判例検索β > 平成28年(ワ)第14868号
損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成28(ワ)14868
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成29年7月12日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年7月12日判決言渡

同日原本領収

平成28年(ワ)第14868号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

損害賠償請求事件

平成29年5月10日
判決原告株
同訴訟代理人弁護士

伊藤同平井佑希同丸田憲和
同補佐人弁理士

粕川敏夫同清水喜幹被告式会社メキキ真
株式会社ミクシィ

同訴訟代理人弁護士

塩月同岡田同髙梨義幸同稲葉大輔
同補佐人弁理士

伊藤健同大石幸主平誠太郎雄文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

秀実及び理由
請求

1
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成28年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
訴訟費用は被告の負担とする。

3
第1項につき,仮執行宣言

第2
1
事案の概要
本件は,名称を「人脈関係登録システム,人脈関係登録方法と装置,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」とする二つの特許権(第3987097号及び第3987098号)を有する原告が,
被告の提供するサービスにおいて使用されているサーバ
(以下
「被
告サーバ」という。)が,上記各特許に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,特許法102条3項により,上記各特許の実施料相当額及び弁護士費用の合計114億1140万円のうち1億円並びにこれに対する不法行為の後の日である平成28年6月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2
前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)当事者

原告は,情報処理サービス業等を目的とする株式会社である。


被告は,情報収集,情報処理,情報提供に関するサービス等を目的とする株式会社である。

(2)原告の有する特許権

原告は,以下の特許権(請求項の数5。以下「本件特許権1」又は「本件特許1」といい,特許請求の範囲請求項3に係る発明を「本件発明1」という。また,本件特許1に係る明細書及び図面〔甲3の1〕を「本件明細書等1」という。本件特許1の特許公報を末尾に添付する。)の特許権者である。(甲3の1・2)
出願日

平成18年12月28日

優先日

平成12年10月17日

登録年月日

平成19年7月20日

登録番号

特許第3987097号

発明の名称

人脈関係登録システム,人脈関係登録方法と装
置,人脈関係登録プログラムと当該プログラム
を記録したコンピュータ読取可能な記録媒体


原告は,以下の特許権(請求項の数19。以下「本件特許権2」又は「本件特許2」といい,特許請求の範囲請求項1に係る発明を「本件発明2」といい,本件発明1と合わせて「本件各発明」という。また,本件特許2に係る明細書及び図面〔甲4の1〕を「本件明細書等2」という。本件特許2の特許公報を末尾に添付する。)の特許権者である。(甲4の1・2)出願日

平成18年12月28日

優先日

平成12年10月17日

登録年月日

平成19年7月20日

登録番号

特許第3987098号

発明の名称

人脈関係登録システム,人脈関係登録方法と装
置,人脈関係登録プログラムと当該プログラム
を記録したコンピュータ読取可能な記録媒体

(3)本件各発明の特許請求の範囲
本件各発明の特許請求の範囲は,末尾添付の本件特許1及び本件特許2の各特許公報の該当箇所に記載のとおりである。
(4)本件各発明の構成要件

本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,頭書の記号に従って,「構成要件1A」などという。)。
1A

登録者の端末と通信ネットワークを介して接続し,

1B

登録者ごとに,当該登録者の識別情報と,当該登録者と人間関係を結んでいる他の登録者の識別情報とを関連付けて記憶している記憶手段と,

を備えたサーバであって,
1C

第一の登録者が第二の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージを第一の登録者の端末(以下,「第一の端末」という)から受信して第二の登録者の端末(以下,「第二の端末」という)に送信すると共に,第二の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第二の端末から受信して第一の端末に送信する手段と,

1D

上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,

1E

上記第二の登録者の識別情報を含む検索キーワードを上記第一の端末から受信し,この第二の登録者の識別情報と関連付けて記憶されている第二の登録者と人間関係を結んでいる登録者(以下,「第三の登録者」という)の識別情報を上記記憶手段から検索し,検索した第三の登録者の識別情報を第一の端末に送信する検索手段と,

1F

上記第一の登録者が上記第三の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージを上記第一の端末から受信して上記第三の登録者の端末(以下,
「第三の端末」という)に送信すると共に,
第三の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第三の端末から受信して第一の端末に送信したとき,上記記憶手段に記憶されている上記第一の登録者の識別情報と上記第三の登録者の識別情報とを関連付ける手段と,

1G

を有してなることを特徴とする人脈関係登録サーバ。

本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,頭書の記号に従って,「構成要件2A」などという。)。
2A

登録者の端末と通信ネットワークを介して接続したサーバであって,
2B

人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージと人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージとを交換した登録者同士の識別情報を記憶している記憶手段と,

2C

第一の登録者が第二の登録者と人間関係を結ぶことを希望している旨の第一のメッセージを第一の登録者の端末(以下,「第一の端末」という)から受信して第二の登録者の端末(以下,「第二の端末」という)に送信すると共に,第二の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第二の端末から受信して第一の端末に送信する手段と,

2D

上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,

2E

第一の端末から第一の登録者の識別情報を受信する手段と,

2F

第一の端末から第三の登録者の識別情報を含む検索キーワードを受信し,この第三の登録者の識別情報と関連付けて記憶されている登録者の識別情報であって,上記第一の登録者の識別情報とも関連付けて記憶されている登録者の識別情報
(以下,
「第四の登録者の識別情報」
という)を上記記憶手段から検索し,検索した第四の登録者の識別情報を第一の端末に送信する検索手段と,

2G

を有してなることを特徴とする人脈関係登録サーバ。

(5)被告の行為等

被告は,平成16年2月頃から,業として,別紙被告サーバ説明書(以下「被告サーバ説明書」といい,被告サーバ説明書における各図面を「図面01」ないし「図面27」ということがある。)記載の被告サーバを用いて,別紙被告サービス目録記載のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス。以下「被告サービス」という。)を,被告サービスの会員に対
して提供している。

被告サーバは,構成要件1A及び2Aを充足する。

(6)本件各特許の優先日前の先行文献の存在
本件各特許の優先日(平成12年10月17日)の前には,以下の先行文献が存在する。

平成11年(1999年)5月14日公開の国際公開第99/23591号(乙17。以下同国際公開を「乙17文献」といい,乙17文献記載の発明を「乙17発明」という。)


平成11年4月9日公開の公開特許公報(特開平11-96229号公報。乙18。以下,同公報記載の発明を「乙18発明」という。)

平成7年5月19日公開の公開特許公報(特開平7-129684号公報。乙19。以下,同公報記載の発明を「乙19発明」という。)

平成10年4月16日時点において公開されていたウェブサイト「sixdegrees

about:connectme」
(乙20。以下,

同ウェブサイトを「乙20サイト」といい,乙20サイトにおいて公開された発明を「乙20発明」という。)
3
争点
(1)

被告サーバは本件発明1の技術的範囲に属するか


構成要件1B,1D及び1Fの「関連付け」の充足性


構成要件1C,1D及び1Fの「メッセージ」の充足性


構成要件1D及び1Fの「送信したとき」の充足性


構成要件1Eの「検索キーワード」の充足性

(2)

被告サーバは本件発明2の技術的範囲に属するか


構成要件2B並びに2D及び2Fの「関連付け」の充足性


構成要件2B,2C及び2Dの「メッセージ」の充足性


構成要件2Dの「送信したとき」の充足性


構成要件2Eの「識別情報を受信」の充足性


構成要件2Fの「検索手段」の充足性

(3)

本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか


乙17発明による進歩性欠如の有無


サポート要件違反の有無

(4)

