判例検索β > 平成28年(行コ)第116号
公務外認定処分取消請求控訴事件
事件番号平成28(行コ)116
事件名公務外認定処分取消請求控訴事件
裁判年月日平成29年2月23日
法廷名東京高等裁判所
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平成29年2月23日判決言渡
平成28年(行コ)第116号

公務外認定処分取消請求控訴事件(原審・東京地方

裁判所平成25年(行ウ)第795号)

主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。

第1

実及び理由
控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
被控訴人らの請求を棄却する。

第2
1
事案の概要等
本件は,東京都Q1市立Q2小学校(以下「Q2小学校」という。)の教諭として勤務していた亡Q3の父母である被控訴人らが,Q3は公務に起因してうつ病を発症し自殺するに至ったと主張して,控訴人に対し,処分行政庁がQ3に係る地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定請求について平成23年2月17日付けでした公務外認定処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求めた事案である。
原審は本件処分を取り消し,控訴人が控訴した。

2
前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり補正し,次項に当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。

(原判決の補正)
(1)

原判決4頁23行目の「被告は」を「ア

(2)

同5頁4行目末尾の次に改行の上,以下を加える。
控訴人は」と改める。

「イ

認定基準の定める認定要件の内容は,概ね以下のとおりである。
(ア)

対象疾病発症前のおおむね6か月の間に,業務により強度の精神

的又は肉体的負荷を受けたことが認められること。ここで「業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたこと」とは,具体的に次のa又はbのような事象を伴う業務に従事したことをいう。

人の生命にかかわる事故への遭遇


その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象

(イ)

業務以外の負荷及び個体側要因により対象疾病を発症したとは,

認められないこと。

認定基準は,前記イにいう業務による負荷の具体的な検討方法として,前記イ(ア)a又はbの事象の有無を判断するため,対象疾病発症前のおおむね6か月の間に,対象疾病の発症に関与したと考えられる業務による出来事(対人関係のトラブルを含む。)として,具体的にどのようなものがあったのかを把握し,その出来事に対応した適当な着眼事項に基づいて分析した上で,その負荷の強さを検討するとし,その検討の結果,その出来事が次の(ア)又は(イ)に掲げる場合に該当するときは,前記イ(ア)a又はbに該当する事象があったものと判断できることとするとしている。
(ア)

省略

(イ)aないしc

省略

発症直前の1か月におおむね160時間を超えるような,又
は発症直前の3週間におおむね120時間以上の時間外勤務を
行ったと認められる場合(括弧書き省略)


発症直前の連続した2か月間に1月当たりおおむね120時
間以上の,又は発症直前の連続した3か月間に1月当たりおお
むね100時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合

発症直前の1か月以上の長期間にわたって,質的に過重な業
務を行ったこと等により,1月当たりおおむね100時間以上
の時間外勤務を行ったと認められる場合

gないしi

省略

職場でひどい嫌がらせ,いじめ又は暴行を執拗に受けたと認
められる場合


重大な不祥事が発生し,責任者としてその対応に当たったと
認められる場合


aからkまでに準ずるような業務による負荷があったと認め
られる場合


運用基準によれば,業務による負荷の検討においては,運用基準別表の「業務負荷の分析表」を積極的に活用するとされ,時間外勤務等の過重性の検討に当たっては,時間外勤務等の時間数だけでなく,その必要性,勤務密度及び内容を考慮するとされ,また,時間外勤務等の過重性は,原則的にその原因となった出来事等の過重性と関連させて検討する(特に,1月当たりおおむね80時間以上の時間外勤務等を行っている場合には,留意する)とされている。

(6)

うつ病の診断基準
国際疾病分類第10回修正版(ICD-10。以下「ICD-10」という。)による「F32

うつ病エピソード」の診断基準の概要は,

次のとおりであり,以下の典型的な症状のうち最低2つ,一般的な症状のうち最低2つ以上を満たす症状がみられることとされている(甲45,51,乙39)。
(ア)

典型的な症状
抑うつ気分,興味と喜びの喪失,活動性の減退による易疲労感の増大や活動性の減少
(イ)

一般的な症状

集中力と注意力の減退,b

感と無価値感,d

自己評価と自信の低下,c

罪悪

将来に対する希望のない悲観的な見方,e

自傷

あるいは自殺の観念や行為,f

最小持続期間


睡眠障害,g

食欲不振

重症度の判断

(ア)

軽症

2週間

典型的な症状最低2つ,一般的な症状最低2つ

通常,症状に悩まされて日常の仕事や社会的活動を続けるのにいくぶん困難を感じるが,完全に機能できなくなるまでのことはない。(イ)

中等症

典型的な症状最低2つ,一般的な症状最低3つ(4つが望

ましい)
通常社会的,職業的あるいは家庭的な活動を続けていくのがかなり困難になる。
(ウ)重症

典型的な症状3つすべて,一般的な症状最低4つでいくつかが

重症
ごく限られた範囲のものを除いて,社会的,職業的あるいは家庭的な活動を続けることがほとんどできない。」
(3)
(4)

同10頁14行目の「認定基準」の次に「及び運用基準」を加える。
(5)
3
同5頁20行目の「できず,」の次に「時間外勤務が」を加える。
同11頁24行目の「及び」の次に「運用基準」を加える。

当審における当事者の補充主張

(控訴人の主張)
(1)

公務起因性の判断基準について
公務起因性の判断は,地方公務員災害補償制度が,公務に内在し随伴す
る各種の危険が現実化して職員に傷病等の結果がもたらされた場合には,被災職員が所属する地方公共団体等に過失がなくても,その危険を負担して損失の補償をさせるべきであるとする危険責任の法理に基づくものであることからすれば,業務による負荷は,被災職員ではなく,被災職員と職種,職,業務経験等が同等程度の職員を基準にして客観的に判断すべきである。
したがって,本件において,Q3自身を基準にし,Q3の立場に立ってQ3が個別具体的事実をどう受け止めたのかを推認する方法によって,業務による負荷を判断することは,著しく客観性を欠き,誤りである。(2)

Q3のうつ病の発症時期について

一般的なうつ病は,①不安,焦燥,中途覚醒,集中力減退といった発症前の兆候から,発病時期には②思考停止,億劫感,抑うつ気分といった精神症状が顕れ,診断確定期以降は,③行動制止,希死念慮,④自殺企図,⑤異常言動といった一連の精神症状をたどる。

本件においては,Q3は,平成18年5月下旬頃から,同居していたQ4に対し,「生きていたくない,死にたい」と述べたり,タオルを輪にして首に掛けて首つりをするような様子を見せ,Q4が慌ててタオルを取り上げることが度々起こったというのであり,これは,診断確定期以降に現れる精神症状である前記アの③希死念慮や④自殺企図に該当する。そして,同年7月9日(日),Q3は真夜中に自殺未遂を起こし,同月11日に初めて医療機関を受診し,初診時に「状態が改善するまで就労を禁止するよう指示したが,義務感が強く就労を希望する」と診療録に記載されたのであり,これらの経緯からは,Q3のうつ病発症時期は,希死念慮が顕れた平成18年5月後半以前とするのがうつ病の一般的経過と整合性のある結論であり,うつ病が症状の重篤化速度に個人差がある疾患であることを考慮に入れても,Q3のうつ病発症時期は遅くとも平成18年4月以前又は遅くとも同年5月下旬である。


