果を有すること,日射の取得熱量を20.1%ないし63.3%削減することができること,(b)冬季において本件商品を窓ガラスに貼付することにより,断熱効果を有すること,窓ガラスを通じて室内から室外に逃げる熱量(損失熱量)を23.9%ないし53.5%削減することができることが実証されている。(イ)

学術界や産業界における実測試験の有用性について
窓用フィルムは,時々刻々と変化する環境条件に応じて,その性能値
がカメレオンのように変動する特殊な製品である。このような窓用フィルムについて,消費者に向けて実際の性能値を可能な限り表示するためには,「結果を左右する様々な影響要因」を反映した性能を検証することが重要であり,現場での実測を数多く重ね,傾向を検証することが極めて有用である。
他方で,「結果を左右する様々な影響要因」を考慮するとしても,それらは時々刻々と多様に変化するものであり,諸条件を統一することは不可能であるため,各企業などは,実際の性能を評価するために実空間での測定を行っており,実務上は,性能値についてそれほどの精度は問われていない。すなわち,実測においては厳格な実験精度が要求できず,その結果として得られる測定結果も5%ないし10%刻みの数値となるところ,消費者向けの商品ということを考えれば,その程度の測定結果の精度で十分である。そして,窓用フィルムの場合には,時々刻々変化する性能値であるため,その意味で「状態値」として幅を持った表示しかできず,そのような幅を持った表示が性能値の表示として適正であるといえる。
したがって,窓用フィルム製品の性能について,多数の現場での実測結果を総合して幅を持たせた表示を行うことは,実際の性能を良く反映しているといえるから,多数の実測による実証が重要かつ必要というべきである。
(ウ)

資料7及び同10(実測実験)に共通する実験方法に問題がないこ
とa
実測において諸条件を統一しきれない状況の下での測定は学術界や産業界において一般的であること
(a)

別の日程での測定が有効とされていること
被告は,別の日程で行っている比較測定については,全く同じ気

象条件であることはあり得ず,それぞれの日で条件が異なっている点が結果に影響を及ぼすことも十分あり得るなどと主張するが,別の日程での測定を比較の対象とすることは,学術界や産業界においても実施されており,同じような気象条件であれば,測定は有効とされている。
そもそも実務上は性能値についてそれほどの精度は問われていな
いのであって,査読付き論文(甲46,52)からも明らかなとおり,学術界や産業界においては,異なる日程や同一日における異なる気象条件での現場測定で,諸条件の差異の程度が不明であって
も,測定目的との関係で結果に大きな影響を及ぼさないとみなされている。
(b)

隣り合う2室での測定が有効とされていること
被告は,同一条件の隣り合う2室を比較の対象とした測定につい
て,周囲の部屋の状況及び熱の移動について記録がなく,考察もされていないなどと主張するが,同一条件の隣り合う2室や上下の2室を比較の対象とすることは,学術界や産業界においても実施されており(甲53,54),測定は有効とされている。また,査読付き論文(甲46)ですら「外界条件が異なり,内部発熱も全く同じではない」としながら,その差異の程度や影響を考慮していないのであって,このような現場での比較測定では,諸条件を統一しきれない前提の下で測定が成立している。すなわち,実務上は性能値についてそれほどの精度は問われていないのであって,測定目的との関係で結果に影響を及ぼさない範囲であれば,周囲の部屋の状況について記録がされず,特に考察がされないことも有効とされているのである。
(c)

同一面に存在する二つの窓面での温度の比較が有効であること
被告は,資料10-11において,隣室ではなく,同一面に存在

する二つの窓面で温度の比較を行っているものについて,比較対象の各窓面の間で熱伝導があるため正確な測定を行い得ないなどと主張するが,同資料においては,比較対象の各窓面の間の熱伝導は無視できるものである。すなわち,比較の対象とする各ボックスの窓面のガラスは横幅2mであるが,ガラスの運搬上や製造プロセス上の理由で横に巨大なガラスの製造はできないため,ボックス間のガラスはつながっておらず,緩衝材のシール剤が挟まれていると推測されるから,熱伝導をそれほど考慮する必要はない。また,緩衝材が使用されていると否とにかかわらず,測定地点は2mの間隔があるため,いずれにしても比較対象の各窓面の間の熱移動は無視できる。

比較対象の間で統一しきれない諸条件は測定結果に有意な影響を及ぼさないこと
被告は,各実験での比較対象の間の測定結果の差が何に起因するかの考察がされていないなどと主張するが,実測においては実空間であるため比較対象の間の環境条件の差異を前提とせざるを得ず,諸条件を統一しきれない状況の下での測定とならざるを得ない。実務上は,性能値についてそれほどの精度は問われていないのであり,測定目的との関係で結果に影響を及ぼさない範囲について考察がされないとしても,何ら問題はない。


測定機器の精度について問題視すべき事情は存在しないこと
被告は,実験に使用した測定機器がどのようなものであるか,機器に問題がないかという検証が行われた形跡がなく,測定結果の正確性が担保されていないなどと主張するが,測定結果の正確性が最も厳しく審査されている査読付き論文においてすら,測定機器の型式等の記載がないもの(甲47,51),あるいは測定機器に問題がないかという検証の有無について記載がないもの(甲47,49ないし51)が数多く散見される。そもそも,測定機器の型式等による差異や機器の校正の有無等が真に測定結果に影響を及ぼすのは,ミリ単位の数値の差異が結論を左右するような場合であり,少なくとも室内の温熱環境等に関わる測定に関して,そこまで精緻に測定機器の検証を確認しなければ測定結果を信頼できないというものではない。

(エ)

資料10(実測実験)について
窓面から特定の距離の地点での温度の測定に問題はないこと
被告は,いかに窓面に近いとしても,室内では対流の影響等もあ
り,空気が固定されているものではないから,窓から特定の距離で点をとり,その地点の温度差を日射の影響による温度差として比較することは意味がないなどと主張するが,実測においては,人が在室する状況での測定を除き,内部発熱を排除するために照明その他の電源を全て切り,待機電力を止めるために全てのコンセントを抜き,ドアの状況によっては目張りをするほか,測定機器をセットした後はドアの鍵を閉め,測定中は室内に誰も立ち入れない状況にされている。その結果,内部発熱がほとんどない状態で,かつ,比較対象の各室の室内は同じような空気の乱れ方になるとみなして測定している。そもそも空気が固定されているものではないことを理由として温度測定ができないとすれば,全ての室温測定は不可能ということになる。室温の温度変化の測定は,日射の影響による温度差として比較可能であり,現に産業界でも行われている方法である(甲55)。
したがって,可能な限り空気を静謐な状況に保った上での測定であり,それを意味がないという被告の指摘は室温測定そのものを不可能とするに等しく,根拠のない主張である。

温度勾配の測定により冷暖房負荷の削減割合を求められること
被告は,「温度勾配」の測定について,測定方法が不適切であり,温度のみから取得熱エネルギーの量を測定することはできず,温度と距離を掛け合わせた図形の面積比の比較から取得熱量の差を求めることはできないなどと主張するが,「温度勾配」の測定方法は,少なくとも産業界においては一般的に通用する測定方法である。室内で,空調機の設定温度が同じで,かつ,吹き付けるような風向がない状態で測定していた場合,室内空気がおおむね同じ乱流で拡散が起きているとみなすことが可能である。比較対象の2室において乱流状態が同じ(拡散が同じように起こっている状態)であれば,同じように拡散するので,温度勾配の高い方が窓から室内に流れる熱の量は大きいことになる。したがって,温度勾配の図形の面積比から取得熱量の削減割合を求めることは可能である。そして,実測においては,ドアの状況によっては目張りをするほか,測定機器をセットした後はドアの鍵を閉め,測定中は室内に誰も立ち入れない状況にされており,その結果,比較対象の各室の室内は同じような空気の乱れ方になるとみなして測定しているのであるから,温度勾配の図形の面積比から取得熱量の削減割合を実証することが可能である。

空調機の稼働回数から冷暖房負荷を測定できること
被告は,資料10-2及び同10-3において空調機の稼働回数及び稼働時間を比較した測定について,各空調機の性能の同一性を検証した形跡がないなどと主張するが,当該各資料において空調機の性能の同一性を検証した形跡がないからといって,同一性を検証しなかったことにはならない。一般に,測定結果の正確性が最も厳しく審査されている査読付き論文においてすら,測定機器の型式等の記載がないもの(甲47,51),あるいは測定機器に問題がないかという検証の有無について記載がないもの(甲47,49ないし51)が数多く散見される。他方,資料10-2は三菱地所の設備の専門家チームが監修した測定であり,その目的は,三菱地所が保有し管理するオフィスビルへの本件商品の採用を検討する目的で,三菱地所の本社ビルにおいて実施された。このような経緯からは,資料10-2において機差の検証を行わなかったことをうかがわせる事情は認められない。資料10-2は三菱地所の測定であり,産業界で一般的に通用している簡単で測定結果に間違いのない測定として,稼働回数(稼働時間)の差異による解析を採用したものと推測される。そして,資料10-2及び同10-3では,両室とも同じ空調機である程度長時間運転しているので,稼働時間から空調機の処理熱量の削減割合を求めることに問題はない。
(オ)

以上のとおり,被告が指摘する問題点は,査読付き論文を含む学術
界や産業界において,結果に影響を及ぼさないと評価されている事項なのであり,被告の主張は一般的基準をはるかに超えた完璧かつ理想的な実験条件を要求するに等しく,失当である。
そして,資料7及び同10に係る実験の方法は,これらの査読付き論文等に照らせば,学術界や産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施していることが明らかであり,かつ,例えば本件商品がJIS規格の適用外の独自の製品であることその他を理由として,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法であることも明らかである。
(被告の主張の要旨)
(ア)

学術界や産業界における実測試験の有用性について
そもそも,工業製品の性能を測定するに当たって,実際の生活環境等
の実使用条件の下で行うこと,すなわち,現場での実測を行うことは,結果を左右する様々な影響要因が存在するため,得られた結果がどの要因に由来するのかということを特定することが極めて困難であり,性能の測定に有用であるとはいえない。
そのため,学術界や産業界での窓用フィルムを含む建築資材等の工業製品の性能の測定は,結果への影響要因を可能な限り排除した実験室等において,誰がやっても再現することができるような条件の下で実験を行うことが一般的である。
現場での実測で得られた結果については,当該現場における特定の環境下でこのような結果になったという事実の記録にはなり得ても,その結果は当該現場における個別かつ具体的な要因に影響を受けた可能性が認められる以上,当該現場での実測によって得られた結果を直ちに製品そのものの普遍的な性能と評価することは到底できない。
学術界や産業界における工業製品の現場実測の位置付けはこのようなものであり,現場実測を行っている場合であっても,通常は,実験室での実験で基本的な性能を実証した上で,実際の環境の下での結果を確認するために行われているものである。
(イ)

資料7及び同10(実測実験)に共通する実験方法の問題点
フィルムの貼付の有無以外の比較対象の条件の同一性が担保されていないこと
原告らの提出した資料7及び同10の合計26件の実測実験においては,例えば同一の建物の異なる2室の一方の部屋の窓ガラスに本件商品を貼付したり,あるいは同一の場所で日程を変えて本件商品を貼付した日としない日の室温を測定した結果を比較したりするなどの形で本件商品の貼付の有無という条件を変えて温度を測定したり,取得熱量を測定したりしたとされており,比較対象の間で差異が出たことをもって本件商品の効果によるものであると結論付けている。
しかしながら,仮に,2室間で日射量が全く異なっていたり,一方の部屋では隣室や上下の部屋で熱が発生していて壁,床や天井を伝わって熱が入り込んでいたりするなど実験条件が異なっていれば,取得熱量が異なるのは当然のことであり,2室の室温も異なり得る。また,別の日程で行っているものについては,全く同じ気象条件であることはあり得ず,それぞれの日で条件が異なっている点が結果に影響を及ぼすことも十分あり得る。
資料7及び同10では,宿泊施設や寮等の様々な施設が実測に使用されているところ,26件の全てにおいて周囲の部屋の状況の考察がされていない。
資料によっては,隣室ではなく,同一面に存在する二つの窓面で温度の比較を行っているものもあるが(資料10-11等),このような場合には,比較対象の各窓面の間で熱伝導があるため正確な測定が行い得ないと考えられるのであって,結局のところ,全ての実測結果は,特定の環境の下での測定結果にすぎず,性能の測定にはなり得ない。

各実験における比較対象の測定結果の差異が何に起因するかの考察がされていないこと
資料7及び同10のいずれの資料においても,比較対象の間で異
なった結果が出たという測定結果を得たということが,すなわち本件商品の効果によるものであると結論付けられている。
しかし,温度の差異はフィルムの貼付以外の要因によっても生じ得るものであるが,原告らはこれについて何ら検証を行っていない。比較対象の間で異なった測定結果を得たということが本件商品の効果によるものであると結論付けるためには,結果が異なる要因となり得る他の条件が同一であることを確認するか,仮に条件が異なるとしてもそれが実験結果に影響を及ぼさないということを確認した上でなければ断定できないと考えられる。


測定機器の精度が不明であること
資料7及び同10では,いずれの場合も,実験に使用した測定機器がどのようなものであるか,機器に問題がないかについての検証が行われた形跡がなく,測定結果の正確性が担保されていない。

(ウ)

資料10(実測実験)について
温度の測定方法自体が不適切であること
原告らは,夏季を例にとると,窓面付近の温度を測定して直ちにその温度を「日射による取得エネルギー」と考えて,温度勾配による面積積分という作業を行っているようである(資料10-5等)。
しかし,そもそも,いかに窓面に近いとしても,室内では対流の影響等もあり,空気が固定されているものではないから,一地点の温度が窓からの日射のみに影響されていると断言することはできないため,原告らが行っているように窓面から特定の距離で点をとり,その地点の温度差を日射の影響による温度差として比較すること自体,意味がないものである。

温度と熱エネルギーは単位も異なる別の概念であり,温度のみから取得熱エネルギーの量を測定することはできないこと
原告らは,夏季を例にとると,窓面付近の温度を測定して直ちにその温度を「日射による取得エネルギー」と考えて,温度勾配による面積積分という作業を行っているが(資料10-5等),温度と熱エネルギーは全く異なるものである。
すなわち,物体への熱エネルギーの出入りによって温度が変化することはあるが,ある温度への変化のみから直ちにその物体にどれだけの熱が出入りしたかという熱量の変動を判断できるものではない。例えば,ある物体の温度から熱量を求めるに当たっては,物体の比熱に質量を掛け合わせた上温度を掛け合わせるなど,熱を得た物体の重さや体積(温度が上昇した空気の容量)が必要である(なお,「距離」は熱量を求める際には用いられるものではない。)。
そのため,ある地点の温度差を直ちに当該地点の取得熱エネルギー量の差と考えることは学術界や産業界では一般的に採り得ない考え方であるし,温度のみから熱量を計算する方法についても行い得ないものである。


温度と距離を掛け合わせた図形の面積比の比較から取得熱量の差を求めることはできないこと
原告らは,温度軸及び距離軸でグラフ化し積分により熱量を算出したと説明しているが,温度と距離から熱量を算出し得るとする根拠が不明である。
原告らは,縦軸に温度をとり,横軸に距離をとって面積を求め,その面積が熱量に比例するというが,なぜそのような計算を行うのかという説明はなく,計算方法についての考察が行われたことを示す記載はない。また,グラフの縦軸について,原点を0℃とはせずに,資料ごとに任意の数値にしているようであるが,縦軸のとり方が恣意的である可能性がある。さらに,温度と距離を掛け合わせた結果,何の数値が算出されるのかが不明であるため,その面積を比較することの趣旨も不明である。
原告らが主張するように,本件商品貼付の前後で温度と距離を掛け合わせた図形の面積の大きさが削減したことをもって,貼付前後で取得熱量が面積の減少分だけ削減したなどということはできず,また,当然ながら,このような方法は学術界や産業界で一般的に行われているものではない。

空調機の稼動回数から冷暖房負荷を測定することはできないこと
原告らは,本件商品を貼付した部屋と本件商品を貼付していない部屋との間で空調機の稼動回数及び稼働時間を比較し,本件商品を貼付した部屋では空調機の稼動回数を削減することができたため,外部からの熱取得を抑制する効果があることが実証されたとの報告書を資料として提出している(資料10-2,同10-3)。
しかし,空調機の稼動回数や稼働時間については,各空調機ごとの機差にもよるものであり,原告らが機差等を全て検討した上で本件実験を行っているか否かは不明である。
このような測定を行っている資料の中には,「同一能力」との記載があるもの(資料10-2〔1頁〕)や,同じメーカーによる同じ種類の空調機である旨の記載があるもの(資料10-4〔2頁〕)もあるが,いずれについても,性能の同一性を検証した形跡はない。
また,「稼動回数」について何ら定義がなく,原告らが何をもって稼動回数とするのかが不明である。
(エ)

査読付き論文に記載されていないことは試験の合理性の論拠になら
ないこと
原告らは,複数の査読付き論文を挙げ,原告らの資料に記載されていない事項がこれらの論文にも同様に記載されていないことを論拠として,自ら提出した資料7及び同10の合理性を主張しているが,査読付き論文に記載された事項について,査読者にとって不明な点や確認したい点がある場合,査読者は執筆者に対して確認を求め,執筆者は査読者の疑問に回答することが必要となるのであるから,査読付き論文に記載されていない事項があるからといって,当該事項が確認されていないものであるとか,確認することが不要なものであるということにはならない。
(オ)

以上に述べたとおり,資料7及び同10は,表示された商品等の効
果や性能に関する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって作成されたものとはいえず,かつ,仮に関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法によって作成されたものともいえない。

本件各表示とその裏付けとなる合理的な根拠を示す資料との関係
(原告らの主張の要旨)
(ア)

法4条1項1号の適用対象となる表示
本件表示④及び同⑮について
本件表示④は,本件商品が放射熱を室外へ放出することによって,室内に放射熱が籠もらず,その結果として「遮熱効果」が得られることを示す表示である。本件表示⑮は,本件商品が窓ガラス表面からのふく射熱を減らすことにより室内に蓄積される熱が軽減することにより,その結果として「遮熱効果」が得られることを示す表示である。そして,放射熱を室外に放出するということや,室内に蓄積される熱が軽減するということは,すなわち「遮熱効果」を意味する。
本件表示④及び同⑮に関して,法4条1項1号の定める「商品…の品質,規格その他の内容」に該当するのは,本件商品が「遮熱効果」を有する旨の表示内容であり,放射熱を室外へ放出するか否か,窓ガラス表面からのふく射熱を減らすか否か,あるいは窓ガラス表面からのふく射熱を減らすことが原因となり室内に蓄積される熱が軽減するものであるか否かではない。

本件表示⑤及び同⑯について
本件表示⑤は,本件商品が対流熱を室内に閉じ込めることによって,要するに室外に対流熱が放出されず,その結果として「断熱効果」が得られることを示す表示である。本件表示⑯は,本件商品が室内の熱の伝達を抑制することによって,要するに室内の熱が室外に放出されず,その結果として「断熱効果」が得られることを示す表示である。
そして,対流熱を室内に閉じ込めるということや室内の熱の伝達を抑制するということは,すなわち「断熱効果」を意味する。他方,「断熱効果」の具体的メカニズムが対流熱を室内に閉じ込めるというものであることや室内の熱の伝達を抑制するというものであること自体は,それによって何らかの健康上もしくは生活環境上の改善効果が得られるわけでもなく,当該メカニズム自体が消費者が商品購入の際に考慮する特質というわけでもない。
そのため,本件表示⑤及び同⑯に関して,法4条1項1号の定める「商品…の品質,規格その他の内容」に該当するのは,本件商品が「断熱効果」を有する旨の表示内容であり,対流熱を室内に閉じ込めるか否かや室内の熱の伝達を抑制するか否かではない。
(イ)

表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びこれにより実証される内容本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びこれにより実証される
内容は,別紙8「夏季及び冬季における効果並びに冷暖房効率及び冷暖房費等に関する表示について」記載のとおりである。
(被告の主張の要旨)
(ア)

法4条1項1号の適用対象となる表示
法違反の有無を認定するに当たっては,表示上の特定の文章,図表,
写真等のみから一般消費者が受ける印象や認識により判断されるのではなく,表示の内容全体から一般消費者が受ける印象や認識により判断されるものである。したがって,例えば,仮に表示に記載されている個々の文章の全てが正しくても,共に表示されている図表,写真等を含めた表示全体からみて一般消費者に誤認される場合には,不当表示として問題になる。
本件各表示は,本件商品が夏季と冬季において真逆の効果を発揮することをうたうものであるから,そのような異なる効果が得られるメカニズムの存在を当然の前提としていることは明らかである。
したがって,本件各表示について,メカニズムと効果とが一体として「商品…の品質,規格その他の内容」に該当することは明らかであり,このようなメカニズムと効果が一体として示されることによって,消費者に対して当該効果についての信頼を惹起させ,購買意欲を抱かせるものと考えられる。
(イ)

表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びこれにより実証される内容について
本件各表示と本件各資料の対応関係に関する原告らの主張は,いずれも,原告らの提出した各資料が客観的に実証されたものであることを前提としたものであるが,当該資料はいずれも客観的に実証されたものではないから,原告らの主張が失当であることは明らかである。
したがって,本件各表示は,いずれも,表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容とが適切に対応しているとはいえない。(3)

争点(3)(本件各表示が優良誤認表示に当たるか否か)について
(原告らの主張の要旨)

建築熱環境の分野では,実際の熱移動が時々刻々変化する環境条件によって複雑であるため,工学という学問の性質上,様々な仮定や近似的取扱いを行うことが学問上の前提となっている。そして,実験室での実験の結果どおりに現場で効果が出るかは不明であるため,実測が極めて重要であるが,実測で定量的に性能値を測定する場合,5%ないし10%単位での測定で十分に測定として成立する。また,消費者が要求する性能値の精度も,せいぜい10%単位の性能値が表示されれば,商品選択のための情報として十分といえる。そのため,誇張の範囲についても,実証の結果から最大で10%程度の誤差は誇張の範囲と解すべきである。
したがって,仮に本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料として足りないものであったとしても,本件各表示は,誇張の範囲にとどまるのであって,そもそも「著しく優良である」と示しておらず,「不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれ」はなかったものであり,法4条1項1号のいわゆる「優良誤認表示」に当たらないというべきである。


また,本件各表示に係る本件商品の効果や性能はいずれも実証されているが,仮に本件各表示のうち一部の数値について実証されていないと判断される場合であっても,実証された表示部分については,本件各措置命令は取り消されるべきである。そうでなければ,実証されている表示についてまで措置命令が可能となり,かつ,取り消せない結果となり,違法であるばかりか,行政庁の恣意的,濫用的な運用を認めることにもなりかねない。
(被告の主張の要旨)
原告らの主張は否認ないし争う。
(4)

争点(4)(本件各措置命令に係る裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有
無)について
(原告らの主張の要旨)

本件各措置命令の必要性がなかったこと
(ア)

原告らは,平成25年9月11日,消費者庁から,ホームページ及
びリーフレットの記載内容のうち,遮蔽係数及び熱貫流率の表示がJIS規格に合致しているのかという指摘を受けた際には,直ちに当該ホームページの閉鎖又は表示の是正をするとともに,当該リーフレットの配布を中止した。また,原告らは,平成26年6月12日,本件各資料を提出する際,裏付けとなるデータが一般性を有するものかどうかという点,誤解を招きやすい表現ではないかという点を真摯に反省し,一部の表示を直ちに中止するとともに,本件各表示についても,再度,法令に適合するものかどうかを精査し,場合によっては改善策を講ずることも検討するとして,行政指導にも応じる姿勢を示した。
このように,原告らは,消費者庁からの指摘を真摯に受け止め,速やかに是正措置を講じたものである。
(イ)

本件商品は,新築マンション向けに販売され施工されるだけでな

く,既存の住宅やマンション向けにも販売され施工されているが,仮に,本件各措置命令にいうように,本件商品が表示に対応する効果や性能が得られないとして消費者被害が生じているのであれば,本件商品の利用者から苦情が出されてしかるべきである。しかし,本件商品については,これまで18年にわたり苦情が一切発生していない。
このように,本件商品が現に優れた断熱効果を有していることから,実際にも18年間に消費者被害は一度も発生していない。
(ウ)

以上により,仮に本件各表示に法上の問題があるとしても,あえて
措置命令という強力な効果を持つ手段を執る必要性はなく,少なくとも原告らに行政指導を行うことで足りたのであるから,本件各措置命令は過大な処分として違法というべきである。

本件各措置命令は特定の事業者だけを狙い撃ちするものであること(ア)

本件商品のように,窓用フィルムを取り扱う業者は多数存在すると
ころ,これらの業者の製造ないし販売する製品の表示には,本件商品に比して消費者を強く誘引するものも存在する。しかし,原告ら以外の窓用フィルムを扱う業者に対し,その表示が法上問題であるとして措置命令がされたことはない。
(イ)

消費者庁は,表示が法違反に当たるかについて事業者の予見可能性
が乏しい場合,いきなり措置命令を行うのではなく,当該製品における消費者庁の法上の考え方を周知させる運用を行っていた。
本件各表示のように,フィルムの効果や仕組みを消費者に対し分かりやすく説明するためには,フィルムを貼付することにより得られる冷暖房効率の変化や光熱費の削減率等を表示するのが簡便であるところ,上記の変化や上記の削減率の算定方法を定めた統一的規格(JIS規格等)が存在しない状況においては,どのような表示が法違反となるのかを各業者にとって予見することは容易ではない。
そして,このような予見可能性の乏しい状況においては,個々の業者に対して法による措置命令を行うべきではなく,法上の考え方を各業者に周知するのを第一義とすべきである。
しかるに,本件各措置命令は,消費者庁のこれまでの法についての対事業者に対する運用と明らかに異なるものであり,かつ,原告らの予見可能性を無視した不当な処分である。
(ウ)

したがって,本件各措置命令は,原告らを狙い撃ちにする不当な処
分であり,違法というべきである。

以上のとおり,消費者庁長官は,これまでの運用に反し,あえて,狙い撃ち的,見せしめ的に本件各措置命令を発したといえるのであって,その処分は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであり,違法というべきである。

(被告の主張の要旨)

「本件各措置命令の必要性がなかった」との主張について
(ア)

原告らは,本件各表示につき,消費者庁の調査中に表示の変更をす
る意向を述べ,実際に一部については表示を変更しているようである。しかしながら,原告らからは,消費者の誤認を排除するための公表等の措置を採る方針は示されず,かえって,公表しなくてもユーザーに対して個別に説明し対応に当たることを確約するものであるから公表する必要は全くない旨の弁明書が提出された。また,本件商品について表示を変更したとするが,本件各措置命令において不当表示と認定された表示が全て修正されたわけではない。
そのため,依然として,消費者の誤認が排除され一般消費者の自主的かつ合理的な選択が可能な状況が回復されたとはいえないのであって,本件各措置命令を行う必要性が十分にあったものである。
(イ)

仮に,本件商品についての苦情が1件もなかったとしても,このよ
うな事実から消費者被害が生じていないと推認することはできない。すなわち,本件商品においては,省エネルギー効果は直接目に見えず,また冷暖房費は様々な条件で変動することは想像に難くないことから,表示どおりの効果や性能を期待した消費者の中には,他の要因が作用した可能性があると考えて苦情を出さなかった者がいることも十分考えられる。
また,法は,商品を購入した一般消費者に現実に被害が生じていることを要件とせず,表示自体が「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められ(法4条1項)」,不当表示に当たるのであれば,措置命令をすることができる旨を規定しているのであって,本件商品について消費者被害が発生していないことが仮に事実であったとしても,これをもって本件各措置命令に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということにはならない。

