判例検索β > 平成28年(ワ)第1777号
特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成28(ワ)1777
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日平成29年7月14日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年7月14日判決言渡

同日原本領収

平成28年(ワ)第1777号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

平成29年5月19日
判原決告
フルタ電機株式会社

同訴訟代理人弁護士

小被株告南式明会社也九研
(以下「被告九研」という。)
被告

(以下「被告A」という。)

上記両名訴訟代理人弁護士

沖田哲義同道山智成同神邊健司
同訴訟復代理人弁護士

玉岡範久
同補佐人弁理士

伊藤高英主1文
被告九研は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。

2
被告九研は,別紙物件目録2記載の「生海苔異物除去機」を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。

3
被告九研は,別紙物件目録3記載の「生海苔異物除去機」を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。

4
被告九研は,別紙物件目録4記載の「固定リング」を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。

5
被告九研は,別紙物件目録5記載の「板状部材」又は「ステンチップ」を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
6
被告九研は,別紙物件目録6記載の「回転円板」を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。

7
被告九研は,その保持する別紙物件目録1ないし6記載の各製品を廃棄せよ。

8
被告九研は,別紙メンテナンス行為目録記載1及び2の各行為をしてはならない。

9
被告九研は,原告に対し,1億6334万5175円及びうち1億4045万1960円に対する平成27年10月28日から,うち2289万3215円に対する平成28年12月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

原告の被告Aに対する請求及び被告九研に対するその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は,原告と被告九研との間では,これを20分し,その1を原告の負担とし,その余は被告九研の負担とし,原告と被告Aとの間では原告の負担とする。

この判決は,第1項ないし第6項,第8項及び第9項に限り,仮に執行することができる。

第1

実及び理由
請求

1
第1項ないし第7項につき,主文同旨。

2
被告九研は,別紙メンテナンス行為目録記載1ないし3の各行為をしてはならない。

3(主位的請求)
被告らは,原告に対し,連帯して1億6800万円及びうち1億4045万1960円に対する平成27年10月28日から,うち2754万8040円に対する平成28年12月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
(予備的請求)
被告九研は,原告に対し,1億6800万円及びうち1億4045万1960円に対する平成27年10月28日から,うち2754万8040円に対する平成28年12月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2
1
事案の概要
本件は,名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」とする発明についての特許権(請求項の数5。以下「本件特許権」又は「本件特許」といい,特許請求の範囲請求項1,3及び4記載の各発明をそれぞれ「本件発明1」,「本件発明3」及び「本件発明4」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)を有する原告が,①別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」(以下「本件装置(WK型)」という。)及び同目録2記載の「生海苔異物除去機」(以下「本件装置(LS型)」といい,本件装置(WK型)と併せて「本件旧装置」という。)は本件各発明の技術的範囲に属する,②同目録4記載の「固定リング」(以下「本件固定リング」という。)及び同目録5記載の「板状部材又はステンチップ」(以下「本件板状部材」といい,本件固定リングと併せて「本件各部品」という。)は本件旧装置の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に当たる,③同目録3記載の「生海苔異物除去機」(以下「本件新装置」という。)は本件発明3の技術的範囲に属する,④同目録6記載の「回転円板」(以下「本件回転円板」という。)は本件新装置の「生産にのみ用いる物」(同号)に当たる,⑤別紙メンテナンス行為目録記載1ないし3の各行為(以下「本件メンテナンス行為1」などといい,併せて「本件各メンテナンス行為」という。)のうち本件メンテナンス行為1及び2は本件旧装置又は本件新装置の「生産」(同法2条3項1号)に該当し,本件メンテナンス行為3はこれと一体として行われているなどと主張して,被
告らに対し,以下のとおり請求する事案である。
(1)被告九研に対し,特許法100条1項に基づき,本件旧装置,本件固定リング,本件板状部材,本件新装置及び本件回転円板(以下,本件旧装置,本件固定リング及び本件板状部材を併せて「本件製品1」といい,本件新装置及び本件回転円板を併せて「本件製品2」という。)の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求める(請求の趣旨第1項ないし第6項)。
(2)被告九研に対し,特許法100条2項に基づき,本件製品1及び2の廃棄を求める(請求の趣旨第7項)。
(3)被告九研に対し,特許法100条1項に基づき,本件メンテナンス行為1及び2の差止めを求めるとともに,主位的に同条2項に基づき,予備的に同条1項に基づき,本件メンテナンス行為3の差止めを求める(請求の趣旨第8項)。
(4)主位的に,被告らに対し,民法709条,719条に基づき,連帯して,特許法102条に基づく損害額1億5953万2235円及び弁護士費用相当損害額の内金846万7765円(合計1億6800万円)並びにうち1億4045万1960円に対する同内金に係る不法行為の後の日(被告九研に対する催告の日の翌日)である平成27年10月28日から,うち2754万8040円に対する同内金に係る不法行為の後の日(最終の販売日の翌日)である平成28年12月18日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,被告九研に対し,民法709条に基づき,上記金額の支払を求める(請求の趣旨第9項)。
2
前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)当事者

原告は,海苔製造加工に必要な機械の製造販売業者であり,その他各
種農業用及び各種水産用機械器具並びに各種風水力機械の製造,販売,施工等を目的とする株式会社である。

被告九研は,海苔機械を含む漁業用機械等の販売,修理等を目的とする株式会社である。
被告Aは,被告九研の代表取締役である。

(2)本件特許権

原告は,次の本件特許権を有している。
登録番号

特許第3966527号

発明の名称

生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装
置出願日
平成10年6月12日

登録日
平成19年6月8日

訂正審決日

平成22年2月25日

本件特許に関しては,訂正審判事件(訂正2010-390006)における平成22年2月25日付け審決(同年3月9日確定)により訂正が認められている。同訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲,明細書及び図面の内容は,別紙特許審決公報中の特許訂正明細書及び図面(以下「本件訂正明細書等」という。)に各記載のとおりである。(甲3)

(3)本件特許の特許請求の範囲
本件特許の特許請求の範囲のうち請求項1,3及び4の記載(本件各発明)は,それぞれ本件訂正明細書等の各該当項に記載のとおりである。(4)本件各発明の構成要件の分説
本件各発明をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A1」などという。)。

本件発明1
A1

生海苔排出口を有する選別ケーシング,

2
及び回転板,

3
この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手
段,

4
並びに異物排出口

5
をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液
槽を有する生海苔異物分離除去装置において,


前記防止手段を,
1
突起・板体の突起物とし,

2
この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とし
たCイ
生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
本件発明3

A1ないし5につき,本件発明1と同一
B’

前記防止手段を,

1
突起・板体の突起物とし,

2
この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける
構成とした

Cウ
生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
本件発明4

A1ないし5につき,本件発明1と同一
B”

前記防止手段を,

1
突起・板体の突起物とし,

2
この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランス
に設ける構成とした


生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。

(5)本件特許権の審査経過

本件特許の出願に対し,特許庁は,請求項の一部が引用文献(後述の乙1明細書等)に記載された考案と同一であるなどの理由により,出願を拒絶すべきものとして,その旨の通知をした。
これに対し,原告は,請求項の一部を削除するなどの補正をした上,下記の記載のある平成19年3月26日付け意見書(乙7。以下「乙7意見書」という。)を提出したところ,特許庁から本件特許として特許査定を受けた。(乙5,7)

「尚,引用文献1〔判決注:乙1明細書等〕の考案では,凹部(331)から,異物が吸込まれて問題が発生します。しかし,本願発明では,このような問題は,発生しません。」
(6)本件製品1(本件旧装置及び本件各部品)

本件旧装置
本件旧装置のうち,本件装置(WK型)は,訴外甲工業株式会社(以下「甲」という。)が製造・販売する生海苔異物除去機のうち,型名「WK-500」,「WK-550」,「WK-600」及び「WK-700」で示されるものである。
また,本件装置(LS型)は,甲が,本件装置(WK型)の有する構成を変えることなく,製品名のみを「LS-R」,「LS-S」,「LS-G」及び「LS-L」へと変更して製造・販売したものである。(甲20の1ないし3,弁論の全趣旨)


本件各部品
(ア)本件固定リング
本件固定リングは,本件旧装置に4個又は6個付設されており,その内側に回転円板が回転自在に遊嵌されている。
本件旧装置は,本件固定リングと回転円板との間の極めて微少な環状
隙間(クリアランス)を介して生海苔を通過させる構成を有しているため,本件固定リングの側面部分は回転円板の回転によって摩耗しやすい。それゆえ,本件固定リングは取り外し可能になっており,甲から補充部品として販売店(被告九研を含む。)を介してユーザーに供給される。(イ)本件板状部材
本件板状部材は,本件固定リングに1個又は複数個取り付けられている。
本件板状部材は本件固定リングの上部及び側面(クリアランス側)に突出するように設置されているため,本件旧装置の使用によって摩耗しやすい。それゆえ,甲から補充部品として販売店(被告九研を含む。)を介してユーザーに供給される。
(7)本件製品2(本件新装置及び本件回転円板)

本件新装置
本件新装置は,甲が製造・販売する生海苔異物除去機のうち,型名「LS-R」,「LS-S」,「LS-G」,「LS-L」及び「LS-8」で示されるものである(ただし,本件装置(WK型)の構成を変えることなく製品名のみ変更した本件装置(LS型)を除く。)。本件新装置は,①全て本件回転円板を構成部品としている点,②本件固定リングとは異なった形状の固定リング(以下「本件新固定リング」という。)が本件回転円板の周囲に取り付けられている点で,本件旧装置と異なる。


本件回転円板
本件回転円板は,本件新装置に4個又は6個付設され本件新固定リングの内側に回転自在に遊嵌されている。
本件新装置は,本件新固定リングと本件回転円板との間の極めて微少な環状隙間(クリアランス)を介して生海苔を通過させる構成を有して
いるため,本件固定リングの側面部分は回転円板の回転によって摩耗しやすい。それゆえ,本件固定リングは取り外し可能になっており,甲から補充部品として販売店(被告九研を含む。)を介してユーザーに供給される。
(8)被告九研の行為

本件製品1(本件旧装置及び本件各部品)
被告九研は,甲又は訴外有限会社乙センター(以下「乙社」という。)から本件旧装置及び本件各部品を購入し,これを第三者に販売した。

本件製品2(本件新装置及び本件回転円板)
被告九研は,甲から本件新装置及び本件回転円板を購入し,これを第三者に販売した。


本件各メンテナンス行為
被告九研は,本件旧装置及び本件新装置のユーザーに対し,本件各メンテナンス行為のうち少なくとも本件メンテナンス行為1を行った。
(9)構成要件の充足性等

本件製品1(本件旧装置及び本件各部品)
本件旧装置は,本件各発明の技術的範囲に属する。
本件各部品のうち本件板状部材は,本件各発明の技術的範囲に属する物(本件旧装置)の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に該当する。


本件製品2(本件新装置及び本件回転円板)
本件新装置は,本件発明3につき,構成要件B’1以外の各構成要件を充足する。

(10)先行文献等

本件特許の出願日(平成10年6月12日)より前の実用新案登録出願であって本件特許の出願後に実用新案掲載公報の発行がされたものの
願書に最初に添付した明細書及び図面として,登録実用新案第3053035号公報(出願日平成10年4月7日,発行日同年10月13日。乙1)記載の明細書及び図面がある(以下「乙1明細書等」といい,同明細書等に係る考案を「乙1考案」という。)。

本件特許の出願日(平成10年6月12日)よりも前に公開された文献として,以下のものがある。
(ア)登録実用新案第3017060号公報(発行日平成7年10月17日。乙2。以下「乙2公報」という。)
(イ)特開平8-112081号公報(公開日平成8年5月7日。乙3。以下「乙3公報」という。)
(ウ)特開平8-140637号公報(公開日平成8年6月4日。乙4。以下「乙4公報」といい,同公報に係る発明を「乙4発明」という。)
3
争点
(1)本件新装置が本件発明3の技術的範囲に属するか
(2)本件各発明に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものかア
未完成発明,実施可能要件違反,サポート要件違反又は明確性要件違反イ
拡大先願


乙4発明及び周知技術による進歩性欠如


公知による新規性欠如及び進歩性欠如

(3)差止請求の可否
(4)共同不法行為の成否
(5)損害発生の有無及びその額
第3
1
争点に関する当事者の主張
争点(1)(本件新装置が本件発明3の技術的範囲に属するか)について
〔原告の主張〕

(1)本件新装置の構成
本件新装置の構成は,別紙「本件新装置の構成」の〔原告の主張〕に記載のとおりであり,これを構成要件との対比の便宜のため分説すると以下のとおりとなる(以下,それぞれの記号に従い「構成α1i」などという。)。α1ⅰ

吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7
及び環状固定板4

2
回転円板3

3
回転円板3に形成された凸部D

4
異物排出口5

5
をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される異物選別槽A(その底部を構成する底板2を含む。)を有する生海苔異物除去機

β
回転円板3に形成される凸部Dにつき,
1
その平面部3b1が径方向側面部(側面壁)3c,エッジxによって回転円板の表面の一部である回転円板側凹部の底面部3b2との間で段差を形成することで突出する。

2
側面部(端面)3a1,平面部3b1,2か所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成され,その平面形状は略扇形(中心を回転円板3の中心と共通にする。)である。
回転円板側凹部の底面部3b2との間で直線状の境界線を呈することによって,回転円板3の外周側に薄板状部材を取り付けたような外観を呈する。

γ
本件新装置は,底板2に環状固定板4が取り付けられていて環状固定板4の内側に円形孔が形成されていると共に,底板2に異物排出口5を備えている異物選別槽Aと,モーターによって駆動される回転軸により回転する,凸部Dが形成された回転円板3が前記円形孔の内側に回転自在に遊嵌され,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aと,回転円
板3の側面部(端面)3aとで形成された環状隙間Cと,前記円形孔の下側に配置されていて,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7などからなる装置形態(システム)を包含する生海苔異物除去機である。(2)構成要件B’1の充足性
本件新装置の構成β1において,凸部Dは,回転円板3の表面の一部3b2よりも突出する。
そして,構成要件B’1「突起・板体の突起物」における「突起」とは,「ある部分が周囲より高く突き出ていること。また,そのもの。でっぱり。」の意味で用いられる語であり,本件訂正明細書等の段落【0026】においては,「凹凸・・・等の突起物」と記載されている。凸部Dの形状が,この「凹凸等の突起物」に該当することは明らかであるから,凸部Dは構成要件B’1の「突起・・・の突起物」に該当する。
また,構成β2において,凸部Dの平面形状は略扇形で,薄板状部材を取り付けたような外観を呈するから,凸部Dは構成要件B’1の「板体の突起物」にも該当する。
〔被告らの主張〕
(1)本件新装置の構成
本件新装置の構成は,別紙「本件新装置の構成」の〔被告らの主張〕に記載のとおりであり,これを構成要件との対比の便宜のため分説すると以下のとおりとなる(原告の主張と異なる部分に下線を付した。なお,被告らは,被告らの主張する構成により特定された本件新装置を「被告特定新装置」と称しているが,本判決においては,便宜上,単に「本件新装置」とする。)。α’
1i
ii
2
吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7
及び環状固定板4
回転円板3

3
回転円板3の表面3bの外周部分に形成された複数の凹部E

4
異物排出口5

5
をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される異物選別槽A
(その底部を構成する底板2を含む。)を有する生海苔異物除去機
β’

回転円板3の表面3bの外周部分に形成された凹部Eにつき,

1
回転円板3の表面3bの外周部分に,(周方向に所定長さ)×(側面部(端面)3aから径方向内側に所定長さ)×(表面3bから所定深さ(1mm弱~5mm程度(但し,この数値範囲に限定するものではない))の領域に亘って凹入形成されており,

2
底面部3b2,2か所の径方向側面部3c,側面部(端面)3dを有し,

3
略扇形の開口3e(a-b-c-dに囲まれている)をもって表面3bに開口しており,

4
略部分円筒形の開口3f(a-d-e-fに囲まれている)をもって(環状)隙間Cに対面するように開口していると共に,開口3fの周方向両端部の各端辺部分は隙間Cに突出していない。

5
隣の凹部E同士の間に回転円板3の表面3bと同一平面の平面部3b1を備えた非凹部に相当する凸部Dが形成されている。

γ’

本件新装置は,底板2に環状固定板4が取り付けられていて環状固
定板4の内側に円形孔が形成されている共に,底板2に異物排出口5を備えている異物選別槽Aと,モーターによって駆動される回転軸により回転する,凹部Eが形成された回転円板3が凹部Eを隙間Cに対面させて略円筒形の開口3fを開口させるようにして前記円形孔の内側に回転自在に遊嵌され,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aと,回転円板3の側面部(端面)3aとで形成された環状隙間Cと,前記円形孔の下側に配置されていて,吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材
7などからなる装置形態(システム)を包含する生海苔異物除去機である。
(2)構成要件B’1の充足性
まず,構成要件B’1には凹凸についての記載はなく,本件訂正明細書等にも凹凸の構成を具体的に開示する説明がないから,「突起・板体の突起物」には凹凸は含まれず,したがって本件新装置は本件発明3の技術的範囲に属さない。
また,本件訂正明細書等の図6及び図7においては凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通しているから,本件発明3における「突起・板体の突起物」に相当する凹凸部の構成は「凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していること」をいうものであって,この点からも本件新装置は本件発明3の技術的範囲に属さない。
さらに,原告の乙7意見書には「尚,引用文献1〔判決注:乙1明細書等〕の考案では,凹部(331)から,異物が吸込まれて問題が発生します。しかし,本願発明では,このような問題は,発生しません。」と記載されていたのであって,この記載に照らせば,本件回転円板に設けられている「凹部」は本件発明3に含まれない。
加えて,本件回転円板における「凹部E」の形成は「凸部D」の形成と同義ではなく,かつ,「凹部E」と「凹部E」の間に形成される非凹部は「凸部D」に相当しない。
そして,仮に「凸」部分が「突起・板体の突起物」に含まれる場合があるとしても,そのためには,生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果),生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって,共回りの発生をなくし,クリアランスの目詰まりをなくすものでなければならないところ,本件回転円板には防止効果及び矯正効果がなく,共回りの発生をなくすもの
でもない。
2
争点(2)ア(未完成発明,実施可能要件違反,サポート要件違反又は明確性要件違反)について