Q3を生前に診察しているQ5医師は,初診時である平成18年7月には既に就労が困難なほど重篤な状態であったことから,発症時期を平成18年初頭と特定した。同医師は,同月11日の初診時の診療録に「1)自律神経失調症

2)パニック障害

3)反応性うつ病


張性の症状が厳しく,就労が困難な状態」と記載し,就労が困難なほどに重篤な状態であると診断している。初診時の状態から発症時期を推定する方法は,合理性のあるものであり,Q5医師の医学的意見の信頼性は極めて高い。

ICD-10等の診断基準を最初に満たした時を精神障害の発症時期とするのは,専門検討会及び労災認定基準の内容の理解を誤り,臨床の診断基準と発症時期の特定とを混同しているものであって,誤りである。
(3)

業務による出来事の精神的・肉体的負荷について

学級運営,校務分掌,初任者研修及び研究指定校の準備業務についてQ3の業務に関し,①学級運営については,Q3が初任者の中でも指導しやすい学年の学級を運営していた,②校務分掌については,他の初任者より少なかった,③初任者研修は,素養を高めるため初任者全員に対し求められるもので,Q3以外の初任者で研修レポートの提出ができない者はいなかった,④研究指定校の準備業務については,Q1市内の半数以上の学校が研究指定校又は研究奨励(協力)校となるところ,Q3は研究発表の役割ではなかったものであり,いずれも,Q3に精神的・肉体的負荷を与える事象ではない。


本件クラスでの出来事について(平成18年4月から同年7月頃まで)次のとおり,いずれも,Q3に対し精神的負荷を与えるような事象ではない。

(ア)

梅の実事件について
Q6校長は,本件クラスの児童が梅の実を食べたことにつきQ7教
諭がQ3にアドバイスをしたことを聞いて,自らもQ3に「梅の実は種子の部分に毒性があるので食べないほうがいい」とアドバイスをしたにすぎず,平穏な指導であって,叱責したものではない。
(イ)

給食費滞納問題について
給食費の徴収は,管理職の所管であって,Q3の業務外の問題であ
る。
(ウ)

教材費滞納問題について
Q3は,教材費の滞納は就学援助の申請をすれば解決できる問題で
あることを認識しており,かつ,教材費を滞納していた児童Hの保護者が自主的に支払ったことにより,同問題は解決していた。
(エ)

万引き疑惑事件及び万引き事件について
万引き疑惑事件において,疑惑がかかった児童Hの保護者は,Q3に対し「事実を示せ。」と抗議したものの,その内容は中傷や人格の否定に及ぶものではない。
万引き事件において,万引き被害を受けた店は,もっぱら万引きをした児童Hの保護者と対応し,Q3に責任を問うことはなく,保護者が店に謝罪したことで事態は解決した。また,上司らによって,Q3に対し,事前事後に適時適確な指示及びフォローがなされている。なお,Q3がその後の夕会の席で万引き事件につき謝罪した事実はない。前記両事件は近接した時期に同じ児童(児童H)の行動によって起こった出来事であるから,両事件が与える精神的負荷については総合的に評価すべきであるところ,万引き疑惑事件によりQ3が受けた精神的負荷は,万引き事件において保護者が謝罪したことで軽減している。

(オ)

上履き隠し事件及び体操着隠し事件について
物隠しはいじめの端緒とされ,その前段階と捉えられる事象であるが,どのクラスでも起こりうる出来事であって,新任教師も対応に当たることが想定されていた。
平成18年5月頃に上履き隠しが発覚したときは,Q3は担当学年の他の教諭とともに対応し,同年6月下旬には再び上履き隠しがあったことについて保護者から事後に報告がされたが,Q3が対応した事実は認められず,その後は報告されることもなく収まったとみられる。また,体操着隠しは,Q6校長の適切な指示により収まり,その後は再発していない。
以上からすれば,前記のいずれの物隠し事件も,いじめに発展することなく,周囲の支援のもとに初期の段階で解決している単発的な事象であった。
(カ)

各事件の評価について
前記(イ)ないし(オ)の各事件は,それぞれ早期に解決し,又は単発的
なものであって,短期間のうちに連続して起こった事象とは評価できない。したがって,前記各事件が平成18年5月から6月までの間に発生したことは,Q3に対する精神的負荷を強めるものとして総合考慮すべき事情には当たらない。

時間外労働について
客観的な資料(乙12,13,20)に基づき,Q3の時間外勤務時間数を算出すると,4月は35時間33分,5月は18時間25分,6月は7時間,7月は5時間,9月はゼロ,10月は7時間5分となり,いずれの月も自宅労働時間はない。
そうすると,医学的知見から,肉体的疲労や睡眠不足と精神疾患発症との因果関係が指摘されていることを考慮しても,前記の時間外勤務時間数は肉体的疲労や睡眠不足を来すものではないから,強度の精神的・肉体的負荷を与えるものとはいえない。

(4)

職場の支援体制について
Q2小学校では教諭に対する支援体制が構築されており,特に新任教諭に対しては,学校ぐるみで手厚い支援体制を組んで,学校への対応と児童の指導に早期に慣れるようにされていた。Q3が受け持った第2学年においても,Q2小学校全体においても,教員の年齢構成はバランスが取れていたし,2学期以降は,サポート会議を開催してQ3の業務を支援していた。また,Q6校長やQ8副校長は,日常的にQ3の様子に気配りをしていた。仮にQ3がQ6校長への報告,相談等をかえって精神的に負担に感じていたとしても,これを精神的負荷の強度判断の基礎事情とするのは,負荷の強度を本人を基準に判断することになるから,相当ではない。
Q3は,自分から周囲に相談しようとしなかったこと,同学年の教諭が声をかけても「大丈夫です。」とだけ答えていたこと,他の教諭が教室に入ることを負担に感じていたことなど,周囲からのアドバイスを受け入れない傾向にあった。これに対しQ6校長やQ8副校長は,レポート提出の削減や,担当授業数の削減など,Q3に見合った対応も取っていた。
なお,初任者研修において,指導者が「病休・欠勤は給料泥棒」「いつでもクビにできる」との発言をした事実はない。
(5)

結論
以上のとおり,Q2小学校におけるQ3の業務上の出来事は,いずれも
新任教諭にとって強度の負荷を与える事象ではなく,職場の支援も十分なされていたのであるから,客観的にみて公務が過重であったとはいえない。したがって,Q3のうつ病は,公務に起因して発生したものではなく,Q3の自殺も公務に起因したものではない。仮に,Q3が入職前既に発症していたうつ病を増悪させたとしても,うつ病の増悪は公務に起因するものではなく,Q3の自殺も公務に起因するものではない。
(被控訴人らの主張)
(1)