「本件各措置命令は特定の事業者だけを狙い撃ちするものである」との主張について
原告らは他の事業者に対し行政処分をしていないことから,消費者庁長官に原告らを「狙い撃ち」する意図があった旨主張する。しかしながら,他の事業者との関係で違法となるのは,処分の相手方である事業者以外の違反行為をした事業者に対しては当初から行政処分をする意思がなく,処分の相手方である事業者に対してのみ差別的意図をもって当該行政処分をしたような場合などに限られると解されるところ(東京高裁平成20年5月23日判決(乙11)参照),消費者庁長官に原告らを狙い撃ちする等の意図は全くなく,原告らから,消費者庁長官に原告らを狙い撃ちする等の意図があったことを示す具体的事実が主張されているわけでもない。

本件各措置命令は,一般消費者による自主的かつ合理的な商品選択を阻害するおそれのある不当表示を排除し,一般消費者の利益を保護するために命ぜられたものであって,その内容は,一般消費者の誤認を排除するために,過去の表示については本件各措置命令の第1項によって一般消費者に生じた誤認を排除し,今後の表示については本件各措置命令の第3項によって差し止めるとともに第2項によって再発防止策を命ずるものである。
このように,本件各措置命令は,一般消費者の利益を保護するために必要なものであって,かつ,不当表示を禁ずる法に違反した事業者に対して過重な負担を強いるものでもなく,相当なものである。
したがって,本件各措置命令は必要かつ相当なものであり,消費者庁長官の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。
(5)

争点(5)(本件各措置命令に係る手続上の瑕疵の有無)について
(原告らの主張の要旨)

弁明の機会の付与に係る瑕疵
原告らは,平成26年6月12日に本件各資料を提出したが,平成27年1月15日,消費者庁長官から,本件各表示につき法6条に基づく措置命令を予定しているとして,行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会を付与する旨の本件通知を受けた。そこで,原告らは,消費者庁に対し,本件各資料を本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠と認めなかった理由を明示するよう求めたが,同庁は書面による公式な回答を拒否した。このように,行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会が形式的には付与されていても,消費者庁長官が本件各措置命令を行う理由,すなわち,本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠として足りないと判断した理由が明らかにされないのであれば,原告らによる弁明は事実上不可能である。
したがって,本件各措置命令については,実質的には弁明の機会が付与されたものとはいえず,手続上の違法があるというべきである。


理由提示の不備
(ア)

行政手続法14条1項本文は,行政庁が不利益処分をする場合に名宛人に対し当該不利益処分の理由を示すことを義務付けているところ,最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決(民集65巻4号2081頁参照)は,理由提示の程度について,「当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。」と判示している。
(イ)

本件運用指針は,措置命令を行うための根拠である法4条2項のみ
なし規定の要件である合理的根拠資料該当性に関する基準を示すものであり,行政手続法2条8号ハ所定の基準に当たるから,措置命令の処分基準である。そして,本件運用指針が一般に公表されている趣旨は,法4条2項のみなし規定の運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保するためである。また,本件運用指針は策定に当たって意見公募手続を経ており,提出資料の性質ごとに基準が分かれていてその内容が複雑であり,措置命令を受けた場合,新たに根拠を得なければ問題となった表示を行うことはできず,措置命令を受けたことが一般に公開もされるから,事業者への不利益は極めて大きい。
したがって,法4条2項のみなし規定を適用して行う措置命令の理由提示の程度としては,事業者が提出した資料が存在する場合には,いかなる理由によって当該資料が合理的根拠資料に当たらないと判断したかが明らかになるように,本件運用指針で示す基準の適用関係を明らかにしなければならないというべきである。
(ウ)

本件各措置命令は,本件運用指針が示す基準をどのように適用して
本件各資料が合理的根拠資料に当たらないと認定したのかについてその理由を一切示しておらず,原告らにおいて本件各資料が合理的根拠資料に当たらないとされた理由を了知することができないから,理由提示の程度として不十分である。
したがって,本件各措置命令は,行政手続法14条1項に違反し,違法というべきである。
(被告の主張の要旨)

弁明の機会の付与について
(ア)

行政手続法30条2号は,弁明の機会を付与するに当たり,「不利
益処分の原因となる事実」を通知することを求めているが,弁明の機会の付与が,処分の内容を事前に告知し,これに対する弁明の有無を確認することによって,行政処分の発令手続の明確性を確保し,併せて名宛人となるべき者の防御権を実現させることを目的とするものであることからすると,弁明の機会の付与の際に告知すべき原因事実も,当該処分の性質,原因事実の内容等を総合的に考慮し,当該処分の名宛人が,予定される処分の原因事実の存否や内容を確認し,これに対して必要な反論をすることが可能である程度に具体的であることを要し,また,これをもって足りるというべきである。
(イ)

消費者庁長官は,本件通知において,本件各資料が合理的根拠資料
であるとは認められないと判断した旨の事実及び予定される措置命令の内容等,行政手続法の定める内容を事前に告知し,これに対する弁明の有無を確認しているのであるから,何ら行政手続法に違反する点はない。
また,弁明手続において,行政庁には弁明書に対して応答する義務はないのであるから,消費者庁には本件各資料が合理的根拠資料と認められなかった理由を書面により回答する義務はない。そのため,書面による回答がされなかったことをもって,実質的に弁明の機会の付与がされなかったとはいえない。
(ウ)

なお,行政手続法により対応が求められているものではないが,消費者庁の職員は,弁明の機会の付与の場において,本件各資料が合理的根拠資料と認められない理由について,主要な点を口頭で説明しており,原告らは,この説明を受けて弁明書の補足を提出しているのであるから,原告らによる弁明が事実上不可能であったともいえない。

理由提示について
(ア)

本件のように事業者が何らかの資料を提出したが,その提出した資
料が表示の裏付けとなる合理的根拠資料と認められないために,合理的根拠資料の提出がないものと結論付けられた場合,その旨の事実の摘示がされていれば,当該表示が優良誤認表示とみなされる理由は明らかであり,理由の提示に欠けるところはないものである。
すなわち,法4条2項が,「表示の裏付けとなる合理的な根拠資料」の提出を求めるものである以上,事業者は自らの表示に対応して当該表示の合理的な裏付けになると考えた資料を消費者庁長官に提出しているのであるから,提出資料が表示の裏付けとならないと消費者庁長官が判断した場合には,当該表示との関係では提出した資料が合理的な裏付けとならなかったということが事業者には容易に認識できるものであり,その資料が自らの表示の裏付けとなる合理的根拠資料に当たることを処分の取消訴訟で主張することに何ら困難は伴わず,不服申立ての便宜は害されない。
そして,本件各措置命令については,「表示に係る裏付けとする資料を提出したが,当該資料は,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。」等の理由が記載されている。
(イ)

本件運用指針は,法4条2項の運用について「一定の指針を示す」
ことを目的とするものであり,本件運用指針の本文にも記載されているとおり「景品表示法第4条第2項の適用がなされる場合のあらゆる場面を網羅しているわけではなく,事業者が行った表示が同項の適用の対象となるのか,また,事業者から提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められるかどうかについては,本指針において例示されていないものを含め,個別事案ごとに判断されることに留意する必要がある」のであり,事業者から提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められるかどうかについては個別の事案ごとに判断されるものであることを明記しているものである。このように本件運用指針に明記された指針の性質からして,本件運用指針が処分基準に該当しないことは明らかであり,措置命令について処分基準の作成はされていない。
(ウ)

なお,仮に,本件運用指針が処分基準に該当するとの原告らの主張
を前提としたとしても,原告らは,「表示に係る裏付けとする資料を提出したが,当該資料は,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。」という記載に加え,本件各表示が法4条2項の適用により同条1項1号に該当するとの法令の適用と,公にされている本件運用指針の「「合理的な根拠」の判断基準」と照らし合わせることにより,提出した本件各資料が,①「提出資料が客観的に実証された内容のものであること」及び②「表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること」(上記の基準)の一方又は双方を欠くものとされたことが容易に把握できるのであるから,本件運用指針における判断基準の適用関係を逐一処分の理由中に示す必要はなく,「表示に係る裏付けとする資料を提出したが,当該資料は,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった。」という記載があれば何ら不服申立ての便宜が失われるものではない。
(エ)

以上のことからすれば,本件各措置命令の理由の記載は,理由提示の程度として十分であるといえる。
(6)

争点(6)(国家賠償法上の違法の有無)について

(原告らの主張の要旨)

消費者庁長官の判断が違法であること
原告らは,消費者庁長官に対し,本件各表示につき本件各資料を提出しているところ,本件各資料は合理的根拠資料であるから,法4条2項の適用はなく,本件各表示が法4条1項1号の優良誤認表示とみなされるものではない。
しかるに,消費者庁長官は,JIS規格を過度に重視し,原告らの提出した弁明書等も全く考慮せず,科学的無理解に基づく微視的かつ机上の空論により表示の裏付け根拠を否定する判断をし,本件各措置命令をしたものであるから,法6条の要件を欠く違法な処分というべきである。

本件各措置命令の必要性がなかったこと
前記(4)(原告らの主張の要旨)アのとおり,仮に本件各表示に法上の問題があるとしても,あえて措置命令という強力な効果を持つ手段を執る必要性はなく,少なくとも原告らに行政指導を行うことで足りたのであるから,本件各措置命令は過大な処分として違法というべきである。

本件各措置命令は特定の事業者だけを狙い撃ちするものであること前記(4)(原告らの主張の要旨)イのとおり,本件各措置命令は,原告らを狙い撃ちにする不当な処分であり,違法というべきである。


消費者庁長官が専門家から意見書等の文書の提出を受けずに本件各措置命令を行ったこと
原告らの提出した本件各資料の内容の合理性を判断するためには,専門的な科学技術的知見が不可欠であるところ,①被告が聴取したという2名の専門家の意見は,本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料となり得るかという重要な判断過程に直接関するものである上,②本件各資料の測定内容が多岐にわたり,専門的知見を有しない消費者庁長官が専門家の意見の全てを正確に記憶し理解することはおよそ不可能であり,これらについて専門家の意見内容を踏まえた判断を行う場合,書面で提出を受けなければ到底十分かつ正確な検討をなし得ない。そのため,消費者庁長官には,本件各資料が合理的根拠資料に該当するか否かについて,専門家が作成した意見書等の文書の提出を受け,当該文書に基づいて判断を行うべき注意義務が職務上課されているというべきである。
しかるに,消費者庁長官は,2名の専門家から意見書等の「文書」の提出を受けずに判断を行っており,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかった違法がある。

消費者庁長官が専門家から聴取した意見の内容には看過し難い重大な過誤があること
消費者庁長官が本件各措置命令までに2名の専門家から意見を聴取していたとしても,その聴取内容は,平成27年4月10日付け専門家意見書(乙9の1及び2。以下「本件各意見書」という。)の全てではなく,その一部,すなわち本件各意見書が提出される前に被告が答弁書において主張していた内容にとどまると推認される。
しかしながら,被告の主張する本件各資料の問題点やその後に提出された本件各意見書の内容は,査読付き論文ですら許容されている実験条件であるにもかかわらず許容できないとの主張を含むものであり,一般的基準をはるかに超えた完璧かつ理想的な実験条件でなければならないと主張するに等しいものであり,明らかに不合理で極めて恣意的なものであるというべきである。
したがって,消費者庁長官が本件各措置命令に際して依拠した2名の専門家の意見の内容には看過し難い重大な過誤が認められるから,消費者庁長官の判断は違法というべきである。

本件商品の遮熱及び断熱の具体的メカニズム自体は法4条1項1号の適用対象となる表示に該当しないにもかかわらずその適用対象としたこと本件各措置命令の対象とされた本件各表示のうち,夏季の遮熱効果に関する本件表示④及び同⑮並びに冬季の断熱効果に関する本件表示⑤及び同⑯は,遮熱ないし断熱の具体的メカニズム自体によって何らかの健康上又は生活環境上の改善効果が得られるわけでもなく,当該メカニズム自体が消費者の商品購入の選択を左右することにはならないので,法4条1項1号の定める「商品…の品質,規格その他の内容」には該当しない。また,これらの表示は,特許発明の作用効果そのものを説明するものであり,遮熱効果ないし断熱効果が定性的に実証された場合には,特許発明の作用効果を説明する表示を行うこと自体は何ら虚偽には当たらない。メカニズム部分について法4条1項1号の適用対象とし,優良誤認表示であるとすることは,特許無効審判によらずに特許を無効と判断するに等しく許されない。
しかるに,消費者庁長官は,具体的メカニズム自体に関する表示部分についても法4条1項1号が適用されるとの誤った法解釈を行い,このような誤った法解釈を基に,数値が実証されている本件各表示についても合理的根拠がないと判断した点で,重大な過失があるというべきである。

専門家に対し本件商品がJIS規格の適用外であるとの製品特性の説明を怠ったために恣意的な判断がされたこと
消費者庁長官は,本件各資料について専門家から意見を聴取する場合には,少なくとも,本件商品がJIS規格の対象外の製品であることの説明を十分にして注意喚起をし,JIS規格の適用に関わる意見については慎重に検討すべき職務上の注意義務が課されているというべきである。しかるに,消費者庁長官が聴取した2名の専門家のうちZ1氏は,JIS規格の認定機関である建材試験センターに所属している上,Z1氏の意見内容には,本件商品がJIS規格の対象外の製品であることへの考慮ないし言及が一切ないばかりか,反対に,本件商品にJIS規格をそのまま当てはめて検討し,安易に資料1その他の提出資料の合理性を否定した形跡すらうかがわれる。
すなわち,資料1における塗料の透過率及び放射率の算出過程について,Z1氏の平成27年4月10日付け意見書(乙9の1)では,JISR3106を適用できず,算出過程が不明であるなどと指摘していたが,原告らがJISR3106の「付表3」の計算処理のみを用いるという意味でJISR3106に準拠することは可能であると主張した結果,その後のZ1氏の同年12月8日付け意見書(乙15)では,「そのような意味でJISR3106に準拠したというのであれば」準拠は可能であると主張を変えている。
したがって,消費者庁長官は,JIS規格の認定機関に所属するZ1氏を安易に選定したばかりか,JIS規格の適用に関わる意見について慎重な検討を行わなかった点で,重大な過失があるというべきである。(被告の主張の要旨)

本件各措置命令に国家賠償法上の違法はないこと
本件各措置命令が国家賠償法上違法と評価されるのは,消費者庁長官が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件各措置命令をしたと認められるような事情がある場合に限られることになるところ,消費者庁長官が,その裁量権の下,原告らの提出した本件各資料を精査し,専門家の意見をも踏まえた上で,本件各資料が合理的根拠資料に該当しないものと適正に判断して本件各措置命令をしたことからすれば,消費者庁長官が職務上尽くすべき注意義務に違背した状況は何ら認められず,このような消費者庁長官の行為が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価される余地はない。

「本件各措置命令の必要性がなかった」との主張について
前記(4)(被告の主張の要旨)アのとおり,本件各措置命令を行う必要性が十分にあったものである。


「本件各措置命令は特定の事業者だけを狙い撃ちするものである」との主張について
前記(4)(被告の主張の要旨)イのとおり,消費者庁長官に原告らを狙い撃ちする等の意図は全くなく,原告らから,消費者庁長官に原告らを狙い撃ちする等の意図があったことを示す具体的事実が主張されているわけでもない。


「消費者庁長官が専門家から意見書等の文書の提出を受けずに本件各措置命令を行った」との主張について
消費者庁長官が措置命令を行うに当たり,いかなる方法で事業者から提出された資料を検討しなければならないかについて,法は何らの定めも置いていない。措置命令を行うに当たり,いかなる措置命令を行うかについては消費者庁長官の合理的な裁量に委ねられているのであるから,措置命令を行うためにいかなる資料を収集するか,専門家から意見を聴取するか否かといった措置命令の判断の基礎資料に係る判断についても,消費者庁長官の広範な裁量に委ねられているものと解すべきである。
したがって,必ず専門家の意見を専門家自身の意見書という文書で取得すべき法的義務などというものが認められる余地はない。


「消費者庁長官が専門家から聴取した意見の内容には看過し難い重大な過誤がある」との主張について
原告らは,原告らが行った実験とは異なる趣旨や前提条件で行われた査読付き論文における実験結果を援用し,また,査読付き論文における実験内容の正確な理解を欠いたまま原告らの主張を裏付ける根拠としているものであって,失当である。そして,2名の専門家の意見は何ら恣意的なものではないから,原告らの主張は前提を誤るものである。

「本件商品の遮熱及び断熱の具体的メカニズム自体は法4条1項1号の適用対象となる表示に該当しないにもかかわらずその適用対象とした」との主張について
本件各表示について,メカニズムと効果とが一体として「商品…の品質,規格その他の内容」に該当し,メカニズムと効果が一体となった本件各表示全体が一般消費者による自主的かつ合理的な商品選択を左右するものであることは明らかである。したがって,消費者庁長官がした判断に何ら誤りはないから,原告らの上記主張は失当である。


「専門家に対し本件商品がJIS規格の適用外であるとの製品特性の説明を怠ったために恣意的な判断がされた」との主張について
そもそも,Z1氏は,本件商品にJIS規格をそのまま当てはめて検討しているものではなく,また,JIS規格に反することをもって資料1その他の提出資料の合理性を否定しているものでもない。また,Z1氏は,平成27年4月10日付け意見書(乙9の1)において,資料1における塗料の透過率及び放射率の算出過程について,「不明である」と述べていたものであり,JISR3106を適用できないということをもって資料1が表示の合理的根拠とならないと考える理由とはしていない。むしろ,同年12月8日付け意見書(乙15)において,「同JISに準拠して同波長域における透過率を求めることはできない」ことを明言しており,原告らの主張は前提において誤りである。
原告らの主張は,Z1氏の意見書の記載の趣旨を曲解しており,失当である。

(7)

争点(7)(損害の有無)について

(原告らの主張の要旨)

原告ジェイトップラインに生じた損害
本件各措置命令により,マンションデベロッパーの多くが本件商品について既受注分をキャンセルし,新規取引を停止する取扱いを行ったため,マンションデベロッパーと取引を行うオプションヘッド会社も本件商品の取扱いを停止することになり,原告ジェイトップラインとその取引先であるオプションヘッド会社との取引はそのほとんどがなくなった。
本件各措置命令を受ける前までの直近2期(15期及び16期。平成24年7月1日から平成26年6月30日まで)において,原告ジェイトップラインが過去3年間にわたり継続的取引関係にあった取引先20社に対する年間の売上げは平均すると3億3824万2344円であり,本件商品の粗利率は平均すると約28.7%である。
そのため,本件各措置命令により原告ジェイトップラインに生じた本件各措置命令後の逸失利益は,2億円を下らないが,仮に本件各措置命令後2年間に限ったとしても,次のとおり,少なくとも1億9415万1105円を下らない。
3億3824万2344円/年×28.7%×2年
=1億9415万1105円

原告翠光トップラインに生じた損害
(ア)

営業損害
本件商品に関する営業損害

1億1044万6741円

本件各措置命令により,原告ジェイトップラインがその取引先から本件商品の以後の取引を打ち切られたことによって,原告ジェイトップラインに本件商品を供給する原告翠光トップラインについても,本件商品の取引が激減し,営業損害が生じている。
この点につき,本件各措置命令を受ける前までの直近2期(第16期及び第17期。平成24年11月1日~平成26年10月31日まで)の年間の売上げは平均すると1億3875万2188円であり,本件各措置命令を受けた期を含む直近3期(16期ないし18期。平成24年11月1日から平成27年10月31日まで)の本件商品の粗利率は平均すると約39.8%である。
そのため,本件商品について原告翠光トップラインに生ずる本件各措置命令後の逸失利益は,仮に本件各措置命令後2年間に限ったとしても,次のとおり,少なくとも1億1044万6741円を下らない。
1億3875万2188円/年×39.8%×2年
=1億1044万6741円

花卉事業に関する営業損害

4263万9816円

原告翠光トップラインは,花卉事業(切花,切葉,種苗等の輸入卸等)を行っていたところ,本件各措置命令を理由として,花卉事業に関しても取引の打切りが生じ,営業損害が発生した。
原告翠光トップラインの花卉事業に係る営業利益(粗利益)は,売上金額の6%であり,94%が売上原価である。
この点につき,原告翠光トップラインの花卉事業に係る直近1年間(平成27年5月から平成28年4月まで)の月額売上げは平均すると2961万0986円であり,営業利益(粗利益)はその6%相当分の月額約177万6659円である。
そのため,花卉事業について原告翠光トップラインに生ずる平成28年7月1日以降の2年間の逸失利益は,次のとおり,少なくとも4263万9816円を下らない。
177万6659円/月×24か月=4263万9816円
(イ)

補助金相当額の損害

1484万5666円

原告翠光トップラインは,東京都から,「平成25年度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金」として,平成26年7月23日付けで1484万5666円の交付決定を受けていたが,本件各措置命令を受けたことにより,上記補助金を交付することはできない旨を伝えられ,事業廃止の承認がされた。
そのため,原告翠光トップラインには,本件各措置命令により,上記1484万5666円の損害が生じている。
(ウ)

損害の合計

1億6793万2223円

(被告の主張の要旨)
原告らの主張は争う。
第3

当裁判所の判断

1
争点(1)(本件取消訴訟の審理の対象(法4条2項の適用の有無))について
(1)

原告らは,法4条2項のみなし規定は取消訴訟に適用されず,措置命令
の発令要件は「第4条第1項の規定に違反する行為がある」(法6条柱書き)ことであるから,本件取消訴訟の審理対象である本件各措置命令の適法性は,「第4条第1項の規定に違反する行為があるとき」に該当するか否かである旨主張する。
そこで,以下,法4条2項の趣旨等についてみた上で,本件取消訴訟の審理の対象等について検討することとする。
(2)

法4条2項の趣旨等
商品等の効果や性能などの品質その他の内容について優良性を強調する表
示が,一般消費者に対して強い訴求力を有し,顧客誘引力が高く,一般消費者は表示に沿った効果や性能などの品質その他の内容を備えていると認識しやすいことから,当該商品等に付された表示が実際のものよりその効果や性能などの品質その他の内容において著しく優良であると示す場合には,公正な競争を阻害し,一般消費者の利益を損なうおそれが大きい。他方,消費者庁長官が,当該商品が表示に沿った効果や性能などの品質その他の内容を備えておらず,表示が実際のものより著しく優良であることを立証するには,専門機関による調査や鑑定等が必要になり,そのために多大な時間,労力及び費用を要することが少なくないことから,その立証ができるようになるまでの間,このような不当な表示が社会的に放置され,一般消費者の被害が広範に拡大するおそれがある。
そこで,法4条2項の規定は,消費者庁長官が事業者に対し表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出を求め,事業者がこれを提出しない場合には,当該表示を同条1項1号に該当する表示(優良誤認表示)とみなすという法的効果を与えることによって,消費者庁長官が迅速かつ適正な審査を行い,速やかに所要の措置を行うことを可能にして,公正な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護するという法の目的(法1条)を達成するために設けられたものである。
そして,以上のような法4条2項の趣旨等に鑑みると,同項の「当該資料を提出しないとき」とは,提出された資料が合理的根拠資料に該当しない場合を含むものと解するのが相当である。
(3)

本件取消訴訟の審理の対象
取消訴訟の審理の対象となる訴訟物は処分の違法性一般であり,処分が適
法であるといえるためには,当該処分の時において当該処分の根拠となる法規に規定された処分要件が充足されていることが必要であって,その処分要件の充足の有無が当該取消訴訟の審理の対象となるものと解される。しかるところ,本件取消訴訟は,本件各措置命令の取消しを求めるものであるから,その審理の対象となる訴訟物は本件各措置命令の違法性一般である。そして,本件各措置命令は,消費者庁長官が,平成27年2月27日,原告らに対し,本件各資料は本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないため,法4条2項により本件各表示は優良誤認表示とみなされるとして,同法6条に基づいてされたものである(前記前提事実(3)エ)。このように,本件各措置命令は,本件各表示が法4条1項1号に規定する優良誤認表示に該当するか否かを直接判断してされたものではなく,同条2項により本件各表示は優良誤認表示とみなされるとして,同法6条に基づいてされたものであるから,本件各措置命令が適法であるといえるためには,その根拠規定である法4条2項に規定された処分要件,すなわち,①消費者庁長官が,本件各表示が同条1項1号に該当するか否かを判断するため必要があると認め,本件各表示をした原告らに対し,期間を定めて,本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出を求めたこと,②原告らの提出した本件各資料が合理的根拠資料に該当しないことの各要件が充足されていることが必要である。
したがって,本件取消訴訟の審理の対象となる訴訟物は本件各措置命令の違法性一般であり,その根拠規定である法4条2項に規定された処分要件の充足の有無が審理の対象となるところ,上記①の処分要件が充足されていることについては当事者間に争いがないため,本件取消訴訟においては,上記②の処分要件の充足の有無,すなわち,原告らの提出した本件各資料が合理的根拠資料に該当するか否かが審理の対象となるというべきである。(4)

提出期限の経過後に提出された資料の取扱い
上記(3)のとおり,本件取消訴訟においては,原告らの提出した本件各資
料が合理的根拠資料に該当するか否かが審理の対象となる。したがって,本件取消訴訟において,消費者庁長官の定めた提出期限の経過後に提出された資料は,本件各資料が本件各表示を裏付ける合理的な根拠を示すものであるか否かを判断するために参酌し得るにとどまり,参酌し得るのは本件各資料の内容を説明するものや補足するものに限られるというべきである。(5)

原告らの主張について
原告らは,法4条2項の文言上,明示的に「第6条の規定の適用については」と限定して規定されていることから,同項のみなし規定の効果が及ぶ範囲は法6条の定める措置命令に限られ,行政事件訴訟法の定める取消訴訟には及ばないことは文言上も明らかであり,平成15年改正に係る立案担当者の解説や法案審査における公正取引委員会と内閣法制局とのやり取りの記録においても,立案担当者によってその旨が繰り返し説明されている旨主張する。
しかしながら,本件取消訴訟の審理の対象となる訴訟物は本件各措置命令の違法性一般であり,本件各措置命令の根拠規定である法4条2項に規定された処分要件の充足の有無が審理の対象となることは,上記(3)において説示したとおりである。
また,一般に,法律の改正がされた場合において,改正の対象とされた規定の解釈をするに当たり,当該改正の立案担当者の見解が参酌されるとしても,当該規定の解釈は訴訟法規及びその基本原則を含む既存の関係法令及びその解釈との整合性が確保されるものでなければならず,立案担当者の見解が上記の整合性を欠くものである場合には,当該見解を採用することが相当でない場合もあるものといえる。そして,平成15年改正の立案担当者が,内閣法制局における審査を含む法案の立案の過程において,法4条2項のみなし規定の効果の及ぶ範囲が法6条の定める措置命令に限定され,その取消訴訟には及ばないとの解釈を採り得る規定の立案を企図して,法4条2項に「第6条の規定の適用については」との文言を付加し,同改正の解説に上記の解釈を自らの見解として記載しているなどの経緯があったとしても,そのような解釈は,上記(3)において説示した行政事件訴訟の基本原則というべき取消訴訟の審理構造との整合性を欠くものというほかなく,また,客観的には,みなしの対象を措置命令の根拠規定(法6条)の適用場面に限定する上記の文言が付加されたからといって,上記の基本原則に従って法4条2項のみなし規定の効果が当然に措置命令の取消訴訟にも及ぶと解することが別段妨げられるものともいえないから,上記の解釈を採用することはできず,上記の経緯によって上記(3)及び(4)の判断が左右されるものではないというべきである(なお,後記ウのとおり,措置命令後,その取消訴訟の係属中に,事業者から,措置命令前に提出されていれば合理的根拠資料に該当すると認められる資料の提出があったときは,消費者庁長官は,当該措置命令を将来に向かって撤回すべき義務を負うことになるものと解されるので,立案担当者の見解において考慮の対象とされた事業者の手続的利益は,上記の範囲でその保護が図られるものということができる。)。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。イ
原告らは,①措置命令の重大な不利益性ゆえに,事業者には合理的根拠資料を提出すべき強い動機付けが与えられているため,消費者庁が訴訟を念頭に置いて実際に自ら調査を行う必要性が多く生ずるとまではいえないこと,②実際に措置命令が発せられる大多数の事案においては,表示された効果や性能自体がもともと備わっていないため,消費者庁が積極的に資料を収集し検討すべき必要性はほとんどないこと,③消費者庁においては,各技術分野に対応した専門家の意見を聴取する体制がとられていることから,取消訴訟において法4条2項のみなし規定の適用が排除されたとしても,同項の立法趣旨が没却されることはない旨主張する。
しかしながら,仮に,法4条2項を適用してした措置命令の取消訴訟において同項の適用が排除されると解するとすれば,措置命令が適法であるといえるためには,消費者庁長官において同条1項1号に規定する優良誤認表示に該当することを主張立証しなければならず,これを立証するに足りる証拠を提出できない場合には当該措置命令が違法なものとして取り消されることになる。そうすると,消費者庁長官としては,取り消されることのない措置命令をするために,結局,事業者が合理的根拠資料を提出しないことを立証し得る証拠では足りず,当該表示が同号に規定する優良誤認表示に該当することを立証するに足りる証拠の収集や検討まで行わざるを得ないことになり,消費者庁長官が迅速かつ適正な審査を行い,速やかに所要の措置を行うことを可能とすることによって,公正な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護するという法の目的を達成するという法4条2項の立法趣旨に反する結果となるものというべきである。仮に優良誤認表示の該当性自体が立証命題となるとすれば,①事業者が提出する資料は,上記の立証命題との関係ではその大半が反証となることが想定され,消費者庁の証拠収集等の負担を軽減し得るものとはいえず,②消費者庁において,多くの場合に事業者が提出する資料以外にも相当の証拠収集等が必要となるものと考えられ,③消費者庁による証拠収集等の作業自体は専門家に委嘱し得る範囲が相当程度限定されるものと考えられるので,同項の立法趣旨に反する結果は避けられず,この点に関する原告らの主張は採用することができない。

