判例検索β > 平成28年(ネ)第189号
損害賠償請求控訴事件
事件番号平成28(ネ)189
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判年月日平成29年8月31日
法廷名札幌高等裁判所
原審裁判所名旭川地方裁判所
原審事件番号平成23(ワ)99
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主文1
一審原告の控訴を棄却する。

2
一審被告の控訴に基づいて,原判決を次のとおり変更する。

3
一審原告の請求を棄却する。

4
一審原告は,一審被告に対し,金14億1501万9523円及びこれに
対する平成22年9月3日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
5
一審被告のその余の請求をいずれも棄却する。

6
訴訟費用は,第1,2審を通じて3分し,その2を一審原告の,その余を
一審被告の各負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1一審原告
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)一審被告は,一審原告に対し,19億3567万9067円及びこれに対する平成22年4月27日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3)一審被告の請求をいずれも棄却する。
(4)訴訟費用は,第1,2審とも一審被告の負担とする。
(5)仮執行宣言
2一審被告
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)主位的請求(債務不履行に基づく損害賠償請求)
一審原告は,一審被告に対し,22億7976万3373円及びこれに対する平成22年9月3日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。(3)第1次予備的請求(不法行為に基づく損害賠償請求)

一審原告は,一審被告に対し,22億7976万3373円及びこれに対する平成22年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)第2次予備的請求(商法512条に基づく報酬請求)
一審原告は,一審被告に対し,22億5960万6269円及びこれに対する平成22年9月3日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。(5)一審原告の請求を棄却する。
(6)訴訟費用は,第1,2審とも一審原告の負担とする。
第2事案の概要等
1事案の概要
(1)一審原告,一審被告及びNTTファイナンス株式会社(以下「NTTファイナンス」という。)は,一審被告が一審原告のために病院情報管理システム(以下「本件システム」という。)を構築し,NTTファイナンスをその所有者として一審原告に本件システムをリースすることを目的とする契約を締結した。本件は,同契約の目的が達せられなかったことについて,一審原告及び一審被告が以下の各請求をする事件が併合審理されている事案である。ア
第1事件
一審被告が納期である平成22年1月3日に本件システムの完成及び引
渡しをしなかったことから,一審原告に逸失利益等の損害が生じたと主張して,一審原告が,一審被告に対し,上記契約の債務不履行に基づき,合計19億3567万9067円の損害賠償及びこれに対する同年4月27日
(上記契約の解除兼損害賠償請求の通知が一審被告に到達した日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。

第2事件
(ア)主位的請求及び第1次予備的請求

本件システムの完成及び引渡しが遅れたことにつき一審被告に帰責性はないのに,一審原告の協力義務違反及び不当な受領拒絶により,一審被告は上記契約に基づく完成義務を履行し得なくなったことから,一審被告がNTTファイナンスから本件システムの売買代金を得られなくなったなどと主張して,一審被告が,一審原告に対し,主位的には上記契約の債務不履行に基づく損害賠償として,予備的には不法行為に基づく損害賠償として,合計22億7976万3373円及びこれに対する平成22年9月3日(第2事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(主位的請求)又は同年4月27日(不法行為後の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金(第1次予備的請求)の支払を求めている事案である。
(イ)第2次予備的請求
本件システム開発に係る業務(開発対象外の開発要望に基づく業務を含む。)を,一審原告からの要請を受け,商人である一審被告がその営業の範囲内で行ったと主張して,一審被告が,一審原告に対し,商法512条(報酬請求権)に基づき,22億5960万6269円の報酬及びこれに対する平成22年9月3日(第2事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
(2)原審は,本件システムを開発するための一連のプロジェクト(以下「本件プロジェクト」という。)が頓挫したことについては,一審原告に2割,一審被告に8割の責任があるとして,一審原告の請求については,3億6508万5426円及びこれに対する平成23年4月2日(第1事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,一審被告の請求(主位的請求)については,3億8386万16
89円及びこれに対する平成22年9月3日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれの請求を認容し,その余の一審原告及び一審被告の請求をいずれも棄却した。
2前提事実,本件の争点及び争点に対する当事者の主張
以下のとおり補正し,当審における当事者の主張について後記3及び4のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2

事案の概要等」の2

項ないし4項のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決9頁7行目「(以下」から同9行目「という。)」までを削る。(2)同10頁1行目末尾に改行の上,以下を加える。
「契約解除

一審原告は,一審被告及びNTTファイナンスが正当な理由
なくしてこの契約に違反した場合は,その旨を書面で通知す
ることによりこの契約を解除することができるものとし,違
約金を徴収するものとする。(31条1項)
前項の違約金の額は,リース料金の総額から履行完了部分に
相応する金額を控除した額の10分の1に相当する額とす
る。(同条2項)」

(3)同10頁14行目「システム化」を削る。
(4)同10頁24ないし25行目「この合意を「本件仕様凍結合意」ということがある。」を以下のとおり改める。
「同決定のうち,625項目の仕様項目に開発対象に含める旨の合意部分を「本件追加開発合意」といい,「仕様凍結」とする旨の合意部分を「本件仕様凍結合意」ということがある。」
(5)同11頁5行目末尾に改行の上,以下を加える。
「(5)マスタの抽出作業の必要性
マスタとは,データ処理に必要な基本データをまとめたファイルである。

マスタは,①システム運用開始後に「原則として変更しないマスタ」(画面に表示する項目の初期設定やチェック機能の有効化,無効化などの設定といった,主としてシステム設定に関するもの)と,②システム運用開始後に「継続的な設定変更・確認が必要なマスタ」(薬品や検査項目などのように,ユーザである病院によって異なり,一定の頻度で変更や更新が行われるもの)とに大別することができる。(乙524〔11,43〕)
上記①のマスタについて一審被告が作成義務を負うことは明らかであり,この点は当事者間に争いがない。
本件で争われているのは,上記②のマスタの作成が一審原告と一審被告とのいずれの義務に属するかである(以下,特に断らない限り,「マスタ」を上記②の意味で用いる。)。一審原告病院の場合,これらマスタの多くは現行システムのマスタとして現存しているため,マスタの作成とは,現行システムのマスタの抽出とほぼ同義である。」
(6)同11頁6行目「(5)」を「(6)」と改める。
(7)同11頁9行目「という。」の後に「ただし,通番012は欠番であり,通番105と通番163が同一であるので,
実数は169項目である。
また,
一審原告が開発要望を出していないと主張するものを含む。」を加える。(8)同11頁12行目冒頭から同15行目末尾までを以下のとおり改める。「ウ

一審原告は,一審被告に対し,平成22年3月10日付け「履行催告状」と題する書面(甲14の1)により本件契約の履行を催告し(以下「本件催告」という。),本件催告は,同月12日,一審被告に到達した。(争いのない事実)


一審原告は,一審被告に対し,平成22年4月23日,本件原契約31条1項に基づいて本件契約を解除する旨を記載した通知(以下「本件解除通知」という。甲3の1)を送付し,同月26日,本件解除通知は
一審被告に到達した(以下「本件解除」という。)。
(争いのない事実)」
(9)同11頁19行目「4月23日」を「4月26日」と改める。(10)同12頁26行目「A」の後に「(以下「A取締役」という。)」を加える。
(11)同13頁6行目,同14頁4行目及び同8行目「4月23日」をいずれも「4月26日」と改める。
(12)同14頁14行目「乙467」の後に「(枝番を含む。以下,枝番のある証拠について,特に断らない限り,同じ。)」を加える。
(13)同17頁21行目「要件定義書及び外部設計書」の後に「(以下,両者を併せて「要件定義書等」ということがある。)」を加える。
(14)同18頁26行目冒頭から同19頁14行目末尾までを以下のとおり改める。
「一審被告が,資料で提案機能の説明を実施する(甲63〔4〕)。(イ)外部設計工程(乙462〔4〕)
分類1及び2については,出力帳票や設定項目など調整可能な詳細機能の確認を行う。
分類3については,要件定義で確定した内容の外部設計書の確認を行う。

本件要求仕様書等の位置付け
(ア)本件要求仕様書等は,一般的な意味での要求仕様書(一審原告の要求仕様としての要件定義を記載したもの)であり,これを踏まえて作成された本件技術仕様書(甲6)が,要件定義書に相当する。」

(15)同19頁17行目「コンピュータ」を「コンピューター」と改める。(16)同19頁20行目「方針」を「指針」と改める。
(17)同20頁23行目「B」の後に「教授(以下「B教授」という。)」を加える。

(18)同20頁23行目「本件システム構築に当たっては,」を「システム構築にあたっては」と改める。
(19)同23頁7行目「2ないし6」を「2-6」と改める。
(20)同23頁25行目「外部設計書(詳細設計書)」を「内部設計書」と改める。
(21)同26頁14行目「C」の後に「プロジェクトリーダー(以下「CPL」という。)」を加える。
(22)同30頁2行目「D」の後に「薬剤師「以下「D薬剤師」という。)」を加える。
(23)同41頁11行目「E看護師長」の後に「(以下「E師長」という。)」を加える。
(24)同44頁22行目「D-4」を「D」と改める。
(25)同45頁6行目
「F」
の後に「プロジェクトマネージャー(以下「FPM」
という。)」を加える。
(26)同57頁6行目「仕様外カスタマイズ」の後に「を含む本件システム開発に係る業務」を加える。
(27)同57頁17行目冒頭から同22行目末尾までを削る。
3当審における一審原告の主張
(1)争点(1)本件システムの引渡日を平成22年1月4日以降へ延期するとの(
合意の有無)について
一審原告と一審被告との間で上記合意が成立した旨の一審被告の主張は争う。
(2)争点(2)平成22年1月3日又は同年4月26日の時点における本件シス(
テムの完成の有無)について

民法634条以下の請負人の担保責任と債務不履行とのメルクマールとなる「仕事の完成」とは,開発対象を定めた要件定義書等に従ってシス
テム開発を行い,かつ,予定された最後の工程まで一応完成した場合,すなわち稼働可能な状態が達成された段階をいう。
ところが,①平成21年11月14日実施の外来プレリハーサル,同月28日実施の第1回外来リハーサルで多数の不具合が発生したこと,②同年12月13日実施のスルーテストでもWindowsエラーが発生してアプリが落ちるなどの致命的な不具合が発生していたこと,③平成22年1月18日の第16回専門部会において,CPLは,「開発工数が想定以上に大きくなっており,開発側で現在具体的な完了日が確定できない現状にある。」と発言していたこと,④同月以降に実施した評価の結果,多数のWGにおいて不可とされ,一審被告が把握できていない不具合等もあったこと,⑤一審被告は,平成22年3月16日時点で,開発及び品質確認試験に2か月以上の時間を必要とした上で,平成23年1月又は平成22年9月下旬への納期再延長を提案していること(甲15〔5,6〕)などからすると,本件システムは,平成22年1月3日時点において完成していたということはできない。
同年4月26日時点でも本件システムが完成していたことを裏付ける証拠はない。一審被告作成の完成証明資料(乙527)は同年6月25日時点のものでしかなく,一審被告とIBMのSEが同年4月26日以降もプログラム開発,DWH,保守運用に向けた業務を行った結果であるから(乙456,457),同日時点での完成度は,上記乙527よりも相当に低かったはずである。

また,
本件プロジェクトは,
単に本件システムを開発するだけではなく,
データ移行,操作研修,リハーサル,保守運用検討,保守設備構築等の業務や,要件定義書等の提出及び承認が予定されており,これらの多くが完了していなかった。

(3)争点(3)(一審被告の本件契約上の義務の範囲)について

分類1及び2のカスタマイズ義務の有無について
本件技術仕様書(甲6)において,分類1(パッケージ標準機能)及び分類2(他病院機能の移植)とされていたのは,いずれも,パッケージ標準機能や他病院機能によって一審原告が求める仕様項目を実現できる可能性があり,一から開発を行うのではなく,パッケージベースで開発を行っていくことを意味するに過ぎず,分類1及び2についてカスタマイズを実施することを排除するものではない。
このことは,①そのように解さなければ,分類1及び2に関してはユーザである一審原告の要望は実現されないことになり,医療安全上の重大な危機を招来しかねないこと,②プロジェクト計画書(甲63〔本文3〕)において「ワーキンググループにて,より優先度の高い機能の必要性が生じた場合,技術仕様書上の機能と開発規模を考慮のうえ,取捨選択を検討する。」と記載して,分類項目を問わずカスタマイズを予定し(プロジェクト計画書には,当初,追加カスタマイズのためにプログラム改修作業が発生する場合は別途見積り及び再提案する旨の記載があったが,その後の協議の結果,削除された。甲63〔本文4〕,甲235〔本文4〕,乙573〔2〕),実際,WGにおいては分類項目を問わずに運用確認,仕様検討が行われていたこと,③一審被告のCPLも,分類1及び2についてもカスタマイズをすることがある旨を証言していること(証人C〔9ないし13〕),④平成20年11月17日の一審原告と一審被告,NECとの打ち合わせにおいて,一審原告が,現行システムについて「長い歴史の中で協議を重ねながら作り上げられてきたシステムであり,他施設には見られない独自な機能も多く存在する。」と説明した上で,「NTT東日本には現在運用中の機能を確実に継承するようお願いしている。」と発言したことに対し,一審被告から異論は出なかったこと,⑤同年11月27日の第1回専門部会において,D薬剤師が,部門システムはメーカ提供機
能を採用するという発想は危険であり,現行機能の継承が必須である,部門システム部分は現行の基本機能を継承することを約束してほしいと求めたのに対し,CPLは,現行機能,つまり要求仕様定義という部分は守る旨を約束していたこと,⑥ユーザである一審原告病院からパッケージ標準機能について開発対象外の開発要望が出されても,ベンダである一審被告はそのベースとなるパッケージを熟知しているのであるから,取り得る選択肢をSEの作業量を勘案して複数提示し,一審原告病院側が業務への影響を考慮しながら開発対象の範囲を検討できるよう誘導することが一般的であり,開発費用が無限定に増えるという事態にはならないこと(同じベンダの同じバージョンの病院情報システムでも,大学病院の負担するリース代金は一般病院の負担するリース代金の4倍程度になっており,これは,大学病院では一般病院よりも開発要望が圧倒的に多いことを予め織り込んで開発費用を設定している結果である。),⑦要件定義工程作業実施要領(甲64〔1-4,1-5,2-6〕)には,分類に応じて異なる取扱いをする旨の記載はなく,逆に,WGにおいて仕様確認及びカスタマイズ要件の検討を行う旨を記載した上で,成果物たる要件定義書としてカスタマイズ要件定義を挙げていること,⑧一審被告が提出した「旭川医科大学病院

病院情報管理システム

○○システム

要件定義書〔××部門

/オーダ〕」(乙528。以下「要件定義書サンプル」という。)の「カストマイズ説明書」の「件名」欄には「パッケージ提供」のチェック欄があり(乙528の16枚目),パッケージ標準機能についてもカスタマイズを予定していたことなどからも明らかである。

要件定義書等の提出義務の有無について
(ア)カスタマイズの有無に関わらず本件システムについて要件定義書等を作成することは,要件定義工程作業実施要領(甲64〔2-6〕),プロジェクト計画書(甲63〔本文13〕)及び品質保証計画書(甲93〔本文5〕)に明記されており(殊に,要件定義工程作業実施要領(甲64〔2-6〕)では「機能一覧」が「詳細設計書(外部設計書)」の成果物とされており,要件定義書サンプル(乙528〔8〕)では「カスタマイズ一覧」の他に「機能一覧」及び「出力帳票類」の作成が予定されていることからすると,カスタマイズの有無に関わらず「機能一覧」(外部設計書)の作成が予定されていたことは明らかである。),一審被告は,これら「基本設計資料」を一審原告に提出し,一審原告による承認を受けることとされていた(甲4〔説-5〕)。
そして,一審原告の意思決定機関が,専門部会等の上位に位置する理事者であることは,プロジェクト計画書(甲63〔本文5〕)及びプロジェクト概要(甲88〔9〕)に明記されており,一審被告も,要件定義書等について一審原告の理事者による承認が必要であることは知悉していた。
なお,要件定義書等は,一審原告職員が本件システムの全体像をイメージし,業務上の問題を想定するために必要な書類であることから,カスタマイズを実施する部分だけでなく,全体の要件定義書等が必要である(甲154〔10〕,甲223〔4,5〕)。
(イ)この点,一審被告は,平成20年11月25日の第1回専門部会事前打合せにおいて,WGにおいて配布された資料が要件定義工程の成果物である旨を説明し,その一覧表を配布することによって,要件定義書の確認及び承認に代えることが合意されたと主張する。

しかしながら,第1回専門部会事前打合せの議事録(乙318)に
は,上記のような合意がされたことを示す記載は存在しない。
むしろ,同議事録には,「要件定義工程の成果物として,要件定義書のサンプルを用意した。」と記載され,実際,要件定義書サンプル(乙528)が配布されたのであって,これらによれば,本件においても「要件定義書」という名称の成果物が提出される予定であったことがうかがわれる。

そもそも,一審原告の意思決定機関は理事者なのであって,下位機
関である専門部会等において一審原告の承認手続を変更することはできないし,実際,専門部会や推進事務局会議などにおいてそのような決定がされたという事実も存在しない。

仮に第1回専門部会事前打合せにおいて,WGにおいて配布された
資料の一覧表を配布することで要件定義書の確認及び承認に代えることが合意されたのであれば,その後である平成21年1月9日に作成されたプロジェクト計画書(甲63)及び品質保証計画書(甲93)にその旨を記載すれば足りるはずなのに,これらにも,上記(ア)のとおり,要件定義書を作成する旨が記載されている。
これらは,一審被告の主張するような合意が存在していないことを裏付けるものである。
(ウ)一審被告は,外部設計書について,分類3に限って必要に応じて作成することが予定されており,また,WGに提出した画面イメージや帳票サンプル等が本件における外部設計書に当たる旨を主張する。

しかしながら,プロジェクト計画書(甲63),要件定義工程作業
実施要領(甲64)及び品質保証計画書(甲93)のいずれにも,一審被告の上記主張を裏付ける記載は見当たらない。

また,WGにおいて画面イメージや帳票サンプルの確認を行うこと
で理事者による外部設計書の確認及び承認に代えるとの点については,どのような手続を経てそのような変更がなされたのかについて,一審被告はその主張すらしていない。
(エ)本件訴訟における主張と矛盾する一審被告の対応等についてa
一審被告は,本件技術仕様書(甲6)が要件定義書に該当する旨を主張する。しかしながら,本件技術仕様書は,一審被告が第1回専門部会事前打合せにおいて配布した要件定義書サンプル(乙528。業務フローや画面イメージなど実装機能詳細が記載されている。とも,)
一審被告が平成21年3月4日の第5回専門部会で配布したと主張する「技術仕様検討結果報告(要件定義)」(乙537。ただし,同配布の事実はない。乙2の5)とも異なる。また,一審被告は,当初,本件要求仕様書等(甲4,5)こそが要件定義書であると主張していたのに(一審被告の原審第4準備書面〔13〕など),その後,本件技術仕様書が要件定義書に該当すると主張を変遷させているが(一審被告の控訴理由書〔52〕など),これら主張は,CPLの供述(操作マニュアルや議事録等を全てまとめて1つの冊子にしたものが要件定義書である旨。証人C〔94ないし98〕)とも齟齬している。b
一審被告が平成21年12月28日に提出した文書
(甲158)
は,

仕様凍結前に提出されるべき外部設計書であった。
このことは,①上記文書が「機能概要書」(甲158の1),「画面設計書」(甲158の2),「帳票仕様書」及び「接続仕様書」で構成されており,これらは,要件定義工程作業実施要領(甲64〔2-6〕)における外部設計書の構成(機能一覧,画面設計及び帳票一覧)及びプロジェクト計画書(甲63〔本文13〕)における外部設計書の構成(画面設計書,帳票設計書及びインタフェース設計書)と類似していること,②上記文書(甲158の1)の2枚目及び3枚目が,要件定義書サンプル(乙528)の12枚目及び13枚目と同一書式で作成されており,ユーザに提供されることを前提とする文書であること(一審被告の主張するように,SE向けの内部設計書であるなら,このようにユーザに提供される文書として作成されていないはずである。)から明らかである。
このように,一審被告は,本件訴訟における主張とは異なり,本件システムの引渡予定日の直前になってではあるが,外部設計書を現に作成して一審原告に提出している。

平成21年3月3日の推進事務局会議において,「要件定義書とし
て確認できるものを提示してほしい。」とシステリア考房が要望したことに対して,一審被告は,「各WGでは,技術仕様書の項目について,詳細に要件定義を実施している。それらをまとめた要件定義書を提示できるのは3月末となる。」と回答した(甲143〔2〕)。また,G副部長が,①同年8月31日,各種ドキュメント(要件定義書,画面設計書,帳票設計書,インタフェース設計書,データ移行設計書等)の確認作業を行うことを求めるメールをし(甲96。これを受けて,同年9月8日から同月24日にかけて,専門部会及び推進事務局会議において,カスタマイズ設計書の確認等が行われた。甲97ないし99の各2),②同年10月4日に「一刻も早くドキュメントベースに貴社の仕事を点検させて頂きたい。」とメールし(甲100,145),③同年12月3日に「本日帳票全種を揃えて提出頂けませんでした。」,「明日(4日)にあらためて資料提出をお願い致します。」とメールするなど(甲101,146),繰り返し要件定義書等の提出を求めたのに対して,一審被告は,本件訴訟において主張しているような内容の回答は一切しなかった。
こうした一審被告の対応は,要件定義書等に関する本件訴訟における一審被告の主張と矛盾するものである。
(4)争点(4)(本件仕様凍結合意の意味)について

本件システム開発ではウォーターフォールモデル(後戻りしない形で開
発を進める開発手法であり,各工程から次の工程に進む際に文書化を徹底し,ベンダ・ユーザ双方が確認することに特徴がある。)が採用されていたが,平成21年7月7日の第8回専門部会において本件仕様凍結合意がされた時までに,要件定義書等は提出されておらず,当然ながら,これら書面について一審原告の承認も得ていなかった。要件定義書等が未提出の段階では,要件定義工程や外部設計工程は終了しておらず,これらの工程をやり直さないという意味での仕様凍結の段階に至っていたとはいえない。このような段階では,ユーザは細部を確認することも,業務や運用の変更の周知やシステム更新日の前後の対応を検討することもできないのであって,ベンダがユーザの追加開発要望を拒否する前提を欠く。

CPLらは,第8回専門部会において,一切の追加カスタマイズに応じ
ないとは説明していないし,仕様凍結の意味も説明していなかった。本件仕様凍結合意後も,画面イメージや帳票サンプル等が確定していないものがあったし,一審原告がWGにおける検討結果を反映した書面や修正後のイメージ
(サンプル)
の提出を求めても,
これらの提出はなかった。
したがって,ユーザである一審原告としては,これらについて要望や検討できると考え,期待するのが当然である。
現に,一審被告のA取締役も,平成22年3月23日に,一審原告と一審被告との間で「仕様凍結」の意味について認識の相違があったことを認めていた。

CPLらは,第8回専門部会において,平成21年7月第1週から第3
週にかけて「外部設計#2(カスタマイズ)」を行う予定であること(乙3)を明らかにした上で,順次設計内容の確認を行わせていただきたい旨説明しており,実際,本件仕様凍結合意後も,書面(カスタマイズ仕様書等)又は開発したシステムの確認を一審原告に求め,一審原告の指摘を受けて修正を行うなどしていた。本件仕様凍結合意後一切の変更等を想定していなかったというのであれば,上記のように一審原告の確認を求めたりする必要はなかったはずである。