公務起因性の判断基準について
公務起因性の判断に当たり,Q3と同種の平均的な職員である「担任になって間もない新任教諭」「初めて学級担任を受け持った新任教諭」を基準にして,Q3の受けた精神的・肉体的負荷を客観的に判断すべきことは当然である。このような評価の方法は,客観性を欠くものでもないし,恣意的なものでもない。
なお,Q3が就職した平成18年度において,公立学校の教職員の病気休職者数7655人のうち4675人が精神疾患による休職者であり,病気休職者に占める精神疾患の割合は61.1%にまで上っており,うち51.9%が女性であった。以上からすると,小学校教員という公務は,性質上精神的負荷が強く,精神疾患を発症しやすいといえる。
(2)

Q3のうつ病発症時期について
精神障害の発症時期をどのように特定すべきかについては,平成23年
12月26日付けの厚生労働省労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(甲51)において,「精神障害の治療歴のない事案については,診断ガイドライン(注

ICD-10を指す。)に示

されている診断基準を満たす事実が認められる場合又は種々の状況から診断基準を満たすと医学的に推定される場合には,当該疾患名の精神障害が発病したものとして取り扱う」と明確に述べられている。したがって,精神障害の発症時期は,ICD-10などの診断基準を最初に満たした時と考えるのが妥当である。
本件において,Q3がICD-10のうつ病の診断基準を最初に満たしたのは平成18年6月末頃ないし同年7月初旬頃であるから,その時期がQ3のうつ病の発症時期である。
控訴人が一般的であると主張するうつ病の経過は,独自の見解にすぎない。また,Q5医師が初診時における症状が重篤であったとした根拠は不明である上に,精神障害が発症から重篤な状態に至るのには,数日のこともあれば数か月かかることもあるのであるから,重篤な状態であったことをもって発症時期を推定することはできない。
(3)

業務による出来事の精神的・肉体的負荷について


学級運営,校務分掌,初任者研修及び研究指定校の準備業務について新任教諭にとって,担任を受け持ち,学級運営をすること自体が,強い精神的負荷となる出来事であるところ,Q3が担任した2年1組は,児童Hという指導困難な児童及び対応困難なその保護者がおり,そのほかにも対応が困難な保護者がいた。
また,初任者が校務分掌を担当すること自体が強い精神的負荷となる上,Q3は学級トラブルの対応に追われていたのであるから,それに加えて校務分掌をすることの負担は大きかった。
さらに,新任教諭にとって,初任者研修による負担は非常に大きいものであった。なお,Q3のレポート提出期限が延期されたのは,複数の学級トラブルの対応に追われ,レポート作成の時間が十分に確保できなかったためである。
加えて,Q2小学校では,教員全体に研究指定校の準備業務による過重な負担がかかっており,Q6校長の方針に対して泣いて反対する教員がいたほどであった。新任教諭であるQ3にとっては,さらに研究指定校の準備業務が加わることによる精神的・身体的負担は大きかった。

本件クラスでの出来事について(平成18年4月から同年7月頃まで)
(ア)

梅の実事件について
Q6校長は,本件クラスの児童Hが校外の梅の木に登って梅の実を
食べたことについてQ3を叱責しており,新任教諭として勤務を開始してから1か月も経たないうちに,問題を抱える児童Hの指導について叱責を受けたことは,その後に続く一連のトラブルの最初の出来事として,Q3に対する強い精神的負荷を与えるものであった。
(イ)

給食費滞納問題について
給食費徴収が管理職の所管事項であるか否かは重要な問題ではなく,
自らの担任学級で給食費を支払ってくれない児童の家庭が存在するということ自体が,Q3にとって強い精神的負荷になりうる。
(ウ)

教材費滞納問題について
給食費滞納と同様,自らの担任学級で教材費を支払ってくれない児童の家庭が存在するということ自体が強い精神的負荷になりうるし,まして,給食費及び教材費を滞納したのは,いずれも指導困難であった児童Hの家庭であったから,Q3が受けた精神的負荷は大きかった。また,滞納問題が解決したと認めるべき証拠はないし,仮に事後的に解決したとしても,それによる精神的負荷がなかったことにはならない。

(エ)

万引き疑惑事件及び万引き事件について
新任教諭であるQ3が,担任する学級の保護者である年上の男性から激しい抗議を受けたこと自体が,強い精神的負荷を受ける事象であり,児童Hの父が,万引き事件後にQ3及びQ6校長に対して,電話での対応を謝罪した事実もない。
また,Q3が事件後の職員会議において,万引き事件について謝罪をした事実は,複数の同僚教諭が同旨の証言をし,謝罪内容を下書きしたQ3のメモ(甲9)も残されていることにより明らかである。
(オ)

上履き隠し事件及び体操着隠し事件について
上履き隠し事件は,いじめの初期段階となる事件であって,これが1か月の間に3件続いたことによる精神的負荷は大きかった。また,体操着隠し事件が事後的に解決したとしても,自らの担任学級でいじめの初期段階となる事件が発生したことによるQ3の精神的負荷は同様に大きかったし,本件についてのQ6校長の指示は,いじめの隠蔽につながるものであり不適切であった。実際に同年9月には,本件クラスにおいていじめ問題が発生している。

時間外労働について
Q3は,Q2小学校に午前7時30分頃から7時50分頃に出勤し,午後7時頃から午後8時頃,遅いときは午後9時頃に退勤していたことが認められ,原審は,1日8時間を超える勤務時間の合計を,少なくとも,4月が40時間から60時間程度,5月が38時間から57時間程度,6月が44時間から66時間程度であったと認定したところ,このほかに,次のような時間外労働時間を加算すべきである。
(ア)

早朝出勤分
Q3は,午前7時30分頃から午前7時50分頃までの間に出勤し
ていたものであり,早朝出勤分の時間外労働時間は1日当たり25分ないし45分となる。これを1か月ごとに累積すれば,
4月(出勤日数20日)

8時間20分ないし15時間

5月(出勤日数19日)

7時間55分ないし14時間15分

6月(出勤日数22日)

9時間10分ないし16時間30分

となる。
(イ)

休憩時間分
原審は,Q3の休憩時間を45分と認定しているが,休憩時間は
なきに等しく,あったとしても5分ないし10分程度であった。したがって,これ(1日当たり35分ないし40分)を1か月ごとに累積すれば,
4月(出勤日数20日)

11時間40分ないし13時間20分

5月(出勤日数19日)

11時間5分ないし12時間40分

6月(出勤日数22日)

12時間50分ないし14時間40分

となる。
(ウ)

休日出勤分及び退勤時間の修正
Q3は,休日出勤として,4月9日(日)に4時間,同月16日

(日)に3時間,同月22日(土)に3時間25分,同月30日(日)に3時間(以上4月分合計13時間25分),運動会が予定されていながら雨天により実施されなかった5月28日(日)に11時間40分ないし12時間5分の勤務時間があった。
さらに,Q3のメール(乙29資料41)及びQ6校長作成の「Q3教諭の時間外勤務の状況」(乙12。以下「本件報告書」という。)により認められるQ3の退勤時刻を前提とすると,前記休日出勤分と併せて,4月分は下限に24時間35分,上限に17時間35分を,5月分は下限に16時間40分,上限に12時間5分を,6月分は下限に2時間をそれぞれ加えるべきである。
(エ)

