判例検索β > 平成29年(ワ)第1649号
損害賠償請求事件
事件番号平成29(ワ)1649
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成29年8月30日
法廷名大阪地方裁判所
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主1文
被告は,原告に対し,130万6000円及びこれに対する平成27年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
原告のその余の請求を棄却する。

3
訴訟費用はこれを5分し,その4を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

4
この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由

第1

請求
被告は,原告に対し,723万6000円及びこれに対する平成27年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,原告が,被告が原告になりすましてインターネット上の掲示板に第三者を罵倒するような投稿等を行ったことにより,原告の名誉権,プライバシー権,肖像権及びアイデンティティ権を侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づき,慰謝料,発信者情報開示費用及び弁護士費用の合計である損害賠償金723万6000円及びこれに対する不法行為の日である平成27年5月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1
争いのない事実等
(1)

原告は,A株式会社が運営するSNS「B」(以下「本件サイト」という。)において,ID甲のアカウントを登録し,「C」というアカウント名を設定して使用している者である(甲16,18の1・3)。

(2)

被告は,Dの息子である(甲6の2)。

(3)

本件サイトにおいてID乙のアカウント(以下「本件アカウント」という。)を使用している者(以下「本件投稿者」という。)は,平成27年5月18日,アカウント名を原告と同じアカウント名である「C」と設定し,プロフィール画像として原告の顔写真を使用して,本件サイト上に開設された掲示板(以下「本件掲示板」という。)において,別紙投稿記事目録記載の投稿(以下「本件投稿」という。)をした。本件投稿者は,同年6月23日までに,本件アカウントのアカウント名を「E」と設定し,プロフィール画像をゲームのキャラクターに変更した(甲2,5,7の1~4,8の1~5,9,17)。
(4)

本件サイトにおいては,利用者がアカウントを登録した際,各アカウントにIDが機械的に割り振られることとなっており,利用者は,プロフィール画像やアカウント名を変更することはできるが,IDを変更することはできない(甲15)。

(5)

本件掲示板では,記事を投稿した者のアカウント名及びプロフィール画像が当該記事と一緒に表示されることとなっており,当該記事を投稿した者がアカウント名やプロフィール画像を変更すると,過去に投稿した記事に表示されるアカウント名及びプロフィール画像についても遡って変更される(甲5,7の1~4,15)。

2
争点
(1)

本件投稿者は被告であるか
(原告の主張)
本件投稿はDが契約したインターネット通信回線を利用してされたから,本件投稿を行うことができるのは,D及びその同居人等のDの家に自由に出入りできる者に限られる。原告は,Dに対し,本件投稿を行った者が誰であるかについて,訴え提起前の当事者照会を行ったところ,Dから,息子である被告が本件投稿を行った旨の回答を得た。
したがって,本件投稿者は被告である。
(被告の主張)
原告の主張は否認する。被告は,なりすまし行為をしたことはない。(2)

名誉権侵害の有無
(原告の主張)
被告は,本件掲示板において,原告になりすまし,アカウント名「F」の利用者に対し,「妄想ババアは2ちゃん坊を巻き込んでやるなよwwヒャッハー*\(^o^)/*あ~現場着くわ!またな,おばあちゃん」,「Fおばあちゃんは得に念入りにアク禁しました*\(^o^)/*」,「妄想おばあちゃん全開ですよ~好きにゆってくださいよ~ちなみに,そのカスアバにあってますね~~カスにはカスアバお似合いです~アバコン?ガンコンですよ~*\(^o^)/*ヒャッハーーー」,「Fおばあちゃんの性格の醜さが伺えるぞwラーメンうまかたー*\(^o^)/*さあ,働こう。ニト達はほっといてww」,「自演自演て言ってるけど,証拠は?Fおばあちゃんが面白がってやってるんちゃうんかw」,「Fおばあちゃん2ちゃんネタ好きやなwww2ちゃんを仲間に引き入れようとか,お前の性格の醜さは,みなが知った事だろうwwヒャッハー*\(^o^)/*自演やめてくださいねー」などと投稿して,罵声を浴びせ,名誉毀損的発言を行った。
また,被告は,本件掲示板において,原告になりすまし,他の利用者に対し,「なんなんですか?ザコなんですか。」,「足跡ついてるのは,ザコを片っ端からアク禁しただけですよ~*\(^o^)/*」,「みんなキチガイなんだから仲良くしましょうよ~*\(^o^)/*ヒャッヒャッヒャッヒャッハー*\(^o^)/**\(^o^)/*」,「キチ集団w」などと投稿して,差別用語や侮蔑表現を用いて罵倒した。
これらの投稿は,いずれも被告が原告になりすまして行っており,一般の閲覧者の普通の注意と読み方からすれば,原告自身がこのような行為を行ったと認識されてしまうものである。原告が,本件掲示板上で,他の利用者に対して罵声を浴びせるような人物であり,トラブルを起こしている人物であると認識されれば,原告の人格に対する社会的評価は低下するというべきである。
したがって,被告は,前記の各投稿を行ったことによって,原告の名誉権を侵害しており,当該行為は不法行為を構成する。
(被告の主張)
原告の主張は否認する。被告はなりすまし行為をしたことはなく,また,原告の名誉権は侵害されていない。
(3)

