判例検索β > 平成25年(ワ)第25017号
職務発明対価不足額請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成25(ワ)25017
事件名職務発明対価不足額請求事件
裁判年月日平成29年7月19日
法廷名東京地方裁判所
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平成29年7月19日判決言渡

同日原本領収

平成25年(ワ)第25017号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

職務発明対価不足額請求事件

平成29年2月27日
判原決告A
同訴訟代理人弁護士

金子晃同島津守同梅津有同栗田祐同福田恵被告ⅰ紀太郎太
株式会社エンプラス

同訴訟代理人弁護士

永島孝明同安國忠彦同朝吹英太同安友雄主1一郎文
被告は,原告に対し,1251万2259円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は,これを15分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。

4
この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

第1

実及び理由
請求

被告は,原告に対し,1億9807万8808円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2
1
事案の概要等
事案の要旨

本件は,被告の従業員であった原告が,被告の保有する別紙1「本件特許目録」(なお,同別紙中の略語は,以下の本文中で定義したものである。)記載1ないし10の日本国特許(以下,これらを併せて「本件各特許」という。)に関し,原告は,本件各特許に係る各発明(以下,これらを併せて「本件各発明」という。)の発明者(又は共同発明者の一人)であり,本件各発明に係る特許を受ける権利(又は特許を受ける権利の原告持分)を被告に承継させたとして,被告に対し,特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)3項に基づく相当の対価(以下,単に「相当の対価」という。)合計1億9807万8808円(内訳は,下記(1)ないし(8)のとおり)及びこれに対する平成21年8月8日(請求の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
(1)別紙1「本件特許目録」記載1の特許(特許第3875247号。以下「特許A」という。)の特許請求の範囲記載の各発明(以下「発明A」という。)及び同目録記載2の特許(特許4357508号。以下「特許A’」という。なお,特許A’に係る出願は,特許Aに係る出願を分割したものである。)の特許請求の範囲記載の各発明(以下「発明A’」という。なお,発明Aと同A’が基本的な内容を共通にする発明であることについては当事者間に争いがなく,また,当事者双方の主張には特許Aないし発明Aと特許A’ないし発明A’を区別しないものがあることから,以下,特許A及び同A’を併せて「本件特許A」といい,発明A及び同A’を併せて「本件発明A」という。)について,合計13億8467万8968円のうち,1億8042万5110円を請求(発明Aと同A’につき均等額〔各2分の1〕を主張し,一部請求としても案分額〔各2分の1〕を請求する趣旨と解される。)
(2)別紙1「本件特許目録」記載3の特許(特許第3570708号。以下「本
件特許B」
という。の特許請求の範囲記載の各発明

(以下
「本件発明B」
という。

について,219万9625円を請求
(3)別紙1「本件特許目録」記載4の特許(特許第3736724号。以下「本件特許C」
という。の特許請求の範囲記載の各発明

(以下
「本件発明C」
という。

について,251万9139円を請求
(4)別紙1「本件特許目録」記載5の特許(特許第3543654号。以下「本件特許D」
という。の特許請求の範囲記載の各発明

(以下
「本件発明D」
という。

について,65万4084円を請求
(5)別紙1「本件特許目録」記載6の特許(特許第3743699号。以下「特許E」という。)の特許請求の範囲記載の各発明(以下「発明E」という。)及び同目録記載7の特許(特許第3900326号。以下「特許E’」という。)の特許請求の範囲記載の各発明(以下「発明E’」という。なお,発明Eと同E’が基本的な内容を共通にする発明であることについては当事者間に争いがなく,また,当事者双方の主張には特許Eないし発明Eと特許E’ないし発明E’を区別しないものがあることから,以下,特許E及び同E’を併せて「本件特許E」といい,発明E及び同E’を併せて「本件発明E」という。)について,合計129万6728円を請求(発明Eと同E’につき均等額〔各2分の1〕を主張し,これを請求する趣旨と解される。)
(6)別紙1「本件特許目録」記載8の特許(特許第3521058号。以下「本件特許F」
という。の特許請求の範囲記載の各発明

(以下
「本件発明F」
という。

について,96万5331円を請求
(7)別紙1「本件特許目録」記載9の特許(特許3654410号。以下「本件特許G」という。)の特許請求の範囲記載の各発明(以下「本件発明G」という。)について,221万2125円を請求
(8)別紙1「本件特許目録」記載10の特許(特許第3739067号。以下「本件特許H」
という。の特許請求の範囲記載の各発明

(以下
「本件発明H」
という。


について,780万6666円を請求
2
前提事実(当事者間に争いのない事実及び掲記の証拠等により容易に認めら
れる事実。なお,書証番号は,特記しない限り枝番の記載を省略する。)(1)当事者

原告は,平成6年4月1日から平成18年9月15日まで(被告の完全子会
社である株式会社エンプラス研究所〔以下「エンプラス研究所」という。〕に出向した期間を含む。),被告に雇用され,次のとおり研究員として勤務した。(ア)平成6年4月1日から平成12年4月15日

属:被告のバックライト事業部

技術部

職務内容:液晶用バックライトに関する研究開発及び量産化対応
(イ)平成12年4月16日から平成17年9月15日

属:エンプラス研究所の研究開発部(以下,単に「研究開発部」という。)
職務内容:液晶用バックライト及びLED照明装置に関する研究開発(ウ)平成17年9月16日から平成18年9月15日

属:被告のオプトプラニクス事業部

開発部

職務内容:LED照明装置に関する研究開発

被告は,電気機器用各種製品及び光学機器用各種製品等の製造,加工,並び
に販売等を目的とする株式会社である。なお,被告のLED関連事業部の事業(平成15年3月末までに被告に存在した液晶関連事業部の事業を含む。)は,平成24年4月2日,
会社分割により株式会社エンプラスディスプレイデバイス
(以下
「エ
ンプラスディスプレイデバイス」という。)に承継された。
(2)本件各特許等

本件各特許

被告は,本件各特許の出願人であり,特許権の設定登録以来,それらの特許権者である(ただし,本件特許Dないし同Hについては,被告とAⅸが共同出願人であり,特許権の設定登録以来,両名がそれらの特許権者である。なお,当事者双方は,
いずれもこの点を本件の争点に関係するものとは位置付けていない。)。本件各特許の内容(以下,特許の内容というときは,特許原簿又は願書若しくはその添付書類の記載をいう。)の要点は,それぞれ,別紙1「本件特許目録」記載1ないし10のとおりであり,本件各特許の願書(登録時のもの)に添付した明細書及び図面(平成15年7月1日以降にされた出願については,明細書,特許請求の範囲及び図面)(以下,これらを併せて「明細書等」という。)の記載事項は,それぞれ,別紙2-1(特許第3875247号公報),別紙2-2(特許第4357508号公報),別紙2-3(特許第3570708号公報),別紙2-4(特許第3736724号公報),別紙2-5(特許第3543654号公報),別紙2-6(特許第3743699号公報),別紙2-7(特許第3900326号公報),別紙2-8(特許第3521058号公報),別紙2-9(特許第3654410号公報),別紙2-10(特許第3739067号公報)に示されるとおりである(甲1ないし10,25ないし30,77の4,乙17ないし25,弁論の全趣旨〔原告の平成29年6月14日付け上申書〕)。

A関連各特許

被告は,別紙3「A関連特許目録」(なお,同別紙中の略語は,以下の本文中で定義したものである。)記載1ないし3の日本国特許(以下,同目録記載1ないし3の各特許をそれぞれ「特許I」,
「A関連特許①」及び「A関連特許②」といい,これら3件を併せて「A関連各特許」という。)の出願人であり,特許権の設定登録以来,それらの特許権者である。A関連各特許の内容の要点は,それぞれ,同別紙記載1ないし3のとおりであり,A関連各特許の願書(登録時のもの)に添付した明細書等の記載事項は,それぞれ,別紙4-1(特許第4863357号公報),別紙4-2(特許第4636811号公報),別紙4-3(特許第3963275号公報)に示されるとおりである(甲77の4,83,87,99)。ウ
背景技術等

(ア)本件各発明の背景となる技術については,概ね,次のとおり,要約すること
ができる(上記ア及びイで掲記した書証のほか,甲17,乙26,27,弁論の全趣旨)。

液晶用バックライトや一般照明(看板等)の光源としては,従来,CCFL
(冷陰極蛍光管)などの蛍光管が用いられてきたが,消費電力を少なくしたり,水銀を使用しないようにしたりするため,LED(発光ダイオード)に置き換えられている。
液晶用バックライトにおける光源の配置方式としては,導光式(エッジ方式)と直射式(直下方式)とが知られている。前者は,光源からの光を導く導光板を用いる方式であり,後者は,発光面直下に光源を配置する方式である(以下,LEDを光源とする場合における,前者の方式を「LED導光式」,後者の方式を「LED直射式」という。)。

LEDを光源とする場合には,
発光面の輝度ムラ
(LEDの直上部が明るく,

そこから離れるに従って暗くなること〔後記(4)ア(エ)に掲げた図を参照〕)が問題となる。
LED導光式は,LEDを導光板の側面に配置し(後記(4)イ(エ)に掲げた図を参照),適切に導光することにより,輝度ムラのない発光面を得ることができる。この方式は,バックライトの薄型化には適するが,発光面の面積以上の大きさの導光板が必要となり,光源の配置場所や使用数が限定されるため,大型化や高輝度化には課題が多いとされており,携帯端末やノートパソコンなどの用途に向く。LED直射式では,LEDを覆うレンズを使用しないこと(次頁の説明図の「レンズ無し」)もあるが,ほとんどが輝度ムラを改善するため,レンズを使用する。このレンズには,LEDと一体化したもの(同図の「封止樹脂レンズ」)と,LEDとは別体の光拡散レンズレンズ(同図の「レンズ使用」)とがある。光拡散レンズは,光学機能により同図の「全反射レンズ」と「屈折レンズ」に分類され,後者は,出射面の形状により同図の「凹面あり」と「凹面なし」に分類される。LED直射式は,光源を増やすことが容易であることなどから,大型化や高輝度化には適
するが,輝度ムラを均一化するために光源と光を拡散させる拡散板を一定距離以上離す必要があるため,バックライトの薄型化には不向きであるとされており,テレビや大型モニタなどの用途に向く。

本件発明Aは,LED直射式における光拡散レンズ(下記説明図の「レンズ
使用」)のうち,「屈折レンズ」で「凹面あり」に分類される技術に関する発明であり,本件発明Bないし同Hは,導光式に係る技術に関する発明であるということができる。

(イ)実施料率に関し,公表された統計の分析結果として,次のものがある。発明協会研究センター編「実施料率〔第5版〕」(乙4)では,「電子・通信用部品」の分野における実施料率の平均値(平成4年度から平成10年度)は,イニシャル・ペイメントありの場合が3.5パーセント,イニシャル・ペイメントなしの場合が3.3パーセントであり,最頻値は,イニシャル・ペイメントありの場合も,イニシャル・ペイメントなしの場合も,1パーセントであるとされている。また,
上記文献に基づいて集計を行ったとする,
株式会社帝国データバンクの
「知
的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書」(甲
15)では,我が国における「ラジオ・テレビ」の技術分野におけるロイヤルティ料率(平成4年度から平成10年度のイニシャル・ペイメントなしの場合)の平均値,最頻値,中央値が,それぞれ5.7パーセント,1.0パーセント,2.0パーセントであるとされている。
(3)特許を受ける権利の承継

被告においては,従業員がした被告の業務範囲に属し,かつ,当該従業員の
職務に属する発明(職務発明)に関し,「特許奨励褒賞対象選出運用マニュアル」(平成8年4月1日運用開始)やこれを全面改定した「特許取扱規定
実施要領」

(平成14年4月1日制定,
平成17年4月1日改訂)
などの職務発明規定
(以下,
これらを併せて「被告規定等」という。)が定められており,本件各発明がされた当時,被告規定等によれば,①発明者である従業員は,被告の特許部門へ届出を行い,同部門の調査検討を経て出願することが決定したものについては,同部門がその手続を行うこと,②被告から発明者に,出願時対価(出願時奨励金)や登録時対価(登録時奨励金)のほか,発明の実施実績を評価した結果に基づく実績補償金(実施褒賞金)を支払うことなどが規定されていた(甲12ないし14,乙14,弁論の全趣旨)。

本件各発明は,いずれも被告の事業範囲に属し,かつ,原告の職務に属する
発明(職務発明)であったところ,原告は,被告規定等に基づき,被告に本件各発明に係る特許を受ける権利(本件発明A,同D,同E及び同Fについては,特許を受ける権利の原告持分)を承継させた(なお,原告が被告の完全子会社であるエンプラス研究所に出向中にされた発明についても,被告が,原告から特許を受ける権利又はその原告持分を承継し,相当の対価〔不足額〕の支払義務を負った。)。(4)被告による本件各発明の自己実施

被告による本件発明Aの自己実施

(ア)被告は,平成21年頃から,「LE-Cap」(LightEnhancerCap)という商品名で光拡散レンズ(以下「『LE-Cap』」と鍵括弧を付していう。)を
量産している。
被告は,我が国において,本件発明Aの実施品(以下,
「実施品」というときは,
特許請求の範囲記載の発明の技術的範囲に属する物のほか,その物の生産にのみ用いる物〔特許法101条1号〕,又はその物の生産に用いる物であって,その発明による課題の解決に不可欠なもの〔同条2号〕を含むものとする。)たる光束制御部材としての「LE-Cap」(以下「A実施品」という。)を製造販売することにより,同発明を実施している(なお,被告の製造販売する「LE-Cap」に本件発明Aの実施品でないもの〔以下「A非実施品」という。〕が存在するか否かについては,争いがある。)。
(イ)平成21年度から平成27年度(平成27年度は4月から7月まで,その余の各年度は4月から翌年3月まで)の「LE-Cap」の売上高のうち,A実施品であることに争いのないものの売上高は,別紙5-1「『LE-Cap』売上高一覧表」の「A実施品売上高」欄記載のとおりである●(省略)●については,「LE-Cap」の全てがA実施品である〔争いがない〕。●(省略)●以降の「LE-Cap」の売上高のうち,被告がA非実施品であると主張するものの売上高は,同別紙の「A非実施品売上高」欄記載のとおりであり,原告は,これらもA実施品であるか,本件特許Aによる独占の効果が事実上及ぶものであるとして,相当の対価の算定の基礎とすべき旨主張している。なお,上記各年度の「LE-Cap」の売上高の総額は,同別紙の該当行の「A実施品売上高」欄及び「A非実施品売上高」欄記載の各売上高を合計したものである〔争いがない〕。)。
(ウ)被告は,本件特許Aに関して,第三者に対する実施許諾をしていない。(エ)液晶用バックライトに「LE-Cap」を使用することにより奏される効果に関して,被告作成の「液晶テレビ用LED拡散レンズ資料」(甲17)では,次頁の図を用いるなどして,輝度ムラがなくなり,LEDを減らすことができるなどという説明がされている。


被告による本件発明Bないし同Hの自己実施

(ア)被告は,平成12年頃から,「PSP-LGP」という商品名の導光板(以下「『PSP-LGP』」と鍵括弧を付していう。)の量産を開始し,平成23年3月末をもって,その全ての製造販売を終了した。
被告は,
我が国において,
本件発明Bないし同Hの実施品たる導光板としての
「P
SP-LGP」(以下「B~H実施品」という。)を製造販売することにより,これらの発明を実施した。
被告規定等による実施褒賞金の算定の基礎とされた期間(以下「評価期間」という。)に係るB~H実施品の売上高を発明ごとにまとめると,別紙5-2「『PSP-LGP』売上高一覧表」記載のとおりである(発明ごとに評価期間が異なり,また重複しているため,同一覧表記載の金額の合計額は,「PSP-LGP」の総売上高と一致しない。)。
(イ)被告は,本件特許Bないし同Hに関して,第三者に対する実施許諾をしていない。
(ウ)被告は,裏面に微細な形状の溝を多数形成した導光板「PSP-LGP」の上に,下凸形状のプリズムシート1枚を配置した構成からなる導光体を製造し,これを,顧客(バックライトメーカー,液晶パネルメーカー又はセットメーカー)に販売していたもので,バックライトモジュールの組立ては,主に顧客側が行ってい
た。なお,プリズムシートは,日東樹脂工業株式会社から被告が購入しているものである。
「PSP-LGP」の部品構成図(断面図)は,次のとおりであり,光源が置かれるのは,図面左側の円内の部位である。

