判例検索β > 平成25年(行ウ)第14号
高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求事件
事件番号平成25(行ウ)14
事件名高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求事件
裁判年月日平成29年7月28日
法廷名大阪地方裁判所
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主1文
文部科学大臣が原告に対し平成25年2月20日付けでした,平成25年文部科学省令第3号による改正前の公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則1条1項2号ハの規定に基づく指定をしない旨の処分を取り消す。

2
文部科学大臣は,原告に対し,A高級学校について平成25年文部科学省令第3号による改正前の公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則1条1項2号ハの規定に基づく指定をせよ。

3
訴訟費用は被告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
主文同旨

第2

事案の概要
本件は,A高級学校を設置及び運営する原告が,公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(平成25年法律第90号による改正前のもの。同号により法律の題名が「高等学校等就学支援金の支給に関する法律」と改められた。以下「支給法」という。)2条1項5号の委任を受けて定められた同法施行規則(平成22年文部科学省令第13号。ただし,平成25年文部科学省令第3号による改正前のもの。以下「本件規則」という。)1条1項2号ハの規定(以下「本件規定」という。)に基づく文部科学大臣の指定を受けるため,当該指定に関する規程(「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」。以下「本件規程」という。14条1項に基づいて当該指定の申請をしたところ,

文部科学大臣から,
平成25年2月20日,当該指定をしない旨の処分(以下「本件不指定処分」という。)を受けたことから,本件不指定処分の取消し及び当該指定の義務付けを求める事案である。
1
関係法令の概要
(1)

教育基本法,学校教育法及び私立学校法
教育基本法16条1項は,教育は,「不当な支配」に服することなく,同法及び他の法律の定めるところにより行われるべきものである旨規定する。


学校教育法は,「学校」を,幼稚園,小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,大学及び高等専門学校とする旨規定しつつ(1条),同条に定める学校以外の教育施設で,職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し,又は教養の向上を図ることを目的として同法124条各号に該当する組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)を専修学校とし(124条),同法1条に定める学校以外のもので,学校教育に類する教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び専修学校の教育を行うものを除く。)を各種学校とする(134条1項)旨規定する。


私立学校法は,私立学校の特性に鑑み,その自主性を重んじ,公共性を高めることによって,
私立学校の健全な発達を図ることを目的とし
(1条)

学校教育法1条の規定する学校及び幼保連携型認定こども園を「学校」とした上(2条1項),私立学校の設置を目的として私立学校法の定めるところにより設立される法人を「学校法人」としつつ(3条),私立各種学校を設置しようとする者は,各種学校の設置のみを目的とする法人を設立することができる旨規定し(64条4項),同法64条4項の法人(以下「準学校法人」という。)には,学校法人に関する同法第3章の規定が準用される旨規定する(64条5項)。
(2)

支給法


支給法1条は,支給法は,「公立高等学校」について授業料を徴収しないこととするとともに,「公立高等学校」以外の「高等学校等」の生徒等がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。)の支給を受けることができることとすることにより,「高等学校等」における教育に係る経済的負担の軽減を図り,もって教育の機会均等に寄与することを目的とする旨規定する。


支給法2条1項は,「高等学校等」とは,高等学校(1号),中等教育学校の後期課程(2号),特別支援学校の高等部(3号),高等専門学校(4号)のほか,専修学校及び各種学校で高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの(5号)をいう旨規定する。そして,同条2項は,「公立高等学校」とは,地方公共団体の設置する高等学校,
中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部をいう旨規定し,同条3項は,「私立高等学校等」とは,「公立高等学校」以外の「高等学校等」をいう旨規定する。


支給法4条1項は,就学支援金は,「私立高等学校等」に在学する生徒
又は学生で日本国内に住所を有する者に対し,当該「私立高等学校等」における就学について支給する旨規定する。
(3)

本件規則(甲1)
本件規則1条1項2号は,支給法2条1項5号に掲げる各種学校のうち高
等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものは,我が国に居住する外国人を専ら対象とするもののうち,①「高等学校に対応する外国の学校の課程と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられたものであって,文部科学大臣が指定したもの」(本件規則1条1項2号イ)
,②上記①のほか,
「その教育活動等について,
文部科学大臣が指定する団体の認定を受けたものであって,文部科学大臣が指定したもの」(同号ロ),③上記①及び②のほか,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」(同号ハ〔本件規定〕)とする旨規定する。
(4)

本件規程(平成22年11月5日文部科学大臣決定。甲2)
本件規程1条は,本件規則1条1項2号ハ(本件規定)に基づく指定の基準及び手続等は本件規程の定めるところによる旨規定する。


本件規程第2章は,指定の基準について定め,本件規定に基づき各種学校のうち高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるもの(以下「指定教育施設」という。)の修業年限(2条),授業時数(3条),同時に授業を行う生徒(4条),授業科目(5条),教員数(6条),教員の資格(7条),校地等(8条),校舎等(9条),校舎の面積(10条),設備(11条)及び情報の提供等(12条)について定めた上,13条において,指定教育施設は,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない旨規定する。


本件規程第3章は,指定の手続等について定め,14条において,本件規定に基づく指定を受けようとする教育施設の設置者は所定の書類を添えて文部科学大臣に申請しなければならず,文部科学大臣は指定のために必要な書類の提出を求めることができる旨規定し,15条において,文部科学大臣は,本件規定に基づく指定を行おうとするときは,あらかじめ,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で文部科学大臣が別に定めるものの意見を聴くものとする旨規定している。また,17条1項において,文部科学大臣は,指定教育施設が同条1項各号のいずれかに該当するときは本件規定による指定を取り消すことができる旨規定し,18条1項において,文部科学大臣は,指定教育施設の設置者が留意すべき事項があると認めるときは,当該者に対し,当該事項の内容を通知する旨規定する。
2
前提となる事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。
(1)

当事者等
原告は,
教育基本法及び学校教育法に従い,
各種学校を設立し,
幼稚園,
小学校,中学校,高等学校教育に準ずる教育と民族教育を行い,在日同胞社会及び日本と国際社会において活躍する有能な人材を育成することを目的として平成元年6月21日に大阪府知事から認可を受けた準学校法人であり,A高級学校ほか11校の学校を運営している。(甲8の1)

A高級学校は,昭和41年3月3日に各種学校として設置認可を受けた学校である。同校は,学校教育法に基づき,同校に入学する在日朝鮮人子女に対し高等普通教育に準ずる教育を施し,朝鮮人として必要な教養を高め,併せて朝・日両国民の親善に寄与し得る人材を育成することを目的としている。(甲8の1)


在日本朝鮮人総聯合会(以下「朝鮮総聯」という。)は,昭和30年に設立された在日朝鮮人の団体である。朝鮮総聯の綱領(2004年5月に採択されたもの)では,「われわれは,愛族愛国の旗じるしのもとに,すべての在日同胞を朝鮮民主主義人民共和国のまわりに総結集させ,同胞の権益擁護とチュチェ偉業の継承,完成のため献身する。」,
「われわれは,
在日同胞が民族の尊厳をもち,母国の言葉と文字,文化と歴史,風習をはじめとする素養をもつようにし,同胞社会において民族性を守り発揚させる。」,「われわれは,朝鮮民主主義人民共和国を熱烈に愛し擁護し,合弁・合作と交流事業を経済,文化,科学技術の各分野において強化し,国の富強発展に特色のある貢献をする。」などとされ,ホームページでは,「朝鮮総聯は,各界各層の在日同胞の民族的利益を代弁しその実現と民族性を守るために活動する民族団体である。」,「朝鮮総聯は,すべての同胞の民族的尊厳を守り,彼らが朝鮮人の魂をもって堂々と生きていけるように民族教育事業と文化啓蒙事業を繰り広げている。などとされている。」
(乙17)
(2)

就学支援金支給制度の概要
国は,平成22年3月31日,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図ることにより教育の機会均等を確保することを目的として支給法を制定した。支給法は,公立高等学校については,生徒が負担する授業料による収入相当額の資金を国が地方公共団体に対して支給するとともに地方公共団体が負担していた授業料減免相当額については引き続き地方公共団体が負担することにより公立高等学校の授業料を不徴収とすることとしている(3条)。これに対し,私立高等学校等については,授業料設定を含め,その自主性を尊重する必要があることなどから,私立高等学校等に在学する生徒等に対して就学支援金を支給するものとしつつ,
就学支援金の支給
に要する費用の全額に相当する金額は国が都道府県に交付し
(15条1項)

都道府県知事は受給権者である生徒等に対して就学支援金を支給するが(7条1項),当該生徒等が在学する私立高等学校等の設置者が当該生徒等に代わって就学支援金を受領し,当該生徒等の授業料に係る債権の弁済に充てるものとしている(8条)。

(3)

本件不指定処分に至る経緯等
原告は,平成22年11月27日付けで,文部科学大臣に対し,A高級学校について本件規定に基づく指定の申請をした。(乙3)


原告は,平成25年1月24日,大阪地方裁判所に対し,文部科学大臣が原告の上記申請に対し何らの処分をしないことが違法であることの確認及び文部科学大臣に対し本件規定に基づく指定をすることの義務付けを求める訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実)

文部科学大臣は,同年2月20日,「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(平成25年文部科学省令第3号。以下「本件省令」という。)を制定して本件規則から本件規定を削除した上(甲11),同日付けで,原告に対し,①本件規定を削除したこと及び②本件規程に基づきA高級学校の本件規程に定める指定の基準への適合性を審査したが本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことを理由として,A高級学校につき本件規定に基づく指定をしない旨の処分(本件不指定処分)をした。(乙1)


平成22年当時,A高級学校と同様に各種学校の認可を受けて在日朝鮮人子女に高等普通教育に準ずる教育を実施する学校はA高級学校を含め全国に十数校あり,
このうち10校が本件規定に基づく指定の申請をしたが,
いずれも,文部科学大臣から当該指定をしない旨の処分を受けた。(甲25,乙21,弁論の全趣旨)


原告は,平成25年3月11日,上記イの違法確認の訴えを本件不指定処分の取消しの訴えに交換的に変更した。(当裁判所に顕著な事実)
3
争点
(1)

本件不指定処分の違法性


本件省令により本件規定を削除したことの違法性の有無(争点1)

文部科学大臣がA高級学校について本件規程13条の適合性が認められないと判断したことの違法性の有無(争点2)


本件規程15条違反の有無(争点3)


民族教育に関する権利の侵害の有無(争点4)


憲法14条違反の有無(争点5)


国際人権法違反の有無(争点6)

(2)

行政手続法違反の有無(争点7)
本件規定に基づく指定処分の義務付けの訴えの訴訟要件及び本案要件の
具備の有無(争点8)
4
争点に関する当事者の主張
(1)

争点1(本件規定の削除の違法性の有無)

(原告の主張)

本件省令の制定が支給法2条1項5号の委任の範囲を超えること
支給法は,中等教育を一般的に利用可能で全ての者に対して機会が与えられるものとする旨規定した経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)13条2項(b)を受けて定められたものであり,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図りもって教育の機会均等に寄与することを目的とし,対象となる学校として日本における中等教育機関を網羅的に列挙している。このような支給法の規定等に照らすと,支給法の趣旨,目的は,中等教育を受ける全ての者が教育への均等な機会を得られるようにするところにあると解される。そして,
本件規則1条1項2号は,支給法の適用対象となる学校を規定する支給法2条1項5号の委任を受けて定められたものであるところ,本件規則1条1項2号イからハまでの規定のうち,同号イ及びロの規定は外国の教育制度や国際認定機関の判断に基づいて支給法の適用対象となる各種学校を定めるものであるのに対し,本件規定は,同号イ及びロの規定する学校に該当しなくても,「高等学校の課程に類する課程を置く」学校が支給法の適用を受けることを可能にして上記のような支給法の趣旨,目的を実現しようとするものである。そうすると,本件規定は,支給法の趣旨を実現するための必要不可欠な規定であり,各種学校が支給法の適用対象となるか否かを判断するための原則的規定であるというべきである。
また,本件規則1条1項2号イ及びロの規定により支給法の適用対象となった外国人学校の生徒と本件省令により本件規定が削除されたために支給法の適用を受けられない外国人学校の生徒との間で,教育に係る経済的負担を軽減し教育の機会均等を図る必要性に違いはなく,本件規定を削除した場合には同じく中等教育を受ける学生間に著しい不均衡が生ずることとなる。
以上の諸点に照らせば,本件省令により本件規定を削除することは,支給法2条1項5号の委任の範囲を逸脱して無効である。

本件規定の削除が外交上又は政治的理由によるものであること
(ア)

被告は,支給法制定当初から外国人学校にも支給法の適用があることを前提としており,平成22年度の予算編成では全国各地の朝鮮高級学校も支給法の対象となるものとして予算編成が行われていた。しかし,平成22年2月21日頃,中井洽拉致問題担当大臣(当時。以下,官職はいずれも当時のものである。)が川端達夫文部科学大臣に対し拉致問題の存在を理由に朝鮮高級学校を支給法の適用対象から外すよう要請し,自由民主党(以下「自民党」という。)の下村博文議員(以下「下村議員」という。)も,同年3月12日,衆議院文部科学委員会において,朝鮮高級学校に対する無償化による税金の投入は結果的に資金援助にもつながりかねず慎重であるべきである旨の発言をした。

(イ)

菅直人内閣総理大臣(以下「菅首相」という。)は,平成22年11月24日,同月23日に朝鮮半島で発生した朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)による延坪島砲撃事件を受けて朝鮮高級学校に対する就学支援金支給に反対する世論に押されそれまでの方針を覆して朝鮮高級学校につき本件規定に基づく指定をすべきか否かの審査手続を停止するよう指示した。

(ウ)

朝鮮高級学校についての審査は平成23年8月29日に菅首相から
再開が指示され,本件規程15条に基づいて設置された高等学校等就学支援金の支給に関する審査会(以下「審査会」という。)の庶務を所管する文部科学省初等中等教育局財務課高校修学支援室(以下「支援室」という。)は,本件規定に基づく指定のための審査に当たり朝鮮高級学校に対して数度にわたり質問を行った。審査会による審査においては,北朝鮮及び朝鮮総聯との関係並びに学校での教育内容が審査の結果に大きな影響を与えないことが前提となっていたが,平成24年3月30日以降に実施された支援室からの質問の内容は,「生徒らが1月~2月に北朝鮮を訪問し,故・金正日氏及び金正恩氏への忠誠を誓う歌劇を披露した事実があるか」,「金正恩氏の肖像画を掲示しているか」など,北朝鮮及び朝鮮総聯との関係を問う外交的又は政治的な質問に終始するようになり,原告が本件規定に基づく指定を申請してから2年を超えても何らの処分も行われなかった。
(エ)

他方で,自民党は,平成23年8月31日,「朝鮮学校無償化手続き再開に強く抗議し即時撤回を求める決議」を発表して,朝鮮高級学校に対する審査を再開することは,拉致問題について我が国が軟化したとの誤ったメッセージとなるばかりか,外交問題に発展しかねないなどとして審査の再開に反対し,下村議員も,同年9月13日頃,審査が再開すれば朝鮮高級学校に支給法が適用されるとの危機感を述べていた。そのような中,平成24年11月16日に衆議院が解散され,自民党の義家弘介参議院議員(以下「義家議員」という。)らは,民主党が朝鮮高級学校に支給法を駆け込み的に適用してしまうことを牽制するため,外国人学校については本件規則1条1項2号イ及びロの規定に基づいて指定されたもののみを支給法の適用対象とする旨の支給法改正案を提出した(なお,同案は廃案となった。)。その後,自民党は,解散後の衆議院議員の総選挙で政権を獲得し,文部科学大臣となった下村議員(以下,文部科学大臣となった下村議員をいうときは,「下村文科大臣」という。)は,拉致問題に進展がないこと等を理由として朝鮮高級学校に就学支援金を支給することは国民の理解が得られないなどとして,朝鮮高級学校に支給法を適用しない方針を表明した。このような下村文科大臣の方針の下,文部科学省は,本件規定の削除を企図し,本件規則の改正案についての意見公募手続を実施し,平成25年2月20日,主な意見に対する文部科学省の意見として,「外交上の配慮などにより判断しないとの民主党政権時の政府統一見解は廃止した上で,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,現時点での指定には国民の理解を得られないと判断する」
などと述べた。
そして,
下村文科大臣は,同日,本件省令の制定により本件規定を削除するとともに本件不指定処分をし,その後に行われた記者会見(平成26年7月15日実施)においても,朝鮮学校の問題は,拉致問題等で一部経済的な制限の解除等を進めている中,日本と北朝鮮の国交正常化等はどうするかということも1つの判断材料である旨や,北朝鮮と日本は国交正常化しておらず,北朝鮮の政治的な組織の一部である朝鮮総聯の幹部が管理している学校は,我が国の法制度になじまない旨を発言しており,朝鮮高級学校を支給法の対象とするか否かが拉致問題の解決等の外交的又は政治的理由によるものであることを明らかにしている。
(オ)

以上のような本件規定が削除されるに至った経緯からすると,支給法改正案の提出,意見公募手続,本件規定の削除及び本件不指定処分は,政権交代前の自民党及び下村議員の朝鮮高級学校への支給法適用に対する反対姿勢表明から政権交代を経て,意見公募手続と本件規定の削除,そして本件不指定処分という一貫した流れの中で行われたものであり,本件規定の削除は,北朝鮮との間にある拉致問題の解決等という外交的又は政治的な理由から本件不指定処分を行うために実施されたものである。したがって,本件規定の削除は,支給法の趣旨,目的とは異なる目的で行われたものであり,無効である。

本件規定の削除が憲法14条に違反すること
本件規定の削除は,朝鮮高級学校の生徒のみを支給法の対象から除外す
るものであり社会的身分による差別であるところ,本件規定の削除の目的は,拉致問題や朝鮮総聯との関係を理由として支給法の対象から朝鮮高級学校を排除するところにあることは明らかである。このような本件規定の削除の目的は不当なものであるし,この点を措いても,本件規定を削除することは,今後,本件規定による指定を受ける途を閉ざすことになるものであり,明らかに過剰な規制というべきである。したがって,本件規定の削除は,何ら合理的な理由もなく朝鮮高級学校の生徒を差別するものであり,憲法14条に違反するものであることは明らかである。

本件規定の削除が社会権規約13条2項(b)及び児童の権利に関する条約28条1項に違反すること
社会権規約13条2項(b)は,締約国は,無償教育の漸進的な導入により,無償教育を一般的に利用可能であり,かつ,全ての者に対して機会が与えられるものとする旨を規定し,
児童の権利に関する条約28条1項
は,締約国は,教育についての児童の権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため,
中等教育の発展を奨励するなどの措置をとる旨を
規定しているところ,上記の「漸進的な導入」及び「漸進的に…達成」との文言は,
制度化したレベルからの後退を禁止するという規範を内在して
いる。本件規定の削除が上記の規範に違反することは明らかである。

行政手続法5条に違反すること
行政手続法5条は,申請に対する処分について具体的な審査基準を設定すべき旨を規定しており,本件規程は本件規定に基づく指定についての審査基準に当たる。一旦設定された審査基準に従って申請がされた後に審査基準自体を無意味とするような改正を行うことが許されるならば,行政の恣意的判断を許してその合理性の担保をなくし,申請者の予見可能性を奪うことになり,同条の趣旨に反する。したがって,原告による申請後に本件省令により本件規定を削除したことは同条及びその趣旨に反して違法である。
(被告の主張)

本件規定の削除が支給法の委任の範囲内であること
(ア)

支給法は,その適用対象となる学校を2条1項において定め,同項5
号において,専修学校及び各種学校につき,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの」としてその範囲を文部科学省令に委任しているところ,この委任の趣旨は,どのような各種学校を「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として支給法の適用対象とするのが相当であるかを決めるに当たっては,その基準や評価方法等について専門的,技術的検討を要するため,「高等学校の課程に類する課程を置く」ということの内容を含めて各種学校を支給法の適用対象とするかの判断を,上記の専門的,技術的検討をすることができる文部科学大臣に委任し,それを文部科学省令において定めることとする点にある。そうすると,本件規則において支給法の適用対象となる各種学校の範囲をどのように定めるかについては,文部科学大臣の専門的,技術的な裁量に委ねられているというべきである。
そして,B(高等部)が平成23年8月30日に,C(高等部)が同年12月2日にそれぞれ本件規定に基づく指定を受けていたが,この2校以外で本件規定に基づく指定の対象となり得る外国人学校であった朝鮮高級学校については,指定に係る審査の過程において,強制的に立入調査を実施して書類を押収するなどの権限がなく,指定の基準を充たすかどうかの審査に限界があることが明らかとなり,後記のとおり,本件規程13条に適合するとは認められないと判断された。他方,当時,B(高等部)及びC(高等部)以外には本件規定に基づく指定を求める外国人学校はなく,本件規定を存続させる必要性もなかった。そこで,文部科学大臣は本件規定を削除したのであり,基準適合性の審査に限界があることが判明した規定について,これを放置せずに削除する省令改正を行うことが文部科学大臣の裁量の範囲内であることは当然である。(イ)

