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業務上横領
事件番号平成28(う)414
事件名業務上横領
裁判年月日平成29年8月4日
法廷名東京高等裁判所
結果破棄自判
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成26(わ)975
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平成29年8月4日宣告

東京高等裁判所第11刑事部判決

平成28年(う)第414号

業務上横領被告事件

主文
原判決中被告人A1及び同A3に関する部分並びに同A2に
関する有罪部分を破棄する。
被告人らはいずれも無罪。

第1


控訴趣意等
被告人らの本件控訴の趣意は,弁護人宮本英治(被告人A1

(主任),被告人A2,被告人A3),同伊東正(被告人A1,
被告人A2(主任)),同松村眞理子(被告人A3(主任))ら
作成の控訴趣意書及び弁論要旨に記載されたとおりであり,論旨
は,理由不備・理由齟齬,訴訟手続の法令違反,事実誤認,法令
適用の誤り及び量刑不当の主張であり,これに対する検察官の答
弁は,検察官松山佳弘作成の答弁書及び弁論要旨に記載されたと
おりである。
第2

原判示各事実の概要並びに弁護人の訴訟手続の法令違反及び

事実誤認の論旨(以下,略称及び略語については,当審において
別に定めたほかは原判決の例による。)
原判決は,罪となるべき事実として,要旨,「被告人A1は企
業合併に関するコンサルティング等を目的とするC1社及びC2
社の各代表取締役,被告人A2はC1社取締役,被告人A3はC

1社従業員兼C2社取締役であるが,被告人ら3名は,C1社が
C3社との間で締結したコンサルタント顧問契約に基づき,C3
社の出納経理及びC3社名義の銀行預金口座の出納等の業務に従
事し,C3社の銀行預金を業務上預かり保管中,第1,被告人A
1及び同A3は,その一部を,ほしいままに,C1社の資金等に
流用しようと考え,共謀の上,平成22年7月2日,当時のC1
社事務所に設置されたC3社管理部において,情を知らないD1
をして,インターネットバンキングシステムを介して,株式会社
E1銀行F1支店に開設されたC3社名義の普通預金口座(以下,「C3社E1銀行F1支店口座」という。)から,本件C2社口
座に1億円を振込送金させ,第2,被告人3名は,その一部を,
ほしいままに,C1社の資金等に流用しようと考え,共謀の上,
平成22年10月4日,E1銀行F2支店において,情を知らな
いD2をして,同支店に開設されたC3社名義の普通預金口座
(以下「C3社E1銀行F2支店口座」という。)から,本件C
2社口座に2億8000万円を振込送金させ,もってそれぞれ横
領した」という事実を認定した。
これに対し弁護人らは,要旨,本件に関連する資金移動は,C
3社の当時の代表取締役であったD3の同意・承諾を得た正常な
取引行為であって,横領行為には該当しないから,被告人らはい
ずれも無罪であるのに,原判示第1について,D3の承諾がある
ことを認めながら,全体的考察を行って,被告人A1及び同A3

に不法領得の意思があったとして業務上横領罪を認定し,原判示
第2についても,全体的考察を踏まえて,被告人ら3名に不法領
得の意思があったとして業務上横領罪を認定した原判決には,当
事者が争点としていなかった全体的考察を行って,被告人らの不
法領得の意思を認めた点で,被告人らに対する違法な不意打ちで
あり,しかも,被告人らに不法領得の意思があると認めた事実認
定も論理則,経験則等に反する不合理なものであるから,判決に
影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反及び事実誤認が
ある旨主張する。
当裁判所は,原審記録を調査し,当審で取り調べた証拠を併せ
考慮した結果,控訴趣意中,訴訟手続の法令違反及び事実誤認の
論旨について理由があり,被告人らはいずれも無罪であるから,
その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は破棄さ
れるべきであるとの結論に達した。以下,その理由を説明する。
第3
1
原判決の判断
争点
原審においては,①平成22年7月2日に行われたC3社E1
銀行F1支店口座から本件C2社口座への本件1億円の送金及び
②同年10月4日に行われたC3社E1銀行F2支店口座から本件C2社口座への本件2.8億円の送金が,被告人3名による横
領行為と評価できるか否かが争点となり,原審検察官は,信用で
きるD3供述によれば,本件各送金については,D3の承諾がな

いことが明らかであるから,被告人らには横領罪が成立すると主
張した。これに対し,原審弁護人は,D3供述は信用できず,本
件各送金については,D3の指示又は承諾があったから無罪であ
ると主張したが,原判決は,委託者の承諾がないこと等は横領罪
の成否において成立に傾きやすい重要な事情ではあるものの,そ
れは判断ないし評価事情の一つに過ぎず,結局は,当該行為が受
託者の不法領得の意思を実現する行為と評価できるか否かを直截
に問題とすべきであるとした。そして,原判決は,まず全体的考
察を行った上で本件各送金について検討し,本件1億円について
は,送金についてD3の承諾はあったものの,それは被告人らの
詐欺的手段に基づくものであり,また,本件2.8億円について
は,送金についてD3の承諾はなく,いずれについても,被告人
らがC1社の資金等に流用する意図をもってなされたものである
から,横領罪が成立するとした。原判決の判断の要旨は次のとお
りである。
2
前提事実
原判決は,本件の前提事実として,大要,以下の各事実を認定
した。
本件1億円の資金移動について


C2社設立の経緯
C2社は,平成21年7月,C3社の収益を増加させるための
学校法人M&A等の投資を行うための会社であるという前提で,

D3が資本金1億円の全てを出資して設立された(なお,被告人
A1は,平成22年7月20日に2000万円,平成23年1月
11日に9000万円を出資し,過半数の株式を取得するに至っ
ている)。

C3社からC2社への2億円の拠出
被告人ら及びD3は,C3社からC2社に2億円の資金を移動
する目的で,平成21年9月29日,C3社E1銀行F1支店口
座から同支店のI機構名義及びJ協会名義の各口座に各1億50
00万円を送金し,平成22年3月31日,I機構名義及びJ協
会名義の各口座からC2社に各1億円を送金した。


C2社からJ協会及び関連法人からC3社への資金移動
平成22年6月28日,C2社からJ協会に1億円が送金され,
同月29日,J協会から1億3500万円,I機構から4500
万円が,それぞれC3社E1銀行F1支店口座に送金された。


C3社からC2社への本件1億円の送金
平成22年7月2日,E2銀行F3支店,E3銀行F4支店及
びE4銀行F5支店の各C3社名義の口座から合計1億2355
万0898円がC3社E1銀行F1支店口座に送金され,同口座
から本件C2社口座に本件1億円が送金された。本件1億円の送
金は,D1が被告人A3の指示により,当時のC1社事務所に設
置されたC3社管理部のパーソナルコンピュータを使って,イン
ターネットを介したネットバンキングシステムによって送金手続

をした。

本件1億円の送金後の資金移動状況
平成22年7月16日,本件C2社口座から5000万円が出
金され,そのうち3001万円がE1銀行F1支店のC4社名義
の口座に,1999万円がE1銀行F10支店の被告人A1名義
の口座にそれぞれ入金された。
同月20日,被告人A1は,同口座からC2社E1銀行F1支
店口座に2000万円を送金して同社の増資に充て,C2社の株
式400株の割り当てを受けた。
また,同月26日,E1銀行F1支店のC4社名義の口座から
E5銀行F6支店の同社名義の口座に3001万円が送金され,
その後,C4社からC1社に送金あるいは貸し付けられ,さらに
C1社から被告人A1や同A2らに貸し付けられるなどした。
C3社からC2社への本件2.8億円の資金移動等
平成22年10月1日午後1時頃,C3社G支店営業部のD4
は,被告人A3からの電話で,D3の代理で電話していると告げ
られ,同日午後2時までに資金移動するよう依頼され,E6信金
F7支店のC3社名義の口座からC3社E1銀行F2支店口座に
3億5000万円を送金した。同月4日,D2は,E1銀行F2
支店において,振込依頼書を記載して,同口座から本件C2社口
座に本件2.8億円を送金した。
C1社への合計7億6000万円の資金移動


平成23年3月期の3.8億円の資金移動
平成23年3月3日,本件C2社口座とE1銀行F1支店のC
2社名義の口座から,E7銀行F8支店のC2社名義の口座を通
して,合計3億円がE8銀行F9支店のC3社名義の口座に送金
され,同口座からE7銀行F8支店のC1社名義の口座(以下
「C1社E7銀行口座」という。)に3億円が送金された。さら
に,同月23日から24日,同口座からE5銀行F6支店のC4
社名義の口座,E7銀行F8支店のC2社名義の口座,E7銀行
F8支店のC3社名義の口座を順次経由して,元のC1社E7銀
行口座に8000万円が送金された。
上記3.8億円の資金移動に関し,C3社からC1社に対し,
当時一般社団法人H協会という名称であった同法人の公益法人化
等の業務を委託し,公益法人化に対する成功報酬等を支払う内容
の平成21年8月1日付けFA契約書,それを改める平成22年
4月1日付けのFA契約書及び覚書3通が作成された。


平成24年3月期の3.8億円の資金移動
平成23年4月以降においても,C3社からC1社に対し,別
途のFA契約に基づき,同年11月に2億円,同年12月に80
00万円,平成24年1月に1億円の報酬が支払われた。
C3社の銀行口座及び銀行届出印の管理状況