(5)既払金
被告は,原告に対し,被告規定等に従って,本件発明Aないし同Hについて,それぞれ,別紙6「既払金一覧表」記載のとおり,出願時奨励金,登録時奨励金及び実施褒賞金(以下,これらを併せて「既払金」という。)を支払った(なお,原告は,本件各発明に係る相当の対価の額が,当該発明につき被告から支払われた額を超える場合に,各不足額の支払を求めることができるところ,原告は,原告主張の各相当の対価の額から,
各既払金の額を控除した各残額の支払を請求している。。

(6)本件催告
原告は,被告に対し,平成21年8月7日到達の内容証明郵便により,本件各特許を含む39件の日本国特許及びその対応外国特許に係る発明について,相当の対価の不足額の支払を求める旨の意思表示(以下「本件催告」という。)をした(甲11)。
3
争点

(1)本件発明Aに係る相当の対価の額(争点1)
本件発明Aに係る相当の対価の額(不足額)は幾らか。
具体的には,以下の点が争われている。


独占の利益の額(特許法35条4項の「その発明により使用者等が受けるべ
き利益の額」。以下同じ。)に関し,次の(ア)ないし(ウ)
(ア)A実施品の期間売上高(相当の対価の算定の基礎とすべき期間の売上高をいう。以下同じ。)

A非実施品の存否(存在するときは,本件特許Aによる独占の効果が事実上
及ぶか)

A実施品(A非実施品が存在し,本件特許Aによる独占の効果が事実上及ぶ
ときは,A実施品及びA非実施品)の期間売上高のうち,平成27年8月以降のもの
(イ)超過売上率(売上高のうち法定通常実施権〔特許法35条1項〕の行使による売上高を超える割合〔すなわち,従業者等が特許を受ける権利を使用者等に承継させずに,自ら特許を受け,第三者に実施許諾したものと想定した場合に見込まれる使用者等の売上高を超える割合〕。以下同じ。)(原告の主張書面では,「発明寄与率」,「超過利益の割合」及び「他社実施の禁止割合」という表現が互いに同じ内容のものとして用いられているが
〔平成26年6月6日付け第2準備書面3頁〕

これらは,超過売上率をいう趣旨と解される。)
(ウ)仮想実施料率(従業者等が特許を受ける権利を使用者等に承継させずに,自ら特許を受け,第三者に実施許諾したものと想定した場合に見込まれる実施料率。以下同じ。)

被告の貢献度(特許法35条4項の「その発明がされるについて使用者等が
貢献した程度」。以下同じ。)

共同発明者間における原告の貢献度


遅延損害金の起算日より後の期間売上高に基づいて算定される相当の対価に
関する中間利息の控除の要否
(2)本件発明Bないし同Hに係る相当の対価の額(争点2)
本件発明Bないし同Hに係る各相当の対価の額(各不足額)は幾らか。
具体的には,以下の点が争われている。

独占の利益の額に関し,次の(ア)ないし(ウ)

(ア)超過売上率
(イ)特許寄与率(実施品の製造販売に複数の特許が用いられる場合における独占の利益に対する各特許の寄与率。以下同じ。)(被告の主張書面では,「発明寄与率」ないし「発明実施品の売上げに対する各発明の寄与」と,「超過利益の割合」ないし「超過売上高の割合」は,別の問題であるとされているが〔平成26年8月29日付け第4準備書面2頁〕,前者は特許寄与率,後者は超過売上率をいう趣旨と解される。)の考慮の要否
(ウ)仮想実施料率

被告の貢献度


共同発明者間における原告の貢献度

第3
1
争点に対する当事者の主張
争点1(本件発明Aに係る相当の対価の額)について

【原告の主張】
(1)原告主張の要旨
被告が原告に支払うべき本件発明Aに係る相当の対価の額(不足額)は,①A実施品(A非実施品〔本件特許Aによる独占の効果が事実上及ぶ。〕が存在するときは,A実施品とA非実施品。以下,期間売上高,超過売上率及び仮想実施料率を論ずる場合は,同様である。)の期間売上高に,超過売上率及び仮想実施料率を乗じて,独占の利益(本件発明Aにより被告が受けるべき利益)の額を求め,②上記①により求められる独占の利益の額から,被告の貢献度に応じた額を控除した額(上記①により求められる独占の利益の額に,「1-被告の貢献度」を乗じた額)を求め,
③上記②により求められる額に,
共同発明者間における原告の貢献度を乗じて,
相当の対価の額を求め,④上記③により求められる相当の対価の額から,既払金を差し引くことにより,別紙7「原告主張の要旨」の上段のとおり,合計13億84
67万8968円と算定される。
原告は,被告に対し,その一部である1億8042万5110円を請求する(遅延損害金の起算日は,本件催告の日の翌日である平成21年8月8日である。)。なお,期間売上高には,遅延損害金の起算日以降の売上高を含むが,本件は,相当の対価の請求であるから,その算定に際して中間利息の控除をすべきではない。(2)独占の利益の額について

A実施品の期間売上高について

(ア)A実施品の期間売上高(推定値及び将来の予測値〔甲77参照〕を含む。)は,別紙7「原告主張の要旨」の上段の「1

A実施品の期間売上高」欄記載のと

おりである。
(イ)被告は,A非実施品の存在を主張するが,原告が,秘密保持に関する契約の締結後,被告から任意開示を受けたA非実施品とされる製品(以下「被告開示品」という。)を分析したところ,●(省略)●被告開示品は,A実施品であるといえる。したがって,A非実施品は,実際には存在せず,「LE-Cap」の全てがA実施品であると推認されるべきである。
(ウ)仮に,A非実施品が存在するとしても,以下のとおり,本件特許Aによる独占の効果が事実上及んでいるとみるべきであるから,その売上高は,相当の対価の算定の基礎とすべきである。
すなわち,同特許が,競合企業の実施を禁止することにより,被告による当該製品の売上げに貢献しているのであれば,独占の利益をもたらしているといえるところ,被告がA非実施品の販売を開始したとする●(省略)●以降も,被告の「LE-Cap」の販売部門の営業利益率(44.5パーセントないし49.9パーセント)は,被告の全事業を通じた営業利益率(27.2パーセント)を大幅に上回っている。本件特許Aの存在以外に,このような驚異的な営業利益率が維持されている理由は考えられないから,A非実施品にも,A実施品と同様に,同特許による独占の効果が事実上及んでいるといえる。


超過売上率について

(ア)A実施品についての超過売上率は,別紙7「原告主張の要旨」の上段の「2超過売上率」欄記載のとおりとすべきである(下記(イ),(ウ)の事情のほか,甲34,59〔株式会社富士キメラ総研(以下「富士キメラ総研」という。)発行の文献〕,甲35,36〔新聞記事〕,甲12,14〔被告規定等とこれに基づく対価支払に関する通知書〕,甲17〔被告作成の資料〕などに基づく。)。
(イ)本件発明Aには,事実上,代替技術が存在しない。
液晶用バックライトの技術には,本件発明Aに関連するLED直射式と本件発明Bないし同Hに関連するLED導光式とがあるところ(前記前提事実(2)ウ),被告は,LED直射式に優位性があると述べており,LED導光式は,その特徴が生かされる製品に採用されるものであることからすれば,後者が本件発明Aの代替技術となり得ないことは,明らかである。
また,
「LE-Cap」
の売上げ
(初めて計上されたのは,
平成21年度である。

の計上前や計上直後に存在した他の方式を代替技術とすることは不当であるし,前記前提事実(2)ウの説明図の
「レンズなし」「封止樹脂レンズ」

を採用した製品は,
生産中止になるなどして普及せず,市場シェアをほとんど獲得できていないから,これらをもって代替技術とみることはできない。
(ウ)被告は,特許Iを保有しているところ,同特許に係る発明(以下「発明I」という。)は,原告の単独発明であり,本件発明Aと同じくレンズの屈折による出射方向制御に関する発明であって,
レンズ形状を略四角形状に限定している点のみ,
本件発明A(同発明は,レンズ形状を円形に限定している)と相違する。被告は,発明Iを実施していないものの,競合企業が本件特許Aの回避を試みる可能性も否定できないから,特許Iは,本件特許Aとの関係では,防衛特許として出願されたものとみることができ,その存在は,A実施品の売上げに影響しているといえるから,この点も考慮されるべきである。

仮想実施料率について

(ア)A実施品についての仮想実施料率は,別紙7「原告主張の要旨」の上段の「3仮想実施料率」欄記載のとおりとすべきである(原告は,市場の状況等を考慮し,期間によって異なる値を主張するものである。なお,下記(イ)の事情などから被告の主張は当たらない。)。
(イ)被告は,仮想実施料率としては,せいぜい1パーセントから2パーセントであるなどと主張するが,被告の平成25年度第1四半期の四半期報告書(甲31)によれば,「LE-Cap」の利益率は58パーセントにも及んでいるのであるから,(そのような利益率をあげられる時期に)5パーセントを下回るような実施料率により実施許諾することは,想定できない。
(3)被告の貢献度について

本件発明Aについての被告の貢献度は,別紙7「原告主張の要旨」の上段の
「4

被告の貢献度」欄記載のとおりとすべきである(下記イないしエの事情など
に基づく。)。

被告の貢献度は,最大でも95パーセントである。

原告が被告側から提示された開発内容は,「LEDを用いた直射式バックライト用デバイス」というもののみであり,本件発明Aについての具体的アイデアに関する指示や示唆はなかった。
また,特許Aの出願のために,被告が新規に導入した設備はない。試作業務は,他の開発テーマで用いた汎用品(射出成形機,精密旋盤,成形金型)を用いることにより,原告が一人で行った。原告は,勤務時間外にも,汎用ソフトウェア(マイクロソフト社のExcel)を使用して光学設計を実施し,研究開発費は最小限であった。
加えて,被告には,照明用レンズに関する技術的蓄積がなく,特許Aの出願に当たり,
被告が保有する撮像レンズ及び導光板に関わる専門技術も利用されなかった。ウ
被告は,「LE-Cap」の市場が寡占状態であることを認めつつ,その原
因が被告の技術力,生産能力及び営業力にあるとしているが,被告は,被告規定等
に基づく評価において,特許Aの貢献度が「0.3」,すなわち「対象特許の存在により市場を完全に独占している」場合であることを認めている(甲12,14)。また,「LE-Cap」の市場の状況に関し,被告が95パーセントのシェアを占めている理由につき,「拡散レンズのパテント」を保有していることを指摘する報告がある(甲34,59)。

原告は,当時の主流であった蛍光管を用いた導光式に対する,LED導光式
の利点及び欠点を挙げた上,本件発明Aについて,研究開発部の部長であったAⅱ(以下「Aⅱ」という。)に提示した。Aⅱ作成の企画書の構造案(乙1)は,原告作成の書面(甲47)の図を流用したものであることは明らかであり,本件発明AについてAⅱの関与はない。
また,研究開発部に所属していたAⅲ(以下「Aⅲ」という。)が検討したという●(省略)●は公知であり,本件発明AについてAⅲの貢献はない。被告がAⅱ及びAⅲの貢献ないし被告の技術的蓄積を示すものであるとする乙1号証ないし乙3号証は,公知技術を再現試作したが全く使い物にならなかったという結果を示すものにすぎず,被告の貢献度を示すものとはいえない。(4)共同発明者間における原告の貢献度について

本件発明Aについての共同発明者間における原告の貢献度(寄与割合)は,
別紙7「原告主張の要旨」の上段の「5

共同発明者間における原告の貢献度」欄

記載のとおりとすべきである
(本件発明Aは,
下記イないしカの事情などに照らし,
実質的に原告単独の発案を基礎として特許されるに至ったものであることなどに基づく。)。

本件発明Aは,原告の単独発明であるA関連特許①に係る発明(以下「A関
連発明①」という。)及び原告の単独発明であるA関連特許②に係る発明(以下「A関連発明②」という。)を基礎とするものである。A関連発明①は,両面フレネルレンズによる「照明光の均一化」に関する発明であり,レンズの屈折により光束密度を制御してLED直上の明るさを緩和させると
いう本件発明Aの原型となる発明である。
A関連発明②は,平板状レンズによる「照明光の均一化」に関する発明であり,A関連発明①の上記コンセプトに加え,レンズの屈折により出射方向も制御し,到達拡散板面でのLED直上の明るさをさらに緩和させることを可能とするものであって,レンズの機能としては,本件発明Aと同一の内容を有するものである。ウ(ア)原告は,次の(イ)ないし(エ)の思考過程を経て,A関連発明②及び本件発明Aを着想し,照明の均一化を本件発明Aにおいて実現した。
(イ)照明光を均一化するためには,光源からの光を光束制御部材を介して垂直方向に対してより外側に滑らかに広げて出射することが必要となることから,原告は,
光束制御部材から出射する光の出射角(θ5)と,光源から出射される光の出射角(θ1)とのあるべき関係を定めた(第1段階)。
すなわち,原告は,光を所望の範囲までより自然に滑らかに拡げる手段として,「θ1に対しθ5を大きくするが,そのθ1に対するθ5の値を急激には変化させない」こと,及び「θ1の小さい領域は光束密度が高いため,θ1の小さい領域ほどθ1に対するθ5の値を大きくする」ことが必要であると考えて,本件発明Aの「θ5/θ1>1の関係を満足するとともに,このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる」という構成に至ったものである。(ウ)光束制御部材の光入射面及び光出射面においてθ1からθ5へ変角させるに当たり,それぞれの面における屈折配分を定めた(第2段階)。
原告は,関係する角度を次のとおり定義し,光束制御部材における光入射側の面及び光出射側の面それぞれの屈折の配分を定めることとした。すなわち,光束制御部材内の進行角度θ2を定義することにより,光入射側の面あるいは光出射側の面のいずれで大きく光を屈折させるかという設計条件が定まることを明確にした。θ1:LEDからの出射角
θ2:光束制御部材内進行角度
θ3:光制御面傾斜角度①(光束制御部材の片側の角度)
θ4:光制御面傾斜角度②(もう一方の角度)
θ5:光束制御部材を介した後の出射角度
これら5つの角度の定め方により,A関連特許②に係る明細書等に,①下面が凹となる板状レンズ,②上面が凹となる板状レンズ,③上下面が凹となる板状レンズが記載された(甲83)。また,④出射面の中央が窪んだキャップ状のレンズを採用する場合,レンズの内側部分については点光源の発光点を中心とした半球状になるため,この面における屈折を考慮せず,レンズの外側部分(出射面側)による屈折形状を定めれば足りることになるから,θ2=θ1かつθ4=θ1と定義し,発明Aの実施例として原告が作図したものが,特許Aの明細書等に記載された。このように,
出射面の中央が凹んでいる面形状
(マッシュルーム形状)
であって,
発光素子と隙間をもって係合するレンズについて,原告は,その原型を特許Aの出願前に明らかにしていたものである。
(エ)上述した第1段階及び第2段階を経て,θ1とθ5との関係を実現する光束制御部材の形状(光制御出射面の傾斜角θ3又は凹み形状の傾斜角θ3)を定めることが可能となり,原告は,次のθ1,θ5及びθ3の関係を定めた数式を導き出した(第3段階)。

本件発明Aにおけるθ3の値は,θ1及びθ5の値を定めることにより一義的に算出できるものである。また,θ1とθ5との関係を忠実に再現するためのθ3の値が定まれば,これに伴い光束制御部材の形状も定まる(別紙8「原告による発明Aの着想経緯」記載1において,θ1を1°から2°毎に計算する場合の作業手順を図に示し,同2においては,計算結果から導かれる形状をプロット図にした。)。(オ)以上のとおり,板状の樹脂において,原告が単独で,上記式を着想したから
こそ,キャップ状の形状も着想するに至ったもので,平板状かキャップ状であるかは重視されない。

特許Aに係る「特許出願依頼書兼,権利譲渡証」(乙14の1。以下「特許
A出願依頼書」という。)は,一部のメモ書きを除き,全て原告が作成したものである。原告は,前述のとおり,A関連特許②の出願の際,既に出射面の中央が凹んだキャップ状のレンズの形状を考案・設計しており,発明Aは,実質的に原告の単独発明であったが,原告が特許A出願依頼書を作成・提出するに際し,原告の部下であったAⅳ(以下「Aⅳ」という。)が中央部が凹んだ封止形状の再現評価を行っていたことへの配慮から,発明者の欄にAⅳの署名を加えることになったものである(後述のとおり,中央部が凹んだ形状のレンズは公知技術であった。)。その際,原告が被告の特許管理部(以下「特許管理部」という。)のAⅴ(以下「Aⅴ」という。)に「平板レンズにつきLEDを包むように変形したもの」との説明をしたように,実際は,原告が発明Aを考案していたものである。