一審原告が一審被告からデモ機を借り受けていたなどの事実はあるもの
の,デモ機は全ての機能が網羅されたものではなく,また,経営企画室に置いてあったため一審原告病院全体でパッケージを十分に確認できる状況にはなかった上,一審被告のSEからはパッケージの機能と現行システムの機能との違いが繰り返し指摘されるなどしており,他病院への導入実績があるパッケージだからといって信頼できるというような状況にはなかった。そのような状況で,一審原告が,今後一切の追加開発要望を出さないという合意をするはずがない。

平成21年7月6日の第12回推進事務局会議において,一審被告がカ
スタマイズを約束した項目以外には対応できないと回答したことに対し,一審原告は,特段の異議を述べなかった。また,翌7日の第8回専門部会において,B教授は,今後開発プログラムが徐々に出来上がってくると発言した。
しかしながら,これらは,電子カルテカスタマイズ要望一覧(甲7)の導入範囲欄に「○」が付されたものを開発対象とすることを一審原告が了解したということを示すものに過ぎず,これらの事実から,一審原告が今後一切の追加開発要望を出さないという意味を読み取ることはできない。カ
そもそも,本件システムの運用開始日が当初予定していた平成21年9
月24日から変更されたとしても,一審原告としては,現行システムの使用を継続すれば足りることであって,開発対象を絞ってまで本件システムの運用開始を早めなければならない事情はなかった。

以上のとおり,本件仕様凍結合意は,一切の追加開発要望を出さないと
いう趣旨のものではなかった。
仮に一審被告が本件仕様凍結合意を上記の趣旨で理解していたとしても,一審原告はそのような認識は有しておらず,これは,仕様凍結の意味やその後の手続等について適切な説明をしなかった一審被告の責任であって,本件仕様凍結合意以後に追加開発要望(171項目の追加要望など)が出たことによる不利益を一審原告に課することはできない。
(5)争点(5)(171項目の追加要望の開発対象該当性)についてア
本件要求仕様書等には,政府調達に関する協定との関係上,システムの
画面設計や詳細動作まで記載することができず,これらは要件定義工程及び外部設計工程において協議されることとなっていた。
また,前記(3)アのとおり,一審被告は,分類1及び2についても,WGで要件定義及び外部設計に関して実装協議を行い,カスタマイズを行う義務を負っていた。
そして,前記(4)のとおり,本件仕様凍結合意当時,要件定義書等が未提出であり,WGにおいて仕様が未検討又は確定していない事項があったから,「仕様凍結」といっても,一審原告は,少なくとも画面,帳票及び操作性に関わる開発要求を行うことは許される状況にあったし,不具合の指摘も当然許される状況にあった。
171項目の追加要望のうち,一審原告が要望したとは認められない項目(通番011,035,091,105(163と同じ。),114,117,118,131,135,142,162)及び一審原告が開発対象外の開発要望であることを自認する項目(通番136,144,145)以外は,全て,要件定義書等が提出されておらず,仕様が確定していなかった仕様についての画面,帳票及び操作性に関する要望又は不具合の指摘等であり,開発対象外の開発要望ということはできない。

個別の項目について(171項目の追加要望は,一審被告に帰責性がな
いことの理由として主張されているものであるから,一審原告が本件仕様凍結合意後に追加要望をしたこと,同要望が開発対象外のものであることについて,一審被告に立証責任があるものというべきである。)
(ア)通番007ないし010の要望2について
「検査同意書取得対象オーダの場合,バーコード付き検査同意書を自動印刷する。」という機能を求める要望であるが,同意書取得確認欄ラジオボタンのうち「する」を選択し,更に「OK」ボタンを押さなければ印刷されないというのであれば,
「自動」
印刷ということはできない。
仮に自動印刷機能が一審被告のシステムで提供されているのであれば,一審原告の要望2は,単なる確認を行ったに過ぎず,開発対象外の開発要望ということはできない。
(イ)通番016について
仮ラベルを二連ラベルにすることを求める要望であるが,仮ラベルは正規ラベル(電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-259により二連ラベルにすることが合意されていた。)を「仮」に発行するものである以上,仮ラベルも二連ラベルにすべきことは当然のことであり,開発対象外の開発要望ということはできない。
(ウ)通番020について
本件システムとナースコールシステムとの間の電文情報について情報の欠落が生じていたため,一審原告がその旨の指摘を行ったに過ぎず,開発対象外の開発要望ということはできない。
(エ)通番024について
本件システムに,現行システムの仕様に沿ったスキャン用バーコードを実装するよう求めたものであるが,実装する仕様については一審原告と一審被告との間で協議されておらず,パッケージ標準機能で対応するものと決まっていたわけでもないから,少なくとも開発対象外の開発要望ということはできない。
(オ)通番027について
前記(4)のとおり,
本件仕様凍結合意後も追加開発要望が一切許されな
いわけではなく,一審原告の要望は,一審原告と一審被告との間で個別的にした合意に基づくものである。プリンタの変更が納期遅延の原因になるとは考えられない上,パッケージとリコー製のプリンタとの組み合わせはNTT札幌病院等でも実績があり,全面的な見直しが必要になるものでもない。
(カ)通番036について
一審原告は,平成21年8月14日,電子メールにて,パスワードの暗号化アルゴリズムをSSHA方式とするよう指示したのであるから(甲183),暗号化アルゴリズムはもともとSSHA方式で確定していた。
その後,三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社(一審原告側の業者。以下「三菱電機IT」という。)から一審被告に対して,暗号化アルゴリズムをSHA-256からSSHA方式に変更したい旨のメールがなされているが(乙560),これは,単に,一審被告からの問合せに対する回答に過ぎないと考えられ,暗号化アルゴリズムを新たにSSHA方式に変更することを求めるものということはできない。
(キ)通番066について
一審原告のH技師が一審被告に交付した輸血依頼伝票のサンプルは甲184添付資料2と同一であり,同サンプルには抗体情報や休日の保管コメントが記載されていたのであるから,これらを記載するようレイアウトの変更を求めたことは,本件技術仕様書記載の具体化・詳細化に過ぎない。
(ク)通番067について
採取ラベルへの印字情報は現行システムと同等の内容とするものとされている(電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-343)にもかかわらず,マスタデータに登録がない材料名が「その他」と印字されることの修正を求めたものである。
一審被告の開発した本件システムにおいて材料名が「その他」と印字されるのは一定以上の頻度があり,その都度システム上で確認していては,業務が停滞することになる。
(ケ)通番071について
病棟看護師長等が全患者と全てのオーダ種について,現在の進行状況がわかるように修正してほしいというものであり(本件技術仕様書(C-7)[Ⅱ]2-2-5-4「患者毎,複数選択患者毎に指示受け対象・非対象を問わず,オーダの一覧を状況別(全て・実施・未実施)に表示する画面を有する機能をご提供します。」),分類3とされている。一審被告は,平成20年12月26日の第2回看護業務支援WGにおいてパッケージ標準機能
(分類1)
によることと合意された旨を主張するが,
同WGの議事録(甲219)にはそのような記載はなく,一審被告の主張するような合意がなされた事実は存在しない。
一審原告は,平成21年10月に初めて「指示受け」画面の確認をした後,上記本件技術仕様書記載の仕様に即した内容の開発を求めたに過ぎず,開発対象外の開発要望ということはできない。
(コ)通番072について
通番035同様,一審原告の一審被告に対する質問に過ぎず,開発対象外の開発要望ということはできない。
(サ)通番083,170について
一審原告は,歯式で検査部位を登録することを求めてはおらず,歯科への対応を求めたに過ぎない。
本件システムが歯科に対応していたのであれば,専門部会でその旨を説明すれば足りたはずである。その説明がなかったのは,本件システムが歯科に対応していなかったか,CPLら一審被告のSEが本件システムを熟知していなかったかのどちらかである。
(シ)通番099について
一審原告が一審被告に提供した現行システムのサンプルラベルには採取管コメントが印字されており,一審被告がこれを見落として採取ラベルを作成したことについて修正を求めたに過ぎないから,開発対象内の開発要望である。
(ス)通番101について
一般細菌検査オーダの薬剤感受性結果欄の「菌」欄の検査結果の表示が縦に揃っておらずズレの修繕を求めたものである。
一審被告自身,第1回外来リハーサル反省会において不具合であると認めており(甲10の1〔4〕),不具合の指摘に過ぎない。
(セ)通番103について
一審原告が一審被告に提供した現行システムのサンプルラベルには負荷薬剤情報が印字されており,一審被告がこれを見落として採取ラベルを作成したことについて修正を求めたに過ぎないから,開発対象内の開発要望である。
なお,一審原告が,負荷試験入力画面から登録された負荷薬剤の情報を,それとは別画面である検体検査オーダ詳細画面へも反映させるよう求めたとの事実はない。
(ソ)通番114について
一審被告の主張する要望時期(平成21年8月頃)と問題管理票の記載(同年12月4日に本要望が出された旨)が整合しておらず,一審原告が追加開発要望をしたことが立証されていない。
(タ)通番126について
医師が本件システムで細菌検査をオーダした際に,
「プロブレム情報」
が送信されるシステムになっていたものを,「病名情報」を送信するように変更を求めたものである。プロブレム情報を利用していない診療科の場合,病名情報が部門システムに送信されないという不具合が生じることになるため,上記変更を求めた。
本件技術仕様書では分類1となっているが,パッケージ標準機能では本件技術仕様書で実装することになっている「病名情報を部門システムに送信する」機能が実現できない診療科があるのであるから,同機能を実現できるようカスタマイズすべきことは当然のことである。
(チ)通番133について
一審原告の要望に即した内容は,一審被告のISEが交付した検討資料(甲81の2〔5〕)に記載されており,一審原告と一審被告との間で合意が成立していたことが明らかである。171項目の追加要望の多くは,専門部会で検討されることなく開発に着手されており,WGにおける担当者間で追加開発合意を行うことが否定されていたわけではない。
(ツ)その他の41項目(通番005,006,015,017,026,028,029,031,032,045,048,055,056,058,059,060,062,063,068,078,079,080,081,084,087,092,094,098,104,107,108,112,113,123,128,134,137,138,161,165,171)も,不具合の指摘にほかならず,開発対象外の開発要望ということはできない。本件システムは導入費が16億円以上もする高額なシステムであるから,使用に耐えないかどうかという低レベルの基準ではなく,金額に見合った高レベルの基準を満たしているか否かという観点から不具合の有無を判断すべきである。(6)争点(6)(一審原告のマスタの抽出義務の有無等)についてア
マスタの抽出義務について
一審原告は,現行システムからマスタを抽出し,入力作業を行うという義務を負ってはいなかった。
(ア)本件要求仕様書(甲4)には,「移行するデータ対象は,現病院情報管理システムに残る全てのデータ(旧システムデータと言い,これにはマスタデータを含む。の内,

診療・医事業務の継続に必要な範囲とし,
本学と協議して定めるとする。」((D)1-11-2-1)とした上で,
「旧システムデータの抽出作業費用は,
本調達に含まれる。(
」(D)
1-11-2-3)と記載されていた。
一審被告は,
上記要求に応諾し,
これに沿う内容の本件技術仕様書
(甲
6)を提出して入札したのであり,その旨は,平成20年10月9日に実施された応札者に対する1回目のヒアリングの際にも確認している。また,プロジェクト計画書(甲63〔本文12〕)でも,「データ移行」について,「既存システムに格納されている情報を新システムへ移行する。移行範囲は大学殿と協議のうえ,決定する。」と記載されている。同書面には,「マスタ作成」を一審原告が行うかのような記載があるが,これは,後記(エ)のとおり,現行システムにはないマスタを新たに作成する作業のみを意味するものである。
(イ)一審被告は,提案補助資料(乙11)に,一審原告がCSV形式でデータ抽出を行うことを前提とした記載があることを根拠に,一審原告にマスタの抽出義務があったと主張する。
しかしながら,
上記(ア)のとおり,
データ移行の方法等を契約後の協議
事項とすることは本件要求仕様書及び本件技術仕様書に明記されており,一審原告は,応札者に対する1回目のヒアリングの際にもその旨を確認した上で,一審被告を落札者としたのである。一審原告にはマスタをCSV形式で抽出する能力などなく,ベンダであるNEC又は一審被告に依頼するほかなかったが,その場合の費用を別途一審原告が負担しなければならないとすると,上記(ア)のとおりデータ抽出費用を一審被告の負担とした意義が失われてしまう。
提案補助資料は本件技術仕様書の下位に位置付けられる文書であって,提案補助資料の記載と本件技術仕様書の記載とが矛盾している場合には,本件技術仕様書の記載が優先されると解すべきである。
(ウ)平成20年11月14日のキックオフで配布されたプロジェクト概要(甲88)には,運用開始後もメンテナンスが必要なマスタについては一審原告が設定するかのような記載があった。
そこで,キックオフの席上,「マスタの移行」は全部一審被告がしてくれるのかとD薬剤師が質問したところ,CPLは「はい,結構でございます。」と回答した。ここで用いられた「マスタの移行」という用語は,
「原則として変更しないマスタ」のみならず,
「継続的な設定変更・
確認が必要なマスタ」も含んでいたことは明らかである。
(エ)一審被告が作成したマスタスケジュールでは,マスタ作成の主担当は一審原告とされていた。
しかしながら,マスタスケジュールにおける「マスタ作成」とは,現行システムにはないマスタを新たに作成する作業のみを意味するのであって(これらの作成義務を一審原告が負うことまでも争うものではない。),現行システムからのマスタの抽出義務を一審原告が負っていたことを示すものではない。
(オ)平成21年3月31日の第9回推進事務局会議において,一審被告から,抽出できないマスタに関して,「移行できない項目は,病院様からの指示,例えばマスタ設定ができる資料のご提出により弊社がマスタ設定を行い,病院様に確認していただくか,病院様に設定していただく。」との発言があった。これは,一審被告が現行システムからのマスタの抽出義務があることを前提として,抽出できない場合には一審原告又は一審被告がマスタを設定する可能性を示唆する発言に過ぎない。
また,同年4月27日の第7回専門部会において,J医師が「なるべく職員がマスタを作成することがないようNTTにお願いしたい。」と発言したが,これも,一審被告が現行システムからのマスタの抽出義務があることを前提として,一審被告が抽出できないマスタについて,一部一審原告が協力せざるを得ない事態になってきた旨の発言に過ぎない。
いずれにせよ,上記発言ないしこれに対する一審原告の反応は,一審原告がマスタの抽出義務を負っていたことを自認したものということはできない。
(カ)一審被告は,下記のとおり,マスタの抽出作業を行い,あるいは,同抽出義務があることを前提とする行動を採っていた。

一審被告は,マスタのデータ抽出に関してNECと協議した上で,
平成20年12月19日及び平成21年1月14日,現行システムの既存マスタのデータ抽出に関する見積書を取得した(甲242の1。もっとも,一審被告は,同月28日,NECに対して,マスタ移行業務を依頼しない旨を連絡しているが,これは,一審被告が開発費を削減するためであったと考えられる。)。

一審被告は,
平成21年1月26日の推進事務局会議において,
「マ

スタ移行について,NECと守秘義務を締結して検討を進めている。また,既存DBから実データをぬきだすことに了解をいただいている。」(甲243)と説明した。そして,一審被告は,同年3月17日の第6回専門部会において,現行システムからマスタを抽出済みである旨の報告を行っている(甲113の1,244)。
また,一審被告は,部門ベンダであった検体検査システム,物流システムについて,NECに委託してマスタの抽出作業を行ったし(乙280ないし283の各1,
425ないし428の各1,
577
〔8,
12〕),54の薬剤マスタのうち33について,一審被告のSEが抽出作業を行った(乙13,14,524〔47〕)。

一審被告にマスタの抽出義務がないのであれば,一審被告が上記の
ようにマスタの抽出作業に関する見積書を取得したり,実際にマスタの抽出作業を行ったりすることはなかったはずである。

マスタの抽出義務の懈怠について
(ア)上記のとおり,一審原告にはマスタの抽出義務はなく,当然ながら,その懈怠もない。
一審被告が,33の薬剤マスタを作成したことは,一審被告が自らの義務を履行したというに過ぎない。
また,現行システムのマスタは,データとして本件システムに移行されることから,途中の点検は想定されておらず,一審被告が作成したマスタについてD薬剤師らが検証,動作確認を行わなかったという事実も存しない。
さらに,マスタスケジュールでは,仕様凍結後にマスタ作成が行われる予定であった。しかるに,本件仕様凍結合意後である平成21年10月13日になっても,WG担当者に外部設計書の一部が五月雨式に提出されているような状況であり,いわゆる「仕様凍結」の段階に至っていなかったのであるから,マスタを先行して提出するような状況ではなかった。加えて,同年4月27日の第7回専門部会でCPLが提供を約束した他病院の処置マスタが実際に提供されたのは同年10月6日であり,一審原告は,一審被告から十分なマスタ作成支援が得られなかった。一審原告は,そのような状況下でもマスタ作成義務を果たした。処置マスタの確認提出期限である同年10月13日までに提出しなかった診療科は,追加,修正又は削除が不要であった診療科であり,期限を徒過したものではない。
(イ)一審被告は,マスタのデータ抽出に関し,一審原告がNECへの協力依頼等を怠った旨を主張する。
しかしながら,一審原告は,平成20年11月17日の打合せにおいて,NECに対して,データによる移行が可能なものについては可能な限りデータで移行するよう要望し,一審被告に協力することを求めて,積極的な協力依頼を行った。この後のNECと一審被告との協議は,両者の間で行われるものであって,一審原告が関与すべき性質のものではない。
(7)争点(7)
(本件プロジェクト頓挫についての一審原告と一審被告の責任)

ついて

前記(5)のとおり,
一審原告が多くの開発対象外の開発要望を出したとい

う事実はなく,また,前記(6)のとおり,一審原告にマスタの抽出義務違反も認められず,本件プロジェクトの遅延は一審原告の責任によるものではない。

前記(5)イ(サ)のとおり,CPLを含む一審被告のSEはパッケージを熟
知していなかった可能性があり,このため本件システムに関して一審原告に適切な提案等ができず,また,カスタマイズを実際に行うIBMに適切な指示がされなかったことが容易に推認され,これが本件プロジェクトの遅延の一因になっているものと考えられる。
このほか,一審被告のSEが作成した問題管理票には,実態を反映していないものも少なくなく(乙101,104の2,乙111など),これらも,
一審被告のSEの資質欠如(本件システム開発遅延の一因)
を示すも
のである。

171項目の追加要望のうち,開発対象外の開発要望は3項目(通番1
36,144,145)に過ぎず,これが原因となって本件プロジェクトが遅延したということはあり得ない。
171項目の追加要望のうち上記3項目を除くものはいずれも開発対象外の開発要望ではなく,もともと追加費用の支払は不要であったし,一審原告が追加費用の負担に応じる旨の覚書(案)(乙533参照)は結局締結されなかったのであるから,一審原告が追加費用の負担に応じなかったのは当然のことである。
仮に上記3項目以外に開発対象外の開発要望があったとしても,本件追加開発合意自体が一審被告の処理能力を超える過大なカスタマイズを約束したものであったのだとすれば,その後になされた171項目の追加要望が本件プロジェクト頓挫の原因となるものではない。

仮に一審原告がマスタの抽出義務を負い,その一部について義務違反が
あったとしても,これが本件プロジェクト遅延の原因になったという事実は存しない。
(ア)一審被告自身,本件プロジェクト遅延の原因として,開発スケジュールの進捗管理に問題があったこと,現場の医師とのコミュニケーション不足があったことを挙げる一方で,一審原告のマスタ抽出義務違反をその原因として指摘していない(甲207)。
(イ)一般に,マスタデータは膨大である上に,医療機関の行う医療行為は一定程度同質性,共通性が認められることから,ベンダは,システム導入に当たって,ユーザにマスタの作成を求める場合には,①既存システムのベンダに依頼してマスタデータを抽出し,新システムに格納できるフォームにしたものをユーザに提供する,②サンプルマスタデータをユーザに提供する,③自社システムを利用している他施設のマスタデータをユーザに提供するなどの方法で,ユーザのマスタ作成に関する業務を支援する義務を負う。
ところが,一審被告は,前記(6)ア(カ)のとおり,NECからマスタ抽出作業の見積りを取得しながら,結局これを依頼せず,一部のデータしか抽出作業を行わなかった。
また,
一審被告は,
平成21年4月27日の第7回専門部会において,
他病院のマスタの提示について調整する旨を説明したが,同年10月6日までその提供をしなかった。このため,一審原告は,他病院のマスタデータをもとにして処置マスタ作成を作業することができなかった。さらに,マスタスケジュール(乙3)上,平成21年5月から同年11月末までがマスタ作成期間とされていたのに,処置・指示マスタの作成に関する第1回WGの開催が同年9月29日になるなど,マスタ作成支援体制が遅く,不十分だった。
このように,
一審原告にマスタの抽出義務違反が認められたとしても,
それは一審被告のマスタ作成支援業務が不十分だったためであり,一審原告に帰責性はない。
(ウ)一審被告は,前記(6)ア(カ)のとおり,マスタ移行業務に関して,NECから平成21年2月2日に見積書を取得していながら,同年9月28日までNECとの間で契約を締結せず,同契約締結後も,NECとの間で,
3回にわたって追加契約を締結した
(乙281ないし283の各1)

これらは,一審被告のデータ移行の方針が定まっていなかったことを示すものであって,マスタが原因で本件プロジェクトが遅延したのだとしても,それは一審被告の責任である。

一審被告は,
一審原告が現行システムの情報提供を怠った旨を主張する。
(ア)しかしながら,一審原告は,前記(6)イ(イ)のとおり,現行システムの情報を保有しているNECに対し,一審被告に協力する旨を申し入れている。これを超えて,一審原告が現行システムの情報提供を積極的に行うべき義務があったということはできない。
(イ)のみならず,一審原告は,一審被告に現行システムのログイン権限を付与するなどして(甲170〔5〕),一審被告が現行システムを理解できる環境を整えたり(乙2の2〔4〕参照),現行システムに関する画面イメージや帳票サンプル等を一審被告に交付するなどしており(甲237ないし240),現行システムの情報提供を行った。

一審被告は,本件催告に対し,要求された事項を期間内に履行した旨を
主張する。
しかしながら,本件で問題となる「履行」又は「履行の提供」は,本件システムを使用できる状態にして搬入,据付,調整等を完了して引き渡すことであって,一審被告がこれらを行わなかったことは明らかである。キ
一審被告の主位的請求及び予備的請求1について
システム開発の注文者に協力義務があるという一般論は認めるが,一審
原告には協力義務違反は認められず,また,本件システムが完成していない以上,受領義務違反も認められないから,一審被告の主位的請求及び予備的請求1には理由がない。
(8)争点(8)(一審原告の損害額)について