原審の認定した時間に前記(ア)ないし(ウ)の時間を加えると,Q3の時間外労働時間は,
4月

84時間35分から105時間55分程度

5月

74時間から96時間30分程度

6月

68時間35分から97時間25分程度

となり,月100時間を超えていなかったとしても,これがQ3に対する強度の精神的・肉体的負荷となっていたことは明らかである。なお,Q3が自宅作業において作成した成果物は証拠(甲14ないし19)として提出されており,また,Q3は,学級トラブル等への対応で自宅でも相当程度の作業をせざるを得ず,毎日の睡眠時間が4ないし5時間程度も確保できていなかったのであるから,時間外労働の負荷を評価する際に,自宅作業の存在を加味するのは当然である。(4)

職場の支援体制について
Q2小学校において,第2学年のトラブルについては,学年を飛び越えて管理職に行ってしまい,その管理職からの不適切な指示によりトラブルにうまく対応できない状況だったのであり,また,学校全体が忙しく,初任者が声をかけられる雰囲気もなかったのであって,十分な支援体制があったとはいえない。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人らの本件請求は理由があると判断する。その理由は,次のとおり補正し,次項に当審における当事者の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。

(原判決の補正)
(1)

原判決19頁9行目冒頭から同頁14行目末尾までを次のとおり改める。「平成18年4月,本件クラスの児童Hが,校外で梅の木に登り,梅の実
を食べるという出来事があった。Q3が職員室でこのことを話題にしたところ,専科(理科)担当のQ7教諭は,Q3に対し,「梅の実には毒があるが,多量に食べなければ大丈夫である」旨の話をし,「児童に学校で物を食べさせないように気をつけた方がよい」旨助言し,Q6校長からも「梅の実の種子の中の部分に毒性があるので食べないように」という話をした。Q3は,児童Hを梅の実を食べないように指導した。なお,Q3は,この経緯について負担に思い,5月の連休に帰省した際,被控訴人Q9に,「子どもが梅の木に登って,梅を食べてしまったの。それで指導が悪いと怒られてしまったけど,田舎では木ぐらい登るよね。」と話した。(甲29,乙8,29資料54,38,49,被控訴人Q9本人)」
(2)

同20頁13行目末尾の次に以下を加える。
「前記コンビニエンスストアでの事態解決の後,Q3とQ10主幹はとも
に帰路につき,途中,Q11線Q12駅近くのレストランで一緒に夕食を取った。レストランでは,Q3は少し涙目で,Q10主幹は,Q3がもしかしたら万引きの騒ぎを起こした児童が本件クラスの児童であったことに責任を感じているのではないかと思い,食事中,Q3に,「何も先生が責任を感じる必要はないのだからね。」と話した。」
(3)

同20頁21行目の「及びQ6校長」を削り,同頁24行目の「36,」
の次に「46,」を加える。
(4)

同22頁9行目の「記載される。)」の次に「及び本件報告書(乙1
2)」を加え,同頁10行目冒頭から同頁13行目の「のみである。」までを「平成18年4月9日(日)の午後4時から午後8時まで,同月16日(日)の午後4時40分から午後7時40分まで,同月22日(土)の午後5時15分から午後8時40分まで及び同月30日(日)の午後5時から午後8時までの勤務並びに同年5月28日(土)(運動会が予定されていたが,雨天により実施されなかった。)の退勤時刻午後7時40分である。」と改める。
(5)

同22頁18行目の「乙13」を「乙12,13」と改める。

(6)

同23頁12行目の「Q13教諭に対し」を「指導担当教諭であるQ1
3教諭に授業終了後午後6時頃まで相談し,その際,Q3は」と,同頁14行目の「話していた」を「話しており,Q3は強い精神的ショックを受けた様子であった」とそれぞれ改める。
(7)

同24頁9行目の「(乙29資料8・資料53)」を次のとおり改める。「なお,Q4が作成し,控訴人に提出した平成20年3月23日付けの
「肉体的,精神的不調和の状況及び愁訴等に関する調査」と題するチェック式の書面には,次の各項目にチェックが付され,そのような状態が始まった時期について括弧書きのとおり記入されていた。
(ア)

本人の訴え
「気が沈む,落ち込んだ気分になる,ゆううつ」(平成28年7月位
から)
「気力がない」(平成18年7月位から)
「生きていても仕方がない」(平成18年5月後半位から)
「仕事に出たくない,おっくう,人に会うのが面倒だ」(平成18年6月後半位から)」
「いらいらする」
「何を見ても興味が湧かない」(平成18年7月位から)
「疲れ易い」
(イ)

周りから見て
「元気がない,ぼんやりしている」
「生きていたくない,死にたいなどと漏らす」(平成18年5月後半位から)
「顔色がよくない」
「いらいらしている,今迄になく同僚や部下に当たる」
「遅刻,早退,欠勤が多くなった」
また,同様のチェック式の書面について,Q8副校長作成のものには
「本人の訴え」はなかった旨,「周りから見て」は「その他」として「眠そうな様子の日があった。6月頃から」との記載,Q14教諭作成のものには「本人の訴え」として「朝起きられない」「気が沈む,落ち込んだ気分になる,ゆううつ」「気力がない」「将来に希望を感じない」「食欲がない」の各項目に,「周りから見て」として「元気がない,ぼんやりしている」「他の人と話しをしなくなった」の各項目にチェックが付され,その他として「表情がかたかった」と記入され,時期についての記載はなかった。Q13教諭作成のものにはいずれの項目にもチェックはなく,Q15主幹作成のものには「周りから見て」の「遅刻,早退,欠勤が多くなった」にチェックが付され,「6月の月曜日に3週連続で休暇を取った。(欠勤ではない。)」と付記されている。Q16教諭作成のものには,「本人の訴え」として「不眠が続いている」,「周りから見て」として「元気がない,ぼんやりしている」「顔色がよくない」の各項目にチェックが付され,時期についての記載はない。(乙29資料8・資料13・資料53)」
(8)

同24頁20行目の「同日の」から同頁22行目末尾までを「なお,Q
5医師は,同日の診療録に,前記病名のほか,「緊張性の症状が厳しく,就労が困難な状態。父兄や上司からのプレッシャーが強く反応性の抑うつ状態となっている。状態が改善するまで,就労を禁止するよう指示したが,義務感が強く就労を希望する」と記載した。」と改める。
(9)

同24頁24行目の「仕事」を「福岡市で今日出したよ。不備がなけれ
ばいいけども。色々悩んだんね。仕事」と,同頁25行目の「くらいで」から同行目の「しており」までを「くらいで…試験の勉強とかできんけど出して受けな福岡帰れんし…」「可能性が0を受け続けるより1でもあるほうを受け続けて上がれば福岡帰れるから。だめでこのままずっと東京というのが一番嫌だし。市に戻れたらまた県受けなおしてもいいやん。とにかく帰りたい(>_<)。」とのメールを送信し,Q3が福岡市教員採用試験の願書を提出したことを報告し」とそれぞれ改める。
(10)

同25頁2行目の「41」の次に「・資料52」を加える。

(11)

同29頁12行目の「Q3が」を「⑴

Q3が」と改め,同頁16行目

冒頭から同30頁末尾までを次のとおり改める。
「(2)