被告は,
共同発明者間における原告の貢献度を検討するに当たり,
発明A
(便

宜上,特許請求の範囲の請求項1記載の発明を念頭に置いて議論する。)の①「前記光制御出射面は,前記発光装置の基準光軸近傍で且つ前記基準光軸を中心とする所定範囲に位置する球の一部を切り取ったような凹み形状の第1の出射面と,この第1の出射面の周囲に連続して形成される第2の出射面とを有し,これら第1の出射面と第2の出射面との接続部分が変曲点となっており,」との構成(以下「発明Aの構成①」という。),②「前記第1の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に減少し,前記第2の出射面における前記θ3が前記θ1の増加とともに徐々に増加するようになっており,」との構成(以下「発明Aの構成②」という。),及び③「前記到達点(Px)からの出射光が,前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き,θ5/θ1>1の関係を満足するとともに,このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている,」との構成(以下「発明Aの構成③」という。)
について検討する必要がある旨主張する。
しかし,発明Aの構成③については,前述のとおり,原告が単独で着想したものであることが明らかであり,発明Aの構成②については,発明Aの構成③から一義的に導かれるものであり,発明Aの構成①については,発明Aの構成③及び同②から一義的に導かれるものであり,公知でもあった。なお,発明Aの構成①及び同②は,特許Aの出願時の特許請求の範囲には記載がなく,拒絶理由通知を受け,同通知に引用された公知技術との差異を明らかにするため,補正により付加されたものにすぎない。

被告が「LE-Cap」の特徴的部分であるとする表面形状が凹面となるマ
ッシュルーム形状は,数式から導き出された結果にすぎず,研究開発部に所属していたAⅳ及びAⅵ(以下「Aⅵ」という。)がした光学設計は,公知技術である。すなわち,Aⅳ及びAⅵが平成15年10月から平成16年3月にかけて「LightTools」(照明設計解析ソフトウェア)を用いて検討,試作したレンズは,発光強度の強いLED直上方向の光をレンズ形状で全反射させて横方向へ向きを変えるものであり,全反射させるレンズ形状は,出光側の面がすり鉢状にLEDに向かって凹んだ形状を有するもので,公知技術であった(甲49,67)。他方,本件発明Aは,レンズ形状による屈折制御を前提としており,技術思想的に異なるものである。
また,
LEDチップに被せるキャップ状のレンズについても,
公知技術であり(甲67),発案をした者がAⅳであるとしても,本件発明Aにおける貢献を認めることはできない。特許Aの明細書等の【図4】は,Aⅳの作成に係るものであるが,外周部分が直線的であるという特徴を有しており,本件発明Aの構成を備えていない。
【被告の主張】
(1)独占の利益の額について

A実施品の期間売上高について

(ア)期間売上高に関する原告主張のうち,
被告の主張に係るA実施品の売上高
(別

紙5-1「『Le-Cap』売上高一覧表」の「A実施品売上高」欄記載のとおりである。)を超える部分は,否認する。
(イ)被告は,●(省略)●から,A非実施品(型番X及びY)の販売を開始した(設計変更は,●(省略)●ことによるものである。)。A非実施品(被告開示品)は,●(省略)●。
(ウ)光学製品を主領域とするオプト事業では,技術革新による製品の衰退が顕著であり,LED及び光拡散レンズの性能向上により使用レンズ数も必然的に減少するので,将来的には光拡散レンズの使用数量は減少するとみるのが当業界における通常の認識であって,将来の売上高を見積もることは,著しく困難である。イ
超過売上率について

(ア)超過売上率に関する原告主張のうち,
以下の被告主張に反する部分は,
争う。
(イ)被告が「LE-Cap」につき高い市場シェアを獲得し,相当の売上高を確保することができた最大の要因は,
下記(ウ)で詳述する被告の技術力及び営業力であ
る。また,下記(エ)で詳述するとおり,本件発明Aには代替技術が存在することからすれば,「LE-Cap」の市場シェアのみに基づいて,本件発明Aの技術的優位性及び本件特許Aによる独占の効果が認められるものではない。
(ウ)「LE-Cap」の高い市場シェアは,以下のような被告の技術力及び営業力によりもたらされたものである。
LED直射式バックライト用の光拡散レンズは,液晶メーカー等主要顧客に対する納入数量が万単位と莫大な数量となるため,高品質かつ廉価で,安定的な供給が可能でなければ顧客から選定されず,市場参入は不可能である。
この点,被告は,自動車や産業機械向け製品で培った成形加工技術,超高精度の金型製作技術,精密プラスチック製品製造技術,量産化のための生産技術等を有しており,かかる被告の技術等についての長年の蓄積,高度な経験及びノウハウは,競合企業の追随を許さない程度に圧倒的優位性を有している。被告は,その技術力によりレンズ製造のサイクルタイムを劇的に短縮し,ハイサイクルによる高品質の
レンズ製造を実現し,これによってレンズ製造原価を激減させるとともに,大量かつ安定供給を可能としたものである。また,金型加工についても,被告のノウハウに基づく技術力により,レンズ駒の大幅な加工時間の短縮とコスト低減を可能とした。さらに,被告がその技術的蓄積及びノウハウとして有する光拡散レンズ等のプラスチック製品の回路基板実装技術をLEDメーカーに対して提供することにより,液晶メーカーに対する売込みを強力に推進した。そして,被告は,平成21年4月頃より,競合企業に先駆けて,大手液晶メーカー向けに光拡散レンズの量産を開始し,その後,安定して生産を継続し,供給をしたことにより,市場での優位性を獲得するに至ったのである。また,被告は,被告独自の梱包方式の採用により,出荷コストの大幅な低減を実現した。
(エ)本件発明Aには,代替技術が存在する。
液晶用バックライトの技術は,本件発明Aに関連するLED直射式と本件発明Bない同Hに関連するLED導光式の2方式に大別することができるところ,LED直射式は,①「レンズ無し」のもの,②「封止樹脂レンズ」を用いるもの,③「レンズ使用」のもの(拡散レンズを用いるもの)に分類され,上記③は,「全反射レンズ」を用いるものと「屈折レンズ」を用いるものに分類される。「LE-Cap」
は,「屈折レンズ」を採用した製品であるが,上記のいずれについても,目的及び用途等に応じて有利不利があり,技術の優位性を位置付けることは困難である。現に,いずれについても国内外の各メーカーにより製造,採用されており,「LE-Cap」が技術的に必ずしも有利というわけではない。
「LE-Cap」が主に使用される液晶テレビの市場についてみても,競合企業の製造に係る光拡散レンズが多数存在する(乙51)のであって,本件発明Aの代替技術は多岐に存在するといえる。

仮想実施料率について

(ア)仮想実施料率に関する原告主張のうち,以下の被告主張に反する部分は,争う。

(イ)同一技術分野における同種事例を参考にしても,5パーセントの実施料率は実務上想定し得ない。仮に,実施料率を算定するのであれば,電子・通信回路部品として,せいぜい1パーセントから2パーセントというのが当業界の常識であり,これを上回るとすべき特段の事情はない。
(ウ)被告が,原告に対する本件発明Aの実施褒賞金を算定し,これを支払うに際しては,被告規定等の「原則5%」との定めに従い,「利益率」を5パーセントとした(甲12)が,この5パーセントという数字は,(被告規定等によらないところの)相当の対価の算定に用いられるべき仮想実施料率ではない。(エ)利益率は,
仮想実施料率を定めるに当たり考慮すべき一事情にすぎないこと,「LE-Cap」
の利益も,
被告の技術力や営業力などにより生み出されたもので,
本件特許Aの存在のみにより生み出されているわけでないことを正当に考慮すべきである。
(2)被告の貢献度について

被告の貢献度に関する原告主張のうち,以下の被告主張に反する部分は,争
う。

前記(1)で述べた事情によれば,本件発明Aに対する被告の貢献度は,95パ
ーセントを優に超えるものであり,過去の裁判例に照らしても,同発明に対する共同発明者の貢献度は,せいぜい1パーセントから3パーセントと認定されるべきである。

原告は否定するが,研究開発部(AⅱやAⅲ)の貢献や技術的蓄積も,正当
に評価されるべきである。

被告が,原告に対する本件発明Aの実施褒賞金を算定し,これを支払うに際
しては,被告規定等の「原則5%」との定めに従い,「発明者への還元率」を5パーセントとした(甲12)が,この5パーセントという数字は,(被告規定等によらないところの)相当の対価の算定に用いられるべき共同発明者の貢献度(1-被告の貢献度)ではない。

(3)共同発明者間における原告の貢献度について

共同発明者間における原告の貢献度に関する原告主張のうち,以下の被告主
張に反する部分は,争う。

本件発明Aに対する共同発明者間における原告の貢献度の認定に際しては,
発明の着想及び具体化の経緯,発明の特徴的部分についての寄与を検討すべきである。
しかるところ,特許Aに係る出願は,平成18年5月23日付け拒絶理由通知書(乙39。以下「特許A拒絶理由通知」という。)により,特許法29条2項違反とされたものの,被告において,発明A(便宜上,特許請求の範囲の請求項1を念頭に議論する。)の構成①,同②及び同③が不可分である旨主張することにより,進歩性が認められ,特許されたものである。したがって,発明Aは,光束制御条件とそれを実現するためのレンズ形状の双方を技術的特徴とするものであり,共同発明者間における原告の貢献度を検討するに際しては,少なくとも,発明Aの構成①ないし同③に対する各発明者の寄与を評価する必要がある。ウ
原告は,原告が単独でしたA関連発明①及び同②の存在を強調して,本件発
明Aに対する原告の貢献が著しく大きいかのごとく主張する。
しかし,Aⅳが「LEDチップを直接封止する樹脂封止の表面をレンズ形状とする構成の光学素子」の開発に従事し,原告が「板状透明部材の下面(LED側の面)を凹面とする光学部材」(板状レンズ)の開発に従事することにより,両名は,本件発明Aに関する研究開発業務を分担遂行していた。発明Aの構成①は,Aⅳが担当していた出射面の中央が凹んでいる面形状のLED用光拡散レンズ(マッシュルーム形状のレンズ)を採用したものであって,同構成の着想及び具体化に直接的な関与があるのはAⅳであるし,発明Aの構成②も,Aⅳが担当していた部分の設計事項であって,
原告が担当していた板状レンズからは導かれないところであるから,同構成の着想及び具体化に直接的な関与があるのは,Aⅳである。エ
上記ウのとおり,本件発明Aは,光束制御条件とそれを実現するためのレン
ズ形状の双方を特徴とするものであり,原告が主張するように,照明光の均一化を可能とする制御方法のみを特徴ととらえるべきではない。
さらに,
Aⅳにおいても,
特許Aの出願前に共同発明者としてシミュレーションを行うなど,その着想及び具体化に直接関与しており(乙47),原告のみがこれを行ったものではない。オ
特許Aの明細書等の【図4】や【図7】は,Aⅳが作成した図面である。こ
の点からも明らかなとおり,原告だけで本件発明Aを着想したということはできない。
そもそも,Aⅳは,被告の従業員となる前から発光素子を用いた発光装置の研究開発に従事してきたものであり(乙48),本件発明Aに関する技術の専門的知見を有していたもので,レンズ形状の工夫によって広角化することが可能であり,広角配光が得られるレンズを複数並べることで均一発光する面光源装置の形成が可能であるとの知見は,発明Aの構成①及び同②を有するレンズ並びにそれを用いた面光源装置の開発の根幹にあるものである。

以上のとおり,本件発明Aのもう1名の共同発明者であるAⅳは,板状レン
ズではないキャップ状のレンズの設計を担当し,「出射面の中央が凹んでいる面形状」のLED用光拡散レンズ(マッシュルーム形状のレンズ)を開発し,「LE-Cap」の原型を完成させた者として,本件発明Aの着想及び具体化について,少なくとも原告と均等の割合で寄与しているから,共同発明者間における原告の貢献度が50パーセントを超えることはない。
2
争点2(本件発明Bないし同Hに係る相当の対価の額)について

【原告の主張】
(1)原告主張の要旨
被告が原告に支払うべき本件発明Bないし同Hに係る各相当の対価の額(各不足額)は,それぞれ,①B~H実施品の期間売上高に,超過売上率及び仮想実施料率を乗じて,独占の利益(当該発明により被告が受けるべき利益)の額を求め,②上記①により求められる独占の利益の額から,被告の貢献度に応じた額を控除した額
(上記①により求められる独占の利益の額に,1-被告の貢献度を乗じた額)を求め,③当該発明が原告の単独発明であるときは,上記②の額をもって相当の対価の額とし,当該発明が原告と他の発明者との共同発明であるときは,上記②により求められる額に,共同発明者間における原告の貢献度を乗じて,相当の対価の額を求め,
④上記③により求められる相当の対価の額から,既払金を差し引くことにより,
別紙7
「原告主張の要旨」
の下段のとおり,
本件発明Bにつき219万9625円,
本件発明Cにつき251万9139円,本件発明Dにつき65万4084円,本件発明Eにつき129万6728円,本件発明Fにつき96万5331円,本件発明Gにつき221万2125円,
本件発明Hにつき780万6666円と算定される。
原告は,被告に対し,上記各金員を請求する(遅延損害金の起算日は,本件催告の日の翌日である平成21年8月8日である。)。
(2)独占の利益の額について

B~H実施品の期間売上高

B~H実施品の期間売上高は,
本件発明Bないし同Hそれぞれにつき,
別紙7
「原
告主張の要旨」の下段の該当行の「1

B~H実施品の期間売上高」欄記載のとお

りであり,これらは,別紙5-2「『PSP-LGP』売上高一覧表」記載の各評価期間に係る売上高(被告が原告に開示したもの〔甲13〕である。)をそのまま援用したものである。

超過売上率について

(ア)B~H実施品についての超過売上率は,本件発明Bないし同Hそれぞれにつき,別紙7「原告主張の要旨」の下段の該当行の「2

超過売上率」欄記載のとお

りである(下記(イ)ないし(エ)の事情などに基づく。)。なお,超過売上率(判決注:原告の主張書面では「超過利益の割合」あるいは「他社実施の禁止割合」という表現が用いられている。)と特許寄与率(判決注:原告の主張書面では「発明寄与率」という表現が用いられている。)とは,同じ内容のものと理解される(別個に検討を要するものではない。)。

(イ)「PSP-LGP」のVカット導光板市場でのシェアは,平成17年9月時点で60パーセント前後と圧倒的であるが,このシェアは,基本特許である本件特許H及びその改良特許である本件特許Bないし同Gによりもたらされたものである。(ウ)技術的優位性について

本件特許Hについて

本件特許Hは,「PSP-LGP」の構成に関する基本特許である。本件発明H(便宜上,特許請求の範囲の請求項1を念頭に議論する。)の「前記板状部材は,前記1対の斜面の形成する角度が,90度より大きく,110度以下の角度に設定された」との構成(以下「本件発明Hの構成①」という。)は,原告の実験結果から導き出されたものである。すなわち,原告が85°,95°,100°のプリズム頂角を持つ各導光板により比較したところ,顕著な差で100°が優位であった(照明光の利用効率を向上できた)ことから,本件特許Hの特許請求の範囲の補正時における頂角範囲を100°を中心とする「90度より大きく,110度以下」と設定したものである(この「90度より大きく110度以下」であることが実質的な技術優位性に結びつくからこそ,被告は,「90度より大きく110度以下」とする特許請求の範囲の補正をし,特許を受けたのである(甲54,71,乙25)。
b
本件特許C及び同Dについて

本件発明C及び同Dは,「PSP-LGP」において,発光面品位と輝度優位性を両立させる溝(1対の斜面)形状に関する発明であり,導光板のプリズム溝(1対の斜面)の形状が入射面に近づくに従って円弧断面形状に徐々に変化することを内容とする。原告は,「いわゆる映り込みが客先から指摘されており安定生産・拡販の妨げになっている」ことに対し,「溝が円弧断面形状になることにより映り込みが緩和される」こと,及び,「CCFT(ColdCathodeFluorescentTube〔冷陰極管〕)近傍のみの処理が好ましい」ことを見出し(甲52⑤),かつその溝(1対の斜面)
の形状を具現化するための金型加工法・成形法についても自ら開発した。

本件特許B,同E,同F及び同Gについて

本件発明B,同E,同F及び同Gは,いずれも輝度分布の均一化及びプリズムシートの密着防止用として「PSP-LGP」の出射面側に設けられた「微細ドットパターンシボ+マイクロピット処理(微細な凹凸加工〔シボ加工〕や窪みを施した加工方法)」に関する発明である。原告が開発を行った「微細ドットパターンシボ+マイクロピット処理」により,導光板反射面(裏面)にV溝形成が可能となり,高輝度かつ高品位な「PSP-LGP」が具現化することとなった。「PSP-LGP」は,画面品位の優位性からノートパソコンのハイエンドモデルに搭載され,平成16年頃の搭載初期に圧倒的な市場シェアと高い売上高を誇った要因として,上記開発の存在もあげられる。