原告は,本件規定が原則的な規定であるからその削除は違法であると
主張するが,本件規則1条1項2号の規定ぶりからして,同号イ及びロの規定が原則であり,本件規定は,「イ及びロに掲げるもののほか」に文部科学大臣が個別に指定できることを認めたものであり,本件規定が原則的な規定であるということはできない。
また,原告は,本件規定が削除された結果として,本件規則1条1項2号イ及びロの規定により支給法の対象となった学校の生徒と本件規定に基づく指定がされなくなった学校の生徒との間に不均衡が生ずると主張する。しかし,朝鮮高級学校は,本件規程13条適合性が否定される以上,本件規定の削除の有無にかかわらず同校が支給法の対象とされることはないし,本件規定を削除した時点で本件規定に基づく指定を求める学校がなかったのであるから,本件規定を削除した結果として生徒間に不均衡が生ずることはない。また,本件規則1条1項2号イないしハの規定の指定要件は外国人学校の属性を踏まえてそれぞれ規定されたものであり規定の趣旨も指定要件も異なるものであるから,本件規則1条1項2号イ及びロの規定により指定された外国人学校に属する生徒と本件規定の削除によって指定されない外国人学校の生徒との間に不均衡があるということはできない。

本件規定の削除が外交上又は政治的な理由によるものではないこと(ア)

支給法制定の際の国会審議においては,文部科学大臣が,支給法の対象となる学校の指定の基準につき,「高等学校の課程に類する課程を置くものとして,その位置付けが学校教育法その他により制度的に担保されているということを規定することを予定しており,自動的に外国人学校の高等課程に類するもの全てが今の時点で対象になっているということではない。」旨を答弁しており(乙5の1),外国人学校の全てについて支給法の適用があることが前提となっていたわけではない。また,平成22年度の予算編成において朝鮮高級学校に対する就学支援金相当額が予算に計上されていることも,計算上,就学支援金を支給する可能性のある全ての学校を対象とした場合に必要となる予算の概算を計上したにすぎず(乙21),朝鮮高級学校を支給法の対象とする判断や方針が存在していたわけではない。
(イ)

菅首相が北朝鮮による延坪島砲撃事件を受けて朝鮮高級学校の審査
手続の停止を指示したのは,国民の生命と財産,秩序の安定が脅かされかねない不測の事態に備え,万全の態勢を整える必要があり,そのような事態の中,延坪島砲撃事件についての報道状況や世論も踏まえると,審査会の委員が静謐な環境の中で客観的かつ公正な審査をすることができなくなるおそれがあったためである。延坪島砲撃事件自体は外交的又は政治的な問題となり得るとしても,それを契機として,審査会の委員が静謐な環境の中で公正な審査を行うことができる環境を確保する必要から審査手続を停止したことまでもが外交的又は政治的な理由によるものということはできない。
(ウ)

支給法制定の国会審議や文部科学大臣の諮問機関として設置された
高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議(以下「検討会議」という。)においては,外国人学校を支給法の対象となる学校に指定するに当たり,法令に基づく適正な学校運営が行われているかという点を考慮すべきであることが指摘されていたのであり,これを受けて,本件規程13条は,本件規定に基づく指定において当該学校の運営が法令に基づいて適正に行われているものであることを要するとしている。そして,支援室は,朝鮮総聯のホームページ,新聞報道,公安調査庁の報告等からは,北朝鮮及び朝鮮総聯と朝鮮高級学校との関係性がうかがわれ,原告から提出された申請書類だけでは,朝鮮高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯から教育基本法16条1項の「不当な支配」を受けていないか否か,ひいては就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当されるかどうかを判断することができなかったことから,この点を確認するために朝鮮高級学校に必要な事項を質問したのであり,外交的又は政治的な理由から上記の質問を行ったものではない。
(エ)

さらに,文部科学省は,本件省令の意見公募手続において,「朝鮮学
校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,現時点での指定には国民の理解を得られないと考えております。」との意見を述べているが,これは,個々の国民からの意見に対する文部科学省の考え方として,拉致という犯罪行為をしている北朝鮮の政治体制・最高指導者を賛美する朝鮮高級学校の特殊性を無視して同校を支給法の対象として指定し,公金を支出することについては国民の理解を得られないという見解を示したものにすぎず,本件規定の削除の理由を示したものではない。
(オ)

原告は,自民党や下村議員が北朝鮮との拉致問題等を理由に朝鮮高級
学校を支給法の適用対象とすべきでないと反対していたことなどから,本件規定の削除が外交的又は政治的な理由でされたものであると主張する。しかし,原告の指摘する自民党の姿勢や下村議員の発言は,あくまで政権交代前の野党としての姿勢であり野党議員としての発言であって,これらをもって本件規定の削除が外交的又は政治的な理由によるものであるということはできない。
(カ)

また,原告は,義家議員が,民主党が支給法を朝鮮高級学校に駆け込
み的に適用してしまう可能性があると危機感を抱いて支給法改正案を提出したと主張するが,上記主張は,何ら具体的な根拠に基づくものではなく,むしろ,当時の審査会は朝鮮高級学校の指定に必ずしも積極的ではなかったし,文部科学省も会計の透明性を確認する必要性を認識していたことがうかがえるのであって,義家議員による支給法改正案提出の目的が原告主張のようなものであるとはいえない。
(キ)

さらに,下村文科大臣は,平成25年5月24日の記者会見において
朝鮮高級学校に支給法を適用しないことを表明し,その理由として「拉致問題に進展がないこと」を述べている部分はある。しかし,下村文科大臣は,「朝鮮学校については,拉致問題に進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあり,教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることなどから,現時点では国民の理解が得られない」と述べているのであり,このような下村文科大臣の発言は,財政問題を含む拉致問題以外の問題点も指摘して結論として国民の理解が得られないという見解を示しており,上記の発言をもって,本件規定の削除が拉致問題の解決という外交的又は政治的な理由によるものであるということはできない。また,
原告が指摘する下村文科大臣の平成26年7月15日の記者会見の発言は,本件不指定処分について答えたものではないし,その発言の一部には,拉致問題と国交正常化という外交上の問題について述べた部分があるものの,一般論を述べたにすぎない。

本件規定の削除が憲法14条に違反しないこと
本件規定の削除は,拉致問題や朝鮮総聯との関係を理由として支給法の対象から朝鮮高級学校を除外することを目的とするのではないし,本件規定の削除は前記ア(ア)のような理由から行われたものであるから不合理な措置であるということもできない。

本件規定の削除が社会権規約13条2項(b)及び児童の権利に関する条約28条1項に違反しないこと
後記(6)の(被告の主張)によれば,社会権規約13条2項(b)及び児童の権利に関する条約28条1項に裁判規範性は認められないから,本件規定の削除が上記各規定に違反するということはできない。


行政手続法5条に違反しないこと
行政手続法5条は,許認可等をするか否かの判断に当たって必要とされる審査基準の設定を求める規定であり,許認可等の制度の改正自体を制約するものではないから,本件規定の削除が同条に違反するということはできない。

(2)

争点2(A高級学校の本件規程13条適合性が認められないとして本件不
指定処分をしたことの違法性の有無)
(原告の主張)

本件規程13条は補充的規定であり本件規定に基づく指定の要件ではないこと
支給法の立法過程において川端達夫文部科学大臣は,「高等学校の課程に類する課程を置く」各種学校に該当するか否かは客観的に判断されるものである旨を発言しており,このことは政府の統一見解であるとされていた。そして,支給法2条1項5号は,各種学校が支給法の対象となるための要件である「高等学校の課程に類する課程を置くもの」の判断基準を明確化することを文部科学省令に委任し,これを受けた本件規則1条1項2号ハは,各種学校が支給法の対象となるための要件である「高等学校の課程に類する課程を置くもの」の判断基準を明確化することを文部科学大臣に委任したのであり,
これに基づいて本件規程が定められたのであるから,
本件規程によって定められる判断基準は,その適合性についての客観的な判断を容易にするような具体的かつ明確なものであることを要するというべきである。また,検討会議においても,本件規程で定める「高等学校の課程に類する課程を置くもの」の判断基準は,客観的に把握し得る内容によることを基本とすべきものとされており,実際,本件規程においては,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」か否かの基準として,修業年限(2条),授業時数(3条),同時に授業を行う生徒(4条)など,全て数値等で判断可能な客観的な基準を定めている。
以上の諸点に照らせば,本件規程で定める「高等学校の課程に類する課程を置くもの」か否かの基準は,客観的に判断可能なものに限られ,抽象的な判断を要するものはこれに含まれないというべきである。
そうすると,
抽象的な法律判断を要する本件規程13条は,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」か否かの基準には含まれず,同条は,本件規程12条に定める情報提供等の補充的な訓示規定にとどまるものというべきである。したがって,本件規程13条の適合性が認められないことを理由に本件規定に基づく指定をしないことはできないというべきである。

仮に本件規程13条適合性が本件規定に基づく指定の要件であるとしても,A高級学校につき本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用があること
(ア)

本件規程は,文部科学大臣が本件規定に基づく指定の可否を判断する
ための資料につき,教育施設の設置者が申請時に提出した定型的な書類及び文部科学大臣が追加で提出を求める書類だけを規定しており(14条),検討会議においても,本件規定に基づく指定のための審査については,上記指定の申請がされた学校やその学校の所在する都道府県に問合せを行い,過去数年間に目立った法令違反がないかどうかを確認する程度の審査が想定されていた。そうすると,文部科学大臣は本件規定に基づく指定の申請がされた学校やその学校の所在する都道府県から提供された資料により本件規定に基づく指定の可否を判断すべきであり,文部科学大臣は,支援室からの質問に対する原告の回答,朝鮮総聯のホームページ,新聞記事,公安調査庁からの情報に基づいて本件規程13条適合性を判断することはできないというべきである。特に公安調査庁からの情報は,対立する国家や団体を規制する観点からのものであり,教育的観点からの客観的判断をゆがめるものであって,参考にすることは絶対に許されないというべきである。そうすると,上記の各情報を参考にしてA高級学校について本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用があるというべきである。(イ)

支給法2条1項1号から4号までの高等学校等及び専修学校は,学校
と運営団体との関係性にかかわらず支給法の対象となるし,本件規則1条1項2号イの外国人学校は,「外国の学校教育制度において位置付けられたもの」が要件となっており,本国や在外外国人団体から一定の影響を受けるにもかかわらず,支給法の対象とされている。また,本件規定に基づく指定を受けた他の外国人学校
(B
〔高等部〕
及びC
〔高等部〕

については,本国や在外外国人団体との関係を考慮した厳格な審査は行われず,理事会の開催,財務諸表の作成,過去5年間の法令違反を理由とする処分実績の有無という客観的に判断可能な事実による審査しか行われていない。以上の諸点に照らすと,北朝鮮及び朝鮮総聯との関係を考慮してA高級学校につき本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用がある。
(ウ)

①支給法は,生徒の学習権の充足に応える制度であり,就学支援金が
授業料に係る債権の弁済に充当されない抽象的な可能性のみをもって就学支援金を支給しないことは支給法の想定しないものであると解されるし,②本件規程が事後的な措置として指定取消し(17条),履行状況の報告(18条)等を定め,支給法11条が不正利得の徴収手続を定めていることからすると,支給法は,就学支援金を流用する抽象的な可能性があるにすぎない場合には本件規定に基づく指定を行い,流用の具体的懸念が生じた場合には上記の事後的措置により対処することを予定しているものと解される。このような支給法の規定等に照らすと,就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない具体的な可能性又は蓋然性が存在する場合に限り本件規程13条適合性が否定されるというべきである。そうすると,単に就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されないおそれがあるということのみでA高級学校について本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用がある。
(エ)

支給法2条1項5号は各種学校に支給法が適用される要件として「高
等学校の課程に類する課程を置く」ことを要件としているのであり,この規定の文言からすれば,「高等学校の課程に類する課程を置く」か否かについては教育課程に着目して行われるべきである。そうすると,本件規程1条から12条までの客観的要件を満たしていると判断される学校は本件規程13条適合性も認められるべきであり,本件規程1条から12条までの要件を満たすA高級学校につき,不当な支配が及んでいないことが確認できず,法令に基づく適正な学校運営がされないおそれや懸念があるとの理由から本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用がある。
(オ)

就学支援金の支給により高等学校等における教育に係る経済的負担
の軽減を図りもって教育の機会均等に寄与するという支給法の目的,就学支援金が学校ではなく生徒に支給されるものであること等に照らすと,本件規程13条適合性が認められるか否かについては,教育を受ける権利の平等な実現という要請及び就学支援金が支給されない場合には教育施設の生徒が不利益を受けることになることを重視しなければならない。そうすると,上記の各事情を考慮しないでA高級学校につき本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用がある。
(カ)

前記アに述べたとおり,本件規程で定める「高等学校の課程に類する
課程を置くもの」か否かの基準は客観的に判断可能なものに限られるから,本件規程13条の「法令」には,抽象的な要件を定める教育基本法16条1項は含まれないというべきであるし,
仮に本件規程13条の
「法
令」に教育基本法16条1項が含まれるとしても,以下のとおり,A高級学校は教育基本法16条1項の禁ずる不当な支配を受けていないから,同項の禁ずる不当な支配が及んでいることが疑われるとしてA高級学校につき本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用がある。

「不当な支配」を禁ずる教育基本法16条1項は,外国との対立を煽る国家の軍事部門や国家の治安維持を任務とする警察権力により教育が支配されることを禁ずるものであるから,同条の「不当な支配」とは公権力による影響をいうものと解すべきであり,外国人学校が本国やその在日団体から影響を受けていることをもって同条の「不当な支配」があるということはできない。そうすると,A高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯から一定の影響を受けていることは,同項の禁ずる「不当な支配」に該当するものではない。むしろ,下村文科大臣が公安調査庁や警察庁からの情報を重視して日本と対立する北朝鮮との関係性を理由に本件不指定処分をすることこそが同項の禁ずる
「不当な支配」
に該当するというべきである。


教育基本法16条が「教育行政」の章にあることからすると,同条1項の「不当な支配」の対象は,特定の学校ではなく,教育行政であるから,同条は特定の学校が特定の団体の影響を受けることを規制するものではないというべきである。したがって,特定の外国人学校が本国やその在日団体から影響を受けていることをもって同条の「不当な支配」があるということはできない。

私立学校は,建学の精神に基づく独自の伝統ないし校風と教育方針によって多様なニーズに応じた教育の場を提供することにより公立学校とは別に独自の社会的意義が認められるのであるから,私立学校においては,その自主性が最大限に尊重されなければならず,私立の各種学校であるA高級学校についても,その自主性が十分に尊重されなければならない。しかも,A高級学校は,日本による植民地支配から解放された朝鮮民族が母国語や民族性を回復するために設立された外国人学校であり,この点に同校の積極的意義がある。そして,外国人学校においては,一般に本国との関係性や学校創設の歴史的経緯,創設者の意図等が学校運営に一定程度反映されることは当然であり,朝鮮学校が北朝鮮及び朝鮮総聯と関係があることは,朝鮮学校の自主性をゆがめるものではなく,朝鮮学校の建学の精神に合致し,私立学校である朝鮮学校の自主性を担保するものであるということができる。本件規則1条1項2号イの規定も,そのような外国人学校の特性を前提として外国の学校教育制度において位置付けられたものを支給対象としているのであるから,外国人学校が当該外国の在日団体と密接な関係を有することをもって教育基本法16条1項の「不当な支配」を受けているとし,本件規程13条の適合性を否定することは,本件規則の規定相互間に矛盾を生ずることとなる。以上のことからすると,A高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯と関係を有することから教育基本法16条1項の「不当な支配」を受けているということはできないというべきである。


仮に,A高級学校が朝鮮総聯と密接な関係にあることをもって教育基本法16条1項の「不当な支配」を受けていると評価される余地があるとしても,朝鮮総聯が現場の声を無視して教育内容を決めることはなく朝鮮総聯の職員が学校行事に参加することもない。また,学校運営についても原告の理事会において自主的に行っており朝鮮総聯が関与することはない。さらに,A高級学校から朝鮮総聯及び北朝鮮に金員が寄付されることもない。以上のことからすると,朝鮮高級学校が教育の自主性をゆがめるような支配を受けているということはできず,A高級学校が北朝鮮又は朝鮮総聯から同項の「不当な支配」を受けているということはできない。
(キ)

前記(1)(原告の主張)イのような本件不指定処分に至る経緯に照らせ
ば,下村文科大臣が本件規程13条適合性を否定したのは,外交的又は政治的理由に基づくものであるからA高級学校につき本件規程13条適合性が認められないとした下村文科大臣の判断には裁量権の逸脱濫用がある。
(ク)

本件規程13条適合性の判断は専門的,技術的検討を伴うものである
ことから,文部科学大臣は,判断の客観性及び公正性を担保するため,本件規程15条において,審査会を設置し,指定を行うに当たって審査会の「意見を聴くものとする。」と定めたのである。そうすると,文部科学大臣としては,本件規定に基づく指定をするか否かの判断に当たっては審査会に意見を述べさせてこれを尊重すべきであり,教育の専門家等で構成された審査会が取りまとめた意見を聴くものとする本件規程15条の趣旨からすれば,文部科学大臣の判断は,審査会の取りまとめた意見と同じであることが想定されているというべきである。しかるに,下村文科大臣は,審査会においてA高級学校を支給法の対象として指定する意見となることが濃厚となり,
仮に,
審査会に意見を述べさせれば,
下村文科大臣の政治的信条に従った不指定処分を行うことが困難な状況に追い込まれることが予想されたため,第8回審査会を開催せず,過半数の議決によって審査会に最終的な意見のとりまとめをさせないまま,本件規程13条適合性を否定して本件不指定処分をしたのである。したがって,本件不指定処分は,最も考慮すべきことを考慮せず,考慮すべきでないことを考慮した違法がある。

本件規程13条適合性を認めるに至らなかったとした違法
本件不指定処分は,本件規程13条に適合すると認めるに至らないことを理由とするものである。そうであるところ,本件規程に基づく審査手続は,審査会において審査を行い,多数決により一定の結論を出し,その意見を参考にして文部科学大臣が最終的な結論を出すことになっているのであり,このような審査手続が規定されている以上,本件規程に適合するか否かについては,結論が出ずに認めるに至らないという理由で本件規定に基づく指定をしないことは違法である。


本件規程13条適合性の主張立証責任
(ア)

そもそも,本件不指定処分は,同じく高等学校の課程に類する課程を
置く学校との間に著しい不平等をもたらし,生徒の学校選択や保護者の学費負担にも不平等をもたらすものであるから,差別的な侵害処分というべきである。したがって,その処分要件については被告が主張立証責任を負う。
(イ)

支給法及び本件規程の趣旨・文言からすれば,本件規程14条1項に
規定されている定型的な申請書類の不備等によって本件規程13条適合性が否定された場合は,申請者側に主張立証責任があると考えられるとしても,本件規程14条2項により文部科学大臣が追加で提出を求める書類と関係して本件規程13条適合性が否定された場合には,その書類が必要だとした文部科学大臣において本件規程13条適合性の主張立証責任を負うべきである。本件では,原告から必要な定型的書類が全て提出された後に,文部科学大臣が本件規程13条と絡めて教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無を確認する目的で原告に質問をし,このことが確認できないとして不指定処分を行っているのであるから,本件不指定処分の理由である原告が本件規程13条に適合しないことについては被告に主張立証責任があるというべきである。
(ウ)

本件のように,専門的な判断を行うために審査会が設置され,審査の
ために必要な資料を全て所持しているのが文部科学大臣側であるという場合には,被告において,文部科学大臣の判断に不合理な点がないことを相当な根拠,資料に基づき主張立証する必要がある(最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁),又は上記の場合には,公平の観点から原告が本件規程13条に適合しないことについては被告が主張立証責任を負うというべきである。
(エ)