C3社は,東京においては,主要取引銀行のE1銀行F1支店
のほか,E4銀行F5支店,E5銀行F6支店及びE8銀行F9

支店にそれぞれ口座を開設していたが,平成22年8月18日に
D1がE1銀行F2支店において,平成23年3月23日にD2
がE7銀行F8支店において,それぞれC3社名義の口座を開設
した。

C3社では,実印と銀行届出印を一つの印鑑で兼ね,これをD
3が管理していたが,平成22年6月又は7月頃からは,D1が
管理部において管理するようになった。そして,その後,前記各
銀行及びC3社の各支店が利用する銀行の届出印は,平成23年
2月16日にC1社従業員により注文されたC3社名義の新たな
印に順次変更された。

3
全体的考察
次に,原判決は,全体的考察として,要旨,次のとおり判断し
た。
本件に関連する一連の資金移動を見ると,C3社の資金が,結
局において,被告人A1やC1社に移動したことが窺われるだけ
でなく,本件各送金に加え,平成24年3月までに,合計7億6
000万円がC1社に資金移動されていることが認められる。し
かも,C3社の出納業務は,C1社の従業員が「管理部」という
部署において取り扱うことによって,被告人らが,C3社の経理
関係を把握していたことが認められ,また,C3社の銀行口座が,D3に無断で,E1銀行F2支店(平成22年8月18日開設)
とE7銀行F8支店(平成23年3月23日開設)に開設され,

これらの口座も含め,C3社名義の各銀行口座に関する銀行届出
印が,D3に無断で変更されていることが認められるのであるか
ら,これらの事実によれば,被告人らにおいて,C3社の資金を
被告人らの意図に従って,D3に気付かれないようにして,C1
社に移動させるようにしているのではないかと窺われる。そして,会長会議メモの記載によれば,被告人らは,本件各送金の前後の
数年間を通じて,まずはD6を排除しようとし,さらに,D3を
もC3社の実質的な経営から排除するとともに,C3社からC2
社等へ資金を拠出することを介しながら,C3社を支配し,D3
に悟られず,C3社からC1社等被告人らの支配下に資金を吸収
することを検討していたことが強く窺われ,これら会長会議メモ
等から窺われる被告人らの意図を踏まえ,実際に行われた資金の
移動状況をみると,本件3.8億円は,結局のところ,本件各送
金を含む資金移動により,C3社から,C2社,C1社等の複数
の口座間を移動した上,C1社の口座に送金されたものと評価で
き,また,被告人らにおいても,そのような口座間等の資金の移
動状況等が共有され,本件1億円及び本件2.8億円が一体とし
て本件3.8億円の原資として認識されていたことは,D2ノー
トの図や原審D2供述等から明らかといえる。
以上によれば,被告人らがC2社,C1社へ資金移動を行った
ことについては,専らC3社の利益のためというよりも,C3社
の資金をD3に悟られずに被告人らの支配下に移動させ,C1社

の資金等に流用する目的があったことが窺われ,被告人らは,C
3社の経理の中枢を把握する管理部という部署をC1社の従業員
に担当させ,銀行口座や銀行届出印をD3に無断で作り,あるい
は変更し,C2社を介し,ときにはC3社の銀行口座をも介すな
どしながら,法人間の銀行口座において入出金を繰り返したりし
つつ,最終的には自己の利益のための金員をC1社の銀行口座等
に入金したということが強く推認される。
そして,原審弁護人は,本件3.8億円の送金については,D
3からの指示に基づく節税策であり,D3の承諾を得ていると主
張するが,本件3.8億円を節税策としてC1社に支払うことの
指示又は承諾をしていない旨のD3の供述の信用性は高く,また,会長会議メモ等においても「節税」が「吸収」と同列に資金獲得
のスキームとして検討されていたと窺われることなどにも照らせ
ば,本件3.8億円のC1社への支払は,C3社の節税を真の目
的としたものではなく,被告人らが,C3社からD3に悟られず
に被告人らの支配下に資金を移動させて,C1社の資金等に流用
する意図を有していたと認められる。そうすると,本件各送金の
それぞれについても,被告人らにおいて,同様の意図で行われた
ものであることが強く推認される。
4
本件1億円(原判示第1)に関する故意ないし不法領得の意思
について
そして,原判決は,本件1億円の送金に際して,被告人らの故

意ないし不法領得の意思を認定するにあたって,要旨,次のとお
り判断した。
すなわち,全体的考察で検討してきたことに加え,本件1億円
の送金に先立つ会長会議メモの記載(被告人らが,本件1億円の
送金前から,C2社の資金を被告人ら又はC1社の支配下に移動
し,C1社の資金等に流用する意図を有していたことを窺わせる
こと)や,その後の本件1億円の使途(本件1億円の送金の2週
間後に5000万円が出金され,被告人A1のC2社への増資資
金や被告人らへの貸付資金等となったこと)等によれば,本件1
億円の送金は,被告人らにおいて,C1社の資金等に流用する意
図をもってなされたものであることが認められる。もっとも,D
3の「本件1億円の送金事実を事前に知らなかった」旨の供述は,その信用性に疑問があり,「本件1億円の送金は,D3の依頼に
より,C3社の資金繰りのため,一旦C3社に移動させたC2社
の資金を戻したものである」という被告人A3の供述は否定でき
ず,D3が,被告人らから,C2社から一旦C3社に返済された
投資用資金を再びC2社に戻すものと事前に知らされていた可能
性は否定できない。しかし,被告人らは,D3に対し,本件1億
円の一部を被告人A1名義でのC2社への増資資金に充てること
を伝えていない上,本件1億円の一部をC4社名義の口座に移動
した後,同口座から被告人A1及び同A2への貸付,C1社への
貸付等に使用しており,このような資金移動をD3が承諾すると

は考え難いことからすると,本件1億円の送金自体をD3が事前
に承諾していたとしても,それは,被告人らの意図を知らずにし
た錯誤に基づく承諾であって,そのようなD3の承諾をもって,
被告人らに本件1億円の送金を行う権限が与えられていたという
ことはできない。
そうすると,本件1億円の送金については,被告人らにおいて,
その一部について被告人A1のC2社の株式取得資金等のために
流用する意図が認められるから,故意ないし不法領得の意思があ
ったものと認められる。
5
本件2.8億円(原判示第2)に関する故意ないし不法領得の
意思について
また,原判決は,本件2.8億円の送金に際して,被告人らの
故意ないし不法領得の意思を認定するにあたって,要旨,次のと
おり判断した。
すなわち,信用できるD3供述によれば,D3は,本件2.8
億円の送金を事前に知らされていなかったと認められるところ,
C3社からC2社に2.8億円という多額の資金を送金する以上,C3社の代表取締役であるD3の指示又は承諾に基づいて行われ
るべきであるのに,これがないまま行われていることは,被告人
らが本件2.8億円の送金をD3に知られては不都合な目的,す
なわち,本来の投資以外の目的で行ったことが強く推認される。
また,本件2.8億円を用いた投資活動が一切なされていないこ

とからすれば,本件2.8億円の送金が専ら投資用資金の拠出の
目的でなされたものではなく,少なくともその一部についてC1
社の資金等に流用する意図でなされたものであることが強く推認
される。そして,全体的考察で検討してきたことを併せ考えれば,被告人らには,本件2.8億円の送金について,少なくともその
一部をC1社の資金等に流用する意図が認められ,したがって,
被告人らにおいて,本件2.8億円の送金につき故意ないし不法
領得の意思があったものと認められる。
第4

訴訟手続の法令違反について
所論は,本件各送金については,D3の指示又は承諾があり,

被告人らには,横領の故意や不法領得の意思はないから,被告人
らはいずれも無罪であるのに,原判決は,原判示第1については,D3が承諾をしていてもなお被告人らには不法領得の意思があり,原判示第2については,被告人らには不法領得の意思があるとい
う事実誤認を犯している。D3が承諾をしてもなお横領罪が成立
するのかといったことは,原審では当事者間において主張も立証
もされてこなかったことである。しかも,原判決は,「委託者の
承諾がないこと等は横領罪の成否において成立に傾きやすい重要
な事情ではあるものの,それは判断ないし評価事情の一つに過ぎ
ず,結局は,当該行為が受託者の不法領得の意思を実現する行為
と評価できるか否かを直截に問題とすべきである」という被告人
側に不利な法解釈を前提とした争点の設定を突如として行ってい

る。その訴訟手続はまさに不意打ちであって,被告人側の弁駁の
機会を完全に奪った違法なものであると主張する。
そこで,原審における訴訟経過について検討すると,原審検察
官は,本件1億円及び本件2.8億円について横領罪が成立する
のは,各送金についてD3の承諾がないからであり,D3の承諾
がないことについては,原審証人であるD3の「本件各送金を認
識していなかった」旨の供述により直接立証するとしていた。そ
して,原審の訴訟経過を見ても,D3の承諾の有無を巡って,当
事者の攻撃防御が展開されていた。しかしながら,原判決は,故
意ないし不法領得の意思を横領罪が成立するための要件として位
置づけた上,「全体的考察」を行って,被告人らが「D3に悟ら
れず,C3社から被告人らの支配下に資金を移動させ,C1社の
資金等に流用する意図を有していた」ものと認められるとし,さ
らに,本件各送金についても同様の意図で行われたものであるこ
とが強く推認されるとした上で,被告人らの故意ないし不法領得
の意思が認められるか否かを具体的に検討して,横領罪の成立を
認めた。しかし,検察官がD3の承諾の有無を主要な争点とする
証拠構造を提示し,これを前提に,被告人・弁護人側が防御のた
めの訴訟活動を行っていたのであるから,原審裁判所が,横領罪
の成否は,承諾の有無によって決まるわけではなく,不法領得の
意思の有無によって決まると考えるのであれば,改めて,不法領
得の意思の有無を争点として設定し,争点を顕在化させ,それを