本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか


乙17発明による進歩性欠如の有無


サポート要件違反の有無

(5)損害の発生の有無及びその額
第3
1
争点に関する当事者の主張
争点(1)ア(構成要件1B,1D及び1Fの「関連付け」の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)被告サービスでは,会員同士がマイミク追加リクエストと承認メッセージとを交換し,マイミクになると,マイミクとなった会員同士は,被告サービスにおいて
「マイミク」
として表示される。
マイミクとして表示される以上,
その両会員の会員IDが被告サーバ上で関連付けて記憶されていることは明らかである。
(2)この点に関して被告は,「関連付け」は「関係度数」を利用したものに限定して解釈すべきと主張する。
しかし,本件明細書等1の段落【0035】に,「図2に示す11~20の各符号は,登録者を表し,実線で結ばれている登録者同士が,例えば花メールの交換によって人間関係を結ぶことに合意することにより,互いに関連付けられている。このような人脈関係図により,登録者同士の関係を知ることができる。なお,図2において実線で結ばれている登録者同士の相互間の関係度数を併せてその人脈関係図に表示してもよい。」と記載されていることから明らかなように,本件発明1の「関連付け」とは人間関係を結ぶこと
に同意することにより行われるものであり,関係度数を記憶する態様に限定されるものではない。
〔被告の主張〕
(1)本件明細書等1によれば,本件発明1においては,サーバは,登録者ごとに,当該登録者と他の登録者との「関係度数」を記憶することにより,人脈関係情報すなわち
「関連付け」
に関する情報を記憶するものである。
そして,
このような構成を採用することにより,「登録者を検索した場合に,検索した登録者と検索された登録者の相互の関係の程度を表す関係度数も提示することで,検索した登録者は,検索された登録者の中から自分と関係の程度の高い登録者を選択することができる。」(段落【0020】),「関係度数の大小により,登録者同士間の関係の程度を客観的に知ることができる」(段落【0047】)といった効果を得るものとされている。
したがって,本件発明1における「関連付け」は,サーバにおいて,登録者ごとに,当該登録者と他の登録者との「関係度数」を記憶することによって実現されるものと解すべきである。
(2)ところが,被告サーバにおいては,ある会員が他の会員について「マイミク」登録をすると,当該他の会員が「マイミク」に追加されたことが記憶されるのみであって,「関係度数」を利用していない。
したがって,被告サーバは,本件発明1の「関連付け」を充足しない。2
争点(1)イ(構成要件1C,1D及び1Fの「メッセージ」の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)被告サービスにおいては,会員同士が,被告サーバを通じて,マイミクになることを希望している旨のマイミク追加リクエストと,これに合意する旨の承認メッセージを交換するとマイミクになる。
会員①と会員②がマイミクになる具体的な手順は,被告サーバ説明書の第
1,1に記載のとおりであり,会員①のパソコン等から,被告サーバを経由して,会員②のパソコン等へ,マイミク追加リクエストが送信され,会員②のパソコン等から,被告サーバを経由して,会員①のパソコン等へ承認メッセージが送信される。この「マイミク追加リクエスト」は,「マイミク」という人間関係を結ぶことを希望している旨のメッセージであるから,本件発明1の「第一のメッセージ」に該当し,同様に「承認メッセージ」は「マイミク」という人間関係を結ぶことに合意する旨のメッセージであり,「第二のメッセージ」に該当する。
(2)この点に関して被告は,
会員間で伝達される
「よろしくおねがいします。

といった文章のみが「メッセージ」であることを前提として,被告サーバではメッセージの送受信がされていないと主張するが,「メッセージ」とは,「言語その他の記号(コード)によって伝達される情報」(乙1)を意味するものであって,文章に限られない。
被告サービスでは,被告サーバを経由して,会員①から会員②に対し,会員①が会員②とマイミクになることを希望しているという情報が伝達されているのであり,このことをもって「第一のメッセージ」が送受信されているといえる。また,被告サービスでは,会員①からマイミク追加のリクエストを受けた会員②が,画面11の「マイミクに追加する」の箇所をクリックすると,会員①の側では例えば画面13で「マイミク追加リクエストが承認されました!」と表示されたり,画面14でマイミク一覧に会員②(未来猫2号)が表示されたりするのであるから,会員②から会員①に対して,会員②が会員①とマイミクになることに合意するという情報が伝達されており,このことをもって「第二のメッセージ」が送受信されているといえる。〔被告の主張〕
(1)「メッセージ」とは,一般に,「伝言。ことづて。口上。挨拶。」等を示すものとされ(乙1),人から人へ伝達される言葉を意味する。

そして,
「第一のメッセージ」及び「第二のメッセージ」は,それぞれ「人間関係を結ぶことを希望している」こと及び「人間関係を結ぶことに合意する」ことを内容とするものとされており(構成要件1C),本件発明1における「メッセージ」が,「人から人へ伝達される言葉」を意味することは明らかである。また,
「第一の端末」から送信された「第一のメッセージ」は,
サーバを介してそのまま「第二の端末」に送信されるものであり,また,「第
二の端末」から送信された「第二のメッセージ」も,サーバを介してそのまま「第一の端末」に送信されるものと解されるから,「第一のメッセージ」及び「第二のメッセージ」は,いずれも送信者から受信者に対してそのままの内容で送られることが前提とされている。
(2)ところが,被告サーバにおいては,「第一のメッセージ」及び「第二のメッセージ」は送受信されない。
被告サービスにおいて「第一のメッセージ」に該当し得るのは,例えば画面07における
「よろしくおねがいします。とのメッセージであるところ,

これは,単なる挨拶文にすぎず「人間関係を結ぶことを希望している旨」を意味するものではない。
また,被告サービスの会員が,
「マイミクに追加する」をクリックしても,
「人から人へ伝達される言葉」は送信されない。「メッセージ」を送信するためには,マイミクに追加後の画面(画面12)の右下に表示される「メッセージを送る」をクリックして遷移した後の画面において,別途テキストを打ち込む等の処理を行う必要がある。
3
争点(1)ウ(構成要件1D及び1Fの「送信したとき」の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)被告サービスでは,
マイミク追加リクエストと承認メッセージとを交換し,
第一の会員に承認メッセージが送信されると,当該会員の会員IDは,被告サーバにマイミクとして関連付けて記憶されるから,
第二のメッセージを
「送

信したとき」,第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶する手段があるといえ,被告サーバは構成要件1Dを充足する。
このことは,構成要件1Fについても同様である。
(2)この点に関して被告は,被告サーバにおける関連付けは,第二のメッセージを受信したときにされているから「送信したとき」を充足しないなどと主張する。
しかし,「とき」とは,「おり。ころ。」(甲9),「ある幅をもって考えられた時間。」(甲10)などとされており,厳密な先後関係や時間的な同一性が要求されるものではなく,同じころという意義である。特許庁も,審決(甲11)において,「開始されるとき」という文言のうちの「とき」の解釈として,「ある程度の幅を持った時間の概念を意味する」と判断している。
そして,被告サービスにおいては,少なくともマイミクとして関連付けが行われた直後には,既に会員①の側で,画面13の「マイミク追加リクエストが承認されました!」という表示や,画面14のマイミク一覧での会員②(未来猫2号)の表示がされるのであるから,第二のメッセージが送信された「とき」に関連付けが行われているといえる。
〔被告の主張〕
(1)構成要件1Dは,「人脈関係登録サーバ」が「第二のメッセージ」を「第一の登録者」に向けて「送信したとき」に「関連付け」及び「記憶」がされるものとしているから,第二のメッセージの送信を,関連付け及び記憶の前提条件としている。
ところが,前記2〔被告の主張〕のとおり,そもそも,被告サーバは第二のメッセージを送信していない。
また,仮に,被告サーバが「第二のメッセージ」を送信しているといえた
としても,被告サーバにおいては,会員①が会員②の「マイミク」として関連付けられ記憶され得るのは,会員②が「画面11」における「マイミクに追加する」をクリックし,当該情報が被告サーバに受信された時点であるから,「人脈関係登録サーバ」が「第二のメッセージ」を「第一の登録者の端末」(第一の端末)に向けて「送信した」ことが,「関連付け」及び「記憶」の前提条件とはなっていない。
したがって,
被告サーバは構成要件1Dの
「送信したとき」
を充足しない。
このことは,構成要件1Fについても同様である。
(2)この点に関して原告は,「送信したとき」における「とき」の意味についてるる主張するが,原告の主張は,「時」の意味を示したもの(甲9,10)を根拠としており,「時」と「とき」の意味を混同している。「時」とは「時点や時刻が特に強調される場合に使われる」ものであるのに対し,「とき」とは「一般的な仮定的条件を表わす場合に使われる」用語であるから(乙22,23),その意味内容は明らかに異なる。そして,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」とは,その文言上,「送信した」という条件を示していることが明らかであるから,原告の上記主張は失当である。
4
争点(1)エ(構成要件1Eの「検索キーワード」の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)被告サービスでは,会員IDを含むURLを用いて,当該会員とマイミクになっている会員の検索をすることができる。すなわち,画面16にあるように,被告サーバは,会員①の端末から「(URLは省略)」((URLの一部)は会員②の会員ID)というURLを受信すると,会員②とマイミクになっている会員(会員③など)を検索して表示する。(2)この点に関して被告は,URLは言語的意味を有する語ではないから「検索キーワード」に当たらないなどと主張する。
しかし,被告が主張するように,検索とは「文書やデータの中から,必要
な事項をさがし出すこと。」であり,被告サーバに記録された多数のhtmlファイルデータの中から,会員③の識別情報が記述されているhtmlファイルを探し出すことは,
まさに上記意味における
「検索」
そのものである。
そして,被告が引用する「文意などを解くうえで,重要な鍵となる語。」,「情報検索の手がかりとするため,その検索対象の特徴を表すものとして索引に取り出した語。という