給付を受けたいとする者の申請を行政庁が拒否した処分を争う場合
において,処分要件が,ある事実のないことを要求している場合に行政庁において当該事実があることを理由として申請を拒否したときは,当該事実があることについては行政庁が主張立証責任を負うというべきである。そうすると,本件規程13条は,教育基本法16条1項の「不当な支配」がないことを処分要件として定めているから,不当な支配が存在することについては被告が主張立証責任を負うというべきである。(オ)

規範的要件の主張立証責任については,その効果を主張する側が規範
的要件を基礎付ける事実について主張立証責任を負うから,規範的要件である「不当な支配」の有無については,「不当な支配」を受けることが禁止されるという効果を主張する被告に主張立証責任があるというべきである。
(カ)

本件においては,不当な支配が存すること,ひいては原告が本件規程
13条に適合しないことについて被告の立証責任は果たされておらず,むしろ,前記イ(カ)のとおり,A高級学校が北朝鮮又は朝鮮総聯から不当な支配を受けていないことは明らかである。
(被告の主張)

本件規定に基づく指定を受けるためには本件規程13条に適合する必要があること
(ア)

本件規程は「高等学校の課程に類する課程を置く」か否かを判断する
基準であるところ,「高等学校の課程」は,教育課程より広い概念であり,教育内容,学校の組織及び運営体制をも含むものであるから本件規程13条は支給法の委任の範囲において定められたものである。また,仮に,「高等学校の課程」が学校の組織及び運営体制を含まないものであるとしても,支給法は,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図りもって教育の機会均等に寄与することを目的として,私立高等学校等の生徒等がその授業料に充てるために就学支援金を支給し(1条),支給法の対象となる高等学校等の設置者は,受給権者に代わって就学支援金を受領し,その有する当該受給権者の授業料に係る債権の弁済に充当するものとしているのであるから,支給法は,法令に基づく学校の運営が適正に行われ,就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当が行われることを当然の前提としている。そうすると,本件規程13条は,上記のような支給法の趣旨を体現し,その細則的事項を定める執行命令の規定として位置付けられるものである。
(イ)

そして,本件規程13条は,支給法は,同法が適用される外国人学校
においては就学支援金が授業料に係る債権の弁済として確実に充当が行われることを確認できる態勢等が整っていることを当然の前提とすることから,これを含めて高等学校の課程に類する課程を行うための学校運営が法令に基づく適正なものであり,国民の租税負担によって授業料の負担を軽減するにふさわしいものであると確認できることが必要であるとの趣旨に基づき規定されたものである。このような本件規程13条の趣旨からすれば,本件規程13条が補充的な規定であるということはできず,むしろ,本件規程13条は,本件規定に基づく指定に当たって検討されなければならない重要事項を定めたものであって,本件規定に基づく指定を申請した学校が本件規程13条を含めて各要件を充足しているかどうかについて実質的に確認すべきことが要請されているというべきである。

本件規程13条の「法令」には教育基本法16条1項が含まれること本件規程13条は,就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当される学校であること及び法令に基づく適正な学校運営が行われている学校であることを支給法の対象となる外国人学校の要件として定めているが,教育基本法は教育の基本理念を定めた法律であるから,同条の「法令」に教育基本法が含まれないとする理由はないし,同法16条1項の「不当な支配」を受ける学校は,就学支援金が授業料に係る債権の弁済として確実に充当されることを確認できる態勢等が整っているとはいえない。また,同項に反する学校の運営が学校教育法の定める目標や理念に沿って適正に行われることについて疑念を生じさせるような場合には,我が国の高等学校の課程に類する課程を置くものとは評価し難い。
しかも,
教育基本法は,
他の全ての教育関係法規の基本法たる性格を有し,全ての教育関係法規は教育基本法に制定された基本的理念を実施するための法律として解釈されるべきこと(同法18条参照)に照らせば,支給法が「不当な支配」が行われている教育施設に対してまで国民の財政的負担の下で就学支援金を支給して教育の機会均等を図ることを想定しているとはいえない。
以上のことからすれば,本件規程13条の「法令」には教育基本法も含まれ,同法16条1項の「不当な支配」の有無も本件規程13条適合性を判断する際の考慮要素となるというべきである。

A高級学校が本件規程13条に適合すると認められないこと
(ア)

支給法は,就学支援金が受給権者である生徒等の授業料に係る債権の
弁済に確実に充当されることを要請し,法令に基づく学校運営を適正に行うことができない学校を支給法の対象とすることを許容しておらず,これを受けた本件規程13条は,支給法の対象となる外国人学校の要件として,就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当される学校であること,法令に基づく適正な学校運営が行われている学校であることを定めているところ,上記のような同条の規定内容の検討は,その性質及び内容からして専門的,技術的検討を伴うものであり,支給法は,同法2条1項5号に定める「高等学校の課程に類する課程を置く」という内容を含めて,
どのような各種学校を支給法の対象とするかの判断は,
その確認方法も含めて,教育行政に通暁し,専門的,技術的検討をすることができる文部科学大臣の裁量に委ねたものと解される。そして,本件規程13条適合性の判断が文部科学大臣の裁量行為である以上,その中で考慮される教育基本法16条1条の「不当な支配」の判断についても,同大臣の裁量に委ねられているというべきである。
(イ)

そして,以下の事情に照らせば,下村文科大臣は,朝鮮高級学校に対
する北朝鮮や朝鮮総聯の影響を否定することができず,その関係性が教育基本法16条1項で禁ずる「不当な支配」に当たらないことや適正な学校運営がされていることについて十分な確証を得ることができず,就学支援金を支給したとしても,授業料に係る債権の弁済に充当されないことが懸念されたことから,本件規程13条に適合するとは認められないと判断したのであり,このような下村文科大臣の判断は不合理ではなく,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。

文部科学大臣は,
原告からの申請を受け,
本件規程15条に基づき,
教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される高等学校等就学支援金の支給に関する審査会(審査会)の意見を聴いたが,審査会の審査では,A高級学校を含む朝鮮高級学校について,本件規程13条に適合するとの積極的な意見は出されなかった。

A高級学校を含む朝鮮高級学校については,①教科書内容の変更には北朝鮮本国の決裁が必要である,②朝鮮総聯が故・金日成主席,金正日総書記の肖像画を新しい肖像画「太陽像」に交換するよう指示した,③朝鮮学校の校舎や敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の債務の担保となっており,そのうち高級学校を含む13校の校舎及び敷地が,同金融機関の破綻を受けて,仮差押えがされている,④朝鮮学校への自治体からの補助金が朝鮮総聯に流用されていた疑いがあることが分かった,⑤朝鮮学校で,学費納入時に朝鮮総聯傘下団体の活動費を同時に徴収していたことが分かった,朝鮮総聯関係者は,無償化が適用されても集金圧力が弱まるわけではなく,学校と朝鮮総聯が一体である限り,結局,自分たちの知らないところに消えてしまうと話しているなど,朝鮮高級学校と北朝鮮又は朝鮮総聯との関係や朝鮮総聯が朝鮮学校を利用して資金を集めていることが疑われることを指摘する各新聞報道がされていた。


北朝鮮によるDなどの関係団体が文部科学大臣に提出した書面に
は,朝鮮学校の生徒らは,金正日政権を支える政治活動に参加しており,朝鮮学校は,純粋な教育機関ではなく,朝鮮労働党の日本での工作活動拠点であることなどが記載されていた。


朝鮮総聯のホームページには,「朝鮮総聯は,すべての同胞の民族的尊厳を守り,彼らが朝鮮人の魂をもって堂々と生きていけるように民族教育事業と文化啓蒙事業を繰り広げている。」,「朝鮮総聯と在日同胞は,幼稚園から初級学校,中級学校,高級学校,大学校にいたる120余校の各級学校を日本各地に設立して,在日同胞子女に民主主義的民族教育を実施している。」などと,朝鮮総聯が朝鮮高級学校の運営等に関わっている旨の記載があった。

平成20年から平成25年までの公安調査庁作成に係る「内外情勢の回顧と展望」においても,「朝鮮総聯は,我が国政府の高校無償化措置に関し,朝鮮人学校生徒への適用を実現すべく諸活動に取り組んできた」,
「朝鮮総聯は,朝鮮人学校での民族教育を『愛族愛国運動』
の生命線と位置付けており,学年に応じた授業や課外活動を通じて,北朝鮮・朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいる。朝鮮人学校では,一律に朝鮮総聯傘下事業体『E』が作成した教科書を用いた朝鮮語での授業を行っている。」などとされ,平成22年11月17日の参議院予算委員会においても,公安調査庁は,朝鮮総聯の影響は朝鮮人学校の教育内容,人事,財政に及んでいる旨の答弁をしている。また,公安調査庁のみならず,警察庁長官官房審議官や警察庁警備局長も国会において同趣旨の発言をしている。

(ウ)

以上のような下村文科大臣の判断に誤りがなかったことは,
F学園と

朝鮮総聯との間で不当な資金提供が行われていたことなどを内容とする東京都の報告書,教育等につき朝鮮高級学校と北朝鮮や朝鮮総聯との間に繋がりがあることなどを述べるA高級学校の保護者アンケートによっても裏付けられている。

政治的又は外交的理由により本件規程13条の適合性を否定したものではないこと
前記(1)(被告の主張)イで述べたところからすれば,文部科学大臣が本件不指定処分において政治的又は外交的な理由により本件規程13条適合性を認めなかったものでないことは明らかである。


審査会の意見を考慮しないことが違法でないこと
審査会は法令の根拠を有するものではなく,文部科学大臣が審査会の意見を聴くことが法令上要請されているものでもなく,文部科学大臣は審査会の意見が自らの判断に資すると考えたため本件規程15条を設けたのであり,審査会の意見は文部科学大臣が判断する際の考慮要素の1つにすぎない。このことは,本件規定に基づく指定を受けた学校について指定を取り消す場合に審査会の意見聴取を必須のものとしていないこと,本件規程15条を設ける時に参考にした,大学認可の際に文部科学大臣が大学設置・学校法人審議会に諮問する制度(学校教育法95条,同法施行令43条)においても審議会の意見が文部科学大臣の判断を拘束するものではないとされていることからも明らかである。
また,A高級学校を含む朝鮮高級学校について審査した審査会においては,教育基本法16条1項の「不当な支配」や,適正な学校運営がされていないことが疑われる事情が認められるなど特殊な状況となっており,そのような状況のまま,審査会の最終的な意見を取りまとめるべきであったとはいえないし,文部科学大臣は,第7回審査会後,それまでの審査会で出された委員の意見も考慮した上,更なる審査を継続したとしても審査会の意見を取りまとめることが困難であると判断し,第8回審査会を開催しなかったのであって,このような文部科学大臣の判断が不合理なものとはいえず,むしろ,上記のような審査会の状況を踏まえて本件規程13条適合性が認められないとしたものである。

本件規程13条の主張立証責任について
(ア)

本件は,受益処分の申請に対する却下処分である本件不指定処分の取
消訴訟であり,申請者は支給法2条1項5号及び本件規則1条1項2号ハの規定を受けた本件規程13条を含む各要件を充たした場合に初めて支給対象に指定されるという受益処分を得られるのであるから,申請者である原告が本件規程13条適合性について主張立証責任を負うというべきである。このように解することが,就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当されることを要請し,適正な学校運営を行うことができない学校に就学支援金を支給することを許容しない支給法及びこれを受けて法令に基づいた学校運営が行われることを指定の基準とした本件規程13条の趣旨,目的に合致するものというべきである。
(イ)

原告は,本件不指定処分が,子供たちの教育を受ける権利を侵害する
ものであると主張するが,本件不指定処分は,侵害処分ではなく,給付処分にすぎないものであるから,A高級学校の生徒の教育を受ける権利を侵害するものではない。
(ウ)

原告は,本件規程14条2項により文部科学大臣が追加で提出を求め
る書類と関係して本件規程13条適合性が否定された場合には被告が本件規程13条適合性の主張立証責任を負うと主張するが,その根拠は明らかでない。また,原告の引用する最高裁平成4年10月29日第一小法廷判決は,原子炉施設の安全性に関する行政庁の判断の適否が争われた原子炉施設設置許可処分の取消訴訟に関するものであり,当該原子炉施設の安全性審査に関する資料を全て行政庁側が保持していることなどの点を考慮して事実上の推認によって立証責任が転換されるとしたものであるのに対し,朝鮮高級学校の場合には,我が国と北朝鮮との間に国交がないことから,
北朝鮮や朝鮮総聯から資料を入手することはできず,
むしろ,北朝鮮や朝鮮総聯との関係性に係る資料は原告側が保持しているのであるから,事実上の推認により被告に立証責任が転換される場面であるともいえない。
(3)

争点3(本件規程15条違反の有無)

(原告の主張)
本件規程15条は,文部科学大臣が本件規定に基づく指定をするに当たっては審査会の「意見を聴くものとする。」として審査会の意見を聴くことを義務付けている。
また,
審査会は,
①単なる専門家からの意見聴取ではなく,
本件規程に定める指定の基準に基づいて審査対象となる教育機関が当該基準を満たすか否かを判断するものであり,②その際,実地調査という自発的な情報収集の権能を行使することができ,しかも,③最終的に,意見の相違があったとしても,多数決により決し,可否同数のときは座長の決するところによるとされているのであって,審査会は,審査対象となる教育機関が本件規程に定める指定の基準を満たすか否かを専門的見地から客観的に判断してその結論を示すことが法制度上要請されているというべきである。以上の諸点に照らすと,
下村文科大臣は,
本件不指定処分をするに当たり,
審査会が取りまとめた意見を聴かなければならなかったというべきである。ところが,下村文科大臣は,審査会においてA高級学校を支給法の対象とする意見が濃厚となり,仮に,審査会に意見を述べさせれば,下村文科大臣の政治的信条に従った不指定処分を行うことが困難な状況に追い込まれることが予想されたため,同処分を行う前に第8回審査会を開催せず,過半数の議決によって審査会に最終的な意見のとりまとめをさせないまま,本件不指定処分をしたのである。したがって,本件不指定処分は,本件規程15条に違反し,違法である。
(被告の主張)
前記(2)(被告の主張)オで述べたところからすれば,審査会の意見を聴かないままされた本件不指定処分が本件規程15条に違反するということはできない。
(4)

争点4(民族教育に関する権利を侵害した違法の有無)

(原告の主張)
全ての子供は自己の人格的基盤を形成し成長する権利を持ち,民族教育を受ける権利は個人がアイデンティティを形成する前提として必要不可欠の重要な権利である。しかも,民族的少数者の民族教育を受ける権利は,多数者からの支持ないし恩恵を受けることが難しく,排除ないし抑圧される危険が高い。そうすると,民族的少数者の民族教育を受ける権利は強く保護されるべきである。ところが,本件不指定処分がされることにより,A高級学校の生徒は就学支援金の支給を受けられないという経済的不利益を被り,大阪府からの補助金が支給されなくなることとも相まって,民族教育を受ける権利の実現に重大な支障が生ずる。のみならず,原告は,学校法人としての存在意義,適格性等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を保持しながらA高級学校において在日朝鮮人の民族教育を行う利益を有するところ,本件不指定処分により,上記の利益が侵害された。
このように,本件不指定処分は,A高級学校やその生徒の民族教育に関する権利を侵害するものであり,違法である。
(被告の主張)
争う。
(5)

争点5(憲法14条違反の有無)

(原告の主張)

本件不指定処分は,高等学校の課程に類する課程を置く学校のうちA高級学校のみを支給法の適用から除外し,同校の生徒についてのみ就学支援金の支給を受けられなくするものである。
そうすると,
本件不指定処分は,
就学支援金の支給について,A高級学校の生徒を他の高等学校の課程に類する課程を置く学校の生徒と別異に取り扱うものであり,憲法14条の規定する社会的身分によりA高級学校の生徒を差別するものである。

文部科学省は,本件規定の削除に先立って実施された意見公募手続の意見に対し,「朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総連と密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,現時点では国民の理解を得られないと考えております。」としている(甲12)。また,本件規定に基づく指定を受けたB(高等部)及びC(高等部)については,都道府県への確認で直近5年間において法令違反を理由とする指導,勧告等を受けたことがないことから本件規程13条適合性が認められ,本件規定に基づく指定を受けているのに対し,朝鮮高級学校については,北朝鮮及び朝鮮総聯との関係が教育基本法の禁ずる「不当な支配」に当たるかという観点から,学校関係者の思想や思想が反映される事項に関する照会が何度も行われ,最終的には北朝鮮及び朝鮮総聯との関係性が「不当な支配」に当たらないことの確証を得ることができなかったとして本件規程13条適合性が否定され,本件不指定処分を受けている。上記のような経過に照らすと,本件不指定処分の目的は拉致問題等で外交的に強く対立している北朝鮮に対して政治的圧力を加えることにあると認められる。
上記のような目的は,教育の機会均等を図るために高等学校の課程に類する課程を置く教育施設に通う生徒に就学支援金を支給するという支給法とは全く関係のないものであり,合理的根拠を欠くものであって,上記の目的で不指定処分を行うことは許されない。この点を措いても,拉致問題等の問題を解決するためには日本と北朝鮮とが相互に認め合い,友好関係を築けるようにするための努力を払うことが必要であって,A高級学校を他の外国人学校と区別した上でA高級学校に通う生徒に不利益を与えても拉致問題等が解決するはずもないのであるから,上記の目的と本件不指定処分との間には合理的関連性は全くないことは明らかである。

また,本件不指定処分の目的は,教育基本法16条1項の禁ずる「不当な支配」が及んでいる学校の生徒に対しては就学支援金を支給しないことにより就学支援金の流用を防止することにあるとも考えられる。しかし,上記の「不当な支配」が及んでいる学校において国費を流用した例があるか,どういった場合に国費の流用のおそれがあるかを根拠付ける具体的資料はないから,上記の目的に合理的根拠があるということはできない。そして,本件規程には,財務情報の公開(12条)や指定の取消し(17条)などの流用防止措置が定められていることからすると,上記の目的で不指定処分をすることができるのは,過去に補助金等の不正受給等があり,不指定処分をしなければ流用を防止することが不可能と判断できるような事情がある究極的な場合に限られるというべきである。ところが,A高級学校について上記のような事情があることの根拠は何ら示されていないから,上記の目的と本件不指定処分との間には合理的関連性はないというべきである。
(被告の主張)

本件不指定処分の処分理由は,A高級学校につき本件規程13条適合性を認めるに至らなかったこと及び本件規定が削除されたことであり,本件規程の定める基準や手続等を離れて,生徒の思想信条や社会的身分を理由に差別をしたものではない。


本件規程13条適合性の審査につき,A高級学校と本件規定に基づく指定を受けた他の外国人学校との間において審査内容に差異はなく,A高級学校の審査の方法,程度が特に入念なものになったのは,同校が法令に基づく適正な学校運営を行っているかについて疑義が生じたためであり,上記の疑義が生じない他の外国人学校との間で審査の方法・程度に差異が生ずるのは合理的な理由に基づくものである。

(6)

争点6(国際人権法違反の有無)

(原告の主張)

社会権規約2条2項及び市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)26条違反
(ア)

社会権規約2条2項は社会権規約に規定する権利についての差別禁
止原則を定め,自由権規約26条も一般的な差別禁止原則を定めているところ,これらの差別禁止原則は締約国が即時に実施すべき義務を負うものである。そして,裁判所は,上記の差別禁止原則違反の訴えについて,差別を主張する者と権利を享受する者との状況を比較することにより上記各規定に直接依拠して救済を与えることは可能であるから,上記各規定は裁判規範性を有するということができる。
(イ)

支給法は,国民的な教育機関となった高等学校等の教育に係る家庭の
経済的負担の軽減を図ることが喫緊の課題となっている中,我が国が社会権規約13条2項(b)を留保していたことから,この留保の撤回に向けた施策を進めることが求められているとして,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図りもって教育の機会均等に寄与することを目的として制定されたものである(1条)。このような支給法の趣旨,目的に照らせば,支給法は,社会権規約13条の教育への権利を具体化したものというべきであるから,中等教育を行う外国人学校の一部について支給法の適用を認めつつ,同じく中等教育を行う朝鮮高級学校を支給法の適用除外とすることは,正当化事由のない限り,社会権規約2条2項及び自由権規約26条に反して許されないというべきである。そして,上記の正当化事由があるというためには,当該取扱いの相違が,正当な目的を追求するためのものであり,かつ,その目的と手段との間に合理的な均衡関係があって,それらが客観的に弁証し得るものであることを要し,
自由権規約26条に列挙された事由
(人種,
皮膚の色,
性,
言語,
宗教,
政治的意見その他の意見,
国民的若しくは社会的出身,
財産,出生又は他の地位)による差別については,厳格なテストが適用され,締約国がその正当性を説明する責任を負う。
(ウ)