原告らは,法4条2項のみなし規定の効果を取消訴訟にまで及ぼすべき立法事実は何ら存在せず,同項のみなし規定を取消訴訟に適用することは,立法目的を達成するための必要最小限度の手段をもって行う合理的な制約とはいえないから,事業者の表現の自由(憲法21条1項)及び営業の自由(憲法22条1項)という憲法上の重要な基本的人権を直接的に制約するものであり,違憲というべきである旨主張する。
この点に関し,事業者がその取り扱う商品等につき,その効果や性能について表示して広告することは,営利活動に関するものであり,憲法22条1項による保障に加え,憲法21条1項による保障が及ぶと解する余地があるとしても,公共の福祉による制約を受けるものというべきであって,規制の目的が正当であり,その目的のために制約が必要とされる程度と,制約される自由の内容及び性質,具体的な制約の態様及び程度等を較量して,当該規制による制約が必要かつ合理的なものとして是認されるものである限り,憲法の許容するところであると解するのが相当である(最高裁昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号586頁,最高裁平成12年(オ)第1965号,同年(受)第1703号同14年2月13日大法廷判決・民集56巻2号331頁,最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁,最高裁平成24年(オ)第888号同26年5月27日第三小法廷判決・集民247号1頁等参照)。そして,法4条2項は,前記(2)のとおり,公正な競争を確保し,一般消費者の利益を保護するという目的を達成するため,公正な競争を阻害し一般消費者の利益を損なうおそれの大きい商品の品質等の優良性を強調する表示について迅速かつ適正な審査を行い,速やかに所要の措置を行うことを可能とすべく設けられた規定であり,その規制の目的は正当である。また,商品等に付された表示が実際のものよりその効果や性能などの品質その他の内容において著しく優良であると示す場合には,公正な競争を阻害し一般消費者の利益を損なうおそれが大きい一方,事業者は一般消費者に販売する商品等に関する情報の取得や集積が容易な立場にあることからすれば,事業者が当該商品等について効果や性能の優良性を示す表示を行う場合には,あらかじめ合理的根拠資料を備えた上で,これに基づいて当該表示を行う必要があり,当該表示に合理的根拠の裏付けがあるのであれば当然に上記の過程を経るべきものといえる。そして,法4条2項は,事業者に対し,合理的根拠資料を提出する機会を与えた上で,これが提出されない場合に初めて事業者がした表示を同条1項1号に該当する表示(優良誤認表示)とみなし,措置命令の発令を可能とするものである。さらに,発令される措置命令の内容も,「その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項」であり(法6条1項),当該表示自体の抑止に必要な範囲を超えた内容の命令を行うことが許容されているものではない(本件各措置命令の内容についてみても,本件商品の販売自体を禁ずるものではなく,合理的根拠資料を具備すれば,本件各表示と同様の表示を再び行うことも可能な内容となっている。)。加えて,消費者庁長官は,法4条2項及び6条に基づき措置命令をした後であっても,事業者から,措置命令前に提出されていれば合理的根拠資料に該当すると認められる資料の提出があったときは,当該措置命令を将来に向かって撤回すべき義務を負うことになる(上記資料の提出後もみなし規定の効果は維持され,当該措置命令がその処分時において適法であるとの評価に変わりはない一方で,上記資料の提出によって当該表示を裏付ける合理的な根拠が示され,優良誤認表示との擬制の基礎は失われる以上,その後も当該措置命令の撤回をしないことは処分権者としての裁量権の範囲を超えるとの評価を受けることになる。)ものと解されるので,措置命令により事業者が受ける制約もその後の資料の提出を踏まえた撤回により解消される余地があり,これにより事業者の手続的利益は上記の範囲でその保護が図られるものといえる(もっとも,後記2において説示するところによれば,本件では,本件各措置命令の前後を通じて現在に至るまで,本件訴訟において提出された証拠を含め,いまだ合理的根拠資料に該当すると認め得る資料の提出がされているとは認め難いものといわざるを得ない。)。
以上に鑑みると,法4条2項のみなし規定は,法6条に基づく措置命令のみならずその取消訴訟にも適用されるとの解釈を前提としてその内容を検討しても,規制の目的が正当であり,これにより事業者が受ける制約がその正当な目的を達成するための手段として必要かつ合理的な範囲にとどまるものということができる。
したがって,法4条2項の規定を法6条に基づく措置命令の取消訴訟に適用することが憲法21条1項及び22条1項に違反するものであるとはいえないから,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。2
争点(2)(本件各表示に係る合理的根拠資料の提出の有無)について(1)

合理的根拠資料に該当するか否かの判断基準
本件運用指針は,法4条2項の規定により事業者から提出された資料(提
出資料)が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには,①提出資料が客観的に実証された内容のものであること,②表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることという各基準を満たす必要があるものとしている。また,本件運用指針は,上記①の客観的に実証された内容のものとは,㋐試験ないし調査によって得られた結果又は㋑専門家,専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献のいずれかに該当するものとし,上記㋐を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合,当該試験ないし調査の方法は,表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要があり,これらの方法が存在しない場合には,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があるものとしている。
本件運用指針の示すこれらの基準は,前記1(2)の法4条2項の趣旨等に加え,事業者は,当該商品等について一般消費者と比べて多くの情報を有している上,自ら表示を行っている以上,当該表示が同条1項1号に定める優良誤認表示に該当しないことを証明する程度の資料の提出を求めても公平の観念に反しないこと等に照らして,同条2項の解釈として妥当なものというべきであり,これらの基準を満たさない場合には,特段の事情がない限り,合理的根拠資料に該当しないものというべきである。
(2)

資料1について
原告らは,資料1(乙6の1)によって,本件商品の放射率が0.049以下という結論が実証されている旨主張する。そこで,以下,この点について検討することとする。

認定事実
前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)

資料1の概要
資料1は,膜厚21㎛の塗料(その材質は本件商品の表面層にある本
件塗料と同一である。)である試験体(本件試験体)をあらかじめ作成した上で,埼玉県工業技術センターが,分光光度計を用いて4000ないし370cm-1の波数域(波長の逆数であり,2.5ないし27㎛の波長域である。)における本件試験体の透過率を測定し,その結果について,縦軸を透過率,横軸を波数とする本件スペクトルを作成し,平成14年8月21日付け「試験成績書」に添付したものである。
なお,資料1の中には,本件スペクトルを踏まえて本件塗料の放射率を示すために原告らが作成した「放射熱吸収率測定試験報告書」と題する書面があるところ,その内容は,ランベルト・ベールの法則により本件スペクトルに係る測定結果を補正し,JISR3106の(7)に準拠して膜厚3㎛の本件塗料の透過率の合計を求めると95.1%となるため,本件塗料の放射率は0.049以下であることが確認されたとするものであり,ガラスの放射率は0.9ないし0.95である旨が参考として付記されている。
(以上につき,乙6の1,同14の6,弁論の全趣旨)
(イ)

JISR3106の放射率に関する定め
日本工業規格であるJISR3106は,建築用の板ガラス類の常
温熱放射の放射率等を分光測光器を用いて求める試験方法等を規定しているところ,当該放射率の算定は,付表3に記載された選定波長(5.5ないし50㎛の波長域において選定した30点の波長)における分光反射率から283Kの熱放射に対する反射率を計算し,透過率が0であることを前提として,1から当該反射率を差し引くことにより求めるものとされている。なお,測定波長範囲の上限が50㎛に達しない分光測光器では,その上限波長における分光反射率の値をそれ以上の波長における値として用いるものとされている。(甲19)
(ウ)

本件商品
本件商品は,厚さ3㎛の本件塗料,厚さ50㎛のポリエチレンテレフ
タレートの本件基材(いわゆるPETフィルム)及び厚さ20㎛の本件粘着材によって構成されているフィルムである(前記前提事実(2)ア)。なお,常温熱放射の波長域における本件基材の放射率は0.87ないし0.91であり,同波長域におけるガラスの放射率は0.90ないし0.95である(乙6の1〔3枚目〕,同8の1〔5枚目〕,弁論の全趣旨)。
(エ)

接着する物体間における放射
赤外線に対して均一な性質を示す物体の表面に別の一定程度赤外線を
透過する半透明の物体を貼った場合,基板となっている物体からの赤外線が表面に貼った半透明の物体を通り抜けて外部に放射される現象が発生する(乙17)。

検討
(ア)

上記認定事実(ア)のとおり,資料1のうち埼玉県工業技術センター
が作成した資料は,平成14年8月21日付け「試験成績書」及び本件スペクトルであるところ,その内容は,分光光度計を用いて4000ないし370cm-1の波数域(2.5ないし27㎛の波長域)における膜厚21㎛の本件試験体の透過率を測定し,その結果について,縦軸を透過率,横軸を波数(波長の逆数)とするスペクトルを示したものにとどまる。
そして,常温熱放射の波長域は5.5ないし50㎛であるところ(前記前提事実(4)ウ(ア)),本件スペクトルにおいては27ないし50㎛の波長域における本件試験体の透過率のスペクトルが明らかにされていない。
このように,資料1のうち埼玉県工業技術センターが作成した上記資料のみによっては,本件試験体の常温熱放射の波長域における透過率を確認することはできない。
(イ)

上記認定事実(ア)のとおり,本件各資料の中には,原告らが作成し
た「放射熱吸収率測定試験報告書」と題する書面があるところ,その内容は,ランベルト・ベールの法則により本件スペクトルに係る測定結果を補正し,JISR3106の(7)に準拠して膜厚3㎛の本件塗料の透過率の合計を求めると95.1%となるため,本件塗料の放射率は0.049以下であることが確認されたとするものである。
しかしながら,そもそも,原告らが作成した上記書面を含む資料1には,本件スペクトルがあるだけで,常温熱放射の波長域における本件試験体の透過率やその算出過程を示す記載はなく,いかなる算出過程によって本件塗料の透過率を95.1%と記載したのかも不明である。また,上記「放射熱吸収率測定試験報告書」は,「JISR3106の(7)に準拠して」と記載しているところ,これはJISR3106が規定する建築用の板ガラス類の常温熱放射の放射率の算定方法に準拠する趣旨をいうものと解される。しかしながら,上記認定事実(イ)のとおり,当該放射率の算定は,JISR3106の付表3の選定波長における分光反射率から283Kの熱放射に対する反射率を計算し,透過率が0であることを前提として,1から当該反射率を差し引くことにより求めるものであるところ,本件スペクトルは本件試験体の反射率ではなく透過率を測定した結果を示すものであるから,JISR3106の上記算定方法にそのまま準拠することはできず,いかなる意味においてこれに準拠したのかがその記載自体からは明らかでない。
この点につき,原告らは,JISR3106の上記算定方法について,分光反射率を本件試験体の選定波長における透過率に置き換えて最終的に放射率を算出したものであるところ,そのように算出しても正しい結果が得られる道理であり,本件塗料の放射率を算定する前提として,本件試験体の常温熱放射の波長域における透過率が0.705(70.5%)であった旨主張する。
しかしながら,資料1には,本件スペクトルが表示されているものの,選定波長における本件試験体の透過率の数値を示す記載がない上,本件試験体の常温熱放射の波長域における透過率が0.705(70.5%)であることやその算出過程を示す記載はなく,どのような根拠や方法によってその透過率を算出したのかが不明である。
(ウ)

上記認定事実(ア)のとおり,資料1は,本件塗料と同一の材質を有
する本件試験体の透過率を測定した上で,原告らにおいて本件塗料の放射率は0.049以下であることが確認されたと結論付けたものである。もっとも,上記認定事実(エ)のとおり,赤外線に対して均一な性質を示す物体の表面に別の一定程度赤外線を透過する半透明の物体を貼った場合,基板となっている物体からの赤外線が表面に貼った半透明の物体を通り抜けて外部に放射される現象が発生する。
そして,上記認定事実(ウ)のとおり,本件商品は,厚さ3㎛の本件塗料,厚さ50㎛のポリエチレンテレフタレートの本件基材(いわゆるPETフィルム)及び厚さ20㎛の本件粘着材によって構成されているフィルムである。また,常温熱放射の波長域におけるガラスの放射率は0.90ないし0.95であるところ,本件基材は,同波長域における放射率が0.87ないし0.91であり,ガラスに近い放射率を有するものである。
このように,資料1は本件商品を試験体としてその透過率を測定したものではない上,本件基材が,本件塗料の16倍以上の膜厚を有し,常温熱放射の波長域においてガラスに近い高い放射率を有することに鑑みると,仮に本件塗料の常温熱放射の波長域における放射率が0.049以下であったとしても,本件商品の同波長域における放射率がこれと同じであることが実証されているとはいえない。
(エ)

なお,本件商品はガラスに貼って使用するものであるところ(前記
前提事実(2)ア),資料1はガラスに貼った状態における本件塗料ないし本件商品の常温熱放射の波長域における放射率を測定したものではないから,膜厚3㎛である本件塗料の1000倍もの厚さを有する3㎜(3000㎛)のガラスに本件商品が貼られた状態において,同波長域における放射率が0.049以下であるとする本件商品の性能がそのまま発揮されることが実証されているとはいえない。
すなわち,上記認定事実(エ)のとおり,赤外線に対して均一な性質を示す物体の表面に別の一定程度赤外線を透過する半透明の物体を貼った場合,基板となっている物体からの赤外線が表面に貼った半透明の物体を通り抜けて外部に放射される現象が発生すると認められるのであるから,仮に本件商品の常温熱放射の波長域における放射率が0.049以下であったとしても,板ガラスからの同波長域における放射は,大部分が本件商品を透過して室内側へ入ることになるものといえる。
(オ)

小括
以上に説示したところに鑑みると,資料1に係る試験ないし調査の方
法は,表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものであるとはいえず,かつ,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものであるともいえない。
したがって,資料1によって,本件商品の放射率が0.049以下という結論が実証されているとはいえない。また,本件商品を板ガラスの室内側に貼付した場合,夏季において,室内物質から再放射された常温熱放射の波長域における電磁波が本件商品を透過して板ガラスに吸収され,板ガラスの両側の表面の放射率に大きな差がある結果,板ガラスからの再放射が室外側により多く生じ,室内の熱が室外へ放出されるということが実証されているということもできない。

原告らの主張について
(ア)

原告らは,資料1における塗料の透過率及び放射率の算出は,資料
1の測定結果から計算で求められるものであり,その計算方法は専門家にとって自明である旨主張する。
しかしながら,資料1のうち埼玉県工業技術センターが作成した資料によっては,本件試験体の常温熱放射の波長域における透過率を確認することができないこと,資料1には,常温熱放射の波長域における本件試験体の透過率やその算出過程を示す記載はなく,資料1のうち原告らが作成した書面には本件塗料の透過率が95.1%である旨記載されているものの,その算出過程が不明であることは,上記ウ(ア)及び(イ)において説示したとおりである。この点につき,原告らも,資料1の測定結果や計算方法の具体的な数値を明らかにしていない上,具体的な算出過程については,透過率につき当時の「数値表」を紛失したとの理由で,再現することができない旨を自認しているところである。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(イ)

原告らは,資料1の実測データである本件スペクトルからより精度
の高い区分求積法により客観的に透過率及び放射率を算出し,かつ,資料1の本件スペクトルに記載がない部分についてJISR3106が定める方法で選定波長の数値として算出を行った結果,21㎛の本件試験体の透過率は約0.647と算出され,膜厚3㎛の本件塗料の放射率は,この透過率からランベルト・ベールの法則及びキルヒホッフの法則という物理法則によって機械的,一義的に算出し,0.06となった旨主張する。そして,原告らは,この主張に沿う証拠として「区分求積法による透過率(放射率)再検証についての報告書」(甲45)を提出している。
しかしながら,上記証拠(甲45)は,消費者庁長官が定めた本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出期限を経過した後に提出されたものであるところ(争いがない。),区分求積法による本件試験体の透過率の算出方法は,資料1におけるJISR3106に準拠したとされる算出方法とは全く異なるものであるから,資料1の内容を説明するものや補足するものであるとはいえず,資料1が合理的根拠資料に該当するか否かを判断するために参酌し得るものであるとはいえない。
(ウ)

原告らは,本件商品の遮熱のメカニズムについては特許査定を受け
て登録されているところ,仮に,放射が物体表面から起こるという現象が物理法則に反するのであれば,出願された発明は自然法則を利用した発明ではなく(特許法29条1項柱書き),かつ,物理法則に反する以上実施可能性もない(特許法36条4項1号)ということになり,特許要件を欠くものとして拒絶の理由があったことになるが,拒絶の理由がなかったと判断されたことは,放射が物体表面から起こることを前提とする特許発明が物理法則に反するものではないからにほかならないから,本件商品の製品としての放射率は表面を形成する本件塗料の放射率ということになるのであり,これは本件商品をガラスに貼付した状態においても異ならない旨主張する。
この点につき,特許法における発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうところ(同法2条1項),自然法則に反するものは発明とはいえないが,自然法則を結果として利用するものであれば足り,学術的な意味において正確かつ完全な自然法則の認識は必要ではなく,その利用によって一定の結果が得られるものであれば発明は成立し得ると解される。また,特許庁における審査は,審査官が,特許出願された発明について,特許の要件(特許法29条)である産業上の利用可能性,新規性,進歩性等について,あるいは明細書の記載事項,出願人に関する要件等の手続事項に関する不備の存否等について審査するものであり(同法49条),その結果,拒絶の理由が発見されるか否かの判断を目的としていることから(同法51条),審査官から特許をすべき旨の査定を受けて特許権の設定登録がされたとしても,それは審査官が特許出願について拒絶の理由を発見しなかった旨の判断をしたことを示すものにとどまるのであって,特許公報に掲載された自然法則の利用方法の内容が実証されていることを担保するものではない。そして,前記前提事実(4)イ(イ)のとおり,熱放射とは,熱を有する物体の表面から放射された電磁波が,空間を移動し,他の物体の表面に到達して吸収され,分子等を振動させて熱が生ずることによって熱が移動する現象をいうものとされているが,これは熱放射の一般論について述べるものであるから,均一な性質を有する単一の物体の表面からの放射について述べるものであると解され,吸収率(放射率),反射率及び透過率に係る物性値(物質が有している性質を一定の尺度で表したものをいう。以下同じ。)の異なる二つ以上の物体を貼り合わせた場合において,熱を有する物体から他方の物体への放射がないことを意味するものではないと解するのが相当である。
かえって,前記認定事実(エ)のとおり,赤外線に対して均一な性質を示す物体の表面に別の一定程度赤外線を透過する半透明の物体を貼った場合,基板となっている物体からの赤外線が表面に貼った半透明の物体を通り抜けて外部に放射される現象が発生すると認められるのであるから,本件塗料の常温熱放射の波長域における放射率が本件商品の同波長域における放射率と等しいとはいえないというべきである。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(3)

資料2について
原告らは,資料2(乙6の2)によって,本件商品を窓ガラスに貼付することによって,夏季における遮熱効果が得られること,遮蔽係数が0.5相当となることが実証されている旨主張する。そこで,以下,この点について検討することとする。


認定事実
前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)

資料2の概要
資料2は,発泡スチロール製箱(ボックス)を用いて,太陽光熱照射
によるボックス内の温度上昇を測定することで,シーグフィルムの日射遮断特性を把握することを目的として行われた実験の方法や結果等を記載したものである。
実験方法は,沖縄県浦添市所在の財団法人沖縄県環境科学センターの環境総合調査研究棟の屋上において,複数の試験用のガラスをそれぞれ発泡スチロール製箱(外寸40×33×25㎝,内寸34×27×23㎝)の天面に密閉固定し,発泡スチロール製のボード上に並べて設置した上で,晴天時における太陽光の下において,箱内に固定してある熱電対によって箱内温度を3日間(平成13年7月26日,同年8月10日及び同月27日)測定するものである。
測定結果については,各測定日について観測時間ごとの全ての測定値(各箱内温度と外気温)を合計し,その合計値が最も大きい値を示した時間の各測定値をその測定日の「最高温度」とし,測定日3日間の「最高温度」の平均値(以下「平均最高温度」という。)を算出した。試験用のガラスとして使用されたのは次の6種類のガラスであり,その平均最高温度は以下のとおりである(遮蔽係数はカタログ値である。)。
①3㎜フロートガラス(遮蔽係数1.00)

68.3℃

②本件商品を貼付した3㎜フロートガラス

66.6℃

③ブロンズ20を貼付した6㎜フロートガラス(遮蔽係数0.52)66.7℃
④WH72CLARL(6㎜)(遮蔽係数0.70)
68.4℃

⑤熱線吸収ガラス(6㎜)(遮蔽家数0.74)

71.0℃

⑥熱線吸収ガラス(12㎜)(遮蔽係数0.57)
65.2℃

なお,実際には11種類のガラスについて実験が行われたが,実験結果として正式に記載されているのは上記の6種類のガラスに関するものである。
そして,原告らは,資料2の「ボックス温度測定実験結果」と題する書面において,①実験箱内の平均最高温度について,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスは,3㎜フロートガラスよりもが1.7℃低くなり,ブロンズ20を貼付した6㎜フロートガラスとほぼ同じ結果となった,②本件商品を貼付した3㎜フロートガラスとこれを貼付していない3㎜フロートガラスの日射熱透過率はほぼ同じであるから,前者の方が後者よりも箱内温度が低くなったのは,本件商品を貼付することにより,ガラス面から放熱する熱量が増加したことを意味する,③本件商品を貼付した3㎜フロートガラスの日射遮断特性は,遮蔽係数0.5のガラス及びフィルムと同等の日射遮断特性を有することが確認された旨を記載している。
(以上につき,乙6の2,弁論の全趣旨)
(イ)

本件商品を貼付したガラスの日射透過率
原告翠光トップラインが分光光度計を用いて実施した測定によれば,
本件商品を貼付した3㎜フロートガラスの350ないし2100㎚の波長域における日射透過率は81.5%,日射反射率は9.3%,日射吸収率は9.2%であり,380ないし780㎚の波長域における可視光線透過率は89.2%であった。また,同測定によれば,3㎜フロートガラスの350ないし2100㎚の波長域における日射透過率は86.6%,日射反射率は8.4%,日射吸収率は5%であり,380ないし780㎚の波長域における可視光線透過率は90.6%であった。(乙6の11)
なお,一般には,厚さ3㎜の板ガラスの日射熱取得率は約88%,日射透過率は約86%,日射反射率は約8%,日射吸収率は約6%とされている(前記前提事実(6))。
(ウ)

JISA5759の遮蔽係数に関する定め
日本工業規格であるJISA5759は,建築窓ガラス用フィルム
の規格について規定しているところ,遮蔽係数とは,フィルムを貼付した厚さ3㎜の板ガラスに入射した日射のうち,一度吸収された後に入射面の反対側に再放射される分をも含んで通過する分(すなわち,透過分と再放射分の和)の率を,板ガラスだけの場合の率を1として表した係数をいうものとしている(前記前提事実(5)ア(オ))。
そして,JISA5759は,遮蔽係数の算出方法について,要旨,①板ガラスにフィルムを貼付した試験片を作成し,②分光光度計を用いて試験片の350ないし2100㎚の波長域における日射透過率及び日射反射率を計算した上で,③厚さ3㎜の板ガラスの日射透過率に室内側へ再放射される放射率を合計したものを分母とし,試験片の日射透過率に室内側へ再放射される放射率を合計したものを分子として計算した数値を遮蔽係数とするものとしている(甲20)。

検討
(ア)

上記認定事実(ウ)のとおり,遮蔽係数は,JISA5759にお
いて定義されている概念であり,フィルムを貼付した厚さ3㎜の板ガラスに入射した日射のうち,一度吸収された後に入射面の反対側に再放射される分をも含んで通過する分(すなわち,透過分と再放射分の和)の率を,板ガラスだけの場合の率を1として表した係数をいう。すなわち,遮蔽係数は,厚さ3㎜の板ガラスの日射透過率に室内側へ再放射される放射率を合計したものを分母とし,試験片の日射透過率に室内側へ再放射される放射率を合計したものを分子として計算することにより算出される。
なお,JISR3106において定義されている日射熱取得率は,窓ガラス面に垂直に入射する日射について,ガラス部分を透過する日射の放射束とガラスに吸収されて室内側に伝達される熱流束との和の入射する日射の放射束に対する比をいうものとされていることから(前記前提事実(5)イ(ウ)),厚さ3㎜の板ガラスの日射熱取得率を分母とし,フィルムを貼付したガラスの日射熱取得率を分子として計算した数値は,遮蔽係数とおおむね同じ値であるということができる(甲18の1〔スライド番号45〕)。
このように,遮蔽係数は,フィルムを貼付した板ガラスに入射した日射のうち室内側に入るエネルギーの割合に着目し,フィルムを貼付していない板ガラスの同割合と対比させるものであり,フィルムを貼付した板ガラスの物性値を示すものであるといえる。そして,遮蔽係数の算出において,室内側から室外側に流出する熱エネルギーについては考慮されていない。
(イ)

本件商品は,住宅やオフィス等の窓ガラスに貼って使用する透明な
フィルムであり(前記前提事実(2)ア),上記認定事実(イ)によれば,3㎜フロートガラスとこれに本件商品を貼付したものの可視光線透過率(前者は90.6%,後者は89.2%)はほぼ同等である。そして,上記認定事実(イ)のとおり,原告翠光トップラインが分光光度計を用いて測定した3㎜フロートガラスとこれに本件商品を貼付したものの日射透過率(前者は86.6%,後者は81.5%),日射反射率(前者は8.4%,後者は9.3%)及び日射吸収率(前者は5%,後者は9.2%)を前提とすれば,両者の日射透過率の差や日射を吸収したガラスから室内側へ再放射される割合の差を考慮しても,両者の日射熱取得率に顕著な差はなく,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスの遮蔽係数は1に近いものとなることが推定されるものといえる。この点については,原告らも,本件商品が日射を遮蔽する製品ではないことを自認しているところである。
(ウ)