違約金について
(ア)本件原契約31条2項は,リース料金の総額から履行完了部分に相応する金額を控除した額の10分の1に相当する額を違約金の額としている。
本件契約はリース契約であるから,上記「履行完了部分」も,システム開発の完成程度によって決められるべきではなく,リースが完了した部分によって決められるべきである。
本件システムは運用開始すらしていないのであるから,リース契約の「履行完了部分」は存在せず,リース料金の総額の10分の1に相当する額がそのまま違約金の額になる。
(イ)本件契約(システム開発)の法的性質は請負契約と見るべきであり,原則として仕事を完成するまで報酬を請求することはできない。建築請負と違って,6割の完成,8割の完成というように給付の目的が可分となる性質のものではないし,他ベンダがシステム開発を続行して残部を完成させることができるというものでもない。
本件システムは完成していない以上,本件原契約31条2項「履行完了部分」は0というほかない。
(ウ)仮に本件システムの一定割合が完成していたとして,リース料金の一定割合を「履行完了部分」と評価するとしても,リース料総額24億3432万円の中に含まれる保守費7億8986万5923円は控除して計算すべきである。保守費は,システム開発が終わって,システムが運用開始した後にシステムの安定稼働のために要する費用であり,いわば,システム安定稼働のための保険のようなものだからである。
本件システムの本件解除時の完成度を敢えて評価するならせいぜい7割と見るべきであるから,本件システムの「履行完了部分」は,リース料総額の内保守費を除いた16億4445万4077円の7割(11億5111万7853円)と見るべきであり,これを前提とすると,違約金の額は1億2832万0214円となる。
(式)(2,434,320,000-1,151,117,853)×0.1イ
薬剤業務支援システム導入費用について
本件技術仕様書上,本件システムと接続が予定された既存の薬剤部門シ
ステムとは,「調剤支援システム((株)トーショー製),自動錠剤分包システム((株)トーショー製),注射薬自動払出しシステム((株)セントラルユニ製)」とされていた。
薬剤業務支援システムは,上記注射薬自動払出しシステムを更新するシステムとして,平成21年11月30日に契約が締結され,平成22年4月1日の運用予定で導入されたものである。
本件システムの運用開始は同年1月4日とされていたのであるから,運用開始時点では,本件技術仕様書記載の注射薬自動払出しシステム((株)セントラルユニ製)と接続が予定されており,同年4月1日からは更新後の薬剤業務支援システムと接続される予定であった。
したがって,一審被告にとって薬剤業務支援システム導入が予見できたか否かは無関係であって,同システム導入費用は一審被告の債務不履行と相当因果関係のある損害と認定されるべきである。

眼科部門電子カルテシステム等導入費用について
一審被告が同システム導入を見送ったのは,他部門が紙カルテのままで
あるのに,眼科部門だけが電子カルテでの運用となった場合,診療上の支障防止や医療安全の確保等の見地から問題があると判断した結果であって,合理的な理由に基づくものである。

鉄板費用について
一審被告がサーバの移設先として同意した病院1階エレベータ前室は,
もともとサーバを置くことが予定された場所ではなく強度が不足していたことから,鉄板の敷設が必要になったものである。
したがって,一審被告が鉄板敷設を知っていたか否かを問わず,鉄板敷設費用は原状回復に必要不可欠なものとして,一審被告の債務不履行と相当因果関係のある損害と認定されるべきである。

コンサルティング費用について
本件契約締結前のコンサルティング費用も,本件要求仕様書作成のため
に必要な費用として,一審被告の債務不履行と相当因果関係のある損害である。
また,一審被告の債務不履行がなければ,本件システム運用開始予定日以降において,本件プロジェクトを継続すべきか否かという無駄な作業を強いられることもなかったのであるから,本件プロジェクトを継続するか否かを検討するためのコンサルティング費用も,一審被告の債務不履行と相当因果関係のある損害と認定されるべきである。

更新契約締結に伴う損害について
現行システムの保守期限は平成21年12月末日であり,保守期限を超
えて現行システムの運用を続けた場合,各種データの記憶容量が早晩不足するばかりか,システム障害の発生も懸念されたため,一審原告は,平成22年6月29日にNECとの間で更新契約(契約期間は同年10月12日から平成25年12月31日まで)を締結せざるを得なかった。他方,カルテ等の電子化は国の施策として推進されていたものであり,平成22年度のカルテ等の電子化の状況は,全国42の国立大学病院中,未実施が5病院(一審原告病院を含む。)に過ぎなかったから,一審原告病院においても,早期にカルテ等の電子化を行うことが喫緊の課題となっていた。このため,本件システムに代わるものとして,平成26年1月から新システムを導入したものである。平成28年10月まで現行システム(診療録等の電子化に対応していないシステム)
の使用を継続することは,
上記の国の施策に反し,地域医療の拠点となる国立大学病院におけるカルテ等の電子化を不当に遅延させることになる。
このため,一審原告は,6年分のリース料(病院情報管理システムは,耐用年数等を考慮して6年間でリース契約を締結することが前提となっている。)を支払って,リース期間を約3年2か月として現行システムの更新契約を締結せざるを得なかったのであり,その差額3億0868万6414円が一審原告の損害となる(計算根拠は原判決51頁22行目冒頭から同52頁21行目末尾までに記載のとおりである。)。

逸失利益のうち,カルテ等保管場所の他施設への移行の遅れによる損害
について
(ア)一審原告は,本件システム導入によってカルテ等が電子化されれば,カルテ及びX線フィルムの保管場所が空き,空いたスペースを利用してICU,点滴センター,透析室の各施設の増床を図り,収益を上げる予定であった。一審被告の債務不履行によってこれら収益を上げられなかったことによる逸失利益は7億2851万8000円である(計算根拠は原判決53頁23行目冒頭から同54頁23行目末尾までに記載のとおりである。)。
(イ)予備的主張

2億0059万6183円(甲222)

カルテ等が電子化されても,カルテやX線フィルムの保管場所が一挙に不要になるわけではないが,カルテの保存期間は5年間であるから,
1年に5分の1ずつ,
カルテの保管場所が空くという関係にある。
カルテ保管庫の床面積は2室合わせて326㎡であり,一審原告病院の建物延べ面積(6万0038.99㎡)に占める割合は0.005429805である。
一審原告病院の平均年間利益(過去3年間の平均)は93億2888万5667円であるから,これに上記割合を乗じて,カルテ保管場所が完全に空きスペースになった場合に同スペースが生み出すであろう年間利益を算定すると,5065万4030円となる。
93億2888万5667円×0.005429805
=5065万4030円
上記のとおり,1年間に5分の1ずつカルテ保管場所が空くと仮定して,1年目,2年目,3年目,4年目のそれぞれ得られたであろう利益を計算すると,下記のとおり合計1億0130万8060円となる。
5065万4030円×1/5=1013万0806円
5065万4030円×2/5=2026万1612円
5065万4030円×3/5=3039万2418円
5065万4030円×4/5=4052万3224円

X線フィルムは保存期間が3年であるから,1年に3分の1ずつスペースが空く。
X線フィルム保管庫の床面積は213㎡であり(一審原告病院の建物延べ面積の0.003547695),同様に,X線フィルム保管庫が完全に空きスペースとなった場合に同スペースが生み出すであろう年間利益は3309万6041円になる。
93億2888万5667円×0.003547695
=3309万6041円
同様に,1年目,2年目,3年目,4年目のそれぞれ得られたであろう利益を計算すると,下記のとおり合計9928万8123円となる。
3309万6041円×1/3=1103万2014円
3309万6041円×2/3=2206万4027円
3309万6041円×3/3=3309万6041円
3309万6041円×3/3=3309万6041円


上記a,bの合計2億0059万6183円が,保管場所が空くことによって得られたであろう逸失利益となる。


弁護士費用について
本件は,システム開発に疎いユーザである一審原告が,責任原因を否定する一審被告に対して訴訟提起を余儀なくされたものであって,先例が乏しく,かつ,極めて専門性が高いものであるから,弁護士費用も損害として認められるべきである。


遅延損害金の始期について
一審原告は,本件解除通知において,金額こそ記載していなかったが,違約金及び損害賠償を請求する意思を明示していた。
債務者が遅滞となるためには,債務の同一性が認識できれば足り,催告に金額の過不足があっても付遅滞の効果に変わりはないものとされている。
そして,違約金については,本件原契約31条2項及びリース料総額から容易に算定できるのであるから,少なくとも違約金2億4343万2000円の遅延損害金の始期は,本件解除通知が一審被告に到達した平成22年4月26日とすべきである。
(9)争点(9)(一審被告の損害額)について

一審被告は,本件システムが完成・納品されていれば,NTTファイナ
ンスから売買代金23億6230万2404円(導入費15億7243万6481円及び保守費7億8986万5923円)を取得できたから,同金額が一審被告の損害となる旨主張する。
しかしながら,上記保守費は,前記(8)ア(ウ)のとおり,システム運用開始後に,システムに問題が発生した場合に備えた保守体制を敷くことへの対価であり,一審被告は,本件契約が解除されたことにより,上記保守体制を敷くことから解放される関係にある。
K部長の陳述書
(乙308
〔3〕

及び供述(証人K〔2〕)によっても,NTTファイナンスから受領予定であったのは導入費だけであり,
保守費は受領予定にはなっていなかった。
したがって,保守費は相当因果関係のある損害とは認められない。イ
また,一審被告とNTTファイナンスとの売買契約は本件システムが納
品された段階で締結される予定だったのであり,売買契約締結に至ることができるか否かは,もともと,本件プロジェクトの内容や進捗に左右されるものであった。すなわち,上記導入費についても,これをNTTファイナンスから取得できるというのは,一審被告の期待という程度のものであって,具体的な見込みがあったということはできない。

仮に上記売買代金が一審被告の損害であるとしても,平成22年1月4日の運用開始予定時点における本件システムの完成度合は6割程度であったと見るべきであるから,上記金額の6割に限って,一審被告の損害と評価すべきである。
(10)争点(10)
(一審被告の商法512条に基づく報酬請求権の有無)
について
商法512条は,民法が委任等について無償を原則としているものについて「相当の報酬」を認めた例外的規定であり,予め有償とする合意があり,代金額が決定されている場合には適用される余地はない。
4当審における一審被告の主張
(1)争点(1)本件システムの引渡日を平成22年1月4日以降へ延期するとの(
合意の有無)について
一審原告は,本件プロジェクト開始直後から大量の開発対象外の開発要望を出したため,平成21年7月7日,一審被告がこのうち625項目を受け入れる(本件追加開発合意)一方で,リースの開始時期を同年9月24日から平成22年1月4日へと変更した(本件変更契約)。
このような経緯に鑑みれば,大量の開発対象外の開発要望がなされれば,当初の履行期内に開発を完了することが不可能になることは,一審原告も十分理解していたはずである。にもかかわらず,一審原告は,本件仕様凍結合意後も大量の開発対象外の開発要望(171項目の追加要望等)を出したのであり,このような追加開発要望には,納期延長についての了解も当然に含まれていたと解すべきである。
(2)争点(2)平成22年1月3日又は同年4月26日の時点における本件シス(
テムの完成の有無)について

システム開発では,初期段階で軽微なバグが発生するのは技術的に不可
避であり,納品後のバグ対応も織り込み済みであることに照らすと,バグが存在しても,システムを使用して業務を遂行することが可能であり,その後のバグ対応で順次解消される類のものであれば,仕事が完成したと認定して差し支えない。
そもそも,本件契約における一審被告と一審原告との関係は,請負契約に類似の関係であり,契約をした目的を達成することができない瑕疵があるときに限って解除が認められるのであり,多少の不具合があっても仕事の完成は否定されず,契約の解除は許されない。

本件システムは,平成22年1月3日又は同年4月26日時点では完成
していたのであり,仮に多少のバグがあったとしても,それは瑕疵担保責任の問題に過ぎず,契約解除は認められない。
(3)争点(3)(一審被告の本件契約上の義務の範囲)についてア
分類1及び2のカスタマイズ義務の有無について
分類1及び2についても一審被告がカスタマイズ義務を負っていた旨の一審原告の主張は争う。


要件定義書等の提出義務の有無について
(ア)分類1及び2について
分類1及び2については,一から新たに開発するオーダーメイド型の開発は予定されていなかったから,
一般的意味での要件定義書等はそも
そも不要であり,作成は予定されていなかった。
(イ)分類3について

要件定義書について
分類3についてはカスタマイズが予定されていたが,既に本件技術
仕様書(甲6)によって要件定義がなされていたから,一般的意味での要件定義書の作成は予定されていなかった。ただし,本件技術仕様書の要件定義部分を部分的に具体化した資料の作成は予定されており,実際,一審被告は,WGにおいて,各種資料を作成して,一審原告に交付した。

外部設計書について
分類3についてはカスタマイズが予定されており,中には詳細な設計要件が必要である機能もあったから,そのような機能に関する部分については,必要に応じて外部設計を行うことが予定されていた。実際,一審被告は,外部設計のために,画面イメージや帳票サンプル等を作成し,一審原告に交付していた。
ただし,必要のない部分については外部設計のための資料の作成は予定されておらず,分類3についても,一般的意味での外部設計書の作成が予定されていたわけではない。
(ウ)一審被告による要件定義書等の交付等について

一審被告は,平成20年11月5日に「ワーキングの実施に向けて
(案)」と題する書面(乙462〔4〕)において,要件定義工程として,分類1及び2については技術仕様書の確認作業を,分類3についてはカスタマイズ要件書の確認作業を予定している旨を一審原告に伝えた。
そして,同月25日の第1回専門部会事前打合せにおいて,要件定義工程作業実施要領(甲64)を示し,要件定義工程の成果物が,WGにおける配布資料を全てまとめたものであることを説明し,一審原告の了承を得た(乙318)。なお,本件要件定義書は,全てのWGにおける仕様確認が終了した後,専門部会において確認し,一審原告の承認を得ることとなっていたが(乙492),WGにおいて配布された膨大な量の資料を専門部会で全て確認することはできなかったため,専門部会においては,本件技術仕様書記載の各項目が,どのWGで確認されたかを記載した一覧表を配布することにより,本件要件定義書の確認及び承認に代えることとした。
一審被告は,上記合意に基づいて,平成21年3月4日の第5回専門部会において,「技術仕様検討結果報告(要件定義)」(乙537)を交付して説明し(乙2の5「資料4」),その後,電子データを配布して一審原告の確認を求めたところ
(乙2の5
「課題調整事項1」,


一審原告は特段の異議を述べず,
要件定義の確認及び承認は完了した。

一審被告は,平成21年9月24日以前,一審原告から,分類1及
び2の要件定義書等の提出を求められたことはない。
追加カスタマイズ項目の画面イメージ及び帳票サンプル等も,同年12月8日までに全て提出している。

一審被告が平成21年12月28日に一審原告に提出した文書(甲
158)は,内部設計書であって,外部に示すことを予定した要件定義書等とは異なる。
(4)争点(4)(本件仕様凍結合意の意味)について
本件仕様凍結合意は,一審原告がこれ以降新たな追加開発要望を行うことができないことを意味する。
これに反する一審原告の主張は争う。
(5)争点(5)(171項目の追加要望の開発対象該当性)について171項目の追加要望は,全て本件仕様凍結合意後又は追加要望を締め切った平成21年5月1日以降にされた更なる追加開発要望であるから,開発対象外の開発要望である。このことは,一審被告が,これらを一審原告からの追加要望として管理し(乙6),要望された機能の開発を行っていること(乙20ないし120)から明らかである。
これらが開発対象内の開発要望であるとの点は,契約の成立を主張する一審原告が主張立証責任を負うべき事柄であり,一審原告から開発要望があったことの立証がないというだけの理由により開発対象内と認定することは相当ではない。
(6)争点(6)(一審原告のマスタの抽出義務の有無等)についてア
一審原告は,マスタの抽出義務を負っていたのに,これを怠った。これに反する一審原告の主張は争う。

なお,
一審被告は,
一審被告に移行義務がないマスタの一部についても,
NECに抽出作業を依頼したり,自ら抽出作業を行ったりしているが,可能な範囲で一審原告の作業に協力していたに過ぎず,だからといって,マスタの抽出作業が一審被告の義務に転化するというものではない。
(7)争点(7)
(本件プロジェクト頓挫についての一審原告と一審被告の責任)

ついて

本件システムの完成が遅延した理由の一つは,
前記(5)のとおり,
一審原

告が大量の開発対象外の開発要望を出す等したからであり,一審被告には債務不履行責任がない。

本件システムの完成が遅延したもう一つの理由は,一審原告がシステム
開発の注文者として負っていた協力義務を果たさなかったからであり,一審被告には債務不履行責任がない。
(ア)システム開発は注文者と受注者の共同作業であって,受注者のみでシステムを完成させることはできない。このため,システム開発の受注者は,その開発過程において,機能の確定や資料・情報の提供等,開発のために必要な協力を受注者から求められた場合,これに応じて必要な協力を行うべき協力義務を負っている。そして,注文者が協力義務を果たさなかった場合,受注者に債務不履行責任はない。
(イ)しかるに,一審原告は,前記(6)のとおり,薬剤マスタ,処置マスタ等についてその作成を懈怠し,一審原告が作成すべきマスタの多くを一審被告が代わりに作成することを余儀なくされたし,一審被告がマスタを作成するに当たって必要な協力をしなかった。
また,一審原告は,本件プロジェクト開始当初の合意に反し,現行システムの備える機能を本件システムに最大限取り込むことを要求したが,そのために必要な現行システムの情報(基本設計書等)を十分に提供せず,NECへの協力依頼も十分に行わなかった。
さらに,一審原告は,本件仕様凍結合意の時点において確定済みの機能についても,たびたび変更を要求し,その結果,本件仕様凍結合意後も手戻りが発生し,不必要な作業が増加した。
そして,
前記(2)のとおり,
平成22年1月3日時点で本件システムは
完成していたか,仮に完成していなかったとしても,本件システムのバグ等の不具合は軽微であり,その是正は容易であった。そして,一審被告は,本件システムの完成に向けてなお尽力したいとの姿勢を示していた。ところが,一審原告は,一審被告に対し,同年2月1日に本件プロジェクトの継続が困難であることを口頭で通告して以来,一切の協力を拒絶し,本件システムの完成を妨害した。

以上のとおり,本件システムの完成が遅延したのは,一審原告が大量の
追加開発要望を出し,また,一審原告が協力義務を果たさなかったからであり,一審被告に帰責性はない。

一審原告による本件解除は,民法541条の要件を満たしておらず,無
効である。
一審原告は,本件催告によって,本件契約の履行を催告した上,本件システムが稼働できることを立証するために必要な資料及び開発時期を明示した運用開始までの工程表を平成22年3月16日までに提示することを求めた。
これに対して,一審被告は,同日,「プロジェクト再開に向けてのご提案」と題する書面(甲15)を提出して,一審原告の上記要求に全て応えた。
以上のとおり,一審被告は,本件催告において要求された事項を,期間内に履行した。その後,一審原告は,相当の期間を定めた催告を行っていないから,同年4月26日になされた本件解除は,民法541条の要件を満たしておらず,無効である。

以上のとおり,一審原告には,協力義務違反が認められる。また,本件
解除時までには本件システムは完成していたのに,無効な本件解除を行って不当に受領を拒絶した(受領義務違反)。したがって,一審原告は,債務不履行責任を負う(主位的請求)。
また,上記協力義務違反及び受領義務違反について,一審原告は不法行為責任を負う(第1次予備的請求)。債務不履行責任と不法行為責任とは単なる請求権競合の関係に立つに過ぎず,後者についてより高い違法性が必要であるというものではない。
(8)争点(8)(一審原告の損害)について
一審原告の主張は争う。
(9)争点(9)(一審被告の損害額)について
一審被告に過失相殺されるべき過失はない。
仮に過失相殺が認められるとしても,物品の転用分は,一審原告の債務不履行又は不法行為によって生じた損害と同一の原因によって一審被告に生じた利益ではないから,損益相殺の対象とはならず,過失相殺前の損害額から控除すべきである。
(10)争点(10)
(一審被告の商法512条に基づく報酬請求権の有無)
について
商法512条に基づく報酬請求権は,当事者間に契約が存在する場合の適用を排除するような文言はなく,一審被告の行った業務が本件契約に基づくものであったとしても,商法512条に基づく報酬請求権は否定されず,債務不履行に基づく損害賠償請求権と請求権競合になるに過ぎない。第3当裁判所の判断
1認定事実
前記第2の2項のとおり補正して引用する前提事実に各掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合して認定することができる事実は,以下のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3

当裁判所の判断」の1項のとおりである

から,これを引用する。
(1)原判決58頁8行目「4月」を「3月」と改める。
(2)同58頁14行目「7つ」の後に「の小WG」を加える。
(3)同59頁2行目「B(以下「B教授」という。)」を「B教授」と改める。(4)同59頁3ないし4行目「病院情報管理システム仕様策定委員会」の後に「(以下「仕様策定委員会」という。)」を加える。
(5)同59頁14行目「E(以下「E師長」という。)」を「E師長」と改める。
(6)同60頁5行目「D(以下「D薬剤師」という。)」を「D薬剤師」と改める。
(7)同60頁21行目「A(以下「A取締役」という。)」を「A取締役」と改める。
(8)同61頁3行目「F(以下「FPM」という。)」を「FPM」と改める。(9)同61頁7行目「C(以下「CPL」という。)」を「CPL」と改める。(10)同62頁9ないし10行目
「病院情報管理システム仕様策定委員会
(以下
「仕様策定委員会」という。)」を「仕様策定委員会」と改める。(11)同65頁1行目末尾に「(甲4〔説-4,5〕)」を加える。(12)同65頁17行目「各仕様項目」の前に「5850の」を加える。(13)同66頁6行目「他病院」の後に「機能」を加える。
(14)同66頁11行目「回答した。」の後に以下を加える。
「同月9日に実施したヒアリングにおいて,一審原告は,データ移行の対象に関して,「制限を付けられているようだが,診療・医事業務に必要という仕様なので,
広く解釈させてもらう可能性もある。
対応可能か。と質問し,

一審被告は,「NECからIBMへ切り替わった他病院でのデータ移行の実績を元に,移行範囲を記載しております。この内容でお客様からクレームは頂いておらず,必要十分な範囲と考えております。」と回答した。」(15)同66頁19行目「本件要求仕様書等」を「本件要求仕様書」と改める。(16)同66頁23ないし24行目
「新規導入システムパッケージの機能及び画
面等の確認」の後に「(技術仕様書確認)」を加える。
(17)同67頁2行目
「要求内容の確認」の後に「(カスタマイズ要件書確認)」
を加える。
(18)同67頁15行目「旭川大学病院」を「旭川医科大学」と改める。(19)同67頁25行目「要求仕様書(技術仕様書)」を「本件要求仕様書(本件技術仕様書)」と改める。
(20)同69頁2行目冒頭から同11行目末尾までを以下のとおり改める。「b

CPLは,「マスタには大きく2種類ございます。1つはシステムのベースになる,根幹になる機能を設定するマスタがございます。もう1つは,皆様が日頃お使いになられる,例えば,検査項目が増えた,若しくは,薬剤が増えた,ということがおありになるかと思うのですが,そういう日々メンテナンスが必要もの,随時あるいは定期で変更が必要なものにつきましては,皆様に作成をいただきたいと言う風に思っております。」と説明した。
そして,D薬剤師から「お話の中ではあたかもマスタは現場が新たに作るような形に聞こえたんですけども,実際は動いているシステムがあって,しかもデータ移行をされるということですから,マスタも当然移行ができると言う風に考えられるかと思うのですが,なにか聞いている限りでは,すべて入れてくださいと言う風に聞こえたのですが,その辺はどういうことなのでしょうか。」と質問され,CPLは,「まず要求仕様の中にいただいておりますデータの移行の範囲,こちらはきちんとデータ移行の方をさせていただきます。その中にマスタにつきましても,移行する項目がございますので,こちらにつきましては,マスタの移行の方もさせていただくようにいたします。」,「残ります部分の中で,そのままデータを引き継いできたときに,そのままは使えない部分につきましては,
情報を付加したり,
そういった部分が必要になりますので,
そういったところを一緒に作成をしていければという風に思っております。」と答えた。
さらに,D薬剤師から「大方針の中にありました現行機能の維持という面でのマスタの移行は全部していただけるということでよろしいのでしょうか。」と質問され,CPLは,「はい。結構でございます。」と答えた。(甲89)」
(21)同69頁11行目末尾に改行の上,以下を加える。
「ウ