プライバシー権及び肖像権侵害の有無
(原告の主張)
被告が本件アカウントのプロフィール画像として使用した原告の顔写真は,原告が5,6年ほど前に本件サイトに登録した際にプロフィール画像として設定したものである。被告は,この画像を無断で転用してプロフィール画像に設定したものと予想される。原告は,被告に対し,自己の顔写真の使用を許諾したことはない。
したがって,被告が本件アカウントのプロフィール画像として原告の顔写真を公開した行為は,原告のプライバシー権及び肖像権を侵害するものであり,不法行為を構成する。
(被告の主張)
原告の主張は否認する。

(4)

アイデンティティ権侵害の有無

被告は,原告になりすました状態で本件投稿を行い,名誉権やプライバシー権等を侵害する投稿以外にも多数回の投稿を行った(別紙投稿記事目録記載1から5まで,9から14まで,17,18及び21の投稿)。これらの投稿は,原告の社会的評価を低下させるものでも,プライバシーを侵害するものでもないが,何の責任も追及することができないとすれば不当であり,なりすまし行為そのものが不法行為に該当する。

憲法13条後段に定められた幸福追求権は,同条前段が定める個人の尊重の原理を受けて,「個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体」とされるところ,自己同一性を保持し,自我や自分を獲得することは,人格的生存の前提となる行為である。そして,他者との関わりを持ち,その関わりの中で自己実現を図ることも,人格的生存の重要な要素である。したがって,自分自身による自己認識という意味においての自己同一性のみならず,「他者から見た自分」,「他者に認識される自分」について,その同一性を保持することも,人格的生存に不可欠な要素である。この他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権は,社会生活における人格的生存に不可欠な権利であって,憲法13条後段が規定する幸福追求権又は人格権から導き出される権利である。
従前の裁判例においても,氏名や肖像を冒用されない利益は人格権の一内容として定着している。氏名や肖像を冒用されない利益の根源を他者から見た人格の同一性を保持する必要性に求めるのであれば,その範囲を氏名や肖像に限定する必然性はなく,第三者の立場において人格を誤信させるほどの態様でなりすましがされた場合には,氏名や肖像の冒用がされていなくとも,人格権に対する侵害があったというべきである。

なりすまし行為は,多くは他者に対する攻撃の意図や他者の社会的信用を低下させる目的,他者の著名性を利用する目的で行われるものであって,なりすまし行為を行う正当な理由は原則として観念できない。そこで,なりすまし行為によって人格の同一性が偽られ,本人以外の別人格が構築され,本人の言動であると他者に受け止められるほどに通用性を持った場合には,原則として違法性があるというべきである。
そして,この判断においては,外部的な社会的評価を問題とする名誉毀
損事案に準じて考え,なりすまし行為が,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準として,権利侵害を主張する者の言動であると他者に受け止められるか否かという基準によって侵害の成否,違法性の有無を判断するべきである。

被告は,本件アカウントのプロフィール画像として原告の顔写真を使用し,アカウント名を「C」と原告の名前をもじったものにしていたから,本件アカウントの言動は,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準にすれば,原告の言動であると他者に受け止められてしまう状況であった。そして,原告は,被告に対し,自己の顔写真の使用も含め,このような行為を一切許諾しておらず,なりすまし行為を正当化する理由も考えられない。
したがって,被告は,本件投稿のうち別紙投稿記事目録記載の1から5
まで,9から14まで,17,18,21の投稿をしたことによって,原告のアイデンティティ権を侵害した。
(被告の主張)
原告の主張は否認する。被告は,なりすまし行為をしたことはない。(5)

損害の発生及びその額
(原告の主張)