本件不指定処分はA高級学校を差別的に取り扱うものであり,その取
扱いは,学校関係者の思想信条及びA高級学校に通う生徒という社会的身分による差別であるから,厳格なテストが適用され,被告において正当化事由の存在を説明する責任を負う。これを本件についてみると,本件不指定処分は,北朝鮮への制裁という外交的又は政治的な理由により行われたものであり,
その目的が正当なものであるとはいえない。
仮に,
本件不指定処分が外交的又は政治的な理由によるものではなく,A高級学校が本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったためであるとする被告の主張を前提としても,A高級学校が本件規程13条に適合しないものであることを被告が説明していない以上,本件不指定処分の目的が正当であるとはいえない。
また,目的と手段の関係をみても,朝鮮高級学校に支給法を適用しないとしたところで北朝鮮に何らの圧力を加えることはできないのであるから北朝鮮への制裁という目的と手段との関連性がないことは明らかである。また,就学支援金の流用防止に対しては本件規程16条ないし18条に基づく措置を考慮すれば足りるのであるから,朝鮮高級学校に支給法を適用しないとすることは最も厳しい手段であって,どのような目的によるものであるにせよ,このような手段を執る必要性はなく,目的と手段の均衡性を欠くものといえる。
(エ)

以上のことからすると,本件不指定処分は,社会権規約2条2項及び
自由権規約26条に違反し,違法である。

社会権規約13条違反
社会権規約2条1項によれば,締結国は権利の完全な実現に向けて利用可能な手段を最大限用いて即時に行動する義務を負っており,個人の自助努力によって達成され得ない側面を国家が補う義務が問題となる場面においても,各権利の最小限の本質的水準を満たすべき義務を負うというべきである。そして,高校進学率が約98%に達する日本社会において,中等教育は,社会権規約2条1項により実現が義務付けられる権利の最小限の本質的水準に該当するものといえる。そうすると,中等教育を行うA高級学校に支給法を適用しないとすることは,社会権規約13条の最小限の本質的水準を満たすべき義務を果たしていないことになるから,本件不指定処分は,同条に違反し,違法である。

あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(以下「人種差別撤廃条約」という。)2条及び5条違反
本件不指定処分は,エスニック性,集団性,文化的理由に基づいて行われているものであるから,人種差別に該当するものとして,人種差別撤廃条約2条及び5条に違反し,違法である。


国連人権関連委員会からの懸念及び勧告の無視による社会権規約等違反社会権規約委員会,人種差別撤廃委員会及び子どもの権利委員会は,朝鮮高級学校が支給法の対象とされないこと等について懸念を表明し被告に対してその是正を勧告しているところ,上記各委員会は,日本が批准するそれぞれの条約に規定された国家報告審査制度(社会権規約16条及び17条,人種差別撤廃条約9条,児童の権利に関する条約44条)によるものであり,被告が留保なくこれらの条約を批准している以上,被告が上記の懸念及び勧告を無視することは上記各条約違反となるとともに日本国憲法98条及び前文に違反するものであり,
本件不指定処分も,
違法である。

(被告の主張)

社会権規約2条2項及び自由権規約26条に違反しないこと
(ア)

ある条約について自動執行力が認められるためには,条約の基本的性
格,我が国における司法と行政・立法との権力分立及び法的安定性等の観点から,①私人の権利義務を定め直接に我が国裁判所で執行可能な内容のものとするという条約締結国の意思が確認でき,②条約の規定において私人の権利義務が明白,確定的,完全かつ詳細に定められていて,その内容を補完・具体化する法令を待つまでもなく国内的に執行可能であることが必要であるところ,社会権規約2条2項及び自由権規約26条は,その文理上,上記②の要件を充たすものとはいえない。また,社会権規約2条1項の文理に加え,「この規約の締約国は,社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」とする同規約9条については,締結において,社会保障についての権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであり,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではないと解されること(最高裁平成元年3月2日第一小法廷判決・集民156号271頁)に照らせば,社会権規約2条2項は,締結国において,積極的に社会保障政策を推進する施策をとる際,同項に係る要素につき政治的,社会的,経済的理由により現実には種々の対応をとらざるを得ない面があり得ることを当然の前提として,
それにもかかわらず,
上記権利の平等な実現を積極的に実現すべき政治的責任を負うことを宣明したものというべきである。そして,社会権規約2条2項と同趣旨である自由権規約26条も,社会権との関係では,締結国における政治的責任を示したものと解される。したがって,社会権規約2条2項及び自由権規約26条は,いずれも自動執行力はなく,裁判規範性を有するものではないから,本件不指定処分が上記各規定に違反したものということはできない。
(イ)

本件不指定処分は,朝鮮高級学校に本件規程13条適合性が認められ
ないことから支給法を適用しないとするものにすぎず,朝鮮高級学校を差別的に取り扱うものではないし,思想信条や社会的身分により差別するものでもない。また,本件不指定処分は外交的又は政治的な理由によるものではないし,本件規程16条ないし18条に基づく措置は,本件規程13条に適合し本件規定に基づく指定を受けた学校に対する措置であって,上記措置の存在をもって,本件規程13条に適合しないにもかかわらず本件規定に基づく指定をすべきであり,それをしないことが原告の主張するように最も厳しい処分であるということはできない。イ
社会権規約13条に違反しないこと
社会権規約13条2項(b)の規定は,支給法制定の背景事情の1つにすぎず,支給法が同規定の効力を日本国内において直接発生させるために制定された法律であるとはいえないし,社会権規約13条2項(b)の文理からすれば,同項(b)が前記アで述べた条約が自動執行力を有するための要件を満たしているとはいえない。また,社会権規約2条1項が締結国において立法措置その他の全ての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成することを求めていることからすれば,社会権規約13条2項(b)も,締結国においてその定める権利の実現に向けて社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものにすぎないものというべきである。そうすると,本件不指定処分が上記規定に違反するということはできない。


人種差別撤廃条約2条及び5条に違反しないこと
人種差別撤廃条約2条及び5条は,締結国が当該権利の実現に向けた積極的施策を推進すべき政治的責任を負うことを定めたにすぎず,裁判規範性が認められないものである上,本件不指定処分が国籍や人種に基づくものでないことも明らかであるから,本件不指定処分が上記各規定に違反するとはいえない。


国連人権関連委員会からの懸念及び勧告の無視による社会権規約等違反原告が指摘する人種差別撤廃委員会等の所見等は,懸念や勧告を示すものにすぎない上,支給法の仕組み等を踏まえたものではないし,朝鮮高級学校,北朝鮮及び朝鮮総聯に対する具体的な事実調査を行った上でされたものでもないことからすれば,上記の所見等をもって本件不指定処分が社会権規約等に違反するものということはできない。

(7)

争点7(行政手続法違反の有無)

(原告の主張)

行政手続法6条及び7条違反
(ア)

行政手続法6条は,申請の処理に要する標準処理期間を定めこれを公
開する義務を行政庁に課しているから,被告は,本件規定に基づく指定についても可能な限り標準処理期間を設定しなければならない。ところが,文部科学大臣が本件規定に基づく指定について標準処理期間の設定に努めたことはなく,本件不指定処分は行政手続法6条に違反するものである。
(イ)

支給法では,就学支援金の支給を受けるためには,支給法が適用され
る私立高等学校等における就学について就学支援金の支給を受ける資格を有することについての認定を受ける必要があり(5条),原告には上記申請の前提として本件規定に基づく指定を受ける必要があるが,本件規定に基づく指定の申請をしてからその指定を受けるまでの間に学校を卒業した者については就学支援金の支給を受けることができない。また,
上記指定の時点において在学中の者も本来は授業料に係る債権の弁済に充当されるべき就学支援金が事後的に支給されるにとどまることになる。このような事情に照らせば,本件規定に基づく指定は可及的に迅速に行われるべきであり,申請があったにもかかわらず,正当な理由なく審査手続を開始しないことは,行政の迅速かつ公平な遂行を図ることを目的とする行政手続法7条に違反するというべきである。本件においては,原告の申請が平成22年11月27日付けでされたにもかかわらず,同月23日に発生した北朝鮮による延坪島砲撃事件を契機として朝鮮高級学校に対する審査手続が停止され,約9か月もの間審査が行われなかった。このような外交上の理由により本件規定に基づく指定の申請に対する審査を停止することは許されないというべきであって,上記の措置は行政手続法7条に違反するというべきである。
(ウ)

行政手続法6条及び7条によれば,行政庁は,申請を受理した後,相当期間内に許認可等の処分をすべき法的義務を負っており,同法5条によれば,申請者の予測可能性を奪うような審査基準の変更や法令の改廃は許されず,これに違反する場合には,行政庁は従来の審査基準や法令を前提として処分を行うべきである。そうすると,行政庁が相当期間内に処理すれば旧法を適用して許可すべきところを不作為のまま放置し,その間,法令の改廃がされ,これを理由に不許可処分をすることは許されないというべきである。そして,本件規程14条3項が本件規定に基づく指定を受けようとする場合は前年度の5月31日までに申請すべきこととしているのは,当該申請に対する指定が申請の次年度4月までに行われるようにして就学支度金の受給権を可及的に保障する趣旨であると解されるから,原告による申請に対して処分すべき相当期間は,平成23年3月末日までであるというべきである。しかるに,本件不指定処分は,原告の申請から2年以上経過した後である平成25年2月20日付けで本件規定が削除されたことを理由に行われたものである。そうすると,本件不指定処分は,処分根拠とすることができない法令の改廃を理由とするものとして,
行政手続法6条及び7条に違反し,
違法である。

行政手続法8条違反
(ア)

行政処分における理由提示の程度は,処分の性質,理由付記を命じた
法律の趣旨,目的に照らして決すべきであるところ,本件不指定処分は子供の教育を受ける権利(憲法26条等)という重要な権利に関わるものである。また,本件不指定処分の根拠となっている本件規程13条の要件は「法令に基づく学校の運営を適正に行われなければならない」という規範的なものであり,それのみでは要件不充足の具体的理由は明らかではない。さらに,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図りもって教育の機会均等に寄与するという支給法の趣旨,目的からすると,後期中等教育を行っている実態を有する学校に支給法を適用しないのは例外的な措置であるから,その場合にはその理由が明らかにされる必要がある。加えて,行政手続法は,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図りもって国民の権利利益の保護に資することを目的とするものであり,このような行政手続法の目的に照らすと,行政庁の理由提示義務は,拒否事由の有無の判断についての行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,拒否の理由を申請者に明らかにすることによって透明性の向上を図り,併せて不服申立てに便宜を与える趣旨であると解される。以上のような本件不指定処分により侵害される権利の重要性,
行政手続法の趣旨,
目的等からすれば,
本件不指定処分について提示されるべき理由は,いかなる根拠に基づきいかなる法規を適用して当該申請が拒否されたのかということを申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならないというべきである。
(イ)

本件不指定処分は,
本件規定が削除されたこと及び本件規程13条に

適合すると認めるに至らなかったことを理由としているが,これらは一方が認められれば他方が不要となるものであり,処分理由として両者を併記することは申請者に混乱を生じさせてしまうことになり,申請者が処分理由の記載自体から不服申立てが可能な程度に処分の理由を了知することはできない。
また,本件規程13条は「就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校運営が適正に行われなければならない。」という抽象的文言を含む規定であり,単に当該拒否処分の根拠規定を示すだけでは行政手続法8条の理由提示としては不十分というべきである。しかも,本件不指定処分は本件規程13条の「法令」に教育基本法16条が含まれることを前提とするものであり,その実質的理由は教育基本法16条1項違反であるのに,同項違反である旨は示されていない上,同項違反に当たる具体的事実も示されていない。
(ウ)

以上のことからすれば,本件不指定処分における理由付記には行政手
続法8条に違反する違法があるというべきである。

行政手続法違反の取消事由該当性
被告は,原告が処分要件の欠缺により本件規定に基づく指定を受けることができないから行政手続法違反を理由に本件不指定処分を取り消す利益はない旨主張する。しかし,実体要件を充足しないからといって行政手続法違反が処分の違法事由とならないとすると,行政庁において適正な行政手続を履践しようとするインセンティブが働かなくなり,行政手続法の趣旨,目的を没却することとなる。したがって,本件において,行政手続法違反が処分の違法事由として取消原因になることは明らかである。
(被告の主張)

行政手続法6条及び7条に違反しないこと
(ア)

行政手続法7条は,申請に対する審査の開始時期と,形式上の要件に
適合しない申請に対する応答時期について規定したものであって,申請の処理期間について規定したものではない。したがって,同条が本件規定に基づく指定に関する処分までの期間を可及的に迅速にすることを法的に義務付けているということはできない。
(イ)

A高級学校を含む朝鮮高級学校に対する本件規定に基づく指定の可
否の審査手続を開始しなかったのは,北朝鮮による延坪島砲撃事件のために審査を一時停止したことによるものであるところ,北朝鮮による砲撃事件を契機として北朝鮮と大韓民国との間で戦争が勃発する可能性も否定できないという,
通常想定し難い事態が急きょ発生したことにより,
国民の生命及び財産並びに秩序の安定が脅かされないように不測の事態に備え万全の態勢を整える必要があり,そのような事態の中,延坪島砲撃事件についての報道状況や世論を踏まえると審査会の委員が静謐な環境で公正な審査を行うことができるかについて懸念があった。そこで,朝鮮高級学校に対する本件規定に基づく指定の可否の審査を一時停止したのである。そして,その後,審査手続を停止してから約9か月が経過し,その間に,北朝鮮が当該砲撃に匹敵するような軍事行動を取らなかったこと等を踏まえると同事件以前の状況に戻ったと判断されたことから審査手続の停止が解消されたものである。このように朝鮮高級学校についての審査が一時中断したことは外交的又は政治的な理由によるものではなく,正当な理由に基づくものである。そして,原告の申請以後,北朝鮮の延坪島砲撃事件により審査手続が一旦停止されたものの,審査手続を開始してからは,審査会において,平成23年11月,同年12月,平成24年3月及び同年9月の4回にわたって審査を行ったほか,支援室において書面による質問や朝鮮高級学校の授業風景の視察等の実地調査を行っている。また,朝鮮高級学校については,法令に基づく適正な学校運営がされているかについて疑念が生じたため,他の学校に比して入念に審査が行われたのである。そうすると,上記の審査に時間を要することはやむを得ないものといえる。
以上のことからすれば,本件不指定処分について行政手続法6条及び7条違反はないというべきである。
(ウ)

原告は,行政庁が相当期間内に処理すれば旧法を適用して許可すべき
ところを不作為のまま放置し,その間に法令が改廃され,これを理由に不許可処分とすることは許されないと主張する。しかし,A高級学校は本件規程13条に適合しないのであるから,被告が相当期間内に処理すれば旧法を適用して許可すべきであるということはできず,原告の主張は前提を欠く。この点を措いても,申請後に法令の改廃があった場合には,行政処分は原則として処分時の法令に準拠して行われるべきものであり,処分が申請から相当期間経過した後に行われた場合であっても,行政庁が従来の法令を前提とした処分を行う義務を負うことはない。また,本件では,前記(イ)のとおり,A高級学校については審査会の審査に時間を要したことはやむを得ないのであって,A高級学校について相当期間内に処分がされていないということはできない。

行政手続法8条に違反しないこと
処分において示すべき理由の程度は,処分の性質と理由付記を命じた法律の規定の趣旨,目的に照らして決すべきであるところ,拒否処分が申請者側において明らかにすべき処分要件に関わる場合には,どの処分要件が認められないかということを明らかにすれば当該申請拒否処分がされた理由を当該申請者においてその記載自体から了知できるから処分理由としては十分である。本件規定に基づく指定の性質は,これを受けることによって初めて就学支援金を受領し得る地位が創設されるから,その処分要件の適合性は申請者側において明らかにすべきものである。
そうであるところ,
本件不指定処分の通知書には本件規定が削除されたこと及び本件規程13条適合性が認められないことが明示されているから本件不指定処分に当たって明示されるべき処分の理由としては十分である。


行政手続法違反の取消事由非該当性
仮に,本件不指定処分が行政手続法6条及び7条に違反するものであるとしても,本件不指定処分における文部科学大臣の判断は不合理なものではなく,A高級学校は実体的に本件規定に基づく指定を受けることができない外国人学校であるから,上記事由は本件不指定処分の違法を根拠付ける事由になるものではない。

(8)

争点8(本件規定に基づく指定処分の義務付けの訴えの訴訟要件及び本案
要件の具備の有無)
(原告の主張)

前記(1)~(7)の
(原告の主張)
のとおり,
本件不指定処分は,
違法であり,
取り消されるべきものである。そして,A高級学校は,学校教育法に基づいて在日朝鮮人子女に対し高等普通教育に準ずる教育を施し,朝鮮人として必要な教養を高め,併せて朝・日両国民の親善に寄与し得る人材を育成することを目的としている。かかる学校の目的に基づき,同校では,授業は基本的に朝鮮語で行われ,カリキュラムは,朝鮮語,朝鮮史等の科目を除き,文部科学省の学習指導要領に準拠して作成されており,同校では,多くの部活動が盛んに行われている。このような同校での教育の結果,卒業生の多くは,大学又は専修学校に進学し,多方面にわたり社会で活躍している。以上のようなA高級学校の教育内容等に照らすと,同校が本件規程の指定基準を満たすことは明らかであり,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」ということができる。そうすると,文部科学大臣は,速やかにA高級学校について本件規定に基づく指定を行うべきであり,上記指定をしないことは文部科学大臣の裁量権の逸脱濫用となる。

したがって,
本件規定に基づく指定処分の義務付けの訴えは適法であり,
かつ,理由があるというべきである。

(被告の主張)
本件規定に基づく指定処分の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号に規定するいわゆる申請型の義務付けの訴えと解されるところ,前記(1)~(7)の(被告の主張)のとおり,本件不指定処分は,適法であり,取り消されるべきものに当たらない。したがって,同訴えは,訴訟要件を具備せず,不適法である。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提となる事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
(1)

支給法制定の経緯等(乙4)

高等学校等の後期中等教育段階の教育においては,義務教育と異なり憲法上無償が要求されるものではないことなどから受益者である生徒等に授業料等の負担を求めることが原則とされていた。しかし,①高等学校等における教育を受けるには授業料以外にも様々な費用を要し,保護者に相当な経済的負担が生じていることから進学の意欲のある者が経済的理由で就学が困難となることがないよう教育費の負担軽減を図り教育の機会均等を確保することが喫緊の課題となっていたこと,②高等学校等は,その進学率が約98%(平成20年度学校基本調査)に達し,その教育の効果は広く社会に還元されるものとなっており,高等学校等の教育に係る費用について社会全体で負担していくことが適当であると考えられるようになっていたことなどの状況の変化に伴い,
高等学校等の教育に係る費用
を社会全体で負担するという考え方で施策を進めることが国民的要請となっていた。このような国民的要請に応え,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図りもって教育の機会均等に寄与することを目的として,平成22年3月31日,支給法が制定された。


支給法は,公立高等学校については,生徒が負担する授業料による収入相当額の資金を国が地方公共団体に支給するなどして公立高等学校の授業料を徴収しないこととしたが,私立高等学校等については,建学の精神に基づいて特色ある教育を行っており,授業料設定も含め,その自主性を尊重する必要があることなどを考慮し,当該私立高等学校等に在学する生徒等に公立高等学校の授業料の額に相当する就学支援金を一律に支給することとしている。もっとも,支給法制定の目的を達するためには受給権者である生徒等個人に支給した就学支援金が授業料以外に流用されることを防止する必要があることなどから,私立高等学校等の設置者が受給権者である生徒等に代わって就学支援金を受領し,これを授業料債権の弁済に充当する仕組みとされている(支給法8条)。
(2)

本件規程の制定に至る経緯等
支給法による就学支援金制度は,広く後期中等教育段階に属する生徒に係る教育費負担を軽減するためのものであることから,高等学校,中等教育学校の後期課程,特別支援学校の高等部及び高等専門学校のほか,専修学校及び各種学校も対象とされるが,専修学校及び各種学校については,その教育内容等が多種多様であるため,高等学校の課程に類する課程を置くものに限り支給法の対象とされている。そして,どのような各種学校を高等学校の課程に類する課程を置くものとして支給法の対象とすべきかを判断するに当たっては,その基準や評価方法等について専門的,技術的検討を要するため,高等学校の課程に類する課程を置くものとして支給法の対象とするか否かは文部科学省令で定めるところによるものとされた。