平成20年11月17日,一審原告,一審被告及びNECの各担当者
が集まって打合せが行われた。
その席上,一審原告の担当者は,「当院のHIS(注・病院情報管理システム)は開院以来,NECが一貫してシステム構築を行ってきた。長い歴史の中で協議を重ねながら作り上げられてきたシステムであり,他施設には見られない独自な機能も多く存在する。」,「システムベンダが変更することでユーザインターフェースが変更になることは必然としても,NTT東日本には現在運用中の機能を確実に継承するようお願いしている。」と述べて,NECの担当者に対し,一審被告への協力を依頼した。(甲227の2)」
(22)同69頁12行目「ウ」を「エ」と改める。
(23)同69頁19行目「要件定義書」を「要件定義」と改める。(24)同70頁1行目冒頭から同8行目末尾までを以下のとおり改める。「(イ)CPLは,席上,要件定義書サンプル(乙528)を配布した上で,「議題4:要件定義工程の進め方について」として,「資料は内部資料であり,通常は病院側に提示していないが,このような資料で各ベンダとの整理を行っている。要件定義工程の成果物として,要件定義書のサンプルを用意した。これから行うWGについてもこれらの資料を使ってコントロールしていく。要件定義書の構成は,対象範囲の定義と機能一覧。機能一覧にて各ベンダの持つシステムの機能を説明し,これが病院様に提出した技術仕様書(注・本件技術仕様書)への回答のどれに相当するのかを確認する。カスタマイズにて実現する部分についてはその内容を確認する定義書を作成していく。」と説明した。(乙318,528,証人C〔15ないし17〕」
(25)同70頁9行目「エ」を「オ」と改める。
(26)同70頁11行目冒頭から同71頁13行目末尾までを以下のとおり改める。
「(ア)専門部会の役割について

一審原告は,冒頭,「本日を第一回として,病院長のもと情報シス
テム専門部会を設立する。この部会にて新システムの運用を決定していくということで了承されている。決定事項は,逐次病院長補佐会議にて最終承認を得ることとなる。」,「ここで全てを決定することは困難であるため,専門部会のもとにWGグループを設立する。」と説明し,「情報システム専門部会を設立し,新システムに対する運用体制は決定していくこととする。」旨が決定された。(乙2の1〔1〕)b
CPLは,専門部会の役割について,「全体スケジュールの確認,
共通課題の検討およびWG検討結果の承認と審議を行う。」,「2月の末には,WGによる仕様検討結果をこの場で確認することとなる。」と説明した。(乙2の1〔2〕)
(イ)マスタスケジュールについて

一審被告は,
平成20年11月27日付けのマスタスケジュール
(乙

513)を配布した。
同マスタスケジュールには,平成20年11月第4週から平成21年2月第4週までの間に,WGにおいて要件定義,仕様確認を行い,承認を得ること,併せて同月第1週から第4週までの間に,AP開発として外部設計(WG)を行い,この作業が完了した時点で「AP仕様凍結」とすること,その後は内部設計作業や開発作業を行うことが記載されていた。
また,一審原告と一審被告の役割分担について,「データ移行」は一審被告が主担当(このうち「移行計画策定」は一審原告も併せて主担当)であり,
「マスタ作成(操作研修用マスタ,統合試験用マスタ,
総合試験・本番マスタ)」は一審原告が主担当し,一審被告が支援する旨が記載されていた。(乙513)

CPLは,上記マスタスケジュールに関して,「WGを11月末か
ら順次開催していく。2月を持って終了とし,仕様を凍結,再度この専門部会で承認を得たいと考えている。」,「2月のWG終了後,マスタ作成作業に移っていただく。来年9月の開始までの各フェーズにて適宜締め切りを設けて進捗を確認していく。」と説明した。(乙2の1〔2〕)
(ウ)WGについて
CPLは,
WGについて,
「技術仕様書に対するNTT提案資料(注・
本件技術仕様書)をWGにて確認し,要件定義を行っていく。その成果を要件定義書として作成し,最終的な設計書に落とし込んでいく。」と説明した。(乙2の1〔2〕)
(エ)現行システムの機能の継承について
D薬剤師は,「部門システムはメーカ提供機能を採用するという発想では危険であり,現行機能の承継が必須。部門システム部分は現行の基本機能を継承することを約束してほしい。」と発言した。
これに対して,CPLは,「現行機能,つまり要求仕様定義という部分は守る。要求仕様での文章的な表現とシステム実際の動きのイメージはずれやすいため,
実際にご覧になり確認して頂きたい。と回答した。

(乙2の1〔3〕)
(27)同71頁14行目「オ」を「カ」と改める。
(28)同71頁18ないし19行目「4月」を「3月」と改める。(29)同72頁6行目「マスタ移行は」から同7行目「記載されていた。」までを以下のとおり改める。
「また,「データ移行」(マスタ移行を含む。)は一審被告が主担当(このうち「移行計画策定」は一審原告も併せて主担当)であり,「マスタ作成(操作研修用マスタ,統合試験用マスタ,総合試験・本番マスタ)」は一審原告が主担当し,一審被告が支援する旨が記載されていた。」(30)同72頁23行目冒頭から同24行目末尾までを以下のとおり改める。「b

「技術仕様書に示された機能を実現する。ただし,ワーキンググループにて,より優先度の高い機能の必要性が生じた場合,技術仕様書上の機能と開発規模を考慮のうえ,取捨選択を検討する。機能詳細は,要件定義書,外部設計書に記述する。」(甲63〔本文3〕)」

(31)同73頁5行目「本件」を削る。
(32)同73頁7行目「若しくは」を「もしくは」と改める。
(33)同73頁10行目冒頭から同13行目末尾までを以下のとおり改める。「e

仕様書外の要求事項の考え方(甲63〔本文4〕)
(a)本件技術仕様書の「ご提案仕様」として記載した以外に新たな要件が発生した場合,マスタでの対応,病院プロファイルでの対応,代替機能の利用,他施設で実装した機能の移植,追加カスタマイズなどにより,実現の可否を検討する。
(b)「その実現のためにカスタマイズあるいは他病院機能の移植を問わず,弊社(注・一審被告)にプログラム改修作業が発生する場合は,別途お見積り・再提案をさせて頂きます。」」
(34)同74頁8行目冒頭から同12行目末尾までを以下のとおり改める。「h

別紙2として添付されたマスタスケジュールでは,①平成20年11
月第4週から平成21年2月第4週までの間に,WGにおいて要件定義,仕様確認を行って,承認を得ること,②併せて同月第1週から第4週までの間に,AP開発として外部設計(WG)を行うこと,③②の作業が完了した時点で「AP仕様凍結」とし,その後は内部設計作業や開発作業を行うこととされていた。
また,上記マスタスケジュールには,「データ移行」は一審被告が主担当(このうち「移行計画策定」は一審原告も併せて主担当)であり,「マスタ作成(操作研修用マスタ,統合試験用マスタ,総合試験・本番マスタ)」は一審原告が主担当し,一審被告が支援とする旨が記載されていた。(甲63〔別紙2〕)

なお,プロジェクト計画書について,平成21年1月14日の推進事
務局会議において,①表題を「プロジェクト計画書」から「プロジェクト管理実施計画書」に改めること,②本件技術仕様書(D)1-13-1に基づく資料である旨を追記すること,③「2.5
開発方針(2)」

の最後の2行(上記e(b))を削除することなどが合意され,同年1月23日付けで新たな「プロジェクト管理実施計画書」(甲235。上記aないしhの記載は,上記e(b)が削除された以外に変更はない。)が作成された。(甲63,235,乙573〔2〕)」
(35)同74頁15行目及び同19行目「WG」の後に「等」を加える。(36)同75頁6行目末尾に改行の上,以下を加える。
「c

なお,品質保証計画書について,平成21年1月14日の推進事務局
会議において,表題を「品質保証管理実施計画書」に改めることなどが合意され,同年1月23日付けで新たな「品質管理実施計画書」(甲236。上記a及びbの記載に変更はない。)が作成された。(甲93,236,乙573〔2〕)」
(37)同75頁9行目「できてくる」を「出来てくる」と改める。(38)同75頁18ないし19行目「できている」を「出来ている」と改める。(39)同75頁22行目「もらえないもの」を「貰えない物」と改める。(40)同75頁23行目「いただき」を「頂き」と改める。
(41)同76頁20ないし21行目「開発に伴い別途費用」を「開発ボリュームにより別途追加費用」と改める。
(42)同77頁19行目
「推進事務局定例会議」「推進事務局会議」

と改める。
(43)同77頁21行目冒頭から同24行目末尾までを以下のとおり改める。「システリア考房のL氏は,「要件定義書として確認できるものを提示してほしい。」と述べた。これに対して,一審被告は,「各WGでは,技術仕様書の項目について,詳細に要件定義を実施している。それらをまとめた要件定義書を提示できるのは3月末となる。」と回答した。(甲143〔2〕)」(44)同79頁8行目「仕様書策定委員会」を「仕様策定委員会」と改める。(45)同79頁10行末尾に改行の上,以下を加える。
「(エ)一審被告は,
「技術仕様検討結果報告(要件定義)」と題する書面(乙
537。乙2の5〔1〕で「資料4:技術仕様書回答(検討状況)」と表示されているもの)を配布した。同書面は,当時のWGにおける検討状況を「仕様検討中」,「承認済」等と記載した一覧表であった。そして,一審被告は,一審原告に対し,「WGにおける技術仕様書の検討状況(資料4)を,後日電子データで配布するので,各項目の検討状況について,病院とNTT間の認識に相違がないかを確認する」ことを求めた。(乙2の5〔1〕,537)」
(46)同81頁1行目「平成21年3月末までに」の後に「現行機能にない項目のみ」を加える。
(47)同81頁2行目末尾に改行の上,以下を加える。
「(オ)同専門部会において,一審原告の開発要求のうち11項目を一審被告が開発すべき仕様項目に追加することが合意された。(乙509,524〔20〕,弁論の全趣旨)
(48)同81頁5行目「被告のMSE」を「一審被告」と改める。(49)同81頁6行目「要件定義後」を「要件定義決定後」と改める。(50)同81頁16ないし17行目「(甲208〔1,2〕)」を以下のとおり改める。
「また,一審被告が,「マスタ移行について,NECのマスタとNTTのマスタの共通項目を調査し,移行可能なデータを調査する。移行できない項目は,病院様からの指示,例えばマスタ設定ができる資料のご提出により弊社がマスタ設定を行い,病院様に確認していただくか,病院様に設定していただく。」と説明したところ,一審原告からは特に異論や疑義などは出されなかった。そこで,一審被告は,マスタ作成に関して,各マスタについて移行できる項目と作成が必要な項目を同年4月下旬までに提示することになった。(甲208〔1ないし4〕)」
(51)同82頁2行目「説明した。」の後に以下を加える。
「上記マスタスケジュール(甲90)では,「データ移行」(マスタ移行を含む。)は一審被告が主担当(このうち「移行計画策定」は一審原告も併せて主担当)であり,「マスタ作成(操作研修用マスタ,統合試験用マスタ,総合試験・本番マスタ)」は一審原告が主担当し,一審被告が支援する旨が記載されていた。」
(52)同82頁11行目末尾に改行の上,以下を加える。
「(エ)一審被告のNが,電子カルテマスタの作成概要,スケジュールを説明し,一審原告に対して,各マスタの管理部門及び管理者,作成者の選定を依頼し,併せて,管理者に対しては一審被告のマスタ担当者からマスタ作成に関する説明を行う旨を説明した。
これに対して,J医師が,「現在のシステム導入時に,マスタ作成に大変な稼働がかかった。今回,マスタ作成を行うと大変な稼働がかかることが想定される。時間外の超勤が発生した場合,病院から手当はつくのか。また,なるべく職員がマスタを作成することがないようNTTにお願いしたい。」と発言したところ,B教授は,「超勤に対する手当について,病院の上層部の了承は得ている。」と回答し,一審被告のNは,「既存マスタから移行できるものは,可能な限り移行して提示させていただく。」と回答した。
一審被告のK部長が,「NTTでもマスタデータの登録をできる限り支援させていただく。その際は,登録するマスタ項目を指示していただけないと作成できない。」と発言したところ,J医師は,「マスタデータの指示は病院が行う。」と回答した。
O医師が,「他病院のマスタを参考として提示してもらうことは可能か。」と質問したところ,CPLは,「NTT病院で利用しているマスタの提示を調整させていただく。ただし,マスタは病院独自のものであり,そのまま移植することは難しい。参考程度としていただきたい。」と回答した。(乙2の7〔3〕)」
(53)同82頁24行目「同日」を「同年6月3日」と改める。(54)同83頁17行目冒頭から同20行目末尾までを以下のとおり改める。「(イ)追加カスタマイズの範囲は,CIS(電子カルテ・オーダ)115項目,PDA102項目であり,これらを実現することにより仕様凍結とする。」
(55)同84頁3行目「回答した。」の後に「これらの一審被告の回答に対し,一審原告から異議等は述べられなかった。」を加える。
(56)同84頁8行目「された。」の後に以下を加える。
「この結果,一審被告が開発すべき仕様項目は合計6486項目(本件技術仕様書で一審被告が開発すべき仕様項目とされていた5850項目(前提事実(2)オ)に,平成21年3月17日の第6回専門部会で開発対象に含む旨合意された11項目(認定事実(6)シ(オ))と,上記625項目を合計したもの)となった。」
(57)同85頁9行目冒頭から同13行目末尾までを以下のとおり改める。「ア

本件仕様凍結合意後,一審被告は,前記(6)ツ(ウ)の覚書を一審原告と
取り交わすため,「本件追加開発合意に基づく仕様項目を電子カルテカスタマイズ要望一覧のとおりとする。これ以外のカスタマイズを実行する必要が生じた場合は追加カスタマイズとして扱い,予算については別途協議する。」旨の「覚書(案)」を作成して,一審原告に提出したが,一審原告は,「一審原告が仕様内と定義するものについては,一審被告はこれに対応し実現する。」旨の「覚書(案)」を送付して,約定の覚書の作成には応じなかった。(乙533,534)」
(58)同86頁21行目「24日」を「25日」と改める。
(59)同88頁8行目「(大規模)」を削る。
(60)同90頁1行目末尾に「(甲9の2)」を加える。
(61)同90頁21行目冒頭から同91頁4行目末尾までを以下のとおり改める。
「①

院外処方箋が出力されなかった。



採血ラベルの出力に時間がかかる。(約15秒程度)



外来選択画面からヤギーを起動した場合にヤギーログイン画面が表
示される。


輸血照合,輸血機能(準備状況ステータス変更,結果書き換え,プ
ロフィールマスタの反映)


カルテ管理に出庫指示が1件しか飛んでいない(歯科が救急で送ら
れている)。


バーコード入力で全角入力になることがある。



中止オーダ受信時,プリンタへ中止伝票が出力されない。



副作用ロット受信時,プリンタへ副作用報告書が出力されない。



出庫伝票打ち出しの2次元BCDでPC版PDAで認識されないパ
ターンがある。」
(62)同91頁21行目冒頭から同92頁2行目末尾までを以下のとおり改める。
「ウ

平成21年12月9日,一審被告のK部長は,一審原告病院事務部経
営企画課病院庶務係長であったPに対し,看護システムの不具合が発覚したので看護部向けの研修予定が延期になったが,同月13日の第2回外来リハーサルは総合システムテストの形で是非とも実施したい旨の報告をした(乙529の1)。
同報告に対して,一審原告から数度にわたる修正申入れがあり,最終的には,第2回外来リハーサルは運用面での確認ができなくなったので,それに伴って,平成22年1月4日運用開始の日程について延期させていただきたいという内容に修正された
(甲12)(甲12,

157
〔1,
2〕,乙529,証人C〔29,30〕)」
(63)同92頁5行目「NTT」を「一審被告」と改める。
(64)同92頁8行目「B教授は,」から同10行目「出たため」までを以下のとおり改める。
「B教授は,一審被告は当初スケジュールでシステム導入ができると言っているので,確認のために実施したい,医師は参加しなくてもよいので,部門システムは参加してほしいと発言し,CPLも,マスタ修正は完全ではないがシステムは完成していると発言した。ところが,一審原告の一部職員からは,システムが完成していないのであれば職員が参加しても意味がないなどと消極意見が出され」
(65)同92頁20行目「不具合が発生した」の後に以下を加える。「と一審原告のG副部長は指摘し,合わせて,帳票印字文字が小さい(第1回リハーサルで指摘されていた点が未改善),検査結果の印刷帳票には患者に渡すことを想定して「旭川医大病院」及び印刷日時を必ず含めること,CISのウィンドウサイズは最大表示で開くこと(操作研修時にも指摘している。)などと要望した」
(66)同93頁1行目冒頭から同8行目末尾までを以下のとおり改める。「(イ)これに対し,一審原告のG副部長は,「今までそのCISに関連するドキュメントしか出てきていないけども,当然部門系のシステムについても同様です。ドキュメントは,ですからCISだけじゃなくて部門系システムについても出していただくという。どういうドキュメントかというと,要件定義書,画面設計書,それから帳票ラベルの設計書,プラス実際に十分なデータ量で印刷された印字帳票,それからシステム間のインターフェイスの設計書,データ移行計画書,サーバおよびクライアント環境の設計書,それから統合試験,IT,それから総合試験,ST,これらの試験方法が詳細でわかると思う,それからそこで試験の中で発生した問題についてこの詳細がわかるように。それから操作マニュアルですね,オンライン版とオフライン版,これについてもCISだけではなく部門も含めて,これはくり返しておきますけども。これもやはり12月いっぱいで出していただかないといけない。これは12月時点,12月末時点での到達度評価,我々の考える到達度評価です。で,到達度評価が何段階か当然設定をしなければいけないと思ってますが,まずはそこが12月のチェックポイントですね。それに合格しなければプロジェクトの継続というのは認められないということになります。」と申し入れた。(甲160の2〔12,13〕)」
(67)同93頁13行目冒頭から同18行目末尾までを以下のとおり改める。「キ

平成21年12月28日,一審被告は,一審原告に対し,各種設計書
を提出した。この中には,画面イメージや帳票サンプル等の他,内部設計書に該当するものも含まれていた。
併せて,同日,一審被告は,同年11月以降,6項目(いずれも,現行システムを本件システムに切り替える際,又は切替後に実施すべき項目である。)を除いて実施した総合試験の結果を取りまとめた総合試験成績書(乙525の1)を提出した。同成績書では,同日時点での判定として,47個の問題が発生し,12項目が不合格と判定されたが,その後,一審被告は,平成22年1月8日までに全ての問題発生箇所について対応を完了し(一部は,別途部門システムのベンダが対応した。),同月29日までに上記不合格項目のうち10項目を合格とする旨訂正した総合試験成績書の一部差替部分(乙525の2。2項目が不合格のままになっているのは,弁論の全趣旨によれば,訂正漏れと認められる。)を作成し,一審原告に提出した。(甲94,157〔3,6〕,158,198,乙467,525,526,581,582,証人B〔9,10〕,弁論の全趣旨)」
(68)同95頁23ないし24行目「CPLは,」の後に以下を加える。「「開発工数が想定以上に大きくなっており,開発側で現在具体的な完了日が確定できない現状にある。」と発言した上で,」
(69)同96頁10ないし11行目「6WGが,「否」という評価を付けた。」を以下のとおり改める。
「5WGが「否」という評価を付けた(このほか,1WGが「否ではないが,他部門等を考えると,心情的には否」と,4WGが「否をつけるほどではない」と,1WGが「可」と評価し,1WGは評価を付けていない。)。」を加える。
(70)同96頁11行目「第18回」を「第17回」と改める。(71)同96頁14行目「証人B」の前に「乙2の17,」を加える。(72)同96頁20行目「(甲13,157〔4〕,弁論の全趣旨)」を以下のとおり改める。
「その後も,一審被告の担当者は一審原告のG副部長ら担当者に電子メールを送付して,仕様の確認等を求めたが,G副部長は,同月9日及び同月18日,CPLらに対して,議事録の確認以外については新たな対応は全てストップしている,陰でこそこそと一審原告の担当者に問い合わせをすることは慎んでもらいたい旨の電子メールを送付した。(甲13,157〔4〕,乙514,515)」
(73)同97頁6行目冒頭から同16行目末尾までを以下のとおり改める。「ク

平成22年3月16日,一審被告は,一審原告に対し,「プロジェクト再開に向けてのご提案」と題する書面(甲15)を提出した。
(ア)上記書面3頁には,以下のような記載がある。

本件システム開発の同月10日現在の進捗状況として,本件仕様

凍結合意時に確定した仕様に関しては14WG中6WGについて完了している。

新規開発要望の304項目については,後記(イ)のとおりである。

「プログラム不具合」として申告のあった112項目のうち11

0項目,「マスタ修正」として申告のあった58項目のうち50項目,「その他(設定変更・質問等)」として申告のあった157項目のうち128項目が既に完了している。
(イ)上記書面5頁には,運用確認及び操作習熟に必要な期間を考慮するとともに,システム移行に伴う休診を回避したいという一審原告病院の意向を踏まえて,納期を平成23年1月又は平成22年9月下旬とし,導入範囲としては,本件仕様凍結合意で確定された6936項目と,その本来的な運用に必然的に付随する118項目を加えた7054項目を開発範囲とする旨の記載がある。ただし,正確には,本件仕様凍結合意で確定されたのは6486項目なので(認定事実(6)ト),これに118項目を加えた6604項目を開発範囲とする旨の提案である。
(ウ)上記書面7,8頁には,上記納期を前提とした新たなマスタースケジュールが記載されており,平成22年3月中に「不具合改修・開発」を完了し,同年5月上旬までに自主的品質点検を行うこととされている。
(エ)上記書面の資料16-1には,「技術仕様書

未完了リスト」とし

て9項目が記載されており,このうち,1項目は「仕様確定済

PJ

再開後に開発開始」
(本件技術仕様書の項番欄は空欄),3項目は「N
TT仕様作成中(病院様へ確認が必要なため,作業を保留)」(うち2項目はDWH),3項目は「完了(一部,病院様に確認が必要)」又は「開発完了(マスタ作成及び試験実施中)」(うち1項目はDWH),2項目は「NTT内設計完了(3月中完了予定)」(いずれもDWH)とされていた。」
(74)同97頁25行目「を認めた。(甲153〔1,7,12〕)」を以下のとおり改める。
「,一審原告と一審被告との間で「仕様凍結」の意味について認識の相違があったことを認めた。(甲153〔1,7ないし9,12〕」
(75)同98頁1ないし2行目「以下「本件解除通知」という。」を「本件解除通知」と改める。
2争点(1)本件システムの引渡日を平成22年1月4日以降へ延期するとの合(
意の有無)について
(1)本件システムの引渡日を平成22年1月4日以降へ延期するとの合意が存在したと認められないことは,原判決「事実及び理由」欄の「第3
当裁判

所の判断」の2項のとおりであるから,これを引用する。
(2)一審被告は,延期について黙示的な合意が成立した旨を主張するが,黙示的であっても一審原告の権限のある者による合意が成立したと認めるに足りる証拠はなく,一審被告の上記主張は採用できない。
3争点(2)平成22年1月3日又は同年4月26日の時点における本件システ(
ムの完成の有無)について
(1)システム開発では,初期段階で軽微なバグが発生するのは技術的に不可避であり,納品後のバグ対応も織り込み済みであることに照らすと,バグ等が存在しても,システムを使用して業務を遂行することが可能であり,その後の対応で順次解消される類のものであれば,仕事が完成したと認定すべきである。
(2)上記の見地から検討するに,以下のような事実に照らすと,本件システムは,遅くとも本件解除時(平成22年4月26日)までには,一審原告の協力が得られずに保留せざるを得なかった1項目を除き,全て完成していたものと認められる。