〔被告らの主張〕
本件訂正明細書等には,どのような構成の凹凸が本件各発明の作用効果を発揮するものかについては全く開示されていないので,本件各発明の目的を達成することができない。
したがって,本件各発明に係る特許は,以下のとおり無効にされるべきものである。
(1)未完成発明
本件各発明は発明として未完成であり,特許法29条1項柱書きに規定する要件を充たしていないから,本件各発明に係る特許は同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。
(2)実施可能要件違反
本件各発明は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されておらず,平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項に規定する要件を充たしていないから,本件各発明に係る特許は同法123条1項4号の規定により無効にされるべきものである。
(3)サポート要件違反
本件各発明は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されておらず,特許法36条6項1号に規定する要件を充たしていないから,本件各発明に係る特許は同法123条1項4号の規定により無効にされるべきものである。
(4)明確性要件違反
本件各発明は,特許を受けようとする発明が明確ではなく,特許法36条6項2号に規定する要件を充たしていないから,本件各発明に係る特許は同
法123条1項4号の規定により無効にされるべきものである。
〔原告の主張〕
本件訂正明細書等には,生海苔の共回りを防止する手段を「突起・板体の突起物」とすることが記載されており,その例として,回転円板や選別ケーシングとは別の部材をボルト等の締結手段によって固着する場合や,他の手段で固着する場合(例えば,溶接,接着剤,凹みを設けて嵌合,その他の適当な手段),又は回転円板や選別ケーシングを作成する際に最初から一体的に突起物を形成したり,作成後に不要部分を切削して形成したりする場合を包含した記載がされている。
当業者においては,これらの記載に基づいて,用い得る手段を適宜採用して「突起・板体の突起物」を形成した上で,本件各発明の作用効果を奏するかどうか検証することが可能であって,本件訂正明細書等の記載によって本件各発明の課題を解決することができることは,当業者において容易に認識できるものである。
そもそも,本件各発明に係る本件訂正明細書等の記載が特許法36条4項及び6項に違反しないことは,これまで特許庁審決及び判決でも度々判断されているのであって,被告らの主張は,過去に排斥された主張を蒸し返すものに他ならない。
3
争点(2)イ(拡大先願)について

〔被告らの主張〕
本件各発明は,以下のとおり,本件特許の出願日より前の実用新案登録出願であって本件特許の出願後に実用新案公報の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書及び図面である乙1明細書等に記載された乙1考案と実質的に同一である。
しかるに,本件各発明の発明者は乙1考案の考案者と同一ではなく,また本件各発明に係る特許の出願時において,その出願人が乙1考案に係る実用新案
登録出願の出願人と同一でもない。
したがって,本件各発明は特許法29条の2の規定により特許を受けることができない発明であるから,本件各発明に係る特許は同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。
(1)考案ないし発明の目的等
乙1考案及び本件各発明は,いずれも乙4発明に係る生海苔の異物分離除去装置を従来装置としてとらえているものである。また,乙1考案の目的は「乙4発明に係る従来装置におけるクリアランスに詰まった異物を除去しなければならないという問題点を解消すること」であり,これは,本件各発明の目的である「乙4発明に係る従来装置における共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと」と実質的に同一である。(2)構成

本件各発明の構成要件A1ないし5について
本件各発明の構成要件A1ないし5については,乙1考案及び本件各発明がいずれも乙4発明の改良発明であることや,本件各発明に係る特許の出願経過等に照らせば,乙1明細書等に実質的に記載されているといえる。


本件各発明の構成要件B,B1,B’,B’1,B”及びB”1について
乙1考案には,本件各発明の防止手段の一態様としての凹凸部に相当する凹部が環状枠板部のクリアランスを形成する部分に設けられており,本件各発明の防止手段と同様に,異物を排除し,適正な生海苔を生海苔原料として取り出す作用効果と同一の作用効果を発揮することができる。したがって,乙1考案における凹部は,本件各発明の構成要件B,B1,B’,B’1,B”及びB”1の「前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,」と実質的に同一である。


本件各発明の構成要件B2,B’2及びB”2について
乙1明細書等の図3では,第二環状固定板33の内周面に凹部331が形成されており,本件発明1の構成要件B2の「この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」と実質的に同一の構成が開示されている。
また,乙1明細書等の図2及び図3には,クリアランスCを形成する第二環状固定板33の鉛直向きの内周面(端面に相当する。)に凹部331が形成されており,図4には,クリアランスCを形成する第二環状固定板33の水平向きの上面に凹部331が形成されているのであるから,本件発明3の構成要件B’2の「この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした」のうち,「選別ケーシングの円周面に設ける構成」と実質的に同一の構成が開示され,また,本件発明4の構成要件B”2の「この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした」と実質的に同一の構成が開示されている。
そして,乙1考案における凹部331は第二環状固定板33のみに設けられており,対向する第二回転板36には設けられていないが,乙2公報及び乙3公報に開示されている周知技術に基づくと,「凹部を第二回転板36に設けることが乙1明細書等に記載されているに等しい事項」であるといえるから,乙1明細書等には,本件発明3の構成要件B’2のうち「回転板に設ける構成」が開示されていることになる。

(3)原告の主張に対する反論
この点に関して原告は,乙1明細書等には本件各発明の「共回り」という課題及びその解決手段等が記載されていないと主張する。
しかし,乙1明細書等には【課題を解決するための手段】及び【考案の効果】において共回りの発生を防止することができるとの作用効果が明記され
ているから,考案の課題部分に共回りを防止することが文言として記載されていなくても,共回りを防止する目的が含まれていると解される。現に,乙1考案の出願当時における宣伝広告(乙8ないし11)及び公開特許公報(甲27の6の1,甲27の18の1,甲27の10)の記載からすれば,共回り現象が発生していたことを当業者が広く認識していたといえる。そもそも,原告製の生海苔異物除去装置においても,以下の図のとおり,乙1考案の「凹部」に相当する「鉛直溝」が設けられており,これは原告自身が乙1考案の構成に共回り防止効果が存在することを認めている証左である。

(図は実寸ではなく鉛直溝を強調して示しており,左図は回転円板の全体正面斜視図,右図は鉛直溝部分の拡大平面図)
〔原告の主張〕
以下のとおり,本件各発明は乙1考案と実質的に同一のものではない。(1)考案ないし発明の目的等
乙1明細書等には,本件各発明の「共回り」という課題,「共回り」の発生原因,「共回り防止」の必要性及びその課題解決手段は記載されていない。また,乙1考案は,クリアンスの目詰まりの原因となっている「茎部の付いている生海苔」を,他のクリアランスよりも幅広にした部分にあえて通過させることで,それまで異物として廃棄対象としていたものを原料として使用可能にしようとするものである。これに対して,本件各発明は,このよう
な「茎部の付いている生海苔」を異物として除去対象にしようとするものであるから,課題認識面でも異なり,さらに課題解決の方向性も全く異なる。(2)構成

本件各発明の構成要件A1ないし5について
乙1考案は,生海苔の「共回り」を防止しようとする発明ではないのであるから,本件各発明の構成要件A3「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,」は乙1明細書等には記載されておらず,この点において,本件各発明は乙1考案と同一ではない。

本件各発明の構成要件B以下について
上記のとおり,本件各発明の構成要件A3は乙1明細書等には記載されていないから,構成要件B,B’及びB”の「前記防止手段を,」も記載されていない。
また,被告らは,乙1考案における「凹部」が本件各発明の防止手段と同一であると主張するが,「凹部」は他のクリアランスよりも幅広にした部分であり,その部分を「茎部の付いている生海苔」をあえて通過させるために形成するのであるから,本件各発明の共回り防止手段の構成とは全く異なる。
さらに,被告らは,本件各発明が乙1考案と同一であると主張しながら,他の文献である乙2公報及び乙3公報も引用しているのであって,主張自体失当である。

4
争点(2)ウ(乙4発明及び周知技術による進歩性欠如)について
〔被告らの主張〕
本件各発明は,以下のとおり,乙4発明に,乙2公報及び乙3公報に開示されている周知技術を適用することにより,当業者が容易に発明することができたものである。
したがって,本件各発明は特許法29条2項の規定により特許を受けること
ができないから,本件各発明に係る特許は,同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。
(1)本件各発明と乙4発明との対比
本件各発明は乙4発明の改良発明であるから,本件各発明のうち構成要件A1,A2,A4及びA5については乙4公報に実質的に記載されているのであって,この点において本件各発明と乙4発明とは一致する。
その余の構成については,乙4公報には開示されておらず,この点において本件各発明と乙4発明とは相違する。
(2)相違点に係る構成の容易想到性
本件特許の出願当時における生海苔異物分離除去装置の宣伝広告(乙8ないし13)には「目づまり防止付」と記載されている。このように,本件特許出願当時,乙4発明の生海苔異物分離除去装置には,①目詰まりという問題点が発生していること,②その問題点を解決すべき手法が開発されていること,③その手法を開発すべき動機付けが存在していたことが当業者において周知の事項であった。したがって,当業者にとっては,乙4発明における問題点が乙4公報の図4のクリアランスCに目詰まりが発生するというものであることは明白であった。
そして,乙2公報及び乙3公報には,「海苔の異物を除去するためのスリット(クリアランスに相当)を形成する対向面に対して,①生海苔のスリットの通過量を制御する手段として凹凸部を設けること,②凹凸部を設ける場合にはスリットを形成する対向面の双方に設けること」との周知技術が開示されている。
したがって,当業者としては,上記目詰まりを防止するために,上記周知技術を適用することに容易に想到するところ,乙4発明に上記周知技術を適用すると,クリアランスCを形成している環状固定板(環状枠板部)24の内周端面(本件各発明の円周面および円周端面に相当)と第一回転板51の
外周端面(本件各発明の円周面および円周端面に相当)にそれぞれ凹凸部を設ける構造となるのであって,この構造は,本件各発明における本件訂正明細書等の図7の構成と同一となり,得られた発明の作用効果も本件各発明の作用効果と同等のものとなる。
(3)原告の主張に対する反論
この点に関して原告は,乙4発明に技術思想の異なる乙2公報及び乙3公報の技術を適用することはできないなどと主張する。
しかし,乙2公報及び乙3公報に記載された周知技術は,乙4発明と同様,海苔の異物を除去するための装置であり,技術分野を同一とするものであるから,当業者が容易に組み合わせることができるというべきである。〔原告の主張〕
(1)被告らの引用する宣伝広告における「目づまり防止付」とは,クリアランスに異物等が詰まった場合,回転板を回転軸に沿って上下動させることで,隙間に詰まった異物等を筒状混合液タンク側に排出させるように構成したものを指す。
したがって,仮にこの回転板の上下動手段が公知であり,「目づまり防止付」との表現が公知であったとしても,そのこと自体から,当業者は,本件各発明の課題として設定した「共回り」を想起することはできない。(2)また,乙2公報及び乙3公報に記載された技術的事項は,いずれも異物分離除去の方式が従来型の固定隙間のものであって,乙4発明に係る回転板方式のものとは全く異なるし,周知技術ともいえない。
さらに,乙2公報及び乙3公報に記載された技術的事項をどのように適用すれば本件各発明の構成に至るのか,全く不明である。
したがって,仮に当業者において,乙4発明にはクリアランスに異物や生海苔の詰まりが生ずる問題があるという課題を想起し得たとしても,乙4発明に,前提とする異物分離除去に係る技術思想の異なる乙2公報及び乙3公
報の技術的事項を適用する動機付けがあったとは認められない。また,仮に当業者において乙2公報及び乙3公報の技術的事項の適用を試みたとしても,乙4発明に,技術的思想の異なる乙2公報及び乙3公報の技術的事項を適用し,乙4発明において本件各発明との相違点に係る構成を備えるようにすることが容易に想到し得たとは認められない。
5
争点(2)エ(公知による新規性欠如及び進歩性欠如)について

〔被告らの主張〕
本件発明1及び3は,以下のとおり,①本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明と同一であり,特許法29条1項1号の規定により特許を受けることができないから,本件発明1及び3に係る特許は,同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものであり,また,②本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,同法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本件発明1及び3に係る特許は,同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。
(1)原告の「ダストール」
原告は,本件特許の出願前から生海苔異物除去洗浄機「ダストール」(以下単に「ダストール」という。)の開発を進めていた。
ダストールの基本構成は,本件発明1及び3の構成要件A1,2,4及び5を備えていたものであったが,本件発明1の構成要件A3,B,B1,B2及びCを備えておらず,また,本件発明3の構成要件A3,B’,B’1,B’2及びCを備えていなかった。
(2)原告の文書

文書の配布
訴外西部機販愛知有限会社の代表者であるB(以下「B」という。)は,平成10年当時,原告におけるダストールの開発を手伝っていたと
ころ,Bの当時の日記(乙43の9)によれば,同年4月28日,Bは原告の技研工場において原告関係者と打合せをしていた。そして,その際に配布された資料ファイルの中に,原告の技研工場作成の「ダストールの試験機,展示会機から新型への変更点」と題する文書(乙43の8の2枚目及び3枚目。以下「乙43の8文書」という。)があり,そこには次の記載があった。
「1

選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつける

選別タンク内の海苔濃度を濃くできる事により良品タンクへの海苔濃度が濃くできる。」

技術的思想
乙43の8文書の上記記載は,「選別ケーシングの外周端面(円周面)に共回り防止ゴムを取り付ける」という技術的思想が開示されたものである。
そして,上記技術的思想は,本件発明1の構成要件A3,B,B1,B2及びC並びに本件発明3の構成要件A3,B’,B’1,B’2及びCに相当するものである。


原告による開示
原告は,本件特許の出願前において,B並びに試験場提供者であるC(以下「C」という。)及びD(以下「D」という。)に対し,上記イの技術的思想を開示したものである。
なお,Bは,原告との間で秘密保持契約を締結しておらず,自身及び試験場提供者には守秘義務がない状態であった。

(3)ダストールの構成
前記(1)のダストールの基本構成に,上記(2)の乙43の8文書に開示された技術的思想をまとめると,ダストールの構成は以下のとおりとなる。ア
本件発明1に合わせた構成

A1

生海苔排出口1を有する選別ケーシング2,

2
及び回転板3,

3
この回転板3の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する共回り防止ゴム(防止手段),

4
並びに異物排出口5

5
をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽6を有する生海苔異物分離除去装置7において,


前記防止手段を,
1
共回り防止ゴムとし,

2
この共回り防止ゴムを,前記選別ケーシング2の円周端面に設ける構成とした

Cイ
生海苔異物分離除去装置7における生海苔の共回り防止装置。
本件発明3に合わせた構成

A1~5
B’

(本件発明1に合わせた構成と同一)

前記防止手段を,

1
共回り防止ゴムとし,

2
この共回り防止ゴムを選別ケーシング2の円周面に設ける構成としたC
生海苔異物分離除去装置7における生海苔の共回り防止装置。

(4)新規性及び進歩性欠如

本件発明1
本件発明1の構成とダストールの構成は実質的に同一であり,本件発明1は新規性及び進歩性を具備していない。


本件発明3
本件発明3において「選別ケーシングの円周面」に防止手段を設ける場合の構成とダストールの構成とを比較すると,両者の構成は実質的に
同一であり,この点における本件発明3は新規性及び進歩性を具備していない。
また,本件発明3において「回転板の円周面」に防止手段を設ける場合の構成とダストールの構成とを比較すると,ダストールには回転板の円周面に防止手段を設ける場合の構成がない点において相違する。しかし,ダストールにつき,共回り防止ゴムを円筒状の上下面を対向させて配置されている選別ケーシングと回転板とにおいて,一方の選別ケーシングの外周端面に共回り防止ゴムを設ける発明に基づいて他方の回転板の外周端面に共回り防止ゴムを設けることは,当業者が容易に発明することができたものであるから,この点における本件発明3は進歩性を具備していない。
〔原告の主張〕
(1)乙43の8文書の記載

乙43の8文書
まず,乙43の8文書は,原告内部の検討資料又は会議の議事録であって,公衆に対して頒布によって公開を目的として作成された文書ではない。
また,その記載内容についても,被告らは同文書に「選別ケーシングの外周端面に共回り防止ゴムを取り付ける」という技術的思想が開示されているなどと主張するが,同文書には選別ケースの「外周」に共回り防止ゴムを「つける」と記載されているものの,「外周端面」に「取り付ける」とは記載されていない。


乙43の8文書による理解の可否
特許法29条1項1号の「公然知られた発明」における「知られ」とは「技術的に理解され」の意味であり,例えば,内部構造に発明が認められる装置の外形だけ見せたとか,技術的意味を全く理解できない者が
見たとしても,それだけでは「知られ」たことにはならない。
これを本件についてみると,当時のダストールの基本構成を前提としても,「共回り防止」との記載だけで,技術的にその「共回り」の意義や,「共回り」を「防止」することの意義は理解できない。そもそも生海苔の異物分離除去の分野において,本件特許の出願前に「共回り」及び「共回り防止」という用語が用いられたことはないのであって,これらは原告が創作した概念であり,本件特許の明細書において初めて定義づけた用語にすぎない。
さらに,乙43の8文書には「共回り防止ゴムをつけた」ではなく「共回り防止ゴムをつける」とされているのであり,将来の課題として原告内部で検討中であることが記載されているにすぎない。
したがって,外部の者すなわち当業者が乙43の8文書を本件特許の出願前にこれを見たからといって,本件発明1及び3のような「共回り防止手段」を特定箇所に設け,それによって原告が本件特許の明細書で意図した「共回り防止」の作用効果が得られることは,読み取ることができない。