どのような事実によって主張立証するのかを,当事者に明らかに
させるなどした上,必要があれば,追加や補充の主張や立証を促
すべきである。にもかかわらず,原審は,当事者の設定した争点
とは離れて全体的考察を行い,その点について,当事者に十分な
攻撃防御の機会を与えることなく,その判断を示しており,この
ような訴訟指揮は,不意打ちの防止の観点から到底是認すること
はできない。
しかも,原判決は,原審記録中の種々の客観的資料(メール,
メモ,会議資料,業務報告書等の記載)を取り上げて様々な解釈
をしているが,原審においては,その多くの点において,資料の
作成者にその点を質して説明を求めるなど,通常行われるべき証
拠調べがなされていない上,その証拠評価について,当事者に十
分な主張立証を尽くさせていないのであり,そのため,論理則,
経験則等に反する明白な誤解や牽強付会の解釈をして,誤った証
拠評価をしている。
以上によれば,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らか
な訴訟手続の法令違反があり,この点の論旨は理由がある。
第5
1
事実誤認について
所論の大要は,本件各送金については,D3の同意・承諾があ

り,被告人らに,横領の故意や不法領得の意思はないから,被告
人らはいずれも無罪である,というものである。
原審検察官が提示した証拠構造に照らせば,本件においては,

端的に,D3の承諾の有無,そして,その直接証拠である原審D
3供述の信用性を判断し,それを踏まえて,本件各送金について
の横領罪の成否を判断すれば足りるのであり,以下においては,
まず本件各送金についてのD3の承諾の有無を検討して,横領罪
の成否についての判断を示し,その上で,原審が行った全体的考
察についても検討する。なお,所論の主張については,必要な範
囲で簡潔に示す。
2
本件1億円の送金についての横領罪の成否
本件1億円の送金についてのD3の認識と承諾の有無


原判決の判断
原判決は,D3の「本件1億円の送金のことは知らなかった」
旨の原審供述について,前記のとおり,その供述は必ずしも信用
できないとした。
すなわち,D3は,「C2社からJ協会を通じてC3社に1億
円が送金されたことは知らず,J協会の通帳がないので確認もで
きなかった」とするが,これは「D1がD3に対し,平成22年
6月22日に関連2社団の各口座の通帳等を,同年7月5日にC
3社E1銀行F1支店口座及び関連2社団の通帳等を渡した」旨
記載されているD1の業務日報(原審弁9)と整合しないとした。また,D3は,平成22年6月27日17時31分,被告人A3
宛に,「C5社の支払を29日に実施する。同月28日朝一番に,関連法人からそれぞれ5000万円をC3社E1銀行F1支店口

座に資金移動させ,C3社の各支店からも同口座に送金させるよ
う指示してください。それと・・C2社+」とのメール➊を送信
し,その約40分後,C3社の各支店の担当者宛に,「7月2日
に各支店の銀行残高をすべて前記F1支店口座に資金移動してく
ださい」とのメール❷を送信しているところ,メール❷の送金日
がメール❶と矛盾すると読み取れる点について,D3は「メール
❷は,6月末までの入金を7月頭に資金移動するよう指示したも
ので,毎年やっている」旨説明するが,平成23年7月にはその
ような資金移動がないからその信用性に疑問があり,また,メー
ル❶の「C2社+」の記載についても合理的な説明がされていな
いとした。
そして,被告人A3の「D3からのメール❶を見て,これでは
6月末の資金需要を充足できない可能性があると考え,D3に電
話をかけて協議した。その結果,関連法人からC3社に各450
0万円送金することになった。さらに,C3社のC2社に対する
関連法人を経由した合計2億円の貸付金のうちの1億円を,7月
2日までにC2社に戻すという条件で,C3社の資金繰りのため
に一時的に返済することになった。その際,D3は各拠点に指示
しておくと述べていた。しかし,C2社の資金がC3社に戻った
6月29日に,D3が1億円を戻すタイミングを7月末にしたい
と言い出したので,6月29日の夜,被告人A1とD3が会い,
さらに同月30日の会長会議を経て,約束どおり7月2日に戻す

ことになった。当日のC3社E1銀行F1支店口座の残高が1億
円に満たなかったので,D3にE4銀行の口座から資金移動する
ように求めると,D3はこれに応じていたが,その資金移動が確
認できなかったため,同口座の管理者に自ら指示した」旨の原審
公判供述について,この被告人A3供述は,C2社から関連法人
を経由してC3社に1億円が送金された事実や,6月30日の会
長会議メモの「KSにお金が貯まったらC2社に戻す」との記載
と整合する上,メール➊及びメール❷で矛盾すると読み取れる内
容のメールが送信されている理由について合理的に説明するもの
であり,また,D1が本件1億円の送金の前後においてD3に対
して関連法人等の通帳を渡した事実からすれば,被告人らが本件
1億円の送金をあえて隠そうとしていなかったものと認められ,
これは被告人A3供述と整合することからすると,十分信用でき
るとした。
その上で,基本的に信用できる被告人A3供述や,客観的な事
実経過に照らせば,本件1億円の送金を含む,平成22年6月末
から7月初めの資金移動の趣旨は,D3の依頼により,C5社へ
の支払に関するC3社の資金繰りのために,一時的にC2社に拠
出された1億円をC3社に戻し,C5社への支払後にC3社に各
支店の資金が集まって資金繰りに余裕ができ次第,C2社に1億
円の資金を戻すこととしたものと認められ,本件1億円の送金は
D3も認識,承諾していた可能性を否定できないとした。


当審における検察官の主張と当裁判所の判断
原判決の判断は正当であり,D3が本件1億円の送金について
認識,承諾していた可能性があるとした結論に誤りはない。
これに対し,検察官は,本件1億円の送金をD3が知っていた
か否かに関する直接証拠は,D3の供述と被告人A3の供述しか
なく,どちらの供述が信用できるかということで認定するほかな
いとした上で,原判決が,D3供述の信用性を否定する根拠とし
た点について,次のとおり主張する。すなわち,①D1の業務日報(原審弁9)について,6月22日の記載には,「渡した」と
いう記述がないから,D1は,同日,D3から2社団の通帳を見
せて欲しいと依頼されて,Bに行ったものの渡していないとみる
のが自然であり,また,7月5日の記載には「本日」お渡ししま
したと記載されているから,その日に依頼があったことをその日
に実行したのではなく,数日前に依頼され,数日来課題になって
いたことが「ようやくその日になって解決した」という意味だと
読むのが自然である。そして,D3は,6月29日にはC5社へ
の支払が終了し,2社団の通帳を確認したいという動機が既にな
くなっていたことから,実際には通帳を見ることがなく,その結
果,J協会の通帳を見たことがないという記憶になったとしても
不思議ではない。②6月27日にD3が送信した2通のメールは矛盾しているわけではない。すなわち,被告人A3宛に送信した
メール(メール➊)は,C5社への支払のための資金移動を指示し
た内容のものであり,他方,各拠点の担当者宛に送信したメール
(メール❷)は,以前からD3が管理部からの依頼に基づいて行
っていた,支払用資金の移動に関する指示に過ぎない。これは,
D3が考えて出した指示ではなく,被告人A3ら管理部からの要
求をD3の指示の形にしたに過ぎず,D3自身が矛盾した指示を
したというわけではない。D3としては,月末に取引先からの支
払がある程度まとまって振り込まれる一方,月初めには税金の支
払等,支払用資金が必要であると認識していたことから,7月2
日に資金を集めてほしいとの管理部からの要求を特段不自然なも
のと考えず,その要望に応じただけであったと主張する。
しかし,①(D1の業務日報)は,D1の業務日報は,管理部に勤務していたD1が日々の業務の内容をその都度記載したもの
で,実際に行われことが記載された客観的証拠ともいうべきもの
であり,その記載内容の真実性は相当に高いものと認められる。
そして,6月22日の「9:00,D3社長より2社団の通帳&
銀行印送付依頼」,「10:00,外出:Bへ,2社団の銀行印
&通帳をD3社長へお渡しするため」という記載に照らせば,D
1は,その日の午前9時にD3に依頼され,午前10時にD3に
渡すために外出しているのであるから,D3が不在などといった
特段の記載がない以上,その日に渡したものと考えるのが自然で
ある。また,7月5日の「連絡事項欄」の「本日,C3社・2社
団の通帳&銀行印をD3社長にお渡ししました。」という記載に

ついてみても,単にその日にあった出来事が記載されているに過
ぎない上,業務日報の「対応業務欄」には,単に「通帳と印鑑を
D3社長に渡すため」との記載しかないことに照らすと,渡した
通帳と印鑑をより具体的に記載したに過ぎないとも考えられるの
であり,7月5日の「連絡事項欄」の記載から「数日来渡せなか
ったものが,ようやくその日になって渡すことができた」などと
考えるのは,単なる憶測でしかない。そうすると,D3は,6月
22日と7月5日の両日とも2社団の通帳の交付を受けているも
のと推認され,また,約2週間のうちに2度にわたって持ってこ
させているのであるから,通帳の内容を見ていることも強く推認
されるというべきである。そして,D3は,自らの意思で直接D
1に指示して通帳等の交付を受けているのに,これを否定し,さ
らに当審においては,ことさら「J協会」の通帳を見ることはで
きなかった旨強調している態度にも照らせば,D3の供述は,基
本的に信用できないというべきである。
また,②(メール❶及びメール❷についての説明)は,当審で取り調べたD3の検察官調書(検10)によれば,D3は,原判
決後の検察官の取り調べにおいて,メール❶及びメール❷に関し,「被告人A3ら管理部から,資金が足りないので各支店から資金
を移動させて欲しいと言われると,それに従って各支店の担当者
に指示を出していた。メール❷は,被告人A3かD1から資金移
動をお願いされたからに過ぎない。C2社+は,2社団からの返