精神的損害(慰謝料)

600万円

本件投稿により原告が受けた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は,本件投稿の記載内容が他者を罵倒する不適切なものであって,原告の顔写真が掲載されていること,多数回投稿がされていること,投稿内容の真実性を欠くこと,インターネットを介して行われていること,原告の社会的評価が低下したこと,被害者である原告に過失はなく,被害回復措置も講じられていないことなどに鑑みれば,600万円が相当である。イ
発信者情報の取得に要した弁護士費用

58万6000円

原告は,本件投稿について,コンテンツプロバイダ及び経由プロバイダに対する発信者情報開示請求を行うことによって,被告による投稿であることを突き止めた。特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)のガイドラインでは,裁判所の判決や命令に基づかないプロバイダの自主的な判断による発信者情報の開示は例外とされており,発信者情報開示の手続のためには,裁判を行うほかにない状況である。そして,発信者情報開示請求の手続を遂行するためには,プロバイダ責任制限法等の解釈,運用の知識やインターネットに関する技術的な知見などの高度な専門的能力が必要であるとともに,通信記録が経由プロバイダに保持されている数か月の間に保存を求めなければならないという厳しい時間的制限も存在するから,現実的には弁護士に依頼して訴訟等の手続を行うほかになく,発信者情報開示に要する弁護士費用は,被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。
原告は,発信者情報開示請求を代理人弁護士に依頼し,A株式会社を債務者とする発信者情報開示等仮処分の弁護士費用として27万円,株式会社Gを被告とする発信者情報開示訴訟の弁護士費用として31万6000円を支払った。

弁護士費用

65万円

原告は,被告に対し,前記ア,イの損害賠償を請求するのに必要な弁護士費用として,その合計額の約1割に相当する65万円を請求する。エ
合計

723万6000円

(被告の主張)
原告の主張は否認する。原告には精神的損害など全く見受けられず,本件訴訟は高額な慰謝料を目当てにしているというべきである。
第3
1
争点に対する判断
争点(1)(本件投稿者は被告であるか)について
(1)

認定事実
前記争いのない事実等,証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認定できる(認定根拠は,各事実の末尾に記載している。)。

被告とDは,本件投稿がされた当時から,被告の現在の住所地において,同居している(甲6の2,弁論の全趣旨)。


株式会社Gは,平成28年10月26日,本件アカウントを使用して本件投稿を行った者がその際に使用したインターネット回線の契約者について,Dであること及びその住所を原告に対して開示した。当該住所は被告の現在の住所地と同一である。(甲3,4)


原告訴訟代理人弁護士は,同年12月1日,Dに対し,Dが本件投稿を行ったか,Dが本件投稿を行ったのでないならば誰が本件投稿を行ったか,本件投稿を行った者の氏名及び住所等を明らかにすることを求める旨を記載した通知書を送付した。Dは,同月8日,原告訴訟代理人弁護士に対し,自分は本件投稿を行っておらず,自分の子供である被告が本件投稿を行った旨を記載した前記通知書に対する回答文書を送付した。(甲6の1・2)

(2)

前記認定事実ア,イのとおり,本件投稿は被告の現在の住所地から行われており,被告は,本件投稿がされた当時から,現在の住所地に居住していることが認められるから,本件投稿を行うことが可能であった。そして,前記認定事実ア,ウのとおり,被告の父であり同居者でもあるDは,原告訴訟代理人弁護士からの本件投稿の投稿者の特定を求める通知書に対し,被告が本件投稿を行った旨回答しているから,本件投稿者は被告であると認めるのが相当である。
これに対し,被告は,なりすまし行為をしたことはない旨主張するが,具体的な反証活動を行わない。かえって,被告は,答弁書において,原告が本件掲示板を荒らしたことが争いの種である等と主張しており,被告が本件掲示板を利用していたことが推認でき,かかる事実によれば,被告と本件投稿との関連性を認めることができるから,被告の前記主張を採用することはできない。
(3)
2
したがって,本件投稿者は被告であると認められる。
争点(2)(名誉権侵害の有無)について

(1)

前記争いのない事実等(1)及び(3)並びに前記1で認定説示したとおり,被告
は,原告が本件サイトにおいて使用していた「C」というアカウント名と同一のアカウント名を本件アカウントで設定し,原告の顔写真を使用して本件投稿を行ったことが認められる。
これらによれば,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準にすれば,本件投稿は,原告によって行われたと誤認されるものであると認めるのが相当である。
(2)