Bに対する配布の有無
被告らは,乙43の8文書が平成10年4月28日の会議で「配布された」と主張するのみで,この会議の具体的状況は全く明らかにしていない。そもそもBの当時の日記(乙43の9)の一部は極めて疑わしいものであるし,仮に真実であったとしても,会議の場には1時間程度しかいなかったはずである。そして,乙43の8文書は上記会議の議事録である可能性が高く,Bは「選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつける」と記載された事項についての検討内容は全く知らなかったというべきである。
また,乙43の8文書は会議の議事録である可能性が高いことからす
ると,Bは,ワープロによって清書された同文書が作成された後,平成11年度以降の何らかの機会に原告から同文書を入手したものに相違ない。
なお,被告らは,乙43の8文書が「配布された」としか主張しておらず,Bがどのような発明を知ったかを特定していないし,C及びDについては全く主張がない。
(2)B,C及びDの守秘義務
原告と西部機販との間では,平成10年初め頃,開発協力契約及び秘密保持契約を含む業務提携契約が締結されており,西部機販の代表者であるBは原告に対して同契約に基づく守秘義務を負担していた。また,仮に明示的な合意がなかったとしても,Bには,社会通念上若しくは商慣習上又は信義則上,秘密保持義務が発生していた。
したがって,仮に,乙43の8文書の記載内容が本件特許の出願前にBに開示され,それによってBが本件発明1及び3の内容を知ったとしても,特許法29条1項1号の「公然知られた」には該当しない。
なお,C及びDに対する関係では,Bが有する守秘義務に関する主張を援用する。
6
争点(3)(差止請求の可否)について

〔原告の主張〕
(1)本件製品1(本件旧装置及び本件各部品)について
本件旧装置は,本件各発明の技術的範囲に属する(前記第2,2(9)ア)。また,本件各部品のうち本件板状部材は,本件各発明の技術的範囲に属する物(本件旧装置)の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に該当するものであり(前記第2,2(9)ア),本件各部品のうち本件固定リングも,これだけでは「共回り防止装置」に該当しないのであるから,本件各発明の技術的範囲に属する物(本件旧装置)の「生産にのみ用いる物」であ
ることは明らかである。したがって,本件板状部材及び本件固定リングの譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は本件特許権の侵害とみなされる。そして,前記第2,2(8)アのとおり,被告九研は甲又は乙社から本件旧装置及び本件各部品を購入し,これを第三者に販売したものであるところ,被告九研が今後も本件旧装置及び本件各部品の供給を受けて販売を継続する蓋然性は極めて高い。
以上により,原告は,被告九研に対し,本件旧装置及び本件各部品の譲渡,貸渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求めるとともに,その廃棄を求める。
(2)本件製品2(本件新装置及び本件回転円板)について
本件新装置は,本件発明3の技術的範囲に属する。
また,本件回転円板だけでは「共回り防止装置」に該当しないのであるから,本件回転円板は本件発明3の技術的範囲に属する物(本件新装置)の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)であることは明らかであって,本件回転円板の譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は本件特許権の侵害とみなされる。
そして,前記第2,2(8)イのとおり,被告九研は,甲から本件新装置及び本件回転円板を購入し,これを第三者に販売したものであるところ,被告九研が今後も本件新装置及び本件回転円板の供給を受けて販売を継続する蓋然性は極めて高い。
以上により,原告は,被告九研に対し,本件新装置及び本件回転円板の譲渡,貸渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求めるとともに,その廃棄を求める。
(3)本件各メンテナンス行為について

本件メンテナンス行為1及び2について
本件メンテナンス行為1(本件旧装置又は本件新装置に対して,本件
固定リング又は本件板状部材を部品の交換として取り付ける行為)及び本件メンテナンス行為2(本件旧装置又は本件新装置に対して,本件回転円板を部品の交換として取り付ける行為)は,本件旧装置又は本件新装置のうち製品寿命が来て廃棄すべきものや,そのままでは本来の性能を発揮することができず新規製品に代替すべきものを蘇生させ,新たな本件旧装置又は本件新装置を再生していると評価することができるのであって,本件旧装置又は本件新装置の「生産」(特許法2条3項1号)に該当する。
そして,前記第2,2(8)ウのとおり,被告九研は少なくとも本件メンテナンス行為1を行ったのであって,今後も本件メンテナンス行為1及び2を行う蓋然性は極めて高い。
したがって,原告は,被告九研に対し,特許法100条1項に基づき,本件メンテナンス行為1及び2の差止めを求める。

本件メンテナンス行為3について
(ア)主位的請求
本件メンテナンス行為3(本件メンテナンス行為1及び2以外で,本件旧装置又は本件新装置に対して点検,整備,部品交換又は修理を行う行為)は本件メンテナンス行為1及び2と一体として行われているのであって,本件メンテナンス行為1及び2のみを禁止して本件メンテナンス行為3を許容することは禁止の実効性に欠ける。
したがって,本件メンテナンス行為3は,本件メンテナンス行為1及び2の差止めを求めるに際して「その他の侵害の予防に必要な行為」(特許法100条2項)に該当するのであるから,原告は,被告九研に対し,主位的に同項に基づき,本件メンテナンス行為3の差止めを求める。
(イ)予備的請求

本件旧装置及び本件新装置の使用が本件特許権の侵害に該当することが明らかであるにもかかわらず,ユーザーによる上記使用を漫然と放置するばかりか,本件メンテナンス行為3を施して,当該ユーザーによる本件旧装置及び本件新装置の使用を積極的に促すことは,極めて悪質な行為であって,当該ユーザーとの共謀共同不法行為(共謀による特許権侵害)が成立すると解すべきであり,当該ユーザーにおける使用は実質的には被告九研による使用とも理解すべきものである。
したがって,原告は,被告九研に対し,予備的に特許法100条1項に基づき,本件メンテナンス行為3の差止めを求める。
〔被告九研の主張〕
(1)本件製品1(本件旧装置及び本件各部品)について
本件各部品のうち本件固定リングは,本件新装置の回転円板と組み合わせることにより,共回り防止装置として用いることが可能であり,現在においては,本件各発明の技術的範囲に属する物の「生産のみに用いる物」とはいえない。
また,被告九研が今後も本件旧装置及び本件各部品の供給を受けて販売を継続する蓋然性は極めて高いとの主張は,否認する。
(2)本件製品2(本件新装置及び本件回転円板)について
被告九研が本件新装置及び本件回転円板を販売しているという限度で認め,当該行為が本件特許権を侵害する行為であることは否認する。
(3)本件各メンテナンス行為について

本件メンテナンス行為1及び2について
事実関係はおおむね認めるが,本件各発明に係る特許は無効であるから,本件メンテナンス行為1及び2は本件特許権を侵害するものではない。


本件メンテナンス行為3について

(ア)主位的請求
仮に本件メンテナンス行為1又は2が本件特許権の侵害に当たるとしても,本件メンテナンス行為3に含まれる点検行為自体には,水漏れの検査や軸のがたつきの調整,洗浄など,本件旧装置又は本件新装置と何ら関係のないものも含まれている,また,点検行為のうち本件旧装置又は本件新装置に関する部分については,現在の生海苔異物除去装置が使用に耐えないものであるか否かを顧客が判断するために必要な行為である。
したがって,本件メンテナンス行為1又は2が禁止されるとしても,これらの禁止によりその目的を達することはできるはずである。
(イ)予備的請求
本件では,本件特許についてこれまで判断されていない無効理由も主張するものであり,そのような主張を前提とした判断はまだされていない。このような状況下で,被告九研が,本件旧装置及び本件新装置が特許権侵害品であることを顧客に告知し,措置を執るべき義務を負うことはない。
7
争点(4)(共同不法行為の成否)について

〔原告の主張〕
被告九研は,被告Aの個人営業に係る会社であり,実質的には被告Aと一体である。そして,被告九研による本件製品1及び2の取引は,甲と特に懇意にしていた被告Aの意思のみによって行われているため,被告A自身が被告九研を経由して原告に対する不法行為を行ったと評価すべきである。
したがって,本件製品1及び2の取引においては,被告らの共同不法行為が成立するのであり,被告らは連帯して原告に対する損害賠償責任を負う(主位的請求)。
なお,上記主張が仮に認められないとしても,被告九研について損害賠償責
任が認められることはいうまでもない(予備的請求)。
〔被告らの主張〕
否認ないし争う。会社の責任と代表取締役の責任は別個のものである。8
争点(5)(損害発生の有無及びその額)について

〔原告の主張〕
(1)被告らが本件製品1及び2の販売によって得た利益

本件旧装置
被告九研によるWK-500型,WK-550型,WK-600型,WK-700型及び本件装置(LS型)の販売利益はそれぞれ別紙販売利益等一覧表1ないし5の「原告の対応」欄記載のとおりであり,これらを合計すると1億2928万6800円(税込み)となる。


本件新装置
被告九研によるLS-G型及びLS-8型の販売利益はそれぞれ別紙販売利益等一覧表6及び7の「原告の対応」欄記載のとおりであり,これらを合計すると1521万1040円(税込み)となる。


本件各部品(本件固定リング及び本件板状部材)
被告九研による本件固定リングの販売利益は別紙販売利益等一覧表(本件固定リング)のとおりであり,本件板状部材の販売利益は別紙販売利益等一覧表(本件板状部材)のとおりであって,これらを合計すると337万0395円(税込み)となる。


本件回転円板
被告九研による本件回転円板の販売利益は1166万4000円(税込み)と推定される。ただし,被告らがこれを争っているため,予備的に,少なくとも62万6940円(税込み)以上の利益を得たと主張する。

(2)原告の主位的請求原因

原告の主位的請求原因(本件回転円板の販売利益を1166万4000円とするもの)を整理すると,次のとおりとなる。

販売利益
(ア)販売対象による区分
本件旧装置

1億2928万6800円(①)

本件新装置

1521万1040円(②)

本件各部品

337万0395円(③)

本件回転円板
合計

1166万4000円(④)
1億5953万2235円

(イ)不法行為時期による損害の区分
販売利益に相当する損害額(1億5953万2235円)を,催告の日である平成27年10月27日を基準として,以下の二つに区分する。【損害A】
本件旧装置(平成27年10月27日まで。同月31日の取引〔別紙販売利益等一覧表5の取引番号156の取引〕を除いたもの。)及び本件各部品に関する不法行為についての損害額は,1億3198万4195円となる。
(計算式)
129,286,800円(①)-673,000円(取引番号156)+3,370,395円(③)=131,984,195円
【損害B】
本件旧装置(取引番号156の取引のみ),本件新装置及び本件回転円板に関する不法行為についての損害額は,2754万8040円となる。
(計算式)
673,000円(取引番号156)+15,211,040円(②)+11,664,000円
(④)=27,548,040円

弁護士費用相当額の損害
弁護士費用相当額の損害は上記アの約10%相当額である1600万円を下らず,その内金846万7765円を請求する。なお,内訳は以下のとおりである。
【損害A】に対する弁護士費用相当額
【損害B】に対する弁護士費用相当額


1320万0000円
280万0000円

請求額

1億6800万円

(内訳)
特許法102条2項の計算に基づく損害賠償
1億5953万2235円
弁護士費用相当額の損害賠償額

846万7765円

請求額と遅延損害金起算日の関係
(ア)平成27年10月28日(催告の日の翌日)
下記金額の合計1億4045万1960円
【損害A】の損害額

1億3198万4195円

【損害A】に対する弁護士費用相当額の内金

846万7765円

(イ)平成28年12月18日(不法行為の最終日の翌日)
【損害B】の損害額

2754万8040円

(3)原告の予備的請求原因
原告の予備的請求原因(本件回転円板の販売利益を62万6940円とするもの)を整理すると,次のとおりとなる。

販売利益
(ア)販売対象による区分
本件旧装置

1億2928万6800円(①)

本件新装置

1521万1040円(②)

本件各部品

337万0395円(③)

本件回転円板
合計

62万6940円(④’)
1億4849万5175円

(イ)不法行為時期による損害の区分
販売利益に相当する損害額(1億4849万5175円)を,平成27年10月27日を基準として,以下の二つに区分する。
【損害A】
主位的請求原因における【損害A】と同じく,損害額は1億3198万4195円となる。
【損害B’】
本件旧装置(取引番号156の取引のみ),本件新装置及び本件回転円板に関する不法行為についての損害額は,1651万0980円となる。
(計算式)
673,000円(取引番号156)+15,211,040円(②)+626,940円(④’)=16,510,980円

弁護士費用相当額の損害
弁護士費用相当額の損害は上記アの約10%相当額である1485万円を請求する。なお,内訳は以下のとおりである。
【損害A】に対する弁護士費用相当額

1320万0000円

【損害B’】に対する弁護士費用相当額

請求額

165万0000円

1億6334万5175円

(内訳)
特許法102条2項の計算に基づく損害賠償
1億4849万5175円
弁護士費用相当額の損害賠償額

1485万0000円


請求額と遅延損害金起算日の関係
(ア)平成27年10月28日(催告の日の翌日)
下記金額の合計1億4045万1960円
【損害A】の損害額

1億3198万4195円

【損害A】に対する弁護士費用相当額の内金

846万7765円

(イ)平成28年12月18日(不法行為の最終日の翌日)
下記金額の合計2289万3215円
【損害B’】の損害額

1651万0980円

【損害A】に対する弁護士費用相当額の残金

473万2235円

【損害B’】に対する弁護士費用相当額

165万0000円

(4)被告らの主張に対する反論

アフターサービスの負担について
被告らは,据付・搬入作業やアフターメンテナンスなどのアフターサービスの負担を考慮すると,販売店の得た利益をもって原告の損害と推定することはできない旨主張するが,これは特許法102条2項の推定覆滅事由の主張として主張自体失当である。一般論として販売店がアフターサービスを行っている事実があることは認めるが,それを無償で行うかどうかの対応は販売店によって異なるのであり,上記事実によって,原告が被告九研によって販売された取引先へ販売できなかったことにはならず,被告らが得た販売利益を原告が得られなかったことにもならない。


寄与度について
被告らは,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与した割合は10%を超えるものではないなどと主張する。
しかし,本件旧装置の販売において本件固定リングを通常の固定リングの形状に変更して本件板状部材を取り付けられないようにした場合や,
本件板状部材を取り外した場合,当該装置は目詰まり防止の効果を奏することができず,顧客からは見向きもされず,販売することができない。また,本件新装置の販売において本件回転円板を従来型の回転円板の形状に戻した場合も同様である。
したがって,本件各発明の本件製品1及び2の販売に対する寄与度は100%である。

消滅時効について
被告らは,本訴提起の平成28年1月22日から3年前の時点である平成25年1月22日以前の販売分についての消滅時効を主張する。しかし,そもそも原告が被告九研に対して民法153条の催告を行ったのは平成27年10月27日の時点であって,被告らは起算点の主張を誤っている。
そして,被告九研は平成22年8月20日及び同月21日に展示会が開催された事実を主張するが,この事実によっても,同日以降の被告九研による本件製品1の譲渡行為を原告が知ったことにはならない。そもそも被告らは原告の現実の了知をうかがわせる具体的事情を主張立証していないし,平成19年9月20日及び平成20年3月1日の販売を原告が知っていたとの主張についても,証拠の裏付けを欠く点で失当である。

〔被告らの主張〕
(1)仕入価格及び販売価格等

本件旧装置
本件旧装置の仕入価格及び販売価格は,別紙販売利益等一覧表1ないし5の「被告ら第11準備書面の別紙『販売台数等一覧表1』における被告の主張」欄記載のとおりである。


本件新装置

本件新装置の仕入価格及び販売価格は,別紙販売利益等一覧表6及び7の「被告ら第11準備書面の別紙『販売台数等一覧表2』における被告の主張」欄記載のとおりである。

本件各部品(本件固定リング及び本件板状部材)
本件各部品(本件固定リング及び本件板状部材)の販売利益については争わない。


本件回転円板
被告九研による本件回転円板の販売数量は合計124個を超えることはなく,少なくとも,このうち81個分については被告九研に利益が発生していない。

(2)アフターサービスの負担について
生海苔異物除去機は,無償での搬入・据付作業やアフターメンテナンスなどのアフターサービスの負担を前提として販売がされるのであり,本件製品1及び2を販売することにより販売店が得る利益は,このような負担に対する対価をも含んだものである。
しかるに,原告は,単なる製造業者であり,アフターメンテナンス対応をするだけの人材を配置していないのであって,販売店と同様に,生産者に対して生海苔異物除去機を販売して利益を上げることはできない。
したがって,販売店である被告九研が得た利益をもって,原告の受けた損害と推定することはできない。
(3)寄与率について
選別ケーシング(固定リング)と回転円板との間に設けられたクリアランスを利用する生海苔異物除去装置自体は,本件各発明以前から用いられていたものである。そして,本件各発明により付加された機能は,従来のクリアランスを用いた生海苔異物除去装置における不具合(目詰まり・共回り)を防止することであり,生海苔異物除去装置の本来的な目的である異物の分離
除去を効率的に行うことができるという限度においてのみ,従来の生海苔異物除去装置と異なる。
また,本件各発明が効用を発揮するのは海苔の収穫期が終わりに近づいたごく短い期間のみであり,長くとも1か月程度の期間(収穫期全体の5分の1以下)しか効用を発揮するものではない。
そして,本件特許を侵害しているとされる本件回転円板及び本件固定リングについては,容易に変更可能なものである。
したがって,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与した割合は,10%を超えるものではない。
(4)消滅時効について
被告九研が本訴提起以前から本件製品1を販売している事実については,原告は以下のとおり認識していたものである。したがって,本訴提起の日である平成28年1月22日から3年前の平成25年1月22日以前の販売分については,不法行為に基づく損害賠償請求権は既に時効期間が満了しており,被告らはこの時効を援用する。