原告らは,本件商品が日射を遮蔽する製品ではないことから,遮蔽
係数によってその性能を正しく表示することができないとして,遮蔽係数相当値を確認するために資料2に係る実験を実施した旨主張する。そして,資料2に係る実験の概要は上記認定事実(ア)のとおりであり,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスに係る実験箱内の平均最高温度(66.6℃)は,3㎜フロートガラスに係る実験箱内の平均最高温度(68.3℃)よりも低かった一方,ブロンズ20を貼付した6㎜フロートガラス(遮蔽係数0.52)に係る実験箱内の平均最高温度(66.7℃)とほぼ同程度であったことから,本件商品の遮蔽係数は0.5に相当する旨結論付けたものである。
しかるところ,資料2に係る実験において,実験箱内の温度は,実験箱内に流入する熱量と実験箱外に流出する熱量の収支によって定まる(乙6の2,弁論の全趣旨)。そして,上記認定事実(ア)及び上記(イ)のとおり,3㎜フロートガラスの遮蔽係数が1.00であること,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスの遮蔽係数が1に近いものとなると推定されること,ブロンズ20を貼付した6㎜フロートガラスの遮蔽係数が0.52であるところ,各実験箱内の平均最高温度が上記のとおりであることからすれば,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスに係る実験箱内から流出する熱量の方が,本件商品を貼付していない3㎜フロートガラスやブロンズ20を貼付した6㎜フロートガラスに係る各実験箱内から流出する熱量よりも大きかったことを意味するといえる。この点については,上記認定事実(ア)のとおり,原告らも,資料2の「ボックス温度測定実験結果」と題する書面において,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスとこれを貼付していない3㎜フロートガラスの日射熱透過率はほぼ同じであるから,前者の方が後者よりも箱内温度が低くなったのは,本件商品を貼付することにより,ガラス面から放熱する熱量が増加したことを意味する旨を説明しているところである。
しかしながら,一般に,日射の侵入を受ける閉鎖空間の内部から外部への日射に由来する熱エネルギーの流出は,閉鎖空間の内外の温度差,6面を構成する壁ないしガラスの物性値(熱貫流率),閉鎖空間内の日射を直接受ける物体等の物性値(吸収率,反射率,常温熱放射の波長域における放射率等),閉鎖空間内の対流の状況等の諸条件によって左右されるというべきであるから,仮に本件商品を3㎜フロートガラスに貼付することにより実験箱内から流出する熱量がより大きくなったとしても,それは,資料2に係る実験に使用された実験箱の仕様や実験箱の置かれた当時の外部環境の下における流入する熱量と流出する熱量の収支の結果を示すものであるにとどまり,資料2に係る実験において,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスに係る実験箱内の平均最高温度がブロンズ20を貼付した6㎜フロートガラス(遮蔽係数0.52)に係る実験箱内の平均最高温度とほぼ同程度であったことをもって,直ちに本件商品を貼付した3㎜フロートガラスの一般的な物性値としての遮蔽係数が0.5に相当すると推定されるものということはできないというべきである。
すなわち,ブロンズ20の遮蔽係数(0.52)は,カタログ値であり,JIS規格に準拠して算出された一般的な物性値であるから,ブロンズ20を資料2に係る実験に使用された実験箱のガラスに貼付した場合と人の居住する建物の部屋の窓に貼付した場合とで,その遮蔽係数が異なるものではないといえる。他方,本件商品は,日射を遮蔽する製品ではなく,夏季においてはこれを窓ガラスに貼付することによってガラス面から放熱する熱量が増加するというものであるところ,日射の侵入を受ける閉鎖空間の内部から外部への日射に由来する熱エネルギーの流出は上記の諸条件によって左右されるというべきであるから,資料2に係る実験において,本件商品を貼付した3㎜フロートガラスに係る実験箱内の平均最高温度とブロンズ20を貼付した6㎜フロートガラスに係る実験箱内の平均最高温度がほぼ同程度であったとしても,資料2に係る実験において使用された実験箱(発泡スチロール製の小さな箱(外寸40×33×25㎝,内寸34×27×23㎝))とは大きさ,外壁や内部を構成する物体の材質(物性値),窓ガラス部分の比率,内部の対流の状況等が全く異なる人の居住する建物の部屋の窓に本件商品を貼付した場合において,ブロンズ20と同程度の遮熱効果が生ずることが実証されているとはいえないというべきである。
したがって,資料2において説明されている本件商品の遮蔽係数が0.5に相当する旨の結論も,資料2に係る実験に使用された実験箱の仕様や実験箱が置かれた外部環境と同一の条件の下においてのみ妥当し得るものということができるのであって,これと異なる他の条件の下においてそのような結論を一般化することはできない。
(エ)

小括
以上に説示したところに鑑みると,資料2に係る実験の方法は,実験
箱に係る諸条件の同一性等について検討するまでもなく,表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものであるとはいえず,かつ,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものであるともいえない。
したがって,資料2によって,本件商品を人の居住空間の窓ガラスに貼付することにより夏季における遮熱効果が得られること,遮蔽係数が0.5に相当することが実証されているとはいえない。

原告らの主張について
(ア)

原告らは,資料2では,比較対象の各箱の条件について,1つのパ
ラメーター(試験体のスペック)以外の条件が一致した状況において,箱内温度がほぼ同じ結果になっている二つの箱を比較しており,この場合,箱内温度が一致するにもかかわらず,試験体の熱性能が異なる結果となるパラメーターはないと考えられ,箱内温度が一致する二つの箱について,その性能(遮蔽係数相当値)が同等と推定することは極めて自然で測定として十分に成立するのであり,ガラス単体とガラスにフィルムを貼付した場合について,単純に箱内の温度上昇を測定して比較することは,国立研究開発法人建築研究所や大手メーカーによっても実施されており(甲53,56),室内温度測定によって窓用フィルム商品の性能に結び付けることも各大手メーカーにより実施されている(甲55)旨主張する。
しかしながら,資料2において説明されている本件商品の遮蔽係数が0.5に相当する旨の結論も,資料2に係る実験に使用された実験箱の仕様や実験箱が置かれた外部環境と同一の条件の下においてのみ妥当し得るものということができるのであって,これと異なる他の条件の下においてそのような結論を一般化することができないことは,上記ウ(ウ)において説示したとおりである。また,原告らの引用する証拠(甲53,55及び56)は,いずれも,資料2に係る実験とは目的も内容も異なるものであり,日射反射率(特に近赤外線の波長域における日射に係る反射率)が既に判明しているフィルムないし塗料を用いた場合の室内ないし箱内の温度がこれを用いない場合に比べて低下したという実験結果を記載するものにとどまり,箱内温度を比較することによって当該フィルムないし塗料の物性値を推測する内容のものではない。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(イ)

なお,資料2に係る原告らのその余の主張は,資料2に係る実験に
ついて箱内温度に影響を与える他の要因を考慮した形跡がうかがわれないことなどを指摘する被告の主張に対し,実験箱に係る諸条件は同一であり又は結論に影響を与えるものではない旨の反論を述べるものである。
しかしながら,上記ウ(ウ)に説示したところによれば,上記ウ(エ)の結論は,資料2に係る実験において,実験箱に個体差があったか否かなど,ガラス面以外の諸条件に結果に影響を与える差異があったか否かにかかわらないものであるから,仮に原告らの主張を前提としたとしても,上記ウ(エ)の結論が左右されるものではない。
(4)

資料3について
原告らは,資料3(乙6の3)によって,本件商品をガラスの室内側に貼付することにより,冬季において室内の熱の外部への伝達が抑制され,断熱効果が得られたこと,本件商品の熱貫流率が3.6kcal/㎡・h・℃であることが実証されている旨主張する。そこで,以下,この点について検討することとする。


認定事実
前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)

資料3の概要(乙6の3,弁論の全趣旨)
資料3に係る実験は,秋田市の秋田県工業技術センターにおいて,既製のアルミサッシ枠(60×60㎝。本件アルミサッシ枠)に取り付けた試験用のガラス(取り付け後のガラス部分の面積は0.229㎡であり,本件アルミサッシ枠の面積は0.131㎡である。)を発泡スチロール製の箱(外寸90×90×90㎝,壁の厚さ15㎝。本件ミニモデル)の一側面に密閉固定し,本件ミニモデルを低温に保った大型恒温槽内に配置し,本件ミニモデルの内部の温度を20℃に保つためのヒーターの消費電力を測定し,その結果から上記試験用のガラスの熱貫流率を算出したものである。


試験用のガラスは,①厚さ3㎜の板ガラス,②本件商品を貼付した厚さ3㎜の板ガラス,③厚さ3㎜のガラス,6㎜の空気層及び3㎜のガラスにより構成された複層ガラス(本件複層ガラス)の3種類であり,試験用のガラスごとに実験を実施し,設定温度差を25℃,20℃又は15℃(大型恒温槽の温度をマイナス5℃,0℃又は5℃とする。)とした場合における上記ヒーターの各消費電力をそれぞれ12時間にわたって3回測定した。各実験における積算消費電力(kW)の測定結果(3回の測定結果の平均値)は,次のとおりである。(a)

設定温度差が25℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス

0.750

本件複層ガラス
(b)

0.779

0.726

設定温度差が20℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス

0.601

本件複層ガラス
(c)

0.619

0.582

設定温度差が15℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス

0.431

本件複層ガラス

0.449

0.432

そして,上記積算消費電力の測定結果から熱貫流率の実測値(kcal/㎡・h・℃)を計算すると,次のとおりとなった。
(a)

設定温度差が25℃の場合
3㎜ガラス

10.40

本件商品を貼付した3㎜ガラス
本件複層ガラス
(b)

9.91
9.65

設定温度差が20℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス
10.14
9.72

本件複層ガラス
(c)

9.42

設定温度差が15℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス

9.57

本件複層ガラス

9.84

9.27

また,上記熱貫流率の実測値は,熱貫流率のカタログ値(3㎜ガラスにつき5.1,本件複層ガラスにつき2.9)よりも大きな計測結果となったことから,比例換算をして次のとおり本件商品を貼付した3㎜ガラスの熱貫流率(kcal/㎡・h・℃)を算出した。
(a)

設定温度差が25℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス

3.6

本件複層ガラス
(b)

5.1

2.9

設定温度差が20℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス

3.8

本件複層ガラス
(c)

5.1

2.9

設定温度差が15℃の場合
3㎜ガラス
本件商品を貼付した3㎜ガラス

4.1

本件複層ガラス

5.1

2.9

そして,原告らは,資料3の「ミニモデルによる断熱制御基材の機能性評価」と題する書面において,本件商品を熱貫流率5.1(kcal/㎡・h・℃)の3㎜ガラスに貼付させると,熱貫流率が3.6
(kcal/㎡・h・℃)となり,断熱効果を向上できることが確認された旨を記載している。
(イ)

熱貫流率
熱貫流率とは,壁等の両側(室内と室外)の空気温度に1℃(K)の
差があるときに,1時間当たりに壁等1㎡を通過する熱量(W/㎡・K)のことをいう。熱貫流率は,高温側の壁等の表面における熱伝達,壁等の内部における熱伝導,低温側の壁等の表面における熱伝達を総合した壁等の全体の熱の伝わりやすさを表す値であり,その値が小さいほど断熱性に優れているといえる。(前記前提事実(4)イ(エ)c)(ウ)

JISA5759の熱貫流率に関する定め
日本工業規格であるJISA5759は,建築窓ガラス用フィルム
の規格について規定しているところ,熱貫流率とは,フィルムを貼付した厚さ3㎜の板ガラスについてその両側の空気温度差が1℃のとき,面積1㎡当たり単位時間に通過する熱量をいうものとしている。
そして,JISA5759は,熱貫流率(U(W/㎡・K))の算出について,要旨,JISR3106所定の方法により算出した室外側の放射率の値(εe)と室内側の放射率の値(εi)を用い,次の式によって求めるものとしている。
1/U=(1/(4.9εe+16.3))+0.003+(1/(5.4εi+4.1))
なお,上記各放射率は,板ガラスの常温熱放射の波長域における透過率が0であることを前提としている。
(以上につき,甲19,20,弁論の全趣旨)
(エ)

ガラスやアルミサッシの熱貫流率等
熱貫流率(kcal/㎡・h・℃)のカタログ値は,3㎜ガラスが5.
1,本件複層ガラスが2.9とされている(乙6の3,弁論の全趣旨)。
また,アルミサッシの熱伝導率は237.3(W/m・K)であり,JISA2102-1は,アルミサッシの熱貫流率は8.8W/㎡・K(7.57kcal/㎡・h・℃)である(乙9の2,同16)。ウ
検討
(ア)

上記認定事実(ア)のとおり,資料3に係る実験は,JISA57
59の定める熱貫流率の算出方法(上記認定事実(ウ))を用いず,本件アルミサッシ枠に取り付けた試験用のガラス(3㎜ガラス,本件商品を貼付した3㎜ガラス又は本件複層ガラス)を本件ミニモデルの一側面に密閉固定し,本件ミニモデルを低温(マイナス5℃,0℃又は5℃)に保った大型恒温槽内に配置し,本件ミニモデルの内部の温度を20℃に保つためのヒーターの消費電力を測定し,12時間の積算消費電力から試験用のガラスの熱貫流率の実測値を算出し,その実測値と3㎜ガラス及び本件複層ガラスのカタログ値を比例換算することにより,本件商品を貼付した3㎜ガラスの熱貫流率を算出したとするものである。そして,資料3は,12時間の積算消費電力から算出した試験用のガラスの熱貫流率の実測値(kcal/㎡・h・℃)について,設定温度差25℃,20℃,15℃に応じて,それぞれ,3㎜ガラスにつき10.40,10.14,9.84,本件商品を貼付した3㎜ガラスにつき9.91,9.72,9.57,本件複層ガラスにつき9.65,9.42,9.27としている。
しかしながら,資料3にはこれらの熱貫流率の実測値の計算式が示されておらず,どのような根拠や方法によってこのような数値になるのかが不明である。
(イ)

また,上記認定事実(ア)及び(エ)のとおり,本件ミニモデルにおい
て,試験用のガラスは本件アルミサッシ枠(面積0.131㎡)に取り付けられているところ,本件アルミサッシ枠の熱貫流率が3㎜ガラスや本件複層ガラスよりも高いことからすれば,資料3に係る実験において,12時間にわたり15℃ないし25℃の温度差のある大型恒温槽内に置かれた場合には,試験用のガラスだけでなく,本件アルミサッシ枠からも相応の熱損失が生じていたとみることができる。
そして,本件ミニモデルは,試験用のガラス面以外の5面が発泡スチロール製の壁(厚さ15㎝)で構成されており,その面積が大きいことからすれば,12時間にわたり15℃ないし25℃の温度差のある大型恒温槽内に置かれた場合には,一般に発泡スチロールの熱伝導率が低く断熱性能が高いとされていること(甲27)を考慮しても,5面の発泡スチロール製の壁からも一定の熱損失が生じていたとみることができる。しかしながら,資料3に係る実験において,積算消費電力の測定結果から熱貫流率の実測値(kcal/㎡・h・℃)を計算するに当たり,本件アルミサッシ枠や発泡スチロール製の壁からの熱損失が考慮されていないことがうかがわれる(乙6の3)。
また,積算消費電力の測定結果から熱貫流率の実測値(kcal/㎡・h・℃)を計算した結果をみるに,3㎜ガラスの実測値は9.84ないし10.40とカタログ値(5.1)の約2倍の値となっており,本件複層ガラスの実測値も9.27ないし9.65とカタログ値(2.9)の3倍以上の値となっており,いずれもカタログ値から大きくかい離している上,アルミサッシの熱貫流率(7.57)よりも大きな値となっており,不自然である。
さらに,3㎜ガラスの熱貫流率のカタログ値(5.1)は,本件複層ガラスの熱貫流率のカタログ値(2.9)の約1.8倍であるところ,資料3に係る実験においては,3㎜ガラスの熱貫流率の実測値(9.84ないし10.40)は,本件複層ガラスの熱貫流率の実測値(9.27ないし9.65)の約1.06倍ないし約1.08倍にすぎない。このように,資料3に係る実験において算出された試験用のガラスの熱貫流率の実測値は,本件ミニモデルの本件アルミサッシ枠部分及び発泡スチロール部分からの熱損失があり,積算消費電力に影響を与えていた可能性があることを踏まえた検証や補正をしないまま算出されており,また,3㎜ガラス及び本件複層ガラスの熱貫流率の実測値やその相互の比率がカタログ値から大きくかい離していることに鑑みると,このような実測値に基づいて3㎜ガラス及び本件複層ガラスのカタログ値と比例換算することにより本件商品を貼付した3㎜ガラスの熱貫流率を算出することに合理性があるとはいえない。
(ウ)

また,上記認定事実(ア)のとおり,資料3は,12時間の積算消費
電力から算出した試験用のガラスの熱貫流率の実測値(kcal/㎡・h・℃)について,設定温度差25℃,20℃,15℃に応じて,それぞれ,3㎜ガラスにつき10.40,10.14,9.84,本件商品を貼付した3㎜ガラスにつき9.91,9.72,9.57,本件複層ガラスにつき9.65,9.42,9.27としている。
しかしながら,上記認定事実(イ)のとおり,一般に,熱貫流率とは,壁等の両側(室内と室外)の空気温度に1℃(K)の差があるときに,1時間当たりに壁等1㎡を通過する熱量(W/㎡・K)のことをいうものとされており,本来,熱貫流率は一定の値になるものといえる。JISA5759も,熱貫流率について,フィルムを貼付した厚さ3㎜の板ガラスについてその両側の空気温度差が1℃のときに面積1㎡当たり単位時間に通過する熱量をいうものと定義しており,熱貫流率のカタログ値は,3㎜ガラスが5.1,本件複層ガラスが2.9とされている。そして,室内外の温度差が15℃ないし25℃程度の範囲内であれば,熱貫流率は一定になるものといえる(乙9の2〔7頁〕)。
このように,熱貫流率は本来一定の値となるべきところ,資料3に係る実験においては,上記のとおり,設定温度差ごとに試験用ガラスの熱貫流率の実測値が異なっており,測定の精度に問題があったことをうかがわせるものといえる。
(エ)

小括
以上に説示したところに鑑みると,資料3に係る実験の方法は,表示
された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものであるとはいえず,かつ,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものであるともいえない。
したがって,資料3によって,本件商品をガラスの室内側に貼付することにより,冬季において室内の熱の外部への伝達が抑制され,断熱効果が得られたこと,本件商品の熱貫流率が3.6kcal/㎡・h・℃であることが実証されているとはいえない。

原告らの主張について
(ア)

原告らは,以下のとおり,本件アルミサッシ枠の影響が資料3に係
る実験の結果に影響を及ぼさない旨主張するので,この点について検討することとする。

原告らは,熱貫流率の実測値はカタログ値に本件アルミサッシ枠からの熱損失を加えたものであるという関係にあるから,本件アルミサッシ枠からの熱損失は熱貫流率の実測値からカタログ値を控除することによって求めることができ,本件アルミサッシ枠からの熱損失を考慮して,本件アルミサッシ枠部分からの熱放出の影響を除いた熱貫流率を計算した結果は3.66kcal/㎡・h・℃となり,資料3において結論付けられた結果である3.6kcal/㎡・h・℃とほぼ同一であることが確認されている旨主張する。
しかしながら,熱損失は一般に熱量のことを指すものであり,その単位はワット(W),ジュール(J),カロリー(cal)などの単位となるところ,熱貫流率の単位(kcal/㎡・h・℃)とは異なるものであるから,熱貫流率の実測値からカタログ値を控除することによって本件アルミサッシ枠からの熱損失を求めることができるものではない(乙15〔3頁〕参照)。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。

原告らは,窓やサッシの熱抵抗は,①屋外空気から窓,②ガラスやサッシそのもの,③窓から屋内空気の三つの抵抗の直列計算で求められるところ,上記①及び③の抵抗をそれぞれ0.11㎡・K/W,上記②の抵抗を3㎜ガラスにつき0.0039㎡・K/W,アルミニウムにつき0.0000843㎡・K/Wとすると,アルミサッシとガラスの熱抵抗は僅か1.7%の差しかなく,試験体の両側にある温度差は各試験体について全て一定であるから,面積や温度差を掛け合わせてもほぼ同じ結果になることは自明である旨主張する。
しかしながら,仮に3㎜ガラスと本件アルミサッシ枠の熱貫流抵抗に差がなかったとしても,3㎜ガラスと本件アルミサッシ枠の表面温度が異なれば,上記①及び③の空気層の対流熱伝達における抵抗値に差が生じ,流れる熱量も変わってくるところ,本件アルミサッシ枠の表面温度は資料3において明らかにされていないから,本件アルミサッシ枠の影響が資料3に係る実験の結果に影響を及ぼさないと断ずることはできない。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。


原告らは,仮に,熱貫流率の算出について,発泡スチロール部分やアルミサッシ部分の熱貫流率に実際の面積,時間及び試験体の両側にある空気の温度差を掛け合わせて熱流量を計算するなどして熱貫流率を算出した場合,別紙7「本件商品の熱貫流率について」記載のとおり,発泡スチロール部分から熱放出の影響を控除した熱貫流率は3.78kcal/㎡・h・℃,更に本件アルミサッシ枠部分からの熱放出の影響をも控除した熱貫流率は3.48kcal/㎡・h・℃となり,資料3で得られた熱貫流率である3.6kcal/㎡・h・℃と大差がないから,本件アルミサッシ枠は資料3の測定結果に有意な影響を及ぼさなかった事実が認められる旨主張する。
しかしながら,そもそも,別紙7記載の計算は,その記載内容から明らかなとおり,資料3における熱貫流率の算出方法とは全く異なるものであり,仮に結果として得られた熱貫流率に大差がなかったとしても,資料3における熱貫流率の算出方法に係る前示の合理性の欠如を解消するに足りるものではないというべきである。
この点をおくとしても,別紙7記載の計算は,本件アルミサッシ枠の厚みを3㎜としているが,その根拠が不明である。また,資料3に係る実験における各積算消費電力から「発泡スチロール部分」及び「アルミサッシ枠部分」からの熱流量を控除して各試験用のガラスの熱貫流率を算出しているにもかかわらず,3㎜ガラスと本件複層ガラスの熱貫流率のカタログ値に基づき,検量線から求めた回帰式により更に本件商品の熱貫流率を算出している根拠も不明である。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。

原告らは,ミニモデルによる断熱フィルム材の機能性評価試験報告書(甲68)は,資料3と同様の装置を用いて,アルミサッシ製枠を使用せずに発泡スチロール製箱にガラスを直接装着した測定であり,本件アルミサッシ枠の影響を完全に排除した改善実験であるところ,甲68の測定結果である3.8kcal/㎡・h・℃は,資料3で求められた3.6kcal/㎡・h・℃と十分に同等な数値であることから,資料3の測定では本件アルミサッシ枠の影響は大きな誤差とはならず,シーグフィルムの性能を基本的に正しく測定できていたと評価できる旨主張する。
しかしながら,そもそも,上記証拠(甲68)は,消費者庁長官が定めた本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出期限を経過した後に提出されたものであるところ(争いがない。),同報告書における本件商品を貼付した3㎜ガラスの熱貫流率の算出方法は,資料3における熱貫流率の算出方法とは全く異なるものであり,資料3の内容を説明するものや補足するものであるとはいえないから,資料
3が合理的根拠資料に該当するか否かを判断するために参酌し得
るものであるとはいえず,また,仮に結果として得られた熱貫流率に大差がなかったとしても,資料3における熱貫流率の算出方法に係る前示の合理性の欠如を解消するに足りるものではないというべきである。
(イ)

原告らは,本件ミニモデルは厚さ150㎜(15㎝)の発泡スチロ
ール製であり,発泡スチロールの断熱材(甲27,28)で断熱されているものであって,査読付き論文(甲47,48,50,51)においても,50㎜や100㎜の発泡スチロール製の場合に,断熱材で断熱されていることを理由として熱の移動を考慮されておらず,学術界や産業界においては,発泡スチロールという断熱材で断熱されているにもかかわらず,更に熱の移動について手当てを行い,かつ,その量を検証するなどということは行われていないのであるから,本件ミニモデルにつきガラス面以外の5面からの熱の流出を考慮する必要はない旨主張する。しかしながら,前記認定事実(ア)のとおり,資料3に係る実験は積算消費電力から熱貫流率の実測値を算出するものであるから,本件ミニモデルからの熱損失の値は実験の結論を直接左右する重要な事項であるといえる。この点につき,資料3に係る実験において,本件ミニモデルの発泡スチロール部分(5面)からの熱損失の値について検証がされていないため,その値は実際には不明であるところ,原告らの主張する別紙7記載の計算によれば,発泡スチロール部分の熱伝導率を0.04W/m・K,外気側熱伝達抵抗を0.04,室内側熱伝達抵抗を0.11と仮定した場合,例えば,内外の温度差が25℃,試験用のガラスを3㎜ガラスとした実験においては,12時間の発泡スチロール部分(5面)からの積算熱流量は155.3Wになり,全体の積算消費電力779Wの約20%を占めることになるのであるから,その熱損失を考慮する必要がないとはいえない。
他方,原告らの引用する査読付き論文に係る実験は,資料3に係る実験とは目的も内容も異なるものであり,①厚さ100㎜のポリスチレンフォームにより断熱された6基の実験箱を屋外に設置し,その開口部に単板透明ガラスや単板ガラス又は複層ガラスに各種フィルムを貼付したものを取り付け,箱内空気温度の高低の比較等をしたもの(甲47),②厚さ50㎜のポリスチレンフォームに標準試料を貼り付けてその温度を測定し,高反射率塗料として市場で販売されている塗料を用いた試験体の温度と比較するなどして日射反射率等を測定したもの(甲48),③厚さ100㎜のスタイロフォームにより断熱された2基の実験箱を屋外に設置し,屋根への散水の有無に応じて箱内空気温度の高低の比較等をしたもの(甲50),④厚さ100㎜のスタイロフォームにより断熱された2基の実験箱を屋外に設置し,実験箱への散水の有無に応じて箱内空気温度の高低の比較等をしたもの(甲51)であって,いずれも実験箱等からの熱損失の値を直接測定するものではないから,これらの査読付き論文に係る実験において,厚さ50㎜又は100㎜の発泡スチロール(ポリスチレンフォーム又はスタイロフォーム)を通過する熱損失が考慮されていないとしても,そのことをもって,資料3に係る実験において本件ミニモデルの発砲スチロール部分(5面)からの熱損失を考慮する必要がないとはいえないものというべきである。
また,前記ウにおいて説示したところによれば,仮に本件ミニモデルにつきガラス面以外の5面からの熱の流出を考慮する必要がなかったとしても,資料3における熱貫流率の算出方法に係る前示の合理性の欠如を解消するに足りるものではないから,前記ウ(エ)の結論が左右されるものではない。
(ウ)

原告らは,資料3では,恒温室の温度を下げた場合に外表面温度と
恒温室温度の差が大きくなると考えるのが極めて自然であり,その結果として自然対流熱伝達率が大きくなり,熱貫流率の実測値が設定温度差ごとに差異が生じたものと考えるのが妥当であり,この傾向は,各測定において極めて明確に表れており,正しい傾向を示しているから,熱貫流率の「実測値」が温度差によって異なることは不合理ではなく,実験が正しく成立していると評価できる旨主張する。
しかしながら,前記認定事実(イ)のとおり,そもそも,熱貫流率とは,壁等の両側(室内と室外)の空気温度に1℃(K)の差があるときに,1時間当たりに壁等1㎡を通過する熱量(W/㎡・K)のことをいうのであり,内外温度差が1℃(K)であることを前提としている。そして,仮に,原告らが主張するとおり,本件ミニモデルの設定温度差(内外温度差)の拡大に応じて,熱損失が生ずる面の外表面温度と大型恒温槽内の温度との差が拡大し,対流熱伝達率が大きくなり熱損失が増大したとすれば,12時間の積算消費電力の値をそのまま用いて内外温度差が1℃(K)であることを前提とする熱貫流率を計算することはできないというべきであり,内外温度差が1℃(K)であることを前提とする3㎜ガラス及び本件複層ガラスの熱貫流率との比例換算を行うこともできないというべきである。
この点につき,前記認定事実(ア)のとおり,資料3に係る実験において,本件商品を貼付した3㎜ガラスの熱貫流率(kcal/㎡・h・℃)は,最終的に,設定温度差25℃のときは3.6,設定温度差20℃のときは3.8,設定温度差15℃のときは4.1と換算されているところ,仮に原告らが主張するように設定温度差ごとの熱貫流率の差異を容認するのであれば,設定温度差を5℃変更するたびに熱貫流率が0.2ないし0.3程度変化しているのであるから,設定温度差を1℃にして実験を行っていた場合には,本件商品を貼付した3㎜ガラスの熱貫流率が3㎜ガラスの熱貫流率のカタログ値である5.1に近い数値となっていた可能性も想定されるものというべきである。
したがって,原告らの主張を前提としても,上記ウ(エ)の結論が左右されるものではない。
(エ)