前記認定事実(4)クないしコによれば,Q3は,平成18年5月後半
頃から,Q4に「生きていてもしょうがない」「死にたい」などと言ったり,タオルを輪にして首つりをするような様子を見せたりするようになったが,この間も特に問題なく勤務は続け,同年6月1日から同月13日までの間に行われた家庭訪問も特に問題なく行い,同年6月に,同年5月に実施された校内研修レポートを提出することができず,同年6月後半頃からはQ4に「学校に行きたくない」「身体がつらい」などと言うようになり,同月21日には,被控訴人Q9に,福岡市教員採用試験の願書を提出した旨,福岡に帰ることを希望しており,このままずっと東京というのが一番嫌である旨を記載したメールを送信するなどしたが,同年7月3日以降,出勤できずに休暇を取得することが増え,同月9日には自殺未遂に及び,同月11日に本件クリニックを受診し,Q5医師から「父兄や上司からのプレッシャーが強く反応性の抑うつ状態となっている」として,反応性うつ病などと診断されるに至ったものである。
ICD-10によれば,うつ病エピソードに当たるというためには,典型的な症状のうち最低2つ,一般的な症状のうち最低2つ以上を満たす症状がみられ,その最小持続期間は2週間とされていることは前記第2の1(6)認定のとおりであるが,Q17病院精神科のQ18医師作成の医学的意見書(甲45,61)には,精神障害の発症時期はICD-10などの診断基準を最初に満たした時とすべきであり,Q3については,前記のような経過を踏まえ,平成18年6月後半以降,うつ病の診断基準症状のうち,抑うつ気分,興味・喜びの減退,易疲労や活動性の減退がほぼ確実に認められたと考えられると判断でき,同時に,同年5月後半から希死念慮や自殺行為がほぼ確実に認められたとするのが妥当と判断し,これらの諸症状が同時に少なくとも2週間以上持続したと考えられた平成18年7月初旬を発症時期とするのが妥当との判断の記載がある。さらに,控訴人本部委嘱の専門医が作成した医学的意見書(乙30)には,Q3のうつ病の発症時期について,「本人は,平成18年6月1日から13日の間に行われた家庭訪問では,トラブルや本人の訴え等は特に認められず,交際相手の証言から,本人は7月に入ってから気が沈む,落ち込んだ気分になる,ゆううつとされており,休暇も取りがちになったとされている。したがって,本人は,本件精神疾患を6月頃には発症したものと考えられる。」との記載がある。
以上を総合すると,Q3のうつ病発症時期は,平成18年6月末頃ないし同年7月初旬頃と認めるのが相当である。
(3)ア

前記認定に関し,控訴人は,Q3のうつ病発症時期について,平成18年4月以前又は遅くとも同年5月下旬であると主張し,これに関する医師の意見書等として,つぎのものがある。

(ア)

Q3の主治医であったQ5医師作成の回答書(乙29資料59)
及び陳述書(乙41)には,初診時は既にかなり重篤な状態であ
り,その症状の重篤さから判断する限り平成18年初頭にはすで
に重い症状だったと考えられる旨の記載がある。

(イ)

Q19大学医学部精神神経医学講座のQ20医師作成の医学的
意見書(乙39)には,Q5医師の診断については,反応性うつ
病を引き起こすに足りる業務負荷や過重性を満たす出来事は本件
では見出すことができず,反応性うつ病の判断は極めて疑わしい
ものとしつつも,Q3の頑なな性格傾向等があり,Q3が新人の
教員として公務上疾病としての精神疾患を引き起こす公務に遭遇
したとはいえないのに,入職して2か月に満たないのに希死念慮
→自殺企図を引き起こしたことを考慮に入れると,脆弱性の高い
性格傾向を有していたか,主治医が初診時に重度のうつ状態と判
断した観点から平成18年度当初から発病していたと回答してい
ることから考えると,入職前に潜在的に発病状態であった可能性
も否定できない旨,支部専門医の意見,Q4の陳述書に希死念慮,抑うつ気分,悲観的・抑うつ気分に伴う言動がみられていた平成
18年5月下旬を発病時期と判断するのが妥当である旨の記載が
ある。
(ウ)

控訴人東京都支部委嘱の専門医作成の医学的意見書(乙29資料

60)には,入職後既に5月下旬ころから同居人であるQ4からの情報では「生きていてもしょうがない」「生きていたくない,死にたい」といった悲観的,抑うつ的な言動がみられることから,Q3の発病はこの時期であったと考えられるとの記載がある。

しかし,Q5医師に係る前記ア(ア)の記載については,初診時の症状の重篤さを根拠として指摘するにとどまるものである上,前記認定事実(4)イのとおり,Q2小学校への着任当初,Q3は,Q2小学校で勤務できることを前向きに受け止めている様子であり,周囲の教諭らのQ3に対する評価を見ても,Q3にうつ病の症状が出現していたことをうかがわせる事情は見当たらない。これらの事情及びQ18医師作成の医学的意見書(甲45,61)の記載に照らせば,Q5医師作成の回答書等の前記記載は直ちに採用することができないというべきである。


Q20医師及び控訴人東京都支部委嘱の専門医に係る前記ア(イ)及び(ウ)の記載についても,Q3について,平成18年5月下旬の時点で,ICD-10の診断基準を満たす精神症状があったか否かについては,明らかにされていない。
このような診断基準と発症時期との関係について,平成23年5月31日に開催された厚生労働省の第6回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会(以下「本件検討会」という。)の議事録(甲65)によれば,うつ病の発病時期の判断について,同検討会の座長から,「例えば,ICDもDSMも,両方そうですが,うつ病と診断するには,一連の症状のうちのいくつぐらいを満たせば,軽症と言おうとか中等症と言おうとかなっていますので,通常は軽症でも,満たす段階に至ったら発病と,そういう考え方でやっているわけです。もちろんその前に病態の始まりがありまして,どの時点を発病とするかというのはなかなか難しい問題なのです。」との発言があり(4ないし5頁),この点について,委員であるQ20医師から,「非常に難しいですね。(中略)診断基準からいくと,ある項目がいくつか存在してこれはうつ病であるという診断になっていくわけですが,必ずしもその症状の存在がわからないということが当然あるわけです。しかし,症状はわからないが,何らかの変化が発症時期と推定されれば,そこを発症時期と考えていくしかなないのではないでしょうか。やはりこれは事例,事例で扱っていくしかないと思います。逆に,症状が見えないからここは発病していないというのは,それはある意味ではまずい気がします。」との発言があり,さらに,座長からは,「なかなか難しい問題ではありますが,病気を疑うに足る症状が,病気というのに十分な程度の症状がそろった時点を採用するしかないと思います。(中略)通常,ICD-10を採用していますから,ICD-10でいうところの疾病と診断されるのに十分な症状が出揃った時点を発病時点と言うしかないのではないかと思います。」との発言がされていた(5頁)。
このような検討会での検討状況及びQ18医師作成の医学的意見書(甲45,61)の記載をも踏まえると,Q3について,平成18年5月下旬の時点で,ICD-10の診断基準を満たす精神症状があったか否かについては,明らかにされていない以上,前記ア(イ),(ウ)のQ20医師及び控訴人東京都支部委嘱の専門医に係る記載は,直ちに採用することができないものといわざるを得ない。