被告九研は従来から海苔機械類の販売を継続的に行ってきたものであり,原告において,被告九研が生海苔異物除去装置の販売をしている事実は当然に認識していた。


平成22年8月20日及び同月21日に被告九研において実施した展示会では,甲が本件製品1の展示を行っていた。この展示会には原告も参加しており,甲と原告のブースは横並びであった上,原告の当時の代表者であったEも来訪していた。


被告九研は平成19年9月20日にFに対して本件製品1を販売しているが,この事実は,当時,原告の子会社である訴外株式会社フルテック(以下「フルテック」という。)の担当者に伝わっていた。


被告九研は平成20年3月1日にGに対して本件製品1を販売してい
るが,この事実は,当時,原告の子会社であるフルテックの担当者に伝わっていた。
第4
1
当裁判所の判断
本件各発明の意義
(1)本件訂正明細書等には,次の記載がある。

発明の属する技術分野
・「本発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。」(段落【0001】)


従来の技術
・「この異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置としては,特開平8-140637号〔判決注:乙4公報〕の生海苔の異物分離除去装置がある。その構成は,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに異物排出口を設けたことにある。この発明は,比重差と遠心力を利用して効率よく異物を分離除去できること,回転板が常時回転するので目詰まりが少ないこと,又は仮りに目詰まりしても,当該目詰まりの解消を簡易に行えること,等の特徴があると開示されている。」(段落【0002】)


発明が解決しようとする課題
・「前記生海苔の異物分離除去装置,又は回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置においては,この回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であ
り,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等である。この状況を共回りとする。この共回りが発生すると,回転板の停止,又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の如く,最悪の状況となることも考えられる。」(段落【0003】)
・「前記共回りの発生のメカニズムは,本発明者の経験則では,1.生海苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが不均等のとき,2.生海苔が束状,捩じれ,絡み付き等の異常な状態で,生海苔が展開した状態でない,所謂,生海苔の動きが正常でないとき,3.生海苔が異物を取り込んでいる状態,生海苔に異物が付着する等の状態であって,生海苔の厚みが不均等であるとき,等の生海苔の状態と考えられる。」(段落【0004】)

課題を解決するための手段
・「請求項1の発明は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)を図ることにある。またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段落【0005】)
・「請求項1は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0006】)
・「請求項3の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防
止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段落【0009】)
・「請求項3は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0010】)
・「請求項4の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防止手段を,クリアランスへの容易な設置を図ることを意図する。」(段落【0011】)
・「請求項4は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0012】)

発明の実施の形態
・「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が導入される。この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに回転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成される異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このクリアランスを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海水は,選別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質
タンクに導かれる。」(段落【0019】)
・「このクリアランスに導かれる際に,生海苔の共回りが発生しても,本発明では,防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前記防止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(段落【0020】)
・「以上のような操作により,生海苔の分離が,極めて効率的にかつトラブルもなく行われることと,当該回転板,又は当該装置の停止等は未然に防止できる特徴がある。」(段落【0021】)

実施例
・「1は異物分離除去装置で,この異物分離除去装置1は,生海苔混合液をプールする生海苔混合液槽2と,この生海苔混合液槽2の内底面21に設けた異物分離機構3と,異物排出口4と,前記異物分離機構3の回転板34を回転する駆動装置5と,防止手段6を主構成要素とする。」(段落【0023】)
・「生海苔混合液槽2には,生海苔・海水を溜める生海苔タンク10と連通する生海苔供給管11が開口しており,この生海苔供給管11には供給用のポンプ12が設けられている。また分離処理された生海苔・海水をプールする良質タンク13を設ける。」(段落【0024】)・「異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,及び逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシング33に寸法差部Aを設けるようにして当該選別ケーシング33の噴射口32の上方に設けられた回転板34と,この回転板34の円周面34aと前記選別ケーシング33の円周面33aとで形成されるクリアランスSと,で構成されている。前記寸法差部Aは,選別ケーシング33の円周端面33bと回転板34の円周端面34bとの間で形成する。」
(段落【0025】)
・「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は,生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は,回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(段落【0026】)
・「尚,前記回転板34は,駆動装置5のモーター51に設けた回転軸52に昇降自在に設けられている。従って,逆洗槽14内の海水を,ホース15及び逆洗用ポンプ16を介して噴射口32より噴射して,この回転板34を押上げ,この押上げによりクリアランスSの寸法を拡げる構成となっている。」(段落【0027】)
・「図中17は連結口31に設けた分離された生海苔・海水を良質タンク13に導くホース,18はホース17に設けた吸込用ポンプをそれぞれ示す。」(段落【0028】)

発明の効果
・「請求項1の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,
突起・板体の突起物とし,突起物を,選別ケーシングの円周端面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,この請求項1は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴がある。」(段落【0029】)
・「請求項3の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有する。」(段落【0031】)
・「請求項4の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止手段を,クリアランスへの容易な設置が図れること等の特徴を有する。」(段落【0032】)
(2)以上の記載によれば,本件各発明の意義は次のとおりである。

本件各発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関するものである。
従来の生海苔異物分離除去装置として,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに異物排出口を設けたものがある。
しかし,この生海苔異物分離除去装置(又は,回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置)においては,この回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象,又は,生海苔等がクリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象が生じ,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する。
このような「共回り」が発生すると,回転板の停止又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等のような状況となることも考えられる。


本件各発明は,従来の生海苔異物分離除去装置の有する上記アの問題に鑑み,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくすこと,又は効率的・連続的な異物分離を図ること等を目的に,「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置」において,請求項1の発明(本件発明1)では,前記防止手段を「突起・板体の突起物」とし,これを前記選別ケーシン
グの円周端面に設ける構成とし,請求項3の発明(本件発明3)では,前記防止手段を「突起・板体の突起物」とし,これを回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とし,請求項4の発明(本件発明4)では,前記防止手段を「突起・板体の突起物」とし,これを選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成としたものである。

本件各発明によれば,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくすこと,又は,効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図られること,この防止手段を簡易かつ確実に適切な場所に設置でき,クリアランスへの容易な設置が図られること等の効果を奏する。

2
争点(1)(本件新装置が本件発明3の技術的範囲に属するか)について原告は,本件新装置の回転円板(本件回転円板)上に設けられた凸部Dが構成要件B’1の「突起・板体の突起物」に該当すると主張する一方,被告らはこれを争っている。
そこで,以下,この点について判断する。
(1)「突起・板体の突起物」の意義
一般に,「突起」には「ある部分が周囲より高く突き出ていること。また,そのもの。でっぱり。」(デジタル大辞泉〔甲32の1〕),「部分的につきでること。また,そのもの。」(広辞苑第4版〔甲32の2〕),「つき出たもの」(新選国語辞典第7版834頁〔甲32の3〕)という意味がある。
そして,構成要件B’1の文言上,「突起」及び「突起物」の形成手段等については,何らの限定もされていない。
そうすると,構成要件B’1の「突起・板体の突起物」にいう「突起」とは,周囲より高く突き出た部分,部分的に突き出ている部分ないし出っ張り
と判断される部分を意味するものであり,「突起物」とはそのような物(部分)自体を意味するものであると解するのが相当である。
(2)「突起・板体の突起物」の充足性

本件回転円板の構成について
証拠(甲21の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,本件回転円板の構成は,次のとおりであると認められる。なお,本件回転円板の客観的形状自体は当事者間に争いがないといえるから,別紙「本件新装置の構成」において原告の主張する図面のとおりであると認め,これに従い,便宜上,各構成の符号についても原告の主張する符号を採用する(ただし,原告の主張する符号を採用したこと自体は,直ちに構成要件該当性の判断に影響を及ぼすものではない。)。
(ア)回転円板3には,凸部D(又は凹部E)が1か所以上(図ではそれぞれ6,4,2か所のものを示すが,これに限定されない。)形成されている。
(イ)凸部Dは,側面部(端面)3a1(回転円板3の側面部(端面)3aの一部の面と共通である。),平面部3b1(回転円板3の表面3bの一部の面と共通である。),2か所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成される。
凹部Eは,回転円板3の表面3bの外周部分に,(周方向に所定長さ)×(側面部(端面)3aから径方向内側に所定長さ)×(表面3bから所定深さ)の領域に亘って凹入形成されており,底面部3b2,2か所の径方向側面部(側面壁)3c,側面部(端面)3dを有し,略扇形(a-b-c-d)を呈する。
(ウ)径方向側面部3cと側面部(端面)3a1の各面の交差によってエッジxが形成される。
(エ)凸部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの底面部3b2の高低差
(=回転円板側凹部Eの底面部3b2までの深さ)はエッジxの長さと略同一で,1mm弱ないし5mm程度(ただし,この数値範囲に限定するものではない。)である。
径方向側面部(側面壁)3c,及びエッジxによって,平面部3b1は底面部3b2との間で段差を形成し,凸部Dを突出させる。
(オ)平面部3b1と径方向側面部(側面壁)3cの各面が交差する場所には上部境界線yが,底面部3b2と径方向側面部(側面壁)3cの各面が交差する場所には下部境界線zが,それぞれ現れる。
(カ)凸部Dは,回転円板3を平面視した場合において,底面部3b2との間で直線状の境界線(上部境界線y又は下部境界線z。径方向側面部(側面壁)3cが底面部3b2に対して略垂直に形成される場合は両者はほぼ一致する。)を呈することによって,あたかも,回転円板3の表面外周側に略扇形(中心を回転円板3の中心と共通にする。)の薄板状部材が,半島状に取り付けられたような外観を呈する。
(キ)凸部Dの間に凹部E(又は,凹部Eの間に凸部D)が形成され,回転円板3の円周に沿う方向で見ると,凹部Eと凸部Dが,交互に現れ,両者の個数は必ず同数となる。

充足性について
上記アによれば,本件回転円板の凸部Dは,側面部(端面)3a1(回転円板3の側面部(端面)3aの一部の面と共通である。),平面部3b1(回転円板3の表面3bの一部の面と共通である。),2か所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成されるものであり,凸部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの底面部3b2の高低差はエッジxの長さと略同一の1mm弱ないし5mm程度であって,径方向側面部(側面壁)3c及びエッジxによって,平面部3b1は底面部3b2との間で段差を形成し,凸部Dを突出させている。

そうすると,凸部Dは,底面部3b2から円周面方向に部分的に突き出ており,出っ張りと判断される部分であるから,当該部分は「突起」に,そのような物自体は「突起物」に該当するものとして,全体として「突起・・・の突起物」に該当するということができる。
したがって,本件新装置の回転円板(本件回転円板)上に設けられた凸部D(側面部(端面)3a1,平面部3b1,2か所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成される部分)は,構成要件B’1の「突起・板体の突起物」に該当するというべきである。
(3)被告らの主張に対する反論

この点に関して被告らは,まず,構成要件B’1には凹凸についての記載はなく,本件訂正明細書等にも凹凸の構成を具体的に開示する説明がないから,「突起・板体の突起物」には凹凸は含まれず,したがって本件新装置は本件発明3の技術的範囲に属さないなどと主張する。しかし,構成要件B’1に凹凸の記載がないからといって,凹凸であれば直ちに「突起・板体の突起物」に該当しないということにはならない。すなわち,凹凸であっても,その構成が「突起」に該当する場合もあるのであって,このような場合には,たとえ凹凸の概念に含まれるものであっても,「突起・板体の突起物」に該当するというべきである。したがって,被告らの上記主張は採用することができない。


また,被告らは,本件訂正明細書等の図6及び図7においては凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通しているから,本件発明3における「突起・板体の突起物」に相当する凹凸部の構成は「凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していること」をいうものであり,本件新装置は本件発明3の技術的範囲に属さないなどと主張する。
しかし,構成要件B’1には「突起・板体の突起物」としか記載され
ていないのであって,これに相当する「凹凸部」がどのような構成であるのかを主張すること自体,失当であるといわざるを得ない。
念のため,被告らの上記主張についてみても,仮に図6及び図7に記載された「防止手段6」が長方形状であるとしても,図6及び図7は断面図なのであるから,長辺部分ではなく短辺部分が断面図に現れているとも解されるところである。かえって,本件訂正明細書等の図4及び図5においては,「防止手段6」は「長手方向」が「環状隙間における生海苔の移動方法に貫通」していないのであって,このことは被告らの上記主張と相容れない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。

さらに,被告らは,出願経過における乙7意見書の記載に照らせば,本件回転円板に設けられている「凹部」は本件発明3に含まれないなどと主張する。
しかし,原告は,本件回転円板の「凹部」ではなく「凸部D」が構成要件B’1の「突起・板体の突起物」に該当すると主張しており,当裁判所もそのように認定判断したところであって(上記(2)参照),被告らの上記主張はこの認定判断を左右するものではない。
また,仮に被告らの上記主張を「凸部D」が構成要件B’1の「突起・板体の突起物」に含まれない旨の主張と解したとしても,乙7意見書の記載は,乙1考案においては環状枠板部側に幅広の凹部を設けて,そこから生海苔異物を通過させるため,「凹部(331)から,異物が吸込まれて問題が発生」(乙7意見書)するのに対し,本件各発明は凹部を設けて生海苔異物を通過させるという構成を有していないため,「このような問題は,発生しません。」(同)と説明したものにすぎない。そして,本件回転円板の「凸部D」の間に形成された「凹部E」は,そこから生海苔異物を通過させるというものではない。

そうすると,乙7意見書の記載は,本件回転円板に設けられている「凸部D」のような構成を排除したものということはできない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。

加えて,被告らは,本件回転円板における「凹部E」の形成は「凸部D」の形成と同義ではなく,かつ,「凹部E」と「凹部E」の間に形成される非凹部は「凸部D」に相当しないなどと主張する。
しかし,被告らの上記主張の趣旨は必ずしも明らかではなく,本件回転円板の客観的形状からすれば,前記(2)アに説示したとおり,本件回転円板には「凹部E」と「凸部D」が交互に現れているというべきである。なお,被告らは,本件回転円板では円板の表面に「凹部E」を凹入形成することにより,結果として「凹部E」と「凹部E」の間に「凸部D」が残るにすぎないなどとも説明するが,そもそも構成要件B’1には「突起・板体の突起物」の製造方法を限定する記載はないのであって,被告らの上記説明は構成要件B’1の該当性の判断を左右するものではない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。


最後に,被告らは,①仮に「凸」部分が「突起・板体の突起物」に含まれる場合があるとしても,そのためには,生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果),生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって,共回りの発生をなくし,クリアランスの目詰まりをなくすものでなければならない,②この点,本件回転円板には防止効果及び矯正効果がなく,共回りの発生をなくすものでもないなどと主張する。
しかし,そもそも構成要件B’1には「突起・板体の突起物」と記載されているだけで,防止効果及び矯正効果によって共回りの発生及びクリアランスの目詰まりをなくす機能を有する場合に限って「突起・板体
の突起物」に該当するなどといった限定的な記載は文言上見当たらないし,ましてや,「凹凸」の「凸」部分が「突起・板体の突起物」に該当する場合についてのみ上記各機能を要するものとするような記載も見当たらない。
そうすると,上記①の主張はその前提を欠くから,その余の点(上記②)について判断するまでもなく,被告らの主張は採用することができない。
なお,念のため上記②についても判断するに,原告の主張によれば,本件回転円板の凸部Dは生海苔の共回りを防止する手段であり,正常でない生海苔や異物は凸部Dの略垂直形状の側面壁3c(特にエッジx)との衝突でかき出されたり切除されたりし,また,正常でない生海苔や異物の隙間Cへの食い込みは上記側面壁3cによって遮断され,生海苔の動きは矯正されるというのである。
これに対し,被告らは上記のとおり本件回転円板の防止効果及び矯正効果を否定するが,他方で,凹部Eの円周方向における両端縁(別紙「本件新装置の構成」の〔被告らの主張〕の【図4-3】における「a-f」及び「d-e」)が「生海苔(海苔の原藻)を切断するエッジの役割を果たす」ものであり,「これによって,クリアランス3に生海苔(海苔の原藻)や異物が詰まって回転円板5の回転運動が困難になる,あるいはクリアランス3を介した生海苔混合液の吸引が困難になるといった事態の発生が防止され,より大量の生海苔混合液から確実に異物を除去しつつ,大量の生海苔混合液に対して効率よく異物分離処理を行うことが可能になる」(乙22からの抜粋)ことは認めている。
そして,「凹部Eの円周方向における両端縁」とは凸部Dの縁でもあることからすると,被告らの主張によっても,本件回転円板の凸部Dは,生海苔を切断するエッジの役割を果たすものであり,これによって「生
海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況」(本件訂正明細書等の段落【0003】)すなわち共回りを防止しているというべきである。
したがって,被告らの主張は,この点でも採用することができない。(4)小括
以上のとおり,本件新装置の回転円板(本件回転円板)上に設けられた凸部Dは,構成要件B’1の「突起・板体の突起物」に該当する。
そして,本件新装置が本件発明3の構成要件B’1以外の各構成要件を充足することは,当事者間に争いがない。
したがって,本件新装置は,本件発明3の技術的範囲に属するというべきである。
3
争点(2)ア(未完成発明,実施可能要件違反,サポート要件違反又は明確性要件違反)について
被告らは,本件訂正明細書等にはどのような構成の凹凸が本件各発明の作用効果を発揮するものかについては全く開示されておらず,本件各発明の目的を達成することができないから,本件各発明に係る特許には未完成発明(特許法29条1項柱書き),実施可能要件違反(同法36条4項),サポート要件違反(同条6項1号)及び明確性要件違反(同項2号)の各無効理由があると主張する。
しかし,本件訂正明細書等には,本件各発明においては生海苔の共回りを防止する手段を「突起・板体の突起物」とすることが記載されており(段落【0006】,【0010】及び【0012】),なおかつその防止手段の例が図とともに記載されている(段落【0026】,図3ないし8)。このような各
記載内容に照らせば,本件各発明は産業上利用することができる完成された発明であって,かつ,本件訂正明細書等が,当業者において,本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており,その内容は明確であって,さらに,本件訂正明細書等の発明の詳細な説明の記載により,当業者が本件各発明の課題を解決することができると認識できる範囲のものであると認めるのが相当である。
そうすると,本件各発明に係る特許には,未完成発明の無効理由があるとはいえないのはもちろん,実施可能要件違反,サポート要件違反及び明確性要件違反の各無効理由があるともいえない。
したがって,争点(2)アに係る被告らの主張は,理由がない。
4
争点(2)イ(拡大先願)について
(1)乙1明細書等の記載内容
本件特許の出願日より前の実用新案登録出願であって本件特許の出願後に実用新案掲載公報の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書及び図面である乙1明細書等には,次の記載がある。