リハーサルの実施について
(ア)平成21年11月14日実施の外来プレリハーサルでは3点の不具合が指摘されたが
(認定事実(7)サ。
ただし,
「各種帳票の調整
(フォント,
印字位置等)は,追加開発要望であると認められる。),同月28日実施の第1回外来リハーサルまでには全て修復された(甲9の2,甲10の2)。
(イ)第1回外来リハーサルでは9点の不具合が指摘された(認定事実(7)ス)。
このうち,4項目(「外来選択画面からヤギーを起動した場合にヤギーログイン画面が表示される」,「カルテ管理に出庫指示が1件しか飛んでいない(歯科が救急で送られている)」,「中止オーダ受信時,プリンタへ中止伝票が出力されない」,「副作用ロット受信時,プリンタへ副作用報告書が出力されない」)は,同年12月1日までに対応が完了した(甲10の2)。2項目(「院外処方箋が出力されなかった」,「採血ラベルの出力に時間がかかる。(約15秒程度)」)は,同月9日までに対応が完了し,同日の第14回専門部会でその旨の報告がされた(乙2の14〔2〕)。残る3項目(「輸血照合,輸血機能(準備状況ステータス変更,結果書き換え,プロフィールマスタの反映」,「バーコード入力で全角入力になることがある」,「出庫伝票打ち出しの2次元BCDでPC版PDAで認識されないパターンがある。」)は,同年12月23日までに対応が完了した(乙575)。
(ウ)同月13日に予定されていた第2回外来リハーサルは,第14回専門部会において中止が決定されたが,これは,一審原告の職員らから消極意見が出たためである。一審被告のK部長は,一審原告のPに対して,第2回外来リハーサルは総合システムテストの形で是非とも実施したいと申し入れていたし,CPLは,上記第14回専門部会において,本件システムは完成しているので実施したい旨を説明していた(認定事実(8)ウ,エ)。
(エ)このように,遅くとも平成21年12月13日までには,本件システムは外来リハーサルを実施できる程度にまでは完成していた。

総合試験結果
(ア)「単体テスト」は,内部設計で定義した処理ロジックの正しさを確認する過程である。
「結合テスト」は,単体テストが終了したプログラムを組み合わせて動作を確認するテストであり,
プログラムを組み合わせた際の動作に問
題がないか,
必要な機能が実現できているかどうかを外部設計書に照ら
し合わせて確認する過程である。
「総合テスト」(総合試験)は,結合テストにより外部設計書どおりの機能が実現できていることを確認したプログラムと,
そのプログラム
が動作するハードウェア,
ネットワーク,
利用者端末などを組み合わせ,
本番と同じ環境,
あるいは本番に近い環境で動作を確認するテストであ
り,
要件定義書等の内容が実現できているかどうかを総合的に確認する過程である。総合テスト終了後は,不合格項目について障害処理票を作成して,バグの除去及び分析を行い,テスト成績書(総合試験成績書)を作成して,
プログラム完成に至る。
(甲141
〔146ないし148,
152〕)
(イ)一審被告は,同年11月以降,現行システムを本件システムに切り替える際,
又は切替後に実施すべき6項目以外の項目について総合試験を
実施し,平成21年12月28日,総合試験成績書(乙525の1)を作成した。同成績書では,同日時点での判定として,47個の問題が発生し,12項目が不合格と判定されたが,その後,一審被告は,平成22年1月8日までに全ての問題発生箇所について対応を完了し
(一部は,
別途部門システムのベンダが対応した。),同月29日までに上記不合格項目のうち10項目を合格とする旨訂正した総合試験成績書の一部差替部分(乙525の2。2項目が不合格のままになっているのは,訂正漏れと認められる。)を作成し,一審原告に提出した。
(認定事実(8)
キ)
(ウ)このように,一審被告は,本件システムへの切替時又は切替後に実施すべき6項目を除く項目について総合試験を実施し,
総合試験を実施し
た全ての項目について合格と判定されるに至っている。

「技術仕様書未実施リスト」
(ア)平成22年1月5日の第15回専門部会で一審被告が配布した「技術仕様書未実施リスト」(甲149)では,本件仕様凍結合意時に本件システムに含めることに合意された機能6486項目のうち,
開発未了の
項目は57項目のみであった(認定事実(9)ア)。
上記57項目のうち35項目は,DWH(データウェアハウス)の提供であり,
既に完了していたし
(一審原告は,
DWHの提供のみならず,
データの抽出機能までが契約範囲内であると主張していたため,
上記リ
スト上,未完成項目とされているが,これらは分類1に属する項目であり,
一審被告が更にカスタマイズを行うということは予定されていなかった。),18項目は,システム移行・切替の最終工程で作業が必要な項目であり,同日時点で完成させる必要がない項目であった(乙524〔40〕)。
結局,同日時点で未完成だったのは,「(C3-10)栄養管理部門業務1-8-3-3」(甲149〔2〕),「(C4-2)放射線オーダ1-1-2」,
「(C4-2)放射線オーダ1-1-13」及び「(C
4-2)放射線オーダ1-1-15」(甲149〔5〕)の4項目に過ぎず,
これら4項目を欠いた状態でも本件システムを運用することは十
分に可能であった(乙524〔41〕)。
(イ)同年2月1日の第17回専門部会で一審被告が配布した「技術仕様書未実施リスト」(乙2の17,乙565)では,上記(ア)の未完成の4項目のうち,「(C4-2)放射線オーダ1-1-2」は同年1月18日に仕様が確定し,テンプレート作成が済んだ旨が記載されており,同日時点で開発未了だったのは3項目のみになっていた。
(ウ)同年3月16日に一審被告が提出した「プロジェクト再開に向けてのご提案」
に添付された
「技術仕様書未完了リスト」
(甲15
〔16-1〕

には,同日時点で開発未了だったのは9項目である旨記載されている。a
このうちDWHの5項目は,
前記(ア)のとおり,
既に完了していたと

評価すべきものである。

2項目(前記(ア)の「(C4-2)放射線オーダ1-1-13」及び
「(C4-2)放射線オーダ1-1-15」)は「開発完了(マスタ作成及び試験実施中)」とされている。

1項目(「手術部門における使用材料データについて,既存物品管
理システム((株)ミックス製MASTY)から使用材料データを受信します。また,物品管理システムから受信した使用材料データをもとに,医事会計処理を行います。」)は,本件技術仕様書及び電子カルテカスタマイズ要望一覧に記載がない。一審原告病院のシステム論理構成では,「手術管理システム」から「物流管理システム(MASTY)を経て「物流管理部門システム」に使用材料データを伝達することが予定されていたが,これらはいずれも本件システムの対応外とされていた(甲63〔別紙1〕)。したがって,上記1項目は,開発対象外の開発要望に基づくものであると認められる。

結局,本件仕様凍結合意時に本件システムに含めることに合意され
た機能6486項目(認定事実(6)ト)のうち,平成22年3月16日時点で開発未了だったのは1項目(上記(ア)の「(C3-10)栄養管理部門業務1-8-3-3」)に過ぎない。
これは,
「NTT仕様作成中(病院様へ確認が必要なため,作業を保
留)」とされており(甲15〔16-1〕),一審被告は,上記6486項目について,平成22年3月16日までに,一審原告の協力が得られずに保留せざるを得なかった1項目を除く全てについて開発を完了させたものと認められる。

「プロジェクト再開に向けてのご提案」
前記ウ(ウ)の「プロジェクト再開に向けてのご提案」(甲15)は,同日時点における本件システム開発の進捗状況として,
「プログラムの不具合」
(バグ)112個のうち110個は既に対応が完了しているとしていた(認定事実(9)ク)。
未完了の2項目のうち,「日本光電への帳票送信データ項目」は,一審原告が確定すべき帳票フォーマットの仕様に関するものであり,平成22年1月14日の内視鏡・病理・放射線RI

WGの席上,5日以内に完成

可能である旨が伝えられていた。
他の1項目「R1オーダ画面「コメント」
欄に,詳細指示画面で入力した文字列が反映されないこと」は,本件技術仕様書上,分類1((C4-2)放射線オーダ)とされており,バグではなく,開発対象外の開発要望であった。(甲166・添付資料6〔3〕,弁論の全趣旨)

完成証明資料(乙527)
一審被告が平成22年6月25日までに作成した完成証明資料(乙527)によれば,同日までには,一審原告の協力が必要であった1項目(前記ウ(ウ)d)を除き,本件システムが完成していた事実が認められる。上記完成証明資料は,同年4月26日時点での完成度を直接に示すものとはいえないが,同年2月1日以降,一審原告の協力が得られなくなったこと(認定事実(9)オ),上記ウのとおり,同年3月16日までには本件システムは一審原告の協力が必要であった1項目以外全て開発を完了していたこと,本件解除通知後に更にプログラム作成作業を継続していたとは考え難いことなどに照らすと,同年4月26日時点でも同程度の完成度であったと見るのが相当である。
この点について,一審原告は,乙456,457の記載に基づいて,本件解除後も相当数の一審被告及びIBMのSEがプログラム作成作業を行っていた旨を主張するが,上記証拠からは,必ずしも一審原告の主張するような事実を読み取ることはできない。
(3)これに対して,一審原告は,本件解除時までに本件システムは完成していなかった旨を主張する。

一審原告は,外来プレリハーサル及び第1回外来リハーサルで多数の不
具合が発生した旨を主張する。
しかしながら,上記不具合については,全て平成21年12月23日までに対応が完了していたことは,上記(2)アのとおりである。

平成21年12月13日実施のスルーテストの結果について,一審原告
のG副部長が不具合を指摘している(認定事実(8)オ)。また,一審原告側において,平成22年1月から同年2月にかけて実施した本件システムの完成度の評価において,
5WGにおいて
「否」
と評価され,
総合評価も
「否」
とされている(認定事実(9)オ)。
しかしながら,「否ではないが,他部門等を考えると,心情的には否」とした1WGの評価は,他の「否をつけるほどではない」とした4WGと同様の評価であると考えられ,このような評価をしたWGがあったということ自体,WGにおける評価が客観的なものであったか疑いを抱かせるものである。さらに,一審原告は,分類1及び2についてもカスタマイズを要求することができ,また,本件仕様凍結合意後も追加開発要望を出すことができると考えており,実際,平成22年1月4日以降も,同年3月16日までの間に304項目もの追加開発要望を出し(認定事実(9)ク),一審被告がこれら追加開発要望に応じるべきであると考えていた(第2の3(3)ないし(5)参照)。G副部長も同様の考えであり,スルーテストの結果について不具合を指摘する際も,併せて種々の追加開発要望を出し,一審被告による対応を求めていた(認定事実(8)オ)。
上記評価は,そうした一審原告による評価であって,本件仕様凍結合意時に合意された開発項目についての本件システムの完成度を正確に評価したものとは考えられない。

専門部会の席等において,CPLらが,本件システムの不具合や開発の
遅れを認め,
謝罪する旨の発言をしている
(認定事実(8)カ(ウ),
(9)エ等)

しかしながら,これらは,追加開発要望が一審原告から大量に出され,その相当数について対応を余儀なくされ,本件システム開発が遅れていた一審被告による謝罪であって,その発言が全て一審被告の真実の認識に基づくものであったと考えるのは相当ではない。

一審被告が平成22年3月16日に提出した「プロジェクト再開に向け
てのご提案」(甲15)には,本件システムの納期を平成23年1月又は平成22年9月下旬とする旨の提案が記載されているが
(認定事実(9)ク)

これは,同年1月4日以降に出された304項目もの追加開発要求のうち118項目を開発対象に含め,かつ,運用確認及び操作習熟に必要な期間を考慮するとともにシステム移行に伴う休診を回避したいという一審原告の意向を踏まえた提案であって,本件システムの開発自体に相当の猶予期間が必要であるという趣旨からの提案というわけではない。

リハーサル及び操作研修等,一審被告の行うべき業務について一部未実
施のものがあったことは一審原告の主張するとおりである。
しかしながら,
平成21年12月13日に予定されていた第2回外来リハーサルが中止され,以後,リハーサル及び操作研修等が行われなかったのは,一審原告の一部職員が,独自の見解から,リハーサルの実施に消極意見を出し(認定事実(8)ウ,エ),また,一審被告との接触を一方的に拒否したためであって
(認定事実(9)オ)本件システムが未完成だったからとは認められない。,

なお,一審被告は,一審原告に対して,本件システムの完成を前提とし
て,一審被告に対して即時の検収等を求めるなどした形跡は見られない。しかしながら,一審被告としては,上記エのような一審原告の意向を踏まえた運用確認等が必要であると考えていたのであって,即時の検収等を求めなかったからといって,本件システムが完成していなかったということはできない。

以上のとおり,本件解除時までに本件システムは完成していなかった旨
の一審原告の主張は採用できない。
4争点(3)(一審被告の本件契約上の義務の範囲)について
(1)分類1及び2についてのカスタマイズ義務の有無について

分類1及び2について一審被告にカスタマイズ義務が認められないこと
は,以下のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3

裁判所の判断」の4項(1)のとおりであるから,これを引用する。(ア)原判決102頁3行目「分類1,2については」から同4行目「確認を行う」までを以下のとおり改める。
「分類1及び2については,新規導入システムパッケージの機能及び画面等の確認(技術仕様書確認)を行い,分類3については,要件定義書で要求内容の確認(カスタマイズ要件書確認)を行う」
(イ)同102頁6行目「現行システムの機能が」を「現行システムで実現できていた機能が」と改める。
(ウ)同102頁12行目「仕様の確定を行う」を「資料にて提案機能の説明を実施する」と改める。
(エ)同102頁19行目「オ」を「カ」と改める。
(オ)同102頁24行目及び同103頁5行目「エ」をいずれも「オ」と改める。

当審における一審原告の主張について
(ア)一審原告は,分類1及び2に関してもカスタマイズできると解さなければ,医療安全上の重大な危機を招来しかねない旨を主張する。
しかしながら,分類1(パッケージ標準機能)については,8年間の運用実績と全国36の病院(約10の大学病院を含む。)への導入実績があったCISの機能であり(認定事実(3)イ),分類2(他病院機能の移植)についても,他病院で実際に利用されている機能なのであるから,これら機能を利用することによって直ちに医療安全上の重大な危険を招来するとは考えられない。
現行の運用の維持を最優先して,一から新たに開発するオーダーメイド型の開発を発注するのか,運用の見直しを前提として,パッケージをベースにした開発を発注することにより経費の削減を図るのかは,まさに発注者である一審原告の判断事項であり,一審原告において後者を選択した以上は,カスタマイズの要望ができる範囲が限定されたとしても,やむを得ないことというべきである。この点,本件の紛争の根本的な原因は,一審原告が,現行の運用の維持に固執する現場の医師らの要望を十分に反映させないまま本件要求仕様書等を取りまとめて本件契約を締結したこと,にもかかわらず,その後,本件要求仕様書等並びにこれを踏まえて作成された本件技術仕様書の記載を無視して出される現場の医師らの追加開発要望を抑えるための努力を放棄し,一審被告がその対応に当たらざるを得なかったことにあったと考えられる。
(イ)一審原告は,プロジェクト計画書(甲63〔本文3〕)において「ワーキンググループにて,より優先度の高い機能の必要性が生じた場合,技術仕様書上の機能と開発規模を考慮のうえ,取捨選択を検討する。」と記載されていること(認定事実(6)エ(ア)b)から,分類項目を問わずカスタマイズを行うことが予定されており,実際,WGにおいては分類項目を問わずに運用確認,仕様検討が行われていた旨を主張する。しかしながら,プロジェクト計画書には,当初,本件技術仕様書外の要求事項について,その実現のために一審被告にプログラム改修作業が発生する場合は,別途見積り・再提案する旨が記載されていた。同記載は,その後,一審原告の要望により削除されたが(認定事実(6)エ(ア)e(b),同i),契約外の追加カスタマイズが生じた場合に,追加の費用が発生し得ることは当然のことであって,上記記載が削除されたからといって,分類項目を問わずに一審被告が無償でカスタマイズを行うことを約束したものと解することはできない。
そして,WGにおいて分類1及び2について運用確認,仕様検討が行われていたとしても,一審被告が,大量の開発対象外の開発要望を一審原告から出され(後記6参照),その一部についてやむなく対応せざるを得なかった結果であって,WGにおいて分類1及び2について運用確認,仕様検討が行われていたという事実が,これらについて一審被告が本件契約上の義務を有していたことを裏付けるものと評価することはできない。
(ウ)一審原告は,一審被告のCPLも,分類1及び2についてもカスタマイズをすることがある旨を証言している(証人C〔9ないし13〕)と主張する。
しかしながら,一審原告の指摘する証人Cの証言は,分類1及び2についてカスタマイズを行う場合には別途費用を徴収するのが原則であるが,一審原告の求める機能がどうしても実現できない場合には,最終手段として無償でカスタマイズに応じなければならないこともあり,また,他の病院でも汎用的に使える機能を実現するものであれば,一審被告が先行投資として無償でカスタマイズに応じることもあり得るというものであって,分類1及び2について一般的に無償でカスタマイズに応じる義務がある旨を述べたものではない。
(エ)一審原告は,①平成20年11月17日の一審原告,一審被告及びNECの各担当者による打合せにおいて,「現在運用中の機能を確実に継承するようお願いしている。」と一審原告の担当者が発言したことについて,一審被告から異議は出されなかったこと(認定事実(5)ウ),②同月27日の第1回専門部会において,CPLが部門システム部分については現行の基本機能を継承することを約束していたこと(認定事実(5)オ(エ))を,分類1及び2について一審原告がカスタマイズ義務を負っていた根拠として主張する。
しかしながら,上記①も②も,一審原告が自己の運用に基づいて本件要求仕様書等を作成し,一審被告がこれを踏まえて本件技術仕様書を作成して本件契約に至ったこと,したがって,本件技術仕様書に記載した仕様項目を一審被告が実現することを約束していたという当然の事柄を示すものに過ぎず,本件技術仕様書に記載された仕様を超えて,際限なくカスタマイズに応じると約束したものということはできない。(オ)一審原告は,分類1及び2についてカスタマイズ要望が出されても,取り得る選択肢を複数提示することによって病院側を誘導することが一般的であり,開発費用が無限定に増えるという事態にはならない旨を主張する。
しかしながら,上記主張は,契約外の開発要求に応じる義務が一審被告にあったという根拠になるものではない。
(カ)一審原告は,要件定義工程作業実施要領(甲64〔1-4,1-5,2-6〕)には,分類に応じて異なる取扱いをする旨の記載はなく,逆に,WGにおいてカスタマイズ及びカスタマイズ要件の検討を行う旨を記載した上で,成果物たる要件定義書としてカスタマイズ要件定義を挙げていること,要件定義書サンプル(乙528の16枚目)の「カストマイズ説明書」の「件名」欄には「パッケージ提供」のチェック欄があることなどから,分類1及び2についてもカスタマイズが予定されていた旨を主張する。
しかしながら,分類1及び2についてカスタマイズが予定されていなかったことは,本件技術仕様書の記載(甲6〔4〕)などから明らかであって,要件定義工程作業実施要領などにその旨を逐一記載しなかったからといって,一審被告が分類を問わず一律にカスタマイズに応じる旨を約束したということはできない。
また,分類1及び2についても,一審原告が追加費用を負担することによって,追加カスタマイズを行うことがあり得たのであるから(甲63〔本文3,4〕参照),分類1及び2について,成果物たる要件定義書としてカスタマイズ要件定義を挙げ,あるいは,要件定義書サンプル(乙528の16枚目)の「カストマイズ説明書」に「パッケージ提供」のチェック欄を設けていたことは,分類1及び2について一般的にカスタマイズを行うことを予定していなかったということと矛盾するものではない。
(キ)以上のとおり,分類1及び2についてのカスタマイズ義務が一審被告にあった旨の一審原告の当審における主張は,いずれも採用できない。(2)要件定義書等の提出義務の有無について

要求定義とは,一般に,ユーザの業務に存在する問題を洗い出し,その解決方法などユーザがシステムに要求する内容を整理することをいう。甲(
141〔57〕)
これに対し,要件定義とは,要求定義を踏まえ,当該システムにおいて実装すべき項目を明確にして整理する作業をいう。そして,要件定義の結果整理された項目を文書化したものを要件定義書という。(甲141〔57〕,154〔6〕)
また,外部設計(基本設計ともいう。)とは,一般に,システムが持つべき機能や性能,構成など,システムを外部から見た時のシステムの振る舞いや構成を定義することをいう。そして,外部設計の成果を文書化したものを外部設計書という。(甲141〔84〕,154〔7〕)
外部設計工程が終了した後,外部設計書をもとにプログラムの内部データを決定するなど,システムの具体的な実現方法を定義する内部設計(詳細設計ともいう。)を行う。そして,内部設計の成果を文書化したものを内部設計書という。(甲141〔106〕,弁論の全趣旨)

分類1及び2についての要件定義書等の提出義務について
(ア)上記アの定義から明らかなとおり,要件定義書等は,一から新たに開発するオーダーメイド型の開発において必要とされる書類であり,既に
完成しているソフトウェアについては,特に必要のない書類である。そして,上記(1)のとおり,分類1及び2についてはパッケージ標準機能及び他病院機能の移植によるものとされ,
カスタマイズは予定されてい
なかった。
本件要求仕様書等は,システムの専門家であるシステリア考房がコンサルタントとして参加し,
一審原告病院の全職員に要求仕様書案を公開
して,その意見も聴取しながら,一審原告がシステムに要求する内容を整理したものであるから(認定事実(4)イないしソ),一般的な意味での要求定義を記載した書面ということができる。この点,一審原告は,政府調達に関する協定との関係上,
要求仕様書の記載内容が抽象化せざ
るを得なかった旨を主張するが
(原判決16頁10行目冒頭から同19
行目末尾まで),特定のベンダのパッケージソフトに特化した記載を避けつつ,必要な機能を具体的かつ詳細に記載することは可能であり(弁論の全趣旨),現に,本件要求仕様書等の記載は相当程度に具体的な記載になっている(乙524〔4〕)。
そして,本件要求仕様書等を踏まえて作成された本件技術仕様書(甲6)は,当該システムにおいて実装すべき項目を明確にして整理した要件定義書に当たるものであって,
カスタマイズを予定していなかった分
類1及び2については,これとは別に「要件定義書」というタイトルの書面を新たに作成することはおよそ必要がなく,
本件において予定され
ていなかったものというべきである。
また,カスタマイズを予定していないことからすると,外部設計書の作成も全く意味のないことである。
そうすると,分類1及び2については,要件定義書等は必要のない書類であり,
一審被告はこれらの作成義務を負っていなかったものと認め
られる。
(イ)実際,同年11月5日の,一審被告と一審原告経営企画部との間の初顔合わせの場で一審被告が交付した
「ワーキングの実施に向けて
(案)

