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配当表に対する異議申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
事件番号平成29(許)3
事件名配当表に対する異議申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
裁判年月日平成29年9月12日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別決定
結果棄却
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号平成28(ラ)721
原審裁判年月日平成29年1月6日
判示事項破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において,破産手続開始時の債権の額を基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは,その超過部分は当該債権について配当すべきである
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平成29年(許)第3号

配当表に対する異議申立て却下決定に対する抗告審の取

消決定に対する許可抗告事件
平成29年9月12日

第三小法廷決定

主文
本件抗告を棄却する
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
抗告人の抗告理由について
1
本件は,破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた破産債
権者である相手方が,破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額のうち実体法上の残債権額を超過する部分(以下「超過部分」という。)を物上保証人に配当すべきものとした抗告人作成の配当表(以下「本件配当表」という。)に対する異議申立てをした事案である。2
(1)

記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
山孝興業株式会社(以下「破産会社」という。)は,平成23年9月,破
産手続開始の決定を受け,抗告人が破産管財人に選任された。
(2)

相手方は,破産会社の大阪信用金庫に対する2口の借入金債務を保証して
いたところ,大阪信用金庫に対し,その元本全額並びに破産手続開始の決定の日の前日までの利息全額及び遅延損害金の一部(合計5651万1233円)を代位弁済した。そして,相手方は,破産会社の破産手続において,この代位弁済により取得した求償権の元本(以下「本件破産債権」という。)等を破産債権として届け出た。
(3)

Aは,相手方との間で,破産会社の相手方に対する求償金債務を担保する
ため,自己の所有する不動産に根抵当権を設定していたところ,平成24年10月,上記不動産の売却代金から2593万9092円を本件破産債権に対する弁済として支払った。
この代位弁済の結果,本件破産債権の残額は3057万2141円となった。(4)

Aは,平成27年8月,破産会社の破産手続において,前記(3)の代位弁済
により取得した求償権2593万9092円を予備的に破産債権として届け出た。(5)

抗告人は,破産債権の調査において,本件破産債権の額を認め,Aの前記
(4)の求償権について,「本件破産債権の残額が配当によって全額消滅することによる,破産法104条4項に基づく求償権の範囲内での原債権の代位行使という性質において認める」旨の認否をした。
(6)

本件配当表には,本件破産債権について,配当をすることができる金額と
して前記(3)の残額が,備考欄に「計算上の配当額は4512万4808円であるが,本件破産債権の残額は3057万2141円であり,これを超えての配当はできないため」との旨が,それぞれ記載されていた。また,本件配当表には,Aの前記(4)の求償権について,配当をすることができる金額として1455万2667円が,備考欄に「本件破産債権の残額が配当によって全額消滅することによる,破産法104条4項に基づく原債権の代位行使に対する配当として(本件破産債権の計算上の配当額と残債権額との差額の配当として)」との旨が,それぞれ記載されていた。
3
原々審は,超過部分は債権の一部を弁済した求償権者に配当すべきであるな
どとして,本件配当表に対する相手方の異議申立てを却下した。これに対し,原審は,超過部分を上記求償権者に配当することはできないとし,次のとおり判断して,原々決定を取り消し,本件を原々審に差し戻した。
破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額のうちの一部の配当により当該債権が消滅する以上,超過部分は,当該債権について配当すべきでなく,その他の破産債権について配当すべきである。4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。同一の給付について複数の者が各自全部の履行をする義務を負う場合(以下,全部の履行をする義務を負う者を「全部義務者」という。)について,破産法104条1項及び2項は,全部義務者の破産手続開始後に他の全部義務者が弁済等をしたときであっても,破産手続上は,その弁済等により債権の全額が消滅しない限り,当該債権が破産手続開始の時における額で現存しているものとみて,債権者がその権利を行使することができる旨を定め,この債権額を基準に債権者に対する配当額を算定することとしたものである。すなわち,破産法104条1項及び2項は,複数の全部義務者を設けることが責任財産を集積して当該債権の目的である給付の実現をより確実にするという機能を有することに鑑みて,配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上の債権額とのかい離を認めるものであり,その結果として,債権者が実体法上の債権額を超過する額の配当を受けるという事態が生じ得ることを許容しているものと解される(なお,そのような配当を受けた債権者が,債権の一部を弁済した求償権者に対し,不当利得として超過部分相当額を返還すべき義務を負うことは別論である。)。
他方,破産法104条3項ただし書によれば,債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは,求償権者は当該破産手続に参加することができないのであるから,債権の一部を弁済した求償権者が,当該債権について超過部分が生ずる場合に配当の手続に参加する趣旨で予備的にその求償権を破産債権として届け出ることはできないものと解される。また,破産法104条4項によれば,債権者が配当を受けて初めて債権の全額が消滅する場合,求償権者は,当該配当の段階においては,債権者が有した権利を破産債権者として行使することができないものと解される。
そして,破産法104条5項は,物上保証人が債務者の破産手続開始後に債権者に対して弁済等をした場合について同条2項を,破産者に対して求償権を有する物上保証人について同条3項及び4項を,それぞれ準用しているから,物上保証人が債権の一部を弁済した場合についても全部義務者の場合と同様に解するのが相当である。したがって,破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において,破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは,その超過する部分は当該債権について配当すべきである。
5
以上と異なる原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。
しかしながら,以上説示したところによれば,相手方の異議申立てを却下した原々決定は不当であるから,原々決定を取り消して本件を原々審に差し戻した原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,原決定の結論に影響を及ぼさない事項についての違法をいうものにすぎず,採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官木内道祥の補足意見がある。
裁判官木内道祥の補足意見は,次のとおりである。
1
本件における配当表は,相手方の確定破産債権の額を配当手続に参加するこ
とができる債権の額とし,その額を基礎として各債権に配分した額を配当額とするべきであり,Aの届け出た求償権(以下「Aの債権」という。)については,配当手続に参加することができる債権の額,配当額とも0円とすべきである。その理由は,基本的には,配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上の債権額とのかい離を認める破産法104条1項及び2項によるものであるが,配当手続との関係においても,配当表は上記のとおりのものとならざるを得ない。2
相手方の配当手続に参加することができる債権の額と配当額