産業上の利用分野
・「この考案は生海苔の異物(ゴミ,エビ,アミ糸等,以下同じ)分離除去装置に関し,生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものである。」(段落【0001】)


従来の技術
・「従来におけるこの種の異物分離除去装置にあっては,混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し,前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた,
回転板を回転させることによって,生海苔よりも比重の大きい異物を遠心力によって前記クリアランスよりも環状枠板部側,即ち,タンクの底部に集積し,生海苔のみを水とともに前記クリアランスを通過して下方に流している結果,前記クリアランスには異物が詰まりにくく,よって,洗浄装置等を別途に設ける必要がなく,装置の維持がしやすいとともに取扱いが簡易になり,生海苔の異物分離除去作業の作業能率を向上させることができるものであった(特開平8-140637号)。」(段落【0002】)

考案が解決しようとする課題
・「しかしながら,かかる従来の異物分離除去装置にあっても,前記クリアランスに異物の詰まる場合が稀に生じ,よって,この詰まった異物を除去しなければならないという不都合を有した。」(段落【0003】)
・「この考案の課題はかかる不都合を解消することである。
考案者は,前記クリアランスに詰まった異物は,茎部の付いている生海苔(以下,「生海苔異物」と記す)が大部分であること,および,このような生海苔異物も海苔製品の原料として使用不可能でないということに着目し,鋭意研究した結果,本考案を完成した。」(段落【0004】)


課題を解決するための手段
・「この考案に係る生海苔の異物分離除去装置においては,混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し,前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において,前記環状枠板部の内周縁に所要数
の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅としたため,前記クリアランスに詰まった生海苔異物は前記回転板によって引きずられ前記凹部の位置に達した際に,前記凹部におけるクリアランスを通過することができるものである。」(段落【0005】)

考案の実施の形態
・「図1はこの考案に係る生海苔の異物分離装置の正面断面図,図2は図1におけるII-II線断面図,図3は図1におけるIII部拡大図,図4は図3に相当する他の実施例の図である。」(段落【0006】)・「次に,図1および図3において,231は第一環状固定板23における凹部,331は第二環状固定板33における凹部であり,前記第一環状固定板23及び前記第二環状固定板23の内周面に形成されている。この凹部231,331におけるクリアランスCは他の部分よりも広幅となっている。なお,前記凹部231,331における前記クリアランスCの幅は前記生海苔異物における茎部(切断されている)が通過する程度(約0.2~0.3mm位)が適している。」(段落【0012】)・「なお,前記底板11とこの第一環状固定板23及び第二環状固定板33とがこの考案の「環状枠板部」を構成する。」(段落【0013】)・「次にこの異物分離除去装置Dの作動を説明する。」(段落【0019】)
・「まず,原料供給管53を介して生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)を混合液タンク10内に供給する。そして,モータ21,31を駆動させ,第一回転板26及び第二回転板36を回転させる。すると,第一分離除去具20および第二分離除去具30において,混合液タンク10内の混合液が渦を発生し,混合液中の小異物は第一回転板26及び第二回転板36の遠心力によってクリアランスCを越
えて第一環状固定板23又は第二環状固定板33側に集積する。このため,生海苔のみが水とともに前記クリアランスCを通過して下方に流れる。このとき,第一回転板26及び第二回転板36は回転しているため,前記クリアランスCに生海苔は詰まりにくいものである。なお,稀にではあるが,このクリアランスCの狭幅部(凹部261,361の存在しない位置のクリアランスCの部分)に所謂,生海苔異物が詰まる場合がある。この場合,詰まった生海苔異物は,前記回転板26,36に引きずられてクリアランスC内を移動し,前記凹部261,361の位置に達した際に,前記凹部261,361におけるクリアランスCを通過する。」(段落【0020】)

考案の効果
・「この考案に係る生海苔の異物分離除去装置は,混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し,前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において,前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅としたため,前記クリアランスに詰まった生海苔異物は前記回転板によって引きずられ前記凹部の位置に達した際に,前記凹部におけるクリアランスを通過することができるものである。」(段落【0023】)・「よって,この異物分離除去装置を使用すれば,前記生海苔異物は前記クリアランスに詰まることはないため生海苔の異物分離除去作業の作業能率を向上させることができるとともに従来不要としていた所謂生海苔異物を海苔製品の原料として使用できるため海苔製品の歩留りを従来よりも向上させることができる。」(段落【0024】)


図面
・図1

・図2

・図3

・図4

(2)乙1考案
上記(1)の記載によれば,乙1明細書等には,以下の乙1考案が開示されているものと認められる。
「混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し,前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において,前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅とすることによって,クリアランスに詰まる異物の大部分を占める茎部の付いている生海苔が前記回転板によって引きずられ上記凹部の位置に達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができることを特徴とする生海苔の異物分離除去装置」
(3)本件各発明と乙1考案との対比

上記(2)のとおり,乙1考案は,環状枠固定部の内周縁に「凹部」を設けることによってクリアランスを部分的に幅広とし,当該幅広としたクリアランスから生海苔異物の大部分を占める茎部の付いた生海苔を通過させ,これによってクリアランスの目詰まりという課題を解消するというものであって,本件各発明のように,「突起・板体の突起物」をクリアランス又は回転板の円周面若しくは選別ケーシングの円周面や円周端面に設け,同突起物が,生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを防止するという技術思想は記載されていない。そうすると,乙1考案における「凹部」は,本件各発明の構成要件B1,B’1及びB”1にいう「突起・板体の突起物」とは異なるものであり,乙1考案は本件各発明の構成要件A3の「防止手段」の構成を備えていないものというべきである。

したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件各発明と乙1考案とは相違する。

この点に関して被告らは,①乙1明細書等には【課題を解決するための手段】及び【考案の効果】において共回りの発生を防止することができるとの作用効果が明記されているから,考案の課題部分に共回りを防止することが文言として記載されていなくても,共回りを防止する目的が含まれていると解される,②乙1考案の出願当時,共回り現象が発生していたことを当業者が広く認識していた,などと主張する。
しかし,上記①について,被告らの引用する乙1明細書等の記載というのは「前記クリアランスに詰まった生海苔異物は前記回転板によって引きずられ前記凹部の位置に達した際に」(乙1明細書等の段落【0005】)及び「前記クリアランスに詰まった生海苔異物は前記回転板によって引きずられ前記凹部の位置に達した際に」(同段落【0023】)というものにすぎない。
また,上記②についても,被告らの引用する宣伝広告(乙8ないし11)には「目づまり防止付」との記載があるにすぎない。そして,被告らの引用する公開特許公報(甲27の6の1,甲27の18の1,甲27の10)は,乙1考案の出願当時公然知られたものではない上,同様に,クリアランスの目詰まりに関する記載があるにすぎない。
これに対し,本件各発明にいう「共回り」とは,「生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等」(本件訂正明細書等の段落【0003】)であって,この記載によれば,共回りは,クリアランスの目詰まりの原因にはなり得るものの,クリアランスに目詰
まりを起こすことが認識されていたことをもって直ちに共回りという現象が認識されていたことにはならない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。

また,被告らは,本件訂正明細書等の記載に照らせば,本件訂正明細書等にいう「凹凸」や「切り溝」とは乙1考案における「凹部」と同一であるなどと主張する。
しかし,本件各発明は「突起・板体の突起物」を共回り防止手段とするものであって,「凹凸」や「切り溝」であれば直ちに「突起・板体の突起物」に該当するというわけではない。被告らの上記主張は,この点で前提を欠くものといわざるを得ない。
そして,本件各発明にいう「突起・板体の突起物」とは,周囲より高く突き出た部分,部分的に突き出ている部分ないし出っ張りと判断される部分自体を指すものであるのに対し(前記2(1)参照),乙1考案における「凹部」とは,部分的にクリアランスの幅を広げるものにすぎず,周囲より高く突き出た部分等ではない。
したがって,いずれにせよ,被告らの上記主張は採用することができない。


加えて,被告らは,原告製の生海苔異物除去装置においても乙1考案の「凹部」に相当する「鉛直溝」が設けられており,これは原告自身が乙1考案の構成に共回り防止効果が存在することを認めている証左であるなどと主張する。
しかし,被告らの上記主張の趣旨は必ずしも明らかではなく,仮に原告製の生海苔異物除去装置に被告ら主張の「鉛直溝」が設けられていたとしても,これが共回り防止効果を奏するものであるかも明らかとはいえない上,そもそも,被告らの主張する「鉛直溝」の形態は,必ずしも「突起・板体の突起物」すなわち周囲より高く突き出た部分であるとは
いい難い。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
(4)小括
以上によれば,本件各発明と乙1考案とが実質的に同一であるということはできない。
したがって,争点(2)イに係る被告らの主張は理由がない。
5
争点(2)ウ(乙4発明及び周知技術による進歩性欠如)について(1)乙4公報の記載内容
本件特許の出願日よりも前に公開された乙4公報には,次の記載がある。ア
特許請求の範囲
・「【請求項1】筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。」・「【請求項3】筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設け,更に,前記第一回転板の下方に第二回転板を軸心を同じくして回転可能に設置し,この第二回転板の周縁部を前記第一回転板と前記環状枠板部内周縁との間のクリアランスの下方に配置し,この第二回転板を前記クリアランスを通過する生海苔と水との混合液の通過速度以上の周速度で回転させることを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。」


産業上の利用分野

・「この発明は生海苔の異物(ゴミ,エビ,アミ糸等,以下同じ)分離除去装置に関し,生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものである。」(段落【0001】)

従来の技術
・「従来におけるこの種の異物分離除去装置は,分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け,前記分離ドラムを軸心を中心として回転させながらこのドラム内に生海苔混合液を供給し,前記分離孔を通過させることによって,前記生海苔混合液中の異物を分離除去していた(特開平6-121660号)。」(段落【0002】)


発明が解決しようとする課題
・「しかしながら,かかる従来の異物分離除去装置にあっては,生海苔混合液中の異物をこの分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するものであるため,当該分離孔の周縁に異物が蓄積し,目詰まりが発生する結果,当該分離除去を能率良く行うためには,目詰まり噴射水によって洗浄するという洗浄装置を別途に設けなければならないという不都合を有した(特開平6-121660号)。」(段落【0003】)・「この発明の課題はかかる不都合を解消することである。」(段落【0004】)


課題を解決するための手段
・「前記課題を達成するために,この発明に係る生海苔の異物分離除去装置においては,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたものである。」(段落【0005】)

・「また,前記第一回転板の下方に第二回転板を軸心を同じくして回転可能に設置し,この第二回転板の周縁部を前記第一回転板と前記環状枠板部内周縁との間のクリアランスの下方に配置し,この第二回転板を前記クリアランスを通過する生海苔と水との混合液の通過速度以上の周速度で回転させることもできる。」(段落【0007】)

作用
・「この発明に係る生海苔の異物分離除去装置は上記のように構成されているため,第一回転板を回転させると混合液に渦が形成されるため生海苔よりも比重の大きい異物は遠心力によって第一回転板と前記環状枠板部とのクリアランスよりも環状枠板部側,即ち,タンクの底隅部に集積する結果,生海苔のみが水とともに前記クリアランスを通過して下方に流れるものである。このとき,第一回転板は回転しているため,前記クリアランスには生海苔が詰まりにくいものである。」(段落【0009】)
・「また,前記第一回転板の下方に第二回転板を軸心を同じくして回転可能に設置し,この第二回転板の周縁部を前記第一回転板と前記環状枠板部内周縁との間のクリアランスの下方に配置し,この第二回転板を前記クリアランスを通過する生海苔と水との混合液の通過速度以上の周速度で回転させれば,前記クリアランスにおける前記生海苔と水との混合液の通過を促進させることができる。」(段落【0011】)


実施例
・「図1~図3において,Dは生海苔の異物分離除去装置,10はこの装置Dのバッチ水槽,20はこのバッチ水槽10にフレーム30を介して設置された異物を分離除去するための第二分離除去具である。バッチ水槽10は選別された生海苔及び水を収容するためのものであり,その底部にはキャスタ101,101,…が設置されている。なお,102
は液面レベルセンサであり,この異物分離除去装置Dの自動運転をコントロールするためのものである(バッチ水槽10内において異物の分離された混合液が所定量に達したときに異物分離除去装置Dの作動を停止させる)。」(段落【0013】)
・「次に,11は第一モータ,12は第二モータであり,各々ブラケット13を介して前記バッチ水槽10の外側面に設置されている。」(段落【0014】)
・「次に,前記第二分離除去具20は,前記フレーム30に螺子止めされた円板状の底板部21とこの底板部21の周縁に立設された周筒部22とこの周筒部22の上端内周縁に連設された環状枠板23とから構成されている。24は環状固定板であり,前記環状枠板23の内周縁に螺子止めされている。この環状固定板24は前記環状枠板23の内周側に延出し,後記第一回転板51の外周縁とのクリアランスCを調節する(図4を参照のこと)。なお,この環状枠板23と環状固定板24とがこの発明の「環状枠板部」を構成する。又,25は第二分離除去具20内に設置された管状の排出路であり,その上端は前記環状枠板23に開口するとともにその下端は前記周筒部22に開口している。この周筒部22の開口にはコック261を有する排出管26が連設されている。更に,27は第二分離除去具20内に設置された管状の連通路であり,その上端は前記環状枠板23に開口するとともにその下端は前記周筒部22に開口している。この周筒部22の開口には上方に延びる連通管28が連設されている。この連通管28の機能については後記する。29は流出口であり(図2参照のこと),前記周筒部22に設置され,異物を除去された混合液を前記バッチ水槽11に流れ落とす。」(段落【0015】)
・「また,61は円筒状の混合液連設タンクであり,前記第二分離除去
具20の環状枠板23の外周縁に外嵌めされている。また,この連設タンク61の上端縁には前記第二分離除去具20と同じ構成の第一分離除去具70が配置されている。但し,環状固定板74と第一回転板81とのクリアランスSは前記第二分離除去具20よりも大であり,また,分離した生海苔と水との混合液を第二分離除去具20上に落下させる必要上,第二分離除去具20における底板部21の代わりにガイド筒77が設けられている。なお,第二分離除去具20における第二回転板52に相当するものは図示されていないが設置しても構わない。第一分離除去具70において,72は周筒部,73は環状枠板,75は管状の排出路,76はコック761を有する排出管である。」(段落【0020】)・「90は円筒状の混合液主タンクであり,前記第一分離除去具70の環状枠板73の外周縁に外嵌めされている。なお,この主タンク90及び/又は前記連設タンク61はこの発明の「混合液タンク」に相当する。91は原料供給管であり,前記主タンク90の上端縁に設置されている。この原料供給管91を介して原料液(原生海苔と水との混合物)を前記主タンク90内に供給する。また,図示はしないが,水供給管も前記主タンク90の上端縁に設置されている。なお,92は液面レベルセンサであり,前記主タンク90の上端縁に設置されている。この液面レベルセンサ92はタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内への混合液および水の供給をコントロールする(タンク内において混合液が所定量に達したときに混合液又は水の供給を停止する)。」(段落【0021】)
・「次にこの異物分離除去装置Dの作動を説明する。」(段落【0022】)
・「まず,原料供給管91を介して生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)を主タンク90内に供給する。そして,第一モ
ータ11を駆動させることによって第一分離除去具70の第一回転板81および第二分離除去具20の第一回転板51を回転させるとともに第二モータ12を駆動させることによって第二分離除去具20の第二回転板52を回転させる。すると,第一分離除去具70において主タンク90内の混合液が渦を発生し,混合液中の大異物は第一回転板81の遠心力によってクリアランスSを越えて環状枠板73側に集積する。このため,生海苔のみが水とともに前記クリアランスSを通過して下方に流れる。このとき,第一回転板81は回転しているため,前記クリアランスSに生海苔は詰まりにくいものである。また,小異物は生海苔および水とともに前記クリアランスSを通過して下方に流れ,連設タンク61内に混合液として供給される。」(段落【0023】)
・「すると,第二分離除去具20において連設主タンク61内の混合液が渦を発生し,混合液中の小異物は第一回転板51の遠心力によってクリアランスCを越えて環状枠板23側に集積する。このため,生海苔のみが水とともに前記クリアランスCを通過して下方に流れる。このとき,第一回転板51は回転しているため,前記クリアランスCに生海苔は詰まりにくいものである。また,同時に,第二回転板52も前記クリアランスCを通過する生海苔と水との混合液の通過速度以上の周速度で回転しているため,前記クリアランスCを通過する生海苔と水との混合液の通過は促進される。」(段落【0024】)
・「異物の除去された混合液は第二分離除去具20の流出口29をバッチ水槽11に流れ落とされる。また,除去された異物を排出する場合は,主タンク61へ混合液を供給するのを停止して,水のみを供給してタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内の混合液比率を薄くしてタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内に生海苔が存在していないことを確認した後,コック261,761を開いて排出管26,
76から大小の異物をそれぞれ排出する。」(段落【0025】)ク
発明の効果
・「この発明に係る生海苔の異物分離除去装置においては,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたため,第一回転板を回転させると混合液に渦が形成されるため生海苔よりも比重の大きい異物は遠心力によって第一回転板と前記環状枠板部とのクリアランスよりも環状枠板部側,即ち,タンクの底隅部に集積する結果,生海苔のみが水とともに前記クリアランスを通過して下方に流れるものである。このとき,第一回転板は回転しているため,前記クリアランスには生海苔が詰まりにくいものである。」(段落【0028】)
・「よって,この異物分離除去装置を使用すれば,異物が前記クリアランスに詰まりにくいため,従来のように目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がない結果,装置の維持がしやすいとともに取扱いが簡易になり,この結果,生海苔の異物分離除去作業の作業能率を向上させることができる。」(段落【0029】)
・「また,前記第一回転板の下方に第二回転板を軸心を同じくして回転可能に設置し,この第二回転板の周縁部を前記第一回転板と前記環状枠板部内周縁との間のクリアランスの下方に配置し,この第二回転板を前記クリアランスを通過する生海苔と水との混合液の通過速度以上の周速度で回転させれば,前記クリアランスにおける前記生海苔と水との混合液の通過を促進させることができる。」(段落【0031】)