(乙462)でも,分類1及び2についての要件定義工程として新規導入システムパッケージの機能及び画面等の確認(技術仕様書確認)を行い,
外部設計工程としては出力帳票や設定項目など調整可能な詳細機能の確認を行う旨が記載されており(認定事実(5)ア),一審被告は,分類1及び2については,
上記アのような一般的な意味での要件定義の作
業を予定していない旨を明らかにしていた。
同月14日のキックオフで配布されたプロジェクト概要(甲88)でも,仕様確認(ワーキング)の内容として,本件要求仕様書(本件技術仕様書)と一審被告提案システムのマッチングを目的として,他施設での導入実績のある一審被告提案システムを紹介しながら,
一審原告向け
に開発する機能の仕様を確認して仕様凍結とするとされており
(認定事
実(5)イ),やはり,上記アのような一般的な意味での要件定義の作業を予定していない旨を明らかにしていた。
同月25日の第1回専門部会事前打合せの席上でも,CPLは,「カスタマイズにて実現する部分についてはその内容を確認する定義書を作成していく。」と説明し(認定事実(5)エ(イ)),カスタマイズを予定しない部分(分類1及び2)については「定義書」の作成を予定していない旨を明らかにしていた。
平成21年1月9日頃に一審原告に交付されたプロジェクト計画書(甲63)でも,WGを通じて行う仕様の確定方法に関して,パッケージ標準機能(分類1)については,「適宜デモ機を活用し,パッケージ機能を紹介。技術仕様書の該当項目との確認を行う。」と,他病院機能の移植(分類2)については,「デモ機もしくは資料にて,機能の説明を行う。」としており(認定事実(6)エ(ア)d),上記アのような一般的な意味での要件定義の作業について言及はなく,また,基本設計工程の内容として,
要件定義工程にて明確になったカスタマイズ機能について,
具体的な画面設計,帳票設計を行うと記載しており(認定事実(6)エ(ア)f(b)),カスタマイズを予定していない機能(分類1及び2)については,上記アのような一般的な意味での基本設計(外部設計)工程を予定していない旨を明らかにしていた。
上記のとおり,一審被告は,分類1及び2についての要件定義工程及び外部設計工程は,
パッケージ標準機能及び他病院機能の紹介及び確認
作業である旨の説明を行い,
新たに要件定義書等を作成する工程ではな
い旨を一貫して明らかにしていたものである。
(ウ)これに対して,一審原告は,一審被告が分類1及び2についても要件定義書等の提出義務を負っていた旨を主張する。

確かに,本件システムについて要件定義書等を作成することは,要
件定義工程作業実施要領(甲64〔2-6〕),プロジェクト計画書(甲63〔本文13〕)及び品質保証計画書(甲93〔本文5〕)に明記されており,一審被告は,これら「基本設計資料」を一審原告に提出し,一審原告による承認を受けることとされていた(甲4〔説-5〕)。
しかしながら,上記も,およそ作成の必要性が認められない部分についてまで網羅した「要件定義書」又は「外部設計書」というタイトルの書面の作成を約束していたものとは認められない。
この点について,一審原告は,Q群馬大学医学部名誉教授の意見書(甲154〔10〕,223〔4,5〕)をもとに,全体の要件定義書等が必要である旨を主張する。
しかしながら,
同意見書中には,
「他
大学病院における開発において,ベンダがパッケージ説明書を提出した上で,これをカスタマイズした箇所および関連する画面・帳票等の変更箇所についてのみ外部設計書を提出することがみられる。」旨の記載があり(甲154〔10〕),パッケージソフトをカスタマイズしたシステムを導入する場合には,大学病院においても,網羅的な外部設計書が作成されないことがある事実を認めているところである。同教授は,上記は「変更箇所のみの提出でユーザが十分に業務イメージを構築できる場合に限られる。」と記載しているが(同),同記載は,
「システムは全体として統合されて機能を発揮するものですから,随時確認できる全ての書類が必要である」との記載(甲223〔5〕)と整合せず,これら意見書によっても,カスタマイズを予定していない項目まで網羅した外部設計書の作成が必要不可欠であると認めることはできない。
要件定義工程作業実施要領,プロジェクト計画書及び品質保証計画書で言及された要件定義書等は,いずれも分類3についてのものを指すと解すべきである。

一審原告は,要件定義書サンプル(乙528)が一般的な意味での
要件定義書等に当たるものであるという前提のもとに,第1回専門部会事前打合せにおいて,一審被告が「要件定義工程の成果物として,要件定義書のサンプルを用意した。」と説明してこれを配布したこと(認定事実(5)エ(イ))から,本件においても,「要件定義書」というタイトルの成果物の作成が予定されていた旨を主張する。また,一審被告が平成21年12月28日に提出した文書(甲158。認定事実(8)キ)が外部設計書に当たるものであるという前提のもとに,本件では現実に外部設計書が作成されており,一審被告の主張と矛盾している旨を主張する。
しかしながら,要件定義書サンプルは,「要件定義書」というタイトルではあるものの,配布時にCPLが「資料は内部資料であり,通常は病院側に提示していない」と説明しているとおり(認定事実(5)エ(イ)),ユーザへの提示を予定していない内部設計書等であると認められる。CPLがどのような意図で要件定義書サンプルを配布したかは不明であるが,要件定義書サンプルは,本件で作成が予定されていた要件定義書等とは異なるものであって,要件定義書サンプルに関する一審原告の上記主張はその前提を欠く。
また,上記甲158の文書は,要件定義書サンプルと同一書式を利用した文書が含まれていることからも明らかなとおり,ユーザへの提示を予定していない内部設計書等であると認められ,やはり,甲158の文書に関する一審原告の上記主張はその前提を欠く。

本件システムについての要件定義書等がどの文書を指すのかに関す
る一審被告の主張に変遷ないし混乱が見られることは,一審原告の主張するとおりである(補正前の原判決18頁18行目冒頭から同19頁14行目末尾まで及び同23頁25行目冒頭から同24頁2行目末尾までに記載された一審被告の主張参照)。
しかしながら,一審被告の主張は,分類1及び2については新たに要件定義書等のタイトルの書面の作成は予定されておらず,入札前に作成された本件要求仕様書等又は本件技術仕様書が要件定義書等の中心をなすものであるとの点では一貫しており,かつ,CPLの供述とも矛盾するものではなく,上記のような変遷ないし混乱が見られることを理由として,その主張を排斥することはできない。

さらに,一審原告は,一審原告が一審被告に対して一貫して要件定
義書等の提出を求めていたのに対して,一審被告が,本件訴訟において主張するような,分類1及び2については要件定義書等の作成が予定されていない旨の回答をしたことはなかった旨を主張する。
(a)一審原告は,
一審原告が要件定義書等の提出を求めたものとして,
平成21年3月3日の推進事務局会議において,「要件定義書として確認できるものを提示してほしい。」とシステリア考房が要望したことに対して,一審被告は,「各WGでは,技術仕様書の項目について,詳細に要件定義を実施している。それらをまとめた要件定義書を提示できるのは3月末となる。」と回答した事実(甲143〔2〕。認定事実(6)ケ)を指摘する。
しかしながら,
上記システリア考房の発言からも明らかなとおり,
システリア考房(一審原告)が提示を求めたのは,「要件定義書として確認できるもの」であり,「要件定義書」というタイトルの書面ではない。そして,その後も一審原告は「要件定義書」というタイトルの書面を提示していないにもかかわらず,システリア考房は,同書面の提示を再度求めることはしておらず,本件仕様凍結合意後である平成21年8月26日付けで「次期病院情報システム構築支援
開発監理業務

実施計画」(甲199)を作成して,本件シス

テムの外部設計(カスタマイズ)は「7月中に終了」し,8月以降「追加カスタマイズ設計の確認」等の作業に入っているとの認識を示すに至っている。
要件定義工程が終了せずに外部設計工程が終了するという事態は
考えられないから,システリア考房は,遅くとも平成21年8月26日時点までには,「要件定義書として確認できるもの」が既に提出されていたものと判断していたものと認められる。
そうすると,システリア考房が提示を求めた「要件定義書として
確認できるもの」とは,一審被告が作成義務を負っており,その作成を怠っていたと一審原告が主張する「要件定義書」とは異なるもの(WGにおいて一審被告から提示された画面イメージや帳票サンプル等を含む各種資料)を指していたものというべきである。
(b)一審原告は,
一審原告が要件定義書等の提出を求めたものとして,
G副部長が,一審被告に対し,平成21年8月31日以降,繰り返し,要件定義書等を含む各種ドキュメントの提示を求めた事実(甲96,100,101,145,146。認定事実(7)オ,キ(カ),(8)ア)を指摘する。
しかしながら,G副部長の上記求めは,上記(a)のとおり,本件システムの外部設計が既に終了し,「追加カスタマイズ設計の確認」等の作業に入っている段階でなされたものであって,そこで提示を求めている各種ドキュメントも,追加カスタマイズに関するものであったと見るのが相当である。実際,上記甲96のメール後に開催された3回の推進事務局会議においては,いずれも「カスタマイズ設計書」の確認作業の報告がなされている一方で,追加カスタマイズ以外の項目について要件定義書等の提出がなされていないこと
が問題とされた形跡は見られない(甲97ないし99の各2。認定事実(7)キ(ア)ないし(エ))。
また,上記甲101,146のメールも,帳票が「全種」揃って
いないことを問題とするものであって,要件定義書等が全く提出されていないことを指摘するものではない。
すなわち,G副部長が上記のとおり提示を求めた各種ドキュメン
トとは,主に追加カスタマイズ設計に関するものであって,G副部長自身,当時,要件定義書等が一審被告から全く提出されていないという認識を有していたものとは認められない。
(c)さらに,G副部長は,平成21年12月16日,一審被告に対して要件定義書等のドキュメントの提出を求めているが(認定事実
(8)カ(イ)),これは,「12月末時点での到達度評価」を行うための資料としてであって,本件システム全体について要件定義書等の提出がなく,このために本件プロジェクトの遂行に支障が出たと指摘するものではない。
(d)以上のとおり,一審原告は,少なくとも平成21年12月16日以前においては,一審被告が提出した要件定義書等に一部欠けている部分があったため,その追加提出等を求めたことはあったものの,一審被告が,一審原告の求める要件定義書等の作成を怠っているとして,その提出を求めていたとの事実は認められない。
(エ)以上のとおり,一審被告は,分類1及び2については,要件定義書等の作成義務を負っていなかったものと認められる。

分類3についての要件定義書等の提出義務について
(ア)これに対して,分類3はカスタマイズが予定された項目であるから,外部設計書の作成が予定されていたものである。
また,
分類3についても,
分類1及び2と同様に,
本件技術仕様書
(甲
6)が,本件システムにおいて実装すべき項目を明確にして整理した要件定義書に当たるものであり,
一から要件定義を行うことは予定されて
いなかったが,
その内容が一義的に定まっていた分類1及び2とは異な
り,
分類3はカスタマイズが予定されていた項目に関するものであるから,本件技術仕様書の記載に基づいて,一審原告との間で協議を行い,その結果を記載したものも要件定義書の一部を構成するものであったと認められる。
そして,これら分類3についての要件定義書等は,一審被告が作成して一審原告に提出し,「基本設計資料」の一部として一審原告の承認を得ることとされていた(甲4〔説-5〕)。
この分類3についての要件定義書等の承認については,その後,平成20年11月27日の第1回専門部会において,
①WGにおいて要件定
義,仕様確認及び外部設計を行うこと,②その後,専門部会において,WG検討結果の承認と審議を行うこと,
③専門部会における決定事項は,
逐次一審原告の病院長補佐会議において最終承認を得ることと合意された(認定事実(5)オ)。
(イ)第1回専門部会における上記合意に基づいて,WGにおいて,パッケージ標準機能及び他病院機能の確認やカスタマイズの内容についての検討等が行われた(認定事実(6)ア)。
そして,本件仕様凍結合意が締結されるまでの間に,一審被告は,未だ合意できていなかったPDAの機能を除き,WGにおいて,作成すべき画面イメージや帳票サンプル等の確認及び承認を得ていた
(弁論の全
趣旨)。
(ウ)これらWGにおける検討結果は,専門部会において審議及び承認される予定であったが,本件において,WGにおける検討結果を専門部会において明示的に承認する手続が採られた形跡は見当たらない。
一審被告は,同年3月4日の第5回専門部会までの間に,各項目がどのWGで確認されたかを記載した一覧表を交付することによって,専門
部会における承認に代える旨の合意がなされ,
同専門部会において,
「技
術仕様検討結果報告(要件定義)」(乙537)を交付して説明したことによって,要件定義の確認及び承認が終了した旨を主張する。しかしながら,
一審被告の主張するような合意が専門部会等において明示的に
なされた形跡は見当たらないし,上記乙537は,当時のWGにおける検討状況を「仕様検討中」,「承認済」等と記載して報告する書面に過ぎず(認定事実(6)コ(エ)),同書面の交付及び説明によって,専門部会における承認がなされたということはできない。
また,一審被告は,分類3について,「要件定義書」又は「外部設計書」というタイトルの書面を作成して,一審原告に提出することはなかった。
この点について,一審被告は,平成20年11月25日の第1回専門部会事前打合せにおいて,
要件定義工程の成果物がWGにおける配布資
料を全てまとめたものであることを説明し,
一審原告の承認を得た旨を
主張する。しかしながら,同事前打合せの議事録(乙318)にはその旨の記載は見当たらず,同主張は採用できない。

以上のとおり,
一審被告は,
分類3に限っては,
要件定義書等を作成し,
これを一審原告に提出して,専門部会において審議及び承認を得る義務があったが,これを怠っていたものと認められる。

5争点(4)(本件仕様凍結合意の意味)について
(1)本件仕様凍結合意が,開発対象を確定し,以後,一審原告は,一審被告に対し,新たな機能の開発要望はもちろん,画面や帳票,操作性に関わるものも含め,一切の追加開発要望を出さないとの合意(一般的な意味での「仕様凍結」の合意)を意味すると見るのが相当であることは,原判決「事実及び理由」欄の「第3

当裁判所の判断」の5項のとおりであるから,これを引

用する。
ただし,原判決110頁13行目及び18行目「エ」をいずれも「オ」と改める。
(2)当審における一審原告の主張について

一審原告は,本件仕様凍結合意当時,要件定義書等の提出がなく,要件
定義工程や外部設計工程は終了していなかったから,これらの工程をやり直さないという意味での「仕様凍結」の段階に至っていたとはいえず,ベンダがユーザの追加開発要望を拒否する前提を欠くし,画面や帳票,操作性を確認していない段階であり,ユーザである一審原告としては,追加開発要望や検討ができると考え,期待するのが当然である旨を主張する。しかしながら,
前記4(2)のとおり,
分類1ないし3のいずれについても
本件技術仕様書によって開発対象が基本的には明確になっていたし,分類3については外部設計書の作成が予定されていたが,前記4(2)ウ(イ)のとおり,一審被告は,未だ合意できていなかったPDAの機能を除き,WGにおいて作成すべき画面イメージや帳票サンプル等の確認及び承認を得ていたのであって,要件定義書等の提出がなかったからといって,要件定義工程が終了していなかったということはできず,また,追加開発要望が出せると一審原告が期待していたとしても,その期待は合理的なものであったということはできない。
また,一審原告が,デモ機を借り受け,WGにおいてパッケージ標準機能及び他病院機能の仕様を確認する作業を行っていたことを前提として,パッケージ標準機能及び他病院機能を信頼して,未確認部分についても一切の追加開発要望は出さないことを受け入れることが,あながち不合理な意思決定といえないことは,補正して引用する原判決113頁5行目冒頭から同17行目末尾までで説示するとおりである。
この点について,
一審原告は,
デモ機はすべての機能を網羅しておらず,
また,一審原告病院全体でパッケージを十分に確認できる状況になかった上,パッケージの機能と現行システムの機能との違いが指摘されていたから,他病院への導入実績があるパッケージだからといって信頼できるような状況にはなかった旨を主張する。
しかしながら,全ての機能を網羅していなかったというのはデモ機であるから当然のことであり,一審原告の職員がこれらを利用してパッケージの確認を行わなかったとしても,その結果を一審被告の不利益に扱うことは相当ではない。また,パッケージの機能と現行システムの機能とが違うことは当然のことであって,このことが,デモ機によってパッケージの確認ができなくなる理由になるとはいえない。

一審原告は,本件仕様凍結合意後も一審被告が書面(カスタマイズ仕様
書等)又は開発したシステムの確認を一審原告に求めたのは,一定の変更等の余地があることを前提とするものであった旨を主張する。
しかしながら,ベンダにおいて,開発したシステムの内容の確認をユーザに求めることは当然のことであって,だからといって,ユーザからなされる追加開発要望を受け入れることをベンダが許容していたということはできない。
また,一審原告は,本件仕様凍結合意後も,一審被告が一審原告の指摘を受けて修正を行うなどした事実があった旨を指摘するが,これは,一審原告による追加開発要望を一審被告が拒否し切れなかったというにとどまり(171項目の追加要望参照),一審被告が本件仕様凍結合意後に出される追加開発要望に応じる義務を有していたことを裏付ける事実ということはできない。

平成21年7月6日の第12回推進事務局会議において,一審被告がカ
スタマイズを約束した項目以外には対応できないと回答したことに対し,一審原告が,特段の異議を述べなかったこと(認定事実(6)テ),また,翌7日の第8回専門部会において,B教授が,今後開発プログラムが徐々に出来上がってくると発言したこと(認定事実(6)ト(ア))について,一審原告は,電子カルテカスタマイズ要望一覧(甲7)の導入範囲欄に「○」が付されたものを開発対象とすることを一審原告が了解したということを示すものに過ぎない旨を主張する。
しかしながら,これらは,本件仕様凍結合意後は追加開発要望を出すことができないと一審原告自身認識していたと評価する根拠というべきであって(補正して引用する原判決111頁26行目「現に」から同112頁11行目末尾まで参照),一審原告の上記主張は採用できない。

一審原告は,開発範囲を絞ってまで本件システムの運用開始を早めなけ
ればならない事情はなかった旨を主張する。
しかしながら,電子カルテ化が一審原告にとって喫緊の課題であったことは,一審原告自身が主張しているところであり(第2の3(8)カ),平成22年1月4日に本件システムの運用開始を実現するために,開発範囲を絞る旨の本件仕様凍結合意をする必要性は,一審原告の側にも強く存在していたというべきである。

一審原告は,本件仕様凍結合意が今後一切の追加開発要望を出さないと
いう合意であるとしても,一審原告はそのような認識は有しておらず,これは,仕様凍結の意味やその後の手続等について適切な説明をしなかった一審被告の責任である旨を主張する。
しかしながら,一審原告自身,本件仕様凍結合意が今後一切の追加開発要望を出さないという合意であると認識していたことは,上記ウや,一審原告による追加開発要望のために本件システム開発が遅れており,開発対象に取り込むべき開発要望の精査を行ってきた結果本件仕様凍結合意に至った経緯(認定事実(6)オないしテ)などに照らして明らかである。もっとも,現場の医師らには,そのような認識が必ずしも浸透していたとはいえず,これが本件の紛争の根本的な原因の一つとなっていたことは,前記4(1)イ(ア)のとおりであるが,これは,一審被告ではなく,一審原告の責任というべきである。
一審原告の上記主張はその前提を欠いているというべきである。

以上のとおりであって,本件仕様凍結合意後も追加開発要望を出すこと
が禁止されてはいなかった旨の一審原告の主張は採用できない。
6争点(5)(171項目の追加要望の開発対象該当性)について(1)一審被告は,一審原告が本件仕様凍結合意後に開発対象外の171項目の追加要望(ただし,通番012は欠番であり,通番105と通番163が同一であるので,実数は169項目である。)を出し,この結果,本件システム開発が遅延した旨を主張する。
これに対し,一審原告は,171項目の追加要望(実数は169項目)のうち,開発対象外の要望は3項目(通番136,144,145)であることは認めるが,12項目(通番011,035,091,105(163と同じ。),114,117,118,131,135,142,162)は一審原告が要望したものではなく,その余の154項目は開発対象内の開発要望であり,開発対象外の開発要望ではない旨を主張する。
(2)そこで検討するに,171項目の追加要望は,本件システムの引渡しが履行期になされなかったこと(債務不履行)についての帰責性がなく,また,一審原告に協力義務違反が認められる根拠の一つとして一審被告が主張するものであるから,これらの開発要望が出されたこと及びそれが開発対象外の開発要望であることについて一審被告が主張立証責任を負うものというべきであり,これに反する一審被告の主張は採用できない。そして,171項目の追加要望(実数は169項目)のうち,一審原告が本件仕様凍結合意後に要望を出したのは162項目(実数は161項目)であり,このうち125項目(実数は124項目)が開発対象外の開発要望であったと認められる。その理由は,以下のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3
当裁判所の判断」の6項のとおりであるから,これを引用する。なお,
下記の加除訂正の結果,項番が欠けたものは欠番とする。

原判決113頁20行目冒頭から同25行目末尾までを以下のとおり改める。
「(3)通番002,005,006,013ないし15,023ないし026,028,029,031,034,038,040,041,044,045,048,050,055,056,058ないし060,062ないし064,068ないし070,074ないし078,081,085ないし088,092,095,096,100,106,107,109,110,112,115,116,119,121,123,125,128ないし130,133,134,137ないし141,161,164,166ないし169についていずれも,本件技術仕様書(甲6)において分類1(パッケージ標準機能)又は2(他病院機能)とされ,カスタマイズを予定していない機能についてカスタマイズを求めるものである。これらの中には,一審原告と一審被告の担当者間で資料や情報のやりとりがあったもの(通番013(甲65),通番024(甲67,84),通番025(甲67),通番028(甲81),通番041(甲170〔13,資料31〕),通番133(甲81,乙485),通番166ないし168(弁論の全趣旨)や,一審原告がカスタマイズを求めたのに対して一審被告が明確な拒否をしなかったもの
(通番026
(甲71)

通番040(甲170〔12,13,資料30〕),通番58(甲109〔1,2,添付資料1〕,通番069(甲73,99の2),通番134(甲109〔3〕),通番138(甲128〔4〕,129))などもあるが,いずれも,専門部会などにおいて開発対象とする旨の明確な合意がなされたと認めるに足りる証拠はない。
また,一審原告の主張を踏まえても,パッケージ標準機能又は他病院機能として一審被告が提供する機能に不具合がある,あるいは,一審原告病院の運用の変更によっては対処できない重大な支障が生じると認めるに足りる証拠はない。
したがって,これらの要望はいずれも開発対象外の開発要望であ
る。」

同113頁26行目「(2)」を「(4)」と改める。


同114頁16行目冒頭から同116頁14行目末尾までを以下のとおり改める。
「(5)通番007ないし010について
要望1については,本件技術仕様書(甲6)において分類1とされている機能の追加変更を求めるものであり,かつ,本件契約後,開発対象に含める旨の個別の合意が成立した形跡は見られない。
要望2は,検査同意書取得対象オーダ画面の「同意書の取得確認」欄で「する」をチェックして「OK」を選択した場合,検査同意書が自動印刷される機能(電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-287(甲7〔19〕,乙470の2)について,「する」を「済み」に,「しない」を「未了」にそれぞれ変更するとともに,「同意書の取得確認」欄で未了をチェックして「OK」を選択した場合にも検査同意書が自動印刷される機能を求めるものである(乙470の3)。要望2は,上記電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-287に明示された機能ではなく,
同機能について更なる追加変更を求めるものである。
要望3が開発対象内の開発要望であることは当事者間に争いがない。したがって,通番007ないし010のうち,各要望1及び2は開発対象外の開発要望である。」


同116頁20行目冒頭から同117頁25行目末尾までを次のとおり改める。
「(10)通番016について
一審原告は,正規ラベルを二連ラベルにすることが合意されていた(電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-259(甲7〔18〕)から,仮ラベルも二連ラベルにすべきことは当然のことであると主張する。
しかしながら,上記CR-259は検体検査オーダにおける検体ラベルに関するものであって(弁論の全趣旨),病理オーダの仮ラベルを二連ラベルにすべき根拠となるものではなく,他に本要望に係る個別の合意が成立した形跡は見られないから,開発対象外の開発要望と認められる。」