支給法2条1項5号の委任を受けて定められた本件規則1条1項は,高等学校の課程に類する課程を置くものとして支給法の対象となる各種学校を,我が国に居住する外国人を専ら対象とするもののうち,①「高等学校に対応する外国の学校の課程と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられたものであって,文部科学大臣が指定したもの」(同号イ),②上記①のほか,「その教育活動等について,文部科学大臣が指定する団体の認定を受けたものであって,文部科学大臣が指定したもの」(同号ロ),③上記①及び②のほか,「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」(同号ハ。本件規定)と定めた。そして,前記のとおり,どのような各種学校が高等学校の課程に類する課程を置くものとして支給法の対象とすべきかを判断するに当たっては専門的,
技術的判断を要する事柄であることから,
平成22年5月26日,
文部科学大臣の諮問機関として高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議(検討会議)が設置され,各種学校が高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるために充たすべき基準,高等学校の課程に類する課程を置くものか否かを審査する体制,手続,方法等についての検討がされた。(甲3,乙2)

検討会議は,同年8月30日付け「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について」(報告)を公表した。同報告は,基準の基本的考え方として,各種学校のうち外国人学校が高等学校の課程に類する課程を置くものに該当するかを判断する基準は,専修学校高等課程との均衡及び各種学校の実態の多様性を考慮し,専修学校高等課程に求められている水準を基本としつつ高等学校に求められている教育活動の水準も加味しながら策定することが適当であるなどとした上,上記の基準のポイントとなる事項として,①修業年限,教育課程及び教育水準,②教員の資格,③法令に基づく適正な学校の運営,④適正な学校の情報の提供及び公表を挙げ,それぞれについて高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるために各種学校が満たすべき内容を提示した。
このうち,
法令に基づく適正な学校の運営については,支給法では就学支援金は生徒等が在学する学校が代理受領して授業料に係る債権の弁済に充てることとされているから,本件規定に基づいて文部科学大臣の指定を受ける各種学校は,当該学校が就学支援金の管理を適正に行うとともに,学校教育法,私立学校法などの関係法令の諸規定を遵守していることは当然であり,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるための基準において,就学支援金の管理その他の法令に基づく学校の運営が適正に行われることを求めることが適当であるとした。
また,本件規定に基づく指定の可否は,外交上の配慮などにより判断すべきものではなく教育上の観点から客観的に判断すべきものであることが政府の統一見解であることから,本件規定に基づく指定の可否に関する審査は,教育制度の専門家をはじめとする第三者が専門的な見地から客観的に行ってその意見を取りまとめた上,最終的には文部科学大臣の権限と責任で本件規定に基づく指定がされることが適当であるとした。
(甲3)

文部科学大臣は,同年11月5日,上記報告を基本として本件規程を定めた。(甲2)


原告は,A高級学校につき,同月27日付けで本件規定に基づく指定の申請をした。また,学校法人Gは,その設置するB(高等部)につき,同月30日までに本件規定に基づく指定の申請をし,学校法人Cは,その設置するC(高等部)につき,平成23年5月31日付けで本件規定に基づく指定の申請をした。Bは,トルコ人が中心となって平成15年に開設されたインターナショナルスクールであり,平成23年9月に高等部を開設する予定であった。また,C(高等部)は,平成20年4月に開設された外国人学校であり,在日韓国人の生徒がほとんどを占めている。(甲6,7,22,24)


文部科学大臣は,本件規程15条に基づき,教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される高等学校等就学支援金の支給に関する審査会(審査会)の意見を聴くこととし,平成23年7月1日,審査会を設置した。
審査会は,
本件規定に基づく指定等に関する意見を検討事項とし,
本件規程に定める指定の基準に基づいて審査を行うものとされており,その庶務は文部科学省初等中等教育局財務課高校修学支援室(支援室)が所管することとされた。(甲20,21)

(3)

A高級学校の概要等
A高級学校は,
昭和41年3月3日に設置認可を受けた各種学校であり,
学校教育法に基づき,
同校に入学する在日朝鮮人子女に対し高等普通教育
に準ずる教育を施し,朝鮮人として必要な教養を高め,併せて朝・日両国民の親善に寄与し得る人材を育成することを目的としている。平成22年度の同校の在籍生徒数は合計392名(第1学年124名,第2学年127名,第3学年141名)であり,その国籍は韓国籍233名,朝鮮籍152名,日本国籍7名である。(甲8の1)

A高級学校では,学習指導要領に示されている教科及び特別活動が概ね実施されているが,学校の目的から,朝鮮語が国語とされ,英語と日本語が外国語とされている。また,授業は基本的に朝鮮語で実施されており,学習指導要領には対応する科目がない「現代朝鮮歴史」が必修科目とされている。(乙61)


A高級学校からは,国公立大学,私立大学,短期大学などにより個別入学資格(学校教育法施行規則150条7号,183条3号)を認められた者が,平成21年において合計102名(日本の大学42名,朝鮮大学校37名,専門学校23名)いる。また,A高級学校では,100%に近い生徒が部活動に参加しており,ラグビー部が全国選抜大会で準優勝し,吹奏楽部が全国高校野球選手権大会開会式・閉会式で演奏するなど,部活動等を通じて他の学校等との交流も行われている。(甲8の1,乙61)

全国各地の朝鮮高級学校では共通の教科書が使用されており,その編纂は,朝鮮高級学校の教員が多数を占める教科書編纂委員会において行われている。この教科書編纂委員会は,従前の教科書では,朝鮮総聯中央常任委員会内の組織と記載されていたが,現在の教科書では,E内の組織と表示されている。もっとも,Eについては,朝鮮総聯のホームページにおいて朝鮮総聯関連事業体とされる一方,学校法人F学園の寄附行為では,同学園の一部門とされている。(甲27,121~156〔欠番の145及び146を除く。〕の各1・2,乙55,82,85,86,88,89~124の各1・2,原告代表者)


朝鮮高級学校の現代朝鮮歴史の教科書では,教科書の改訂により「日本当局は『拉致問題』を極大化し」との記述が削除され拉致問題に関する記述がなくなったものの,A高級学校では,プリント教材を使用して拉致問題を授業で取り扱っている。また,朝鮮高級学校の現代朝鮮歴史の教科書では,1998年の北朝鮮によるミサイル発射が人工衛星の打ち上げと記述されているものの,A高級学校では,プリント教材を用いて日本政府等の見解を教えている。さらに,朝鮮高級学校の朝鮮歴史等の教材では,竹島を「独島」と,日本海を「朝鮮東海」などと記述されているものの,A高級学校では,日本政府の見解についても併せて教えている。
もっとも,
朝鮮高級学校の教科書には,
「敬愛する金日成主席様」
など,
特定の政治指導者について敬称等を用いて記述する部分「現代朝鮮歴史」(
の教科書),「敬愛する金正日将軍様を,国防委員長として高く仰ぎお仕えしていることは,わが祖国と人民の大きな栄光であり幸福である。」などの当該政治指導者を賞賛する趣旨の記述(「社会」の教科書),「祖国の人民は誰もみな社会的人間の本性的要求と社会主義の理念に合う政治思想生活,物質経済生活,文化道徳生活を享受しており,これは,人民大衆中心の我が共和国の本質的優位性を明らかにみせてくれる。」などの北朝鮮の社会主義理念及び国家の発展を賛美する記述(「社会」の教科書),「朝鮮でヤンキーたちはヒトラーさえも遙かに凌駕した。」などの反米的な記述(「現代朝鮮歴史」の教科書),李承晩が米国に唆されて北朝鮮に砲射撃を加え朝鮮戦争に拡大した旨の歴史的事象を一面的に表現した記述(「現代朝鮮歴史」の教科書)などがある。また,朝鮮高級学校では,国語科(朝鮮語)及び社会科の教育内容については北朝鮮の学者等の意見を取り入れるために朝鮮総聯の協力を得ている。
(甲26,27,乙8)
(4)

朝鮮学校に関する新聞報道等
国内の新聞報道
(ア)

平成22年2月11日のH新聞において,政府筋による話として,北朝鮮が昭和30年代前半からほぼ毎年延べ150回以上にわたり朝鮮学校に合計約460億円の資金提供をし,平成21年には約2億円の資金提供をした旨が報道された。(乙18の1)
(イ)

平成22年2月21日のH新聞において,朝鮮学校で学費納入時に朝
鮮総聯傘下団体の活動費を同時に徴収していたこと,朝鮮総聯が学校行事で寄付名目で保護者らから多額の資金を集めていたことが明らかとなった旨が報道された。(乙44)
(ウ)

同年3月11日のH新聞において,朝鮮労働党の対南工作部署に所属
していた元幹部の話として,朝鮮学校で使用されている教科書には故金正日氏の決裁が必要である旨が報道された。(乙18の2)
(エ)

同年8月5日のH新聞において,朝鮮総聯関係者による話として,朝
鮮高級学校に対する支給法適用を検討するために平成22年7月上旬に実施された文部科学省の視察に合わせて,①朝鮮総聯が朝鮮高級学校に対して金日成及び金正日を礼賛する「現代朝鮮歴史」などの歴史授業を視察当日のカリキュラムから外すこと並びに金日成及び金正日の肖像画を職員室及び校長室から撤去することを指示したこと,②金日成の業績を称える図書資料が収められている部屋を施錠したことなどが報道された。(乙48)
(オ)

同年9月26日のIニュースにおいて,朝鮮総聯関係者への取材で判
明したとして,①朝鮮学校の生徒のうち朝鮮総聯の幹部等の子女については朝鮮総聯が学費と同程度の額を教育手当として拠出し学校側が会計上で学費と相殺する形で処理することにより実質的に学費が免除されていること,②朝鮮高級学校が支給法の対象となった場合には免除者分も就学支援金が支給され,実質的に朝鮮総聯側の利益になる可能性があることなどが報道された。(乙18の3)
(カ)

平成23年10月26日のH新聞において,朝鮮学校の校舎や敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の債務の担保などになっており,そのうち高級学校を含む13校の校舎及び敷地が,同金融機関の破綻を受けて,Jから仮差押えを受けたこと,そのためK中高級学校及びL中高級学校は支給法の対象から外れる可能性があることが報道された。(乙18の4)
(キ)

同年11月1日のH新聞において,元朝鮮総聯関係者が「東京都から
理事会議事録の提出を求められた際,理事でもない同僚が上からの指示で過去まで遡って議事録を書き,提出した」旨を述べたとして,朝鮮学校を運営する準学校法人の理事会の議事録を朝鮮総聯が偽造した旨が報道された。(乙18の5)
(ク)

同月18日のH新聞において,朝鮮総聯直轄組織である教育会の元幹
部の話として,朝鮮学校への自治体からの補助金を教育会が管理しており,朝鮮総聯に流用され,朝鮮総聯が補助金を担保に在日朝鮮人金融機関であるM信用組合から借入れをすることもあった旨が報道された。乙(
43)
(ケ)

平成24年10月17日のN新聞において,朝鮮総聯関係者の話とし
て,朝鮮総聯が傘下の団体や朝鮮高級学校等の教室や教職員室に掲げる金日成主席及び金正日総書記の肖像画を新しい肖像画「太陽像」に同月中に交換するよう指示した旨が報道された(乙18の6)。
(コ)

平成27年6月13日のH新聞において,神奈川県が朝鮮学校に通う
生徒等に直接支給している学費補助金につき,朝鮮総聯と関係が深いとされる教育会が保護者に対して学費補助金を教育会に納付するよう求めて納付させるケースがあった旨が報道された。(乙75)

国外の新聞報道等
(ア)

O発行の平成22年3月17日のO新聞において,朝鮮学校で使用し
ている現代朝鮮史の教材の全ての記述に金日成・金正日の功績が含まれるなど朝鮮学校では金日成一族や北朝鮮の制度を礼賛する思想教育が行われていること,このような思想教育の問題は朝鮮学校の上部団体が朝鮮総聯であり,人事や配置まで朝鮮総聯の指示を受けるという「垂直支配」に起因していることなどが報道された。(乙33)
(イ)

平成23年1月1日のO新聞において,「P」の代表が,「朝鮮学校
は,金日成-金正日親子へ忠誠の電文を送るという思想・政治運動を学校ぐるみで展開している」として自治体による朝鮮学校への補助金支出に反対の姿勢を示した旨が報道された。(乙32)
(ウ)

平成24年4月4日の朝鮮労働党機関紙である「Q新聞」において,朝鮮総聯は北朝鮮の堂々たる海外同胞組織であり,在日朝鮮学校は朝鮮総聯の組織が運営する合法的な民族教育機関である旨が掲載された。(乙34の1・2)

(エ)

朝鮮総聯中央常任委員会が平成3年に発行した書籍には,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の指導のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との記載がある。(乙35)

(オ)

朝鮮総聯のホームページ上では,平成24年3月1日時点において,
「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。」と記載されていたが,原告らから訂正の申入れがされ,上記記載は平成28年10月14日までに削除された。
また,朝鮮総聯のホームページ上では,民族教育に関し,「朝鮮総聯は,すべての同胞の民族的尊厳を守り,彼らが朝鮮人の魂をもって堂々と生きていけるように民族教育事業と文化啓蒙活動を繰り広げている。,」
「朝鮮総聯と在日同胞は,幼稚園から初級学校,中級学校,高級学校,大学校にいたる120余校の各級学校を日本各地に設立して,在日同胞子女に民主主義的民族教育を実施している。」などと記載されている。(乙8,17,83,84)

関係団体からの申入書
(ア)

北朝鮮によるD及びRは,平成22年8月25日付けで文部科学大臣
に提出した「朝鮮学校への国庫補助に反対する要請文」において,拉致問題への悪影響などに関する十分な議論がされていない現段階での朝鮮学校への国庫補助決定に強く反対するとした上,国庫補助の実施は北朝鮮に対して拉致問題で日本が軟化したという間違ったメッセージとなる危険が大きいとし,①朝鮮学校の生徒らは,学内で組織運営されているSという政治組織に全員加盟して北朝鮮の金正日政権を支える政治活動に参加している,②金正日政権は平成21年夏以降,「拉致問題はすでに決着したという立場で日朝国交を促進せよ。」と指令を出し,これを受けて朝鮮総聯はSを通じて世論喚起のデモや集会に朝鮮学校生徒を動員している,③朝鮮学校は純粋な教育機関ではなく拉致被害者をいまだに返さない朝鮮労働党の日本での工作活動拠点であるなどと主張している。(乙36)
(イ)

O中央本部は,平成22年7月27日付けで文部科学大臣に提出した「朝鮮学校『高校無償化』に関する申し入れ書」及び平成24年2月13日付けで文部科学大臣に提出した「朝鮮高級学校『高校授業料無償化・就学支援金支給制度』についての申し入れ書」において,朝鮮高級学校を支給法の対象とすることには慎重を期する必要があるとした上,朝鮮高級学校は運営面においても教科内容の面においても,教育全般面においても朝鮮総聯の指導を通じ北朝鮮政府の完全なコントロール下にあり,日本社会一般の常識を遥かに超えるような教育及び指導が行われているなどと主張している。(乙37の1・2)


公安調査庁作成の「内外情勢の回顧と展望」の記載内容
公安調査庁作成の「内外情勢の回顧と展望」には,平成21年から平成25年までの間,
朝鮮総聯に関して,
概要,
次のような記述がされていた。
(ア)

平成21年
朝鮮総聯は,北朝鮮建国60周年に際し,各階層別の代表団を総勢数
百人規模で北朝鮮に派遣し祝賀行事に参加させ,上記代表団の一部は朝鮮労働党幹部から思想教育の徹底などを図るよう指導を受けた。(乙42)
(イ)

平成22年
朝鮮総聯は,朝鮮人学校での民族教育を愛族愛国運動の生命線と位置
付けており,学年に応じた授業や課外活動を通して,北朝鮮・朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいる。朝鮮人学校では,一律に朝鮮総聯傘下事業体「E」が作成した教科書を用いた朝鮮語での授業を行っており,例えば,高級部生徒用教科書「現代朝鮮歴史」では,北朝鮮の発展ぶりや金正日総書記の先軍政治の実績を称賛しているほか,朝鮮総聯の活動成果などを詳しく紹介している。朝鮮総聯は,このほか,教職員や初級部4年生以上の生徒をそれぞれ朝鮮総聯の傘下団体であるTやSに所属させ,折に触れ金総書記の偉大性を紹介する課外活動を行うなどの思想教育を行っている。(乙19,41)
(ウ)

平成23年
朝鮮総聯は,就学支援金の支給に関する対策委員会を設置し,主とし
て朝鮮人学校教職員・生徒らを前面に出して支給法適用を求める世論の幅広い喚起に努め,日本政府や政界関係者への要請活動などを継続的に実施するとともに,国連人権理事会などの国際機関に対して「適用除外は人権侵害・差別」などと訴えた。(乙40)
(エ)

平成24年
朝鮮総聯は,
思想教育と組織拡大を両輪とした活動を引き続き展開し,

多数の在日韓国・朝鮮人と関わりを有する朝鮮人学校を活動の拠点と位置付け,
「同胞再発掘運動」の活発化に努めていくものとみられる。
(乙
39)
(オ)

平成25年
朝鮮総聯は,朝鮮人学校の生徒への支給法の適用を実現すべく諸活動
に取り組んできたところ,平成24年2月から3月までの間,日本人支援者らを前面に出して支給法の適用を求める集会等を集中的に実施し,同年7月から9月までの間には,朝鮮人学校の教職員,生徒らを動員して各地で街頭宣伝活動を繰り広げた。(乙38)

公安調査庁長官等の国会における答弁
公安調査庁長官は,平成22年11月17日の参議院予算委員会において,朝鮮学校と朝鮮総聯の関係につき,朝鮮総聯の影響は,朝鮮人学校の教育内容,人事,財政に及んでいる旨答弁した。そして,警察庁長官官房審議官は平成24年11月7日の衆議院文部科学委員会において,公安調査庁次長は平成26年6月13日の参議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会において,それぞれ上記と同趣旨の答弁をした。(乙20,53の1・2)


学校法人U学園に関する判決及び学校法人F学園の運営上の問題点を指
摘した報告書
(ア)

平成9年から平成10年にかけて行われたV信用組合の学校法人U
学園等に対する各貸付けに係る貸金債権を譲り受けたJが,学校法人U学園等に対してその返済等を求める訴訟を広島地方裁判所に提起し,一部認容判決がされたが,同判決では,上記貸付け当時の学校法人U学園の運営等につき,①学校法人U学園の実印は,朝鮮学校の日常の管理運営を行っていた教育会の金庫で保管されており,金庫の鍵は経理担当者が持っていた,②V信用組合と学校法人U学園は,朝鮮総聯広島県本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっていた,③学校法人U学園が学校法人の形態をとったのは日本社会において行政上の便宜等を受けるためであり,学校の日常的な管理運営は学校単位で設けられている教育会が行っていると学園関係者は認識していた,④数億円の債務負担を伴うような土地購入等の場合にも理事会が開かれることはなかった,⑤学校法人U学園において理事会の議事録を作成していたのは,理事会に関与していない司法書士であり,議事録もその一部には押印がないなど杜撰な体裁のものであったなどの事実が認定されている。(乙54)(イ)

東京都は,平成7年度に私立外国人学校に対する教育運営費補助制度
を創設し朝鮮学校に対しても補助金を交付してきたが,朝鮮学校を支給法の適用対象とするか否かの議論を契機として,朝鮮学校と朝鮮総聯との密接な関係性等について疑義が提示され,平成22年度以降は,朝鮮学校を上記制度に基づく補助金の支給対象から除外している。このような状況の下,東京都は,朝鮮学校に対する教育運営費補助制度に基づく補助金交付の当否を判断するため,平成23年12月から平成25年10月までの間,朝鮮学校の学校運営全般について調査した。同年11月に取りまとめられた上記の調査結果では,学校法人F学園が設置する東京都内の朝鮮学校において不適切な財産管理が見られたなどとされ,具体的な事例として,①朝鮮総聯支部等の事務所が入居する建物がW幼初級学校の敷地内に存在しているという事例,②朝鮮大学校のグラウンドが朝鮮総聯事業体企業のM信用組合に対する負債のため担保提供され,当該グラウンドについて競売開始決定がされたため,学校法人F学園が上記企業の債務の一部を弁済したという事例などが指摘された。(乙55)
(5)

本件規定に基づく指定の可否の審査手続の状況
B(高等部)及びC(高等部)の審査の状況
(ア)