前記争いのない事実等(3)及び本件掲示板の投稿記事(甲5)によれば,被
告は,平成27年5月18日,他の利用者に対し,「ザコなんですか。」(同日午前11時26分),「ザコを片っ端からアク禁した」(同日午前11時55分),「みんなキチガイなんだから仲良くしましょう」(同日午後3時10分),「キチ集団w」(同日午後3時13分)などと投稿したこと,アカウント名「F」の利用者に対し,「Fおばあちゃんは得に念入りにアク禁しました」(同日午前11時55分),「妄想おばあちゃん全開ですよ~」,「カスにはカスアバお似合いです~」(同日午前12時6分),「Fおばあちゃんの性格の醜さが伺えるぞ」(同日午前12時57分),「お前の性格の醜さは,みなが知った事だろう」(同日午後3時8分),「妄想ババアは2ちゃん坊を巻き込んでやるなよ」(同日午後3時21分)などと投稿したことが認められる。
これらの投稿は,いずれも他者を侮辱や罵倒する内容であると認められ,前記(1)のとおり,原告による投稿であると誤認されるものであることと併せ考えれば,第三者に対し,原告が他者を根拠なく侮辱や罵倒して本件掲示板の場を乱す人間であるかのような誤解を与えるものであるといえるから,原告の社会的評価を低下させ,その名誉権を侵害しているというべきである。(3)

したがって,被告による本件投稿によって,原告の名誉権が侵害されたと
認められる。
3
争点(3)(プライバシー権及び肖像権侵害の有無)
(1)

原告は,被告が本件アカウントのプロフィール画像として原告の顔写真を
公開したことにより原告のプライバシー権及び肖像権を侵害した旨主張する。この点,前記争いのない事実等(3)及び前記1で認定したとおり,被告は,本件アカウントのプロフィール画像として原告の顔写真を使用して本件投稿を行ったことを認めることができる。
(2)

ところで,プライバシー権は,その外延がいまだ明確に定まっていない部
分があるものの,私生活上の自由の保護をその中核とし,他人に知られたくない私生活上の事実又は情報をみだりに公開されない利益又は権利をその内容とするものと解される。そして,原告の陳述書(甲16)によれば,原告は,本件投稿の当時,被告に使用された顔写真を本件サイトのプロフィール画像に自ら設定していたことが認められ,本件サイトは不特定多数の者がアクセスできるインターネット上のページであることを踏まえれば,原告の顔写真は,原告によって第三者がアクセス可能な公的領域に置かれていたと認めるのが相当であり,他人に知られたくない私生活上の事実や情報に該当するということはできない。
そうすると,被告が使用した原告の顔写真を第三者から無断で公開されないという利益は,少なくともプライバシー権によって保護されるものと認めることはできない。
(3)

肖像は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するも
のとして,これをみだりに利用されない権利を有すると解される(最高裁平成24年2月2日判決・民集66巻2号89頁参照)。他方,他人の肖像の使用が正当な表現行為等として許容されるべき場合もあるというべきであるから,他人の肖像の使用が違法となるかどうかは,使用の目的,被侵害利益の程度や侵害行為の態様等を総合考慮して,その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかを判断して決すべきである(最高裁平成17年11月10日判決・民集59巻9号2428頁参照)。
前記1及び(1)で認定説示したとおり,被告は,原告の顔写真を本件アカウントのプロフィール画像として使用し,原告の社会的評価を低下させるような投稿を行ったことが認められ,被告による原告の肖像の使用について,その目的に正当性を認めることはできない。そして,前記争いのない事実等⑶のとおり,被告が,原告の社会的評価を低下させる投稿をするために原告の肖像を使用するとともに,「わたしの顔どうですか?w」(平成27年5月18日午前10時39分),「こんな顔でHさんを罵っていました。ごめんなさい」(同日午前10時54分)などと投稿したことは,原告を侮辱し,原告の肖像権に結びつけられた利益のうち名誉感情に関する利益を侵害したと認めるのが相当である。
そうすると,被告による原告の肖像の使用は,その目的や原告に生じた不利益等に照らし,社会生活上受忍すべき限度を超えて,原告の肖像権を違法に侵害したものと認められる。
(4)

したがって,原告の前記⑴の主張のうち原告の肖像権が違法に侵害された
ことを認めることができる。
4
争点(4)(アイデンティティ権侵害の有無)について
(1)