図面

・図1

・図2

・図3

・図4

(2)乙4発明の意義
上記(1)の記載によれば,乙4公報には,以下の乙4発明が開示されているものと認められる。
「混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し,前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海
苔の異物分離除去装置において,前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅とすることによって,クリアランスに詰まる異物の大部分を占める茎部の付いている生海苔が前記回転板によって引きずられ上記凹部の位置に達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができることを特徴とする生海苔の異物分離除去装置」
(3)本件各発明と乙4発明との対比
上記(2)の認定によれば,本件各発明と乙4発明の一致点及び相違点は,それぞれ以下のとおりであると認められる。

一致点
生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置である点


相違点
本件各発明が,「防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける(本件発明4)構成とした,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を具備するのに対して,乙4発明はかかる防止手段を具備していない点
(4)乙2公報の記載内容

本件特許の出願日よりも前に公開された乙2公報には,次の記載がある。(ア)実用新案登録請求の範囲
・「【請求項1】所要数の回転ローラーをスリットを介して並列に配置し,これらのスリットに,生海苔調合液を通過させることによって,前記生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の異物分離装置において,
前記回転ローラーの外周面に螺旋溝を形成したことを特徴とする生海苔の異物分離装置。」
・「【請求項2】隣り合う前記回転ローラーの螺旋溝をずらしたことを特徴とする請求項請求項1の生海苔の異物分離装置。」
(イ)産業上の利用分野
・「この考案は生海苔の異物(ゴミ,エビ,アミ糸等,以下同じ)分離装置に関し,生海苔調合液(生海苔と塩水又は真水とを適宜濃度に調合したもの,以下同じ)から異物を分離する際に使用されるものである。」(段落【0001】)
(ウ)従来の技術
・「従来におけるこの種の異物分離装置は,所要数のローラーをスリットを介して並列に配置し,これらのスリットに,生海苔調合液を通過させることによって,前記生海苔調合液中の異物を分離除去していた。」(段落【0002】)
(エ)考案が解決しようとする課題
・「しかしながら,かかる従来の異物分離装置にあっては,スリットの上流側に分離除去された異物が詰まりやすく,この結果,異物の分離除去の作業能率を向上させにくいという不都合を有した。」(段落【0003】)
・「この考案の課題はかかる不都合を解消することである。」(段落【0004】)
(オ)課題を解決するための手段
・「前記課題を達成するために,この考案に係る生海苔の異物分離装置においては,所要数の回転ローラーをスリットを介して並列に配置し,これらのスリットに,生海苔調合液を通過させることによって,前記生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の異物分離装置において,前
記回転ローラーの外周面に螺旋溝を形成したものである。」(段落【0005】)
・「なお,隣り合う前記回転ローラーの螺旋溝をずらすこともできる。」(段落【0006】)
(カ)作用
・「この考案に係る生海苔の異物分離装置は上記のように構成されているため,分離除去されてスリットの上流側に留まった異物は,螺旋溝の回転に従ってローラーの軸方向に沿って移動し,当該異物はスリットから除去され,よって当該スリットは常時空間を確保することができる。」(段落【0007】)
・「なお,隣り合う前記回転ローラーの螺旋溝をずらせば,溝部におけるスリット幅を狭く維持することができる結果,通過可能な異物の大きさを最小に押さえることができる。」(段落【0008】)
(キ)実施例
・「図1および図2において,10,10は異物分離装置Dの回転ローラーであり,軸11,11を介して回転可能に設置されたいる。この回転ローラー10,10はスリット(約0.3~0.5mm位)Sを介して水平方向に沿って並列に配置され,適宜駆動手段Mによって同方向に回転する(図2の矢印を参照のこと)。原料海苔(裁断され海水又は真水によって適度な濃度に調整された生海苔,この考案の「生海苔調合液」に相当する)は,回転ローラー10,10のスリットSを通過する際に,含んでいる異物Bを除去される。この場合,回転ローラー10,10は同方向に回転しているため,スリットSの上流側の異物は回転ローラー10,10と逆方向に回転して弾き跳ばされやすい。」(段落【0010】)
・「次に,20,20は螺旋溝であり,前記回転ローラー10,10の外周面に形成されている。この螺旋溝20,20の深さは異物が通過しない程の0.1
~0.2mmでよい。この螺旋溝20,20は回転ローラー10,10の回転に沿って螺旋回転をするため,前記スリットSの上流側に留まり弾き跳ばされなかった異物B回転ローラー10,10の軸方向に沿って移動し,適宜手段によって回転ローラー10,10外に排除される。
このため,スリットSは常に空間を維持することができる。」(段落【0011】)
(ク)図面
・図1

・図2


乙2公報に記載された技術的事項
上記アによれば,乙2公報には,以下の技術的事項が記載されているものと認められる。なお,被告らは,これらが周知技術であると主張す
るが,これを認めるに足りる証拠はない。
「生海苔の異物(ゴミ,エビ,アミ糸等)分離装置に関し,生海苔調合液(生海苔と塩水又は真水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものに関するものであって,
従来におけるこの種の異物分離装置は,所要数のローラーをスリットを介して並列に配置し,これらのスリットに,生海苔調合液を通過させることによって,生海苔調合液中の異物を分離除去していたが,かかる従来の異物分離装置にあっては,スリットの上流側に分離除去された異物が詰まりやすく,その結果,異物の分離除去の作業能率を向上させにくいという不都合を有していたため,かかる不都合を解消するために,所要数の回転ローラーをスリットを介して並列に配置し,これらのスリットに生海苔調合液を通過させることによって,生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の異物分離装置において,回転ローラーの外周面にらせん溝を形成した。
これにより,分離除去されてスリットの上流側にとどまった異物は,らせん溝の回転に従ってローラーの軸方向に沿って移動してスリットから除去され,当該スリットは常時空間を確保することができるという作用効果を奏する。」
(5)乙3公報の記載内容

本件特許の出願日よりも前に公開された乙3公報には,次の記載がある。(ア)産業上の利用分野
・「本発明は,生海苔のゴミ取り装置に関するものである。」(段落【0001】)
(イ)課題を解決するための手段
・「そこで,本発明では,所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを一定の重量割合で調合する調合部と,同調合部により調合された生海苔
と塩水との調合液を吸込む吸込流路部と,同吸込流路部に設けて,調合液中のゴミを濾過する濾過部とを具備し,濾過部には一定細幅の濾過用スリットを形成したことを特徴とする生海苔のゴミ取り装置を提供せんとするものである。」(段落【0005】)
(ウ)実施例
・「濾過部形成体25は,図1,図2,及び図4~図6に示すように,濾過部形成枠体26の上側後面26aの近傍において,流路形成筒体20の左右側壁20a,20a間に,筒状の支軸25aを横架し,同支軸25aに矩形枠状の形成体本体25bの上端縁を一体的に取付けると共に,支軸25a中に,外周面に雄ネジ部を形成したスリット成形体支軸25cを挿通すると共に,流路形成筒体20の左右側壁20a,20a間に横架し,同スリット形成体支軸25cに,四個の縦長矩形板状のスリット形成体25d,25d,25d,25dをそれぞれボス部25e,25e,25e,25eを介して左右幅方向に間隔を開けて螺着し,各スリット形成体25d,25d,25d,25dを形成体本体25b内に形成したスリット形成体配設用溝部31内にて左右幅方向に摺動自在に配置して,各スリット形成体25e,25e,25e,25eの側端面間にそれぞれ濾過用スリット32,32,32を形成している。」(段落【0019】)・「図8は,第3実施例としての濾過部形成体25を示しており,同濾過部形成体25は,基本構造を前記第2実施例としての濾過部形成体25と同様に構成しているが,濾過用スリット32に半円弧状の拡幅部32aを千鳥状に形成している。」(段落【0034】)
・「このようにして,ゴミの濾過機能を良好に確保したまま,生海苔の通過量を増大させて,濾過効率を向上させることができるようにしている。」(段落【0035】)
・「なお,拡径部32aの大きさは,濾過用スリット32の幅に比例させて大きく形成することができる。」(段落【0036】)

(エ)図面
・図1

・図4

・図8


乙3公報に記載された技術的事項
上記アによれば,乙3公報には,以下の技術的事項が記載されているものと認められる。なお,被告らは,これらが周知技術であると主張するが,上記(4)イと同様,これを認めるに足りる証拠はない。
「生海苔のゴミ取り装置に関するものであって,
従来,乾燥海苔の製造に当たり,乾燥海苔には,生海苔に混入しているゴミが付着している可能性があるため,ゴミ検出装置によりゴミの検出を行い,ゴミが検出されたものはゴミ取り作業工程に回すようにしていたが,同工程で,乾燥海苔に付着したゴミを手作業により取り除いていたために,手間と労力を要して,作業能率が悪いという問題があったため,所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを一定の重量割合で調合する調合部と,同調合部により調合された生海苔と塩水との調合液を吸い込む吸込流路部と,同吸込流路部に設けて調合液中のゴミをろ過するろ過部を具備し,ろ過部には一定の細幅のろ過用スリットを形成した。そして,所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを,生海苔がろ過用スリット中を通過しやすい程度の重量割合で調合して,同調合液を吸込流路部に吸い込むことにより,その途中でろ過部のろ過用スリットにより調合液中のゴミを確実にろ過することができ,付着ゴミの検出や,手
作業によるごみ取り作業の手間を省くことができるという作用効果を奏する。」
(6)相違点の容易想到性

前記(1)で引用した乙4公報の各記載によれば,乙4発明は,従来の異物分離除去装置(特開平6-121660号・甲25)が,分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け,生海苔混合液を回転する分離ドラム内に供給し,分離孔を通過させることによって,生海苔混合液中の異物を分離ドラムの分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するという方式(以下「従来方式」という。)であったため,分離孔の周縁に異物が蓄積し,目詰まりが発生するという課題を有するものであったことから,当該課題を解決することを目的とし,従来の異物分離除去装置における異物分離除去の方式を変更して,固定部材(環状枠板部)とこの内周縁内に内嵌めされた回転部材(第一回転板)との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を,回転部材(第一回転板)の回転による遠心力によって,円周方向(クリアランスよりも環状枠板部側)に追いやり,生海苔のみを水とともにクリアランスを通過させるようにしたもの(以下「回転板方式」という。)であり,当該方式を採用したことにより,異物がクリアランスに詰まりにくくなり,従来の異物分離除去装置のように目詰まり洗浄装置等を別途設けることを不要としたものと認められる。
これに対し,本件各発明は,前記1(1)及び(2)のとおり,乙4発明を従来技術とし,その有する課題の解決を目的として発明されたものであって,回転板方式による異物分離除去装置である乙4発明には「共回り」の課題があることを見いだし,これを克服するために,回転板方式による異物分離除去装置において,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段を設けたものである。

そうすると,乙4発明は,回転板方式を前提とする発明である点で本件各発明と共通するが,乙4公報には,本件各発明の課題である「共回り」,すなわち,「回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等」(本件訂正明細書等の段落【0003】)に関する記載はない。
したがって,乙4公報に接した当業者において,回転板方式による異物分離除去装置である乙4発明に前記「共回り」の課題があることを想起し得たと認めることはできない。

また,乙4発明は本件各発明と同じく,固定部材と回転部材との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を回転部材による遠心力により円周方向に追いやり,生海苔のみがクリアランスを通過するようにした回転板方式を前提とするものであるのに対し,乙2公報及び乙3公報の異物分離除去装置は,これとは異なり,スリットに生海苔調合液を通過させることによって生海苔調合液中の異物を分離するという方式によるものであって,乙4発明と乙2公報及び乙3公報に開示された技術的事項とでは,その前提とする異物分離除去に係る技術的思想が異なる。したがって,仮に,乙4公報に接した当業者において,乙4発明について,クリアランスに異物や生海苔の詰まりが生じるという問題があるという課題を想起し得たとしても,乙4発明に,それとは前提とする異物分離除去に係る技術的思想の異なる乙2公報及び乙3公報に記載された技術的事項を適用する動機付けがあるとは認められない。
加えて,仮に,当業者において,乙4発明に乙2公報及び乙3公報に記載された技術的事項を適用することを試みたとしても,乙4発明にお
いて,乙4発明とは異物分離除去の仕組みが異なる乙2公報及び乙3公報に記載された技術的事項をどのように適用するのか想定することはできない上,乙2公報及び乙3公報には突起物の構成は何ら開示されていないから,乙4発明に乙2公報及び乙3公報で開示された技術的事項を組み合わせたとしても,本件各発明の構成を想到することはできない。ウ
以上によれば,乙4発明において,本件各発明に係る相違点の構成を得ることは,当業者にとって容易であるということはできない。

(7)被告らの主張に対する判断
この点に関して被告らは,乙2公報及び乙3公報に記載された周知技術は,乙4発明と同様,海苔の異物を除去するための装置であり,技術分野を同一とするものであるから,当業者が容易に組み合わせることができるなどと主張する。
しかし,そもそも乙2公報及び乙3公報に記載された技術的事項が周知技術であることの立証はないものといわざるを得ないし,上記(6)イにおいて説示したとおり,乙4発明と乙2公報及び乙3公報に開示された技術的事項とでは,その前提とする異物分離除去に係る技術的思想が異なるというべきである。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
(8)小括
以上のとおり,争点(2)ウに係る被告らの主張は,理由がない。6
争点(2)エ(公知による新規性欠如及び進歩性欠如)について
(1)被告らは,原告が乙43の8文書をB,C及びDに配布・開示したことにより,同文書に記載された技術的思想が日本国内において公然知られた発明になったから,本件発明1及び3は特許法29条1項1号,同条2項により特許を受けることができないと主張する。
しかし,そもそも,乙43の8文書の配布により,同文書に記載された技
術的思想が日本国内において公然知られた発明になったということはできない。その理由は,以下のとおりである。
(2)ア

特許法29条1項1号にいう「公然」とは,秘密状態を脱した状態に
至ったことをいい,秘密保持義務を負うなどして発明者のために発明の内容を秘密にする義務を負う関係にある者が発明の技術的内容を知ったというだけでは,「公然」との要件を充たさないというべきである。なお,上記関係は,法律上又は契約上秘密保持義務を課せられた場合のほか,社会通念上又は商慣習上当事者間で当然に秘密とすることが求められ,かつ期待されている場合などにも生ずると解するのが相当である。イ
これを本件についてみると,平成10年当時,Bが代表者を務める西部機販は,原告に対し,原告による生海苔異物除去機の試験・開発に協力していたというのである(当事者間に争いがない。)。そうすると,このように試験・開発中の生海苔異物除去機につき,「選別ケースの外周に共回り防止ゴムをつける」(乙43の8文書)という試験・開発内容については,客観的にみて原告の営業秘密であることが原告及び西部機販にとって明らかなものというべきであるから,原告と西部機販との間で秘密保持契約が締結されていたのであればもちろん(甲36の陳述書には,秘密保持契約が締結されていた旨の記載がある。),仮に秘密保持義務についての明示的な合意がなくとも,両者の間には上記事項を社会通念上又は商慣習上当事者間で当然に秘密とすることが求められ,かつ期待されている関係にあるというべきであるから,西部機販及びその代表者であるBは,原告に対し,上記試験・開発内容につき守秘義務を負うものというべきである。
また,C及びDについては,被告らはいつ,どのようにC及びDに乙43の8文書が配布されたり,同文書に記載された情報が開示されたりしたのかを明らかにしないし,これをうかがわせる証拠も見当たらない
上,仮に配布ないし開示がされていたとしても,C及びDは上記の試験・開発における試験場提供者というのであって(当事者間に争いがない。),やはり,Bと同様,乙43の8文書に記載された内容について当然に守秘義務が生じるものというべきである。
そして,被告らは,他に乙43の8文書が本件特許の出願前においてB,C及びD以外の者に配布されたり,同文書の記載内容が開示されたりした事実を何ら主張しない。

以上によれば,乙43の8文書に記載された技術的思想が特許法29条1項1号にいう「公然」となったとはいえない。

(3)被告らの主張に対する判断
この点に関して被告らは,B,C及びDには守秘義務がないのであって,このことは,原告が別訴において西部機販を提訴していること(当庁平成28年(ワ)第2720号等)からも明らかであると主張する。
しかし,原告が西部機販を提訴したことにより,なにゆえB,C及びDに守秘義務がないことになるのか,被告らの主張に照らしても明らかとはいえないし,Bらに守秘義務が生じることは上記(2)において説示したとおりである。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
(4)小括
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,争点(2)エに係る被告らの主張は理由がない。
7
争点(3)(差止請求の可否)について
(1)本件製品1(本件旧装置及び本件各部品)について