済と各拠点からの資金移動で足りなければ,C2社からお金を移
してもらって,それを使おうという意味だったと思う」旨供述し
ている。しかし,D3は,それまで,C2社からの資金移動につ
いては知らないとしていた上,原判決後,検察官に改めて事情を
聞かれ,上記のように,被告人A3宛メール(メール❶)の「C
2社+」の記載について,2社団からの返済と各拠点からの資金
移動で足りなければ,C2社からの資金移動を行うことを意味す
るなどと供述するに至ったものの,被告人A3との間でそのよう
な話が出るに至った経緯やその後の被告人A3とのやり取りの内
容については,何らの具体的な説明もない。また,メール❷につ
いては,資金移動を被告人A3から依頼されただけで,前記被告
人A3宛のメール(メール❶)の内容とは無関係であるかのよう
にいうが,その時期のC3社の資金繰りに関する資金移動であれ
ば,C5社への支払やそのためのC2社からの資金移動と無関係
であるとは考えられず,それに関する説明が全くないのも不自然
である。この点に関するD3の原審供述が信用し難いことは原判
決が正当に指摘するとおりであり,当審で取り調べた供述調書の
内容をみても,その供述は,具体性に欠け,全く説得力はないと
いうべきである。
以上によれば,本件1億円の送金に関するD3供述は到底信用
できず,検察官の主張は理由がない。
本件1億円の送金後の資金移動と被告人らの流用目的について

しかしながら,原判決は,前記の全体的考察や本件1億円送金
後の資金移動の状況を踏まえ,本件1億円の送金の時点で,被告
人らは,その一部を本件C2社口座から出金して,C1社の資金
等に流用しようとすることを考えていたことが強く推認されるか
ら,D3が,本件1億円の送金自体を事前に承諾していたとして
も,その一部を被告人A1名義でのC2社への増資資金に充てる
ことやC4社名義の口座に資金移動することを承諾するとは考え
難いとし,そうすると,D3の事前の承諾は,被告人らの意図を
知らずにした錯誤に基づくものであるから,被告人らに本件1億
円の送金を行う権限が与えられていたということはできないとし
た。
これに対し,所論は,本件1億円の送金は,これに先立つ6月
28日のC2社からの1億円の資金移動と一組のものであって,
C2社が新たな資金をC3社から得たものではなく,そもそも,
本件資金移動時の平成22年7月2日の段階では,C4社への7
月16日の資金移動や同年11月以降の被告人らやC1社への貸
付などまだ決まっていなかったのであるから,錯誤による承諾と
する前提が欠けているなどと主張する。
そこで検討すると,7月2日に実行された本件1億円の送金は,
信用できる被告人A3供述によれば,前記のとおり,C3社の資
金繰りのため,C3社から関連2社団を通してC2社に拠出され
た投資用資金2億円のうちの1億円が,一時的にC3社に戻され,
それが再びC2社に戻されたに過ぎないと認められるから,6月
28日に実行されたC2社から(J協会経由で)C3社に資金移
動された1億円の送金と極めて関連性が強いもので,これらは一
組の資金移動ともいうべきものである。
そうすると,この一組の資金移動は,原判決が指摘する本件増
資のための資金移動やC4社への資金移動とは関係ないものであ
るから,本件1億円の送金について,その送金後の資金移動を理
由に被告人らの流用目的を認定することはできないというべきで
ある。原判決の事実認定は,本件1億円の送金に関連する事実関
係を見誤り,D3の承諾の有効性を判断するにあたり,無関係の
事情を殊更考慮したことにより,事実認定を誤ったもので,論理
則,経験則等に反するものというほかない。
原判決がD3の錯誤を認める根拠としたその他の事情について
また,原判決は,D3の錯誤を認めるにあたり,本件1億円の
送金の一部を被告人A1名義でのC2社への増資資金に充てるこ
とやC4社名義の口座に資金移動することを承諾するとは考え難
いとしているので,この点についても,更に進んで,当裁判所の
判断を示しておく。
まず,原判決は,本件1億円の送金前後の会長会議メモの記載
内容等を検討した上で,被告人らは,本件1億円の送金前から,
C2社への増資を検討し,その増資資金にC2社の資金を用いる
ことを考えていたと認められるとしている。しかし,平成22年

6月30日の会長会議メモ(原審甲57)の記載によれば,被告
人らは,その時点で,増資を検討していたものの,D3には伝え
ていなかったことが認められるところ,増資の原資としてC2社
の資金を用いるか否かについては,この記載自体からは明らかで
ない。また,原判決は,同月4日の会長会議メモ(原審甲57,
記録630丁-1808)の記載を指摘する。しかし,その前後
の記載によれば,テーマは「新会社を活用する」ことであり,こ
の新会社の「位置付け」が「C8社の吸収」であることに照らす
と,この新会社はC9社を指すものであると認められる。そうす
ると,「C2社からの出資」の記載が意味するところは,D3及
び被告人らにおいて,新会社C9社に合計4000万円を資金移
動させて支援しようというものであり,その具体的内容として,
C1社は,C2社からの貸付金により1円から1000万円の範
囲で新会社に出資し,C2社は,C1社が出資した金額を含めて
合計4000万円になるように新会社に貸し付ける,ということ
を表しているものと認められ,これが,C2社に対する,被告人
A1の出資内容を検討する内容とは到底認められない。以上のよ
うに,原判決は,会長会議メモの内容を誤解し,その評価を誤っ
ているのであり,これに基づく上記の事実認定は,論理則,経験
則等に反した不合理なものというほかない。
次に,原判決は,同年7月14日の会長会議メモの記載によれ
ば,被告人らは,7月16日に,D3に増資を行うことを伝えた

可能性は否定できないが,C3社からC2社に拠出されている資
金は,C3社のための投資用資金として拠出されていたことから
すると,D3が,被告人A1名義でのC2社への増資にC3社が
C2社に拠出した投資用資金を用いることを承諾するとは考え難
いとし,また,被告人らが,D3に対して,5000万円を保証
金名目で抜くことや,3000万円をC1社において確保するこ
と等を説明することは考え難いことからすれば,平成22年7月
16日にD3に伝えられた可能性があるのは,C2社に対して増
資することのみであり,その原資がC2社の資金であることはD
3に伝えていなかったと考えるのが自然であるとした。しかし,
被告人A1は,この点について,「本件増資はD3から要望され
たものであり,当初は断っていた。しかし,断り切れずに増資に
応ずることにし,D3に増資資金を貸して欲しい旨申し入れ,C
2社資金を増資資金に充てる旨の了解を得た」旨述べており,こ
れを否定するものは,D3供述のみである。そして,原判決も正
当に指摘するとおり,本件1億円の送金の承諾の有無に関するD
3供述は基本的に信用できない上,本件増資の点についても,こ
れを否定するD3供述を裏付けるような具体的事実は何ら認めら
れない。しかも,被告人A1の供述は,増資の検討状況をうかが
わせる前記の会長会議メモの記載(6月30日分,7月14日分)等に相応に整合している上,当時のD3と被告人らの関係が良好
であったことに照らしても,その信用性を否定できるほど不自然,
不合理なものではない。そうすると,被告人A1の供述の信用性
は直ちに否定できないのであって,本件増資に際し,被告人A1
がD3から,その資金としてC2社の資金を使う旨の承諾を得て
いたとの事実は否定できないというべきである。原判決は,証拠
の評価を誤り,論理則,経験則等に反して著しく不合理な判断を
したというほかない。
以上のとおり,D3の事前の承諾に錯誤があったと認めるに足
りる証拠は全くなく,原判決のこの点の判断も不合理というほか
ない。
本件1億円の送金についての横領罪の成否
本件1億円の送金について,D3が事前に認識・承諾していた
ことは明らかで,そこにはなんらの錯誤もないことも明らかとい
うべきであるから,被告人A3が本件1億円の送金を行ったこと
は権限に基づく有効なものと認められる。被告人らに原判決第1
の横領罪は成立せず,この点の論旨は理由がある。
3
本件2.8億円の送金についての横領罪の成否
本件2.8億円の資金移動についてのD3の認識


原判決の判断と所論
D3は,本件2.8億円の送金に関し,原審公判において,要
旨,「本件2.8億円の送金は知らなかった。C3社からC2社
への貸付金は,当初関連法人を介して貸し付け,その後,平成2
2年9月に直接貸し付ける形になったと聞いた2億円のみと認識