審査会は,平成23年7月1日及び同月20日,B(高等部)の本件
規程の基準適合性を審査し,同校を設置する学校法人Gでは,私立学校法に基づく,理事会の開催,財務諸表の作成等が行われているほか,Bを所管する都道府県への確認により,直近5年間において教育基本法,学校教育法等の法令に違反していることを理由とする指導・勧告等を受けたことがないことが判明したとして,B(高等部)の本件規程13条適合性を認めた。そして,この審査結果を受けて,文部科学大臣は,同年8月30日,同校につき,本件規定に基づく指定をした。(甲6,13,22,23,25)
(イ)

審査会は,同年7月1日,同月20日及び同年11月2日,C(高等
部)
の本件規程の基準適合性を審査し,
同校を設置する学校法人Cでは,
私立学校法に基づく,理事会の開催,財務諸表の作成等が行われているほか,Cを所管する都道府県への確認により,直近5年間において教育基本法,学校教育法等の法令に違反していることを理由とする指導・勧告等を受けたことがないことが判明したとして,C(高等部)の本件規程13条適合性を認めた。そして,この審査結果を受けて,文部科学大臣は,同年12月2日,同校につき,本件規定に基づく指定をした。(甲
7,22~25)

朝鮮高級学校の審査の状況
(ア)

審査会は,同年11月2日,本件規定に基づく指定の申請を行った朝
鮮高級学校の本件規程の基準適合性を審査したが(第4回審査会),いずれの朝鮮高級学校についても,当該学校を設置する準学校法人では財産目録,財務諸表等が作成され,理事会等も開催されており,平成19年4月から平成23年9月までの間に所轄庁である都道府県知事から,教育基本法,学校教育法等の法令に違反することを理由とする行政処分等を受けたことがなかった。
このうち,
原告及びA高級学校については,
その所轄庁である大阪府知事が,平成19年4月から平成23年9月までの間,3年に1度を基本として必要に応じて随時,立入検査等を実施し,上記期間内の直近では平成22年1月から平成23年7月に立入検査等を実施しており,大阪府知事の立入検査等では,法人・学校の運営状況並びに会計処理及び計算書類の作成の有無や,補助金の交付要件となっている事項(日本の学習指導要綱に準じた教育活動,財務情報の一般公開,特定の政治団体と一線を画すこと,特定の政治指導者の肖像画を教室から外すこと)の有無が検査されたが,A高級学校について,教育基本法等の法令に違反することを理由とする行政処分等は行われなかった。もっとも,審査会は,朝鮮学校については前記(4)の新聞報道等がされていたことから,朝鮮高級学校が朝鮮総聯から教育基本法16条1項の「不当な支配」を受けているかを引き続き検討する必要があるとして,過去の報道内容等に関する調査確認を行うこととし,支援室において,以下のような調査確認等が行われた。(甲25)

支援室は,平成23年11月9日付けで,朝鮮高級学校に対し,①「教科書内容の変更には北朝鮮本国の決裁が必要である」旨の報道は事実か,②教育内容について朝鮮総聯の指導を受けることがあるか,③T及びSに生徒及び教員が自動的に加入することになっているか,生徒及び教員がどのような活動に参加しているか,④朝鮮総聯が各朝鮮学校に対して教職員への思想教育の強化を指示する旨の文書が配布されたか,⑤役員に朝鮮総聯や関連団体の役職員がいるか,⑥「校長人事は金正日総書記の決裁が必要である」旨の報道は事実か,⑦朝鮮総聯のホームページには「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との記載があるが,教育会が学校運営に関与しているかなどについて照会した。これに対して,朝鮮高級学校は,概要,次のとおり回答した。すなわち,①については,報道内容は事実ではない,②については,教育内容について朝鮮総聯の指導を受けることはない,③については,T及びSに生徒や教員が自動的に加入することはなく,Tは教員の研修・福利厚生のための組織であり,Sは生徒会としての活動を行う組織である,④については,そのような文書が配布された事実はない,⑤については,寄附行為に則って役員を選任しており,保護者等が朝鮮総聯関係者であるため朝鮮総聯関係者が役員となることはあるが,その場合には寄附行為に掲げている学園の理念を遵守し理事会の決定に従うことを条件としている,⑥については,報道内容は事実ではない,⑦については,朝鮮総聯のホームページの記載は学校法人として認可される以前の状況を記載したものであり,教育会は,教職員や保護者等が会員となって学校運営のための寄付金集め等を行う組織であって,学校法人としての意思決定は理事会が行っているなどと回答した。(甲26,乙7,8)

支援室は,北朝鮮から朝鮮学校に対する資金提供がされている旨の報道に関し,過去5年間における朝鮮高級学校と朝鮮総聯との収支を確認したところ,各校の朝鮮総聯又は教育会からの寄付は合計年100万円程度であったことが判明した。(甲26)


支援室は,学費納入時に朝鮮総聯の傘下団体の活動費を同時に徴収している旨の報道に関して朝鮮高級学校に確認したところ,一部の学校(A高級学校は含まれない。)では,Sの活動費(月数百円)を授業料と共に徴収していることが確認された。(甲26)


支援室は,朝鮮総聯が幹部及び職員に対して教育手当を支給することとした上,実際には当該教育手当を幹部及び職員ではなく朝鮮学校に支給し朝鮮学校において幹部及び職員の子女の学費と受領した教育手当とを相殺処理をしており,これらの子女についても就学支援金が支給されれば朝鮮総聯の利益になる可能性がある旨の報道に関し,学費の免除の有無等について朝鮮高級学校に確認したところ,X初中高級学校において朝鮮総聯専従者及び学校職員の子女の学費を全額免除していることが確認された。(甲26)

支援室は,平成23年11月10日から28日までの間,実地調査として朝鮮高級学校の授業視察を実施し,高校3年生の現代朝鮮歴史等の授業を視察したが,
特に懸念される様子は見当たらなかった。
(甲
26)

(イ)

審査会は,同年12月16日,朝鮮高級学校の本件規程の基準適合性について審査したが(第5回審査会),結論は出ず,引き続き,審査を進めていくこととされ,支援室において,朝鮮学校に関する報道内容の確認等を行った。しかし,支援室の調査によっても,朝鮮学校についての報道内容のうち,①理事会が開催されず,議事録が偽造されていること,
②朝鮮総聯が朝鮮学校に対する補助金を流用し財務諸表に虚偽記載をしていること,
③教育会が朝鮮総聯の直轄組織であり朝鮮学校を運営していることについてはいずれもそのような事実は確認されず,
むしろ,
教育会については,保護者,学校卒業生等で構成される組織であり学校への寄付金の募集等の支援を行うものであることが明らかとなった。また,過去5年間における朝鮮高級学校の収支を確認した結果,学校から朝鮮総聯に対して寄付等を行っている事実は確認できず,他方,朝鮮総聯から寄付を受けている事実があることは確認されたものの,その額の学校収入に占める割合はわずかであることが判明した。さらに,前記のとおり,学校法人U学園においては,Jとの訴訟の判決中で理事会が開催されていないことや学校法人U学園が朝鮮総聯の強力な指導の下にあったなどの事実が認定されていたが,現時点で同様の問題があることは確認されなかった。(甲26,27)

(ウ)

審査会は,平成24年3月26日,朝鮮高級学校の本件規程の基準適合性について審査したが(第6回審査会),この日も結論は出ず,引き続き審査を進めていくこととされ,以下のとおり,支援室において,朝鮮学校に関する報道内容の確認等を行った。(甲27,28)

支援室は,同月30日付けで,朝鮮高級学校に対し,①「全国の朝鮮初中級学校から選抜された生徒約100人が1~2月に北朝鮮を訪問し,故金正日氏,金正恩氏への忠誠を誓う歌劇を披露していた」旨の報道が事実であるか,②金正恩の肖像を教室内に掲示しているか,また,
掲示について検討しているか,「故金正日氏の葬儀について,

朝鮮学校の施設が使用され,生徒の動員が行われた」旨の報道が事実であるかなどについて照会した。これに対して,朝鮮高級学校は,概要,①については,一部の学校は,参加していないと回答し,生徒等が参加したと回答した学校も,参加は学校行事とは関係なく参加する生徒,保護者の自由意志による訪問であるなどと回答した(原告は,A高級学校の生徒については参加していないが,原告の設置する他の施設の生徒等は自由意志に基づき参加した旨回答した。)。また,②については,どの学校も,掲示しておらず,掲示について検討もしていないと回答し,③については,一部の学校は学校の施設は使用されていないと回答し,学校の施設が使用されたと回答した学校(A高級学校もこれに含まれる。)も,学校行事ではなく,追悼行事のため組織された追悼委員会からの使用の申込みにより貸したものであり,生徒に対し出席の指示等も行っていないなどと回答した。
(乙9,
10)


支援室は,同年8月24日,朝鮮高級学校に対し,同年6月18日付けの「今月5~7日に全国の朝鮮学校長を対象に開かれた講習には,校長69人が出席し。許議長が『金正恩指導体系が確立されるよう確実に教育せよ。』と指示した」旨の新聞報道に関して,同月5日から7日までの間に開催された朝鮮総聯又は他の団体による講習会に朝鮮高級学校の校長その他の教員が参加した事実の有無,教育内容に関して特定の示唆を受けた事実の有無などについて文書により照会した。これに対し,朝鮮高級学校は,概要,全国朝鮮高級学校校長会が主催する全国朝鮮学校校長講習会に校長又はその代理者が参加したこと,教育内容に関して特定の示唆を受けることはなかったことを回答した。(乙11,12)
(エ)

審査会は,同年9月10日,朝鮮高級学校の本件規程の基準適合性を
審査したが(第7回審査会),この日も結論は出ず,引き続き審査を進めていくこととされ,以下のとおり,支援室において,朝鮮学校に関する報道内容の確認等を行った。(甲28)

支援室は,同年10月5日,朝鮮高級学校に対し,「朝鮮高級学校から2~3人ずつ選ばれた生徒がSの代表団として,教員や朝鮮大学校生らと8月23日~9月1日に平壌を訪問し,金正恩第1書記に忠誠を示す行事に参加した」旨の報道に関して,当該行事である青年節慶祝大会への生徒,教員の参加の有無,生徒による決議文読み上げの有無,朝鮮総聯の関与の有無などについて文書により照会した。これに対して,A高級学校は,概要,生徒1名,教員1名が参加したものの,金第1書記名による参加指示はなかったこと,希望者が個人的に参加したものであり学校として参加の指示はしていないことを回答した。(乙13,14)


支援室は,同年10月19日,朝鮮高級学校に対し,「朝鮮総聯が故・金日成主席,金正日総書記の肖像画を新しい肖像画『太陽像』に10月中に交換するよう指示した」旨の新聞報道に関して,朝鮮総聯等からの新たな肖像画の購入に関する案内又は指示の有無などについて照会した。これに対し,A高級学校は,そのような指示はなく,購入しない旨を回答した。(乙15,16)

(オ)

以後,審査会は開催されず,下村文科大臣は,審査会の結論を得ないまま,平成25年2月20日,本件不指定処分をした。
(6)

朝鮮高級学校への支給法適用を巡る政治的状況等
平成21年夏の衆議院選挙により自民党から民主党への政権交代が生じ,内閣総理大臣となった鳩山由紀夫は,第173回国会における所信表明演説で高校の実質無償化を進める旨を述べた。これを受けて,支給法案が政府提出法案として国会に提出され,衆議院及び参議院による審議が行われた。(甲18)


当時野党であった自民党は,支給法案自体への反対に加えて,朝鮮学校は本国である北朝鮮が強く関与する学校であり北朝鮮の体制を支えるための思想教育機関である,朝鮮学校を支給法の適用対象とすることは北朝鮮に対して拉致問題について我が国が軟化したとの誤ったメッセージを与える危険があるなどとして朝鮮学校を支給法の適用対象とすることについても反対し,自民党の下村議員は,平成22年3月に開催された衆議院の文部科学委員会において,北朝鮮との間には拉致問題や核問題等の重要な課題が存在しており北朝鮮に対する経済制裁を行っている中で朝鮮高級学校に支給法を適用することは結果的には北朝鮮に対する資金援助にもつながりかねず慎重であるべきである旨発言した。
これに対して,川端達夫文部科学大臣等の政府関係者は,外国人学校の取扱いについては外交上の配慮などにより判断すべきものではなく,教育上の観点から客観的に判断すべきであるとすることが政府の統一見解であり,朝鮮高級学校が支給法の適用対象となるかについても,上記の観点から,高等学校の課程に類する課程として位置付けられるものといえるかにより判断される旨を述べた。(乙5の1~3)


平成22年3月31日に支給法が公布されたが,D及びRは,同年8月4日,連名で,「朝鮮学校への国庫補助を拙速に決めることに反対する声明」を発表した。また,Yは,同月5日,「朝鮮学校無償化の政府方針に抗議する声明」を発表した。(甲100)

原告は,平成22年11月27日付けで,A高級学校につき本件規定に基づく指定の申請をした。しかし,その直前である同月23日,北朝鮮による韓国延坪島砲撃事件が起きたため,髙木文部科学大臣は,菅首相の指示に基づき,朝鮮高級学校について本件規定に基づく指定の可否を審査する手続を一旦停止した。


Dの事務局長は,平成23年1月19日,自民党政調会文部科学部会に出席し,北朝鮮が拉致被害者の帰国のために誠実な対応をしていない現状で北朝鮮労働党傘下の朝鮮総聯本部に支配される朝鮮学校に公的資金を投ずることは北朝鮮に誤ったメッセージを送ることになるなどと主張し,朝鮮高級学校に通う生徒に対する就学支援金支給に強く反対した。甲29,(
30)


菅首相は,北朝鮮が,韓国延坪島砲撃事件以後,当該事件の砲撃に匹敵するような軍事力を用いた行動をとっていないことから平成24年7月には南北間及び米朝間の対話が行われるなど北朝鮮と各国との対話の動きが生じていることを踏まえ,事態は上記の砲撃以前の状況に戻ったと総合的に判断できるとして,平成23年8月29日,髙木文部科学大臣に対し審査手続を再開するよう指示した。(乙23)


これに対し,自民党は,同月31日,朝鮮高級学校に対する本件規定に基づく指定の可否の審査手続の再開について,北朝鮮の外交政策・拉致問題の解決に対して誤ったメッセージを送るものであるとして,その再開を直ちに撤回するよう求めることなどを内容とする決議を行った。甲31,(
100)


また,
下村議員
(当時の自民党のシャドウキャビネットの文部科学大臣)
は,同年9月13日頃,朝鮮高級学校の高校授業料無償化についてのインタビューにおいて,①朝鮮高級学校に対する本件規定に基づく指定の可否の審査手続を再開することは,北朝鮮の拉致問題について我が国が軟化したとの誤ったメッセージとなるばかりか,外交問題に発展しかねない,②朝鮮学校は朝鮮総聯の下部組織であり,朝鮮学校では反日教育及び北朝鮮の意向に沿った人材育成が行われているのであって,そのような学校に国民の血税を投入することは到底認められない,③本件規程によれば教育内容を基準とせずに外形的な条件を満たせば朝鮮高級学校も本件規定に基づく指定がされることになるため,上記指定の可否の審査手続が再開されれば朝鮮高級学校は事実上無償化の対象となってしまうなどと発言した。甲(
29,32,100)

義家議員(当時の自民党のシャドウキャビネットの文部科学大臣)は,平成24年11月12日のテレビ番組において,①現行の支給法及び本件規則では朝鮮高級学校が支給法の対象となること,②朝鮮高級学校を支給法の適用対象とするかは拉致問題を含む国家間の問題であること,③朝鮮高級学校に対する本件規定に基づく指定を阻止するためには本件規則を法律に格上げして本件規定を削除するという方法があり,そのような内容の議員立法を既に準備していることなどを発言した。そして,義家議員は,同月16日,本件規則1条1項2号イないしハのうち同号イ及びロのみを法律に規定した上,同号ハのみを削除するという内容の支給法改正法案を参議院に提出した。(甲34,35,51の1・2,100)。


平成24年11月16日に衆議院が解散されたことにより上記支給法改正法案は廃案となったが,上記解散後の衆議院議員選挙により自民党が勝利し,同年12月26日,安倍晋三内閣が発足した。そして,同内閣の文部科学大臣となった下村議員は,同月28日の記者会見において,①朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあって教育内容,人事及び財政にその影響が及んでいること等から,現時点で朝鮮学校に支給法を適用することは国民の理解が得られず,本件規定に基づく指定をしない方向で進めたい旨の提案を安倍晋三首相にしたところ,同首相からその方向で進めていただきたい旨の指示があったこと,②野党時代に自民党の議員立法として国会に提出した支給法改正案と同趣旨の改正を本件規則の改正により行うこと,③各種学校が高等学校の課程に類する課程を置くものか否かは外交上の配慮により判断しないとする民主党政権時の政府統一見解は当然廃止することなどを述べた。(甲100,107)。

文部科学省は,平成24年12月28日から平成25年1月26日までの間,公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令(本件省令)の案についてパブリックコメント(意見公募手続)を実施した。上記手続では,本件省令につき,
拉致被害者が帰ってきていないので朝鮮学校に就学支援金を支
給すべきでないなどとする賛成意見がある一方で,
拉致問題などの政治的
理由によって朝鮮学校を支給法の適用対象から外すのは差別であるなどとする反対意見もあったが,文部科学省は,上記意見に対し,外交上の配慮などにより判断しないとの民主党政権時の政府統一見解は撤回するとした上,朝鮮学校については,拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯との密接な関係にあり教育内容,人事,財政にその影響が及んでいることを踏まえると,
本件規定に基づく指定には国民の理解が得られないとの観点か
ら本件規定を削除する旨の意見を述べた。(甲12)


下村文科大臣は,平成25年2月20日付けで公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令(本件省令)を制定して本件規定を削除した。そして,下村文科大臣は,同日付けで,原告に対し,①本件規定を削除したこと及び②A高級学校の本件規程に定める指定の基準への適合性を審査したが本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったことを理由に,A高級学校について本件規定に基づく指定をしない旨の処分(本件不指定処分)をした。(乙1)

下村文科大臣は,平成25年5月24日の定例記者会見において,朝鮮高級学校について本件規定に基づく指定を行わなかったのは,朝鮮学校が朝鮮総聯と密接な関係にあり,教育内容,人事及び財政にその影響が及んでいることなどから法令に基づく適正な運営が行われているとの確証が得られなかったためであるなどと述べた。(乙47)


下村文科大臣は,平成26年7月15日の定例記者会見において,朝鮮学校が支給法の適用対象とならないのは朝鮮学校が政治的にも教育的にも朝鮮総聯の影響下に入っているということが教育基本法の趣旨に合致しないからであることなどを述べた。(甲52の1・2)

(7)

大阪府によるA高級学校に対する補助金決定等
大阪府は,平成24年3月,それまで原告に支給されてきた補助金(私立
外国人学校振興補助金)について,原告又はA高級学校が,大阪府私立外国人学校振興補助金交付要綱において補助金交付の要件とされている「特定の政治団体が主催する行事に学校の教育活動として参加していないこと」に該当しているとの確証が得られないとして,原告からの補助金申請に対して不交付決定をした。これに伴い,大阪市も,平成24年3月,大阪府の補助金交付の対象となっていないとして,補助金(義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金)の不交付決定をした。(甲91,92)
2
争点1(本件規定の削除の違法性の有無)について
(1)

前記認定事実(1)アのとおり,支給法は,高等学校等の後期中等教育段階の学校において教育を受けるには様々な費用を要し,保護者に相当な経済的負担が生じていることから進学の意欲のある者が経済的理由で就学が困難となることがないよう教育費の負担軽減を図り教育の機会均等を確保することが喫緊の課題となっていたなどの状況を受けて,国の財政的負担において高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り後期中等教育段階における教育の機会均等に寄与することを目的とするものである。支給法2条1項5号が支給法の適用対象となる各種学校を「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に限っているのは,各種学校には教育内容,教育水準,教育形態,規模等において多種多様のものが存在しており,全ての各種学校が上記のような支給法の目的に適うものではないことから,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校のみを支給法の適用対象とするためであると解される。そして,いかなる各種学校が上記のような各種学校に該当するかの判断には教育上の観点からの専門的,
技術的検討を要するこ
とから,同号は,「高等学校に類する課程を置くもの」と認められる各種学校の範囲の確定を上記の専門的,
技術的検討をすることができる文部科学大
臣に委ね,同大臣の制定する文部科学省令に委任したものと解される。そうすると,文部科学大臣が文部科学省令において同号所定の「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に該当する各種学校の範囲をどのように定めるかについては上記の専門的,
技術的な観点からの一定の裁量権が認められるも
のの,上記の文部科学省令の制定は同号の委任の趣旨を逸脱しない範囲内においてのみ許されるものである。
(2)