被告は,本件発明Bないし同Gにつき,本件特許Bないし同Gの各出願前の
周知技術と比較して,技術的優位性がない旨主張するが,既に特許査定を受け,登録されているこれら特許のいかなる部分についてどのような技術内容が開示されていたというのか,明らかでない。
(エ)本件発明Bないし同Hには,事実上,代替技術が存在しない。被告が「PSP-LGP」の代替技術として挙げる各方式に係る製品が実際に一定のシェアで販売されていたとの事実はない。特に,Ⅴカット導光板を販売する主要3メーカーのうちの油化電子株式会社は,導光板につき外販せず,全て自社で消化しており(甲76),「PSP-LGP」の競合品であったということはできない。
(オ)光散乱導光材料は,「PSP-LGP」の売上増加に寄与していない。被告が製造する光散乱導光材料(被告が実施許諾を得ているという特許に係るもの)を使用する光散乱導光板であっても,Vカット溝を有しない製品の売上は極めて少なかったことから,同製品の生産を終了し,Vカット溝を有する「PSP-LGP」の製造が開始され,16億円超の売上を記録するようになったもので,光散乱導光材料の存在と「PSP-LGP」の売上の増加との間に因果関係はない。そ
もそも,被告も,「ノートPC用導光板のシェア拡大及び需要急伸」,「売上過去最高記録を更新」の要因を光散乱材料に求めていなかった(甲19,20,51)。ウ
仮想実施料率について

(ア)B~H実施品についての仮想実施料率は,別紙7「原告主張の要旨」の下段の該当行の「3

仮想実施料率」欄記載のとおりとすべきである(なお,下記(イ)の
事情などから被告の主張は当たらない。)。
(イ)被告の平成25年度第1四半期の四半期報告書(甲31)によれば,「PSP-LGP」の利益率が58パーセントにも及んでいるのであるから,5パーセントを下回るような実施料率で実施許諾するとは想定できない。
(3)被告の貢献度について

本件発明Bないし同Hについての被告の貢献度は,
別紙7
「原告主張の要旨」

の下段の該当行の「4

被告の貢献度」欄記載のとおりとすべきである(下記イな

いしエの事情などに基づく。)。

原告が被告から提示された開発内容は,
「散乱材料を用いた導光体の量産化」

というものにすぎず,本件発明Bないし同Hの具体的アイデアに関する被告からの指示や示唆はなかった。当時,被告において,既に散乱導光体の開発自体は行われていたものの,
被告が保有する技術内容は,
従来製品に比べて顕著な優位性はなく,
市場に十分受け入れられていない状況であった。

原告は,次のとおり,「PSP-LGP」の量産化対応技術にも貢献してい
る。すなわち,原告は,まず,「PSP-LGP」の設計(原告の単独発明である本件発明H)及びこの構成に含まれる「プリズムシート」の設計(被告の保有する特許第4011287号に係る発明)を単独で行った。
加えて,原告は,量産金型加工技術のうち,出射面の金型(微細ドットパターンシボ+マイクロピット処理
〔微細な凹凸加工
(シボ加工)
や窪みを施した加工方法〕

及びこれを量産するための加工機の開発に関与し,本件発明B,同E,同F及び同Gを具現化させた。

さらに,原告は,量産金型加工技術の溝面のマザー金型及びこれを量産するための加工機の開発に関与し,本件発明C及び同Dを具現化させており,量産化全般に関与した。
原告は,
量産金型加工技術の電鋳
(電気めっきによる金属製品の製造または複製)
溝駒作製には関与していないものの,この製作工程は,原告が関与した上記マザー金型に対して従来からCD等の光ディスク製造に用いられてきた技術(スタンパー技術〔金型製造技術〕)を用いてこれを複製するものにすぎない。しかも,スタンパー技術については,株式会社クラレから提供されたものである。また,電鋳溝駒作製に関する技術は当時,公知の技術であった(甲106,107)。よって,原告が電鋳溝駒作製に関与していないことのみを根拠に,「量産化対応技術に関与していない」とすることは不当である。

原告が本件発明Bないし同Hに関する開発をするに当たり,被告において新
規に導入した設備はなく,原告は,他の開発テーマで用いた汎用品(射出成形機,精密旋盤,成形金型)により試作が行った。原告は,試作業務のうち,導光板金型精密加工の約3分の2の開発を担当し,この光学設計についても,汎用ソフトウェア(マイクロソフト社のExcel)を使用したことから研究開発費は最小限であった。

以上のとおり,量産化における被告の貢献度を認めるべきでなく,本件発明
Bないし同Hについての被告の貢献度は,95パーセントを超えるものではない。(4)共同発明者間における原告の貢献度について

本件発明D,
同E及び同Fについての共同発明者間における原告の貢献度
(寄

与割合)は,別紙7「原告主張の要旨」の下段の該当行の「5

共同発明者間にお

ける原告の貢献度」欄記載のとおりとすべきである(下記イないしカの事情などに基づく。なお,本件発明B,同C,同G及び同Hは,原告の単独発明であり,共同発明者間における原告の貢献度は問題とならない〔なお,同別紙では,便宜上,100%としてある。〕。)。


原告は,本件発明Bないし同Hについて,導光体の開発当初から溝面の配置
面(ことに角度)や頂角等各種構成について計算し,導光板の裏面に溝を配置する前提で最適解を見いだし,
「工業所有権出願依頼書」や「出願提案検討依頼書」
(乙
14の3ないし9)を被告に提出した。
原告は,PSP散乱導光体の開発過程において設計を担当し,また,PSP散乱導光体の発光面側の処理(金型加工)開発も担当していた。被告が製造する導光板の大部分において本件発明C及び同Dが使用され,原告が開発を行った「PSP-LGP」にも,その発光面側及び反射面側の金型加工技術が必要不可欠であった。したがって,「PSP-LGP」の製品化については原告の関与が大きく,本件発明D,同E,同Fに対する共同発明者間の原告の貢献度は,少なくとも頭割り以下となることはない。

原告は,被告から,平成11年及び平成14年に「横田技術開発振興基金」
において,2度にわたり表彰されており(甲55),表彰の理由が「LED光源用高効率小型導光板の開発」,「高精度とシンプル化に対する市場要求に応えた業界初の革新的PSP散乱LGPの開発」であり,同時期に他のバックライト関連の技術者が選定されていないことからみても,本件発明Bないし同Hにかかる技術開発に対する原告の寄与が大きかったことを被告は認めていたものである。エ
被告のバックライト開発グループに所属していたAⅶ
(以下
「Aⅶ」
という。


が検討したという「溝付き導光板+下凸プリズムシート」の内容は,既に公知であった(甲56,57)。
また,特許管理部のAⅴが導光板の裏面にプリズム溝を形成する着想をしたとする内容は,開発経緯の概要(甲54)に記載がなく,同様の効果が得られることを着想したという点については,本件特許Hの出願前に公知であった(甲70)ことから,Aⅴの着想ということはできない。
以上のほか,本件発明Bないし同Hについて,そもそも共同発明者ではないAⅶ及びAⅴが関与したとの被告主張は,認められない。

【被告の主張】
(1)独占の利益の額について

超過売上率について

(ア)超過売上率に関する原告主張のうち,
以下の被告主張に反する部分は,
争う。
(イ)B~H実施品の売上げに対する本件発明Bないし同Hの寄与は,超過売上高の割合とは別に,算定されるべきである。
この点,原告は,超過売上率(判決注:原告の主張書面では,「発明寄与率」,「超過利益の割合」及び「他社実施の禁止割合」という表現が互いに同じ内容のものとして用いられている〔平成26年6月6日付け第2準備書面3頁参照〕。)を,本件発明Bないし同Hにおける「発明寄与率」(すなわち,B~H実施品に占める本件発明Bないし同Hの割合)と,
「超過利益の割合」
(「他社実施の禁止割合」,
すなわち仮に第三者が実施許諾を受けた場合に被告が失うであろう売上げの割合)の合計であると理解するようであるが,発明実施品の売上げに対する各発明の寄与と,超過利益の割合(正確には,超過売上高の割合)は,それぞれ個別的な算定がされるべき事項である。
すなわち,原告の主張によれば,「PSP-LGP」の売上高のうち,少なくとも86億4505万1881円(本件発明Bないし同Hに係る相当の対価を算定する上で共通する売上高の範囲)については,その90パーセントが超過売上高であることになり,特許法35条1項所定の法定通常実施権の行使による売上高の割合が10パーセントでしかないことになるが,
このような算定に合理性がないことは,
論を俟たない。
(ウ)超過売上高は,存在しない。
本件発明Bないし同Hは,それぞれ平成9年から平成11年に発明され,これらに基づく特許出願がされたところ,平成14年頃までに被告において実施されていた生産方法によっては,受注数量に生産数が追い付かず,市場参入への足踏みが続いた。

平成16年ないし平成17年に市場シェアが拡大したが,これは,従前の生産方法から電鋳溝駒の作製工程を被告独自に開発した方法へ変更したことが奏功したものである。すなわち,被告では,平成14年下期におけるプロジェクトとして,「P
SP-LGP」供給量向上のための検討を開始し(原告は,このプロジェクトメンバーに含まれていない。),従来の溝駒加工機による溝駒加工(金型に組み込む駒に溝を直接加工する方法)では,●(省略)●に工程を変更することにより,「PSP-LGP」の量産化対応技術を確立するに至り,平成17年をピークとして受注数の急増に成功したものである。しかし,その後,使用材料の価格差によって被告製品の方が割高となったこと,競合企業による市場参入の拡大により,「PSP-LGP」の市場シェアは平成17年をピークに衰退の一途をたどり,平成20年以降はわずかな生産量しかなく,遂に平成23年3月には生産終了に至った。したがって,被告が「PSP-LGP」について相当の売上高を得て,相応の市場シェアを獲得していたとしても,それは被告の保有する技術力,殊に量産化対応技術等,及び営業力が寄与したもので,本件特許Bないし同Hによる独占の効果によるものではないから,超過売上げは存在しない。
(エ)本件発明Bないし同Hの技術優位性は,存在しない。
本件発明Bないし同Hは,周知技術との顕著な相違は認められず,従来技術と比較して市場における競合企業の参入を困難とするような技術的優位性があるとまでは認められない。
原告が基本特許であるとする本件特許Hは,4回の拒絶理由通知を受け,特許請求の範囲の補正後,特許された。補正前の発明(便宜上,特許請求の範囲の請求項1を念頭に議論する。)の構成は,特開平9-61631号公報(甲70。以下「甲70公報」という。)に全て開示されており,特許性が認められなかったことから,「前記光制御部材は,前記1対の斜面のうちの,前記端面に相対的に近い側の斜面により前記板状部材から出射される照明光を透過して内部に導き入れ,前記端面に相対的に遠い側の斜面により反射して出射し」との構成(以下「本件発明Hの構成
②」という。),及び本件発明Hの構成①を付加する補正をすることにより,特許査定に至った(乙25)。
しかしながら,本件発明Hの構成②は,甲70公報のほか,特開平8-262441号公報(乙16。以下「乙16公報」という。)に開示されている。また,甲70公報には,本件発明Hの構成①の角度範囲の記載はないが,「頂角90°のVノッチ条」(【0063】)と記載がある。本件特許Hの明細書等では,50度から130度の角度範囲であれば所期の効果が期待できることを明らかにしているにもかかわらず,本件発明Hは,上記角度範囲の一部である「90度より大きく,110度以下」の範囲のみを技術的範囲とするものであるから,甲70公報記載の発明と顕著な相違はなく,独占の効果は認め得ない。
(オ)単に電鋳溝駒作製に関する技術が公知であったということをもって,「PSP-LGP」の「量産化促進」の要因とは関連性がないという帰結にはならない。被告において,電鋳溝駒作製に関する技術は,生産方法の変更前から検討されていたが,当該技術のみでは,様々なサイズの導光板用電鋳溝駒を短い納期で準備することや,
電鋳溝駒の耐久性を考慮してバックアップ駒を準備しておくことができず,高いシェアを獲得することは不可能であった。生産方法の変更とは,被告の成形加工技術及び金型成型技術に基づいて被告が独自に開発した●(省略)●への変更であり,電鋳溝駒作製に関する技術が公知であったというだけで生産方法の変更が実現したというものではない。少なくとも,かかる新たな生産方法の検討及び確立において,本件特許Bないし同Hの発明は無関係であり,また,原告が生産方法の変更に一切関与していないことは明らかである。
(カ)代替技術ないし競合品が存在する。
「PSP-LGP」は,導光板とプリズムシートを使用した導光式液晶用バックライトであり,従来の導光式液晶用バックライトは,導光板とプリズムシート2枚を基本的な構成とし,その後,高価なプリズムシートの削減により低コスト化を実現するため,「PSP-LGP」のような高輝度かつプリズムシート1枚の構成が
開発された。すなわち,本件発明Bないし同Hにより,従来は計3枚のシートが必要であったのに対して,プリズムシート1枚のみにより導光体を製造することが可能となり,バックライトユニットの薄型化と省電力化が可能となり,メーカーにとって性能面での向上はもとより大幅なコストの低減が可能となった。もっとも,この導光板とプリズムシート1枚を構成とする液晶用バックライトは,被告のみが独自開発したものではなく,複数の競合企業においても同時期に,開発及び製造販売されていた。
被告による「PSP-LGP」の販売当時,複数の競合企業がこれと同等の「導光板+プリズムシート1枚」を基本的構成とする液晶用バックライトを開発,製造販売していた(乙15〔305頁以下〕)。したがって,「導光板+プリズムシート1枚」を基本的構成とするバックライトについて,「PSP-LGP」の代替技術(本件発明Bないし同Hの代替技術)が存在したことは自明であり,本件特許Bないし同Hの存在は,競合企業を排除するものではなかった。
(キ)「PSP-LGP」は,光散乱導光材料なる特殊部材を使用した導光板であり,被告は,後述のとおり,第三者から光散乱導光材料に関する特許権の実施許諾を得て「PSP-LGP」を製造販売したものであり,仮に競合企業が被告と同じ「PSP-LGP」を製造販売できなかったという事実があったとしても,それは当該第三者からの実施許諾の有無に基づく結果にすぎない。
原告が主張するように,光散乱材料が品位向上に効果がないと結論付けるには,「Vカット(溝)を設けない透明アクリル導光板」と「Vカット(溝)を設けない光散乱導光板」を比較対象とする必要があることはもちろん,これら2種類の導光板が同等の性能であるか,透明アクリル導光板の方が優れていることを証明しなければならないところ,原告は,これを行うことなく,「Vカット(溝)を設けない光散乱導光板の顧客評価が低かった」からという理由で,「PSP-LGP」の技術優位性が本件発明Bないし同Hによると主張するものであるが,そこには論理の飛躍がある。


仮想実施料率について

(ア)仮想実施料に関する原告主張のうち,
以下の被告主張に反する部分は,
争う。
(イ)ライセンシーが負担する実施許諾料が特許発明の実施によって得られる利益を上回ることになれば,
特許発明の実施許諾を受けるメリットは乏しく,
この点で,
利益率と実施料率は一定の関連性を有するものの,あくまでも利益率は仮想実施料率を定めるに当たって斟酌される事情の一つにすぎない。仮に,実施料率を算定するとなれば,「電子・通信用部品」として,せいぜい1パーセントから2パーセントというのが当業界の常識であり,これを上回るとする特段の事情はない。(2)被告の貢献度について

被告の貢献度に関する原告主張のうち,以下の被告主張に反する部分は,争
う。

「PSP-LGP」は,光散乱導光材料を使用した導光板であるところ,被
告は,光散乱導光材料に関する特許第3162398号(乙28)の実施許諾を受けて,「PSP-LGP」を製造販売していた。競合企業は,同特許の実施許諾を受けていないことから,同特許の独占の効果により,被告は,「PSP-LGP」の売上を伸ばすことに成功した。

「PSP-LGP」の製品化に関し,原告は,製品設計及び溝駒加工技術に
関与したが,量産化対応技術には関与していない。
被告は,平成9年3月,「PSP-LGP」に関する本件特許Hを出願し,金型加工技術の開発にも着手したが,溝駒製作に相当期間の納期を要することから,顧客の納品要求に対応できない状況が継続していたため,平成14年下期におけるプロジェクトとして,「PSP-LGP」供給量向上のための検討を開始したが,原告は,このプロジェクトメンバーに含まれていない。
「PSP-LGP」の金型作製における律速段階は,溝駒加工機による溝駒加工であったが,金型に組み込む駒に溝を直接加工する方法では,●(省略)●。これに対し,●(省略)●することにより,「PSP-LGP」の量産化対応技術を確
立するに至り,平成17年をピークに,受注数の急増に成功した。被告は,「PSP-LGP」の溝面マスター駒の製作を大幅に短納期化するとともに,マスター駒自体の大量生産を可能な仕組みにした。
したがって,被告の貢献度は,95パーセントを優に上回るものである。(3)共同発明者間における原告の貢献度について