していた」と供述した。
そして,原判決は,D3供述の信用性について,まず,①原判によれば,D3が,
平成24年4月4日,被告人A3らに対し,C3社からC2社へ
の貸付金の額が2億8000万円ではなく,2億円ではないのか
と指摘した事実が認められ,これによれば,D3がその時点でC
3社のC2社への貸付金が2億円であると認識していたことは明
らかであるとした。そして,前記のように,本件1億円に関する
D3供述の信用性には疑問の点があるものの,その内容は,一旦
C2社に提供した投資用資金をC3社の資金繰りのために出し入
れしたことに関するものであり,D3として,重要度がそれほど
高かったとは考え難く,記憶違いなどもあり得ないとはいえない
のに対し,C3社としてC2社に数億円単位の投資用資金を総額
でいくら拠出することとしたかなどの重要な事項については,C
3社の社長であるD3が誤解することは考え難いとした。また,
原判決は,②平成22年9月30日以降,C2社からC3社名義の口座に,毎月24万2465円(2億円に対する年率1.47
5パーセントの30日分)が振り込まれ,これが1年にもわたっ
て受取利息として会計処理されており,これによれば,D3がC
3社のC2社への貸付金が2億円であると考えた根拠については,客観的な証拠と整合しているとした。
これに対し,所論は,本件2.8億円は,関連2社団を通して

拠出された2億円の投資用資金とは別の新たな投資用資金1.8
億円と,I機構を通して拠出していた1億円について,既に三者
間相殺の処理で直接貸付の形式になっていたものを,実際に資金
移動させて貸付を受けたことにするため,その分を合計したもの
であり,本件2.8億円の送金については,D3の承諾の下に行
われているのであるから,原判決が,D3の前記供述は信用でき
るとしたのは,誤りであると主張する。

当裁判所の判断
そこで,検討すると,原判決がD3供述の信用性を認めたこと
は,論理則,経験則等に反する不合理なものというほかない。以
下,本件2.8億円の送金について承諾したことはないとのD3
供述の信用性について,原判決の判断に触れながら,当裁判所の
判断を示す。
D3供述の一般的信用性
前記のとおり,D3は,自らが作成したメールについてさえ不
合理な説明をし,本件1億円の送金に関する承諾の有無という本
件の核心部分についての供述が信用できないのであるから,本件
2.8億円の送金に関する承諾の有無についても,その信用性は
慎重に検討すべきである。しかるに,原判決は,記憶違いの可能
性もないではないとして,安易にその信用性を肯定し,被告人ら
の弁解を排斥している。しかし,本件1億円の送金の有無に関す
る承諾の有無という事実は,検察官の立証構造からすれば,横領

罪の成否を決める重要な要素であり,核心部分である。D3とし
ても,その点については,捜査機関から十分な事情聴取を受けて
いるはずであり,記憶喚起の機会は十分あったはずである。にも
かかわらず,D3は,前記のように,事実に沿わない供述をして
いるのであるから,虚偽供述をしている疑いすらある。そうする
と,その供述の信用性は極めて低いというべきであり,その供述
を例外的に信用する場合には,客観的な証拠等により裏付けがな
されているか慎重な検討が必要というべきである。
銀行融資についてのD3の認識
D3は,前記のとおり,C3社からC2社への貸付金は,関連
法人を介して貸し付けた2億円のみであると認識していたと述べ
る。そして,原判決は,このことを理由の一つとして,2.8億
円の送金に承諾を与えたことはないとのD3供述の信用性を認め
る。
しかし,会長会議メモ及びC3社会議資料(平成22年7月2
日分(原審弁10),同月16日分(原審弁8),同年9月3日
分(同),同月17日分(同))の記載等によれば,被告人らと
D3は,平成22年7月頃にはC6社やC7社等の4社に対し合
計5億円(最大7億円)の投資をすることを検討していたこと,
そして,その投資資金についてはC3社から調達する(余剰資金
及び銀行借入により賄う)こととして,9月頃にはC3社のE1
銀行及びE5銀行からの融資を借り換えて,C2社に拠出するこ

とを具体的に検討していたことが窺われる。また,被告人らは,
原審において,「平成22年7月頃から9月頃にかけて,C3社
がE1銀行から短期貸付を受けていた1億円と,E5銀行から短
期貸付を受けていた1億円について,あらたに長期貸付に借り換
えるための手続きを取っていた。融資を受けられた分をC2社に
新たに拠出することについてD3の承諾を得ていた。融資を受け
た2億円分の利息については,C2社が負担することになった。
E5銀行からの融資は,1億円ではなく,8000万円となっ
た。」旨供述しているところ,これは上記C3社会議資料の内容
と整合し,E5銀行からの8000万円の融資が平成22年9月
30日に実行されたことや(原審甲73,記録630丁-205
3など),E5銀行からの融資については,D3も,借換えをし
たと供述していること(原審記録631丁-201)と合致して
いる。E1銀行からの融資は平成22年9月末頃に実行される見
込みであったことを示すD2メール(原審弁16。なお,その内
容の解釈について後記

)の記載にも沿うものである。しかも,

D3が合計2億円もの銀行融資に無関心とは考え難い上,C3社
会議資料の記載からしても,D3がその結果の報告を受け,承諾
していたものと十分推認でき,また,E1銀行からの融資に際し
ては,C3社の代表取締役であるD3の個人保証が求められてい
たことからしても(D2メール(当審弁81),当審被告人A3
供述(16,17頁)),D3の承諾や協力がないまま,E1銀

行との手続きが進められていたとは考え難い。これらによれば,
上記E1銀行及びE5銀行からの融資について,D3の承諾があ
ったことは否定できないというべきである。
そうすると,新たな投資用資金として,C3社が1.8億円の
銀行融資を受け,これをC2社に拠出したとの被告人らの前記供
述も否定できないのであり,特段の理由もなく,銀行融資につい
てD3の承諾があったとする被告人らの供述の信用性を否定し,
それを否定するD3供述の信用性を認めた原判決の判断は,上記
の証拠やそれらから認められる事実関係を軽視もしくは見落とし
たもので,論理則,経験則に反する不合理なものというほかない。本件2.8億円の送金と平成22年10月6日の1億円の送金
との関連について
被告人らは,本件2.8億円の送金の経緯について,「C3社
からI機構経由でC2社に拠出していた1億円については,既に,三者間相殺によって,C3社からC2社への直接貸付の形式とな
っていたが,この処理は契約上の措置に過ぎないから実際に資金
移動させた方がよいとの被告人A2の発案により,一旦C2社か
らC3社に返済し,再び,C3社からC2社に直接資金移動して
貸付を受けることとなった。この貸付を受ける1億円と前記の経
緯で新たに投資用資金として拠出されることになった1.8億円
を併せて本件2.8億円の送金となった。そして,平成22年1
0月6日のC2社からC3社への資金移動が,これに対応して一

旦返済することとなった1億円である。D3にも承諾を得てい
た。」旨供述する。被告人らの供述は,前記

の経緯で銀行融資

の借換分合計1.8億円が新たに拠出されることとなったこと,
平成22年7月27日付けで三者間相殺の処理がなされていたこ
と(原審甲12,記録630丁-727),平成22年10月4
日に本件2.8億円の送金が行われ,同月6日に本件C2社口座
からC3社E1銀行F1支店口座に1億円が送金されたこと,同
年10月1日付けで2.8億円の金銭消費貸借契約書(原審甲8
4)が作成されていることなどの事実経過に整合しており,その
供述内容に不自然,不合理な点はない。そうすると,本件2.8
億円の送金は,前記1.8億円の銀行融資の借換分の拠出と一体
のものとみることができ,その点も含めてD3が認識・承諾して
いたことは否定できない。
この点,原判決は,前記10月6日の1億円の送金については,
D3が本件2.8億円の送金自体を事前に知らなかったと認めら
れることからすると,前記1億円についての被告人らの供述も信
用することはできず,前記1億円の送金により,C3社が返済を
受けられる1億円の貸付金が全く存在しない結果となっているこ
とからすれば,その真の目的は,C2社のC3社に対する借金が
ない状態を作出することにあったなどと認定し(原判決71頁),被告人らの前記供述は,その金員の動きの理由を何とかして付け
なければならなかったためであって,信用することはできないと

している。原判決の趣旨は必ずしも明らかではないが,前記の1
億円は,被告人らの供述によれば,I機構を通して拠出された投
資用資金1億円を,C3社からC2社へ直接貸し付けた形にする
ため,当初は三者間相殺という形をとっていたものを(実質は債
権譲渡と考えられる),直接資金移動させて貸し付けた形にした
に過ぎず,前記の1億円返済により,三者間相殺によるC3社の
C2社に対する1億円の債権が消滅することはあっても,新たな
1億円の貸付債権は残っているのであるから,「返済を受けられ
る1億円の貸付金が全く存在しない結果となっている」との原判
決の認定は明らかな誤りである。しかも,原判決が根拠ともして
いる原審公判におけるD3の説明は(記録631丁―237),
全く具体性に欠け,趣旨不明,理解不能なものであり,被告人ら
の供述を否定する根拠足り得ない。
そうすると,被告人らの前記供述を覆すような事情は全くない
のであり,被告人らの供述の信用性を否定し,D3供述の信用性
を肯定する原判決の判断は論理則,経験則等に反する不合理なも
のというほかない。
D2によるD3への資金移動の依頼
原判決は,D2メール(原審弁16。平成22年9月30日付
け「9月29日業務報告」「☆D3社長に資金移動の依頼済み→
一旦,E1銀行F1支店の口座へ」)について,D2メールはD
2がD3に依頼した資金移動の内容が何を指すのか明らかでない