同118頁18行目冒頭から同121頁1行目末尾までを以下のとおり改める。
「(12)通番018について
平成21年3月31日までに,XPフィルム管理システムの仕様に関して,XP番号を採番し,又は削除する機能を備えるものと合意されたことについては,当事者間に争いがなく,係る合意を反映した画面設計仕様書等が,甲68の3及び4である。
一審被告が主張する通番018に係る一審原告の開発要望は,診療予約がなく,かつ,再来受付機も経由しなかった患者が放射線部門へ直接行った場合への対応であり(乙31の2),これは,上記のとおり一旦合意により確定した仕様について,本件仕様凍結合意後である同年9月9日になって追加変更を求めたものである。
したがって,本件通番018は,開発対象外の開発要望である。
(13)通番020について
一審原告は,本件システムとナースコールシステム(ケアコム製)とのインターフェース(連携。本件技術仕様書(甲6)上,分類1とされていた。)に関し,漏れなく情報の送受信ができるよう求めたものであると主張する。これは,結局のところ,現行システムとナースコールシステムとのインターフェースと同じようにHL7をベースとするインターフェースの開発を行わなければ実現できない機能である(弁論の全趣旨)。
本要望は,上記のとおり分類1での提供が予定されていた機能の変更を求めるものであって,開発対象外の開発要望である。」

同121頁12行目冒頭から同123頁19行目末尾までを以下のとおり改める。
「このことは,プリンタの変更が納期遅延の原因となるか否か,パッケージとリコー製のプリンタとの組み合わせがNTT札幌病院等でも実績があるか否かによって左右されるものではない。」


同124頁6行目冒頭から同125頁14行目末尾までを以下のとおり改める。
「(21)通番035について
一審原告は,本要望に関し,質問をしたに過ぎないと主張する。
しかしながら,一審原告のG副部長は,平成21年8月5日,独自の外字対応方法についてNECから情報提供を受けたとして一審被告のSEに電子メールした(乙471)上で,同年11月14日,一審被告のCPLらに対し,「人名用漢字(中略)並びに第一・第二水準以外の文字の取り扱いについてはかねてより指摘,質問しているところですが,どのように対処されるお考えでしょうか。(中略)速やかに回答願います。」と電子メールを送信した事実(甲165〔添付資料3〕)が認められる。
これは,分類2(他病院機能の移植)によるものとされていた外字対応方法について,新たな外字対応方法の実現を強く求めるものであって,単なる質問と見ることはできない。
したがって,通番035は,開発対象外の開発要望である。
(22)通番036について
一審原告は,平成21年8月14日,パスワードの暗号化アルゴリズムをSSHA方式とすることで確定しており,その後,一審原告がその変更を申し入れた事実はない旨を主張する。
しかしながら,平成21年9月29日,三菱電機IT(一審原告側の業者)担当者から一審被告のMSEに対して,パスワードの暗号化アルゴリズムSHA-256はLDAPサーバを構成するソフトウェアに対応していないので,SSHA方式に変更したい旨の電子メールが送信されている(乙560,弁論の全趣旨)。これは,同日以前に,一審原告(三菱電機IT)と一審被告との間で,パスワードの暗号化アルゴリズムをSHA-256とすることを合意しており,同日,SSHA方式に変更することを求めたものと見るべきであり,一審原告の主張するように,単に一審被告からの問合せに回答したに過ぎないとは考えられない。
したがって,通番036は,開発対象外の開発要望である。」

同126頁6行目冒頭から同133頁2行目末尾までを以下のとおり改
める。
「(27)通番043について
一審原告は,電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-503(甲7〔11〕)で開発が合意されていた機能の開発を指示したに過ぎないと主張する。
しかしながら,上記合意は,経過表上,インバランス項目,アウトバランス項目,バランスの各々について,1時間ごとから1日ごとに累計と積算を表示するというものではあるが,これを「累計/積算」の形式で表示することまで合意したものとは認められない。
したがって,通番043は,開発対象外の開発要望である。
(28)通番047について
一審原告は,いずれも,電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-324及び387(甲7〔4,6〕)で開発が合意されていた機能の実現又は具体化・詳細化に過ぎないと主張する。
しかしながら,上記機能については,平成21年7月29日までに一審原告の了解を得て開発された機能の更なる変更要望であり(乙47,弁論の全趣旨),いずれも,開発対象外の開発要望である。
(29)通番057について
一審原告は,
本件技術仕様書
(C3-2)
1-5-18に基づいて,
検体検査オーダに自由文で情報入力ができるよう求めたに過ぎない旨主張する。
しかしながら,上記は,検体検査部門業務に関する機能であって,検査オーダに関するものではない。
検査オーダに関する本件技術仕様書(C4-1)1-2-21は,分類1とされており,電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-342(甲7〔17〕)により検査オーダに穿刺部位等の情報を登録できることなどが合意されてはいるものの,一審原告が主張するような情報入力については合意されていない。
したがって,通番057は,開発対象外の開発要望である。」

同133頁14行目冒頭から同134頁11行目末尾までを削る。

同134頁22行目冒頭から同138頁24行目末尾までを以下のとおり改める。
「(40)通番066について
一審原告は,輸血依頼伝票のレイアウト(分類3)について,一審原告の指示を伝えたに過ぎない旨主張する。
しかしながら,乙59によれば,一審被告が交付を受けていた輸血依頼伝票には,抗体欄は設けられておらず,また,「土曜・日曜はスタンバイのため輸血部に保管されています。」というコメントは記載されていなかったものであり,平成21年10月になって,レイアウトの変更を指示したものと認められる。
この点,一審原告のH技師は,平成20年11月28日,一審被告に対して,現行システムの印刷物(抗体欄が設けられており,「輸血予定日が休日の為,スタンバイ扱いとなります。」というコメントが常に表示されているもの)を交付して,輸血依頼伝票のレイアウトを指示した旨の陳述書(甲184)を提出する。しかしながら,同陳述書に添付された輸血依頼伝票は,本件訴訟提起後にNECに依頼して提供を受けたものというのであって(甲184〔1〕),H技師が一審被告に交付したという書面と同一のものであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,通番066は開発対象外の開発要望である。
(41)通番067について
一審原告は,採取ラベルへの印字情報(本件技術仕様書(甲6)上分類3とされ,また,電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-343(甲7〔17〕)において現行システムにおいて使用しているものと同等の内容にすることとされていた。)について,合意どおりの開発を求めたに過ぎないと主張する。
しかしながら,一審被告は,現行システムと同等の内容を印字するものとして作成した帳票を作成して,平成21年10月22日,R技師に確認を求め,その了承を得ていたのであって(乙40の1,乙524〔29,30〕),その後,これを変更するよう要望する通番067は,開発対象外の開発要望というべきである。
なお,証拠(乙524〔30〕)によれば,材料名として「その他」を選択することは極めて例外的な場合に限られることが認められ,これによって業務が大きく停滞するものとは認められない。
(45)通番071について
一審原告は,「指示受け画面」にオーダの一覧を表示する機能(分類3)について,一審原告の指示を伝えたに過ぎないと主張する。しかしながら,
「指示受け画面」
に一覧表示するオーダについては,
平成20年12月26日の第2回看護業務支援WGにおいて,「検体検査,輸血,注射,処方,処置,継続指示」に「細菌とリハビリ」を追加することとして確定された(甲219〔2〕)にもかかわらず,一審原告は,本件仕様凍結合意後にその変更を求めたものであって,開発対象外の開発要望と認められる。
(46)通番072について
一審原告は,本件要望に関し,質問をしたに過ぎないと主張する。しかし,弁論の全趣旨によれば,通番072は単なる質問ということはできず,分類2(他病院機能の移植)によるものとされていた外字対応方法について,新たな外字対応方法を求めるものであって,開発対象外の開発要望と認められる。」

同139頁12行目冒頭から同141頁4行目末尾までを削る。


同142頁3ないし4行目「使用に耐えないほどの」から同6行目「照らせば」までを以下のとおり改める。
「本件技術仕様書(甲6)上分類1又は3とされた機能に関するものであり,分類3とされていた輸血依頼伝票のレイアウトについても本件仕様凍結合意時までにカスタマイズ内容の確認がなされ(電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-108,109。甲7〔14〕),本件仕様凍結合意により画面,帳票を含めた追加開発要望をしない旨が合意されていたことなどに照らせば」


同142頁9行目冒頭から同144頁3行目末尾までを以下のとおり改
める。
「(55)通番083,170について
一審被告は,一審原告が放射線オーダにおいて検査部位を「歯式」で登録する旨の追加開発要望を出した旨主張する。
この点,本件技術仕様書(C4-2)1-1-4及び1-1-13では,「検査部位」(「部位」)をリストから選択することにより,依頼情報の登録が行える機能をパッケージ標準機能(分類1)により提供する旨が記載されているが(甲6〔C4-6,7〕),特に「歯式」で登録することは記載されていないから,歯式により部位を登録できなかったとしても,部位を特定することができれば,上記要件を満たすことになる。
そして,パッケージにおいても,放射線オーダの機能が存在し,歯についても,
予めシェーマ
(撮影部位を示すための下絵のようなもの。
乙315の24〔00-13〕参照)を登録しておけば,放射線オーダ画面において,当該シェーマを選択し,撮影部位を丸で囲む等の方法により,撮影部位を登録することが可能だったし,あるいは,詳細指示画面において,選択したシェーマの下にはフリーコメントフィールドが用意されているから,ここにコメントを入力することにより,文字で撮影部位を登録することも可能だった(乙315の24〔00-11〕,乙317〔23ないし30〕)。このことは,CPLが,平成21年12月9日の第14回専門部会において,歯式登録の実装は困難であるが,「シェーマとして送ることやコメントとしてオーダ情報を送る方法が考えられる。」と説明しているとおりである(乙2の14〔3〕)。
にもかかわらず,一審原告は,本件仕様凍結合意後である平成21年11月19日になって,歯式部位を登録する機能の追加を求めたのであって(乙74),通番083,170は,開発対象外の開発要望である。」

同144頁13行目冒頭から同145頁26行目末尾までを削る。

同146頁17行目冒頭から同147頁12行目末尾までを以下のとお
り改める。
「(62)通番091について
一審原告の要望は,物品請求オーダの「請求部署」欄に,端末の設置されている病棟が既定値初期表示されるよう求めるものであり,本件技術仕様書(甲6)では分類3とされている。
しかしながら,一審被告は,平成21年5月27日までに,物品請求オーダシステムを開発し,WGにおいて一審原告の確認を得ていたところ(乙475),一審原告は,本件仕様凍結合意後である同年11月25日になって,
その一部を変更することを求めたものである
(乙
81,470の14)。
したがって,通番091は,開発対象外の開発要望である。」

同148頁10行目冒頭から同21行目末尾までを削る。


同149頁10行目冒頭から同150頁16行目末尾までを以下のとおり改める。
「(68)通番099について
証拠(甲7〔17〕,109〔添付資料2〕,乙40の1)によれば,一審原告と一審被告は,電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-343において,「採取ラベルへの印字情報は,現行使用しているものと同等の内容とする」旨合意していたこと,現行システムの採取ラベル(甲109〔添付資料2〕)には,採取管コメントが印字される仕様になっていたが,一審被告の作成した採取ラベル(乙40の1)には採取管コメントが印字されない仕様になっていたことが認められる。
しかしながら,証拠(乙40の1,乙524〔29,30〕)によれば,一審被告は,採取管コメントが印字されない仕様になっている上記採取ラベルを作成して,平成21年10月22日,R技師に確認を求め,その了承を得たというのであって,採取ラベルの仕様は,一審原告と一審被告との合意により,乙40の1のものに確定されたと見るべきである。
一審原告は,その後,採取ラベルに採取管コメントの印字を求めたのであって,通番099は,開発対象外の開発要望である。」

同151頁4行目末尾に改行の上,以下を加える。

「なお,
平成21年11月28日の第1回外来リハーサル反省会において,一審原告が通番101に係る要望をしたのに対し,一審被告は「ご指摘いただいた事象について,調査及び修正させていただく。」と回答しているが(甲10の1〔4〕),同回答をもって,一審被告が不具合を認めたものということはできず,
この点に関する一審原告の主張は採用できない。


同151頁17行目冒頭から同152頁12行目末尾までを以下のとおり改める。
「(72)通番103について
通番103のうち,採取ラベルに負荷薬剤情報を印字するよう求める部分は,前記(68)で説示したとおり,R技師の確認,了承を得てラベルの仕様を確定させた後になって,採取ラベルに負荷薬剤情報を印字することを求めたのであるから,開発対象外の開発要望である。また,通番103のうち,負荷試験入力画面から登録された負荷薬剤を,それとは別画面である検体検査オーダ詳細画面へも反映させるよう求める要望が出されたことは,乙91により認められるが,このような機能は本件技術仕様書にも電子カルテカスタマイズ要望一覧にも記載がなく,開発対象外の開発要望であると認められる。
したがって,通番103は,開発対象外の開発要望である。」

同153頁6行目「8日」を「9日」と改める。


同153頁12行目冒頭から同154頁6行目末尾までを削る。


同155頁19行目冒頭から同157頁2行目末尾までを削る。


同157頁19行目冒頭から同159頁18行目末尾までを以下のとお
り改める。
「(82)通番114について
一審原告の要望は,電子カルテカスタマイズ要望一覧CR-188「生理部門システムで中止を行った際に電子カルテのオーダのステータスを中止に変更する。」に関するものであるが,甲7〔19〕において「導入範囲」に丸が付されておらず,導入範囲外とされていた。ところが,一審原告は,平成21年12月4日になって,再度同様の要望を提出したものである(乙101)。
なお,一審被告の主張中には,本要望が提出された時期を「平成21年8月頃」とするものがあり(原判決別紙171項目主張対比表の通番114の「被告の主張」欄の「原告による要望」欄①),時期の点で齟齬があるが,いずれにせよ本件仕様凍結合意後に要望を出したという点で同一の要望をいうものと考えられる。
したがって,通番114は,開発対象外の開発要望である。」

同161頁12行目冒頭から同163頁8行目末尾までを以下のとおり改める。
「(87)通番124について
一審原告の要望は,負荷試験項目と日内変動項目を同一オーダとして依頼しても検体部門システムに情報送信されるようにしてもらいたいというものである。
しかしながら,本件技術仕様書において,負荷試験の依頼を入力できる機能((C4-1)1-2-22)と日内変動検査の依頼を入力できる機能(C4-1)1-2-23)とは別項目になっており(いずれも分類1。甲6〔C4-3〕),負荷試験項目と日内変動項目の双方について同一タイミングでオーダできることを約束したものではない。このため,一審被告は,仕様変更の要望と理解して,プログラム修正により対応せざるを得なかった(乙107)。
したがって,通番124は,開発対象外の開発要望である。
(88)通番126について
一審原告の要望は,電子カルテシステムから感染症管理システムへ送信する患者基本情報のうち,「感染症名」データについて,当初プロブレム情報を送信する予定であったものを,病名情報へ変更することを求めたものである。
電子カルテシステムから感染症管理システムへ送信する患者基本情報については分類3とされていたが(本件技術仕様書(C3-4)1-4-1-1。甲6〔C3-4-5〕),一審被告は,上記患者基本情報うち「感染症名」について,プロブレム情報を送信するものとする細菌検査部門システム接続仕様書(乙484)を作成して,平成21年10月9日,G副部長から確認を得た(弁論の全趣旨)。
通番126に係る要望は,その後である同年12月になって,プロブレム情報ではなく病名情報を送信するよう変更を求めたものであって(乙108),開発対象外の開発要望である。」

同164頁6行目冒頭から同167頁4行目末尾までを以下のとおり改
める。
「(91)通番131について
一審原告は,本要望を出していないと主張する。
しかしながら,一審被告のSEは,平成21年12月17日に一審原告から上記要望を受けたものとして問題管理票を作成しており(乙111),一審原告のR技師も,要望の事実は確認できていないものの,誤認混同を招く数字の削除又は改定の趣旨で要望を出した可能性がある旨の陳述書を提出していること(甲167〔10〕)からすると,本要望は,一審原告によって出されたものと認められる。
そして,本件技術仕様書(甲6)上,本要望に係る機能は分類1とされており(本件技術仕様書(C4-1)1-6-11。甲6〔C4-5〕),カスタマイズを予定していなかった項目についての要望であったと認められる。
したがって,通番131は,開発対象外の開発要望である。」

同167頁10行目「乙85の2〔3〕」の後に「,乙114」を加え
る。

同167頁25行目冒頭から同170頁26行目末尾までを削る。

同171頁1行目「(99)」を「(98)」と改める。


同171頁5行目末尾に改行の上,以下を加える。
「(99)通番143について
一審原告は,処方オーダに関する本件技術仕様書(C4-10)1-3-5に基づいて,一審原告の運用に合った開発を求めたに過ぎない旨主張する。
しかしながら,一審原告の求める入院処方(麻薬あり)の処方指示書再発行機能は,本件技術仕様書には記載がない。
したがって,通番143は,開発対象外の開発要望である。」


同171頁11行目冒頭から同172頁10行目末尾までを以下のとおり改める。
「(101)通番146について
一審原告の要望は,本件システムに現行システムの手術歴を移行できるようにしてほしいというものである。
しかしながら,手術歴(検査結果歴,レポート)は,PDF等のデータを一審原告が作成し,これを指定フォルダに送信することによって閲覧可能な状態にするものとされており(甲6〔添付資料(D)1-11-2-1〕),本要望はこれを変更することを求めるものであるから,開発対象外の開発要望である。」

同172頁16行目「乙85の2〔3〕」の前に「乙2の14〔1〕,」
を加える。

同173頁5行目冒頭から同9行目末尾までを削る。


同173頁22行目冒頭から同174頁13行目末尾までを削る。

同175頁3ないし4行目「被告は開発対象でなかったことを積極的に
主張するものではないから」を「弁論の全趣旨によれば」と改める。モ
同175頁6行目冒頭から同9行目末尾までを削る。


同別紙171項目主張対比表の通番013,018,023,025,
028,034ないし036,038,041,043,044,047,050,064,066,067,077,083,091,096,099,103,114,119,121,124,125,129ないし131,133,139,169,170の「当裁判所の判断」欄を全て「×」と改める。
(3)当審における一審原告の主張について
個別の項目についての当審における一審原告の主張がいずれも採用できないことは,上記(2)で認定説示するとおりである。
7争点(6)(一審原告のマスタの抽出義務の有無等)について
(1)前提事実(5)のとおり,
マスタ
(データ処理に必要な基本データをまとめた
ファイル)のうち,①システム運用開始後に「原則として変更しないマスタ」(画面に表示する項目の初期設定やチェック機能の有効化,無効化などの設定といった,主としてシステム設定に関するもの)の作成義務が一審被告にあったことは争いがないが,②システム運用開始後に「継続的な設定変更・確認が必要なマスタ」(薬品や検査項目などのように,ユーザである病院によって異なり,一定の頻度で変更や更新が行われるもの)の作成義務(現行システムからの抽出義務とほぼ同義である。)が一審原告にあったか否かは争いがある。
(2)そこで検討するに,本件契約上マスタの抽出義務を負っていたのは,一審原告であり,しかるに,一審原告は,マスタの抽出義務を怠り,一審被告がマスタの作成を代行するに際しても協力を怠ったものと認められる。その理由は,以下のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3
当裁判所の判断」の7項のとおりであるから,これを引用する。


原判決176頁21行目冒頭から同177頁2行目までを以下のとおり改める。

「(ア)一審原告が取りまとめた本件要求仕様書
(甲4
〔ABCD-185〕

には,「移行するデータ対象は,現病院情報管理システムに残る全てのデータ
(旧システムデータと言い,
これにはマスターデータを含む。

の内,診療・医事業務の継続に必要な範囲とし,本学と協議して定めるとする。」((D)1-11-2-1),「旧システムデータの抽出作業費用は,本調達に含まれる。」((D)1-11-2-3)と記載されていた。
これを受けて,一審被告が一審原告に入札に当たって提出した本件技術仕様書(甲6〔D-5〕)には,「移行するデータ対象は,現病院情報管理システムに残る全てのデータの内,診療・医事業務の継続に必要な範囲とします。具体的な移行データの対象範囲及び移行方法については,添付資料に詳細に記載致します。」((D)1-11-2-1),「旧システムデータの抽出作業費用は,弊社の提案範囲に含みます。」((D)1-11-2-3)と記載し,同添付資料(甲6〔添付資料(D)1-11-2-1〕)には,「各種マスタ情報」について「別途移行計画の中で定義いたしますが,お客さまによる入力によりその登録をお願いいたします。」と記載されていた。」

同177頁5ないし6行目「いただける」を「頂ける」と改める。

同177頁15行目「7,」の後に「10,」を加える。


同178頁6行目「システムの基本設定となるマスタ」を「マスタのう
ち,「日々メンテナンスが必要なもの,随時あるいは定期で変更が必要なもの」」と改める。

同179頁2行目冒頭から同9行目末尾までを以下のとおり改める。「(ク)平成21年3月31日の第9回推進事務局会議において,一審被告の担当者が,「マスタ移行について,NECのマスタとNTTのマスタの共通項目を調査し,移行可能なデータを調査する。移行できない項目は,病院様からの指示,例えばマスタ設定ができる資料のご提出により弊社がマスタ設定を行い,病院様に確認していただくか,病院様に設定していただく。」と説明したところ,一審原告からは特に異論や疑義などは出されなかった。(甲208〔1,3〕)」


同180頁23行目末尾に改行の上,以下を加える。
「また,薬品や検査項目などのように病院ごとに異なる「継続的な設定変
更・確認が必要なマスタ」の作成は,医療業務に対する知識が必要であるうえ,病院ごとに医療業務の内容及びデータ処理の実情が異なることから,医療業務に従事していない一審被告が単独でこれらマスタを作成することは不可能なのであって,ユーザである一審原告の責任で作成し,その後の継続的な設定変更・確認を行うことが必要なものである(乙524〔43〕)。」

同183頁24行目「524〔51〕」を「524〔50〕」と改める。
(3)当審における一審原告の主張について

一審原告は,本件要求仕様書(甲4)及び本件技術仕様書(甲6)にお
いて,マスタの抽出は一審被告の義務である旨記載されており,一審原告は,平成20年10月9日に実施した応札者に対する1回目のヒアリングでもその旨を確認した旨を主張する。
しかしながら,一審原告の指摘する本件要求仕様書及び本件技術仕様書の記載(前記(2)ア)は,一審被告が一定範囲のマスタの抽出作業を行うこと及びその場合の費用を一審被告が負担することを定めたものに過ぎず,全てのマスタの抽出作業を一審被告が行う旨定めていたということはできない。プロジェクト計画書(甲63〔本文12〕)の「既存システムに格納されている情報を新システムへ移行する。移行範囲は大学殿と協議のうえ,決定する。」との記載も同様である。
また,応札者に対する1回目のヒアリングにおける一審被告の回答(認定事実(4)テ)本件技術仕様書の上記記載について確認したにとどまり,も,
これを超えて,全てのマスタの抽出作業を一審被告が行うことを約束したものということはできない。

一審原告は,一審原告にマスタの抽出義務があるかのような記載がある
提案補助資料(乙11)は,本件技術仕様書の下位に位置付けられる文書であって,両者が矛盾する場合は後者が優先する旨を主張する。
しかしながら,上記アのとおり,本件技術仕様書上も,全てのマスタの抽出作業を一審被告が行う旨定めていたということはできず,一審原告の上記主張はその前提を欠く。

平成20年11月14日のキックオフ時のCPLのD薬剤師への回答
(認定事実(5)イ(ウ)b)も,本件技術仕様書の記載に反して,一審被告が全てのマスタの抽出作業を行うことを約束したものということはできない(補正して引用する原判決181頁19行目冒頭から同182頁12行目末尾まで参照)。

