判例検索β > 平成28年(受)第1187号
廃止負担金請求事件
事件番号平成28(受)1187
事件名廃止負担金請求事件
裁判年月日平成29年9月14日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号平成27(ネ)1239
原審裁判年月日平成28年2月26日
判示事項大阪府工業用水道事業供給条例(昭和37年大阪府条例第4号)23条等の規定により工業用水道の使用を廃止した者が納付しなければならないとされる負担金は,地方自治法224条,228条1項にいう分担金に当たらない
戻る / PDF版
平成28年(受)第1187号廃止負担金請求事件
平成29年9月14日第一小法廷判決

主文
原判決を破棄する
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人比嘉廉丈ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1
被上告人は,大阪府(以下「府」という。)が営む工業用水道事業に係る条
例に基づき,府との間で給水契約を締結して工業用水道を使用していたところ,上記条例の改正により,工業用水道の使用者がその使用を廃止したときは負担金を納付しなければならない旨の規定が設けられ,その後,被上告人は工業用水道の使用を廃止した。本件は,府から上記事業を承継した一部事務組合である上告人が,被上告人に対し,上記給水契約に基づく負担金の支払を求める事案である。2
(1)

原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
被上告人は,昭和53年,大阪府工業用水道事業供給条例(昭和37年大
阪府条例第4号。平成23年大阪府条例第67号による廃止前のもの。なお,平成元年大阪府条例第17号による改正前の条例の題名は大阪府営工業用水道供給条例。以下,同改正の前後を通じて「本件条例」という。)に基づき,府との間で工業用水道の供給に関する給水契約を締結し,昭和54年1月以降,同契約に基づき工業用水道を使用してきた。
(2)

府の工業用水道事業においては,使用水量が給水契約における基本使用水
量(以下「契約水量」という。)の範囲内であれば,実際の使用水量にかかわらず契約水量に基づき料金を徴収し,契約水量を減ずることを原則として認めない責任水量制が採用されていた。その後,平成21年大阪府条例第42号による本件条例の改正により,契約水量に基づく定額料金(基本料金)と実際の使用水量に応じた従量料金(使用料金)とから成る二部料金制が導入されるとともに,使用者の希望により契約水量を減ずること等が認められることとなり,これと併せて,使用者は,契約水量を減ずるための申込みをしたとき,工業用水道の使用を廃止したとき等には,管理者が定める期限内に管理者が定める額の負担金を納付しなければならない旨の規定(本件条例23条。以下「本件規定」という。)が設けられた。なお,本件規定に基づく負担金の具体的な額については,大阪府工業用水道事業供給条例施行規程(昭和37年大阪府営水道企業管理規程第1号。平成23年大阪府水道企業管理規程第2号による廃止前のもの)21条において,減量,廃止等をする水量に1㎥当たりの負担額を乗じた額とすること,1㎥当たりの負担額は,大阪府工業用水道事業会計決算書における大阪府工業用水道事業貸借対照表の年賦未払金に同表の借入資本金を加えたものを,大阪府水道企業条例(昭和41年大阪府条例第42号)所定の工業用水道事業に係る1日最大給水量で除したものとすること等が定められていた(以下,本件規定及び同条の規定により工業用水道の使用を廃止した者が納付しなければならないとされる負担金を「本件廃止負担金」という。)。
(3)

被上告人は,平成23年1月11日,府に対し,工業用水道使用廃止届を
提出し,これを受けて,府は,被上告人に対し,本件廃止負担金の額を1308万2795円,納入期限を同日とすることを通知した。
(4)

大阪府水道企業条例を廃止する条例(平成23年大阪府条例第67号)の
施行に伴い,府は,平成23年4月1日,水道事業及び工業用水道事業を廃止し,上告人が上記各事業並びにこれらに係る権利及び義務を承継した。3
原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,上告人の
請求を棄却すべきものとした。
本件廃止負担金は,工業用水道の使用者による使用の廃止に際し,他の使用者の負担を軽減し,工業用水道事業の安定的な経営を図るために徴収するというものであるから,府が設置する水道施設について,その設置によって特に利益を受ける者からその受益の限度において徴収されるものであるということができ,地方自治法224条にいう分担金に当たる。そして,同法228条1項は,分担金に関する事項については条例でこれを定めなければならないと規定しているところ,本件規定は,本件廃止負担金の額について,その具体的な額はもとより,基本的な算定方法さえも定めていないから,これに関する事項について,条例で定められていないというほかなく,被上告人に本件廃止負担金を請求することはできない。4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
(1)

地方自治法224条は,普通地方公共団体は,政令で定める場合を除くほ
か,数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し,その必要な費用に充てるため,当該事件により特に利益を受ける者から,その受益の限度において,分担金を徴収することができると定めている。これは,普通地方公共団体が行う特定の事業や施設の設置等により,特定の者又は当該普通地方公共団体の一部に利益がもたらされる場合に,特にその利益を享受する者に対し,その者による受益を理由として,当該受益の限度で,当該事業等に要する費用を負担させることができることとし,もって当該利益を享受しない住民との間の負担の公平等を図るものであると解される。
(2)

府の工業用水道事業は,地方公営企業法の適用を受ける企業として運営さ
れていたものであるところ,前記事実関係等によれば,本件廃止負担金に関する本件規定等は,使用者が工業用水道の使用を廃止することによって料金収入が減少することから,他の使用者の負担を軽減し,上記事業の安定的な経営を図るため,使用を廃止した者の負担においてこれを補うことを目的として定められたものであると解され,本件廃止負担金の額についても,使用を廃止する水量を基準に算定することとして,廃止に伴い減少が見込まれる料金収入を反映するものとされている一方,廃止に至るまでの使用期間の長さを考慮していないなど,使用を廃止した者がそれまでに受けた利益の多寡等を反映する仕組みとはされていない。以上のような本件廃止負担金の目的やその額の算定方法に照らせば,本件廃止負担金は,工業用水道の使用を廃止した者が,府の工業用水道事業やその設置する水道施設等からもたらされる利益を特に享受することを理由として,その受益の限度において徴収される性質のものであるということはできない。
(3)

そうすると,本件廃止負担金は,地方自治法224条,228条1項にい
う分担金に当たらないというべきであり,これに関する事項について条例で定めなければならないものということはできない。
5
以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。本件廃止負担金が分担金に当たるとした原審の判断に法令解釈の誤りがあるとする論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人に本件規定が適用されるか等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官
木澤克之

池上政幸

裁判官

山口

裁判官

大谷直人

厚)
裁判官

小池


裁判官

トップに戻る

saiban.in