判例検索β > 平成29年(わ)第395号
関税法違反、消費税法違反、地方税法違反被告事件
事件番号平成29(わ)395
事件名関税法違反,消費税法違反,地方税法違反被告事件
裁判年月日平成29年9月8日
法廷名福岡地方裁判所
戻る / PDF版
主文
被告人を懲役1年に処する
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,Aらと共謀の上,大韓民国から金地金を輸入するに当たり,これに対する消費税及び地方消費税を免れようと考え,平成29年3月21日(現地時間),大韓民国所在の仁川国際空港において,ジンエアー221便に搭乗する際,金地金3個(合計約3キログラム。福岡地方検察庁平成29年領第1525号の符号1,5及び9。以下まとめて「本件金地金」という。)を隠匿携行し,同航空機により,同日午前8時24分頃,福岡市博多区所在の福岡空港に到着し,同日午前8時40分頃,同空港内門司税関福岡空港税関支署入国旅具検査場において,入国に伴う税関検査を受けるに際し,同支署職員に対し,金地金を輸入する事実を秘し,その申告をしないまま同検査場を通過しようとし,もって税関長の許可を受けないで本件金地金を輸入しようとするとともに,不正の行為により保税地域から引き取られる課税貨物である本件金地金(課税価格合計1357万6782円)に対する消費税85万5200円及び地方消費税23万700円を免れようとしたが,同支署職員によって本件金地金を発見されたため,その目的を遂げなかった。(没収について)
検察官は,本件金地金につき刑法19条に基づき没収の求刑をしたが,当裁判所は,これを没収しないと判断したため,その理由について付言するに,本件金地金を没収するには,同条2項の「犯人以外の者に属しない物」に該当しなければならないところ,本件では,被告人に本件金地金の密輸入を指示したAを始めとする共犯者らの供述は全く得られておらず,全証拠に照らしても,Aらによる本件金地金の入手経過は立証されていない。結局のところ,本件金地金の所有者は不明であって,「犯人以外の者に属しない物」とは認められない。

検察官は,種々述べて,本件金地金がその所有者の意思に基づかずに密輸入されたとの合理的疑いを差し挟む余地はなく,同所有者も「犯人」に当たるという主張をするが,金地金の密輸組織が同所有者にどのように話を持ちかけたのか等につき全く証拠がないまま,検察官のいうように断じ切ることは困難というべきである。また,検察官は,本件金地金につき,刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法に基づく公告(検察庁の掲示場に14日間掲示するとともに官報に掲載)をしたが,第三者所有物の没収手続への参加を申し出た者がいないことをもって,善意の所有者が存在しないことを示しているともいうが,海外から金地金を密輸入したという本件事案の性質に照らし,参加申出者の不存在をもって善意の所有者が存在しないと推認することはできない。以上により検察官の主張は採用することができない。
(量刑理由)
本件は,金地金を密輸入し,金地金に対する消費税及び地方消費税を免れた上,それらを付加した金額で金地金を売却し,その差額分の不当な利得を得ることを企図して敢行された金地金の密輸入事案であるところ,証拠上,複数人による組織的関与の下,高い計画性をもって敢行されたことが強く窺われ,悪質性の高い犯行といえる。本件密輸入にかかる金地金は合計約3キログラムと多量であり,ほ脱しようとした消費税及び地方消費税も合計108万円余りと多額に上るところ,被告人は,金地金を衣服等の下に隠匿携行して密輸入する実行犯を担っており,その果たした役割は大きい。被告人は,デリバティブ取引に失敗し金銭に窮する中,報酬目当てに共犯者からの誘いに安易に乗ったもので,動機に酌むべきところはなく,非難を免れない。
以上によれば,被告人の刑事責任を到底軽視することはできず,被告人の述べる共謀状況等からみて,共犯者間において被告人が従属的立場にあり,本件の計画立案等に深く関与した様子は窺われないこと,その他犯情に関し弁護人が主張するところを検討しても,本件は,金地金の密輸入事案の中で犯情が殊更軽いものとは
いえないことから,弁護人の求める罰金刑ではなく,懲役刑を選択するのが相当である(なお,弁護人は,本件が未遂にとどまった点を強調するが,金地金の密輸入事案として立件されるものの多くは発覚により未遂にとどまった事案といえ,本件と他の同種事案との比較において,本件が未遂にとどまった点に重きを置くことはできない。)。
その上で,本件が犯行を現認された事案であるとはいえ,被告人が,捜査段階から本件犯行を認めて,背後者を含め事実関係を素直に供述し,公判廷でも反省の情を示していること,被告人には前科前歴がないこと,被告人の妻が手紙において監督する意向を表明していること,被告人が本件により公務員としての地位を失う可能性が高く,一定の社会的制裁を受けるであろうことなど一般情状等も考慮すると,今回に限っては,主文のとおり懲役1年の刑に処した上,3年間その刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。(求刑

懲役1年,金地金3個の没収)

平成29年9月8日
福岡地方裁判所第2刑事部

裁判官

森喜史
トップに戻る

saiban.in