上,本件2.8億円の送金はC3社E1銀行F2支店口座から本
件C2社口座に送金がなされており,同メールに記載のある「E
1銀行F1支店」の口座は本件2.8億円の送金には利用されて
いないから,同メールを根拠に本件2.8億円の送金について,
D3が承諾していたとみることはできないとする。しかし,平成
22年9月末当時,D2とD3との間には他の資金移動に関する
やりとりは窺えず,D2がD3に依頼する資金移動としては,本
件2.8億円の送金以外のものは考えられない。そして,被告人
A3は,C3社E1銀行F2支店口座に一旦資金移動してから,
C2社口座に資金移動させており,これは,D2メールの「一旦」C3社E1銀行F1支店口座に移動させて,という記載に整合的
ともいえる上,「E1銀行F1支店」の記載は単なる勘違い又は
記載の誤りとも考えられる。
そうすると,D2がD3に対して,前記メールにより,本件2.
8億円の送金を事前に依頼していたことは否定できないというべ
きである。原判決は,D2メールの内容を解釈するにあたり,D
2本人に質すこともなく,単なる憶測でその内容が明確でないと
し,被告人らの主張の根拠にはならないとしたもので,論理則,
経験則等に反する不合理なものというほかない。
C3社E1銀行F2支店口座の開設とその利用について
原判決は,本件2.8億円の送金に用いられたC3社E1銀行
F2支店口座は,D3に無断で開設されたものであるとし,この

ことを理由の一つとして,本件2.8億円の送金に承諾を与えた
ことはないとのD3供述の信用性を認める。そして,D2やD1
が,捜査段階で,「この口座が開設された数日前頃に,C1社の
事務所で被告人A2か同A3のどちらかから口座開設を指示され,D1にE1銀行F2支店にC3社の口座を作るよう依頼した。」
(原審甲35,記録630丁-1301),「D2に指示されて,E1銀行F2支店でC3社名義の口座を新たに開設する手続をし
た」(原審甲40,記録630丁-1402)などと供述してい
ることによれば,C3社E1銀行F2支店口座は,D2の指示に
より,D1が開設したものと認められ,その開設を知らなかった
旨のD3供述は信用できるから,被告人らが無断で口座を開設し
たと認められるとした。
これに対し,所論は,D1の業務日報(原審弁9)の平成22
年7月26日の記載によれば,そこには「D3社長より,E1銀
行F2支店の口座開設指示あり。」との記載があり,この文言を
素直に読めば,同口座の開設はD3の指示によるものであること
は明らかであると主張する。
そこで検討すると,上記D1の業務日報は,前記のとおり客観
的証拠ともいうべきものであって,その記載内容の真実性は相当
に高いものと認められる。そして,所論指摘のとおり,平成22
年7月26日の業務として「D3社長より,E1銀行F2支店の
口座開設指示あり。」との記載がある以上,特段の事情がない限

り,C3社E1銀行F2支店口座については,同日,D3からD
1に対して,口座を開設するよう指示があったものと認めるのが
相当である。そして,上記業務日報の同月28日には「E1銀行
F2支店へ,口座開設申し込みのため行ってまいりました」との
記載が,同年8月18日には「E1銀行F2支店へ,銀行窓口に
て手続き・通帳受取り,帰社・D2さんへ報告,口座開設が本日
終了しました。通帳は後日D3社長にお渡しするそうです」との
記載があり,また,D3が同年8月12日から同月18日の間,
海外渡航していたこと(原審甲50,記録630丁-1776)
からすると,同日に口座開設手続を終えたD1は,D3に通帳を
渡せず,D2に通帳を渡したものと合理的に推認できる。そうす
ると,上記業務日報の記載と整合しないD2及びD1の各供述調
書並びにD3及びD2の各公判供述は,上記業務日報の記載との
整合性について納得のいく説明がない限り,直ちに信用すること
はできないというべきである。にもかかわらず,原判決は,「通
帳は後日D3社長にお渡しするそうです」との記載を捉え,業務
日報には,D1が「D3の指示」としてD2から伝えられたこと
が記載されている可能性があるから,実際にD3が同口座の開設
を指示したということはできないとする。しかし,関係者に上記
業務日報を示すなどしてその際の状況を何ら確認することをせず,何らの具体的根拠もないのに,抽象的な可能性を指摘して,被告
人らに不利益な事実を認定することは到底許されない。D3が口

座開設を知っていたこと,すなわち,被告人らがD3に隠れて口
座を開設したものでないことは否定できないというべきである。
原判決の判断は,論理則,経験則等に反する不合理なものという
ほかない。
そして,本件2.8億円の送金に際してC3社E1銀行F2支
店口座が利用された理由について,被告人A3は,当審において,「E1銀行F1支店のネットバンキングでの振込限度額が2億円
と思っていたので,2.8億円の資金移動をするには窓口振込を
するしかないと思った。E1銀行F1支店は管理部があるBから
遠いので,近距離のE1銀行F2支店でできればよいと思って聞
いてみたところ,他支店の通帳を使うよりF2支店の通帳の方を
使う方が手続はスムーズに進むと言われ,F2支店の口座を使う
ことにした」旨供述しているところ,その内容に不自然,不合理
なところはない。しかも,被告人A3は,D3の代理を名乗って,C3社G支店のD4に連絡し,C3社E1銀行F2支店口座に3.5億円の資金移動を依頼しており,そこに口止めなどの隠蔽工作
も窺えないのであり,これらの事実とC3社E1銀行F2支店口
座がD3の指示又は承諾の下に開設されたことが否定できないこ
とを併せ考えると,被告人A3が,前記3.5億円の資金移動や
本件2.8億円の資金移動を,D3らに隠そうとしていたと認め
ることはできない。
そうすると,原判決がD3供述の信用性を認める根拠として挙

げる前記の理由は,根拠がないというべきである。
D3の認識に関するその他の事情
原判決は,C3社が2億ないし1億8000万円の資金を銀行
から借り入れてC2社に提供し,その金利をC2社が負担するこ
となどが協議されていたことを示す平成22年9月3日及び同月
17日のC3社会議の資料(原審弁8)について,そもそもD3
に対して用いられたものか疑問があり,同資料の記載からは,被
告人らがD3に対して,C3社からC2社に対して本件2.8億
円の送金をする旨を説明したと認めることはできないとする。そ
して,さらに,原判決は,C3社会議の資料のデータの一部が会
議終了後に編集された可能性がある上,D2メール(平成23年
9月8日分,原審甲17,記録630丁-3115)によれば,
被告人らがD3に見せる資料とC1社内で共有する資料の内容が
大きく異なっており,そのようなこと自体がC1社内での共通理
解とされていたと認められることからすると,それ以外にもD3
に見られたくない部分を削除し,加筆・修正するなどした資料が
ある可能性が否定できず,データが保存されていたC3社会議資
料(原審弁8及び原審甲87)が,現にD3が出席した会議にお
いて実際に用いられた資料であるかには疑問があるとする。しか
し,原判決のいう編集された可能性は,抽象的なものに過ぎず,
実際に改変が行われたものがあるのか,行われたとしてどのよう
な内容であるのか,具体的な指摘がない。しかも,前記D2メー

ルで示された,2種類のC3社会議資料の存在についても,2種
類の資料が存在するときは,そのことを明らかにする資料が別途
存在しているなど,2種類の資料がデータとして残っているので
あり,D3に示されなかった資料のデータが削除されたり上書き
されたりして,抹消されたりなどはしていない。そして,同一日
付で1種類の資料しか存在しない場合には,特段の事情がない限
り,その資料がC3社会議資料として用いられたものと認めるの
が相当であるから,前記9月3日及び同月17日のC3社会議の
資料はD3に示されたものというべきである。具体的な根拠もな
く,この点を否定する原判決は,論理則,経験則等に反している
というほかない。そうすると,D3は,C3社が銀行から1.8
億円の融資を受け,それをC2社に投資用資金として拠出するこ
とについて,事前に説明を受けていたことは否定できず,ひいて
は,本件2.8億円の送金についても,事前に説明を受けていた
可能性を否定できない。
また,原判決は,平成22年9月17日は,D3は,脱税問題
で早朝から慌ただしく,元気がない様子であったのだから,C3
社から多額の投資用資金を追加で拠出するという緊急性の乏しい
話をしてこれを承諾するとは考え難いとする。しかし,前記のと
おり2億円もの銀行融資は,C3社や被告人らにとっては重要な
事項であり,しかも,融資の実行が9月末に迫っていたのである
から,9月17日に脱税問題が浮上したからといって,被告人ら

が融資話を中断(停止)させるとは考え難く,また,被告人らを
信頼し,脱税問題についても相応に頼ろうとしていたD3が,被
告人らの意向を否定することも考え難いともいえるから,これら
の事情をD3供述の信用性判断の決め手とすることは相当ではな
い。
さらに,原判決は,被告人らの供述からは,そもそもD3の海
外渡航中に本件2.8億円の送金を急いで実施する理由があった
とも考えられないとする。しかし,被告人A3の供述によれば,
D2は

9月29日,D2メール(原審弁16)

によって,D3に対して,C3社E1銀行F1支店口座への資金
移動を依頼していたのであり,これを受けたD3がC3社の支店
担当者に指示し,同口座に資金移動をさせる手はずとなっていた
こと,そして,9月末までに,同口座からC2社に2.8億円が
資金移動されることになっていたことが認められるのであり,こ
れらによれば,被告人らが,10月1日から4日にかけて本件2.8億円の送金のための手続を行ったことは,「海外渡航中に急い
で実施した」というものではなく,D3が資金移動を予定通り実
施しないまま海外渡航をしたことから,本来の予定より遅れて被
告人A3がD3に代わって指示をして実施したと評価しうるもの
であって,被告人A3の対応がことさら不自然ということはでき
ない。
また,原判決は,平成22年9月30日以降の2億円に対する