一審原告は,マスタスケジュールにおいて一審原告の役割と記載された
「マスタ作成」とは,現行システムにないマスタを新規に作成する作業を意味し,これに限って一審原告が作成義務を負う旨を主張するが,マスタスケジュールの上記文言をこのように狭く解釈すべき理由はなく,一審原告の上記主張は採用することができない。

一審原告は,平成21年3月31日の第9回推進事務局会議において,
一審被告からなされた「移行できない項目は,病院様からの指示,例えばマスタ設定ができる資料のご提出により弊社がマスタ設定を行い,病院様に確認していただくか,病院様に設定していただく。」との発言に対し,一審原告から異議が出なかったこと(認定事実(6)ス(ウ)),同年4月27日の第7回専門部会において,J医師が「なるべく職員がマスタを作成することがないようNTTにお願いしたい。」と発言したこと(認定事実(6)セ(エ))について,いずれも,一審原告がマスタの抽出義務を負っていたことを自認したものということはできない旨を主張する。
しかしながら,上記事実は,いずれも,一審被告がマスタの抽出や作成を全て行うべきであるとまで一審原告は考えておらず,一審原告においても,一定のマスタの抽出及び作成作業を行うことを自認していたことを裏付けるものであることは明らかであって,一審原告の上記主張は採用することができない。

一審原告は,一審被告がマスタの抽出作業を行い,あるいは,同抽出義
務があることを前提とする行動を採っていた旨を主張する。
(ア)一審原告は,一審被告が,①平成20年12月19日及び平成21年1月14日,NECから現行システムの既存マスタのデータ抽出に関する見積書を取得していた事実,②平成21年1月26日の推進事務局会議において,マスタ移行についてNECと検討を進めており,既存データベースから実データを抜き出すことの了解を得ている旨を説明していた事実,③同年3月17日の第6回専門部会において,現行システムからマスタを抽出済みである旨の報告を行っている事実を指摘し,これらは,一審被告がマスタの抽出作業を行い,あるいは,同抽出義務があることを前提とする行動である旨を主張する。
しかしながら,一審被告はもともと一定範囲のマスタについて移行義務を負っているのであって(前提事実(5)参照),一審原告の指摘する上記①ないし③が,これを越えて,「継続的な設定変更・確認が必要なマスタ」の抽出作業に関する言動であったと認めるに足りる証拠はない。(イ)また,一審原告は,一審被告が,①検体検査システム及び物流システムについて,NECに委託してマスタの抽出作業を行った事実,②54の薬剤マスタのうち33について抽出作業を行った事実を指摘し,これらは,
一審被告がマスタの抽出義務を履行したものである旨を主張する。この点について,証拠によれば,上記①のうち,平成21年9月28日にNECに委託して抽出したデータの中に,検体検査システム及び物流システムについての「継続的な設定変更・確認が必要なマスタ」が含まれていたこと(乙280の1,425の1,577〔8,12〕。これに対して,弁論の全趣旨によれば,乙281ないし283の各1に係る委託契約は,一審原告からの追加要望に応じるために,追加でデータ抽出を行うことを求めたものであって,「継続的な設定変更・確認が必要なマスタ」に関するものではなかったものと認められる。),上記②の事実(乙13,14,524〔47〕)が認められ,これらは,一審被告が「継続的な設定変更・確認が必要なマスタ」の抽出作業を行ったものと認められる。
しかしながら,これらは,一審原告がその義務であるマスタの抽出作業を行わず,本件プロジェクトが停滞する中で,やむなく一審被告がその一部の作業を代行したものであったと認められ(乙524〔47〕参照),これらの事実があったからといって,一審被告が「継続的な設定変更・確認が必要なマスタ」の抽出義務を負っていたということはできない。
そして,このように一審被告が一審原告に代わってマスタの抽出作業を行うに当たっても,一審原告は,既存システムのマスタの調査及び分析に必要な協力(NECへの協力依頼等)を行わず,このため,一審被告の負担が増大したものと認められる(乙524〔48,49〕)。これに対して,一審原告は,平成20年11月17日の打合せにおいて,NECに対して,一審被告への協力を依頼しており,マスタのデータ抽出に関して,NECへの協力依頼等を怠った事実はない旨を主張する。しかしながら,一審原告は,本来自らが行うべきマスタの抽出作業を一審被告に行わせていたのであるから,上記のような一般的・抽象的な協力依頼では足りないものというべきである。

一審原告は,一審被告の作成したマスタについて,途中の点検は想定さ
れておらず,D薬剤師らが検証,動作確認を行わなかったという事実も存在しない旨を主張する。
しかしながら,抽出したデータを移行する前にその点検を行うことは当然必要になることであって,
これは,
一審原告の医療業務に精通し,
また,
医療の専門知識を有する者でなければ行うことができず,一審原告の上記主張はその前提において失当である。そして,D薬剤師らが一審被告の求めにも関わらず,マスタの検証,動作確認を行わなかったことは,補正して引用する原判決183頁9行目「さらに」から同13行目末尾まで,同184頁3行目「同月頃には」から同7行目末尾まで等で認定説示するとおりであって,これらも,一審原告のマスタの抽出義務の懈怠というべきである。

一審原告は,平成21年10月13日になっても,いわゆる「仕様凍結」の段階に至っていなかったから,マスタを先行して提出するような状況ではなかった旨を主張する。
しかしながら,本件仕様凍結合意が文字どおりの「仕様凍結」の合意であって,以後はマスタ作成等の作業に移る段階に至っていたことは,前記5のとおりであって,一審原告の上記主張はその前提を欠く。

一審原告は,CPLが提供を約束した他病院の処置マスタの提供が遅れ
るなど,十分なマスタ作成支援が得られなかった旨を主張する。
しかしながら,CPLが,他病院のマスタの提供を求められた際,「マスタは病院独自のものであり,そのまま移植することは難しい。」と説明しているように(認定事実(6)セ(エ)),他病院のマスタはあくまでも参考程度のものであって,その提供が遅れたために一審原告のマスタの抽出作業が遅れたと認めることはできない。

以上のとおり,一審原告がマスタの抽出義務を負わず,したがってその
懈怠もしていない旨の一審原告の主張は採用できない。
8争点(7)
(本件プロジェクト頓挫についての一審原告と一審被告の責任)
につ
いて
(1)一審原告の債務不履行責任について

協力義務違反について
システム開発はベンダである一審被告の努力のみによってなし得るものではなく,ユーザである一審原告の協力が必要不可欠であって,一審原告も,一審被告による本件システム開発に協力すべき義務を負う(一審原告も,一般論として上記のような協力義務を有していることは認めているところである。)。そして,この協力義務は,本件契約上一審原告の責任とされていたもの(マスタの抽出作業など)を円滑に行うというような作為義務はもちろん,本件契約及び本件仕様凍結合意に反して大量の追加開発要望を出し,一審被告にその対応を強いることによって本件システム開発を妨害しないというような不作為義務も含まれているものというべきである。
しかるに,前記6などのとおり,一審原告が本件契約及び本件仕様凍結合意に反して大量の追加開発要望を出し,一審被告がこれに対応せざるを得なかったことから,本件システム開発が遅延した。また,前記7のとおり,一審原告がマスタの抽出義務を負っていたにもかかわらず,これを懈怠し,一審原告の協力が得られないまま一審被告が代行せざるを得なくなったことも,本件プロジェクトが遅延した理由の一つになっている。さらに,一審原告は,一審原告の追加開発要望に基づいて現行システムの備える機能を最大限取り込むことを要求しながら,そのために必要な現行システムの情報(基本設計書等)を十分に提供せず(乙555〔7ないし9〕),また,一審被告が一審原告に代わってマスタの抽出作業を行うに際しても,NECに必要な協力依頼を行うことを怠った(前記7(3)カ(イ))。
そして,前記3のとおり,本件システムは,遅くとも平成22年4月26日までには,一審原告の協力が得られずに保留せざるを得なかった1項目を除き,全て完成していたにも関わらず,一審原告は,独自の見解から本件システムの開発が一審被告の責任で遅延したとして,一方的に本件解除をした。
上記のとおり,一審原告には,本件契約上の協力義務違反(債務不履行)が認められる。

受領義務違反について
一審被告は,一審原告には本件システムの受領義務違反が認められる旨を主張する。
しかしながら,本件システムはほぼ完成していたとはいえ,一審被告が一審原告に対して即時の検収を求めたという事実は認められず(前記3(3)カ参照),一審原告に受領義務違反があったということはできない。ウ
当審における一審原告の主張について
(ア)一審原告は,①通番083(171項目の追加要望)に関して,パッケージ標準機能が歯科に対応していないとCPLらが誤解していた可能性がある,あるいは,②一審被告のSEが作成した問題管理票(乙101,104の2,乙111など)には実態を反映していないものが少なくないなどとして,一審被告のSEの資質欠如が本件システム開発遅延の一因である旨を主張する。
しかしながら,上記①については,前記6(2)スのとおり,パッケージ標準機能は歯科にも対応可能であるが,歯式で検査部位を登録したいとの一審原告の要望に対応するものではない旨をCPLが説明したというだけのことであり,誤った説明ではなく,CPLらがパッケージを熟知していなかったことを示すものとはいえない。
また,上記②のうち,乙101及び乙111については,前記6(2)ニ及びネで説示したとおり,実態を反映していないということはできない。乙104の2については,同記載の要望(通番117)を一審原告が行った事実を認めることはできないが(補正して引用する原判決160頁7行目冒頭から同21行目末尾まで),これは,乙104の2の記載(平成21年12月11日に通番117の要望があった旨)と一審被告の主張(同年11月14日に要望が出された旨)に齟齬があるために過ぎず,一審原告の主張と異なる機会に乙104の2の記載に沿った要望がされた可能性を否定するものではない。上記を含め,一審被告のSEが作成した問題管理票の中に,一審原告から要望がなかったにもかかわらず作成された,実態を反映していないものがあったと認めるに足りる証拠はない。
一審被告のSEの資質欠如が本件システム開発の一因である旨の一審原告の主張は,これを認めるに足りる的確な証拠はないものというべきである。
(イ)一審原告は,平成21年7月7日になされた本件追加開発合意自体が一審被告の処理能力を超える過大なカスタマイズを約束したものであったのだとすれば,その後になされた追加開発要望が本件プロジェクト頓挫の原因となるものではない旨を主張する。
しかしながら,前記3(2)ウのとおり,一審被告は,平成21年1月5日までには,本件追加開発合意によってカスタマイズを約束した625項目を含む6486項目のほとんどを完成させていたのであり,本件仕様凍結合意後に一審原告が大量の追加開発要望を出していなければ,同月3日までには本件システムを完成させ,同月4日から運用を開始することが十分に可能であったものと考えられる。
本件追加開発合意自体が一審被告の処理能力を超える過大なカスタマイズを約束したものであったとの一審原告の主張は採用できない。(ウ)マスタの抽出義務違反による影響について

一審原告は,本件解除前に一審被告が本件プロジェクトが遅延した
原因として説明していた中に,一審原告のマスタの抽出義務違反の指摘がなかったから,仮に一審原告のマスタの抽出義務違反があったとしても,これが本件プロジェクト遅延の原因になっていたとは認められない旨を主張する。
しかしながら,当時,一審被告は,本件プロジェクトの継続を希望して,その旨を一審原告に申し入れていた状況にあったから,あえて注文者である一審原告の義務違反を指摘しなかったと考えられるのであって,一審原告の上記義務違反が本件プロジェクト遅延の原因ではないということはできない。

また,一審原告は,一審被告のマスタ作成支援業務が不十分であった旨を主張する。
しかしながら,本件契約上,一審原告がマスタの抽出義務を負っていたのであって,一審被告がNECに依頼してマスタデータの抽出を行う義務を負っていたとはいえない(前記7(3)カ参照)。CPLによる他病院の処置マスタの提供が遅れたことが一審原告によるマスタの抽出作業の遅れにつながったということもできない(前記7(3)ケ参照)。
また,一審被告は,繰り返し,一審原告によるマスタの抽出作業が遅れている旨を指摘して,早期の対応を求めていたのに(認定事実(7)ウ(イ),カ,ク(イ),シ(イ),(8)エ(ウ)等),一審原告が抽出作業を怠っていたものである。
一審被告のマスタ作成支援業務が不十分であったという事実は認められない。

一審原告は,一審被告のデータ移行の方針が定まっていなかったた
めに本件プロジェクトが遅延した旨を主張する。
この点,一審被告が,データ移行業務に関して,NECから平成21年2月2日に見積書を取得したこと,同年9月28日にNECとの間で委託契約を締結したこと,その後,3回にわたって追加契約を締結したことは,証拠(乙280ないし283の各1)により認めることができるが,これが本件プロジェクトの遅延に影響したと認めるに足りる証拠はない。
(エ)一審原告は,NECに対して一審被告に協力する旨を申し入れるなどしており,一審被告が現行システムの情報提供を怠ったとの事実は存しない旨を主張する。
もとより,一審原告が,一審被告に対し,本件契約上一審被告の義務とされていた業務の遂行を求めるだけであったのであれば,NECに対する協力依頼などを行うことによって,現行システムの情報提供を積極的に行うべき義務があったということはできない。
しかしながら,本件においては,一審原告は,本件契約上一審被告の義務とされていた業務を越えて,分類1及び2についてのカスタマイズや本件仕様凍結合意以後も追加開発要望を出すことをやめず,現行システムの備える機能を最大限取り込むことを要求していた。また,マスタの抽出義務を負っていたのに,必要なマスタの抽出作業を行わず,一審被告が代わって同作業を行わざるを得なかった。上記のような事実関係を前提とすると,信義則上,一審原告は現行システムの情報提供を積極的に行うべき義務を負っていたというべきである。しかるに,一審原告が行った同義務の履行は,NECに対して一審被告に協力するよう1回申し入れたこと,
一審被告に現行システムのログイン権限を与えたこと,
現行システムに関する画面イメージや帳票サンプル等を断片的に一審被告に交付したことなどにとどまっており,一審原告には同義務違反が認められるというべきである。
(オ)以上のとおり,本件プロジェクトが頓挫したことについて一審原告に責任がなかった旨の一審原告の主張はいずれも採用できない。
(2)一審被告の債務不履行責任について

前記2のとおり,本件システムの引渡日を平成22年1月4日以降へ延期するとの合意があったとは認められず,約定の期日に本件システムの引渡しがなかった(履行遅滞)との事実は認められる。
しかしながら,本件システム開発が遅延し,結局引渡しがなされないまま本件解除に至ったのは,前記(1)アのとおり,一審原告が協力義務に違反したためであり,一審被告の責任によるものとは認められない。

また,前記4(2)のとおり,一審被告は,分類3に限っては,要件定義書等を作成し,これを一審原告に提出して,専門部会において審議及び承認を得る義務があったが,これを怠っていたものと認められる。
しかしながら,要件定義書等は,仕様を確定して,システムの具体的な実現方法を定義する内部設計(詳細設計)を行うために必要なものである(前記4(2)ア)。しかるに,本件においては,平成21年7月7日の第8回専門部会において本件仕様凍結合意がなされ,以後,新たな機能の開発要求はもちろん,画面や帳票,更には操作性に関わる開発要求も含め,一切の開発要望を出さないこととされていた(前記5)。このように,要件定義書等が提出されていない段階で仕様凍結合意がなされたのは,本件技術仕様書によって開発対象が基本的に明確になっていた上,PDAの機能を除いて,WGにおいて作成すべき画面イメージや帳票サンプル等の確認及び承認が得られていたからであったと考えられる
(前記5(2)ア参照)

そうすると,一審被告による要件定義書等の提出義務違反は,本件仕様凍結合意後における本件システム開発の進行に影響を与えるものとはいえず,一審被告の責任によって本件プロジェクトが頓挫したということはできない。

一審原告は,一審被告にプロジェクトマネジメント義務違反が認められる旨を主張する(補正して引用する原判決40頁20行目冒頭から同41頁1行目末尾まで,同5行目冒頭から同43頁20行目末尾まで参照)。しかしながら,一審被告は,平成21年3月4日以降,専門部会等において,繰り返し,一審原告による追加開発要望の多くは仕様外のものであること,
一審被告としては,
これらの追加開発要望に対応するのは難しく,
同年9月24日(本件原契約におけるリース開始日)に間に合わなくなることを説明した(認定事実(6)コ(ア),シ(イ),ス(イ),セ,タ)。そして,一審被告は,同年7月7日,一審原告による625項目の追加開発要望を受け入れる(本件追加開発合意)一方で,以後は,新たな機能の開発要望はもちろん,画面や帳票,操作性に関わるものも含め,一切の追加開発要望を出さないという合意(本件仕様凍結合意)を取り付けたものである。このように,一審被告は,プロジェクトマネジメント義務の履行として,追加開発要望に応じた場合は納期を守ることができないことを明らかにした上で,追加開発要望の拒否(本件仕様凍結合意)を含めた然るべき対応をしたものと認められる。
これを越えて,一審被告において,納期を守るためには更なる追加開発要望をしないよう注文者(一審原告)を説得したり,一審原告による不当な追加開発要望を毅然と拒否したりする義務があったということはできず,一審被告にプロジェクトマネジメント義務の違反があったとは認められない。

したがって,一審被告には債務不履行(履行遅滞)について帰責性がなく,また,一審原告の債務不履行について過失相殺の対象となるべき過失の存在も認められない。

(3)一審原告の不法行為責任について
一審被告は,一審原告の協力義務違反について,不法行為を構成するとも主張するが,一審原告の義務違反が,債務不履行を超えて不法行為を構成するほどの違法性を有するものであると認めることはできない。
一審被告の上記主張は採用できない。
9争点(9)(一審被告の損害額)について
(1)売買代金(導入費及び保守費)について

導入費相当額について
(ア)一審被告は,本件システムが完成し,検収等がされ,本件システムのリースが開始されれば,NTTファイナンスから,一審原告が同社に支払うべき導入費2175万2038円(月額)をリースレートで割り戻した金額及び一審原告が同社に支払うべき保守費全額を売買代金として受領することとされていた(甲1〔別紙構成内訳書4/4〕,乙308〔1,2〕)。
そして,リースレートとしては,平成20年11月13日に,NTTファイナンスが一審被告に対して1.
4525%を提示し
(乙305)

一審被告がこれを受け入れたと認められる(乙308〔2〕)。
そうすると,本件システムが完成・納品されていれば,一審被告は,NTTファイナンスから売買代金
(導入費をリースレートで割り戻した
もの)14億9755万8554円(1円未満切捨て)を取得することが具体的に見込まれていたと認められ,同金額は,一審原告の債務不履行と相当因果関係のある損害である。
(式)21,752,038÷1.4525×100
なお,一審被告は,上記売買代金に消費税を加算した金額を損害額であると主張するが,
一審被告が上記売買代金と消費税相当額をNTTフ
ァイナンスから受領しても,
消費税相当額は国に納付することになるの
であって,これを一審被告の逸失利益ということはできない。
(イ)当審における一審原告の主張について
一審原告は,一審被告がNTTファイナンスから売買代金を取得できるというのは,一審被告の期待という程度のものであって,具体的な見込みがあったということはできない旨を主張する。しかしながら,本件システムが完成・納品されたにもかかわらず,一審被告とNTTファイナンスとの間で売買契約締結に至らなかった可能性があると考えるべき事情は見当たらない。
一審原告は,本件システムの完成度合は6割程度であったから,売買代金の6割の限度で一審被告の損害と認められる旨を主張する。しかしながら,本件システムは,前記3のとおり,本件解除時までにはほぼ完成していたと認められ,一審原告の主張はその前提を欠くというべきである。
よって,一審原告の上記主張はいずれも採用できない。
(ウ)なお,本件契約上一審被告が行うべき業務とされていたもののうち,リハーサル及び操作研修など,本件システムの完成以外の部分について一部未履行のものがある。
しかしながら,リハーサルについては,一審被告のK部長及びCPLが実施を求めていたのに,一審原告の職員らから消極意見が出たために中止されたものである(前記3(2)ア(ウ))。操作研修についても,一審被告は相当な準備を行っていた(乙524〔56,57〕)。この他,一審被告は,保守設備構築等の検討を行って常駐保守要員の提案を行ったり(乙571),遠隔保守に必要なインターネット回線の工事の調整を行ったり(乙572),保守・運用計画書を提出するなどしていた(乙573,574)。上記のとおり,一審被告が行うべき業務のうち一部未履行に終わったものについても,一審被告は相当の作業を行っていたものと認められる。
また,一審被告は,625項目の追加開発(本件追加開発合意)や171項目の追加要望など,本件契約で予定されていなかった多数の追加開発要望に応じざるを得ず,これによって相当額の追加費用の負担を余儀なくされた(本件追加開発合意によるものだけでも約8500万円にのぼる。乙524〔24〕)。
以上に照らし,一審被告が本件解除により利益(費用支出を免れたこと)を得ていたとしても,それは一審被告が現に支出を余儀なくされた費用に比して極めて小さなものであったと考えられ,上記(ア)の売買代金(導入費相当額)全額を一審被告の損害と認める。

保守費相当額について
一審被告は,本件システムが完成し,検収等がされ,本件システムのリースが開始されれば,NTTファイナンスから,一審原告が同社に支払うべき保守費7億5225万3260円の全額を売買代金として受領することとされていた(甲1〔別紙構成内訳書4/4〕,弁論の全趣旨)。そうすると,本件システムが完成・納品されていれば,一審被告は,NTTファイナンスから上記7億5225万3260円を取得することが見込まれていたと認められる。
しかしながら,他方,一審被告が上記保守費相当額を受領することとされていたのは,一審被告が本件システムの保守業務に当たることの対価であったと考えられ,本件解除によって一審被告は保守業務に当たる義務を免れたのであるから,上記保守費が一審被告の損害になるということはできない。
(2)本件システムのサーバ等撤去費用について
一審被告は,本件システムのためのサーバ等を一審原告病院から撤去するために757万4700円を支出した(乙299ないし304)。上記撤去費用は,
一審原告の債務不履行と相当因果関係のある損害である。
(3)物品の転用について
一審被告は,本件プロジェクトのために購入した物品のうち,パーソナルコンピュータ機器1207点(合計6646万2095円),ディスプレイ機器629点(合計1550万4042円),プリンタ機器96点(合計814万7594円)を,東日本大震災の被災3県に無償で給付して転用した(乙308〔5〕)。これらの物品の価格相当額(合計9011万3731円)は,損益相殺の対象として,一審被告の損害額から控除すべきである。(4)合計
以上によれば,一審被告の損害額は14億1501万9523円となる。(5)遅延損害金の始期
第2事件の訴状が一審原告に送達されたのは平成22年9月2日であるから(顕著な事実),遅延損害金は,同月3日から起算することとなる。10争点(10)(被告の商法512条に基づく報酬請求権の有無)について本件契約は,金額(リース料金)を定めて締結された契約であって,本件契約における合意を離れて報酬請求できるものではなく,
その余の点を検討する
までもなく,一審被告の予備的請求2は失当である。
第4結論
以上のとおり,一審原告の請求にはその余の点を検討するまでもなく理由がないから棄却し,一審被告の主位的請求は14億1501万9523円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の主位的請求並びに予備的請求1及び2を棄却すべきところ,これと異なり,一審原告の請求のうち3億6508万5426円及び遅延損害金,一審被告の主位的請求のうち3億8386万1689円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の一審原告の請求及び一審被告の請求をいずれも棄却した原判決は失当であって,一審原告の控訴には理由がなく,一審被告の控訴の一部には理由がある。
よって,一審原告の控訴を棄却し,一審被告の控訴に基づいて原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。

札幌高等裁判所第3民事部

裁判長裁判官

竹内純一
裁判官

髙木勝

裁判官

小原一人
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