原告らは,資料3では熱貫流率の実測値とカタログ値とが比例関係
にある前提で検量線のような考え方で補正しているところ,資料3は実験室実験であるから比例関係がそれほど崩れることはないと考えられるため,実測値とカタログ値とが比例関係にあると考えることは可能であり,本件アルミサッシ枠の影響を排除した改善実験(甲68)によって得られた熱貫流率(3.8kcal/㎡・h・℃)と資料3の熱貫流率(3.6kcal/㎡・h・℃)は十分に同等の数値といえることから,資料3で前提とした比例関係はほぼ崩れていなかったことが立証されている旨主張する。
しかしながら,資料3に係る実験において算出された試験用のガラスの熱貫流率の実測値に基づいて3㎜ガラス及び本件複層ガラスのカタログ値と比例換算することにより本件商品を貼付した3㎜ガラスの熱貫流率を算出することに合理性があるとはいえないことは,前記ウ(イ)において説示したとおりである。また,前記(ア)dにおいて説示したとおり,そもそも,ミニモデルによる断熱フィルム材の機能性評価試験報告書(甲68)は,資料3が合理的根拠資料に該当するか否かを判断するために参酌し得るものであるとはいえず,また,仮に結果として得られた熱貫流率に大差がなかったとしても,資料3における熱貫流率の算出方法に係る前示の合理性の欠如を解消するに足りるものではないというべきである。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(5)

資料4について
原告らは,資料4(乙6の4)によって,夏季において本件商品が窓ガラスから入る熱を46.0%削減すること,したがって冷房効率が46.0%向上することが実証されている旨主張する。そこで,以下,この点について検討することとする。


認定事実
証拠(乙6の4)及び弁論の全趣旨によれば,資料4の概要は次のとおりであると認められる。
(ア)

資料4に係る実験の目的等
資料4は,別紙9(乙6の4)記載のとおりであり,基準となる3㎜
FLガラスと本件商品を貼付した3㎜FLガラスの日射取得熱量の測定を行い,本件商品の日射熱遮断効果を確認することを目的として行われた実験の方法や結果等を記載したものである。
(イ)

試験装置等の概要
日射取得熱量を測定するための装置には,人工太陽光を発するためのキセノンランプ,ガラスを設置できる開口部(50×50㎝)を設けた発泡スチロール製の日射受熱箱(壁の厚さ10㎝,内寸60×60×60㎝),コンプレッサー式の空気の冷却器,温度センサー及び湿度センサー,熱線式風速計等が用いられている。
また,試験用のガラスは,①3㎜FLガラス,②本件商品を貼付した3㎜FLガラス,③6㎜FLガラスの3種類である。(ウ)

実験の方法
日射受熱箱の取得熱量の測定は,試験用のガラスごとに行われ,人工
太陽光(キセノンランプ)を日射受熱箱の開口部のガラス面に照射し,日射受熱箱の入口温度及び入口湿度,出口温度及び出口湿度並びに出口風速を測定し,出口温度を26ないし27℃に保つために入口温度を調整し,入口温度と出口温度が±0.1℃に達したときに熱平衡状態にあるとして測定を終了した。そして,日射受熱箱の取得熱量を次の計算式で算出した(ただし,試験時間の記載はない。)。
入口エンタルピー(kcal/㎏)-出口エンタルピー(kcal/㎏)×空気重量(㎏)=取得熱量(kcal)
また,装置の誤差を計測するため,日射受熱箱の開口部にアルミ箔で覆った厚さ10㎝の発泡スチロールを密閉固定し,人工太陽光を照射して同様の方法でブランク測定を行い,ブランク測定時の取得熱量も算出した。
そして,試験用のガラスを設置した日射受熱箱の取得熱量については,ブランク測定を踏まえ,次の計算式で補正を行い,補正後の取得熱量(kcal/㎡)を算出した(なお,実測値を4倍にするのは,開口部のガラス面積が0.25㎡であるため,1㎡当たりの取得熱量に換算するためである。)。
(ガラス設置時の取得熱量の実測値×4)-(ブランク測定時の取得熱量の実測値×4)=補正後の取得熱量(kcal/㎡)
(エ)

測定結果等
資料4に係る実験の測定結果は,別紙9記載のとおりであり,本件商
品を3㎜FLガラスに貼付した場合における日射の取得熱量削減割合は,46.0%である。

検討
(ア)

資料4の内容は別紙9記載のとおりであるところ,そもそも,資料
4には試験装置や試験方法の詳細が記載されていない(単位時間の記載もない。)上,試験用のガラスから日射受熱箱に流入した取得熱量の計算方法の概要やその測定結果が示されているものの,その具体的な計算式やその計算に用いた数値が明らかにされていないことからすれば,その内容の正確性や合理性を具体的に検証することは困難である(乙9の1〔5頁〕,同9の2〔8頁〕参照)。
(イ)

なお,証拠(甲18の1〔スライド番号97ないし107〕,乙6
の4)及び弁論の全趣旨によれば,資料4に係る実験において,日射取得熱量を測定するための装置は,主として,①人工太陽光を発するためのキセノンランプ,②ガラスを設置できる開口部(50×50㎝)を設けた発泡スチロール製の日射受熱箱(壁の厚さ10㎝,内寸60×60×60㎝)及び③コンプレッサー式の空気の冷却器によって構成されており,上記②と③を上方と下方から2本のダクトで結び,上記②と③において空気を循環させ,②で暖められた空気が③で冷却される仕組みが採られており,日射受熱箱への入口温度,入口湿度及び入口風速や日射受熱箱からの出口温度,出口湿度及び出口風速等を計測するための温度センサー,湿度センサー,熱線式風速計等も設けられていることが認められる。
また,証拠(甲18の1〔スライド番号97ないし107〕,乙6の4,同15〔5頁〕,20〔10頁〕,21〔8ないし10頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,上記装置による実験は,日射受熱箱の入口温度と出口温度の温度差と風量等から日射受熱箱の取得熱量を計算することができること,当該取得熱量からブランク測定における取得熱量を差し引くことによって試験用のガラスから日射受熱箱に流入した日射取得熱量を算出することができることを前提としていることがうかがわれる。そこで,以下,これらを踏まえ,資料4によって原告らが主張する上記アの点が実証されているといえるか否かについて,念のため更に検討することとする。
(ウ)

上記認定事実(ア)(別紙9)のとおり,資料4に係る実験において,
日射受熱箱への入口風速及び出口風速が計測されているところ,いずれの測定においても,入口風速が0.4又は0.5であるのに対し,出口風速は0.9又は1.0であり,入口風速と出口風速に約2倍の差が生じている。
このような事実に照らすと,資料4に係る実験の装置は,日射受熱箱に入る風量と日射受熱箱から出る風量が異なっていた可能性や,出口風速の熱線式風速計の測定値に誤りがあった可能性があるといえるところ,資料4においては,このような入口風速と出口風速の差が生じている原因について何ら説明や考察がされていない。
そして,資料4に係る実験が前提とする風量に誤りがあったとすれば,当該風量に基づいて計算された日射受熱箱の取得熱量にも誤りがあるということとなる。
したがって,資料4に係る実験については,装置に不備が存した可能性があり,実験の結論として示されている取得熱量についても適切な数値であることが実証されているとはいえないというべきである。
(エ)

上記認定事実(ウ)のとおり,資料4に係る実験においては,装置の誤差を計測するため,日射受熱箱の開口部にアルミ箔で覆った厚さ10㎝の発泡スチロールを密閉固定し,人工太陽光を照射して同様の方法でブランク測定を行い,ブランク測定時の取得熱量も算出した上で,試験用のガラスから日射受熱箱に流入した日射取得熱量について,日射受熱箱の取得熱量からブランク測定における取得熱量を差し引くという補正を行うことによって算出している。
しかしながら,装置の測定誤差を計測するというのであれば,試験用のガラスを取り付けた日射受熱箱について,人工太陽光を照射しない状況における日射受熱箱の取得熱量を算出し,その取得熱量をもってブランク測定における取得熱量とするのが相当であり,また,試験体温度と外気温度との温度差がブランク測定時と試験用のガラスを取り付けて行われた測定時とで異なる場合には,日射受熱箱への熱貫流量に差が生じ得るため,温度差による測定誤差も確認する必要があるといえるが,資料4に係る実験におけるブランク測定では,そのような測定や確認がされていない。
そして,資料4に係る実験におけるブランク測定は,上記のとおり,日射受熱箱の開口部にアルミ箔で覆った厚さ10㎝の発泡スチロールを密閉固定するというものであるが,この測定においては,試験用のガラスからの熱貫流量を考慮することができず,正確な測定誤差の数値を測定することができないといえる。また,別紙9記載のとおり,試験用のガラスを取り付けて行われた測定時においては,試験体温度が約28℃であり,出口温度が約26℃に保たれているのに対し,ブランク測定時においては,試験体温度が約21℃であり,出口温度が約22℃とされており,測定条件が異なっているところ,このような測定条件の異なるブランク測定の取得熱量をもって測定誤差を測定したものであるとはいい難い(なお,資料4からは「試験体温度」が何の温度を測定したものであるのか必ずしも明らかではないが,「試験体湿度」や「試験体風速」が測定されていることからすれば,「試験体温度」は日射受熱箱の箱内温度のことであると考えられる。以下同じ。)。
以上に鑑みると,資料4に係る実験におけるブランク測定は,適正な測定誤差の考慮の方法であるとはいえない。
(オ)

また,上記認定事実(ア)(別紙9)のとおり,試験用のガラスを取
り付けて行われた測定における取得熱量(kcal)が35.6ないし54.4であるところ,ブランク測定における取得熱量(kcal)が18.9(1回目)及び19.1(2回目)と大きいことからすれば,ブランク測定時の取得熱量は当該ブランク測定の条件の下における日射受熱箱への熱貫流量であるとみるのが相当である。
もっとも,別紙9記載のとおり,1回目のブランク測定時において,試験体温度は20.9℃,外気温度は27.3℃,その温度差は6.4℃であり,2回目のブランク測定時において,試験体温度は20.7℃,外気温度は28.2℃,その温度差は7.5℃である一方,試験用のガラスを取り付けて行われた測定においては,試験体温度と外気温度の温度差は0.3ないし2.3℃程度であり,ブランク測定時と比して温度差が小さい。そして,日射受熱箱の内外の温度差が異なれば,日射受熱箱への熱貫流量も異なるといえる。
それにもかかわらず,資料4に係る実験においては,試験用のガラスから日射受熱箱に流入した日射取得熱量について,日射受熱箱の取得熱量からブランク測定における取得熱量(しかも温度差の異なる1回目と2回目の取得熱量の平均値である。)をそのまま差し引くという補正を行うことによって算出しており,日射受熱箱の内外の温度差に応じた熱貫流量の差異を考慮していない点において,適切な補正が行われているとはいえない。
(カ)

さらに,上記(オ)において説示したとおり,1回目のブランク測定
における試験体温度と外気温度の温度差は6.4℃であるところ,取得熱量が18.9kcalであるから,温度差1℃当たりの取得熱量は約2.95kcalとなる。他方,2回目のブランク測定における試験体温度と外気温度の温度差は7.5℃であるところ,取得熱量が19.1kcalであるから,温度差1℃当たりの取得熱量は約2.55kcalとなる。そして,上記温度差1℃当たりの取得熱量約2.95kcalと約2.55kcalを比較すると,後者が前者に比して約14%取得熱量が少ないという差が生じている。
上記(オ)のとおり,ブランク測定時の取得熱量は当該ブランク測定の条件の下における日射受熱箱への熱貫流量であるとみるのが相当である。そして,上記のように,1回目と2回目のブランク測定において,温度差1℃当たりの取得熱量に約14%もの差が生じていることに照らすと,ブランク測定における測定の精度に問題があったことが推認されるものといえるところ,資料4においては,このような取得熱量の差が生じている原因について何ら説明や考察がされていない。
そして,資料4に係る実験において,試験用のガラスから日射受熱箱に流入した日射取得熱量は,日射受熱箱の取得熱量からブランク測定における取得熱量を差し引くという補正を行うことによって算出しているのであるから,ブランク測定における取得熱量に誤りがあったのであれば,試験用のガラスから日射受熱箱に流入した日射取得熱量の数値にも誤りがあるということとなる。
したがって,資料4に係る実験については,取得熱量の測定の精度に問題があったことが推認され,実験の結論として示されている取得熱量についても適切な数値であることが実証されているとはいえないというべきである。
(キ)

加えて,別紙9記載のとおり,本件商品を貼付した3㎜FLガラス
を試験用のガラスとした測定については,測定1-1及び測定1-2のいずれにおいても,外気温度よりも試験体温度の方が高く,試験体温度が日射受熱箱の箱内温度であることを前提とすれば,他の測定の場合と異なり,日射受熱箱内から外気へと熱貫流が生ずることになる。
そのため,熱貫流量を考慮した取得熱量の補正において,熱貫流の方向が異なるブランク測定時の取得熱量を差し引くことは適切ではなく,むしろ外気への熱貫流量を加える必要があるといえる。
したがって,資料4に係る実験において,試験用のガラスから日射受熱箱に流入した日射取得熱量を算出するに当たり,日射受熱箱の取得熱量からブランク測定における取得熱量を差し引くという補正を一律に行うことは,補正の方法として適切であるとはいえない。
(ク)

小括
以上に説示したところに鑑みると,資料4に係る実験の方法は,表示
された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものであるとはいえず,かつ,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものであるともいえない。
したがって,資料4によって,夏季において本件商品が窓ガラスから入る熱を46.0%削減すること,すなわち冷房効率が46.0%向上することが実証されているとはいえない。

原告らの主張について
(ア)

原告らは,資料4は,平成20年12月頃に山武に提出した実験デ
ータの一部(中間報告書)であり,山武が装置の製作を自ら行ったほか,実験にも立ち会っていたため,測定時間などの記載がない簡略版となっているが,平成21年8月頃,山武に対してナビエスを通じて正式の報告書である本件報告書(甲26)を提出しているなどと主張する。しかしながら,資料4自体には山武が装置を製作したことをうかがわせる記載はない上,仮に山武が製作した装置であったとしても,前記ウ(ア)ないし(キ)において説示したところによれば,前記ウ(ク)の結論を左右するものではない。
(イ)

原告らは,装置の入口と出口の風速の差は風速計の取付け方が原因
であり,実際に,資料4の測定に際して,山武の技術者が風速計の取付け方が原因であったことを突き止め,資料4の測定後に装置の風速計の取付け方を修正した結果,本件報告書では,入口側と出口側の風速測定結果はおおむね一致しており,資料4の測定時に漏れ試験を実施し空気漏れはなかった旨主張する。また,原告らは,風速計が正しい向きに設置されていなかったとしても,検体を交換する際,検体部分以外について試験装置の調整等は一切行っておらず,各測定ケースの取得熱量計算には,一貫して出口側の風速測定値を利用しているのであるから,風速計の取付け方の差異は,各測定ケースの取得熱量の相対的な比較結果には影響しない旨主張する。
しかしながら,仮に測定の方法等については原告らの主張するとおりであったとしても,前記ウ(ウ)に説示したとおり,資料4においては,入口風速と出口風速に約2倍の差が生じている原因について何ら説明や考察がされていない以上,資料4の装置につき,日射受熱箱に入る風量と日射受熱箱から出る風量が異なっていた可能性や,出口風速の熱線式風速計の測定値に誤りがあった可能性を指摘することができるのであり,実験の結論として示されている取得熱量についても適切な数値であることが実証されているとはいえないことに変わりはない。
(ウ)

原告らは,ブランク測定の2回の測定において,外気温度と試験体温度の差が異なっているにもかかわらず,取得熱量の数値がほとんど異なっていない点について,取得熱量は入口と出口の空気温度の差と風量の測定値から算出したものであり,外気と試験体内の空気温度の差と試験体の熱貫流率から算出した熱貫流量とは算出根拠が異なり,そもそも両者の熱量は,温度と風量に測定誤差があり,使用材料の熱伝導率も文献値と厳密には一致しないからこそ,ブランク測定を行っているのであって,これらの算出根拠の異なる数値を持ち出して比較して論ずることは不適切である旨主張する。
しかしながら,前記ウ(カ)のとおり,ブランク測定時の取得熱量が当該ブランク測定の条件の下における日射受熱箱への熱貫流量であるとみるのが相当であることを前提として,入口温度と出口温度との温度差と風量の測定値から取得熱量を算出した2回のブランク測定の結果について,温度差1℃当たりの取得熱量に約14%もの差が生じていることから,測定の精度に問題があったことが推認されるものであり,この問題点は,ブランク測定時における外気温度と試験体温度との温度差及び日射受熱箱の熱貫流率に基づいて独自に算出した日射受熱箱への熱貫流量の数値とブランク測定の結果である取得熱量の数値とを比較した結果から推認されるものではなく,所論はその前提を異にするものというべきである。
したがって,原告らの主張は,ブランク測定の精度の問題点に関する前記ウ(カ)の評価を左右するものではない。
(エ)

原告らは,資料4に係る実験において,ブランク試験と本試験時と
で外気温度と試験体温度の差が逆転している点につき,資料4の装置では補正がされていないが,試験体以外の5面は100㎜厚の発泡スチロールで十分に断熱されているので,貫流熱は微々たるものであり,査読付き論文(甲48)においても,厚さ50㎜の発泡スチロール(ポリスチレンフォーム)を通過する熱損失は無視できるとされていることからも,結果として取得熱量の削減割合に大きな影響を与えるものではない旨主張する。
しかしながら,前記ウ(オ)において説示したとおり,ブランク測定時の取得熱量(kcal)は当該ブランク測定の条件の下における日射受熱箱への熱貫流量であるとみるのが相当であるところ,その取得熱量(18.9及び19.1)が試験用のガラスを取り付けて行われた測定における取得熱量(35.6ないし54.4)の2分の1ないし3分の1という大きな数値であることからすれば,日射受熱箱への熱貫流量は結果に大きな影響を与えるものであるといえる。そして,仮にブランク測定時の取得熱量が日射受熱箱への熱貫流量ではないとすれば,日射受熱箱は,試験用のガラスを通じて日射受熱箱に流入する日射の取得熱量の2分の1ないし3分の1もの熱量を貫流熱以外に何らかの形で取得しているということになり,測定に適した性能を有していないものといわなければならない。
なお,原告らの引用する査読付き論文(甲48)に係る実験は,資料4に係る実験とは目的も内容も異なるものであり,高反射率塗料として市場で販売されている塗料の日射反射率を測定するものであって,熱貫流が生ずる状況も面積も全く異なるものであるから,同論文に係る実験において,厚さ50㎜の発泡スチロール(ポリスチレンフォーム)を通過する熱損失は無視できるとされているとしても,そのことをもって,資料4に係る実験における日射受熱箱への熱貫流を無視することができるとはいえないものというべきである。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(オ)

原告らは,仮に,ブランク測定で得られた熱が貫流熱であるとした上で,被告が主張するとおりに計算したブランク測定値による補正を行った場合,3㎜ガラスに本件商品を貼付した場合の取得熱量の削減割合は17.9%となる(甲84)から,いずれにしても資料4から本件商品の性能が実証される旨主張する。
この点につき,原告らが引用する証拠(甲84)によれば,原告らが主張する上記17.9%の削減割合の計算は,1回目と2回目のブランク測定時の日射取得熱の平均値19.0kcal/hを内外温度差の平均値6.95℃で除した数字である2.73kcal/℃hを用いて行われていることが認められる。
しかしながら,前記ウ(カ)において説示したとおり,1回目と2回目のブランク測定において,温度差1℃当たりの取得熱量に約14%もの差が生じていることに照らすと,ブランク測定における測定の精度に問題があったことが推認されるものである。
また,そもそも,上記証拠(甲84)は,消費者庁長官が定めた本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出期限を経過した後に提出されたものであるところ(争いがない。),日射取得熱の削減割合の算出方法は,資料4に係る実験における算出方法とは全く異なるものであるから,資料4の内容を説明するものや補足するものであるとはいえず,資料4が合理的根拠資料に該当するか否かを判断するために参酌し得るものであるとはいえない。
なお,上記17.9%の削減割合は,原告らが実証されたと主張する46.0%の削減割合とも大きく異なるものである。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはでき
ない。
(6)

資料5について
原告らは,資料5(乙6の5)によって,夏季において本件商品を窓ガラスに貼付することによる取得熱量の削減割合が44%であること,冬季において本件商品を窓ガラスに貼付することによる熱損失の抑制割合が約30%であることが実証されている旨主張する。そこで,以下,この点について検討することとする。

認定事実
前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア)

資料5の概要
資料5は,「カタログ記載の冷暖房効率数値」と題する書面であり,
原告らが作成したものである。
資料5は,「夏期」に関し,本件商品は,反射及び吸収を抑え,表面の放射率を低減させるという技術を採用し,透明断熱を実現しているため,遮蔽係数を建材試験センターで測定しても高い数値が出ないことから,財団法人沖縄県環境科学センターにおけるボックス試験の比較により遮蔽係数を算出したものであるところ,遮蔽係数0.52の製品であるブロンズ20と比較し,本件商品の遮蔽係数が0.5相当であることが確認されたとして,次の計算式により,本件商品の日射取得削減率を0.44(44%)と結論付けている。
SC値(遮蔽係数)=日射取得率(日射侵入率)/0.88
シーグ遮蔽係数0.5×係数0.88=日射取得削減率0.44
また,資料5は,「冬期」に関し,「秋田県工業技術センター(ミニモデルによる断熱制御基材の機能性評価参照)K値(熱貫流率)」と記載した上で,次の計算式により,本件商品の熱損失抑制率を0.3(30%)であると結論付けている。
ガラスの熱貫流率6-本件商品の熱貫流率4.2
=1.8(単位W/㎡・K)
1.8÷6=熱損失抑制率0.3
(イ)

資料5の遮蔽係数相当値及び熱貫流率の根拠
原告らは,資料5について,本件商品の遮蔽係数を0.5としている
点は資料2に基づき,本件商品の熱貫流率を4.2W/㎡・K(3.6kcal/㎡・h・℃を換算した数値)としている点は資料3に基づいて記載したものである(乙6の2及び3,同6の5,弁論の全趣旨)。ウ
検討
(ア)

上記認定事実(ア)及び(イ)のとおり,資料5は,「夏期」に関し,
資料2に基づいて本件商品の遮蔽係数を0.5相当であるとし,これを前提として本件商品の日射取得削減率を0.44(44%)と結論付けている。
しかしながら,資料2により本件商品の遮蔽係数が0.5相当であることが実証されているといえないことは,前記(3)において説示したとおりであるから,本件商品の日射取得削減率を0.44(44%)とする点は,その前提を欠くものである。
なお,資料5は,「シーグ遮蔽係数0.5×係数0.88=日射取得削減率0.44」という計算式を挙げているが(なお,係数0.88は3㎜ガラスの日射熱取得率であると解される。前記前提事実(6)参照),上記「0.44」は,日射取得削減率ではなく,日射熱取得率というべきであるから,そもそもその記載内容に誤りがあるといえる。(イ)

また,上記認定事実(ア)及び(イ)のとおり,資料5は,「冬期」に
関し,資料3に基づいて本件商品の熱貫流率を4.2W/㎡・K(3.6kcal/㎡・h・℃に等しい。)であるとし,これを前提として本件商品の熱損失抑制率を0.3(30%)であると結論付けている。
しかしながら,資料3により本件商品の熱貫流率が4.2W/㎡・K(3.6kcal/㎡・h・℃に等しい。)であることが実証されているといえないことは,前記(4)において説示したとおりであるから,本件商品の熱損失抑制率を0.3(30%)とする点は,その前提を欠くものである。
(ウ)

小括
以上に説示したところに鑑みると,資料5によって,夏季において本
件商品を窓ガラスに貼付することによる取得熱量の削減割合が44%であること,冬季において本件商品を窓ガラスに貼付することによる熱損失の抑制割合が約30%であることが実証されているとはいえない。エ
原告らの主張について
資料2及び同3により本件商品の遮蔽係数相当値及び本件商品を貼付したガラスの熱貫流率が所論の数値であることが実証されていることを資料5による上記ウ(ウ)の所論の各事項(本件商品を窓ガラスに貼付することによる取得熱量の削減割合及び熱損失の抑制割合)に係る実証の根拠とする原告らの主張は,前示のとおり,いずれもその前提を欠くものであって,採用することができない。

(7)

資料6について
原告らは,資料6(乙6の6)によって,本件商品が夏季において遮熱性能を有すること,本件商品を窓ガラスに貼付することにより約56.4%の日射熱負荷削減効果が得られたことが実証されている旨主張する。そこで,以下,この点について検討することとする。


認定事実
証拠(乙6の6)及び弁論の全趣旨によれば,資料6の概要は次のとおりであると認められる。
(ア)

資料6の構成
資料6は,①JR西日本の博多総合車両所の職員らが執筆した「JR
西日本300N系新幹線電車の冷房効果改善について」と題する研究発表論文(以下「①論文」という。)と,②同論文に基づいて原告らが作成した「シーグフィルム断熱効果(冷房効果)」と題する書面(以下「②書面」という。)により構成されている。
(イ)

①論文の概要
①論文に係る研究は,300N系新幹線電車の空調冷房システムにつ
いて,その改善策を検討し,これを実施した結果について述べた論文である。
車両に対する熱負荷には,直接太陽光線が当たることによる日射負荷,各部材が暖められることによる伝熱負荷,人体が発する人体負荷,機器の稼働により発熱する機器負荷,車内の空気と外気との換気による換気負荷があり,その合計は約4万5000kcal/hであるところ,このうち日射負荷は2660kcal/hである。
①論文に係る研究においては,熱負荷の実態及び現状のシステムの問題点の調査結果を踏まえ,車体側については,日射量抑制策,伝熱抑制策及びダクトロス解消策,機器側については,換気負荷抑制策,空調性能向上策などの種々の改善策を検討した。そして,車体側の改善策の一つとしての日射量抑制策及び伝熱抑制策として,窓フィルムの貼付を実施した(ただし,窓フィルムのメーカーや商品に関する記載はな
い。)。
上記改善策を実施した結果,窓フィルムの貼付により,1500kcal/hの熱負荷の抑制ができた。
(ウ)

②書面の概要
①論文に基づいて原告らが作成した②書面には,(a)300N系新幹
線における日射量抑制策及び伝熱抑制策として本件商品が選定され,(b)本件商品を施工する前の車体窓ガラス面からの日射熱負荷は2660kcal/hであったが,本件商品を窓ガラスに貼った結果,1500kcal/hの熱負荷が軽減され(57%削減),乗客の冷房効果に関する苦情が減少した旨記載されている。

検討
(ア)