利息(月額24万2465円)を受け取っていたことを根拠に,
D3がC3社のC2社への貸付金は2億円であるとしていること
は客観的な証拠と整合しているとし,さらに,その利息は,C2
社に拠出されていた当初の2億円に対する利息であったと認定し
ている。しかし,この当初の2億円はC3社の余剰資金を原資と
する拠出であって,拠出当初より利息は全く支払われていなかっ
たのであるから,上記の利息が当初の2億円の利息と考えること
は不自然である上,拠出額全体について利息を支払うのではなく,銀行融資を原資とする2億円分について,利息相当額を支払うこ
とになったという,被告人らの供述も不自然,不合理とはいえな
いから,上記の利息が当初の2億円の利息であるとする根拠もな
い。また,原判決は,借換金額が2000万円減額になったのに,D3が嫌がると思ったためという理由で2億円に対する金利を送
金し続けたのは不自然であるとするが,それ自体,必ずしも不自
然とはいえない上,実際の銀行利息はより低率であったのにその
まま支払続けていることに照らしても,不自然とはいえない。そ
うすると,C2社には,投資資金として,C3社から当初の2億
円の資金以外にさらに1.8億円の追加資金が拠出され,このこ
とはD3も了承していたという被告人らの供述を否定することは
できないというべきである。
さらに,原判決は,平成22年12月24日のC3社会議にお
いて,C2社のC3社からの借入金が2億8000万円である旨

報告されたという点についても,本件2.8億円の送金から2か
月以上経過したC3社会議の資料である上,D3は,そのような
内容の資料を見て,間違いではないかと指摘した旨述べているか
ら,当該資料の記載から,D3が本件2.8億円の送金を知って
いたことを示すとはいえないとする。しかし,被告人らが本件2.8億円の送金をD3に隠していたなら,被告人らの方から,借入
金について資料を見せながら2.8億円と説明すること自体不自
然なものと言わなければならない。むしろ,被告人らが資料を示
しながら2.8億円と説明したということは,被告人らが本件2.8億円の送金をD3に隠していなかったことの表れというべきで
ある。また,仮にD3自身が記憶違いなどで,その当時の拠出金
を2億円と認識していたのであれば,何故,D3の認識と被告人
らの説明が食い違うのか,D3において相応の追及(被告人らに
説明を求めること)があってしかるべきである上,被告人らにお
いても,D3の誤解に対して何らの説明もしないとは考えられな
い。そうすると,D3が,本件2.8億円の送金を知っていた可
能性は否定できないというべきである。
以上によれば,原判決が,D3供述の信用性を支え,被告人ら
の供述を否定する根拠とした事実は,いずれも理由がないという
べきである。
なお,原判決は,平成24年4月4日,D3が被告人A3から
平成23年6月30日時点のC3社からC2社への貸付金の額が

2億8000万円と示された際,2億円ではないのかと指摘した
事実が認められる(原審甲88。記録631丁―155)とする
が,D3が具体的にどのような理由からそのような指摘をしたか
は必ずしも明らかではない上,平成23年4月以降にも,数度に
わたりC3社からC2社に投資用資金が新たに拠出されており,
D3がこれらの拠出を認識していたことも否定できないのである
から,D3のいう「2億円」や紙片に記載のある「2億円」につ
いても,いつの時点のどの2億円を指すものなのか,明らかでは
ないというべきである。したがって,D3の決裂時の言動やその
際に見た資料(原審甲87)等を前提にしても,D3の「C3社
からC2社への貸付金は,当初関連法人を介して貸し付け,その
後,平成22年9月に直接貸し付ける形になったと聞いた2億円
のみと認識していた」という供述は到底信用することができない。小括
以上によれば,1.8億円の銀行融資について,D3が認識し
ていたことは否定できず,D3の承諾を得て,1.8億円の銀行
融資を受け,これをC2社に拠出したとの被告人らの供述も否定
できない上(前記

),2.8億円のうちの1億円については,

I機構を通して拠出された投資用資金1億円を,C3社からC2
社へ直接貸し付けた形にするため,直接資金移動させたもので,
このことについては,D3も認識・承諾していたとの被告人らの
供述も否定できない(前記

)。そして,D2がD3に対して,

本件2.8億円の資金移動を事前に依頼していたことは否定でき
ないこと(前記

),C3社E1銀行F2支店口座が隠し口座で

はなく,被告人A3らに本件資金移動を隠そうという意図もうか
がえないこと(前記

)などからすると,「D3に資金移動を依

頼して承諾を得ていたが,それをしないままD3が海外出張をし
たため,被告人A3がD4に指示をして,資金移動させた」旨の
被告人らの供述は否定できず,D3が本件2.8億円の送金を事
前に知っていたことや,それについて承諾を与えていた可能性も
否定できない。本件2.8億円の送金について知らなかったとす
るD3供述の信用性を認めた原判決の判断は,重要な客観的事実
を軽視もしくは見落としたか,不合理な推認に基づくもので,到
底是認できないというべきである。
本件2.8億円についての横領罪の成否
以上の検討によれば,本件2.8億円の送金について知らなか
ったというD3の原審供述は信用できず,本件2.8億円の送金
については,被告人らとD3らが従前から協議してきたことに基
づいてなされたもので,被告人A3が,D3の承諾の下,C3社
G支店の従業員に指示した上で,3.5億円をC3社E1銀行F
2支店口座に送金させたことは否定できないから,その中から,
本件2.8億円の送金をしたことも,D3の承諾に基づく有効な
ものと認められる。被告人らに原判決第2の横領罪は成立せず,
この点の論旨は理由がある。

4
全体的考察について
原判決は,全体的考察を行って,本件3.8億円のC1社への
資金移動については,C3社の節税を真の目的としたものではな
く,被告人らが,C3社からD3に悟られずに被告人らの支配下
に資金を移動させて,C1社の資金等に流用する意図を有してい

開設と銀行届出印の変更を

3.8億円の送金

は,D3の指示に基づく節税策によるものであるとの被告人らの
主張を排斥しているので,これらの点についても,当裁判所の判
断を示しておく。
銀行口座の無断開設と銀行届出印の変更

銀行口座の無断開設について
まず,C3社E1銀行F2支店口座に関する口座開設について
は,被告人らがD3に無断で口座を開設したと認められないこと
は,前記


(被告人A3がC3社E1銀行F2支店口座に

送金したこと)で検討したとおりである。

銀行届出印の変更について
次に,C3社が利用する銀行口座の届出印が変更されているこ
とについて検討すると,原判決は,D3がその点について知らな
い旨述べ,決裂時にはそのことを前提に被告人らやD2らを追及
していることから,被告人らがD3に無断で銀行届出印を変更し,D3はそのことを知らなかった旨認定している。

これに対し所論は,銀行から旧印鑑が欠けているとの指摘があ
り,変更の必要があったのであって,D3には銀行印を変更する
旨報告し,その包括的な承諾を得ていた上,個々の銀行届出印の
変更に対する個別の同意を得ていない場合でも,代表取締役であ
る被告人A2がその権限を用いてC3社の銀行届出印を変更する
ことは可能であって,その後にD3に報告したことも十分に考え
られるから,D3に無断で変更したわけではないと主張する。
そこで検討すると,被告人A3(記録631丁-297ないし
300)及び被告人A2(記録631丁-415)は,「C3社
では,会社代表印と銀行届出印を同一の印(旧印鑑)で兼用して
いたが,一般の事業者は実印と銀行届出印を分けている上,C3
社の旧印鑑の縁の部分が欠けていることを銀行から指摘されてい
たことから,このまま旧印鑑を銀行印として使い続けることは不
都合と感じて,変更することにした。新C3社の設立を検討する
にあたり作成してあった銀行印(新印鑑)をそのまま流用してC
3社の新しい銀行届出印とした。D3には報告している」旨供述
しているところ,その内容は自然で合理的である上,平成23年
1月から2月上旬頃に新C3社の設立が検討され始め,同月16
日に新C3社のための会社設立印鑑セット(代表取締役印,銀行
印,会社印の3本組)が発注されたものの(原審甲77),平成
23年2月22日頃に新C3社の設立検討が中断され(以上,原
審被告人A3供述等),その後,順次,C3社の銀行口座の届出

印が新印鑑に変更されたという事実経過とも整合している。そし
て,そもそも,被告人らが,D3に隠れて資金移動をするための
準備行為として,隠し口座を開設し,銀行届出印を変更しようと
するのであれば,そのことをD3など被告人ら以外の人物には,
できる限り悟られないようにすべきであるが,被告人らは,原判
決も指摘するとおり,D1に指示するなどして,管理部が通常管
理していないC3社の各支店の口座の銀行届出印まで変更し,さ
らには,管理部が管理しているとはいえ,D3の目に触れること
が多いと考えられる,C3社E1銀行F1支店口座やE5銀行F
6支店口座の銀行届出印まで変更している。そこには,銀行届出
印の変更をD3に隠しておこうという意図をくみ取ることはでき
ず,むしろ,銀行取引の改善・円滑化のため,届出印を変更しよ
うとする意図しか窺えない。そうすると,個々の届出印変更手続
の具体的状況についてはともかく,全体的な銀行届出印の変更に
ついては,D3に対して報告があり,包括的な承諾があったと考
えるのが自然であるから,上記の被告人らの供述の信用性は高く,これに反するD3供述は信用できないというべきである。
原判決は,上記の客観的事実関係を軽視もしくは見落とした結
果,被告人らの供述の信用性判断を誤ったもので,論理則,経験
則等に反する不合理な認定というほかない。
節税策について