「キーワード」
の意義に照らしても,
かかる
「語」
を言語的な意味を有するものに限定する理由はない。
〔被告の主張〕
(1)「検索」とは,
「文書やデータの中から,必要な事項をさがし出すこと。」
を意味し(乙2),「キーワード」とは,「文意などを解くうえで,重要な鍵となる語。」や「情報検索の手がかりとするため,その検索対象の特徴を表すものとして索引に取り出した語。」を意味する(乙3)から,「検索キーワード」とは,必要な事項を探し出す上で重要な鍵(手掛かり)となる語を意味するものであって,言語的な意味を有するものが想定されていると解される。
ところが,原告が「検索キーワード」に該当すると主張するURLは,「イ
ンターネット上の『オブジェクト』の場所を示すための表記方法。」であり(乙4),文字列の羅列にすぎず,そもそも「語」(ワード)ではないし,言語的な意味を有するものではない。また,特定の情報それ自体や,対象を一義的に特定可能な語ないし語句は,もはや「重要な鍵」ないし「情報検索の手がかり」とはいえない。
(2)構成要件1Eの「検索キーワード」は「識別情報」を含むものであるが,本件明細書等1をみると,「識別情報」にメールアドレスや識別コードが含まれ得る旨の記載はあるものの,「識別情報を含む検索キーワード」それ自体がメールアドレスや識別コードであってもよい旨の記載はなく,「検索キーワード」として,URLが用いられ得るなどということを示唆する記載は
ない。
したがって,URLが「検索キーワード」に該当しないことは明らかである。
5
争点(2)ア(構成要件2B並びに2D及び2Fの「関連付け」の充足性)について

〔原告の主張〕
(1)被告サービスにおいて,マイミクという関係は本件発明2の「人間関係」に,マイミク追加リクエストは同「第一のメッセージ」に,マイミクになることに合意する承認メッセージは同「第二のメッセージ」に相当する。そして被告サービスでは,
マイミク追加リクエストと承認メッセージとを交換し,
マイミクとなった会員同士の会員IDを記憶している。
したがって,被告サーバは構成要件2Bを充足する。
(2)この点に関して被告は,本件発明2の「関連付け」が「関係度数」を記憶する態様のものに限定されると主張する。
しかし,そのような主張が失当であることは前記1〔原告の主張〕のとおりである。
したがって,構成要件2Bにおいて記憶の「関連付け」が要求されるとしても,被告サーバは構成要件2Bを充足し,また,構成要件2D及び2Fの「関連付け」を充足する。
〔被告の主張〕
(1)構成要件2Bには,構成要件1Bとは異なり,「識別情報」同士が「関連付けて」記憶されることについて何ら規定されていないが,構成要件2Dにおいて「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,」と規定されているとおり,本件発明2においても,「人間関係を結ぶこと」を合意した登録者同士の識別情報は,「関連付け」て記憶されること
が前提とされている。そして,構成要件1Bと同様に,この「関連付け」は,「関係度数」を用いたものに限定されると解釈すべきである。
したがって,被告サーバは,構成要件2Bを充足しない。
(2)また,構成要件2D及び2Fの「関連付け」も,本件発明1の「関連付け」と同様に,「関係度数」を用いたものに限定される。
したがって,被告サーバは,構成要件2D及び2Fの「関連付け」を充足しない。
6
争点(2)イ(構成要件2B,2C及び2Dの「メッセージ」の充足性)について
〔原告の主張〕
前記2〔原告の主張〕と同じ理由により,被告サーバは,構成要件2B,2C及び2Dの「メッセージ」を充足する。
〔被告の主張〕
前記2〔被告の主張〕と同じ理由により,被告サーバは,構成要件2B,2C及び2Dの「メッセージ」を充足しない。
7
争点(2)ウ(構成要件2Dの「送信したとき」の充足性)について
〔原告の主張〕
前記3〔原告の主張〕と同じ理由により,被告サーバは,構成要件2Dの「送信したとき」を充足する。
〔被告の主張〕
前記3〔被告の主張〕と同じ理由により,被告サーバは,構成要件2Dの「送信したとき」を充足しない。
8
争点(2)エ(構成要件2Eの「識別情報を受信」の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)被告サービスにおいては,会員①のパソコン等から会員③の会員IDを含むURL「(URLは省略)」((URLの一部)は会員③の会員ID)を受
信すると,会員①と会員③の双方とマイミクになっている会員(会員④。共通の友達。)を表示する(画面27)。
そして,会員①と会員③の双方とマイミクになっている会員を表示するためには,被告サーバが,会員③の会員IDのみならず,会員①の会員IDも受信していることが技術的に明らかである。
(2)この点に関して被告は,被告サーバは会員IDを受信しないから識別情報を受信していないと主張する。
しかし,仮に被告サーバが会員IDを受信していないとしても,会員①と会員③の「共通の友達」を表示するためには,被告サーバが何らかの識別情報を利用して会員①を特定していることは技術的に明らかである。そして,本件発明2における識別情報にはメールアドレスも含まれるから,会員①が被告サービスにログインするために,被告サーバが会員①の識別情報(メールアドレス)を受信していることは明らかである。
したがって,被告の主張を前提としても,被告サーバは,「識別情報を受信」しているといえる。
〔被告の主張〕
被告サービスにおいては,会員①及び会員③の共通マイミクを表示するために会員①の会員IDは送信されない。そもそも,被告サービスにおいて,会員が会員IDを意識的に活用する場面は想定されておらず,ログイン時にも,メールアドレスとパスワードを入力するものとされているから,会員の端末から被告サーバに対して会員IDが送信されることはない。
したがって,被告サーバは「識別情報を受信」していない。
9
争点(2)オ(構成要件2Fの「検索手段」の充足性)について