原告は,権利性が認められている氏名や肖像を冒用されない利益の根源が
他者から見た人格の同一性を保持する必要性にあるとすれば,憲法13条後段の幸福追求権又は人格権から他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権が導き出され,被告が原告になりすまして本件投稿を行ったことは原告のアイデンティティ権を侵害した旨主張する。(2)

個人が,自己同一性を保持することは人格的生存の前提となる行為であり,社会生活の中で自己実現を図ることも人格的生存の重要な要素であるから,他者との関係における人格的同一性を保持することも,人格的生存に不可欠というべきである。したがって,他者から見た人格の同一性に関する利益も不法行為法上保護される人格的な利益になり得ると解される。もっとも,他者から見た人格の同一性に関する利益の内容,外縁は必ずしも明確ではなく,氏名や肖像を冒用されない権利・利益とは異なり,その性質上不法行為法上の利益として十分に強固なものとはいえないから,他者から見た人格の同一性が偽られたからといって直ちに不法行為が成立すると解すべきではなく,なりすましの意図・動機,なりすましの方法・態様,なりすまされた者がなりすましによって受ける不利益の有無・程度等を総合考慮して,その人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものかどうかを判断して,当該行為が違法性を有するか否かを決すべきである。

(3)

本件では,前記2で認定説示したとおり,被告は,本件アカウント名にて,
原告の社会的評価を低下させるような内容を含む投稿を行っていることからすると,なりすましが正当な意図,動機によるものとは認められない。しかしながら,なりすましの方法,態様についてみると,原告が,被告による原告のなりすましとして主張する行為とは,具体的には,前記2(1)で認定説示したとおり,被告が原告の本件サイトにおけるアカウント名を冒用し,プロフィール画像に原告の顔写真を登録した上で,本件掲示板への投稿を行ったというものであるところ,通常は,アカウント名やプロフィール画像は,本件サイト内での通用を予定して設定されるものであること,前記争いのない事実等(4)のとおり,本件サイトの利用者は,アカウント名・プロフィール画像を自由に変更することができることからすると,社会一般に通用し,通常は身分変動のない限り変更されることなく生涯個人を特定・識別し,個人の人格を象徴する氏名の場合とは異なり,利用者とアカウント名・プロフィール画像との結び付きないしアカウント名・プロフィール画像が具体的な利用者を象徴する度合いは,必ずしも強いとはいえないというべきである。また,原告が被告によるなりすましによって受けた不利益について検討するに,前記2及び3で認定説示したとおり,原告の名誉権及び肖像権の侵害による不利益については別に不法行為上の保護を受けると認められる。その余の不利益については,被告によるなりすましは本件サイト内の投稿にとどまること(弁論の全趣旨),証拠(甲5)によれば,被告によるなりすまし投稿の直後から,他の本件サイト利用者により,投稿が原告本人以外の者によるものである可能性が指摘されていたことが認められること,前記争いのない事実等(3)のとおり,本件掲示板に「C」とのアカウント名及び原告の顔写真のプロフィール画像が表示されていたのは約1か月余りの間であり,その後これらは変更されたことが認められる。
以上の事実を総合考慮すれば,本件では,被告のなりすまし行為(名誉権侵害行為,肖像権侵害行為は除く)による原告の人格的な利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものとまでは認められないというべきであり,当該行為が違法とは認められない。
(4)
5
したがって,原告の前記(1)の主張は理由がない。
争点(5)(損害の発生及びその額)について

(1)

慰謝料

60万円

原告は,前記2及び3で認定説示したとおり,被告の本件投稿によって,その名誉権及び肖像権を侵害され,精神的苦痛を負ったと認められる。そして,本件投稿の内容や投稿の目的に正当性がないこと,被告は被害回復措置を講じていないことが認められる一方,被告が本件アカウントのアカウント名やプロフィール画像を本件投稿から1か月程度で変更したことによって被害の更なる拡大は防止されていること等本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,慰謝料は60万円が相当と認められる。
(2)

発信者情報の取得に要した弁護士費用

58万6000円

インターネット上の掲示板での匿名の書き込みについてその発信者を特定するためには,プロバイダ責任制限法の解釈等を踏まえて,通信事業者に対し,通信記録が消去されるまでの短期間のうちに必要な保全処分を行い,発信者情報開示請求訴訟を提起することが必要となるから,被害者自身で手続を行うことは通常困難である。したがって,発信者情報開示請求の代理についての弁護士費用は,社会通念上相当な範囲で,名誉毀損と因果関係のある損害と認めるのが相当である。
証拠(甲1,3,4,10,11,12の1~3)によれば,原告は,被告を特定するために,発信者情報開示請求を代理人弁護士に依頼し,A株式会社を債務者とする発信者情報開示等仮処分の弁護士費用として27万円,株式会社Gを被告とする発信者情報開示訴訟の弁護士費用として31万6000円を支払ったことが認められ,その合計である58万6000円については名誉棄損と因果関係のある損害と認められる。
(3)