共同発明者間における原告の貢献度に関する原告主張のうち,以下の被告主
張に反する部分は,争う。

被告においては,平成6年頃から,「高輝度導光式バックライトの開発」と
いうテーマで,光散乱導光体を用いた導光式バックライトの研究開発がバックライト開発グループにて行われていた。その研究開発過程において,「光散乱導光板+両面プリズムシート」という基本コンセプトのもと,両面プリズムシートの製作が検討され,シートではなく薄板状の両面プリズム体の検討がされていた。しかし,射出成型により両面にプリズム形状を有するプリズム体を製作することに困難性があったことから,片面だけにプリズム形状を有するプリズム体を製作し,射出成形によって得られるプリズム体を用いた高輝度導光式バックライトが検討された。他方,「光散乱導光板+両面プリズムシート」については,平成4年頃から平行光束出射バックライト開発構想に関連して,プリズムシートレース構想が被告内で提起されており,平成6年にはプリズムシートの代わりとなる溝付き導光板を試作して評価,検証が行われ,プリズム頂角の最適化,発光面に使用する光制御用シートの最適構成等の検討が進められていた。
Aⅶは,平成8年頃には,製作した片面プリズム体そのものに集光効果があり高輝度導光板として使用できる可能性を発見したが,その頃異動となったため,Aⅶが着想したプリズム溝付き導光板の検討は,原告に引き継がれた。原告からは,当初,「導光板表面にプリズム溝を形成」するという発明届出がされ,平成9年3月14日に特許出願(特願平9-82192号)されたものの,拒絶審決がされ,権利化に至らなかった。この際,被告の特許管理部に所属していた
Aⅴは,原告の説明を踏まえれば,原理的には導光板裏面にプリズム溝を形成する構造でも同様の効果が得られるのではないかと着想し,原告に尋ねたところ,原告は,「たぶんそれもありですね。」と答えた。そこで,Aⅴが,原告に対し,その点も発明届出するよう助言したところ,「導光板の裏面にプリズム溝を形成する発明」,すなわち,本件発明Hにつき改めて届出がされ,同月27日に本件特許Hの出願がされたものである。
以上のとおり,本件発明Bないし同Hにつき原告が果たした役割は不明であり,少なくとも,本件発明Hにおける導光板裏面にプリズム溝を形成し,導光板に集光機能を持たせるという技術的思想の特徴的部分は,Aⅶ及びAⅴの着想である。第4
1
当裁判所の判断
相当の対価の算定方法について

(1)特許法35条3項によれば,従業者等は職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ,又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対価の支払を受ける権利を有するものとされ,同条4項によれば,その対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならないものとされている。そして,当事者間に特段の合意等がない限り,相当の対価の請求権は,特許権を受ける権利若しくは特許権の承継又は専用実施権の設定(以下,これらを併せて「承継等」という。)の効力が生じた時に発生し,相当の対価の額は,その時点における客観的に相当な額(期待値)をいうものと解するのが相当である。しかしながら,その算定に当たっては,承継等の効力が生じた時より後に生じた事情,例えば,特許権の設定登録がされたか否か,当該発明の実施又は実施許諾によって使用者等が利益を受けたか否か,利益を受けた場合のその額,使用者等がその利益を受けるについて貢献した程度等は,上記時点における客観的に相当な対価の額を認定するための資料とすることができると解するのが,相当である(なお,被告規定等に基づく登録時奨励金や実施褒賞金の支払に際しても,これらの事情が
参酌されているところである。)。
(2)本件のように,使用者等(被告)が従業者等(原告)から職務発明について特許を受ける権利(又はその持分)を承継して,特許を保有するに至り,かつ,当該特許について第三者に実施許諾せず,当該発明を自己実施している場合,相当の対価は,次のように算定するのが相当である。


当該発明の実施品の期間売上高(当該特許権の存続期間満了までの予測値を
含む。)に,超過売上率及び仮想実施料率(当該実施品に複数の特許が使用されているときは,超過売上率,仮想実施料率及び特許寄与率)を乗じて,独占の利益(当該発明により使用者が受けるべき利益)の額を求める(ただし,相当の対価の支払時期を基準として中間利息を控除すべきである。)。


上記①により求められる独占の利益の額に,使用者等(被告)の貢献度(こ
れには,その発明により利益を受けるについて貢献した程度も含まれると解するのが相当である。)に応じた額を控除して(すなわち,発明者〔共同発明の場合は,共同発明者全員〕の貢献度を乗じて),発明者(共同発明の場合は,共同発明者全員)に支払われるべき相当の対価の額を求める。


当該発明が共同発明の場合は,上記②により求められる額に,共同発明者間
における原告の貢献度を乗じて,原告に支払われるべき相当の対価の額を求める。2
争点1(本件発明Aに係る相当の対価の額)について

(1)認定事実
前記前提事実のほか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

特許Aの登録に至る経緯

(ア)特許Aの出願までの経緯

研究所開発部の部長であったAⅱは,平成15年3月頃,●(省略)●(な
お,原告は,甲37号証②が同月に初めてバックライト用レンズの研究開発が開始されたことを示すものであるとするが,上述のとおり,それ以前に,被告における
LED直射式によるバックライト用●(省略)●の研究開発が行われていたものと認められる。)(乙1ないし3,5,6)。

その後,LED直射式による効率的な「点光源の面光源化」の検討を行うこ
とによる液晶テレビ用バックライトの開発をテーマとする研究開発が新規で企画され,平成15年10月9日以降,リーダーとなる原告のほか,Aⅳ及びAⅵの2名が研究班に携わることになった。同班においては,平成16年3月22日までの成果として,●(省略)●が掲げられた。原告は,主に「AutoCADLT」というソフトにより作図をして研究開発に従事し,Aⅳは,「LightTools」を用いて,直射LED
B/L(LED被覆レンズ方式)の研究開発に従事しており,原告とAⅳは,
同じ研究班のメンバーではあったものの,それぞれが独自のテーマで研究開発に従事していた(甲66,68,100,乙7,8,原告本人)。
そして,平成16年4月以降は,Aⅳがリーダーとなり,液晶テレビ向けLED光源の開発とともに,バックライト直射光学部材の開発が続けられた。Aⅳは「LEDチップを直接封止する樹脂封止の表面をレンズ形状とする構成の光学素子」の開発に引き続き従事し,原告は,「板状透明部材の下面(LED側の面)を凹面とする光学部材」(板状レンズ)の開発に従事するようになった。Aⅳは,同年6月2日には,「LightTools」を用いて,中央部が凹んだキャップ形状における光の出射状況のシミュレーションを行い,同月30日に行われた社内説明会において,●(省略)●テーマについて「LCD-TV用直射式LED平面光源の開発」の報告を行い,広角配光部材の開発としてレンズ形状の部材についての検討結果や,今後の予定として,配向制御部材として中央部が凹んだキャップ形状の作成を検討していることなどを報告した(乙45)。
一方,原告は,同説明会における同テーマにおいて,「レンズ板方式の報告」と題し,レンズ板方式の研究成果について報告を行った。
(イ)A関連特許②の出願
原告は,上記の板状レンズの開発に関する発明として,A関連発明②をした。原
告から特許を受ける権利を承継した被告は,平成16年7月16日,A関連特許②の出願をした。
(ウ)特許Aの出願
特許A出願依頼書
(乙14の1)
は,
同依頼書に添付された図面や表などを含め,
概ね原告により,平成16年6月9日に作成された。特許A出願依頼書の「発明者記載欄」の「発明者」の項目には,「1Aⅳ,2Aⅰ」の順序で記載され,「発明者の持分比率(*均等の場合は記入不要)」の項目には何も記載されていなかった。また,特許A出願依頼書の「技術検討状況」の項目には,「効果確認済み」との記載があり,「発明内容説明書」の項目には,「従来の問題点」として,「直射式バックライトにおいて,光源にLEDを用いた際に発生する輝度ムラ」と,「発明のポイント」には「LEDの樹脂パッケージの表面形状,もしくは,個々のLEDの直上に配置するレンズの表面形状を,θ5/θ1の値が法線方向から離れるに従ってある値(>1)から徐々に小さくなる様に設定する。詳細別紙」と,「効果」として,「輝度ムラの緩和」と記載されていた。
特許Aの明細書等は,
上記の特許出願依頼書をもとに作成されたものであったが,
同明細書等の【図4】(及びその内部形状のみ異なる【図7】)はAⅳが作成したものを使用した。(以上につき,乙14の1,原告本人)
(エ)特許Aの審査経過
特許Aの出願後,特許A拒絶理由通知(乙39)が発送されたが,その内容は,出願に係る発明は,実願昭63-131573号(実開平2-52463号)のマイクロフィルム(乙42)に記載された発明(以下「乙42発明」という。)及び実願昭59-147856号
(実開昭61-63712号)
のマイクロフィルム
(乙
43)に記載された発明(以下「乙43発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,
特許を受けることができないというものであった。
被告は,特許A拒絶理由通知を受けて,特許請求の範囲を補正した上(別紙1「本件特許目録」記載1の「特許請求の範囲」欄の下線部分は,補正箇所を示す。),
平成18年7月28日付け意見書(乙40)により,乙42発明に乙43発明を組み合わせたとしても,発明Aの構成①,同②及び同③を満たすことができない旨主張したところ,特許Aは,特許査定に至った。

特許A出願後の研究開発及び製品開発

Aⅳは,液晶TV向けLED光源の発光制御に関するキャップ形状の光束制御部材に関する研究開発のリーダーとして研究開発を続けた。平成16年10月1日付け「2004年度上期研究テーマ中間報告書」(乙10)では,得られた成果として,●(省略)●などと報告された。なお,同日までの間に,LED封止形状に係る特許出願(特願2004-278888)やA関連特許②の出願が行われた。その後も,上記開発は,Aⅳをリーダーとして継続されたが,平成17年3月23日付け「2004年度下期研究テーマ完了報告書」
(乙12)では,成果として,
●(省略)●などが報告された。(以上につき,本文中に掲記したもののほか,甲83,乙9,11,14の2,44ないし47)

「LE-Cap」の量産化に至る経緯

(ア)LED直射式バックライト用の光拡散レンズは,液晶メーカー等主要顧客に対する納入数量が万単位と莫大な数量となり,高品質かつ廉価で安定的な供給が可能でなければ,市場への参入は不可能であるところ,被告は,主力の自動車や産業機械向け製品で培った成形加工技術,超高精度の金型製作技術,精密プラスチック製品製造技術,量産化のための生産技術等を有していたことから,それらの技術を駆使し,「LE-Cap」の量産化を目指した(甲35,36,弁論の全趣旨)。被告は,平成20年8月28日,適時開示情報として,拡散レンズ及びレンズモジュールの開発等に関し,「エンプラス独自の光束制御技術,超精密加工技術を用いた拡散レンズを使用することで,LED光源のみ使用した場合と比べLED光源使用数が約1/3に,従来の蛍光管方式に比べCO2排出量が約60%削減可能となり,地球環境に配慮すると同時に照度分布の均一性を維持した商品となっております。」などと発表した(甲16の1)。

(イ)原告は,●(省略)●などという記載がある。
原告は,●(省略)●などという記載がある。
(ウ)被告は,平成21年11月20日,適時開示情報として,LED光源テレビ用拡散レンズの上市に関し,「当社では,LED(発光ダイオード)光源テレビ用の新システム液晶バックライトに不可欠な,拡散レンズ(LightEnhancerCap)を上市し,量産を開始致しました。」「LEDを採用した液晶テレビは,従来の冷陰極蛍光管(CCFL)の液晶テレビに比べ,画質の性能が高く,省エネというメリットがあるため,
各メーカーがLEDを搭載した薄型テレビの投入を発表しており,今後,市場が急速に拡大していくことが予想されています。」「今回当社が開発したLightEnhancerCap(特許取得済み)は,独自の光束制御技術によって指向性の強いLED光を拡散して照度分布を均一にすることができ,さらにバックライトの大きさ,LED光源の数,配置などもフレキシブルに対応することが可能です。」などと発表した(甲16の3)。
その後,被告は,平成23年3月28日,適時開示情報として,LED光源テレビ用レンズ(広拡散タイプ)の上市に関し,「この度,更に拡散効果を高めたLightEnhancerCap(広拡散タイプ)の開発に成功致しました。」「LEDを採用した液晶テレビは,従来の冷陰極管光管(CCFL)の液晶テレビに比べて画質の性能が高く,省エネというメリットがある為,各メーカーがLEDを搭載した液晶テレビの投入を発表しております。今後,市場が急速に拡大していくことが予想されますが,
液晶テレビ価格は下落傾向にあり,
市場ニーズにあった製品と考えています。

「来期は今期の2倍にあたる販売数を計画しております。」などと発表した(甲16の4)。
(エ)被告は,「LE-Cap」を液晶TVメーカーに採用してもらうため,LEDが配置される基板(電子回路基板)上に「LE-Cap」を実装する具体的な工程を提案したり,
採用のメリットを伝えたりするとともに,
被告独自の梱包方式
(袋
詰め梱包)の採用により,出荷コストの大幅な低減を実現させた(乙34)。
また,被告は,液晶TVメーカーが個々のレンズの良否の判定するための測定方法に関する知見を有していなかったことから,平成23年頃,レンズ測定ソフト及び測定機器を開発し,液晶TVメーカーが検査を容易に実施できるようにした(乙35,弁論の全趣旨)。

「LE-Cap」の代替技術・競合品について

(ア)「LE-Cap」は,主に液晶TV用LED光源を利用したバックライトに用いられるものである。液晶TV用バックライト技術には,LED直射式とLED導光式があるところ,LED直射式は,LEDの数を少なくすることができ,大型の液晶画面にも対応することができ,最終製品の低コスト化に結び付くというメリットを有するものの,薄型化することについては,LED導光式よりも劣り,金型製作が必要であるというデメリットがある(逆に,LED導光式は,薄型化することについてはメリットが大きく,
携帯電話などの小さな液晶画面への対応に向く。。

LED直射式は,①「レンズ無し」のタイプ(LEDを敷き詰める。),②「封止樹脂レンズ」のタイプ(LEDとレンズを一体とする。),③「レンズ使用」のタイプ(LEDとは別体の光拡散レンズを用いる。)に大別される(前記前提事実(2)ウの説明図参照)ところ,上記①のタイプは,バックライトの製造工程が簡素化されること,細かなエリア制御が可能であること,発光効率の高い低電流域でLEDを駆動するので,消費電力が少なく発熱も小さいこと,色ムラと輝度ムラが少なく,LEDの輝度,色調のバラツキが平均化されるので,選別が不要であること,冷却システムが簡便なものでよいことなどを長所とする反面,使用するLEDの数が増え,コストが増えるという短所があり,上記②のタイプは,LED直射式に適しており,レンズとLEDとの一体化により製造工程が比較的簡素化され,LED数をある程度までは削減できるが,上記③のタイプほどには削減することはできない。上記③のタイプは,レンズの光学機能に,
「全反射レンズ」を用いるものと「屈
折レンズ」を用いるもの分類され,このうちの後者のレンズについては,出射面形状が「凹面あり」のもの(「LE-Cap」など)と「凹面なし」のものなどに分
類されるところ,上記②のタイプに比してLED数の大幅な削減が可能であり,中でも「全反射レンズ」を用いるものは,「屈折レンズ」を用いるものよりも,薄型化するには有利であるが,実装工程において高い精度が求められ,製造コストが嵩むため,コスト面では「屈折レンズ」を用いるものが優位である。そして,LED直射式用のレンズという限定された市場を想定するならば,「封止樹脂レンズ」や「全反射レンズ」に分類され,かつ,販売実績があるものは,ほとんどなく,被告の製造販売に係る「LE-Cap」が顕著に優位である。(以上につき,甲17,乙27,原告本人)
(イ)LEDバックライトを使用した液晶テレビ市場において,LED直射式を採用する製品のシェアは,平成23年度には1パーセントにすぎなかったが,平成24年度には13パーセント,平成25年度には35パーセント,平成26年度には46パーセントを占めるに至った(乙33)。
(ウ)富士キメラ総研の「2013

LED関連市場総調査(下巻)」(甲34)