〔原告の主張〕
(1)前記4〔原告の主張〕のとおり,被告サービスにおいては,会員IDを含むURLが「検索キーワード」に当たるが,このように解した場合,被告サ
ーバは,会員①のパソコン等から会員③の会員IDを含むURL(第三の登録者の識別情報を含む検索キーワード)を受信すると,会員③及び会員①の双方とマイミクとなっている会員(会員④を含む。共通の友達。)の会員IDを会員①のパソコン等(第一の端末)に送信する(画面27)から,構成要件2Fの「第四の登録者の識別情報を第一の端末に送信する検索手段」を有している。
(2)また,被告サービスでは,会員の「名前」を使用して検索することができるから,会員の名前が「検索キーワード」に当たると解することもできる。このように解した場合,会員①が,被告サービスにログインし,「友人を探す」の箇所をクリックし,「検索キーワード」の欄に会員③の名前(例えば「未来猫3号」)を入力して,検索を実行すると,検索結果として「会員③」が表示される(甲13)。ここで「会員③」の箇所をクリックすると,会員①と会員③の共通のマイミクとして会員④が表示される。そして,当該会員④の箇所にマウスオーバーすると会員④の会員IDが画面に表示されるから,被告サーバから会員①の端末(第一の端末)に会員④の会員ID(第四の登録者の識別情報)が送信されている。
したがって,会員の名前が「検索キーワード」に当たるとした場合であっても,被告サーバは構成要件2Fの「検索手段」を有するといえる。〔被告の主張〕
(1)前記4〔被告の主張〕のとおり,URLは「検索キーワード」に当たらないから,URLが「検索キーワード」であることを前提とした原告の主張は失当である。
(2)また,原告は,会員の名前が検索キーワードに当たることを前提とした主張もしているが,次のとおり,失当である。
ア「会員の名前」
(被告サービスにおいて「ニックネーム」と呼ばれるもの
である。)は識別情報に当たらない。

すなわち,「識別」とは,一般に,「みわけること」(甲9・4頁)であるから,登録者の「識別情報」とは,各登録者を見分けることのできる情報,すなわち各登録者に1対1に対応する固有の情報を意味すると解されるところ,被告サービスの仕様上,異なる会員同士で同一の名前を利用することが可能である。例えば,被告サービスにおいて「けんけん」という名前を検索すると,検索結果の表示数の上限である1000人の会員が表示され,さらに,表示されていない「けんけん」という名前の会員も存在する(乙24)。したがって,会員の名前は,各会員を見分けることのできる「識別情報」に当たらない。

また,原告の主張する方法は,共通のマイミクを探すために,少なくとも検索者である会員が,ヒットした多数の会員の中から所望の会員を自ら特定する作業,及び探し出した所望の会員に係るリンクをクリックし,当該所望の会員のページに遷移する作業が必要となるから,
被告サーバの
「検
索手段」によって実現されているということはできない。

争点(3)ア(本件特許1について,乙17発明による進歩性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
(1)本件発明1と乙17発明との一致点及び相違点について
乙17発明と本件発明1は以下の三つの点で相違し,その余の点で一致する。

相違点1
乙17発明において,サーバは,第一の登録者が第二又は第三の登録者と人間関係を結ぶことを希望する旨を第一の端末から受信して第二又は第三の端末に送信するのに対し,本件発明1において,サーバは,第一の登録者が第二又は第三の登録者と人間関係を結ぶことを希望する旨の第一のメッセージを第一の端末から受信して第二又は第三の端末に送信する点
(構成要件1C,1F)
また,同様に,乙17発明において,サーバは,第二又は第三の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨を第二又は第三の端末から受信して第一の端末に送信するのに対し,本件発明1において,サーバは,第二又は第三の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第二又は第三の端末から受信して第一の端末に送信する点(構成要件1C,1F)

相違点2
乙17発明は,第一の登録者と第二又は第三の登録者の両者が相互に合
意したとき,第一の登録者の識別情報と第二又は第三の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するのに対し,本件発明1は,サーバが第一の端末に第二又は第三の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを送信したときに限定して,第一の登録者の識別情報と第二又は第三の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶する点(構成要件1D,1F)

相違点3
第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者(友達の友達)の識
別情報を検索する際に,乙17発明では,住んでいる街の名前,所属しているグループ名,その他の検索条件を検索キーワードとして検索するのに対し,本件発明1では,第二の登録者の識別情報を含む検索キーワードを用いて検索する点(構成要件1E)
(2)容易想到性について
相違点1ないし3は,以下のとおり,乙17発明に乙18発明及び乙19発明を適用することにより,当業者が容易に想到できたものである。ア
相違点1
相違点1は,要するに,乙17発明では人間関係を結ぶことを希望した
りする旨を送受信するのに対し,本件発明1ではその旨のメッセージを送受信する点が異なるというものである。
一方,乙18発明は,文通を行うといった人間関係を結ぶことを希望する旨を,ボタンのクリックのみならず,メッセージによって,仲介業者側装置に送るというものである。そして,乙17発明と乙18発明は,同一の技術分野に属し,同一のシステム構成を備え,新たな人間関係を結ぶ際の処理フローも共通するので,乙17発明に乙18発明を適用する動機付けがある。
したがって,当業者には,乙17発明に乙18発明を適用して,人間関係を結ぶことを希望する旨のメッセージを送受信することを容易に想到できた。

相違点2
相違点2は,関連付けを記憶するタイミングが異なるというものである
が,これは当業者の設計事項にすぎない。

相違点3
相違点3は検索キーワードが異なるというものであるが,乙17発明においては,そこに記載されている検索条件は例示にすぎず,種々の検索条件を適用し得るものとされている。
一方,乙19発明においては,検索条件として会員の識別情報を用いることが開示されている。
そして,乙19発明と乙17発明は同一の技術分野に属し,同一のシステム構成を備え,検索対象が共通するので,乙17発明に乙19発明を適用する動機付けがある。
したがって,当業者には,乙17発明に乙19発明を適用して,検索キーワードとして友達の識別情報を用いることを容易に想到できた。
(3)進歩性欠如

以上のとおり,本件発明1に係る特許は,特許法29条2項の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである(特許法123条1項2号)。
〔原告の主張〕
(1)本件発明1と乙17発明との一致点及び相違点について
本件発明1と乙17発明とでは,被告が挙げる各相違点以外にも,①

乙17発明においては,(ユーザの合意によって)人間関係を結ぶという構成の開示がないこと



人間関係を結ぶことを希望する旨の第一のメッセージ及びこれに合意する旨の第二のメッセージという構成の開示がないこと

において相違する。
そして,これらの相違点については,被告が提出するいずれの公知文献にも開示はない。
(2)相違点1ないし3に関する容易想到性について
さらに,被告の主張する相違点1及び3についても,次のとおり容易に想到できるとはいえない。なお,相違点2は相違点ではない。

相違点1について
相違点1は,「メッセージ」の有無というよりは,メッセージの内容において相違していると捉えるべきである。
そして,乙17発明においては人間関係を結ぶという合意自体が開示されていないから,合意の手段としてメッセージのやり取りを行うという構成を適用する余地はないし,乙17発明は一方的なリンクや閲覧許可により自己のアドレス帳の拡充や情報管理を行うというものであって,合意をもって初めて人間関係が結ばれることを前提とする乙18発明とは技術思想が異なるから,乙17発明に乙18発明を適用することについて阻害事由がある。


相違点2について
前記3〔原告の主張〕のとおり,「とき」は厳密な同一性を要するものではないから,被告が主張する相違点2は相違点には当たらない。

相違点3について
乙17発明では,「第3のユーザが」住んでいる街の名前や「第3のユーザが」所属しているグループ名から「第3のユーザ」を検索する手段が開示されているだけであり,
「第2のユーザが」住んでいる街の名前や「第
2のユーザが」所属しているグループ名から「第3のユーザ」を検索する手段が開示されているわけではないから,「第二の登録者の識別情報を含む検索キーワード」から「第三の登録者」を検索する本件発明1とは,全く異なるものである。
したがって,乙17発明に乙19発明を適用したとしても,第3のユーザの会員ナンバーを用いて第3のユーザを検索するという発明が導かれるだけであり,本件発明1に至ることはない。

争点(3)イ(本件特許1について,サポート要件違反の有無)について
〔被告の主張〕
(1)構成要件1Bについて
本件発明1の特許請求の範囲には,人間関係を結んでいる登録者同士の識別情報を関連付けて記憶するという構成が記載されている
(構成要件1B)