所論は,被告人らは,本件3.8億円の送金は,D3からの指

示に基づいてC3社の節税を検討する中で,当初はC2社に報酬
として支払うことを検討したが,税理士の助言があって,実働し
たC1社に報酬として支払うことになったものであり,C1社に
移動した資金も,後にC3社のための投資に活用することを考え
ていたと主張する。これに対し,原判決は,①D3が節税策を指示していた可能性はあるものの,本件3.8億円をC1社に支払
うという節税策については,C3社にとって非常にリスクが大き
く経済的合理性に欠ける取引であり,このような取引にD3が同
意するとは考え難いこと,②平成24年4月5日の会長会議メモ(原審甲102)に「節税の必要性の提案+ねじ込み」との記載
があり,仮にD3が本件3.8億円に関する節税について承諾し
ていたとすれば,その時点でD3に対して節税の必要性を提案あ
るいはねじ込みをする必要性が全くないこと,③税務署の調べが入っている時期に節税をお願いするはずがないとのD3の供述に
も理由があることからすれば,本件3.8億円を節税策としてC
1社に支払うことの指示又は承諾をしていない旨のD3の供述は
信用性が高いとした。

そこで検討すると,まず③(D3が本件節税策を指示していないこと)については,原判決は,D3による節税策の指示の存在
については,「可能性はある」(原判決39頁)としてこれを否
定していないところ,被告人らが主張する節税策以外にどのよう
な節税策があったかについて全く言及していない。そして,記録

に照らしても,被告人らの主張する本件節税策以外に具体的な節
税策が窺えないのであるから,D3による節税策の指示の存在の
可能性を認める以上,後にその指示がD3によって撤回されたな
ど,特段の事情がない限りは,本件節税策はD3が指示又は承諾
したものである可能性が高いというべきである。D3は,税務署
の調査が入っている時期に節税策を指示するはずがないというが,税務調査が入った後に,節税策の検討を中止するよう改めて指示
したという事情も窺えない上,税務署の調査が入っていたとして
も,違法不当なものでなければ,節税策として十分とりうるので
あるから,D3の供述は合理的な説明とはいえない。原判決は,
D3供述に安易に依拠して不合理な事実認定に至っているという
ほかない。
また,①(節税策に経済的合理性がないこと)は,被告人らは,D3が指示する節税策とは,とにかく税金を支払いたくない,と
いう趣旨のものであって,税務処理に際して,経費を多くして利
益を少なくし,納める税額を減らした上,経費として多く支出し
た分については,C3社又はD3の将来の収益の増加に結び付く
方策を意味するものと理解していた旨供述しているところ,その
内容は,相応に合理的で,本件証拠関係に照らしても,被告人ら
がそのように捉えていたということ自体を否定すべきものは見当
たらない。そして,被告人らは,「本件で節税策(平成23年3
月期)となったC3社とC1社との間で締結された3.8億円の

FA契約は,その時点ではC1社によるM&Aが成功裏に終わっ
ている社団法人について,その社団法人の事業がC3社の事業と
関連し,C3社の収益増加に寄与するものであり,M&Aについ
ての報酬の支払いが,税務処理上C3社の経費として認められる
との見込があったから,経費の支払対象として選定したものであ
り,その点については,C3社の顧問税理士にも相談し,D3に
も承諾を得ている」旨供述しているところ,その供述内容に不自
然,不合理な点は見当たらない。
原判決(原判決36,37頁)は,原審証人D5や原審証人D
2の供述に依拠して,「C3社にとって非常にリスクが大きく経
済的合理性に欠ける」と判断しているが,D5やD2は税理士や
会計士であり,経理・会計事務の専門家ではあっても,M&Aや
経営コンサルタントとしての専門家と認めるべき証拠はないから,被告人らが行ったM&Aや本件FA契約の当否を的確に判断する
ことができるか疑問がある。そして,原判決が,M&Aの成否を
リスクとして問題としたのであれば,本件節税策においては,既
に成功したM&Aを対象としているのであるから,全く当たらな
い。また,支出額に見合う経済的利益の増加が見込めるか否かを
問題としているなら,そもそも,M&Aの対象となった社団法人
の事業は,C3社の事業に関連し,その収益の増加に寄与するも
のと判断されたからこそ,節税策の対象として選定されたのであ
り,C3社の利益増加に相応に結び付くものとの推認ができるか

ら,C3社が得られる具体的利益について審理も尽くさないまま,推測で「C3社にとって非常にリスクが大きく経済的合理性に欠
ける取引」と判断することはできないというべきである。さらに,C3社会議資料の記載等によれば,被告人らのM&Aに対する姿
勢は,その収益状況や資産状況について相応に調査していること
が窺われる上,学校法人M&Aについては,学校経営による収益
だけではなく,その所有する不動産等の取得も目指していたこと
が窺われるから,通常は,支配権を取得した法人自体に,取得し
た費用に相応に見合う経済的,財産的価値(相応の資産を所有し,他に支配権を再譲渡すれば,相当な対価が得られるということ)
があるものと一応推定でき,M&Aの対象となった法人の収支状
況や資産状況等を具体的に検討することなく,経済的合理性に欠
けると判断することも許されないというべきである。原判決は,
証人の立場や経験を見誤り,その意見にわたる部分に不当に依拠
し,具体的な事実関係を軽視した事実認定をしており,論理則,
経験則等に反しているというほかない。
さらに,②(「節税の必要性の提案+ねじ込み」の記載)は,平成24年4月5日の会長会議メモ(原審甲102)の前後の記
載内容,すなわち,「従来→裏スキームでやっていた」「今後→
D3社長関与開始。裏スキームを表スキームにしてやっていく」
「新スキーム,KSが直接寄附金の実施」「作業工程,D3社長
との信頼関係の再構築,節税スキームをD3社長に理解させる,

節税スキームをD3社長が行う」などに照らせば,その記載の意
味するところは,学校法人M&Aなどにおいて,従前はC1社に
おいて寄付を行っていた「裏スキーム」という節税方法を,今後
はC3社において寄付を行う「表スキーム」という節税方法に変
更することとし,この変更をD3に提案・説明し,実施していく
ことを検討したものと認めることができる。そうすると,前記の
記載は,被告人らにおいては,C1社が学校法人に寄付を行うこ
とでC3社のために節税策を行っていたことを前提とするもので
あり,D3がその具体的手法をよく理解していなかったことは窺
えるものの,そのこと自体は認識していたと認められ,「節税の
必要性の提案+ねじ込み」の記載から,それまで節税策について
の説明がなかったことを前提に,D3の承諾もなかったとする原
判決の判断は,会長会議メモの前記の記載を見落としたか,不当
に軽視したもので,不合理というほかない。
全体的考察の総括
原判決は,被告人らの不法領得の意思を認定するに当たり,全
体的考察によって会長会議メモ等の客観的証拠を多岐にわたって
拾い上げて検討し,これらについて,D3供述の信用性を補い,
さらに,それを超えて独自に高い証明力を持つものとして評価す
るに至っている。原判決がこのように判断を誤った原因は,原審
が,これらの点を争点とせず,当事者に十分な攻撃防御をさせな
かったところにあることは明らかである。上記で検討したことに

よれば原審記録のみによっても,本件各送金に関するD3供述に
信用性がないことは明らかで,検察官の立証の主要な根拠が失わ
れたのであるから,通常であれば,そのまま無罪判決に至るのが
自然な訴訟経過といえようが,仮に,原審において直ちに無罪判
決をすることが躊躇される事情があると考えたならば,争点整理
を改めて行い,その点について,当事者に攻撃防御を尽くさせる
べきであったし,それが困難であったとする事情も見当たらない。そして,再設定した争点を巡って,当事者による攻撃防御が相応
になされれば,原判決が陥ったような不合理な評価には至らなか
ったものといえよう。全体的考察により,不意打ち的に被告人ら
の有罪を導いた原審の訴訟手続の違法は極めて大きいというほか
ない。
第6

破棄自判
以上のとおり,本件各送金について,被告人らに横領罪の成立

を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤
認があり,また,原審の訴訟指揮には不意打ち防止の観点から是
認できない判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違
反があるから,原判決は破棄を免れない。そして,以上で検討し
てきたことに鑑みれば,本件を原審に差し戻して審理を尽くさせ
るまでもなく,被告人らが無罪であることは明らかであるから,
当審において自判することが相当である。そこで,刑訴法397
条1項,379条,382条により原判決中,被告人らに係る有

罪部分を破棄し,同法400条ただし書に従い,当裁判所におい
て,被告事件について更に判決することとする。
本件公訴事実の要旨は,原判示第1については,「被告人A1
及び同A3は」とあるのを,「被告人3名は」と訂正するほかは,原判示第1の罪となるべき事実記載のとおりであり,原判決第2
については,その記載のとおりであるが,これらの公訴事実のう
ち,被告人A2に関して原審が無罪とした部分以外についても,
いずれも犯罪の証明がないことに帰するから,刑訴法336条に
より,被告人らに対し,いずれも無罪の言い渡しをすることとす
る。
(検察官松山佳弘出席)
平成29年8月4日
東京高等裁判所第11刑事部

裁判長裁判官

栃木
裁判官

菱田泰
裁判官

佐藤
晋一郎

力信
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