では,LED拡散レンズの市場に参入しているメーカーとして,被告の関連会社であるエンプラスディスプレイデバイスのほか,シチズン電子,LEDIL,LEDLINK,コニカミノルタオプト,KISCO,オハラ,小松ライト製作所が挙げられているものの,「BLU(判決注:バックライトユニット)/看板用では,エンプラスディスプレイデバイスが95%以上のシェアを占め市場を独占している。これは,同社が拡散レンズのパテントを有しているためである。」などとされている。
富士キメラ総研の「2014

LED関連市場総調査(下巻)」
(甲59)でも,

LED拡散レンズの市場に参入しているメーカーとして,上記8社が挙げられているものの,「LCDバックライト(BLU)/看板用では,拡散レンズのパテントを有するエンプラスディスプレイデバイスが95%以上のシェアを占めており,独占市場となっている。」などとされている。
富士キメラ総研の「2015

LED関連市場総調査」(甲78)では,「主要

アプリケーションの市場展望」の「バックライト向けLEDパッケージの動向」の「バックライト向け白色LEDパッケージ市場規模推移・予測
(出荷数量ベース)

につき,「大型サイズのTV用バックライトでもローカルディミィングの採用などでエッジ型から直下型への切り替えが進んでいる。そのため,2015年以降はエッジ型向けのLEDパッケージ搭載数量は減少し,直下型の数量が増えていくとみられる。」などと,「TV用LCD」の「ワールドワイド市場動向」の「市場概況」につき,「バックライトのLED製品率はLEDの低価格化と搭載数量の削減により,2014年は96.2%となった。光源価格では,旧来の蛍光管価格とほぼ同等か下回ってきており,2015年にLED化が100%となる見込みである。」「エッジライト型は,薄型などのプレミアムが要求される46in以上を中心に採用されている。しかしながら,4Kを中心とするハイエンド機種に関しては薄型よりもローカルディミィングなどの画質を重視する傾向が強まっており,2015年は直下型を採用する傾向が強まっている。」などと,「TV用LCD」の「LEDパッケージワールドワイド市場動向」の「市場概況」につき,「直下型のLEDには拡散レンズを付けるケースが多い。」「LEDの搭載数量を減少させるために,より高出力の2W近いLEDの採用が2014下期より始まった。・・・価格を安くするために拡散レンズを付けず,シリコーン封止材レンズを主に採用している。しかし,バックライトの薄型化が犠牲になってしまう点や,TVメーカーによって採用基板の耐熱温度基準が異なるため,
一部の低価格モデルへの採用が中心であり,
主流には至らないと予測している。」「近年はLEDの高出力化に加え直下型が増加しているため,サイズアップが進んでいるものの平均搭載数量の減少が進んでいる。」などと,「拡散レンズ」の「ワールドワイド市場動向」の「市場概況」につき,「当該製品市場は,2014年ワールドワイド数量ベースで前年比4.1%増の約77億6,300万個となった。」「当外製品の大口用途先の一つであるTV用LCDバックライト市場の低迷で,市場の伸びは低かった。今後は,照明市場での使用を広めることで,さらなる市場の伸びをもくろんでいる。」などと,「拡散
レンズ」の「メーカーシェア」につき,「2014年はエンプラスディスプレイデバイスがトップであり,シェア80.7%を占めた。同社はバックライトユニット向けが中心であるが,2015年から照明市場に本格参入する計画であり今後さらに出荷量の伸びが期待される。」などと,「拡散レンズ」の「用途別ウェイト」につき,「2014年ではバックライト向けが全体の約80%を占めた。その大部分はエンプラスディスプレイデバイスの製品である。しかし,今後大きな市場の増加は期待できない。」などとされている。
(エ)日本経済新聞の平成25年3月25日付け記事(甲36)では,「量産機種では画期的な薄型化を可能にしたのが,精密樹脂加工のエンプラスの技術だ,同社の特殊レンズをバックライトに組み込むと構造を簡素化でき,発光ダイオード(LED)の数も減らせる。自動車や産業機械向けの樹脂製ギア製造で培った金型の成形技術を生かした。世界シェアは100%だ。」「特許の塊であるレンズ技術を確立したのが2008年ごろ。10年にはシャープが採用したが,技術の真価に気付いたのはサムスンだった。1台のテレビに60~70個のレンズを使うため,現在は月産数億個の体制を敷いている。」などとされている。
日本経済新聞の平成25年9月10日付け記事(甲35)では,「韓国・サムスン電子を取引相手に液晶テレビ部品で利益を急増させている企業がある。バックライトに組み込む特殊レンズを手掛けるエンプラスだ。」「自動車や産業機械向けの樹脂製ギアで培った製造技術を生かした。LED向け光拡散レンズの世界シェアは100%。量産技術を確立しているうえ,特許も取得済みで,競合相手が現れるリスクは低いという。価格交渉でも優位に立っており,サムスンに対しても販売価格の引き上げを求めているようだ。
同レンズを含むオプト事業の売上高営業利益率は,
13年4~6月期で58%に達する。」「液晶テレビのバックライトは以前は蛍光管が主流だったが,09年頃からLEDが普及し始め,12年には9割超を占めるようになった。みずほ証券によれば,液晶テレビのうち光拡散レンズが組み込まれているのは12年で全体の28%,13年は46%に高まり,16年には70%に
まで高まる見通しという。」などとされている。
(オ)Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社の平成26年4月15日発行「メカトロニクス5月号」(甲75)では,「直下型(ダイレクト)照明装置」のうち「直射レンズによる直下型照明方式」につき,「発光素子の真上をレンズで被覆して液晶表示板の裏面に重塁されている拡散板を照射する方式は,現在においてバックライトの本命の構造である。」,「画像表示の発展に伴って突如に現れたのは,発光素子に密着させて被覆する直射レンズ。以降,生産市場ではこの特許権が席巻するようになった。」などとされるとともに,「直射型レンズを用いた直下照明方式」
に関する4件の日本国特許
(特許Aなど被告の保有する特許3件のほか,
三星電子が保有する発明の名称を「発光ダイオード及びそのレンズ」とする特許第5264043号)が紹介され,そのうち三星電子の特許に係る発明のレンズ形状が発明Aのレンズ形状と類似しているが,同特許の出願日は特許Aの公開日と僅差であるから,「レンズ形状が類似しているのは相互に影響し合ったためとは考えられない」などとされている。
(カ)テレビ用バックライトLED対応レンズには,ShanghaiSaipwellElectricCo.,Ltd.,東莞市欧科光電科技有限公司,DarkooOptics(Zhongshan)Co.,Ltd.及びDongguanFutureLightTechnologyCo.,Ltd.の各光拡散レンズがあり,テレビ用ハイパワーCOB(ChipOnBoard)タイプLED対応レンズには,DongguanXiangchiOptoelectronicsTechnologyCo.,Ltd.の光拡散レンズがあり,テレビ用・広告ライトボックス用・パネルライト用バックライトLED対応レンズには,ShenzhenFeiXiangOptoelectronicsCo.,Ltd.の光拡散レンズがあるものの,これらのレンズの販売時期及び販売数量は明らかでなく,また,被告がA実施品の代替品である旨主張していた製品は,既に生産中止となっている(甲79,86,乙51)。
(キ)被告の平成25年3月期第3四半期決算説明会における報告書(甲18)では,①平成27年及び平成28年には,液晶TVの販売に占めるLED光源TVの
割合が100%になると予測されること,②LED光源TVのうち小型(30インチ未満)
ものについては,
LED導光式が平成27年においても90%以上を占め,
大型(30インチ以上)ものについては平成27年にはLED導光式とLED直射式がほぼ半分の割合になるであろうことが予想されている。

被告の業績等

被告の平成25年度第1四半期の四半期報告書(甲31)によれば,被告のオプト事業については,LED光源液晶テレビの中でもコストメリットのある光源直下型タイプの採用が進んだことにより,同事業の主力のLED拡散レンズ(「LE-Cap」を意味するものと思われる。)の販売も増加し,連結売上高は前年同期比223.1パーセント増,営業利益は前年同期比355.9パーセント増となったとされている。
(2)独占の利益の額について

期間売上高について

(ア)A非実施品について

原告は,「LE-Cap」の全てがA実施品であって,A非実施品は存在し
ない旨主張するので,まず,この点について検討する。
(a)原告は,A非実施品が存在しないと推認すべき事情として,秘密保持に関する契約の締結後に被告から被告開示品及びその図面の提供を受けたが,原告の分析によれば,●(省略)●
しかし,以下のとおり,●(省略)●困難である。
原告は,●(省略)●であると主張する。しかし,発明A及び同A’に係る特許請求の範囲の記載(前記前提事実(2)ア,別紙1「本件特許目録」記載1及び同2)によれば,●(省略)●,少なくとも,特許請求の範囲において原告主張のように定義されているとはいえない。
また,原告は,●(省略)●(平成29年2月27日付け第17準備書面〔ただし,同日受付のもの〕2頁ないし5頁,7頁ないし9頁)。しかし,●(省略)●,
本件特許Aの明細書等(乙17,18参照)には見当たらないこと,原告自身の従前の分析(平成28年11月28日付け第15準備書面参照)でも,●(省略)●が採用されていたとは解されないことからすれば,当該手法の採用理由に関する原告主張(液晶TV量産品において「LE-Cap」が搭載される場合,発光素子の光軸と「LE-Cap」の中心とはXY〔縦横〕方向で最大●(省略)●のずれが発生するなどというもの)を踏まえたとしても,あえて●(省略)●という特殊な手法によるべき合理的理由があるとは認め難い。
他方,被告は,●(省略)●と確認できる旨主張しており(平成28年10月11日付け第15準備書面,平成29年2月27日付け第18準備書面),被告が採用した手法(●(省略)●が,本件発明Aに係る特許請求の範囲を含む本件特許Aの明細書等(乙17,18参照)の記載に照らし,不合理であるとはいえない●(省略)●。)。
なお,原告の主張(第17準備書面)によっても,A実施品であることに争いのない製品と被告開示品とは,表面形状の凹み形状部分の広さ,レンズの厚みなどの点に一定の差異があり(同準備書面2頁,6頁),これらが同一の製品ではないことは,優に認められるところである。
そうすると,被告開示品が●(省略)●,A実施品であるとの原告主張は採用することができず,かえって,被告開示品は,●(省略)●と推認するのが相当というべきである。
(b)原告は,A非実施品が存在しないと推認すべき事情として,被告がA非実施品の存在を顧客など外部に通知していないことを指摘する。
しかし,そのような通知は,本件特許Aによる独占の効果が及ばない代替技術の存在を明らかにするものであるから,通常,行われるものではない。したがって,顧客など外部に通知していないことは,A非実施品の不存在を推認させる事情とはいえない。
(c)以上によれば,●(省略)●以降,A非実施品を製造販売していたとの被告
主張が不合理なものであるとはいえず,被告主張に係るA非実施品の売上高の全部又は一部がA実施品の売上高であったと認めることは,困難である。b
原告は,A非実施品が存在するとしても,本件特許Aによる独占の効果が事
実上及んでいるとみるべきであるから,その売上高を相当の対価の算定の基礎とすべきである旨の主張もする。
しかし,前示のとおり,A非実施品は,●(省略)●
また,弁論の全趣旨によれば,発明A’の特徴的部分についても上記と同様の見方が妥当すると考えられる。
そうすると,A非実施品は,本件発明Aの特徴的部分を備えているといえないのであるから,同発明との関係では代替技術と位置付けるのが相当であり,これについて,本件特許Aによる独占の効果が事実上及んでいるとみることは,困難というべきである。
なお,付言するに,原告は,発明Aの構成③(「前記到達点(Px)からの出射光が,前記発光素子から出射される光のうちの前記基準光軸近傍の光を除き,θ5/θ1>1の関係を満足するとともに,このθ5/θ1の値をθ1の増加にしたがって徐々に小さくなる方向に変化させる形状に形成されている,」との構成)を単独で着想したと主張した上,同構成が特徴的部分であり,発明Aの構成②は発明Aの構成③から一義的に導かれ,発明Aの構成①は発明Aの構成③及び同②から一義的に導かれるなどと主張するのであるから,その当否をひとまず措き,これを前提とするならば,●(省略)●
したがって,A非実施品に本件特許Aによる独占の効果が事実上及んでいるとの原告主張も,採用することができない。
(イ)A実施品の売上高について

前記前提事実(4)ア(イ)及び上記(ア)で認定説示したところによれば,平成21

年度から平成26年度(各年度は4月から翌年3月まで)までのA実施品の売上高は,別紙5-1「『LE-Cap』」売上高一覧表の該当行の「A実施品売上高」
欄記載のとおりであり,平成27年4月から同年7月までのA実施品の売上高は,同別紙の「平成27年度(4月~7月)」の行の「A実施品売上高」欄記載のとおりであることが認められる。
平成27年度の残りである同年8月から平成28年3月までの期間の1か月当たりのA実施品の売上高については,平成27年4月から同年7月までの期間の1か月当たりのA実施品の売上高と同程度と見積もることができる(弁論の全趣旨)ので,平成27年度を通じてのA実施品の売上高は,●(省略)●と推認するのが相当である。
平成28年度以降のA実施品の売上高については,液晶TVバックライトの価格が低下する傾向にあること,LED光源自体の性能が向上することによりLED直射式を採用した場合に必要とされる光束制御部材の数量も減少することが予想されること,A実施品のA非実施品による代替が進みつつあるものの,A実施品の製造販売の中止が予定されているわけではないこと,平成26年度から平成27年度にかけてのA実施品の売上高の減少などの諸事情を考慮し,●(省略)●と見積もるのが相当である。

原告は,弁理士Aⅷ(以下「Aⅷ弁理士」という。)作成の鑑定書(甲77。
以下「甲77鑑定」という。)に基づいて縷々主張するが,甲77鑑定は,当事者双方の準備書面や被告の提出に係る書証(特許Aに係る特許公報を除く。)をおよそ参酌することなく作成されたものであり(弁論の全趣旨),少なくとも,Aⅷ弁理士が検討した被告及びA実施品に関する資料が客観性のあるものと認めるには足りず,したがって,同弁理士の意見の前提とされている事実認識自体が適正妥当なものとは認め難いのであり,同弁理士の法的見解の当否にかかわらず,これを採用することは,困難というべきであって,甲77鑑定に基づくA実施品の売上高に関する原告の主張も,採用することができない。

超過売上率について

(ア)被告が本件発明Aを自己実施したことによる超過売上げについて検討するに,
前記(1)の認定事実(とりわけ,「LE-Cap」が開発された当初は,LEDを光源とするバックライトを使用した液晶テレビにおいて,LED直射式を採用する競合企業自体が少なかったものの,大手液晶メーカーにおいて光拡散レンズの採用が決定されたことなどから量産化が検討され,被告の有する技術力が売上に寄与したものであることが認められること,液晶バックライト市場において,導光式と直射式の各シェアはほぼ半分ずつであったものの,そのうちのLED直射式という限定された市場をみる限り,本件発明Aの代替技術といえるようなものはほとんどないかったこと,その後,被告がA非実施品の製造販売をするようになったことなど)を総合考慮し,超過売上率を次の3つの時期に分けて検討する。


開発された当初(平成21年度)から大手液晶メーカーに採用され,量産化
が進んだ時期(平成23年度から平成25年度)(第Ⅰ期)


A非実施品が販売され,A実施品と併用されている時期(平成26年度から
平成30年度)(第Ⅱ期)


技術の陳腐化に加え,LED光源そのものの性能の向上,光拡散レンズの性
能向上などにより光拡散レンズ数の使用数が必然的に減少することが予測される時期(平成31年度から特許期間満了の平成36年3月まで)(第Ⅲ期)第Ⅰ期については,液晶テレビのバックライトにおいてLED光源を利用し,LED直射式を採用するという限定された市場においてではあるが,「LE-Cap」
が●
(省略)
●程度の高い市場占有率を有していたと認められることなどを考慮し,超過売上率を40パーセントとみるのが相当である。
第Ⅱ期については,「LE-Cap」の約半分がA非実施品であり,代替製品が市場シェアの半分を奪ったといえることなどを考慮し,超過売上率を第Ⅰ期の半分の20パーセントとみるのが相当である。
第Ⅲ期については,技術の陳腐化などを考慮し,超過売上率を第Ⅱ期の半分の10パーセントとみるのが相当である。
(イ)この点について,原告は,甲77鑑定などに基づき超過売上率を60パーセ
ントとすべき時期がある旨主張するが,甲77鑑定を採用することができないことは,前示のとおりであるし,営業利益率が50パーセントを超えているからといって,本件特許Aにつき実施許諾を受けた第三者を想定したときに,当該第三者が被告の売上高の6割を超える売上高を当然に獲得することができるとはいい難く,光学性能を計算式で制御する光拡散レンズの製品化や量産化の過程における金型技術等をも考慮すると,原告の上記主張は,採用することができない。原告は,特許IがA実施品の売上に貢献している旨も主張するが,同特許が具体的にどのように売上に貢献したというのか明らかでなく,同主張も,採用することができない(なお,A実施品に特許Iによる独占の効果が事実上及んでいるという趣旨であるとすれば,特許寄与率を考慮すべきことになるから,本件発明Aに係る相当の対価の額それ自体は,むしろ少なくなることになるであろう。)。(ウ)被告は,広く液晶用バックライト技術としては,LED導光式及びLED直射式があり,これらの市場全体として「LE-Cap」の代替製品をとらえるべきである旨主張するが,同じLED光源の液晶バックライトであったとしても,そもそも構造の異なる導光方式と直射方式では,適用できる液晶について向き不向きも異なるため,これらを互いに代替技術ととらえることは相当でない。被告は,超過売上率はさほど高くないとして,縷々主張するが,いずれも前述したところに照らし,採用することができない。