本件旧装置が本件各発明の技術的範囲に属することは,当事者間に争いがない(前記第2,2(9)ア)。
また,本件各部品のうち本件板状部材は,本件各発明の技術的範囲に
属する物(本件旧装置)の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に該当するものであることも,当事者間に争いがない(前記第2,2(9)ア)。
そして,本件各部品のうち本件固定リングは,本件各発明の選別ケーシングの一部に当たり,その表面には本件板状部材を取り付けるための凹部が形成されており,その凹部にはめ込まれてボルトで固定された本件板状部材が本件各発明における「共回りを防止する防止手段」として機能しているのであるから,本件固定リングは,本件板状部材と同様に,本件各発明の技術的範囲に属する物(本件旧装置)の「生産にのみ用いる物」に該当するというべきである。
したがって,被告九研が,本件旧装置及び本件各部品を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は,本件特許権の侵害行為又は侵害とみなされる行為に当たるから,原告は,被告九研に対して,これらの行為の差止めを求めることができるとともに(特許法100条1項),上記各侵害の予防に必要な行為として,本件旧装置及び本件各部品の廃棄を求めることができる(同条2項)。

被告九研の主張に対する判断
この点に関して被告九研は,本件各部品のうち本件固定リングは,本件新装置の回転円板と組み合わせることにより,共回り防止装置として用いることが可能であるから,本件各発明の技術的範囲に属する物(本件旧装置)の「生産のみに用いる物」とはいえないなどと主張する。しかし,特許法101条1号所定の「その物の生産にのみ用いる物」というためには,当該「物」が特許発明に係る物の生産に使用する以外の用途(他の用途)に用いられないことをいい,上記他の用途は,抽象的ないしは試験的な使用の可能性では足らず,社会通念上経済的,商業的ないし実用的であると認められる用途であることを要するというべき
ところ,本件新装置には本件固定リングとは異なった形状の固定リング(本件新固定リング)が取り付けられているのであって(前記第2,2(7)ア),果たして本件固定リングが本件新装置の回転円板と組合せ可能であるのか疑問があるし,この点に関する的確な証拠も見当たらない上,仮に組合せが可能であるとしても,本件新装置に本件固定リングを用いることは,抽象的な使用の可能性にとどまり,社会通念上経済的,商業的ないし実用的であると認められる用途であるということはできないから,被告九研の上記主張は採用することはできない。
(2)本件製品2(本件新装置及び本件回転円板)について
前記2のとおり,本件新装置は本件発明3の技術的範囲に属するものと認められ,また前記3ないし6のとおり,本件発明3に係る特許が無効にされるべきものであるとはいえない。
そして,本件回転円板は本件発明3の回転円板に当たり,その表面に形成された凸部Dが正に本件発明3における「共回りを防止する防止手段」として機能しており,社会通念上経済的,商業的ないし実用的であると認められる他の用途が存在するとは認められないから,本件回転円板は本件発明3の技術的範囲に属する物(本件新装置)の「生産にのみ用いる物」に該当するというべきである。
したがって,被告九研が,本件新装置及び本件回転円板を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は,本件特許権の侵害行為又は侵害とみなされる行為に当たるから,原告は,被告九研に対して,これらの行為の差止めを求めることができるとともに(特許法100条1項),上記各侵害の予防に必要な行為として,本件新装置及び本件回転円板の廃棄を求めることができる(同条2項)。
(3)本件各メンテナンス行為について

本件メンテナンス行為1及び2について

製品について加工や部材の交換をする行為であっても,当該製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して,その行為によって特許製品を新たに作り出すものと認められるときは,特許製品の「生産」(特許法2条3項1号)として,侵害行為に当たると解するのが相当である。
本件各発明は,前記1(2)のとおり,生海苔混合液槽の選別ケーシングの円周面と回転板の円周面との間に設けられた僅かなクリアランスを利用して,生海苔・海水混合液から異物を分離除去する回転板方式の生海苔異物分離除去装置において,クリアランスの目詰まりが発生する状況が生じ,回転板の停止又は作業の停止を招いて,結果的に異物分離作業の能率低下等を招いてしまうとの課題を解決するために,突起・板体の突起物を選別ケーシングの円周端面に設け(本件発明1),回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け(本件発明3),あるいは,クリアランスに設けること(本件発明4)によって,共回りの発生をなくし,クリアランスの目詰まりの発生を防ぐというものである。
そして,本件板状部材は,本件固定リングに形成された凹部に嵌め込むように取り付けられて固定されることにより,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」(構成要件A3)に該当する「表面側の突出部」,「側面側の突出部」が形成され(当事者間に争いがない。),また,前記2のとおり,本件回転円板上には底面部から円周面方向に「凸部D」が突出して形成されている(前記2(2))ものであるが,これらは本件旧装置及び本件新装置の使用(回転円板の回転)に伴って摩耗するものと認められるのであって,このような摩耗によって上記突出部を失い,共回り・目詰まり防止の効果を喪失した本件旧装置及び本件新装置は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を欠き,もはや「共回り防止装置」には該当しないと解される。

そうすると,「表面側の突出部」又は「側面側の突出部」を失った本件旧装置や「凸部D」を失った本件新装置について,新しい本件固定リング,本件板状部材ないし本件回転円板を交換することにより,新たに「表面側の突出部」,「側面側の突出部」ないし「凸部D」を設ける行為は,本件各発明の「共回りを防止する防止手段」を備えた「共回り防止装置」を新たに作り出す行為というべきであり,特許法2条3項1号の「生産」に該当すると評価することができる。
したがって,原告は,被告九研に対し,特許法100条1項に基づき,本件メンテナンス行為1(本件旧装置又は本件新装置に対して,本件固定リング又は本件板状部材を部品の交換として取り付ける行為)及び本件メンテナンス行為2(本件旧装置又は本件新装置に対して,本件回転円板を部品の交換として取り付ける行為)の差止めを求めることができる。

本件メンテナンス行為3について
原告は,本件メンテナンス行為3(本件メンテナンス行為1及び2以外で,本件旧装置又は本件新装置に対して点検,整備,部品交換又は修理を行う行為)につき,①主位的に,本件メンテナンス行為3は本件メンテナンス行為1及び2に先立ち,これらと一体として行われており,本件メンテナンス行為1及び2のみを禁止して本件メンテナンス行為3を許容することは禁止の実効性に欠けるから,本件メンテナンス行為3は「その他の侵害の予防に必要な行為」に該当するとして,特許法100条2項に基づく差止めを求め,②予備的に,本件メンテナンス行為3を施して当該ユーザーによる本件旧装置及び本件新装置の使用を積極的に促すことは,当該ユーザーとの共謀共同不法行為が成立すると解すべきであり,当該ユーザーにおける使用は実質的には被告九研による使用とも理解すべきものであるとして,特許法100条1項に基づく差止め
を求めている。
しかし,上記①については,本件メンテナンス行為1及び2に先立って本件旧装置又は本件新装置に対する点検,整備,部品交換又は修理が行われるのが通常であったとしても,本件各発明の上記内容に照らせば,本件固定リング,本件板状部材ないし本件回転円板の交換の差止請求権の行使を実効あらしめるために,これらの差止めに加え,異物分離除去機能の維持,発揮のために行われる行為(被告装置に対する,点検,整備,部品交換,修理)をおよそ差し止めるというのは,差止請求権の実現のために必要な範囲を超える過大な請求であって許されないというべきである。
また,上記②については,ユーザーが本件旧装置又は本件新装置を使用することが本件各発明又は本件発明3の「実施」に当たり,本件特許権を侵害するものであるとしても,実施行為そのものを行っているのはあくまでもユーザーであって,被告九研が実施行為を行っているものと評価することはできないし,ましてや,ユーザーの使用する本件旧装置又は本件新装置につき点検等を行うのみで共謀共同不法行為が成立するということはできない。
したがって,原告の本件メンテナンス行為3に係る請求は,理由がない。
8
争点(4)(共同不法行為の成否)について
原告は,被告九研が被告Aの個人営業に係る会社であり,実質的には被告Aと一体であること,被告九研による本件製品1及び2の取引は,甲と特に懇意にしていた被告Aの意思のみによって行われていることなどから,被告ら両者による共同不法行為が成立するなどと主張する。
しかし,本件全証拠によっても,被告Aが,単なる被告九研の代表者としての行為を超えて別個に不法行為に及んだことを認めるに足りる証拠はないから,
原告の上記主張は採用することができない。
9
争点(5)(損害発生の有無及びその額)について
(1)被告九研が本件製品1及び2の販売によって得た利益
証拠(甲19の2,乙47の1の1ないし乙48の24の3)及び弁論の全趣旨によれば,被告九研が本件製品1及び2の販売によって得た利益は,次のとおり認められる(金額はいずれも税込み。また,販売額は,販売の際の下取り機の評価額等も考慮に入れた額である。)。

本件旧装置
(ア)WK-500型
被告九研は,WK-500型3台を合計721万9800円で仕入れ,合計890万円で販売し,差額の168万0200円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表1参照)。
(イ)WK-550型
被告九研は,WK-550型44台を合計1億0293万5000円で仕入れ,合計1億3516万7600円で販売し,差額の3223万2600円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表2参照)。
(ウ)WK-600型
被告九研は,WK-600型108台を合計3億6992万9200円で仕入れ,合計4億5991万2700円で販売し,差額の8998万3500円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表3参照)。
(エ)WK-700型
被告九研は,WK-700型1台を492万4500円で仕入れ,600万円で販売し,差額の107万5500円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表4参照)。
(オ)本件装置(LS型)
被告九研は,本件装置(LS型)5台を合計721万9800円で仕
入れ,合計1153万4800円で販売し,差額の431万5000円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表5参照)。
(カ)小計

1億2928万6800円

本件新装置
(ア)LS-G型
被告九研は,LS-G型13台を合計5424万6240円で仕入れ,合計5981万1040円で販売し,差額の556万4800円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表6参照)。
(イ)LS-8型
被告九研は,LS-8型12台を合計6146万3880円で仕入れ,合計7111万0120円で販売し,差額の964万6240円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表7参照)。
(ウ)小計


1521万1040円

本件各部品(本件固定リング及び本件板状部材)
被告九研は,本件固定リング及び本件板状部材の販売により,合計337万0395円の利益を得た(別紙販売利益等一覧表(本件固定リング)及び別紙販売利益等一覧表(本件板状部材)参照)。


本件回転円板
被告九研は,本件回転円板124個を販売し,このうち43個の販売により合計62万6940円の利益を得た。


利益額合計

1億4849万5175円

(2)上記認定の補足説明

据付工賃
被告九研は,他の販売店に販売する場合には据付工賃を受け取ることになっており,生海苔異物除去機の代金にはその工賃が含まれているなどと主張して,一部の取引につき代金から工賃相当額15万7500円
又は16万2000円を控除している。
しかし,上記金額の根拠は不明である上,そもそも被告九研の上記主張を裏付ける証拠もないから,被告九研の上記計算を採用することはできない。

攪拌機及び良品タンク
被告九研は,攪拌機や良品タンクをサービス品として無償で提供する場合があり,実質的には当該サービス品相当額だけ本体価格を値引きしたのと同じことになると主張して,一部の取引につき販売価格からサービス品相当額を控除している。
しかし,被告九研の上記主張は,単に攪拌機や良品タンクを無償で提供したというものにすぎず,本件旧装置又は本件新装置の本体価格からこれらの価格を控除すべき根拠に乏しい上,証拠上(乙47の各号)も,上記サービス品の金額については手書きで記載されているのであって,後から追記したものではないかとの疑いを払拭することができない。したがって,被告九研の上記主張は採用することができない。


据付備品代
被告九研は,据付備品代を経費として控除するべきである旨主張するが,その数値の根拠は必ずしも明らかではない上,これを裏付けるに足りる証拠もない。
したがって,被告九研の上記主張は採用することができない。


WK-550型
被告九研は取引番号7の販売価格を304万7619円としているが,証拠(乙47の7)によれば同取引は外税(消費税別)取引であるから,消費税相当額15万2381円を販売価格に追加すべきことになる。また,被告九研は,取引番号29について10万円の値引きがあったとして販売価格から控除しているが,証拠(乙47の29)には上記値
引きが手書きで追記されているにすぎず,現に値引きがされたことを示す客観的証拠に乏しいから,当該控除を採用することはできない。さらに,被告九研は,取引番号38及び44の販売価格をいずれも290万円として計算しているが,証拠(乙47の38,44)によればいずれも外税(消費税別)取引であるから,それぞれ消費税相当額14万5000円を販売価格に追加すべきことになる。

WK-600型
被告九研は,取引番号66において下取り機「CFW-37」の評価額40万円を考慮に入れているが,証拠(乙47の66の3)によれば同時に「GT-2」(評価額3万円)も引き取っていることが認められるから,これも考慮に入れるべきことになる。
また,被告九研は,取引番号105の販売価格を384万7500円として計算しているが,証拠(乙47の105の1)によれば,税抜き価格405万円から20万2500円を値引いた上で消費税相当額を加算しているのであるから,販売価格(税込み)は405万円となるべきである。
さらに,被告九研は,取引120の販売価格を367万5000円(1台分相当額)として計算しているが,証拠(乙47の120)によれば,同取引において販売した台数は2台であるから,2台目の利益についても考慮に入れるべきである(ただし,計算の便宜上,1台分の利益を10万5000円とし,これを販売価格に上乗せして計算した。)。

本件装置(LS型)
(ア)被告九研は,別紙販売利益等一覧表5記載の各取引は「本件装置(LS型)」ではなく「本件新装置」の取引である旨主張する。
しかし,被告九研の売掛金元帳(甲19の2)には「機種別(修理一覧表)」と記載されているにもかかわらず,「WK-600」と上記各
取引に係る「LS-G」とが区別されていないのであって(12ないし13頁),上記記載からすれば,上記各取引にいう「LS-G」は,「WK-600」の構成をそのままにしながら製品名のみを「LS-G」にしたもの,すなわち「本件装置(LS型)」であるものと認めるのが相当である(なお,仮に上記各取引が本件新装置に係る取引であったとしても,本件新装置の販売も本件特許権を侵害するものであるから,原告の損害額の認定を左右しない。)。
(イ)また,被告九研は,取引番号160の販売価格を450万円として計算しているが,証拠(乙47の160)によれば「CFW-37S」の下取りをしていることが認められ,その評価額は証拠(乙47の87の5,乙47の88の3,乙47の98の3,乙47の100の3,乙47の156の2)によれば40万円と推定するのが相当であるから,この額を考慮に入れるべきである。

LS-G型
被告九研は,取引番号19及び22の各取引の販売価格を仕入価格よりも低廉な額として計算しているが,これらは下取り機に関する主張の欠落等とみられるから,利益算定の対象外とするのが相当である。

本件回転円板
原告は,主位的に,本件回転円板の販売数及び販売利益はそれぞれ800個,1166万4000円と推定される旨主張するが,被告九研の自認する販売数量等(合計124個を超えることはなく,このうち81個については被告九研に利益が発生しないというもの)を超えて利益が生じたことを認めるに足りる証拠はない。

(3)原告の損害額
以上を前提に,特許法102条2項を適用して原告に生じた損害額を算定すると,以下のとおりである。


販売利益
(ア)販売対象による区分
本件旧装置

1億2928万6800円(①)

本件新装置

1521万1040円(②)

本件各部品

337万0395円(③)

本件回転円板
合計

62万6940円(④’)
1億4849万5175円

(イ)不法行為時期による損害の区分
販売利益に相当する損害額(1億4849万5175円)を,以下のとおり,催告の日である平成27年10月27日までの【損害A】と同日より後の【損害B’】とに区分する。
【損害A】
本件旧装置(平成27年10月27日まで。同月31日の取引〔別紙販売利益等一覧表5の取引番号156の取引〕を除いたもの。)及び本件各部品に関する不法行為についての損害額は,1億3198万4195円となる。
(計算式)
129,286,800円(①)-673,000円(取引番号156)+3,370,395円(③)=131,984,195円
【損害B’】
本件旧装置(取引番号156の取引のみ),本件新装置及び本件回転円板に関する不法行為についての損害額は,1651万0980円となる。
(計算式)
673,000円(取引番号156)+15,211,040円(②)+626,940円(④’)=16,510,980円


弁護士費用相当額の損害
本件の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害は,1485万円となるものと認めるのが相当である。なお,内訳は以下のとおりである。
【損害A】に対する弁護士費用相当額

1320万0000円

【損害B’】に対する弁護士費用相当額

認容額

165万0000円

1億6334万5175円

(内訳)
特許法102条2項の計算に基づく損害賠償
1億4849万5175円
弁護士費用相当額の損害賠償額

1485万0000円

認容額と遅延損害金起算日の関係
(ア)平成27年10月28日(催告の日の翌日)
下記金額の合計1億4045万1960円
【損害A】の損害額

1億3198万4195円

【損害A】に対する弁護士費用相当額の内金

846万7765円

(イ)平成28年12月18日(不法行為の最終日の翌日)
下記金額の合計2289万3215円
【損害B’】の損害額

1651万0980円

【損害A】に対する弁護士費用相当額の残金

473万2235円

【損害B’】に対する弁護士費用相当額

165万0000円

(4)被告九研の主張に対する判断

アフターサービスの負担について
被告九研は,原告は単なる製造業者であり,販売店である被告九研のようにアフターサービスの負担をしておらず,アフターメンテナンス対応をするだけの人材を配置していないから,販売店と同様の利益を上げ
ることはできないなどとして,被告九研が得た利益をもって原告の受けた損害と推定することはできない旨主張する。
しかし,上記主張は推定覆滅事由の主張であると解されるところ,被告九研の主張する事情のみをもって,本件各発明の実施品の顧客吸引力にもかかわらず,原告がその取引先に対する販売の機会を持ち得なかったということはできないし,他に原告が取引の機会を奪われたとはいえない特段の事情もない。
したがって,被告九研の主張する事情は,特許法102条2項による推定を覆滅するには足りないというべきである。