上記認定事実(イ)のとおり,資料6のうち,①論文は,300N系
新幹線電車の空調冷房システムについて,種々の改善策を検討し,これを実施した結果について述べた論文であり,車両に対する熱負荷として日射負荷が2660kcal/hであったところ,車体側の日射量抑制策及び伝熱抑制策として窓フィルムを貼付したことにより,1500kcal/hの熱負荷の抑制ができた旨記載されており,また,原告らが作成した②書面には,300N系新幹線における日射量抑制策及び伝熱抑制策として本件商品が選定され,本件商品を窓ガラスに貼った結果,1500kcal/hの熱負荷が軽減された(57%削減)旨の記載がある。しかしながら,①論文には貼付した窓フィルムのメーカーや商品に関する記載がないため,①論文からは貼付した窓フィルムが本件商品であると認めることはできず,①論文と②書面を併せてみた場合に,①論文における窓フィルムが本件商品である可能性があることがうかがわれるにすぎない。
また,仮に①論文に係る研究において用いられた窓フィルムが本件商品であるとしても,①論文には,日射量抑制策及び伝熱抑制策として窓フィルムの貼付を実施した結果,1500kcal/hの熱負荷の抑制ができた旨が述べられているにとどまり,実験の方法や熱負荷の測定方法の説明が全く述べられていない。そして,②書面は,①論文に係る研究において用いられた窓フィルムが本件商品であるとして,①論文の上記結論を記載するものにすぎない。
そのため,資料6については,①論文に係る研究において行われた実験について,その方法や結論の妥当性を検証することが一切できないものであるといわざるを得ない。
(イ)

小括
上記(ア)に説示したところに鑑みると,資料6に係る実験の方法は,
表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものであるとはいえず,かつ,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものであるともいえない。
したがって,資料6によって,本件商品が夏季において遮熱性能を有すること,本件商品を窓ガラスに貼付することにより約56.4%の日射熱負荷削減効果が得られたことが実証されているとはいえない。エ
原告らの主張について
(ア)

原告らは,JR西日本が採用した窓フィルムが本件商品であること
は,開発者であるセクト化学のZ3氏が平成16年に財団法人かごしま産業支援センターにおいて行ったセミナーの案内文の記載等からも裏付けられるなどと主張する。
しかしながら,前記ウ(ア)において説示したとおり,仮に①論文に係る研究において用いられた窓フィルムが本件商品であるとしても,①論文には,実験の方法や熱負荷の測定方法の説明が全く述べられておらず,同研究において行われた実験について,その方法や結論の妥当性を検証することが一切できないものであることに鑑みると,前記ウ(イ)の結論を左右するものではないというべきである。
(イ)

原告らは,現車走行試験の場合,各車両は一軒家とみなすことがで
き,外界条件や内部発熱の差異はさほど大きくないと推測できるので,測定機器を比較対象の車両間で同様の位置に設置して測定することが基本となるところ,資料6の試験方法の妥当性を検証するためには,現車による比較検証実験である事実で十分であり,それ以外に検証しなければ試験方法の妥当性を確認できないような特段の条件はない旨主張する。
しかしながら,前記ウ(ア)において説示したとおり,①論文には,日射量抑制策及び伝熱抑制策として窓フィルムの貼付を実施した結果,1500kcal/hの熱負荷の抑制ができた旨が述べられていることからすれば,現車での比較検証実験がされたことがうかがわれるものの,その実験の方法や熱負荷の測定方法の説明が全く述べられていない以上,①論文に係る研究において行われた実験について,その方法や結論の妥当性を検証することが一切できないものであることに変わりはなく,現車による比較検証実験がされたことの一事をもって,①論文が述べる結論が実証されているということはできない。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(8)

資料7及び同10について
原告らは,資料7及び同10(乙6の7の1ないし6,同6の10の1ないし20)によって,(a)夏季において本件商品を窓ガラスに貼付することにより,遮熱効果を有すること,日射の取得熱量を20.1%ないし63.3%削減することができること,(b)冬季において本件商品を窓ガラスに貼付することにより,断熱効果を有すること,窓ガラスを通じて室内から室外に逃げる熱量(損失熱量)を23.9%ないし53.5%削減することができることが実証されている旨主張する。そこで,以下,この点について検討することとする。


認定事実
前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア)

資料7-1の概要
資料7-1は,店舗2階において,西側に面した窓ガラス面から1㎝
及び3㎝の位置の温度について,本件商品を窓ガラスに貼付する前の平成22年8月4日及び同月5日のものと,本件商品を貼付させた後の同月18日のものとを対比したところ,日射が直接照射され始めた午後3時以降は,本件商品を貼付させた後のものの方が温度が低くなり,2.5℃ないし8.5℃の温度差が生じたとするものである(乙6の7の1)。
(イ)

資料7-2の概要
資料7-2は,平成12年7月31日,セクト化学の建物の屋根の上
において,本件商品を貼付したガラスを取り付けた発泡スチロール製の箱と,本件商品を貼付していないガラスを取り付けた発泡スチロール製の箱の箱内温度を測定したところ,本件商品を貼付した箱の方が,日射時の箱内温度が平均2.1℃,最高3.2℃(ガラス壁面付近においては平均4.8℃,最高5.2℃)低下することが確認されたとするものである(乙6の7の2)。
(ウ)

資料7-3の概要
資料7-3は,平成11年3月23日,宿泊施設3階の隣接する2室
において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,窓面から0.01mの位置において7.2℃,同1mの位置において6.8℃,同2mの位置において6.5℃高くなったことが確認されたとするものである(乙6の7の3)。
(エ)

資料7-4の概要
資料7-4は,平成19年5月3日ないし同月5日,ビル4階の隣接
する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,窓面から0.01mの位置において約3℃低下したとするものである(乙6の7の4)。
(オ)

資料7-5の概要
資料7-5は,平成24年7月25日及び同月26日,寮5階の隣接
する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,窓面から1㎝,1m及び2mのいずれの位置においても温度が低下したことが確認されたとするものである(乙6の7の5)。
(カ)

資料7-6の概要
資料7-6は,平成23年7月10日,ビル4階及び5階の2室の会
議室において,本件商品を窓ガラスに貼付した会議室(5階)と本件商品を窓ガラスに貼付していない会議室(4階)の室温を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した会議室の方が,窓面から1㎝及び1.5mのいずれの位置においても温度が低下したことが確認されたとするものである(乙6の7の6)。
(キ)

資料10-1の概要
資料10-1は,平成19年8月7日ないし同月9日,宿泊施設29
階及び30階の上下の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋(29階)と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋(30階)の温度変化,空調機の吹出口及び吸込口の温湿度及び風速を測定して消費熱量を算出し,冷房負荷を比較したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,ロールカーテンを開けた状態において冷房負荷が28.6%ないし40.1%(内部冷房負荷のみでは最大41.1%)減少し,ロールカーテンを閉めた状態において冷房負荷が25.3%ないし46.4%(内部冷房負荷のみでは最大47.5%)減少したとするものである(乙6の10の1)。
(ク)

資料10-2の概要
資料10-2は,平成9年9月13日及び同月14日,ビル8階の2
室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の冷房機(ON-OFF制御)の稼働回数(ONを1回とする。)を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,稼働回数が3分の1程度減少することが確認されたとするものである(乙6の10の2)。
(ケ)

資料10-3の概要
資料10-3は,平成10年8月17日ないし同月19日,宿泊施設
5階の隣接する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の冷房機(ON-OFF制御)の稼働回数(ONを1回とする。)を測定し,稼働時間を算出したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,合計稼働時間が日射時は61%,3日間では45%減少することが確認されたとするものである(乙6の10の3)。
(コ)

資料10-4の概要
資料10-4は,平成13年8月13日ないし同月15日,宿泊施設
29階の隣接する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温,空調機の吹出口の温度並びに吹出口及び吸入口の風速を測定し,1日の室内平均温度等から稼働(冷房)熱量を算出し,冷房負荷を比較したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,カーテンを開けた状態において冷房負荷熱量が34.7%減少し,カーテンを閉めた状態において冷房負荷熱量が52.9%減少したとするものである(乙6の10の4)。
(サ)

資料10-5の概要
資料10-5は,平成19年9月19日ないし同月21日,公共施設
6階の共用部において,窓ガラスの一部に本件商品を貼付し,本件商品を貼付したガラス面とこれを貼付していないガラス面の付近温度を測定するとともに,窓面から1㎝ないし5㎝までの温度勾配から面積積分(縦軸を室温,横軸を距離とする。以下同じ。)により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付したガラス面の方が,窓面から1㎝,5㎝,10㎝,20㎝及び40㎝のいずれの位置においても温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約23.5%ないし約63.3%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の5)。
(シ)

資料10-6の概要
資料10-6は,平成19年8月17日及び同月19日,博物館3階
の事務室において,窓ガラスの一部に本件商品を貼付し,本件商品を貼付したガラス面とこれを貼付していないガラス面の付近温度を測定するとともに,窓面から1㎝ないし40㎝までの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付したガラス面の方が,窓面から1㎝,5㎝,10㎝,20㎝及び40㎝のいずれの位置においても日射量時間帯の温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約24.7%ないし約44%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の6)。
(ス)

資料10-7の概要
資料10-7は,平成18年8月25日,医療施設11階の2室にお
いて,入院患者が在室する状況において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の窓ガラス面の付近温度を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,窓面から0.01m,0.1m及び0.3mのいずれの位置においても温度が低下したことが確認されたとするものである(乙6の10の7)。(セ)

資料10-8の概要
資料10-8は,平成17年9月1日,宿泊施設7階の2室におい
て,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温及び空調機の吹出口の温度を測定するとともに,窓面から1㎝ないし4.8m(上記吹出口の位置)までの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付した部屋の方が,窓面から1㎝,10㎝,50㎝,1m及び2mのいずれの位置においても温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約23.8%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の8)。
(ソ)

資料10-9の概要
資料10-9は,平成16年9月19日,駅ビル9階の隣接する2室
において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定するとともに,窓面から1㎝ないし2mまでの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付した部屋の方が,窓面から1㎝,20㎝,50㎝,1m及び2mのいずれの位置においても温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約48.5%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の9)。
(タ)

資料10-10の概要
資料10-10は,平成15年7月29日及び同月30日,寮4階及
び5階の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定するとともに,空調機の電力消費量を検証するなどしたところ,本件商品を貼付した部屋の方が,窓面から0.01m,1m及び4mのいずれの位置においても温度が低下し,電力消費量が約22.9%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の10)。
(チ)

資料10-11の概要
資料10-11は,平成22年8月4日,競艇場2階の窓ガラスで仕
切られた一般席において,窓ガラスの一部に本件商品を貼付し,本件商品を貼付したガラス面とこれを貼付していないガラス面にそれぞれ発泡スチロール製の箱を密着させ,同箱内のガラス表面及びその付近温度を測定するとともに,ガラス表面とそこから30㎝までの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付したガラス面の方が,ガラス表面においても窓面から3㎝及び30㎝のいずれの位置においても温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約43.8%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の11)。
(ツ)

資料10-12の概要
資料10-12は,平成20年8月8日,宿泊施設12階の隣接する
2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定するとともに,窓面から1㎝ないし2mまでの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付した部屋の方が,窓面から1㎝,10㎝,30㎝,1m及び2mのいずれの位置においても温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約49.3%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の12)。
(テ)

資料10-13の概要
資料10-13は,平成20年8月5日及び同月6日,医療施設3階
の隣接する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の窓ガラス面の付近温度を測定するとともに,窓面から1㎝ないし15㎝までの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付した部屋の方が,窓面から1㎝,5㎝及び15㎝のいずれの位置においても温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約27.6%ないし約54.3%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の13)。
(ト)

資料10-14の概要
資料10-14は,平成19年9月14日ないし同月17日,医療施
設7階の1室において,窓ガラスの一部に本件商品を貼付し,本件商品を貼付したガラス面とこれを貼付していないガラス面の付近温度を測定するとともに,窓面から2㎜ないし5㎝までの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付したガラス面の方が,窓面から2㎜,1㎝,4㎝及び5㎝のいずれの位置においても日照時間帯の温度が低下し,ガラス面から取得する熱エネルギー量が約20.1%ないし約48.7%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の14)。
(ナ)

資料10-15の概要
資料10-15は,自動車の展示場において,北西側,北東側及び南
東側の窓ガラスに本件商品を貼付する前(平成25年3月23日)と本件商品を貼付した後(同年4月10日)の消費電力を測定したところ,本件商品を貼付した後の方が,午前8時から12時間の平均消費電力が50.2%,午前0時から24時間の平均消費電力が53.5%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の15)。
(ニ)

資料10-16の概要
資料10-16は,平成13年3月3日及び同月4日,宿泊施設30階の隣接する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温,空調機の吹出口の温度並びに吹出口及び吸入口の風速を測定し,1日の室内平均温度等から稼働熱量を算出してこれを比較したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,稼働熱量が32.8%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の16)。
(ヌ)

資料10-17の概要
資料10-17は,平成16年2月5日,宿泊施設1階の隣接する2
室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の温水ヒーター部の室温と窓部の室温を測定し,その温度差から各部屋の消費熱エネルギーを対比したところ,本件商品を貼付した部屋の温度差(4.05⊿t)の方が,本件商品を貼付していない部屋の温度差(6.03⊿t)よりも小さく,消費熱エネルギーが約32.8%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の17)。
(ネ)

資料10-18の概要
資料10-18は,平成16年11月28日及び同月29日,駅ビル
(9階又は10階)の隣接する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定するとともに,窓面から1㎝ないし2mまでの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付した部屋の方が,窓面から1㎝,20㎝,50㎝,1m及び2mのいずれの位置においても温度が高く,ガラス面から損失する熱エネルギー量が約23.9%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の18)。(ノ)

資料10-19の概要
資料10-19は,平成19年12月10日及び同月11日,宿泊施設の11階及び12階の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋(12階)と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋(11階)の室温を測定し,窓面から1㎝ないし10㎝までの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の熱エネルギーの損失量を100%とした場合,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の熱エネルギーの損失量は,空調機の稼働時が約32.4%,空調機の停止時が約50.7%であることが確認されたとするものである(乙6の10の19)。
(ハ)

資料10-20の概要
資料10-20は,平成22年1月7日及び同月8日,建物3階の隣
接する2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温を測定するとともに,窓面から1㎝ないし2mまでの温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を貼付した部屋の方が,窓面から1㎝,1m及び2mのいずれの位置においても温度が高く,ガラス面から損失する熱エネルギー量が約25%減少したことが確認されたとするものである(乙6の10の20)。

検討
(ア)

資料7-2は,建物の屋根の上において,本件商品を貼付したガラ
スを取り付けた発泡スチロール製の箱と,本件商品を貼付していないガラスを取り付けた発泡スチロール製の箱の箱内温度を測定したところ,本件商品を貼付した箱の方が,日射時の箱内温度が低下することが確認されたとするものである(上記認定事実(イ))。
しかしながら,資料7-2には試験装置や試験方法の詳細が記載されておらず,測定の環境や条件の詳細も明らかでないことからすれば,その内容の正確性や合理性を具体的に検討することは困難である。
なお,資料7-2に係る実験が資料2に係る実験と同様のものであるとすれば,前記(3)ウにおいて説示したとおり,本件商品を人の居住空間の窓ガラスに貼付することにより夏季における遮熱効果が得られることを実証するものであるとはいえない。
(イ)

資料7-1及び同10-15は,店舗の1室において,本件商品を
窓ガラスに貼付する前のガラス面の付近温度又は平均消費電力と,後日,本件商品を貼付させた後のものとを対比したところ,本件商品を貼付させた後のものの方がガラス面の付近温度が低下し,平均消費電力が削減されたことが確認されたとするものである(上記認定事実(ア)及び(ナ))。
しかしながら,このように測定日が異なる場合,外気温度や日照時間がほぼ同一の日に測定をしたとしても,日射量,内部発熱負荷,換気量など,室温に影響を及ぼす要因が異なっていた可能性を排除することはできず,窓ガラス以外の実験条件が同一であったことが担保されているとはいえない。
したがって,上記各資料の実測の結果をもって本件商品の一般的な性能を実証するものであるとはいえない。
(ウ)

資料7-3ないし同7-6,同10-7ないし同10-10,同1
0-12,同10-13,同10-18及び同10-20は,同一の建物の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温ないし窓ガラス面の付近温度を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,窓面からのいずれの位置においても,夏季等においては温度が低下し,冬季等においては温度が高くなったことが確認されたとするものである(上記認定事実(ウ)ないし(カ),(ス)ないし(タ),(ツ),(テ),(ネ)及び(ハ))。また,資料10-1ないし同10-4,同10-10及び同10-16は,同一の建物の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の空調機が処理した熱量,稼働回数,稼働時間又は電力消費量を比較し,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が上記熱量,稼働回数,稼働時間又は電力消費量が減少したことが確認されたとするものである(上記認定事実(キ)ないし(コ),(タ)及び(ニ))。さらに,資料10-17は,同一の建物の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の温水ヒーター部の室温と窓部の室温を測定し,その温度差から各部屋の消費熱エネルギーを対比したところ,本件商品を貼付した部屋の温度差の方が,本件商品を貼付していない部屋の温度差よりも小さく,消費熱エネルギーが削減されたことが確認されたとするものである(上記認定事実(ヌ))。
しかしながら,上記各資料は,いずれも,比較の対象となる2室の測定条件を同一に設定できる実験室や実験用の建物等において行われたものではなく,実際に人の生活や活動等の用に供されている現場において実験がされたものである。そして,このような現場においては,壁,天井及び床を通じて隣接する部屋,廊下,屋外等との間との熱貫流(熱の流入又は流出)が生ずるところ(乙9の2〔9及び10頁〕,同20〔13頁〕,弁論の全趣旨),冷暖房,日射,人の活動等の状況により隣接する部屋等の室温が異なる可能性があり,比較対象とされた部屋に係る熱貫流が同一であることが担保されておらず,熱貫流量の差異が実験結果に影響を及ぼしている可能性を排除することはできない。なお,資料10-7は,入院患者が在室する状況において測定がされたものであり,実験条件が明らかに異なるものである。
そのため,比較対象とされた2室において,室温に影響を及ぼす要因が異なっていた可能性を排除することはできず,窓ガラスへの本件商品の貼付の有無以外の実験条件が同一であったことが担保されているとはいえない。
したがって,上記各資料の実測の結果をもって,本件商品の一般的な性能を実証するものであるとはいえない。
(エ)

資料10-5,同10-6,同10-8,同10-9,同10-1
1ないし同10-14及び同10-18ないし同10-20は,同一の建物の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温ないし窓ガラス面の付近温度を測定し,又は,建物の1室において,窓ガラスの一部に本件商品を貼付し,本件商品を貼付したガラス面とこれを貼付していないガラス面の付近温度を測定するとともに,いずれも窓面からの距離の温度勾配から面積積分により熱エネルギー量を比較したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋又は本件商品を貼付したガラス面の方が,夏季等においてはガラス面から取得する熱エネルギー量が減少し,冬季等においてはガラス面から損失する熱エネルギー量が減少したことが確認されたとするものである(上記認定事実(サ),(シ),(セ),(ソ),(チ)ないし(ト)及び(ネ)ないし(ハ))。
しかしながら,そもそも,温度と熱量は単位が異なるものであり,空気の取得熱量又は損失熱量は空気の比熱,容積,密度及び温度差が分からなければ算出することができないものであるから,縦軸を室温,横軸を距離とする面積が熱量を表すものであるということはできず,温度勾配からの面積積分により熱エネルギー量を算出することに合理的な根拠があるということはできない(乙9の2〔12頁〕,同16〔6頁〕,20〔13頁〕)。また,夏季等においてガラス面から取得する熱エネルギーや冬季等においてガラス面から損失する熱エネルギーは,室内の対流の状況等に応じて室温全体に影響を及ぼし又は室温全体から影響を受け得るものである上,上記(ウ)のとおり,室温は壁等を通じた熱貫流量からも影響を受けるものであるから,ガラス面から一定の距離の範囲内における任意の地点の温度やその距離のみに基づいて上記各熱エネルギーの量を算出することはできず,温度勾配からの面積積分の値は比較の対象として相当ではないものというべきである。しかるところ,上記各資料は,横軸となる距離がそれぞれ異なり,ガラス面から一定の距離の範囲内における任意の地点の温度を測定し,窓面からの距離の温度勾配から面積積分により熱エネルギー量の比較をするものであるから,そのような比較の方法に合理的な根拠があるとはいえないというべきである。
したがって,上記各資料の実測の結果ないし熱エネルギー量の比較をもって,本件商品の一般的な性能を実証するものであるとはいえない。(オ)

資料10-1,同10-4及び同10-16は,同一の建物の2室
において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の室温,空調機の吹出口等の温度等,吹出口及び吸入口の風速を測定して計算した熱量を比較し,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,上記熱量が減少したことが確認されたとするものである(上記認定事実(キ),(コ)及び(ニ))。また,資料10-2及び同10-3は,同一の建物の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の冷房機(ON-OFF制御)の稼働回数(ONを1回とする。)を測定したところ,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋の方が,稼働回数ないし稼働時間が減少することが確認されたとするものである(上記認定事実(ク)及び(ケ))。さらに,資料10-10は,同一の建物の2室において,本件商品を窓ガラスに貼付した部屋と本件商品を窓ガラスに貼付していない部屋の空調機の電力消費量を検証するなどしたところ,本件商品を貼付した部屋の方が,電力消費量が減少したことが確認されたとするものである(上記認定事実(タ))。
しかしながら,上記測定に用いられた空調機が同一機種であるとしても,全く同一の性能を有しているとは限らず(乙9の2〔11及び12頁〕),使用年数や使用状況等によって機差が生じている可能性もあるといえるところ,上記各資料においては機差の確認の有無ないし確認の方法が明らかにされていない。そのため,空調機の機差が上記測定の結果に影響を及ぼしていた可能性を排除することはできないというべきである。
また,資料10-4及び同10-16は,1日の室内平均温度等から空調機の稼働(冷房)熱量を算出しているが,冷房負荷は時々刻々と変化するものであるから,1日の室内平均温度から稼働(冷房)熱量を算出することはできない(乙9の2〔12及び14頁〕)。
したがって,上記各資料の実測の結果をもって,本件商品の一般的な性能を実証するものであるとはいえない。
(カ)

小括
以上に説示したところに鑑みると,資料7及び同10に係る実験の方
法は,表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものであるとはいえず,かつ,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものであるともいえない。
したがって,資料7及び同10によって,(a)夏季において本件商品を窓ガラスに貼付することにより,遮熱効果を有すること,日射の取得熱量を20.1%ないし63.3%削減することができること,(b)冬季において本件商品を窓ガラスに貼付することにより,断熱効果を有すること,窓ガラスを通じて室内から室外に逃げる熱量(損失熱量)を23.9%ないし53.5%削減することができることが実証されているとはいえない。

原告らの主張について
(ア)

原告らは,窓用フィルムは,時々刻々と変化する環境条件に応じ

て,その性能値がカメレオンのように変動する特殊な製品であるところ,現場の実測において諸条件を統一することは不可能であるため,実務上は性能値についてそれほどの精度は問われておらず,「状態値」として幅をもった表示しかできず,そのような幅をもった表示が性能値の表示として適正であるといえるから,窓用フィルム製品の性能について,多数の現場での実測結果を総合して幅を持たせた表示を行うことは,実際の性能を良く反映するものであり,多数の実測による実証が重要かつ必要というべきである旨主張する。
しかしながら,窓用フィルムを含む建築資材等の工業製品については,実験室等において,再現可能な条件の下で,比較対象の要素以外の実験条件を同一に設定した上で実験を行い,その性能値等を確認するのが学術界や産業界の一般的な方法であり,現場における実測は,工業製品の性能値を確認することが目的ではなく,実験室等における実験により得られた性能値が現場においても発揮できるか否かや性能の優劣を確認することを目的として行われるものにとどまると認めるのが相当である(乙16〔4及び5頁〕,20〔11及び12頁〕,21〔10ないし12頁〕)。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(イ)

原告らは,別の日程での測定を比較の対象とすることは,学術界や
産業界においても実施されており,同じような気象条件であれば,測定は有効とされており,実務上は性能値についてそれほどの精度は問われていないのであって,これらの点は,査読付き論文(甲46,52)からも明らかである旨主張する。
しかしながら,別の日程における測定を比較の対象とすることの有効性は,当該測定の目的やそれにより実証しようとする内容によって異なるというべきであるから,学術界や産業界においてそのような測定が実施される場合があるからといって,いかなる実験においてもそのような測定が有効であるということはできない。
この点につき,原告らの引用する証拠は,断熱及び気密性能が異なる3棟の住宅を対象として3日間の累積冷房負荷等を測定したもの(甲46)や,外気温度と室内温湿度の測定を行い,躯体蓄熱の有無により生ずる平日の室内湿度環境の違いを比較したもの(甲52)であって,資料7-1及び同10-15に係る実験とは目的も内容も異なるものであり,いずれも,実験の結果から工業製品の性能値を確認することを目的とするものではなく,資料7及び同10に係る実験の測定の有効性を基礎付けるものとはいえない。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(ウ)

原告らは,同一条件の隣り合う2室や上下の2室を比較の対象とす
ることは,学術界や産業界においても実施され(甲53,54),測定は有効とされており,査読付き論文(甲46)ですら「外界条件が異なり,内部発熱も全く同じではない」としながら,その差異の程度や影響を考慮していないのであって,このような現場での比較測定では,諸条件を統一しきれない前提の下で測定が成立している旨主張する。
しかしながら,同一条件の隣り合う2室や上下の2室を比較の対象とすることの有効性は,当該比較の目的やそれにより実証しようとする内容によって異なるというべきであるから,学術界や産業界においてそのような測定が実施される場合があるからといって,いかなる実験においてもそのような測定が有効であるということはできない。
この点につき,原告らの引用する証拠は,①断熱及び気密性能が異なる3棟の住宅を対象として3日間の累積冷房負荷等を測定したもの(甲46),②日射反射率が既に判明している塗料を用いた場合の室内温度がこれを用いない場合に比べて低下したという実験結果を示すもの(甲53),③遮蔽係数が既に判明している窓用フィルムを建物や鉄道車両の窓ガラスに貼付した場合の空調消費電力がこれを貼付しない場合に比べて低下したという実験結果を示すもの(甲54)であって,資料7及び同10に係る実験とは目的も内容も異なるものであり,いずれも,実験の結果から工業製品の性能値を確認することを目的とするものではなく,特に上記②及び③は,実験室等における実験により得られた性能値が現場においても発揮できるか否かや性能の優劣を確認することを目的として行われるものにとどまるものと認められ,上記①ないし③のいずれも,資料7及び同10に係る実験の測定の有効性を基礎付けるものとはいえない。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(エ)

原告らは,室内で,空調機の設定温度が同じで,かつ,吹き付ける
ような風向がない状態で測定していた場合,室内空気がおおむね同じ乱流で拡散が起きているとみなすことが可能であり,比較対象の2室において乱流状態が同じ(拡散が同じように起こっている状態)であれば,同じように拡散するので,温度勾配の高い方が窓から室内に流れる熱の量は大きいことになるから,温度勾配の図形の面積比から取得熱量の削減割合を求めることは可能である旨主張する。
しかしながら,そもそも,縦軸を室温,横軸を距離とする面積は,熱量を表すものではないから,温度勾配からの面積積分により熱エネルギー量を算出することに合理的な根拠があるとはいえないことは,上記ウ(エ)において説示したとおりである。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(オ)

原告らは,資料10-2及び同10-3において空調機の性能の同
一性を検証した形跡がないからといって,同一性を検証しなかったことにはならない上,一般に,測定結果の正確性が最も厳しく審査されている査読付き論文においてすら,測定機器の型式等の記載がないもの(甲47,51),あるいは測定機器に問題がないかという検証の有無について記載がないもの(甲47,49ないし51)が数多く散見される旨主張する。
しかしながら,宿泊施設等に設置されている空調機は,測定機器ではなく,前記ウ(オ)において説示したとおり,その性能に機差が生じやすいといえるため,機差を確認する必要性がより高いといえる。
他方,原告らの引用する査読付き論文(甲47,49ないし51)に記載されている測定機器は,熱電対,グローブ球,相対温度計,日射計,長短波放射収支計,超音波風向風速計,熱流計等であり,測定そのものを目的に製作された計器であって,空調機に比して機差が生じにくい性質の機器であるといえる。また,査読付き論文の原稿の審査においては,査読者が事務局を通じて疑問点や不明点を執筆者に質問することが可能であり,執筆者がこれに回答することが予定されているから(乙20〔2頁〕,24ないし26),査読付き論文に記載されていない事項があるからといって,当該事項が確認されていないものであるとか,確認することが不要なものであるということはできない。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
(9)