(ア)

仮想実施料率について
仮想実施料率についても,超過売上率と同様の事情を考慮し,第Ⅰ期ないし
第Ⅲ期に分けて検討するのが相当である。
第Ⅰ期については,本件特許Aの内容及び実施料率の相場(前記前提事実(2),別紙1「本件特許目録」記載1及び同2,別紙2-1,別紙2-2)のほか,前記(1)の認定事実(とりわけ,LED直射式のバックライト市場という限定的な市場ではあるが,「LE-Cap」の市場占有率が極めて高いことなど)を総合考慮し,3パーセントとするのが相当である。

また,第Ⅱ期については,上記に加え,A非実施品が販売され,A実施品とほぼ同数を占めるようになっていること(前記前提事実(4)ア(イ),前記ア),光拡散レンズを搭載する液晶テレビ本体の価格は減少傾向にあること等を考慮し,仮想実施料率を第Ⅰ期の3分の1である1パーセントとし,第Ⅲ期については,更に技術の陳腐化等の事情を考慮し,
第Ⅱ期の半分の0.
5パーセントとするのが相当である。
(イ)原告は,仮想実施料率についても,原告は,「LE-Cap」の高い営業利益率からすると25パーセント程度が相当である旨主張する。
しかし,高い営業利益率がそのまま実施料率に反映されると当然にいえるものではないし,そもそも,営業利益率は,製造原価や生産能力等の影響を多分に受けるものである。
原告から提出された証拠(甲97)によっても,高い営業利益率を上げる業種の例であるプラスチック製品について,平均ロイヤルティ料率が3.4パーセントとされるのであり,上記認定説示に係る仮想実施料率が不相当であるとはいえない。かえって,液晶テレビの販売価格が年々減少していく傾向にある中で,液晶テレビの一部品にすぎない発光光源たるLEDに装着する拡散レンズについて,25パーセントもの高率な実施料率を想定することは,コストデメリットが大きすぎるといわざるを得ないところであって(そもそも,拡散レンズを大量に採用するか否かを決める際,コストデメリットが問題となっていたことは,「LE-Cap」の量産化経緯の過程における交渉経緯においてもみられたところである。),相当とはいい難い。
なお,原告の依拠する甲77鑑定を採用できないことは,前示のとおりである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(3)被告の貢献度(共同発明者の貢献度)について
前記認定事実によれば,被告は,原告が研究に従事する前から,
「LE-Cap」
の開発研究をテーマとしていたこと,特許Aの出願後も,Aⅳを中心として研究が続けられていたこと,「LE-Cap」の売上が急激に伸びたのは,特許Aの登録
から5年以上経ってからであり,このことは特許の成立だけでは「LE-Cap」の高い市場占有率を確保できなかったことを裏付けているといえること,より性能の高い製品化や量産化,月産数億個に及ぶ大量の受注を受ける体制が整って初めて売上高が急激に伸びたこと,この点はさらに,量産化の技術や大手液晶メーカーへの営業,被告独自の販売戦略などの点における被告の貢献が大きく寄与しているものとみられることなどが認められ,これらの事情を総合考慮すれば,共同発明者の貢献度は5パーセント
(被告の貢献度を95パーセント)
と認めるのが相当であり,
被告が主張する種々の事情を考慮しても,これを下回るものとは認め難い。(4)共同発明者間における原告の貢献度について

本件発明Aの発明者は,Aⅳ及び原告の2名であるとされているが(前記前
提事実(2)ア,別紙1「本件特許目録」記載1及び同2),原告は,実質的に原告単独の発案を基礎として特許されるに至ったなどとして,共同発明者間における原告の貢献度が80パーセントである旨主張する。
原告の上記主張は,本件発明Aの特徴的部分への創作的貢献は,専ら原告がしたものであって,同発明に対するAⅳと原告の貢献度は,相等しいものではなく,原告の貢献度が圧倒的に大きいという趣旨と解される。
ここで,発明の特徴的部分への創作的貢献とは,当該発明について使用者等が特許を受けるに至っている場合には,その特許請求の範囲に基づいて定められる特許発明の技術的範囲に係る思想の創作への貢献を指すというべきであり,本件各発明の特徴的部分ないし技術思想の着想及びその着想の具体化に対しての貢献の有無及び程度を検討すべきである。

本件発明Aの特徴的部分について

本件特許Aの内容
(前記前提事実(2)ア,
別紙1
「本件特許目録」
記載1及び同2,
別紙2-1,別紙2-2),前記前提事実(1)の認定事実(特許Aの出願経緯等)に鑑みると,発明Aは,光源として用いられる発光装置,複数のLEDを使用する面光源装置及びこの面光源装置を使用する表示装置(並びにこれらに用いられる光束
制御部材)において,各LEDの発光色のばらつきを目立ちにくくし,輝度ムラのない均一な面状照明を可能にするために,1個のLEDを光源として使用するような場合でも,LEDからの光を効率よく,所望の範囲まで滑らかに拡げることができるようにするため,発明Aの構成①,同②及び同③を特徴的部分とするものというべきである。
なお,弁論の全趣旨によれば,発明A’についても,概ね上記と同様にみることができるというべきである。
この点,原告は,発明Aの構成③のみが特徴的部分であると主張するが,上記説示したところに照らし,採用することができない。

発明Aの特徴的部分に対する原告及びAⅳの創作的な貢献について
(ア)発明Aの特徴的部分に対する原告及びAⅳの創作的な貢献について検討するに,前記(1)の認定事実に加え,特許Aの明細書等の内容(別紙2-1)とA関連特許②の明細書等の内容(別紙4-3)とを比較すると,発明の目的(各明細書等の【0012】),課題を解決する手段(各明細書等の【0013】),LEDに対抗するような凹み形状が光束制御部材に形成され,凹み部分はLEDの光軸を中心とする球面状の第1の面と第2の面から形成され,第1の面と第2の面との接続部分が変曲点となるとの構成(A関連特許②の明細書等の【0025】,特許Aの明細書等の【0032】),光束制御部材の光制御出射面から出射する光の出射角等の考え方(A関連特許②の明細書等の【0026】【0027】,特許Aの明細書等の【0033】【0034】)などにおいて,同一又は類似の記述がされ,同一の技術思想が表れていることが認められる。
そして,A関連発明②が原告の単独発明であることは,当事者間に争いがないことに加え,原告の陳述書(甲100)及び本人尋問の結果を踏まえると,A関連発明②と発明Aに共通する発明特定事項については,基本的に,原告が単独で着想したものと認められる。
他方,発明Aの構成①から「変曲点」を除外した部分(キャップ形状)について
は,Aⅳが独自に光束の広がり具合のシミュレーションを繰り返すなどしていたこと,原告自身はキャップ形状の光束制御部材の研究開発には携わっておらず,専ら板状レンズの光束制御部材を利用した出射光の均一化の方向性について検討していたと認められること,特許Aの明細書等の【図4】,【図7】は,Aⅳが作成したこと,特許A出願依頼書の「発明者記載欄」の「発明者」の項目がAⅳ,原告の順で記載され,均等の場合は記入不要とされる発明者の持分比率の記載がなかったことは,前記(1)で認定したとおりである。
これらの事情を総合考慮すると,共同発明者間における原告の貢献度は,70パーセントとするのが相当である。
(イ)原告は,共同発明者間における原告の貢献度について80パーセントを下らないとした上,A関連発明②の時点において,板状レンズにおける光束制御出射面に到達した出射光を制御するための光束制御条件を定める数式に至っており,これを中央部が凹んだキャップ形状においても活用できる旨主張する。しかし,
原告は,
キャップ形状における同数式についての試作シミュレーションを特許A出願後にしか行っていないこと(原告本人),特許Aの明細書等の【0036】の計算式におけるδは,Aⅳの作成した【図4】に規定されているδを利用して説明されていることなどを考慮すれば,中央が凹んだ形状におけるシミュレーションを行っていたAⅳの研究成果に相応の貢献を認めることが相当であり,原告の上記主張は採用することができない。
原告は,中央が凹んだ形状のレンズは公知であったなどとも主張するが,原告の主張の根拠とされる甲48号証ないし甲50号証,甲67号証に記載されたレンズの中央が凹んだ表面形状であることは認められるとしても,これらは,発明Aにおけるキャップ形状(マッシュルーム形状)とは異なるものである。なお,原告は,発明者としてAⅳを掲げたことについて,部下であるAⅳに配慮した旨主張するが,原告が研究していた板状レンズに関するA関連発明②については,原告の単独発明である旨を「特許出願依頼書兼,権利譲渡証」において明記し
ているのであるから,キャップ形状のレンズに関する発明Aについて,原告の単独発明であったというのであれば,
その旨明記することが困難であったとはいい難く,
少なくとも,Aⅳをあえて発明者の筆頭者に記載する必要があったとは考え難い。(ウ)被告は,共同発明者間における原告の貢献度について50パーセントを超えない旨主張するが,上記認定説示のとおり,本件発明Aの特徴的部分への創作的貢献をしたのは,主として原告であって,同部分へのAⅳの創作的貢献は,原告と比較すると,限定されたものにとどまるというべきであるから,被告の上記主張は,採用することができない。
(5)遅延損害金の起算日について
原告は,本件催告の日の翌日である平成21年8月8日を遅延損害金の起算日としているところ,被告は,被告規定等により同日より後の日まで履行期が到来しない旨の主張はしていないから,本件発明Aに係る特許を受ける権利の原告持分の承継後にされたことが明らかな本件催告の結果,被告が遅滞に陥ったことを前提とする遅延損害金の起算日に関する原告主張は,是認することができる。(6)中間利息の控除について
遅延損害金の起算日である平成21年8月8日を基準日として将来の時点で被告が得ることとなる独占の利益の額に基づいて相当の対価の額を算定する以上,当該独占の利益の額ないし相当の対価の額について上記基準日現在の価値を評価するため,相当な方法により中間利息を控除すべきものといえる。
そこで,当裁判所は,平成22年度から平成36年度の各期間売上高に基づいて算定されるべき相当の対価につき,別紙9「本件発明Aに係る当裁判所の認定判断の要旨」の該当行の「ライプニッツ係数(中間利息控除のため)」欄記載のライプニッツ係数を乗じることにより,中間利息を控除することとした。この点,原告は,本件は,相当の対価の請求であるから,中間利息の控除をすべきでない旨主張するが,上記説示したところに照らし,同主張は,採用することができない。

(7)既払金の控除について
既払金は,原告の主張に従い,平成21年度の期間売上高に基づいて算定されるべき相当の対価から控除した。
(8)相当の対価の額(不足額)について
以上を踏まえて算定すると,別紙9「本件発明Aに係る当裁判所の認定判断の要旨」記載のとおり(計算は年度ごとに行い,1円未満の端数は切り捨てた。),本件発明Aに係る相当の対価の額(不足額)は,1251万2259円となる(なお,原告は,発明Aに係る相当の対価〔不足額〕と同A’に係る相当の対価〔不足額〕を一括して請求しているところ,弁論の全趣旨によれば,特許Aと同A’の寄与率は均等〔2分の1ずつ〕とみるのが相当であるから,結局,発明Aに係る相当の対価〔不足額〕と同A’に係る相当の対価〔不足額〕の合計が上記認定に係る1251万2259円であるということになる。)。
したがって,原告は,被告に対し,本件発明Aに係る相当の対価(不足額)合計1251万2259円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。3
争点2(本件発明Bないし同Hに係る相当の対価の額)について

(1)認定事実
前記前提事実のほか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

「PSP-LGP」の量産化に至る経緯

(ア)被告においては,平成6年頃,●(省略)●(乙13)。
(イ)その後,被告においては,平成9年2月から平成11年3月まで,「PSP散乱導光体の開発と実用化」をテーマとする研究開発が行われた。この研究開発のチームのメンバーとされた被告の従業員は,開発責任者が横山和明,設計担当が原告及び平石文紀,金型加工・製造技術担当がAⅹ及びAⅺであった。同研究開発は,プリズムシートの採用によりメーカー間のバックライトユニット
の性能差が小さくなり,コスト競争だけに陥っていたところ,プリズムシートを2枚使用することを前提とする従来技術は,部品コストの比重も大きく,採算に悪影響を与えていたことから,プリズムシートの1枚化,又は新しい部品構成の導光体の開発が必要とされことによるものであり,競合企業との差別化を目的とする製品化に向けた取組みとして,開始された。
同研究開発に関与した原告は,当初から,溝面の配置面や頂角等の構成について「AutoCADLT」というソフトウェアを用いて光学設計に基づく計算をし,試作を通じて最適解を見出すことを繰り返していた。
●(省略)●として,「PSP散乱導光体開発報告書」(甲54)がまとめられた。(以上につき,掲記のもののほか,甲58,63,64,71,弁論の全趣旨)なお,本件特許Bないし同Hは,同研究開発の初期である平成9年3月27日から上記報告書がまとめられた後である平成11年9月10日までの間に,順次出願されたものである(前記前提事実(2)ア,別紙1「本件特許目録」記載3ないし同10)。
(ウ)被告は,平成9年から平成10年当時,光散乱体について顧客からあまりよい評価を得ていなかった。そこで,被告は,発光の均一性を実現しやすい光散乱材料を得るため,発明の名称を「光散乱導光装置」とする特許第3162398号(出願日:平成5年11月29日〔優先日:平成4年11月27日〕,登録日:平成13年2月23日,特許権者:Aⅸ〔本件特許Dないし同Hの共有者〕。)の特許(以下「Aⅸ特許」という。)につき実施許諾を受け,これに係る技術を採用した。(以
上につき,甲104,105,乙28,原告本人,弁論の全趣旨)(エ)原告は,
平成13年9月19日付け
「’
01上期研究開発テーマ完了報告書」
(甲53①)により,被告に対し,●(省略)●ことなどを掲げた。また,原告は,平成14年3月29日付け「’01下期研究開発テーマ完了報告書」(甲53②)により,被告に対し,●(省略)●などを掲げた。さらに,原告は,●(省略)●(甲69)。

(オ)原告及びAⅵは,●(省略)●をテーマとする「’03年下期研究開発」の担当者となった。その当時,●(省略)●とされた。(以上につき,甲37①及び③)
(カ)被告において,「PSP-LGP」の量産化のため,電鋳溝駒作製に関する技術は以前から検討されていたが,様々なサイズの導光板用電鋳溝駒を短納期で準備すること,電鋳溝駒の耐久性を考慮してバックアップ駒を準備しておくことができなかった。そこで,被告の成形加工技術及び金型成型技術に基づき,被告独自に開発した●(省略)●へ変更することにより,新たな生産方法が確立し,量産化が可能となった。なお,原告は,この量産化の過程には,関与していない(弁論の全趣旨)。

「PSP-LGP」の売上げの推移

「PSP-LGP」の売上げは,●(省略)●,その後,スリーエム社の「BEF」というプリズムシートに関して同社が保有する特許権が存続期間の満了により消滅したことから,競合企業がどこでもこれと同様のプリズムシートを非常に安く作れるようになり,その結果,
「PSP-LGP」は,コスト的に不利となり,徐々
にその売上げが減少し,
平成23年3月をもってその生産が中止されるに至った
(原
告本人,弁論の全趣旨〔被告の平成26年6月6日付け第3準備書面〕)。ウ
「PSP-LGP」の代替技術・競合品について

(ア)「PSP-LGP」は,導光板とプリズムシートを使用した導光式液晶用バックライトであるが,導光板とプリズムシート2枚を基本的な構成とする従来の導光式液晶用バックライトではなく,高輝度かつプリズムシート1枚の構成をとるものであるところ,
株式会社東レリサーチセンターの
「液晶バックライトの最新技術」
(乙15)によれば,次のとおり,このような構成の製品が「PSP-LGP」の製造販売がされた時期と同じ時期に複数の競合企業競業により開発され,製造販売されていたことが認められる。