ところが,本件明細書等1の発明の詳細な説明において,人間関係を示す情報を記憶する形式として記載されているのは,登録者の識別コードを行及び列とした表により登録者同士の「関係度数」を記憶するという具体的な形式のみであり,人間関係を結んでいる登録者同士の識別コードを関連付けて記憶するという単純な形式にまで一般化可能であることについての記載や示唆はない。
したがって,本件発明1の構成要件1Bは,発明の詳細な説明に記載され
たものではない。
(2)構成要件1Eについて
本件発明1の特許請求の範囲には,「識別情報を含む検索キーワード」による検索を行うという構成が記載されている(構成要件1E)。そして,本件明細書等1の発明の詳細な説明に記載された「識別コード」が,本件発明1の「識別情報」に対応すると解されるから,構成要件1Eは,「識別コード」を含む「検索キーワード」による検索を行うことを規定していることとなる。
ところが,本件明細書等1の発明の詳細な説明において,検索のために検索画面に入力される情報として記載されているのは,「登録者」,「職業または専門分野等のキーワード」及び「関係度数」のみであって,登録者の「識別コード」
(例えば,ID-M,ID-I,ID-D,ID-S,ID-N)が検索のために検索画面に入力されることについての記載や示唆は一切ない。したがって,本件発明1の構成要件1Eは,発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(3)サポート要件違反
以上のとおり,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。したがって,本件特許1は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである(特許法123条1項4号)。
〔原告の主張〕
(1)構成要件1Bについて
本件発明1における「関連付け」について,人間関係を結んだ登録者同士の識別情報を関連付ける具体的な手法としては,人間関係が結ばれた場合にフラグを立てるなど,データ記憶の分野でごく日常的に用いられている適宜の手法を用いれば足りるのであり,そのことは本件明細書等1に接した当業
者であれば,当然に認識し得るものであるから,サポート要件を欠くものではない。
(2)構成要件1Eについて
被告は,本件明細書等1に識別コードを用いて検索を行うことが記載されていないと主張するが,本件明細書等1の段落【0003】に記載された「より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートする人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供する」という目的を達成するためには,識別情報のうちのどの情報を用いて検索を行っても構わないのであり,本件明細書等1に接した当業者であれば,当然に識別コードを用いて検索を行ってもよいことは理解できるから,サポート要件を欠くものではない。
争点(4)ア(本件特許2について,乙17発明による進歩性欠如の有無)について

〔被告の主張〕
(1)本件発明2と乙17発明との一致点及び相違点について
乙17発明と本件発明2は以下の四つの点で相違し,その余の点で一致する。

相違点4
乙17発明の記憶手段は,人間関係を結ぶことを希望している旨と人間関係を結ぶことに合意する旨とを交換した登録者同士の識別情報を記憶するものであるのに対し,本件発明2の記憶手段は,人間関係を結ぶことを希望している旨のメッセージと人間関係を結ぶことに合意する旨のメッセージとを交換した登録者同士の識別情報を記憶するものである点(構成要件2B)


相違点5

前記10の相違点1と同じ(構成要件2C)

相違点6
前記10の相違点2と同じ(構成要件2D)


相違点7
乙17発明は,第一の登録者の識別情報と関連付けて記憶されている登録者(つまり,第一の登録者の友達)の中から,第一の端末から受信した検索キーワードに合致する登録者を検索するものであるのに対し,本件発明2は,第一の登録者の識別情報と関連付けて記憶されている登録者の中から,第一の端末から受信した検索キーワードに含まれる第三の登録者の識別情報と関連付けて記憶されている登録者を検索する点
(構成要件2F)

(2)容易想到性について
相違点4ないし7は,乙17発明に乙18発明及び乙20発明を適用することにより,当業者が容易に想到できたものである。

相違点4について
相違点4は実質的に相違点1と同じであり,前記10〔被告の主張〕で相違点1について主張したものと同じ理由により,乙17発明及び乙18発明に基づいて,当業者が容易に想到できたものである。


相違点5について
相違点1と同じであり,乙17発明及び乙18発明に基づいて,当業者が容易に想到できたものである。


相違点6について
相違点2と同じであり,当業者の設計事項にすぎないものである。

相違点7について
乙17発明には,第1のユーザの友達を検索することと,任意のユーザの友達を検索することが開示されているから,第1のユーザと任意のユーザの共通の友達を検索することは,乙17文献に実質的に記載されている
といえるし,少なくとも示唆されている。
したがって,当業者であれば,乙17発明において,第1のユーザと任意のユーザの共通の友達を検索することの動機付けが存在する。
加えて,乙20発明には,第1のユーザと任意のユーザの共通の友達を検索することが開示されている。
そして,乙17発明と乙20発明は,同一の技術分野に属し,共通のシステム構成を備える。
したがって,当業者であれば,乙17発明に乙20発明を適用して,第1のユーザと任意のユーザの共通の友達を検索することの動機付けが存在する。
よって,当業者には,乙17発明により,又は乙17発明に乙20発明を適用して,第一の登録者の友達の中から,第一の端末から受信した検索キーワードに含まれる第三の登録者の識別情報と関連付けて記憶されている登録者を検索するものとすることを容易に想到できた。
(3)進歩性欠如
以上のとおり,本件発明2に係る特許は,特許法29条2項の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである(特許法123条1項2号)。
〔原告の主張〕
(1)本件発明2と乙17発明との一致点及び相違点について
本件発明2と乙17発明とでは,被告が挙げる各相違点以外にも,①

乙17発明においては,(ユーザの合意によって)人間関係を結ぶという構成の開示がないこと



人間関係を結ぶことを希望する旨の第一のメッセージ及びこれに合意する旨の第二のメッセージという構成の開示がないこと

において相違する。

そして,これらの相違点については,被告が提出するいずれの公知文献にも開示はない。
(2)相違点4ないし7に関する容易想到性について
さらに,被告の主張する相違点4,5及び7についても,次のとおり容易に想到できるとはいえない。なお,相違点6は相違点ではない。

相違点4について
前記10〔原告の主張〕で,相違点1について述べたとおり,本質的な相違点はメッセージの内容の相違である。


相違点5について
上記アと同じである。


相違点6について
前記10〔原告の主張〕で,相違点2について述べたとおり,この点は相違点ではない。


相違点7について
(ア)本件発明2は,第一の登録者が,これから人間関係を結ぼうとしている第三の登録者を検索する際に,当該検索された第三の登録者が,人間関係を結ぶべき登録者であるかを確認するために,共通して人間関係を結んでいる第四の登録者を表示するというものである。
これに対し,乙17発明で開示されているのは,既にリンクを確立している第2のユーザの中からある条件に合致するユーザを検索するための検索手段であり,これは,既存の第2のユーザの絞り込みを行う機能にすぎず,新たなユーザ(本件発明2でいう第三の登録者)とリンクすることに資するものではない。
このように,本件発明2が提示している検索手段と乙17発明が提示している検索手段とは,その性質・目的が全く異なるから,乙17文献に,本件発明2のような共通の友達検索が実質的に開示されているとは
到底いえない。
(イ)また,乙20発明は,2人のユーザの合意によって人間関係が結ばれるものではなく,一方のユーザが一方的に関係性を設定するというものであるから,乙20サイトには,共通して人間関係を結んでいる「共通の友達」を検索する機能は何ら開示されていない。乙20発明は,検索を行うユーザと,検索されるユーザとが共通して関係を持つユーザを表示するものですらない。
したがって,乙20発明を乙17発明に組み合わせたところで,本件発明2には至らない。
争点(4)イ(本件特許2について,サポート要件違反の有無)について
〔被告の主張〕
(1)構成要件2Bについて
本件発明2の特許請求の範囲には,人間関係を結んでいる登録者の識別情報を記憶するという記載がある(構成要件2B)。
ところが,本件明細書等2の発明の詳細な説明において,人間関係を示す情報を記憶する形式として記載されているのは,登録者の識別コードを行及び列とした表により登録者同士の「関係度数」を記憶するという具体的な形式のみであり,人間関係を結んでいる登録者同士の識別コードを関連づけて記憶するという単純な形式にまで一般化可能であることについての記載や示唆は一切ない。
したがって,本件発明2の構成要件2Bは,発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(2)構成要件2Fについて