そこで,下村文科大臣が本件省令を制定して本件規定を削除したことが支給法2条1項5号の委任の趣旨を逸脱するものかについて検討するに,前記認定事実(6)のとおり,①下村議員は,自民党が野党であった平成22,23年当時,拉致問題の解決のために北朝鮮に経済制裁を行っている中で朝鮮学校を支給法の適用対象とすれば拉致問題について我が国が軟化したとの誤ったメッセージとなること,朝鮮学校が北朝鮮及びその下部組織である朝鮮総聯と密接な関係にあってその影響を受けていることなどを理由として,朝鮮学校を支給法の適用対象とすることに反対する立場を取っており,本件規程の基準により本件規定に基づく指定の可否を審査した場合には朝鮮高級学校は支給法の適用対象となってしまうと考えていたこと
(前記認定事実(6)
イ及びク),②下村議員と政治的意見を同じくする義家議員は,朝鮮高級学校を支給法の適用対象とするかは拉致問題を含む国家間の問題であるなどとして本件規定を削除する内容の支給法改正案を提出したこと(同ケ),③その後の衆議院の解散により上記改正案は廃案となったものの,安倍晋三内閣の下で文部科学大臣に就任した下村文科大臣は,朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあって教育内容,人事及び財政にその影響が及んでいること等から朝鮮学校に支給法を適用することは国民の理解が得られないとして本件規定を削除することとし,
本件省令を
制定したこと(同コ,シ),④民主党政権当時,川端達夫文部科学大臣等の政府関係者は,外国人学校の取扱いについては外交上の配慮などにより判断すべきものではなく,教育上の観点から客観的に判断すべきものであるとすることが政府の統一見解であることを明らかにしていたが,安倍晋三内閣発足後,下村文科大臣は,各種学校が高等学校の課程に類する課程を置くものか否かは外交上の配慮により判断しないとする民主党政権時の政府統一見解は廃止することを明らかにしたこと(同イ,コ)が認められる。これらの事実に照らせば,下村文科大臣は,朝鮮学校に支給法を適用することは北朝鮮との間の拉致問題の解決の妨げになり,国民の理解が得られないという外交的,政治的意見に基づき,朝鮮高級学校を支給法の適用対象から除外するため,本件省令を制定し本件規定を削除したものであると認められる。そうすると,支給法2条1項5号は,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校の範囲の確定を文部科学省令に委任しているにもかかわらず,下村文科大臣は,後期中等教育段階の教育の機会均等の確保とは無関係な外交的,政治的判断に基づいて本件省令を制定して本件規定を削除したものというべきであるから,下村文科大臣が本件省令を制定して本件規定を削除したことは同号による委任の趣旨を逸脱するものとして違法,無効と解すべきである。(被告は,就学支援金の支給が国民的要請に基づいて国民の経済的負担の下に実施されるものである以上,国民の理解が得られないことを理由に本件規定を削除することも許される旨主張する。しかし,支給法の適用対象とする各種学校の範囲は支給法の定めにより判断されるべきものであり,支給法2条1項5号は,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校を支給法の適用対象とするという観点から「高等学校の課程に類する課程を置く」各種学校を支給法の適用対象とする旨を定めている以上,上記のような支給法の規定を離れて,単に一定の各種学校を支給法の適用対象とすることに国民の理解が得られないということを支給法の適用対象となる各種学校の範囲を定める根拠とすることはできないというべきである。)。したがって,文部科学大臣が本件省令を制定して本件規定を削除したことは,支給法2条1項5号の委任の趣旨を逸脱するものとして違法,無効であるというべきである。
(3)

被告は,本件規程の基準を充たすかどうかの審査に限界があることが明ら
かとなり,朝鮮高級学校については本件規程13条に適合するとは認められないことから本件規定に基づく指定をすることができず,他方,
当時,(高

等部)及びC(高等部)以外には本件規定に基づく指定を求める外国人学校はなく本件規定を存続させる必要性もないことから本件省令を制定し本件規定を削除したとして,基準適合性の審査に限界があることが判明した規定を放置せずに削除する旨の本件省令の制定は支給法2条1項5号の委任において認められる文部科学大臣の裁量の範囲内であると主張する。
しかし,本件省令の制定過程において本件規程の基準適合性の審査に限界があるとして本件規定を削除すべきか否かが検討されたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記認定事実(6)サのとおり,本件省令案の意見聴取手続では,文部科学省の考え方として,朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと,朝鮮総聯と密接な関係にあって教育内容,人事及び財政にその影響が及んでいることを踏まえると朝鮮学校に支給法を適用することは国民の理解が得られないとして本件規定を削除する旨が述べられている。また,
本件規定は本件規則1条1項2号イ及びロに該当しない外国人学校が本件規定に基づく指定を受ける根拠となる包括的規定であり,後期中等教育段階における教育に係る経済的負担の軽減を図りもって教育の機会均等に寄与するという支給法の目的(1条)の実現を可及的に可能にするものである。このような本件規定の存在意義に照らすと,仮に,本件規程の基準を満たすか否かの審査に限界があることが明らかになり,朝鮮高級学校については本件規程13条に適合するとは認められず,本件省令の制定当時,朝鮮高級学校以外に本件規定に基づく指定の申請をしていた学校がなかったとしても,将来的に,外国人を専ら対象とする各種学校から本件規定に基づく指定の申請がされ,当該各種学校についてB(高等部)やC(高等部)と同様の審査によって指定が可能となる場合も想定される以上,上記事情をもって本件規定を削除することは不合理というほかない。
以上の諸点に照らせば,本件規定の削除が被告の主張するような理由に基づくものであるとは認められず,これを認めるに足りる証拠はない。被告の上記主張は採用することができない。
3
争点2(原告の本件規程13条適合性)について
(1)

本件規定に基づく指定における本件規程13条の法的位置付け等
本件規程13条は,本件規定に基づく指定の基準として,①就学支援金を生徒等の授業料に係る債権の弁済に確実に充当すること及び②法令に基づく適正な学校運営が行われることを定める旨の規定であると解されるところ,原告は,同条は本件規定による委任の範囲外の規定であって単なる訓示規定にすぎず,仮に,同条が本件規定の委任に基づくものであるとしても,本件規定の委任の趣旨は,「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に該当するか否かの判断基準の明確化を文部科学大臣に委任したにすぎないから,抽象的な要件を定める教育基本法16条1項は本件規程13条の「法令」に含まれないと主張するので,A高級学校の同条適合性を検討する前提として同条の法的位置付け及びその内容について検討する。イ
前記2(1)のとおり,
支給法2条1項5号が支給法の適用対象となる各種
学校を「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に限っているのは,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校のみを支給法の適用対象とするためであると解されるところ,本件規則1条1項2号は,上記のような支給法2条1項5号の委任を受け,同号所定の「高等学校の課程に類する課程を置くもの」と認められる各種学校について,我が国に居住する外国人を専ら対象とする各種学校のうちイからハまでの各規定に掲げるものとした上,イ及びロの各規定において一定の類型の各種学校であって文部科学大臣が指定したものを定め,ハの規定(本件規定)において「文部科学大臣が定めるところにより,高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして,文部科学大臣が指定したもの」を定めている。このような本件規定の内容等からすると,本件規定は,我が国に居住する外国人を専ら対象とする各種学校のうち,イ及びロの各規定の定める特定の類型には当たらないものの,なお,当該各種学校の個別具体的な事情から,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められる各種学校を「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として支給法の適用対象とする包括的規定であって,いかなる各種学校が上記の各種学校に該当するかの判断には当該各種学校の個別具体的な事情を踏まえた教育上の観点からの専門的,技術的検討を要することから,その判断を上記の検討をすることができる文部科学大臣の指定に基づいて行うものとするとともに,その指定の基準を設定すること自体も専門的,技術的な領域に属するものとしてこれを文部科学大臣に委任したものと解される。そうすると,文部科学大臣が本件規定に基づく指定の基準としていかなる基準を定めるかについては,本件規定の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において,文部科学大臣に専門的,技術的な観点からの一定の裁量権が認められているものと解するのが相当である。

そこで,本件規程13条が本件規定の委任の趣旨を逸脱したものであるかをみると,支給法は,私立高等学校等の設置者が就学支援金を代理受領して生徒等の授業料に係る債権の弁済に充当する仕組みを採用しており(8条),そのような支給法の仕組みの下において,就学支援金が授業料に係る債権の弁済に充当されない場合には就学支援金の支給が教育に係る経済的負担の軽減に結び付かず,その支給が教育の機会均等の確保に寄与しないこととなる。そうすると,上記のようなおそれのある各種学校は,国の財政的負担において教育を実施することが後期中等教育段階における教育の機会均等の確保の見地から妥当と認められるものということはできないから,本件規定に基づく指定の要件として,当該各種学校の運営において就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当を求めることが合理性を欠くということはできない。
また,本件規定に基づく指定を受けた各種学校は,国の財政的負担において後期中等教育段階の教育を実施することになるのであるから,当該各種学校の運営が法令に基づいて適正に行われることは当然である。したがって,当該指定の要件として各種学校の運営が法令に基づいて適正に行われることを要求することも合理性を欠くということはできないし,当該指定を受ける各種学校がその運営において遵守すべき法令には各種学校に適用される教育関係法令が全て含まれ,各種学校に適用される教育基本法16条1項もこれに含まれるというべきである。
以上によれば,本件規程13条が本件規定の委任の趣旨を逸脱するものということはできず,同条の「法令」には教育基本法16条1項も含まれるというべきである。原告の上記アの主張は採用することができない。(2)

A高級学校の本件規程13条適合性について
前記(1)のとおり,
本件規程13条は本件規定に基づく指定の要件を定め
たものであり,各種学校が同指定を受けるとその設置者は当該各種学校の生徒等の授業料に係る債権に応じた就学支援金を収受することができる地位を取得することとなる。このような同指定の性質に照らすと,本件規程13条の要件該当性については原告が主張立証責任を負うというべきである。もっとも,前記認定事実(5)イ(ア)のとおり,原告では,私立学校法に基づき,財産目録,財務諸表等が作成されるとともに理事会等も開催されていた。また,前記認定事実(5)イ(ア)のとおり,原告及びA高級学校の所轄庁である大阪府知事は,平成19年4月から平成23年9月までの間,3年に1度を基本として必要に応じて随時,立入検査等を実施し,上記期間の直近では平成22年1月から平成23年7月に立入検査等を実施しており,大阪府知事の立入検査等では,法人・学校の運営状況並びに会計処理及び計算書類の作成や,補助金の交付要件となっている事項(日本の学習指導要綱に準じた教育活動,財務情報の一般公開,特定の政治団体と一線を画すこと,特定の政治指導者の肖像画を教室から外すこと)の有無を検査している。そうすると,上記の立入検査等の際に,A高級学校の運営に教育基本法,学校教育法等の法令に違反することをうかがわせる事情が認められれば,同校を所轄する大阪府知事としては,上記の点に関する報告書の提出を求める(私立学校法64条1項,6条)などの調査を実施し,その是正の指導,勧告等を行うものと考えられるが,前記認定事実(5)イ(ア)のとおり,平成19年4月から平成23年9月までの間に所轄庁である大阪府知事は,A高級学校について,教育基本法,学校教育法等の法令に違反することを理由とする行政処分等を行わなかった。これらの事実を総合すると,A高級学校については,他に本件規程13条適合性に疑念を生じさせる特段の事情がない限り,同条適合性が認められるというべきである。
上記のような本件規程13条適合性の認定判断の在り方は,A高級学校と同じく,本件規定に基づく指定の申請をしたB(高等部)及びC(高等部)について,審査会の審査において私立学校法に基づく理事会の開催,財務諸表の作成等が行われていることが確認されるとともに,所管する都道府県への確認により直近5年間に教育基本法,学校教育法等の法令に違反していることを理由とする指導・勧告等を受けたことがないことが判明したことをもって本件規程13条適合性が認められていること(前記認定事実(5)ア)とも整合するものということができる。
イ(ア)

この点,被告は,A高級学校の本件規程13条適合性に疑念を生じさ
せる特段の事情に関し,
前記認定事実(4)で摘示した国内外の新聞報道等
からすれば原告が朝鮮総聯及び北朝鮮と関係があるため就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当されず,朝鮮総聯から教育基本法16条1項の「不当な支配」を受けているとの疑念が生ずる旨主張しており,他にA高級学校の本件規程13条適合性に疑念を生じさせる特段の事情の主張立証はない。したがって,本件においては,A高級学校につき①就学支援金を生徒等の授業料に係る債権の弁済に確実に充当されないとの疑念や,②朝鮮総聯から同法16条1項の「不当な支配」を受けているとの疑念を生じさせる特段の事情の存否について判断すべきこととなる。
もっとも,被告は,本件規定13条適合性の判断及びその中で考慮される教育基本法16条1項の「不当な支配」の有無の判断に文部科学大臣の裁量が認められることを前提として,文部科学大臣が上記の新聞報道等から原告が朝鮮総聯及び北朝鮮と関係があるため就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当されず,朝鮮総聯から同項の「不当な支配」
を受けていることに疑念を生ずると判断したことに不合理はなく,したがって,A高級学校について本件規程13条適合性を認めるに至らないとした文部科学大臣の判断に裁量権の逸脱濫用はない旨主張している。
(イ)

そこで,まず,本件規程13条の規定内容のうち,当該各種学校にお
いて就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当されるか否かの判断について文部科学大臣の裁量が認められるかについて検討するに,①「高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当」という同条の文言が概括的抽象的なものでないこと,②当該各種学校において就学支援金が生徒等の授業料に係る債権の弁済に確実に充当されるか否かは,当該各種学校の財務状態,財産管理状況等に照らして客観的に認定され得るものであり,教育上の観点からの専門的,技術的判断を要するものではないこと,③支給法は,高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り教育の機会均等を実現するという観点から,就学支援金の支給を単なる恩恵ではなく,私立高等学校等の生徒等の受給権として規定しており(12条参照),その司法的救済の要請は高いというべきであることなどに照らせば,当該各種学校において就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当されるか否かの判断につき文部科学大臣の裁量権が認められるものと解することはできない。
次に,
本件規程13条の規定内容のうち,
教育基本法16条1項の
「不
当な支配」の有無の判断に文部科学大臣の裁量が認められるかについて検討するに,平成18年法律第120号による改正前の教育基本法(以下「旧教育基本法」という。)10条1項は,「教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」と規定していたところ,同項は,教育が国民から信託されたものであるから国民に対して直接責任を負うように行われるべく,その間において不当な支配によってゆがめられることがあってはならないとして,教育が専ら教育本来の目的に従って行われるべきことを示したものと考えられ,このような同項の趣旨からすると,同項の「不当な支配」とは,教育が国民の信託に応えて自主的に行われることをゆがめるような支配をいうものと解される(最高裁昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)。そして,以上の理は教育基本法16条1項についても当てはまるものである。
上記のような「不当な支配」
の内容に照らせば,教育への関与等の行為が同項の「不当な支配」に該当するか否かは,教育の自主性を侵害するものか否かによって客観的に判断され得るものであり,必ずしも教育上の観点からの専門的,技術的判断を要するものではない。また,旧教育基本法及び教育基本法は,戦前の我が国の教育が国家による強い支配の下で形式的,画一的に流れ,時に軍国主義的又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったことに対する反省により制定されたものであり,旧教育基本法10条1項及び教育基本法16条1項は,教育に対する権力的介入,特に行政権力による介入を警戒し,これに対して抑制的態度を表明したものと解されるところ(前記昭和51年大法廷判決参照),同項の「不当な支配」の判断が文部科学大臣の裁量に委ねられるべきものとすることは,上記の裁量的判断を通じて教育に対する行政権力による過度の介入を容認することになりかねず,同項の趣旨に反することになる。以上の諸点に照らせば,同項の「不当な支配」の有無についても文部科学大臣の裁量権が認められるものと解することはできない。
(ウ)

以上のとおりであるから,本件規程13条に規定された要件のうち,
当該各種学校において就学支援金が授業料に係る債権の弁済に確実に充当されること及び教育基本法16条1項の「不当な支配」を受けていないことについては文部科学大臣の裁量に委ねられるべきものということはできない(なお,前記2(1)のとおり,支給法2条1項5号は「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として支給法の適用対象とする各種学校の範囲を文部科学大臣の裁量的判断に委ねたものと解されるが,文部科学大臣は同号の委任を受けた本件規定に基づき上記の裁量権行使の基準として本件規程を定め,その中で支給法の適用対象となる各種学校の要件として,
自らが裁量を有しない要件を設けたものと解される。。

したがって,上記の点に関する文部科学大臣の判断の適否を裁判所が審理及び判断する場合には,文部科学大臣の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきものではなく,裁判所が関係証拠に基づいて客観的に認定判断すべきものというべきである。

他方,原告は,教育基本法16条1項の「不当な支配」に関し,同項の「不当な支配」とは公権力による影響をいうものと解すべきであり,外国人学校が本国やその在日団体から影響を受けていることをもって同条の「不当な支配」があるということはできないから,A高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯から一定の影響を受けていることは同項の禁ずる「不当な支配」に該当するものではないと主張する。
しかし,前記のとおり,同項は,教育が国民から信託されたものであることから,
教育が不当な支配によってゆがめられることなく専ら教育本来
の目的に従って行われるべきことを示したものであり,このような同項の趣旨からすると,同項は,教育が国民の信託に応えて自主的に行われることをゆがめるような支配を排斥しているものと解されるのであって,上記のような支配と認められる限り,その主体の如何は問うところでないと解するのが相当である(前記昭和51年大法廷判決)。したがって,A高級学校の教育が北朝鮮や朝鮮総聯から影響を受けていることもそれが教育の自主性をゆがめるようなものであれば同項の「不当な支配」に当たり得るというべきであり,原告の上記主張は採用することができない。エ
以上を前提に,本件において,A高級学校につき就学支援金が生徒等の授業料に係る債権の弁済に確実に充当されないとの疑念や,朝鮮総聯から教育基本法16条1項の不当な支配を受けているとの疑念を生じさせる特段の事情(以下「本件特段の事情」という。)が認められるかを検討する。(ア)

前記認定事実(4)ア(ア)のとおり,北朝鮮が朝鮮学校に対し過去半世紀
にわたり合計約460億円の資金提供をし,平成21年には約2億円の資金提供をした旨の報道がされており,
また,
証拠
(甲102,
乙82,
原告代表者)によれば,上記報道に沿う事実として,北朝鮮が1957年以来朝鮮学校に対して資金援助を行っていたことが認められる。しかし,北朝鮮からの資金提供が現在まで継続され,平成21年には約2億円の資金提供がされた旨の報道が合理的な根拠に基づくものであることの主張立証はなく,かえって,平成23年11月の審査会後の調査において支援室が過去5年間の朝鮮高級学校の収支を確認したところ,朝鮮総聯及び教育会から寄付を受けている場合もその金額は年100万円程度であって学校収入に占める割合はわずかであることが判明した(前記認定事実(5)イ(ア)b及び(イ))。そして,特定の団体が私立学校の教育方針ないし教育内容に賛同して同校に寄付等を行うことは特異なことではなく,在日朝鮮人の民族教育を行う朝鮮高級学校に在日朝鮮人の団体である朝鮮総聯等が一定の援助をすること自体が不自然であるということはできないことからすると,上記の程度の寄付を受けていることをもって直ちに朝鮮学校と朝鮮総聯及び教育会との関係が適正を欠くものであるということはできない。また,前記認定事実(5)イ(イ)のとおり,平成23年12月の審査会後の調査によっても過去5年間に朝鮮高級学校が朝鮮総聯に対して寄付等を行っている事実は確認されなかった。以上のことからすると,上記の報道の存在並びに過去に北朝鮮が朝鮮学校に資金提供をし,朝鮮総聯及び教育会が上記の程度の寄付をしている事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(イ)

前記認定事実(4)ア(イ)のとおり,朝鮮学校が学費納入時に朝鮮総聯傘
下団体の活動費を同時に徴収し朝鮮総聯が寄付名目で朝鮮学校の保護者らから資金を集めていた旨の報道がされており,前記認定事実(5)イ(ア)cのとおり,上記の報道内容に沿う事実として,支援室の調査確認により,朝鮮高級学校のうち一部の学校ではSの活動費(月数百円)を授業料と共に徴収していることが確認されていることが認められる。
しかし,
証拠(甲26)及び弁論の全趣旨によれば,Sは,生徒会と同様の活動を行う組織であると認められ,その活動費を授業料と共に徴収することは徴収等の便宜を考慮した合理的な措置といえるのであって,上記の報道の存在及びその内容に沿う事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(ウ)