相手方の届出債権(本件破産債権)合計5624万0102円は,債権調査において確定し,破産債権者表に確定債権額として記載されている。
破産法198条1項ないし3項は,異議等のある破産債権,停止条件付債権又は将来の請求権である破産債権,別除権付債権について配当手続に参加するための要件を規定しているが,これらの債権とは異なり,確定した破産債権は,破産債権者表の確定債権額としての記載が確定判決と同一の効力を有しており,債権者は確定債権額をもって配当手続に参加することができる。
したがって,配当表において,相手方の配当手続に参加することができる債権の額とされるべきものは相手方の確定債権額であり,その配当表に対する異議において,債権調査手続において述べるべき主張を事由とすることはできない。確定した破産債権者表の記載を変更する手続は破産手続内に備えられておらず,手続外で行われる請求異議の訴えなどによって確定判決と同一の効力が覆されない限り,確定債権額を配当手続に参加することができる債権額とする配当表が変更されることはないし,全部義務者から破産手続開始決定の後に弁済を受けた債権者については,破産財団に属する財産で外国にあるものによって破産手続開始決定の後に弁済を受けた債権者に対するような配当調整の規定(破産法201条4項)も設けられてはいないのである。
各債権者に対する配当額は,配当することができる金額(総額)を破産法194条の定める順位で割り振った額であり,本件では,本件破産債権はその他の一般の破産債権と同順位であるから,債権額の割合に応じて案分した額が配当額でなければならない。
抗告人の作成した配当表は,相手方の配当手続に参加することができる債権額を相手方の確定債権額としつつ,相手方に対する配当額を案分額から1455万2667円を減額した3057万2141円としているが,そのように減額し得る法的根拠は存しない。
3
Aの債権の配当手続への参加の可否

Aの債権は,予備的なものとして届け出られ,抗告人は「本件破産債権が配当によって全額消滅することによる,破産法104条4項に基づく求償権の範囲内での原債権の代位行使という性質において」として,これを認めた。
予備的とする届出の趣旨,また,抗告人が認めるとした趣旨は必ずしも明らかではないが,本件破産債権が配当によって全額消滅することを停止条件とする債権が届け出られ,債権調査において認められたとしても,この債権をもって配当手続に参加するには,配当除斥期間内に停止条件が成就していなければならない。配当除斥期間内に配当が実施されるはずがなく,本件破産債権が全額消滅することもないから配当除斥期間内の条件成就はあり得ない。相手方が残債権を全額消滅させるに足りる配当請求権を取得することが停止条件であると解しても,相手方が配当請求権を取得するのは,破産管財人からの配当通知によってであり,それは配当表が確定した後になされるのであるから,その条件が配当除斥期間内に成就することもあり得ない。
また,前項で述べたように,相手方は,本件破産債権の全額をもって配当手続に参加することができるのであるから,請求異議訴訟などによってそれが変更されない限り,Aの債権は,予備的あるいは条件付とされるのがいかなる趣旨であったとしても,これをもって本件破産債権と並んで配当手続に参加することはあり得ないのである。
(裁判長裁判官
戸倉三郎

木内道祥

裁判官


裁判官

岡部喜代子

景一)
裁判官

山崎敏充

裁判官

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