本件発明2の特許請求の範囲には,「識別情報を含む検索キーワード」による検索を行うという構成が記載されている(構成要件2F)。当該構成は,本件発明1の構成要件1Eの構成と同じである。

したがって,前記11〔被告の主張〕(2)と同じ理由により,本件発明2の構成要件2Fは,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

次に,本件発明2の特許請求の範囲には,「第一の端末」から「第三の登録者」に関する検索キーワードを受信し,「第一の登録者」及び「第三の登録者」の双方と関連付けられている「第四の登録者」を検索するという構成も記載されている(構成要件2F)。
ところが,本件明細書等2の発明の詳細な説明には,登録者B(第一の登録者)のパソコン装置3(第一の端末)から登録者13(第三の登録者)に関する検索キーワードを受信し,登録者13と関連付けられている登録者の人脈が,登録者B(第一の登録者)のパソコン装置3(第一の端末)に表示されることについての記載があるが,当該検索によって,登録者B(第一の登録者)は,登録者13(第三の登録者)と関連付けられている登録者11,15,18,12,17,・・・を把握することができるものの,登録者B(第一の登録者)及び登録者13(第三の登録者)の双方と関連付けられている登録者を把握することはできない。
このように,発明の詳細な説明には,「第一の端末」から「第三の登録者」に関する検索キーワードを受信し,「第一の登録者」及び「第三の登録者」の双方と関連付けられている「第四の登録者」を検索することについての記載や示唆は一切ない。
したがって,本件発明2の構成要件2Fは,この点においても発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(3)サポート要件違反
以上のとおり,本件発明2は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。
したがって,本件特許2は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許無効審判により無
効にされるべきものである(特許法123条1項4号)。
〔原告の主張〕
(1)構成要件2Bについて
前記11〔原告の主張〕(1)と同じ理由により,サポート要件違反に当たらない。
(2)構成要件2Fについて

「識別情報を含む検索キーワード」に関する部分について
前記11〔原告の主張〕(2)と同じ理由により,サポート要件違反に当たらない。


「第四の登録者の検索」に関する部分について
本件明細書等2には,実施例として,登録者13を欄52ないし55に入力して当該登録者13の人脈関係を検索,表示することが開示されており,四つの入力欄が設けられ,複数の条件で掛け合わせ検索を行うことが開示されている。また,登録者自身と所定の「関係度数」で関係付けられた登録者を検索することが開示されている(段落【0040】)。さらに,登録者自身と人間関係を結んだ登録者(関係度数が1.0の登録者)を検索する手段が開示されている(段落【0045】)。
以上からすると,本件明細書等2に接した当業者であれば,上記の二つの条件で掛け合わせ検索を行うこと,すなわち,欄52に登録者13を入力し,欄53に関係度数1.0を入力し,登録者13と人間関係を結んでいる登録者であって第一の登録者とも人間関係を結んでいる登録者である第四の登録者を検索することが可能であることは,当然に理解できる。
争点(5)(損害の発生の有無及びその額)について

〔原告の主張〕
(1)原告に生じた損害

被告の売上高は,平成26年3月期までは年120億円,それ以降は年
1129億円と推定されるから,平成16年4月1日から平成26年3月31日までの10年間の売上げは1200億円であり,平成26年4月1日から平成28年3月31日までの2年間の売上げは2258億円を下らない(合計3458億円)。

本件特許権の相当実施料率は,被告の売上の3%は下らない。


上記ア及びイによれば,特許法102条3項に基づいて算定される被告の本件各特許権侵害による原告の損害額は,103億7400万円を下らない。

(2)弁護士・弁理士費用
原告は,被告の本件各特許権侵害行為により本件訴訟を提起せざるを得なくなったものであり,被告による不法行為と相当因果関係が認められる弁護士・弁理士費用相当の損害額は,10億3740万円を下らない。(3)合計額等
したがって,原告の損害額は合計114億1140万円であるが,一部請求として,そのうち1億円を請求する。なお,原告は,本件各特許の登録日である平成19年7月20日以降の期間を対象として損害賠償請求をするものである。
〔被告の主張〕
争う。
第4
1
当裁判所の判断
本件発明1の内容
(1)本件明細書等1には次の各記載がある。

技術分野
・「本発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであ
る。」(段落【0001】)

背景技術
・「従来,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,効率的に知ることのできるシステム・方法はなかった。
また,より広範で深い人間関係を結ぶためには,一人一人の努力に頼るほかはなく,
これを積極的にサポートするシステムは存在しなかった。

(段落【0002】)


発明が解決しようとする課題
・「本発明は,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートする人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。
本発明はまた,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,人脈関係情報を作成し簡単かつ効率的に知ることのできるような人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。」
(段落【0
003】)


課題を解決するための手段
・「上記目的を達成するために,本発明による人脈関係登録システムは,入力部を有する第1の情報処理装置と,前記入力部から入力された複数の個人名を登録しその各個人情報を記憶する第2の情報処理装置とを具備し,前記入力部から新規登録者を入力し登録する際に既登録者の確認に基づいて登録が行われるとともに,その新規登録者が前記既登録者と関連付けられて前記第2の情報処理装置に人脈関係情報の基礎データと
して記憶されることを特徴とする。」(段落【0004】)
・「この人脈関係登録システムによれば,新規に登録する者は,既登録者の確認が必要なため無制限に登録が行われずに人脈関係の信頼性を維持できるとともに,その既登録者と関連付けられて記憶され,登録者同士の関係が他の登録者に分かり易くなる人脈関係情報を作成することができる。
各情報処理装置として,
パーソナルコンピュータ
(パソコン装置),
サーバコンピュータ(サーバ)を使用することにより,多数の登録者による人脈関係情報を簡単に作成することができる。(段落

【0005】


「また,
特定の既登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,
合意した当人同士の関係の程度を表す関係度数と,合意した当人と連鎖する既登録者との関係の程度を表す関係度数とを記憶することが好ましい。この関係度数を高めるように登録者相互が積極的に人間関係を結ぶことを促すことができるため,より広範でより深い人間関係を結ぶことに貢献し,個々人の社会的影響力の増大および社会的貢献度の増大に寄与することができる。」(段落【0010】)

「また,
関係度数により,
登録者同士の関係の程度を知ることができる。
これにより,登録者同士の関係の程度を客観的に知ることができる。また,特定の既登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるようにするとよい。例えば,通信ネットワークを通じて花メールを交換することによって相互に人間関係を結ぶことができるようにしておけば,直接面識がなくても,当人同士で人間関係を結ぶことができ,関係度数を高めることもできる。」(段落【0011】)

発明の効果
・「本発明によれば,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,人脈関係情報を作成し簡単かつ効率的に知ることができる。

また本発明によれば,登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたときにはじめて登録者相互間の関係度数を獲得することができるため,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートすることができる。
さらに本発明によれば,登録者を検索した場合に,検索した登録者と検索された登録者の相互の関係の程度を表す関係度数も提示することで,検索した登録者は,検索された登録者の中から自分と関係の程度の高い登録者を選択することができる。」(段落【0020】)

発明を実施するための最良の形態
・「サーバ1では,上述のような登録者同士を関連付けて登録した登録情報を基礎データとし,登録者同士で例えば花メールを交換し,人間関係を結ぶことに合意することにより,図2のような人脈関係図を人脈関係情報として作成し,
パソコン装置3に送信し,
表示させることができる。
図2に示す11~20の各符号は,登録者を表し,実線で結ばれている登録者同士が,例えば花メールの交換によって人間関係を結ぶことに合意することにより,互いに関連付けられている。このような人脈関係図により,登録者同士の関係を知ることができる。なお,図2において実線で結ばれている登録者同士の相互間の関係度数を併せてその人脈関係図に表示してもよい。」(段落【0035】)
・「以上説明したように,関係度数の大小により,登録者同士間の関係の程度を客観的に知ることができる。・・・」(段落【0047】)
(2)本件発明1の意義
前記(1)及び本件特許1の特許請求の範囲請求項3の記載によれば,本件発
明1は,より広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広範で深い
人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記記録媒体を提供することを目的とするものであって,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の識別情報を関連付けて記憶することで,ある登録者と他の登録者と共通して関連付けられているさらに他の登録者を検索することができるようにするという発明である,と認められる。
2
本件発明2の内容
(1)本件明細書等2には次の各記載がある。