前記認定事実(4)ア(ウ)及び(ケ)のとおり,朝鮮学校で使用されている教
科書に金正日の決裁が必要である旨の報道や朝鮮総聯が金日成及び金正日の肖像画を新しい肖像画「太陽像」に交換するよう指示した旨の報道がされている。しかし,①教科書の決裁の要否についてはA高級学校を含む朝鮮高級学校全校が否定しており(前記認定事実(5)イ(ア)a),肖像画の交換の有無についてはA高級学校が否定し他の朝鮮高級学校が上記事実を肯定したことはうかがわれないこと(前記認定事実(5)イ(エ)b),②上記報道内容が合理的根拠に基づくものであることの主張立証がないことなどからすると,上記の報道内容に沿う事実があったと認めることはできず,上記の報道の存在をもって本件特段の事情があるということはできない。
(エ)

前記認定事実(4)ア(エ)のとおり,朝鮮総聯が平成22年7月上旬に実
施された文部科学省の視察に合わせて現代朝鮮歴史などの歴史授業を視察当日のカリキュラムから外すことや金日成及び金正日の肖像画を職員室及び校長室から撤去することを指示し金日成の業績を称える図書資料収納室を施錠した旨の報道がされている。
しかし,
①上記の報道内容は,
平成23年11月に実施された支援室による朝鮮高級学校の実地調査では現代朝鮮歴史の授業が視察されていること(前記認定事実(5)イ(ア)e)と整合しないものであること,②上記の報道内容が合理的根拠に基づくものであることの主張立証がないことなどからすると,上記の報道内容に沿う事実があったと認めることはできず,上記の報道の存在をもって本件特段の事情があるということはできない。
(オ)

前記認定事実(4)ア(オ)のとおり,朝鮮総聯が幹部及び職員に対して教
育手当を支給することとした上,実際には当該教育手当を幹部及び職員ではなく朝鮮学校に支給し朝鮮学校において幹部及び職員の子女の学費と受領した教育手当とを相殺処理をしており,これらの子女についても就学支援金が支給されれば朝鮮総聯の利益になる可能性がある旨の報道がされており,前記認定事実(5)イ(ア)dのとおり,上記の報道内容に沿う事実として,支援室の調査確認により,X初中高級学校において朝鮮総聯専従者の子女の学費を免除していることが確認されたことが認められる。しかし,報道されている会計処理がA高級学校において行われていることを認めるに足りる証拠はない上,報道されている会計処理は,朝鮮総聯が幹部や職員の子女の学費を拠出していることから当該子女には授業料を請求しないというにすぎず,その会計処理自体不当なものとはいえないし,就学支援金支給制度は,就学支援金の限度で授業料の負担者に利益を与えるものであるから,朝鮮総聯が幹部又は職員の子女の学費を負担している場合において当該子女に就学支援金が支給されることにより朝鮮総聯が利益を受けることになっても不当な利益を得ることになるものではない。そうすると,上記の報道の存在及びその内容に沿う事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(カ)

前記認定事実(4)ア(キ)のとおり,朝鮮総聯が朝鮮学校を運営する学校
法人の理事会の議事録を偽造した旨の報道がされている。しかし,支援室の調査によっても朝鮮学校について理事会が開催されていなかったこと及び議事録が偽造されていたことは確認されなかったのであり(前記認定事実(5)イ(イ)),上記の報道内容が合理的根拠に基づくものであることの主張立証がないことを考慮すると,上記の報道内容に沿う事実があったと認めることはできず,上記の報道の存在をもって本件特段の事情があるということはできない。
(キ)

前記認定事実(4)ア(ク)のとおり,朝鮮学校への補助金を朝鮮総聯直轄
組織である教育会が管理し朝鮮総聯に流用されているとの報道がされている。しかし,支援室の調査によっても,朝鮮学校について朝鮮総聯による補助金の流用及び財務諸表の虚偽記載は確認されなかったのであり(前記認定事実(5)イ(イ)),上記の報道内容が合理的根拠に基づくものであることの主張立証がないことを考慮すると,上記の報道内容に沿う事実があったとは認めることはできず,上記の報道の存在をもって本件特段の事情があるということはできない。
(ク)

前記認定事実(4)イ(ウ)ないし(オ)のとおり,朝鮮労働党機関紙であるQ
新聞において朝鮮学校が朝鮮総聯の組織が運営する民族教育機関である旨の報道がされており,朝鮮総聯中央常任委員会発行の書籍及び平成24年3月1日時点の朝鮮総聯のホームページには朝鮮学校の管理運営は教育会が責任をもって進めている旨の記載がある。しかし,支援室の調査により,朝鮮総聯の直轄組織である教育会による朝鮮学校の運営についてはそれらの事実は確認されず,
教育会については,
教育会が保護者,
学校卒業生等で構成される組織であり学校への寄付金の募集等の支援を行うものであることが明らかとなったこと(前記認定事実(5)イ(イ)),現在では,原告らからの申入れにより上記の朝鮮総聯のホームページの記載が削除されていること(前記認定事実(4)イ(オ))からすれば,上記の報道等に沿う事実があると認めることはできず,上記の報道の存在をもって本件特段の事情があるということはできない。
(ケ)

前記認定事実(4)ア(カ)のとおり,K中高級学校及びL中高級学校の校
舎及び敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の破綻を原因としてJによる仮差押えを受けている旨の報道がされており,(甲25)
証拠
によれば,
上記報道内容に沿う事実が存在することが認められる。
しかし,K中高級学校は仮差押えの被保全債権の存在を争い,Jとの訴訟において上記金融機関が学校法人名義の契約書等を偽造した旨の認定がされ学校側が第1審で勝訴しているのであり,L中高級学校は審査会に対し上記金融機関からの借入れにつき学校の施設建設費用や学校の運営費等のためのものである旨回答していること
(甲27)
からすれば,
上記の仮差押えの事実をもって直ちに朝鮮高級学校の運営及び朝鮮総聯との関係が適正を欠くものであるということはできない。また,上記の仮差押えはいずれもA高級学校とは別の朝鮮高級学校の校舎及び敷地に対するものであるところ,全国の朝鮮高級学校は,異なる学校法人により運営されており,
各学校法人の理事長も異なる上,
授業科目,
教員数,
設備の内容,
授業料等も様々であり,
校舎・敷地への抵当権設定の有無,
理事会等の議事録の作成方法も同一ではないこと(甲25,27)からすると,全国の朝鮮高級学校の運営は,学校法人ごとに個別に行われていると推認されるから,他の朝鮮高級学校の運営状況をもって直ちにA高級学校の運営状況が推認されるものではない。以上によれば,上記の報道の存在及びその内容に沿う事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(コ)

前記認定事実(4)カ(ア)のとおり,平成9年から平成10年にかけて行
われたV信用組合の学校法人U学園等に対する各貸付けに係る貸金債権を譲り受けたJが学校法人U学園等に対してその返済等を求めた訴訟の判決において,学校法人U学園では朝鮮総聯広島県本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっていたなどの事実が認定されている。しかし,上記の判決で認定された学校法人U学園の運営状況に関する事実は平成10年以前のものであって,支援室の調査によっても,現在はそのような状況にあることは確認されなかった(前記認定事実(5)イ(イ))。また,前記のとおり,全国の朝鮮高級学校の運営は,学校法人ごとに個別に行われていると推認されるから,他の学校の運営状況をもって直ちにA高級学校の運営状況を推認することはできない。
したがって,
学校法人U学園に関する上記の判決での認定事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(サ)

前記認定事実(4)カ(イ)のとおり,東京都が朝鮮学校の学校運営全般に
ついて調査した結果を取りまとめた報告書には,学校法人F学園が設置する東京都内の朝鮮学校において不適切な財産管理が見られたなどとされ,具体的な事例として,①朝鮮総聯支部等の事務所が入居する建物がW幼初級学校の敷地内に存在しているという事例,②朝鮮大学校のグラウンドが朝鮮総聯事業体企業のM信用組合に対する負債のために担保提供され,当該グラウンドについて競売開始決定がされたため,学校法人F学園が上記企業の債務の一部を弁済したという事例などが指摘されている。
しかし,上記①の建物は昭和34年に建築された旧建物を平成元年頃に建て替えたものであり,上記②の担保提供は平成2年に行われたものであって(乙55),いずれについても相当以前に行われたものである上,その経緯等は必ずしも明らかでない。このような事情に照らせば,上記の報告書の指摘する事実をもって直ちに現在の朝鮮高級学校の運営や朝鮮総聯との関係が適正を欠くものと推認することはできない。また,
前記のとおり,全国の朝鮮高級学校の運営は,学校法人ごとに個別に行われていると推認されるから,他の学校の運営状況をもって直ちにA高級学校の運営状況を推認することはできない。したがって,学校法人F学園に関する上記の報告書で指摘された事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(シ)

前記認定事実(4)ア(コ)のとおり,神奈川県において朝鮮総聯と関係が
深いとされる教育会が朝鮮学校の生徒等の保護者に対し生徒等に支給された学費補助金を教育会に納付させたケースがある旨の報道がされており,証拠(乙77)によれば,上記報道内容に沿う事実として,Z中高級学校が保護者に対し学費補助金の寄付を求め,この寄付金の受入れが教育会により行われたことが認められる。
しかし,①上記報道を受けた神奈川県の調査によれば上記の学費補助金は生徒の授業料負担の軽減に使用されたことが確認されていること(乙76),②学校法人Z学園の教育会は,施設の管理及び修理,教材及び教具の購入等の学校事務を担当しているにすぎないこと(乙77)③私立学校では財政的事情から保護者に寄付を募ることは通常行われるものであることなどに照らすと,Z中高級学校に関する上記報道内容に沿う事実をもって同校の学校運営や朝鮮総聯との関係が適正を欠くものと推認することはできない。また,前記のとおり,全国の朝鮮高級学校の運営は,学校法人ごとに個別に行われていると推認されるから,他の学校の運営状況をもって,直ちにA高級学校の運営状況を推認することはできない。したがって,Z中高級学校に関する上記事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(ス)

前記認定事実(4)ウのとおり,
D及びRが文部科学大臣に提出した書面

には,朝鮮学校は朝鮮労働党の日本での工作活動拠点である旨が記載されており,O中央本部が文部科学大臣に提出した書面には,朝鮮学校の学校運営及び教育は朝鮮総聯の指導を通じて北朝鮮政府の完全なコントロール下にある旨が記載されている。しかし,上記書面は,拉致問題等を理由に朝鮮学校に対する支給法適用を反対する立場から記載されたものであることからすればその記載内容の精度や信用性は慎重に判断すべきであるところ,上記書面の記載は,具体的事実や客観的な裏付けを伴うものではないことからすれば,上記各書面の記載内容に沿う事実は直ちに認めることはできず,上記各書面の存在をもって本件特段の事情があるということはできない。
(セ)

前記認定事実(4)イ(ア)・(イ),エ及びオのとおり,①O発行のO新聞で
は,朝鮮学校では金日成一族や北朝鮮の制度を礼賛する思想教育が行われていることなどが報道され,②公安調査庁作成の「内外情勢の回顧と展望」には,朝鮮総聯が朝鮮学校での民族教育を重要視し,北朝鮮・朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいること,
朝鮮人学校では,
一律に朝鮮総聯傘下事業体「E」が作成した教科書を用いた朝鮮語での授業を行っており,北朝鮮の発展ぶりや金正日総書記の先軍政治の実績を称賛していること,朝鮮総聯は教職員や生徒をTやSに所属させ思想教育を行っていることなどが記載されており,③公安調査庁長官等は国会の答弁において,朝鮮総聯が朝鮮学校の教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしている旨を述べている。そして,前記認定事実(3)のとおり,上記報道等に沿う事実として,①朝鮮高級学校では共通の教科書が使用されており,その編纂者は,平成22年11月当時には朝鮮総聯中央常任委員会内の教科書編纂委員会とされ,その後,E内の教科書編纂委員会とされたものの,朝鮮総聯のホームページではEが朝鮮総聯の傘下事業体とされていること(同エ),②朝鮮高級学校では共通の教科書を使用して朝鮮語で授業が行われており,使用している教科書には,我が国や国際社会における一般的認識及び政府見解とは異なる内容の記述が存在するほか,「敬愛する金日成主席様」など特定の政治指導者が敬称等を用いて記述され,当該政治指導者を賞賛する趣旨の記述,北朝鮮の社会主義理念及び国家の発展を賛美する記述,反米的な記述,歴史的事象を一面的に表現した記述などがあること
(同オ)③朝鮮高級学校では,

国語(朝鮮語)及び社会科の教育内容については北朝鮮の学者等の意見を取り入れるために朝鮮総聯の協力を得ていること(同オ)が認められる(なお,朝鮮総聯が教職員や生徒をTやSに所属させている事実は,これを裏付けるに足りる客観的資料が提示されていないことや朝鮮高級学校が支援室からの照会に対し上記事実を否定する趣旨の回答をしていること〔前記認定事実(5)イ(ア)a〕などに照らし,認められない。)。これらの事実によれば,朝鮮高級学校では,北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き北朝鮮の国家理念を賛美する内容の教育が行われており,この教育に朝鮮総聯が一定程度関与していることが認められる。
しかし,朝鮮総聯は,第二次世界大戦後の我が国における在日朝鮮人の自主的民族教育が様々な困難に遭遇する中,在日朝鮮人の民族教育の実施を目的の1つとして結成され,朝鮮学校の建設や学校認可手続などを進めてきたのであり,朝鮮学校は,朝鮮総聯の協力の下,自主的民族教育施設として発展してきたということができるのであって(前記前提となる事実(1)ウ,甲99の1,102,原告代表者,弁論の全趣旨),このような歴史的事情等に照らせば,朝鮮総聯が朝鮮学校の教育活動又は学校運営に何らかの関わりを有するとしても,両者の関係が我が国における在日朝鮮人の民族教育の維持発展を目的とした協力関係である可能性は否定できず,両者の関係が適正を欠くものと直ちに推認することはできない。また,朝鮮高級学校は,在日朝鮮人子女に対し朝鮮人としての民族教育を行うことを目的の1つとする外国人学校であるところ(前記前提となる事実),母国語と,母国の歴史及び文化についての教育は,民族教育にとって重要な意義を有し,民族的自覚及び民族的自尊心を醸成する上で基本的な教育というべきである。そうすると,朝鮮高級学校が朝鮮語による授業を行い,北朝鮮の視座から歴史的・社会的・地理的事象を教えるとともに北朝鮮を建国し現在まで統治してきた北朝鮮の指導者や北朝鮮の国家理念を肯定的に評価することも,朝鮮高級学校の上記教育目的それ自体には沿うものということができ,朝鮮高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯からの不当な支配により,自主性を失い,上記のような教育を余儀なくされているとは直ちに認め難い。他方,A高級学校は,学習指導要領に示されている教科及び特別活動を概ね実施し,使用している教科書に我が国や国際社会における一般的認識及び政府見解とは異なる内容の記述がある場合には,補助教材を使用するなどしてそれらも併せて教えるようにしており,国公立大学,私立大学,短期大学などにより個別入学資格(学校教育法施行規則150条7号,183条3号)を認められた者が,平成21年において合計102名(日本の大学42名,朝鮮大学校37名,専門学校23名)いる(前記認定事実(3)イ,ウ,オ)。また,100%に近い生徒が部活動に参加しており,ラグビー部が全国選抜大会で準優勝し,吹奏楽部が全国高校野球選手権大会開会式・閉会式で演奏するなど,部活動等を通じて他の学校等との交流も行われている(前記認定事実(3)ウ)。加えて,支援室が実地調査として朝鮮学校の授業視察を実施し,高校3年生の現代朝鮮歴史等の授業を視察した際にも,特に懸念される様子は見当たらず(前記認定事実(5)イ(ア)e),平成23年にA高級学校に対する大阪府授業料支援補助金等の交付の検討を行うに当たって実施されたA高級学校の教育活動の活動ワーキングによる調査結果でも,教育内容については,社会科の教材に特定の政治指導者に対する敬称があったことから政治的中立性を考慮することが望ましい旨の指摘はあるものの,授業等において一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制していることを指摘する記載はない(乙61)。
以上の諸点に照らせば,前記の報道等の存在及び朝鮮高級学校において北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き北朝鮮の国家理念を賛美する内容の教育が行われており,この教育に朝鮮総聯が一定程度関与している事実をもって本件特段の事情があるということはできない。
(ソ)

証拠(甲101の2・3)によれば,A高級学校が支給法の対象とな
らないことなどに関連してA高級学校,a中級学校等の生徒の保護者に対して実施されたアンケートの回答に,A高級学校と北朝鮮及び朝鮮総聯が一体であるなどと記載されているものがあることが認められる。しかしながら,上記の回答は,「無償化除外や補助金不支給の理由として『北朝鮮』,『朝鮮総聯』とのつながりが取りざたされていることについてどのように思われますか。」という質問に対するものであり,就学支援金を生徒等の授業料に係る債権の弁済に充当しない可能性や教育の自主性の侵害といった本件規程13条の要件該当性という観点からA高級学校と北朝鮮及び朝鮮総聯との関係を問うものではないことからすれば,上記の回答の意味も,朝鮮学校が北朝鮮や朝鮮総聯の援助を受けて維持発展してきたという歴史的経緯や朝鮮学校が在日朝鮮人の民族教育を行う学校であることから朝鮮学校と北朝鮮及び朝鮮総聯とが一体性を有するという趣旨にすぎないと解する余地が十分にある。そうすると,上記のアンケートの回答をもって本件特段の事情があるということはできない。

以上検討したところによれば,A高級学校については,他に本件規程13条適合性に疑念を生じさせる特段の事情がない限り,同条適合性が認められるというべきであるところ,本件において上記の特段の事情があるとは認められないというべきであるから,A高級学校は本件規程13条の要件を満たすというべきである。

4
小括
以上のとおり,本件規定の削除は違法無効であり,A高級学校が本件規程13条の要件を満たすというべきであるから,原告について本件規定の「高等学校の課程に類する課程を置くもの」と認められないとした文部科学大臣の判断は,本件規定の存在を前提に本件規程13条適合性を認めなかった点において,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであり,本件不指定処分は違法であって取消しを免れない。

5
争点8(本件規定に基づく指定の可否)について
(1)

本件規定に基づく指定は,教育施設の設置者の申請に基づいて行われるも
のであり(本件規程14条1項),前記4のとおり,本件不指定処分は取り消されるべきものであるから(行政事件訴訟法37条の3第1項2号),本件規定に基づく指定の義務付けを求める訴えは適法である。そして,前記3に説示したところによれば,本件不指定処分時においてA高級学校は本件規程13条の要件を充たしており,証拠(甲25,27)及び弁論の全趣旨によれば,原告は本件規程のその余の要件も充たすものと認められる。そうすると,本件不指定処分後の事情に関して特段の主張立証のない現時点において,文部科学大臣が原告につき本件規定に基づく指定をしないことは,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したことになると認められる(ただし,
前記第2の2(3)アの原告の申請について本件規定に基づく指定に留意事項を付すか,
付すとして,
どのような内容のものとするかについては,
なお,
文部科学大臣の裁量判断に委ねられるというべきである。)。
(2)

なお,本件規程15条は,文部科学大臣は本件規定に基づく指定を行おう
とする場合にはあらかじめ教育制度に関する専門家その他の学識経験者で構成される会議で文部科学大臣が別に定めるものの意見を聴くものとし,同条に基づく会議として審査会が設置されている。しかしながら,本件規程15条は「意見を聴く」と規定していることに加え,検討会議は,本件規定に基づく指定の審査については教育制度の専門家を含む第三者の意見を取りまとめた上で最終的には文部科学大臣の権限と責任において上記の指定がされることが適当であるとし,これに基づいて本件規程15条が設けられたことからすると,審査会は,文部科学大臣が本件規定に基づく指定をする際に教育上の見地からの参考意見を述べるにとどまるものであると解される。このような本件規程15条の趣旨からすると,本件規程15条は,裁判所が文部科学大臣に本件規定に基づく指定をするよう命ずることを妨げるものではないと解される。
(3)

以上によれば,行政事件訴訟法37条の3第5項に基づき,文部科学大臣
に対し前記第2の2(3)アの原告の申請について本件規定に基づく指定をすべき旨を命ずるのが相当である。
6
結論
以上の次第で,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由があるからこれらを認容することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第2民事部

裁判官

角谷昌毅
裁判長裁判官西田隆裕は転官につき,裁判官松原平学は転補につき,署名押印することができない。

裁判官

角谷昌毅
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