寄与率について
被告九研は,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与した割合は10%を超えるものではないなどと主張する。
しかし,本件各発明は,共回り現象の発生を回避してクリアランスの目詰まりをなくし,効率的・連続的な異物分離を実現するものであって,生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものというべきである。すなわち,生海苔異物除去装置として,選別ケーシング(固定リング)と回転円板との間に設けられたクリアランスに生海苔混合液を通過させることによりクリアランスを通過できない異物を分離除去する装置が従来用いられていたとしても,本件各発明の解決課題を従来の装置が抱えていることは明らかであり,この点は需要者の購買行動に強い影響を及ぼすものと推察される。このことと,従来の装置の現在における販売実績等の主張立証もないことを考えると,本件各発明の実施は生海苔異物除去装置の需要者にとって必須のものであることがうかがわれる。他方,本件各発明が本件製品1及び2に寄与する割合を減ずべきであるとする被告九研の主張の根拠は,いずれも具体性を欠くものにとどまる。

したがって,本件各発明が本件製品1及び2の販売に寄与する割合を減ずることは相当でない。

消滅時効について
被告九研は,原告は以前から被告九研による本件製品1の販売の事実を認識していたなどとして,消滅時効の主張をする。
しかし,民法724条前段の消滅時効の起算点は,被害者等が「損害及び加害者を知った時」,すなわち損害及び加害者を現実に了知した時点である。しかるに,被告九研の主張は,基本的には,被告九研が海苔機械類の販売を継続的に行ってきたものであるから,被告九研による販売の事実は原告も当然に認識していたなどという抽象的なものにすぎない。
また,被告九研は,①平成22年8月20日及び同月21日の展示会において本件製品1が展示されていたこと,②平成19年9月20日における本件製品1の販売をフルテックの担当者が知っていたこと,③平成20年3月1日における被告製品1の販売をフルテックの担当者が知っていたことなどを指摘する。
しかし,上記①については展示していたのは被告九研ではなく甲であったというのであるし,上記②及び③もフルテックの担当者が知っていたというものにとどまる上,その事実自体,客観的な裏付けを欠くものである。
したがって,被告九研の消滅時効の主張は理由がない。

結論
以上によれば,原告の請求は,①被告九研に対し,特許法100条1項に基づき,本件製品1及び2の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求め,②被告九研に対し,同条2項に基づき,本件製品1及び2の廃棄を求め,③被告九研に対し,同条1項に基づき,本件メンテナンス行為1及び2
の差止めを求め,④被告九研に対し,民法709条に基づき,1億6334万5175円及びうち1億4045万1960円に対する同内金に係る不法行為の後の日(被告九研に対する催告の日の翌日)である平成27年10月28日から,うち2289万3215円に対する同内金に係る不法行為の後の日(最終の販売日の翌日)である平成28年12月18日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,被告Aに対する請求及び被告九研に対するその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文第1項ないし第6項,第8項及び第9項については職権で仮執行宣言を付すこととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

東海林保瀬孝
裁判官

裁判官

勝又来未子
(別紙)
物件目録1
下記の型名の「生海苔異物除去機」

型名「WK-500」
型名「WK-550」
型名「WK-600」
型名「WK-700」
以上

(別紙)
物件目録2
下記の型名の「生海苔異物除去機」

型名「LS-R」
型名「LS-S」
型名「LS-G」
型名「LS-L」
ただし,別紙図面(1)及び(2)記載の「3,4(環状固定板),C,8(板状部材)から構成される部分(異物分離部)」を搭載するものに限る。
以上

(別紙)
物件目録3
下記(1)ないし(5)の型名の「生海苔異物除去機」
ただし,(1)ないし(4)は,別紙物件目録2記載の「生海苔異物除去機」を除く。記
(1)型名「LS-R」
(2)型名「LS-S」
(3)型名「LS-G」
(4)型名「LS-L」
(5)型名「LS-8」
以上

(別紙)
物件目録4
別紙物件目録1又は別紙物件目録2記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに用いる「固定リング」(別紙物件目録2の別紙図面(1)及び(2)記載の4(環状固定板))
以上

(別紙)
物件目録5
別紙物件目録4記載の「固定リング」の凹部に取り付け可能な「板状部材」又は「ステンチップ」(別紙物件目録2の別紙図面(1)及び(2)記載の8(板状部材))以上

(別紙)
物件目録6
別紙物件目録3記載の「生海苔異物除去機」に用いる「回転円板」以上

(別紙)
メ1ンテナンス行為目録
別紙海苔生産者目録記載の「海苔生産者」が各占有する別紙物件目録1ないし3記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対して,別紙物件目録4記載の「固定リング」又は別紙物件目録5記載の「板状部材」若しくは「ステンチップ」を,部品の交換として取り付ける行為

2
別紙海苔生産者目録記載の「海苔生産者」が各占有する別紙物件目録1ないし3記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対して,別紙物件目録6記載の「回転円板」を,部品の交換として取り付ける行為

3
別紙海苔生産者目録記載の「海苔生産者」が各占有する別紙物件目録1ないし3記載の「生海苔異物除去機」のいずれかに対して行う下記の行為ただし,上記1又は2の行為を除く。

(1)点検
(2)整備
(3)部品の交換
(4)修理

別紙海苔生産者目録省略

(別紙)
本件新装置の構成
〔原告の主張〕
第1

図面の説明
下記図面のうち,図1は回転円板が4枚のタイプ(「LS-R型」「LS-S
型」を含む。)を示し,図2から図5は,全ての型に共通である。回転円板には,凸部D(又は凹部E)を6個,4個,2個ずつ有するものがあり,以下,これらの総称として「各回転円板」という。
なお,図1,図2,図3,図4-1の各枝番号1~3は,それぞれ,凸部を6個,4個,2個ずつ有する回転円板の図面である。
1
図1-1~3

各回転円板を搭載した本件新装置の平面図

2
図2-1~3

各回転円板を搭載した異物分離部Bの拡大斜視図

3
図3-1~3

各回転円板の平面図,及び断面図

(a)各回転円板の平面図

左側図(凸部Dを左右に配置)
右側図(凹部Eを左右に配置)

(b)各回転円板の断面図

左側図((a)図におけるA断面)
右側図((a)図におけるB断面)

4
図4各回転円板の凸部Dを示す図
(1)図4-1-1~3

凸部D及び凹部Eの各回転円板における位置を示す平

面図
(2)図4-2

凸部D又は凹部E(径方向側面部3c)の各回転円板における

位置を示す断面図(図3-1~3の各(b)右側図((a)図におけるB断面)の拡大図)
(3)図4-3
5
凸部Dの斜視図(概略図)

図5ケーシング部材7の断面図(各回転円板3を載架した状態)

(1)図5-1

吸引ポンプ用連結口を含む断面

(2)図5-2

吸引ポンプ用連結口を含まない断面

第2

符号の説明

1
外枠

2
底板

3
回転円板
3a

側面部(端面)

3a1
3b

側面部(端面)の一部で「凸部Dの側面部(端面)」を形成する部分
表面

3b1

表面の一部で「凸部Dの平面部」を形成する部分

3b2

表面の一部で「回転円板側凹部Eの底面部」を形成する部分

3c

径方向側面部

3d

回転円板側凹部の側面部(端面)

4
環状固定板
4a

内周側面部(内周端面)

4b

表面

4c

(環状固定板側)凹部

5
異物排出口

6
原料供給ホース

7
ケーシング部材


異物選別槽


異物分離部


(環状)隙間


(回転円板の)凸部

エッジ


上部境界線



第3
1
下部境界線
(回転円板側)凹部
本件新装置の構成
外枠1,底板2,回転円板3,環状固定板4は,全体として一つの異物選別
槽Aを構成しており,原料供給ホース6を介して異物選別槽Aに供給された生海苔と海水の混合液(生海苔・海水混合液=原料)を蓄えることができる。2
外枠1は,上方から見て八角形状を呈し,その内側には,多数の小孔が開けられたパンチング網で,更に枠が形成される。
異物選別槽Aの開口上部には,原料供給ホース6,洗浄水供給ホース,センサーなどが設置されている。
底板2の一部(パンチング網に囲まれた部分)には,通常は閉鎖され,コックによって開口可能なように構成された異物排出口5が設けられている。
3
底板2には円形孔が複数個(4個若しくは6個又は8個,「LS-R型」「LS-S型」は4個,「LS-G型」「LS-L型」は6個,「LS-8型」は8個)設けられ,その各内周に,環状固定板4を突出させるようにしてケーシング部材7(4個若しくは6個又は8個)が(底板2の)裏側から取り付けられている。
ケーシング部材7の側面下部には,吸引ポンプ用の連結口が設けられている。同連結口に連設したホースは,吸引ポンプに接続されている。

4
回転円板3の外径は,環状固定板4の内径よりも僅かに小さい。そのため,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架されて環状固定板4の内周側で回転する。
回転円板3の側面部(端面)3aは,テーパー状に形成されており,円周状を呈した該側面部(端面)3aと環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aとで,環状隙間Cを形成する。

5
回転円板3には,凸部D(又は凹部E)が1か所以上(図ではそれぞれ6,
4,2か所のものを示すが,これに限定されない。)形成されている。(1)凸部Dは,側面部(端面)3a1(回転円板3の側面部(端面)3aの一部の面と共通である。),平面部3b1(回転円板3の表面3bの一部の面と共通である。),2か所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成される。
凹部Eは,回転円板3の表面3bの外周部分に,(周方向に所定長さ)×(側面部(端面)3aから径方向内側に所定長さ)×(表面3bから所定深さ)の領域に亘って凹入形成されており,底面部3b2,2か所の径方向側面部(側面壁)3c,側面部(端面)3dを有し,略扇形(a-b-c-d)を呈する。
(2)径方向側面部3cと側面部(端面)3a1の各面の交差によってエッジxが形成される。
(3)凸部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの底面部3b2の高低差(=回転円板側凹部Eの底面部3b2までの深さ)はエッジxの長さと略同一で,1mm弱~5mm程度(ただし,この数値範囲に限定するものではない。)である。
径方向側面部(側面壁)3c,及びエッジxによって,平面部3b1は底面部3b2との間で段差を形成し,凸部Dを突出させる。
(4)平面部3b1と径方向側面部(側面壁)3cの各面が交差する場所には上部境界線yが,底面部3b2と径方向側面部(側面壁)3cの各面が交差する場所には下部境界線zが,それぞれ現れる。
(5)凸部Dは,回転円板3を平面視した場合において,底面部3b2との間で直線状の境界線(上部境界線y又は下部境界線z。径方向側面部(側面壁)3cが底面部3b2に対して略垂直に形成される場合は両者はほぼ一致する。)を呈することによって,あたかも,回転円板3の表面外周側に略扇形(中心を回転円板3の中心と共通にする。)の薄板状部材が,半島状に取り
付けられたような外観を呈する。
(6)凸部Dの間に凹部E(又は,凹部Eの間に凸部D)が形成され,回転円板3の円周に沿う方向で見ると,凹部Eと凸部Dが,交互に現れ,両者の個数は必ず同数となる。
6
回転円板3は,止めネジ,隙間調整ネジ,目盛板,スプリングなどから構成される隙間調整機構によって,上下方向移動可能なように構成されている。以上

【図1-1】

【図1-2】

【図1-3】

【図2-1】

【図2-2】

【図2-3】

【図3-1】

【図3-2】

【図3-3】

【図4-1-1】

【図4-1-2】

【図4-1-3】

【図4-2】

【図4-3】

【図5-1】

【図5-2】

〔被告らの主張〕
(原告の主張と異なる部分に下線を付した。また,【図4-3】を除く図については争いがないため,掲載を省略した。)
第1

図面の説明
下記図面のうち,図1は回転円板が4枚のタイプ(「LS-R型」「LS-S
型」を含む。)を示し,図2から図5は,全ての型に共通である。回転円板には,凹部Eと凸部Dとの組合せを6個,4個,2個ずつ有するものがあり,以下,これらの総称として「各回転円板」という。
なお,図1,図2,図3,図4-1の各枝番号1~3は,それぞれ,凹部Eと凸部Dとの組合せを6個,4個,2個ずつ有する回転円板の図面である。1
図1-1~3

各回転円板を搭載した本件新装置の平面図

2
図2-1~3

各回転円板を搭載した異物分離部Bの拡大斜視図

3
図3-1~3

各回転円板の平面図,及び断面図

(a)各回転円板の平面図

左側図(凸部Dを左右に配置)
右側図(凹部Eを左右に配置)

(b)各回転円板の断面図

左側図((a)図におけるA断面)
右側図((a)図におけるB断面)

4
図4

各回転円板の凹部Eと凸部Dとの組合せを示す図

(1)図4-1-1~3

凸部Dおよび凹部Eの各回転円板における位置を示す

平面図
(2)図4-2

凹部E(回転円板側凹部の径方向側面部3c)の各回転円板に

おける位置を示す断面図(図3-1~3の各(b)右側図((a)図におけるB断面)の拡大図)
(3)図4-3
5
図5

凹部Eと凸部Dとの組合せの斜視図(概略図)

ケーシング部材7の断面図(各回転円板3を載架した状態)

(1)図5-1

吸引ポンプ用連結口を含む断面

(2)図5-2
第2

吸引ポンプ用連結口を含まない断面

符号の説明

1
外枠

2
底板

3
回転円板
3a

側面部(端面)
(原告は,『3a1

側面部(端面)の一部で「凸部Dの側面部(端

面)」を形成部分』を残したが,被告らは,回転円板に凹部Eを形成した結果として凸部Dが形成されるものであり,3a1の部位の表現は不要であると考える。)
3b

表面

3b1

表面の一部で「凸部Dの平面部」を形成する部分

3b2

「回転円板側凹部Eの底面部」を形成する部分

3c

回転円板側凹部の径方向側面部

3d

回転円板側凹部の側面部(端面)

3e

回転円板側凹部の表面3bへの開口(点a,b,c,dに囲まれている)

3f

回転円板側凹部の(環状)隙間Cへの開口(点a,d,e,fに囲まれている)

4
環状固定板
4a

内周側面部(内周端面)

4b

表面

4c

(環状固定板側)凹部

5
異物排出口

6
原料供給ホース

7
ケーシング部材


異物選別槽


異物分離部


(環状)隙間


(回転円板の)凸部


(回転円板側)凹部

第3
1
本件新装置の構成
外枠1,底板2,回転円板3,環状固定板4は,全体として一つの異物選別槽Aを構成しており,原料供給ホース6を介して異物選別槽Aに供給された生海苔と海水の混合液(生海苔・海水混合液=原料)を蓄えることができる。
2
外枠1は,上方から見て八角形状を呈し,その内側には,多数の小孔が開けられたパンチング網で,更に枠が形成される。
異物選別槽Aの開口上部には,原料供給ホース6,洗浄水供給ホース,センサーなどが設置されている。
底板2の一部(パンチング網に囲まれた部分)には,通常は閉鎖され,コックによって開口可能なように構成された異物排出口5が設けられている。
3
底板2には円形孔が複数個(4個若しくは6個又は8個,「LS-R型」「LS-S型」は4個,「LS-G型」「LS-L型」は6個,「LS-8型」は8個)設けられ,その各内周に,環状固定板4を突出させるようにしてケーシング部材7(4個若しくは6個又は8個)が(底板2の)裏側から取り付けられている。ケーシング部材7の側面下部には,吸引ポンプ用の連結口が設けられている。同連結口に連設したホースは,吸引ポンプに接続されている。

4
回転円板3の外径は,環状固定板4の内径よりも僅かに小さい。そのため,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架されて環状固定板4の内周側で回転する。
回転円板3の側面部(端面)3aは,テーパー状に形成されており,円周状を呈した該側面部(端面)3aと環状固定板4の内周側面部(内周端面)4a
とで,環状隙間Cを形成する。
5
回転円板3には,凹部Eと凸部Dとの組合せが1か所以上(図ではそれぞれ6,4,2か所のものを示すが,これに限定されない。)形成されている。(1)凹部Eは,回転円板3の表面3bの外周部分に,(周方向に所定長さ)×(側面部(端面)3aから径方向内側に所定長さ)×(表面3bから所定深さ)の領域に亘って凹入形成されており,底面部3b2,2か所の径方向側面部3c,側面部(端面)3dを有し,略扇形の開口3e(a-b-c-d)をもって表面3bに開口しており,略円筒形の開口3f(a-d-e-f)をもって(環状)隙間Cに対面するように開口している。
(2)凹部Eの径方向側面3cと側面部(端面)3aの各面の交差によってエッジxが形成される。
(3)回転円板側凹部Eの底面部3b2までの深さはエッジxの長さと略同一で,1mm弱~5mm程度(ただし,この数値範囲に限定するものではない。)である。
(4)凹部Eの間に凸部Dが形成され,凹部Eと凸部Dが,交互に現れ,両者の個数は必ず同数となる。

6
回転円板3は,止めネジ,隙間調整ネジ,目盛板,スプリングなどから構成される隙間調整機構によって,上下方向移動可能なように構成されている。以上

【図4-3】

別紙特許審決公報,別紙販売利益等一覧表1ないし7,別紙販売利益等一覧表(本件固定リング),別紙販売利益等一覧表(本件板状部材)は省略

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