弁護士費用

12万円

本件事案の性質,内容及び認容額等に鑑みると,被告の不法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は,12万円と認めるのが相当である。(4)

したがって,原告は,被告に対し,130万6000円の損害賠償請求権
を有する。
第4

結論
以上によれば,原告の請求は主文第1項の範囲で理由があるからその限度で認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第22民事部
裁判長裁判官

北川
裁判官

新海寿
裁判官

道内正垣清加子大
(別紙)
投稿記事目録

掲示板タイトル


投稿時のアカウント表示名
投稿年月日


平成27年5月18日

投稿内容
1
午前9時15分
*\(^o^)/*

2
午前9時34分
平和だなぁ~

3
午前10時39分
みなさん,わたしの顔どうですか?w

4
午前10時54分
禊です*\(^o^)/*こんな顔でHさんを罵っていました。ごめんなさい
5
午前11時6分
林かなんかですかwwしかしまあ,この顔はあかんで!ないでwwよくもま
あ,,,おっさん身の程を知れ!!イケメンおじさんからの攻撃ならいいですよ*\(^o^)/*
6
午前11時26分
下くだって行ってみろよ?同じ事やってる奴らいるぞ?まず,そちらを注意しま
しょうね?仲間には注意しないんですか?しにくいんですか?なんなんですか?ザコなんですか。
7
午前11時55分
飯なに食べようかな~*\(^o^)/*足跡ついてるのは,ザコを片っ端からアク禁し
ただけですよ~*\(^o^)/*Fおばあちゃんは得に念入りにアク禁しました*\(^o^)/*8
午前12時6分
妄想おばあちゃん全開ですよ~好きにゆってくださいよ~ちなみに,そのカスア
バにあってますね~~カスにはカスアバお似合いです~アバコン?ガンコンですよ~*\(^o^)/*ヒャッハーーー
9
午前12時10分
やってみろやwこれは僕チンですよ~*\(^o^)/*ホレやってみろよ~
10

午前12時11分

顔バンww
11

午前12時13分

今日は半チャーラーメンやな*\(^o^)/*食ってくるからバンバンお願いしますよ~*\(^o^)/*
12

午前12時51分

ヤベェ~日頃の行いがいいからアクションからSRドロップした~*\(^o^)/*13

午前12時53分

それ俺も見たぞwいいとこだけ抜きだすなやwwIがいかに嫌われてるか,コメみんなしてたやろwFは普段から見てるん知ってるぞ*\(^o^)/*14

午前12時54分

お前らさ~けっこう嫌われてるぞ*\(^o^)/*俺はメシウマやけどな15

午前12時57分

Fおばあちゃんの性格の醜さが伺えるぞwラーメンうまかたー*\(^o^)/*さあ,働こう。ニト達はほっといてww
16

午前12時59分

自演自演て言ってるけど,証拠は?Fおばあちゃんが面白がってやってるんちゃうんかw
17

午後2時36分

カリ上げくんよ*\(^o^)/*俺はレインメーカー派だぞ!金の雨が降るぜー*\(^o^)/*ヒャッハー
18

午後2時39分

てめーえら,天気ちょい曇ってるけど気持ちいいぞー表でろよ!家の中にばっかりおったらそうなるわなwwヒャッハー*\(^o^)/*
19

午後3時8分

Fおばあちゃん2ちゃんネタ好きやなwww2ちゃんを仲間に引き入れようとか,お前の性格の醜さは,みなが知った事だろうwwヒャッハー*\(^o^)/*自演やめてくださいねー
20

午後3時10分

みんなキチガイなんだから仲良くしましょうよ~*\(^o^)/*ヒャッヒャッヒャッヒャッハー*\(^o^)/**\(^o^)/*
21

午後3時11分

ありがとうございますm(._.)m
22

午後3時13分

キチ集団w
23

午後3時21分

妄想ババアは2ちゃん坊を巻き込んでやるなよwwヒャッハー*\(^o^)/*あ~現場着くわ!またな,おばあちゃん
以上
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