したがって,Q3のうつ病の発症時期に関し,前記アの(ア)ないし(ウ)の意見書等の記載は直ちに採用することができず,前記(2)の認定を左右するに足りないというべきである。」

(12)

同32頁7行目の「認められる。」の次に「なお,同年4月に発生した梅の実事件についても,本件クラスにおいてその後種々の問題を起こした児童Hの校外での行動について,先輩の教諭及び校長から指導を受けたものであり,連続するトラブルの一環をなすものと認められる。」を加える。
(13)

同32頁19行目の「その対応」を「児童Hの担任教諭として万引き疑惑について児童Hの保護者に情報を伝える際」と改める。

(14)

同32頁26行目の「確かに,」を次のとおり改める。
「そして,その後に実際に起こった万引き事件の際も,児童Hの保護者
は,コンビニエンスストアにおいて,約4時間半にわたり児童Hの万引きへの関与に関して店側と揉め続けたものであり,その後のQ3のレストランでの様子をも考慮すると,Q3ら教員が直接非難や抗議を受けたものではなかったとしても,Q3は,当日のコンビニエンスストアにおけるやりとりの状況を見て,相当な衝撃を受けたことがうかがわれるのである。」(15)

同33頁4行目の「せよ,」の次に「これらの事情があるとしても,」を加え,同頁5行目の「疑問も残る」を「疑問が残る」と改める。
(16)

同33頁19行目の「主張するが」を「主張し,証人Q6の証言及び同人作成の陳述書(乙35)中にはこれに沿う供述ないし記載がある。しかし」と改める。

(17)

同34頁3行目の「等から」から同頁4行目末尾までを「に照らし,Q6校長の前記証言及び陳述書の記載は採用することができず,他に,この点に関し,前記1(3)の認定を左右するに足りる証拠はない。」と改める。

(18)

同34頁15行目の「であったと認められる。」を次のとおり改める。「と一応算定される。そして,Q3の退勤時刻について本件報告書に記載があるものについては当該時刻に退勤したものと認めるのが相当であるから,これを前提とすると,4月3日及び10日は午後8時,4月12日は午後7時40分,4月25日は午後9時30分,4月26日は午後8時,5月8日,9日,12日,19日及び31日は午後8時並びに6月2日及び14日は午後8時が退勤時刻となるから,前記の各月の下限の時間数に4月は6時間10分,5月は5時間,6月は2時間を加え,4月の上限の時間数に1時間10分を加えるのが相当である。さらに,前記認定事実(4)ア認定のとおり,Q3は,4月9日,16日,22日及び30日に休日出勤し,その勤務時間の合計は13時間25分となり,5月28日(日)に運動会が予定されていたが実施されなかった日として勤務し,その日は午後7時40分に退勤しているから,時間外労働時間の下限に40分を加え,上限から20分を減じるのが相当と認められる。そうすると,Q3の時間外労働の時間数は,4月は59時間35分から74時間35分程度,5月は43時間40分から56時間40分程度,6月は46時間から66時間程度と認めるのが相当である。」
(19)

同35頁25行目の「報告書(乙12)」を「本件報告書」と改める。
(20)

同38頁2行目の「倍加させかねない」を「強めるような」と改める。
(21)

同38頁4行目の「相当である」を「相当であり,これに前記(3)認定のような小さからぬ精神的・肉体的負荷を伴う時間外労働(自宅における作業を含む。)の負荷が加わっていたものと認めるのが相当である」と改める。

2
当審における当事者の補充主張について判断する。
(1)

公務起因性の判断基準について
控訴人は,公務起因性の判断は,業務による負荷を,被災職員ではなく,
被災職員と職種,職,業務経験等が同等程度の職員を基準にして客観的に判断すべきであり,本件において,Q3自身を基準にし,Q3の立場に立ってQ3が個別具体的事実をどう受け止めたのかを推認する方法によって業務による負荷を判断することは,著しく客観性を欠き,誤りであると主張する。
しかし,公務起因性の判断に当たり,被災職員と職種,職,業務経験等が同等程度の職員を基準として客観的に判断すべきものであって,その基準として想定すべき職員については,ストレスに対する反応性,脆弱性において,何らかの個体側の脆弱性を有しながらも,特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準とすべきであることは前記1説示のとおりであり,本件における平成18年4月から同年7月までの本件クラスでの出来事を,Q3がどのように受け止めたのかは,それらの出来事の負荷の強さを判断する資料として用いているものであることは,前記1で説示したところから明らかである。控訴人の主張は,採用の限りではない。
(2)

Q3のうつ病の発症時期について


控訴人は,一般的なうつ病は,①不安,焦燥,中途覚醒,集中力減退
といった発症前の兆候から,発病時期には②思考停止,億劫感,抑うつ気分といった精神症状が顕れ,診断確定期以降は,③行動制止,希死念慮,④自殺企図,⑤異常言動といった一連の精神症状をたどるのであり,本件においては,Q3には,平成18年5月下旬頃から前記③の希死念慮や④自殺企図に該当するうつ病の精神症状が出現しており,その後の自殺未遂,医療機関受診の経緯からすれば,Q3のうつ病発症時期は,平成18年4月以前又は遅くとも同年5月下旬であると主張し,Q20医師作成の医学的意見書(乙51)には同旨の記載がある。
しかし,ICD-10によれば,うつ病エピソードに当たるというためには,典型的な症状のうち最低2つ,一般的な症状のうち最低2つ以上を満たす症状がみられ,その最小持続期間は2週間とされており,Q18医師は,前記1認定のようなQ3の症状の経過を踏まえ,Q3は平成18年6月後半以降,うつ病の診断基準症状のうち,抑うつ気分,興味・喜びの減退,易疲労や活動性の減退がほぼ確実に認められたと考えられると判断でき,同時に,同年5月後半から希死念慮や自殺行為がほぼ確実に認められたとするのが妥当と判断し,これらの諸症状が同時に少なくとも2週間以上持続したと考えられた平成18年7月初旬を発症時期とするのが妥当と判断し,さらに,控訴人本部委嘱の専門医はQ3のうつ病の発症時期について,前記1認定の経緯を踏まえて発症時期を平成18年6月頃と判断しており,これらの事情に照らせば,Q3のうつ病発症時期は,平成18年6月末頃から同年7月初旬頃と認めるのが相当であることは,前記1認定説示のとおりである。前記控訴人の主張に沿うQ20医師作成の医学的意見書(乙51)の記載は,前記1において説示したところ及びQ18医師作成の意見書(甲45,61)の記載に照らし,直ちに採用することができず,Q3のうつ病の発症時期に関する前記1の認定判断を左右するものとはいえない。

さらに,控訴人は,ICD-10等の診断基準を最初に満たした時を精神障害の発症時期とするのは,専門検討会及び労災認定基準の内容の理解を誤り,臨床の診断基準と事後的な発症時期の特定を混同しているものであって誤りであると主張する。
しかし,Q18医師作成の医学的意見書(甲45,61)の記載及び前記1認定のとおりの本件検討会での発言内容に照らし,ICD-10等の診断基準を最初に満たした時を精神障害の発症時期とすることが誤りであるとまでは認められず,控訴人の主張は採用することができない。