本件各表示とその裏付けとなる合理的根拠資料との関係
本件各表示とその裏付けとなる合理的根拠資料との関係に係る原告らの主張は,前記第2の4(2)ク(原告らの主張の要旨)(イ)及び別紙8に記載のとおりであり,本件各表示につき,資料1ないし同7及び同10に加え,甲26,34,66の1及び2並びに同67の1及び2が合理的根拠資料であるとするものである。


この点につき,原告らは,(ア)本件表示④及び同⑮に関し,法4条1項1号の定める「商品…の品質,規格その他の内容」に該当するのは,(a)本件商品が「遮熱効果」を有する旨の表示の内容であり,(b)放射熱を室外へ放出するか否か,窓ガラス表面からのふく射熱を減らすか否か,あるいは窓ガラス表面からのふく射熱を減らすことが原因となり室内に蓄積される熱が軽減するものであるか否かではなく,また,(イ)本件表示⑤及び同⑯に関し,同号の定める「商品…の品質,規格その他の内容」に該当するのは,(a)本件商品が「断熱効果」を有する旨の表示の内容であり,(b)対流熱を室内に閉じ込めるか否かや室内の熱の伝達を抑制するか否かではない旨主張する。
しかしながら,法4条1項1号所定の「著しく優良であると示す表示」とは,一般消費者に対して,社会一般に許容される誇張の程度を越えて商品等の優良性を示す表示をいうものと解されるところ,当該表示に該当するか否は,表示上の特定の文章,図表,写真等から一般消費者が受ける印象ないし認識に基づいて判断するのではなく,表示内容全体から一般消費者が受ける印象ないし認識に基づいて判断するのが相当である。
この点につき,原告翠光トップラインは,平成22年2月から平成23年3月31日までの間,その取引先事業者を通じて配布したリーフレットにおいて,別紙2記載2のとおりの記載をしていたものであり,また,原告ジェイトップラインは,平成24年5月以降,その取引先事業者を通じて配布したリーフレットにおいて,別紙3記載3のとおりの記載をしていたものである。そして,これらの記載内容の全体に照らすと,一般消費者においては,本件商品の優良性につき,本件商品が,単に遮熱効果及び断熱効果を有するとの印象ないし認識を抱くにとどまらず,これらの効果や性能の具体的な内容や程度として,夏季においては本件表示④及び同⑮が示すとおりの効果や性能(上記(ア)(b)の事項に係る効果や性能)を,冬季においては本件表示⑤及び同⑯が示すとおりの効果や性能(上記(イ)(b)の事項に係る効果や性能)をそれぞれ有するとの印象ないし認識を抱くものというべきである。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。ウ
そして,資料1ないし同7及び同10に係る各実験が,表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたものであるとはいえず,かつ,仮にこれらの方法が存在しない場合に該当するとしても,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されたものであるともいえないこと,また,原告らが主張する事項を実証するものではないことは,前記(1)ないし(8)において説示したとおりである。したがって,資料1ないし同7及び同10が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料であるとはいえない。
なお,本件各資料のうち,その余の資料についてみても,本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料であるといえるものは認められない。

また,前記1(2)及び(3)において説示したとおり,本件取消訴訟においては,原告らの提出した本件各資料が合理的根拠資料に該当するか否かが審理の対象となるのであり,提出期限の経過後に提出された資料は,本件各資料が本件各表示を裏付ける合理的な根拠を示すものであるか否かを判断するために参酌し得るにとどまり,参酌し得るのは本件各資料の内容を説明するものや補足するものに限られるというべきである。
しかるに,甲26及び甲34は,いずれも,消費者庁長官が定めた本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出期限を経過した後に提出されたものである(争いがない。)から,それ自体を直接に本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料とすることはできない。
そして,原告らの主張(別紙8)によれば,甲66の1及び2並びに甲67の1及び2は,いずれも,資料7-1,同7-3及び同10-7の一部の記載内容の前提となる資料としての意味を有するにとどまるものであるところ,資料7-1,同7-3及び同10-7がいずれも合理的根拠資料に該当しないものであることは既に説示したとおりである。

以上に鑑みると,本件各資料は,本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料であるとはいえないというべきである。

3
争点(3)(本件各表示が優良誤認表示に当たるか否か)について原告らは,仮に本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料として足りないものであったとしても,実証の結果から最大で10%程度の誤差は誇張の範囲と解すべきであるところ,本件各表示は,誇張の範囲にとどまるものであるから,法4条1項1号のいわゆる「優良誤認表示」に当たらず,仮に本件各表示のうち一部の数値について実証されていないと判断される場合であっても,実証された表示部分については,本件各措置命令は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら,前記2において説示したとおり,本件各表示については,合理的根拠資料の提出がされておらず当該各表示に係る効果や性能の実証がされているものがないのであって,その全体が法4条2項により同条1項1号に規定する優良誤認表示とみなされるのであるから,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。
4
争点(4)(本件各措置命令に係る裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無)について
(1)

原告らは,①消費者庁からの指摘を真摯に受け止め,遮蔽係数及び熱貫
流率の表示につき,直ちに当該ホームページの閉鎖又は表示の是正をするとともに,当該リーフレットの配布を中止したほか,その後も一部の表示を中止するとともに,行政指導にも応じる姿勢を示すなど,速やかに是正措置を講じており,また,②本件商品については,これまで18年にわたり苦情が一切発生しておらず,消費者被害が一度も発生していないことからすれば,仮に本件各表示に法上の問題があるとしても,あえて措置命令という強力な効果を持つ手段を執る必要性はなく,本件各措置命令は過大な処分として違法というべきである旨主張する。
しかしながら,本件各措置命令の内容は別紙5及び別紙6記載のとおりであり,本件各措置命令が優良誤認表示であるとする本件各表示の内容は,別紙2及び別紙3記載のとおりであるところ,本件各表示には本件商品の遮蔽係数や熱貫流率の表示は含まれていないのであるから,原告らが消費者庁からの指摘を受けた後,本件商品の遮蔽係数や熱貫流率の表示を中止するなどしたとしても,本件各措置命令の必要性が失われたということはできない。また,本件各表示のように,夏季において本件商品が窓ガラスから入る熱を一定割合削減し,冬季において本件商品が窓から逃げる熱を一定割合削減するという本件商品の効果や性能は,視覚的に確認することができないものであり,また,冷暖房費についても,気象の状況など様々な要因によって変動するものであるから,本件商品によって冷暖房効率が向上し,冷暖房費を節約することができるという本件商品の効果や性能を消費者が検証することは困難である。そのため,本件各表示に係る本件商品の効果や性能を信用してこれを購入した消費者が,その後もその効果や性能があるものと信用してこれを使用し続けることは想像に難くなく,仮に本件商品について18年間にわたって苦情がなかったとしても,上記のような誤信により過大な対価を出えんしてこれを購入し維持し続けるなどの消費者被害が生じている可能性を排除することはできないというべきである。
そして,他に,本件各措置命令の必要性が失われたとの評価を基礎付ける事情を認めるに足りる証拠はない。
したがって,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。(2)

原告らは,①本件商品のように,窓用フィルムを取り扱う業者は多数存
在し,これらの業者の製造ないし販売する製品の表示には,本件商品に比して消費者を強く誘引するものも存在するが,原告ら以外の窓用フィルムを扱う業者に対し,その表示が法上問題であるとして措置命令がされたことはない上,②消費者庁は,表示が法違反に当たるかについて事業者の予見可能性が乏しい場合,いきなり措置命令を行うのではなく,当該製品における消費者庁の法上の考え方を周知させる運用を行っていたところ,本件各措置命令は,消費者庁のこれまでの運用と明らかに異なるものであり,かつ,原告らの予見可能性を無視するものであるから,本件各措置命令は,原告らを狙い撃ちにする不当な処分であり,違法というべきである旨主張する。しかしながら,法6条1項は,法4条1項の規定に違反する行為があるときは,その行為の差止め若しくは再発防止に必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずる措置命令を発することができると規定し,それ以上に発令の基準や命令の内容について規定しておらず,これらの規定の定め方からは,上記の違反行為があった場合に,消費者庁長官がこの権限を行使して措置命令を発するか否か及びどのような内容の措置命令を発するかについては,消費者庁長官が公正な競争の確保及び一般消費者の利益の保護といった法の目的等に即した合理的な裁量によって決すべきものとされていると解される。
したがって,個々の措置命令が他の事業者との関係で平等原則に違反するものとして違法となるのは,消費者庁長官が,措置命令の名宛人とされた事業者以外の違反行為をした事業者に対しては当初から措置命令をする意思がなく,措置命令の名宛人とされた事業者に対してのみ差別的意図をもって特に不利益性の高い内容の措置命令をしたような場合など,その裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合に限られるものと解するのが相当である。この点につき,原告らは,高い遮熱性能や断熱性能を有する旨表示する他の事業者の窓用フィルムに係る広告表示の例として証拠(甲11の7)を提出しているが,これらの窓用フィルムは,そもそも,日射透過率が低いものなど,本件商品とは遮熱ないし断熱のメカニズムが全く異なるものである上,その表示が優良誤認表示に該当すると認めるに足りる証拠もない。また,原告らは,「トイレに流せる」等の表示をしているトイレクリーナーにつき,消費者庁が優良誤認表示に該当するか否かに関する考え方を公表したことの証拠(甲12)を提出しているが,特定の種類の表示についてこのような考え方を公表することの要否及び当否は,消費者庁長官が諸般の事情を勘案しその裁量権に基づいて判断するのが相当な事柄というべきであるところ,本件商品は,原告らも自認するとおり,日射を透過しながらも高い遮熱性能等を有するという特殊なフィルムであって,そのような特殊なフィルムに関する表示について,広く優良誤認表示に該当するか否かに関する考え方を公表することが必要かつ相当であったとまではいえず,このような考え方の公表を経ないで措置命令を発することが上記の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。
以上に鑑みると,消費者庁長官が他の事業者に対しては当初から措置命令をする意思がなく原告らに対してのみ差別的意図を持って本件各措置命令をしたなどその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったということはできないから,この点に関する原告らの主張を採用することはできない。5
争点(5)(本件各措置命令に係る手続上の瑕疵の有無)について(1)

弁明の機会の付与に係る瑕疵の有無について
原告らは,行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会を付与する旨の本件通知を受けたため,消費者庁に対し,本件各資料を本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠と認めなかった理由を明示するよう求めたが,同庁は書面による公式な回答を拒否したのであり,このように,本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠として足りないと判断した理由が明らかにされないのであれば,原告らによる弁明は事実上不可能であるから,本件各措置命令については,実質的には弁明の機会が付与されたものとはいえず,手続上の違法がある旨主張する。


行政手続法13条及び30条が,不利益処分をしようとする場合に,原則として,当該処分の名宛人となるべき者について,聴聞を行い又は弁明の機会を付与しなければならないものとし,弁明の機会を付与する場合に,当該処分の名宛人となるべき者に対しその通知をしなければならないものとしているのは,処分の公正の確保と処分に至る行政手続の透明性の向上を図るとともに,処分の名宛人となるべき者の権利利益の保護を図るという観点から,処分の名宛人となるべき者に対し,不利益処分が行われようとしていること及び当該処分が行われるに当たり弁明の機会が付与されることを知らせて,防御の準備を図る機会を保障する趣旨に出たものと解される。
そして,上記の趣旨に鑑みれば,行政手続法30条2号所定の通知事項である「不利益処分の原因となる事実」については,当該不利益処分の性質及び内容並びに根拠法令の規定内容等に照らして不利益処分の名宛人となるべき者が防御の対象を認識できる程度に具体的なものであることを要すると解するのが相当である。


これを本件についてみるに,前記前提事実(3)ウのとおり,消費者庁長官は,平成27年1月15日,原告らに対し,原告らの提出した本件各資料は本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないため,法4条2項により本件各表示は優良誤認表示とみなされるとして,行政手続法13条1項2号に基づき,予定される措置命令の内容を,原告翠光トップラインについては別紙5記載のとおり,原告ジェイトップラインについては別紙6記載のとおりとして,同月29日までの期限を定めて,弁明を記載した書面及び証拠を提出することができる旨の本件通知をした。
そして,本件通知には,原告らがした本件各表示の内容が具体的に記載されている上,原告らの提出した本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められない旨の理由や法4条2項により本件各表示が優良誤認表示とみなされる旨の根拠法規の適用関係も示されている。
また,前記法の定め等(2)のとおり,本件運用指針は,法4条2項の規定により事業者から提出された資料(提出資料)が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるための基準について一定の指針を示すものであり,公表されているものであるから,原告らはこれも参酌することが可能であるところ,本件各資料のように事業者が自ら提出した資料について,本件運用指針に沿って,①客観的に実証された内容のものであること,②表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることを説明することに特段の困難を伴うものとはいえない。
以上に鑑みると,本件通知には,原告らが防御の対象を認識できる程度に具体的な「不利益処分の原因となる事実」が記載されているということができるというべきである。

上記ウに説示したところによれば,本件各措置命令をするに当たり,弁明の機会の付与は適法にされているものと認めるのが相当であり,本件通知を受けた原告らが,消費者庁に対し,本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠と認めなかった理由を更に明示するよう求めたのに対し,同庁が書面による公式な回答を拒否したとしても,原告らによる弁明が事実上不可能であるとか,本件各措置命令について実質的に弁明の機会が付与されていないということはできず,所論のように弁明の機会の付与に係る瑕疵による手続上の違法があるとは認められない。
(2)

理由提示の不備の有無について
原告らは,本件各措置命令は,本件運用指針が示す基準をどのように適用して本件各資料が合理的根拠資料に当たらないと認定したのかについてその理由を一切示しておらず,原告らにおいて本件各資料が合理的根拠資料に当たらないとされた理由を了知することができないから,理由提示の程度として不十分であり,行政手続法14条1項に違反する旨主張する。

行政手続法14条1項本文が,行政庁が不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるところ,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきものと解するのが相当である(前掲最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決(以下「平成23年最高裁判決」という。)参照)。また,提示すべき理由の内容及び程度は,特段の理由のない限り,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたのかを,処分の相手方においてその記載自体から了知し得るものでなければならず,単に処分の根拠規定の該当条項を示すだけでは,それによって当該規定の適用の原因となった具体的な事実関係をも当然に知り得るような例外の場合を除いては,法の要求する理由の提示として十分ではないというべきである(最高裁昭和45年(行ツ)第36号同49年4月25日第一小法廷判決・民集28巻3号405頁参照)。
ウ(ア)

これを本件についてみるに,前記前提事実(3)エのとおり,消費者
庁長官は,平成27年2月27日,原告らに対し,原告らの提出した本件各資料は本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないため,法4条2項により本件各表示は優良誤認表示とみなされるとして,法6条に基づき,原告翠光トップラインについては別紙5「原告翠光トップラインに係る措置命令の内容」記載のとおりの内容により,原告ジェイトップラインについては別紙6「原告ジェイトップラインに係る措置命令の内容」記載のとおりの内容により,本件各措置命令をした。
そして,本件各措置命令には,原告らがした本件各表示の内容が具体的に記載されている上,原告らの提出した本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められない旨の理由や法4条2項により本件各表示が優良誤認表示とみなされる旨の根拠法規の適用関係も示されている。
(イ)

また,前記法の定め等(2)のとおり,本件運用指針は,平成15年
改正により法4条2項の規定が設けられたことに伴い,同項の運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保するため,同項の運用について一定の指針を示すことを目的として定められたものであり,公表されているものである。そして,公表されている本件運用指針の内容並びに本件各表示及び本件各資料の各内容を踏まえると,本件各措置命令において提示された理由の記載内容からは,原告らの提出した本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないと判断された理由が,①提出資料が客観的に実証された内容のものであること,②表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることという各基準の一方又は双方に適合しないとされたものであることを容易に認識することができるものというべきである。そして,上記(ア)の内容の理由提示によって,原告らの提出した本件各資料が合理的根拠資料に該当するとは認められないとの判断に基づいて法4条2項のみなし規定の適用により本件各措置命令がされたという根拠法規の適用関係は,原告らにとって容易に了知し得るものというべきであり,前記(1)ウのとおり,本件各資料のように事業者が自ら提出した資料について上記①及び②の各基準を満たしていることを説明することに特段の支障を伴うものとはいえないことにも併せ鑑みれば,本件各措置命令において,本件運用指針の上記①及び②の各基準の適用関係に係る個別の摘示まではされていなかったとしても,原告らの不服申立ての便宜の観点から,所要の理由提示の程度として欠けるところがあったとはいえないとみるのが相当である(本件運用指針は,事業者が提出した資料が合理的根拠資料に該当するか否かについて,法文の合理的解釈というべき上記①及び②の一般的な基準を示すものにとどまり,広い意味では行政手続法2条8号ハ所定の処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準)に該当し得るものであるとしても,平成23年最高裁判決の事案のように免許取消し又は事業停止の処分を行うか否か並びにその選択及び処分量定等の具体的な基準についてかなり複雑な内容を定めた処分基準の細目に即した適用関係の提示を要する懲戒処分の場合とは事案を異にするものというべきである。)。(ウ)

以上に鑑みると,本件各措置命令において提示された理由は,行政
手続法14条1項の要求する理由提示の程度として十分なものということができ,同項に違反するものとはいえないというべきである。
6
小括(本件取消訴訟について)
上記1ないし5において説示したところによれば,本件各措置命令について原告らの主張に係る所論の実体上又は手続上の瑕疵があるとはいえず,本件取消訴訟に係る原告らの請求は理由がない。

7
争点(6)(国家賠償法上の違法の有無)について
(1)

国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員
が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから,公務員による公権力の行使に係る行為に同項にいう違法があるというためには,公務員が,当該行為によって損害を被ったと主張する者に対して負う職務上の法的義務に違反したと認められることが必要であると解される(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成18年(受)第263号同20年4月15日第三小法廷判決・民集62巻5号1005頁等参照)。
そこで,以下,このような観点から,原告らの主張する本件各措置命令の違法の有無について検討することとする。
(2)

原告らは,消費者庁長官が,JIS規格を過度に重視し,原告らの提出
した弁明書等も全く考慮せず,科学的無理解に基づく微視的かつ机上の空論により表示の裏付け根拠を否定する判断をし,本件各措置命令をしたものであるから,法6条の要件を欠く違法な処分というべきである旨主張する。しかしながら,本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料であるといえないことは,前記2において説示したとおりである。また,原告らが提出した「弁明書」(乙7)並びに「弁明書の補足」と題する書面及びその添付資料(乙8の1ないし7)は,本訴において原告らが主張する事項と同様の弁明をするものか,本件商品の性能に係るメカニズム等を説明するものにとどまり,前記2において説示した本件各資料の問題点を解消するに足りるものではない。
そのため,本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料であるとは認められないとした消費者庁長官の判断に所論の誤りはなく,この点について本件各措置命令が国家賠償法上違法の評価を受けるものではないというべきである。
したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
(3)

原告らは,仮に本件各表示に法上の問題があるとしても,あえて措置命
令という強力な効果を持つ手段を執る必要性はなく,少なくとも原告らに行政指導を行うことで足りたのであるから,本件各措置命令は過大な処分として違法というべきである旨主張する。
しかしながら,原告らの主張は前記第2の4(4)(原告らの主張の要旨)アにおける主張と同旨のものであるところ,本件各措置命令の必要性が失われたとの評価を基礎付ける事情が認められないことは,前記4(1)において説示したとおりであり,この点について本件各措置命令が国家賠償法上違法の評価を受けるものではないというべきである。
したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
(4)

原告らは,本件各措置命令は,原告らを狙い撃ちにする不当な処分であ
り,違法というべきである旨主張する。
しかしながら,原告らの主張は前記第2の4(4)(原告らの主張の要旨)イにおける主張と同旨のものであるところ,消費者庁長官が原告らに対してのみ差別的意図を持って本件各措置命令をしたということはできないことは,前記4(2)において説示したとおりであり,この点について本件各措置命令が国家賠償法上違法の評価を受けるものではないというべきである。したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
(5)

原告らは,消費者庁長官は,本件各資料が合理的根拠資料に該当するか
否かについて,専門家が作成した意見書等の文書の提出を受け,当該文書に基づいて判断を行うべき注意義務が職務上課されているにもかかわらず,2名の専門家から意見書等の文書の提出を受けずに判断を行っており,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかった違法がある旨主張する。しかしながら,法4条2項は,消費者庁長官が表示をした事業者に対し合理的根拠資料の提出を求めることができ,その提出がないときは当該表示を優良誤認表示とみなす旨を定めているにとどまり,消費者庁長官が事業者から提出された資料について合理的根拠資料に該当するか否かの判断をするに当たって,専門家の意見を聴取すべきことやその方法を定めた法令の規定がないことからすれば,専門家の意見を聴取するか否か及びその意見を文書で徴するか否かは,法令上の規律の対象とされておらず,実務の運用に委ねられているものと解するのが相当である。
そうすると,消費者庁長官が,本件各資料が合理的根拠資料に該当するか否かを判断するに当たり,専門家の意見を文書で徴した上で当該文書に基づいて判断をすべき注意義務が職務上課されているとはいえないから,消費者庁長官が専門家から文書の提出を受けずに意見を聴取した上で本件各措置命令をしたことについて,本件各措置命令が国家賠償法上違法の評価を受けるものではないというべきである。
したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
(6)

原告らは,被告の主張する本件各資料の問題点やその後に提出された本
件各意見書の内容は,査読付き論文ですら許容されている実験条件であるにもかかわらず許容できないとの主張を含むものであり,一般的基準をはるかに超えた完璧かつ理想的な実験条件でなければならないと主張するに等しいものであり,明らかに不合理で極めて恣意的なものであって,消費者庁長官が本件各措置命令に際して依拠した2名の専門家の意見の内容には看過し難い重大な過誤が認められるから,消費者庁長官の判断は違法というべきである旨主張する。
しかしながら,原告らが引用する査読付き論文は,本件各資料に係る実験とは目的も内容も異なるものであり,本件各資料に係る実験の測定の有効性を基礎付けるものではないこと,また,査読付き論文の原稿の審査においては,査読者が事務局を通じて疑問点や不明点を執筆者に質問することが可能であり,執筆者がこれに回答することが予定されているから,査読付き論文に記載されていない事項があるからといって,当該事項が確認されていないものであるとか,確認することが不要なものであるということはできないことなどは,前記2(同(4)エ(イ),(5)エ(エ)及び(8)エ(イ),(ウ),(オ))において説示したとおりである。
また,そもそも,法4条2項ただし書の適用上,提出資料が合理的根拠資料に該当するか否かは客観的に判断されるべきものであるところ,本件各資料が本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料であるといえないことは,前記2において説示したとおりであるから(前記2において説示したところによれば,上記2名の専門家の意見(本件各意見書)中には,本件各資料に係る実験の問題点に関する妥当な指摘を含む部分があり,その余の部分は本件各表示の合理的根拠資料該当性に係る判断を左右するものではないというべきである。),消費者庁長官が上記の判断に当たって上記2名の専門家の意見を参酌したことについて,本件各措置命令が国家賠償法上違法の評価を受けるものではないというべきである。
したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
(7)

原告らは,夏季の遮熱効果に関する本件表示④及び同⑮並びに冬季の断
熱効果に関する本件表示⑤及び同⑯につき,遮熱ないし断熱の具体的メカニズム自体は,法4条1項1号の定める「商品…の品質,規格その他の内容」には該当しないにもかかわらず,消費者庁長官は,具体的なメカニズム自体に関する表示部分についても法4条1項1号が適用されるとの誤った法解釈を行い,このような誤った法解釈を基に,数値が実証されている本件各表示についても合理的根拠がないと判断した点で,重大な過失がある旨主張する。しかしながら,本件各表示が,その表示内容の全体に照らすと,一般消費者において,本件商品の優良性につき,本件商品が単に遮熱効果及び断熱効果を有するとの印象ないし認識を抱くにとどまらず,これらの効果の具体的な内容や程度として,夏季においては本件表示④及び同⑮が示すとおりの効果や性能を,冬季においては本件表示⑤及び同⑯が示すとおりの効果や性能をそれぞれ有するとの印象ないし認識を抱くものというべきであることは,前記2(9)イにおいて説示したとおりである。
そのため,法4条1項1号の適用対象となる表示について消費者庁長官の判断に所論の誤りがあるとはいえないから,この点について本件各措置命令が国家賠償法上違法の評価を受けるものではないというべきである。したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
(8)

原告らは,消費者庁長官は,本件各資料について専門家から意見を聴取
する場合には,少なくとも,本件商品がJIS規格の対象外の製品であることの説明を十分にして注意喚起をし,JIS規格の適用に関わる意見については慎重に検討すべき職務上の注意義務が課されているにもかかわらず,JIS規格の認定機関に所属するZ1氏を安易に選定したばかりか,JIS規格の適用に関わる意見について慎重な検討を行わなかった点で,重大な過失がある旨主張する。
しかしながら,法4条2項は,消費者庁長官が表示をした事業者に対し合理的根拠資料の提出を求めることができ,その提出がないときは当該表示を優良誤認表示とみなす旨を定めているにとどまり,消費者庁長官が事業者から提出された資料について合理的根拠資料に該当するか否かの判断をするに当たって,専門家の意見を聴取すべきことやその方法を定めた法令の規定がないことからすれば,専門家の意見を聴取するか否か及びその意見を聴取する場合に当該専門家に対し当該資料についてどのような説明をするかは,法令上の規律の対象とされておらず,実務の運用に委ねられているものと解するのが相当である。
そうすると,消費者庁長官が,本件各資料が合理的根拠資料に該当するか否かを判断するに当たり,専門家の意見を聴取する場合に,当該専門家に対し本件商品がJIS規格の対象外の製品であることの説明をして注意喚起をすべき注意義務やJIS規格の認定機関に所属しない専門家を選定すべき注意義務が職務上課されているとはいえないから,消費者庁長官がそのような説明をしないでJIS規格の認定機関に所属する専門家の意見を聴取し,その意見を参酌して本件各措置命令をしたとしても,この点について本件各措置命令が国家賠償法上違法の評価を受けるものではないというべきである。したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。
(9)

小括(本件国賠訴訟について)
上記(1)ないし(8)において説示したところによれば,本件各措置命令に国
家賠償法上の違法があるとはいえず,その余の点(争点(7)(損害の有無))について判断するまでもなく,本件国賠訴訟に係る原告らの請求は理由がない。
第4

結論
以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

岩井伸晃
裁判官

堀内元城
裁判官

吉賀朝哉
(別紙2)

原告翠光トップラインに係る表示内容

1
平成16年頃から平成23年3月31日までの間,原告翠光トップラインの取引先事業者を通じて配布したリーフレットにおいて,「透明のフィルムを窓ガラスに貼るだけで冷暖房効率が30%~40%アップ」,「冷暖房効率30%~40%アップ」,「冬:窓ガラスから逃げる熱を30%~40%抑え,暖房効率を向上させます。」,「夏:窓ガラスから入る熱を30%~40%抑え,冷房効率を向上させます。」と記載することにより,本件商品を使用すれば,①

冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を30%ないし40%抑える旨を示す表示(以下「本件表示①」という。)



夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を30%ないし40%抑える旨を示す表示(以下「本件表示②」という。)



冷暖房効率が30%ないし40%向上する旨を示す表示(以下「本件表示③」という。)

2
平成22年2月から平成23年3月31日までの間,原告翠光トップラインの取引先事業者を通じて配布したリーフレットにおいて,「断熱補助効果ーグフィルムの働きにより放射熱を室外へ放出

冬夏シ
シーグフィルムの働きによ

り対流熱を室内に保温します」,「断熱補助効果によりお部屋の快適性がアップ。例えば寝室の場合,快適な睡眠をサポート・冷暖房費用の削減に!熱補助」,「シーグフィルムを貼ると

■快適=断

夏は室内の暑さの原因となる放射熱をよ

り多く室外へにがし,冬は対流熱を室内にとじこめる事ができます!この効果により,夏は涼しく,冬は暖かい快適空間を演出。夏・冬両シーズンで断熱補助効果を発揮する特殊なフィルムです。」と記載することにより,本件商品を使用すれば,


夏季においては本件商品が放射熱を室外へ放出する旨を示す表示(以下「本件表示④」という。)



冬季においては本件商品が対流熱を室内に閉じ込める旨を示す表示(以下「本件表示⑤」という。)

3
例えば,平成24年11月26日から平成25年9月12日までの間,自社ウェブサイトにおけるウェブページにおいて,「夏の遮熱で

室内に入る熱をカット」,「冬の断熱で

熱を逃がさない」,「1.夏涼しく,冬暖かい

暖房費

10%ダウ

10%ダウン

室内から

冷暖房効率は最大40%アップ

します。」,「■断熱・遮熱フィルムとしての高い効果
ト!