技術分野
・「本発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものである。」(段落【0001】)


背景技術
・「従来,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,効率的に知ることのできるシステム・方法はなかった。
また,より広範で深い人間関係を結ぶためには,一人一人の努力に頼るほかはなく,
これを積極的にサポートするシステムは存在しなかった。

(段落【0002】)


発明が解決しようとする課題
・「本発明は,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートする人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。
本発明はまた,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,人脈関係情報を作成し簡単かつ効
率的に知ることのできるような人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。」
(段落【0
003】)

課題を解決するための手段
・「上記目的を達成するために,本発明による人脈関係登録システムは,入力部を有する第1の情報処理装置と,前記入力部から入力された複数の個人名を登録しその各個人情報を記憶する第2の情報処理装置とを具備し,前記入力部から新規登録者を入力し登録する際に既登録者の確認に基づいて登録が行われるとともに,その新規登録者が前記既登録者と関連付けられて前記第2の情報処理装置に人脈関係情報の基礎データとして記憶されることを特徴とする。」(段落【0004】)


発明の効果
・「本発明によれば,職業等に関する様々な特定分野の専門家を知り,専門的知識や情報を得ようとする場合に,人脈関係情報を作成し簡単かつ効率的に知ることができる。
また本発明によれば,登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたときにはじめて登録者相互間の関係度数を獲得することができるため,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートすることができる。
さらに本発明によれば,登録者を検索した場合に,検索した登録者と検索された登録者の相互の関係の程度を表す関係度数も提示することで,検索した登録者は,検索された登録者の中から自分と関係の程度の高い登録者を選択することができる。」(段落【0020】)


発明を実施するための最良の形態
・「また,図6の検索画面で,例えば,特定の職業や専門分野の登録者等
を検索したい場合には,その職業または専門分野等のキーワードを複数の欄52,53,54,55に入力しサーバ1に送信することにより検索でき,その結果をパソコン装置に表示することができる。なお,63~67をダブルクリックすると,その登録者の個人情報が表示されるようにしてもよい。
さらには,検索のキーワードとして関係度数を用いるようにしてもよい。すなわち,特定の登録者(検索する登録者自身の場合もある)と,所定の関係度数で関連付けられた登録者を検索できるようにしてもよい。」(段落【0040】)
・「ここで関係度数は,人間関係を結んだ登録者同士の関係度数を最も大きい『1.0』とし,以降,登録者同士の関係の程度が小さくなる(登録者同士の途中に介在する登録者の数が多くなる)にしたがって,関係度数は小さくなる(半減する)。すなわち,人間関係を結んだ(直接的に関連付けられた)登録者同士の関係度数を『1.0』,共通の登録者を介して関連付けられた登録者同士の関係度数を『0.5』,直接的に関連付けられた登録者の一方とのみ直接的に関連付けられた登録者同士の関係度数を『0.25』としている。」(段落【0045】後段)(2)本件発明2の意義
前記(1)及び本件特許2の特許請求の範囲請求項1の記載によれば,本件発
明2は,より広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記記録媒体を提供することを目的とするものであって,上記記憶手段を有するサーバにおいて,人間関係を結んだ登録者の識別情報を関連付けて記憶した上で,登録者が,他の登録者の識別情報を含むキーワードを用いて検索すると,当該他の登録
者と関連付けて記憶されている別の登録者の識別情報を検索することができるという発明である,と認められる。
3
争点(1)ウ(構成要件1D及び1Fの「送信したとき」の充足性)について事案に鑑み,まず,争点(1)ウについて判断する。
(1)「送信したとき」の意義について

構成要件1Dは,「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,」というものであり,「第二のメッセージを送信したとき」に,第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとされている。
また,構成要件1Fは,第一の登録者と第三の登録者の関連付けをする場合について,「第三の登録者が第一の登録者と人間関係を結ぶことに合意する旨の第二のメッセージを第三の端末から受信して第一の端末に送信したとき,上記記憶手段に記憶されている上記第一の登録者の識別情報と上記第三の登録者の識別情報とを関連付ける」ものとしており,構成要件1Dと同様に,サーバが「第二のメッセージを・・・送信したとき」に,第一の登録者の識別情報と第三の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとされている。
ここで,第一の登録者を会員A,第二の登録者又は第三の登録者を会員Bとすると,本件発明1においては,サーバが,会員Aが会員Bと人間関係を結ぶことを希望する旨のメッセージである「第一のメッセージ」を受信して同メッセージを会員Bの端末に送信し,上記サーバが,会員Bがこれに合意する旨のメッセージである「第二のメッセージ」を受信して,同メッセージを会員Aに「送信したとき」に,会員Aの識別情報と会員Bの識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶する,ということができる。

ところで,広辞苑第六版(甲9)によれば,「とき」とは,「(連体修飾
語をうけ,接続助詞的に)次に述べることの条件を示すのに使う。…の場合。」を意味するものであり,また,大辞林第三版(甲10)においても「(連体修飾句を受けて)仮定的・一般的にある状況を表す。(...する)場合。」とされており,用字用語新表記辞典(乙22)では「『とき』は条件・原因・理由・その他,『場合』よりも小さい条件のときに用いることがある。」,最新法令用語の基礎知識改訂版(乙23)では「『時』は時点や時刻が特に強調される場合に使われるのに対して,『とき』は一般的な仮定的条件を表す場合に使われる。」と記載されている。これらからすれば,構成要件1D及び1Fにおける「送信したとき」の「とき」は,条件を示すものであると解するのが相当である。

この点に関して原告は,「送信したとき」の「とき」は「同じころ」という意義を有するものであり,「ある程度の幅をもった時間」を意味すると主張する。
たしかに,広辞苑第六版及び大辞林第三版には,上記イで指摘した意義の他に,原告が主張するような意義も掲載されている(甲9,10)。しかし,広辞苑第六版(甲9)には「おり。ころ。」を意味する「とき」の用例として「ときが解決してくれる」「しあわせなときを過ごす」といったものが掲載されており,「送信したとき」のような具体的な行為を示す連体修飾語を受けた用例は記載されていない。
また,
大辞林第三版
(甲10)
をみると「ある幅をもって考えられた時間」を意味する「とき」の用例として,「将軍綱吉のとき」「ときの首相」「ときは春」などというものが掲載されており,やはり「送信したとき」のような具体的な行為を示す連体修飾語を受けた用例は記載されていない。
そして,抽象的で,空間的及び時間的に広い概念を表現した上記各用例と比べると,「送信したとき」という表現は,その指し示す行為が相当程度に具体的かつ直接的であることから,およそ用いられる場面が異なると
いうべきである。
また,原告が指摘する審決(甲11)には,「とき」という用語について「ある程度の幅を持った時間の概念を意味する」旨の判断がされているが,
当該審決は,
「前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに,
前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する」という記載における「前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに」という文言について,「前記9個の可変表示部の可変表示が開始されると『同時』又は『間をおかずに』」という意味ではなく,
「前記9個の可変表示部の可変表示が開始され」
た後,
「前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する」までの間に他の処理がされるとしても,「前記9個の可変表示部の可変表示が開始されるときに」に当たると判断したものであって,「前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定」
した後に
「前記9個の可変表示部の可変表示が開始され」
たとしても,
上記文言を充足するなどと判断したものではないから,本件における「送信したとき」の解釈において参酌することは相当ではない。
そうすると,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」における「とき」が「ある程度の幅をもった時間」を意味するものということはできない。また,本件明細書等1をみても,「送信したとき」の「とき」について,「条件」ではなく「時間」を意味することをうかがわせる記載はない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