平成13年頃

株式会社アイメスの両面プリズム導光板
(311~312頁)



平成15年頃

日本ライツ株式会社(当時)のMR/MD素子+下向きプリズ

ムシート(309頁)


平成16年頃

日立化成株式会社のマイクロV溝+ホログラム導光板(31

2~313頁)


平成19年頃

三菱レイヨン株式会社のマットプリズム導光体(308~3

09頁)


平成19年頃

オムロン株式会社の集積型バックライト(314頁)

(イ)株式会社矢野経済研究所(以下「矢野経済研究所」という。)のウェブサイト(2005年度版「LCD関連フィルム・シート市場の動向と展望」に関するページ)(乙32)によれば,平成17年当時,導光板は,「Vカット導光板の拡大やパネルメーカーのバックライト内製化進展により主力メーカーによる導光板販売量は大型,中小型ともに拡大傾向で推移」し,「Vカット導光板需要が急増」しており,
「2005年にはノートPC全体の30%前後に達する」
状態であったこと,
被告の競合企業である油化電子は,「主力のノートPC向けではVカット導光板搭載の高輝度グレードが05年出荷量の80%を占める」シェアを有していたこと,エンプラスディスプレイデバイスにおいても,「Vカット・高輝度導光板での先行メリットを活かし高いシェアを確保」し,「高輝度導光板『PSP-LGP』の急成長で液晶関連事業の売上高は大幅成長続く」という状況であったことが認められる。
さらに,矢野経済研究所の平成18年2月6日発行「LCD関連フィルム・シート市場の動向と展望」(甲76)によれば,平成17年当時,主要な導光板の専業メーカーとして,8社(油化電子,日立化成工業,エンプラスディスプレイデバイス,パイオニア精密,住友ゴム工業,オプテス,日本ライツ,黒田電気)が挙げられるところ,射出成形導光板についての被告の関連会社であるエンプラスディスプレイデバイスのシェアは,平成15年度が12.6パーセント,平成16年度が19.7パーセント,平成17年度(見込み)が23.6パーセント,平成18年度
の予測が26.0パーセントであるが,平成15年より大型導光板の販売量のほとんどが「PSP-LGP」となっており,Vカット導光板市場の中でのシェアは平成17年9月時点で60パーセント前後の圧倒的なシェアを占めていたことが認められる。
これによれば,平成17年頃,「PSP-LGP」は,LED導光式バックライト市場において30パーセント弱のシェアを有しており,大型の導光式バックライトに限定すると60パーセント前後のシェアを有していたということになる。(2)独占の利益について

期間売上高について

本件発明Bないし同HそれぞれについてのB~H実施品の期間売上高(別紙7
「原
告主張の要旨」の下段の該当行の「1

B~H実施品の期間売上高」欄記載のとお

りであり,これらは,別紙5-2「『PSP-LGP』売上高一覧表」記載の各評価期間に係る売上高と同じである。)は,当事者間に争いがない(ただし,発明ごとに評価期間が異なるものの,その大部分が重複しているため,同一覧表記載の金額を合計すると,「PSP-LGP」の総売上高を遥かに超えるものとなる。)。イ
超過売上率について

(ア)本件特許Bないし同Hの内容(前記前提事実(2),別紙1「本件特許目録」記載3ないし同10,別紙2-3ないし別紙2-10)のほか,前記認定事実(平成17年当時のLED導光式バックライト市場における「PSP-LGP」のシェア〔全体で30パーセント弱,大型の導光式バックライトに限定すると60パーセント前後〕,「PSP-LGP」の売上げの推移,代替技術の存在など),B~H実施品の期間売上高には本件特許Bないし同Hの登録前の期間に係る部分が含まれること(弁論の全趣旨)を総合考慮すると,本件特許Bないし同Hの総体に基づくB~H実施品の超過売上率は,10パーセントとするのが相当である(後記エのとおり,この10パーセントの超過売上率に占める個々の特許の寄与の程度を後に考慮する。)。

(イ)被告は,B~H実施品には超過売上高が存在しない旨主張する。a
しかし,本件発明Bないし同Hについては,次のb及びcで説示するところ
に照らせば,一定の技術的優位性を肯定することでき,本件特許Bないし同Hによる独占の効果が全く存在しないとみることはできない。そうすると,被告が従来から導光式バックライトを製造販売してきたこと,被告がAⅸ特許について実施許諾を受けていること,代替技術が複数存在することなどを考慮しても,B~H実施品につき超過売上げの存在を否定することは困難というべきであり,被告の上記主張は採用することができない。

本件発明Hについて検討するに,本件特許Hの内容(前記前提事実(2),別紙
1「本件特許目録」記載10,別紙2-10),証拠(甲30,70,乙25,36)及び弁論の全趣旨によれば,①本件特許Hは,その出願前に頒布された刊行物である甲70公報(特開平9-61631号公報)などに基づき特許を受けようとする発明が新規性又は進歩性を欠く旨の拒絶理由通知を受けるなどしたことから,別紙1「本件特許目録」記載10の特許請求の範囲の下線部分の構成(請求項1に係るものであるが,他の請求項は,いずれも請求項1を直接又は間接に引用している。以下「本件発明Hに付加された構成」という。)を付加するなどの補正を経て,登録に至ったこと,②本件特許Hの明細書等では,特許請求の範囲の「前記一対の斜面の形成する角度」(【図1】における斜面12E,12Fの成す角度α1がこれに対応する。)について,「50度~130度の範囲で適宜選定して実用に供する特性を得ることができるが,好ましくは60度~110度の範囲である」(【0033】)としていたところ,本件発明Hに付加された構成は,その一部に当たる「前記板状部材は,前記1対の斜面の形成する角度が90度より大きく,110度以下の角度に設定された」との点を発明特定事項に含むこと,③本件発明Hに付加された構成における上記②の角度範囲は,甲70発明との相違点であるとともに,原告が,「PSP-LGP」の開発のかなり初期の段階で,「平均輝度」の値のみならず,導光板単体での配光特性(集光性)にも留意して,各方式の可能性につき
比較評価を行い,各パラメータを俯瞰的に調査した結果に基づくものであって,同発明の効果との関係で最適な角度範囲との認識の下,上記①の補正の際に付加されたものであることが認められる。
また,本件発明Hに付加された構成は,「前記光制御部材は,前記1対の斜面のうちの,前記端面に相対的に近い側の斜面により前記板状部材から出射される照明光を透過して内部に導き入れ,前記端面に相対的に遠い側の斜面により反射して出射し,」との点を発明特定事項として含むところ,被告は,乙16公報(特開平8-262441号公報)がこれと同一の構成を開示している旨主張するが,本件発明Hに付加された構成における上記の点は,出射光の均一化のため,光制御部材における角度を規定するのではなく,入射と出射について「前記端面に相対的に近い側の斜面により前記板状部材から出射される照明光を透過して内部に導き入れ,前記端面に相対的に遠い側の斜面により反射して出射し」と規定することにより,その目的を達するようにしたものであって,乙16公報に開示されているとはいえない。

被告は,本件発明B,同E,同F及び同Gは,輝度分布の均一化及びプリズ
ムシートの密着防止のため導光板の出射面側に突起を設ける(梨地状に加工する)技術に関するものであるところ,かかる技術内容は,本件特許B,同E,同F及び同Gの出願前に頒布された刊行物(ただし,後二者は,本件特許Gの優先日後に頒布されている。)である特開平2-84618号公報(乙29),特開平9-231823号公報(乙30),特開平10-48429号公報(乙31)にそれぞれ開示されているとか,本件発明C及び同Dは,プリズム溝の形状が入射面に近づくに従って円弧断面形状に徐々に変化することを内容とする技術に関するものであるところ,かかる技術内容は,これらの特許の出願前に頒布された刊行物である甲70公報に開示されているなどと主張するが,本件特許B,同E,同F及び同Gは,いずれも特許庁の審査を経て,登録に至っているものであり,被告の上記主張を踏まえたとしても,本件発明B,同E,同F及び同Gについて,直ちに新規性及び進
歩性を否定することができるものではない。
また,被告は,本件発明C及び同Dにおいて「導光板のプリズム溝(一対の斜面による突起)の形状が入射面に近づくに従って円弧断面形状に徐々に変化する」点については,甲70公報に開示されている旨の主張もするが,甲70公報の【請求項2】,【請求項3】及び【0048】などの記載からすれば,甲70発明は,入光端面(S1)の近傍では出光率を抑えるという目的のため,曲線断面で構成される凹条の高さ又は凸条の深さを変化させる技術であり,映込みによる異常発光を低減することを目的として,V溝形状を円弧断面に変化させるという本件発明C及び同Dとは,技術思想を異にするものとみるべきである。

仮想実施料率について

本件特許Bないし同Hの内容及び実施料に関する公表された統計(前記前提事実(2),
別紙1
「本件特許目録」
記載3ないし同10,
別紙2-3ないし別紙2-10)
並びに前記(1)の認定事実のほか,
B~H実施品の期間売上高には本件特許Bないし
同Hの登録前の期間に係る部分が含まれることなどを総合考慮すると,B~H実施品に対する仮想実施料率は,統計上の最頻値とされる1パーセントとするのが相当である。

特許寄与率について

B~H実施品は,本件発明Bないし同Hの全ての実施品であることから,各発明に係る相当の対価の算定の前提となる独占の利益を求めるに際しては,本件特許Bないし同Hの寄与の程度(特許寄与率)を考慮することが相当である(なお,B~H実施品につき,被告の保有に係るその余の特許の寄与は,主張されていない。)。この点について,原告は,本件発明Bないし同Hのそれぞれについて算定される期間売上高を基礎として,各発明について超過売上率を個別に10パーセントないし30パーセントと主張して独占の利益の額を主張し,超過売上率とは別に特許寄与率を議論する必要はないとの前提に立つ主張をしているものと解される。しかしながら,
独占の利益の額の算定にあたり特許寄与率を用いないのであれば,
超過売上率や仮想実施料率の値を各特許の寄与の程度を加味したものとすることを要するといえるが,原告の主張に係る超過売上率(各発明につき10パーセントないし30パーセント)や仮想実施料率(各発明につき5パーセント)がそのような考慮をした値であるとは,考えにくい。別紙5-2記載の「PSP-LGP」の売上高は,発明ごとに評価期間が異なるものの,その大部分が重複しているため,原告の主張は,結果として「PSP-LGP」の総売上高のほぼ全額が超過売上高と主張する(超過売上率を約90パーセントと主張する)に等しいものというほかなく,採用することができない。
そして,本件特許Bないし同Hの内容(前記前提事実(2)ア,別紙1「本件特許目録」記載3ないし同10,別紙2-3ないし別紙2-10)に加え,原告は,本件特許Hを基本特許,その余の特許B,同C,同D,同E,同F及び同Gを改良特許と位置付けているところ,これらの特許の内容に照らし,かかる位置付けを是認することができること,被告は,これらの特許に関する実施褒賞金の算定に際し,「特
許の寄与率」のうち「発明部分比」を,本件特許Hにつき「0.3」,本件特許Dにつき「0.2」,その余の特許につき「0.1」としたこと(甲13)などの事情を総合考慮すると,特許寄与率は,本件特許Hにつき30パーセント,本件特許Dにつき20パーセント,その余の特許につき各10パーセントとするのが相当である。
(3)被告の貢献度(発明者ないし共同発明者の貢献度)について前記(1)の認定事実(とりわけ,①被告が,平成6年頃から,導光式バックライトの研究開発を行い,プリズムシートの代わりとなる溝付き導光板を試作し,評価・検証を実施していたこと,②本件特許Bないし同Hは,その出願後,長期にわたり登録に至っていなかったところ,被告は,これらの特許の登録前に「PSP-LGP」の量産化に成功し,平成15年度からその売上げを急激に伸ばしたこと)に照らせば,本件発明Bないし同Hが,その発明者ないし共同発明者(後述のとおり,本件発明B,同C,同G及び同Hの発明者は原告1名であり,本件発明Dの発明者
は,原告,Aⅹ及びAⅺの3名であり,本件発明E及び同Fの発明者は,Aⅹ及び原告の2名である。)の努力及び創意工夫によって,見いだされたものであるとしても,上記発明者ないし共同発明者は,被告による費用負担の下,被告に雇用された後に得た知識経験に基づき,
上司の指示に従い,
開発グループでの職務を通じて,
これらの発明を完成させるに至ったものとみることができるし,B~H実施品である「PSP-LGP」が多大な売上げを計上したことに関しては,特許が登録されたことよりも,むしろ被告の有する量産化のための技術力,営業力などが相当大きく貢献したものとみることができる。
このような本件発明Bないし同Hに関する諸事情を総合考慮すると,これらの発明に係る相当の対価の算定に当たっては,発明者ないし共同発明者の貢献度を5パーセント(被告の貢献度を95パーセント)と認めるのが相当であり,被告が主張する種々の事情を考慮しても,発明者ないし共同発明者の貢献度がこれを下回るものとは認め難い。
(4)共同発明者間における原告の貢献度について

本件発明B,同C,同G及び同Hの発明者は,いずれも原告1名であるとさ
れているところ(前記前提事実(2)ア,別紙1「本件特許目録」記載3,同4,同9及び同10),これと異なる事情をうかがわせる的確な証拠はないから,これらの発明は,いずれも原告の単独発明であると認められる。
したがって,本件発明B,同C,同G及び同Hについては,共同発明者間における原告の貢献度は,問題とならない(別紙10「本件発明Bないし同Hに係る当裁判所の認定判断の要旨」の該当行の「⑤共同発明者間における原告の貢献度」欄では,便宜上,「100%」と表示してある。)。
被告は,これらの発明につき原告が果たした役割が不明であるとか,本件発明DについてAⅶ及びAⅴの貢献があったなどと主張するが,上記説示したところに照らし,採用することができない。

本件発明Dの発明者は,原告,Aⅹ及びAⅺの3名であり,本件発明E及び
同Fの発明者は,Aⅹ及び原告の2名であるとされており(前記前提事実(2)ア,別紙1「本件特許目録」記載5ないし同8),これと異なる事情をうかがわせる的確な証拠はないから,本件発明Dは,原告ほか2名の共同発明であり,本件発明E及び同Fは,原告ほか1名の共同発明であると認められる。これらの発明に係る特許を受ける権利は,原始的には,それぞれ上記各共同発明者に帰属したところ,その持分は相等しいものと推定される(民法250条)から,共同発明者間における各発明者の貢献度についても,反証がない以上,相等しいものと推定するのが相当である。
そうすると,本件発明Dに対する共同発明者間における原告の貢献度は,3分の1(≒33パーセント),本件発明E及び同Fに対する共同発明者間における原告の貢献度は,2分の1(=50パーセント)とするのが相当である。被告は,
これらの発明につき原告が果たした役割が不明であるなどと主張するが,上記説示したところに照らし,同主張は,採用することができない。(5)遅延損害金の起算日について
原告は,本件催告の日の翌日である平成21年8月8日を遅延損害金の起算日としているところ,被告は,被告規定等により同日より後の日まで履行期が到来しない旨の主張はしていないから,本件発明Bないし同Hに係る特許を受ける権利(又は特許を受ける権利の原告持分)
の承継後にされたことが明らかな本件催告の結果,
被告が遅滞に陥ったことを前提とする遅延損害金の起算日に関する原告主張は,是認することができる。
(6)中間利息の控除について
原告がB~H実施品の期間売上高として主張しているのは,評価期間(被告規定等による実施褒賞金の算定の基礎とされた期間)の売上高であって,遅延損害金の起算日からみて将来の売上げが問題とされているものではない(甲12,13,弁論の全趣旨)から,中間利息の控除は要しない。
(7)既払金の控除について

本件発明Bないし同Hに係る各既払金は,原告の主張に従い,各発明について算定されるべき相当の対価から控除した。
(8)相当の対価の額(不足額)について
以上を踏まえて算定すると,別紙10「本件発明Bないし同Hに係る当裁判所の認定判断の要旨」記載のとおり,本件発明Bないし同Hに係る相当の対価の額(不足額)は,いずれも存在しない(算定される相当の対価の額は,いずれも既払金を下回っており,同別紙の該当行の「小計」欄は,マイナスの金額となっている。)。第5

結論

以上によれば,原告の本件請求は,本件発明Aに係る相当の対価(不足額)合計1251万2259円及びこれに対する平成21年8月8日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

嶋末和秀天野研司
裁判官

裁判官鈴木千帆は,転補のため,署名押印することができない。

裁判長裁判官

嶋末和秀
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