また,控訴人は,Q3を生前に診察しているQ5医師が,Q3は初診時に重篤な状態であったことから,発症時期は平成18年初頭と特定しており,初診時の状態から発症時期を推定する方法は合理性のあるものであり,その医学的意見の信頼性は極めて高いと主張する。
しかし,Q5医師の判断は初診時の症状の重篤さを根拠とするにとどまるものである上,Q2小学校への着任当初,Q3は,Q2小学校で勤務できることを前向きに受け止めている様子であり,周囲の教諭らのQ3に対する評価を見ても,Q3にうつ病の症状が出現していたことをうかがわせる事情は見当たらないこと,これに加えて,Q18医師作成の医学的意見書(甲45,61)の記載に照らし,Q5医師作成の回答書等の記載を直ちに採用することができないことは,前記1説示のとおりである。控訴人の主張は採用することができない。
(3)

業務による出来事の精神的・肉体的負荷について


学級運営,校務分掌,初任者研修及び研究指定校の準備業務について控訴人は,Q3の業務に関し,①学級運営については,Q3が初任者
の中でも指導しやすい学年の学級を運営していた,②校務分掌については,他の初任者より少なかった,③初任者研修は素養を高めるため初任者全員に対し求められるもので,Q3以外の初任者で研修レポートの提出ができない者はいなかった,④研究指定校の準備業務については,Q1市内の半数以上の学校が研究指定校又は研究奨励(協力)校となるところ,Q3は研究発表の役割ではなかったとし,いずれも,Q3に精神的・肉体的負荷を与える事象ではないと主張する。
しかし,前記各業務については,直ちに強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象に当たるとまでは認められないものの,平成18年当時のQ2小学校の教職員の負担の状況,初任者研修の研修レポート作成の負担等を考慮すれば,新任教諭にとっては,日常の学級運営及び校務分掌に加え,初任者研修及び研究指定校の準備業務に従事することは,相当の負担があったものと認められることは,前記1認定説示のとおりである。控訴人の主張は採用することができない。

本件クラスでの出来事について(平成18年4月から同年7月頃まで)(ア)

梅の実事件,給食費滞納問題及び教材費滞納問題について
控訴人は,梅の実事件,給食費滞納問題及び教材費滞納問題は,いずれもQ3に精神的負荷を与える事象ではないと主張する。
しかし,これらの事件のため,Q3が本件クラスでトラブルが続くことに悩んでいたと認められることは前記1認定のとおりであり(なお,梅の実事件について,Q3が管理職から叱責されたという事実を認めるに足りる証拠がないことも前示のとおりである。),これらの事件は,いずれも本件クラスの児童Hの指導ないしその家庭対応にかかわる問題であって,新任教諭であるQ3にとって,そのような問題を複数抱える児童Hの今後の指導について不安を抱かせるに足りる事情であるということができるのであり,控訴人の主張するところを考慮しても,前記1の認定を左右するものとはいえない。
(イ)

万引き疑惑事件及び万引き事件について
控訴人は,万引き疑惑事件において,疑惑がかかった児童Hの保護者は,Q3に対し「事実を示せ。」と抗議したものの,その内容は中傷や人格の否定に及ぶものではなく,万引き事件においても,Q3の責任が問われたものではなく,保護者が店に謝罪したことで事態は解決し,それにより万引き疑惑事件によりQ3が受けた精神的負荷は軽減したと主張する。
しかし,Q3は,児童Hの保護者から大声で怒鳴られ,「事実を示せ」という趣旨の激しい抗議を受け,Q3一人では対応しきれず,Q8副校長とQ10主幹が電話を代わって対応し,最終的にQ6校長が電話をかけて謝罪する事態となったことは,前記1認定のとおりであり,Q3に対する中傷や人格を否定するような発言が含まれていなかったとしても,担任になって間もない新任教諭にとって相当の精神的負荷を与える事象の一つであったとの前記1の認定判断を左右するものではない。また,万引き事件の対応についても,当日の状況から,Q3が相当な衝撃を受けたことがうかがわれることは前記1説示のとおりであり,Q3の責任が問われたものではなく,その万引きに関しては保護者が店に謝罪したことで事態が解決したものであるとしても,Q3に対する相当な精神的負荷となった事象というべきであるし,万引き事件において保護者が謝罪したからといって,万引き疑惑事件でQ3が受けた精神的負荷が軽減したとみることもできない。
なお,控訴人は,Q3が夕会で謝罪した事実はないと主張するけれども,Q3が児童Hの万引き事件の経緯に関し夕会で謝罪したとの認定を左右するに足りる証拠がないことは,前記1説示のとおりであり,控訴人の主張は採用の限りではない。
さらに,控訴人は,上司らによって,Q3に対し,万引き疑惑事件及び万引き事件の事前事後に適時適確な指示及びフォローがなされていたと主張する。確かに,当該事件中はQ6校長,Q8副校長,Q10主幹らによって共同対応していたことが認められるけれども,経験の乏しい新任教諭であるQ3が児童Hの担任教諭として万引き疑惑について児童Hの保護者に情報を伝える際には,上司らから手厚い指導が必要であったと考えられるのに,Q3に対してそうした指導が行われた形跡はないことは前記1説示のとおりである。また,Q3は,本件クラスの問題について,Q6校長から叱責されることが多いとの悩みを同期の教諭らに打ち明けていたことも,前記1認定のとおりであって,Q3に対し,万引き疑惑事件及び万引き事件の事前事後に適時適確なフォローがなされていたと認めることはできない。
(ウ)

上履き隠し事件及び体操着隠し事件について
控訴人は,物隠しはいじめの端緒とされる事象であるが,新任教師も対応に当たることが想定される事象であり,上履き隠し事件及び体操着隠し事件ともに,いじめに発展することなく,周囲の支援のもとに初期の段階で解決している単発的な事象であることが認められるから,新任教諭にとって強い精神的負荷を与える事象とまではいえないと主張する。
しかし,前記1認定のとおり,上履き隠し事件は結局誰が隠したのかは明らかにならないまま,平成18年6月下旬まで続いており(証拠上明らかになっている上履き隠し事件は,平成18年5月中旬,同年7月6日以前の月曜の朝,同年6月26日の3回である(乙8,29)。),このような事件があると,被害に遭った児童の保護者から,連絡帳に,親としてショックを受けたとか,今後の情報の提供を求めるとの記載がされた(乙29資料46)のであり,控訴人の主張を考慮しても,これらの事件は,本件クラスにおいて連続して発生したトラブルの一部として,担任になって間もない新任教諭であるQ3に対し,相当の精神的負荷を与える事象の一部であったものというべきである。
(エ)