以上から,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」とは,「送信したことを条件として」という意義であると認めることが相当である。
(2)被告サーバの構成

次に,証拠(乙25ないし27)によれば,被告サーバにおいて,会員Aと会員Bの人間関係を記憶するプロセスとしては,①被告サーバが,会
員Aの会員Bに対するマイミク追加リクエストを受信する,②被告サーバが,
会員Aの会員Bに対するマイミク追加リクエストを会員Bに通知する,③会員Bが被告サービスの画面上の「マイミクに追加する」をクリックして会員Aからの「マイミク追加リクエスト」を承認する,④被告サーバが会員Aと会員Bを「マイミク」として記録する,⑤被告サーバが,会員Aに対し,「マイミク追加リクエスト」が承認されたことを通知する,というものであることが認められる。ここで,被告サービスにおいて「マイミクになる」ことは,本件発明1において「人間関係を結ぶ」ことに該当し,被告サービスにおける
「マイミク追加リクエスト」
を承認した旨の通知は,
本件発明1における「第二のメッセージ」に該当し得る。

また,被告のヴァンテージスタジオmixiシステム部部長甲作成の陳述書及び同陳述書添付のソースコードの記述(乙25)によれば,被告サービスのプログラムにおいては,被告サーバが有する記憶手段により,会員Aと会員Bがマイミクとして記憶されたことを条件として,会員Aに対し,「マイミク追加リクエストの承認」を通知するという処理がされていることが認められる。
そして,上記の処理においては,被告サーバにおいて,仮に会員Aと会員Bがマイミクとして記憶された後に,何らかのエラーが生じて,会員Aに対し「マイミク追加リクエスト」が承認された旨の通知がされなかったとしても,被告サーバにおいては,会員Aと会員Bがマイミクであると記憶されるということになる。

(3)構成要件充足性
以上からすると,被告サーバは,第二のメッセージを受信したことを条件として「マイミク」であることを記憶し,「マイミク」である旨の記憶をしたことを条件として「第二のメッセージ」を送信するという構成を有しているものであって,
第二のメッセージを送信したことを条件として
「マイミク」

であることを記憶するという構成を有するものではないと認められる。したがって,被告サーバは,「第二のメッセージを送信したとき」に「上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」を有しているということはできないから,その余の点について判断するまでもなく,構成要件1D及び1Fを充足しない。よって,被告サーバは,本件発明1の技術的範囲に属しない。
4
争点(2)ウ(構成要件2Dの「送信したとき」の充足性)について(1)構成要件2Dは「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段と,」というものであり,前記3と同様に,第一の登録者を会員A,第二の登録者を会員Bとすると,会員Bが,会員Aからの人間関係を結ぶことを希望する旨のメッセージに合意するという「第二のメッセージ」を会員Bに「送信したとき」に,会員Aの識別情報と会員Bの識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとされている。
(2)そして,ここで「送信したとき」が,第二のメッセージを「送信したことを条件として」,という意味を有することは前記3で判示したところと同様である。
(3)ところが,前記3において判示したとおり,被告サーバは,第二のメッセージを送信したことを条件として「マイミク」であることを記憶するという構成を有していない。
したがって,被告サーバは,構成要件2Dを充足しない。
よって,被告サーバは,本件発明2の技術的範囲に属しない。

5
結論
以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

東海林保瀬孝
裁判官

裁判官

勝又来未子
(別紙)

被告サービス目録

「mixi」又は「ミクシィ」の名称をもって提供される会員向けソーシャルネットワーキングサービス
以上

(別紙)

被告サーバ説明書

被告サーバは,以下のとおりのサービスを提供するために使用されるソーシャルネットワークサーバであり,インターネットを介して会員のパソコン,スマートフォン(携帯情報端末)や携帯電話(以下,総称して「パソコン等」という。)と接続されている。

第1

友達の友達機能について
以下,被告サーバの構成を説明するにあたり,3名の会員(会員①~③)を使用する。

1
会員①(未来猫1号)
会員①は,「未来猫1号」という会員であり,初期段階では誰とも「マイミク」にはなっていない(画面02)。
画面02は被告サービスに,パソコン等から会員①としてログインした画面である。
画面02の赤枠部分には,会員①のマイミクが(0人)と表示されている。
2
会員②(未来猫2号)
会員②は,「未来猫2号」という会員であり,初期段階では次の会員③(未来猫3号)と「マイミク」になっている(画面03,04)。
画面03は被告サービスに,パソコン等から会員②としてログインした画面であり,画面04は会員②のマイミク一覧を表示した画面である。
3
会員③(未来猫3号)
会員③は,「未来猫3号」という会員であり,初期段階では上記の会員②と「マイミク」になっている(画面05,06)。
画面05は被告サービスに,パソコン等から会員③としてログインした画面であり,画面06は会員③のマイミク一覧を表示した画面である。
4
会員①と会員②がマイミクになる
(1)会員①から会員②にマイミク追加リクエストを送信する被告サービスでは,会員から他の会員に対して,被告サーバを通じてマイミクになることを希望する旨のメッセージ(マイミク追加リクエスト)を送信することができる。
画面07ないし09は,会員①から会員②に対して,マイミク追加リクエストを送信する一連の手続で表示される画面である。

(2)会員②から会員①に商品メッセージを送信する被告サービスでは,マイミク追加リクエストを受け取った会員が,マイミク追加リクエストを送信した会員に対して,被告サーバを通じて,マイミクになることに合意する旨のメッセージ(承認メッセージ)を送信することができる。
画面10ないし12は,会員②から会員①に対して,承認メッセージを送信する一連の手続で表示される画面である。

(3)マイミクとして関連付けられる
被告サービスでは,上記のマイミク追加リクエストと承認メッセージとを交換した会員は,マイミクとなり,被告のサーバにおいて「マイミク」として関連付けられる。

5
会員①と会員③がマイミクになる
(1)会員②の会員IDを使用して会員③を検索する被告サービスでは,会員IDを使用して,当該会員とマイミクになっている会員を検索することができる。
つまり,会員①としてログインしている状態で,被告サーバに,「(URLは省略)」((URLの一部)は会員②の会員IDである)というURLを送信すると,会員②とマイミクになっている会員の一覧が表示される(画面16)。
当該画面では,会員②とマイミクになっている会員の会員IDも会員①に送信されており,会員③の箇所にマウスのポインタを乗せると(マウスオーバー),会員③の会員IDが表示される(画面16)。
(2)会員③とマイミクになる
被告サービスでは,上記のように検索された会員③と,被告サーバを通じて,上記4(2)及び(3)で記載したのと同様の手順でマイミク追加リクエストと承認メッセージとを交換することで,会員①と会員③がマイミクとなることができる。
画面17ないし画面22は,会員①と会員③との間でマイミク追加リクエストと承認メッセージを交換する一連の手続で表示される画面である。
第2

共通の友達機能について
以下,被告サーバの構成を説明するにあたり,4名の会員(会員①~④)を使用する。
当初の状態では,
会員①と会員④,
会員③と会員④がマイミクとなっており,かつ,会員①と会員③とはマイミクになっていない状態に設定してある。
1
会員①と会員②とがマイミクになる会員①と会員②とがマイミクになる手順は,上記「第1
4」のとおりであ

る。

2
会員③との共通のマイミクを表示する
被告サービスでは,会員IDを使用して,当該会員と自身とが共通してマイミクになっている会員を検索することができる。
つまり,会員①としてログインしている状態で,被告サーバに,「(URLは省略)」((URLの一部)は会員③の会員IDである)というURLを送信すると,会員①と会員③とが共通してマイミクになっている会員(会員④)が表示される(画面27)。
当該画面では,共通の会員④の会員IDも会員①に送信されており,会員④の箇所にマウスのポインタを乗せると(マウスオーバー),会員④の会員IDが表示される(画面27)。
以上

被告サーバ説明書添付の画面01~画面27は省略

別紙「特許公報」は省略

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