冷房費

放射熱を94%カッ

夏涼しく・冬暖かい部屋を作るから冷暖房効率が30~40%アップしま
す!」,「夏は,外からの太陽熱の侵入をいかに防ぐかが重要です。シーグフィルムを室内側に貼ることで,窓ガラスが室外側から吸収した熱の室内への放射を大幅に抑えます。シーグフィルムを貼った窓の放射熱量はなんと通常の窓ガラスの18分の1。熱のほとんどは室外側に放射され,窓ガラスから入る熱が40~50%削減されます。

室内が熱くならないから,冷房効率が大幅にアップしま

す!」,「冬は,外気の影響よりも室内の暖かい空気を外に逃がさないようにすることが大切です。シーグフィルムを室内側に貼ることで,特殊コート層が室内の熱の損失を抑制。窓ガラスから逃げる熱の量が20~30%ダウンし,これまでのフィルム製品では難しかった冬の断熱や防寒が実現します。

室内が冷えな

いから,暖房効率が大幅にアップします!」等と記載することにより,本件商品を使用すれば,


夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を40%ないし50%削減する旨を示す表示(以下「本件表示⑥」という。)



冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を20%ないし30%削減する旨を示す表示(以下「本件表示⑦」という。)


冷暖房効率が最大40%向上する旨を示す表示(以下「本件表示⑧」という。)


冷暖房費が10%低下する旨を示す表示(以下「本件表示⑨」という。)以上

(別紙3)

原告ジェイトップラインに係る表示内容

1
平成23年4月1日から平成26年4月までの間,自社ウェブサイトにおけるウェブページにおいて,「シーグを貼付すると,室温が2~6℃変化します。設定温度を2℃変えるだけで空調費は一般オフィスで約25~35%削減できます。

一般家庭でも光熱費を約20~30%節約できます。」,「シーグは空調
機の稼働を軽減し,省エネルギーに直接貢献します(夏冬とも20~40%抑制)。」,「夏
せます。


窓ガラスから入る熱を20~40%軽減し,冷房効率を向上さ
窓ガラスから逃げる熱を20~30%削減し,暖房効率を向上さ

せます。」,「フィルム表面の透明なコート層が室内の断熱を行うことによって冷暖房効率が30~40%アップします。」等と記載することにより,本件商品を使用すれば,

夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を20%ないし40%軽減する旨を示す表示(以下「本件表示⑩」という。)


冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を20%ないし30%削減する旨を示す表示(以下「本件表示⑪」という。)


冷暖房効率を20%ないし40%向上させる旨を示す表示(以下「本件表示⑫」という。)


一般家庭における光熱費を約20%ないし30%節約できる旨を示す表示(以下「本件表示⑬」という。)

2
平成23年4月以降,原告ジェイトップラインの取引先事業者を通じて配布したリーフレットにおいて,「シーグフィルムは透明度,開放感といったガラスのメリットを残しつつ,同時に安全性や熱効率の向上をサポートする機能性フィルムです。」,「目に見える光はそのままに,有害な紫外線や熱負荷を減らすことにより室内の快適さを追求します。」,「断熱

涼しい夏」,「冷房効率

1
0%~25%アップ」と記載することにより,本件商品を使用すれば,⑭
夏季において本件商品が室内への熱負荷を減らし,冷房効率が10%ないし25%向上する旨を示す表示(以下「本件表示⑭」という。)

3
平成24年5月以降,原告ジェイトップラインの取引先事業者を通じて配布したリーフレットにおいて,「シーグフィルムは室内の明るさをそのままに,フィルム表面に特殊コート層をコーティングする新技術により,太陽の熱(放射熱)と空気の熱(対流熱)をコントロールして,夏・冬ともに快適生活のお手伝いができるフィルムです。また,飛散防止,紫外線カット効果で『安心/安全』に貢献致します。」,「①あつい夏,エアコンの稼働はなるべく控えて過ごしたいものです。

②夏の窓ガラスは太陽の熱(放射熱)を受けてパネルヒーターのよう
にあつくなります。これがお部屋をあつくする一因となります。

③シーグフィ

ルムは窓ガラス表面からの輻射熱を大幅に減らします。これにより本来,お部屋に侵入し,蓄積されていく熱が軽減されます。

④窓ガラスの輻射熱を軽減する

ことによりエアコンの効きが良くなります。」及びそれぞれの記載に対応するイメージ図,「その4.冬の対策

シーグフィルムは対流熱の伝わりを抑制するこ

とで,室温低下を緩和します。」,「冬の断熱効果により,窓際の温度低下を緩和」と記載することにより,本件商品を使用すれば,

夏季においては本件商品が窓ガラス表面からのふく射熱を減らすことにより室内に蓄積される熱が軽減する旨を示す表示(以下「本件表示⑮」という。)

冬季においては本件商品が室内の熱の伝達を抑制することによって室温低下が緩和する旨を示す表示(以下「本件表示⑯」という。)
以上

(別紙4)

表示内容の整理

〔夏季における効果に関する表示〕
1
夏季においては本件商品が放射熱を室外へ放出する旨を示す表示(本件表示④)

2
夏季においては本件商品が窓ガラス表面からのふく射熱を減らすことにより室内に蓄積される熱が軽減する旨を示す表示(本件表示⑮)

3
夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を30%ないし40%抑える旨を示す表示(本件表示②)

4
夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を40%ないし50%削減する旨を示す表示(本件表示⑥)

5
夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を20%ないし40%軽減する旨を示す表示(本件表示⑩)

〔冬季における効果に関する表示〕
1
冬季においては本件商品が対流熱を室内に閉じ込める旨を示す表示(本件表示⑤)

2
冬季においては本件商品が室内の熱の伝達を抑制することによって室温低下が緩和する旨を示す表示(本件表示⑯)

3
冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を30%ないし40%抑える旨を示す表示(本件表示①)

4
冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を20%ないし30%削減する旨を示す表示(本件表示⑦)

5
冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を20%ないし30%削減する旨を示す表示(本件表示⑪)

〔冷暖房効率に関する表示〕
1
冷暖房効率が30%ないし40%向上する旨を示す表示(本件表示③)
2
冷暖房効率が最大40%向上する旨を示す表示(本件表示⑧)
3
冷暖房効率を20%ないし40%向上させる旨を示す表示(本件表示⑫)
4
夏季において本件商品が室内への熱負荷を減らし,冷房効率が10%ないし25%向上する旨を示す表示(本件表示⑭)

〔冷暖房費に関する表示〕
1
冷暖房費が10%低下する旨を示す表示(本件表示⑨)
2
一般家庭における光熱費を約20%ないし30%節約できる旨を示す表示(本件表示⑬)
以上

(別紙5)

原告翠光トップラインに係る措置命令の内容

1
原告翠光トップラインは,同原告が一般消費者に販売する本件商品に係る表示に関して,次に掲げる事項を速やかに一般消費者に周知徹底しなければならない。この周知徹底の方法については,あらかじめ,消費者庁長官の承認を受けなければならない。
(1)

原告翠光トップラインは,本件商品を一般消費者に販売するに当たり,別
紙2「原告翠光トップラインに係る表示内容」記載の各表示(あたかも,本件商品を使用すれば各記載に係る効果や性能が実際に得られるかのような各表示)をそれぞれしていたこと。
(2)

上記(1)の表示は,本件商品の内容について,一般消費者に対し,実際のも
のよりも著しく優良であると示すものであり,法に違反するものであること。2
原告翠光トップラインは,今後,本件商品又はこれと同種の商品の取引に関し,上記1(1)記載の表示と同様の表示が行われることを防止するために必要な措置を講じ,これを同原告の役員及び従業員に周知徹底しなければならない。
3
原告翠光トップラインは,今後,本件商品又はこれと同種の商品の取引に関し,表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく,上記1(1)記載の表示と同様の表示をしてはならない。

4
原告翠光トップラインは,上記1に基づいて行った周知徹底及び上記2に基づいて採った措置について,速やかに文書をもって消費者庁長官に報告しなければならない。
以上

(別紙6)

原告ジェイトップラインに係る措置命令の内容

1
原告ジェイトップラインは,同原告が一般消費者に販売する本件商品に係る表示に関して,次に掲げる事項を速やかに一般消費者に周知徹底しなければならない。この周知徹底の方法については,あらかじめ,消費者庁長官の承認を受けなければならない。
(1)

原告ジェイトップラインは,本件商品を一般消費者に販売するに当たり,
別紙3「原告ジェイトップラインに係る表示内容」記載の各表示(あたかも,本件商品を使用すれば各記載に係る効果や性能が実際に得られるかのような各表示)をそれぞれしていたこと。
(2)

上記(1)の表示は,本件商品の内容について,一般消費者に対し,実際のも
のよりも著しく優良であると示すものであり,法に違反するものであること。2
原告ジェイトップラインは,今後,本件商品又はこれと同種の商品の取引に関し,上記1(1)記載の表示と同様の表示が行われることを防止するために必要な措置を講じ,これを同原告の役員及び従業員に周知徹底しなければならない。
3
原告ジェイトップラインは,今後,本件商品又はこれと同種の商品の取引に関し,表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく,上記1(1)記載の表示と同様の表示をしてはならない。

4
原告ジェイトップラインは,上記1に基づいて行った周知徹底及び上記2に基づいて採った措置について,速やかに文書をもって消費者庁長官に報告しなければならない。
以上

(別紙8)

夏季及び冬季における効果並びに冷暖房効率及び冷暖房費等に関する表示について
1
夏季における効果に関する表示について
(1)

夏季においては本件商品が放射熱を室外へ放出する旨を示す表示(本件表
示④)及び夏季においては本件商品が窓ガラス表面からのふく射熱を減らすことにより室内に蓄積される熱が軽減する旨を示す表示(本件表示⑮)についてア
表示の裏付けとなる合理的根拠資料
本件表示④及び同⑮の裏付けとなる合理的根拠資料は,本件商品の表面塗料の放射率が0.049以下と極めて低いこと(資料1)のほか,夏季における遮熱効果があることの合理的根拠資料の全て(資料2,同4,同5,同6,同7-1,同7-2,同7-4ないし同7-6,同10-1ないし同10-14,甲26,甲34)が該当する。


合理的根拠資料により実証される内容
上記アの各資料は,いずれも遮熱効果を直接実証するものである。そして,一定程度の遮熱効果が認められれば,本件表示④及び同⑮は遮熱効果を数値として示す表示ではないので,直ちに本件表示④及び同⑮は実証されたことになる。

(2)

夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を30%ないし40%抑え
る旨を示す表示(本件表示②),夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を40%ないし50%削減する旨を示す表示(本件表示⑥)及び夏季においては本件商品が窓ガラスから入る熱を20%ないし40%軽減する旨を示す表示(本件表示⑩)について

表示の裏付けとなる合理的根拠資料
本件表示⑥の裏付けとなる合理的根拠資料は,資料4,同2及び同5,同6,甲26及び甲34であり,本件表示②及び同⑩の裏付けとなる合理的根拠資料は,上記各資料に加え,室内の取得熱量を実測した資料10-5,同10-6,同10-8,同10-9,同10-11ないし同10-14,空調機の処理熱量を実測した資料10-1,同10-4及び同10-10,空調機の稼働回数及び稼働時間を実測した資料10-2である。

合理的根拠資料により実証される内容
上記ア記載の各資料により,夏季において本件商品を窓ガラスに貼付することによる取得熱量の削減割合が次のとおりであることが実証されている。(資料4)

46%

(資料2及び同5)

44%

(資料6)

57%

(甲26)

33.5%

(甲34)

30%

(資料10-1)

28.6~41.1%(カーテン開)

(資料10-1)

25.3~47.5%(カーテン閉)

(資料10-2)

約33%

(資料10-4)

34.7%(カーテン開放)

(資料10-4)

52.9%(カーテン密閉)

(資料10-5)

23.5~63.3%

(資料10-6)

24.7~44%

(資料10-8)

23.8%

(資料10-9)

48.5%

(資料10-10)

20.5~22.9%

(資料10-11)

43.8%

(資料10-12)

49.3%

(資料10-13)

27.6~54.3%
(資料10-14)

20.1~48.7%

以上の結果から,保守的に,本件表示②については抑制効果を30%ないし40%と,本件表示⑥については削減効果を40%ないし50%と,本件表示⑩については軽減効果を20%ないし40%と表示したものである。2
冬季における効果に関する表示について
(1)

冬季においては本件商品が対流熱を室内に閉じ込める旨を示す表示(本件
表示⑤)及び冬季においては本件商品が室内の熱の伝達を抑制することによって室温低下が緩和する旨を示す表示(本件表示⑯)について

表示の裏付けとなる合理的根拠資料
本件表示⑤及び同⑯の裏付けとなる合理的根拠資料は,窓際の温度低下の抑制(資料7-3)のほか,冬季における断熱効果があることの合理的根拠資料の全て(資料3,同5,同10-15ないし10-20)が該当する。

合理的根拠資料により実証される内容
上記アの各資料は,断熱効果を直接実証するものである。そして,一定程度の断熱効果が認められれば,本件表示⑤及び同⑯は断熱効果を数値として示す表示ではないので,直ちに本件表示⑤及び同⑯は実証されたことになる。
(2)

冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を30%ないし40%抑
える旨を示す表示(本件表示①)及び冬季においては本件商品が窓ガラスから逃げる熱を20%ないし30%削減する旨を示す表示(本件表示⑦及び同⑪)について

表示の裏付けとなる合理的根拠資料
本件表示①,同⑦及び同⑪の裏付けとなる合理的根拠資料は,資料3及び同5,室内の損失熱量を実測した資料10-17ないし同10-20,暖房負荷熱量を実測した資料10-16並びに空調機の消費電力を実測した資料10-15である。


合理的根拠資料により実証される内容
上記ア記載の各資料により,冬季において本件商品を窓ガラスに貼付することによる損失熱量の削減割合が次のとおりであることが実証されている。(資料3及び同5)

30%

(資料10-15)

50.2~53.5%

(資料10-16)

32.8%

(資料10-17)

32.8%

(資料10-18)

23.9%

(資料10-19)

32.4%(空調機稼働)

(資料10-19)

50.7%(空調機停止)

(資料10-20)

25%

以上の結果から,保守的に,本件表示①については抑制効果を30%ないし40%と,本件表示⑦及び同⑪については削減効果を20%ないし30%と表示したものである。
3
冷暖房効率及び冷暖房費等に関する表示について
(1)

冷暖房効率が30%ないし40%向上する旨を示す表示(本件表示③),
冷暖房効率が最大40%向上する旨を示す表示(本件表示⑧),冷暖房効率を20%ないし40%向上させる旨を示す表示(本件表示⑫)及び夏季において本件商品が室内への熱負荷を減らし,冷房効率が10%ないし25%向上する旨を示す表示(本件表示⑭)について

本件商品は窓用フィルムであるから,本件表示③,同⑧,同⑫及び同⑭は,いずれも窓から出入りする熱に対する冷暖房効率に関する表示と解される。
(ア)

表示の裏付けとなる合理的根拠資料
本件表示③,同⑧,同⑫及び同⑭の裏付けとなる合理的根拠資料は,冷
房効率につき,資料4,同2及び同5,同6,甲26及び甲34,室内の取得熱量を実測した資料10-5,同10-6,同10-8,同10-9,同10-11ないし同10-14,空調機の処理熱量を実測した資料10-1,同10-4及び同10-10,空調機の稼働回数及び稼働時間を実測した資料10-2であり,暖房効率につき,資料3及び同5,室内の損失熱量を実測した資料10-17ないし同10-20,暖房負荷熱量を実測した資料10-16,空調機の消費電力を実測した資料10-15である。
(イ)

合理的根拠資料により実証される内容
夏季において窓から入る熱量の削減割合は,窓から入る熱に対してのエ
アコン(冷房)効率の向上割合と等しいと解され,冬季において窓から逃げる熱量の削減割合は,窓から逃げる熱に対してのエアコン(暖房)効率の向上割合と等しいと解される。
したがって,前記1(夏季における効果に関する表示について)中の窓ガラスから入る熱の削減に関する本件表示②,同⑥及び同⑩,前記2(冬季における効果に関する表示について)中の窓ガラスから逃げる熱の削減に関する本件表示①,同⑦及び同⑪における実証内容と同様となる。そこで,保守的に,冷暖房効率の向上について30%ないし40%(本件表示③),最大40%(本件表示⑧),20%ないし40%(本件表示⑫)と表示し,冷房効率の向上について10%ないし25%(本件表示⑭)と表示したものである。

仮に本件表示③,同⑧,同⑫及び同⑭が,窓から出入りする熱だけでなく,内部発熱を含んだ部屋全体の冷暖房効率(冷暖房負荷の削減割合)に関する表示と解されるとしても,以下のとおり合理的根拠資料により実証されている。
(ア)

夏季の冷房効率に係る表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びそれに
より実証される内容
室内に入る熱量の削減割合ないし空調機の消費電力の削減割合は,冷房効率(冷房負荷の削減割合)に等しいので,「内部発熱」が発生する状況における「熱量の削減割合」及び「空調機の消費電力の削減割合」に関する測定結果として,資料6,同10-13,甲34が合理的根拠資料となる。そして,これらの合理的根拠資料によって,以下のとおり冷房効率の向上が実証される。
(資料6)

56.4%

(資料10-13)

27.6%~54.3%

(甲34)

30%

また,環境省ウェブサイト(甲66の1及び2)によると,夏の冷房時の温度設定を1℃高くすると約13%の消費電力の削減になると表示(以下「環境省表示1」という。)されているところ,夏季について“内部発熱”が発生する状況における「温度上昇の抑制」に関する測定結果は,環境省表示1を適用することによって,冷房効率に関する表示の実証根拠になる。そのため,資料7-1及び同10-7が合理的根拠資料となる。(資料7-1)

2.0℃~4.5℃(日射時)の温度抑
制効果

(資料10-7)

2.3℃の温度抑制効果

そして,これらの測定結果に環境省表示1を適用して,以下のとおり冷房効率の向上が実証される。
(資料7-1,環境省表示1)
(資料10-7,環境省表示1)
(イ)

26%~58.5%
29.9%

冬季の暖房効率に係る表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びそれに
より実証される内容
室内から流出する熱量の削減割合ないし空調機の消費電力の削減割合は,暖房効率(暖房負荷の削減割合)に等しいので,「熱量の削減割合」及び「空調機の消費電力の削減割合」に関する全ての測定結果として,資料3及び同5,同10-15ないし同10-20が合理的根拠資料となる。そして,これらの合理的根拠資料によって,以下のとおり暖房効率の向上が実証される。
(資料3及び同5)

30%

(資料10-15)

50.2%~53.5%

(資料10-16)

32.8%

(資料10-17)

32.8%

(資料10-18)

23.9%

(資料10-19)

32.4%(空調機稼働)

(資料10-19)

50.7%(空調機停止)

(資料10-20)

25%

また,環境省ウェブサイト(甲66の1及び2)によると,冬の暖房時の設定温度を1℃低くすると約10%の消費電力の削減になるとの表示(以下「環境省表示2」という。)がされているところ,冬季については,内部発熱の発生は空調機の負荷を減らす方向に働くので,内部発熱が発生する状況であるか否かを問わず,冬季における「温度低下の抑制」に関する全ての測定結果は,環境省表示2を適用することによって,暖房効率に関する表示の実証根拠となる。そのため,資料7-3が合理的根拠資料となる。
(資料7-3)

6.5℃~7.2℃の温度抑制効果

そして,この測定結果に環境省表示2を適用して,以下のとおり暖房効率の向上が実証される。
(資料7-3,環境省表示2)65%~72%
(ウ)

小括
以上のとおり,夏季において26%~58.5%,冬季において25%
~72%の冷暖房効率の向上が実証されている。これらの結果を総合的に考慮して,保守的に,冷暖房効率の向上について,30%ないし40%(本件表示③),最大40%(本件表示⑧),20%ないし40%(本件表示⑫),冷房効率の向上について10%ないし25%(本件表示⑭)と表示したものである。
(2)

冷暖房費が10%低下する旨を示す表示(本件表示⑨)について夏季の冷房費に係る表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びこれにより実証される内容
室内に入る熱量の削減割合ないし空調機の消費電力の削減割合は冷房効率(冷房負荷の削減割合)に等しく,冷房効率(冷房負荷の削減割合)は冷房費の削減割合にほぼ等しいので,「内部発熱」が発生する状況における「熱量の削減割合」及び「空調機の消費電力の削減割合」に関する測定結果として,資料6,同10-13及び甲34が合理的根拠資料となる。そして,これらの合理的根拠資料によって,以下のとおり冷房効率の向上が実証される。
(資料6)

56.4%

(資料10-13)

27.6%~54.3%

(甲34)

30%

また,環境省ウェブサイト(甲66の1及び2)によると,夏の冷房時の温度設定を1℃高くすると約13%の消費電力の削減になるとの表示(環境省表示1)がされているところ,夏季について“内部発熱”が発生する状況における「温度上昇の抑制」に関する測定結果は,環境省表示1を適用することによって,冷房費に関する表示の実証根拠になる。そのため,資料7-1及び同10-7が合理的根拠資料となる。
(資料7-1)

2.0℃~4.5℃(日射時)の温度抑制
効果

(資料10-7)

2.3℃の温度抑制効果
これらの測定結果に環境省表示1を適用して,以下のとおり冷房効率の向上が実証される。
(資料7-1,環境省表示1)
(資料10-7,環境省表示1)

26%~58.5%
29.9%

冬季の暖房費に係る表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びこれにより実証される内容
室内から流出する熱量の削減割合ないし空調機の消費電力の削減割合は暖房効率(暖房負荷の削減割合)に等しく,暖房効率(暖房負荷の削減割合)は暖房費の削減割合にほぼ等しいので,「熱量の削減割合」「空調機の消費電力の削減割合」に関する全ての測定結果として,資料3及び同5,同10-15ないし同10-20が合理的根拠資料となる。そして,これらの合理的根拠資料によって,以下のとおり暖房効率の向上が実証される。(資料3及び同5)

30%

(資料10-15)

50.2%~53.5%

(資料10-16)

32.8%

(資料10-17)

32.8%

(資料10-18)

23.9%

(資料10-19)

32.4%(空調機稼働)

(資料10-19)

50.7%(空調機停止)

(資料10-20)

25%

また,環境省ウェブサイト(甲66の1及び2)によると,冬の暖房時の設定温度を1℃低くすると約10%の消費電力の削減になるとの表示(環境省表示2)がされているところ,冬季については,内部発熱の発生は空調機の負荷を減らす方向に働くので,内部発熱が発生する状況であるか否かを問わず,冬季における「温度低下の抑制」に関する全ての測定結果は,環境省表示2を適用することによって,暖房費に関する表示の実証根拠となる。そのため,資料7-3が合理的根拠資料となる。
(資料7-3)

6.5℃~7.2℃の温度抑制効果

この測定結果に環境省表示2を適用して,以下のとおり暖房効率の向上が実証される。
(資料7-3,環境省表示2)

65%~72%

小括
以上のとおり,夏季において26%~58.5%,冬季において23.9%~72%の冷暖房効率の向上が実証されている。これらの結果を総合的に考慮して,保守的に,冷暖房費について10%低下と表示したものである。

(3)

一般家庭における光熱費を約20%ないし30%節約できる旨を示す表示
(本件表示⑬)について

夏季の光熱費に係る表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びこれにより実証される内容
室内に入る熱量の削減割合ないし空調機の消費電力の削減割合は冷房効率(冷房負荷の削減割合)に等しく,冷房効率(冷房負荷の削減割合)は冷房費の削減割合にほぼ等しいので,「内部発熱」が発生する状況における「熱量の削減割合」及び「空調機の消費電力の削減割合」に関する測定結果として,資料6,同10-13及び甲34が合理的根拠資料となる。
(資料6)

56.4%

(資料10-13)

27.6%~54.3%

(甲34)

30%

これらに「夏季のエアコン使用時期における光熱費に占めるエアコンの電気料金が占める割合」を考慮して58%相当値(資源エネルギー庁の統計が示す割合)を計算し,以下のとおり冷房費の削減割合が実証される。(資料6の58%相当値)

32.7%
(資料10-13の58%相当値)

16.0%~31.5%

(甲34の58%相当値)

17.4%

また,経済産業省・資源エネルギー庁のウェブサイトからダウンロードした省エネ性能カタログ2015年夏版(甲67の1)によると,夏季は設定温度を2℃上げた場合に10%の節電効果(削減率)があるとの表示(以下「資エネ庁表示1」という。)がされているところ,夏季について「内部発熱」が発生する状況における「温度上昇の抑制」に関する測定結果は,資エネ庁表示1を適用することによって,光熱費に関する表示の実証根拠になる。そのため,資料7-1及び同10-7が合理的根拠資料となる。(資料7-1)

2.0℃~4.5℃(日射時)の温度抑制
効果

(資料10-7)

2.3℃の温度抑制効果

これらの測定結果に資エネ庁表示1を適用して,以下のとおり光熱費の削減割合が実証される。
(資料7-1,資エネ庁表示1)
(資料10-7,資エネ庁表示1)

10%~22.5%
11.5%

冬季の光熱費に係る表示の裏付けとなる合理的根拠資料及びこれにより実証される内容
室内から流出する熱量の削減割合ないし空調機の消費電力の削減割合は暖房効率(暖房負荷の削減割合)に等しく,暖房効率(暖房負荷の削減割合)は暖房費の削減割合にほぼ等しいので,「熱量の削減割合」及び「空調機の消費電力の削減割合」に関する全ての測定結果として,資料3及び同5,同10-15ないし同10-20が合理的根拠資料となる。
(資料3及び同5)

30%

(資料10-15)

50.2%~53.5%

(資料10-16)

32.8%
(資料10-17)

32.8%

(資料10-18)

23.9%

(資料10-19)

32.4%(空調機稼働)

(資料10-19)

50.7%(空調機停止)

(資料10-20)

25%

また,経済産業省・資源エネルギー庁のウェブサイトからダウンロードした省エネ性能カタログ2015年冬版(甲67の2)によると,冬季は設定温度を2℃下げた場合に7%の節電効果(削減率)があるとの表示(以下「資エネ庁表示2」という。)がされているところ,冬季については,内部発熱の発生は空調機の負荷を減らす方向に働くので,内部発熱が発生する状況であるか否かを問わず,冬季における「温度低下の抑制」に関する全ての測定結果は,資エネ庁表示2を適用することによって,光熱費に関する表示の実証根拠となる。そのため,資料7-3が合理的根拠資料となる。
(資料7-3)

6.5℃~7.2℃の温度抑制効果

この測定結果に資エネ庁表示2を適用して,以下のとおり光熱費の削減割合が実証される。
(資料7-3,資エネ庁表示2)

22.8%~25.2%

小括
以上のとおり,夏季において10%~32.7%,冬季において7.5%~25.2%の光熱費の節約が実証されている。これらの結果を総合的に考慮して,保守的に,光熱費について20%ないし30%節約と表示したものである。
以上

トップに戻る

saiban.in