各事件の評価について
控訴人は,前記(ア)ないし(ウ)の各事件は,それぞれ早期に解決し,あるいは単発的なものであって,短期間のうちに連続して起こった事象とは評価できないから,前記各事件が平成18年5月から6月までの間に発生したことは,Q3に対する精神的負荷を強めるものとして総合考慮すべき事情には当たらないと主張する。
しかし,前記(ア)ないし(ウ)の各事件が発生したため,Q3は本件クラスでトラブルが続くことに悩んでいたものであり,一連の出来事が担任になって間もない新任教諭にとって,相当の精神的負荷を与える事象であったものと認められることは,前記1認定説示のとおりである。控訴人の主張は,採用の限りではない。


時間外労働について
(ア)

Q3の勤務時間について,控訴人は,客観的な資料(乙12,13,
20)に基づいてQ3の時間外勤務時間数を算出すると,4月は35時間33分,5月は18時間25分,6月は7時間,7月は5時間,9月はゼロ,10月は7時間5分となり,自宅の労働時間も認められないと主張し,被控訴人らは,残業時間に加えて,早朝出勤分,休憩時間分,休日出勤分の勤務時間を加えて計算すると,平成18年4月のQ3の時間外労働時間は84時間35分から105時間55分程度,同年5月は74時間から96時間30分程度,6月は68時間35分から97時間25分程度となると主張する。
(イ)

しかし,警備日誌(乙13)には,原則として最終退出者のみが記
載されることになっている上,警備員から教職員に引継ぎをした旨が記載されて最終退出者及び最終退出時刻の記載がない日もあるから,警備日誌の最終退出者欄にQ3の氏名が記載されていなかったとしても,そのことからQ3が午後5時に退勤していたとは認められないことは,前記1説示のとおりであり,Q3の退勤時刻が控訴人主張のとおりであるとはいえない。また,Q3は,帰宅してから学級通信や研修レポート等の文書作成,テストの採点,教材の作成等を行うことが多かったこと,当時のQ2小学校は,新任でない教員を含め,多くの教職員が日常的に残業を行っている状況であったこと,本件クラスでは平成18年5月上旬から6月下旬にかけてトラブルが連続して発生しており,その対応等でQ3の業務量はさらに増加していたと考えられることから,Q3は自宅でも相当程度の作業をせざるを得ない事情があったと認められることも,前記1認定説示のとおりである。控訴人の主張は採用することができない。
(ウ)

一方,Q3の早朝出勤については,勤務に向けた準備時間として捉
えられる程度の時間にとどまるのであり,Q3については,午前7時30分頃から午前7時50分頃までの間に出勤して授業の準備等を開始し,午後7時頃から8時頃までの間に退勤することが多く,遅いときは午後9時頃に退勤することもあったから,平均すると,少なくとも1日2時間から3時間程度は法定労働時間である1日8時間を超える時間外労働をしていたものと認められることは,前記1認定説示のとおりである。被控訴人の主張は,この認定判断を左右するものではない。また,勤務中のQ3が45分の休憩時間のうち毎日5分程度しか休憩が取れなかったと認めるに足りる証拠はないことも前記1認定のとおりである。
なお,被控訴人らは,Q3のメール(乙29資料41)によってQ3の退勤時刻が認められると主張するけれども,その裏付けとなる的確な証拠はなく,採用の限りではない。
(エ)

他に,Q3の時間外労働時間に関する前記1の認定判断を左右する
に足りる証拠はない。
(4)

職場の支援体制について
控訴人は,Q2小学校では教諭に対する支援体制が構築されており,特に新任教諭に対しては学校ぐるみで手厚い支援体制を組んで,学校への対応と児童の指導に早期に慣れるようにし,Q3が受け持った第2学年においても,Q2小学校全体においても,教員の年齢構成はバランスが取れていたし,Q6校長やQ8副校長は,日常的にQ3の様子に気配りをしていたと主張する。
しかし,平成18年4月から6月までの当時,学校等によるQ3への支援が十分に行われていたとは認められず,かえって,校外における初任者研修時の指導担当者の発言も含めて,Q3には相当程度の精神的負荷がかかっていたものとみるべきであることは,前記1説示のとおりである。前記1で認定した本件の経緯に照らし,控訴人が主張する支援体制により,Q3に適切な支援が行われていたものとは認められない。

控訴人は,仮にQ3がQ6校長への報告,相談等をかえって精神的に負担に感じていたとしても,これを精神的負荷の強度判断の基礎事情とするのは,負荷の強度を本人を基準に判断することになるから,相当ではないと主張する。
しかし,前記1認定のとおり,Q2小学校においては,当時,Q6校長の方針で,学級内で問題が起きたときは,まず担任が校長に報告することになっていたものであるところ,これについて,Q3は,同僚に「学級内のトラブルをQ6校長に相談すると,まず「あなたが悪い」と怒られるし,言えずにいると後になって「なんで言わなかったのよ」と怒られるし,どちらにしても怒られる」「校長によく叱られる」などと話していたというのである。新任教諭にとって,自らが担任する学級内トラブルを,校長に直接報告し直接指導を受けることを精神的負担に感じることは十分想定できることであり,Q3がQ6校長への報告,相談等を精神的に負担に感じていた事実をもって,それがQ3固有の性格によるもので,精神的負荷の程度の判断材料とすることが相当でないとまではいえない。


さらに,控訴人は,Q3は,同学年の教諭が声をかけても「大丈夫です。」とだけ答えるなど,周囲からのアドバイスを受け入れない傾向にあり,これに対しQ6校長やQ8副校長は,レポート提出の削減や,担当授業数の削減など,Q3に見合った対応も取っていたとも主張する。しかし,平成18年4月から6月にかけて本件クラスで発生した問題に関し,適切な事前事後の支援が行われたとは認められないことは,前記1説示のとおりであり,Q3が周囲からの声掛けに対し「大丈夫です。」とだけ答えていたからといって,Q3が周囲からのアドバイスを受け入れない傾向にあったと認めることはできず,控訴人の主張は,職場等の支援が不足していたことに関する前記1の認定判断を左右するものとはいえない。エ
なお,控訴人は,初任者研修において,指導者が「病休・欠勤は給料泥棒」「いつでもクビにできる」との発言をした事実はないと主張し,当該指導者であったQ21作成の陳述書(乙45)にはこれに沿う記載がある。しかし,当該記載は,同研修に参加していた証人Q22の証言及び同人作成の陳述書(甲28)の記載,同じく同研修に参加していたQ16教諭作成の回答(乙29資料52)の記載に照らし,採用することができず,他に前記発言及びそのQ3に対する影響に関する前記1の認定判断を左右するに足りる証拠はない。

(5)

当審における当事者の主張に対する判断は以上のとおりであって,控訴人の主張するところを併せ考えても,Q3のうつ病発症時期は平成18年6月末頃から同年7月初旬頃であると認められるところ,うつ病発症前に発生した業務上の出来事については,その内容や発生時期のほか,学校等において十分な支援が行われず,かえってその負荷を強めるような発言もあったことを考慮すると,全体として業務による強い精神的・肉体的負荷を与える事象であったと認めるのが相当であり,これに自宅における作業を含む時間外労働の負荷が加わっていたとする前記1の認定判断を左右するものとはいえない。

3
よって,被控訴人らの本件請求を認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄却することして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第14民事部

裁判長裁判官


裁判官

大藤須賀博寛之
裁判官

南部潤一郎
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